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特表2024-525673表面反応炭酸カルシウム触媒を用いたアルコールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】表面反応炭酸カルシウム触媒を用いたアルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/34 20060101AFI20240705BHJP
   C07C 31/12 20060101ALI20240705BHJP
   B01J 35/40 20240101ALI20240705BHJP
   B01J 27/232 20060101ALI20240705BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C07C29/34
C07C31/12
B01J35/40
B01J27/232 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501224
(86)(22)【出願日】2022-07-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2022068503
(87)【国際公開番号】W WO2023285198
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21185121.7
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ヤーマル フトウニ
(72)【発明者】
【氏名】ヨゼ タルン
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル セー.アー.ブラーンインクス
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA21C
4G169BA42A
4G169BA42C
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BB14C
4G169BB16A
4G169BB16B
4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC04C
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BE08C
4G169CB25
4G169CB46
4G169CB59
4G169CB62
4G169CB70
4G169DA06
4G169EB17Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC07Y
4G169EC08Y
4G169EC29
4G169FA01
4G169FB14
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC23
4H006BA06
4H006BA32
4H006BA66
4H006BC10
4H006BC13
4H006FE11
4H039CA12
4H039CL25
(57)【要約】
本発明の方法は、下記の工程を含む:(a)少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコールを提供すること、(b)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従ったBET法を使用して測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する、(c)アルコールを気化させること、(d)触媒としての表面反応炭酸カルシウムの存在下で、気化アルコールを反応させること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む、気相でのゲルベ自己縮合反応によってアルコールを製造する方法:
(a)少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコールを提供すること;
(b)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する;
(c)工程(a)で提供されたアルコールを気化させること;
(d)工程(c)で得られた気化アルコールを、工程(b)で提供された触媒としての表面反応炭酸カルシウムの存在下で反応させること。
【請求項2】
工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールが、200℃未満、好ましくは175℃未満、より好ましくは145℃未満、最も好ましくは125℃未満の沸点を有する、請求項1に記載の工程。
【請求項3】
工程(a)で提供されるアルコールが、第一級アルコールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールが、分岐鎖又は直鎖C~C12アルキル鎖、好ましくは分岐鎖又は直鎖C~Cアルキル鎖を有する第一級又は第二級アルコールであるか、又は
工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールが、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ブタノール、及び3-ペンタノールからなる群から選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムが、1.0~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましくは10~30μmのトップカット(d98)値を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムが、BET法で測定したときに、15~200m/g、好ましくは27~180m/g、より好ましくは30~180m/g、さらにより好ましくは45~180m/g、最も好ましくは120~180m/gの比表面積(BET)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)において提供される前記表面反応炭酸カルシウムが、水銀ポロシメトリー測定から計算したときに、0.10~2.3cm/g、より好ましくは0.20~2.0cm/g、さらにより好ましくは0.40~1.8cm/g、最も好ましくは0.70~1.6cm/gの粒子内浸入比細孔体積を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1又は複数のHイオン供与体が、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酸性塩、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、HPO からなる群から選択され、対応するカチオン、例えばLi、Na又はK、HPO 2-によって少なくとも部分的に中和され、対応するカチオン、例えばLi、Na又はK、Mg2+、又はCa2+、及びそれらの混合物によって少なくとも部分的に中和され、より好ましくは塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは1又は複数のHイオン供与体がリン酸である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、前記1又は複数のHイオン供与体が、リン酸であり、かつ前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体処理によってその場で形成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムが、温度プログラムされた二酸化炭素脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総塩基サイト数を有し、かつ/又は温度プログラムされたアンモニア脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総酸サイト数を有し、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面反応炭酸カルシウムが、工程(d)の前に、100~500℃、好ましくは300~475℃の範囲の温度で乾燥され、かつ/又は、工程(d)で使用される前記表面反応炭酸カルシウムが、前記表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の残存総水分含有量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で得られた気化アルコールが、少なくとも2体積%、好ましくは10~80体積%、より好ましくは10~55体積%、最も好ましくは10~40体積%の量で、気体供給流中に存在し、かつ/又は工程(c)で得られた気化アルコールが、ヘリウム、窒素、アルゴン、水素、及びこれらの混合物からなる群から選択されるキャリアガス、好ましくは窒素と混合される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)を、150~500℃、好ましくは150~475℃、より好ましくは250~475℃、最も好ましくは375~475℃の範囲の反応温度で実施する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
気相中でのゲルベ自己縮合反応のための触媒としての、表面反応炭酸カルシウムの使用、好ましくは請求項5~10のいずれか一項に記載の表面反応炭酸カルシウムの使用であって、前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ前記表面反応炭酸カルシウムが、これは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を使用して測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する、使用。
【請求項15】
前記ゲルベ自己縮合反応が、請求項1~4のいずれか一項に記載の第一級又は第二級アルコールの反応である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相中でのゲルベ(Guerbet)自己縮合反応によるアルコールの製造方法に関する。さらに、本発明は、気相におけるゲルベ自己縮合反応のための触媒としての表面反応炭酸カルシウムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の存在下でのアルコールの二量化アルコール又はより高次のアルコールへの自己縮合は、当該技術分野においてゲルベ反応としても知られており、比較的単純で安価なアルコールをより価値のある生成物に変換するための魅力的なプロセスである。
【0003】
異なる均一系触媒、不均一系触媒、又はそれらの組み合わせが、ゲルベ反応を触媒するために当技術分野で公知である。例えば、ゲルベ反応は、パラジウム、白金、イリジウム、銅、ニッケル、ルテニウム、コバルトなどに基づく遷移金属触媒によって触媒され得ることが知られている。遷移金属触媒の一般的な欠点は、それらが通常、比較的高価であり、場合によっては、困難な合成を伴うことである。加えて、ゲルベ反応のための公知の触媒系はしばしば、効率的に作用するための共触媒を必要とし、これは、反応制御を複雑にし得る。さらに、均一系触媒は、液相反応においてのみ適用可能である。しかしながら、多くの場合、気相反応は例えば、廃棄物を減らすため、又は生成物流の精製を単純化するために、液相反応よりも好ましい。
【0004】
不均一アルカリ土類触媒は、気相又は蒸気相ゲルベ反応に有用であり、他の触媒系に関連する上述の欠点の一部を回避することができる。しかしながら、既知の不均一アルカリ土類金属触媒はしばしば、アルコール基質のかなり低い転化率を提供し、生成物選択性及びその収率の点で制限される。さらに、いくつかの既知の不均一アルカリ土類金属触媒、例えばヒドロキシルアパタイト(HAP)触媒は、比較的複雑なゾル-ゲル法によって調製されなければならず、それは、それらをかなり高価にする可能性があり、またそれらの用途をビジネスの観点から魅力的でないものにし得る。
【0005】
本発明の目的は、気相におけるゲルベ自己縮合反応によってアルコールを調製するための代替的な又は改良された方法を提供することである。本発明の別の目的は、気相中でのゲルベ自己縮合反応に有用な、代替的な又は改良された触媒を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、独立請求項に記載の方法及び使用によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本発明は、気相中でのゲルベ自己縮合反応によってアルコールを調製する方法を提供する。
【0008】
本発明による方法は下記の工程を含む:
(a)少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコールを提供すること;
(b)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する;
(c)工程(a)で提供されたアルコールを気化させること;
(d)工程(c)で得られた気化アルコールを、触媒としての工程(b)で提供された表面反応炭酸カルシウムの存在下で反応させること。
【0009】
別の態様では、本発明は、気相におけるゲルベ自己縮合反応のための触媒としての、表面反応炭酸カルシウムの使用に関する。ここで、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を使用して測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する。
【0010】
本発明者らは、予想外にも、本明細書に記載の特定の比表面反応炭酸カルシウムが、気相でアルコールを自己縮合させるための触媒として有用であることを見出した。触媒として特定の表面反応炭酸カルシウムを使用する方法は、同じ目的のための既知のアルカリ土類金属触媒と比較して、同等の又はより良好な結果(転化率、選択性、安定性)を提供する。
【0011】
この方法は、助触媒を必要としない。さらに、表面反応炭酸カルシウムは、本明細書に記載されるように、粉砕天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムを表面反応させることによって得ることができ、したがって、容易に入手可能で比較的安価な出発材料から得ることができる。
【0012】
本発明の好ましい態様は、従属請求項において定義される。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールは、200℃未満、好ましくは175℃未満、より好ましくは145℃未満、最も好ましくは125℃未満の沸点を有する。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、工程(a)で提供されるアルコールは第一級アルコールである。
【0015】
本発明の1つの態様によれば、工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールは、分岐鎖又は直鎖のC~C12アルキル鎖、好ましくは分岐鎖又は直鎖C~Cアルキル鎖を有する第一級又は第二級アルコールであり、又は工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールは、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ブタノール、及び3-ペンタノールからなる群から選択される。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、1.0~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましくは10~30μmのトップカット(d98)を有する。
【0017】
本発明の1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、BET法によって測定したときに、15~200m/g、好ましくは27~180m/g、より好ましくは30~180m/g、さらにより好ましくは45~180m/g、最も好ましくは120~180m/gの比表面積(BET)を有する。
【0018】
本発明の1つの態様によれば、工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算したときに、0.10~2.3cm/g、より好ましくは0.20~2.0cm/g、さらにより好ましくは0.40~1.8cm/g、最も好ましくは0.70~1.6cm/gの粒子内浸入比気孔体積を有する。
【0019】
本発明の1つの態様によれば、1又は複数のHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酸性塩、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、HPO からなる群から選択され、対応するカチオン、例えばLi、Na又はK、HPO 2-によって少なくとも部分的に中和され、対応するカチオン、例えばLi、Na、K、Mg2+、又はCa2+及びそれらの混合物によって少なくとも部分的に中和され、より好ましくは塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは1又は複数のHイオン供与体はリン酸である。
【0020】
本発明の1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、1又は複数のHイオン供与体は、リン酸であり、かつ二酸化炭素は、Hイオン供与体の処理によってその場で形成される。
【0021】
本発明の1つの態様によれば、工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、温度プログラム二酸化炭素脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総塩基サイト数を有し、かつ/又は温度プログラム二酸化炭素脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総酸サイト数を有し、アンモニアによる温度プログラムされた脱着によって決定される。
【0022】
本発明の1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、工程(d)の前に、100~500℃、好ましくは300~475℃の範囲の温度で乾燥され、かつ/又は工程(d)において使用される表面反応炭酸カルシウムは、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の残存総水分含有量を有する。
【0023】
本発明の1つの態様によれば、工程(c)で得られた気化アルコールは、少なくとも2体積%、好ましくは10~80体積%、より好ましくは10~55体積%、最も好ましくは10~40体積%の量で、気体供給流中に存在し、かつ/又は工程(c)で得られた気化アルコールは、ヘリウム、窒素、アルゴン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるキャリアガス、好ましくは窒素と混合される。
【0024】
本発明の1つの態様によれば、工程(d)は、150~500℃、好ましくは150~475℃、より好ましくは250~475℃、最も好ましくは375~475℃の範囲の反応温度で実施される。
【0025】
本発明の1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、本明細書で定義される第一級又は第二級アルコールのゲルベ自己縮合反応において使用される。
【0026】
本発明に関して、以下の用語は以下の意味を有する。
【0027】
「β-水素」は、本発明による方法の工程(a)で提供されるアルコール(又は本発明による使用のために提供されるアルコール)のヒドロキシ基(-OH)のβ位の炭素原子に結合した水素原子である。ヒドロキシ基に対するβ位の炭素原子は、ヒドロキシ基に結合している炭素原子(α位)に直接に結合している炭素原子を指す。エタノールの場合、β位は以下のように示すことができる:
【化1】
【0028】
「ゲルベ自己縮合反応」は、1つの水分子の放出を伴う2つの同じアルコール分子(例えば、同じ第一級又は第二級アルコールの2つの分子)の縮合反応であり、これは、2つのアルコール分子の炭素原子の合計を含むアルコール生成物をもたらす。例えば、エタノール(Cアルコール)のゲルベ自己縮合反応は、n-ブタノール(Cアルコール)をもたらす。
【0029】
アルコールのゲルベ自己縮合反応は、当該技術分野において周知である。同じ第一級又は第二級アルコール基剤の2つの分子が、それぞれ最初に脱水素化を受けて、それぞれ2つのアルデヒド又はケトンを提供し、これらが次いでアルドール縮合を受けて、α、β-不飽和アルデヒド又はケトンを形成するという点で、反応が段階的に進行することが、現在、当該技術分野において信じられている。次いで、α、β-不飽和アルデヒド又はケトンを完全に水素化して、最終的なアルコール生成物をもたらす。ゲルベ自己縮合の反応メカニズムの技術分野における現在の理解は、例示の目的のためにのみ本明細書に含まれており、本発明による方法をいかなる様式でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0030】
当業者によって容易に理解されるように、本明細書で定義される「少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコール」は、エノール化可能なアルデヒド又はケトンに脱水素化され得る。エノール化可能なアルデヒド又はケトンは、次いで、アルドール縮合において反応し得る。
【0031】
「気相反応」又は「気相における反応」は、随意に非反応性キャリアガス(例えば、窒素)中に希釈されている、気体反応体、例えば、本明細書に定義される第一級又は第二級アルコールを含む化学反応として理解されるべきである。
【0032】
本発明による「表面反応炭酸カルシウム」は、天然粉砕炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)を二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体で処理した反応生成物であり、ここで、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成される。本発明に関してHイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸塩である。用語「天然粉砕炭酸カルシウム」及び「粉砕天然炭酸カルシウム」は、本明細書において互換的に使用され、同じ材料を指す。
【0033】
本明細書を通して、官能化炭酸カルシウム又は他の物質を定義するために使用される「比表面積」(「SSA」、m/g)という語は、ISO 9277:2010に従って、BET法(吸着ガスとして窒素を使用)を使用することによって決定される比表面積を指す。
【0034】
本明細書における表面反応炭酸カルシウムの「粒径」は、体積基準の粒径分布d(体積)として記載される。ここで、値d(体積)は、x体積%がd(体積)未満の直径を有する直径を表す。これは、例えば、d20(体積)は、全ての粒子の20体積%がその粒径よりも小さい粒径であることを意味している。したがって、d50(体積)値は、体積メジアン粒径、すなわち、すべての粒子の50体積%はその粒径よりも小さい粒子径であり、かつ体積基準トップカットと呼ばれるd98(体積)値は、すべての粒子の98体積%がその粒径よりも小さい粒径である。体積基準の粒径分布d(体積)は、レーザ回折によって決定することができる。
【0035】
体積メジアン粒径d50は、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折装置を用いて評価した。Malvern Mastersizer 3000レーザー回折装置を用いて測定したd50又はd98値は、それぞれ粒子の50体積%又は98体積%がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データは、粒子屈折率1.57及び吸収率0.005として、ミー(Mie)理論を使用して分析される。
【0036】
本発明の目的のために、「気孔率」又は「気孔体積」は、粒子内圧入比気孔体積を指す。
【0037】
本発明の文脈において、用語「気孔」は、粒子間及び/又は粒子内に見出される空間、すなわち、それらが最近傍接触条件で、例えば粉末若しくは成形体中で、一緒に充填されるときに粒子によって形成される空間(粒子間気孔)、及び/又は多孔質粒子内の空隙空間(粒子内気孔)を説明するものと理解され、これは、液体によって飽和されたときに圧力下で液体の通過を可能にし、かつ/又は表面湿潤性液体の吸収を支持する。
【0038】
比気孔体積は、ラプラスススロート直径0.004μmに相当する水銀圧414MPa(60,000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリー測定を使用して測定される。各圧力工程で使用される平衡化時間は20秒である。試料物質は、分析のために、3つの3cm粉末ペネトロメータ中に封入される。データは、ソフトウェアPore-Comp(Gane、P.A.C.、Kettle、J.P.、Matthews、G.Pand Ridgway、C.J.、「Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations」、Industrial and Engineering Chemistry Research、1996、35(5)、1753~1764)を使用して、水銀圧縮、ペネトロメータ膨張、及びサンプル材料弾性圧縮に関して補正される。
【0039】
累積圧入データに見られる全気孔体積は、214μmから約1~4μmまでの圧入データを有する2つの領域に分離され、これは、任意の凝集構造間の試料の粗粒充填が強く寄与することを示す。これらの直径より下には、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。それらが粒子内気孔も有する場合、この領域は二峰性に見え、水銀によって圧入される比気孔体積を、モード転換点よりも細かい気孔、すなわち二峰性変曲点よりも細かい気孔にすることによって、比粒子内気孔体積を定義する。これらの3つの領域の合計は、粉末の全気孔体積を与えるが、元の試料の圧縮/分布の粗気孔端における粉末の沈降に強く依存する。
【0040】
累積圧入曲線の一次導関数を取ることにより、不可避的に気孔遮蔽を含む等価ラプラス直径に基づく気孔径分布が明らかになる。微分曲線は、存在する場合、粗い凝集気孔構造領域、粒子間気孔領域、及び粒子内気孔領域を明確に示す。粒子内気孔直径の範囲を知ると、総気孔体積から残りの粒子間気孔体積及び凝集体間気孔体積を差し引いて、単位質量あたりの気孔体積(比気孔体積)に関して、内部気孔のみの所望の気孔体積を導くことが可能である。もちろん、減算の同じ原理は、関心のある他の気孔径領域のいずれかを単離するために適用される。
【0041】
本発明の意味における「乾燥」材料(例えば、乾燥表面反応炭酸カルシウム)は、特に明記しない限り、乾燥材料の総重量に基づいて、5.0重量%又はそれ未満、好ましくは0.75重量%又はそれ未満、より好ましくは0.5重量%又はそれ未満、さらにより好ましくは0.2重量%又はそれ未満、最も好ましくは0.02~0.07重量%である総水分含有量又は残留水分含有量を有する。
【0042】
「塩基サイトの総数」は、固体材料の塩基性度の尺度であり、特定の量の固体材料の塩基サイトに吸着され得る二酸化炭素の総モル量によって表され、本明細書に記載されるように、二酸化炭素による温度プログラム脱着によって決定される。
【0043】
「酸サイトの総数」は、固体材料の酸性度の尺度であり、特定の量の固体材料の酸サイトに吸着され得るアンモニアの総モル量によって表され、本明細書に記載されるように、アンモニアによる温度プログラム脱着によって決定される。
【0044】
用語「含む(comprising)」が本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、それは、主要又は軽微な機能的重要性を有する他の特定されていない要素を排除しない。本発明の目的に関して、用語「から本質的になる」及び「からなる」は、用語「を含む」の特定の態様であると考えられる。以下において、群が少なくとも特定の数の態様を含むと定義される場合、これはまた、随意に、これらの態様のみから本質的になるか、又はこれらの態様のみからなる群を開示すると理解されるべきである。
【0045】
用語「含む(including)」又は「有する(having)」が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上記で定義された「含む(comprising)」と等価であることを意味する。
【0046】
単数名詞、例えば、「a」、「an」又は「the」に言及する場合には、不定冠詞又は定冠詞が使用され、これは、他に何か具体的に述べられていない限り、その名詞の複数形を含む。
【0047】
「入手可能」又は「定義可能」及び「得られる」又は「定義される」などの用語は、互換的に使用される。このことは、例えば、文脈上明らかに別段の指示がない限り、用語「得られる」は、例えば、そのような限定的な理解が好ましい態様として用語「得られる」又は「定義される」によって必ず含まれるとしても、例えば、用語「得られる」を修飾する一連の工程によってある態様が取得されなければならないということを示すことを意味しないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の方法
本発明の1つの態様は、気相におけるゲルベ自己縮合反応によってアルコールを調製する方法に関する。
【0049】
この方法は、以下の工程を含む:
(a)少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコールを提供すること;
(b)表面反応炭酸カルシウムを提供すること、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を用いて測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する;
(c)工程(a)で提供されたアルコールを気化させること;
(d)工程(c)で得られた気化アルコールを、工程(b)で提供された触媒としての表面反応炭酸カルシウムの存在下で、反応させる工程。
【0050】
《工程(a)》
この方法は、少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコールを提供する工程(a)を含む。
【0051】
第一級又は第二級アルコールは、少なくとも1つのβ-水素を有する。当業者によって理解されるように、β-水素の総数は、工程(a)において提供されるアルコールの構造に依存する。第一級アルコールが工程(a)で提供される場合、アルコールは、アルコールのβ-炭素原子上の置換パターンに応じて1~3個のβ-水素を有することができる。例えば、エタノールは3個のβ-水素を有し、n-プロパノールは2個のβ-水素を有し、2-メチル-1-プロパノールは1個のβ-水素を有する。好ましい態様において、アルコールは、2個又は3個のβ-水素を有する第一級アルコールである。
【0052】
第二級アルコールが工程(a)において提供される場合、アルコールは2個のβ-炭素原子を有し、したがって、1~6個のβ-水素を有することができる(β-炭素原子上の置換基に依存する)。好ましい態様において、アルコールは、2個又は3個のβ-水素を有する少なくとも1個のβ-炭素原子を有する第二級アルコールである。
【0053】
好ましい1つの態様によれば、工程(a)で提供される第一級又は第二級アルコールは、蒸発時に本質的に分解しない(又は分解しない)アルコールである。
【0054】
第一級又は第二級アルコールは、所定の点を有することができる。例えば、アルコールは、300℃未満、例えば60~300℃の範囲の沸点を有し得る。アルコールの沸点は、200℃未満、好ましくは175℃未満、より好ましくは145℃未満、最も好ましくは125℃未満であることが好ましい。第一級又は第二級アルコールの沸点は、60~145℃の範囲又は60~125℃の範囲であることが特に好ましい。
【0055】
好ましい1つの態様によれば、工程(a)で提供されるアルコールは、200℃未満(例えば、60~200℃の範囲)、好ましくは175℃未満、より好ましくは145℃未満、最も好ましくは125℃未満の沸点を有する第一級アルコールである。
【0056】
アルコールは、第一級又は第二級アルコールであり得る。1つの態様では、アルコールは第二級アルコールである。別の態様では、アルコールは第一級アルコールである。アルコールは第一級アルコールであることが好ましい。
【0057】
第一級又は第二級アルコールは、分岐アルキル鎖(例えば、2-メチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール)、直鎖アルキル鎖(例えば、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、2-プロパノール、2-ブタノール)、又は環状アルキル鎖(例えば、シクロペンタノール)を有するアルコールであり得る。第一級又は第二級アルコールは、分岐アルキル鎖(例えば、2-メチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール)、直鎖アルキル鎖(例えば、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、2-プロパノール、2-ブタノール)、又は環状アルキル鎖を有するアルコールであり得る。
【0058】
好ましくは、第一級又は第二級アルコールは、分岐C~C12アルキル鎖、より好ましくは分岐C~Cアルキル鎖、又は直鎖C~C12アルキル鎖、より好ましくは直鎖C~Cアルキル鎖を有するアルコールである。
【0059】
好ましい態様において、第一級又は第二級アルコールは、直鎖アルキル鎖を有する。別の好ましい態様において、工程(a)で提供されるアルコールは、直鎖アルキル鎖、好ましくは直鎖C~C12アルキル鎖、より好ましくはC~Cアルキル鎖を有する第一級アルコールである。
【0060】
好ましい1つの態様によれば、工程(a)で提供されるアルコールは、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ブタノール、及び3-ペンタノールからなる群から選択され、好ましくはエタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、及び2-ペンタノールからなる群から選択される。
【0061】
特定の1つの態様では、工程(a)で提供されるアルコールは、エタノールである。
【0062】
《工程(b)》
本発明による方法の工程(b)では、表面反応炭酸カルシウムが提供される。表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、この二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給される。表面反応炭酸カルシウムの比表面積は、窒素及びISO 9277:2010に準拠したBET法を用いて測定したときに、少なくとも15m/gである。
【0063】
本発明の好ましい態様では、表面反応炭酸カルシウムは、下記の工程を含む方法によって得られる:(a)天然又は沈降炭酸カルシウムの懸濁液を提供すること、(b)工程(a)の懸濁液に、20℃で0又はそれ未満のpKa値を有するか、又は20℃で0~2.5のpKa値を有する少なくとも1種の酸を加えること、及び(c)工程(b)の前、工程(b)の間、又は工程(b)の後で、工程(a)の懸濁液を二酸化炭素で処理すること。別の態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、下記の工程を含む方法によって提供される:(A)天然又は沈降炭酸カルシウムを提供すること、(B)少なくとも1つの水溶性酸を提供すること、(C)ガス状のCOを提供すること、(D)工程(A)の天然又は沈降炭酸カルシウムを、工程(B)の少なくとも1つの酸、及び工程(C)のCOと接触させること。ここで、この方法は、下記を特徴とする:(i)工程(B)の少なくとも1つの酸が、その第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で2.5より大きく7又はそれ未満のpKaを有し、かつ対応する陰イオンが、水溶性カルシウム塩を形成することができるこの第1の利用可能な水素を失うことで形成されること、及び(ii)少なくとも1つの酸を天然又は沈降炭酸カルシウムと接触させた後で、少なくとも1つの水溶性塩を追加で提供すること。ここで、この少なくとも1つの水溶性塩は、水素含有塩である場合に、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で7超のpKaを有し、かつこの少なくとも1つの水溶性塩のアニオンは、水溶性カルシウム塩を形成することができる。
【0064】
「天然粉砕炭酸カルシウム」(GNCC)は、好ましくは、大理石、チョーク、石灰石、及びそれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。天然炭酸カルシウムは、さらなる天然成分、例えばアルミノシリケートを含んでもよい。
【0065】
一般に、天然粉砕炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式粉砕工程であってよく、任意の従来の粉砕装置を用いて、例えば、粉砕が主に、第2の物体との衝突によって生じるような条件で行うことができる。ここで、任意の従来の粉砕装置としては、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロール粉砕機、遠心衝撃ミル、垂直方向ビーズミル、アトリションミル、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランパー、ナイフカッター、又は当業者に知られている他のそのような装置のうちの1つ又は複数を挙げることができる。炭酸カルシウム含有鉱物材料が、湿式粉砕炭酸カルシウム含有鉱物材料を含む場合、粉砕工程は、自己粉砕が行われるような条件下で、及び/又は水平ボールミル粉砕によって、及び/又は当業者に公知の他のそのような方法によって実施され得る。このようにして得られた湿式処理粉砕炭酸カルシウム含有鉱物材料は、周知の方法、例えば、乾燥前の凝集、ろ過又は強制蒸発によって、洗浄及び脱水することができる。後続の乾燥の工程(必要であれば)は、単一の工程で、例えば噴霧乾燥で、又は少なくとも2つの工程で、実施することができる。また、そのような鉱物材料に、不純物を除去するための有益な工程(例えば、浮選、漂白又は磁気分離の工程)を行うことも一般的である。
【0066】
本発明に関して、「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境での二酸化炭素と水酸化カルシウムとの反応及びその後の沈降によって、又は溶液からのカルシウムイオン及び炭酸イオン、例えばCaCl及びNaCOの沈降によって一般に得られる合成物質である。PCCを製造するさらなる可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副生成物であるソルベイ法である。沈降炭酸カルシウムは、次の3つの主要な結晶形態で存在し:カルサイト、アラゴナイト、及びバテライト、これらの結晶形態のそれぞれについて、多くの異なる多形(結晶相)が存在する。カルサイトは、斜面体状(S-PCC)、菱面体状(R-PCC)、六方プリズム状、ピナコイド状、コロイド状(C-PCC)、立方体状、及びプリズム状(P-PCC)などの典型的な結晶相を有する三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶六方柱状結晶の典型的な結晶相を有する斜方晶構造であり、また、薄く細長い角柱状、湾曲ブレード状、急峻なピラミッド状、チゼル状結晶、枝分かれ樹状、及びサンゴ状又は虫状の形態の多様な種類のものである。バテライトは、六方晶系に属する。得られたPCCスラリーは、機械的に脱水及び乾燥することができる。
【0067】
本発明の1つの態様によれば、沈降炭酸カルシウムは沈降炭酸カルシウムであり、好ましくは、アラゴナイト系、バテライト系又はカルサイト系の鉱物結晶形態又はそれらの混合物を含む。
【0068】
沈降炭酸カルシウムは、二酸化炭素及び少なくとも1つのHイオン供与体での処理の前に、上記の天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるのと同じ手段によって、粉砕してもよい。
【0069】
本発明の1つの態様によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.05~10.0μm、好ましくは0.2~5.0μm、より好ましくは0.4~3.0μm、最も好ましくは0.6~1.2μm、特に0.7μmの質量メジアン粒径d50を有する粒子の形態である。本発明のさらなる態様によれば、天然又は沈降炭酸カルシウムは、0.15~55μm、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~25μm、最も好ましくは3~15μm、特に4μmのトップカット粒径d98を有する粒子の形態である。
【0070】
天然及び/又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥状態で又は水に懸濁させて、使用することができる。好ましくは、対応するスラリーは、スラリーの重量に基づいて、1重量%~90重量%、より好ましくは3重量%~60重量%、さらにより好ましくは5重量%~40重量%、最も好ましくは10重量%~25重量%の範囲内の天然又は沈降炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0071】
表面反応炭酸カルシウムの調製のために使用される1又は複数のHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する任意の強酸、中程度の強酸、若しくは弱酸、又はそれらの混合物であり得る。本発明によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する酸性塩であってもよい。
【0072】
1つの態様によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0又はそれ未満のpKaを有する強酸である。
【0073】
別の態様によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、20℃で0~2.5のpKaを有する中程度の強酸である。20℃におけるpKaが0又はそれ未満である場合、酸は、好ましくは硫酸、塩酸、又はそれらの混合物から選択される。20℃でのpKaが0~2.5である場合、Hイオン供与体は、好ましくはHSO、HPO、シュウ酸、又はそれらの混合物から選択される。少なくとも1つのHイオン供与体はまた、対応するカチオン、例えばLi、Na若しくはK、又はHPO 2-によって少なくとも部分的に中和され、対応するカチオン、例えばLi、Na,K、Mg2+又はCa2+によって少なくとも部分的に中和されている、酸性塩、例えばHSO 又はHPO であり得る。少なくとも1種のH3Oイオン供与体は、1又は複数の酸と1又は複数の酸性塩との混合物であってもよい。
【0074】
さらに別の態様によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定したときに、2.5より大きく7又はそれ未満のpKaを有し、かつ水溶性カルシウム塩を形成することができる対応する陰イオンを有する弱酸である。その後、少なくとも1つの水溶性塩を更に提供する。ここで、この少なくとも1つの水溶性塩は、水素含有塩の場合に、第1の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定したときに7を超えるpKaを有し、かつそのアニオン塩は、水不溶性カルシウム塩を形成することができる。好ましい態様によれば、弱酸は、20℃で2.5超~5のpKa値を有し、より好ましくは弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。上記の水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい態様において、上記のカチオンは、ナトリウム又はカリウムである。上記の水溶性塩の例示的なアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、これらの混合物及びこれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい態様では、上記のアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、これらの混合物及びこれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい態様では、上記のアニオンは、リン酸二水前記、リン酸一水前記、これらの混合物及びこれらの水和物からなる群から選択される。水溶性塩の添加は、滴下により、又は一段階で行うことができる。滴下添加の場合、この添加は、好ましくは10分以内の時間で行われる。上記の塩を一工程で添加することがより好ましい。
【0075】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、HPO からなる群から選択され、対応するカチオン、例えばLi、Na又はK、HPO 2-によって少なくとも部分的に中和され、対応するカチオン、例えばLi、Na,K、Mg2+、又はCa2+及びそれらの混合物によって少なくとも部分的に中和され、より好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、少なくとも1つのHイオン供与体はリン酸である。
【0076】
1又は複数のHイオン供与体は、濃縮溶液又はより希釈された溶液として、懸濁液に添加することができる。好ましくは、Hイオン供与体の天然又は沈降炭酸カルシウムに対するモル比率は、0.01~4、より好ましくは0.02~2、さらにより好ましくは0.05~1、最も好ましくは0.1~0.58である。
【0077】
別法として、Hイオン供与体を水中に添加してから、天然又は沈降炭酸カルシウムを懸濁させることもできる。
【0078】
次の工程では、天然又は沈降炭酸カルシウムを、二酸化炭素で処理する。硫酸又は塩酸などの強酸を使用して、天然又は沈降炭酸カルシウムのHイオン供与体処理をする場合、二酸化炭素は自動的に形成される。代替的に又は追加的に、二酸化炭素は外部供給源から供給することができる。
【0079】
イオン供与体処理と二酸化炭素による処理は、同時に行うことができ、これは強酸又は中程度の強酸を使用する場合である。Hイオン供与体処理は、例えば、20℃で0~2.5のpKaを有する中程度の強酸を用いて、最初に実施することもでき、ここでは、二酸化炭素はその場で形成され、したがって、二酸化炭素処理は、Hイオン供与体処理と同時に自動的に実施され、その後、外部供給源から供給される二酸化炭素での追加の処理が続く。
【0080】
好ましい態様において、Hイオン供与体処理工程及び/又は二酸化炭素処理工程は、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。1つの態様によれば、少なくとも1種のHイオン供与体は、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、典型的には約10~約20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分間、時には約1時間以上の時間にわたって添加される。
【0081】
イオン供与体処理及び二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定される水性懸濁液のpHは自然に、6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらにより好ましくは7.5超の値に達し、それによって、6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらにより好ましくは7.5超のpHを有する水性懸濁液として表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムを調製する。
【0082】
特に好ましい態様において、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウム(GNCC)と二酸化炭素及びリン酸との反応生成物であり、ここでは、二酸化炭素は、リン酸処理によってその場で形成される。
【0083】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO00/39222A1、WO2004/083316A1、WO2005/121257A2、WO2009/074492A1、EP2,264,108A1、EP2,264,109A1及びUS2004/0020410A1に開示されており、これらの参考文献の内容を、本明細書の記載に含める。
【0084】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。国際公開第2009/074492A1号から詳しく分かるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、水性媒体中において、沈降炭酸カルシウムを、Hイオン、及び水性媒体中で可溶化されかつ水性媒体中で水不溶性カルシウム塩を形成することができるアニオンと接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、ここで、上記の表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された上記のアニオンの不溶性の少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。
【0085】
上記の可溶化カルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に自然に生成される可溶化カルシウムイオンに対して過剰な可溶化カルシウムイオンに対応し、ここで、上記のHイオンは、アニオンに対する対イオンの形態でのみ、すなわち、酸又は非カルシウム酸塩の形態でのアニオンの付加を介して、かつ任意のさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン発生源の非存在下で、提供される。
【0086】
上記の過剰な可溶化カルシウムイオンは、好ましくは可溶性の中性又は酸性カルシウム塩の添加によって、又はその場で可溶性の中性又は酸性カルシウム塩を生成する酸又は中性若しくは酸性非カルシウム塩の添加によって、提供される。
【0087】
上記のHイオンは、上記のアニオンの酸若しくは酸性塩の添加、又は上記の余分な可溶化カルシウムイオンの全部又は一部を提供するのに同時に役立つ酸又は酸性塩の添加によって提供されてもよい。
【0088】
表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの調製のさらに好ましい態様では、天然又は沈降炭酸カルシウムが、ケイ酸塩、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、アルミン酸アルカリ土類金属塩、例えばアルミン酸ナトリウム又はアルミン酸カリウム、酸化マグネシウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下で、1又は複数のHイオン供与体及び/又は二酸化炭素と反応する。好ましくは、少なくとも1種のケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、1又は複数のHイオン供与体及び/又は二酸化炭素を添加する前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0089】
あるいは、天然又は沈降炭酸カルシウムと1又は複数のHイオン供与体及び二酸化炭素との反応がすでに開始しているときに、ケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩及び/又は酸化マグネシウム成分を、天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも1種のケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下での表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO2004/083316A1に開示されており、この参考文献の内容を、本明細書の記載に含める。
【0090】
表面反応炭酸カルシウムは、懸濁液中に保持することができ、場合により、分散剤によってさらに安定化することができる。当業者に公知の従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロースから構成される。
【0091】
あるいは、上記の水性懸濁液を乾燥させ、それによって、顆粒又は粉末の形態で、表面反応天然又は沈降炭酸カルシウムの固体(すなわち、乾燥しているか、又は流体形態ではない少量の水を含有)を得ることができる。
【0092】
本発明の特に好ましい態様において、表面反応炭酸カルシウムは、天然粉砕炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ1又は複数のHイオン供与体は、リン酸である。上記の態様において、表面反応炭酸カルシウムは、リン酸基を含み、XPSによって測定したときに、カルシウムとリン原子との原子比が、最大で3.0、より好ましくは最大で2.5、最も好ましくは最大で2.3であることが好ましい。
【0093】
表面反応炭酸カルシウムは焼成材料ではないことが理解される。
【0094】
好ましい態様において、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定したときに、15m/g~200m/g、好ましくは27m/g~180m/g、より好ましくは30m/g~180m/g、さらにより好ましくは45m/g~180m/g、最も好ましくは120m/g~180m/gの比表面積を有する。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びBET法を用いて測定したときに、150m/g~180m/gの比表面積を有する。本発明の意味におけるBET比表面積は、粒子の質量で割った粒子の表面積として定義される。ここで使用されるように、比表面積は、BET等温線(ISO 9277:2010)を使用する吸着によって測定され、m/gで示される。
【0095】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、1.0~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積メジアン粒径d50(体積)を有することがさらに好ましい。
【0096】
表面反応炭酸カルシウム粒子は、2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましくは10~30μmのトップカットd98(体積)を有することがさらに好ましい。
【0097】
値は、x%がこのd未満の直径を有する直径を表す。これは、d98値が、全ての粒子の98%がその値よりも小さい粒径であることを意味している。d98値は「トップカット」とも呼ばれる。d値は、体積又は質量%で示すことができる。したがって、d50(wt)値は、重量メジアン粒径、すなわち、すべての粒子の50重量%がこの粒径よりも小さくなる値であり、d50(体積)値は、体積メジアン粒径であり、すなわち、すべての粒子の50体積%がこの粒径よりも小さくなる粒径である。
【0098】
体積メジアン粒径d50は、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折装置を用いて評価した。Malvern Mastersizer 3000レーザー回折装置を用いて測定したd50又はd98値は、それぞれ、50体積%又は98体積%の粒子がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データは、粒子屈折率1.57及び吸収率0.005で、ミー理論を使用して分析される。
【0099】
天然粉砕炭酸カルシウム及び沈降炭酸カルシウムの重量メジアン粒径は、重力場における沈降挙動の分析である沈降法によって決定される。測定は、SedigraphTM 5120(Micromeritics Instrument社)で行う。この方法及び装置は、当業者に知られており、充填材及び顔料の粒径を決定するために一般に使用される。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行われる。試料を高速撹拌機を用いて分散させ、そして超音波処理した。
【0100】
方法及び機器は、当業者に公知であり、充填材及び顔料の粒径を決定するために一般に使用される。
【0101】
比気孔体積は、ラプラスススロート直径0.004μm(~nm)に相当する水銀圧414MPa(60,000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリー測定を使用して測定される。各圧力工程で使用される平衡化時間は、20秒である。試料物質は、分析のために、5cmチャンバーの粉末ペネトロメータ中に密封される。データは、ソフトウェアPore-Comp(Gane、P.A.C.、Kettle、J.P.、Matthews、G.Pand Ridgway、C.J.、「Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations」、Industrial and Engineering Chemistry Research、35(5)、1996、p1753-1764)を用いて、水銀圧縮、ペネトロメータ膨張、及び試料物質圧縮に関して構成する。
【0102】
累積圧入データに見られる全気孔体積は、214μmから約1~4μmまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、これは任意の凝集構造間の試料の粗粒充填が強く寄与することを示す。これらの直径より下には、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。それらが粒子内気孔も有する場合、この領域は二峰性に見え、水銀によって圧入される特定の気孔体積を、モード転換点よりも細かい気孔、すなわち、二峰性変曲点よりも細かい気孔にすることによって、特定の粒子内気孔体積が定義される。これらの3つの領域の合計は、粉末の全気孔体積を与えるが、分布の粗粒気孔端部における元の試料の圧縮/粉末の沈降に強く依存する。
【0103】
累積圧入曲線の一次導関数を取ることによって、必然的に気孔遮蔽を含む当量ラプラス直径に基づく気孔サイズ分布が明らかになる。微分曲線は、存在する場合、粗い凝集気孔構造領域、粒子間気孔領域、及び粒子内気孔領域を明確に示す。粒子内気孔直径範囲を知ることに関して、総気孔体積から残りの粒子間気孔体積及び凝集体間気孔体積を差し引いて、単位質量あたりの気孔体積(比気孔体積)に関する内部気孔のみの所望の気孔体積を単独でもたらすことが可能である。もちろん、減算の同じ原理は、関心のある他の気孔サイズ領域のいずれかを単離するために適用される。
【0104】
好ましくは、表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算したときに、0.1~2.3cm/g、より好ましくは0.2~2.0cm/g、特に好ましくは0.4~1.8cm/g、最も好ましくは0.6~1.6cm/gの粒子内圧入比気孔体積を有する。
【0105】
表面反応炭酸カルシウムの粒内孔径は、水銀ポロシメトリー測定により測定したときに、好ましくは0.004~1.6μm、より好ましくは0.005~1.3μm、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μmの範囲である。
【0106】
好ましい1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、BET法によって測定したときに、10~200m/g、好ましくは60~200m/g、より好ましくは100~200m/g、さらにより好ましくは120~180m/g、最も好ましくは140~180m/gの比表面積(BET)、及び/又は水銀ポロシメトリー測定から計算したときに、0.10~2.0cm/g、より好ましくは0.20~2.0cm/g、さらにより好ましくは0.50~2.0cm/g、最も好ましくは0.70~1.6cm/gの範囲の粒子内圧入比気孔体積を有する。
【0107】
好ましい1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、BET法によって測定したときに、10~200m/g、好ましくは60~200m/g、より好ましくは100~200m/g、さらにより好ましくは120~180m/g、最も好ましくは140~180m/gの比表面積(BET)、及び水銀ポロシメトリー測定から計算したときに、0.10~2.0cm/g、より好ましくは0.20~2.0cm/g、さらにより好ましくは0.50~2.0cm/g、最も好ましくは0.70~1.6cm/gの範囲の粒子内圧入比気孔体積を有する。
【0108】
好ましい1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは12~20μmのトップカット(d98)値を有する。
【0109】
好ましい1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは5~10μmの体積メジアン粒径(d50)、及び1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは12~20μmのトップカット(d98)値を有する。
【0110】
好ましい1つの態様によれば、工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、
温度プログラムされた二酸化炭素脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総塩基サイト数を有し、かつ/又は
温度プログラムされたアンモニア脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総酸サイト数を有する。
【0111】
好ましい1つの態様によれば、工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、
温度プログラムされた二酸化炭素脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総塩基サイト数を有し、かつ
温度プログラムされたアンモニア脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総酸サイト数を有する。
【0112】
好ましい1つの態様によれば、工程(c)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、温度プログラムされた二酸化炭素脱着によって決定される塩基サイトの総数と、温度プログラムされたアンモニア脱着によって決定される酸サイトの総数との比率が、45:55~75:25の範囲、好ましくは55:45~70:30の範囲である。
【0113】
1つの態様によれば、工程(b)において提供される表面反応炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム及びヒドロキシアパタイトを含む。好ましい1つの態様によれば、工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、リードベルド法を使用してXRDによって測定したときに、10:90~90:10、好ましくは35:65~90:10、より好ましくは60:40~90:10(例えば70:30~85:15)の範囲の、ヒドロキシアパタイトの量と炭酸カルシウムの量との比を有する。
【0114】
《工程(c)》
本発明による方法の工程(c)では、工程(a)で提供されたアルコールを蒸発させる。
【0115】
気化後、気化アルコールは、ガス状供給流の一部として気相で、ゲルベ自己縮合反応のための触媒としての表面反応炭酸カルシウムに運ばれる(工程(d)参照)。
【0116】
適切な加熱又は気化装置、質量流量制御器、チェックバルブ、温度制御器、アルコール及びキャリアガスのための供給ライン、アルコール貯蔵器、ガスボンベ、ポンプ、分配ライン、反応器等は、当業者によって、プロセスの技術的要件及びスケールに従って選択され得る。
【0117】
工程(a)で提供されるアルコールは、供給管路を介して、工程(c)に従ってアルコールが気化される気化反応器に、ポンプの手段によって液状で供給することができる。キャリアガス供給ラインを気化反応器に接続することができ、気化アルコールをキャリアガスと混合して、ガス状供給流を生成することができる。次いで、気化アルコールを含むガス状供給流を、反応のための触媒に供給することができる。
【0118】
1つの態様によれば、気化アルコールをキャリアガスと混合して、ガス状供給流を生成する。
【0119】
適切なキャリアガスは、ヘリウム、窒素、アルゴン、水素、又はそれらの混合物であってもよい。キャリアガスの品質、供給源及び/又は純度は、当業者によって選択され得る。特定の1つの態様では、キャリアガスとして窒素が使用される。
【0120】
本発明の1つの態様によれば、工程(c)で得られた気化アルコールは、不活性キャリアガスと混合される。本発明の1つの態様によれば、工程(c)で得られた気化アルコールは、ヘリウム、窒素、アルゴン、水素及びそれらの混合物からなる群から選択されるキャリアガスと混合され、好ましくはキャリアガスは窒素である。
【0121】
気化アルコールの量は、ガス状供給流の体積パーセントで調節することができる。1つの態様によれば、工程(c)で得られる気化アルコールは、ガス供給流中に、少なくとも2体積%、好ましくは少なくとも5体積%、より好ましくは10~80体積%、さらにより好ましくは10~55体積%、最も好ましくは10~40体積%の量で存在する。
【0122】
本発明者らは、気体供給流の体積に対する蒸発アルコールの量を、10~40体積%の範囲に調整することにより、反応の転化率及び収率をさらに改善することができることを見出した。
【0123】
例えば、工程(c)で得られた気化アルコールは、ガス供給流中に15~35体積%の量で存在する。1つの特定の態様では、工程(c)で得られた気化アルコールは、ガス供給流中に15~20体積%、又は25~35体積%の量で存在する。
【0124】
気化アルコールを含むガス状供給流は、本発明による方法の工程(d)に供給される前に、当該技術分野で公知のように精製、乾燥、又は他の処理をすることができる。
【0125】
《工程(d)》
本発明による方法の工程(d)では、工程(c)で得られた気化アルコールを、触媒として工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムの存在下で反応させる。
【0126】
工程(d)における蒸発アルコールの反応は、気相中で実施される。したがって、工程(d)における反応は、気相ゲルベ自己縮合反応として定義することができる。当業者によって理解されるように、工程(d)において触媒として使用される表面反応炭酸カルシウムも気体状態であると理解されるべきではない。工程(d)において触媒として使用される表面反応炭酸カルシウムは、固体状態であり、したがって、不均一系触媒としても定義され得る。
【0127】
反応、すなわち、工程(c)で得られた気化アルコールのゲルベ自己縮合は、気相反応に適した任意の反応器中で行うことができる。非限定的な例は、プラグフロー反応器、及び充填床又は固定床反応器である。工程(d)を実施するための技術的装置、例えば限定するものではないが、プレヒーター、炉、冷却器、冷却タンク、背圧調整器、加熱トレーシング、流量計、フィルタ等は、必要に応じて当業者によって選択される。
【0128】
本発明の方法は、バッチプロセス又は連続プロセスとして実施することができる。この方法は、連続プロセスとして実施することが好ましい。したがって、1つの好ましい態様において、アルコールを、工程(a)において連続的に提供し、工程(c)において連続的に気化し、そして工程(d)において触媒(SRCC)の存在下で連続的に反応させる。
【0129】
工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムは、気化アルコールとの反応の前に乾燥されてもよい。乾燥は、好ましくは高温(例えば、100~500℃又は300~475℃の範囲)で、表面反応炭酸カルシウム上に、キャリアガス流を通過させることによって実施することができる。
【0130】
1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、工程(d)の前に、100~500℃、好ましくは200~475℃、より好ましくは300~475℃の範囲の温度で乾燥される。別の1つの態様によれば、工程(d)で使用される表面反応炭酸カルシウムは、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の残存総水分含有量を有する。好ましい1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、工程(d)の前に、100~500℃、好ましくは200~475℃、より好ましくは300~475℃の範囲の温度で乾燥され、かつ工程(d)で使用される表面反応炭酸カルシウムは、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01重量%~0.75重量%、好ましくは0.02重量%~0.5重量%の残存総水分含有量を有する。
【0131】
工程(d)における反応は、好ましくは所定の反応温度で実施される。1つの態様によれば、工程(d)は、150~500℃、好ましくは150~475℃、より好ましくは250~475℃、さらにより好ましくは350~475℃、最も好ましくは375~475℃の範囲の反応温度で実施される。
【0132】
本発明者らは、375~475℃の範囲の反応温度が本発明の方法に特に有利であることを見出した。
【0133】
この方法は、その重量空間速度(WHSV)によって定義することができる。本明細書で使用するとき、「重量空間速度」は、触媒(SRCC)の単位重量あたり1時間あたりに流れる、供給物の重量、すなわち工程(c)における蒸発前のアルコールの供給物の重量によって定義される。
【0134】
1つの態様によれば、重量空間速度は、少なくとも2h-1(例えば、2~2000h-1)、好ましくは少なくとも5h-1(例えば、5~2000h-1)である。1つの具体的な態様では、重量空間速度は、2~200h-1、例えば5~100h-1、又は10~100h-1である。
【0135】
工程(d)における反応は、工程(a)において提供されるアルコールの2つの分子を縮合させることによってアルコール(本明細書では「所望の生成物」としても言及する)を生成する。工程(d)で得られたアルコールは、工程(a)でそれぞれ提供された第一級又は第二級アルコールの2つの分子の炭素原子の合計を含む。例えば、2-プロパノール(Cアルコール)を、工程(a)において第二級アルコールとして提供する場合、工程(d)において得られるアルコールは、2-メチル-ペンタン-2-オール(Cアルコール)である。エタノール(Cアルコール)を工程(a)において第一級アルコールとして提供する場合、工程(d)において得られるアルコールはn-ブタノール(Cアルコール)であり、他も同様である。
【0136】
工程(d)で得られるアルコールは、直鎖アルコール又は分岐鎖アルコールであってもよい。工程(a)で提供されるアルコールが3個を超える炭素原子を有する場合、工程(d)で得られるアルコールは、好ましくは分岐鎖アルコールである。
【0137】
好ましくは、工程(d)で得られるアルコールは、400℃未満、より好ましくは300℃未満、さらにより好ましくは250℃未満、最も好ましくは200℃未満の沸点を有する。
【0138】
工程(d)で得られたアルコールは、反応の他の生成物との生成物混合物中に存在することがある。例えば、生成物混合物は、アルデヒド、エーテル、エステル又は他のアルコール(例えば、所望の生成物よりも高い分子量を有するアルコール)を含有してもよく、これらは本明細書では「副生物」とも呼ばれる。当業者によって理解されるように、副生物は例えば、ゲルベ反応の中間体(例えば、アルデヒド)から誘導され得る。副生成物の各々は、それ自体の価値を有することができ、必要であれば、個々に分離及び精製することができる。
【0139】
1つの態様によれば、アルコールは工程(d)において、1又は複数の副生物、例えば限定するものではないが、アルケン、アルデヒド、エーテル、エステル又は他のアルコールを含む生成混合物の一部として得られる。
【0140】
工程(d)における反応は、所望の生成物に対して特定の選択率を有することができる。本明細書で使用される「選択率」は、下記の式によって計算される選択率(S)である:
:n/(n -n)×100
ここで、n は、工程(d)の前のアルコールのCモル(炭素モル)の初期量であり、nは、工程(d)の後の未反応アルコールのCモルの量であり、かつnは、反応生成物の流れ中の生成物jのCモルの量である。
【0141】
1つの態様において、アルコール(所望の生成物)は、工程(d)において、少なくとも15%(例えば、15~99.99%)、好ましくは少なくとも30%(例えば、30~99.99%)、より好ましくは少なくとも40%(例えば、40~99.99%)、最も好ましくは少なくとも50%(例えば、50~99.99%)の選択率で得られる。
【0142】
工程(c)で得られた気化アルコールは、工程(d)において、特定の量で反応させることができ、これは、出発物質(工程(c)で提供された気化アルコール)の転化割合又は転化率として表すことができる。本明細書で使用される「転化率」は、下記の式によって計算される転化率(X)である:
:n -n/n ×100
ここで、n は、工程(d)以前のアルコールのCモルの初期量であり、かつnは、工程(d)後の未反応アルコールのCモルの量である。
【0143】
1つの態様によれば、工程(d)における反応は、少なくとも5%(例えば、5~99.99%)、好ましくは少なくとも10%(例えば、10~99.99%)、より好ましくは少なくとも15%(例えば、15~99.99%)、最も好ましくは少なくとも20%(例えば、20~99.99%)の転化率を有する。
【0144】
限定するものではないが、本発明の方法は、1又は複数の追加の工程、例えば反応生成物の凝縮、反応生成物の精製、反応生成物の第2の反応への投入、副生成物の再循環、表面反応炭酸カルシウムの再循環、再循環表面反応炭酸カルシウムの触媒としての再利用等を含むことができる。追加の工程は、当業者の必要に応じて、任意の順序で組み合わせることができる。
【0145】
1つの態様によれば、この方法は、工程(d)で得られた反応生成物を凝縮させる工程(e)、及び/又は工程(d)又は(e)で得られた反応生成物を精製する工程(f)を含む。
【0146】
《本発明による使用》
他の1つの面では、本発明は、気相におけるゲルベ自己縮合反応のための触媒としての表面反応炭酸カルシウムの使用に関し、ここでは、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、また二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給され、かつ表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を使用して測定したときに、少なくとも15m/gの比表面積を有する。
【0147】
上記及びここで開示される本発明の方法の工程(b)で提供される表面反応炭酸カルシウムの態様及び好ましい態様は、本発明の使用のための表面反応炭酸カルシウムの態様及び好ましい態様でもあることを理解されたい。これをさらに説明するために、本発明の使用のための表面反応炭酸カルシウムの特定の態様及び好ましい態様を、以下で繰り返す。
【0148】
1つの態様によれば、本発明による使用のための表面反応炭酸カルシウムは、1.0~75μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μm、さらにより好ましくは4~30μm、最も好ましくは5~15μmの体積メジアン粒径(d50)、及び/又は2~150μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは6~80μm、さらにより好ましくは8~60μm、最も好ましくは10~30μmのトップカット(d98)値を有する。
【0149】
1つの態様によれば、本発明による使用のための表面反応炭酸カルシウムは、BET法によって測定したときに、15~200m/g、好ましくは27~180m/g、より好ましくは30~180m/g、さらにより好ましくは45~180m/g、最も好ましくは120~180m/gの比表面積(BET)を有する。
【0150】
1つの態様によれば、本発明による使用のための表面反応炭酸カルシウムは、0.10~2.3cm/g、より好ましくは0.20~2.0cm/g、さらにより好ましくは0.40~1.8cm/g、最も好ましくは0.70~1.6cm/gの粒子内浸入比気孔体積を有する。
【0151】
1つの態様によれば、1又は複数のHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酸性塩、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、HPO からなる群から選択され、対応するカチオン、例えばLi、Na又はK、HPO 2-によって少なくとも部分的に中和され、対応するカチオン、例えばLi、Na、K、Mg2+、又はCa2+及びそれらの混合物によって少なくとも部分的に中和され、より好ましくは塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは1又は複数のHイオン供与体は、リン酸である。
【0152】
1つの態様によれば、本発明による使用のための表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)と、二酸化炭素及び1又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、ここで、1又は複数のHイオン供与体は、リン酸であり、かつ二酸化炭素は、Hイオン供与体処理によってその場で形成される。
【0153】
1つの態様によれば、本発明による使用のための表面反応炭酸カルシウムは、温度プログラムされた二酸化炭素脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総塩基サイト数を有し、かつ/又は温度プログラムされたアンモニア脱着によって測定したときに、表面反応炭酸カルシウムの総乾燥重量に基づいて、0.01~0.6mmol/g、好ましくは0.05~0.5mmol/g、より好ましくは0.10~0.45mmol/gの総酸サイト数を有する。
【0154】
本発明の好ましい1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、少なくとも1つのβ-水素を有する第一級又は第二級アルコールの気相におけるゲルベ自己縮合反応のための触媒として使用される。
【0155】
第一級又は第二級アルコールのさらなる態様及び好ましい態様は、本発明による方法に関連して上記に開示されている。一定の選択された態様及び好ましい態様を、以下で繰り返す。
【0156】
1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、200℃未満、好ましくは175℃未満、より好ましくは145℃未満、最も好ましくは125℃未満の沸点を有する第一級又は第二級アルコールのゲルベ自己縮合反応のための触媒として使用される。
【0157】
1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、第一級アルコールのゲルベ自己縮合反応のための触媒として使用される。
【0158】
1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、分岐鎖又は直鎖C~C12アルキル鎖、好ましくは分岐鎖又は直鎖C~Cアルキル鎖を有する第一級又は第二級アルコールのゲルベ自己縮合反応のための触媒として使用される。
【0159】
1つの態様によれば、表面反応炭酸カルシウムは、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-ブタノール、及び3-ペンタノールからなる群から選択されるアルコールのゲルベ自己縮合反応のための触媒として使用される。
【実施例1】
【0160】
《1.測定方法》
以下では、実施例で実施した測定方法について説明する。
【0161】
《粒子径分布》
体積測定メジアン粒径d50(体積)及び体積測定トップカット粒径d98(体積)を、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折装置(Malvern Instruments Plc、英国)を用いて評価した。d50(体積)又はd98(体積)値は、それぞれ50体積%又は98体積%の粒子がこの値未満の直径を有するような直径値を示す。測定によって得られた生データを、ミー理論を用いて、粒子屈折率1.57及び吸収率0.005で分析した。方法及び機器は、当業者に公知であり、充填材及び顔料の粒径分布を決定するために一般に使用されている。試料を、前処理なしに乾燥状態で測定した。
【0162】
重量測定メジアン粒径d50(重量)は、重力場における沈降挙動の分析である沈降法によって測定した。測定は、米国Micromeritics Instrument社のSedigraphTM 5120を用いて行った。この方法及び装置は、当業者に知られており、充填材及び顔料の粒径分布を決定するために一般に使用されている。測定は、0.1重量%Na水溶液中で行った。試料を、高速撹拌機を用いて分散させ、超音波処理した。
【0163】
《比表面積(SSA)》
比表面積は、窒素を用いるISO 9277:2010に従ってBET法により測定し、その後、250℃で30分間にわたって加熱することにより試料をコンディショニングした。そのような測定の前に、試料をブフナー漏斗内で濾過し、脱イオン水ですすぎ、オーブン中において110℃で少なくとも12時間にわたって乾燥させた。
【0164】
《粒子内圧入比気孔体積(cm/g)》
比気孔体積は、ラプラスススロート直径0.004μm(~nm)に相当する水銀圧414MPa(60,000psi)の最大印加圧力を有するMicromeritics Autopore V 9620水銀ポロシメータを使用する水銀圧入ポロシメトリー測定を使用して測定した。各圧力工程で使用した平衡化時間は、20秒であった。試料物質を、分析のために、5cmチャンバー粉末ペネトロメータ中に密封した。データは、ソフトウェアPore-Comp(Gane、P.A.C.、Kettle、J.P.、Matthews、G.Pand Ridgway、C.J.、「Void Space Structure of Compressible Polymer Spheres and Consolidated Calcium Carbonate Paper-Coating Formulations」、Industrial and Engineering Chemistry Research、35(5)、1996、p1753-1764)を用いて、水銀圧縮、ペネトロメータ膨張、及び試料材料圧縮に関して補正した。
【0165】
累積圧入データに見られる全気孔体積は、214μmから約1~4μmまでの圧入データを有する2つの領域に分離することができ、これは、任意の凝集構造間の試料の粗粒充填が強く寄与することを示す。これらの直径より下には、粒子自体の微細な粒子間充填が存在する。それらが粒子内気孔も有する場合、この領域は二峰性に見え、水銀が圧入する特定の気孔体積を、モード転換点よりも細かい気孔、すなわち、変曲の二峰性点よりも細かい気孔にすることによって、特定の粒子内気孔体積が定義される。これらの3つの領域の合計は、粉末の全気孔体積を与えるが、分布の粗粒気孔端部における元の試料の圧縮/粉末の沈降に強く依存する。
【0166】
累積圧入曲線の一次導関数を取ることによって、必然的に気孔遮蔽を含む当量ラプラス直径に基づく気孔サイズ分布が明らかになる。微分曲線は、存在する場合、粗い凝集気孔構造領域、粒子間気孔領域、及び粒子内気孔領域を明確に示す。粒子内気孔直径範囲を知ることに関して、総気孔体積から残りの粒子間気孔体積及び凝集体間気孔体積を差し引いて、単位質量あたりの気孔体積(比気孔体積)に関する単独の内部気孔の所望の気孔体積を導くことが可能である。もちろん、減算の同じ原理は、関心のある他の気孔径領域のいずれかを単離するために適用される。
【0167】
《走査型電子顕微鏡(SEM)》
50~150μlのスラリー試料を5mlの水で希釈することによって、試料を調製した。スラリー試料の量は、固形分、粒径の平均値、及び粒径分布に依存する。希釈した試料を、0.8μmメンブランフィルタを用いて濾過した。ろ液が濁っているときには、より微細なフィルタを使用した。導電性両面接着テープを、SEMスタブ上に取り付けた。次いで、このSEMスタブを、フィルタ上のまだ湿っているフィルタケーキ中にわずかに押し付けた。次いで、SEMスタブを、8nmのAuでスパッタリングした。続いて、調製した試料を下記によって調べた:Sigma VP電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)(Carl Zeiss AG、ドイツ)、及び可変圧二次電子検出器(VPSE)、及び/又は約50Paのチャンバー圧力を有する二次電子検出器(SE)。FESEM(Zeiss Sigma VP)下での調査を5kV(Au)で行った。
【0168】
《X線回折(XRD)、X線光電子分光法(XPS)、熱重量分析(TGA)》
XRDパターンは、Co放射線源、CoKα=1.789Åを用いるBruker D2 Phaser粉末X線回折計で記録した。測定は1つの工程あたり0.5秒の走査速度を用いて、10~70°の2θの間で行った。TGAは、Mettler Toledo TGA/DSC3+を用いて行った。試料を、25℃の勾配で25℃から600℃まで加熱し、105℃及び500℃で10分間保持し、空気流は80ml/分であった。XPS実験は、225W(15mA、15kV)で動作する単色Al Kα放射線(hu=1486.6eV)を用いて、Kratos AXIS Ultra DLD分析計で行った。装置のベース圧は5×10-10Torrであった。
【0169】
《さらなる実験技術》
SRCC固体のCa及びP含有量は、SRCCの試料を王水(硝酸1体積部(水中70重量%)及び塩酸3体積部(水中35重量%)の混合物)に溶解し、得られた溶液を水で体積が約4倍に増加するまで希釈し、Perkin Elmer Avio 500装置を使用して、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)技術を介して希釈溶液を分析することによって調べた。Ca及びP含有量は、検量線を用いて決定した。
【0170】
《吸着アンモニア及び吸着二酸化炭素温度プログラム脱着(NH-TPD及びCO-TPD)》
測定は、Micromeritics ASAP2920装置を用いて行った。試料0.1gを、その場で、He流下において、400℃まで5℃/分の温度勾配で乾燥した。
NH-TPD測定のために、試料を100℃に冷却した。この時点で、試料上に、5cmのHe中の10体積%NHを、試料上に20パルス投与した(25.3cm/分のNH流に相当)。次いで、5℃/分の勾配で600℃まで試料を加熱して、NHの脱離を誘導した。熱伝導率検出器を用いて、この時間にわたって脱離したNHを測定した。定量的評価のためにTCD濃度を時間及び温度にわたってプロットして、脱着ピークの温度位置を決定した。両方の場合において、ピーク分解を行った。脱着されたNHの総量を得るために、脱着特性のベースライン減算及び完全積分を行った。ピーク分解は、ソフトウェアFitykを用いて行った。
【0171】
曲線下面積(AUC、A)(フィティック社)を得た後、AUCを、以下の式を用いて、NHの定量可能な量(mmol/g単位のnNH)に変換する:
=A/100%
NH3,abs=A×V
NH3=VNH3,abs/msample
NH3=VNH3×ρNH3
NH3=mNH3/MNH3
ρNH3=0.76kg/m、MNH3=17g/mol
A=得られた面積(%×分)、A=面積(分)、V=流量25.2(cm/分)
NH3,abs=脱着NHの絶対量(cm
NH3=試料1gあたりの脱着NH量(cm/g)
【0172】
CO-TPD測定のために、試料を50℃に冷却し、NH-TPDについて記載したものと同様の手順を用いた。ρCO=1.98kg/m及びMCO=44.01g/molを用いて、上記の計算に従って塩基サイトの個数を決定した。酸性又は塩基サイトの個数を計算するために、1分子のNH又はCOのみが単一のサイトに吸着できると仮定した。
【0173】
《2.材料》
《表面反応炭酸カルシウム(SRCC)》
《SRCC1》
SRCC1は、d50(体積)=6.6μm、d98(体積)=13.7μm、及び粒子内浸入比気孔体積0.939cm/g(気孔径0.004~0.51μm)を有する。
【0174】
SRCC1は、Omya SAS、Orgonからの粉砕石灰石炭酸カルシウムの固形分を調整して、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分が得られるようにすることによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液350リットルを調製して得た。ここで、この粉砕石灰石炭酸カルシウムは、沈降によって測定したときに、1.3μmの重量基準メジアン粒径d50(wt)を有する。
【0175】
6.2m/sの速度でスラリーを混合しながら、11.2kgのリン酸を、30重量%のリン酸を含有する水溶液の形態で、70℃の温度で20分間にわたって上記の懸濁液に添加した。
【0176】
酸の添加後、スラリーをさらに5分間撹拌し、その後、それを容器から取り出し、ジェット乾燥機を用いて乾燥させた。
【0177】
《SRCC2》
SRCC2は、d50(体積)=5.8μm、d98(体積)=15.4μm、及び粒子内浸入比気孔体積1.070cm/g(気孔径0.004~0.34μm)を有する。
【0178】
SRCC2は、Hustadmarmor Norwayからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて10重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製して得た。粉砕炭酸カルシウムは、沈降によって測定したときに、2μm未満の90%重量基準粒径分布を有していた。さらに、リン酸溶液を、溶液の総重量に基づいて30%のリン酸を含むように調製した。
【0179】
スラリーを混合しながら、1.8kgのリン酸溶液を10分かけて添加した。全酸溶液の20%を添加した後で、53gの無水クエン酸粉末をスラリーに添加した。実験全体を通して、懸濁液の温度は70℃+/-1℃に維持した。最後に、酸の添加後、懸濁液をさらに5分間撹拌し、その後で、それを容器から取り出し、放冷した。
【0180】
《SRCC3》
SRCC3は、d50(体積)=8.3μm、d98(体積)=18.7μm、及び粒子内浸入比気孔体積1.565cm/g(気孔径0.004~0.66μm)を有する。
【0181】
SRCC3は、トルコのKarabigaからの粉砕大理石炭酸カルシウムの固形分を、水性懸濁液の総重量に基づいて15重量%の固形分が得られるように調整することによって、混合容器中で粉砕炭酸カルシウムの水性懸濁液10リットルを調製して得た。粉砕された炭酸カルシウムは、沈降によって測定したときに、1.4μmの重量基準メジアン粒径d50(重量)を有していた。また、リン酸溶液を、溶液の全重量に対して30%のリン酸を含むように調製した。
【0182】
スラリーを混合しながら、2.8kgのリン酸溶液を15分かけて添加した。実験全体を通して、懸濁液の温度は70℃+/-1℃に維持した。最後に、酸の添加後、懸濁液をさらに5分間撹拌し、その後、それを容器から取り出し、放冷した。
【0183】
《その他の試薬》
全ての市販の試薬を、さらなる精製なしに受け取ったまま使用した。エタノール(工業グレード(99.5%)は、VWR chemicalsから得た。HAP-H(ヒドロキシアパタイト;5μm粒径)は、Sigma-Aldrichから購入した。MgO(98%)は、Acros organicsから得た。
【0184】
表面反応炭酸カルシウムの特性を表1~3に示す。市販の触媒の特性も表1に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
【0187】
【表3】
【0188】
《3.例》
《ゲルベ反応》
【0189】
エタノールのゲルベ反応を、連続U字形固定床流通ホウケイ酸塩反応器(内径8mm)中で行った。液体供給物を、4~22h-1の重量空間速度(WHSV)でHPLCポンプ(LC-20AT、島津製作所)によって輸送した。マスフローコントローラ(F-201CV、Bronkhorst)を使用して、Nキャリアガスの流れを制御した。
反応の前に、触媒床を400℃で2時間にわたって、N流れ(100mL/分)で乾燥させた。全ての触媒実験は、大気圧及び350~450℃の温度で行った。
典型的な実験では、反応器に、石英ウールプラグの間に挟まれた触媒(0.05~0.3g)を装填した。エタノールをN中で蒸発させ、10~64体積%のエタノール(23.6mmol/h)を含む得られた流れを、12.5~200mL/分で反応器に供給した。反応生成物を、FID検出器及びPoraPLOT Q-HT分析カラムを備えたオンラインGC(Brucker、430-GC)によって分析した。触媒の触媒活性は、転化率(X)、生成物への選択性(S)、及び収率(Y)によって特徴付けた:
:n -n/n ×100
:n/(n -n)×100
:X×S/100
ここで、n は、エタノールのCモルの初期量であり、nは、エタノールの未反応Cモルであり、nは、反応生成物の流れにおける生成物JのCモルである。
【0190】
触媒性能を、400℃で3時間にわたって流れで評価した。表4に試験成績をまとめている。エントリー1は、無触媒条件下において、微量のアセトアルデヒド形成のみで、無視できる量の転化率を示す。エントリー2及び3は、それぞれ、MgO及びヒドロキシアパタイト(HAP-H)などの市販の固体塩基触媒によって示される性能である。HAP-Hは、MgOと比較して、より良好な転化率及び1-ブタノール選択性を示した。エントリー4~6は、SRCC1~SRCC3を触媒として使用する本発明の実施例に関する。結果から分かるように、エントリー4~6における1-ブタノールに関する基質の転化率、並びに選択性及び収率は、市販の触媒MgOと比較して改善されている。
さらに、エントリー4~6の結果は、市販の触媒HAP-Hと同様であるか、又はそれより良好である。
【0191】
全てのSRCC触媒(エントリー4~6)の中で、SRCC2は、最も高い1-ブタノール収率で最良の性能を示した。市販のHAP-Hと比較して、SRCC2は良好なブタノール収率でより良好な変換を示した。主生成物1-ブタノール及びアセトアルデヒド以外に、すべての反応を通して見られた副生成物は、各種のC生成物、例えばジエチルエーテル、1-ブタナール、酢酸エチル、クロトンアルデヒド、及びC生成物、例えば1-ヘキサノールを含む。
【0192】
【表4】
【0193】
反応条件:
触媒量=0.1g;WHSV(重量空間速度)=11h-1;エタノール供給量=23.6mmol/h;エタノール体積=18%;N流量=100mL/分;温度=400℃;流通時間=3h;HAP-H=ヒドロキシアパタイト(表面積-100m/g);触媒乾燥=N流通下400℃で2時間;X=転化率;S=選択率;Y=収率。
【0194】
最良の触媒SRCC2を用いて、反応パラメータを最適化し、結果を表5に示す。結果は、3時間流通の初期時間、及び18時間の最終時間について与えられる。エントリー1~4は、WHSVによって反映されるような触媒負荷の研究を示し;エタノール転化率は、触媒装填量の減少(及びWHSVの増加)の際に減少した。エントリー3及び5~8は、気流中のエタノール体積%の変化を示し、エントリー6、9及び10は、反応温度の依存性を示す。総じて、良好なブタノール選択性を有するエタノール転化率の最良の成果は、触媒装填量0.1g(WHSV=11h-1)、気流中のエタノール体積30%、反応温度400℃で得られた。
【0195】
【表5】
【0196】
反応条件:
エタノール供給量=23.6mmol/h;触媒乾燥=400℃でN流通下において2時間;X=転化率;S=1-ブタノールの選択率;Y=1-ブタノールの収率。
【0197】
SRCC2の性能と市販のHAP-H触媒との詳細な比較を表6に示す。比較は、長い反応時間にわたる触媒性能に対する触媒安定性を確認するために行った。反応の経過にわたって、SRCC2触媒は、市販のHAP-Hよりも良好な性能を示した。
【0198】
【表6】
【0199】
反応条件:触媒量=0.1g;WHSV(重量空間速度)=11h-1;エタノール供給量=23.6mmol/h;エタノール体積=30%;N流量=50mL/分;温度=400℃;HAP-H=ヒドロキシアパタイト(表面積-100m/g);触媒乾燥=N流通下において400℃で2時間;X=転化率;Y=ブタノールの収率。
【国際調査報告】