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特表2024-525686AAVカプシド比を決定するための液体クロマトグラフィーアッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】AAVカプシド比を決定するための液体クロマトグラフィーアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/70 20060101AFI20240705BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240705BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20240705BHJP
   G01N 30/50 20060101ALI20240705BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20240705BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20240705BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240705BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C12Q1/70
G01N30/88 D
G01N30/88 J
G01N30/02 B
G01N30/50
G01N30/26 A
G01N30/34 E
C12Q1/68
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501502
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022036728
(87)【国際公開番号】W WO2023287725
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,651
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/275,138
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/359,554
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/359,557
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン・ヴェルト
(72)【発明者】
【氏名】リー・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ディンヂィァン・リウ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ10
4B063QQ13
4B063QR79
4B063QR80
4B063QS17
4B063QX01
(57)【要約】
組換えAAV粒子の試料中のインタクトなアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド成分の相対存在量を決定するための方法が開示されている。実施形態では、本方法は、ゴーストピークの存在を最小化又は排除して、分析精度を最大化し、製品の品質及び一貫性を確保する、システム再生プロセスを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法であって、
(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施することであって、前記システム再生プロセスが、(i)前記AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)前記AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)前記AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(iv)前記LC機器の液体運搬構成要素を前記洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含み、
移動相Aが、8~9のpHにおいて精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、前記精製水が、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する、システム再生プロセスを実施することと、
(b)前記LC機器及び前記AEXカラムの前記液体運搬構成要素から前記洗浄溶液をパージすることを含む、前記液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施することと、
(c)試料分離プロセスを実施することであって、前記試料分離プロセスが、(i)1つ以上のブランク試料を前記液体クロマトグラフィーシステムに導入し、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(ii)1つ以上の参照標準試料を前記液体クロマトグラフィーシステムに導入し、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(iii)前記AAV粒子の1つ以上の試験試料を前記液体クロマトグラフィーシステムに導入し、前記1つ以上の試験試料が、試料溶液中にインタクトな空AAVカプシド及びインタクトな完全AAVカプシドを含み、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行して、前記インタクトな完全AAVカプシドから前記インタクトな空AAVカプシドを分離することと、を含み、
移動相Bが、8~9のpHにおいて、精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン、250mM~1Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、移動相Cが、精製水中に1.5M~2.5Mの塩化ナトリウムを含む、試料分離プロセスを実施することと、
(d)前記1つ以上の試験試料の各々において前記インタクトな空AAVカプシドの量及び前記インタクトな完全AAVカプシドの量を同定して、前記AAV粒子の試料中の前記インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
異種核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法であって、
(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施することであって、前記システム再生プロセスが、(i)前記AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)前記AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)任意選択的に、前記AEXカラムの配向を逆転させて、前記AEXカラム内の流動を逆転させることと、(iv)前記AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(v)前記LC機器から前記AEXカラムを除去することと、(vi)前記LC機器の液体運搬構成要素を前記洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含み、
移動相Aが、8~9のpHにおいて精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、前記精製水が、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する、システム再生プロセスを実施することと、
(b)(i)前記AEXカラムを前記LC機器に再設置することと、(ii)前記LC機器及び前記AEXカラムの前記液体運搬構成要素から前記洗浄溶液をパージすることと、を含む、前記液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施することと、
(c)試料分離プロセスを実施することであって、前記試料分離プロセスが、(i)1つ以上のブランク試料を前記液体クロマトグラフィーシステムに導入し、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(ii)1つ以上の参照標準試料を前記液体クロマトグラフィーシステムに導入し、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(iii)前記AAV粒子の1つ以上の試験試料を前記液体クロマトグラフィーシステムに導入し、前記1つ以上の試験試料が、試料溶液中にインタクトな空AAVカプシド及びインタクトな完全AAVカプシドを含み、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行して、前記インタクトな完全AAVカプシドから前記インタクトな空AAVカプシドを分離することと、を含み、
移動相Bが、8~9のpHにおいて、精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン、250mM~1Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、移動相Cが、精製水中に1.5M~2.5Mの塩化ナトリウムを含む、試料分離プロセスを実施することと、
(d)前記1つ以上の試験試料の各々において前記インタクトな空AAVカプシドの量及び前記インタクトな完全AAVカプシドの量を同定して、前記AAV粒子の試料中の前記インタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記洗浄溶液が、精製水中に18%±1%v/vのエタノールを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料溶液が、1mM~100mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料溶液が、60mM~100mMの塩化ナトリウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試料溶液が、0.003%w/v~0.007%w/vの界面活性剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料溶液が、0.005%w/v±0.001%w/vの界面活性剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が、ポロキサマー188である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記システム平衡化プロセスが、(i)少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも10分間、精製水で前記LC機器及び前記AEXカラムの前記液体運搬構成要素から前記洗浄溶液をパージすることと、(ii)前記AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)前記AEXカラムを少なくとも10CVの移動相Aで洗浄することと、(iv)前記AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Bで洗浄することと、(v)前記AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Aで洗浄することと、を含む、請求項1及び3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記システム平衡化プロセスが、(i)少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも10分間、精製水で前記LC機器の前記液体担持構成要素から前記洗浄溶液をパージすることと、(ii)前記AEXカラムを前記LC機器に再設置することと、(iii)前記AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iv)前記AEXカラムを少なくとも10CVの移動相Aで洗浄することと、(v)前記AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Bで洗浄することと、(vi)前記AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Aで洗浄することと、を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記システム平衡化プロセスを実施することが、前記AEXカラムを前記LC機器に再設置する前に、前記LC機器の前記液体運搬構成要素を精製水で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも10分間洗浄することを更に含む、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
精製水で前記LC機器の前記液体運搬構成要素から前記洗浄溶液をパージすることが、少なくとも0.5mL/分の流量で少なくとも30分間実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも10CVが、10~20CVを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも20CVが、20~30CVを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料分離プロセスが、(i)前記液体クロマトグラフィーシステムに3つのブランク試料、続いて、4つの参照標準試料、続いて、2つのブランク試料、続いて、1~10個の試験試料、続いて、参照標準試料、続いて、ブランク試料を導入することと、(ii)それぞれ、各試料について、前記液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの前記分離勾配を実行することと、を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記分離勾配が、0.8mL/分の流量で36分間実行される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分離勾配が、順に、(i)1分間の90%の移動相A及び10%の移動相Bと、(ii)20分の期間にわたって移動相Aを90%から58%まで低減し、移動相Bを10%から42%まで増加させることと、(iii)4分間の100%の移動相Cと、(iv)少なくとも10分間の90%の移動相A及び10%の移動相Bと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記試験試料が≧5×1012ウイルスゲノム/mL(vg/mL)を含む場合、前記1つ以上の試験試料を希釈緩衝液中で1.5~3倍希釈することを更に含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記液体クロマトグラフィーシステムに導入された前記1つ以上の試験試料の各々が、約10マイクロリットルを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記液体クロマトグラフィーシステムに導入された前記1つ以上の試験試料の各々が、約20マイクロリットルを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記移動相Aが、8.5±0.1のpHにおいて、精製水中に20mM±2mMのビストリスプロパン、及び2mM±0.2mMの塩化マグネシウムを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記移動相Bが、8.5±0.1のpHにおいて、精製水中に20mM±2mMのビストリスプロパン、500mM±50mMのTMAC、及び2mM±0.2mMの塩化マグネシウムを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記移動相Cが、精製水中に2M±0.2Mの塩化ナトリウムを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記AAV粒子が、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記AAV粒子が、血清型AAV8の粒子である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記液体クロマトグラフィーシステムにおける以前の試料実行からブランク試料実行への繰り越しが、以前の試料の完全カプシドピークの0.3%以下である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記以前の試料が、参照標準試料である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記以前の試料が、試験試料である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記繰り越しが、前記以前の試料の完全カプシドピークの0.15%以下である、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して、異種核酸分子を含む組換えAAV粒子の試料中のインタクトなアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド成分の相対存在量を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非エンベロープ一本鎖DNAウイルスであるアデノ随伴ウイルスは、インビボで広範囲の種及び組織を形質導入するその能力、免疫毒性の低いリスク、並びに軽度の自然及び適応免疫応答に起因して、遺伝子療法のために遺伝物質を宿主細胞に送達するための治療剤の魅力的なクラスとして出現している。AAVなどのウイルスベクターの複雑な性質は、堅調な製品試験及び特性評価を可能にするための具体的な分析方法を必要とする。
【0003】
製造アプローチとは無関係に、AAV産生の1つの特性は、異種の目的の遺伝子(GOI)を含まない空カプシドの形成である。空カプシドのレベルは、大きく変化し得る。治療転帰に対する空カプシドの効果は、不完全に理解されているが、空カプシドの量は、製品の品質及び一貫性を確保するために厳重に監視される必要がある。
【0004】
複数の方法が、AAV試料中の空カプシドを定量化するために記載されており、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)が、血清型1、2、及び8の完全AAV粒子の精製及び濃縮に使用されている(Wang、下記)。更に、AAV血清型6.2の正確な定量化のためのAEXの適用は、Wang et al.,Molecular Therapy:Methods and Clinical Development,15:257-263,2019で考察されている。特に、Wangは、クロマトグラフィー条件下でのAAVカプシドの構造的完全性が、空カプシド及び完全カプシドの分離方法のための必要条件であり、2mMのMgClの存在が広範なピークの消失及びピークの強度の増加をもたらしたが、より高い濃度のMgClが更なる改善を提供しなかったことを報告している。Wangは、移動相における塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の使用が、NaClに対して分離を改善し、分離が7.5~9.0の範囲内のより高いpH値において改善され、空カプシドと完全カプシドとの間の分解能に対する緩衝剤の影響が小さく、ビストリスプロパン(BTP)が、試験された薬剤間で最良の分離を生じたことを更に報告している。
【0005】
製品の品質及び一貫性については、特に、製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)リリースアッセイとの関連で、潜在的な分析誤差源の最小化又は排除が最重要である。1つのそのような分析誤差源は、クロマトグラムで予想外に観察される、アーチファクト又は疑似ピークとしばしば称される、「ゴーストピーク」の存在である。そのようなゴーストピークが、液体クロマトグラフィーシステム内の不純物又はアーチファクトから生じ得るため、それらの存在は、仕様外調査要件をもたらすか、又はGMP製品アッセイのために時間がかかるか、若しくは許容できない、一貫性のない不正確な結果につながり得る。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法を対象とする。
【0007】
一態様では、本開示は、異種核酸分子を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法であって、(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施することであって、システム再生プロセスが、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(iv)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含み、移動相Aが、8~9のpHにおいて精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、精製水が、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する、システム再生プロセスを実施することと、(b)LC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることを含む、液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施することと、(c)試料分離プロセスを実施することであって、試料分離プロセスが、(i)1つ以上のブランク試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(ii)1つ以上の参照標準試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(iii)AAV粒子の1つ以上の試験試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、1つ以上の試験試料が、試料溶液中にインタクトな空AAVカプシド及びインタクトな完全AAVカプシドを含み、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行して、インタクトな完全AAVカプシドからインタクトな空AAVカプシドを分離することと、を含み、移動相Bが、8~9のpHにおいて、精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン、250mM~1Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、移動相Cが、精製水中に1.5M~2.5Mの塩化ナトリウムを含む、試料分離プロセスを実施することと、(d)1つ以上の試験試料の各々においてインタクトな空AAVカプシドの量及びインタクトな完全AAVカプシドの量を同定して、AAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む、方法を提供する。
【0008】
一態様では、本開示は、異種核酸分子を含むAAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法であって、(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施することであって、システム再生プロセスが、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)任意選択的に、AEXカラムの配向を逆転させて、AEXカラム内の流動を逆転させることと、(iv)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(v)LC機器からAEXカラムを除去することと、(vi)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含み、移動相Aが、8~9のpHにおいて精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、精製水が、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する、システム再生プロセスを実施することと、(b)(i)AEXカラムをLC機器に再設置することと、(ii)LC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることと、を含む、液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施することと、(c)試料分離プロセスを実施することであって、試料分離プロセスが、(i)1つ以上のブランク試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(ii)1つ以上の参照標準試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(iii)AAV粒子の1つ以上の試験試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、1つ以上の試験試料が、試料溶液中にインタクトな空AAVカプシド及びインタクトな完全AAVカプシドを含み、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行して、インタクトな完全AAVカプシドからインタクトな空AAVカプシドを分離することと、を含み、移動相Bが、8~9のpHにおいて、精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン、250mM~1Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、移動相Cが、精製水中に1.5M~2.5Mの塩化ナトリウムを含む、試料分離プロセスを実施することと、(d)1つ以上の試験試料の各々においてインタクトな空AAVカプシドの量及びインタクトな完全AAVカプシドの量を同定して、AAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む、方法を提供する。
【0009】
場合によっては、洗浄溶液は、精製水中に18%±1%v/vのエタノールを含む。
【0010】
上記又は本明細書で考察される方法の様々な実施形態のうちのいずれかでは、試料溶液は、1mM~100mMの塩化ナトリウムを含む。場合によっては、試料溶液は、60mM~100mMの塩化ナトリウムを含む。
【0011】
上記又は本明細書で考察される方法の様々な実施形態のうちのいずれかでは、試料溶液は、0.003%w/v~0.007%w/vの界面活性剤を含む。場合によっては、試料溶液は、0.005%w/v±0.001%w/vの界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188である。
【0012】
いくつかの実施形態では、システム平衡化プロセスは、(i)少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも10分間、精製水でLC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)AEXカラムを少なくとも10CVの移動相Aで洗浄することと、(iv)AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Bで洗浄することと、(v)AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Aで洗浄することと、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、(i)少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも10分間、精製水でLC機器の液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることと、(ii)AEXカラムをLC機器に再設置することと、(iii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iv)AEXカラムを少なくとも10CVの移動相Aで洗浄することと、(v)AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Bで洗浄することと、(vi)AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Aで洗浄することと、を含む。場合によっては、システム平衡化プロセスを実施することは、AEXカラムをLC機器に再設置する前に、LC機器の液体運搬構成要素を精製水で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも10分間洗浄することを更に含む。場合によっては、精製水でLC機器の液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることは、少なくとも0.5mL/分の流量で少なくとも30分間実施される。
【0014】
場合によっては、少なくとも10CVは、10~20CVを含む。場合によっては、少なくとも20CVは、20~30CVを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、試料分離プロセスは、(i)液体クロマトグラフィーシステムに3つのブランク試料、続いて、4つの参照標準試料、続いて、2つのブランク試料、続いて、1~10個の試験試料、続いて、参照標準試料、続いて、ブランク試料を導入することと、(ii)それぞれ、各試料について、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、分離勾配は、0.8mL/分の流量で36分間実行される。
【0017】
いくつかの実施形態では、分離勾配は、順に、(i)1分間の90%の移動相A及び10%の移動相Bと、(ii)20分の期間にわたって移動相Aを90%から58%まで低減し、移動相Bを10%から42%まで増加させることと、(iii)4分間の100%の移動相Cと、(iv)少なくとも10分間の90%の移動相A及び10%の移動相Bと、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、試験試料が≧5×1012ウイルスゲノム/mL(vg/mL)を含む場合、1つ以上の試験試料を希釈緩衝液中で1.5~3倍(例えば、2.3倍)希釈することを更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では(例えば、試験試料が≧5×1012vg/mLを含有する場合)、液体クロマトグラフィーシステムに導入された1つ以上の試験試料の各々は、約10マイクロリットルを含む。いくつかの実施形態では(例えば、試験試料が<5×1012vg/mLを含有する場合)、液体クロマトグラフィーシステムに導入された1つ以上の試験試料の各々は、約20マイクロリットルを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、移動相Aは、8.5±0.1のpHにおいて、精製水中に20mM±2mMのビストリスプロパン、及び2mM±0.2mMの塩化マグネシウムを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、移動相Bは、8.5±0.1のpHにおいて、精製水中に20mM±2mMのビストリスプロパン、500mM±50mMのTMAC、及び2mM±0.2mMの塩化マグネシウムを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、移動相Cは、精製水中に2M±0.2Mの塩化ナトリウムを含む。
【0023】
様々な実施形態のうちのいずれかでは、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である。場合によっては、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である。いくつかの実施形態では、AAV粒子は、血清型AAV8の粒子である。
【0024】
本方法の様々な実施形態のうちのいずれかでは、液体クロマトグラフィーシステムにおける以前の試料実行からブランク試料実行への繰り越しは、以前の試料の完全カプシドピークの0.3%以下である。場合によっては、以前の試料は、参照標準試料である。場合によっては、以前の試料は、試験試料である。いくつかの実施形態では、繰り越しは、以前の試料の完全カプシドピークの0.15%以下である。
【0025】
様々な実施形態では、上記又は本明細書で考察される実施形態の特徴又は構成要素のうちのいずれかが、組み合わせられてもよく、そのような組み合わせは、本開示の範囲内に包含される。上記又は本明細書で考察される任意の具体的な値は、範囲の上限及び下限を表す値を有する範囲を列挙するように、上記又は本明細書で考察される別の関連する値と組み合わせられてもよく、そのような範囲は、本開示の範囲内に包含される。
【0026】
他の実施形態は、後に続く発明を実施するための形態の検討から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を記載する前に、記載される特定の方法及び実験条件が変化し得るため、本発明は、そのような方法及び条件に限定されないことを理解されたい。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定的であることを意図していないことも理解されたい。
【0028】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の言及される数値に関して使用されると、値が言及される値から1%以下だけ変化し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現には、99及び101、並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」という用語は、非限定的であるように意図され、それぞれ、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」を意味すると理解される。
【0030】
本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実践又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料をこれから記載する。本明細書で言及される全ての特許、出願、及び非特許刊行物は、参照によりそれらの全体で本明細書に組み込まれる。
選択された略語
LC:液体クロマトグラフィー
CV:カラム体積
rAAV:組換えAAV粒子又はカプシド
AAV:アデノ随伴ウイルス
AEX-アニオン交換クロマトグラフィー
GOI-目的の遺伝子
【0031】
定義
「インタクトなウイルスカプシド成分」とは、インタクトであり(すなわち、それらの構成要素部分(例えば、異なるウイルスタンパク質)に変性又は別様に分解若しくは崩壊されていない)、ウイルスカプシドの構造特性(例えば、AAVカプシドの20面体立体構造)を保持する、ウイルスカプシド(例えば、空ウイルスカプシド、部分的完全ウイルスカプシド、及び/又は完全ウイルスカプシド)を指す。
【0032】
「空ウイルスカプシド」又は「空カプシド」という用語は、異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)を含まないカプシドを指す。
【0033】
「部分的完全ウイルスカプシド」又は「部分的完全カプシド」という用語は、異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子)の一部のみを含むカプシドを指す。
【0034】
「完全ウイルスカプシド」又は「完全カプシド」という用語は、完全異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子又は目的の遺伝子)を含むカプシドを指す。
【0035】
本明細書で使用される場合の「試料」という用語は、例えば、分離及び分析を含む、本発明の方法による操作を受ける、少なくとも1つのウイルスカプシド成分(すなわち、空カプシド、部分的完全カプシド、及び/又は完全カプシド)を含むウイルス粒子(例えば、AAV粒子)の混合物を指す。
【0036】
「分析」又は「分析すること」という用語は、互換的に使用され、目的のウイルス粒子又は構成要素部分(例えば、AAVカプシド)を分離、検出、単離、精製、及び/又は特性評価する様々な方法のうちのいずれかを指す。例としては、液体クロマトグラフィー(例えば、AEX)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合の「接触させること」は、溶液相又は固相中の少なくとも2つの物質を一緒にすること、例えば、クロマトグラフィー材料の固定相を、ウイルス粒子又はウイルスタンパク質を含む試料などの試料と接触させることを含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィー」という用語は、液体によって運ばれる化学混合物が、固定液相又は固体相の周囲又は上を流動する際の化学物質の微分分布の結果として成分に分離され得る、プロセスを指す。液体クロマトグラフィーの非限定的な例としては、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、アニオン交換クロマトグラフィー)が挙げられる。
【0039】
「アデノ随伴ウイルス」又は「AAV」は、非エンベロープで約4.7kbのゲノムである、一本鎖DNAを有する非病原性パルボウイルスであり、20面体立体構造を有する。AAVは、アデノウイルス調製物の汚染物質として1965年に最初に発見された。AAVは、ディペンドウイルス属及びパルボウイルス科に属し、複製のためにヘルペスウイルス又はアデノウイルスのいずれかからのヘルパー機能を必要とする。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVは、19q13.4位でヒト19番染色体に統合することによって、潜伏を設定することができる。AAVゲノムは、2つのAAV遺伝子Rep及びCapの各々に1つずつ、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)からなる。AAV DNA末端は、145bpの逆位末端反復(ITR)を有し、125個の末端塩基は、パリンドロームであり、特徴的なT字型ヘアピン構造につながる。
【0040】
本明細書で使用される場合の「ポリヌクレオチド」又は「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、本用語には、一本鎖、二本鎖又は多重鎖DNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン塩基及びピリミジン塩基、若しくは他の天然、化学あるいは生化学的修飾、非天然、若しくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含む、ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。核酸の骨格は、糖及びリン酸基(典型的にはRNA又はDNAで見出され得る)、又は修飾若しくは置換された糖若しくはリン酸基を含むことができる。
【0041】
「組換えAAV粒子」とは、少なくとも1つ、例えば、2つのAAV逆位末端反復配列(ITR)に隣接し得る、1つ以上の異種配列(例えば、AAV起源ではない核酸配列)を含む、アデノ随伴ウイルス粒子を指す。そのようなrAAV粒子は、好適なヘルパーウイルスに感染しており(又は好適なヘルパー機能を発現しており)、AAV rep及びcap遺伝子産物(すなわち、AAV Rep及びCapタンパク質)を発現している宿主細胞に存在する場合に複製及びパッケージ化され得る。
【0042】
「ウイルス粒子」とは、少なくとも1つのウイルスカプシドタンパク質及びカプシド封入ウイルスゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。
【0043】
「異種」とは、実体が比較されるか、又は導入されるか、若しくは組み込まれる、残りの実体と遺伝子型的に明確に異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子操作技法によって異なる細胞型に導入される核酸は、異種核酸である(発現されると、異種ポリペプチドをコードすることができる)。同様に、ウイルス粒子に組み込まれる細胞配列(例えば、遺伝子又はその一部)は、ウイルス粒子に関する異種ヌクレオチド配列である。
【0044】
「逆位末端反復」又は「ITR」配列は、反対の配向にあるウイルスゲノムの末端で見出される比較的短い配列である。「AAV逆位末端反復(ITR)」配列は、一本鎖AAVゲノムの両方の末端に存在する約145ヌクレオチド配列である。
【0045】
本明細書で使用される場合の「単離される」という用語は、成分が自然に生じるか、又はトランスジェニックで発現される、生物の細胞中の他の生物学的成分から実質的に分離、産生、又は精製されている生物学的成分(核酸、ペプチド、タンパク質、脂質、ウイルス粒子、又は代謝産物など)を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合の「ベクター」とは、インビトロ又はインビボのいずれかで宿主細胞内に送達される核酸を含む、組換えプラスミド又はウイルスを指す。
【0047】
「組換えウイルスベクター」とは、1つ以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む組換えポリヌクレオチドベクターを指す。
【0048】
「アニオン交換クロマトグラフィー」又はAEXという用語は、ジエチル-アミノエチル基などの正電荷を持つ基を含むイオン交換樹脂を使用して、それらの電荷に基づいて物質を分離する、プロセスを含むことを意図している。溶液中、樹脂は、正電荷を持つ対イオンで被覆される。
【0049】
液体クロマトグラフィー機器の「液体運搬構成要素」という用語は、例えば、試料及び移動相を注入点(手動又はオートサンプラーによるかどうかにかかわらず)からカラムへ、及びカラムから検出器へ運搬する、HPLC又はUPLC機器のそれらの要素を指す。
【0050】
概要
本開示は、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)の試料のウイルスカプシド成分の敏感かつ定量的な特性評価を提供する、液体クロマトグラフィー方法を提供する。AAV粒子の試料のウイルスカプシド成分などのウイルス粒子組成物のウイルスカプシド成分の特性評価は、製品の品質及び一貫性を確保して、組成物の安全性及び有効性を維持するために必要である。
【0051】
組換えウイルスベクター組成物(例えば、AAVベクター組成物)は、産生から生じる様々なレベルの空及び完全カプシド成分を含むことができる。本方法は、ウイルス粒子の試料中のウイルスカプシド成分の比を同定及び定量化するための分析技法を提供する。
【0052】
ウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法
本開示の態様は、異種の目的の遺伝子を含むAAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定するための方法を対象とする。一般に、本方法は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用するAAVカプシド成分の分離と、分離された成分のピーク面積に基づく空及び完全カプシド成分の相対存在量の決定と、を含む。
【0053】
場合によっては、本方法は、(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施して、試験試料の分析の正確性及び再現性に影響を及ぼし得る、参照標準試料又は以前の試験試料からブランク試料への繰り越しの割合(例えば、参照標準完全カプシドピークの面積カウントの0.15%未満)を低減又は排除することと、(b)液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施して、LC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から、再生プロセスからの洗浄物質を取り除くことと、(c)空及び完全AAVカプシドを含む1つ以上の試験試料に試料分離プロセスを実施して、1つ以上の試験試料中の各カプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む。
【0054】
場合によっては、本方法は、(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施することであって、システム再生プロセスが、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(iv)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含み、移動相Aが、8~9のpHにおいて精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、精製水が、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する、システム再生プロセスを実施することと、(b)LC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることを含む、液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施することと、(c)試料分離プロセスを実施することであって、試料分離プロセスが、(i)1つ以上のブランク試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(ii)1つ以上の参照標準試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(iii)AAV粒子の1つ以上の試験試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、1つ以上の試験試料が、試料溶液中にインタクトな空AAVカプシド及びインタクトな完全AAVカプシドを含み、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行して、インタクトな完全AAVカプシドからインタクトな空AAVカプシドを分離することと、を含み、移動相Bが、8~9のpHにおいて、精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン、250mM~1Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、移動相Cが、精製水中に1.5M~2.5Mの塩化ナトリウムを含む、試料分離プロセスを実施することと、(d)1つ以上の試験試料の各々においてインタクトな空AAVカプシドの量及びインタクトな完全AAVカプシドの量を同定して、AAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む。
【0055】
場合によっては、本方法は、(a)液体クロマトグラフィー(LC)機器及びアニオン交換カラム(AEXカラム)を備える液体クロマトグラフィーシステム上でシステム再生プロセスを実施することであって、システム再生プロセスが、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)任意選択的に、AEXカラムの配向を逆転させて、AEXカラム内の流動を逆転させることと、(iv)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(v)LC機器からAEXカラムを除去することと、(vi)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含み、移動相Aが、8~9のpHにおいて精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、精製水が、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する、システム再生プロセスを実施することと、(b)(i)AEXカラムをLC機器に再設置することと、(ii)LC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることと、を含む、液体クロマトグラフィーシステム上でシステム平衡化プロセスを実施することと、(c)試料分離プロセスを実施することであって、試料分離プロセスが、(i)1つ以上のブランク試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(ii)1つ以上の参照標準試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行することと、(iii)AAV粒子の1つ以上の試験試料を液体クロマトグラフィーシステムに導入し、1つ以上の試験試料が、試料溶液中にインタクトな空AAVカプシド及びインタクトな完全AAVカプシドを含み、液体クロマトグラフィーシステムを通して移動相A、移動相B、及び移動相Cの分離勾配を実行して、インタクトな完全AAVカプシドからインタクトな空AAVカプシドを分離することと、を含み、移動相Bが、8~9のpHにおいて、精製水中に15mM~25mMのビストリスプロパン、250mM~1Mの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び1mM~3mMの塩化マグネシウムを含み、移動相Cが、精製水中に1.5M~2.5Mの塩化ナトリウムを含む、試料分離プロセスを実施することと、(d)1つ以上の試験試料の各々においてインタクトな空AAVカプシドの量及びインタクトな完全AAVカプシドの量を同定して、AAV粒子の試料中のインタクトなウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することと、を含む。
【0056】
方法の様々な実施形態(以下で考察される界面活性剤濃度を有するものを含む)では、試料溶液は、2mM~100mMの塩化ナトリウムを含有し得る。場合によっては、試料溶液は、60mM~100mMの塩化ナトリウムを含有する。
【0057】
方法の様々な実施形態(上記で考察される塩化ナトリウム濃度を有するものを含む)では、試料溶液は、0.003%w/v~0.007%w/vの界面活性剤を含有し得る。場合によっては、試料溶液は、0.005%w/v±0.001%w/vの界面活性剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)である。
【0058】
方法の様々な実施形態では、液体クロマトグラフィーシステムは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム又は超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)システムであり得る。HPLC及びUPLCとは、クロマトグラフィー充填材料又はマトリックス(固定相)を有するカラムを通して高圧で溶媒(移動相として知られる)中の試料混合物又は分析物をポンプ注入する、カラムクロマトグラフィーの形態を指す。試料は、移動キャリアガス流、例えば、ヘリウム又は窒素によって運搬される。固定相カラムは、移動相混合物又は分析物と相互作用するクロマトグラフィー媒体又は樹脂から構成される。試料の手動注入が依然として可能であるが、典型的なHPLC/UPLCシステムは、完全に自動化され、コンピュータによって制御される。注入器又はオートサンプラーが、検出器に更に接続されるカラムハードウェアを収容するための装置に接続されて採用され得る。HPLC及びUPLCのタイプは、当該技術分野で周知である。UPLCは、典型的には、HPLCよりも高い圧力で動作し、HPLCに対して縮小された粒径を有するカラムを採用し得る。HPLC及びUPLC機器は、当該技術分野で周知であり、当業者によく知られているであろう。
【0059】
本方法の様々な実施形態では、1つ又は複数の移動相は、例えば、ビストリスプロパン(BTP)などの緩衝組成物を含む。移動相緩衝液濃度は、変化し得る。例えば、約1mM~約100mM(例えば、1~50mM)の濃度が使用され得る。様々な実施形態では、緩衝液濃度は、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、31mM、32mM、33mM、34mM、35mM、36mM、37mM、38mM、39mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、又は100mMであり得る。場合によっては、緩衝液濃度は、(例えば、BTPの)10mM~30mM、又は15mM~25mMであり得る。場合によっては、緩衝液濃度は、(例えば、BTPの)20mM±2mMであり得る。場合によっては、緩衝液濃度は、(例えば、BTPの)約20mMであり得る。
【0060】
本方法の様々な実施形態では、1つ又は複数の移動相は、1つ以上の塩、例えば、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、及び/又は塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を含有し得る。いくつかの実施形態では、塩は、約0.1mM~約5M、又は約0.2mM、約0.3mM、約0.4mM、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1mM、約1.25mM、約1.5mM、約1.75mM、約2mM、約2.25mM、約2.5mM、約2.75mM、約3mM、約3.25mM、約3.5mM、約3.75mM、約4mM、約4.25mM、約4.5mM、約4.75mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約50mM、約100mM、約150mM、約200mM、約250mM、約300mM、約350mM、約400mM、約450mM、約500mM、約550mM、約600mM、約650mM、約700mM、約750mM、約800mM、約850mM、約900mM、約950mM、約1.0M、約1.5M、約2M、約3M、約3.5M、約4M、約4.5M、又は約5Mの濃度であり得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相A及び移動相B)は、約1mM~約3mMのMgClを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相A及び移動相B)は、約1.5mM~約2.5mMのMgClを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相A及び移動相B)は、約2mMのMgClを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相C)は、約1M~約3MのNaClを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相C)は、約1.5M~約2.5MのNaClを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相C)は、約2MのNaClを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相B)は、約100mM~約900mMのTMACを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相B)は、約250mM~約750mMのTMACを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相B)は、約400mM~約600mMのTMACを含有し得る。場合によっては、移動相(例えば、移動相B)は、約500mMのTMACを含有し得る。
【0061】
方法の様々な実施形態では、1つ又は複数の移動相は、約7.5~約9.5の範囲のpHにおいて精製水中に緩衝液及び/又は塩を含有する。1つ又は複数の移動相のpHは、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、又は9.5であり得る。場合によっては、pHは、約8.0~約9.0である。場合によっては、pHは、約8.3~約8.7である。場合によっては、pHは、約8.5である。精製水は、ミリQ水であり得る。ミリQ水は、当業者によく知られているであろうミリQ水精製システム(Sigma-Aldrich)から産生される精製水である。ミリQ水は、25℃における約18.2MΩ.cmの抵抗率及び5ppb未満の全有機体炭素を有する。
【0062】
本明細書で考察されるシステム再生プロセスは、精製水中に約18%v/vのエタノールを含む洗浄溶液を含む。様々な実施形態では、エタノール濃度は、約10%v/v~約26%v/vであり得る。場合によっては、エタノール濃度は、約15%v/v~約21%v/vであり得る。いくつかの実施形態では、洗浄溶液のエタノール濃度は、精製水(例えば、ミリQ水)中で約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、又は約26%v/vである。
【0063】
一実施形態では、本明細書で考察されるシステム再生プロセスは、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(iv)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含む。別の実施形態では、本明細書で考察されるシステム再生プロセスは、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)任意選択的に、AEXカラムの配向を逆転させて、AEXカラム内の流動を逆転させることと、(iv)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(v)LC機器からAEXカラムを除去することと、(vi)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間洗浄することと、を含む。場合によっては、少なくとも10CVへの言及は、10CV~20CVに対応する。場合によっては、少なくとも10CVへの言及は、10CV、11CV、12CV、13CV、14CV、15CV、16CV、17CV、18CV、19CV、20CV、21CV、22CV、23CV、24CV、25CV、30CV、35CV、又は40CVに対応する。同様に、少なくとも20CVへの言及は、いくつかの実施形態では、20CV~30CVに対応し得る。場合によっては、少なくとも20CVへの言及は、20CV、21CV、22CV、23CV、24CV、25CV、26CV、27CV、28CV、29CV、30CV、31CV、32CV、33CV、34CV、35CV、36CV、37CV、38CV、39CV、又は40CVに対応する。同様に、システム再生プロセスに関連する、少なくとも30分間の少なくとも0.5mL/分の流量への言及は、いくつかの実施形態では、0.5mL/分~1mL/分、又は0.5mL/分~0.8mL/分の流量に対応し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも30分間の少なくとも0.5mL/分の流量への言及は、30分、31分、32分、33分、34分、35分、36分、37分、38分、39分、40分、45分、50分、55分、又は60分間の持続時間にわたる、0.5mL/分、0.6mL/分、0.7mL/分、0.8mL/分、0.9mL/分、又は1mL/分の流量を指す。同様に、少なくとも10分の持続時間への言及は、例えば、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、又は29分を指す。
【0064】
様々な実施形態では、システム再生プロセスを実施することは、以前の試料(例えば、参照標準試料又は以前の試験試料)からブランク試料へのカプシド成分の繰り越しの低減又は除去をもたらす。場合によっては、ブランク試料は、参照標準完全カプシドピーク又は以前の試験試料の完全カプシドピークの面積カウントの0.3%未満を含む。場合によっては、ブランク試料は、参照標準完全カプシドピーク又は以前の試験試料の完全カプシドピークの面積カウントの0.25%未満を含む。場合によっては、ブランク試料は、参照標準完全カプシドピーク又は以前の試験試料の完全カプシドピークの面積カウントの0.2%未満を含む。場合によっては、ブランク試料は、参照標準完全カプシドピーク又は以前の試験試料の完全カプシドピークの面積カウントの0.15%未満を含む。
【0065】
本明細書で考察されるシステム平衡化プロセスは、概して、LC機器及びAEXカラムの液体運搬構成要素から洗浄材料(例えば、エタノール含有洗浄溶液)を除去し、かつ試料分離のためにカラムを準備するように設計されている。場合によっては、システム平衡化プロセスは、(i)少なくとも0.5mL/分の流量において少なくとも30分間、精製水でLC機器の液体運搬構成要素から洗浄溶液をパージすることと、(ii)(以前に除去された場合)AEXカラムをLC機器に再設置することと、(iii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iv)AEXカラムを少なくとも10CVの移動相Aで洗浄することと、(v)AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Bで洗浄することと、(vi)AEXカラムを少なくとも20CVの移動相Aで洗浄することと、を含む。場合によっては、少なくとも10CVへの言及は、10CV~20CVに対応する。場合によっては、少なくとも10CVへの言及は、10CV、11CV、12CV、13CV、14CV、15CV、16CV、17CV、18CV、19CV、20CV、21CV、22CV、23CV、24CV、25CV、30CV、35CV、又は40CVに対応する。同様に、少なくとも20CVへの言及は、いくつかの実施形態では、20CV~30CVに対応し得る。場合によっては、少なくとも20CVへの言及は、20CV、21CV、22CV、23CV、24CV、25CV、26CV、27CV、28CV、29CV、30CV、31CV、32CV、33CV、34CV、35CV、36CV、37CV、38CV、39CV、又は40CVに対応する。同様に、システム平衡化プロセスに関連する、少なくとも30分間の少なくとも0.5mL/分の流量への言及は、いくつかの実施形態では、0.5mL/分~1mL/分、又は0.5mL/分~0.8mL/分の流量に対応し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも30分間の少なくとも0.5mL/分の流量への言及は、30分、31分、32分、33分、34分、35分、36分、37分、38分、39分、40分、45分、50分、55分、又は60分間の持続時間にわたる、0.5mL/分、0.6mL/分、0.7mL/分、0.8mL/分、0.9mL/分、又は1mL/分の流量を指す。同様に、少なくとも10分の持続時間への言及は、例えば、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、又は29分を指す。
【0066】
いくつかの実施形態では、分離プロセスは、勾配として実行される1つ又は複数の移動相を含む。移動相の勾配は、例えば、2つ、3つ、又はそれ以上の移動相が使用される場合に使用することができる。勾配では、クロマトグラフィー実行にわたって、第1の移動相の濃度又は割合が、減少し得る一方で、第2の移動相の濃度又は割合は、増加する。場合によっては、クロマトグラフィー実行の過程中に、第1の移動相及び第2の移動相の両方の濃度を減少させることができる一方で、第3の移動相の濃度又は割合は、(例えば、一時的に)増加する。例えば、第1の移動相の割合は、クロマトグラフィー実行の一部の間に、又はクロマトグラフィー実行にわたって、約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、若しくは約40%~約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%から減少し得る。別の実施例として、第2の移動相の割合は、同じ実行の一部の間に、又は同じ実行にわたって、約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、若しくは約40%~約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%から増加し得る。別の実施例として、第1の移動相及び第2の移動相の割合は、クロマトグラフィー実行の一部の間に、又はクロマトグラフィー実行にわたって、約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%~約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%から減少し得、第3の移動相の割合は、同じ実行の一部の間に、又は同じ実行にわたって、約0%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、又は約40%~約100%、約99%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約50%、約45%、又は約40%から増加し得る。ある特定の態様では、クロマトグラフィー実行における移動相Aの割合は、経時的に減少し、次いで、経時的に増加する。ある特定の態様では、クロマトグラフィー実行における移動相Bの割合は、経時的に増加し、次いで、減少し、次いで、再び増加する。ある特定の態様では、移動相Cの割合は、経時的にクロマトグラフィー実行において増加し、次いで、減少する。任意選択的に、第1及び第2の移動相の濃度又は割合は、クロマトグラフィー実行の終了時にその開始値に戻ることができる。割合は、線形勾配として、又は非線形(例えば、段階的)様式で徐々に変化し得る。例えば、勾配は、多相性、例えば、二相性、三相性などであり得る。
【0067】
場合によっては、分離勾配は、順に、(i)ある期間(例えば、1~5分)にわたる85%~95%の移動相A及び5%~15%の移動相Bと、(ii)ある期間(例えば、10~30分)にわたって移動相Aを85~95%から5070%まで低減し、移動相Bを5~15%から30~50%まで増加させることと、(iii)ある期間(例えば、1~15分)にわたる100%の移動相Cと、(iv)ある期間(例えば、5~15分)にわたる85%~95%の移動相A及び5%~15%の移動相Bと、を含む。一実施形態では、分離勾配は、順に、(i)1分間の90%の移動相A及び10%の移動相Bと、(ii)20分の期間にわたって移動相Aを90%から58%まで低減し、移動相Bを10%から42%まで増加させることと、(iii)5分間の100%の移動相Cと、(iv)10分間の90%の移動相A及び10%の移動相Bと、を含む。
【0068】
いくつかの例示的な実施形態では、1つ又は複数の移動相は、約0.05mL/分~約1mL/分、又は約0.05mL/分~約0.08mL/分の液体クロマトグラフィーカラムを通した流量を有することができる。場合によっては、流量は、約0.05mL/分、約0.06mL/分、約0.07mL/分、約0.08mL/分、約0.09mL/分、約0.1mL/分、約0.15mL/分、約0.2mL/分、約0.25mL/分、約0.3mL/分、約0.35mL/分、約0.4mL/分、約0.45mL/分、約0.5mL/分、約0.55mL/分、約0.6mL/分、約0.65mL/分、約0.7mL/分、約0.75mL/分、約0.8mL/分、約0.85mL/分、約0.9mL/分、約0.95mL/分、又は約1mL/分である。場合によっては、流量は、約0.8mL/分である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の移動相の実行時間は、勾配として実行されるかどうかにかかわらず、約1分~60分である。他の実施形態では、1つ又は複数の移動相の実行時間は、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約31分、約32分、約33分、約34分、約35分、約36分、約37分、約38分、約39分、約40分、約41分、約42分、約43分、約44分、又は約45分である。
【0069】
様々な実施形態では、液体クロマトグラフィーシステムへの試料注入又は導入は、試料当たり約20μLに制限される。場合によっては、注入体積は、約5μL~約20μLである。場合によっては、注入体積は、約5μL、約6μL、約7μL、約8μL、約9μL、約10μL、約11μL、約12μL、約13μL、約14μL、約15μL、約16μL、約17μL、約18μL、約19μL、又は約20μLである。
【0070】
任意の特定の試験試料中のウイルス価に応じて、試料は、試料希釈緩衝液中で希釈され得る。場合によっては、試料希釈緩衝液は、pH7.3において、精製水中に10mMのリン酸ナトリウム、及び0.005%w/vのポロキサマー188を含む。例えば、ウイルス価が5E+12vg/mL以上である場合において、試験試料は、液体クロマトグラフィーシステムへの注入又は導入の前に、試料希釈緩衝液で1.5~3倍に希釈され得る。場合によっては、試験試料は、試料希釈緩衝液で1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、又は3倍に希釈される。様々な実施形態では、試験試料は(ウイルス価に基づいて希釈されるかどうかにかかわらず)、約0.001%~約0.01%w/vの界面活性剤を含む試料溶液中に含有され得る。場合によっては、試料溶液は、0.004%~0.006%w/vの界面活性剤を含む。場合によっては、試料溶液は、約0.005%w/vの界面活性剤を含む。様々な実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188などのポロキサマーであり得る。
【0071】
様々な実施形態では、液体クロマトグラフィーシステムに注入又は導入された(例えば、試料溶液中の)試験試料は、約2mM~約100mMの塩化ナトリウムを含む。場合によっては、試験試料は、約60mM~約100mMを含む。様々な実施形態では、試験試料は、約1.8mM、約1.9mM、約2mM、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、又は約100mMの塩化ナトリウムを含む。
【0072】
本明細書で考察される方法の様々な実施形態では、液体クロマトグラフィーシステムは、蛍光検出と共に使用され得る。いくつかの実施形態では、励起及び発光のための波長は、それぞれ、280nm±20nm及び350nm±20nmに設定される。いくつかの実施形態では、検出器の応答時間は、0.5秒に設定される。いくつかの実施形態では、応答時間は、クロマトグラフィーピークにわたって少なくとも20個のデータ点を生成するように設定される。いくつかの実施形態では、応答時間は、約0.1~1.0秒に設定される。
【0073】
ウイルス粒子
ある特定の態様では、ウイルス粒子は、AAV粒子であり、開示される方法を使用して、AAV粒子の試料中のウイルスカプシド成分の相対存在量を決定することができる。AAV粒子は、組換えAAV(rAAV)粒子であり得る。rAAV粒子は、異種導入遺伝子又は異種核酸分子をコードするAAVベクターを含む。
【0074】
ある特定の態様では、AAV粒子は、AAV1カプシド、AAV2カプシド、AAV3カプシド、AAV4カプシド、AAV5カプシド、AAV6カプシド、AAV7カプシド、AAV8カプシド、AAVrh8カプシド、AAV9カプシド、AAV10カプシド、AAV11カプシド、AAV12カプシド、又はそのバリアントを含む。ある特定の態様では、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-DJ、AAV-DJ/8、AAV-Rh10、AAV-retro、AAV-PHP.B、AAV8-PHP.eB、又はAAV-PHP.Sの粒子である。いくつかの実施形態では、AAV粒子は、血清型AAV1、AAV5、又はAAV8の粒子である。いくつかの実施形態では、AAV粒子は、血清型AAV8の粒子である。
【0075】
いくつかの態様では、ウイルス粒子(例えば、AAV粒子)は、異種核酸分子(例えば、治療用遺伝子又は目的の遺伝子)を含む。いくつかの態様では、異種核酸分子は、プロモーターに動作可能に連結される。例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター及びCK6プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータ-アクチン/ウサギベータ-グロビンプロモーター、並びに伸長因子1-アルファプロモーター(EF1-アルファ)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、プロモーターは、ヒトベータ-グルクロニダーゼプロモーター、又はニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されたサイトメガロウイルスエンハンサーを含む。プロモーターは、構成的、誘導性、又は抑制性プロモーターであり得る。いくつかの態様では、本発明は、CBAプロモーターに動作可能に連結された本開示の異種導入遺伝子をコードする核酸を含む、組換えベクターを提供する。場合によっては、導入遺伝子のための天然プロモーター又はその断片が使用される。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が天然発現を模倣するべきであることが所望されるときに使用され得る。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が、時間的若しくは発生的に、又は組織特異的な様式で、又は具体的な転写刺激に応答して調節されなければならないときに使用され得る。更なる態様では、エンハンサー要素、ポリアデニル化部位、又はコザックコンセンサス配列などの他の天然発現制御要素もまた、天然発現を模倣するために使用され得る。
【0076】
様々な態様では、ウイルス粒子は、哺乳類細胞AAV産生システム(例えば、293T又はHEK293細胞に基づくもの)及び昆虫細胞AAV産生システム(例えば、sf9昆虫細胞に基づくもの、及び/又はバキュロウイルスヘルパーベクターを使用するもの)などの任意の公知の産生システムによって取得され得る。ウイルス粒子は、不連続塩化セシウム密度勾配などの周知の技法又はカラムベースの下流プロセスなどの他のプロセスを使用することによって、細胞培養物から精製され得る。
【実施例
【0077】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように作製し使用するかという完全な開示及び説明を当業者に提供するように記載され、発明者がその発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、いくらかの実験誤差及び偏差を考慮に入れるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部、分子量は平均分子量、温度は摂氏、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0078】
実施例1:空及び完全AAVカプシドの相対存在量の分離及び同定
空AAV8カプシド及び完全AAV8カプシド(目的の遺伝子を含む)を含む試料を、アニオン交換(AEX)クロマトグラフィーによって分離し、カプシド成分の相対存在量を決定した。蛍光検出器を装備したACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters Corporation)上のBIA Separations,CIMac AAV Empty/Full 0.1mL分離カラム(1.3μm細孔径、5.2mm直径×4.95mm長さ)(カタログ番号110.8503-1.3)を使用して、AEX分離を実施した。移動相A(MPA)は、pH8.5においてミリQ水中に20mMのビストリスプロパン及び2mMのMgClを含有し、移動相B(MPB)は、pH8.5においてミリQ水中に20mMのビストリスプロパン、500mMの塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)、及び2mMのMgClを含有し、移動相C(MPC)は、ミリQ水中に2MのNaClを含有した。AEXの流量は、0.8mL/分であり、勾配は、以下の表1に示される通りであった。
【表1】
【0079】
各試料を、pH7.3においてミリQ水中に10mMのリン酸ナトリウム及び0.005%w/vのポロキサマー188を含有する試料希釈緩衝液で80mMのNaClまで希釈し、10マイクロリットルの体積をUPLCシステムに注入した。それぞれ、280nm及び350nmの励起(Ex)波長及び発光(Em)波長とともに蛍光検出器を使用して、データを記録した。
【0080】
分離プロトコルは、以下の表2に示されるように、ある範囲のウイルスゲノム負荷にわたって直線性及び精度を示した。
【表2】
【0081】
この方法(以下の表3に示す個々の片国)を使用して様々なパラメータを評価し、pH8.5におけるTMAC、50mMの初期TMAC濃度、及び1分の初期保持、1分当たり8mM TMACの勾配傾斜、2mMのMgCl濃度を含有する移動相で最良の分離が達成されることを確認した。
【表3】
【0082】
20マイクロリットル(例えば、25μL及び30μL)を超える注入体積が、空及び完全カプシド成分の不良な分離をもたらした、ピーク形状の劣化をもたらした(データは示されていない)。
【0083】
実施例2:試料溶液中の塩化ナトリウム濃度の評価
実施例1に詳述される分離プロトコルを使用するが、試験試料溶液中の塩化ナトリウムの濃度を変化させて、方法の性能を一連の試験試料で評価した。試験試料溶液中に180、140、100、90、80、70、60、30、10、及び1.8mMの塩化ナトリウムを含有するように、1.05E+14vg/mLのAAV8-GOI試料を希釈した。1.8mM~100mMの範囲の塩化ナトリウム濃度を有する試料は、方法の性能に影響を及ぼさなかった(面積/vgは、これらの試料にわたって同様である)が、100mM超(140mM及び180mM)の塩化ナトリウム濃度を含む試料は、試料カプシドの分離に悪影響を及ぼした(空カプシド対完全カプシドの分離の改善が、140mM及び180mMに対して100mMのNaClで観察された)。結果が、以下の表4に示される。
【表4】
【0084】
NaClの非存在は、分離に悪影響を及ぼした(データは示されていない)。
【0085】
実施例3:試料溶液中の界面活性剤濃度の評価
界面活性剤の存在が試料溶液(すなわち、LCシステムに注入された試験試料組成物)中で望ましいかどうかを評価するために、ポロキサマー188あり(0.005%w/v)及びなし(0.0001%w/v)の、pH7.3における10mMのリン酸塩、180mMの塩化ナトリウムで、1.05E+14vg/mLのAAV8-GOIを50倍希釈した。2つの試料は、希釈時に2.1E+12vg/mLを含有し、37℃で1日間インキュベートし、AEXクロマトグラフィーのために80mMの塩化ナトリウムを含有するように希釈した。
【0086】
ポロキサマー188の濃度を0.005%w/vから0.0001%w/vまで減少させることにより、AEXクロマトグラフィーを介して回収されたAAV材料の顕著な損失(>20%損失)をもたらし、試料溶液中の界面活性剤の所望性が確認された。
【0087】
実施例4:ブランク試料への繰り越し%についてのシステム再生プロセスの評価
実施例1に詳述される分離プロトコルを使用して、システム再生の効果を評価した。参照標準を試料希釈緩衝液中で2.3倍希釈し、UPLCシステムに注入し、続いて、ブランク注入を行った。ブランク面積カウントは、参照標準完全カプシドピークの面積カウントの0.35%であった。このプロセスが、第2の実験で繰り返され、ブランク面積カウントは、参照標準完全カプシドピークの面積数の1.33%であった。
【0088】
ブランク注入における顕著なゴーストピークの識別後、(i)AEXカラムを少なくとも10カラム体積(CV)の移動相Aで洗浄することと、(ii)AEXカラムを少なくとも10CVの精製水で洗浄することと、(iii)AEXカラムの配向を逆転させて、AEXカラム内の流動を逆転させることと、(iv)AEXカラムを、精製水中に15%~21%v/vのエタノールを含む少なくとも20CVの洗浄溶液で洗浄することと、(v)LC機器からAEXカラムを除去することと、(vi)LC機器の液体運搬構成要素を洗浄溶液で少なくとも0.5mL/分の流量において10分間洗浄することと、を含む、システム再生プロセスを実施した。再生後、洗浄溶液をLC機器及びAEXカラムからパージし、カラムを、ミリQ水、移動相A、及び移動相Bで平衡化した。以前のように、参照標準を試料希釈緩衝液中で2.3倍希釈し、UPLCシステムに注入し、続いて、ブランク注入を行った。この第2の参照標準注入後のブランク面積カントは、参照標準完全カプシドピークの面積カウントの0.11%であった。このプロセスが、第2の実験で繰り返され、ブランク面積カウントは、参照標準完全カプシドピークの面積数の0.08%であった。このデータから証明されるように、システム再生プロセスは、ブランク注入への繰り越し%著しく低減し、結果の再現性は、低変動性、及びシステム再生プロセスを使用して繰り越しを制御する能力を示す。
【0089】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際には、本明細書に記載されるものに加えて本発明の様々な修正が、前述の記載から当業者に明らかとなるであろう。そのような変更は、添付される特許請求の範囲の内にあることを意図している。
【国際調査報告】