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特表2024-525669糖尿病性腎症の処置のためのIL1RA由来ペプチド
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  • 特表-糖尿病性腎症の処置のためのIL1RA由来ペプチド 図1
  • 特表-糖尿病性腎症の処置のためのIL1RA由来ペプチド 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】糖尿病性腎症の処置のためのIL1RA由来ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20240705BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240705BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
A61P13/12
A61K38/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024501194
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021069450
(87)【国際公開番号】W WO2023284947
(87)【国際公開日】2023-01-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524011225
【氏名又は名称】セロダス エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタイネス,エヴァ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084NA14
4C084ZA81
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA26
4H045FA52
(57)【要約】
本開示は、糖尿病性腎症の処置のための、および糖尿病性腎症の処置に使用するためのIL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)由来のペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、前記化合物が、配列番号2~5から選択されるIL-1Rアンタゴニスト(IL1RA)タンパク質由来のペプチド、またはIL1RA由来の前記ペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の使用するための化合物であって、前記化合物が、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質由来の5~35個の隣接アミノ酸残基からなるペプチド、または配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質由来の前記ペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、化合物。
【請求項3】
前記ペプチドが、少なくともアミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントを含む、請求項1から2のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項4】
前記ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換および場合により11~20個までの連続アミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の連続アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項5】
前記ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項7】
配列番号1の前記バリアントが1つまたは2つのアミノ酸置換を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項8】
配列番号1の前記バリアントが1つのアミノ酸置換を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項9】
配列番号1の前記バリアントが1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項10】
前記ペプチドが、IL-1受容体1型(ILR1)に結合し、および/またはIL-1βのIL1R1への結合を妨害する、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項11】
前記化合物が、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)からなる、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項12】
前記化合物が、請求項1から11のいずれか一項に記載の1つのペプチドを含むモノマーである、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項13】
前記化合物が、請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも2つのペプチドを含むマルチマーである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項14】
前記化合物が、請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも2つのペプチドを含む多量体デンドリマーである、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項15】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項16】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含みリジン骨格をさらに含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項17】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1つもしくは2つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項15から16のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項18】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項15から16のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項19】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが配列番号1からなる、請求項15から16のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項20】
前記化合物が、尿アルブミン対クレアチニン比(ACR)を低下させ、および/またはバイオマーカー腎損傷分子(Kidney Injury Molecule)-1(KIM-1)の尿レベルを低下させ、および/または尿KIM-1対クレアチニン比(KIM-1/CR)を低下させる、請求項1から19のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項21】
前記化合物が、有効量の抗糖尿病性化合物および/または降圧性化合物と組み合わせて投与されるべきである、請求項1から20のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、糖尿病性腎症の処置のためのIL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)由来のペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン1(IL-1)は、2つの異なる炎症促進性サイトカインタンパク質、IL-1αおよびIL-1βの一般名である。IL-1は、複数の細胞型上の特異的膜貫通受容体(IL-1R)に結合することによってその効果を発揮する。IL-1の効果は、可溶性IL-1受容体およびIL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)などの天然阻害剤によって打ち消される。IL1RAは、細胞表面受容体との相互作用を遮断することによってIL-1の効果を阻害する。
【0003】
抗炎症目的でIL-1を標的化するための治療アプローチは、当技術分野で対処されている。これらには、関節炎の実験モデルにおける組換えIL-1Rアンタゴニストタンパク質、IL-1トラップ融合タンパク質、抗IL-1抗体、抗IL-1RIならびに可溶性IL-1RIおよびIIの投与が含まれる(非特許文献1に概説されている)。
【0004】
Anakinra(特許文献1)は、検出可能なアゴニスト活性なしにIL-1の作用を遮断するヒトIL-1RAのN末端メチオニル化非グリコシル化バージョンを含有する組換え生産タンパク質である。Anakinraは、関節リウマチ、成人発症スティル病、全身発症若年性特発性関節炎、変形性関節症および2型真性糖尿病の処置について試験されている。Anakinraは関節リウマチの処置に承認されており;それは、各用量において100mgの注射濃縮物として送達され;それは、組換えDNA技術を使用して遺伝子改変された大腸菌から調製され;高分子量である。
【0005】
特許文献2および特許文献3は、IL1RA由来の10アミノ酸ペプチド:SGRKSSKMQA(配列番号1)、および様々な障害の処置におけるその使用を開示している。配列番号1は、インターロイキン1β誘導性NF-kBシグナル伝達およびTNFαのマクロファージ分泌を阻害することが以前に示されており、したがって炎症応答の強力な阻害剤である(非特許文献2)。
【0006】
糖尿病性腎症としても知られている糖尿病性腎疾患(DKD)は、代謝因子および血行動態因子が腎損傷の主な原因であると考えられてきたので、歴史的に免疫媒介疾患と見なされてこなかった。しかしながら、最近の研究は、DKDの発症および進行の両方における先天性免疫系の役割を支持している。全身性および局所性の両方の腎炎症とIL-1およびIL-4を含む炎症促進性および抗炎症性サイトカインの数の増加との関連が、健康な対照個体と比較して糖尿病性腎症患者の腎臓において、および一部は末梢血においても見出されている(非特許文献3~5)。
【0007】
進行性の非感染性炎症は、糸球体および尿細管細胞に関与し、腎機能が徐々に失われる。血糖および血圧は、腎機能の喪失を遅らせるように可能な限り正常に保たれなければならない。しかしながら、この先天性炎症の特異的処置は開発されておらず、糸球体濾過および尿細管機能の低下は停止せず、腎機能の喪失が続く。末期腎不全では、処置は慢性透析、場合によっては腎移植となる。したがって、ネフロンのすべての機能の予定された炎症誘発性低下を防止または停止する介入は、腎炎症の抑制に焦点を合わせる必要がある。
【0008】
患者は、尿中のアルブミンを測定することによって糖尿病性腎症と診断される。尿アルブミンは、しばしばスポット尿で測定され、同じ尿試料中のクレアチニンについて補正される(ACRmg/g)。ACRは、正常アルブミン尿ACR<30mg/g、微量アルブミン尿ACR>30mg/g<300mg/gおよび大アルブミン尿ACR>300mg/gの3つの群に分けられる。ACRが高いほど腎臓の損傷が進行しているという臨床的証拠がある。
【0009】
尿アルブミンおよび腎損傷分子(Kidney Injury Molecule)-1(KIM-1)は両方とも、腎臓が関与する様々な自己免疫疾患ならびに他の非自己免疫疾患で見られる腎臓先天性炎症のバイオマーカーである(非特許文献6~8)。ヒト腎生検により、糖尿病性腎症の全ての段階で糸球体、尿細管および間質の両方に炎症細胞が存在することが確認されている(非特許文献9及び10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5075222号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/122985号公報
【特許文献3】国際公開第2017/063657号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Gabay C et al.2010
【非特許文献2】Klementiev 2014
【非特許文献3】Hickey 2018
【非特許文献4】Araujo 2020
【非特許文献5】Murakoshi 2020
【非特許文献6】Coca 2017
【非特許文献7】Cai 2019
【非特許文献8】Levey 2019
【非特許文献9】Kahn 2019
【非特許文献10】Calle 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示によるIL1RA由来のペプチドは、クレアチニンについて補正された尿アルブミン(ACR)およびクレアチニンについて補正された腎臓損傷性分子(KIM-1/CR)を有意に減少させることが本明細書で示される。尿アルブミンおよびKIM-1は両方とも、糖尿病性腎症を含む腎臓が関与する様々な疾患で見られる腎臓先天性炎症のバイオマーカーである。
【0014】
糖尿病性腎症は歴史的に免疫介在性疾患と見なされていないので、糖尿病性腎症の免疫介在性および腎炎症の態様に対処する化合物および医薬が必要とされている。
【0015】
本明細書中に提供される実験データに基づいて、本開示によるIL4RA由来のペプチドおよび化合物は、腎臓のネフロンの様々な機能における予定された炎症誘発性低下を防止または停止することができる可能性が高い。
【0016】
本明細書中に提供される実験データに基づいて、本開示によるIL4RA由来のペプチドおよび化合物は、糖尿病性腎症で観察される腎炎症を阻害することができる可能性が高い。
【0017】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、化合物が、IL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)由来のペプチド、またはIL1RA由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、方法に関する。
【0018】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、IL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)由来のペプチド、またはIL1RA由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、化合物に関する。
【0019】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための化合物の使用であって、化合物が、IL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)由来のペプチド、またはIL1RA由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、使用に関する。
【0020】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0021】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0022】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための化合物の使用に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0023】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の多量体化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、多量体化合物は、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0024】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物に関し、多量体化合物は、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0025】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための多量体化合物の使用に関し、多量体化合物は、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0026】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、化合物は、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである。
【0027】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物に関し、化合物は、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである。
【0028】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための化合物の使用に関し、化合物は、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである。
【0029】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の多量体化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、多量体化合物は、
i)IL1RA由来の10~14個の連続アミノ酸残基からなる2つ以上のペプチドであって、各ペプチドが:
a.配列番号1のアミノ酸配列および場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基からなるか;または
b.1つの保存的アミノ酸置換と場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基とを含む配列番号1のバリアントからなる、ペプチド、および
ii)場合により、1つまたは複数のリンカー基からなる。
【0030】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物に関し、多量体化合物は、
i)IL1RA由来の10~14個の連続アミノ酸残基からなる2つ以上のペプチドであって、各ペプチドが:
a.配列番号1のアミノ酸配列および場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基からなるか;または
b.1つの保存的アミノ酸置換と場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基とを含む配列番号1のバリアントからなる、ペプチド、および
ii)場合により、1つまたは複数のリンカー基からなる。
【0031】
一態様によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬の製造ための多量体化合物の使用に関し、多量体化合物は、
i)IL1RA由来の10~14個の連続アミノ酸残基からなる2つ以上のペプチドであって、各ペプチドが:
a.配列番号1のアミノ酸配列および場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基からなるか;または
b.1つの保存的アミノ酸置換と場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基とを含む配列番号1のバリアントからなる、ペプチド、および
ii)場合により、1つまたは複数のリンカー基からなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】77日間にわたるレニンAAV一側性腎摘出db/db(レニンAAV UNx)マウスのビヒクル、3mg/kg SER140、10mg/kg SER140および20mg/kg SER140による処置後の尿試料中のクレアチニンについて補正された尿アルブミン(ACR)を示す。図1は、異なる群の中央値を示す。実施例1を参照されたい。
図2】77日間にわたるレニンAAV一側性腎摘出(レニンAAV UNx)マウスの3mg/kg SER140、10mg/kg SER140および20mg/kg SER140による処置後の尿試料中のクレアチニンについて補正された尿KIM-1(KIM-1/CR)を示す。図2は、異なる群の平均を示す。実施例1を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義および略語
ACR:クレアチニンについて補正されたアルブミン
DKD:糖尿病性腎疾患。
IL1RAまたはIL1Ra:IL-1受容体アンタゴニストタンパク質は、本明細書ではIL-1受容体アンタゴニストとも呼ばれ得る。
IL-1:インターロイキン1。
IL1R1またはIL1R1:IL1受容体1型。
KIM-1:腎損傷分子(Kidney Injury Molecule)-1
KIM-1/CR:クレアチニンについて補正されたKIM-1
レニンAAV UNxマウス:レニンAAV一側性腎摘出db/dbマウス
【0034】
「糖尿病性腎症」および「糖尿病性腎疾患(DKD)」という用語は、同じ疾患を指すために交換可能に使用される。糖尿病性腎症は、真性糖尿病を有する個体において起こり得る進行性腎疾患の一種である。これは、1型および2型糖尿病の個体に影響を及ぼし、リスクは、疾患の持続期間ならびに高血圧および腎疾患の家族歴などの他のリスク因子と共に増加する。
【0035】
「個体」という用語は、脊椎動物、哺乳動物種の特定のメンバー、好ましくはヒトを含む霊長類を指す。本明細書で使用される場合、「対象」および「個体」は互換的に使用され得る。
【0036】
「それを必要とする個体」は、本開示から利益を得ることができる個体を指す。一実施形態では、それを必要とする個体は、疾患個体である。一実施形態では、それを必要とする個体は、疾患個体、特に真性糖尿病1型または2型を有する個体である。
【0037】
本開示の化合物および他の医薬の「同時投与すること」または「同時投与」は、本明細書で使用される場合、本開示の1つまたは複数の化合物および別の医薬を一定時間内に投与することを指す。時間は、72時間未満、例えば48時間、例えば24時間未満、例えば12時間未満、例えば6時間未満、例えば3時間未満であってもよい。しかしながら、これらの用語はまた、化合物および治療用組成物を一緒に投与することができることも意味する。同時投与は、同時、別個または逐次であり得る。
【0038】
「有効量」の化合物は、1回の投与で、または有効量を合計する量の複数回の投与を通して、例えば24時間以内に投与することができる。それは、投与の適切な量およびタイミングを決定するための標準的な臨床手順を使用して決定することができる。「有効量」は、処置する医療専門家および/または個人の側での経験的および/または個別化された(ケースバイケースの)決定の結果であり得ることが理解される。
【0039】
本明細書で使用される「配列同一性」は、比較される2つの異なる配列間で正確に一致するアミノ酸残基の数である。バリアントが10個のアミノ酸残基を有する配列と90%同一である場合、バリアントは、1個のアミノ酸置換により配列と異なり得る。
【0040】
本明細書で使用される「処置すること」、「処置」および「治療」という用語は、治癒的療法、予防的または防止的療法および改良的または緩和的療法を等しく指す。この用語は、臨床的に確立され得る有益なまたは所望の生理学的結果を得るためのアプローチを含む。本開示の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であろうと検出不能であろうと、症候の緩和、疾患の程度の縮小、安定化された(すなわち、悪化しない)症状、症状/症候の進行または悪化の遅滞または遅延、症状または症候の改良または寛解、および緩解(部分的であろうと全体的であろうと)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「寛解」という用語およびその変形は、本開示の組成物を投与しない場合と比較して、生理学的症状または症候の程度および/または望ましくない兆候が軽減され、および/または進行の時間経過が遅くなるかまたは長くなることを意味する。
【0041】
用語「処置すること」および「処置」の定義を構成する基準によって測定して、処置されている症状に変化がある場合、「処置効果」または「治療効果」が現れる。少なくとも5%の改善、あるいは10%の改善、あるいは少なくとも25%の改善、あるいは少なくとも50%の改善、例えば少なくとも75%の改善、あるいは少なくとも100%の改善がある場合、処置されている症状に「変更」がある。変化は、個体における処置された症状の重症度の改善、または化合物による処置もしくは本開示の医薬組成物と組み合わせた化合物による処置がされた個体集団および処置がされない個体集団における改善された症状の頻度の差に基づくことができる。
【0042】
本開示による処置は、予防的、改良的または治癒的であり得る。
【0043】
「バリアント」という用語は、ペプチド配列が、例えばアミノ酸残基の1つまたは複数の置換によって改変され得ることを意味する。L-アミノ酸およびD-アミノ酸の両方が使用され得る。他の改変は、エステル、糖などの誘導体、例えばメチルおよびアセチルエステル、ならびにポリエチレングリコール改変を含んでもよい。
【0044】
さらに、ペプチドのアミン基はアミドに変換されてもよく、アミドの酸部分は脂肪酸である。
【0045】
保存的アミノ酸の群は以下の通りである。
A、G(中性、弱疎水性)、
Q、N、S、T(親水性、非荷電)
E、D(親水性、酸性)
H、K、R(親水性、塩基性)
L、P、I、V、M、F、Y、W(疎水性、芳香族)
C(架橋形成)
【0046】
保存的置換は、本開示に従って使用するための好ましい所定のペプチドの任意の位置に導入され得る。しかしながら、非保存的置換、特に限定されないが、任意の1つまたは複数の位置に非保存的置換を導入することが望ましい場合もある。
【0047】
本開示のペプチド配列は、任意の従来の合成方法、組換えDNA技術、ペプチド配列が由来する全長タンパク質の酵素的切断、またはこれらの方法の組み合わせによって調製され得る。
【0048】
本開示の化合物の製剤は、当業者に公知の技術によって調製することができる。製剤は、ミクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などを含む薬学的に許容され得る担体および賦形剤を含有し得る。活性化合物は、中性形態または塩形態として製剤化され得る。
【0049】
発明の詳細な説明
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、化合物が、IL-1Rアンタゴニスト(IL1RA)タンパク質由来のペプチド、またはIL1RA由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである方法に関する。
【0050】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、IL-1Rアンタゴニスト(IL1RA)タンパク質由来のペプチド、またはIL1RA由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、化合物に関する。
【0051】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための化合物の使用であって、化合物が、IL-1Rアンタゴニストタンパク質(IL1RA)由来のペプチド、またはIL1RA由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、使用に関する。
【0052】
本開示の一実施形態では、IL1RAタンパク質は、配列番号2~5から選択される配列を有する。本開示の一実施形態では、IL1RAタンパク質は、配列番号2~4から選択される配列を有する。
【0053】
本開示の一実施形態では、IL1RAタンパク質は配列番号1である。
【0054】
本開示の一実施形態では、IL1RAタンパク質は配列番号2である。
【0055】
本開示の一実施形態では、IL1RAタンパク質は配列番号3である。
【0056】
本開示の一実施形態では、IL1RAタンパク質は配列番号4である。
【0057】
本開示の別の実施形態では、使用するための化合物は、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~35個の隣接アミノ酸残基からなるペプチド、または配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである。
【0058】
本開示の別の実施形態では、ペプチドは、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の最大で30個の隣接アミノ酸残基、あるいは最大で25個の隣接アミノ酸残基、あるいは最大で20個の隣接アミノ酸残基、あるいは最大で15個の隣接アミノ酸残基、あるいは10個の隣接アミノ酸残基からなる。
【0059】
本開示の別の実施形態では、ペプチドは、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~35個の隣接アミノ酸残基、あるいは5~30個、あるいは5~25個、あるいは5~20個、あるいは5~15個、あるいは10~20個、あるいは8~18個の配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の隣接アミノ酸残基からなる。
【0060】
本開示の別の実施形態では、ペプチドは、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~35個の隣接アミノ酸残基、例えば5~6個、例えば6~7個、例えば7~8個、例えば8~9個、例えば9~10個、例えば10~11個、例えば11~12個、例えば12~13個、例えば13~14個、例えば14~15個、例えば15~20個、例えば20~25個、例えば25~30個、例えば30~35個の配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の連続したアミノ酸残基からなる。
【0061】
本開示の別の実施形態では、バリアントは、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来のペプチドと少なくとも75%、あるいは80%、あるいは85%、あるいは90%、あるいは95%同一である。
【0062】
本開示の別の実施形態では、バリアントは、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来のペプチドと少なくとも71~80%同一であり、あるいは81~85%同一であり、あるいは86~90%同一であり、あるいは91~95%同一であり、例えば96~99%同一である。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~35個の隣接アミノ酸残基からなるペプチド、または配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントであり、該ペプチドは、少なくともアミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントを含む。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~20個の隣接アミノ酸残基からなるペプチド、または配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来のペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントであり、該ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態では、ペプチドは、インターロイキン1受容体1型(IL1R1)に結合し、および/またはIL1R1へのIL-1の結合を妨害する。
【0066】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0067】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0068】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0069】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0070】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための化合物の使用に関し、化合物は、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態では、ペプチドは、IL-1受容体1型(ILR1)に結合し、および/またはIL1R1へのIL-1βの結合を妨害する。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態では、配列番号1のバリアントは、1つまたは2つのアミノ酸置換を含む。本開示のいくつかの実施形態では、配列番号1のバリアントは、1つのアミノ酸置換を含む。
【0073】
本開示の別の実施形態では、アミノ酸置換(複数可)は保存的アミノ酸置換である。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態では、配列番号1のバリアントは、1、2または3個の保存的アミノ酸置換を含む。
【0075】
本開示の別の実施形態では、1つまたは複数のペプチドは各々、
i)配列番号1のアミノ酸配列、および/または
ii)配列番号1の5個以上の連続アミノ酸からなる断片、および/または
iii)配列番号1と少なくとも90%の同一性を有する配列番号1のバリアント、および/または
iv)1つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアント、からなる。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態では、該1つまたは複数のペプチドは、配列番号1の5個以上の連続アミノ酸からなる断片からなる。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、該1つまたは複数のペプチドは、配列番号1の5、6、7、8または9個の連続アミノ酸からなる断片からなる。
【0078】
本開示のいくつかの実施形態では、該1つまたは複数のペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基からなる。
【0079】
本開示のいくつかの実施形態では、該1つまたは複数のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、または1つのアミノ酸置換を有するバリアントからなる。
【0080】
本開示のいくつかの実施形態では、該1つまたは複数のペプチドは、1つのアミノ酸置換を有する配列番号1のバリアントからなる。
【0081】
本開示のいくつかの実施形態では、該1つまたは複数のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0082】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、化合物は、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである。
【0083】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物に関し、化合物は、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである。
【0084】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための化合物の使用に関し、化合物は、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1つもしくは2つの保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである。
【0085】
本開示の別の実施形態では、C末端アミノ酸は、遊離カルボン酸(「-OH」)として存在する。別の実施形態では、C末端アミノ酸はアミド化誘導体(「-NH-2」)である。別の実施形態では、N末端アミノ酸は、遊離アミノ基(「H-」)を含む。別の実施形態では、N末端アミノ酸は、アセチル化誘導体(「-アセチル」または「COCH3」)である。
【0086】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物はモノマーである。本開示のいくつかの実施形態では、化合物は、本開示による1つのペプチドを含むモノマーである。
【0087】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物はマルチマーである。本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、本開示による少なくとも2つのペプチド、例えば2つ以上のペプチドを含むマルチマーである。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物はマルチマーである。
【0089】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、2つ以上のペプチドを含むマルチマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態では、化合物は、ダイマー、トリマーまたはテトラマーである。
【0091】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、2つのペプチドを含むダイマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、4つのペプチドを含むテトラマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0093】
いくつかの実施形態では、化合物はデンドリマーである。いくつかの実施形態では、デンドリマーは二量体デンドリマーである。いくつかの実施形態では、デンドリマーは四量体デンドリマーである。
【0094】
デンドリマーは、高次の分枝多量体分子である。典型的には、デンドリマーはコアに対して対称であり、しばしば球状の三次元形態をとる。
【0095】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、2つのペプチドを含む二量体デンドリマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0096】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0097】
本開示のいくつかの実施形態では、2つ以上のペプチドは、ペプチド結合を介して連結される。
【0098】
本開示のいくつかの実施形態では、2つ以上のペプチドは、リンカー基を介して連結される。
【0099】
本開示のいくつかの実施形態では、リンカー基は、リジン骨格、例えば1つまたは複数のリジン残基、例えば複数のリジン残基を含むリジン骨格である。
【0100】
本開示のいくつかの実施形態では、リンカー基は1つまたは複数のリジン残基を含む。
【0101】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、2つのペプチドを含む二量体デンドリマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換およびリジン骨格を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0102】
本開示のいくつかの実施形態では、使用するための化合物は、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドは、配列番号1、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換およびリジン骨格を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0103】
本開示のいくつかの実施形態では、ペプチドは、4つのペプチドからなる四量体デンドリマーであり、各ペプチドは、配列番号1およびリジン骨格からなる。
【0104】
本開示の別の実施形態では、リンカー基は、タンパク質担体などのポリマー担体である。
【0105】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の多量体化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、多量体化合物は、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0106】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物に関し、多量体化合物は、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0107】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症を処置するための医薬を製造するための多量体化合物の使用に関し、多量体化合物は、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0108】
本開示のいくつかの実施形態では、多量体化合物はデンドリマーである。
【0109】
本開示のいくつかの実施形態では、多量体化合物は、ダイマー、トリマーまたはテトラマーである。
【0110】
本開示のいくつかの実施形態では、多量体化合物はダイマーである。
【0111】
本開示のいくつかの実施形態では、多量体化合物はテトラマーである。
【0112】
本開示の別の実施形態では、少なくとも2つのペプチドは同一である。
【0113】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の多量体化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む方法に関し、該多量体化合物は4つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0114】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物に関し、該多量体化合物は4つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる。
【0115】
本開示のいくつかの実施形態では、該4つのペプチドは、ペプチド結合を介して連結される。
【0116】
本開示のいくつかの実施形態では、該4つのペプチドは、リンカー基を介して連結される。
【0117】
本開示のいくつかの実施形態では、該リンカー基は、1つまたは複数のリジン残基、例えば複数のリジン残基を含むリジン骨格である。
【0118】
本開示のいくつかの実施形態では、4つのペプチドは同一である。
【0119】
いくつかの実施形態では、4つのペプチドの各々は、本開示に従って定義される。
【0120】
一実施形態によれば、本開示は、糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物に関し、多量体化合物は、
i)IL1RA由来の10~14個の連続アミノ酸残基からなる2つ以上のペプチドであって、各ペプチドが:
a.配列番号1のアミノ酸配列および場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基からなるか;または
b.1つの保存的アミノ酸置換と場合により11~14アミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基とを含む配列番号1のバリアントからなる、ペプチド、および
ii)場合により、1つまたは複数のリンカー基からなる。
【0121】
本開示の別の実施形態では、化合物は医薬組成物として製剤化される。
【0122】
本開示の別の実施形態では、ペプチドまたは化合物は、尿アルブミン対クレアチニン比(ACR)を低下させる。別の実施形態では、ペプチドまたは化合物は、用量依存的に尿アルブミン対クレアチニン比(ACR)を減少させる。
【0123】
本開示の別の実施形態では、ペプチドまたは化合物は、バイオマーカー腎損傷分子(Kidney Injury Molecule)-1(KIM-1)の尿中レベルを低下させる。別の実施形態では、ペプチドまたは化合物は、尿KIM-1対クレアチニン比(KIM-1/CR)を減少させる。別の実施形態では、KIM-1の尿レベルまたは尿KIM-1対クレアチニン比(KIM-1/CR)は、用量依存的に減少する。
【0124】
KIM-1のレベルが、個体からの尿試料などの尿試料中で測定される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0125】
本開示の別の実施形態では、個体は真性糖尿病を有し、30を超えるACRレベルを有し、および/または血圧が上昇している。別の実施形態では、個体は、正常な血圧を有する。別の実施形態では、個体は、I型真性糖尿病またはII型真性糖尿病を有する。
【0126】
本開示の別の実施形態では、個体は、抗糖尿病薬で処置される。別の実施形態では、個体は、降圧薬で処置される。
【0127】
本開示の別の実施形態では、化合物は、有効量の抗糖尿病性化合物および/または降圧性化合物と組み合わせて投与される。別の実施形態では、降圧性化合物は、ACE阻害剤またはアンジオテンシン受容体アンタゴニストである。
【0128】
本開示の別の実施形態では、本方法は、有効量の抗糖尿病性化合物および/または降圧性化合物を個体に投与する工程をさらに含む。
【0129】
本開示の別の実施形態では、抗糖尿病性化合物および/または降圧性化合物は、本開示による化合物を投与するのと同時に、投与する前に、または投与した後に、投与される。
【0130】
項目
1.糖尿病性腎症を処置する方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、該化合物が、インターロイキン-1(IL-1)受容体アンタゴニスト(IL1RA)タンパク質由来のペプチド、またはIL1RAタンパク質由来の該ペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、方法。
【0131】
2.糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、IL-1受容体アンタゴニスト(IL1RA)タンパク質由来のペプチド、またはIL1RAタンパク質由来の該ペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、化合物。
【0132】
3.該IL1RAタンパク質が、配列番号2~5から選択される配列を有する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0133】
4.該化合物が、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質由来の5~35個の隣接アミノ酸残基からなるペプチド、または配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質由来の該ペプチドと少なくとも70%同一であるそのバリアントである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0134】
5.該ペプチドが、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の最大で30個の隣接アミノ酸残基、あるいは最大で25個の隣接アミノ酸残基、あるいは最大で20個の隣接アミノ酸残基、あるいは最大で15個の隣接アミノ酸残基、あるいは10個の隣接アミノ酸残基からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0135】
6.該ペプチドが、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~35個の隣接アミノ酸残基、あるいは5~30個、あるいは5~25個、あるいは5~20個、あるいは5~15個、あるいは10~20個、あるいは8~18個の配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の隣接アミノ酸残基からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0136】
7.該ペプチドが、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の5~35個の隣接アミノ酸残基、例えば5~6個、例えば6~7個、例えば7~8個、例えば8~9個、例えば9~10個、例えば10~11個、例えば11~12個、例えば12~13個、例えば13~14個、例えば14~15個、例えば15~20個、例えば20~25個、例えば25~30個、例えば30~35個の配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の連続したアミノ酸残基からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0137】
8.該バリアントが、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の該ペプチドと少なくとも75%、あるいは80%、あるいは85%、あるいは90%、あるいは95%同一である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0138】
9.該バリアントが、配列番号2~5から選択されるIL1RAタンパク質配列由来の該ペプチドと少なくとも71~80%同一であり、あるいは81~85%同一であり、あるいは86~90%同一であり、あるいは91~95%同一であり、例えば96~99%同一である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0139】
10.該IL1RAタンパク質が、配列番号2~4から選択される配列を有する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0140】
11.該ペプチドが、少なくともアミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0141】
12.該ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0142】
13.有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含む、糖尿病性腎症の処置方法であって、該化合物が、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる、方法。
【0143】
14.糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基を含む配列番号1のバリアントからなる、化合物。
【0144】
15.糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、該化合物が、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、方法。
【0145】
16.糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、1つまたは複数のペプチドを含み、各ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、化合物。
【0146】
17.該ペプチドが、IL-1受容体1型(ILR1)に結合し、および/またはIL-1βのIL1R1への結合を妨害する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0147】
18.該バリアントが1つまたは2つのアミノ酸置換を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0148】
19.該バリアントが1つのアミノ酸置換を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0149】
20.該1つまたは複数のアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0150】
21.該1つまたは複数のペプチドが、配列番号1の5個以上の連続アミノ酸からなる断片からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0151】
22.該1つまたは複数のペプチドが、配列番号1の5、6、7、8または9個の連続アミノ酸からなる断片からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0152】
23.該1つまたは複数のペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、および場合により11~20個までのアミノ酸残基、例えば11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸残基の全長までの追加のアミノ酸残基からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0153】
24.該1つまたは複数のペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列、または1つのアミノ酸置換を有するバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0154】
25.該1つまたは複数のペプチドが、1つのアミノ酸置換を有する配列番号1のバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0155】
26.該1つまたは複数のペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0156】
27.糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、該化合物が、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1、2もしくは3個の保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである、方法。
【0157】
28.糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、配列番号1(SGRKSSKMQA)のアミノ酸配列;または1、2もしくは3個の保存的アミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなるペプチドである、化合物。
【0158】
29.該ペプチドが、IL-1受容体1型(ILR1)に結合し、および/またはIL-1βのIL1R1への結合を妨害する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0159】
30.該バリアントが1つまたは2つのアミノ酸置換を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0160】
31.該バリアントが1つのアミノ酸置換を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0161】
32.該1つまたは複数のアミノ酸置換が保存的アミノ酸置換である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0162】
33.該ペプチドのC末端アミノ酸が遊離カルボン酸(「-OH」)として存在する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0163】
34.該ペプチドのC末端アミノ酸がアミド化誘導体(「-NH-2」)である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0164】
35.該ペプチドのN末端アミノ酸が遊離アミノ基(「H-」)を含む、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0165】
36.該ペプチドのN末端アミノ酸がアセチル化誘導体(「-アセチル」または「COCH3」)である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0166】
37.該化合物が、モノマー、例えば1つのペプチドを含むモノマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0167】
38.該化合物が、マルチマー、例えば2つ以上のペプチドを含むマルチマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0168】
39.該化合物がダイマー、トリマーまたはテトラマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0169】
40.該化合物が、2つのペプチドを含むダイマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0170】
41.該化合物が、4つのペプチドを含むテトラマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0171】
42.該化合物がデンドリマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0172】
43.該デンドリマーが二量体デンドリマーまたは四量体デンドリマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0173】
44.該化合物が、2つのペプチドを含む二量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0174】
45.該化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含むそのバリアントからなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0175】
46.該2つまたは複数のペプチドが、ペプチド結合を介して連結されている、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0176】
47.該2つまたは複数のペプチドが、1つまたは複数のリンカー基などのリンカー基を介して連結されている、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0177】
48.該リンカー基が、1つまたは複数のリジン残基、例えば複数のリジン残基を含むリジン骨格である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0178】
49.該ペプチドが、4つのペプチドからなる四量体デンドリマーであり、各ペプチドは、配列番号1およびリジン骨格からなる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0179】
50.該リンカー基が、タンパク質担体などのポリマー担体である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0180】
51.糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の多量体化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、該多量体化合物が、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、方法。
【0181】
52.糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物であって、少なくとも2つのペプチドを含み、各ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、化合物。
【0182】
53.該多量体化合物がダイマー、トリマーまたはテトラマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための多量体化合物。
【0183】
54.該多量体化合物がテトラマーである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための多量体化合物。
【0184】
55.該少なくとも2つのペプチドが同一である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための多量体化合物。
【0185】
56.糖尿病性腎症の処置方法であって、有効量の多量体化合物を、それを必要とする個体に投与することを含み、該多量体化合物が4つのペプチドを含み、各ペプチドは、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、方法。
【0186】
57.糖尿病性腎症の処置に使用するための多量体化合物であって、4つのペプチドを含み、各ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1、2もしくは3個のアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、化合物。
【0187】
58.該4つのペプチドが、ペプチド結合を介して連結されている、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0188】
59.該4つのペプチドが、リンカー基を介して連結されている、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0189】
60.該リンカー基が、1つまたは複数のリジン残基、例えば複数のリジン残基を含むリジン骨格である、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0190】
61.該少なくとも2つのペプチドまたは該4つのペプチドが、先行する項目のいずれか1つにおいて定義される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための多量体化合物。
【0191】
62.該化合物が医薬組成物として製剤化される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0192】
63.該ペプチドまたは該化合物が、尿アルブミン対クレアチニン比(ACR)を低下させる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0193】
64.該ペプチドまたは該化合物が、用量依存的に尿アルブミン対クレアチニン比(ACR)を低下させる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0194】
65.該ペプチドまたは該化合物が、バイオマーカー腎損傷分子(Kidney Injury Molecule)-1(KIM-1)の尿中レベルを低下させる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0195】
66.該ペプチドまたは該化合物が、尿KIM-1対クレアチニン比(KIM-1/CR)を低下させる、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0196】
67.KIM-1の尿中レベルまたは尿KIM-1対クレアチニン比(KIM-1/CR)が用量依存的に減少する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0197】
68.KIM-1のレベルが、該個体からの尿試料などの尿試料中で測定される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0198】
69.該個体が真性糖尿病を有しており、30を超えるACRレベルを有しており、および/または血圧が上昇している、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0199】
70.該個体が正常血圧を有する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0200】
71.該個体がI型真性糖尿病またはII型真性糖尿病を有する、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0201】
72.該個体が抗糖尿病薬で処置される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0202】
73.該個体が降圧薬で処置される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0203】
74.該化合物が、有効量の抗糖尿病性化合物および/または降圧性化合物と組み合わせて投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0204】
75.該降圧性化合物がACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体アンタゴニストである、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【0205】
76.有効量の抗糖尿病性化合物および/または降圧性化合物を該個体に投与する工程をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
【0206】
77.該抗糖尿病性化合物および/または該降圧性化合物が、先行する項目のいずれかに記載の化合物を投与するのと同時に、投与する前に、または投与した後に、投与される、先行する項目のいずれかに記載の方法または使用するための化合物。
【実施例
【0207】
実施例1:糖尿病性腎症のIL1RA由来ペプチドomマーカーの効果
【0208】
材料および方法
動物
56匹の雌マウス(BKS.Cg-Dock7m+/+Lepradb/db BLKS、5週齢)をGubra Researchの動物ユニットに移した。動物は、
一側性腎摘出までは集団飼育、その後は単独飼育とした。馴化期間および研究期間を通して、動物は、光、温度および湿度が制御された部屋におり、食物および水を自由に入手可能であった。すべての動物実験は、実験動物の管理および使用のための国際的に受け入れられている原則に完全に準拠しているGubraの生命倫理学ガイドラインに従って行われた。
【0209】
動物を77日目に屠殺した。その後の分析のために血液を採取し、体重を記録し、スポット尿を回収した。
【0210】
化合物
SER140は、デンマーク、コペンハーゲンのPhlogo ApSによって提供された(異なる用量製剤に希釈された10mg/mlのmiliQ水)。SER140は、それぞれ配列SGRKSSKMQA(配列番号1)を有する4つの単量体ペプチドで構成され、リジン骨格に結合したデンドリマーである。ビヒクルは、miliQ:PBS 1:5であった。
【0211】
インビボ手順
1週間の順化後、マウスにレニンアデノシン関連ウイルス(AAV)のIV注射を行った。1週間後、全てのマウスを一側性腎摘出した。レニンAAVのiv注射の2週間後、マウスを血糖に従って、ビヒクル群(n=14)、3mg/kg SER140群、10mg/kg SER140群および20mg/kg SER140群の4つの群に無作為に分けた。化合物およびビヒクルを1日1回皮下投与した。
【0212】
生化学分析
全ての血液試料をヘパリン処理チューブ内でマウス尾部から採取し、血漿を分離し、分析までマイナス80Cで保存した。BIOSEN cライングルコースメーター(EKF-diagnostics、ドイツ)を用いて非絶食BG(血糖)を測定し、HbA1c分析用の血液を直ちに溶血試薬に懸濁し、市販のキット(Roche Diagnostics、ドイツ)を用いた自動分析装置Cobas C-111、市販のキット(Roche Diagnostics)を用いた血漿尿素を用いて分析するまで保存した。
【0213】
尿試料を分析までマイナス80Cで保存した。アルブミンおよびクレアチニンを測定するための尿を2000gで2分間遠心分離した後、分析し、製造業者の指示に従って市販のELISAキット(Bethyl Laboratories,Inc.)を使用して尿アルブミンを測定し、製造業者の指示に従ってCobas c 501自動分析装置で市販のキット(Roche Diagnostics)を使用して尿クレアチニンを測定した。製造業者の指示に従って、市販のELISAキット(R&D Systems)を使用して尿KIM-1を測定した。
【0214】
結果
試験化合物SER140は、ACRmg/g(図1)およびKIM-1/CRpg/g(図2)を用量依存的に有意に減少させた。
【0215】
ビヒクルとSER140処置との間でHbA1c%の変化はなかったことから、ACRおよびKIM-1に対するSER140の効果は、HbA1cに対する効果を介して媒介されないことが示された。
【0216】
考察
レニンAAV UNx db/dbマウスは、糖尿病性腎疾患(DKD、糖尿病性腎症)の発症を説明し、疾患の進行に対する化合物の影響を解明するための最良の薬理学的モデルの1つとして記載されている(Nguyen 2019、Sembach 2020)。最近の研究は、免疫系の活性化および免疫恒常性の不均衡が糖尿病性腎症の発症および進行において重要な役割を果たすことを示している。
【0217】
IL-1サイトカインが3つの異なる形態、すなわち、Il-1α、Il-1β(両方ともIL-1受容体アゴニストである)、および天然のIl-1受容体アンタゴニストであるIL-1Raからなることは周知である。すべて、同じIL-1R1受容体に対するリガンドである。Il-1αおよびIl-1βはどちらも炎症促進性サイトカインであり、下流で活性化しているが、IL-1Raは活性化せずにIL-1R1受容体に結合し、したがって受容体アンタゴニストとして作用し、様々なIl-1関連の免疫応答および炎症応答を調節する(Arend 2000、Dinarello 2012、Park 2015)。
【0218】
尿アルブミンおよびKIM-1は両方とも、腎臓が関与する様々な自己免疫疾患で見られる腎臓先天性炎症のバイオマーカーである。ヒト腎生検により、糖尿病性腎症の全ての段階で糸球体、尿細管および間質の両方に炎症細胞が存在することが確認されている(Kahn 2019,Calle 2021)。
【0219】
SER140は、IL-1R1との相互作用に関与するヒトIL-1RA N末端ドメイン由来のペプチドである。SER140は、IL-1βの受容体結合を阻害し、したがって、とりわけTNFαのマクロファージ遊離の下流活性化を減少させることが示されている(Klementiev 2014)。
【0220】
SER140は、主に糸球体内皮および足細胞の細胞損傷のバイオマーカーである尿アルブミンと、近位尿細管の頂端膜の損傷のバイオマーカーであるKIM-1の両方を有意に減少させたことが本明細書で示されている。これらのバイオマーカーは、正常な腎臓を有する患者の尿では検出不能であるが、検出可能なのは、糖尿病を含む虚血性または毒性傷害に対する応答である(Alderson 2016,Treacy 2019)。
【0221】
配列の概要
【化1】
【0222】
参照
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●Cem Gabay, Celine Lamacchia, Gaby Palmer: IL-1 pathways in inflammation and human diseases. Review Nat Rev Rheumatol. 2010 Apr;6(4):232-41.
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●Giulio Cavalli et al: Interleukin 1α: a comprehensive review on the role of IL-1α in the pathogenesis and treatment of autoimmune and inflammatory diseases. Review Autoimmun Rev. 2021 Mar;20(3).
●Helen V. Alderson et al: The Associations of Blood Kidney Injury Molecule-1 and Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin with Progression from CKD to ESRD. Clin J Am Soc Nephrol. 2016 Dec 7; 11(12): 2141-2149.
●Isabel Nguyen, Arianne van Koppen, and Jaap A. Joles: Animal Models of Diabetic Kidney Disease.
●Jieru Cai: Kidney injury molecule-1 expression predicts structural damage and outcome in histological acute tubular injury. Ren Fail. 2019 Nov;41(1):80-87.
●Maki Murakoshi 1, Tomohito Gohda 1, Yusuke Suzuki 1: Circulating Tumor Necrosis Factor Receptors: A Potential Biomarker for the Progression of Diabetic Kidney Disease. Review Int J Mol Sci. 2020 Mar 13;21(6):1957.
●Oliver Treacy, Nigel N. Brown, and Goce Dimeski: Biochemical evaluation of kidney disease. Transl Androl Urol. 2019 May; 8(Suppl 2): S214-S223.
●Priscila Calle and Georgina Hotter: Macrophage Phenotype and Fibrosis in Diabetic Nephropathy. Int J Mol Sci. 2020 Apr; 21(8): 2806.
●Steven G. Coca, Girish N. Nadkarni, Yuan Huang, Dennis G. Moledina, Veena Rao, Jane Zhang, Bart Ferket, Susan T. Crowley, Linda F. Fried and Chirag R. Parikh: Plasma Biomarkers and Kidney Function Decline in Early and Established Diabetic Kidney Disease. JASN September 2017, 28 (9) 2786-2793.
●W. Arend and C. Guthridge: Biological role of interleukin 1 receptor antagonist isoforms. Ann Rheum Dis. 2000 Nov; 59(Suppl 1).
図1
図2
【配列表】
2024525669000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性腎症の処置に使用するための化合物であって、前記化合物が、少なくとも2つのペプチドを含むマルチマーであり、前記ペプチドが、少なくともアミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントを含む、化合物。
【請求項2】
前記ペプチドが、アミノ酸配列SGRKSSKMQA(配列番号1)、または1つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項に記載の使用するための化合物。
【請求項3】
配列番号1の前記バリアントが1つの保存的アミノ酸置換を含む、請求項1または2に記載の使用するための化合物。
【請求項4】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1つのアミノ酸置換を含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項5】
前記化合物が、4つのペプチドを含む四量体デンドリマーであり、各ペプチドが、配列番号1からなるか、または1つのアミノ酸置換を含みリジン骨格をさらに含む配列番号1のバリアントからなる、請求項1からのいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【国際調査報告】