(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】カチオン性グルカンエステル誘導体
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20240705BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240705BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08B37/00 K
C08B37/00 C
C08B37/00 D
A61K8/73
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501500
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022036643
(87)【国際公開番号】W WO2023287684
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ナタナエル・ビハブトゥ
(72)【発明者】
【氏名】ヂァンヂァン・フアン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ピーター・レンジェス
(72)【発明者】
【氏名】ダビド・バルデスエイロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ・シー・マコーリフ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C090
【Fターム(参考)】
4C083AD211
4C083CC32
4C083EE25
4C090AA05
4C090BA06
4C090BA19
4C090BA23
4C090BB53
4C090BB94
4C090BD35
4C090BD36
4C090CA38
4C090DA26
(57)【要約】
本明細書では、グルカンのエステル誘導体を含む組成物が開示され、グルカンは、グルカンにエステル結合した少なくとも1つのカチオン性有機基による最大約3.0の置換度(DoS)を有する。これらの組成物の調製方法、及びそれらを使用する様々な用途も更に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカンのエステル誘導体を含む組成物であって、前記グルカンが、前記グルカンにエステル結合した少なくとも1つのカチオン性有機基による最大約3.0の置換度(DoS)を有する、組成物。
【請求項2】
前記グルカンがα-グルカンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記α-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,3結合である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記α-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,6結合であり、任意選択的には前記α-グルカンが少なくとも1%のα-1,2及び/又はα-1,3分岐を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルカンがβ-グルカンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記β-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約50%がβ-1,3結合である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記グルカンが少なくとも6の重量平均重合度(DPw)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性有機基による前記DoSが少なくとも約0.005である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性有機基による前記DoSが少なくとも約0.3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記カチオン性有機基による前記DoSが約0.3~約2.0である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記カチオン性有機基が、構造:
【化1】
を含み、式中の、各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
各R
1、R
2、及びR
3がCH
3である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記カチオン性有機基が、構造:
【化2】
を含み、式中の各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む基である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
各R
1、R
2、及びR
3がCH
3である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記グルカンのエステル誘導体の二酸化炭素発生試験法によって決定される生分解性が、15日後に少なくとも10%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が水性組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物がホームケア製品、パーソナルケア製品、工業製品、摂取可能な製品、又は医薬品である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1種の界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
グルカンのエステル誘導体の製造方法であって、
(a)反応において、カチオン性有機基を含む少なくとも1種のエステル化剤とグルカンを接触させることであって、少なくとも1つのカチオン性有機基が前記グルカンにエステル化され、それによって前記グルカンのエステル誘導体を生成することを含み、前記グルカンのエステル誘導体が、前記カチオン性有機基による最大約3.0の置換度(DoS)を有すること;及び
(b)任意選択的に、工程(a)で製造した前記グルカンのエステル誘導体を単離すること;
を含む方法。
【請求項20】
毛髪をスタイリングする方法であって、以下の少なくとも工程(a)及び(b)、又は工程(c)及び(d):
(a)請求項1に記載のグルカンエステル誘導体と毛髪を接触させ、それにより処理された毛髪を提供する工程;及び
(b)前記処理された毛髪(又はコーティングされた毛髪)を望みの形態にする工程;又は
(c)毛髪を望みの形態にする工程;及び
(d)工程(c)の前記毛髪を請求項1に記載のグルカンエステル誘導体と接触させ、それにより処理された毛髪を提供する工程;及び
(e)任意選択的に、工程(a)又は(d)において前記グルカンエステル誘導体を前記毛髪に供給するために使用された溶媒が存在する場合にそれを除去する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第63/221,034号(2021年7月13日出願)の利益を主張するものであり、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、多糖誘導体の分野に関する。例えば、本開示は、ベタイングルカンエステルなどのカチオン性グルカンエステル誘導体、及び様々な用途におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
酵素合成や又は微生物の遺伝子操作を使用して新しい構造の多糖を見つけたいという願望に動かされ、研究者らは、生分解性であり、且つ再生可能原料から経済的に製造することができるオリゴ糖及び多糖を発見した。更なる研究により、このような多糖を化学的に修飾(誘導体化)することで、パーソナルケア、ホームケア、インダストリアルケア、医薬品、及び食品などの分野で更なる有用性を持たせることができることが示されている。例えば、α-1,3グリコシド結合を含むα-グルカンのエーテル及びエステルは、様々な用途を有することが開示されている(例えば米国特許出願公開第2016/0304629号明細書、同第2016/0311935号明細書、同第2017/0204232号明細書、同第2014/0187767号明細書、同第2020/0308371号明細書)。α-1,6グリコシド結合を含むα-グルカンの様々な誘導体、及びその使用のための用途も開示されている(例えば米国特許出願公開第2018/0312781号明細書、同第2018/0237816号明細書、同第2018/0282385号明細書)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの進歩にもかかわらず、望ましい有用性を有する一部のグルカン誘導体は、誘導体化レベルが高いことのため生分解性プロファイルが不十分である。誘導体化レベルが低い一部のグルカンはより優れた生分解性を示すものの、そのような製品は、最適な、又は更には十分な活性を発揮できないことが多い。したがって、再生可能であるのみならず生分解性でもあり、合成成分を含む製品と同等以上の性能を提供する製品成分に対する要求が依然として存在する。この要求に対処するために、本明細書ではカチオン性グルカンエステル誘導体が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本開示は、グルカンのエステル誘導体を含む組成物に関し、グルカンは、グルカンにエステル結合した少なくとも1つのカチオン性有機基による最大約3.0の置換度(DoS)を有する。別の実施形態では、本開示は、グルカンのエステル誘導体を製造する方法に関する。そのような方法は、(a)反応において、カチオン性有機基を含む少なくとも1種のエステル化剤とグルカンを接触させることであって、少なくとも1つのカチオン性有機基がグルカンにエステル化され、それによってグルカンのエステル誘導体を生成することを含み、グルカンのエステル誘導体が、カチオン性有機基による最大約3.0のDoSを有すること;及び(b)任意選択的に、工程(a)で製造したグルカンのエステル誘導体を単離すること;を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】ベタイン変性α-1,3-グルカンエステルの生分解性プロファイルを示す。RN3及びRN7曲線は、同じグルカンエステルサンプルを使用した反復試験を表す。実施例3を参照。
【発明を実施するための形態】
【0007】
全ての引用された特許文献及び非特許文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
別段の開示がない限り、本明細書で使用される用語「a」及び「an」は、言及される特徴のうちの1つ以上(すなわち少なくとも1つ)を包含することが意図されている。
【0009】
存在する場合、別段の明記がない限り、全ての範囲が包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、「1から5」(すなわち1~5)の範囲が記載されている場合、記載されている範囲は、「1から4」、「1から3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3&5」などの範囲を含むものとして解釈されるべきである。本開示における様々な範囲の数値は、別段の指示がない限り、記載されている範囲内の最小値と最大値の両方に「約」という言葉が付いているかのように近似値として記載されている。この形式では、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するために、典型的には記載されている範囲の上下のわずかな変動を使用することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のあらゆる値を含む連続的な範囲として意図されている。
【0010】
本明細書全体を通して示される全ての最大数値の限定は、そのようなそれよりも小さい数値の限定が本明細書に明示的に記載されているかのように、あらゆるそれよりも小さい数値の限定を含むことが意図されている。本明細書全体を通して示される全ての最小数値の限定は、そのようなそれよりも大きい数値の限定が本明細書に明示的に記載されているかのように、あらゆるそれよりも大きい数値の限定を含む。本明細書全体を通して示される全ての数値範囲は、それよりも狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように、そのような広い数値範囲内に入る全ての狭い数値範囲が含まれる。明確にするために、態様/実施形態との関係において上述及び後述される本開示の特定の特徴は、単一の要素において組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の態様/実施形態との関係において説明される本開示の様々な特徴は、個別に、又は任意の部分的な組み合わせで提供することもできる。
【0011】
「多糖」(又は「グリカン」)という用語は、グリコシド結合によって一体に結合された単糖単位の長鎖から構成されており、且つ加水分解すると多糖の構成要素である単糖及び/又はオリゴ糖が得られるポリマー状の炭水化物分子を意味する。本明細書における多糖は、直鎖であっても分岐であってよく、及び/又はホモ多糖(1種類のみの構成単糖から構成される)であってもヘテロ多糖(2種以上の異なる構成単糖から構成される)であってもよい。本明細書における多糖の例としては、グルカン(ポリグルコース)及び大豆多糖が挙げられる。
【0012】
本明細書において「グルカン」とは、グルコースのポリマー(ポリグルコース)である多糖の一種である。グルカンは、例えば、約、又は少なくとも約90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、又は100重量%のグルコースモノマー単位から構成され得る。本明細書におけるグルカンの例は、α-グルカン及びβ-グルカンである。
【0013】
「α-グルカン」、「α-グルカンポリマー」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。α-グルカンは、α-グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含むポリマーである。典型的な態様では、本明細書のα-グルカンのグリコシド結合は、約、又は少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のα-グリコシド結合である。本明細書におけるα-グルカンポリマーの例としては、α-1,3-グルカン、α-1,4-グルカン、及びα-1,6-グルカンが挙げられる。
【0014】
「β-グルカン」、「β-グルカンポリマー」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。β-グルカンは、β-グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含むポリマーである。典型的な態様では、本明細書のβ-グルカンのグリコシド結合は、約、又は少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のβ-グリコシド結合である。本明細書におけるβ-グルカンポリマーの例としては、β-1,3-グルカン、β-1,4-グルカン、及びβ-1,6-グルカンが挙げられる。
【0015】
本明細書における用語「糖」及び他の同様の用語は、別段の記載がない限り、単糖及び/又は二糖/オリゴ糖を指す。本明細書における「二糖」は、グリコシド結合によって連結された2つの単糖を有する炭水化物を指す。本明細書における「オリゴ糖」は、例えばグリコシド結合によって連結された3~15個の単糖を有する炭水化物を指す場合がある。オリゴ糖は「オリゴマー」とも呼ばれる。二糖/オリゴ糖内に含まれる単糖(例えばグルコース及び/又はフルクトース)は、「モノマー単位」、「単糖単位」、又は他の同様の用語で呼ばれる場合がある。
【0016】
「α-1,3-グルカン」、「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。α-1,3-グルカンは、グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含むα-グルカンであって、そのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,3であるα-グルカンである。いくつかの態様におけるα-1,3-グルカンは、約、又は少なくとも約90%、95%、又は100%のα-1,3-グリコシド結合を含む。本明細書のα-1,3-グルカンに他の結合が存在する場合、そのほとんど又は全てが、典型的にはα-1,6であるが、一部の結合はα-1,2及び/又はα-1,4-の場合もある。本明細書におけるα-1,3-グルカンは、典型的には非水溶性である。
【0017】
本明細書における「α-1,6-グルカン」、「ポリα-1,6-グルカン」、「α-1,6-グルカンポリマー」、「デキストラン」などの用語は、グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含む水溶性α-グルカンであって、そのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,6であるα-グルカンを指す。いくつかの態様におけるα-1,6-グルカンは、約、又は少なくとも約90%、95%、又は100%のα-1,6-グリコシド結合を含む。α-1,6-グルカン中に存在し得る他の結合には、α-1,2結合、α-1,3結合、及び/又はα-1,4結合が含まれる。
【0018】
「α-1,4-グルカン」、「ポリα-1,4-グルカン」、「α-1,4-グルカンポリマー」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。α-1,4-グルカンは、グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含むα-グルカンであって、そのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,4であるα-グルカンである。いくつかの態様におけるα-1,4-グルカンは、約、又は少なくとも約90%、95%、又は100%のα-1,4グリコシド結合を含む。本明細書のα-1,4-グルカンにおける他の結合(存在する場合)のほとんど又は全ては、典型的にはα-1,6(典型的には分岐を形成する)であるが、α-1,2及び/又はα-1,3の場合もある。本明細書におけるα-1,4-グルカンの例としては、アミロース、アミロペクチン、及びデンプンが挙げられる。
【0019】
「β-1,4-グルカン」、「ポリβ-1,4-グルカン」、「β-1,4-グルカンポリマー」、「セルロース」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。β-1,4-グルカンは、グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含む非水溶性β-グルカンであって、そのグリコシド結合の約100%がβ-1,4であるβ-グルカンである。β-1,4-グルカンは、例えば米国特許出願公開第2018/0334696号明細書に開示されているものであってよい。
【0020】
「β-1,3-グルカン」、「ポリβ-1,3-グルカン」、「β-1,3-グルカンポリマー」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。β-1,3-グルカンは、グリコシド結合によって一体に連結されたグルコースモノマー単位を含むβ-グルカンであって、そのグリコシド結合の少なくとも約50%がβ-1,3であるβ-グルカンである。いくつかの態様におけるβ-1,3-グルカンは、約、又は少なくとも約90%、95%、又は100%のβ-1,3-グルコシド結合を含む。本明細書のβ-1,3-グルカンにおける他の結合(存在する場合)のほとんど又は全ては、典型的にはβ-1,6(典型的には分岐を形成する)である。β-1,3-グルカンは、例えば米国特許出願公開第2014/0287919号明細書及びStone,B.A.(2009,Chemistry of Beta-Glucans,In Antony Bacic et al.,Eds.,Chemistry.Biochemistry,and Biology of 1-3 Beta Glucans and Related Polysaccharides.Academic Press,Burlington,MA)に開示されているものであってよく、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
「大豆多糖」及び「大豆繊維」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され、大豆から得ることができる高分子量の非水溶性多糖物質を指す。典型的には、大豆多糖は大豆の細胞壁構造成分から得られる。本明細書における大豆多糖は、例えば米国特許出願公開第2018/0079832号明細書に開示されているものであってよく、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本明細書で言及される「α-1,2分岐」(及び同様の用語)は、典型的には、デキストラン骨格にα-1,2結合したグルコースを含む。したがって、本明細書におけるα-1,2分岐は、α-1,2,6結合とも呼ばれる場合がある。本明細書におけるα-1,2分岐は、典型的には1つのグルコース基を有する(任意選択的にはペンダントグルコースと呼ばれる場合がある)。
【0023】
本明細書で言及される「α-1,3分岐」(及び同様の用語)は、典型的には、デキストラン骨格にα-1,3結合したグルコースを含む。したがって、本明細書におけるα-1,3分岐は、α-1,3,6結合とも呼ばれる場合がある。本明細書におけるα-1,3分岐は、典型的には1つのグルコース基を有する(任意選択的にはペンダントグルコースと呼ばれる場合がある)。
【0024】
本明細書で言及される「α-1,4分岐」(及び同様の用語)は、典型的には、デキストラン骨格にα-1,4結合したグルコースを含む。したがって、本明細書におけるα-1,2分岐は、α-1,4,6結合とも呼ばれる場合がある。本明細書におけるα-1,4分岐は、典型的には1つのグルコース基を有する(任意選択的にはペンダントグルコースと呼ばれる場合がある)。
【0025】
本明細書における多糖のパーセント分岐率とは、分岐点となる多糖中の全ての結合のパーセント割合を指す。例えば、本明細書におけるα-グルカン中のα-1,3分岐のパーセントは、α-1,3分岐点となるグルカン中の全ての結合のパーセント割合を指す。別段の記載がない限り、本明細書に開示される結合パーセント割合は、多糖の全ての結合、又は開示が特に関係する多糖の部分に基づく。
【0026】
「結合」、「グリコシド結合(linkage、bond)」などの用語は、糖化合物(オリゴ糖及び/又は多糖)内の糖モノマーを連結する共有結合を指す。グリコシド結合の例としては、1,6-α-D-グリコシド結合(本明細書では「α-1,6」結合とも呼ばれる)、1,3-α-D-グリコシド結合(本明細書では「α-1,3」結合とも呼ばれる)、1,4-α-D-グリコシド結合(本明細書では「α-1,4」結合とも呼ばれる)、及び1,2-α-D-グリコシド結合(本明細書では「α-1,2」結合とも呼ばれる)が挙げられる。
【0027】
多糖又はその誘導体のグリコシド結合形態は、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して決定することができる。例えば、結合形態は、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば13C NMR及び/又は1H NMR)を使用する方法を使用して決定することができる。使用可能なこれらの方法及び他の方法は、例えばFood Carbohydrates:Chemistry.Physical Properties and Applications (S.W.Cui,Ed.,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本明細書で使用される「モル置換」(M.S.)という用語は、本明細書の多糖誘導体のモノマー単位当たりの有機基のモル数を指す。なお、例えば多糖誘導体のモル置換の値は、例えば数百、更には数千という非常に高い上限を有し得る。
【0029】
本明細書における多糖又は多糖誘導体の「分子量」は、重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)として表すことができ、その単位はダルトン(Da)又はグラム/モルである。或いは、分子量は、DPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)として表すことができる。オリゴ糖などのより小さい多糖ポリマーの分子量は、任意選択的には「DP」(重合度)として与えられる場合があり、「DP」は、単に多糖内に含まれるモノマーの数を指す;「DP」は、個々の分子に基づいてポリマーの分子量を特徴付けることもできる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)など、これらの分子量測定値を計算するための様々な手段が当該技術分野で公知である。
【0030】
本明細書において、Mwは、Mw=ΣNiMi2/ΣNiMiとして計算することができ、式中のMiは個々の鎖iの分子量であり、Niはその分子量の鎖の数である。SECの他に、ポリマーのMwは、静的光散乱、質量分析、MALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型)、小角X線若しくは中性子散乱、又は超遠心分離などの他の技術によって決定することができる。本明細書において、Mnは、Mn=ΣNiMi/ΣNiとして計算することができ、式中のMiは鎖iの分子量であり、Niはその分子量の鎖の数である。SECの他に、ポリマーのMnは、蒸気圧浸透圧法、又はプロトンNMR、プロトンFTIR、若しくはUV-Visなどの分光法による末端基の決定など、さまざまな束一的性質の方法によって測定することができる。本明細書において、DPn及びDPwは、それぞれMw及びMnから、それらを1つのモノマー単位M1のモル質量で割ることによって計算することができる。無置換グルカンポリマーの場合、M1=162である。置換(誘導体化)グルカンポリマーの場合、M1=162+Mf×DoSである。ここで、Mfは置換基のモル質量であり、DoSは置換度(グルカンポリマーの1つのグルコース単位当たりの置換基の平均数)である。
【0031】
本明細書における「多糖誘導体」(及び類似の用語)(例えばα-又はβ-グルカン誘導体などのグルカン誘導体)は、典型的には、少なくとも1種類の有機基(例えば本明細書のアシル基)で置換された多糖を指す。本明細書における多糖誘導体の置換度(DoS)は、最大約3.0(例えば約0.001~約3.0)であってよい。アシル基である本明細書における有機基は、エステル結合を介して多糖誘導体に結合している。本明細書における多糖誘導体の前駆体は、典型的には、誘導体を製造するために使用される非誘導体化多糖を指す(誘導体の多糖部分と呼ばれる場合もある)。アシル基である本明細書における有機基は、正に帯電している(カチオン性)。通常、そのような電荷は、有機基が本明細書の水性組成物中にあるときに存在することができ、更に水性組成物のpHが考慮される(いくつかの態様では、pHは4~10若しくは5~9、又は本明細書に開示の任意のpHであってよい)。
【0032】
本明細書で使用される「置換度」(DoS又はDS)という用語は、多糖誘導体の各モノマー単位において1つ以上の種類の有機基で置換されているヒドロキシル基の平均数を指す。本明細書における多糖誘導体のDoSは、特定の置換基のDoS、又は異なる置換基の種類(例えば混合エステルの場合)のDoS値の合計である全体のDoSに関して言及される場合がある。別段の開示がない限り、特定の置換基の種類に関してDoSが記載されていない場合は、全体のDoSを意味する。
【0033】
「グルカンエステル誘導体」、「グルカンエステル化合物」、「グルカンエステル」、「カチオン性グルカンエステル」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。本明細書におけるグルカンエステル誘導体は、1つ以上のカチオン性の(正に帯電した)有機基(すなわちカチオン性アシル基)でエステル化されたグルカンであり、その結果、その誘導体は、最大約3.0の、1つ以上のカチオン性有機基によるDoSを有する。グルカンエステル誘導体は、部分構造-CG-O-CO-C-を含むため、本明細書では「エステル」と呼ばれる。式中、「-CG-」は、グルカンエステル誘導体のモノマー単位(例えばグルコース)の炭素原子を表し(そのような炭素原子は、エステルの多糖前駆体中のヒドロキシル基[-OH]に結合していた)、「-CO-C-」はアシル基中に含まれる。本明細書におけるグルカンエステル誘導体の例は、ベタイングルカンエステルである。
【0034】
本明細書における「エステル化反応」、「エステル化反応組成物」などの用語は、少なくとも本明細書に開示のグルカンとエステル化剤とを含み、典型的には溶媒も含む反応を指す。反応では、グルカンのグルコースモノマー単位の1つ以上のヒドロキシル基が、エステル化剤から供給されるカチオン性有機基(カチオン性アシル基)でエステル化するための適切な条件(例えば溶媒、時間、温度)下に置かれ、それによってカチオン性グルカンエステル化合物/誘導体が得られる。
【0035】
本明細書で使用される「水性液体」、「水性流体」、「水性条件」、「水性の状況」、「水系」などの用語は、水又は水溶液を指す場合がある。本明細書における「水溶液」は、1つ以上の溶解した塩を含むことができ、いくつかの実施形態では、最大総塩濃度は約3.5重量%であってよい。本明細書における水性液体は、典型的には、液体中の唯一の溶媒として水を含むが、水性液体は、任意選択的には水に混和可能な1種以上の他の溶媒(例えば極性有機溶媒)を含むことができる。したがって、水溶液は、少なくとも約10重量%の水を含む溶媒を含むことができる。
【0036】
本明細書における「水性組成物」は、例えば約、又は少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、99、又は100重量%の水を含む液体成分を有する。水性組成物の例としては、例えば混合物、溶液、分散液(例えば懸濁液、コロイド分散液)、及びエマルジョンが挙げられる。いくつかの実施形態では、水性組成物のpHは、約2~約11(例えば約4~約9)である。
【0037】
本明細書で使用される「コロイド分散液」という用語は、分散相及び分散媒を有する不均一系、すなわち、微視的に分散された不溶性粒子が別の物質(例えば水や水溶液などの水性組成物)全体に懸濁されている系を指す。本明細書におけるコロイド分散液の一例は親水コロイドである。「分散媒」及び「分散剤」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され、分散液の形成及び/又は安定化を促進する物質を指す。本明細書における「分散」は、水性液体中で物質の分散液を調製する行為を指す。本明細書において使用される「ラテックス」という用語(及び同様の用語)は、水又は水溶液中の1つ以上の種類のポリマー粒子の分散液を指す。いくつかの態様では、ラテックスは分散粒子を含むエマルジョンである。本明細書における「エマルジョン」は、ある液体の微小な液滴が、液滴が溶解又は混和しない別の液体中に分散したもの(例えば水や水溶液などの極性液体中の、油などの非極性物質又はアルカンなどの他の有機液体)である。
【0038】
本開示のいくつかの態様におけるカチオン性グルカンエステル誘導体は、分散液又はエマルジョンに安定性を提供することができる。本明細書における分散液又はエマルジョンの「安定性」(又は「安定である」という性質)は、例えば、分散液の分散粒子、又は別の液体中に分散した液滴(エマルジョン)が、分散液又はエマルジョンを最初に調製した後、約、又は少なくとも約0.5、1、2、4、6、9、12、18、24、30、若しくは36ヶ月の期間、分散したままである能力である(例えば約、又は少なくとも約70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100重量%の分散液の粒子又はエマルジョンの液滴が分散状態にある)。安定な分散液又はエマルジョンは、分散/乳化された物質の全体的なクリーミング、沈降、凝集、及び/又は合体に抵抗することができる。
【0039】
本明細書における「可溶性」、「水溶性」、「水可溶性」(及び同様の用語)であるカチオン性グルカンエステル誘導体は、水又は他の水性条件に溶解し(或いはかなり溶解し)、任意選択的にはその際に水性条件が4~9のpH(例えばpH6~8)及び/又は温度約1~130℃の温度(例えば20~25℃)を有することによって更に特徴付けられる。対照的に、本明細書における「不溶性」、「非水溶性」、「水不溶性」などであるカチオン性グルカンエステル誘導体は、これらの条件下では溶解しない。いくつかの態様では、そのような水性条件(例えば23℃の水)の1000ミリリットル中に、1.0グラム未満(例えば検出できない量)の非水溶性カチオン性グルカンエステル誘導体が溶解する。
【0040】
本明細書において使用される「粘度」という用語は、流体(水性又は非水性)が、それを流動させようとする力に抵抗する程度の尺度を意味する。本明細書で使用することができる粘度の様々な単位には、例えばセンチポアズ(cP、cps)及びパスカル-秒(Pa・s)が含まれる。1センチポアズはポアズの100分の1であり、1ポアズは0.100kg・m-1・s-1である。粘度は、いくつかの態様では「固有粘度」(IV、η、dL/gの単位)として報告され得る。この用語は、グルカンポリマーを含む液体(例えば溶液)の粘度に対するグルカンポリマーの寄与の尺度を意味する。本明細書におけるIV測定値は、例えば、米国特許出願公開第2017/0002335号明細書、同第2017/0002336号明細書、若しくは同第2018/0340199号明細書、又はWeaverら(J.Appl.Polym.Sci.35:1631-1637)又はChun及びPark(Macromol.Chem.Phys.195:701-711)に開示されているものなどの任意の適切な方法を使用して得ることができ、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。IVは、1つには、例えば約0.9~2.5重量%(例えば1、2、1~2重量%)のLiClを含むDMSOにグルカンポリマーを溶解(任意選択的には約100℃で少なくとも2、4、又は8時間溶解)させることによって測定することができる。本明細書におけるIVは、任意選択的には、分子量の相対的な尺度として使用することができる。
【0041】
「ホームケア製品」という用語及び同様の用語は、典型的には、家及びその中の処理、掃除、手入れ、及び/又はコンディショニングに関連する製品、商品、及びサービスを指す。前述したものには、例えばそのようなケア用途の化学物質、組成物、製品、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0042】
「布地」、「繊維製品」、「布」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用され、天然繊維及び/又は人工繊維のネットワークを有する織物材料を指す。そのような繊維は、例えば糸又はヤーンの形態であってよい。
【0043】
「ファブリックケア組成物」及び同様の用語は、何らかの形式で布地を処理するために適した任意の組成物を指す。そのような組成物の例には、ランドリーケア組成物の例である洗濯洗剤及び布地柔軟剤が含まれる。
【0044】
本明細書における「洗剤組成物」は、典型的には、少なくとも界面活性剤(洗剤化合物)及び/又はビルダーを含む。本明細書における「界面活性剤」は、その物質が溶解している液体の表面張力を低下させる傾向がある物質を指す。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、起泡剤、及び/又は分散剤として機能することができる。
【0045】
「重質洗剤」、「汎用洗剤」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用され、白色の及び着色された繊維製品を任意の温度で定期的に洗浄するのに有用な洗剤を指す。「軽質洗剤」、「高級生地洗剤」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用され、ビスコース、ウール、シルク、マイクロファイバー、又はその他の特別な手入れを必要とする布地などのデリケートな生地の手入れに有用な洗剤を指す。「特別な手入れ」には、例えば過剰な水の使用、少ない撹拌、及び/又は無漂白の条件が含まれ得る。
【0046】
本明細書における「布地柔軟剤」、「布地コンディショナー」などの用語は、例えば布地の柔らかさを維持するのに役立たせるために及び/又は布地に他の有益な特徴(例えば潤滑性、帯電防止、まとわりつき防止、及び/又はしわ防止)を付与するために潤滑剤及び/又は他の表面改質成分を布地に付着させる、液体形態又は固体形態などの組成物を指す。本明細書における布地柔軟剤は、典型的には、洗濯洗剤による布地の洗浄の後に、通常、布地をすすぎながら布地に適用される。
【0047】
「パーソナルケア製品」という用語及び同様の用語は、典型的には、人の治療、洗浄、クレンジング、ケア、又はコンディショニングに関する製品、商品、及びサービスを指す。前述したものには、例えばそのようなケアに利用される化学物質、組成物、製品、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0048】
本明細書における「オーラルケア組成物」は、歯科(歯)及び/又は歯肉の表面などの口腔内の柔らかい又は硬い表面を治療するのに適した任意の組成物である。
【0049】
「摂取可能な製品」、「摂取可能な組成物」などの用語は、消費を目的としているか否かに関わらず、単独で、又は別の物質と一緒に、経口で(すなわち口から)摂取できる任意の物質を指す。したがって、摂取可能な製品には食品/飲料品が含まれる。「食品/飲料品」は、固体、半固体、又は液体を含む、ヒト又は動物による消費(例えば栄養目的)が意図されているあらゆる食用製品を指す。本明細書における「食品」は、任意選択的には、例えば「食材」、「食料」、又は他の同様の用語で呼ばれる場合がある。「非食用製品」(「非食用組成物」)は、食品又は飲料の消費以外の目的で口から摂取可能な任意の組成物を指す。本明細書における非食用製品の例としては、サプリメント、栄養補助食品、機能性食品、医薬品、口腔ケア製品(例えば歯磨剤、洗口剤)、及び甘味付けされたリップクリームなどの化粧品が挙げられる。本明細書における「医薬品」、「薬」、「薬剤」、「薬物」などの用語は、疾患又は傷害を治療するために使用される組成物を指し、経腸で又は非経口で投与することができる。
【0050】
「医療品」という用語及び同様の用語は、典型的には、患者の診断、治療、及び/又はケアに関連する製品、商品、及びサービスを指す。
【0051】
「工業製品」という用語及び同様の用語は、典型的には、工業的な及び/又は組織的な環境で使用される製品、商品、及びサービスを指すが、典型的には個人の消費者によっては使用されない。
【0052】
本明細書における「凝集剤」、「凝集化剤」、「凝集組成物」、「凝塊剤」などの用語は、水又は他の水性液体中に懸濁した不溶性粒子の凝集/塊状化/合体を促進し、それによって沈降/沈殿、濾過、ペレット化、及び/又は他の適切な手段によって粒子の除去を行い易くすることができる物質を指す。粒子の凝集は、典型的には、水性懸濁液から粒子を除去/分離するプロセスにおいて行うことができる。いくつかの態様におけるグルカンエステル誘導体は、凝集剤として使用することができる。
【0053】
本明細書における用語「フィルム」、「シート」及び同様の用語は、概して薄く視覚的に連続した材料を指す。フィルムは、材料上の層又はコーティングとして構成することができ、或いは単独(例えば材料表面に付着せずに、自立)であってもよい。本明細書で使用される「コーティング」(及び同様の用語)は、材料の表面を覆う層を指す。本明細書においてフィルム又はコーティングを特徴付けるために使用される「均一な厚さ」という用語は、例えば(i)フィルム/コーティングの総面積の少なくとも20%であり、且つ(ii)約50nm未満の厚さの標準偏差を有する連続領域を指すことができる。「連続層」という用語は、基材の少なくとも一部に塗布された組成物の層を意味し、この組成物の乾燥した層は、それが塗布された表面の99%以上を覆い、基材表面を露出させる層に1%未満の空隙を有する。層が塗布された表面の99%以上は、層が塗布されていない基材の領域を含まない。本明細書のコーティングは、いくつかの態様では連続層を形成することができる。本明細書におけるコーティング組成物(及び同様の用語)は、本明細書におけるグルカンエステル誘導体、及び任意選択的な顔料、界面活性剤、分散剤、バインダー、架橋剤、及び/又はその他の添加剤などの、基材上に層を形成する全ての固形成分を指す。
【0054】
本明細書における「繊維」などの用語は、いくつかの態様では、ステープル繊維(ステープル長繊維)及び連続繊維を指す。本明細書における繊維は、α-1,3-グルカン、天然繊維(例えばセルロース、綿、羊毛、絹)、若しくは合成繊維(例えばポリエステル)、又は繊維を形成することができる本明細書に開示の任意の他の種類の材料を含むことができる。
【0055】
本明細書において使用される「フィブリッド」、「グルカンフィブリッド」、「フィブリル化グルカン」などの用語は、その3つの寸法のうちの少なくとも1つが最も大きい寸法と比較して小さい大きさである、非顆粒状、繊維状、又はフィルム状のグルカン粒子を指す場合がある。いくつかの態様では、グルカンフィブリッドは、グルカン繊維と比較した場合に比較的大きい表面積を有する繊維状及び/又はシート状の構造を有し得る。本明細書におけるフィブリッドの表面積は、例えば材料1グラム当たり約5~50平方メートルとすることができ、約10~1000ミクロンの最大寸法と0.05~0.25ミクロンの最小寸法を有する(最小寸法に対する最大寸法のアスペクト比は40~20000である)。
【0056】
本明細書における「不織布」、「不織布製品」、「不織ウェブ」などの用語は、典型的にはランダムに又は識別不可能な形式で交絡している個々の繊維又はフィラメントのウェブを指す。これは、繊維又はフィラメントの識別可能なネットワークを有する編み生地又は織り生地とは対照的である。いくつかの態様では、不織布製品は、基材や裏打ち材などの別の材料に接着又は結合された不織ウェブを含む。いくつかの態様における不織布は、隣接する不織布繊維を一体に結合するバインダー又は接着剤(強化剤)を更に含むことができる。不織布バインダー又は接着剤は、例えば分散液/ラテックス、溶液、又は固体の形態で不織布に塗布することができ、その後処理された不織布は、典型的には乾燥される。
【0057】
本明細書における「塗料」という用語(及び同様の用語)は、顔料を適切な液体(例えば水性液体)に分散させたコーティング組成物の一種であり、表面に薄くコーティングを広げたときに粘着性コーティングを形成するために使用することができる。表面に塗布される塗料は、表面に着色/装飾、保護、及び/又は処理(例えばプライマー)を提供することができる。いくつかの態様における塗料は、分散粒子を更に含むことにより、任意選択的にラテックス又はラテックス塗料として特徴付けることができる。
【0058】
本明細書における「複合材料」は、本開示の組成物(例えばグルカンエステル誘導体)を含む2つ以上の構成要素を含む。典型的には、複合材料の構成要素は分離に抵抗し、成分の1つ以上は、複合材料の外側で、その特性単独と比較して強化された及び/又は異なる特性を示す(すなわち、複合材料は、通常元の構成要素に容易に分離可能な単なる混和物ではない)。本明細書における複合材料は通常固体材料であり、例えば押出成形又は成形プロセスによって製造することができる。
【0059】
ポリペプチドアミノ酸配列(例えばグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列)に関して本明細書で使用される「配列同一性」、「同一性」などの用語は、米国特許出願公開第2017/0002336号明細書で定義及び決定されている通りであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
様々なポリペプチドアミノ酸配列が、特定の実施形態の特徴として本明細書で開示される。本明細書に開示される配列と少なくとも約70~85%、85~90%、又は90%~95%同一であるこれらの配列の変異体を使用又は参照することができる。或いは、変異体のアミノ酸配列は、本明細書に開示される配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の同一性を有する。変異体のアミノ酸配列は、開示された配列と同じ機能/活性、又は開示された配列の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の機能/活性を有する。
【0061】
本明細書における「乾燥」又は「乾燥された」組成物は、典型的には、その中に6、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1重量%未満の水を含む。
【0062】
「体積基準のパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」、「v/v%」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。溶液中の溶質の体積パーセントは、次の式を使用して決定することができる:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%。
【0063】
「重量パーセント」、「重量パーセント(wt%)」、「重量-重量パーセント(%w/w)」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。重量パーセントは、物質が組成物、混合物、又は溶液に含まれるときの質量基準の物質のパーセント割合を指す。
【0064】
「重量/体積パーセント」、「w/v%」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。重量/体積パーセントは、((物質の質量[g])/(物質+物質が入っている液体の総体積[mL]))×100%として計算することができる。この物質は、液体に不溶性(すなわち分散液などの液相中の固相)であっても、液体に可溶性(すなわち液体に溶解した溶質)であってもよい。
【0065】
「単離された」という用語は、自然界には存在しない形態又は環境にある物質(又はプロセス)を意味する。単離された物質の非限定的な例には、本明細書で開示される任意のグルカンエステル誘導体が含まれる。本明細書で開示される実施形態は、合成/人工である(人の介入/関与なしでは製造又は実施できなかった)、及び/又は自然に存在しない特性を有すると考えられる。
【0066】
本明細書で使用される「増加した」という用語は、増加した量又は活性が、比較される量又は活性より少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%、又は200%多い量又は活性を指すことができる。「増加した」、「上昇した」、「強化された」、「より大きい」、「改善された」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0067】
本開示のいくつかの態様は、グルカンのエステル誘導体を含有する組成物に関し、グルカンは、グルカンにエステル結合した少なくとも1つのカチオン性有機基(カチオン性アシル基)による最大約3.0の置換度(DoS)を有する。したがって、カチオン性グルカンエステル誘導体/化合物が開示される。
【0068】
本明細書におけるグルカンエステル誘導体は、例えばα-グルカンエステル誘導体であってよい。本明細書におけるα-グルカンのグリコシド結合は、典型的には、約、又は少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のα-グリコシド結合である。適切なα-グルカンエステル誘導体の例としては、α-1,3-グルカン、α-1,6-グルカン、及びα-1,4-グルカンのエステル誘導体が挙げられる。
【0069】
いくつかの態様では、α-グルカンエステルは、約、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%のα-1,3グリコシド結合を含む(すなわち、エステルはα-1,3-グルカンエステルである)。したがって、いくつかの態様では、α-グルカンエステルは、約50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、若しくはこれら未満の、又は0%の、α-1,3ではないグリコシド結合を有する。典型的には、α-1,3ではないグリコシド結合は、ほとんどは又は完全にα-1,6である。いくつかの態様では、α-グルカンエステルは、分岐点を有さないか、又はα-グルカン中のグリコシド結合のパーセントとして約5%、4%、3%、2%、若しくは1%未満の分岐点を有する。
【0070】
いくつかの態様におけるα-1,3-グルカンエステルのα-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、約、又は少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、若しくは4000、又はこれら未満であってよい。DPw、DPn、又はDPは、任意選択的には、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すことができる。例にすぎないが、DPw、DPn、又はDPは、約50~1600、100~1600、200~1600、300~1600、400~1600、500~1600、600~1600、700~1600、50~1250、100~1250、200~1250、300~1250、400~1250、500~1250、600~1250、700~1250、50~1000、100~1000、200~1000、300~1000、400~1000、500~1000、600~1000、700~1000、50~900、100~900、200~900、300~900、400~900、500~900、600~900、700~900、600~800、又は600~750であってよい。追加の例にすぎないが、DPw、DPn、又はDPは、約15~100、25~100、35~100、15~80、25~80、35~80、15~60、25~60、35~60、15~55、25~55、35~55、15~50、25~50、35~50、35~45、35~40、40~100、40~80、40~60、40~55、40~50、45~60、45~55、45~50、15~35、20~35、15~30、又は20~30であってよい。追加の例にすぎないが、DPw、DPn、又はDPは、約100~600、100~500、100~400、100~300、200~600、200~500、200~400、又は200~300であってよい。いくつかの態様では、α-1,3-グルカンエステルのα-グルカン部分は、高い固有粘度(IV)によって反映されるように、高い分子量を有することができ、例えばIVは、約、又は少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、6~8、6~7、6~22、6~20、6~17、6~15、6~12、10~22、10~20、10~17、10~15、10~12、12~22、12~20、12~17、又は12~15dL/gであってよい(比較の目的で、少なくとも90%(例えば約99%又は100%)のα-1,3結合及び約800のDPwを有するα-グルカンは約2~2.5dL/gのIVを有することに留意される)。本明細書におけるIVは、例えば約0.9~2.5重量%(例えば1、2、1~2重量%)のLiClを含むDMSO中に溶解したα-グルカンポリマーを用いて測定することができる。本明細書におけるα-1,3-グルカンエステルの分子量は、例えば、前述したα-1,3-グルカンのDPw、DPn、又はDP値のいずれかに基づいて、更にエステルのDoS及びエステル基のタイプを考慮して計算することができる;そのような分子量は、ほぼ計算値であるか、又は少なくともほぼ計算値であるか、又はほぼ計算値未満であってよい(分子量計算のこの方式は、本明細書に開示される任意の他の多糖/グルカンエステル誘導体に適用することができる)。
【0071】
本明細書のα-1,3-グルカンエステル誘導体のα-1,3-グルカン部分は、例えば米国特許第7000000号明細書、同第8871474号明細書、同第10301604号明細書、若しくは同第10260053号明細書、又は米国特許出願公開第2019/0112456号明細書、同第2019/0078062号明細書、同第2019/0078063号明細書、同第2018/0340199号明細書、同第2018/0021238号明細書、同第2018/0273731号明細書、同第2017/0002335号明細書、同第2015/0232819号明細書、同第2015/0064748号明細書、同第2020/0165360号明細書、同第2020/0131281号明細書、若しくは同第2019/0185893号明細書に開示されているもの(例えば分子量、結合形態、及び/又は製造方法)であってよく、これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。α-1,3-グルカンは、例えば、少なくとも水、スクロース、及びα-1,3-グルカンを合成するグルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む酵素反応によって生成することができる。不溶性α-グルカンを生成するために有用であると考えられるグルコシルトランスフェラーゼ、反応条件、及び/又はプロセスは、前述した参考文献のいずれかに開示されている通りであってよい。
【0072】
いくつかの態様では、本明細書のα-1,3-グルカンエステル誘導体のα-1,3-グルカン部分を製造するためのグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、26、28、30、34、若しくは59、又は配列番号4のアミノ酸残基55~960、配列番号65の残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号28の残基55~960、又は配列番号20の残基55~960と100%同一であるか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、若しくは99.5%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、グルコシルトランスフェラーゼ活性を有することができる。これらのアミノ酸配列は、米国特許出願公開第2019/0078063号明細書に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。なお、配列番号:2、4、8、10、14、20、26、28、30、34、又は配列番号4のアミノ酸残基55~960、配列番号65の残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号28の残基55~960、又は配列番号20の残基55~960を含むグルコシルトランスフェラーゼ酵素は、少なくとも約90%(約100%)のα-1,3結合を含む不溶性α-グルカンを合成することができる。
【0073】
いくつかの態様では、α-グルカンエステルは、約、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%のα-1,6-グリコシド結合を含む(すなわち、エステルはα-1,6-グルカンエステル又はデキストランエステルである)。いくつかの態様では、実質的に直鎖のデキストランエステルは、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又はそれ以下のグリコシド分岐を含み得る(直鎖状デキストランエステルは100%のα-1,6結合を有する)。デキストランエステル由来のグリコシド分岐は、存在する場合、典型的には短く、1つ(ペンダント)、2つ、又は3つのグルコースモノマーの長さである。いくつかの態様では、デキストランエステルは、約50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又はこれら未満、又は0%のα-1,4、α-1,3、及び/又はα-1,2グリコシド結合を含み得る。典型的には、そのような結合は、完全に、又はほぼ完全に、α-1,6-グルカンからの分岐点として存在する。
【0074】
本明細書におけるデキストランエステル誘導体のデキストラン部分は、例えばα-1,2、α-1,3、及び/又はα-1,4分岐を有することができる。いくつかの態様では、分岐デキストランエステルの全てのグリコシド結合のうちの約、又は少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%未満、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、2~25%、2~20%、2~15%、2~10%、5~25%、5~20%、5~15%、5~10%、7~13%、8~12%、9~11%、10~25%、10~20%、10~15%、10~22%、12~20%、12~18%、14~20%、14~18%、15~18%、若しくは15~17%、又はこれら未満が、α-1,2、α-1,3、及び/又はα-1,4グリコシド分岐結合である。そのような分岐は、典型的には、ほとんど(>90%又は>95%)、又は全て(100%)単一のグルコースモノマーの長さである。いくつかの態様では、α-1,2-分岐を有するデキストランは、米国特許出願公開第2017/0218093号明細書又は同第2018/0282385号明細書の手順に従って酵素的に製造することができ(共に参照により本明細書に組み込まれる)、その際、例えば、GTFJ18T1や又はGTF9905などのα-1,2-分岐酵素を、デキストランの製造中又は製造後に添加することができる。いくつかの態様では、α-1,2-分岐を生成することが知られている任意の他の酵素を使用することができる。α-1,3-分岐を有するデキストランは、例えばVuillemin et al.(2016,J.Biol Chem.291:7687-7702)又は国際公開第2021/007264号パンフレットに開示されている通りに調製することができ、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本明細書におけるデキストランエステル誘導体のデキストラン部分は、例えば、約、又は少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、85、90、95、100、105、110、150、200、250、300、400、500、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、8~20、8~30、8~100、8~500、3~4、3~5、3~6、3~7、3~8、4~5、4~6、4~7、4~8、5~6、5~7、5~8、6~7、6~8、7~8、90~120、95~120、100~120、105~120、110~120、115~120、90~115、95~115、100~115、105~115、110~115、90~110、95~110、100~110、105~110、90~105、95~105、100~105、90~100、95~100、90~95、85~95、85~90、5~100、5~250、5~500、5~1000、5~1500、5~2000、5~2500、5~3000、5~4000、5~5000、5~6000、10~100、10~250、10~500、10~1000、10~1500、10~2000、10~2500、10~3000、I0~4000、10~5000、10~6000、25~100、25~250、25~500、25~1000、25~1500、25~2000、25~2500、25~3000、25~4000、25~5000、25~6000、50~100、50~250、50~500、50~1000、50~1500、50~2000、50~2500、50~3000、50~4000、50~5000、50~6000、100~100、100~250、100~400、100~500、100~1000、100~1500、100~2000、100~2500、100~3000、100~4000、100~5000、100~6000、250~500、250~1000、250~1500、250~2000、250~2500、250~3000、250~4000、250~5000、250~6000、300~2800、300~3000、350~2800、350~3000、500~1000、500~1500、500~2000、500~2500、500~2800、500~3000、500~4000、500~5000、500~6000、600~1550、600~1850、600~2000、600~2500、600~3000、750~1000、750~1250、750~1500、750~2000、750~2500、750~3000、750~4000、750~5000、750~6000、900~1250、900~1500、900~2000、1000~1250、1000~1400、1000~1500、1000~2000、1000~2500、1000~3000、1000~4000、1000~5000、1000~6000、若しくは1100~1300、又はこれら未満のDPw、DPn、又はDPを有し得る。いくつかの態様におけるデキストランエステル誘導体のデキストラン部分の分子量は、約、又は少なくとも約0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.24、0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、0.1~0.2、0.125~0.175、0.13~0.17、0.135~0.165、0.14~0.16、0.145~0.155、10~80、20~70、30~60、40~50、50~200、60~200、70~200、80~200、90~200、100~200、110~200、120~200、50~180、60~180、70~180、80~180、90~180、100~180、110~180、120~180、50~160、60~160、70~160、80~160、90~160、100~160、110~160、120~160、50~140、60~140、70~140、80~140、90~140、100~140、110~140、120~140、50~120、60~120、70~120、80~120、90~120、90~110、100~120、110~120、50~110、60~110、70~110、80~110、90~110、100~110、50~100、60~100、70~100、80~100、90~100、若しくは95~105ミリオンダルトン、又はこれら未満であってよい。いくつかの態様におけるデキストランエステル誘導体のデキストラン部分の分子量は、例えば約、又は少なくとも約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、1250、1500、1750、2000、1~2000、10~500、10~400、10~300、10~200、20~500、20~400、20~300、20~200、50~500、50~400、50~300、50~200、100~500、100~400、100~300、100~200、200~500、200~400、200~300、10~30、15~25、40~60、45~55、190~210、若しくは290~310kDa、又はこれら未満であってよい。本明細書におけるデキストランエステルの分子量は、例えばエステルのDoS及びエステル基のタイプを更に考慮して、前述したデキストランのDPw、DPn、DP、又はダルトン値のいずれかに基づいて計算することができる。そのような分子量は、ほぼ、又は少なくともほぼ上記分子量の値又は範囲のいずれかであってよく、又はほぼそれら未満であってよい。前述したDPw、DPn、DP、又はダルトン値のいずれも、例えば、任意選択的に分岐(例えばα-1,2及び/又はα-1,3)する前又は後の本明細書のデキストランを特徴付けることができる。
【0076】
本明細書におけるデキストランエステル誘導体のデキストラン部分は、例えば米国特許出願公開第2016/0122445号明細書、同第2017/0218093号明細書、同第2018/0282385号明細書、同第2020/0165360号明細書、又は同第2019/0185893号明細書に開示の通り(例えば分子量、結合/分岐形態、製造方法)であってよく、これらの文献はそれぞれ参照により組み込まれる。いくつかの態様では、本明細書のエステル誘導体化のためのデキストランは、グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)0768(米国特許出願公開第2016/0122445号明細書の配列番号1又は2)、GTF8117、GTF6831、若しくはGTF5604(これら後者3つのGTF酵素は、それぞれ米国特許出願公開第2018/0282385号明細書の配列番号30、32、及び33である)、又はGTF0768、GTF8117、GTF6831、若しくはGTF5604のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むGTFを含む適切な反応で生成されるものであってよい。
【0077】
いくつかの態様では、α-グルカンエステル誘導体のα-グルカン部分は、米国特許出願公開第2020/0165360号明細書、同第2019/0185893号明細書、若しくは同第2020/0131281号明細書、又は国際公開第2021247810号パンフレットに開示されているものなどのグラフトコポリマーの形態であってよく、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。グラフトコポリマーは、デキストラン(主鎖として)及びα-1,3-グルカン(1つ以上の側鎖として)を含むことができ、後者の構成要素が前者の構成要素にグラフトされている。典型的には、このグラフトコポリマーは、上述したα-1,3-グルカンを生成するグルコシルトランスフェラーゼによるα-1,3-グルカン合成のためのプライマーとしてデキストラン又はα-1,2-及び/若しくはα-1,3-分岐デキストランを使用することによって製造される。本明細書におけるα-グルカングラフトコポリマーのα-1,3-グルカン側鎖は、本明細書に開示されるα-1,3-グルカンであってよい。本明細書におけるα-グルカングラフトコポリマーのデキストラン主鎖は、本明細書に開示のデキストラン又はα-1,2-及び/若しくはα-1,3-分岐デキストランであってよい。いくつかの態様では、α-グルカングラフトコポリマーは、(A)(i)約10~22%(例えば約12~20%、12~18%、14~20%、14~18%、15~18%、15~17%、又は16%)のα-1,2及び/又はα-1,3結合(すなわちα-1,2,6及び/又はα-1,3,6)を用いて分岐されており(例えば骨格は合計で約82~86%又は84%のα-1,6結合並びに約14~18%又は16%のα-1,2及び/又はα-1,3結合を含む)、且つ(ii)約15~25、15~22.5、17~25、17~22.5、18~22、又は20kDaのMwを有する、α-1,6-グルカン骨格(α-1,2及び/又はα-1,3分岐前は100%がα-1,6結合)と、(B)α-1,2及び/又はα-1,3分岐のうちの1つ以上から伸長された1つ以上(例えば2、3、4、5、又は6個)のα-1,3-グルカン側鎖と、を含むことができ、そのようなグラフトコポリマーは、典型的には非水溶性である。
【0078】
いくつかの態様では、α-グルカンエステルは、約、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%のα-1,4-グリコシド結合を含む(すなわち、エステルはα-1,4-グルカンエステルである)。したがって、いくつかの態様では、α-1,4-グルカンエステルは、約、又は少なくとも約50%、40%、30%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0%の、α-1,4ではないグリコシド結合を有する。本明細書におけるα-1,4-グルカンの例としては、アミロース、アミロペクチン、及びデンプンが挙げられる。デンプンなどのα-1,4-グルカンは、例えば、野菜系原料(例えばジャガイモ、タピオカ、エンドウ豆、ヤシ)又は穀物系原料(例えばトウモロコシ、小麦、米、大麦)に由来し得る。
【0079】
いくつかの態様におけるα-1,4-グルカンエステル誘導体のα-1,4-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、約、少なくとも約10、25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、若しくは4000、又はこれら未満であってよい。DPw、DPn、又はDPは、任意選択的には、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すことができる。いくつかの態様では、α-1,4-グルカンエステル誘導体のα-1,4-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、α-1,3-グルカン又はα-1,6-グルカンについて上で開示した通りであってよい。
【0080】
本明細書におけるグルカンエステル誘導体は、例えばβ-グルカンエステル誘導体であってよい。本明細書におけるβ-グルカンエステル誘導体のグリコシド結合は、典型的には、約、又は少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%β-グリコシド結合である。適切なβ-グルカンエステル誘導体の例としては、β-1,3-グルカン(例えばラミナリン、パラミロン、カードラン)、β-1,4-グルカン(セルロース)、及びβ-1,6-グルカンのエステル誘導体が挙げられる。いくつかの態様では、本明細書におけるグルカンエステルは、β-グルカンエステルではない、及び/又はβ-グリコシド結合を含まない。
【0081】
いくつかの態様では、β-グルカンエステルは、約、又は少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%β-1,4グリコシド結合を含む(すなわち、エステルはβ-1,4-グルカンエステルである)。いくつかの態様におけるβ-1,4-グルカンエステル誘導体のβ-1,4-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、約、又は少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、又は4000であってよい。DPw、DPn、又はDPは、任意選択的には、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すことができる(例えば1000~2000、1300~1700、1400~1600)。いくつかの態様では、β-1,4-グルカンエステル誘導体のβ-1,4-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、α-1,3-グルカン又はα-1,6-グルカンについて上で開示した通りであってよい。いくつかの態様では、本明細書におけるグルカンエステルは、β-1,4-グルカンエステルではない、及び/又はβ-1,4グリコシド結合を含まない。
【0082】
いくつかの態様では、β-グルカンエステルは、約、又は少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%β-1,3グリコシド結合を含む(すなわち、エステルはβ-1,3-グルカンエステルである)。いくつかの態様におけるβ-1,3-グルカンエステル誘導体のβ-1,3-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、例えば約、又は少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、3~15、3~20、3~25、3~30、5~15、5~20、5~25、5~30、10~15、10~20、10~25、10~30、15~17、15~18、15~19、15~20、15~21、15~22、15~23、15~24、15~25、15~30、16~17、16~18、16~19、16~20、16~21、16~22、16~23、16~24、16~25、16~30、17~18、17~19、17~20、17~21、17~22、17~23、17~24、17~25、17~30、20~25、20~30、若しくは25~30、又はこれら未満であってよい。いくつかの態様では、β-1,3-グルカンエステル誘導体のβ-1,3-グルカン部分のDPw、DPn、又はDPは、α-1,3-グルカン又はα-1,6-グルカンについて上で開示した通りであってよい。
【0083】
本明細書におけるいくつかの追加又は代替の態様では、エステル誘導体は大豆多糖エステル誘導体であってよい。大豆多糖エステル誘導体の大豆多糖部分は、いくつかの態様では、米国特許出願公開第2018/0079832号明細書に開示されている通りであってよく、これは参照により本明細書に組み込まれる。したがって、グルカンエステル誘導体に関する本開示の特徴のいずれも、当業者が適切であると考える限り、大豆多糖エステル誘導体が使用される実施形態を同様に特徴付けることができる。例えば、当業者が適切であると考える限り、本開示で使用される「グルカンエステル誘導体」という用語(及び同様の用語)は、任意選択的に「大豆多糖エステル誘導体」という用語に置き換えることができる。
【0084】
本開示の多糖/グルカンのエステル誘導体は、多糖/グルカンにエステル結合した少なくとも1つのカチオン性有機基(カチオン性アシル基)による最大約3.0(例えば0.001~3.0)の置換度(DoS)を有し得る。DoSは、例えば約、又は少なくとも約、又は最大約0.001、0.0025、0.005、0.01、0.02、0.025、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.075、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0であってよい(DoSは、任意選択的には、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すことができる)。本明細書におけるDoS範囲のいくつかの例には、0.005~2.0、0.005~1.9、0.005~1.8、0.005~1.7、0.005~1.6、0.005~1.5、0.005~1.25、0.005~1.0、0.005~0.9、0.005~0.8、0.005~0.7、0.005~0.6、0.005~0.5、0.01~2.0、0.01~1.9、0.01~1.8、0.01~1.7、0.01~1.6、0.01~1.5、0.01~1.25、0.01~1.0、0.01~0.9、0.01~0.8、0.01~0.7、0.01~0.6、0.01~0.5、0.01~0.25、0.01~0.1、0.03~2.0、0.03~1.9、0.03~1.8、0.03~1.7、0.03~1.6、0.03~1.5、0.03~1.25、0.03~1.0、0.03~0.9、0.03~0.8、0.03~0.7、0.03~0.6、0.03~0.5、0.03~0.25、0.03~0.1、0.05~2.0、0.05~1.9、0.05~1.8、0.05~1.7,0.05~1.6、0.05~1.5、0.05~1.25、0.05~1.0、0.05~0.9、0.05~0.8、0.05~0.7、0.05~0.6、0.05~0.5、0.1~2.0、0.1~1.9、0.1~1.8、0.1~1.7、0.1~1.6、0.1~1.5、0.1~1.25、0.1~1.0、0.1~0.9、0.1~0.8、0.1~0.7、0.1~0.6、0.1~0.5、0.15~2.0、0.15~1.9、0.15~1.8、0.15~1.7、0.15~1.6、0.15~1.5、0.15~1.25、0.15~1.0、0.15~0.9、0.15~0.8、0.15~0.7、0.15~0.6、0.15~0.5、0.2~2.0、0.2~1.9、0.2~1.8、0.2~1.7、0.2~1.6、0.2~1.5、0.2~1.25、0.2~1.0、0.2~0.9、0.2~0.8、0.2~0.7、0.2~0.6、0.2~0.5、0.25~2.0、0.25~1.9、0.25~1.8、0.25~1.7、0.25~1.6、0.25~1.5、0.25~1.25、0.25~1.0、0.25~0.9、0.25~0.8、0.25~0.7、0.25~0.6、0.25~0.5、0.3~2.0、0.3~1.9、0.3~1.8、0.3~1.7、0.3~1.6、0.3~1.5、0.3~1.25、0.3~1.0、0.3~0.9、0.3~0.8、0.3~0.7、0.3~0.6、0.3~0.5、0.4~2.0、0.4~1.9、0.4~1.8、0.4~1.7、0.4~1.6、0.4~1.5、0.4~1.25、0.4~1.0、0.4~0.9、0.4~0.8、0.4~0.7、0.4~0.6、及び0.4~0.5が含まれる。
【0085】
グルカン誘導体である本明細書における多糖エステル誘導体に関しては、例えば、グルカンのグルコースモノマー単位中に最大で3個のヒドロキシル基が存在するため、グルカンエステル誘導体の全体のDoSは3.0を超えない。本明細書で開示されるグルカンエステル誘導体は、エステル結合中に少なくとも1種類の有機基(アシル基)によるDoS(例えば約0.001~約3.0)を有するため、グルカンエステル誘導体の全ての置換基がヒドロキシルのみであることはできないことが当業者には理解されるであろう。
【0086】
本開示の多糖/グルカンのエステル誘導体は、多糖/グルカンにエステル結合した本明細書の少なくとも1つのカチオン性有機基(カチオン性アシル基)で置換され得る。本明細書で開示されるグルカン誘導体は、例えば、本明細書において1つ、2つ、又はそれ以上の異なる種類のエステル化されたカチオン性有機基で誘導体化することができ、典型的には、グルカン誘導体には他の種類の有機基/結合は存在しない。いくつかの態様では、少なくとも1つのエステル結合したカチオン性有機基は、構造I:
【化1】
を含み、式中、各R
1、R
2、及びR
3は、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む基である。構造IにおけるR
1、R
2、及びR
3の位置は通常は特に重要ではなく、特定の立体化学を想起させることを意図したものではない。
【0087】
構造Iの波線(可変部分)に関し、本明細書ではカチオン性有機基がグルカン誘導体にエステル結合しており、その結果カチオン性有機基はカチオン性アシル基であるため、構造Iの-N+R1R2R3部分は、1つ以上の炭素原子(の鎖)を介して、カルボニル(-CO-)を介してグルカン誘導体のグルコースモノマー単位に結合することが理解されるであろう。そのような1つ以上の炭素原子(の鎖)は、本明細書では-RC-と呼ばれる場合がある。カルボニルは、有機基の-RC-N+R1R2R3部分を、その時点で置換されるヒドロキシル基の酸素原子(すなわち、その時点でアシル基によって置換される水素原子)に結合させる。したがって、構造Iは、任意選択的には、-CO-RC-N+R1R2R3と表すことができる。グルカンのグルコースモノマー単位に結合すると、これは-CG-OG-CO-RC-N+R1R2R3と表すことができ、式中の-CG-はグルコースモノマー単位の炭素原子を表し、-OG-はその時点で置換されるグルコース単位のヒドロキシル基の酸素原子を表す。
【0088】
いくつかの態様では、RC(上記)は、1個(例えば-CH2-)、2個(例えば-CH2CH2-)、3個(例えば-CH2CH2CH2-)、4個(例えば-CH2CH2CH2CH2-)、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、又はそれ以上の炭素原子を含む。Rcは、例えば完全に又は部分的に飽和であってよい。Rcは、例えば直鎖であってよい。構造Iは、例えば-CO-CH2-N+R1R2R3、-CO-CH2CH2-N+R1R2R3、-CO-CH2CH2CH2-N+R1R2R3、又は-CO-CH2CH2CH2CH2-N+R1R2R3と表すことができる。
【0089】
Rcは、例えば、ヒドロキシル基による1つ以上の置換(別の基で置換された水素原子)を有することができる。いくつかの態様におけるRcは、-CH2CH(OH)-を含むことができ、そのようなRcを含む構造Iは、例えば-CO-CH2CH(OH)-CH2-N+R1R2R3、-CO-CH2CH(OH)-CH2CH2-N+R1R2R3、-CO-CH2CH(OH)-CH2CH2CH2-N+R1R2R3、又は-CO-CH2CH(OH)-CH2CH2CH2CH2-N+R1R2R3と表すことができる。
【0090】
Rcは、例えば1つ以上の分岐を有することができる。いくつかの態様におけるRcは、-CHRs-(CH2)p-を含むことができ、式中、Rsは側鎖であり、pは0、1、2、又は3である。Rsは、例えば-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、又は-CH2CH2CH2CH3であってよい。Rsは、例えば-CH2CH2CH2CH2-N+H3(すなわちリシン側鎖)、-CH2CH2CH2CH2-N+(CH3)3、-CH2CH2-NH-C(N+H2)-NH2、-CH2CH2CH2-NH-C(N+H2)-NH2(すなわちアルギニン側鎖)、又は-CH2-IMD(すなわちヒスチジン側鎖、CH2がイミダゾール環[IMD]炭素-4に結合)であってよい。
【0091】
上記した構造/式のいずれかなど、いくつかの態様におけるR1、R2、及びR3のそれぞれは、以下の通りであってよい:R1、R2、及びR3のそれぞれは、例えば-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、又は-CH2CH2CH2CH3から独立して選択することができる(例えば、R1、R2、及びR3のそれぞれは-CH3であってよい)。いくつかの態様では、R1、R2、及びR3のそれぞれは、これらの前述したC1~C4アルキル基のいずれかのモノヒドロキシ又はジヒドロキシ置換バージョン(例えば-CH2CH2OH又は-CH2(OH)CH3などのヒドロキシエチル)から独立して選択することができる。いくつかの態様では、R1、R2、及びR3のそれぞれは、前述したC1~C4アルキル基及びそのモノヒドロキシ置換又はジヒドロキシ置換バージョンのいずれかから独立して選択することができる。いくつかの態様では、R1及びR2は、前述したC1~C4アルキル基及びそのモノヒドロキシ置換又はジヒドロキシ置換バージョンのいずれかから独立して選択することができ(例えば、R1及びR2は-CH3であってよい)、R3は以下の通りであってよい:R3は、例えば飽和であっても不飽和であってもよい。R3は、例えば直鎖であっても分岐であってもよい。R3は、例えば-(CH2)nCH3などのアルキルであってよく、式中のnは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、22、又は23(例えばC6~C22、C12~14、C10~C16、又はC8~C18アルキル)であり;R3は、或いは、適切な場合にはこれらのアルキルのいずれかの不飽和バージョンであってもよい。いくつかの態様では、R3は、-CH2CH2CH2-NH-CO-CH2CH2CH2-(CH2)n-CH2CH2CH2CH3であってよく、式中のnは、0、2、4、6、又は10である。
【0092】
上に開示したように、いくつかの態様におけるカチオン性有機基が構造IIを含み得ることは明らかである:
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3のそれぞれは、少なくとも1つの炭素原子を含む基から独立して選択される(例えば上記R
1、R
2、及びR
3のいずれか)。説明のために指摘しておくと、構造II中のR
cは-CH
2-である。本明細書の構造IIの例は、それぞれ-CH
3であるR
1、R
2、及びR
3を有する。構造IIはカチオン性アシル基であることが理解されるであろう。本明細書における構造IIの更なる例には、以下のベタイン化合物のいずれかのアシル(アシル部分)が含まれる:カプラミドプロピルベタイン、カプリルベタイン、セチルアミドプロピルベタイン、セチルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルベタイン、デシルアミドプロピルベタイン、デシルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ミリスチルアミドプロピルベタイン、ミリスチルベタイン、オレアミドプロピルベタイン、オレイルベタイン、パルムアミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、ウンデシルベタイン、ウンデシレンアミドプロピルベタインが挙げられる。
【0093】
本開示のいくつかの態様は、本明細書におけるグルカンのエステル誘導体を製造する方法に関する。そのような方法(エステル誘導体化方法/反応、又はエステル化方法/反応)は、(a)反応において、カチオン性有機基(カチオン性アシル基)を含む少なくとも1種のエステル化剤とグルカンを接触させることであって、少なくとも1つのカチオン性有機基(カチオン性アシル基)がグルカンにエステル化され、それによってグルカンのエステル誘導体を生成することを含み、グルカンのエステル誘導体(グルカンエステル生成物)が、カチオン性有機基(カチオン性アシル基)による最大約3.0の置換度(DoS)を有すること;及び(b)任意選択的に、工程(a)で製造したグルカンのエステル誘導体を単離すること;を含む。したがって、本明細書の任意のエステル誘導体を製造するために、本明細書に開示の任意のグルカン又は多糖をエステル化方法に導入することができる。
【0094】
本開示のエステル誘導体化方法のためのエステル化剤は、例えば、本明細書に開示の任意のカチオン性アシル基を含むカルボン酸であってよい。カチオン性アシル基の末端カルボニル(-CO-)は、カチオン性アシル基を含むカルボン酸の-COOH基のカルボニルであることが理解されるであろう。ここで、「末端」という用語の使用は、本明細書で開示されるアシル基の内部カルボニル(存在する場合)と区別される。カルボン酸は、塩化物、フッ化物、又は臭化物などのアニオンとの塩として供給することができ、ここでのアニオンはカルボン酸のN+部分と平衡状態にある。本明細書のエステル化反応におけるエステル化剤の濃度は、例えば約10、25、50、75、100、125、150、175、200、10~200、25~200、25~100、10~25、100~200、又は150~200g/Lであってよい。
【0095】
グルカンを少なくとも1種のエステル化剤と接触させる工程は、典型的には実質的に無水条件下で行われる。本明細書における実質的に無水のエステル化反応は、水を含まないか、又は例えば約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2.0重量%未満の水を含む。グルカンを少なくとも1種のエステル化剤と接触させるための溶媒は、例えばグルカンが典型的に溶解することができる非水系溶媒であってよい。いくつかの態様では、非水系溶媒は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)(任意選択的には約0.5%~5%のLiClを含む)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、SO2/ジエチルアミン(DEA)/DMSO、LiCl/1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、DMSO/フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物(TBAF)、N-メチルピロリドン、塩化メチレン、及び/又はN-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)を含む有機溶媒であってよい。脱水剤(例えば塩化トシル又はジシアンジアミド)を、本明細書の接触工程に任意選択的に含めることができる。
【0096】
本明細書のエステル化反応におけるグルカンの濃度は、例えば約、又は少なくとも約10、25、50、75、100、150、200、250、300、10~300、10~250、10~200、10~50、25~300、25~250、25~200、25~50、150~300、150~250、又は150~200g/Lであってよい。本明細書におけるエステル化反応の温度は、例えば約、又は少なくとも約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、50~150、50~140、50~130℃、60~150、60~140、60~130、70~150、70~140、70~130、60~80、又は110~130℃であってよい。いくつかの態様では、エステル化反応は、約1、2、3、4、5、6、7、8、1~8、2~8、1~6、又は2~6時間進行させることができる。エステル化反応のpHは、いくつかの態様では、約8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、又は12であってよい。
【0097】
本明細書のエステル化反応で生成されるエステル化グルカン誘導体は、任意選択的に単離することができる。いくつかの態様では、そのような生成物は、最初に反応から析出させることができる。析出は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールなどのアルコール(例えば100%又は95%の濃度)を過剰量(例えば反応体積の少なくとも2~3倍の体積)反応に添加することによって行うことができる。析出した生成物は、その後濾過漏斗、遠心分離、プレスフィルター、又は固体から液体を除去可能な任意のその他の方法又は装置を使用して単離することができる。単離された生成物は、真空乾燥、空気乾燥、又は凍結乾燥などによって乾燥することができる。
【0098】
いくつかの態様では、エステル化グルカン誘導体生成物は、完了した反応又はその希釈形態を限外濾過(例えば5又は10の分画分子量フィルター)によって濾過する工程を含むことによって単離することができる。任意選択的には、完了した反応又はその希釈形態を最初に一定の間隔で濾過し(すなわち限外濾過ではない)、その後濾液に対して限外濾過を行うことができる。次いで、限外濾過によって得られた濃縮液体を、凍結乾燥などによってその構成固体まで乾燥させることができ、或いは液体から固体を析出させてから乾燥させることができる(例えば凍結乾燥)。
【0099】
本明細書のエステル化グルカン誘導体生成物は、任意選択的には、析出又は乾燥に続いて、生成物を容易には溶解しない液体で1回以上洗浄することができる。例えば、グルカンエステル生成物は、その中のエステル生成物の溶解性に応じて(洗浄のためには溶解性がないことが望ましい)、アルコール、アセトン、芳香族化合物、又はこれらの任意の組み合わせで洗浄することができる。通常、グルカンエステル誘導体生成物の洗浄には、アルコールなどの有機溶媒(例えば95~100%)を含む溶媒が好ましい。
【0100】
上記エステル化反応のいずれも、出発物質として本明細書のグルカンエステル誘導体生成物を使用して、更に修飾するために繰り返すことができる。そのような更なる修飾は、最初の反応で使用したものと同じエステル化剤を使用することも、異なるエステル化剤を使用することもできる。
【0101】
本明細書における少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本開示の組成物は、例えば水性組成物(例えば溶液、又はコロイド分散液などの分散液)又は乾燥組成物であってよい。いくつかの態様では、本明細書の組成物は、約、又は少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.75、0.8、0.9、1.0、1.2、1.25、1.4、1.5、1.6、1.75、1.8、2.0、2.25、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は99.5重量%又はw/v%、又はこれら未満のグルカンエステル誘導体を含み得る。組成物は、例えば、これらの重量%又はw/v%値の任意の2つの間の範囲(例えば5~50、5~45、5~40、5~35、5~30、5~25、5~20、5~15、又は5~10重量%又はw/v%)を含むことができる。水性組成物の液体成分は、例えば、水や水溶液などの水性流体であってよい。水溶液の溶媒は典型的には水であるか、或いは例えば約、又は少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98、又は99重量%の水を含み得る。いくつかの態様では、本明細書の組成物は、溶液、分散液(例えばエマルジョン)、混合物、ウェットケーキ若しくはウェットパウダー、乾燥粉末、押出物、複合材料、フィルム/コーティング、繊維、若しくはフィブリッドを含むか、又はそれらの形態であってよい。
【0102】
本明細書における水性組成物は、例えば約、又は少なくとも約1、5、10、100、200、300、400、500、600、700、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、15000、1~300、10~300、25~300、50~300、1~250、10~250、25~250、50~250、1~200、10~200、25~200、50~200、1~150、10~150、25~150、50~150、1~100、10~100、25~100、若しくは50~100センチポアズ(cps)、又はこれら未満の粘度を有し得る。粘度は、例えば約3℃~約80℃の任意の温度(例えば4~30℃、15~30℃、15~25℃)で、本明細書の水性組成物を用いて測定することができる。粘度は、典型的には大気圧(約760torr)又はその±10%の圧力で測定したものである。粘度は、例えば粘度計又はレオメーターを使用して測定することができ、任意選択的には、例えば約0.1、0.5、1.0、5、10、50、100、500、1000、0.1~500、0.1~100、1.0~500、1.0~1000、若しくは1.0~100s-1(1/s)、又は約5、10、20、25、50、100、200、若しくは250rpm(回転毎分)の剪断速度(回転剪断速度)で測定したものであってよい。
【0103】
本明細書に開示の組成物は、例えば約1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、280、260、240、220、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、18、16、14、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、1~250、1~200、1~150、1~100、1~50、1~20、1~15、1~10、1~5、2~250、2~200、2~150、2~100、2~50、2~20、2~15、2~10、2~5、10~250、10~200、10~150、10~100、10~50、若しくは10~20NTU(ネフェロメトリー濁度単位)、又はそれら未満の濁度を有し得る。これらのNTU値のいずれも、任意選択的には本明細書の組成物のα-グルカンエステル誘導体及び溶媒成分部分に関するものであってよい。いくつかの態様では、これらのNTUレベルのいずれも、(典型的には最初の調製から開始して)約、又は少なくとも約、又は最大約0.5、1、2、4、6、8、10、20、30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、330、若しくは360日、又は1、2、若しくは3年の期間(持続する)であることが想定されている。Progress in Filtration and Separation(Edition:1, Chapter 16.Turbidity:Measurement of Filtrate and Supernatant Quality?,Publisher:Academic Press,Editors:E.S.Tarleton,July 2015)に開示されている方法論(この文献は参照により本明細書に組み込まれる)など、任意の適切な方法を使用して濁度を測定することができ、或いは以下の実施例に記載されている通りである。
【0104】
いくつかの態様における水性組成物の水溶液成分は、(検出可能な)溶解している糖を有さないか、或いは約0.1~1.5、0.1~1.25、0.1~1.0、0.1~0.75、0.1~0.5、0.2~0.6、0.3~0.5、0.2、0.3、0.4、0.5、又は0.6重量%の溶解している糖を有する。そのような溶解している糖には、例えばスクロース、フルクトース、ロイクロース、及び/又は可溶性グルコオリゴ糖が含まれ得る。
【0105】
いくつかの態様における水性組成物の水溶液成分は、例えば、1種以上の塩/緩衝剤(例えばNa+、Cl-、NaCl、リン酸塩、トリス、クエン酸塩)(例えば≦0.1、0.5、1.0、2.0、又は3.0重量%)、及び/又は約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、4.0~10.0、4.0~9.0、4.0~8.05.0~10.0、5.0~9.0、5.0~8.0、6.0~10.0、6.0~9.0、若しくは6.0~8.0のpHを有し得る。不溶性グルカン(例えばDP>8又は>9のα-1,3-グルカン)の本明細書におけるエステルのようないくつかの態様では、グルカンエステルは、少なくとも約10、10.5、又は11のpHを有する水性条件で不溶性である(例えば少なくとも約0.5又は1.0重量%の濃度で)。
【0106】
いくつかの態様では、本開示のグルカンエステルの粒子の水性分散液(例えばエマルジョン)である水性組成物では、粒子は、分散液の体積の約、又は少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%全体に分散される。いくつかの態様では、そのような分散液(例えばエマルジョン)のレベルは、(典型的には分散液の最初の調製から開始して)約、又は少なくとも約、又は最大約0.5、1、2、4、6、8、10、20、30、60、90、120、150、180、210、240、270、300、330、若しくは360日、又は1、2、若しくは3年の期間であることが想定されている。
【0107】
本明細書における組成物の温度は、例えば、約、又は少なくとも約、又は最大約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、5~50、20~25、20~30、20~40、30~40、40~130、40~125、40~120、70~130、70~125、70~120、80~130、80~125、80~120、60~100、60~90、70~100、70~90、75~100、75~90、又は75~85℃であってよい。
【0108】
本明細書の組成物は、いくつかの態様では、非水性(例えば乾燥組成物)であってよい。そのような実施形態の例には、粉末、顆粒、マイクロカプセル、フレーク、又は任意の他の形態の粒子状物質が含まれる。他の例としては、ペレット、バー、カーネル、ビーズ、錠剤、スティック、若しくは他の凝集物、又は軟膏若しくはローション(又は非水性若しくは乾燥組成物の本明細書における任意の他の形態)などのより大きな組成物が挙げられる。非水性組成物又は乾燥組成物は、典型的には、それらの中に約12、10、8、6、5、4、3、2、1.5、1.0、0.5、0.25、0.10、0.05、若しくは0.01重量%、又はこれら以下の水を含む。いくつかの態様(例えば洗濯洗剤又は食器洗い用洗剤に関するもの)では、本明細書の乾燥組成物は、小袋又はパウチで提供され得る。
【0109】
グルカンエステル誘導体を含む本明細書の組成物は、いくつかの態様では洗剤組成物であってよい。そのような組成物の例は、食器洗い用の洗剤及びファブリックケア用の洗剤として本明細書に開示される。
【0110】
本明細書の組成物は、いくつかの態様では、ナトリウム塩(例えばNaCl、Na2SO4)などの1種以上の塩を含み得る。塩の他の非限定的な例としては、(i)アルミニウム、アンモニウム、バリウム、カルシウム、クロム(II又はIII)、銅(I又はII)、鉄(II又はIII)、水素、鉛(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(II又はIII)、水銀(I又はII)、カリウム、銀、ナトリウム、ストロンチウム、スズ(II又はIV)、又は亜鉛のカチオンと、(ii)酢酸、ホウ酸、臭素酸、臭化物、炭酸、塩素酸、塩化物、亜塩素酸、クロム酸、シアナミド、シアン化物、重クロム酸、リン酸二水素、フェリシアン化物、フェロシアン化物、フッ化物、炭酸水素、リン酸水素、硫酸水素、硫化水素、亜硫酸水素、水素化物、水酸化物、次亜塩素酸、ヨウ素、ヨウ化物、硝酸、窒化物、亜硝酸、シュウ酸、酸化物、過塩素酸、過マンガン酸、過酸化物、リン酸、リン化物、亜リン酸、ケイ酸、スズ酸、スタンナイト、硫酸、硫化物、亜硫酸、酒石酸、又はチオシアン酸のアニオンと、を有するものが挙げられる。そのため、例えば上記(i)のカチオンと上記(ii)のアニオンとを有する任意の塩が組成物中に存在し得る。塩は、本明細書中の水性組成物中に、例えば約、又は少なくとも約0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5、0.01~3.5、0.5~3.5、0.5~2.5、又は0.5~1.5重量%(そのような重量%の値は、典型的には、1種以上の塩の総濃度を指す)で存在し得る。
【0111】
本明細書の組成物は、任意選択的には1種以上の酵素(活性酵素)を含み得る。適切な酵素の例としては、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、脂肪分解酵素(例えば金属脂肪分解酵素)、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ(例えばアリールエステラーゼ、ポリエステラーゼ)、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ(例えばコリンオキシダーゼ)、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、メタロプロテイナーゼ、アマドリアーゼ、グルコアミラーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フィターゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、ヌクレアーゼ、及びアミラーゼが挙げられる。酵素(類)が含まれる場合、これは、例えば約0.0001~0.1重量%(例えば0.01~0.03重量%)の活性酵素(例えば純粋な酵素タンパク質として計算される)で本明細書の組成物中に含まれ得る。ファブリックケア又は自動食器洗い用途において、本明細書の酵素(例えばセルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、及び/又はリパーゼなどの上記のいずれか)は、布地又は食器を処理するための水性組成物(例えば洗濯液、中水)中に、例えば最小で約0.01~0.1ppmの総酵素タンパク質、又は約0.1~10ppbの総酵素タンパク質(例えば1ppm未満)から、最大約100、200、500、1000、2000、3000、4000、又は5000ppmの総酵素タンパク質である濃度で存在することができる。
【0112】
グルカンエステル誘導体及び/又はそのような誘導体を含む組成物は、いくつかの態様では生分解性である。そのような生分解性は、例えば、二酸化炭素発生試験法(OECDガイドライン301B、参照により本明細書に組み込まれる)によって決定した場合、15、30、45、60、75、又は90日間の試験後に、約、又は少なくとも約、又は最大約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、5~60%、5~80%、5~90%、40~70%、50~70%、60~70%、40~75%、50~75%、60~75%、70~75%、40~80%、50~80%、60~80%、70~80%、40~85%、50~85%、60~85%、70~85%、40~90%、50~90%、60~90%、又は70~90%、又は5%~90%の間の任意の値であってよい。そのような生分解性は、既存の材料の生分解性よりも約、又は少なくとも約、又は最大約10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、250%、500%、750%、又は1000%高いと見込まれる。
【0113】
組成物は、本明細書の1種、2種、3種、4種、又はそれ以上の異なるグルカンエステル誘導体、及び任意選択的な少なくとも1種の非誘導体化グルカン(例えば本明細書で開示されるもの)を含むことができる。例えば、組成物は、少なくとも1つのタイプのグルカンエステル誘導体と少なくとも1つのタイプのグルカンとを含むことができ、いくつかの態様では、後者は前者の前駆体化合物であってよい(又は前駆体化合物であることができる)。いくつかの態様では、非誘導体化α-グルカン(例えば前駆体化合物)は存在しない。
【0114】
少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書に開示の組成物は、米国特許出願公開第2018/0022834号明細書、同第2018/0237816号明細書、同第2018/0230241号明細書、同第20180079832号明細書、同第2016/0311935号明細書、同第2016/0304629号明細書、同第2015/0232785号明細書、同第2015/0368594号明細書、同第2015/0368595号明細書、同第2016/0122445号明細書、同第2019/0202942号明細書、若しくは同第2019/0309096号明細書、又は国際公開第2016/133734号パンフレットのいずれかに記載のものなどの(これらは全て参照により本明細書に組み込まれる)、例えばホームケア製品、パーソナルケア製品、工業製品、摂取可能な製品(例えば食品)、医療製品、又は医薬品の形態であってよい。いくつかの態様では、組成物は、前述した刊行物のいずれかに開示されている及び/又は本明細書に開示のホームケア製品、パーソナルケア製品、工業製品、医薬品、又は摂取可能な製品(例えば食品)の少なくとも1つの成分/原料を含むことができる。
【0115】
いくつかの態様における組成物は、パーソナルケア製品、医薬品、家庭用品、工業製品、又は摂取可能な製品(例えば食品)に、例えば増粘、凍結/解凍安定性、潤滑性、水分保持及び放出、テクスチャー、稠度、形状保持、乳化、結合、懸濁、分散、ゲル化、又は低下したミネラル硬度などの物理的特性うちの1つ以上を付与するために有用であると考えられる。
【0116】
本明細書におけるパーソナルケア製品は特に限定されず、例えば、スキンケア組成物、化粧品組成物、抗真菌組成物、及び抗菌組成物が挙げられる。本明細書におけるパーソナルケア製品は、例えばローション、クリーム、ペースト、バーム、軟膏、ポマード、ゲル、液体、これらの組み合わせなどの形態であってよい。本明細書に開示のパーソナルケア製品は、必要に応じて少なくとも1つの有効成分を含むことができる。有効成分は、一般には、意図した薬理学的効果を引き起こす成分として認識される。
【0117】
いくつかの態様では、スキンケア製品は、水分不足に関連する皮膚損傷に対処するために皮膚に適用することができる。スキンケア製品は、皮膚の視覚的外観(例えばかさかさした、ひび割れた、及び/又は赤みを帯びた皮膚の外観を軽減する)及び/又は皮膚の触感(例えば皮膚の柔らかさと繊細さを改善しながら皮膚のざらつき及び/又は乾燥を軽減する)に対処するために使用することもできる。スキンケア製品は、典型的には、酸化亜鉛、ワセリン、白色ワセリン、鉱油、タラ肝油、ラノリン、ジメチコン、硬質脂肪、ビタミンA、アラントイン、カラミン、カオリン、グリセリン、又はコロイド状オートミール、及びこれらの組み合わせなどの、皮膚疾患の治療若しくは予防、美容効果の提供、又は皮膚への保湿効果の提供のための少なくとも1つの有効成分を含み得る。スキンケア製品は、例えばセラミド、ヒアルロン酸、グリセリン、スクワラン、アミノ酸、コレステロール、脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ糖脂質、尿素、リノール酸、グリコサミノグリカン、ムコ多糖、乳酸ナトリウム、又はピロリドンカルボン酸ナトリウムなどの1つ以上の天然保湿因子を含み得る。スキンケア製品に含まれ得る他の成分としては、限定するものではないが、グリセリド、アンズ核油、キャノーラ油、スクワラン、スクワレン、ヤシ油、コーン油、ホホバ油、ホホバワックス、レシチン、オリーブ油、ベニバナ油、ゴマ油、シアバター、ダイズ油、スイートアーモンド油、ヒマワリ油、ティーツリー油、シアバター、パーム油、コレステロール、コレステロールエステル、ワックスエステル、脂肪酸、及びオレンジ油が挙げられる。スキンケア製品は、いくつかの態様では、軟膏、ローション、又は消毒剤(例えば手の消毒剤)であってよい。
【0118】
本明細書におけるパーソナルケア製品は、例えばメイクアップ、口紅、マスカラ、ルージュ、ファンデーション、チーク、アイライナ-、リップライナー、リップグロス、その他の化粧品、サンスクリーン、サンブロック、マニキュア、ネイルコンディショナー、バスジェル、シャワージェル、ボディウォッシュ、洗顔料、リップクリーム、スキンコンディショナー、コールドクリーム、保湿剤、ボディスプレー、石鹸、ボディスクラブ、角質除去剤、収斂剤、スクラブローション、脱毛剤、パーマ液、フケ防止剤、制汗剤組成物、デオドラント剤、シェービング製品、プレシェービング製品、アフターシェービング製品、洗浄剤、スキンジェル、リンス、歯磨剤組成物、歯磨き粉、又は洗口液の形態であってもよい。パーソナルケア製品(例えば洗浄剤、石鹸、スクラブ、化粧品)の一例は、担体又は剥離剤(例えばホホバビ-ズ[ホホバエステルビーズ])(例えば約1~10、3~7、4~6、又は5重量%)を含み、このような薬剤は、任意選択的には製品内に分散させることができる。
【0119】
いくつかの態様におけるパーソナルケア製品は、ヘアケア製品であってよい。本明細書におけるヘアケア製品の例としては、シャンプー、ヘアコンディショナー(リーブイン又はリンスアウト)、クリームリンス、染毛剤、ヘアカラー製品、毛髪光沢剤製品、毛髪美容液、毛髪縮毛防止製品、枝毛補修製品、ムース(例えばヘアスタイリングムース)、ヘアスプレー(例えばヘアスタイリングスプレー)、及びスタイリングジェル(例えばヘアスタイリングジェル)が挙げられる。ヘアケア製品は、いくつかの実施形態では、液体、ペースト、ゲル、固体、又は粉末の形態であってよい。本明細書で開示されるヘアケア製品は、典型的には、ヘアケア製品を処方するために一般的に使用される以下の成分のうちの1つ以上を含む:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム及び/又は塩化ジステアリルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤;モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸ソルビタン、及び/又はポリオキシエチレンセチルエーテルなどの非イオン性界面活性剤;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ピログルタミン酸塩、アミノ酸、及び/又はトリメチルグリシンなどの湿潤剤;流動パラフィン、ワセリン、固形パラフィン、スクワラン、及び/又はオレフィンオリゴマーなどの炭化水素;ステアリルアルコール及び/又はセチルアルコールなどの高級アルコール;過脂肪剤;フケ防止剤;消毒剤;抗炎症剤;生薬;メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、及び/又は部分的に脱アセチル化されたキチンなどの水溶性ポリマー;パラベンなどの防腐剤;紫外線吸収剤;真珠光沢剤;pH調整剤;香料;及び顔料。
【0120】
いくつかの態様における組成物は、ヘアスタイリング又はヘアセット組成物(例えばヘアスプレー、ヘアジェル又はローション、ヘアムース/フォーム)(例えばエアゾールヘアスプレー、非エアゾールポンプスプレー、スプリッツェ、フォーム、クリーム、ペースト、非流動性ジェル、ムース、ポマード、ラッカー、ヘアワックス)などのヘアケア組成物であってよい。本明細書の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含むように適合させることができるヘアスタイリング/セット組成物/配合物は、例えば米国特許出願公開第20090074697号明細書、国際公開第1999048462号パンフレット、米国特許出願公開第20130068849号明細書、特開平0454116A号公報、米国特許第5304368号明細書、オーストラリア特許第667246B2号明細書、米国特許第5413775号明細書、米国特許第5441728号明細書、米国特許第5939058号明細書、特開2001302458A号公報、米国特許第6346234号明細書、米国特許出願公開第20020085988号明細書、米国特許第7169380号明細書、米国特許出願公開第20090060858号明細書、米国特許出願公開第20090326151号明細書、米国特許出願公開第20160008257号明細書、国際公開第2020164769号パンフレット、又は米国特許出願公開第20110217256号明細書に開示されているものであってよく、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。ヘアスタイリング/セット組成物などのヘアケア組成物は、前述した文献のいずれかに開示されているような1つ以上の成分/添加剤、並びに/又はフレグランス/香料、アロマセラピーエッセンス、ハ-ブ、インフュージョン、抗菌剤、興奮剤(カフェインなど)、精油、ヘアカラー、染色剤又は着色剤、白髪防止剤、消泡剤、サンスクリーン/UV遮断剤(例えばベンゾフェノン-4)、ビタミン、酸化防止剤、界面活性剤又はその他の湿潤剤、マイカ、シリカ、金属フレーク又は他のグリッター効果を有する材料、コンディショニング剤(例えば揮発性又は不揮発性のシリコーン流体)、帯電防止剤、乳白剤、粘着防止剤、浸透剤、防腐剤(例えばフェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、安息香酸塩、ジアゾリジニル尿素、ヨードプロピニルブチルカルバメート)、皮膚軟化剤(例えばパンテノール、ミリスチン酸イソプロピル)、レオロジー調整又は増粘ポリマー(例えばアクリレート/メタクリルアミドコポリマー、ポリアクリル酸[例えばカルボマー])、乳化油相、ワセリン、脂肪アルコール、ジオール及びポリオール、乳化剤(例えばPEG-40水添ヒマシ油、Oleth-20)、保湿剤(例えばグリセリン、カプリリルグリコール)、シリコーン誘導体、タンパク質、アミノ酸(例えばイソロイシン)、コンディショナー、キレート剤(例えばEDTA)、溶媒(例えば下記参照)、単糖(例えばブドウ糖)、二糖、オリゴ糖、pH安定化化合物(例えばアミノメチルプロパノール)、フィルム形成剤(例えばアクリル酸エステル/アクリル酸ヒドロキシエステルコポリマー、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、酢酸トリエチル)、エアロゾル噴射剤(C3~C5アルカン、例えばプロパン、イソブタン、若しくはn-ブタン、モノアルキルエーテル、ジアルキルエーテル、例えばジ(C1~C4アルキル)エーテル[例えばジメチルエーテル])、及び/又は本明細書における他の任意の適切な材料のうちの1つ以上を含むことができる。本明細書のヘアスタイリング/セット組成物において使用されるグルカンエステル誘導体は、例えば毛髪固定/スタイリング剤(典型的には非永久的な毛髪固定であるが、耐久性がある)として機能することができ、任意選択的には、組成物中の唯一の毛髪固定剤である。本明細書における任意選択的な追加の毛髪固定剤/スタイリング剤としては、PVP(ポリビニルピロリドン)、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ビニルカプロラクタム/PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、AMPHOMER、又は上で挙げたような任意のフィルム形成剤が挙げられる。
【0121】
本明細書のヘアスタイリング/セット組成物などのヘアケア組成物中の1種以上のグルカンエステル誘導体の総含有量は、例えば約、又は少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、0.5~15、0.5~10、0.5~5、0.5~2、1~15、1~10、1~5、1~2、2.5~7.5、3~7、若しくは4~6重量%、又はこれら未満であってよい。ヘアスタイリング/セット組成物は、例えば水と、任意選択的な水混和性(典型的には極性)有機化合物(例えば液体又は気体)、例えばアルコール(例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール)、アルキレングリコールアルキルエーテル、及び/又はモノアルキルエーテル若しくはジアルキルエーテル(例えばジメチルエーテル)とを含む溶剤を含み得る。有機化合物が含まれる場合、それは、例えば溶剤の重量又は体積の約10%、20%、30%、40%、50%、又は60%を構成することができる(残部は水である)。本明細書のヘアスタイリング/セット組成物中の溶剤の量は、例えば約50~90、60~90、70~90、80~90、50~95、60~95、70~95、80~95、又は90~95重量%であってよい。
【0122】
本明細書におけるヘアスタイリングジェル配合物の一例は、約90~95重量%(例えば約92重量%)の溶剤(例えば水)と、0.3~1.0重量%(例えば約0.5重量%)の増粘剤(例えばポリアクリル酸)と、0.1~0.3重量%(例えば約0.2重量%)キレート剤(例えばEDTA)(任意選択)と、0.2~1.0重量%(例えば約0.5重量%)の保湿剤(例えばグリセリン)と、0.01~0.05重量%(例えば約0.02重量%)のUV遮断剤(例えばベンゾフェノン-4)(任意選択)と、0.05~0.3重量%(例えば約0.1重量%)の防腐剤(例えばジアゾリジニル尿素)(任意選択)と、0.5~1.2重量%(例えば約0.8重量%)の乳化剤(例えばOleth-20)と、0.1~0.3重量%(例えば約0.2重量%)のフレグランス/香料(任意選択)と、0.2~1.0重量%(例えば約0.5重量%)のpH安定化化合物(例えばアミノメチルプロパノール)と、3~7重量%(例えば約5重量%)の本明細書のグルカンエステル誘導体(例えば毛髪固定/スタイリング剤として)とを含むことができる。
【0123】
本明細書におけるヘアスタイリングスプレー配合物の一例は、約0.2~1.0重量%(例えば約0.5重量%)のpH安定化化合物(例えばアミノメチルプロパノール)と、0.1~0.3重量%(例えば約0.2重量%)のフレグランス/香料(任意選択)と、0.05~0.12重量%(例えば約0.08重量%)の界面活性剤(例えばエトキシル化ジメチコンポリオール)と、0.05~0.12重量%(例えば約0.08重量%)のコンディショナー(例えばシクロメチコン)(任意選択)と、0.05~0.3重量%(例えば約0.2重量%)の防腐剤(例えば安息香酸ナトリウム)(任意選択)と、15~20重量%(例えば約17重量%)の水と、30~40重量%(例えば約65重量%)のアルコール(例えばエタノール)と、40~60重量%(例えば約45重量%)の噴射剤(例えばジメチルエーテル、又はジメチルエーテルとC1~C5アルカンとの約2:1混合物[例えばプロパンとイソブタンとの混合物])と、2~4重量%(例えば約2.75重量%)の本明細書のグルカンエステル誘導体(例えば毛髪固定/スタイリング剤として)とを含むことができる。
【0124】
本開示のいくつかの態様は、本明細書のヘアケア組成物(例えばヘアスタイリング/セット組成物、シャンプー、又はコンディショナー)で処理された毛髪に関する。例えば、毛髪は、毛髪のフィルム/コーティング中のもの、及び/又は毛髪表面上に吸着若しくは他の形で付着したものなど、毛髪表面上にグルカンエステル誘導体を含むことができ、任意選択的には、本明細書のヘアケア組成物の1つ以上の他の成分も存在することができる。典型的には、α-グルカンエステルを含むコーティングを有する毛髪などの本明細書で開示される毛髪は、肉眼ではフレーキングを示さない(すなわち、ほとんど又は全く顕著なフレーキングがない)。
【0125】
本明細書に開示の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含むパーソナルケア配合物の様々な例を以下に開示する(1~3)。
【0126】
(1)セチルアルコール(1~3%)と、ミリスチン酸イソプロピル(1~3%)と、ヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標)250HHR、0.1~1%)と、グルカンエステル誘導体(0.1~2%)と、カリウム塩(0.1~0.5%)と、Germaben(登録商標)II防腐剤(0.5%、International Specialty Productsから入手可能)とを含み、残部が水であるヘアコンディショナー組成物。
【0127】
(2)5~20%のラウレス硫酸ナトリウム(SLES)と、1~2重量%のコカミドプロピルベタインと、1~2重量%の塩化ナトリウムと、0.1~2%のグルカンエステル誘導体と、防腐剤(0.1~0.5%)とを含み、残部が水であるヘアシャンプー組成物。
【0128】
(3)1~5%のグリセリンと、1~5%のステアリン酸グリコールと、1~5%のステアリン酸と、1~5%の鉱油と、0.5~1%のアセチル化ラノリン(Lipolan(登録商標)98)と、0.1~0.5%のセチルアルコールと、0.2~1%のトリエタノールアミンと、0.1~1重量%のGermaben(登録商標)II防腐剤と、0.5~2重量%のグルカンエステル誘導体とを含み、残部が水であるスキンローション組成物。
【0129】
本明細書における医薬品は、例えば乳剤、液剤、エリキシル剤、ゲル剤、懸濁剤、溶剤、クリーム、又は軟膏の形態であってよい。また、本明細書の医薬品は、抗菌組成物や抗真菌組成物など、本明細書に開示のパーソナルケア製品のいずれかの形態であってもよい。医薬品は、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は薬学的に許容される塩を更に含むことができる。本明細書の組成物は、例えばカプセル、錠剤、錠剤コーティングにおいて、並びに医薬品及び薬剤の賦形剤として使用することもできる。
【0130】
本明細書における家庭用製品及び/又は工業用製品は、乾式壁テープジョイントコンパウンド;モルタル;グラウト;セメントプラスター;スプレープラスター;セメントスタッコ;接着剤;ペースト;壁/天井テクスチャライザー;テープキャスティング、押出成形、射出成形、及びセラミック用のバインダー及び加工助剤;殺虫剤、除草剤、及び肥料用のスプレー式付着剤及び懸濁/分散助剤;布地柔軟剤や洗濯洗剤などのファブリックケア製品;硬質表面クリーナー;芳香剤;ポリマーエマルジョン;ラテックス;水性ゲルなどのゲル;界面活性剤溶液;水性塗料などの塗料;保護コーティング;接着剤;シーラント及びコーキング剤;水性インクなどのインク;金属加工液;フィルム又はコーティング;又は例えば、電気めっき、リン酸塩処理、亜鉛めっき、及び/若しくは一般的な金属洗浄作業に使用される乳剤系の金属洗浄液の形態であってよい。いくつかの態様では、本明細書の組成物は、粘度調整剤及び/又は摩擦低減剤として流体中に含まれる。そのような用途には、例えば坑井作業/流体(例えば水圧破砕や原油増進回収)が含まれる。
【0131】
本明細書のいくつかの態様は、(i)海水などの塩水、又は(ii)約2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、2.5~4.0、2.75~4.0、3.0~4.0、2.5~3.5、2.75~3.5、3.0~3.5、3.0~4.0、若しくは3.0~3.5重量%の1種の塩若しくは塩の組み合わせ(例えば少なくともNaClを含む)を含み本開示の少なくとも1種の水溶性グルカンエステル誘導体を含む水溶液、に関する。(i)又は(ii)のそのような水中のグルカンエステル誘導体の濃度は、例えば約、又は少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、0.1~0.6、0.1~0.5、0.1~0.4、0.1~0.3、若しくは0.1~0.2重量%、又はこれら未満であってよい。そのような水性組成物中の塩濃度が比較的高いにもかかわらず、いくつかの態様におけるグルカンエステル誘導体は、完全に又は大部分が溶液中に残って粘度を付与することができると見込まれる。本明細書のグルカンエステル誘導体によって粘度が調整された(i)又は(ii)のそのような溶液は、そのような溶液を利用する系(例えば坑井作業などの本明細書におけるいずれかのもの)内で使用されるようなものであってよい。
【0132】
本明細書における摂取可能な製品の例としては、食品、飲料、動物飼料、動物の健康及び/若しくは栄養製品、並びに/又は医薬品が挙げられる。摂取可能な製品における本明細書に開示の組成物の意図される用途は、例えば食感を付与すること、ボリュ-ムを追加すること、及び/又は増粘することであってよい。
【0133】
本開示の組成物を摂取可能な製品に使用する更なる例としては、増量、結合、及び/又はコーティング成分;着色剤、フレーバー/香料、及び/又は高甘味度甘味料のための担体;噴霧乾燥補助剤;増量剤、増粘剤、分散剤及び/又は乳化剤;並びに保湿促進成分(保湿剤)としての使用が挙げられる。本明細書の組成物を含んで調製されることができる製品の実例としては、食品、飲料品、医薬品、栄養製品、及びスポ-ツ製品が挙げられる。本明細書における飲料品の例としては、濃縮飲料ミックス、炭酸飲料、非炭酸飲料、フルーツ風味飲料、果汁、お茶、コーヒー、ミルクネクター、粉末飲料、液体濃縮物、乳飲料、インスタントドリンク(RTD)製品、スムージー、アルコール飲料、フレーバーウォーター、及びそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書における食品の例としては、焼成品(例えばパン)、菓子、冷凍乳製品、肉、人工/合成/培養肉、シリアル製品(例えば朝食用シリアル)、乳製品(例えばヨーグルト)、調味料(例えばマスタード、ケチャップ、マヨネーズ)、スナックバー、スープ、ドレッシング、ミックス、調理済み食品、ベビーフード、ダイエット食品、ピーナッツバター、シロップ、甘味料、食品コーティング、ペットフ-ド、動物飼料、動物の健康及び栄養製品、ドライフルーツ、ソース、グレービーソース、ジャム/ゼリー、デザート製品、スプレッド、バッター、ブリーディング、スパイスミックス、フロスティングなどが挙げられる。いくつかの態様では、本明細書の組成物は、乳飲料、非乳製品代替飲料(例えば豆乳、アーモンドミルク、又はココナッツミルクなどの「ビーガン」ミルク)、乳製品クリーマー、及び/又は非乳製品クリーマー(例えばコーヒー[例えばカプチーノ]、お茶[例えばチャイティー]などの温かい飲み物用)などの飲料の泡立ちを提供又は増強することができる。
【0134】
グルカンエステル誘導体を含む本明細書の組成物は、例えばパーソナルケア製品、医薬品、家庭用品、工業製品、又は摂取可能な製品(例えば食品)中に、望まれる程度の増粘及び/又は分散を提供する量で含まれ得る。製品中の開示された組成物の濃度又は量の例は、本明細書で示される任意の重量パーセントである。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む組成物は、ファブリックケア組成物の形態であるか、又はファブリックケア組成物を含むことができる。ファブリックケア組成物は、例えば手洗い、機械洗浄、並びに/又は布地の浸漬及び/若しくは前処理などの他の目的に使用することができる。ファブリックケア組成物は、例えば洗濯洗剤;ファブリックコンディショナー;任意の洗濯、すすぎ、若しくは乾燥機に添加される製品;単位用量、又はスプレーの形態をとることができる。液体形態のファブリックケア組成物は、水性組成物の形態であってよい。別の実施形態では、ファブリックケア組成物は、粒状洗剤又は乾燥機に添加される布地柔軟剤シートなどの乾燥形態であってよい。ファブリックケア組成物の他の非限定的な例としては、粒状又は粉末状の汎用洗剤又は重質洗剤;液体、ゲル、又はペースト状の汎用洗剤又は重質洗剤;液体又は乾燥した高級生地(例えばデリケート)の洗剤;漂白剤、「ステインスティック」、又は前処理剤などの洗浄助剤;乾いたワイプ、湿ったワイプ、パッド、又はスポンジなどの基材を含む製品;スプレー及びミスト;水溶性の単位用量の物品を挙げることができる。更なる例として、本明細書の組成物は、液体、ゲル、粉末、親水コロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、ビーズ又はトローチ、単一区画の小袋、多区画の小袋、単一区画のパウチ、又は多区画のパウチの形態であってよい。
【0136】
本明細書の洗剤組成物は、例えば粉末、顆粒、ペースト、バー、単位用量、又は液体などの任意の有用な形態であってよい。液体洗剤は水性であってよく、典型的には最大約70重量%の水と0重量%~約30重量%の有機溶媒とを含有する。また、これは水を約30重量%のみ含むコンパクトなゲルタイプの形態であってもよい。
【0137】
洗剤組成物(例えば本明細書のファブリックケア製品又は任意の他の製品の)は、典型的には1種以上の界面活性剤を含み、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、半極性非イオン性界面活性剤、及びそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、洗剤組成物の重量の約0.1%~約60%のレベルで存在し、別の実施形態では、そのレベルは約1%~約50%であり、更なる実施形態では、そのレベルは約5%~約40%である。洗剤は、通常、0重量%~約50重量%のアニオン性界面活性剤、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキル硫酸塩(脂肪アルコール硫酸塩)(AS)、アルコールエトキシ硫酸塩(AEOS又はAES)、第二級アルカンスルホン酸塩(SAS)、αースルホ脂肪酸メチルエステル、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、又は石鹸を含む。更に、洗剤組成物は、任意選択的には、0重量%~約40重量%の非イオン性界面活性剤、例えばアルコールエトキシレート(AEO又はAE)、カルボキシル化アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、又はポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド(例えば国際公開第92/06154号パンフレットに記載されているもの、この文献は参照により本明細書に組み込まれる)を含み得る。
【0138】
本明細書の洗剤組成物は、任意選択的には、1種以上の洗剤ビルダー又はビルダー系を含むことができる。いくつかの態様では、酸化α-1,3-グルカンをビルダー併用成分として含めることができ、本明細書で使用するための酸化α-1,3-グルカン化合物は、米国特許出願公開第2015/0259439号明細書に開示されている。少なくとも1種のビルダーが配合されるいくつかの態様では、洗浄組成物は、組成物の重量の少なくとも約1%、約3%~約60%、更には約5%~約40%のビルダーを含む。ビルダーの例としては、ポリリン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアルカノールアンモニウム塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属及びアルカリ金属炭酸塩、アルミノケイ酸塩、ポリカルボン酸塩化合物、エーテルヒドロキシポリカルボン酸塩、無水マレイン酸とエチレン又はビニルメチルエーテルとのコポリマー、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン-2,4,6-トリスルホン酸、及びカルボキシメチルオキシコハク酸、ポリ酢酸の様々なアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩、例えばエチレンジアミン四酢酸及びニトリロ三酢酸、並びにポリカルボン酸塩、例えばメリット酸、コハク酸、クエン酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、並びにそれらの可溶性塩が挙げられる。洗剤ビルダー又は錯化剤の追加の例としては、ゼオライト、二リン酸塩、三リン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTMPA)、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩、又は層状ケイ酸塩(例えばHoechstのSKS-6)が挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態では、ビルダーは、クエン酸塩及びポリリン酸塩(例えばトリポリリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウム六水和物、トリポリリン酸カリウム、並びにトリポリリン酸ナトリウムとトリポリリン酸カリウムとの混合物など)などの水溶性硬度イオン錯体(例えば金属イオン封鎖ビルダー)を形成する。当該技術分野で公知のものを含む、任意の適切なビルダーが本開示で有用であると考えられる(例えば欧州特許第2100949号明細書を参照)。
【0140】
いくつかの実施形態では、適切なビルダーは、リン酸塩ビルダー及び非リン酸塩ビルダーを含み得る。いくつかの実施形態では、ビルダーはリン酸塩ビルダーである。いくつかの実施形態では、ビルダーは非リン酸塩ビルダーである。ビルダーは、組成物の重量の0.1%~80%、又は5%~60%、又は10%~50%のレベルで使用することができる。いくつかの実施形態では、製品はリン酸塩ビルダーと非リン酸塩ビルダーとの混合物を含む。適切なリン酸塩ビルダーとしては、ナトリウム塩を含むこれらの化合物のアルカリ金属塩などの、モノリン酸塩、ジリン酸塩、トリポリリン酸塩、又はオリゴマー状ポリリン酸塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、ビルダーはトリポリリン酸ナトリウム(STPP)であってよい。更に、組成物は、炭酸塩及び/又はクエン酸塩、好ましくは中性pHの組成物を実現するのに有用なクエン酸塩を含むことができる。他の適切な非リン酸塩ビルダーとしては、ポリカルボン酸及びそれらの部分的に又は完全に中和された塩のホモポリマー及びコポリマー、モノマー状のポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、並びにそれらの塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、上述した化合物の塩には、アンモニウム塩及び/又はアルカリ金属塩、すなわちナトリウム塩などのリチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩が含まれる。適切なポリカルボン酸としては、非環式、脂環式、複素環式、及び芳香族のカルボン酸が挙げられ、いくつかの実施形態では、それらは、それぞれの場合において、場合によっては2個以下の炭素原子によって互いに隔てられている少なくとも2個のカルボキシル基を含むことができる。
【0141】
本明細書の洗剤組成物は、少なくとも1種のキレート剤を含むことができる。適切なキレート剤としては、限定するものではないが、銅、鉄、及び/又はマンガンのキレート剤並びにそれらの混合物が挙げられる。少なくとも1種のキレート剤が使用される実施形態では、組成物は、組成物の重量の約0.1%~約15%、更には約3.0%~約10%のキレート剤を含む。
【0142】
本明細書の洗剤組成物は、少なくとも1種の付着助剤を含むことができる。適切な付着助剤としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカルボキシレート、汚れ除去ポリマー、例えばポリテレフタル酸、粘土、例えばカオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイト、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0143】
本明細書の洗剤組成物は、1種以上の移染防止剤を含むことができる。適切なポリマー系移染防止剤としては、限定するものではないが、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールとのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン、及びポリビニルイミダゾール、又はそれらの混合物が挙げられる。追加の移染防止剤としては、マンガンフタロシアニン、ペルオキシダーゼ、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールとのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン、及びポリビニルイミダゾール、並びに/又はそれらの混合物が挙げられ、そのキレート剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP);ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP);エチレンジアミンN,N’-ジコハク酸(EDDS);メチルグリシン二酢酸(MGDA);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);プロピレンジアミン四酢酸(PDT A);2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HPNO);又はメチルグリシン二酢酸(MGDA);グルタミン酸N,N-二酢酸(N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸四ナトリウム塩(GLDA)、ニトリロ三酢酸(NTA);4,5-ジヒドロキシ-m-ベンゼンジスルホン酸;クエン酸及びその塩;N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸(EDTP)、並びにそれらの誘導体が挙げられ、これらは単独で又は上記のいずれかと組み合わせて使用することができる。少なくとも1種の移染防止剤が使用される実施形態では、本明細書の組成物は、組成物の重量の約0.0001%~約10%、約0.01%~約5%、更には約0.1%~約3%含み得る。
【0144】
本明細書の洗剤組成物は、ケイ酸塩を含むことができる。これらの実施形態のいくつかでは、ケイ酸ナトリウム(例えば二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び/又は結晶性フィロケイ酸塩)が有用である。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩は、組成物の重量の約1%~約20%のレベルで存在する。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩は、組成物の重量の約5%~約15%のレベルで存在する。
【0145】
本明細書の洗剤組成物は、分散剤を含むことができる。適切な水溶性有機材料としては、限定するものではないが、2個以下の炭素原子によって互いに隔てられている少なくとも2個のカルボキシルラジカルをポリカルボン酸が含む、ホモポリマー酸又はコポリマー酸又はそれらの塩が挙げられる。
【0146】
本明細書の洗剤組成物は、例えば上で開示した1種以上の酵素を更に含み得る。いくつかの態様では、洗剤組成物は、組成物の重量に対してそれぞれ約0.00001%~約10%のレベルの1種以上の酵素と、組成物の重量に対して残部の洗浄補助材料とを含むことができる。いくつかの別の態様では、洗剤組成物は、組成物の重量の約0.0001%~約10%、約0.001%~約5%、約0.001%~約2%、又は約0.005%~約0.5%のレベルでそれぞれの酵素を含むこともできる。本明細書の洗剤組成物に含まれる酵素は、従来の安定化剤、例えばプロピレングリコール又はグリセロールなどのポリオール;糖又は糖アルコール;乳酸;ホウ酸又はホウ酸誘導体(例えば芳香族ホウ酸エステル)を使用して安定化することができる。
【0147】
いくつかの態様における洗剤組成物は、本明細書に開示されるグルカンエステル誘導体に加えて、1種以上の他のタイプのポリマーも含み得る。本明細書で有用な他のタイプのポリマーの例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デキストラン、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリアクリレートなどのポリカルボキシレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びメタクリル酸ラウリル/アクリル酸コポリマーが挙げられる。
【0148】
本明細書の洗剤組成物は、漂白系を含むことができる。例えば、漂白系は、過ホウ酸塩や過炭酸塩などのH2O2源を含むことができ、これはテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)又はノナノイルオキシベンゼンスルホン酸塩(NOBS)などの過酸形成漂白活性化剤と組み合わせることができる。
【0149】
或いは、漂白系はペルオキシ酸(例えばアミド、イミド、又はスルホン型のペルオキシ酸)を含んでいてもよい。或いは更に、漂白系は例えば国際公開第2005/056783号パンフレットに記載されている系などの、ペルヒドロラーゼを含む酵素漂白系であってもよい。
【0150】
本明細書の洗剤組成物は、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、変色防止剤、蛍光増白剤、又は香料などの従来の洗剤成分も含み得る。明細書における洗剤組成物のpH(使用濃度の水溶液中で測定)は、通常中性又はアルカリ性(例えば約7.0~約11.0のpH)である。
【0151】
本明細書のファブリックケア製品に適した再付着防止剤及び/又は粘土汚れ除去剤の例としては、ポリエトキシ双性イオン性界面活性剤、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸又はメタクリル酸-エチレンオキシド縮合物との水溶性コポリマー(例えば米国特許第3719647号明細書)、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体(例えば米国特許第3597416号明細書及び同第3523088号明細書)、並びに非イオン性アルキルポリエトキシ界面活性剤と、ポリエトキシアルキル四級カチオン性界面活性剤と、脂肪アミド界面活性剤とを含む混合物(例えば米国特許第4228044号明細書)が挙げられる。他の適切な再付着防止剤及び粘土汚れ除去剤の非限定的な例は、米国特許第4597898号明細書、同第4891160号明細書、及び国際特許出願公開第95/32272号パンフレットに開示されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0152】
本明細書の目的に適合させることができる洗剤組成物の具体的な形態は、例えば、米国特許出願公開第20090209445A1号明細書、米国特許出願公開第20100081598A1号明細書、米国特許第7001878B2号明細書、欧州特許第1504994B1号明細書、国際公開第2001085888A2号パンフレット、国際公開第2003089562A1号パンフレット、国際公開第2009098659A1号パンフレット、国際公開第2009098660A1号パンフレット、国際公開第2009112992A1号パンフレット、国際公開第2009124160A1号パンフレット、国際公開第2009152031A1号パンフレット、国際公開第2010059483A1号パンフレット、国際公開第2010088112A1号パンフレット、国際公開第2010090915A1号パンフレット、国際公開第2010135238A1号パンフレット、国際公開第2011094687A1号パンフレット、国際公開第2011094690A1号パンフレット、国際公開第2011127102A1号パンフレット、国際公開第2011163428A1号パンフレット、国際公開第2008000567A1号パンフレット、国際公開第2006045391A1号パンフレット、国際公開第2006007911A1号パンフレット、国際公開第2012027404A1号パンフレット、欧州特許第1740690B1号明細書、国際公開第2012059336A1号パンフレット、米国特許第6730646B1号明細書、国際公開第2008087426A1号パンフレット、国際公開第2010116139A1号パンフレット、及び国際公開第2012104613A1号パンフレットに記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
本明細書の洗濯洗剤組成物は、任意選択的には、重質(汎用)洗濯洗剤組成物であってもよい。例示的な重質洗濯洗剤組成物は、アニオン性洗浄界面活性剤(直鎖又は分岐鎖又はランダム鎖の置換又は無置換のアルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアルコキシル化硫酸塩、アルキルホスホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、及び/又はそれらの混合物の群から選択される)を含む洗浄界面活性剤(10%~40%wt/wt)と、任意選択的な非イオン性界面活性剤(直鎖又は分岐鎖又はランダム鎖の置換又は無置換のアルキルアルコキシル化アルコール、例えばC8~C18アルキルエトキシル化アルコール及び/又はC6~C12アルキルフェノールアルコキシレートの群から選択される)とを含み、アニオン性洗浄界面活性剤(6.0~9の親水性指数(Hlc)を有する)対非イオン性洗浄界面活性剤の重量比は1:1よりも大きい。適切な洗浄界面活性剤には、カチオン性洗浄界面活性剤(アルキルピリジニウム化合物、アルキル四級アンモニウム化合物、アルキル四級ホスホニウム化合物、アルキル三級スルホニウム化合物、及び/又はそれらの混合物の群から選択される);双性イオン性及び/又は両性洗浄界面活性剤(アルカノールアミンスルホベタインの群から選択される);両性界面活性剤;半極性非イオン界面活性剤;並びにそれらの混合物も含まれる。
【0154】
重質洗濯洗剤組成物などの本明細書の洗剤は、任意選択的には、両親媒性アルコキシル化グリース洗浄ポリマー(0.05重量%~10重量%の範囲のアルコキシル化ポリアルキレンイミンなどの、分岐した親水特性と疎水特性とを有するアルコキシル化ポリマーの群から選択される)及び/又はランダムグラフトポリマー(典型的には、不飽和C1~C6カルボン酸、エーテル、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、糖単位、アルコキシ単位、無水マレイン酸、飽和多価アルコール、例えばグリセロール、及びそれらの混合からなる群から選択されるモノマーを含む親水性主鎖と;C4~C25アルキル基、ポリプロピレン、ポリブチレン、飽和C1~C6モノカルボン酸のビニルエステル、アクリル酸又はメタクリル酸のC1~C6アルキルエステル、及びそれらの混合からなる群から選択される疎水性側鎖とを含む)からなる界面活性増強ポリマーを含み得る。
【0155】
重質洗濯洗剤組成物などの本明細書の洗剤は、任意選択的には、汚れ除去ポリマー(アニオン性末端でキャップされたポリエステル、例えばSRP1;サッカリド、ジカルボン酸、ポリオール、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のモノマー単位をランダム又はブロック構成で含むポリマー;ランダム又はブロック構成のエチレンテレフタレート系ポリマー及びそれらのコポリマー、例えばREPEL-O-TEX SF、SF-2及びSRP6、TEXCARE SRA100、SRA300、SRN100、SRN170、SRN240、SRN300、及びSRN325、MARLOQUEST SL)などの追加のポリマーを含むことができ、本明細書の再付着防止剤(0.1重量%~10重量%)は、アクリル酸、マレイン酸(又は無水マレイン酸)、フマル酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、及びそれらの任意の混合から選択される少なくとも1種のモノマーを含むポリマーなどのカルボキシレートポリマー、ビニルピロリドンホモポリマー、及び/又はポリエチレングリコール(500~100,000Daの範囲の分子量);並びにポリマー状カルボキシレート(マレイン酸塩/アクリル酸塩ランダムコポリマー又はポリアクリレートホモポリマーなど)を含む。
【0156】
重質洗濯洗剤組成物などの本明細書の洗剤は、任意選択的には、飽和又は不飽和脂肪酸、好ましくは飽和又は不飽和C12~C24脂肪酸(0重量%~10重量%);付着助剤(その例としては、多糖、セルロース系ポリマー、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド(DADMAC)、並びにDAD MACとビニルピロリドン、アクリルアミド、イミダゾール、ハロゲン化イミダゾリニウム、及びそれらの混合とのランダム又はブロック構成でのコポリマー、カチオン性グアーガム、カチオン性デンプン、カチオン性ポリアクリルアミド、並びにそれらの混合物が挙げられる)を更に含み得る。
【0157】
重質洗濯洗剤組成物などの本発明の洗剤は、任意選択的には少なくとも1種の移染防止剤を更に含んでいてもよく、その例は上述されている。
【0158】
重質洗濯洗剤組成物などの本明細書の洗剤は、任意選択的には、シリコーン又は脂肪酸系の泡抑制剤;色相染料、カルシウム及びマグネシウムカチオン、視覚的シグナル伝達成分、消泡剤(0.001重量%~約4.0重量%)、並びに/又はジグリセリド及びジグリセリド、エチレングリコールジステアレート、微結晶セルロース、マイクロファイバーセルロース、バイオポリマー、キサンタンガム、ジェランガム、及びそれらの混合物からなる群から選択される構造化物質/増粘剤(0.01重量%~5重量%)を含み得る。構造化物質は構造化剤とも呼ばれる場合がある。
【0159】
本明細書における洗剤は、例えば、重質乾燥/固体洗濯用洗剤組成物の形態であってよい。そのような洗剤は:(i)洗浄界面活性剤、例えば本明細書に開示の任意のアニオン性洗浄界面活性剤、本明細書に開示の任意の非イオン性洗浄界面活性剤、本明細書に開示の任意のカチオン性洗浄界面活性剤、本明細書に開示の任意の双性イオン性及び/又は両性洗浄界面活性剤、任意の両性界面活性剤、任意の半極性非イオン性界面活性剤、並びにそれらの混合物;(ii)ビルダー、例えば任意の無リンビルダー(例えば、0重量%から10重量%未満の範囲内のゼオライトビルダー)、任意のリン酸塩ビルダー(例えば0重量%から10重量%未満の範囲内のトリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸、クエン酸塩、及びニトリロ三酢酸、任意のケイ酸塩(例えば0重量%から10重量%未満の範囲内のケイ酸ナトリウム若しくはカリウム又はメタケイ酸ナトリウム);任意の炭酸塩(例えば0重量%から80重量%未満の範囲内の炭酸ナトリウム及び/又は重炭酸ナトリウム)、並びにそれらの混合物;(iii)漂白剤、例えば任意の光漂白剤(例えばスルホン化亜鉛フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン、キサンテン染料、及びそれらの混合物)、任意の疎水性若しくは親水性漂白活性化剤(例えばドデカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシ安息香酸若しくはそれらの塩、3,5,5-トリメチルヘキサノイルオキシベンゼンスルホネート、テトラアセチルエチレンジアミン-TAED、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート-NOBS、ニトリルクアット及びそれらの混合物)、任意の過酸化水素源(例えば無機過水和物塩、その例には過ホウ酸、過炭酸、過硫酸、過リン酸、又は過ケイ酸のナトリウム塩一水和物若しくはナトリウム塩四水和物が含まれる)、任意の予め形成された親水性及び/又は疎水性の過酸(例えば過カルボン酸及び塩、過炭酸及び塩、過イミド酸及び塩、ペルオキシ一硫酸及び塩、並びにそれらの混合物);並びに/又は(iv)任意の他の成分、例えば漂白触媒(例えばイミン系漂白増強剤、その例にはイミニウムカチオン及びポリイオン、イミニウム双性イオン、変性アミン、変性アミンオキシド、N-スルホニルイミン、N-ホスホニルイミン、N-アシルイミン、チアジアゾールジオキシド、ペルフルオロイミン、環状糖ケトン、及びそれらの混合物が含まれる)、及び金属含有漂白触媒(例えば亜鉛やアルミニウムなどの補助金属カチオン及びEDTA、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)などの金属イオン封鎖剤を伴う銅、鉄、チタン、ルテニウム、タングステン、モリブデン、又はマンガンカチオン)を含み得る。
【0160】
ファブリックケア(例えば洗濯)用の洗剤などの本明細書の洗剤は、例えば、単位用量(例えば小袋又はパウチ)に含まれていてもよい。単位用量形態は、液体又は固体の洗剤組成物を完全に包む水溶性の外側フィルムを含むことができる。単位用量は、単一の区画、又は少なくとも2つ、3つ、若しくはそれ以上の(複数の)区画を含むことができる。複数の区画は上に重ねられて配置されていてもよく、或いは横に並べて配置されていてもよい。本明細書における単位用量は、典型的には、水と接触する前に内容物を放出させることなく、その内容物を保持及び保護するのに適した任意の形態/形状の閉鎖構造である。
【0161】
いくつかの態様では、本明細書の少なくとも1つのグルカンエステル誘導体を含む組成物は、布地柔軟剤(液体布地柔軟剤)の形態であるか、又はそれを含むことができる。そのような組成物の例は、典型的には洗濯洗剤組成物による布地含有材料の洗浄後に本明細書の布地含有材料を洗濯する際に使用されるリンス(例えば洗濯機の洗濯すすぎサイクルで使用されるような洗濯リンス)である。布地柔軟剤(例えばリンス)を含む組成物中のグルカンエステル誘導体の濃度は、例えば約、又は少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、20~80、20~70、20~60、30~80、30~70、30~60、40~80、40~70、又は40~60ppmであってよい。組成物(例えばリンス)中の布地柔軟剤の濃度は、例えば約、又は少なくとも約50、75、100、150、200、300、400、500、600、50~600、50~500、50~400、50~300、50~200、100~600、100~500、100~400、100~300、100~200、10~600、50~500、50~400、50~300、50~200、200~600、200~500、200~400、又は200~300ppmであってよい。布地柔軟剤の濃度は、添加される布地柔軟剤組成物全体に基づくことができ(必ずしも布地柔軟剤の個々の成分に基づく必要はない)、或いは布地柔軟剤配合物中の1種以上の布地柔軟剤に基づくことができる。本明細書における布地柔軟剤は、例えば、布地柔軟剤(例えばジエチルエステルジメチルアンモニウムクロリド)、帯電防止剤、香料、湿潤剤、粘度調整剤(例えば塩化カルシウム)、pH緩衝/緩衝剤(例えばギ酸)、抗菌剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤(例えば塩化アンモニウム)、キレート剤/ビルダー(例えばジエチレントリアミン五酢酸塩)、消泡剤/潤滑剤(例えばポリジメチルシロキサン)、防腐剤(例えばベンズイソチアゾリノン)、及び着色剤のうちの1種以上を更に含むことができる。いくつかの態様では、布地柔軟剤は、布地柔軟剤、粘度調整剤、pH緩衝/緩衝剤、ラジカル捕捉剤、キレート剤/ビルダー、及び消泡剤/潤滑剤のうちの1種以上を更に含むことができる。布地柔軟剤は、無香料及び/又は無染料であってよく、或いはいくつかの態様では約0.1重量%未満の香料及び/又は染料を有することができる。いくつかの態様では、本明細書における使用に適合させることができる布地柔軟剤は、米国特許出願公開第2014/0366282号明細書、同第2001/0018410号明細書、同第2006/0058214号明細書、同第2021/0317384号明細書、若しくは同第2006/0014655号明細書、又は国際公開第2007/078782号パンフレット、国際公開第1998/016538号パンフレット、国際公開第1998/012293号パンフレット、国際公開第1998007920号パンフレット、国際公開第2000/070004号パンフレット、国際公開第2009/146981号パンフレット、国際公開第2000/70005号パンフレット、又は国際公開第2013087366号パンフレットのいずれかに開示されているものであってよく、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。必要に応じて本明細書における使用に適合させることができるいくつかのブランドの布地柔軟剤としては、DOWNY、DOWNY ULTRA、DOWNY INFUSIONS、ALL、SNUGGLE、LENOR、及びGAINが挙げられる。液体柔軟剤製品(例えば洗濯すすぎサイクルで使用される前に存在するもの)は、いくつかの態様では、1種以上のグルカンエステル誘導体を含むように配合することができる。いくつかの態様では、布地柔軟剤は、洗剤について本明細書に開示されたものなどの単位用量であってよい。
【0162】
少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書に開示の組成物は、例えば食器洗い用洗剤組成物の形態であることができ、或いは食器洗い用洗剤組成物を含むことができる。食器洗い用洗剤の例としては、自動食器洗い用洗剤(典型的には食器洗い機で使用される)及び手洗い用食器洗剤が挙げられる。食器洗い用洗剤組成物は、例えば、本明細書に開示されるような任意の乾燥形態又は液体/水性形態であってよい。食器洗い用洗剤組成物のいくつかの態様に含まれる可能性のある成分としては、例えばリン酸塩;酸素系又は塩素系漂白剤;非イオン性界面活性剤;アルカリ塩(例えばメタケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム);本明細書に開示の任意の活性酵素;腐食防止剤(例えばケイ酸ナトリウム);消泡剤;セラミックからの釉薬及びパターンの除去を遅らせるための添加剤;香料;固結防止剤(粒状洗剤中);デンプン(錠剤系洗剤中);ゲル化剤(液体/ゲルベースの洗剤中);及び/又は砂(粉末洗剤)のうちの1つ以上が挙げられる。
【0163】
自動食器洗い用洗剤又は液体食器洗い用洗剤などの食器洗い用洗剤は、(i)0~10重量%の量で存在する任意のエトキシル化非イオン性界面活性剤、アルコールアルコキシル化界面活性剤、エポキシでキャップされたポリ(オキシアルキル化)アルコール、又はアミンオキシド界面活性剤を含む非イオン性界面活性剤;(ii)任意のリン酸塩ビルダー(例えばモノリン酸塩、ジリン酸塩、トリポリリン酸塩、他のオリゴマー状ポリリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウム-STPP)、任意のリン酸塩を含まないビルダー(例えばメチルグリシン二酢酸[MGDA]及びその塩又は誘導体、グルタミン酸-N,N-二酢酸[GLDA]及びその塩又は誘導体、イミノジコハク酸(IDS)及びその塩又はその誘導体、カルボキシメチルイヌリン及びその塩又は誘導体、ニトリロ三酢酸[NTA]、ジエチレントリアミン五酢酸[DTPA]、β-アラニン二酢酸[β-ADA]及びそれらの塩を含むアミノ酸系化合物)、ポリカルボン酸のホモポリマー及びコポリマー並びに部分的に又は完全に中和されたそれらの塩、0.5重量%~50重量%の範囲のモノマー状ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸並びにそれらの塩、又は約0.1重量%~約50重量%の範囲のスルホン化/カルボキシル化ポリマーを含む、約5~60重量%の範囲のビルダー;(iii)約0.1重量%~約10重量%の範囲の乾燥助剤(例えばポリエステル、特にはアニオン性ポリエステル、任意選択的には3~6個の官能基(典型的には、重縮合を行う酸、アルコール、又はエステル官能基)を有する追加のモノマーを含むポリエステル、特にアニオン性ポリエステル;ポリカーボネート-、ポリウレタン-、及び/若しくはポリウレア-ポリオルガノシロキサン化合物、又はそれらの前駆体化合物、特に反応性環状カーボネート及びウレアタイプのもの);(iv)約1重量%~約20重量%の範囲のケイ酸塩(例えば二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び結晶性フィロケイ酸塩などのケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウム);(v)無機漂白剤(例えば過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩、及び過ケイ酸塩などの過水和塩)並びに/又は有機漂白剤(例えばジアシルペルオキシド及びテトラアシルペルオキシド、特にジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシテトラデカン二酸、及びジペルオキシヘキサデカン二酸などの有機ペルオキシ酸);(vi)漂白活性剤(例えば約0.1重量%~約10重量%の範囲の有機過酸前駆体)及び/又は漂白触媒(例えばマンガントリアザシクロノナン及び関連錯体;Co、Cu、Mn、及びFeビスピリジルアミン、及び関連錯体;並びにペンタアミン酢酸コバルト(III)及び関連錯体);(vii)約0.1重量%~5重量%の範囲の金属ケア剤(例えばベンザトリアゾール、金属塩及び金属錯体、並びに/又はケイ酸塩);(viii)約0.1重量%~5重量%の範囲のガラス腐食防止剤(例えばマグネシウム、亜鉛、又はビスマスの塩及び/又は錯体);並びに/又は(ix)自動食器洗い用洗剤組成物1グラム当たり約0.01~5.0mgの範囲の本明細書に開示の任意の活性酵素、及び酵素安定剤成分(例えばオリゴ糖、多糖、及び無機二価金属塩)を含み得る。いくつかの態様では、食器洗い用洗剤成分又は組成物全体(ただし本明細書ではグルカンエステル誘導体を含むように合わせられる)は、米国特許第8575083号明細書若しくは同第9796951号明細書、又は米国特許出願公開第2017/0044468号明細書に開示されている通りであってよく、これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0164】
食器ケア用などの本明細書における洗剤は、単位用量(例えば小袋又はパウチ)(例えば水溶性単位用量物品)に含まれることができ、例えばファブリックケア用洗剤について上述した通りであってよいが、むしろ適切な食器洗い用洗剤組成物を含む。
【0165】
多くの市販の洗剤配合物は、本明細書に開示されるグルカンエステル誘導体を含むように適合させることができると考えられる。市販の洗剤配合物の例としては、PUREX(登録商標)ULTRAPACKS(Henkel)、FINISH(登録商標)QUANTUM(Reckitt Benckiser)、CLOROX(商標)2PACKS(Clorox)、OXICLEAN MAX FORCE POWER PAKS(Church&Dwight)、TIDE(登録商標)STAIN RELEASE、CASCADE(登録商標)ACTIONPACS、及びTIDE(登録商標)PODS(商標)(Procter&Gamble)が挙げられる。
【0166】
少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書に開示の組成物は、例えばオーラルケア組成物の形態であることができ、或いはオーラルケア組成物を含むことができる。オーラルケア組成物の例としては、歯磨剤、練り歯磨き、洗口液、マウスリンス、チューインガム、及び何らかの形態のオーラルケア(例えば虫歯[う蝕]、歯肉炎、歯垢、歯石及び/又は歯周病の治療又は予防)を提供する食用ストリップが挙げられる。オーラルケア組成物は、舌、硬口蓋及び軟口蓋、頬粘膜、歯肉、及び歯の表面を含む口腔内のあらゆる軟質表面又は硬質表面を包含する「口腔表面」を処理するためのものであってもよい。本明細書における「歯の表面」は、例えば天然歯の表面、又は例えばクラウン、キャップ、充填物、ブリッジ、義歯、若しくは歯科インプラントを含む人工歯列の硬質表面である。
【0167】
本明細書のオーラルケア組成物は、例えば約0.01~15.0重量%(例えば約0.1~10重量%又は約0.1~5.0重量%、約0.1~2.0重量%)の本明細書に開示のグルカンエステル誘導体を含むことができる。オーラルケア組成物に含まれるグルカンエステル誘導体は、組成物に望まれる稠度及び/又は口当たりを付与するために有用であることができる増粘剤及び/又は分散剤として配合される場合がある。例えば、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン(例えばL-カラギーナン)、天然ガム(例えばカラヤ、キサンタン、アラビアガム、トラガカント)、コロイド状ケイ酸マグネシウムアルミニウム、又はコロイド状シリカなどの1種以上の他の増粘剤又は分散剤も本明細書のオーラルケア組成物中に配合することができる。
【0168】
本明細書におけるオーラルケア組成物は、例えば練り歯磨き又は他の歯磨剤であってよい。そのような組成物、並びに本明細書の任意の他のオーラルケア組成物は、限定するものではないが、虫歯予防剤、抗微生物若しくは抗菌剤、抗歯石若しくは歯石抑制剤、界面活性剤、研磨剤、pH調整剤、泡調節剤、保湿剤、香料、甘味料、顔料/着色剤、ホワイトニング剤、及び/又は他の適切な成分のうちの1種以上を更に含むことができる。本明細書のグルカンエステル誘導体を添加することができるオーラルケア組成物の例は、米国特許出願公開第2006/0134025号明細書、同第2002/0022006号明細書、及び同第2008/0057007号明細書に開示されており、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
本明細書の虫歯予防剤は、経口が許容されるフッ化物イオン源であってよい。適切なフッ化物イオン源としては、例えばフッ化物、モノフルオロリン酸塩及びフルオロケイ酸塩、並びにオラフルル(N’-オクタデシルトリメチレンジアミン-N,N,N’-トリス(2-エタノール)-ジヒドロフルオリド)を含むアミンフッ化物が挙げられる。虫歯予防剤は、例えば合計約100~20000ppm、約200~5000ppm、又は約500~2500ppmのフッ化物イオンを組成物に供給する量で存在することができる。フッ化ナトリウムがフッ化物イオンの唯一の供給源であるオーラルケア組成物では、例えば約0.01~5.0重量%、約0.05~1.0重量%、又は約0.1~0.5重量%の量のフッ化ナトリウムが組成物中に存在することができる。
【0170】
本明細書のオーラルケア組成物での使用に適した抗微生物又は抗菌剤としては、例えばフェノール化合物(例えば4-アリルカテコール;ベンジルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、及びプロピルパラベンなどのp-ヒドロキシ安息香酸エステル;2-ベンジルフェノール;ブチル化ヒドロキシアニソール;ブチル化ヒドロキシトルエン;カプサイシン;カルバクロール;クレオソール;オイゲノール;グアイアコール;ヘキサクロロフェンやブロモクロロフェンなどのハロゲン化ビスフェノール類;4-ヘキシルレゾルシノール;8-ヒドロキシキノリン及びその塩;サリチル酸メンチル、サリチル酸メチル、及びサリチル酸フェニルなどのサリチル酸エステル;フェノール;ピロカテコール;サリチルアニリド;チモ-ル;トリクロサンやトリクロサンモノホスフェートなどのハロゲン化ジフェニルエーテル化合物)、銅(II)化合物(例えば銅(II)の塩化物、フッ化物、硫酸塩、及び水酸化物)、亜鉛イオン源(例えば酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、酸化亜鉛、及び硫酸亜鉛)、フタル酸及びその塩(例えばフタル酸マグネシウム一カリウム)、ヘキセチジン、オクテニジン、サンギナリン、塩化ベンザルコニウム、臭化ドミフェン、塩化アルキルピリジニウム(例えば塩化セチルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウム、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム)、ヨウ素、スルホンアミド、ビスビグアニド(例えばアレキシジン、クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン)、ピペリジノ誘導体(例えばデルモピノール、オクタピノール)、マグノリア抽出物、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、メントール、ゲラニオール、シトラール、ユーカリプトール、抗生物質(例えばオーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、クリンダマイシン)、並びに/又は米国特許第5776435号明細書(これは参照により本明細書に組み込まれる)に開示の任意の抗菌剤が挙げられる。1種以上の抗菌剤は、任意選択的には、例えば開示されるオーラルケア組成物中に約0.01~10重量%(例えば0.1~3重量%)で存在することができる。
【0171】
本明細書のオーラルケア組成物における使用に適した抗歯石又は歯石抑制剤としては、例えば、リン酸塩及びポリリン酸塩(例えばピロリン酸塩)、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリペプチド(例えばポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸)、ポリオレフィンスルホン酸塩、ポリオレフィンリン酸塩、ジホスホン酸塩(例えばアザシクロヘプタン-2,2-ジホスホン酸などのアザシクロアルカン-2,2-ジホスホン酸塩)、N-メチルアザシクロペンタン-2,3-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸(EHDP)、エタン-1-アミノ-1,1-ジホスホネート、及び/又はホスホノアルカンカルボン酸及びその塩(例えばそのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩)が挙げられる。有用な無機リン酸塩及びポリリン酸塩としては、例えば、一塩基性、二塩基性、及び三塩基性のリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸塩、ピロリン酸の一、二、三、及び四ナトリウム塩、ピロリン酸二水素二ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、又はナトリウムがカリウム若しくはアンモニウムで置き換えられたこれらのいずれかのものが挙げられる。特定の実施形態における他の有用な抗歯石剤としては、アニオン性ポリカルボキシレートポリマー(例えばポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマーなどの、アクリル酸、メタクリル酸、及び無水マレイン酸のポリマー又はコポリマー)が挙げられる。更に他の有用な抗歯石剤としては、ヒドロキシカルボン酸(例えばクエン酸、フマル酸、リンゴ酸、グルタル酸、及びシュウ酸、並びにそれらの塩)及びアミノポリカルボン酸(例えばEDTA)などの金属イオン封鎖剤が挙げられる。1種以上の抗歯石又は歯石抑制剤は、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約0.01~50重量%(例えば約0.05~25重量%又は約0.1~15重量%)で存在することができる。
【0172】
本明細書のオーラルケア組成物における使用に適した界面活性剤は、例えばアニオン性、非イオン性、又は両性であってよい。適切なアニオン性界面活性剤としては、限定するものではないが、C8~20アルキル硫酸塩の水溶性塩、C8~20脂肪酸のスルホン化モノグリセリド、サルコシネート、及びタウレートが挙げられる。アニオン性界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ココナッツモノグリセリドスルホン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルイソエチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。適切な非イオン性界面活性剤としては、限定するものではないが、ポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、三級アミンオキシド、三級ホスフィンオキシド、及びジアルキルスルホキシドが挙げられる。適切な両性界面活性剤としては、限定するものではないが、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、又はホスホネートなどのアニオン性基を有するC8~20脂肪族二級及び三級アミンの誘導体が挙げられる。適切な両性界面活性剤の例は、コカミドプロピルベタインである。1種以上の界面活性剤は、任意選択的には、例えば開示されるオーラルケア組成物中に、約0.01~10重量%(例えば約0.05~5.0重量%又は約0.1~2.0重量%)の合計量で存在する。
【0173】
本明細書におけるオーラルケア組成物中での使用に適した研磨剤としては、例えばシリカ(例えばシリカゲル、水和シリカ、沈降シリカ)、アルミナ、不溶性リン酸塩、炭酸カルシウム、及び樹脂性研磨剤(例えば尿素-ホルムアルデヒド縮合生成物)を挙げることができる。本明細書において研磨剤として有用な不溶性リン酸塩の例は、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩、及びピロリン酸塩であり、それらとしては、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、β-ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、及び不溶性ポリメタリン酸ナトリウムが挙げられる。1種以上の研磨剤は、任意選択的には、例えば開示されるオーラルケア組成物中に、約5~70重量%(例えば約10~56重量%又は約15~30重量%)の合計量で存在する。特定の実施形態における研磨剤の平均粒径は、約0.1~30ミクロン(例えば約1~20ミクロン又は約5~15ミクロン)である。
【0174】
特定の実施形態におけるオーラルケア組成物は、少なくとも1種のpH調整剤を含み得る。そのような薬剤は、組成物のpHを約2~10のpH範囲(例えば約2~8、3~9、4~8、5~7、6~10、又は7~9の範囲のpH)へと酸性化、より塩基性化、又は緩衝するように選択することができる。本明細書において有用なpH調節剤の例としては、限定するものではないが、カルボン酸、リン酸、及びスルホン酸;酸塩(例えばクエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、リンゴ酸一ナトリウム);アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素塩、セスキ炭酸塩);ホウ酸塩;ケイ酸塩;リン酸塩(例えばリン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸塩);及びイミダゾールが挙げられる。
【0175】
本明細書のオーラルケア組成物における使用に適した泡調節剤は、例えばポリエチレングリコール(PEG)であってよい。高分子量PEGが適しており、例えば約200000~7000000(例えば約500000~5000000又は約1000000~2500000)の平均分子量を有するものが含まれる。1種以上のPEGは、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約0.1~10重量%(例えば約0.2~5.0重量%又は約0.25~2.0重量%)の合計量で存在する。
【0176】
特定の実施形態におけるオーラルケア組成物は、少なくとも1種の保湿剤を含み得る。特定の実施形態における保湿剤は、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、又は低分子量PEGなどの多価アルコールであってよい。最も適切な保湿剤は、本明細書において甘味料としても機能し得る。1種以上の湿潤剤は、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約1.0~70重量%(例えば約1.0~50重量%、約2~25重量%、又は約5~15重量%)の合計量で存在する。
【0177】
本明細書のオーラルケア組成物中には天然又は人工の甘味料が任意選択的に含まれ得る。適切な甘味料の例としては、デキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、転化糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ(例えば高フルクトースコムシロップ又はコーンシロップ固体)、部分加水分解デンプン、水添デンプン加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、アスパルテ-ム、ネオテ-ム、サッカリン及びその塩、ジペプチド系高甘味度甘味料、及びシクラメートが挙げられる。1種以上の甘味料は、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約0.005~5.0重量%の合計量で存在する。
【0178】
本明細書のオーラルケア組成物中には、任意選択的には天然又は人工のフレーバー付与物質が含まれていてもよい。適切なフレーバー付与物質の例としては、バニリン;セージ;マジョラム;パセリ油;スペアミント油;シナモン油;ウィンターグリーン油(サリチル酸メチル);ペパーミント油;クローブ油;ベイ油;アニス油;ユーカリ油;カンキツ油;果実油;レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、アプリコット、バナナ、ブドウ、リンゴ、イチゴ、チェリー、又はパイナップル由来のものなどのエッセンス;コーヒー、ココア、コーラ、ピーナッツ、又はアーモンドなどの豆及びナッツ由来のフレーバー;並びに吸着させた及びカプセル封入したフレーバー付与物質が挙げられる。また、本明細書におけるフレーバー付与物質には、清涼化作用又は温感作用など、口の中で香り及び/又は他の感覚的効果を付与する成分も含まれる。そのような成分としては、限定するものではないが、メントール、酢酸メンチル、乳酸メンチル、樟脳、ユーカリ油、ユーカリプトール、アネトール、オイゲノール、カッシア、オキサノン、Irisone(登録商標)、プロペニルグアイエトール、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミン、N,2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミド、3-(1-メントキシ)-プロパン-1,2-ジオール、シンナムアルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、及びメントングリセロールアセタール(MGA)が挙げられる。1種以上のフレーバー付与物質は、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約0.01~5.0重量%(例えば約0.1~2.5重量%)の合計量で存在する。
【0179】
特定の実施形態におけるオーラルケア組成物は、少なくとも1種の重炭酸塩を含み得る。例えば重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、及び重炭酸アンモニウムを含む、経口が許容される任意の重炭酸塩を使用することができる。1種以上の重炭酸塩は、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約0.1~50重量%(例えば約1~20重量%)の合計量で存在する。
【0180】
特定の実施形態におけるオーラルケア組成物は、少なくとも1種のホワイトニング剤及び/又は着色剤を含み得る。適切なホワイトニング剤は、米国特許第8540971号明細書に開示されているもののいずれかのような過酸化物化合物であり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における適切な着色剤としては、顔料、染料、レーキ、及び例えば真珠光沢剤などの特定の光沢又は反射率を付与する作用物質が挙げられる。本明細書で有用な着色剤の具体例としては、タルク;マイカ;炭酸マグネシウム;炭酸カルシウム;ケイ酸マグネシウム;ケイ酸マグネシウムアルミニウム;シリカ;二酸化チタン;酸化亜鉛;赤色、黄色、茶色、黒色の酸化鉄;フェロシアン化第二鉄アンモニウム;マンガンバイオレット;ウルトラマリン;チタン化マイカ;及びオキシ塩化ビスマスが挙げられる。1種以上の着色剤は、任意選択的には、開示されるオーラルケア組成物中に例えば約0.001~20重量%(例えば約0.01~10重量%又は約0.1~5.0重量%)の合計量で存在する。
【0181】
本明細書の口腔用組成物に任意選択的に含めることができる追加の成分としては、例えば1種以上の酵素(上記)、ビタミン、及び付着防止剤が挙げられる。本明細書で有用なビタミンの例としては、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB5、及び葉酸が挙げられる。適切な付着防止剤の例としては、ソルブロール、フィシン、及びクオラムセンシング阻害剤が挙げられる。
【0182】
本明細書のパーソナルケア、ホームケア、及び他の製品及び成分の追加の例は、米国特許第8796196号明細書に開示されている任意のものであってよく、これは参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のパーソナルケア、ホームケア、並びにその他の製品及び成分の例としては、香水、香料、空気臭低減剤、防虫剤及び殺虫剤、界面活性剤などの泡発生剤、ペット消臭剤、ペット用殺虫剤、ペット用シャンプー、消毒剤、硬質表面(例えば床、浴槽/シャワー、シンク、便器、ドアハンドル/パネル、ガラス/窓、車/自動車の外装又は内装)の処理剤(例えば洗浄剤、消毒剤、及び/又はコーティング剤)、ワイプ及び他の不織布材料、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、乳化剤、皮膚軟化剤、油、薬品、香料、及び懸濁剤が挙げられる。
【0183】
本開示は、材料の処理方法にも関する。この方法は、材料を、本明細書に開示の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む水性組成物と接触させることを含む。
【0184】
本明細書における接触方法において水性組成物と接触される材料には、いくつかの態様では布地が含まれ得る。本明細書における布地は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。本明細書における半合成繊維は、化学的に誘導体化された天然に存在する材料を使用して製造され、その例はレーヨンである。本明細書における布地のタイプの非限定的な例としては、(i)綿などのセルロース系繊維(例えばブロード、キャンバス、シャンブレー、シェニール、更紗、コーデュロイ、クレトンヌ、ダマスク、デニム、フランネル、ギンガム、ジャカード、ニット、マトラッセ、オックスフォード、パーケール、ポプリン、プリッセ、サテン、シアサッカー、シアー、テリークロス、ツイル、ベルベット)、レーヨン(例えばビスコース、モダール、リヨセル)、リネン、及びテンセル(登録商標)から製造された布地;(ii)絹、羊毛、及び関連する哺乳類の繊維などのタンパク質系繊維から製造された布地;(iii)ポリエステル、アクリル、ナイロンなどの合成繊維から製造された布地;(iv)ジュ-ト、亜麻、ラミー、コイア、カポック、サイザル麻、エネケン、マニラ麻、麻、及びサン由来の長い植物繊維から製造された布地;(v)(i)~(iv)の布地の任意の組み合わせ;が挙げられる。繊維タイプ(例えば天然及び合成)の組み合わせを含む布地には、例えば、綿繊維とポリエステルの両方を含むものが含まれる。本明細書における1つ以上の布地含有材料/物品としては、例えば衣類、カーテン、ドレープ、室内装飾品、カーペット、ベッドリネン、バスリネン、テーブルクロス、寝袋、テント、自動車の内装などが挙げられる。天然繊維及び/又は合成繊維を含む他の材料としては、例えば不織布、詰め物、紙、及び発泡体が挙げられる。
【0185】
布地と接触する水性組成物は、例えばファブリックケア組成物(例えば洗濯洗剤、布地柔軟剤)であってよい。したがって、特定の実施形態における処理方法は、ファブリックケア組成物を使用する場合、ファブリックケア方法又は洗濯方法とみなすことができる。本明細書におけるファブリックケア組成物は、以下のファブリックケア効果(すなわち表面の実質的効果):しわの除去、しわの低減、しわ抵抗性、布地の摩耗低減、布地の耐摩耗性、布地毛羽立ちの低減、布地の寿命延長、布地の色の維持、布地の色褪せの低減、染料移行の低減、布地の色の回復、布地汚れの低減、布地汚れの除去、布地の形状保持、布地の滑らかさ向上、布地への汚れの再付着防止、洗濯物の黒ずみ防止、布地の風合い/手触りの改善、及び/又は布地の収縮の低減のうちの1つ以上をもたらすことが期待される。
【0186】
本明細書におけるファブリックケア方法又は洗濯方法を実施するための条件(例えば時間、温度、洗濯/すすぎ量)の例は、国際公開第1997/003161号パンフレット並びに米国特許第4794661号明細書、同第4580421号明細書、及び同第5945394号明細書に開示されており、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0187】
別の例では、布地含有材料は、本明細書の水性組成物と、(i)少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、又は120分間;(ii)少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95℃の温度(例えば洗濯又はすすぎの場合:約15~30℃の「冷」温、約30~50℃の「中」温、約50~95℃の「高」温)で;(iii)約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のpH(例えば約2~12、又は約3~11のpH範囲)で;(iv)少なくとも約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、又は4.0重量%の塩(例えばNaCl)濃度で;又は(i)~(iv)の任意の組み合わせで;接触させることができる。
【0188】
ファブリックケア方法又は洗濯方法における接触工程は、例えば洗濯工程、浸漬工程、及び/又はすすぎ工程のいずれかを含むことができる。更に別の実施形態における材料又は布地の接触は、有効量の本明細書のグルカンエステル誘導体を布地又は材料に溶解する、混合する、振とうする、噴霧する、処理する、浸漬する、フラッシングする、浴びせる、注ぎ込む、結合させる、塗装する、コーティングする、塗布する、貼り付ける、及び/又は伝達するなどの、当該技術分野で公知の任意の手段によって行うことができる。更に別の実施形態では、表面の実質的な効果を得るために接触を使用して布地を処理することができる。本明細書において使用される「布地の風合い」又は「手触り」という用語は、物理的、生理的、心理的、社会的、又はそれらの任意の組み合わせであってよい、布に対する人の触覚感覚応答を指す。一実施形態では、布地の風合いは、相対的な風合い値を測定するためのPhabrOmeter(登録商標)システム(Nu Cybertek,Inc.Davis,CAから入手可能)を使用して測定することができる(American Association of Textile Chemists and Colorists[AATCC test method“202-2012,Relative Hand Value of Textiles:Instrumental Method”])。
【0189】
布地含有材料を処理するいくつかの態様では、水性組成物のグルカンエステル誘導体は、布地に吸着する。この特徴により、本明細書のグルカンエステル誘導体は、ファブリックケア組成物中の再付着防止剤及び/又は黒ずみ防止剤として有用になると考えられる(例えばその粘度調整効果に加えて)。本明細書の再付着防止剤又は黒ずみ防止剤は、汚れが除去された後、洗濯水中で汚れが衣類に再付着することを防止するのに立つ。更に、本明細書のグルカンエステル誘導体の布地への吸着により、いくつかの態様では布地の機械的特性が高められると考えられる。
【0190】
本明細書における布地へのグルカンエステル誘導体の吸着は、例えば比色法(例えばDubois et al.,1956,Anal.Chem.28:350-356;Zemljic et al.,2006,Lenzinger Berichte 85:68-76;これらは共に参照により本明細書に組み込まれる)、又は当該技術分野で公知の他の任意の方法を使用して測定することができる。
【0191】
上記の処理方法で接触させることができる他の材料には、食器用洗剤(例えば自動食器洗い用洗剤又は手洗い用食器洗剤)で処理することができる表面が含まれる。そのような材料の例としては、セラミック材料、陶磁器、金属、ガラス、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、メラミンなど)及び木材から製造された食器、グラス、ポット、パン、ベーキング皿、調理器具、及び平皿(本明細書では「テーブルウェアと総称される)の表面が挙げられる。したがって、特定の実施形態における処理方法は、例えば食器洗浄方法又はテーブルウェア洗浄方法とみなすことができる。本明細書における食器洗浄方法又はテーブルウェア洗浄方法を実施するための条件(例えば時間、温度、洗浄量)の例は、本明細書並びに米国特許第8575083号明細書及び米国特許出願公開第2017/0044468号明細書に開示されており、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、テーブルウェア製品は、布地含有材料との接触に関して上で開示された条件のいずれかなどの適切な一連の条件下で、本明細書の水性組成物と接触させることができる。
【0192】
上記処理方法で接触させることができる他の材料には、舌、硬口蓋及び軟口蓋、頬粘膜、歯肉、及び歯の表面(例えば天然歯、又はクラウン、キャップ、充填物、ブリッジ、義歯、又は歯科インプラントなどの人工歯列の硬質表面)を含む、口腔内の任意の軟質表面又は硬質表面などの口腔表面が含まれる。したがって、特定の実施形態における処理方法は、例えばオーラルケアの方法又はデンタルケアの方法と考えることができる。口腔表面を本明細書の水性組成物と接触させるための条件(例えば時間、温度)は、そのような接触を行う意図された目的に適する必要がある。処理方法において接触させることができる他の表面には、皮膚、毛髪、又は爪(すなわち任意のケラチン含有組織又は材料)などの外皮系の表面も含まれる。
【0193】
したがって、本開示のいくつかの態様は、本明細書のグルカンエステル誘導体を含む材料(例えば本明細書に開示の布地若しくは繊維含有製品、又は毛髪、皮膚、若しくは他のケラチン含有材料などの本明細書の任意の他の材料)に関する。そのような材料は、例えば本明細書に開示の材料処理方法に従って製造することができる。グルカンエステル誘導体が材料の表面に吸着されているか、又は他の方法で接触している(例えば材料のコーティング中に含まれるグルカンエステル)場合、その材料は、いくつかの態様ではグルカンエステル誘導体を含むことができる。
【0194】
本明細書の材料を処理する方法のいくつかの態様は、材料を水性組成物と接触させた後に乾燥させる乾燥工程を更に含む。乾燥工程は、接触工程の直後に行うことができ、或いは接触工程に続く可能性のある1つ以上の追加の工程(例えば本明細書の水性組成物中での洗浄に続く、例えば水ですすぎ洗いした後の布地、テーブルウェア、又は毛髪の乾燥)の後に行うことができる。乾燥は、例えば空気乾燥(例えば約20~25℃)、又は少なくとも約30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、170、175、180、若しくは200℃の温度など、当該技術分野で公知の複数の手段のいずれかによって行うことができる。本明細書において乾燥された材料は、典型的には、その中に3、2、1、0.5、又は0.1重量%未満の水を含む。
【0195】
本明細書の処理方法で使用される水性組成物は、本明細書に開示の任意の水性組成物であってよい。水性組成物の例としては、洗剤(例えば洗濯洗剤又は食器用洗剤)、布地柔軟剤、含水歯磨剤、例えば歯磨き粉、及びヘアケア製品、例えばヘアスタイリング製品、ヘアクリーニング製品、又はヘアコンディショニング製品が挙げられる。
【0196】
本明細書のいくつかの態様は、毛髪をスタイリングする方法に関する。そのような方法は、例えば以下の少なくとも工程(a)及び(b)、又は工程(c)及び(d)を含むことができる:
(a)本明細書のグルカンエステル誘導体を含む組成物と毛髪を接触(例えばコーティング)させ、それにより処理された毛髪(又はコーティングされた毛髪)を得る工程、及び
(b)処理された毛髪(又はコーティングされた毛髪)を望みの形態にする工程、又は
(c)毛髪を望みの形態にする工程、及び
(d)工程(c)の毛髪を本明細書のグルカンエステル誘導体を含む組成物と接触させ(例えばコーティングし)、それにより処理された毛髪(又はコーティングされた毛髪)を得る工程;及び
(e)任意選択的に、工程(a)又は(d)においてグルカンエステル誘導体を毛髪に供給するために使用された溶媒が存在する場合にそれを除去する工程。
【0197】
そのような方法は、任意選択的にはヘアスタイリング方法として特徴付けることができる。ヘアスタイリング方法における接触は、例えば少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書のヘアスタイリング組成物(例えばジェル、マウス、スプレー)を毛髪に適用/処理することによって行うことができる。ヘアスタイリング方法、特に工程(a)又は(d)で処理される毛髪は、典型的には濡れていても乾いていてもよい。溶媒を除去する工程(e)は、例えば本明細書に開示の乾燥方法(例えば室温又は加熱空気による空気乾燥又は送風乾燥)によるものなどの乾燥によって行うことができる。乾燥は、乾燥中に櫛で梳かしたりブラッシングしたりするなど、処理された毛髪を揺り動かしながら(又は揺り動かさずに)行うことができる。任意選択的には、本明細書のスタイリング方法は、工程(b)又は工程(d)の後(ただし任意選択的な工程[e]の前)に、処理された毛髪に蒸気をあてる工程を含むことができる。毛髪を望みの形態にする工程(b)又は(c)は、いくつかの態様では、毛髪をストレートにする、カールさせる、又は工程(a)、(b)、若しくは(c)の前に存在していた毛髪の形態とは異なる形態にすることによって行うことができる。本明細書のスタイリング方法によってスタイリングされた毛髪は、任意選択的にはスタイリングされた毛髪に装置及び/又は追加の材料を適用する必要なしに(すなわち自立状態にある間)、例えば少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、又はそれ以上の日数、望みの形態を保持することができる。そのようなスタイルの保持は、例えば乾燥した空気(例えば相対湿度≦50%)又は湿った空気(例えば相対湿度50%超)の条件であってよい(典型的には、スタイリングされた毛髪が洗浄又はリンスされない期間)。
【0198】
いくつかの態様では、本明細書の水性組成物(例えば分散液/エマルジョン)で処理することができる材料は、不織布製品である。本明細書の水性組成物(本明細書に開示の任意の濃度)の適用及び典型的にはその後に続く乾燥工程(例えば空気乾燥、加熱乾燥、真空乾燥;乾燥温度は例えば本明細書に開示の任意の適切な温度であってよい)を含むことができるこの処理は、不織布製品を強化する(すなわちバインダーとして機能する)ことができる。いくつかの態様では、本開示のグルカンエステル誘導体は、不織布の乾燥又は湿潤引張強さ(N/5cmで測定)を、例えば約、又は少なくとも約1000%、10000%、100000%、又は1000000増加させることができる。したがって、本開示のグルカンエステル誘導体を含むバインダー/強化剤を含む不織布製品が本明細書で更に提供される。いくつかの態様では、本明細書のグルカンエステル誘導体を含む不織布の乾燥又は湿潤引張強さは、約、又は少なくとも約10、15、20、25、50、75、100、125、130、135、140、145、150、10~150、15~150、20~150、25~150、10~140、15~140、20~140、又は25~140N/5cmとすることができる。不織布製品中の不織布材料とグルカンエステル誘導体の総重量に基づいて、その中のグルカンエステル誘導体の含有量は、約1、2、5、10、15、20、25、1~5、1~10、5~20、又は1~25重量%であってよい。本明細書における不織布製品は、例えばエアレイド、ドライレイド、ウェットレイド、カード、エレクトロスピニング、スパンレース、スパンボンド、又はメルトブローされたものであってよい。いくつかの態様では、不織布製品は、研磨(abrasive、scouring)シート、農業用被覆材、農業用種子ストリップ、衣料品の裏地、自動車のヘッドライナー若しくは内張り、よだれかけ、チーズラップ、土木用布地、コーヒーフィルター、化粧品除去剤又は化粧品アプリケーター、洗剤パウチ/小袋、布地柔軟剤シート、封筒、フェイスマスク、フィルター、ガーメントバッグ、熱若しくは電気伝導性の布地、ホームケア用ワイプ(例えば床の手入れ、硬質表面の掃除、ペットの世話など向け)、ハウスラップ、衛生用品(例えば生理用パッド/ナプキン、アンダーパッド)、断熱材、ラベル、洗濯補助材、医療ケア又は人身傷害ケア製品(例えば包帯、ギプスパッド又はカバー、包帯、パック、滅菌オーバーラップ、滅菌包装、手術用ドレープ、手術用ガウン、綿棒)、モップ、ナプキン又はペーパータオル、紙、個人用ワイプ又はベビーワイプ、再利用可能な袋、屋根の下敷き、テーブルリネン、タグ、ティー若しくはコーヒーバッグ、室内装飾品、掃除機用袋、又は壁紙であってよい。不織布製品の繊維は、いくつかの態様ではセルロース及び/又はα-1,3-グルカンを含むことができ、或いは繊維を形成するために使用され得る本明細書に開示の1種以上の他の材料を含むことができる。本明細書における不織布製品、不織布製品材料、及び/又は不織布製品及び不織布材料の製造方法の例は、米国特許出願公開2020/0370216号明細書、同第2018/0282918号明細書、同第2017/0167063号明細書、同第2018/0320291号明細書、又は同第2010/0291213号明細書に開示されている通りであってよく、これらの文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
本明細書に開示の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書の組成物は、例えばフィルム又はコーティングであってよい。フィルム又はコーティングは、いくつかの態様では、例えば約3、2、1、0.5、又は0.1重量%未満の水を含む乾燥フィルム又はコーティングであってよい。いくつかの態様では、フィルム又はコーティングは、約20~40、20~35、20~30、25~40、25~35、又は25~30重量%の本明細書のグルカンエステル誘導体を含むことができ、その際のフィルム又はコーティング中の材料の残りは、任意選択的には水、水溶液、及び/又は可塑剤である。本明細書のフィルム又はコーティング中の本開示のグルカンエステル誘導体の量は、例えば約、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9、又は100重量%であってよい。本明細書のフィルム又はコーティングは、例えば、グルカンエステル誘導体の水性分散液又は溶液(例えば約5~30、5~25、5~20、10~30、10~25、又は10~20重量%のグルカンエステル)の層を表面/物体/材料上に付与し、次いで分散液又は溶液から全ての又は大部分の(≧90、95、98、99重量%)水を除去し、それによってフィルム又はコーティングを生成することにより製造することができる。例えば米国特許出願公開第2018/0258590号(参照により本明細書に組み込まれる)と同様の方法又はこれに開示されている方法を使用して、フィルム又はコーティングを製造することができる。基材上の本明細書のグルカンエステル誘導体を含むコーティングの坪量は、例えば約、又は少なくとも約、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1~12、1~10、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2gsm(グラム/平方メートル)であってよい。
【0200】
本明細書のフィルム又はコーティングは、例えば約、又は少なくとも約、又は最大約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5、5、7.5、10、15.5、15、17.5、20、22.5、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、0.5~1.5、0.8~1.5、1.0~1.5、0.5~1.4、0.8~1.4、又は1.0~1.4ミル(1ミル=0.001インチ)の厚さを有し得る。いくつかの態様では、そのような厚さは均一であり、これは、(i)フィルム/コーティングの総面積の少なくとも20%、30%、40%、又は50%であり、且つ(ii)約0.06、0.05、又は0.04ミル未満の厚さの標準偏差を有する、連続領域を有することによって特徴付けることができる。本明細書におけるフィルム又はコーティングは、いくつかの態様では薄い(例えば2ミル未満)ものとして特徴付けることができる。本明細書におけるフィルムは、典型的にはキャストフィルムである。
【0201】
本明細書のフィルム又はコーティングは、望まれる通りに様々な程度の透明性を示すことができる。例えば、フィルム/コーティングは、高い透明性(例えば高い光透過率、及び/又は低いヘイズ)を有し得る。本明細書で使用される光学的透明性は、例えば、少なくとも約10~99%の光透過率、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の光透過率、及び/又は30%、25%、20%、15%、10%、5%、2.5%、2%、若しくは1%未満のヘイズを可能にするフィルム又はコーティングを指すことができる。高い光透明性は、任意選択的には、少なくとも約90%の光透過率及び/又は10%未満のヘイズを有するフィルム/コーティングを指すことができる。本明細書におけるフィルム/コーティングの光透過率は、例えばASTM D1746(2009,Standard Test Method for Transparency of Plastic Sheeting,ASTM International,West Conshohocken,PA)の試験に従って測定することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。本明細書におけるフィルム/コーティングのヘイズは、例えば、ASTM D1003-13(2013,Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics,ASTM International,West Conshohocken,PA)の試験に従って測定することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0202】
本明細書のフィルム又はコーティングは、任意選択的には、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、及び/又はポリエチレングリコールなどの可塑剤を更に含むことができる。いくつかの態様では、他のフィルム成分(本明細書における組成物に加えて)は、米国特許出願公開第2011/0151224号明細書、同第2015/0191550号明細書、同第20190153674号明細書、若しくは同第20210095155号明細書、又は米国特許第9688035号明細書若しくは同第3345200号明細書に開示されている通りであってよく、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
フィルム若しくはコーティング、又は本明細書の任意の適切な固体組成物(例えば複合材料、繊維、フィブリッド)は、いくつかの態様では、少なくとも1種の架橋剤を更に含むことができる。本開示のグルカンエステル誘導体分子は、互いに、及び/又は組成物の少なくとも1種の他の成分(例えばポリマー、活性剤)に、又は組成物が基材に適用される場合には基材の成分に、架橋(共有結合)することができる。しかし、いくつかの態様では、本明細書のグルカンエステル誘導体分子はいかなる形でも架橋されないが、組成物の1種以上の他の成分は架橋される。架橋により、例えばフィルム又はコーティング組成物の(i)引張強さを高めることができる、及び/又は(ii)可塑化することができる。架橋は、いくつかの態様では、フィルム又はコーティングを基材に結合させることができる。場合によっては、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、アルデヒド、又はポリフェノールなどの架橋剤を使用して、可塑性の特徴と基材への結合の特徴の両方を付与することができる。上述した架橋を有する本明細書の組成物を調製するための適切な架橋剤には、塩化ホスホリル(POCl3)、ポリリン酸塩、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、ホウ素含有化合物(例えばホウ酸、二ホウ酸塩、四ホウ酸塩、例えば四ホウ酸十水和物、五ホウ酸塩、高分子化合物、例えばPolybor(登録商標)、アルカリホウ酸塩)、多価金属(例えば乳酸チタンアンモニウム、チタントリエタノールアミン、チタンアセチルアセトネート、又はチタンのポリヒドロキシ錯体などのチタン含有化合物;乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムトリエタノールアミン、ジルコニウムジイソプロピルアミン乳酸塩、又はジルコニウムのポリヒドロキシ錯体などのジルコニウム含有化合物)、グリオキサ-ル、グルタルアルデヒド、アルデヒド、ポリフェノール、ジビニルスルホン、エピクロロヒドリン、ポリアミド-エピクロロヒドリン(PAE)、ジ-若しくはポリ-カルボン酸(例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸)、ジクロロ酢酸、ポリアミン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジグリシジルエーテル(例えばジグリシジルエーテル自体、エチレングリコールジグリシジルエーテル[EGDGE]、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル[BDGE]、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル[PEG2000DGEなどのPEGDE]、ビスフェノールAジグリシジルエーテル[BADGE])、及びトリグリシジルエーテル(例えばトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)が含まれると考えられる。適切な架橋剤の更に別の例は、米国特許第4462917号明細書、同第4464270号明細書、同第4477360号明細書、及び同第4799550号明細書、並びに米国特許出願公開第2008/0112907号明細書に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、いくつかの態様では、架橋剤は(例えば上述したような)ホウ素含有化合物ではない。本明細書のグルカンエステル誘導体分子は、フィルム又はコーティング以外の他の状況(例えば本明細書に開示の分散液、繊維、フィブリッド、又は他の組成物中)で、本明細書に開示の任意の架橋剤などを用いて架橋され得る。
【0204】
例えばフィルム又はコーティングの触感を向上させるために、1種以上のコンディショニング剤をコーティングのフィルムに含めることができる。コンディショニング剤は、硫酸化油、石鹸、硫酸化アルコール、及び/若しくは油エマルジョンなどのアニオン性軟化剤;四級アンモニウム化合物などのカチオン性軟化剤;ポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレンエマルジョン、ワックスエマルジョン、及び/若しくはシリコーン系軟化剤などの非イオン性軟化剤;天然脂肪酸;油;モノグリセリド;ジグリセリド;ポリグリセリド;クエン酸エステル;乳酸エステル;並びに/又はスクロースエステル及び/又はソルビタンエステルなどの糖エステルであってよい。
【0205】
また、乾燥形態の本明細書のグルカンエステル誘導体を含む接着剤、フィルム、コーティング、又はバインダーを含む物品も開示される。そのような物品(任意選択的には「コーティングされた物品」)は、コーティング、接着剤、フィルム、又はバインダーが実質的に連続的に又は不連続的な形で配置/堆積される少なくとも1つの表面を有する基材を含む。いくつかの態様では、物品には、紙、皮革、木材、金属、ポリマー、繊維質材料、石材、乾式壁、プラスター、及び/又は建築表面が含まれる。本明細書における「建築表面」は、建物又は他の人工構造物の外表面又は内表面である。いくつかの態様では、物品は、紙、厚紙、板紙、段ボール、セルロース系基材、繊維製品、又は皮革などの多孔質基材を含む。更に、いくつかの態様では、物品は、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、アラミド、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(環状オレフィン)、ポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)、又はセロファンなどのポリマーを含むことができる。いくつかの態様では、繊維質基材を含む物品は、繊維、糸、布地、布地ブレンド、繊維製品、不織布、紙、又はカーペットである。繊維質基材には、綿、セルロース、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、アラミド、アセテート、ポリウレタン尿素、アクリル、ジュート、サイザル麻、海草、コイア、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアラミド、又はそれらのブレンドなどの天然繊維及び/又は合成繊維が含まれ得る。
【0206】
本明細書のフィルム、コーティング、又は他の組成物(例えば複合材料)は、いくつかの態様では、グリース/オイル及び/又は酸素バリア特性を有することができる。そのような組成物は、本明細書のグルカンエステル誘導体と共に、米国特許出願公開第20190153674号明細書又は同第20210095155号明細書に開示されている1種以上の成分を含むことができ、これら文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本明細書のフィルム、コーティング、又は他の組成物は、任意選択的には、バインダーとして、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、シラノール変性ポリビニルアルコール、ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリウレタン、デンプン、コーンデキストリン、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸塩、アルギン酸ナトリウム、キサンタン、カラギーナン、カゼイン、大豆タンパク質、グアーガム、合成ポリマー、スチレンブタジエンラテックス、及び/又はスチレンアクリレートラテックスのうちの1種以上を含むことができる。いくつかの態様におけるフィルム、コーティング、又は他の組成物を調製するための組成物は、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、65~85、65~80、70~85、又は70~80重量%のバインダー又は化合物、例えばポリビニルアルコール(又は上で言及した他の化合物)と、約50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、2.5、15~35、20~35、15~30、又は20~30重量%の本開示のグルカンエステル誘導体とを含むことができる。いくつかの態様では、フィルム、コーティング、又は他の組成物を製造するための組成物は、組成物中のこれらそれぞれの成分の重量%を基準として、約7:3、7.5:2.5、8:2、8.5:1.5、又は9:1の、バインダー又は化合物(例えばポリビニルアルコールやデンプンなどの上で言及した化合物のいずれか)対本明細書のグルカンエステル誘導体の比を有することができる。いくつかの態様では、フィルム、コーティング、又は他の組成物はデンプンを含まないが、酸素バリアなどの別の態様では、デンプンを含むことができる(例えば米国特許出願公開第2011/0135912号明細書又は米国特許第5621026号明細書若しくは同第6692801号明細書に開示されている通り、これらは参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書におけるコーティング又はフィルム組成物のグリース/オイルバリア特性は、例えば米国紙パルプ技術協会(TAPPI)試験法T-559cm-02(Grease resistance test for paper and paperboard,TAPPI Press,Atlanta,GA,USA;参照により本明細書に組み込まれる)に従う標準「KIT」タイプの試験を使用して評価することができる。この試験では、グリース/オイルのバリア/抵抗機能が良好であることは、1~12のスケールで12に近い値で示される。グリース/オイルのバリア特性及び水/水性液体のバリア特性は、必要に応じてCobb試験によって評価することができる。本明細書におけるバリアは、例えば20、17.5、15、12.5、10、7.5、又は5未満のCobb指数値を有し得る。本明細書のコーティング又はフィルム組成物の酸素バリア特性は、コーティングの酸素透過率(OTR)を測定することによって評価することができる。OTRは、例えばASTM F-1927-07(2007,Standard Test Method for Determination of Oxygen Gas Transmission Rate,Permeability and Permeance at Controlled Relative Humidity Through Barrier Materials Using a Coulometric Detector,ASTM International,West Conshohocken,PA)に従って決定することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。OTRは、例えば約50%~80%、30%~55%、35%~50%、又は30%~80%の相対湿度条件下、及び/又は約、若しくは少なくとも約15、20、25、30、35、40、45、15~40、15~35、15~30、15~25、20~40、20~35、20~30、若しくは20~25℃の温度で、決定することができる。グリース/オイル及び/又は酸素バリアコーティングを利用することができる本明細書の基材の例としては、セルロース(例えば紙、板紙、ボール紙、段ボール、繊維製品)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(エチレンテレフタレート)(例えばMYLAR)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)、合成及び/若しくは石油系基材、又はバイオベースの基材が挙げられる。前述したフィルム、コーティング、又は他の組成物のいずれも、例えばラミネート又は押出製品の形態にすることができ、任意選択的には前述した基材のいずれか上に配置される。
【0207】
本明細書のグルカンエステル誘導体を含むフィルム、コーティング、又は他の組成物(例えば分散液、発泡体、マスターバッチ、複合材料)は、いくつかの態様では、ポリウレタン(例えば本明細書に開示の任意のもの)を更に含むことができる。そのような組成物は、例えば約1、5、10、15、20、35、30、35、40、45、50、55、60、5~60、5~50、5~45、5~40、5~35、5~30、10~60、10~50、10~45、10~40、10~35、又は10~30重量%の本明細書のグルカンエステル誘導体を含むことができ、残りの全て又は大部分(例えば90%又は95%を超える)は、1種以上のポリウレタンから構成され得る。そのような組成物は、湿っていても(例えばグルカンエステル誘導体とポリウレタンの分散液)、或いは乾燥していても(例えばグルカンエステル誘導体及びポリウレタンのマスターバッチ、フィルム/コーティング、積層体、発泡体、又は押出複合材料)よい。本明細書におけるポリウレタンは、例えば約、又は少なくとも約1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、1000~3000、1500~3000、1000~2500、又は1500~2500の分子量のものであってよい。そのような組成物は、場合によっては、加水分解によって老化させることができる(例えば45~55若しくは約50℃、及び/又は90~98%若しくは約95%の相対湿度に2~4日間若しくは3日間曝露)。いくつかの態様では、本明細書のグルカンエステル誘導体を含むポリウレタン組成物は、熱及び/又は圧力により加工可能であってよく、プレス、成形、押出、又は任意の他の関連する加工工程のための熱及び/又は圧力の適用は、例えば約、又は少なくとも約90、95、100、105、110、115、120、130、140、95~115、若しくは100~110℃、及び/又は少なくとも約5000、10000、15000、20000、又は25000psiの圧力であってよい。そのような熱及び/又は圧力の適用は、例えば少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、又は30分間行うことができる。フィルムなどのいくつかの態様におけるプレスされたポリウレタン組成物は、約、又は少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%透明又は半透明であってよい。いくつかの態様では、本開示の任意のポリウレタン組成物は、水性ポリウレタン分散液を準備すること、及び本明細書のグルカンエステル誘導体をポリウレタン分散液と混合すること、を含むプロセスによって製造することができる。得られた水性組成物は、組成物(例えばフィルム又はコーティング)を製造するために直接使用することができ、或いはそれを乾燥させてマスターバッチにすることができ、これはその後、組成物を(例えば溶融加工によって)調製するために使用される。
【0208】
いくつかの態様におけるフィルム又はコーティングは、食用のフィルム又はコーティングの形態であってもよい。そのような材料は、いくつかの態様では、本明細書のグルカンエステル誘導体と、米国特許第4710228号明細書、同第4543370号明細書、同第4820533号明細書、同第4981707号明細書、同第5470581号明細書、同第5997918号明細書、同第8206765号明細書、若しくは第同8999413号明細書、又は米国特許出願公開第2005/0214414号明細書に記載されている1種以上の成分とを含むことができ、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、本明細書のグルカンエステル誘導体は、任意選択的には前述した参考文献のいずれかに開示されている食用フィルム又はコーティング中のデンプン及び/又はデンプン誘導体を置き換える。食用フィルム又はコーティングは、例えばジャガイモ製品(例えばフライドポテトなどのジャガイモの細切り)、他の野菜又は野菜製品(例えばズッキーニ、カボチャ、サツマイモ、タマネギ、オクラ、ピーマン、インゲンマメ、トマト、キュウリ、レタス、キャベツ、ニンジン、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、モヤシ、タマネギ、野菜の新鮮なカットされた形態)、キノコ、果物(例えばラズベリー、イチゴ、又はブルーベリーなどのベリー類、アボカド、キウイ、キンカン、オレンジ、ミカン、リンゴ、梨、バナナ、グレープフルーツ、チェリー、パパイヤ、レモン、ライム、マンゴー、モモ、カンタロープ、果物の新鮮なカットされた形態)、及び/又はナッツ(ピーナッツ、クルミ、アーモンド、ピーカンナッツ、カシュ-ナッツ、フィルバーツ/ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツ、マカダミア)の上にあることができる。本明細書に開示の他の食品は、適切な場合には、例えば食用のコーティングを有することができる。本明細書の食用フィルム又はコーティングを有するこれら及び他の食品は、いくつかの態様では揚げたり焼いたりすることができる、及び/又はフィルム又はコーティングは、柔らかさ、保湿、湿気からの保護、パリパリ感、食物繊維(消化可能なデンプンの代わり)、酸素バリア、鮮度、及び/又は成熟防止を提供する。いくつかの態様における成熟防止は、植物性製品によるエチレンなどのガス状成熟ホルモンの放出をコーティングが低下させる程度(例えば少なくとも25%、50%、75%、80%、85%、又は90%)によって(例えば15~30℃、15~25℃、又は20~25℃において)、及び/又は植物性製品の軟化及び/又は甘味がコーティングによって低下する程度によって測定することができる。いくつかの態様における食用コーティングは、本明細書のグルカンエステル誘導体(例えば水中で5~15、5~12、5~10、7.5~15、7.5~12、又は7.5~10重量%)を含む水性分散液又は溶液を食品に塗布し、分散液又は溶液を乾燥させる(例えば空気乾燥、強制空気乾燥、真空乾燥、及び/又は加熱によって)ことによって作製することができる。
【0209】
本明細書のコーティングを作製するために使用することができるいくつかの態様におけるコーティング組成物は、前述した成分/原料/配合物のいずれかを含むことができる。いくつかの態様では、コーティング組成物は、以下に記載するものなどのラテックス組成物である。
【0210】
本明細書に開示の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書の組成物は、いくつかの態様ではラテックス組成物であってよい。本明細書におけるラテックス組成物の例としては、塗料(例えばプライマー、仕上げ/装飾)、接着剤、フィルム、コーティング、及びバインダーが挙げられる。本明細書のラテックス組成物の配合物及び/又は成分(本明細書の組成物に加えて)は、例えば米国特許第6881782号明細書、同第3440199号明細書、同第3294709号明細書、同第5312863号明細書、同第4069186号明細書、若しくは同第6297296号明細書、又は米国特許出願公開第2020/0263026号明細書に記載されている通りであってよく、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0211】
本明細書に開示のグルカンエステル誘導体は、ラテックス組成物中に任意の有用な量で、例えばラテックスの全分散固形分の重量を基準として約、又は少なくとも約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、0.01%~75%、0.01%~5%、5%~20%、20%~50%、又は50%~75%で存在することができる。
【0212】
いくつかの態様におけるラテックス組成物は、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(例えばモノエチレン性不飽和モノマー)から重合されたポリマー;ポリウレタン;エポキシ、及び/又はゴムエラストマーを含むことができる。本明細書におけるモノエチレン性不飽和モノマーの例としては、ビニルモノマー、アクリルモノマー、アリルモノマー、アクリルアミドモノマー、モノカルボキシル不飽和酸、及びジカルボキシル不飽和酸が挙げられる。
【0213】
本明細書のラテックス組成物中のポリマーの適切なビニルモノマーの例としては、ビニル官能性(すなわちエチレン性不飽和)を有する任意の化合物、例えばビニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ノナン酸ビニル、デカン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニルイソプロピル)、ビニル芳香族炭化水素(例えばスチレン、メチルスチレン、及び類似の低級アルキルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン)、ビニル脂肪族炭化水素(例えば塩化ビニル;塩化ビニリデン;α-オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、及びイソブチレン;共役ジエン、例えば1,3-ブタジエン、メチル-2-ブタジエン、1,3-ピペリレン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、及びジシクロペンタジエン)、並びにビニルアルキルエーテル(例えばメチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル)が挙げられるが、アクリル官能基を有する化合物(例えばアクリル酸、メタクリル酸、そのような酸のエステル、アクリロニトリル、アクリルアミド)は除外される。いくつかの態様では、本明細書のラテックス組成物は、酢酸ビニル-エチレンコポリマー、カルボキシル化酢酸ビニル-エチレンコポリマー、及び/又はポリ酢酸ビニルを含む。
【0214】
本明細書のラテックス組成物中のポリマーの適切なアクリルモノマーの例としては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸及びメタクリル酸の芳香族誘導体、アクリルアミド、並びにアクリロニトリルが挙げられる。典型的には、アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキルモノマー(アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルとも呼ばれる)は、1分子あたり1~約18個の炭素原子、又は1分子あたり1~約8個の炭素原子を含むアルキルエステル部分を有する。適切なアクリルモノマーとしては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸のメチルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のエチルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のブチルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のプロピルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸の2-エチルヘキシルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のシクロヘキシルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のデシルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のイソデシルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のベンジルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のイソボルニルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のネオペンチルエステル、並びにメタクリル酸1-アダマンチルが挙げられる。酸官能性が望まれる場合は、アクリル酸やメタクリル酸などの酸も使用することができる。
【0215】
いくつかの態様におけるラテックス組成物はポリウレタンポリマーを含む。適切なポリウレタンポリマーの例としては、米国特許出願公開第2019/0225737号明細書に開示されているような多糖を含むものであり、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。ポリウレタンを含むラテックスは、例えば米国特許出願公開第2016/0347978号明細書(これは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている通りに調製することができ、及び/又は1種以上のポリイソシアネートと1種以上のポリオールとの反応生成物を含む。有用なポリオールとしては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールが挙げられる。本明細書におけるポリカーボネートポリウレタンは、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、又はテトラエチレングリコールなどのポリオールと、ジフェニルカーボネート又はホスゲンなどのジアリールカーボネートとの反応生成物として形成することができる。本明細書における少なくとも1種のポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、又は芳香族基と脂肪族基の両方を有するポリイソシアネートであってよい。ポリイソシアネートの例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-及び2,6-のトルエンジイソシアネートの混合物、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナトトルエン、ビス(3-イソシアナトフェニル)メタン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナト-o-キシレン、1,3-ジイソシアナト-p-キシレン、1,3-ジイソシアナト-m-キシレン、2,4-ジイソシアナト-1-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、2,5-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、m-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メトキシ-2,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートが挙げられる。本明細書では、例えばアロファネート基、ビウレット基、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、又はカルボジイミド基を含むポリイソシアネートホモポリマーも有用である。本明細書におけるポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を含む任意のポリオール、例えばC2~C12アルカンジオール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブタンジオールの異性体、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2,3-プロパントリオール(グリセロール)、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-プロパノール(トリメチロールエタン)、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(ペンタエリスリトール);1,4,6-オクタントリオール;クロロペンタンジオール;グリセリンモノアルキルエーテル;グリセロールモノエチルエーテル;ジエチレングリコール;1,3,6-ヘキサントリオール;2-メチルプロパンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリマーポリオール、例えばポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールであってよい。いくつかの態様では、本明細書のポリオールは、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、又はポリ1,3-プロパンジオールであってよい。いくつかの態様におけるポリオールは、脂肪族二酸と脂肪族ジオールとのエステル交換によって生成されるものなどのポリエステルポリオールであってよい。適切な脂肪族二酸としては、例えば、C3~C10二酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられる。いくつかの態様では、ポリエステルポリオールを形成するために芳香族及び/又は不飽和二酸を使用することができる。
【0216】
いくつかの態様におけるラテックス組成物は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、又はグリシジルアミンエポキシ樹脂などのエポキシポリマー/樹脂(ポリエポキシド)を含む。
【0217】
いくつかの態様では、ラテックス組成物はゴムエラストマーを含む。いくつかの態様では、ゴムエラストマーは、例えば動的機械分析によって決定される-30℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する1種以上のジエンベースの硫黄加硫可能なエラストマーを含むことができる。更なる例では、本明細書のゴムエラストマーには、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム、スチレン/ブタジエンコポリマーゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、ネオプレン、スチレンイソプレン/ブタジエンターポリマーゴム、ブタジエン/アクリロニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンコポリマーゴム、ニトリルゴム、エチレン-アクリルゴム、ブチル及びハロブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フルオロエラストマー、炭化水素ゴム、ポリブタジエン、又はシリコーンゴムが含まれる。
【0218】
本明細書におけるラテックス組成物の液体成分は、水又は水溶液であってよい。いくつかの態様におけるラテックスの水溶液は、水と混和性又は非混和性のいずれかである有機溶媒を含むことができる。本明細書において適切な有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、グリセロールエーテル、ヘキサン、トルエン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0219】
本明細書のラテックス組成物は、いくつかの態様では、1種以上の添加剤を更に含むことができる。本明細書における添加剤の例としては、分散剤、レオロジー助剤、消泡剤、発泡剤、接着促進剤、難燃剤、殺菌剤、殺真菌剤、防腐剤、蛍光増白剤、充填剤、沈降防止剤、融合剤、湿潤剤、緩衝剤、顔料/着色剤(例えば金属酸化物、合成有機顔料、カーボンブラック)、粘度調整剤、凍結防止剤、界面活性剤、バインダー、架橋剤、腐食防止剤、硬化剤、pH調整剤、塩、増粘剤、可塑剤、安定剤、増量剤、及び艶消し剤が挙げられる。本明細書における顔料の例としては、二酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウム、珪藻土、マイカ、水和酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、粘土、シリカ、タルク、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、霞石閃長岩、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの態様では、ラテックス組成物は、デンプン、デンプン誘導体(例えばヒドロキシアルキルデンプン)、セルロース、及び/又はセルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)を本質的に含まない(例えば、1、0.5、0.1、又は0.01重量%未満の成分)。
【0220】
本明細書における塗料又は他の着色剤の形態のラテックス組成物は、いくつかの態様では、約3%~約80%の顔料体積濃度(PVC)を有することができる。例として、艶消し塗料は約55~80%の範囲のPVCを含むことができ、プライマー又はアンダーコートは約30~50%の範囲のPVCを含むことができ、及び/又は艶出し着色塗料は約3~20%の範囲のPVCを含むことができる。いくつかの態様における塗料又は他の着色剤は、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、55~80%、55~75%、55~70%、60%~80%、60~75%、60~70%、63~67%、64~66%、65~80%、65~75%、又は65~70%のPVCを含むことができる。本明細書におけるPVC値は、例えば上に開示したもの(例えば二酸化チタン)などの特定の顔料(又は顔料の混合物)の値であってよい。本開示の組成物は、ラテックス組成物(例えば塗料又は他の着色剤として使用するためのもの)に対して、例えば開示された組成物を含まないことのみ異なるラテックス組成物と比較して、不透明さ、必要な顔料の少なさ、増加した硬度、低下した粘着性、低下した光沢(すなわちマット効果の付与)、増加した剪断強さ、向上した耐摩耗性、向上した乾燥時間、向上した耐退色性、ブリスターの減少、及び/又は向上した手触り(低下したベタつき感)のうちの1つ以上の物理的特性を付与すると考えられる。
【0221】
本明細書のラテックス組成物は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、物品(上記)の基材に塗布することができる。典型的には、ラテックス組成物の塗布後、水溶液の少なくとも一部が、例えば乾燥によって除去され、乾燥又は半乾燥形態のラテックス組成物を含む接着剤、フィルム、コーティング、又はバインダーが得られる。適切な塗布方法としては、エアナイフコーティング、ロッドコーティング、バーコーティング、ワイヤーバーコーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、キャストコーティング、フレキシブルブレードコーティング、グラビアコーティング、ジェットアプリケーターコーティング、ショートドウェルコーティング、スライドホッパーコーティング、カーテンコーティング、フレキソコーティング、サイズプレスコーティング、リバースロールコーティング、及びトランスファーロールコーティングが挙げられる。ラテックス組成物は、基材の少なくとも一部に塗布することができ、例えば1回以上のコーティング/塗布を行うことができる。
【0222】
本明細書のいくつかの態様は、顔料含有組成物に関する。顔料含有組成物は、液体形態(例えば本明細書における水性又は非水性組成物)であっても固体形態(例えば本明細書における乾燥組成物)であってもよい。本明細書における顔料含有組成物の例としては、本明細書の別の場所で開示される任意のそのような組成物(例えば塗料、プライマー、ステイン)、インク、染料(例えば食品着色染料、布地着色染料)、樹脂、日焼け止め、及び化粧品(例えばマスカラ、チーク、マニキュア/ポリッシュ、口紅、グロス、アイライナー、ファンデーション、アイシャドウ、皮膚装飾組成物)が挙げられる。顔料含有組成物中の顔料は、例えば本明細書中の任意の顔料であってよい。本明細書のこれら及び/又は他の態様のための顔料の例としては、チタンの酸化物(例えば二酸化チタン)、亜鉛、鉄、ジルコニウム、セリウム、及びクロムの酸化物;マンガンバイオレット;ウルトラマリンブルー;クロム水和物;プルシアンブルー;硫化亜鉛;ニトロソ、ニトロ、アゾ、キサンテン、キノリン、アントラキノン、及び/又はフタロシアニン化合物;金属錯体化合物;並びにイソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、ジオキサジン、トリフェニルメタン、及び/又はキノフタロン化合物が挙げられる。本明細書で有用な更なる顔料の例は、米国特許出願公開第2006/0085924号明細書に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0223】
本明細書で開示される少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む本明細書の組成物は、米国特許出願公開第2019/0225737号明細書、同第2017/0362345号明細書、又は同第2020/0181370号明細書に開示されているような複合材料(例えばゴム複合材料又はポリウレタン複合材料)の形態であってもよく、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。任意選択的には、本開示の複合材料は、本開示のグルカンエステル誘導体に加えて少なくとも1種のポリマーを含むと述べることができる。ラテックス組成物の上記成分(例えばゴム又はポリウレタン)のうちの1種以上は、任意選択的にはそのような複合材料中の追加のポリマーであってよい。本明細書における複合材料の追加のポリマーは、ゴム、ポリウレタン、熱可塑性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンコポリマー、ポリビニルブチレート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエーテル熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリエーテルエステル、エチレンビニルアルコールコポリマー、デンプン、セルロース、又はラテックス成分に関して上で開示した任意の適切なポリマーであってよい。
【0224】
いくつかの態様におけるゴムは、例えば天然ゴム、合成ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、ブタジエン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-イソプレンターポリマー、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、又はネオプレンのうちの1つ以上であってよい。ゴムを含む本明細書の複合材料の例としては、タイヤ(例えばオートバイ/自転車;空気タイヤ;タイヤトレッド及び/又はサイドウォールを含む)、ベルト(例えばコンベヤベルト、動力伝達ベルト)、ホース、ガスケット、履物(例えば靴、スニーカー、ブーツ;靴底、クッション性、及び/又は審美的特徴)、コーティング、フィルム、及び接着剤が挙げられる。本明細書におけるゴム複合材料は、典型的には加硫されている。いくつかの態様では、ゴムを含む複合材料中に本明細書の組成物を含めることにより、カーボンブラックやシリカなどの既存の充填剤の使用と比較して、低コスト、低密度、加工中のエネルギー消費の低減、及び/又はより優れた若しくは同等の性能(例えばウェットトラクションの増加、転がり抵抗の減少、軽量化、及び/又は機械的強度)などの利益が提供され得ると期待される。このような性能の向上は、いくつかの態様ではタイヤで実現することができる。いくつかの態様では、本明細書の組成物は、タイヤなどのゴム複合材料に典型的に使用されている既存の充填剤(例えばカーボンブラック又はシリカ)を、約、又は少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100重量%置き換える。なお、現在市販されているゴム複合タイヤ(本明細書の組成物を含まないもの)は、典型的には、カーボンブラックなどの既存の充填剤を最大約30重量%含んでいる。したがって、タイヤなどの本明細書のゴム複合材料は、例えば約、又は少なくとも約5、10、15、20、25、又は30重量%の本開示の組成物を含むことができる。本明細書のゴム組成物は、いくつかの態様では、低い最小弾性トルク(ML)(例えば約0.10、0.08、0.06、0.04、0.03、又は0.02dNm[デシニュートンメートル]、又はそれら未満)を有することができるため、その調製中にゴム組成物を混合する方法が開示される。
【0225】
本明細書の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む組成物は、紙/包装組成物又はセルロース繊維含有組成物であってよい。そのような組成物の例は、本明細書に開示の任意のタイプの紙/包装又はセルロース繊維含有組成物、例えば紙(例えば筆記用紙、事務用紙、コピー用紙、工作用紙)、厚紙、板紙、段ボール、ティッシュペーパー、ナプキン/ペーパータオル、ワイプ、又は不織布とすることができる。本明細書の紙/包装組成物又はセルロース繊維含有組成物の配合物及び/又は成分(本明細書のグルカンエステル誘導体に加えて)、並びにこれらの組成物の形態は、例えば米国特許出願公開第2018/0119357号明細書、同第2019/0330802号明細書、同第2020/0062929号明細書、同第2020/0308371号明細書、又は同第2020/0370216号明細書に記載されている通りであってよく、これらの文献は全て参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの態様では、グルカンエステル誘導体は、グルカンエステル誘導体は、紙又は他のセルロース繊維含有組成物において強化助剤として機能する。製紙プロセスにおいて繊維及び/又は他の不溶性材料を凝集させるグルカンエステル誘導体の能力(例えばパルプ凝集)は、その製造において凝集を伴う、本明細書のグルカンエステル誘導体を紙又はその他の製品に取り込ませることできる手段であると考えられる。しかしながら、いくつかの態様では、本明細書のグルカンエステル誘導体は、凝集補助剤としての可能な添加とは独立した形で、前述した組成物のいずれかに成分として添加することができる。
【0226】
本開示のいくつかの態様は、(a)本明細書の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を、懸濁固体/粒子を含む水性組成物に混合し、それにより懸濁固体/粒子の少なくとも一部を凝集させること;及び(b)任意選択的に、(a)の凝集した固体/粒子を水性組成物から分離すること;を含む凝集又は脱水方法に関する。したがって、いくつかの態様におけるグルカンエステル誘導体は、例えば凝集剤、脱水剤、清澄化剤、及び/又は脱混濁剤として特徴付けることができる。処理された組成物の凝集した粒子は、典型的には沈降(浮遊)するか、少なくとも分離処理(例えば濾過)をより行い易くなる。可溶性グルカンエステル誘導体を凝集法において使用することができるが、いくつかの態様では不溶性グルカンエステル誘導体を使用することができる。典型的には、凝集用途のための本明細書のグルカンエステル誘導体は、(i)生分解性である、及び/又は(ii)架橋されていない。
【0227】
本明細書では、例えば1種、2種、3種、又はそれ以上の異なるタイプのグルカンエステル誘導体を凝集法において使用することができる。いくつかの態様では、グルカンエステル誘導体が唯一の使用される凝集剤であるが、別の態様では、グルカンエステル誘導体は別のタイプの凝集剤(例えばアクリルアミドなどの市販の既存の凝集剤)に加えて使用される。これら後者の態様では、グルカンエステル誘導体は、例えば、水性組成物に添加される全ての凝集剤の約、又は少なくとも約30、40、50、60、70、80、又は90重量%を構成することができる。
【0228】
工程(a)において懸濁固体/粒子を含む水性組成物中に混合されるグルカンエステル誘導体の量は、例えば、懸濁固体1kgあたり(乾燥固体基準)、約、又は少なくとも約2、4、6、8、10、12、14、2~14、2~12、2~10、2~8、4~14、4~12、4~10、4~8、6~14、6~12、6~10、6~8、8~14、8~12、又は8~10gであってよい。水溶性グルカンエステル誘導体は、典型的には、混合工程(a)後に水性組成物中に溶解されることが理解されるであろう。混合は、任意の標準的な手段によって行うことができる。
【0229】
グルカンエステル誘導体で処理される懸濁固体を含む水性組成物の温度及びpHは、水性組成物について本明細書で開示される任意の温度及びpHであってよい。いくつかの態様では、pHは、約4、5、6、7、8、9、10、4~10、5~9、若しくは6~8であることができ、且つ/又は温度は、約1~80、1~70、1~60、1~50、1~40、1~30、5~80、5~70、5~60、5~50、5~40、5~30、15~80、15~70、15~60、15~50、15~40、若しくは15~30℃であることができる。グルカンエステル誘導体を水性組成物に添加して混合すると、例えば約、又は少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、9、12、18、24、30、36、42、又は48時間懸濁固体の沈降を開始させることができる。
【0230】
いくつかの態様では、グルカンエステル誘導体による処理後に沈降する(すなわちもはや懸濁されない)最初に懸濁した固体のパーセント割合は、約、又は少なくとも約30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、又は100重量%である。典型的には、本明細書の凝集剤により、沈降粒子が占める空間を少なくすることができる。例えば、本明細書のグルカンエステル誘導体による水性組成物(最初は懸濁粒子を有するもの)の処理後の沈降粒子の総体積は、凝集剤の助けを借りずに水性組成物中に沈降する沈降粒子の総体積の、約90%、80%、70%、60%、若しくは50%、又はこれら未満とすることができる(各系の他の全ての条件が同じ場合)。以下の実施例で記載される方法など、任意の適切な方法を使用して沈降体積を決定することができる。
【0231】
いくつかの態様では、懸濁固体/粒子を含む水性組成物の濁度(すなわち懸濁している物質で曇っている、不透明な、及び/又は濃い液体の品質)、色、及び/又は不透明度は、本明細書のグルカンエステル誘導体で処理した場合に、約、又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、又は75%減少させることができる。濁度は、例えばネフェロメトリー濁度単位(NTU)で測定することができる。濁度の測定のためには、Progress in Filtration and Separation(Edition:1,Chapter 16.Turbidity:Measurement of Filtrate and Supernatant Quality?,Publisher:Academic Press,Editors:E.S.Tarleton,July 2015)(これは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている方法、又は以下の実施例に記載されている方法など任意の適切な方法を使用することができる。本明細書において液体の色を測定するためには、例えば分光比色分析や光電比色分析などの任意の適切な方法を使用することができる。
【0232】
いくつかの態様では、懸濁固体/粒子を含む水性組成物の濾過性は、本明細書のグルカンエステル誘導体で処理した場合に増強/向上させることができる。液体組成物の濾過性は、毛細管吸引時間を測定するなど、任意の適切な方法を使用して測定することができる。いくつかの態様では、懸濁固体/粒子を含む水性組成物の毛細管吸引時間(例えば秒単位で測定)は、本明細書のグルカンエステル誘導体で処理した場合に、約、又は少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は85%減少させることができる。液体の毛細管吸引時間を測定するためには、任意の適切な方法を使用することができる。
【0233】
本明細書において凝集させることができる懸濁粒子は、典型的にはコロイド粒子(すなわち安定に懸濁されている未溶解粒子[固体])である。したがって、本明細書において凝集法を行うことができる水性組成物は、例えばコロイドであってよい。本明細書で開示される凝集剤で処理することができる懸濁固体/粒子を含む水性組成物は、例えば廃水(例えば都市、工業、農業)、汚物/下水、汚泥(例えば活性汚泥)、水域からの水(例えば川/小川、運河、堀、池、沼地、湖、海洋)、プールの水、冷却水、堆積物(例えば粘土堆積物)及び/若しくは土を含む水、飲料用に処理される水、又は例えば製紙プロセス(例えばパルプ凝集)において存在するような繊維及び/又は填料を含む水であってよい。工業廃水の例は、製紙工場又は掘削/採掘作業からの排水である。いくつかの態様では、懸濁固体は、細菌、酵母、及び/又は藻類などの微生物細胞(生細胞及び/又は死細胞)を含むことができる。本明細書における凝集は、醸造(例えば発酵後の麦汁)、チーズ凝乳の形成又は大豆凝乳(豆腐)製造などの食品又は飲料の製造プロセス中に存在する水性組成物に適用できると見込まれる。開示された凝集法を組み込むことができるシステム/操作としては、例えば廃水/下水/汚泥処理、製紙、浄水、土壌調整、及び/若しくは採掘/掘削/坑内作業、又は凝集を使用する任意のその他のシステム/操作が挙げられる。
【0234】
本明細書の凝集方法は、任意選択的には、処理された水性組成物から凝集した固体/粒子を分離する工程を更に含む。そのような工程は、例えば沈降/沈殿、濾過、遠心分離、及び/又はデカンテーションを含むことができる。
【0235】
本開示は、本明細書の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む固体組成物を製造する方法にも関する。そのような方法は、少なくとも(a)本開示の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む非苛性(例えばpH6~8又は6~9)水性組成物(例えば溶液又は分散液)を準備すること、(b)水性組成物を望みの形態(例えば繊維、フィブリッド、フィルム/コーティング、複合材料、押出物)にすること、及び(c)工程(b)の水性組成物から液体/溶媒を除去して、グルカンエステル誘導体を含む固体組成物を製造すること、を含むことができる。いくつかの態様では、エステル誘導体は、非誘導体として非苛性水性条件下で不溶性である本明細書のグルカンのものである(例えばDP>8又は>9のα-1,3-グルカン)。
【0236】
非苛性水性組成物が溶液であり、エステル誘導体が本明細書のグルカンのものであり、非誘導体としては非苛性水性条件下で不溶性であるいくつかの態様では、液体/溶媒は、溶液のpHを約10、10.5、11、11.5、又は12よりも上に上げ、それにより溶解しているグルカンエステルを溶液から析出させることによって、除去することができる。溶液のpHは、例えば塩基(例えばNaOHなどの金属水酸化物)を溶液に添加/混合することによって上昇させることができる。析出したグルカンエステル誘導体(工程(b)からの望みの形態/形状のもの)は、任意選択的には、例えばアルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)などの有機液体で洗浄することができる、及び/又は乾燥することができる。工程(a)で得られる溶液中のグルカンエステル誘導体の溶液中の濃度は、本明細書の別の箇所で開示されている通りとすることができ、例えば約、又は少なくとも約10、12、14、16、18、20、25、30、10~30、10~25、10~20、16~30、16~25、又は16~20重量%であってよい。
【0237】
本開示は、前述した方法によって製造される固体組成物にも関する。そのような組成物は、例えば繊維、フィブリッド、フィルム/コーティング、複合材料、又は押出物であってよい。
【0238】
本明細書に開示の組成物及び方法の非限定的な例には以下が含まれる:
1.グルカンのエステル誘導体を含む組成物であって、前記グルカンが、前記グルカンにエステル結合した少なくとも1つのカチオン性有機基(カチオン性アシル基)による最大約3.0の置換度(DoS)を有する、組成物。
2.前記グルカンがα-グルカンである、実施形態1に記載の組成物。
3.前記α-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,3結合である、実施形態2に記載の組成物。
4.前記α-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約50%がα-1,6結合であり、任意選択的には前記α-グルカンが少なくとも1%のα-1,2及び/又はα-1,3分岐を含む、実施形態2に記載の組成物。
5.前記グルカンがβ-グルカンである、実施形態1に記載の組成物。
6.前記β-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約50%がβ-1,3結合又はβ-1,4結合である、実施形態5に記載の組成物。
7.前記グルカンが少なくとも6の重量平均重合度(DPw)を有する、実施形態1、2、3、4、5、又は6に記載の組成物。
8.前記カチオン性有機基による前記DoSが少なくとも約0.005である、実施形態1、2、3、4、5、6、又は7に記載の組成物。
9.前記カチオン性有機基による前記DoSが少なくとも約0.3である、実施形態1、2、3、4、5、6、又は7に記載の組成物。
10.前記カチオン性有機基による前記DoSが約0.3~約2.0である、実施形態1、2、3、4、5、6、又は7に記載の組成物。
11.前記カチオン性有機基が、構造:
【化3】
を含み、式中の各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む基である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10に記載の組成物。
12.各R
1、R
2、及びR
3がCH
3である、実施形態11に記載の組成物。
13.前記カチオン性有機基が、構造:
【化4】
を含み、式中の各R
1、R
2、及びR
3が、独立して、少なくとも1つの炭素原子を含む基である、実施形態11に記載の組成物。
14.各R
1、R
2、及びR
3がCH
3である、実施形態13に記載の組成物。
15.前記グルカンのエステル誘導体の二酸化炭素発生試験法によって決定される生分解性が、15日後に少なくとも10%である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14に記載の組成物。
16.前記組成物が水性組成物である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15に記載の組成物。
17.前記組成物がホームケア製品、パーソナルケア製品、工業製品、摂取可能な製品(例えば食品)、又は医薬品である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16に記載の組成物。
18.少なくとも1種の界面活性剤を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17に記載の組成物。
19.少なくとも1種の酵素を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、又は18に記載の組成物。
20.前記酵素が、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、又はヌクレアーゼである、実施形態19に記載の組成物。
21.錯化剤、汚れ除去ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、泡抑制剤、腐食防止剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、変色防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和若しくは不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、視覚的シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固結防止剤、デンプン、砂、又はゲル化剤のうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20に記載の組成物。
22.前記組成物が、液体、ゲル、粉末、親水コロイド、顆粒、錠剤、ビーズ又はトローチ、単一区画の小袋、多区画の小袋、単一区画のパウチ、又は多区画のパウチの形態であるか、又はそれらの中に含まれる、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21に記載の組成物。
23.前記組成物が、(a)凝集剤、(b)粘度調整剤、(c)ラテックス組成物、(d)顔料含有組成物、(e)フィルム又はコーティング、(f)繊維若しくはフィブリッド、(g)化粧品(例えばヘアスタイリング製品)、(h)洗剤組成物、(i)接着剤組成物、(j)紙、又は(k)本明細書に開示の任意の組成物/製品である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、又は22に記載の組成物。
24.グルカンのエステル誘導体の製造方法であって、(a)反応において、カチオン性有機基(カチオン性アシル基)を含む少なくとも1種のエステル化剤とグルカンを接触させることであって、少なくとも1つのカチオン性有機基(カチオン性アシル基)が前記グルカンにエステル化され、それによって前記グルカンのエステル誘導体(例えば実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15に記載のもの)を生成することを含み、前記グルカンのエステル誘導体が、前記カチオン性有機基(カチオン性アシル基)による最大約3.0の置換度(DoS)を有すること;及び(b)任意選択的に、工程(a)で製造したグルカンのエステル誘導体を単離すること;を含む方法。
25.「グルカン」の代わりに「大豆多糖」が記載される、実施形態1、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、若しくは23に記載の組成物、又は実施形態24に記載の方法。
26.少なくとも1種のグルカンエステル誘導体(実施形態1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15からのものなど)を含む固体組成物の製造方法であって、少なくとも(a)本開示の少なくとも1種のグルカンエステル誘導体を含む非苛性(例えばpH6~8又は6~9)水性組成物(例えば溶液又は分散液)を準備すること、(b)水性組成物を望みの形態(例えば繊維、フィブリッド、フィルム/コーティング、複合材料、押出物)にすること、及び(c)工程(b)の前記水性組成物から液体/溶媒を除去(例えば乾燥によって、及び/又は、溶液が使用される場合には、前記溶液のpHを約10を超えるまで上げて、前記溶解したグルカンエステルを溶液から析出させることによって)して、前記グルカンエステル誘導体を含む固体組成物を製造すること、並びに(d)任意選択的に工程(c)で生成した前記固体組成物を洗浄及び/又は乾燥すること、を含む方法。
27.毛髪をスタイリングする方法であって、以下の少なくとも工程(a)及び(b)、又は工程(c)及び(d)を含む方法:(a)実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23によるグルカンエステル誘導体(又はこれらによる組成物)と毛髪を接触(例えばコーティング)させ、それにより処理された毛髪(又はコーティングされた毛髪)を得る工程、及び(b)前記処理された毛髪(又は前記コーティングされた毛髪)を望みの形態(例えばストレートにする、カールさせる、又は前記処理された/コーティングされた毛髪を工程[a]又は[b]の前に存在していた前記毛髪の形態とは異なる形態にする)にする工程;又は(c)毛髪を望みの形態(例えばストレートにする、カールさせる、又は前記毛髪を工程[c]の前に存在していた前記毛髪の形態とは異なる任意の他の形態にする)にする工程、及び(d)工程(c)の前記毛髪を実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、又は23によるグルカンエステル誘導体(又はこれらによる組成物)と接触させ(例えばコーティングし)、それにより処理された毛髪(又はコーティングされた毛髪)を得る工程;並びに(e)任意選択的に、工程(a)又は(d)において前記グルカンエステル誘導体を前記毛髪に供給するために使用された溶媒が存在する場合にそれを除去する工程。
【実施例】
【0239】
本開示は、以下の実施例において更に例示される。これらの実施例は、本明細書において特定の態様を示しているが、例示目的のみで示されていることが理解されるべきである。上記考察及びこれらの実施例から、当業者は、開示された実施形態の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示された実施形態を様々な用途及び条件に合わせるために様々な変更及び修正を行うことができる。
【0240】
材料/方法
α-1,3-グルカンの代表的な調製
約100%のα-1,3グリコシド結合を有するα-1,3-グルカンは、例えば米国特許出願公開第2014/0179913号明細書(例えばその中の実施例12を参照)に開示されている手順に従って合成することができる。この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0241】
別の例として、α-1,3-グルカンのスラリーを、米国特許出願公開第2013/0244288号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)gtfJ酵素(100単位/L)と、OmniPur Sucrose(EM8550)から入手したスクロース(100g/L)と、Sigma Aldrichから入手したリン酸カリウム緩衝液(10mM)と、pH5.5に調整したDuPontから入手した抗菌剤であるFermaSure(登録商標)(100ppm)とを含む水溶液(0.5L)から調製した。得られた酵素反応を20~25℃で24時間維持した。反応で合成されたα-1,3-グルカンは非水溶性であったため、スラリーが形成された。その後、α-1,3-グルカンの固体を、40マイクロメートルの濾紙上に325メッシュスクリーンを取り付けたブフナー漏斗を使用して回収し、約60~80重量%の水を含むウェットケーキを形成した。
【0242】
α-1,2分岐を有するα-1,6-グルカンの代表的な調製
様々な量のα-1,2分岐を含むα-1,6-グルカンを調製する方法は、米国特許出願公開第2018/0282385号明細書に開示されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。スクロース濃度、温度、及びpHなどの反応パラメータを調整することで、様々なレベルのα-1,2-分岐及び分子量を有するα-1,6-グルカンを得ることができる。α-1,2-分岐α-1,6-グルカンを調製するための代表的な手順を以下に示す(19%のα-1,2-分岐及び81%のα-1,6結合を含む)。1D1H-NMRスペクトルを使用して、グリコシド結合の分布を定量した。α-1,2-分岐を有するα-1,6-グルカンの追加のサンプルを同様に調製した。例えば、あるサンプルは32%のα-1,2-分岐及び68%のα-1,6結合を含んでおり、別のサンプルは10%のα-1,2-分岐及び90%のα-1,6結合を含んでいた。
【0243】
以下の手順に従って、約19%のα-1,2分岐を有する可溶性α-1,6-グルカンを、グルコシルトランスフェラーゼ(デキストランスクラーゼ)GTF8117及びα-1,2分岐酵素GTFJ18T1の段階的組み合わせを使用して調製した。スクロース(450g/L)と、GTF8117(9.4U/mL)と、50mMの酢酸ナトリウムとからなる反応混合物(2L)をpH5.5に調整し、47℃で撹拌した。アリコート(0.2~1mL)を所定の時間に抜き出し、90℃で15分間加熱することによってクエンチした。得られた熱処理されたアリコートを0.45μmのフィルターに通した。フロースルーをHPLCで分析し、スクロース、グルコース、フルクトース、ロイクロース、オリゴ糖、及び多糖の濃度を決定した。23.5時間後、反応混合物を90℃で30分間加熱した。熱処理した反応混合物のアリコートを0.45μmのフィルターに通し、フロースルーを可溶性単糖/二糖、オリゴ糖、及び多糖について分析した。主な生成物は93のDPwを有する直鎖デキストランであった。
【0244】
238.2gのスクロース及び210mLのα-1,2-分岐酵素GTFJ18T1(5.0U/mL)を、1つ上で記載したGTF8117反応から得られた熱処理済みの反応混合物の残りに添加することによって、第2の反応混合物を調製した。混合物を約2.2Lの体積で30℃で撹拌した。所定の時間にアリコート(0.2~1mL)を抜き取り、90℃で15分間加熱することによってクエンチした。得られた熱処理されたアリコートを0.45μmのフィルターに通した。フロースルーをHPLCで分析し、スクロース、グルコース、フルクトース、ロイクロース、オリゴ糖、及び多糖の濃度を決定した。95時間後、反応混合物を90℃で30分間加熱した。熱処理した反応混合物のアリコートを0.45μmフィルターに通し、フロースルーを可溶性単糖/二糖、オリゴ糖、及び多糖について分析した。残った熱処理済の混合物を、1Lの遠心分離ボトルを使用して遠心分離した。上澄みを回収し、1kDa又は5kDaのMWCOカセットと脱イオン水を用いた限外濾過システムを使用して200倍以上洗浄した。洗浄されたオリゴ/多糖生成物溶液を乾燥した。その後、乾燥サンプルを1H-NMR分光法で分析し、オリゴ糖と多糖のアノマー結合を決定した。
【0245】
実施例1
不溶性α-グルカンのベタインエステル誘導体の合成
この実施例は、不溶性α-1,3-グルカンを使用すると、可溶性カチオン性グルカンエステルであるベタインα-1,3-グルカン誘導体の様々な形態が生成することを実証する。
【0246】
非水溶性α-1,3-グルカン(80g[493.6mmol])(約100%のα-1,3結合)を2.4LのN,N-ジメチルアセトアミドに懸濁した。次いで、調製物の温度を120℃に上げ、この温度で2時間撹拌した。80℃まで冷却した後、144gのLiClを調製物に添加した。調製物を70℃まで冷却した後、透明な溶液が形成された。粉砕したベタイン塩酸塩(45.6g[296.16mmol]、CAS登録番号590-46-5)(例えばSigma Aldrichカタログ番号B3501)を溶液に添加し、次いでこれを70℃で10分間撹拌した。その後、57.6g(296.16mmol)の塩化トシル(脱水剤)を溶液に添加し、調製物を70℃で2時間反応させた。透明な黄色の溶液が形成され、これをその後室温まで冷却した。溶液の1/3部分に4Lのエタノールを添加することによって固体生成物を析出させた。これを各部分で行い、その後析出した生成物を全て合わせた(より大きな容器内で溶液全体にエタノール12Lを添加することによっても同様に析出生成物を得ることができる)。析出した生成物であるベタインα-1,3-グルカンエステルを、1回の洗浄あたり5リットルのエタノールで3回洗浄し、その後40℃で真空乾燥した。
【0247】
異なる分子量を有するα-1,3-グルカンサンプル(約100%のα-1,3結合、全て非水溶性)を上記のように個別に反応させたが、様々な分子量と置換度(DoS)レベルのベタイン変性α-1,3-グルカンエステル生成物を生成するために異なる試薬量を使用した。表1には、合成に成功した様々なベタインα-1,3-グルカンエステル生成物(サンプルA~F)が示されており、これらはいずれも室温で中性の水に容易に溶解した。
【0248】
【0249】
実施例2
可溶性α-グルカンのベタインエステル誘導体の合成
この実施例は、可溶性グルカンであるα-1,2-分岐α-1,6-グルカンを使用して、様々な形態のベタインα-1,6-グルカン誘導体(可溶性カチオン性グルカンエステル)を生成することを実証する。
【0250】
20%のα-1,2分岐を有する40kDaのα-1,6-グルカン、45%のα-1,2分岐を有する17kDaのα-1,6-グルカン、及び45%のα-1,2分岐を有する300kDaのα-1,6-グルカンである様々な可溶性α-1,2-分岐α-1,6-グルカンを、ベタインエステル化に使用した。これらのα-グルカンのそれぞれにおいて、α-1,6-グルカン骨格(そこからα-1,2分岐が存在する)は、100%のα-1,6グリコシド結合を有しており、記載されている分子量は、α-1,6-グルカン骨格の分子量である。各α-1,2-分岐は、単一の(ペンダント)グルコース単位から構成されていた。
【0251】
ベタインエステル化のために、上記分岐α-1,6-グルカン(40g)のそれぞれを高温(110~130℃)でDMAc(200mL)に個別に溶解した。次いで、ベタイン塩酸塩(40g、CAS登録番号590-46-5)(例えばSigma Aldrichカタログ番号B3501)及びジシアンジアミド(>20g、脱水剤)を添加してエステル化を開始した。各反応調製物の均一性は、脱イオン水及び/又はCaCl2を添加することによって更に調整した。次いで、各反応を真空で3時間未満加熱した。約80mLの液体を除去し、そこから粗生成物をメタノール中で析出させ、メタノールで数回洗浄することで、目的生成物(ベタイン変性α-グルカンエステル)を定量的収率で得た。これらの反応からの生成物を、BC-2(40kDaのα-1,6-グルカン、20%のα-1,2分岐、DoS0.02)、BC-4(40kDaのα-1,6-グルカン、20%のα-1,2分岐、DoS0.04)、BC-10(17kDaのα-1,6-グルカン、45%のα-1,2分岐、DoS0.04)、及びBC-11(300kDaのα-1,6-グルカン、45%のα-1,2分岐、DoS0.04)と表した。
【0252】
実施例3
ベタインα-1,3-グルカンエステル誘導体の分析
表1のベタインα-1,3-グルカンエステル生成物の水溶液を調製し、ブルックフィ-ルド装置(スピンドルS03)を使用して室温(約20℃)で粘度を分析した。高分子量のグルカンエステルは、比較的低濃度で高い粘度レベルを示した(表2、例えば製品Eを参照)。これは、工業用途(例えば石油及びガスの生産、廃水処理)、パーソナルケア、及びホームケアなどの多くの用途で望まれる特徴である。対照的に、低分子量のグルカンエステル生成物は、高固形分水溶液(約15重量%以上)の製造を可能にした(表2を参照)。これは、コーティング用途(例えば紙のコーティング)に望まれる特徴であり、高い固形分含有量は、例えば必要な乾燥時間を最小限に抑え、プロセス全体のスループットを増加させる。
【0253】
【0254】
水中でのベタイン変性α-1,3-グルカンの溶解挙動に対するpHの影響を試験した。サンプルA(表1を参照)の20重量%水溶液(約1mL)を、4000、400、40、又は4ppmのNaOHを含む20mLの水に添加した(水のpHはそれぞれ13、12、11、又は10であった)。pH13及び12では、グルカンエステルは、底に沈降する硬いポリマーとして(pH13)、又は濁った溶液として(pH12)、溶液から出た。pH11では、より多くのグルカンエステルが溶液中に残った(若干の濁り)が、pH10では、完全ではないもののほとんどのグルカンエステルが溶液中に残った。ベタイン変性α-1,3-グルカンエステルのこの溶解挙動は予想外であった。四級アンモニウムα-1,3-グルカンエーテル(例えばヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムグルカンエーテル)は高いpHで溶解しやすくなるが、ベタインα-1,3-グルカンエステルではその逆のことが当てはまった。この挙動は、ポリマー加工においてベタインα-1,3-グルカンエステルを使用することに複数の利点を提供する。例えば、グルカンエステルは、水から高pH浴に繊維又はフィルムへと押し出すことができる。その後、必要に応じてエステル化学物質を(化学的又は酵素的に)除去し、完全に非水溶性のα-1,3-グルカン生成物を得ることができる。したがって、ベタイン変性α-1,3-グルカンエステルは、非誘導体化α-1,3-グルカンを含む製品を製造するために水系の処理環境を維持することを可能にする。
【0255】
生分解性分析
生分解性は、OECD 301 B Ready Biodegradability CO2 Evolution Test Guideline(OECD,1992.Organization for Economic Co-operation and Development,OECD 301 Ready Biodegradability.OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Section 3を参照のこと、これは参照により本明細書に組み込まれる)に従って測定した。この分析では、試験物質(ベタイングルカンエステル)が唯一の炭素源及びエネルギー源であり、好気条件下では微生物が試験物質を代謝してCO2を生成するか、炭素をバイオマスに取り込む。試験物質によって生成されたCO2の量(ブランク接種材料によって発生したCO2で補正)は、試験物質中の有機炭素が完全に変換された場合に生成することができるCO2の理論量(ThCO2)に対するパーセント割合として表される。
【0256】
ベタインα-1,3-グルカンエステル誘導体の生分解試験は、OECD 301 B試験(上記)に従って行った。ベタイン基のDoSが最も高いグルカンエステルのサンプル(サンプルF、表1)を、28日間にわたる生分解について分析した。その結果は
図1及び表3に示されている。
【0257】
【0258】
サンプルFは、試験開始から28日以内に顕著な生分解性を示した(
図1、表3)。この結果は、生分解性に関する限り、サンプルFのDoS(0.88)が比較的高いことを考慮すると驚くべきことであった。異なる結合/誘導体化タイプ(例えばエーテル結合したカルボキシメチル基又はエーテル結合したヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム基)によるそのようなDoSレベル)は、典型的には生分解性を大きく阻害するであろう。本明細書におけるベタインα-1,3-グルカンエステル誘導体の強化された生分解性の特徴は、ポリマーの生物濃縮が望ましくない用途(例えば水環境)におけるそれらの使用を高度に可能にする。
【0259】
実施例4
美容ケアにおけるベタイン変性グルカンエステルの使用-ヘアスタイリング用途
この実施例では、ベタインα-1,3-グルカンエステル及びベタインα-1,2-分岐α-1,6-グルカンエステルを、ヘアスタイリング用途に関連する特徴について試験した。表4に列挙されているこれらの異なるカチオン性グルカンエステルを、これらの用途について陰性対照(グルカン誘導体を使用しない)及び陽性対照(カチオン性グルカンエーテル)と共に試験した。
【0260】
【0261】
各試験サンプルは、エタノール/水(1:1)混合物に1重量%で完全に溶解させた。次いで、校正済み濁度計(HACH 2100AN濁度計)を使用して、溶液の濁度をネフェロメトリー濁度単位(NTU)で測定した。次いで、溶液をシャーレに注ぎ入れ、室温で一晩蒸発させた。得られた各フィルムの品質を検査した。試験したベタイン変性グルカンエステルサンプルのいくつか(表4参照)では、それぞれ示されているように、低い溶液濁度と透明なフィルム形成能力による優れた溶解性と高品質のフィルム形成が観察された。これらの特徴は、材料をヘアスタイリング製品に有用なものにするものと考えられ、例えば、不潔な外観を避けながらヘアスタイリングの保持力を得るために、毛髪への濁りのない透明な塗布を可能にすることができる。
【0262】
カール保持試験では、約1グラムの各溶液(表4)をヘアトレス(8インチのRINBOOOL毛髪見本)に塗布した。ヘアトレスの半分を>90度の角度でカールさせた状態で、得られたヘアトレスを室温で一晩乾燥した。次いで、各ヘアトレスを45℃のオーブンに吊るし、3時間加熱した。その後、各ヘアトレスのカールした半分の高さを測定し、吊るす前に存在していたヘアトレスの高さと比較した(表4)。対照実験では、ヘアトレスのカールした半分の高さは6.5cm変化した。しかし、ベタイン変性グルカンエステルサンプルで処理したいくつかのヘアトレスでは、カールしたヘアトレスの半分の高さは変化しないか、又はほとんど変化しなかった(表4を参照)。これによりヘアスタイリングの保持力が大きいことが示された。
【0263】
実施例5
コーティングにおけるベタイン変性グルカンエステルの使用
この実施例では、紙をコーティングするためにベタインα-1,3-グルカンエステルを使用した。このコーティングは、紙にオイル/グリースバリアを与えた。
【0264】
蒸留水に10重量%又は20重量%でベタインα-1,3-グルカン粉末を溶解することによって調製した溶液として、ベタインα-1,3-グルカンエステル(サンプルA、表1)を紙基材上に塗布した。例えば、10重量%の配合物50gを調製するために、5gのベタイングルカン粉末を45gの水に溶解した。全ての粉末が溶解するまで、各調製物を磁気撹拌子を使用して室温で撹拌した。或いは、必要に応じて実験室用ブレンダーを使用することもできる。ベタイングルカンが水に溶解するのに伴い、各溶液の粘度は上昇した。
【0265】
ベタインα-1,3-グルカン粉末が完全に溶解した後、得られた溶液を、加熱モジュ-ルを備えた自動ロッドコーター(モデルPROCEQ ZAA 2600.A、Zehntner Testing Instruments)を使用して、折り畳み可能なボール紙基材(METSABOARD CLASSIC FBB、坪量235gsm、厚さ0.425mm)の上に塗布した。紙基材に望みのコーティング厚さ及び坪量を付与するために、異なるロッド(Zehntner)を使用した:ロッド#3(参照番号ACC378.006、湿潤厚さ6.9μm)及びロッド#14(参照番号ACC378.032、湿潤厚さ32.0μm)。コーティング速度を20mm/分に設定し、コーティングは室温で塗布した。コートされた紙を周囲条件下で一晩乾燥した。乾燥時間を短縮することも可能であり、乾燥は、任意選択的には例えば60℃のオーブンで10分間行うこともできる。ある試験では、この手順をボール紙の前処理された面(メーカーによる印刷のための前処理)に適用した一方で、別の反復試験ではこの手順をボール紙の別の紙片の裏面(非印刷面)に適用した。
【0266】
それぞれのベタインα-1,3-グルカンでコーティングされた紙基材のオイルバリア性能を、60秒Cobb Ungerオイル試験(ISO535、TAPPI T441、SCAN P12、EN20535、DIN53132、これらは参照により本明細書に組み込まれる)を使用して評価した。この分析の結果は表5に示されている。10重量%溶液及び20重量%溶液のいずれかを使用してベタインα-1,3-グルカンエステルでコーティングされた紙は、陰性対照参照(コーティングされていない紙)と比較して、顕著なオイルバリア機能を示した(表5)。
【0267】
【国際調査報告】