(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレートモノマーをベースとする組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 11/06 20060101AFI20240705BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240705BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C09J11/06
C09J4/02
C09J133/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501225
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 FR2022051391
(87)【国際公開番号】W WO2023285759
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(71)【出願人】
【識別番号】518221575
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド オート アルザス
【氏名又は名称原語表記】Universite de Haute Alsace
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マザイク, ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】フーカイ, ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】シモン, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ミショー, ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】バラ, アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】ラレベー, ジャク
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DF021
4J040FA131
4J040GA01
4J040HC16
4J040HC21
4J040HD20
4J040HD21
4J040HD39
4J040HD40
4J040JA13
4J040JB07
4J040KA13
4J040KA15
4J040LA05
4J040NA12
4J040PA32
4J040PB06
(57)【要約】
本発明は:
- 以下を含む成分A:
- 式(I-A)、(I-B)または(I-C)の1つを有するヨードニウム塩;
- 式(II)、(III)または(IV)の1つを有する少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーM1;
- 25℃の水中で測定した0.3~5の範囲のpKaまたはpKa1を有する有機酸または無機酸;
- 銅塩または銅錯体;
- 式(VI)~(X)のうちの1つを有する少なくとも1つのジヒドロピリジン化合物を含む成分B
を含む架橋性二成分型組成物であって、過酸化物を含まない組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む成分A:
- 下記の式(I-A)、(I-B)または(I-C)の1つを有するヨードニウム塩:
[式中、
- R
1およびR
2はそれぞれ、互いに独立して、水素原子、アルキルラジカル、アルケニルラジカル、シクロアルキルラジカル、シクロアルケニルラジカル、アリールラジカル、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシルラジカル、または-NO
2ラジカルを表し;
- X
-は、一価の陰イオンを表し;
- Wは、OまたはSを表す];
- 25℃の水中で測定した0.3~5の範囲のpKaまたはpKa1を有する有機酸または無機酸;
- 以下の式(II)、(III)または(IV)の1つを有する少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーM1:
[式中、
- R
3は、Hまたはメチルを表し;
- R
4は、H、メチルまたはエチルを表し;
- pは、0または1を表し;
- Zは、H、O、S、アルキル基、ベンジル基、アリール基またはアルコキシ基を表し;
- Yは、O、S、NHまたはCH
2を表し;
-
は、単結合または二重結合であり、
ただし、ZがOを表す場合、結合
は、二重結合である];
- 任意選択で、式(V-1)の銅塩または式(V-2)の銅錯体:
[式中、
- RおよびR’’はそれぞれ、互いに独立して、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し、
- R’は、水素原子、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し、
またはRおよびR’(またはR’およびR’’)はまた、5~8個の炭素原子を含む1つの同じ環に関与していてもよく、前記環は、少なくとも1個のヘテロ原子(例えばOまたはS)を含んでいてもよい];
- 以下の式(VI)~(X)のうちの1つを有する少なくとも1つのジヒドロピリジン化合物を含む成分B:
[式中、
- ラジカルR
5~R
11のそれぞれは、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ラジカル-COOR
aを表し;
前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基は、置換されていてもよく;
R
aは、アルキルもしくはアリールラジカルを表し;
- またはR
5~R
11のうちの2つのラジカルは一緒になって、置換されていてもよい単環式もしくは多環式環を形成する]
を含み、過酸化物を含まない架橋性二成分型組成物。
【請求項2】
式(I-A)または(I-B)または(I-C)において、X
-が、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、HSO
4
-、H
2PO
4
-、HCOO
-、CH
3COO
-、BF
4
-、AsF
6
-、PF
6
-、CH
3-Ph-SO
3
-、SbF
6
-または(F
5Ph)
4B
-を表し、X
-が、好ましくは、BF
4
-、PF
6
-、CH
3-Ph-SO
3
-、(F
5Ph)
4B
-またはSbF
6
-を表し、さらにより優先的には、X
-が、(F
5Ph)
4B
-を表すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I-A)または(I-B)または(I-C)のヨードニウム塩が、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム2-カルボキシレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,3’-ジメチルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、および(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートから選択されることを特徴とする、請求項1および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
ヨードニウム塩が、(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(I-A)または(I-B)または(I-C)のヨードニウム塩の全含有量が、前記架橋性二成分型組成物の全重量に対して、0.05重量%~5.0重量%、好ましくは0.1重量%~3.0重量%、さらにより優先的には0.1重量%~1.5重量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリレートモノマーM1が、以下のモノマー:
から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリレートモノマーM1の全含有量が、前記架橋性二成分型組成物の全重量に対して、20重量%~99重量%、好ましくは50重量%~99重量%、さらにより優先的には75重量%~99重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
式(V-1)の銅塩が、酢酸銅であり、式(V-2)の銅錯体が、銅アセチルアセトネートであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ジヒドロピリジン化合物が、請求項1で定義される式(IX)または(X)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ジヒドロピリジン化合物が、以下の化合物:
から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
式(VI)~(X)のジヒドロピリジン化合物/式(I-A)または(I-B)または(I-C)のヨードニウム塩のモル比が、前記組成物において、0.25~9、好ましくは0.5~6、さらにより優先的には0.9~3の範囲であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
0.3~5の範囲のpKaまたはpka1を有する酸が、カルボン酸から選択され、さらにより優先的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、サリチル酸、安息香酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸およびこれらの混合物から選択される有機酸であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
酸が、2~5、特に4~5の範囲のpkaまたはpka1を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含まないことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
接着剤、マスチック樹脂またはコーティングとしての、好ましくは接着剤としての、請求項1から14のいずれか一項で定義される組成物の使用。
【請求項16】
接着結合によって2つの基材を組み立てるための方法であって:
- 請求項1から14のいずれか一項で定義される、成分AとBを混合することによって得られる組成物を、組み立てられる2つの基材の少なくとも1つにコーティングすること;次いで
- 2つの基材を効果的に接触させること;および
- 組成物を架橋させること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレートモノマーをベースとする組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、輸送、海運、組み立て、電子機器または建設の分野における材料の補修および/または半構造もしくは構造接着接合における前記組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
アクリル組成物は、ラジカル重合によって架橋する公知の反応システムである。これらは、接着剤、マスチック樹脂およびコーティングとして使用される。ラジカル重合は、典型的には、酸化還元反応によってラジカルの生成を起こすレドックスシステムによって開始される。
【0004】
ほとんどのアクリルシステムは、二成分型システムである。第1の成分は、通常、還元剤および反応性モノマーを含有し、第2の成分は、酸化剤を含有する。2つの成分を混合すると、還元剤は、例えば、有機過酸化物のO-O結合の開裂を誘導し、重合が開始される。
【0005】
通常、(メタ)アクリル組成物は、過酸化物(酸化剤)/第3級アミン(還元剤)のレドックスシステムを含む。しかし、これらのシステムは、(メタ)アクリレートモノマーの存在下で貯蔵安定性の問題を呈することがある。
【0006】
反応性と貯蔵安定性の良好なバランスを可能にする新規の(メタ)アクリル組成物が必要とされている。
【0007】
さらに、良好な接着特性を有する新規の(メタ)アクリル組成物も必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.組成物
本発明は:
- 以下を含む成分A:
- 下記の式(I-A)、(I-B)または(I-C)の1つを有するヨードニウム塩:
[式中、
- R
1およびR
2はそれぞれ、互いに独立して、水素原子、アルキルラジカル、アルケニルラジカル、シクロアルキルラジカル、シクロアルケニルラジカル、アリールラジカル、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシルラジカル、または-NO
2ラジカルを表し;
- X
-は、一価の陰イオンを表し;
- Wは、OまたはSを表す];
- 以下の式(II)、(III)または(IV)の1つを有する少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーM1:
[式中、
- R
3は、Hまたはメチルを表し;
- R
4は、H、メチルまたはエチルを表し;
- pは、0または1を表し;
- Zは、H、O、S、アルキル基、ベンジル基、アリール基またはアルコキシ基を表し;
- Yは、O、S、NHまたはCH
2を表し;
-
は、単結合または二重結合であり、
ただし、ZがOを表す場合、結合
は、二重結合である];
- 25℃の水中で測定した0.3~5.0の範囲のpKaまたはpKa1を有する有機酸または無機酸;
- 任意選択で、式(V-1)の銅塩または式(V-2)の銅錯体:
[式中、
- RおよびR’’はそれぞれ、互いに独立して、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し、
- R’は、水素原子、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し、
またはRおよびR’(またはR’およびR’’)はまた、5~8個の炭素原子を含む1つの同じ環に関与していてもよく、前記環は、少なくとも1個のヘテロ原子(例えばOまたはS)を含んでいてもよい];
- 以下の式(VI)~(X)のうちの1つを有する少なくとも1つのジヒドロピリジン化合物を含む成分B:
[式中、
- ラジカルR
5~R
11のそれぞれは、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、ラジカル-COOR
aを表し;
前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基は、置換されていてもよく;
R
aは、アルキルもしくはアリールラジカルを表し;
またはR
5~R
11のうちの2つのラジカルは一緒になって、置換されていてもよい単環式もしくは多環式環を形成する]
を含む架橋性二成分型組成物に関し、前記架橋性二成分型組成物は、過酸化物を含まない。
【0009】
本発明の文脈において、用語「アルキル」は、好ましくは1~20個の炭素原子を含む直鎖または分枝のラジカルを意味する。例えば、メチル、エチルおよびプロピルを挙げることができる。
【0010】
本発明の文脈において、用語「アルケニル」は、少なくとも1個の二重結合を含む直鎖または分枝の炭化水素系ラジカルを意味し、前記ラジカルは、好ましくは2~20個の炭素原子を含む。挙げることができる例としては、プロペニルおよびブテニルがある。
【0011】
本発明の文脈において、用語「アルキニル」は、少なくとも1個の三重結合を含む直鎖または分枝の炭化水素系ラジカルを意味し、前記ラジカルは、好ましくは2~20個の炭素原子を含む。
【0012】
本発明の文脈において、用語「アリール」は、好ましくは6~12個の炭素原子を含む単環式または二環式芳香族ラジカルを意味する。例えば、フェニルを挙げることができる。
【0013】
本発明の文脈において、用語「アリールアルキル」は、アリール基で置換されたアルキル基を意味し、アリールアルキル基は、好ましくは7~20個の炭素原子を含む。アリールアルキル基として、例えばベンジルを挙げることができる。
【0014】
本発明の文脈において、用語「アルキルアリール」は、アルキル基で置換されたアリール基を意味し、前記アルキルアリール基は、好ましくは7~20個の炭素原子を含む。
【0015】
本発明の文脈において、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子、例えばO、SまたはNを含み、好ましくは4~12個の炭素原子を含む単環式または二環式芳香族ラジカルを意味する。挙げることができる例としては、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピリジニル、インドリルまたはイミダゾリルラジカルがある。
【0016】
本発明の文脈において、用語「シクロアルキル」は、好ましくは3~12個の炭素原子を含む、単環式または多環式、好ましくは単環式または二環式の飽和系を意味し、環は、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはノルボルニル基などの対で架橋または縮合されている可能性がある。
【0017】
本発明の文脈において、用語「ヘテロシクロアルキル」は、好ましくは3~12個の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、OまたはNを含む、単環式または多環式、好ましくは単環式または二環式の飽和系を意味し、環は、対で縮合または架橋されている可能性がある。
【0018】
本発明の文脈において、用語「シクロアルケニル」は、好ましくは3個~12個の炭素原子を含む、少なくとも1個の二重結合を含む単環式系または多環式系を意味し、環は、対で縮合または架橋されている可能性がある。
【0019】
本発明の文脈において、用語「アルコキシ」は、-O-アルキルラジカルを意味する。
【0020】
成分A
式(I-A)、(I-B)または(I-C)のヨードニウム塩
成分Aは、上で定義される式(I-A)、(I-B)または(I-C)の1つを有するヨードニウム塩を含む。
【0021】
好ましくは、上式(I-A)、(I-B)および(I-C)において、R1およびR2はそれぞれ、互いに独立して、アルキルラジカルまたは水素原子を表す。
【0022】
上式(I-A)、(I-B)および(I-C)において、X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、HSO
4
-、H
2PO
4
-、HCOO
-、CH
3COO
-、BF
4
-、AsF
6
-、PF
6
-、CH
3-Ph-SO
3
-、(F
5Ph)
4B
-またはSbF
6
-を表すことができる。好ましくは、上式(I-A)、(I-B)および(I-C)において、X
-は、BF
4
-、PF
6
-、CH
3-Ph-SO
3
-、(F
5Ph)
4B
-またはSbF
6
-を表す。さらにより優先的には、X
-は、以下の式:
の陰イオン(F
5Ph)
4B
-を表す。
【0023】
式(I-B)のヨードニウム塩のうち、例えば、以下:
を挙げることができる。
【0024】
式(I-C)のヨードニウム塩のうち、例えば、以下:
を挙げることができる。
【0025】
式(I-A)のヨードニウム塩のうち、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム2-カルボキシレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,3’-ジメチルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートおよび(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを挙げることができる。
【0026】
好ましくは、ヨードニウム塩は、式(I-A)の塩である。さらにより好ましくは、ヨードニウム塩は、以下の式:
を有する(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0027】
このヨードニウム塩により、組成物の安定性は、経時的に、例えば、空気中40℃で最大30日にわたって有利に改善させることができる。
【0028】
式(I-A)のヨードニウム塩は、US4151175またはUS4238394に記載されているとおりに調製することができる。式(I-B)のヨードニウム塩は、Journal of Fluorine Chemistry(2009)、130(5)、501~504に記載されているとおりに調製することができる。式(I-C)のヨードニウム塩は、Journal of Heterocyclic Chemistry(1977)、14(2)、281~8に記載されているとおりに調製することができる。
【0029】
式(I-A)、(I-B)または(I-C)のヨードニウム塩の全含有量は、架橋性二成分型組成物の全重量に対して、0.05重量%~5.0重量%、好ましくは0.1重量%~3.0重量%、さらにより優先的には0.1重量%~1.5重量%の範囲であり得る。
【0030】
(メタ)アクリレートモノマーM1
本発明による成分Aは、以下の式(II)、(III)または(IV):
[式中、
- R
3は、Hまたはメチルを表し;
- R
4は、H、メチルまたはエチルを表し;
- pは、0または1を表し;
- Zは、H、O、S、アルキル基、ベンジル基、アリール基またはアルコキシ基を表し;
- Yは、O、S、NHまたはCH
2-を表し;
-
は、単結合または二重結合であり、
ただし、ZがOを表す場合、結合
は、二重結合である]
の1つを有する少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーM1を含む。
【0031】
(メタ)アクリレートモノマーM1は、以下のモノマー:
から選択することができる。
【0032】
モノマーM1は、好ましくは、式(II)または(III)のモノマーから選択される。モノマーM1は、さらにより優先的には、以下の化合物:
またはこれらの混合物の1つである。
【0033】
成分A中の(メタ)アクリレートモノマーM1の全含有量は、前記成分Aの全重量に対して20重量%以上であってもよい。
【0034】
本発明による架橋性二成分型組成物中の(メタ)アクリレートモノマーM1の含有量は、前記架橋性二成分型組成物の全重量に対して、20重量%~99重量%、好ましくは50重量%~99重量%、さらにより優先的には75重量%~99重量%の範囲であってもよい。
【0035】
有機酸または無機酸
成分Aは、25℃の水中で測定した0.3~5の範囲のpKaまたはpKa1を有する有機酸または無機酸を含む。
【0036】
pKa(または酸性度定数)は、pKa=-log10 Kaで定義され、式中、Kaは、25℃で標準的な方法で測定される酸解離定数である。pKaの推奨される標準的な測定法は、特に電位差測定法であり、より正確には、pH測定法であり、例えば、Techniques de l’ingenieur[Engineering Techniques](ref.K695 v1)に記載されている。これは、pKaを決定するために最も一般的に使用されている方法である。
【0037】
pka1は、pKa1=-log10 Ka1によって定義され、式中、Ka1は、ポリ酸の第1の最強酸性度の酸解離定数である。Ka2は、ポリ酸の第2の酸性度(適切な場合)の酸解離定数であり、Ka3は、ポリ酸の第3の最弱酸性度(適切な場合)の酸解離定数である。ポリ酸のそれぞれの連続する酸性度pKa1、pKa2またはpKa3は、酸性度定数Ka1、Ka2およびKa3の減少値に顕著に対応する。これらの測定には、先に示した同一の標準電位差測定が用いられる。
【0038】
有機酸のうち、例えば、カルボン酸、リン系の酸、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0039】
カルボン酸のうち、例えば、ギ酸、酢酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、シアノ酢酸、サリチル酸、イタコン酸、安息香酸、グリコール酸、チオグリコール酸、ピルビン酸、桂皮酸、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0040】
無機酸のうち、例えば、リン酸、亜リン酸、メチルホスホン酸、次亜リン酸、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
一実施形態によれば、酸は2~5、特に4~5の範囲のpkaまたはpka1を有する。
【0042】
好ましい実施形態によれば、0.3~5の範囲のpKaまたはpka1を有する酸は、カルボン酸から選択され、さらにより優先的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、サリチル酸、安息香酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸およびこれらの混合物から選択される有機酸である。さらにより好ましくは、0.3~5の範囲のpKaまたはpka1を有する酸は、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸およびこれらの混合物から選択される有機酸である。さらにより好ましくは、0.3~5の範囲のpKaまたはpka1を有する酸は、ジクロロ酢酸またはジフルオロ酢酸である。
【0043】
0.3~5の範囲のpkaまたはpka1を有する酸の全含有量は、架橋性二成分型組成物の全重量に対して、0.1重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、さらにより優先的には0.2重量%~2重量%の範囲であってもよい。
【0044】
式(V-1)の銅塩または式(V-2)の銅錯体
成分Aは、式(V-1)の銅塩または式(V-2)の銅錯体:
[式中、
- RおよびR’’はそれぞれ、互いに独立して、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し、
- R’は、水素原子、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカルもしくはヘテロアリールラジカルを表し、
またはRおよびR’(またはR’およびR’’)はまた、5~8個の炭素原子を含む1つの同じ環に関与していてもよく、前記環は、少なくとも1個のヘテロ原子(例えばOまたはS)を含んでいてもよい]
を含んでいてもよい。
【0045】
好ましくは、式(V-1)の塩は、Rがアルキル、さらにより優先的にはメチルを表すものである。
【0046】
好ましくは、式(V-2)の塩は:
- RおよびR’’が、それぞれ、互いに独立して、アルキルラジカル、シクロアルキルラジカル、アリールラジカル、ヘテロアリールラジカル、好ましくはアルキルラジカルを表し;
- R’は水素を表す
ものである。
【0047】
式(V-1)の塩は、好ましくは酢酸銅である。
【0048】
式(V-2)の銅錯体は、好ましくは銅アセチルアセトネートである。
【0049】
式(V-2)の金属錯体の全含有量は、架橋性二成分型組成物の全重量に対して、0重量ppm~3000重量ppm、好ましくは10重量ppm~2000重量ppm、優先的には200重量ppm~2000重量ppm、さらにより優先的には500重量ppm~1500重量ppmの範囲であってもよい。
【0050】
成分B
式(VI)~(X)のジヒドロピリジン化合物
成分Bは、上で定義される式(VI)~(X)のうちの1つを有する少なくとも1つのジヒドロピリジン化合物を含む。
【0051】
ジヒドロピリジン化合物は:
- R11が、アリールまたはヘテロアリールを表し、前記アリールまたはヘテロアリールは、置換されていてもよく、
- R5~R10が、互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルを表し、
R5~R10が、好ましくは、互いに独立して、水素またはアルキルを表す、
式(VI)~(X)のものから選択することができる。
【0052】
好ましい実施形態によれば、ジヒドロピリジン化合物は、前に定義される式(IX)または(X)を有する。
【0053】
ジヒドロピリジン化合物は、以下の化合物:
から選択することができる。
【0054】
好ましい実施形態によれば、ジヒドロピリジンは、以下の化合物:
である。
【0055】
ジヒドロピリジンは、市販されている、例えばVanderbilt Chemicals社より販売されているVanax808 HPであってよく、または、例えばWO2006/086602に記載されているとおりに合成することができる。
【0056】
前に定義される式(VI)~(X)うちのの1つを有するジヒドロピリジン化合物の全含有量は、架橋性二成分型組成物の全重量に対して、0.05重量%~5.0重量%、好ましくは0.1重量%~3.0重量%、さらにより優先的には0.1重量%~1.5重量%の範囲であってもよい。
【0057】
本発明による架橋性二成分型組成物において、式(VI)~(X)のジヒドロピリジン化合物/式(I-A)または(I-B)または(I-C)のヨードニウム塩のモル比は、0.25~9、好ましくは0.5~6、さらにより優先的には0.9~3の範囲であってもよい。
【0058】
組成物
本発明による架橋性二成分型組成物は、モノマーM1とは異なる少なくとも1つの他の(メタ)アクリレートモノマーM2を含んでもよく、成分Aおよび/または成分B中に存在してもよい。
【0059】
(メタ)アクリレートモノマーM2は:
- 以下の式(XI)を有する化合物:
H2C=C(R12)-COOR13 (XI)
[式中、
- R12は、水素原子またはメチル基を表し;
- R13は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキルアリール、アリールアルキルまたはアリールからなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルおよびアルキルアリールは、少なくとも1つのシラン、シリコーン、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネートまたはスルホンで置換および/または中断されていてもよい可能性がある];
- ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
- テトラヒドロフラン(メタ)アクリレート;
- ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;
- トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;
- ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
- トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
- テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;
- ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート;
- ジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート;
- ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート;
- テトラメチレンジ(メタ)アクリレート;
- エチレンジ(メタ)アクリレート;
- ビスフェノールAモノおよびジ(メタ)アクリレート;
- ビスフェノールFモノおよびジ(メタ)アクリレート;ならびに
- これらの混合物
からなる群から選択することができる。
【0060】
(メタ)アクリレートモノマーM2は、特に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-tert-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、2,4,5-トリ-t-ブチル-3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5-テトラ-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0061】
本発明による二成分型組成物中の(メタ)アクリレートモノマーM2の含有量は、前記組成物の全重量に対して、0重量%~69重量%、好ましくは0重量%~49重量%、さらにより優先的には0重量%~24重量%の範囲であってもよい。
【0062】
本発明による二成分型組成物中の(メタ)アクリレートモノマーM2およびモノマーM1の合計の含有量は、前記組成物の全重量に対して、30重量%~99重量%、好ましくは50重量%~99重量%、さらにより優先的には75重量%~99重量%の範囲であってもよい。
【0063】
一実施形態によれば、上記二成分型組成物は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含まない。
【0064】
上で定義される成分Bは、上で定義される少なくとも1つのメタクリレートモノマーM1を含むことができる。
【0065】
好ましくは、成分Bは、前記成分Bの全重量に対して、50重量%超のモノマーM1、さらにより優先的には70重量%超、さらにより有利には90重量%超を含む。
【0066】
本発明による架橋性二成分型組成物は、触媒、充填剤、抗酸化剤、光安定剤/紫外線吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、造膜防止剤、発泡剤、殺生物剤、可塑剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、レオロジー剤、衝撃改良剤、接着促進剤、光学的光沢剤、難燃剤、防露剤、核形成剤、溶剤、促進剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでいてもよい。
【0067】
これらの添加剤は、本発明による組成物の成分Aおよび/または成分B中に存在することができる。
【0068】
挙げることができる促進剤の例としては、サッカリンがある。
【0069】
使用できる可塑剤の例としては、接着剤の分野で通常使用される任意の可塑剤、例えば、エポキシ樹脂、フタレート、ベンゾエート、トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールエタンエステル、トリメチロールメタンエステル、グリセロールエステル、ペンタエリスリトールエステル、ナフテン系鉱油、アジペート、シクロヘキシルジカルボキシレート、パラフィン系油、天然油(エポキシド化されていてもよい)、ポリプロピレン、ポリブチレン、水素化ポリイソプレン、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0070】
例えば、
- 例えば、BASF社より名称Palatinol(商標)DIDPで販売されている、フタル酸ジイソデシル、
- 例えば、Lanxess社より名称Mesamoll(登録商標)で販売されている、アルキルスルホン酸とフェノールのエステル、
- 例えば、BASF社より名称Hexamoll Dinch(登録商標)で販売されている、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル、
- 例えば、Perstorp社より名称Pevalen(商標)で販売されている、テトラ吉草酸ペンタエリスリチル、
- 例えば、Arkema社より名称Vikoflex(登録商標)7170で販売されているエポキシド化大豆油
が使用され得る。
【0071】
使用され得る(チキソトロピー)レオロジー剤の例として、接着剤組成物の分野で慣習的に使用されている任意のレオロジー剤を挙げることができる。
【0072】
好ましくは、チキソトロピー剤は:
- PVCと混和性があり、in situで60℃~80℃の範囲の温度に加熱することによって得られる、可塑剤中のPVCの懸濁液に対応する、PVCプラスチゾル。これらのプラスチゾルは、特に、“Polyurethane Sealants”、Robert M.Evans、ISBN087762-998-6に記載されているものであってもよい、
- フュームドシリカ、例えば、Wackerより名称HDK(登録商標)N20で販売されているもの;
- 4,4’-MDIなどの芳香族ジイソシアネートモノマーと、ブチルアミンなどの脂肪族アミンとの反応から得られる尿素誘導体。このような尿素誘導体の調製は、特に特許出願FR1591172に記載されている;
- Arkemaより販売されているCrayvallac(登録商標)SLTまたはCrayvallac(登録商標)SLAなどの微粉化アミドワックス
から選択される。
【0073】
本発明による組成物はまた、少なくとも1つの有機および/または無機充填剤を含むこともできる。
【0074】
使用され得る無機充填剤は、架橋状態における本発明による組成物の機械的性能を向上させるように有利に選択される。
【0075】
使用され得る無機充填剤の例として、接着剤組成物の分野で通常使用される任意の無機充填剤を使用することができる。これらの充填剤は、典型的には、多様な形状の粒子の形態である。それらは、例えば、球状または繊維状であってもよく、不規則な形状を有していてもよい。
【0076】
好ましくは、充填剤は、粘土、石英、炭酸塩充填剤、カオリン、石膏、粘土およびこれらの混合物からなる群から選択され、優先的には、充填剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩などの炭酸塩充填剤から選択され、より優先的には炭酸カルシウムまたは白亜である。
【0077】
これらの充填剤は、未処理でもよいが、例えば、ステアリン酸などの有機酸、または主にステアリン酸からなる有機酸の混合物を使用して処理されていてもよい。
【0078】
また、中空ガラスミクロスフェアなどの中空無機ミクロスフェア、より具体的にはホウケイ酸カルシウムナトリウムまたはアルミノケイ酸塩で作製されたものも使用してよい。
【0079】
本発明による組成物は、好ましくはアミノシラン、エポキシシランもしくはアクリロイルシランなどのシランから選択される、少なくとも1つの接着促進剤、またはホスフェートエステル、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェートエステル、2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート)、2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(2-アクリロイルオキシエチルホスフェート)、メチル(2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート)、エチル(2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート)、2-ヒドロキシエチルメタクリレートモノおよびジホスフェートエステルの混合物をベースとする接着促進剤を含むこともできる。
【0080】
顔料が組成物中に存在する場合、その含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。それが存在する場合、顔料は、例えば、組成物の全重量に対して0.1重量%~3重量%、または0.4重量%~2重量%を表すことができる。
【0081】
顔料は、有機顔料でも無機顔料でもよい。
【0082】
例えば、顔料はTiO2、特にKronos社より販売されているKronos(登録商標)2059である。
【0083】
組成物は、少なくとも1つの紫外線安定剤または抗酸化剤の0.1重量%~3重量%、好ましくは1重量%~3重量%の量を含むことができる。これらの化合物は、典型的には、熱または光の作用によって形成されやすい酸素との反応から生じる劣化から組成物を保護するために導入される。これらの化合物は、フリーラジカルを捕捉する一次抗酸化剤を含むことができる。一次抗酸化剤は、単独で、または他の二次抗酸化剤や紫外線安定剤と組み合わせて使用することができる。
【0084】
例えば、BASFより販売されているIrganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)B561、Irganox(登録商標)245、Irgafos(登録商標)168、Tinuvin(登録商標)328またはTinuvin(商標)770を挙げることができる。
【0085】
本発明による組成物において、成分A/成分Bの容量比は、20/1~1/1、優先的には10/1~1/1の範囲であり得る。
【0086】
好ましくは、本発明による組成物は:
- 以下を含む成分A:
- 以下の式(I-A)、(I-B)または(I-C)の1つを有するヨードニウム塩:
[式中、R
1およびR
2、X
-およびWは、前に定義されたとおりであり、X-は、好ましくは陰イオン(F
5Ph)
4B
-を表す];
- 前に定義される式(II)、(III)または(IV)の1つを有する少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーM1;
- モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸およびこれらの混合物から選択される有機酸;
- 任意選択で、前に定義される式(V-1)の銅塩または式(V-2)の銅錯体;
- 以下を含む成分B:
- 前に定義される少なくとも1つのジヒドロピリジン化合物;
- 前記成分Bの全重量に対して、好ましくは50重量%超、より優先的には70重量%超、さらにより有利には90重量%超の含有量で、前に定義される少なくとも1つのメタクリレートモノマーM1
を含み;前記架橋性二成分型組成物は、過酸化物を含まない。
【0087】
B.即時使用可能なキット
本発明はまた、上で定義される成分Aと上で定義される成分Bの両方を含み、2つの別々の区画に包装された、即時使用可能なキットにも関する。それは、例えば、二成分型カートリッジであってもよい。
【0088】
実際、本発明による組成物は、例えば定量ポンプを使用して、例えば、2つの成分を直接混合するのに適した割合で第1の区画またはドラム内の成分Aおよび第2の区画またはドラム内の成分Bの両方を含む即時使用可能なキット中の二成分型の形態であってもよい。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、キットはまた、組成物AおよびBの混合のための1つ以上の手段も含む。好ましくは、混合手段は、使用量に適した直径の定量ポンプまたは静的ミキサーから選択される。
【0090】
C.組成物の使用
本発明はまた、接着剤、マスチック樹脂またはコーティングとしての、好ましくは接着剤としての、上で定義される架橋性二成分型組成物の使用にも関する。
【0091】
本発明はまた、輸送、自動車(車、バスまたはトラック)、組み立て、海運、電子機器または建設の分野における材料の補修および/または構造的もしくは半構造接着接合における前記組成物の使用にも関する。
【0092】
本発明は、接着結合によって2つの基材を組み立てるための方法であって:
- 上で定義される、成分Aと成分Bを混合することによって得られる組成物を、組み立てられる2つの基材の少なくとも1つにコーティングすること;次いで
- 2つの基材を効果的に接触させること;
- 組成物を架橋させること
を含む方法に関する。
【0093】
架橋ステップは、0℃~200℃の間、好ましくは10℃~150℃の間、好ましくは23~80℃の間、特に20℃~25℃の間の温度で行うことができる。
【0094】
適切な基材は、例えば、コンクリート、金属もしくは合金(アルミニウム合金、鋼鉄、非鉄金属、および亜鉛メッキ金属など)などの無機基材;またはさもなければ、木材、PVCなどのプラスチック、ポリカーボネート、PMMA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂などの有機基材;金属製基材、および塗料でコーティングされた複合材である。
【0095】
架橋は、例えば紫外線照射源やLEDを用いて、電磁波照射下で行うことができる。
【0096】
電磁波照射下での架橋工程は、300nmを超える、好ましくは360nm~680nmの範囲、さらにより優先的には360nm~420nmの波長で行うことができる。
【0097】
本発明による組成物は、有利には過酸化物を含まない。本発明による組成物は、貯蔵安定性と高い反応性の良好なバランスを有利に可能にする。
【0098】
本発明による組成物は、架橋後、良好な接着特性を有利に有する。
【0099】
加えて、架橋組成物の表面は、有利に迅速に乾燥し、粘着性なしであり得、それによって特に、工業プロセスの生産性を高めることが可能になる。
【0100】
上述したすべての実施形態は、互いに組み合わせることができる。特に、組成物の様々な上記構成要素、特に、組成物の好ましい実施形態は、互いに組み合わせることができる。
【0101】
本発明の文脈では、用語「x~yの間」または「x~yの範囲」は、上下限値xとyが含まれる範囲を意味する。例えば、範囲「0%と25%の間」は、具体的には、0%および25%の値を含む。
【0102】
ここで、本発明を以下の実施例で説明するが、これらは単に例示する目的で記載され、その範囲を限定するとは解釈されるべきではない。
【実施例】
【0103】
以下の原料を使用した:
- SR(登録商標)531:Arkemaより販売されている環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CAS:66492-51-1);
- Speedcure(登録商標)939:Lambsonより販売されている(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CAS:178233-72-2);
- メチルメタクリレート(MMA):Arkemaより販売されている;
- Vanax(登録商標)808 HP:Vertellus Specialtiesより販売されている3,5-ジエチル-1,2-ジヒドロ-1-フェニル-2-プロピルピリジン(CAS:34562-31-7);
- Cu(Acac)2:Sigma-Aldrichから入手可能な銅(II)ビス(アセチルアセトナート)(CAS:13395-16-9);
- Cu(OAc)2(CAS:142-71-2):Aldrichから入手可能な酢酸銅(II);
- Sigma-Aldrichから入手可能なジフルオロ酢酸(CAS:381-73-7)。
【0104】
実施例1:組成物1の調製
成分Aの原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0105】
成分Bを構成する種々の原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0106】
成分Aと成分Bを、Sulzer(登録商標)Mixpacミキサーを用い、周囲温度23℃で1:1の容量比で混合する。
【0107】
実施例2:組成物2の調製
成分Aの原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0108】
成分Bを構成する種々の原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0109】
成分Aと成分Bを、Sulzer(登録商標)Mixpacミキサーを用い、周囲温度23℃で1:1の容量比で混合する。
【0110】
実施例3:組成物3の調製
成分Aの原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0111】
成分Bを構成する種々の原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0112】
成分Aと成分Bを、Sulzer(登録商標)Mixpacミキサーを用い、周囲温度23℃で1:1の容量比で混合する。
【0113】
実施例4:組成物4の調製(MMAを用いた比較例)
成分Aの原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0114】
成分Bを構成する種々の原料を、以下の表に示す割合で、温度23℃で、連続撹拌ミキサー中、窒素下で混合する。
【0115】
成分Aと成分Bを、Sulzer(登録商標)Mixpacミキサーを用い、周囲温度23℃で1:1の容量比で混合する。
【0116】
実施例5:組成物の性能
接着結合試験は、以下の条件で行った:
- 組成物1、2、3または4(各々、Sulzer(登録商標)Mixpacミキサーを用いて成分AとBを混合することにより、実施例1、2、3および4で得られた)を第1のガラス製顕微鏡スライド(25×76mm)上に塗布;
- 組成物1、2、3または4を受けた第1のスライドに、第2のガラス製顕微鏡スライド(25×76mm)を貼り付けること;
- 2枚の顕微鏡スライドをスライドさせて、2枚のスライド間で組成物1、2、3または4を均等に分配できるようにする工程(ここで酸素曝露が減少する)。
【0117】
2枚のスライドを引き離すことができなくなった時点での時間を記録する。
【0118】
反応性(発熱)を、パイロメーターの使用と赤外線イメージングにより連続的に分析する。ゲルタイム(またはラグタイム)は、試料が重合を開始するのにかかる時間である。
【0119】
時間/温度プロファイルを、2g(高さ約4.0mm)と0.25g(高さ1.4mm)の重合について、±1℃の精度を持つOmega OS552-V1-6工業用赤外線温度計(Omega Engineering(登録商標),Inc., Stamford, CT)を用いて作成した。
【0120】
【0121】
この表からわかるように、組成物1、2および3(本発明による)は、これらの短いゲルタイム(各々、10分、26秒および34秒)を鑑みると、(成分AおよびBを混合した後)有利に迅速に重合する。ゲルタイムは、銅錯体の存在下では有利にかなり短くなる。一方、比較組成物4(実施例4)は、大気中では重合しないことが観察された。
【0122】
さらに、組成物1、2および3は、比較組成物4よりも速い硬化時間を伴った結合を有利にもたらす。
【国際調査報告】