(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】脳透過性多機能システム及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20240705BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240705BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240705BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240705BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20240705BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K47/60
A61K47/66
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K33/243
A61K31/4188
A61K45/06
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501518
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 IL2022050753
(87)【国際公開番号】W WO2023286060
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522361939
【氏名又は名称】ナノキャリー セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ポポフツァー,ラチェラ
(72)【発明者】
【氏名】ベッツァー,オシュラ
(72)【発明者】
【氏名】サジヴ,ユヴァル
(72)【発明者】
【氏名】マンディル-レヴィン,リヴァイタル
(72)【発明者】
【氏名】アンテビ,アダム エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB21
4C076BB25
4C076CC27
4C076DD21A
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4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
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4C086MA05
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、別個の活性物質の脳への同期送達のためのBBB透過性多機能システムを提供する。多機能システムは、第1のポリマーリンカーを介して第1の活性剤に、第2のポリマーリンカーを介して第2の活性剤に、及び第3のポリマーリンカーを介して脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートしている無機コア粒子に基づく。多機能システムの調製プロセス、多機能システムを含む医薬組成物並びに処置方法及び/又は診断方法におけるその使用が、さらに提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも(i)第1の直鎖状ポリマーリンカー;(ii)第2の直鎖状ポリマーリンカー;及び(iii)第3の直鎖状ポリマーリンカーに結合している無機粒子;
(b)前記第1の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている第1の生物活性分子;
(c)前記第2の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている第2の生物活性分子;並びに
(d)前記第3の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている脳内在化トランスポーター部分
を含む多機能粒子であって、
前記第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さが、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さと実質的に異なっており、
前記第3のポリマーリンカーの分子量が、前記第1及び前記第2のポリマーリンカーの分子量と少なくとも約1000Da異なっており、
前記第1の生物活性分子が前記第2の生物活性分子と異なる、多機能粒子。
【請求項2】
前記第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さが、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さよりも実質的に長い、請求項1に記載の多機能粒子。
【請求項3】
前記第1、前記第2及び前記第3のポリマーリンカーのうちの少なくとも1つが、生理的条件下で切断不能である、請求項1又は請求項2に記載の多機能粒子。
【請求項4】
前記第1、前記第2及び前記第3のポリマーリンカーが、生理的条件下で切断不能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項5】
前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの分子量が、1,000~10,000Daの範囲内であり、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーの分子量が、2,000~11,000Daの範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項6】
前記第3の直鎖状ポリマーリンカーの分子量が、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの分子量よりも高い、請求項1~5のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項7】
前記第3の直鎖状ポリマーリンカーが、反復モノマー単位で構成され、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方が、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーと同じ反復モノマー単位で構成され、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーが、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方とは異なる数の反復モノマー単位を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項8】
前記第1のポリマーリンカーと前記第2のポリマーリンカーが同一である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項9】
前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーが、スルフィド結合を介して無機粒子に結合し、前記第1及び前記第2の生物活性分子が、アミド結合を介してそれぞれの直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている、請求項1~8のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項10】
前記第1及び前記第2の生物活性分子が、ポリペプチド、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項11】
前記第1及び前記第2の生物活性分子の両方が抗体又はその抗体断片である、請求項10に記載の多機能粒子。
【請求項12】
前記第1の生物活性分子が抗体又はその断片であり、前記第2の生物活性分子が低分子である、請求項10に記載の多機能粒子。
【請求項13】
前記第3の直鎖状ポリマーリンカーが、前記無機粒子に結合している全ポリマーリンカーの約10モル%~40モル%を構成している、請求項1~12のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項14】
前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの各々が、独立して、前記無機粒子に結合している全ポリマーリンカーの約5モル%~40モル%を構成している、請求項1~13のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項15】
前記第1、前記第2及び前記第3の直鎖状ポリマーリンカーが、独立して、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項16】
前記第1、前記第2及び前記第3の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも1つが、ポリエーテルであり、前記ポリエーテルがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項15に記載の多機能粒子。
【請求項17】
ポリエチレングリコール(PEG)が、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)及びチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH
2)から選択され、前記PEGのチオール化末端が無機粒子に結合しており、酸又はアミン末端が、脳内在化トランスポーター部分又はそれぞれの前記生物活性分子にコンジュゲートしている、請求項16に記載の多機能粒子。
【請求項18】
前記無機粒子に結合している第4のポリマーリンカーをさらに含み、前記第4のポリマーリンカーが、単官能性キャッピング部分である、請求項1~17のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項19】
前記第4のポリマーリンカーが、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項18に記載の多機能粒子。
【請求項20】
前記第4のポリマーリンカーがポリエーテルを含み、前記ポリエーテルが、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)である、請求項19に記載の多機能粒子。
【請求項21】
前記無機粒子が、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、セラミックナノ粒子、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるナノ粒子である、請求項1~20のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項22】
前記ナノ粒子が、金、銀、白金、鉄、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む、請求項21に記載の多機能粒子。
【請求項23】
前記ナノ粒子が、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化マンガン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属酸化物である、請求項21に記載の多機能粒子。
【請求項24】
前記無機ナノ粒子が、金ナノ粒子、酸化鉄(III)ナノ粒子、及び酸化鉄(II,III)ナノ粒子からなる群から選択される、請求項21~23のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項25】
前記脳内在化トランスポーター部分が、インスリン、インスリン受容体に特異的な抗体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体に特異的な抗体、トランスフェリン受容体に特異的に結合するポリペプチド、インスリン受容体に特異的に結合するポリペプチド、インスリン様成長因子1、インスリン様成長因子受容体1に特異的な抗体、インスリン様成長因子受容体1に特異的に結合するポリペプチド、アポリポタンパク質A1、B、又はE、ラクトフェリン、アンジオペップ-2、低密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質受容体又はリポタンパク質受容体関連タンパク質に特異的な抗体、低密度リポタンパク質受容体又はリポタンパク質受容体関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチド、ジフテリア毒素受容体に特異的な抗体、ジフテリア毒素受容体に特異的に結合するポリペプチド、BBB透過性細胞透過ペプチド(CPP)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項26】
前記脳内在化トランスポーター部分が、インスリン又はその類似体、誘導体、コンジュゲート若しくは断片である、請求項25に記載の多機能粒子。
【請求項27】
前記無機粒子が、直径10~160nmのナノ粒子である、請求項1~26のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項28】
第3の生物活性分子をさらに含み、前記第3の生物活性分子が、前記無機粒子に結合している直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている、請求項1~27のいずれか一項に記載の多機能粒子。
【請求項29】
前記第3の生物活性分子が化学療法剤分子であり、前記直鎖状ポリマーリンカーが生理的条件下で切断可能である、請求項28に記載の多機能粒子。
【請求項30】
(a)無機粒子の表面を前記第1の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第1の直鎖状ポリマーリンカーを前記第1の生物活性分子にコンジュゲートする工程;
(b)前記無機粒子の表面を前記第2の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第2の直鎖状ポリマーリンカーを前記第2の生物活性分子にコンジュゲートする工程;及び
(c)前記無機粒子の表面を前記第3の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーを前記脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートする工程
の連続工程を含み、
工程(a)、(b)及び(c)を任意の順序で行うことができる、請求項1~29のいずれか一項に記載の多機能粒子の調製プロセス。
【請求項31】
多機能粒子を調製するためのプロセスであって、
(a)無機粒子の表面を第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーを第1の生物活性分子及び第2の生物活性分子にコンジュゲートする工程であって、前記第1の直鎖状ポリマーリンカー及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーが同一であり、前記第1の生物活性分子が前記第2の生物活性分子と異なる工程;並びに
(b)前記無機粒子の表面を第3の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーを脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートする工程、
の連続工程を含み、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さが、前記第1及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さと実質的に異なり、前記第3のポリマーリンカーの分子量が、前記第1及び前記第2のポリマーリンカーの分子量と少なくとも約1000Da異なり、工程(a)及び工程(b)を任意の順序で行うことができる、プロセス。
【請求項32】
前記第1のポリマーリンカーが、前記第1の生物活性分子に結合するように構成された第1の官能末端基を有し、前記第2のポリマーリンカーが、前記第2の生物活性分子に結合するように構成された第2の官能末端基を有し、前記第3のポリマーリンカーが、前記脳内在化トランスポーター部分に結合するように構成された第3の官能末端基を有し、前記第1、前記第2及び前記第3の官能末端基の少なくとも2つが同一である、請求項30又は請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記無機粒子の表面を第4のポリマーリンカーで部分的にコーティングすることをさらに含み、前記第4のポリマーリンカーが単官能性キャッピング部分である、請求項30~32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
前記第1の直鎖状ポリマーリンカー及び前記第2の直鎖状ポリマーリンカーの各々が、前記無機粒子の表面の5%~40%を覆うのに適する量で添加され、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーが、前記無機粒子の表面の5%~40%を覆うのに適する量で添加される、請求項30~33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
請求項1~29のいずれか一項に記載の多機能粒子及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項36】
静脈内(IV)投与、鼻腔内(IN)投与、腹腔内(IP)投与及び髄腔内(IT)投与の少なくとも1つのために製剤化される、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害の防止、処置、及び/又はモニタリングにおける使用のための、請求項35又は36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記脳関連疾患又は障害が、原発性脳がん又は続発性がんである、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
対象の脳への少なくとも2種類の生物活性分子の同時送達のための方法であって、請求項35又は36のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項40】
投与時に、少なくとも2種類の生物活性分子が脳内で同期された分布を示す、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害を防止、処置及び/又はモニターする方法であって、請求項35又は請求項36に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項42】
対象の脳をイメージングし、それにより、前記対象の脳における前記多機能粒子の蓄積を評価する工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記イメージングが、コンピュータ断層撮影イメージング(CT)、X線イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、超音波(US)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイメージングシステムを用いて行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記脳関連疾患又は障害が、原発性脳がん又は続発性脳がんである、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記多機能粒子が放射線増感剤であり、前記方法が放射線療法をさらに含む、請求項42~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記続発性脳がんが、乳がん、肺がん、黒色腫、腎がん及び結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項44~45のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、処置応用及び診断応用のための脳標的化送達システムの分野にある。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
特に、神経変性障害及び疾患並びに脳腫瘍を含む脳関連疾患の処置における重大な問題は、血液脳関門(BBB)を通って、重要な治療薬及び診断薬を脳に送達することの難しさである。BBBは、循環血液と中枢神経系(CNS)を隔てる選択性の高い半透性境界である。BBBは、主に脳の保護バリアとして機能し、ホルモン、神経伝達物質又は神経毒を含む様々な要素が血流から中枢神経系に移行するのを防ぐ。BBB上に存在する特異的で選択的なトランスポーターは、グルコース、遊離脂肪酸、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、及び電解質をCNSに供給するが、ほぼ全ての高分子量(MW)薬物及び低分子量薬物の98%以上がBBBを通過することができない。
【0003】
BBBに関連する制限を克服するために、様々な戦略が検討されている。多くの戦略の中で、脳毛細血管内皮で発現される内因性受容体のトランスサイトーシス輸送経路の利用は、細胞のバリアを通過するための有望なアプローチを表す。この輸送経路に基づいて、様々なナノ材料ベースの薬物送達システムが開発されている。
【0004】
米国特許第10,182,986号は、ナノ粒子コア及びターゲティング剤を有するナノ粒子を対象に投与することによって、血液脳関門を超えて対象の脳にナノ粒子を送達する方法を対象とする。
【0005】
Ruan、Shaoboら(Biomaterials 37(2015):425-435)は、酸応答性リンカーであるヒドラゾンを介してドキソルビシン(DOX)をロードして、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質-1(LRP1)の特異的リガンドであるアンジオペップ-2で官能化した金ナノ粒子ベースの送達システムを提供し、これは、血液脳関門を通って神経膠腫細胞を標的とするシステムを媒介することができた。
【0006】
Shilo、Malkaら(Nanoscale 6.4(2014):2146-2152)は、血液脳関門を通してインスリン標的金ナノ粒子(INS-GNP)を輸送することを対象とする、イメージング及び処置適用のための技術を開発した。
【0007】
近年の細胞生物学の進歩により、様々な難治疾患の処置において、「一薬物一標的」のアプローチから、併用療法及びマルチターゲティング薬のアプローチへとパラダイムシフトが起きている。しかし、薬物の組み合わせは、理論的には様々な疾患の処置において治療上有効であり得るが、組み合わせる各薬物の薬物動態及び組織分布の相違により、それらの臨床での成功は限られている。
【0008】
これらの制限を克服するために、様々なアプローチが開発されている。二重特異性抗体(bsAb)は、2種類の抗体の特異性を1分子に組み合わせた人工タンパク質であり、複数の表面受容体又はリガンドを同時に妨害する。bsAbはまた、1つの細胞上でのタンパク質複合体の形成を支持するか、又は細胞間の接触を誘発するために、標的を近位に置くこともできる。
【0009】
最近、ナノ粒子は、複数の薬剤を共送達するための有望なプラットフォームとして出現している。Zhang、Tianら(Advanced healthcare materials 8.18(2019):1900543)は、相乗的薬物を、血液脳関門を通過してトリプルネガティブ乳がん細胞の脳転移及び腫瘍関連マクロファージへと送達するマルチターゲットナノ粒子を提供する。
【0010】
Dixitら(Molecular pharmaceutics 12.9(2015):3250-3260)は、膠芽腫における光線力学療法薬の局所的な送達及び活性化のための二受容体標的化セラノスティックナノ粒子を開示した。
【0011】
しかし、脳関連疾患又は障害の処置の有効性を改善するために、複数の生物活性剤の同時かつ同期した脳への送達を可能にする多機能システムに対するニーズは依然として満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、少なくとも2種類の別個の活性剤を脳内に共送達するための多機能システムを提供する。本発明はさらに、脳関連疾患又は障害の処置のための多機能システムの調製方法及びその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の多機能システムは、それぞれ第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーを介して第1の活性剤及び第2の活性剤にコンジュゲートし、並びに第3のポリマーリンカーを介して脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートしているコア粒子に基づく。
【0014】
コア粒子にコンジュゲートしている活性剤は、目的の様々な種類の治療用及び/又は診断用分子を含むことができる。特に、元の形態ではBBB透過性が不良な2種類の異なる抗体、又は抗体と低分子薬物を、単一コア粒子にコンジュゲートし、さらに脳内在化トランスポーター部分としてインスリンにコンジュゲートさせることで、静脈内投与後にマウス脳に効率的に透過できることが見出された。
【0015】
さらに、コア粒子にコンジュゲートしている2種類の異なる蛍光標識抗体を用いて、抗体が特定の脳領域内で共局在することが見出された。したがって、本発明の多機能システムは、活性剤の脳透過を容易にするだけでなく、脳内で活性剤の同期分布も与える。有利には、異なる治療剤の同期分布は、薬剤の組み合わせの治療有効性を有意に改善し得る。
【0016】
本発明はさらに、第1、第2及び第3のポリマーリンカーの相対長が、BBBを通しての多機能システムの透過に重大な影響を与えるという知見に部分的に基づいている。特に、インスリン及び活性剤をコア粒子にコンジュゲートさせるために異なるサイズのポリマーリンカーを使用すると、効率的なBBB透過を達成することができる。
【0017】
本発明のシステムの有益な特徴の1つは、送達システムにコンジュゲートしている治療剤の活性がインタクトのままであり、その結果、BBBを通過した後に、例えば、切断可能なリンカーを用いることによってナノ粒子から切り離す必要が必ずしもないことである。或いは、送達システムは、それらの少なくとも1つが切断可能ではない異なる治療剤を含み得る。
【発明の効果】
【0018】
一態様によれば、
(a)少なくとも(i)第1の直鎖状ポリマーリンカー;(ii)第2の直鎖状ポリマーリンカー;及び(iii)第3の直鎖状ポリマーリンカーに結合している無機粒子;
(b)第1の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている第1の生物活性分子;
(c)第2の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている第2の生物活性分子;並びに
(d)第3の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている脳内在化トランスポーター部分
を含む多機能粒子であって、
第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さが、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さと実質的に異なっており、
第3のポリマーリンカーの分子量(MW)が、第1及び第2のポリマーリンカーの分子量と少なくとも約1000Da異なっており、
第1の生物活性分子が第2の生物活性分子と異なる、多機能粒子が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さは、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さよりも実質的に長い。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、生理的条件下で切断不能である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、生理的条件下で切断可能な追加のポリマーリンカーを含む。いくつかの実施形態によれば、切断可能なポリマーリンカーは、化学療法薬又は毒素にコンジュゲートしている。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの分子量は、1,000~10,000Daの範囲内であり、第3の直鎖状ポリマーリンカーの分子量は、2,000~11,000Daの範囲内である。ある特定の実施形態において、第3の直鎖状ポリマーリンカーの分子量は、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの分子量よりも高い。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、反復モノマー単位で構成され、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方は、第3の直鎖状ポリマーリンカーと同じ反復モノマー単位で構成され、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方とは異なる数の反復モノマー単位を有する。ある特定の実施形態において、第1、第2及び第3の直鎖状ポリマーリンカーは、同じ反復モノマー単位で構成され、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーのそれとは異なる数の反復モノマー単位を有する。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカーと第2のポリマーリンカーは同一である。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーは、スルフィド結合を介して無機粒子に結合し、第1及び第2の生物活性分子は、アミド結合を介してそれぞれの直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の生物活性分子は、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から独立して選択される。ある特定の実施形態において、第1の生物活性分子と第2の生物活性分子の両方は、抗体又はその断片である。他の実施形態において、第1の生物活性分子は抗体又はその断片であり、第2の生物活性分子は低分子である。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、無機粒子に結合している全ポリマーリンカーの約10モル%~40モル%を構成している。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの各々は、独立して、無機粒子に結合している全ポリマーリンカーの約5モル%~40モル%を構成している。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、第1、第2及び第3の直鎖状ポリマーリンカーは、独立して、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。ある特定の実施形態によれば、第1、第2及び第3の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも1つは、ポリエーテルである。いくつかの例示的な実施形態において、ポリエーテルはポリエチレングリコール(PEG)である。ポリエチレングリコールは、いくつかの実施形態によれば、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)、チオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)、及びチオール化PEGチオール(SH-PEG-SH)から選択され、チオール化末端は無機粒子に結合しており、酸、アミン又は他のチオール末端は、脳内在化トランスポーター部分又はそれぞれの生物活性分子にコンジュゲートしている。他の実施形態において、ポリエチレングリコールはSH-PEG-SHであり、一方のチオール化末端は無機粒子に結合しており、他方のチオール末端は化学療法薬又は毒素にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、無機粒子に結合している第4のポリマーリンカーをさらに含み、第4のポリマーリンカーは、粒子上の末端官能基のキャッピングにおいて単官能目的を果たし、粒子にコンジュゲートしている分子間の距離を可能にするのに役立ち、以後、「キャップ」という用語と互換的であると理解される。いくつかの実施形態によれば、前記第4のポリマーリンカーは、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。いくつかの例示的な実施形態において、前記第4のポリマーリンカーは、ポリエーテルを含み、ポリエーテルは、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、無機粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、セラミックナノ粒子、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるナノ粒子である。金属は、いくつかの実施形態によれば、金、銀、白金、鉄、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。金属酸化物は、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化マンガン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。いくつかの特定の実施形態において、無機粒子は、金ナノ粒子、酸化鉄(III)ナノ粒子、及び酸化鉄(II,III)ナノ粒子からなる群から選択される。さらなる特定の実施形態において、無機粒子は金ナノ粒子である。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、無機粒子は、直径10~160nmのナノ粒子である。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、脳内在化トランスポーター部分は、インスリン、インスリン受容体に特異的な抗体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体に特異的な抗体、トランスフェリン受容体に特異的に結合するポリペプチド、インスリン受容体に特異的に結合するポリペプチド、インスリン様成長因子1(IGF-1)、IGF-1に特異的な抗体、インスリン様成長因子受容体1に特異的に結合するポリペプチド、アポリポタンパク質A1、B、又はE、ラクトフェリン、アンジオペップ-2、低密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質受容体又はリポタンパク質受容体関連タンパク質に特異的な抗体、低密度リポタンパク質受容体又はリポタンパク質受容体関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチド、ジフテリア毒素受容体に特異的な抗体、ジフテリア毒素受容体に特異的に結合するポリペプチド、BBB透過性細胞透過ペプチド(CPP)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、脳内在化トランスポーター部分は、インスリン又はその誘導体、類似体、コンジュゲート若しくは断片である。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、第3の生物活性分子をさらに含み、第3の生物活性分子は、無機粒子に結合している直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態によれば、第3の生物活性分子は、化学療法部分、又は毒素であり、SH-PEG-SHリンカーによって粒子にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態によれば、リンカーは切断可能であり、化学療法部分又は毒素は脳内で放出される。
【0034】
いくつかの特定の実施形態によれば、無機粒子は金ナノ粒子であり、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーは、各々独立して、チオール化PEG3500酸又はチオール化PEG3500アミンであり、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG5000酸又はチオール化PEG5000アミンであり、脳内在化トランスポーター部分はインスリンであり、化学療法薬は、切断可能なチオール化PEG3500チオールリンカーを介してコンジュゲートしている。
【0035】
いくつかの例示的な実施形態によれば、無機粒子は金ナノ粒子であり、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーは、各々独立して、チオール化PEG3500酸又はチオール化PEG3500アミンであり、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG5000酸又はチオール化PEG5000アミンであり、脳内在化トランスポーター部分はインスリンである。
【0036】
いくつかの例示的な実施形態によれば、無機粒子は金ナノ粒子であり、第1の直鎖状ポリマーリンカーはチオール化PEG1000酸又はチオール化PEG1000アミンであり、第2の直鎖状ポリマーリンカーはチオール化PEG3500酸又はチオール化PEG3500アミンであり、第3の直鎖状ポリマーリンカーはチオール化PEG5000酸又はチオール化PEG5000アミンであり、脳内在化トランスポーター部分はインスリンである。
【0037】
別の態様によれば、上記の様々な実施形態による多機能粒子の調製プロセスであって、(a)無機粒子の表面を第1の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第1の直鎖状ポリマーリンカーを第1の生物活性分子にコンジュゲートする工程;(b)無機粒子の表面を第2の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第2の直鎖状ポリマーリンカーを第2の生物活性分子にコンジュゲートする工程;及び(c)無機粒子の表面を第3の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、前記第3の直鎖状ポリマーリンカーを脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートする工程の連続工程を含み、工程(a)、(b)及び(c)を任意の順序で行うことができるプロセスが提供される。
【0038】
いくつかの態様及び実施形態によれば、多機能粒子の調製のプロセスであって、(a)無機粒子の表面を第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーを第1の生物活性分子及び第2の生物活性分子にコンジュゲートする工程であって、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーが同一であり、第1の生物活性分子は第2の生物活性分子とは異なる工程;並びに(b)無機粒子の表面を第3の直鎖状ポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第3の直鎖状ポリマーリンカーを脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートする工程であって、第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さが、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さと実質的に異なり、第3のポリマーリンカーの分子量が、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの分子量と少なくとも約1000Da異なる工程、の連続工程を含み、工程(a)及び工程(b)を任意の順序で行うことができるプロセスが提供される。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカーは、第1の生物活性分子に結合するように構成された第1の官能末端基を有し、第2のポリマーリンカーは、第2の生物活性分子に結合するように構成された第2の官能末端基を有し、第3のポリマーリンカーは、脳内在化トランスポーター部分に結合するように構成された第3の官能末端基を有し、第1、第2及び第3の官能末端基のうちの少なくとも2つは同一である。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、プロセスは、無機粒子の表面を第4のポリマーリンカーで部分的にコーティングすることをさらに含み、前記第4のポリマーリンカーは、粒子上の官能基をキャップし、粒子にコンジュゲートしている分子間の距離を可能にするために使用される単官能性リンカーである。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの各々は、無機粒子の表面の5%~40%を覆うのに適する量で添加され、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、無機粒子の表面の5%~40%を覆うのに適する量で添加される。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、粒子は、金ナノ粒子(GNP)であり、多機能金ナノ粒子の調製プロセスは、(a)HAuCl4の還元;(b)1種類の単官能性リンカー及び2種類の異なるヘテロ官能性リンカーと還元GNPの同時インキュベーション;(c)GNPを活性化して、遊離COOH基を得る工程;(d)トランスポーター又は他の部分のコンジュゲーション;(d)それらの混合物を含む溶液とインキュベートすることによって2種類の異なる生物活性分子をコンジュゲートする工程の連続工程を含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、単官能性リンカーはmPEG-SHである。特定の実施形態によれば、単官能性リンカーは、mPEG6000-SH又はPEG5000-SHであり、粒子表面の約80~90%を覆うように添加される。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、ヘテロ官能性リンカーはCOOH-PEG-SHである。いくつかの実施形態によれば、1つのヘテロ官能性リンカーはCOOH-PEG5000-SHであり、粒子表面の約15%を覆う濃度で添加される。いくつかの実施形態によれば、他のヘテロ官能性リンカーは、COOH-PEG3500-SHであり、粒子表面の約5%を覆う濃度で添加される。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、GNPの活性化は、GNPを(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)と混合することによって行われる。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、トランスポーターはインスリンであり、そのコンジュゲーションは、活性化GNPと約50~500IU/mlの濃度で1~5時間インキュベートすることによって行われる。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、2種類の生物活性分子を、活性化GNPと1~50mg/mlの濃度で一晩インキュベートする。
【0048】
GNPの分析は、当技術分野において公知の方法を用いて各工程後に行われる。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、GNPの分析は、動的光散乱(DLS)を用いて行われる。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、GNP上のPEG基に付着している生物活性分子及びトランスポーター(例えば、インスリン)の定量化は、GNPの遠心分離による沈殿後に残された未結合タンパク質を含有する上清の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって行われる。
【0051】
さらに別の態様によれば、上記に提示された様々な実施形態による多機能粒子と、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害の防止、処置、及び/又はモニタリングにおける使用のためのものである。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、対象の脳への少なくとも2種類の生物活性分子の同時送達における使用のためのものである。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、静脈内(IV)投与、鼻腔内(IN)投与、腹腔内(IP)投与及び髄腔内(IT)投与の少なくとも1つのために製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害の防止、処置、及び/又はモニタリングにおける使用のためのものである。
【0055】
追加の態様によれば、少なくとも2種類の生物活性分子を対象の脳に同時送達する方法であって、本明細書上記で提示した様々な実施形態による医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態によれば、投与時に、少なくとも2種類の生物活性分子は、脳内で同期分布を示す。
【0056】
別の態様によれば、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害を防止、処置及び/又はモニターする方法であって、本明細書上記の様々な実施形態による医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、静脈内(IV)投与、鼻腔内(IN)投与、腹腔内(IP)投与及び髄腔内(IT)投与のうちの少なくとも1つによって対象に投与される。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、本方法は、対象の脳をイメージングし、それにより、前記対象の脳における多機能粒子の蓄積を評価する工程をさらに含む。イメージングは、コンピュータ断層撮影イメージング(CT)、X線イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、超音波(US)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイメージングシステムを含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意のイメージング方法又はシステムを用いて行うことができる。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、脳関連疾患又は障害は、原発性脳がん又は続発性脳がんである。いくつかの実施形態によれば、脳がんは原発性固形腫瘍である。いくつかの実施形態によれば、脳腫瘍は転移を含む。いくつかの実施形態によれば、転移は、脳以外の組織を起源とする腫瘍に由来する。いくつかの実施形態によれば、転移は、乳がん、肺がん、黒色腫、腎がん及び結腸直腸がんからなる群から選択されるがんを起源とする。いくつかの実施形態によれば、転移は、乳がんの転移である。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、脳関連疾患又は障害は、原発性脳がん又は続発性脳がんであり;無機粒子は放射線増感剤であり;かつ本方法は、放射線療法をさらに含む。
【0061】
本発明のさらなる実施形態及び全適用範囲は、以下に述べる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本発明の趣旨及び範囲内における様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明及び具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、(i)第1の抗体(3)にコンジュゲートしている第1のポリマーリンカー(2);(ii)第2の抗体(5)にコンジュゲートしている第2のポリマーリンカー(4);(iii)インスリン(7)にコンジュゲートしている第3のポリマーリンカー(6);及び(iv)単官能性ポリマーキャッピング部分(8)、に結合している金ナノ粒子(GNP;1)の模式図を表す。
【
図2】
図2は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)により測定したIgG1&Ins-GNP、Iba1&Ins-GNP、及びIgG1&Iba1&Ins-GNPの静脈内投与後8時間の時点でのマウスの脳内で見出される金(Au)の量(mg)の定量化を示す棒グラフである。
【
図3】
図3は、無処置のマウス(対照、左)又はIgG1&Iba1&Ins-GNPを静脈内注射したマウス(中央)又は遊離蛍光標識抗体を静脈内注射したマウス(右)から得られた、大脳皮質の脳切片の免疫細胞化学蛍光(IHC-F、二重染色)画像を表す。上段の画像は、Iba1標識及び4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色を表し;中段の画像は、IgG1標識及びDAPI染色を表し;並びに下段は、IgG1標識及びIba1標識(DAPI標識なし)の融合画像を表す。
【
図4】
図4は、無処置のマウス(対照、左)、又はIgG1&Iba1&Ins-GNPを静脈内注射したマウス(中央)又は遊離蛍光標識抗体を静脈内注射したマウス(右)から得られた、髄質領域の脳切片の免疫組織化学蛍光(IHC-F、二重染色)画像を表す。上段の画像は、Iba1標識及びDAPI染色を表し;中段の画像は、IgG1標識及びDAPI染色を表し;並びに下段は、IgG1標識及びIba1標識(DAPI標識なし)の融合画像を表す。
【
図5A】
図5A:ICP-OES分析によって測定したシスプラチン(cisPt)及びインスリン(Ins)粒子、cisPt&Ins-GNP、IgG1&Ins-GNP、cisPt&IgG1&Ins-GNP又は遊離シスプラチンの静脈内投与後8時間の時点でのマウスの脳組織に見出されるAu(mg)の量の定量化。
【
図5B】
図5B:ICP-OES分析によって測定したcisPt&Ins-GNP、遊離シスプラチン、又はcisPt&IgG1&Ins-GNPの静脈内投与後8時間の時点でのマウスの脳組織に見出されるPt(mg)量の定量化。
【
図6】
図6:(i)インスリン(4)にコンジュゲートしている第1のポリマーリンカー(2);(ii)第1の抗体(5)及び第2の抗体(6)にコンジュゲートしている第2のポリマーリンカー(3);並びに(iii)キャッピングポリマー部分(7)、に結合している金ナノ粒子(GNP;1)の模式図。
【
図7】
図7A:乳がんBT474細胞を接種し、遊離抗体(遊離Ab)又は二機能GNP(GNP-Ab)で処置したマウスの脳のMRIスキャンの結果。処置組成物(40mg/kgのAb)を週に1回、4週間連続でIP注射した。
【
図7B】
図7B:上-摘出して、GNPの透過及び腫瘍蓄積についてICP-OESによって試験した脳の画像。乳がんBT474細胞を有し、遊離抗体(遊離Ab)で処置するか、又は二機能GNP(GNP-Ab)で処置するか、又は無処置のままのマウスから脳を摘出した。下-GNP抗体で処置したマウスの脳の断面画像。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、別個の活性物質を脳に同期送達するための一般的なBBB透過性プラットフォームを提供する。特に、本発明は、少なくとも2種類の別個の有効成分を脳内に同時に共送達するための多機能システム、システムの調製プロセス、前記システムを含む医薬組成物、並びに治療及び診断応用のためのそれらの使用を提供する。
【0064】
多機能送達システムは、第1のポリマーリンカーを介して第1の活性剤にコンジュゲートし、第2のポリマーリンカーを介して第2の活性剤にコンジュゲートし、かつ第3のポリマーリンカーを介して脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートしているコア粒子に基づく。第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、生物活性分子(例えば、薬物)、又は標識分子であり得、限定されないが、ポリペプチド、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、及び小分子などの異なる種類の分子を含むことができる。いかなる理論又はメカニズムにも縛られることなく、脳内在化トランスポーター部分が、コンジュゲートシステム全体のBBBを介する脳への透過を促進するという仮説が立てられる。有利には、単一ビヒクル上の異なる細胞標的及び/又は異なる作用機序を有する2種類以上の別個の活性剤を同時に送達することにより、改善された処置及び/又は診断効果を達成することができる。そのため、本発明の送達システムは、広範囲の脳関連疾患又は障害の処置及び/又は診断に有用であり得る。
【0065】
本発明は、部分的に、元の遊離型ではBBBの透過性が不良である2種類の別個の抗体を、単一コア粒子にコンジュゲートし、これをさらに脳内在化トランスポーター部分としてインスリンにコンジュゲートすると、効率的にマウスの脳に透過し、静脈内投与後に特定の脳領域内でさらに同時局在することができたという驚くべき発見に基づいている。さらに、多機能システムは、異なる種類の活性剤の同時送達に適していることが示された。特に、抗体と低分子薬物を単一コア粒子にコンジュゲートさせながら、マウスの脳に共に送達できることが示された。
【0066】
ヒト脳毛細血管内皮(BBB)で発現される内因性受容体(例えば、インスリン受容体)に結合することが可能な任意のインスリン分子、又はインスリン類似体、誘導体、コンジュゲート若しくは断片を、本発明によるトランスポーターとして使用してもよい。本発明に従って使用され得るインスリン分子は、限定するものではないが、哺乳類インスリン、ヒトインスリン、当技術分野において公知の任意の方法によって生成される組換えインスリン、天然の及び単離されたインスリン、速効型、迅速型及び短時間作用型のインスリン及び類似体、中間作用型のインスリン及び類似体、並びに長時間作用型のインスリン及び類似体を含む。ヒト脳毛細血管内皮細胞で発現される内因性受容体に結合し、BBBを通しての分子の輸送を助けることが可能である限り、上述のインスリン分子のいずれの活性断片を使用してもよい。
【0067】
本発明の原理によれば、第1の活性剤及び第2の活性剤は、粒子コア内に装填又は封入されるのではなく、ポリマーリンカーを介してコア粒子の外表面にコンジュゲートしている。重要なことに、活性剤の活性は、コア粒子にコンジュゲートしているにもかかわらず維持されるため、BBB透過の際に必ずしも前記薬剤をシステムから切り離す必要はない。
【0068】
診断として、このアプローチは、いくつかの実施形態において、脳に関連する疾患又は障害の早期かつ正確な検出を可能にする。例えば、多機能粒子が、このシステムを脳内の疾患細胞又は損傷細胞に標的化する1以上の生物活性分子を含む場合、コア粒子は、適切なイメージングモダリティを用いてインビボで粒子を追跡することを可能にする造影剤であるか、又は造影剤を含む。
【0069】
治療として、いくつかの実施形態において、このアプローチは、効率的な治療剤の組み合わせの送達を可能にする。いくつかの実施形態において、単一のプラットフォーム上での別個の治療剤の組み合わせは、薬剤の組み合わせの最適化された相乗効果をもたらす。異なる活性剤は、細胞内の受容体などの同一又は異なる生物学的実体に標的化され得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、例えば、イメージング造影剤を構成するか、又はそれを含むコア粒子、例えば、金ナノ粒子にコンジュゲートしている治療活性剤を使用することによって、治療的使用と診断的使用の組み合わせが可能になる。
【0071】
多機能システム
1つの態様によれば、脳への別個の活性剤の同時送達のための多機能システムであって、
(a)少なくとも:(i)第1のポリマーリンカー、(ii)第2のポリマーリンカー;及び(iii)第3のポリマーリンカーに結合しているコア粒子;
(b)第1のポリマーリンカーにコンジュゲートしている第1の活性剤;
(c)第2のポリマーリンカーにコンジュゲートしている第2の活性剤;並びに
(d)第3のポリマーリンカーにコンジュゲートしている脳内在化トランスポーター部分
を含み、第1の活性剤が第2の活性剤とは異なる多機能システムが提供される。
【0072】
別の実施形態によれば、
(a)少なくとも:(i)第1のポリマーリンカー、(ii)第2のポリマーリンカー;及び(iii)第3のポリマーリンカーに結合しているコア粒子;
(b)第3のポリマーリンカーにコンジュゲートしている脳内在化トランスポーター部分
を含み、
第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの各々が、第1の活性剤及び第2の活性剤をコンジュゲートするために構成された遊離官能末端基を有し、第1の活性剤が第2の活性剤とは異なる多機能システムが提供される。
【0073】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの長さは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方の長さと実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの長さは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方の長さよりも実質的に長い。
【0074】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤は、生物活性分子及び標識分子から独立して選択される。
【0075】
「多機能システム」という用語は、本明細書では「多機能粒子」及び「共送達システム」という用語と互換的に使用することができ、少なくとも2つの目的を達成することが可能であるか、又は少なくとも2つの機能ユニットを組み込むことによって単一の高度な機能を発揮することが可能であるシステムを指す。本発明のシステムは、別個の標的及び/又は別個の活性を有する少なくとも第1の活性剤と第2の活性剤、並びにBBBを超えてシステムを送達するために分子トロイの木馬として作用する脳内在化トランスポーター部分を含む別個の目的を有する複数の機能ユニットを組み込む。
【0076】
本明細書で使用する場合、「共送達」という用語は、「同時送達」という用語と互換的に使用することができ、2種類の別個の活性剤がそれらの標的、例えば、対象の脳又は対象の脳内の特定の領域に単一組成物で同時に送達されることを意味する。いくつかの実施形態において、「共送達」は、同期送達、すなわち、投与時に、別個の活性剤が同期した薬物動態及び生体分布を示すことを意味する。いくつかの関連する実施形態において、2種類の活性剤は、脳内で同期された分布を示す。本明細書で使用される「同期分布」という用語は、2種類の活性剤が同じ脳領域/細胞内で共局在することを意味する。いくつかの実施形態において、2種類の活性剤は、同じ脳領域に蓄積する。
【0077】
いくつかの態様において、特に、第1と第2の活性剤が両方とも治療剤である場合、同期された薬物動態及び生体分布によって、薬剤の組み合わせの相乗効果及び治療応答の改善がもたらされる。
【0078】
「送達」及び「送達される」という用語は、送達システムから前記活性剤(複数可)を切り離すことによる(例えば、切断可能なリンカーを使用することによって)活性薬剤(複数可)の送達、及び送達システムにコンジュゲートされている(例えば、共有結合によりのコンジュゲーションによって)間の活性剤(複数可)の送達の両方を包含する。有利には、本発明の多機能システムの組成物は、活性剤の機能性を妨害せず、その結果、活性剤をシステムから切り離すことは必ずしも必要ではない。いくつかの実施形態によれば、多機能システムは、活性分子を連結する切断不能の第1及び第2のリンカーと、化学療法薬物又は毒素を連結する切断可能リンカーとを含む。
【0079】
本明細書で使用する場合、「別個の」という用語は、第1の活性剤分子が第2の活性剤分子と識別可能に異なることを意味する。「別個の」という用語は、同じ種類の異なる分子、例えば、異なる特異性を有する2種類の抗体、及び同一又は別個の生物学的実体に標的化される2種類の異なる分子も包含することを理解されたい。さらに、「別個の」という用語は、類似の特異性を含む異なる分子も包含することを理解されたい。例えば、全抗体(例えば、IgG)及び前記抗体の断片(例えば、Fc/Fab領域)は、別個の活性剤と見なされる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「コア粒子」という用語は、共送達システムの中央部分を構成する粒子を指す。いくつかの実施形態において、コア粒子はナノ粒子である。「ナノ粒子」という用語は、直径が1~1000nmの粒子を指す。
【0081】
いくつかの実施形態において、コア粒子は、金属粒子、金属酸化物粒子、金属炭化物粒子、脂質粒子、炭素系粒子、セラミック粒子、ポリマー粒子及びリポソームからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、コア粒子は無機粒子である。いくつかの実施形態において、無機粒子は、金属粒子、金属酸化物粒子及びセラミック粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、無機粒子は、金属粒子及び金属酸化物粒子からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、無機粒子は金属粒子である。他の実施形態において、無機粒子は金属酸化物粒子である。特定の実施形態において、無機粒子は、金粒子及び酸化鉄粒子から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態において、金属粒子は磁性粒子である。いくつかの実施形態において、無機粒子は磁性粒子である。いくつかの実施形態において、磁性粒子は、磁気共鳴画像法(MRI)用の造影剤である。MRI造影剤としての使用に適する任意の磁性粒子を、本発明の組成物及び方法に用いることができる。磁性粒子は、少なくとも部分的には、磁場の影響を受ける任意の材料から形成され得る。好適な材料の例としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、及び鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、ガドリニウム、ネオジム、ジスプロシウム、サマリウム、エルビウム、炭化鉄、鉄のうちの1以上、又はそれらの組み合わせを含む材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態において、無機粒子は、コンピュータ断層撮影(CT)又はX線イメージングのための造影剤である。いくつかの実施形態において、無機粒子は、CT又はX線イメージング造影剤として用いることができる金属粒子である。当業者には明らかなように、CT又はX線によるイメージングに使用するのに適する任意の金属及び/又は金属の組み合わせを、診断使用に関連する実施形態において、本発明の金属粒子に用いることができる。いくつかの実施形態において、本発明の粒子を形成するために使用され得る金属は、重金属、又は高いZ数を有する金属である。好適な金属の例としては、金、銀、白金、パラジウム、コバルト、鉄、銅、錫、タンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、オスミウム、イリジウム、レニウム、ハフニウム、タリウム、鉛、ビスマス、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、及びウラン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態において、多機能粒子は、
(a)(i)第1の直鎖状ポリマーリンカー;(ii)第2の直鎖状ポリマーリンカー;及び(iii)第3の直鎖状ポリマーリンカーに結合している無機粒子;
(b)第1の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている第1の生物活性分子;
(c)第2の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている第2の生物活性分子;並びに
(d)第3の直鎖状ポリマーリンカーにコンジュゲートしている脳内在化トランスポーター部分
から本質的になり、
第3の直鎖状ポリマーリンカーの長さは、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの長さと実質的に異なっており、第1の生物活性分子は、第2の生物活性分子とは異なり、無機粒子は、コンピュータ断層撮影イメージング(CT)、X線イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、超音波(US)、及びそれらの任意の組み合わせから選択されるイメージングモダリティによって検出され得る造影剤である。有利には、そのような実施形態において、多機能粒子は、活性剤として標識分子をコンジュゲートする必要なく、診断応用において使用することができる。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、無機粒子は、金粒子、銀粒子、白金粒子、鉄粒子、銅粒子、及びこれらの混合物又は組み合わせからなる群から選択される金属粒子である。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、金属粒子は金(Au)粒子である。
【0086】
いくつかの実施形態において、無機粒子は、金属酸化物粒子である。いくつかの実施形態において、金属酸化物粒子は、酸化鉄(Fe2O3又はFe3O4)、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅及び酸化マンガン、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、金属酸化物粒子は、酸化鉄(III)及び酸化鉄(II,III)から選択される酸化鉄を含む。いくつかの実施形態において、金属酸化物粒子は酸化鉄粒子であり、酸化鉄は、酸化鉄(III)及び酸化鉄(II,III)酸化物から選択される。
【0087】
いくつかの実施形態において、コア粒子は、脂質粒子、炭素系粒子、セラミック粒子、ポリマー粒子及びリポソームからなる群から選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、コア粒子は放射線増感剤である。本明細書で使用する場合、「放射線増感剤」という用語は、細胞(特にがん細胞)を放射線療法に対してより感受性にする薬剤を指す。通常、金(Z=79)などの原子番号の高い材料は、放射線感度を高める。したがって、金ナノ粒子は、放射線増感剤であるコア粒子の一例である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、コア粒子は、1~200nm、1~180nm、1~160nm、1~140nm、1~120nm、1~100nm、1~90nm、1~80nm、1~70nm、1~60nm、1~50nm、1~40nm、2~100nm、2~60nm、2~50nm、2~40nm、2~30nm、2~20nm、2~10nm、3~100nm、3~60nm、3~50nm、3~40nm、3~30nm、3~20nm、4~100nm、4~60nm、4~50nm、4~40nm、5~200nm、6~190nm、7~180nm、8~170nm、10~160nm、20~160nm、10~150nm、10~140nm、10~120nm、10~110nm、10~100nm、10~90nm、10~80nm、12~70nm、14~60nm、15~50nm、15~40nm、15~30nm、20~30nm、15~30nm、20~90nm、20~80nm、20~70nm、20~60m、20~50nm、20~40nm、20~30nm、30~70nm、30~60nm、40~60nm、10~200nm、20~200nm、30~200nm、40~200nm、50~200nm、60~200nm、70~200nm、80~200nm、90~200nm、100~200nm、110~190nm、120~170nm、130~160nm、100~160nm、80~160nm、60~160nm、40~160nm、20~160nm、10~160nm、20~150nm又は30~150nmの直径を有するナノ粒子である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、コア粒子は、少なくとも1nm、少なくとも2nm、少なくとも3nm、少なくとも4nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも12nm、少なくとも15nm、少なくとも18nm、少なくとも20nm、少なくとも25nm、少なくとも30nm、少なくとも35nm、少なくとも40nm、少なくとも45nm、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも110nm、少なくとも120nm、少なくとも130nm、少なくとも140nm又は少なくとも150nmの直径を有するナノ粒子である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、コア粒子は、最大5nm、最大10nm、最大15nm、最大20nm、最大30nm、最大40nm、最大50nm、最大60nm、最大70nm、最大80nm、最大90nm、最大100nm、最大120nm、最大140nm、最大160nm、最大180nm又は最大200nmの直径を有するナノ粒子である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、多機能粒子、すなわち、共送達システム全体は、5~500nm、6~400nm、8~300nm、10~300nm、10~200nm、10~180nm、10~160nm、10~150nm、10~100nm、20~90nm、20~80nm、20~70nm、20~60nm、25~100nm、25~90nm、25~80nm、25~70nm、25~60nm、25~50nm、30~60nm、40~200nm、40~150nm、40~120nm、40~100nm、40~80nm、40~60nm、50~300nm、50~250nm、50~200nm、50~180nm、50~150nm、60~200nm、70~180nm、80~180nm、90~170nm、100~160nm、100~200nm、150~200nm又は150~180nmの直径を有する。いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、2~200nm、1~100nm、1~150nm、1~200nm、2~50nm、2~100nm、2~150nm、4~50nm、4~100nm、4~150nm、又は4~200nmの直径を有する。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、少なくとも1nm、少なくとも2nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm、少なくとも15nm、少なくとも20nm、少なくとも25nm、少なくとも30nm、少なくとも35nm、少なくとも40nm、少なくとも45nm、少なくとも50nm、少なくとも55nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも110nm、少なくとも120nm、少なくとも130nm、少なくとも140nm、少なくとも150nm、少なくとも160nm、少なくとも180nm、又は少なくとも200nmの直径を有する。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、最大5nm、最大20nm、最大30nm、最大40nm、最大50nm、最大60nm、最大70nm、最大80nm、最大90nm、最大100nm、最大110nm、最大120nm、最大130nm、最大140nm、最大150nm、最大180nm、最大200nm、最大250nm、最大300nm、最大350nm、最大400nm、最大450nm又は最大500nmの直径を有する。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0091】
本明細書で使用する場合、粒子/ナノ粒子の「直径」という用語は、粒子/ナノ粒子の「サイズ」という用語と互換的に使用することができ、記載された粒子/ナノ粒子の表面上の2点間の最大直線距離を指す。「直径」という用語は、本明細書で使用する場合、球状粒子のサイズ及び非球状粒子のサイズを包含し、粒子の実際のサイズ又は溶媒和球からの寄与を含むその流体力学的直径を指し得る。粒子のサイズを決定するために、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、及び動的光散乱(DLS)を使用することができる。「直径」という用語は、上記の技術のいずれかによって測定される複数の粒子の平均直径を指し得る。
【0092】
コア粒子は、少なくとも3つのポリマー:第1の活性剤に結合することが可能な官能末端基を有する第1のポリマーリンカー、第2の活性剤に結合することが可能な官能末端基を有する第2のポリマーリンカー、及び脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートしている第3のポリマーリンカーを含むポリマー層でコーティングされている。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、第1の活性剤にコンジュゲートしている。
【0093】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、第2の活性剤にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は、化学療法剤又は毒素に結合することが可能な官能末端基を有する追加のポリマーリンカーを含む。いくつかの実施形態によれば、前記追加のポリマーリンカーは切断可能である。いくつかの実施形態によれば、前記切断可能なポリマーリンカーは、SH-PEG-SHリンカーである。
【0094】
「コーティングされた」という用語は、本明細書で使用する場合、層、例えば、複数のポリマー部分を含むポリマー層が、コア粒子の表面に化学的に付着し、それによって、少なくとも部分的に前記コア粒子を覆うことを意味することが意図される。「ポリマー層でコーティングされた粒子」は、ポリマー層中の各ポリマー部分が、前記ポリマー部分の官能末端基、例えば、チオール基を介して粒子に化学的に付着していることを意味する。化学的付着は、共有結合性、半共有結合性又は非共有結合性であり得る。
【0095】
「ポリマー部分」という用語は、「ポリマー」という用語と互換的に使用することができ、直鎖状、分岐状、高分岐状、樹状若しくは環状配列、又はそれらの任意の組み合わせの中に連結された2種類以上の反復サブユニットを含有する分子を指す。いくつかの実施形態において、「ポリマー部分」という用語は、直鎖状、分岐状、高分岐状、樹状若しくは環状配列、又はそれらの任意の組み合わせの中に連結された少なくとも3つの反復サブユニットを含有する分子を指す。サブユニットの例としては、アルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、アミノ酸、核酸、糖類などが挙げられる。ポリマー部分の例としては、ポリ(エチレングリコール)基、ポリ(エチレンアミン)基、及びポリ(アミノ酸)基が挙げられるが、これらに限定されない。「ポリマー部分」及び「ポリマー」という用語は、ポリマーリンカーも包含する。本明細書で使用する場合、「ポリマーリンカー」という用語は、物質、例えば粒子への結合を可能にする少なくとも1つの官能基/反応基を元々含むポリマー部分を指す。いくつかの実施形態において、ポリマーリンカーは、少なくとも2種類の物質への結合を可能にすることによって、前記少なくとも2種類の物質間を連結する少なくとも2種類の官能基/反応基を有する二官能性ポリマーである。いくつかの実施形態において、ポリマーリンカーは、1つの物質、例えば、コア粒子への結合を可能にする1つの官能基/反応基を有する単官能性ポリマーである。本明細書で使用する場合、「単官能性」、「二官能性」、「官能基」などの用語は、コア粒子及び/又は脳内在化トランスポーター部分又はそれぞれの活性剤に付着する前のその元の形態によるポリマーリンカーに関することを理解すべきである。
【0096】
いくつかの実施形態において、コア粒子は、第1のポリマーリンカーに結合している。いくつかの実施形態において、コア粒子は、第2のポリマーリンカーに結合している。いくつかの実施形態において、コア粒子は、第3のポリマーリンカーに結合している。いくつかの実施形態において、コア粒子は、第1、第2及び第3のポリマーリンカーに結合している。
【0097】
「結合した」という用語は、「コンジュゲート」という用語と互換的に使用することができる。いくつかの実施形態において、結合は共有結合によりコンジュゲートされる。「共有結合的付着」、「共有結合による付着」、「共有結合による連結」及び「共有結合」という用語は、本明細書では互換的に使用され、原子間の電子対の共有を特徴とする化学結合の形成を指す。例えば、共有結合により付着した薬剤コーティングは、他の手段、例えば、接着又は静電相互作用を介した表面への付着と比較して、官能化された物質表面と化学結合を形成する薬剤コーティングを指す。表面に共有結合により付着している薬剤(例えば、ポリマー)は、共有結合付着に加えて他の手段を介して結合することもできることが認識されるであろう。
【0098】
いくつかの実施形態において、ポリマー部分及び/又はリンカーは、共有結合による付着、半共有結合による付着及び非共有結合による付着からなる群から選択される化学的付着を介してコア粒子の外表面に付着している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、ポリマー部分及び/又はリンカーは、半共有結合による付着を介してコア粒子の外表面に付着している。本明細書で使用する場合、「半共有結合による付着」という用語は、結合を形成する共有電子対が同一原子に由来する配位結合を指す。本開示において、金属粒子、例えば、金粒子と、チオール基との間に半共有結合による付着が起こり得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーの少なくとも1つは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第1及び第3のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第2及び第3のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、直鎖状ポリマーリンカーは、前記直鎖状ポリマーの両端に2種類の官能基/反応基を有する二官能性直鎖状ポリマーである。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーの各々は、独立して、前記直鎖状ポリマーの両端に2種類の官能基/反応基を有する直鎖状二官能性ポリマーリンカーである。
【0100】
本明細書で使用する場合、「直鎖状」ポリマー/ポリマーリンカーという用語は、いくつかの実施形態において、モノマー単位の少なくとも80%が直線的に、すなわち、一本鎖のポリマー鎖の形態で連結されているポリマー/ポリマーリンカーを指す。さらなる実施形態において、「直鎖状」ポリマー/ポリマーリンカーという用語は、モノマー単位の少なくとも90%が直線的に連結されているポリマー/ポリマーリンカーを指す。さらなる実施形態において、「直鎖状」ポリマー/ポリマーリンカーという用語は、モノマー単位の約100%が直線的に接続されているポリマー/ポリマーリンカーを指す。本明細書で使用する場合、「一本鎖ポリマー鎖」という用語は、1つが各モノマー単位上にある2つの原子を介して、モノマー単位が互いに結合するように接続されているモノマーを含むポリマー鎖を指す。
【0101】
いくつかの実施形態において、多機能システムは、コア粒子に結合している追加のポリマー部分をさらに含む。いくつかの実施形態において、追加のポリマー部分は、直鎖状ポリマーである。いくつかの実施形態において、追加のポリマー部分は、粒子上の官能基を閉じるか又は不活性化し、生物活性分子を担持するリンカー間の距離を可能にするためのキャッピングとして使用される単官能性ポリマーである。いくつかの実施形態において、追加のポリマー部分は、単官能性ポリマーリンカーである。追加のポリマー部分は、そのため、いくつかの実施形態において、コア粒子に結合している第4のポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、コア粒子は、第1、第2、第3及び第4のポリマーリンカーに結合する。いくつかの実施形態において、第4のポリマーリンカーは、単官能性であり、すなわち、元々、前記ポリマーリンカーをコア粒子にコンジュゲートし、キャッピング部分として使用されるように構成された単一の官能末端基を有する。いくつかの実施形態において、第4のポリマーリンカーは、直鎖状単官能性ポリマーである。
【0102】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、限定されるものではないが、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0103】
本明細書で使用する場合、「誘導体」という用語は、コア構造が親化合物と同じであるか、又は親化合物と非常に類似しているが、化学的又は物理的修飾、例えば限定されないが、アルコキシ基、カルボキシ基、アミン基、メトキシ基及びチオール基などの異なる基若しくは追加の基を有する化合物を指す。
【0104】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーはポリエーテルを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーはポリエーテルである。いくつかの実施形態において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。
【0105】
適切な場合、略語(PEG)は、PEGの平均分子量を示す数値接尾辞と組み合わせて使用される。PEG又はPEG種の形態は、指定された平均分子量を有するPEG又はPEG誘導体である。
【0106】
本明細書で使用する場合、「PEG又はその誘導体」は、少なくとも1つのポリエチレングリコール部分を含む任意の化合物を指す。PEGは、マルチアーム及び/又はグラフトポリエチレングリコールを含む直鎖状及び分岐状で存在する。「PEG誘導体」という用語は、本明細書で使用する場合、末端ヒドロキシ基のアルキル化によって修飾されるPEGに関する。いくつかの実施形態において、末端ヒドロキシル基は、直鎖状又は分岐状のC1~C6アルキルによってアルキル化される。PEGは、官能基をさらに含んでもよい。PEGは、単官能、二官能、又は多官能性ポリエチレングリコールであり得る。
【0107】
例示的な官能基としては、以下のもの:ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、アミン、リン酸、ホスホネート、硫酸、亜硫酸、スルホン酸、スルホキシド、スルホン、アミド、エステル、ケトン、アルデヒド、シアノ、アルキン、アジド、及びアルケン、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、チオール(-SH)末端基を含む。いくつかの実施形態において、前記第1のポリマーリンカーは、前記チオール(-SH)末端基を介してコア粒子に化学的に付着している。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、アミド結合を介して第1の活性剤にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は、スルフィド結合を介して第1のポリマーリンカーに結合し、第1の活性剤は、アミド結合を介して前記第1のポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は無機粒子であり、スルフィド結合を介して第1のポリマーリンカーに結合し、第1の活性剤は、アミド結合を介して前記第1のポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、共送達システム内の第1のポリマーリンカーは、構造-S-R-CONH-を有し、式中Rは、反復モノマー単位からなるポリマー鎖である。他の実施形態において、共送達システム内の第1のポリマーリンカーは、構造-S-R-NHCO-を有し、式中Rは、反復モノマー単位からなるポリマー鎖である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)及びチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)から選択される。HS及びCOOH/NH2末端基は、コア粒子及び活性剤とコンジュゲートする前のポリマーリンカーを指すことを理解されたい。いくつかの実施形態において、チオール基はコア粒子に化学的に付着し、酸又はアミン基は第1の活性剤に共有結合によりコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、共送達システム内の第1のポリマーリンカーは、-S-PEG-C(O)-及び-S-PEG-NH-から選択される構造を有する。
【0109】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、切断不能リンカーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、生理的条件下で切断不能である。
【0110】
本明細書で使用する場合、「切断不能」という用語は、酸又は塩基感受性ではなく、還元剤又は酸化剤に感受性を示さず、細胞内又は循環系に見出され得る酵素に感受性を示さない安定結合を指す。いくつかの実施形態において、切断不能ポリマーリンカーは、pH感受性ヒドラゾンを欠く。いくつかの実施形態において、切断不能ポリマーリンカーは、ジスルフィド結合を欠く。いくつかの実施形態において、切断不能ポリマーリンカーは、エステル結合を欠く。「ポリマーリンカーは切断不能である」という用語は、コア粒子とポリマーリンカーとの間の結合;それぞれのポリマーリンカーとそれぞれの活性剤との間の結合;又はそれぞれのポリマーリンカーと脳内在化トランスポーター部分との間の結合、並びにポリマーリンカー自体の中の任意の結合を包含することを意味すると理解されたい。
【0111】
さらにいくつかの実施形態において、粒子は、切断可能なリンカー、例えば、SH-PEG-SHリンカーを介して接続されている化学療法剤又は毒素を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、2,000~7,000ダルトン(Da)の分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、500~10,000Da、1,000~10,000Da、600~9,500Da、700~9,000Da、800~8,500Da、800~6,000Da、800~5,000Da、800~4,000Da、800~3,000Da、800~2,000Da、900~8,000Da、1,000~7,000Da、1,500~6,500Da、2,000~6,000Da、3,000~6,000Da、4,000~6,000Da、1,000~2,000Da、1,000~3,000Da、1,000~4,000Da、1,000~5,000Da、1,000~7,000Da、3,400~7,000Da、2,000~3,000Da、2,000~5,000Da、2,000~7,000Da、2,000~10,000Da、3,000~3,400Da、3,000~4,000Da 3,000~5,000Da、3,000~7,000Da、3,000~10,000Da、5,000~7,000Da、5,000~10,000Da、及び7,000~10,000Daからなる群から選択される範囲内の分子量(MW)を有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカーは、少なくとも1,000Da、少なくとも1,500Da、少なくとも2,000Da、少なくとも2,500Da、少なくとも3,000Da、少なくとも3,400Da、少なくとも4,000Da、少なくとも5,000Da、少なくとも6,000Da、少なくとも7,000Da、又は少なくとも8,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカーは、最大2,000Da、最大3,000Da、最大4,000Da、最大5,000Da、最大6,000Da、最大7,000Da、又は最大10,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0113】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0114】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、ポリエーテルを含む。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーはポリエーテルである。いくつかの実施形態において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。
【0115】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、チオール(-SH)末端基を含む。いくつかの実施形態において、前記第2のポリマーリンカーは、チオール(-SH)末端基を介してコア粒子に化学的に付着している。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、アミド結合を介して第2の活性剤にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は、スルフィド結合を介して第2のポリマーリンカーに結合し、第2の活性剤は、アミド結合を介して前記第2のポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は無機粒子であり、スルフィド結合を介して第2のポリマーリンカーに結合し、第2の活性剤は、アミド結合を介して前記第2のポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、共送達システム内の第2のポリマーリンカーは、構造-S-R-CONH-を有し、式中Rは、反復モノマー単位からなるポリマー鎖である。他の実施形態において、共送達システム内の第2のポリマーリンカーは、構造-S-R-NHCO-を有し、式中Rは、反復モノマー単位からなるポリマー鎖である。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)及びチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)から選択される。HS及びCOOH/NH2末端基は、コア粒子及び活性剤とコンジュゲートする前のポリマーリンカーを指すことを理解されたい。いくつかの実施形態において、チオール基はコア粒子に化学的に付着し、酸又はアミン基は第2の活性剤に共有結合によりコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、共送達システム内の第2のポリマーリンカーは、-S-PEG-C(O)-及び-S-PEG-NH-から選択される構造を有する。
【0116】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、切断不能リンカーである。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、生理的条件下で切断不能である。
【0117】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、2,000~7,000Daの分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、500~10,000Da、600~9,500Da、700~9,000Da、800~8,500Da、800~6,000Da、800~5,000Da、800~4,000Da、800~3,000Da、800~2,000Da、900~8,000Da、1,000~7,000Da、1,500~6,500Da、2,000~6,000Da、3,000~6,000Da、4,000~6,000Da、1,000~2,000Da、1,000~3,000Da、1,000~4,000Da、1,000~5,000Da、1,000~7,000Da、1,000~10,000Da、2,000~3,000Da、2,000~5,000Da、2,000~7,000Da、2,000~10,000Da、3,000~10,000Da、3,000~7,000Da、3,000~5,000Da、3,000~3,400Da、3,000~7,000Da、5,000~7,000Da、5,000~10,000Da、及び7,000~10,000Daからなる群から選択される範囲内のMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第2のポリマーリンカーは、少なくとも1,000Da、少なくとも1,500Da、少なくとも2,000Da、少なくとも2,500Da、少なくとも3,000Da、少なくとも3,400Da、少なくとも4,000Da、少なくとも5,000Da、少なくとも6,000Da、少なくとも7,000Da、又は少なくとも8,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第2のポリマーリンカーは、最大2,000Da、最大3,000Da、最大4,000Da、最大5,000Da、最大6,000Da、最大7,000Da又は最大10,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、異なるポリマーを含む。いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、異なるポリマーである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、同じポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは同一である。
【0119】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される同じポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの両方がPEGを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの両方がPEGである。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの両方がチオール化PEGを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)又はチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)を含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)又はチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの両方が、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)である。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの両方が、チオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0121】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、ポリエーテルを含む。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーはポリエーテルである。いくつかの実施形態において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。
【0122】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、チオール(-SH)末端基を含む。いくつかの実施形態において、前記第3のポリマーリンカーは、チオール(-SH)末端基を介してコア粒子に化学的に付着している。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、アミド結合を介して脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は、スルフィド結合を介して第3のポリマーリンカーに結合し、脳内在化トランスポーター部分は、アミド結合を介して前記第3のポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、コア粒子は、無機粒子であり、スルフィド結合を介して第3のポリマーリンカーに結合し、脳内在化トランスポーター部分は、アミド結合を介して前記第3のポリマーリンカーにコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、共送達システム内の第3のポリマーリンカーは、構造-S-R-CONH-を有し、式中Rは、反復モノマー単位からなるポリマー鎖である。他の実施形態において、共送達システム内の第3のポリマーリンカーは、構造-S-R-NHCO-を有し、式中Rは、反復モノマー単位からなるポリマー鎖である。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)及びチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)から選択される。HS及びCOOH/NH2末端基は、コア粒子及び脳内在化トランスポーター部分とのコンジュゲーション前のポリマーリンカーを指すことを理解されたい。いくつかの実施形態において、チオール基はコア粒子に化学的に付着し、酸又はアミン基は、脳内在化トランスポーター部分に共有結合によりコンジュゲートしている。いくつかの実施形態において、共送達システム内の第3のポリマーリンカーは、-S-PEG-C(O)-及びS-PEG-NH-から選択される構造を有する。
【0123】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、2,000~7,000Daの分子量(MW)を有する。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、2,000~10,000Da、2,000~9,500Da、2,000~9,000Da、2,000~8,500Da、2,000~6,000Da、2,000~5,000Da、2,000~4,000Da、2,000~3,000Da、Da、2,000~8,000Da、2,000~7,000Da、2,000~6,500Da、2,000~6,000Da、3,000~6,000Da、4,000~6,000Da、2,000~3,000Da、2,000~4,000Da、2,000~5,000Da、2,000~7,000Da、2,000~11,000Da、2,000~3,000Da、2,000~5,000Da、2,000~7,000Da、2,000~10,000Da、3,000~10,000Da、3,000~7,000Da、3,000~5,000Da、3,000~3,400Da、3,400~7,000Da、5,000~7,000Da、5,000~10,000Da、及び7,000~10,000Daからなる群から選択される範囲のMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第3のポリマーリンカーは、少なくとも2,000、少なくとも2,500Da、少なくとも3,000Da、少なくとも3,400Da、少なくとも4,000Da、少なくとも5,000Da、少なくとも6,000Da、少なくとも7,000Da又は少なくとも8,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第3のポリマーリンカーは、最大2,000Da、最大3,000Da、最大4,000Da、最大5,000Da、最大6,000Da、最大7,000Da又は最大10,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0124】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、切断不能リンカーである。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、生理的条件下で切断不能である。
【0125】
いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーの少なくとも1つ、又は追加のポリマーリンカーは、切断可能なリンカーを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、切断可能なリンカーを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの各々は、独立して切断可能なリンカーを含む。いくつかの実施形態によれば、切断可能なリンカーはSH-PEG-SHである。いくつかの実施形態によれば、切断可能なリンカーは、脳内に位置するか、又は脳内で発現される内因性分子による切断を受けやすい結合を含む。いくつかの実施形態において、切断可能なリンカーは、PEGコハク酸スクシンイミジル(PEGSS)である。いくつかの実施形態によれば、内因性分子はグルタチオンである。いくつかの実施形態によれば、内因性分子は、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ヒドロニウムイオン、及び還元剤からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、内因性分子は、ニューロセルピン及びセルピンBから選択される。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、切断可能なリンカーは、化学療法分子又は毒素を多機能粒子に接続する。
【0126】
抗がん活性を有することが当技術分野において公知である任意の化学療法分子又は毒素を、本発明の多機能送達システムにおいて用いることができる。化学療法分子としては、イリノテカン、デルクステカン、エムタンシン、ミトキサントロン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカ由来の紡錘体毒:ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(タキソール)、パクリタキセル、ドセタキセル;アルキル化剤:メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド;メトトレキサート;6-メルカプトプリン;5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン;ポドフィロトキシン:エトポシド、トポテカン、ダカルバジン;抗生物質:ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ブレオマイシン、マイトマイシン;ニトロソウレア:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン;無機イオン:シスプラチン、カルボプラチン;インターフェロン、アスパラギナーゼ;ホルモン:タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、及び酢酸メゲストロールが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体及び関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロ毒素、抗生物質、L-アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位錯体、アントラセンジオン置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、及びゴナドトロピン放出ホルモン類似体から選択される。別の実施形態によれば、化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される。1種以上の化学療法剤を本発明の多機能送達システムと共に使用することができる。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、毒素は、微小管阻害剤、DNA合成阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤及びRNAポリメラーゼ阻害剤から選択される。追加の実施形態によれば、毒素は、MMAE、MMAF、サポリン、DM4、DM1、SN38、カリケアマイシン、DXd、PBD、デュオカルマイシン、サンドラマイシン、アルファ-アマニチン、ケトシン、CYT997、ダウノルビシン、17-AAG、アグロケリンA、ドキソルビシン、メトトレキサート、コルヒチン、コルジセピン、エポチロンB、ハイグロリジン、ヘルボキシジエン、フェルレノール、クルブリン、パクリタキセル、エングレリンA、タルトブリン、トリプトリド、クリプトフィシン、及びネモルビシンからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、多機能粒子は、切断分子誘導剤をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、切断分子誘導剤は、N-アセチル-l-システイン(NAC)、グルタチオンモノエステル、γ-グルタミルシステイン、γ-グルタミルシステイン合成酵素、グルタチオン合成酵素からなる群から選択される。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0130】
いくつかの実施形態において、内因性分子はグルタチオンであり、切断分子誘導剤は、N-アセチル-l-システイン(NAC)、グルタチオンモノエステル、ガンマ-グルタミルシステイン、ガンマ-グルタミルシステイン合成酵素、グルタチオン合成酵素からなる群から選択される。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、第3のポリマーリンカーとは異なる。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、第3のポリマーリンカーと同じポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー、第2のポリマーリンカー及び第3のポリマーリンカーは、同じポリマーを含む。さらなる実施形態において、第1のポリマーリンカーは、反復モノマー単位で構成され、第3のポリマーリンカーは、第1の直鎖状ポリマーリンカーと同じ反復モノマー単位で構成される。いくつかの関連する実施形態において、第1の直鎖状ポリマーリンカーは、第3の直鎖状ポリマーリンカーとは異なる数の反復モノマー単位を有する。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、反復モノマー単位で構成され、第3のポリマーリンカーは、第2の直鎖状ポリマーリンカーと同じ反復モノマー単位で構成される。いくつかの関連する実施形態において、第2の直鎖状ポリマーリンカーは、第3の直鎖状ポリマーリンカーとは異なる数の反復モノマー単位を有する。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは同一であり、反復モノマー単位で構成され、第3のポリマーリンカーは、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーと同じ反復モノマーユニットで構成される。いくつかの関連する実施形態において、第1及び第2の直鎖状ポリマーリンカーは、第3の直鎖状ポリマーリンカーとは異なる数の反復モノマー単位を有する。
【0132】
いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖類、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される同じポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーはPEGを含む。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーはPEGである。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、チオール化PEGを含む。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)又はチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)を含む。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)又はチオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)である。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、チオール化PEG酸(HS-PEG-COOH)である。いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは、チオール化PEGアミン(HS-PEG-NH2)である。
【0133】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤は、前記リンカーの第1の官能末端基を介して第1のポリマーリンカーに共有結合によりコンジュゲートし、第2の活性剤は、前記リンカーの第2の官能末端基を介して第2のポリマーリンカーに共有結合によりコンジュゲートし、脳内在化トランスポーター部分は、前記リンカーの第3の官能末端基を介して第3のポリマーリンカーに共有結合によりコンジュゲートしている。例示的な官能末端基としては、チオール基、カルボキシル基、及びアミン基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、第1の官能末端基、第2の官能末端基及び第3の官能末端基の少なくとも2つは、同一である。いくつかの実施形態において、第1の官能末端基及び第2の官能末端基は同一である。いくつかの実施形態において、第1の官能末端基及び第3の官能末端基は同一である。いくつかの実施形態において、第2の官能末端基及び第3の官能末端基は同一である。いくつかの実施形態において、第1の官能末端基、第2の官能末端基及び第3の官能末端基は同一である。
【0134】
いくつかの実施形態において、第1の官能末端基及び第2の官能末端基は異なる。いくつかの実施形態において、第1の官能末端基及び第3の官能末端基は異なる。いくつかの実施形態において、第2の官能末端基及び第3の官能末端基は異なる。
【0135】
いくつかの実施形態において、第1、第2及び第3のポリマーリンカーは直鎖状である。本発明の原理によれば、第3のポリマーリンカーの長さは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方の長さと実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの長さは、第1のポリマーリンカーの長さと実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの長さは、第2のポリマーリンカーの長さと実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの長さは、第1のポリマーリンカーと第2のポリマーリンカーの両方の長さと実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーの長さは、第2のポリマーリンカーの長さと実質的に類似しており、第3のポリマーリンカーの長さは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの両方の長さと実質的に異なる。
【0136】
いくつかの実施形態において、ポリマー部分又はリンカーの「長さ」という用語は、その中に組み込まれたモノマーの数、各モノマー単位の長さ、ポリマー鎖構造(例えば、ポリマーが直鎖状か分岐状かどうか)、空間的立体構造、価角(又は結合角)の変形、及び伸び又はコイリングの程度に依存するポリマーの長さを指す。
【0137】
ポリマーの長さは、例えば、高分子物理学入門(Introduction to Physical Polymer Science)、第4版、L.H.Sperling、第1版:2005年11月4日、第3章に記載されているように、当技術分野で公知のように計算することができる。さらに、当技術分野で公知であるように、ポリマーの長さを評価するために、特に、Hyperchem、ACD/3D、MOE 2010.10、又はChem 3Dソフトウェアを使用して実行できる様々な計算モデリング方法を使用することができる。例えば、光散乱などの物理的特徴付け方法も、ポリマーの長さを評価するために使用することができる。ポリマーリンカーの長さの差を評価する場合、比較されるポリマーリンカーについて同じ長さの定義(又は長さ測定方法)を使用しなければならないことを理解されたい。
【0138】
直鎖状ポリマーを指す場合の「長さ」という用語は、異なる長さの定義を指すことができる。いくつかの実施形態によれば、「長さ」という用語は、コイル状ポリマーのポリマー鎖の2つの末端間の距離である、本明細書では「端から端まで」の長さとも呼ばれる変位長さを指す。端から端までの長さは、例えば、フローリー半径:
(化1)
F=an3/5
式I
(式中、F=フローリー半径、a=モノマー寸法、n=重合度)
として表すことができる。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、「長さ」という用語は、ポリマーが引き伸ばされたときのポリマー鎖の2つの末端間の距離である輪郭長さを指す。輪郭長さは、可能な最大の変位長さと見なすことができる。輪郭長さ(本明細書では「古い輪郭長さ」ともいう)は、ポリマーのMWをモノマー単位のMWで除算し、モノマー単位の長さを乗算することによって計算することができる。結合角を考慮するために、輪郭長さ(本明細書では「新しい輪郭の長さ」ともいう)は、ポリマーのMWをモノマー単位のMWで除算し、モノマー単位の長さを乗算し、さらに((結合角シータ-180)/2)の余弦を乗算することによって計算することができる。
【0140】
本明細書上記で説明したように、直鎖状ポリマーの長さは、その分子量及びモノマー単位の化学構造に基づいて推定することができる。同じポリマーを含むポリマーリンカー(すなわち、同じ種類で構成されているがモノマー単位数が異なる)の差を評価するために、ポリマーリンカーの分子量を簡便に用いることができる。したがって、いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、第1の及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方の分子量と実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、第1のポリマーリンカーの分子量と実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、第2のポリマーリンカーの分子量と実質的に異なる。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの分子量と実質的に異なる。
【0141】
本明細書で使用する場合、「実質的に異なる」という用語は、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%の差を指す。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。「実質的により高い」という用語は、第1の値が第2の値よりも高いことを意味し、第1の値と第2の値との差は、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、少なくとも20%であり、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%である。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0142】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーのモノマー単位の分子量は、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方のモノマー単位の分子量と実質的に類似している。本明細書で使用する場合、「実質的に類似している」という用語は、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、又は少なくとも95%の類似性を指す。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0143】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーと、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、類似のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、反復モノマー単位で構成され、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方は、第3の直鎖状ポリマーリンカーと同じ反復モノマー単位で構成され、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、第1の直鎖状ポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方とは異なる数の反復モノマー単位を有する。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーと、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、前記第3及び前記第1及び/又は第2のポリマーリンカーの長さを除いて類似している。
【0144】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーと、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、少なくとも約100Da、少なくとも約150Da、少なくとも約200Da、少なくとも約250Da、少なくとも約300Da、少なくとも約350Da、少なくとも約400Da、少なくとも約450Da、少なくとも約500Da、少なくとも約550Da、少なくとも約600Da、少なくとも約650Da、少なくとも約700Da、少なくとも約750Da、少なくとも約800Da、少なくとも約850Da、少なくとも約900Da、少なくとも約950Da、少なくとも約1000Da、少なくとも約1100Da、少なくとも約1200Da、少なくとも約1300Da、少なくとも約1400Da、少なくとも約1500Da、少なくとも約1600Da、少なくとも約1700Da、少なくとも約1800Da、少なくとも約1900Da、又は少なくとも約2000Daのそれぞれの分子量の差を有する。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0145】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの長さと、第1のポリマーリンカー及び第2の直鎖状ポリマーリンカーの少なくとも一方の長さとの間の差は、BBBに面する共送達システムの外表面上の脳内在化トランスポーター部分の露出を可能にするように構成される。活性剤は、コア粒子内に封入又はカプセル化されるのではなく、むしろ、ポリマーリンカーを介して同じコア粒子の表面に付着している脳内在化部分と同様に、ポリマーリンカーを介してその外表面に付着いることを理解されたい。理論又は作用機序に縛られることなく、第1及び/又は第2のポリマーリンカーと類似の長さを有するポリマー鎖を介して脳内在化トランスポーター部分を付着させることは、共送達システムの外表面における前記脳内在化部分の十分な露出を防止し、それによってシステムがBBBを通過するのを制限し得ることが企図される。
【0146】
さらに、理論又は作用機序に縛られることなく、コア粒子内に封入又はカプセル化されていない活性剤は、多機能システムに結合しているにもかかわらず、アクセス可能で活性であり続けることが企図される。有利には、特定の階層構造を有するコンジュゲート粒子の形成を確実にする本発明の多機能システムの特定の組成は、様々な種類の活性剤の組み合わせの送達を可能にするだけでなく、活性剤の機能性を妨害せず、BBBを通過した後に活性剤の少なくとも一方とコア粒子との間の連結の切断を必ずしも必要としない。
【0147】
したがって、いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方の分子量よりも高い。さらなる実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、第1のポリマーリンカーと第2のポリマーリンカーの両方の分子量よりも高い。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、前記第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量が4950Da未満であることを条件として、第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量よりも高い。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、前記第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量が4900Da未満であることを条件として、第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量よりも高い。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、前記第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量が4800Da未満であることを条件として、第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量よりも高い。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの分子量は、前記第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量が4780Da未満であることを条件として、第1及び/又は第2のポリマーリンカーの分子量よりも高い。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、約5000Daの分子量を有するPEG誘導体であり、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方は、約3500kDaの分子量を有するPEG誘導体である。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、約5000Daの分子量を有するPEG誘導体であり、第1のポリマーリンカーと第2のポリマーリンカーの両方は、約3500kDaの分子量を有するPEG誘導体である。
【0148】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方の分子量よりも高い分子量を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーリンカーのMWは、活性分子及び脳内在化部分の相対分子量に直接依存する。いくつかの実施形態において、第1の活性分子は、脳内在化部分よりも高いMWを有し、第1のポリマーリンカーは、第3のポリマーリンカーよりも低いMWを有する。いくつかの実施形態において、第2の活性分子は、脳内在化部分よりも高いMWを有し、第2のポリマーリンカーは、第3のポリマーリンカーよりも低いMWを有する。
【0149】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、第1及び/又は第2のポリマーリンカーよりも長い。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、第1及び/又は第2のポリマーリンカーよりも長い端から端までの距離を有する。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、第1及び/又は第2のポリマーリンカーよりも長い輪郭距離を有する。
【0150】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方のMWよりも低いMWを有する。いくつかの関連する実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーのうちの少なくとも一方のMWは、少なくとも約4000Daである。さらなる関連する実施形態において、第1のポリマーリンカーのMWと、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーの少なくとも一方のMWとの差は、少なくとも約2000Daである。理論又は作用機序に縛られることなく、有意により長い第1及び/又は第2のリンカーは、ポリマー鎖のフォールディング(又はより高い割合のコイリング)を可能にし、その結果、それぞれの活性剤とコア粒子との実際の距離が、脳内在化部分とコア粒子との距離よりも小さくなり、活性剤が、BBB透過中に多機能粒子の表面に露出する脳内在化部分によって少なくとも部分的に遮蔽されることが企図される。いくつかの関連する実施形態において、第3のポリマーリンカーの端から端までの距離は、前記第1及び/又は第2のポリマーリンカーのMWがより高いにもかかわらず、第1及び/又は第2のポリマーリンカーの端から端までの距離よりも長い。
【0151】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤とコア粒子との距離及び第2の活性剤とコア粒子との距離は、脳内在化部分とコア粒子との距離よりも小さい。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの少なくとも1つの末端基は、第1のポリマーリンカーの少なくとも1つの末端基と類似している。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの少なくとも1つの末端基は、第2のポリマーリンカーの少なくとも1つの末端基と類似している。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの2つの末端基は、第1のポリマーリンカーの2つの末端基と類似している。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーの2つの末端基は、第2のポリマーリンカーの2つの末端基と類似している。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーの2つの末端基は、第2のポリマーリンカーの2つの末端基と類似している。
【0152】
いくつかの実施形態において、コア粒子は、追加の第4のポリマーに結合している。いくつかの実施形態において、前記ポリマーは、単官能性ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、コア粒子は、第1のポリマーリンカー、第2のポリマーリンカー、第3のポリマーリンカー及び追加の第4のポリマーリンカーを含むポリマー層でコーティングされ、追加のポリマーリンカーは、単官能性であり、粒子上の官能基をキャッピングするために使用され、他のリンカーと活性分子及びトランスポーターとの間の十分な距離を可能にする。「第4のポリマー」及び「第4のポリマーリンカー」という用語は、互換的に使用することができる。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、スペーサー部分として機能する。いくつかの実施形態において、第4のポリマーリンカーは、直鎖状ポリマーリンカーである。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリ無水物、ポリビニルアルコール、多糖類、アポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリグリセリン(PG)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリオキサゾリン、ポリ(アミノ酸)ベースのハイブリッド、組換えポリペプチド、誘導体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0153】
本明細書で使用する場合、「単官能性」という用語は、コア粒子にコンジュゲートする前のポリマーが、前記ポリマーをコア粒子にコンジュゲートするように構成された1種類の官能基のみを有することを意味する。したがって、単官能性ポリマーリンカーは、コンジュゲートしておらず、コア粒子以外のいかなる部分もコンジュゲートすることができず、キャッピング部分として使用される。
【0154】
いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、第1及び/又は第2のポリマーと同じモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、第3のポリマーリンカーと同じモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、第1、第2、第3及び第4のポリマーは、同じモノマー単位を含む。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、前記ポリマーのチオール末端基を介してコア粒子に結合している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーはポリエーテルである。いくつかの実施形態において、ポリエーテルは、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)又はその誘導体である。いくつかの実施形態において、mPEGはチオール化され(mPEG-SH)、前記チオール化mPEGは、チオール末端基を介してコア粒子に結合している。
【0155】
いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、1,000~7,000DaのMWを有する。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、500~1,000Da、500~3,000Da、500~7,000Da、500~10,000Da、1,000~3,000Da、1,000~4,000Da、1,000~5,000Da、1,000~7,000Da、1,000~10,000Da、3,000~5,000Da、3,000~7,000Da、3,000~10,000Da、7,000~10,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第4のポリマーは、少なくとも1,000Da、少なくとも2,000Da、少なくとも3,000Da、少なくとも4,000Da、少なくとも5,000Da、少なくとも6,000Da、少なくとも7,000Da、又は少なくとも8,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、第4のポリマーは、最大1,000Da、最大2,000Da、最大3,000Da、最大4,000Da、最大5,000Da、最大6,000Da、最大7,000Da、又は最大10,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0156】
いくつかの実施形態において、第4のポリマーの長さは、第1のポリマーリンカー、第2のポリマーリンカー及び第3のポリマーリンカーの少なくとも1つの長さと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーの長さは、第1のポリマーリンカーの長さと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーの長さは、第2のポリマーリンカーの長さと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーの長さは、第3のポリマーリンカーの長さと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーの長さは、その長さが、他のポリマーリンカーの少なくとも1つの長さよりも長いポリマーリンカー(第1、第2又は第3)の長さと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーの分子量は、他のポリマーリンカーの少なくとも1つよりも高い分子量を有するポリマーリンカー(第1、第2又は第3)の分子量と実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーのMWは、第1のポリマーリンカーのMWと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーのMWは、第2のポリマーリンカーのMWと実質的に類似している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーのMWは、第3のポリマーリンカーのMWと実質的に類似している。
【0157】
理論又は作用機序に縛られることなく、本発明の共送達システムの有効性は、異なるポリマーリンカーのモル比にも依存し、前記比は、共送達システム内の脳内在化トランスポーター部分及び活性剤の密度を規定する。
【0158】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約5~70モル%、5~60モル%、5~40モル%、8~60モル%、10~60モル%、10~55モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、10~25モル%、10~20モル%、15~60モル%、15~55モル%、15~50モル%、15~45モル%、15~40モル%、15~30モル%、15~25モル%、15~20モル%、2~10モル%、2~20モル%、2~50モル%、2~60モル%、2~70モル%、5~10モル%、5~20モル%、5~70モル%、10~20モル%、10~50モル%、10~70モル%、20~50モル%、20~40モル%、30~50モル%、30~60モル%、30~70モル%、50~60モル%又は50~70モル%を構成している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの少なくとも2モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも6モル%、少なくとも8モル%、少なくとも10モル%、少なくとも12モル%、少なくとも15モル%、少なくとも18モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、又は少なくとも60モル%を構成している。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0159】
いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約5~70モル%、5~60モル%、5~40モル%、8~60モル%、10~60モル%、10~55モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、10~25モル%、10~20モル%、15~60モル%、15~55モル%、15~50モル%、15~45モル%、15~40モル%、15~40モル%、15~30モル%、15~25モル%、15~20モル%、2~10モル%、2~20モル%、2~50モル%、2~60モル%、2~70モル%、5~10モル%、5~20モル%、5~70モル%、10~20モル%、10~50モル%、10~70モル%、20~50モル%、20~40モル%、30~50モル%、30~60モル%、30~70モル%、50~60モル%又は50~70モル%を構成している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、第2のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの少なくとも2モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも6モル%、少なくとも8モル%、少なくとも10モル%、少なくとも12モル%、少なくとも15モル%、少なくとも18モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、又は少なくとも60モル%を構成している。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0160】
いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約5~70モル%、5~60モル%、5~40モル%、8~60モル%、10~60モル%、10~55モル%、10~50モル%、10~40モル%、10~30モル%、10~25モル%、10~20モル%、15~60モル%、15~55モル%、15~50モル%、15~45モル%、15~40モル%、15~30モル%、15~25モル%、15~20モル%、2~10モル%、2~20モル%、2~50モル%、2~60モル%、2~70モル%、5~10モル%、5~20モル%、5~70モル%、10~20モル%、10~50モル%、10~70モル%、20~50モル%、20~40モル%、30~50モル%、30~60モル%、30~70モル%、50~60モル%又は50~70モル%を構成している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、第3のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの少なくとも2モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも6モル%、少なくとも8モル%、少なくとも10モル%、少なくとも12モル%、少なくとも15モル%、少なくとも18モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも50モル%、又は少なくとも60モル%を構成している。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0161】
いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約5~90モル%、5~85モル%、5~80モル%、10~80モル%、20~78モル%、25~75モル%、30~75モル%、40~75モル%、50~75モル%、60~75モル%、60~70モル%、60~80モル%、5~60モル%、10~60モル%、10~55モル%、10~50モル%、10~40モル%、15~60モル%、15~55モル%、15~50モル%、15~45モル%又は15~40モル%を構成している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、コア粒子に結合している全ポリマーの60~80モル%を構成している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、コア粒子に結合している全ポリマーの50~80モル%を構成している。いくつかの実施形態において、第4のポリマーは、コア粒子に結合している全ポリマーの少なくとも2モル%、少なくとも4モル%、少なくとも5モル%、少なくとも6モル%、少なくとも8モル%、少なくとも10モル%、少なくとも12モル%、少なくとも15モル%、少なくとも18モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、又は少なくとも70モル%を構成している。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0162】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約5~45モル%を構成し、第2のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約5~45モル%を構成し、第3のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約10~45モル%を構成し、かつ第4のポリマーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約40~80モル%を構成している。
【0163】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約10~40モル%を構成し、第2のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約10~40モル%を構成し、第3のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約10~40モル%を構成し、かつ第4のポリマーは、コア粒子に結合している全ポリマーの約40~70モル%を構成している。
【0164】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは、コア粒子に結合している全ポリマーリンカーの約10%~60モル%、10~50モル%、10~45モル%、10~40モル%、10~30モル%又は10~20モル%を構成している。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0165】
各ポリマーのモル%は、ポリマーの総モル%が100%を超えないように、コア粒子に結合している他のポリマーに依存することを理解されたい。
【0166】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー、第2のポリマーリンカー、第3のポリマーリンカー及び第4のポリマーの(w/w/w/w)比は、5:5:5:85~20:20:30:30である。
【0167】
本発明の原理によれば、共送達システムは、第3のポリマーリンカーにコンジュゲートしている脳内在化トランスポーター部分を含む。「脳内在化トランスポーター部分」という用語は、本明細書において「脳内在化部分」という用語と互換的に使用することができ、BBBの細胞構成成分によって発現される受容体又は表面タンパク質に特異的に結合することができる分子を指す。BBBを集合的に形成する脳微小血管系の3つの主要な細胞要素は、脳内皮細胞、星状細胞エンドフィート及び周皮細胞(PC)である。いくつかの実施形態において、脳内在化トランスポーター部分は、脳内皮細胞が発現する受容体又は表面タンパク質に結合することができる。いくつかの実施形態において、脳内在化トランスポーター部分は、星細胞足突起によって発現される受容体又は表面タンパク質に結合することができる。いくつかの実施形態において、脳内在化トランスポーター部分は、周皮細胞(PC)によって発現される受容体又は表面タンパク質に結合することができる。理論又は機序に縛られることなく、脳内在化部分が、おそらく受容体媒介性トランスサイトーシス(RMT)又は受容体媒介性エンドサイトーシス(RME)機序を介して、BBBを通る共送達システム全体の輸送を促進するという仮説が立てられる。
【0168】
いくつかの実施形態において、脳内在化部分は、限定されないが、インスリン、インスリン受容体に特異的な抗体、又はそのような抗体の一部、例えば、Fab断片、トランスフェリン、トランスフェリン受容体に特異的な抗体、又はそのような抗体の一部、トランスフェリン受容体に特異的に結合するポリペプチド、インスリン受容体に特異的に結合するポリペプチド、インスリン様成長因子1、インスリン様成長因子受容体1に特異的な抗体、又はそのような抗体の一部、インスリン様成長因子受容体1に特異的に結合するポリペプチド、アポリポタンパク質A1、B、又はE、ラクトフェリン、アンジオペップ-2、低密度リポタンパク質受容体又はリポタンパク質受容体関連タンパク質に特異的な抗体、低密度リポタンパク質受容体又はリポタンパク質受容体関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチド、ジフテリア毒素受容体に特異的な抗体、又はそのような抗体の一部、ジフテリア毒素受容体に特異的に結合するポリペプチド、及びBBB透過性細胞透過ペプチド(CPP)から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。本明細書で使用する場合、「細胞透過性ペプチド(CPP)」という用語は、有意な致死的な膜損傷を引き起こすことなく細胞膜二重層を通過する能力が増強されたペプチドを指す。「BBB透過性CPP」という用語は、BBB細胞の膜を通過することができ、したがって脳内に透過することができる細胞透過性ペプチドを指す(Zou,Li-liら Current neuropharmacology 11.2(2013):197-208.,及びStalmans,Sofieら PloS one 10.10(2015):e0139652)。
【0169】
当技術分野において公知であるトランスサイトーシスを促進することができる他の細胞タンパク質もまた、脳内在化部分として用いることができる。いくつかの実施形態において、脳内在化部分は、インスリン、トランスフェリン、低密度リポタンパク質、アポリポタンパク質A1、B、又はE、及びラクトフェリンからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、脳内在化部分は、インスリン及びトランスフェリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脳内在化部分はインスリンである。いくつかの実施形態において、脳内在化部分の分子量(MW)は、約5キロダルトン(kD)である。
【0170】
本発明の原理によれば、第1のポリマーリンカーは第1の活性剤にコンジュゲートし、第2のポリマーリンカーは第2の活性剤にコンジュゲートする。本明細書で使用する場合、「活性剤」という用語は、対象の脳に送達されることが意図され、治療薬、ターゲティング薬又は診断薬として使用できる薬剤を指す。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、生物活性分子及び標識分子から独立して選択される。いくつかの実施形態によれば、第1の活性剤は、BBB透過性不良を特徴とする。いくつかの実施形態によれば、第2の活性剤は、BBB透過性不良を特徴とする。いくつかの実施形態によれば、第1の活性剤及び第2の活性剤は、BBB透過性不良を特徴とする。いくつかの実施形態によれば、BBBを通過すると、第1及び/又は第2の活性剤は、共送達システムを、脳内の特定領域、例えば、海馬、線条体、延髄、小脳及び皮質へとさらに標的化することができる。いくつかの実施形態によれば、BBBを通過すると、第1及び/又は第2の活性剤は、ナノ送達システムを、脳内の特定の細胞集団、例えば、神経膠腫(又は他の腫瘍)細胞、ミクログリア細胞、星状細胞及びニューロン細胞へと標的化することができる。
【0171】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、限定されないが、低分子、高分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、ペプチド、化学試薬、毒素及びそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、高分子、ペプチド、毒素及び低分子からなる群から独立して選択される。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、ポリペプチド、抗体、ペプチド及び低分子からなる群から独立して選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0172】
本発明によるオリゴヌクレオチド分子は、天然、合成であり得るか又は修飾され得る任意のDNA又はRNA分子を含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、一本鎖でも、又は二本鎖でもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、アンチセンスRNA又はDNA、アプタマーオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、糖環修飾オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド有機チオリン酸(PS)類似体、CpGオリゴヌクレオチド、及びDNA酵素を含み得るが、これらに限定されない。
【0173】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤は、低分子、抗体、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びペプチドから選択される同じ種類のものである。いくつかの関連する実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは同一である。
【0174】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、生物活性分子である。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、それぞれのポリマーリンカーに連続している。本明細書で使用する場合、「生物活性分子」という用語は、システム内で生物学的応答を誘発若しくは改変することが可能であるか、又は特定の細胞受容体/マーカーに結合し、それによってシステムを特定の細胞に標的化することができる化合物又は分子を指す。いくつかの実施形態において、生物活性分子は治療薬である。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、治療応用を有する。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、診断応用を有する。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、治療応用と診断応用の両方を有する。いくつかの実施形態において、生物活性分子は、低分子、高分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、ペプチド、化学試薬、又はそれらの任意の組み合わせを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0175】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び/又は第2の活性剤は、高分子である。本明細書で定義される「高分子」という用語は、一般にモノマーの重合によって形成される非常に大きな分子を指す。いくつかの実施形態において、高分子は、ポリペプチド又はタンパク質である。いくつかの実施形態において、高分子は酵素である。いくつかの実施形態において、高分子は抗体又はその断片である。いくつかの特定の実施形態において、抗体は、抗IgG1、抗IbA1、抗HER2+(トラスツズマブ&ペルツズマブ)、抗EGFR(セツキシマブ)、抗GD2、並びに抗PD-1、抗PD-L1及び抗CTLA-4などのチェックポイント阻害剤抗体、又はそれらの断片からなる群から選択される。
【0176】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、抗原の抗原決定基の特徴と相補的な内部表面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチド又はポリペプチドのグループを指す。抗体は典型的には、2つの同一のポリペプチド鎖対を含む四量体型を有し、各対は1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有する。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。抗体は、単独若しくは他のアミノ酸配列と組み合わせた、オリゴクローナル、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ラクダ化、CDRグラフト、多重特異性、二重特異性、触媒的、ヒト化、完全ヒト、抗イディオタイプ、及び可溶性形態又は結合形態で標識され得る抗体、並びにエピトープ結合断片を含むその断片、変異体又は誘導体であり得る。抗体は、任意の種由来であり得る。抗体という用語は、Fv、Fab、Fab'、F(ab’)2一本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(ダイアボディ)及びジスルフィド結合可変領域(dsFv)を含むが、これらに限定されない結合断片も含む。特に、抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子を含む。抗体断片は、Fc領域又はその断片を含むが、これらに限定されない別の免疫グロブリンドメインに融合していても、又は融合していなくてもよい。当業者なら、scFv-Fc融合、可変領域(例えば、VL及びVH)-Fc融合及びscFv-scFv-Fc融合を含むが、これらに限定されない他の融合生成物が生成され得ることをさらに認識するであろう。
【0177】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び/又は第2の活性剤は抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、脳内の標的細胞の表面に存在する受容体に特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、特定の脳領域の細胞上に存在する受容体に特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、脳内の罹患細胞の表面に存在する受容体に特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の両方は二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び/又は第2の活性剤は、脳関連疾患又は障害に対する治療活性を有する抗体である。
【0178】
例示的な抗体としては、抗HER2+(トラスツズマブ&ペルツズマブ)、抗EGFR(セツキシマブ)、チェックポイント阻害剤抗体(抗PD-1、抗PD-L1、抗CTLA-4)、及び抗GD2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
いくつかの実施形態において、抗体は、100~120kD、100~150kD、100~200kD、100~250kD、150~200kD、150~250kD、200~250kDの分子量(MW)を有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、抗体は、少なくとも100kD、少なくとも110kD、少なくとも120kD、少なくとも130kD、少なくとも140kD、少なくとも150kD、少なくとも160kD、少なくとも180kD、少なくとも200kD、少なくとも250kDのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、抗体は、150~200kDのMWを有する。いくつかの実施形態において、抗体は、130~180kDのMWを有する。いくつかの実施形態において、抗体は、140~160kDのMWを有する。
【0180】
いくつかの特定の実施形態において、抗体は、150~200kDのMWを有し、それぞれのポリマーリンカーは、少なくとも1,000Da、少なくとも2,000Da、少なくとも2,500Da又は少なくとも3,000DaのMWを有するPEGを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、150~200kDのMWを有し、それぞれのポリマーリンカーは、最大2,000Da、最大2,500Da、最大3,000Da、最大3,500Da、最大4,000Da、最大5,000Da又は最大6,000DaのMWを有するPEGを含む。いくつかの実施形態において、抗体は150~200kDのMWを有し、それぞれのポリマーリンカーは、1,000Da~4,000DaのMWを有するPEGを含む。いくつかのそのような実施形態において、脳内在化部分は、5~6kDのMWを有するインスリンであり、第3のポリマーリンカーは、少なくとも4,000DaのMWを有するPEGを含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び/又は第2の活性剤はペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチドは、脳内の標的細胞の表面に存在する受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、特定の脳領域における細胞上に存在する受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、脳内の罹患細胞の表面に存在する受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、脳関連疾患又は障害に対する治療活性を有する。
【0182】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」という用語は、1つのD-アミノ酸又はL-アミノ酸のα-カルボキシル基と別のD-アミノ酸又はL-アミノ酸のα-アミノ基との間でのアミド結合形成によって生成される任意のポリマー化合物を指す。
【0183】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び/又は第2の活性剤は、低分子である。いくつかの実施形態において、低分子は、脳内の標的細胞の表面に存在する受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、低分子は、特定の脳領域の細胞上に存在する受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、低分子は、脳内の罹患細胞の表面に存在する受容体に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、低分子は、脳関連疾患又は障害に対する治療活性を有する。
【0184】
「低分子」という用語は、本明細書で使用する場合、一般に分子量が1000Da未満の、合成の若しくは天然に見出される有機又は無機分子を指す。上述した分子量範囲内に入る天然配列及び変異体を含むペプチド、タンパク質、又はポリペプチドの任意の断片もまた、「低分子」という用語によって包含される。
【0185】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、脳関連疾患又は障害の処置に有効である治療剤である。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、脳関連疾患の処置又は診断に使用される抗体である。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、脳関連疾患の処置又は診断に使用される低分子である。いくつかの実施形態において、低分子は、シスプラチン、ラパチニブ、ネラチニブ、及びツカチニブから選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0186】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の少なくとも一方は標識分子である。「標識分子」という用語は、本明細書で使用する場合、限定されないが、放射性分子及び蛍光分子など、適切な検出手段によって検出可能なシグナルを生じることが可能な分子を指す。いくつかの実施形態において、標識分子は診断応用を有する。いくつかの実施形態において、標識分子は診断薬である。いくつかの実施形態において、標識分子は、低分子、高分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、ペプチド又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、標識分子は低分子である。いくつかの実施形態において、標識分子は抗体である。
【0187】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、1,000ダルトン(Da)未満のMWを有する低分子である。いくつかの実施形態において、低分子は、10~50Da、10~100Da、10~500Da、10~1,000Da、50~100Da、50~500Da、50~1,000Da、100~300Da、100~500Da、100~800Da、100~1,000Da、500~800Da、500~1,000Da、800~1,000DaのMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、低分子は、1,000Da未満、900Da未満、800Da未満、700Da未満、600Da未満、500Da未満、400Da未満、300Da未満、200Da未満、100Da未満のMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、低分子は、100Da以上、200Da以上、300Da以上、400Da以上、500Da以上、600Da以上、700Da以上、800Da以上、900Da以上のMWを有する。各可能性は、個別の実施形態を表す。いくつかの特定の実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、低分子であり、それぞれのポリマーリンカーは、最大3,000Da、最大2,500、最大2,000Da、最大1,500又は最大1,000DaのMWを有するPEGを含む。各可能性は、個別の実施形態を表す。
【0188】
いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は、アンチセンスRNAである。いくつかの実施形態において、第1及び/又は第2の活性剤は薬物である。
【0189】
本発明の原理によれば、多機能システムは、脳内への2種類の活性剤の同期した共送達を可能にする。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の少なくとも一方が、その元の遊離形態ではBBB透過は不良である。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の両方ともが、それらの元の遊離形態ではBBB透過は不良である。
【0190】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、脳関連疾患又は障害に対する治療活性を有する治療剤である。共送達システムの利点の1つは、相乗効果を誘発する可能性があることである。異なる活性剤の共送達に関しては、治療結果は相加的(すなわち、各薬物の効果を個別に組み合わせることによって期待される結果)又は相乗的(すなわち、組み合わせが、個別効果を相加することによって期待されるものよりも有意な利益を生み出す)のいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の組み合わせは、相加的な治療効果をもたらす。他の実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の組み合わせは、相乗的な治療効果をもたらす。
【0191】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤が治療剤であり、第2の活性剤が、特定の表面受容体又はリガンドに結合することができ、このようにシステムを特定の脳領域又は脳内の特定の細胞集団に標的化することができるターゲティング剤であることにより、増強された集中的な処置をもたらす。いくつかの関連する実施形態において、前記第2の活性剤はさらに、脳関連疾患又は障害に対する治療活性を有する。
【0192】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の少なくとも一方は、細胞内ターゲティング能を有する分子、すなわち、細胞内高分子を標的とする分子である。いくつかの関連する実施形態において、前記分子は、切断可能なリンカーを介してコア粒子にコンジュゲートしている。
【0193】
複合疾患は多因子性である場合が多く、疾患メディエーターの冗長又は相乗的な作用、又はそれらのシグナル伝達ネットワーク間のクロストークを含む異なる受容体の上方制御を伴うことが知られている(Kontermann,R.In:MAbs.Taylor & Francis,2012.p.182-197)。その結果、複数の異なる病理学的因子及び経路を遮断すると、治療有効性の有意な改善をもたらし得る。この結果は、異なる薬物を組み合わせるか、又は二重ターゲティング戦略を使用することで達成できる。
【0194】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の両方は、特異的な表面受容体又はリガンドに結合することができる。そのため、いくつかの実施形態において、本発明の多機能システムは、2つの異なる活性剤、例えば、抗体の特異性を単一システム内で組み合わせ、脳内の異なる表面受容体又はリガンドに同時に干渉することを可能にする。いかなる理論又は作用機序にも縛られることなく、二重標的粒子(例えば、二重抗体粒子)は、1つの細胞上でタンパク質複合体形成を支持するか、又は細胞間の接触を誘発するために、脳内の異なる標的を近接させることができるという仮説が立てられる。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤は抗体であり、前記第1の活性剤及び第2の活性剤の少なくとも一方は二重特異性抗体である。そのため、いくつかの実施形態において、本発明の多機能システムは、2以上の標的に同時に干渉することを可能にする。いくつかの関連する実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の少なくとも一方は、脳関連疾患又は障害に対する治療活性をさらに有する。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の両方が、脳関連疾患又は障害に対する治療活性をさらに有する。
【0195】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤は抗体であり、第2の活性剤は、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から選択される。関連する実施形態において、第1の活性剤は抗体であり、第2の活性剤はFasリガンド(FasL)又は別の死誘導性受容体リガンドである。いくつかの実施形態において、第1の活性剤は抗体であり、第2の活性剤は、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。いくつかの実施形態において、第1の活性剤は抗体であり、第2の活性剤は低分子である。
【0196】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、抗体又はその断片である。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、抗体又はその活性断片である。いくつかの実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤の各々は、抗体又はその抗原結合断片である。いくつかの関連する実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤は、異なる抗体を含む。他の関連する実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤は、同じ抗体の異なる断片を含むか、又はそれからなる。例えば、いくつかの実施形態において、第1の活性剤は、抗体のFab領域を含むか、又はそれからなり、第2の活性剤は、同じ抗体のFc領域を含むか、又はそれからなる。他の実施形態において、第1の活性剤は、全抗体(例えば、IgG)を含むか、又はそれからなり、第2の活性剤は、同じ抗体の断片を含むか、又はそれからなる。例えば、いくつかの実施形態において、第1の活性剤は、全抗体(例えば、IgG)を含むか、又はそれからなり、第2の活性剤は、同じ抗体のFc領域を含むか、又はそれからなる。
【0197】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤はペプチドであり、第2の活性剤は、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0198】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤は低分子であり、第2の活性剤は、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0199】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤はオリゴヌクレオチドであり、第2の活性剤は、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0200】
いくつかの実施形態において、第1の活性剤はアンチセンスRNAであり、第2の活性剤は、抗体、ペプチド、低分子、オリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、及びそれらの任意の断片又は組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0201】
いくつかの実施形態によれば、コア粒子は金ナノ粒子である。いくつかの実施形態によれば、第1の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG3500酸又はチオール化PEG35000アミンである。いくつかの実施形態によれば、第2の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG3500酸又はチオール化PEG3500アミンである。いくつかの実施形態によれば、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG5000酸又はチオール化PEG5000アミンである。いくつかの実施形態によれば、脳内在化トランスポーター部分はインスリンである。
【0202】
いくつかの実施形態によれば、コア粒子は金ナノ粒子である。いくつかの実施形態によれば、第1の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG3500酸又はチオール化PEG35000アミンである。いくつかの実施形態によれば、第2の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG1000酸又はチオール化PEG1000アミンである。いくつかの実施形態によれば、第3の直鎖状ポリマーリンカーは、チオール化PEG5000酸又はチオール化PEG5000アミンである。いくつかの実施形態によれば、脳内在化トランスポーター部分はインスリンである。
【0203】
いくつかの実施形態において、多機能粒子は、追加のポリマーリンカーを介してコア粒子に付着する少なくとも1つの追加の活性剤をさらに含む。少なくとも1つの追加の活性剤及びそれぞれのポリマーリンカーの異なる可能性は、第1の活性剤及び第2の活性剤、並びに第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーについて上述したものと同様である。
【0204】
いくつかの実施形態において、本発明は、上記のその全ての実施形態における複数の多機能粒子を提供する。
【0205】
調製プロセス
別の態様によれば、上記のその全ての実施形態における本発明の多機能粒子の調製プロセスであって、
a)コア粒子の表面を第1のポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第1のポリマーリンカーを第1の活性剤にコンジュゲートする工程;
b)コア粒子の表面を第2のポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第2のポリマーリンカーを第2の活性剤にコンジュゲートする工程;
c)コア粒子の表面を第3のポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第3のポリマーリンカーを脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートする工程
を含み、
工程(a)、(b)及び(c)を任意の順序で行うことができるプロセスが提供される。
【0206】
「部分コーティング」という用語は、本明細書で使用する場合、複数のリンカーが裸の粒子の飽和レベルより低い密度レベルで粒子の表面を部分的に覆うように、複数のそれぞれのポリマーリンカーを粒子の表面にコンジュゲートすることを指す。
【0207】
当技術分野において公知の任意の方法を用いて、粒子の全密度(すなわち、100%)コーティングを達成するために必要なポリマーの量、及びそれに応じて部分コーティングに必要な量を決定することができる。例えば、粒子溶液に異なる量のポリマーを添加し、遠心分離後に上清中の遊離ポリマーの濃度を測定することは、広く使用されている方法である。あるいは、ゼータ電位及びDLSなど、コーティング密度の変化に感受性がある任意の特徴付け方法を使用することができる。さらに、粒子の表面積に応じて、完全なコーティングを達成するために必要なポリマーの量を決定するために、理論計算を実行することができる。例えば、チオール-PEG分子は、金ナノ粒子表面上で0.35nm2のフットプリント領域を占めることが以前に示された(Qian,Ximeiら Nature biotechnology 26.1(2008):83-90)。したがって、金ナノ粒子(GNP)の表面を100%覆うのに必要なチオール-PEGリンカーの量は、GNPの平均直径に基づいて計算することができる。
【0208】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー、第2のポリマーリンカー及び第3のポリマーリンカーの各々は、コア粒子の表面の5~70%、5~60%、5~40%、8~60%、10~60%、10~55%、10~50%、10~40%、10~30%、10~25%、10~20%、15~60%、15~55%、15~50%、15~45%、15~40%、15~30%、15~25%、15~20%、2~10%、2~20%、2~50%、2~60%、2~70%、5~10%、5~20%、5~70%、10~20%、10~50%、10~70%、20~50%、20~40%、30~50%、30~60%又は30~70%を覆うのに適する量で添加される。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0209】
いくつかの実施形態において、工程(a)は、コア粒子の表面の5~70%、5~60%、5~40%、8~60%、10~60%、10~55%、10~50%、10~40%、10~30%、10~25%、10~20%、15~60%、15~55%、15~50%、15~45%、15~40%、15~30%、15~25%、15~20%、2~10%、2~20%、2~50%、2~60%、2~70%、5~10%、5~20%、5~70%、10~20%、10~50%、10~70%、20~50%、20~40%、30~50%、30~60%、30~70%、50~60%又は50~70%をコーティングすることを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0210】
いくつかの実施形態において、工程(b)は、コア粒子の表面の5~70%、5~60%、5~40%、8~60%、10~60%、10~55%、10~50%、10~40%、10~30%、10~25%、10~20%、15~60%、15~55%、15~50%、15~45%、15~40%、15~30%、15~25%、15~20%、2~10%、2~20%、2~50%、2~60%、2~70%、5~10%、5~20%、5~70%、10~20%、10~50%、10~70%、20~50%、20~40%、30~50%、30~60%、30~70%、50~60%又は50~70%をコーティングすることを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0211】
いくつかの実施形態において、工程(c)は、コア粒子の表面の5~70%、5~60%、5~40%、8~60%、10~60%、10~55%、10~50%、10~40%、10~30%、10~25%、10~20%、15~60%、15~55%、15~50%、15~45%、15~40%、15~30%、15~25%、15~20%、2~10%、2~20%、2~50%、2~60%、2~70%、5~10%、5~20%、5~70%、10~20%、10~50%、10~70%、20~50%、20~40%、30~50%、30~60%、30~70%、50~60%又は50~70%をコーティングすることを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0212】
いくつかの実施形態において、工程(a)~(c)は任意の順序で順次実行される。当業者は、異なるパラメータ、例えば、コア粒子の種類、特異的ポリマーリンカー、使用される活性剤、脳内在化トランスポーター部分などに応じて、工程の最適な順序を決定することができるであろう。いくつかの実施形態において、プロセスはさらに、工程(a)、(b)及び(c)の各々の後に遠心分離を含む。
【0213】
いくつかの実施形態において、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーは同一である。いくつかの関連する実施形態において、工程(a)及び(b)は、コア粒子の表面を第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーで部分的に共にコーティングし、次いで、第1の活性剤と第2の活性剤をポリマーリンカーにコンジュゲートすることによって同時に実行される。いくつかの関連する実施形態において、コア粒子の表面を第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーで部分的に共にコーティングする工程は、コア粒子の表面の10~70%、10~60%、10~40%、10~60%、10~60%、10~55%、10~50%、10~45%、10~40%、10~30%、10~25%、10~20%、15~60%、15~55%、15~50%、15~45%、15~40%、15~30%、15~25%、15~20%、10~20%、10~50%、10~70%、20~50%、20~40%、30~50%、30~60%、30~70%、50~60%又は50~70%をコーティングすることを含む。各可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。さらなる関連する実施形態において、第1の活性剤及び第2の活性剤をポリマーリンカーにコンジュゲートすることは、第1の活性剤及び第2の活性剤の混合物を所望のモル比で粒子溶液に添加することを含む。
【0214】
いくつかの実施形態において、プロセスは、コア粒子の表面を第4のポリマーリンカーで部分的にコーティングすることをさらに含む。いくつかの実施形態において、第4のポリマーリンカーは、単官能性リンカーである。
【0215】
関連する実施形態によれば、多機能粒子の調製プロセスであって、
a)コア粒子の表面を第1のポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第1のポリマーリンカーを第1の活性剤にコンジュゲートする工程;
b)コア粒子の表面を第2のポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第2のポリマーリンカーを第2の活性剤にコンジュゲートする工程;
c)コア粒子の表面を第3のポリマーリンカーで部分的にコーティングし、続いて、第3のポリマーリンカーを脳内在化トランスポーター部分にコンジュゲートする工程;及び
d)コア粒子の表面を第4のポリマーリンカーで部分的にコーティングする工程
を含み、第4のポリマーリンカーが、キャッピング部分として機能する単官能性リンカーであり、工程(a)、(b)、(c)及び(d)を任意の順序で行うことができるプロセスが提供される。
【0216】
いくつかの実施形態において、粒子は、金ナノ粒子(GNP)であり、プロセスは、(a)HAuCl4の還元;(b)還元GNPを1種類の単官能性リンカー及び2種類の異なるヘテロ官能性リンカーとの同時インキュベーション;(c)GNPを活性化して、遊離COOH基を得ること;(d)トランスポーター又は他の部分のコンジュゲーション;(d)2種類の異なる生物活性分子を、それらの混合物を含む溶液とインキュベートすることによるコンジュゲーションの連続工程を含む。
【0217】
いくつかの実施形態において、単官能性リンカーはmPEG-SHである。特定の実施形態によれば、単官能性リンカーは、mPEG5000-SH又はmPEG6000-SHであり、粒子表面の約80~90%を覆うように添加される。
【0218】
いくつかの実施形態において、ヘテロ官能性リンカーはCOOH-PEG-SHである。いくつかの実施形態によれば、1つのヘテロ官能性リンカーはCOOH-PEG5000-SHであり、粒子表面の約15%を覆う濃度で添加される。いくつかの実施形態によれば、他のヘテロ官能性リンカーは、COOH-PEG3500-SHであり、粒子表面の約5%を覆う濃度で添加される。
【0219】
いくつかの実施形態において、GNPの活性化は、GNPを(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)と混合することによって行われる。
【0220】
いくつかの実施形態において、トランスポーターはインスリンであり、そのコンジュゲーションは、約50~500IU/mlの濃度で、活性化GNPと1~5時間インキュベートすることによって行われる。
【0221】
いくつかの実施形態において、2種類の生物活性分子は、1~50mg/mlの濃度で、活性化GNPと一晩インキュベートされる。
【0222】
GNPの分析は、当技術分野において公知の方法、例えば、動的光散乱(DLS)を用いて、各工程後に行われる。
【0223】
いくつかの実施形態において、GNP上のPEG基に付着している生物活性分子及びトランスポーター(例えば、インスリン)の定量化は、GNPの遠心分離による沈殿後に残った未結合タンパク質を含有する上清の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって行われる。
【0224】
調製プロセスでの使用に適するコア粒子、第1のポリマーリンカー、第2のポリマーリンカー、第3のポリマーリンカー、第4のポリマーリンカー、脳内在化トランスポーター部分、及び第1の活性剤と第2の活性剤は、共送達システムの様々な態様及び実施形態に関連して、本明細書の上記のものである。
【0225】
医薬組成物
さらに別の態様では、本明細書上記の様々な実施形態による多機能粒子と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書上記の様々な実施形態による複数の多機能粒子と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0226】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される製剤」、「医薬組成物」又は「薬学的に許容される組成物」は、当業者に公知であるように、溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香料、染料、そのような材料及びそれらの組み合わせなどの多数の担体のいずれかを含み得る(Remingtonの文献,1990)。本明細書の粒子を活性成分として含有する医薬組成物は、従来の医薬配合技術に従って調製することができる。例えば、レミントンの薬学(Pharmaceutical Sciences),第18版,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)を参照されたい。また、レミントン:「調合の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)、第21版,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa.(2005)も参照されたい。
【0227】
組成物は、それが固体、液体又はエアロゾルの形態で投与されるかどうか、及び注射などの投与経路のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体を含み得る。当業者は、注射用又は任意の他の経路による適用のための無菌溶液を作製する技術に精通しているであろう。無菌注射用溶液は、当業者に周知の他の様々な成分と共に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み込むことによって調製される。
【0228】
担体は、合計で、本明細書に提示される医薬組成物の重量比で約0.1%~約99.99999%を含んでもよい。
【0229】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、静脈内及び鼻腔内投与から選択される全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、鼻腔内投与用に製剤化される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は髄腔内投与用に製剤化される。
【0230】
本明細書で企図される組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、エアロゾル、それらの組み合わせ、又は当技術分野において一般に知られている任意の他の薬学的に許容される組成物の形態をとってもよい。
【0231】
いくつかの実施形態において、担体は溶媒である。非限定的な例では、組成物を溶媒に入れてもよい。このような溶媒は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの当技術分野において公知の任意の適切な溶媒を含む。
【0232】
組成物の製剤は、投与経路によって異なり得る。例えば、水溶液中での非経口投与の場合、溶液は必要に応じて適切に緩衝化され、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張にする必要がある。使用することができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知であろう。
【0233】
補助的な活性成分もまた、組成物に組み込むことができる。ヒトへの投与の場合、調製物は、FDA生物学的製剤基準(FDA Office of Biologics standards)で要求されている無菌性及び一般的な安全性及び純度の基準を満たす必要がある。投与は、任意の既知の経路によって行われてよい。
【0234】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、対象1キログラム当たり少なくとも約0.001g~約1gに相当する量の本明細書に開示される粒子を含む。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、対象1キログラム当たり少なくとも約0.001g~約0.5gの本明細書に開示される粒子を含む。
【0235】
医薬組成物は、1以上の成分の酸化を遅らせるために様々な酸化防止剤を含んでもよい。さらに、微生物作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、様々な抗菌剤及び抗真菌剤などの防腐剤によってもたらされ得る。組成物は、製造及び保管の条件下で安定しており、細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して保存されなければならない。外毒素混入は、最小限に安全なレベル、例えば、0.5ng/mg未満のタンパク質で保持すべきであることが理解されるであろう。
【0236】
組成物が液体形態である実施形態において、担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない溶媒又は分散媒であり得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム又はそれらの組み合わせを含むことが好ましいであろう。
【0237】
他の実施形態において、点鼻液又はスプレー、エアゾール又は吸入剤を使用してもよい。点鼻液は通常、滴剤又はスプレーで鼻腔に投与するように設計された水溶液である。
【0238】
経口投与用の固体組成物も企図される。これらの実施形態において、固体組成物は、例えば、溶液、懸濁剤、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、頬側組成物、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0239】
滅菌注射用溶液は、活性化合物(例えば、ナノ粒子)を、上記に列挙した他の様々な成分と共に適切な溶媒中に必要量組み込むことによって調製される。液体培地は必要に応じて適切に緩衝化し、液体希釈液は、十分な生理食塩水又はグルコースで注入する前に、最初に等張にするべきである。
【0240】
用量を、当業者によって決定されるように、必要に応じて繰り返すことができる。そのため、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、単回用量が企図される。他の実施形態において、2回以上の用量が企図される。2以上の用量が対象に投与される場合、投与間の時間間隔は、当業者によって決定される任意の時間間隔とすることができる。
【0241】
組成物の治療的及び診断的使用
いくつかの態様によれば、それを必要とする対象の脳への第1の活性剤及び第2の活性剤の同時送達における使用のための、本発明の多機能粒子を含む医薬組成物が提供される。
【0242】
他の態様によれば、本発明は、第1の活性剤及び第2の活性剤を、それを必要とする対象の脳に同期送達するための方法であって、その全ての実施形態において上記の多機能粒子を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0243】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、それを必要とする脳関連疾患又は障害の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害の防止に使用するためのものである。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害のモニタリングに使用するためのものである。
【0244】
いくつかの態様及び実施形態によれば、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害を処置するための方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0245】
いくつかの態様及び実施形態によれば、対象における脳関連疾患又は障害を防止するための方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0246】
いくつかの態様及び実施形態によれば、それを必要とする対象における脳関連疾患又は障害をモニターする方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与し、対象の脳をイメージングすることを含む方法が提供される。いくつかの関連する実施形態において、医薬組成物は、上記の多機能粒子を含み、コア粒子は金ナノ粒子であり、イメージングは、脳内の多機能粒子の検出を可能にするためにCTを用いて行われる。他の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの活性剤が標識分子、例えば、適切なイメージングモダリティによる検出を可能にする蛍光又は放射性分子である上記の多機能粒子を含む。いくつかの実施形態において、脳関連疾患又は障害をモニターする方法は、反復投与及び/又は反復イメージングセッションを含む。
【0247】
本明細書で使用する場合、「脳関連疾患又は障害」という用語は、脳又はその任意の細胞の機能不全を引き起こす任意の疾患又は障害を指す。脳関連疾患及び障害の非限定的な例としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病及び認知症などの神経変性疾患;筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び運動ニューロン疾患などの神経筋疾患;自閉症スペクトラム障害及び注意欠陥多動性障害(ADHD)などの神経発達疾患;多発性硬化症(MS)などの自己免疫性脳関連疾患;統合失調症などの神経精神障害、薬物依存症及び喫煙依存症などの依存症、摂食障害、強迫性障害、様々な形態のうつ病、不安障害、認知障害及び情動障害;てんかんなどの発作障害;片頭痛などの疼痛障害;外傷性脳損傷及び脳卒中を含む脳血管障害;脳腫瘍及び神経腫瘍、脳転移、神経膠腫、神経膠芽腫(GBM)、及び神経膠肉腫(GS)などの脳関連がん;ハンチントン病、ケネディ病、代謝障害、リソソーム蓄積症及びデュシェンヌ型などの神経発生疾患;並びに神経感染症が挙げられる。
【0248】
いくつかの実施形態において、疾患は中枢神経系疾患である。いくつかの実施形態によれば、障害は脳障害である。
【0249】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、脳関連疾患又は障害の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態において、脳関連疾患又は障害は、脳関連がん、神経変性障害、神経筋疾患、神経発達疾患、自己免疫性脳関連疾患、神経精神障害、発作障害、疼痛障害、脳血管障害、神経発生疾患及び神経感染症からなる群から選択される。
【0250】
いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、脳関連がんである。本明細書で使用する場合、「脳関連がん」という用語は、原発性脳腫瘍(すなわち、原発性脳がん)及び転移性脳腫瘍(すなわち、続発性脳がん)の両方を包含する。いくつかの実施形態において、脳関連がんは、脳及び神経腫瘍、脳転移、神経膠腫、膠芽腫(GBM)、及び神経膠肉腫(GS)からなる群から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、神経変性障害である。いくつかの実施形態において、神経変性障害は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病及び認知症からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、神経筋疾患である。いくつかの実施形態において、神経筋疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び運動ニューロン疾患からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、神経発達疾患である。いくつかの実施形態において、神経発達疾患は、自閉症スペクトラム障害及び注意欠陥多動性障害(ADHD)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は多発性硬化症(MS)である。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、神経精神障害である。いくつかの実施形態において、神経精神障害は、統合失調症、薬物依存症及び喫煙依存症などの依存症、摂食障害、強迫性障害、様々な形態のうつ病、不安障害、認知障害及び情動障害からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、発作障害である。いくつかの実施形態において、発作障害はてんかんである。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、疼痛障害である。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、脳血管障害である。いくつかの実施形態において、脳血管障害は、外傷性脳損傷及び脳卒中から選択される。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、神経発生疾患である。いくつかの実施形態において、神経発生疾患は、ハンチントン病、ケネディ病、代謝障害、リソソーム蓄積症及びデュシェンヌ型からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脳関連疾患は、神経感染症である。
【0251】
いくつかの実施形態において、脳関連疾患はアルツハイマー病である。いくつかの実施形態において、脳関連疾患はパーキンソン病である。いくつかの実施形態によれば、脳関連疾患は、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ運動失調症、運動ニューロン疾患(ルーゲーリック病)又は脊髄性筋萎縮症である。いくつかの実施形態によれば、脳関連疾患はプリオン病である。
【0252】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ヒト、ヒト以外の霊長類、げっ歯類など(例えば、特定の処置のレシピエントとなる予定の)を含むが、これらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書に特に指示がない限り、互換的に使用される。
【0253】
いくつかの実施形態において、対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、対象は、脳関連疾患、障害、又は病状に罹患する危険性がある。いくつかの実施形態において、対象は、脳関連疾患、障害、又は病状と診断される。いくつかの実施形態において、対象は、脳関連の遺伝性障害と診断される。いくつかの実施形態において、対象は、脳関連がんと診断される。いくつかの実施形態において、対象は、神経変性疾患に罹患する危険性がある。いくつかの実施形態において、対象は神経変性疾患と診断される。いくつかの実施形態において、対象はアルツハイマー病と診断される。いくつかの実施形態において、対象はパーキンソン病と診断される。
【0254】
本明細書で使用する場合、疾患、障害、又は病態に罹患するリスクのある対象は、疾患、障害、若しくは病態を示す1以上の徴候若しくは症状を示す対象、又は疾患、障害、若しくは病態についてスクリーニングされる(例えば、ルーチンの身体検査中の)対象である。疾患、障害、又は病態に罹患するリスクのある対象は、1以上の危険因子を有し得る。疾患、障害、又は病態に罹患するリスクのある対象は、その疾患、障害、又は病態について以前に検査を受けたことのない個人を包含する。しかし、疾患、障害、又は病態に罹患するリスクのある対象は、予備診断を受けたが、確認検査(例えば、生検及び/又は組織診断)が行われていないか、又は疾患、障害、若しくは病態の段階が不明な個人もまた包含する。この用語はさらに、かつて疾患、障害、又は病態に罹患していた人々(例えば、寛解した個人)を含む。
【0255】
脳関連の疾患、障害、又は病態に罹患するリスクのある対象は、脳関連の疾患、障害、又は病態を有すると診断されるか、あるいは脳関連の疾患、障害、又は病態を有していないことが判明し得る。
【0256】
本明細書で使用する場合、脳関連疾患、障害、又は病態を有すると診断された対象は、生検、X線、血液検査、及び本発明の診断方法を含むが、これらに限定されない任意の適切な方法を用いて診断され得る。「予備診断」とは、目視検査(例えば、CTスキャン又はしこりの存在)と抗原検査のみに基づく診断である。
【0257】
本明細書で使用する場合、疾患、障害、又は状態の「処置」、「処置すること」、又は「回復させること」という用語は、その少なくとも1つの症状の緩和、その重症度の軽減、又はそれらの進行の抑制を指す。処置は、疾患、障害、又は状態が完全に治癒することを意味する必要はない。有効な処置であるためには、本明細書における有用な組成物は、疾患、障害、又は状態の重症度を低下させるか、それに関連付けられる症状の重症度を低下させるか、又は患者若しくは対象の生活の質の改善を提供することのみを必要とする。
【0258】
いくつかの実施形態において、本方法は、対象の脳領域をイメージングする工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、イメージングは、コンピュータ断層撮影イメージング(CT)、X線イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、超音波(US)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイメージングシステムを用いて行われる。
【0259】
いくつかの実施形態において、イメージングは、前記対象の脳内における共送達システムの蓄積を評価するために行われる。
【0260】
いくつかの実施形態において、対象は、脳関連疾患又は障害に罹患しており、イメージングは、疾患又は障害のステージを決定するために行われる。いくつかの実施形態において、脳関連疾患又は障害に罹患した対象は、薬物で処置され、イメージング法は、処置の経過観察に使用される。
【0261】
いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程の0.5~96時間後に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程の0.5~48時間後に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程の0.5~24時間後に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程の0.5~12時間後に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程の1~12時間後に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程の1~6時間後に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程から96時間以内に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程から48時間以内に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程から24時間以内に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程から12時間以内に行われる。いくつかの実施形態において、イメージング工程は、投与工程から6時間以内に行われる。
【0262】
対象への組成物の投与は、当業者に公知の任意の方法を用いて行うことができる。投与の様式は、応用によって異なり得る。例えば、投与の様式は、イメージングされる特定の細胞、脳領域、又は対象に応じて変化し得る。例えば、組成物の投与は、静脈内、脳内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、黒質又は黒質の領域、皮内、動脈内、腹腔内、病変内、気管内、鼻腔内、筋肉内、腹腔内、皮下、経口、局所、局部、吸入(例えば、エアゾール吸入)、注射、注入、くも膜下注入、経粘膜注入、頸動脈内注入、持続注入、直接標的細胞を浸漬する局所灌流による、カテーテルを介する、洗浄を介する、又は当業者に公知である他の方法もしく前述の任意の組み合わせによって行われ得る。
【0263】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、全身投与経路によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、全身投与は、静脈内(IV)投与及び鼻腔内(IN)投与から選択される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、髄腔内(IT)投与によって対象に投与される。いくつかの実施形態において、粒子は静脈内投与される。いくつかの実施形態において、粒子は鼻腔内に投与される。
【0264】
医薬組成物の有効量は、意図された目的及び処置される対象に基づいて決定される。投与される量はまた、使用される特定の投与経路に基づいて変化し得る。組成物は、安全かつ有効な量で投与されることが好ましい。本明細書で使用する場合、「安全かつ有効な量」という用語は、過度の有害な副作用(毒性、刺激性、又はアレルギー反応)なしに、意図された目的に十分な組成物の量を指す。
【0265】
いくつかの実施形態において、本方法は、追加の治療を使用することをさらに含む。いくつかの実施形態において、特に、脳関連疾患は脳関連がんであり、追加の治療は、限定されないが、手術、放射線療法及び化学療法から選択される。特定の実施形態において、追加の治療は放射線療法である。
【0266】
いくつかの実施形態において、コア粒子は放射線増感剤であり、脳関連がんの処置方法は、腫瘍細胞(粒子が蓄積する)に電離放射線照射を向け、それによって腫瘍細胞内で局所的に増強された放射線療法を得る工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物は、周囲の正常組織への損傷又は対象に対して実質的な毒性を生じることなく、赤外線波を用いて組成物が蓄積する腫瘍細胞の熱焼灼に使用される。本明細書で使用する場合、「焼灼」は、細胞の破壊を指す。放射線療法の効果を高めるための金属粒子を含む組織を照射する方法は、当技術分野において公知である。
【0267】
キット
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に開示される1以上の組成物を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に開示される方法に有用なキットを提供する。例えば、キットは、本明細書に開示される任意の組成物を収容する無菌リザーバーを有する容器を含んでよい。いくつかの実施形態において、キットはさらに説明書を含む。例えば、キットは、対象に組成物を投与するための説明書(例えば、適応、投与量、方法など)を含み得る。さらに別の例では、キットは、イメージングシステム、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波(US)、磁気共鳴画像法(MRI)への本発明の組成物及び方法の適用に関する説明書を含み得る。
【0268】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されるが、網羅的であることを意図するものではないか、又は開示される実施形態に限定されるものではない。記載される実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が、当業者には明らかであろう。本明細書で使用する用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実用的応用又は技術的改善を最もよく説明するために、又は他の当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
【0269】
本明細書に列挙される任意の濃度範囲、百分率範囲、又は比率範囲は、特に指示がない限り、その範囲内の任意の整数の濃度、百分率又は比、及び整数の10分の1及び100分の1などのその分数を含むと理解されたい。
【0270】
ポリマーのサブユニット、サイズ又は長さなどの任意の物理的特徴に関して本明細書に列挙される任意の数の範囲は、特に指示がない限り、記載される範囲内の任意の整数を含むと理解されたい。
【0271】
本明細書で使用する場合、値と組み合わせた場合の「約」という用語は、参照値のプラスマイナス10%を指す。例えば、約1000Daの分子量は、1000Da±100Daの分子量を指す。
【0272】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その」は、文脈が明確に特に指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。そのため、例えば、「粒子」という言及は、複数のそのような粒子を含み、「その粒子」という言及は、1以上の粒子への言及を含む。さらに、特許請求の範囲は、任意選択の要素を除外するように起草され得ることに留意されたい。したがって、この声明は、特許請求の要素の列挙、又は「否定的」制限の使用に関連して、「専ら」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行詞として機能することが意図される。
【0273】
「複数」という用語は、特に明示的な指定がない限り、「2以上」を意味する。
【0274】
「A、B、及びCなどの少なくとも1つ」に類似した慣例が用いられる場合、一般に、そのような構成は、当業者が慣例を理解する意味で意図される(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、及び/又はAとBとCなどを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2以上の代替用語を提示する事実上任意の選言語及び/又は語句は、用語の1つ、用語のいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図するように理解されるべきであることが、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「A又はB」という語句は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0275】
明瞭にするために、個別の実施形態の文脈で説明される本発明のある特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で説明される本発明の様々な特徴は、別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。本発明による実施形態の全ての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかも各々及び全ての組み合わせが個別かつ明示的に開示されるかのように本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態及びその要素の全てのサブコンビネーションもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかも、そのようなサブコンビネーションの各々及び全てが、本明細書において個別かつ明示的に開示されるかのように本明細書に開示される。
【0276】
以下の実施例は、本発明の化合物及び方法の製造方法及び使用方法を例示することを意図したものであり、決して限定として解釈されるものではない。本発明をこれからその具体的な実施形態と併せて説明するが、多くの変更及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に入る全てのそのような変更及び変形を包含することが意図される。
【0277】
実施例
一般に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験手順は、分子的、生化学的、微生物学的及び組換えDNAの技術を含む。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A laboratory Manual)Sambrookら,(1989);「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」 I-III巻 Ausubel,R.M.(編)(1994);Ausubelら,「分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology),John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,「分子クローニングの実践ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning),John Wiley & Sons,New York(1988);Watsonら,「組み換えDNA(Recombinant DNA)」,Scientific American Books,New York;Birrenら(編)「ゲノムアレイ:実験マニュアルシリーズ(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series)」,1~4巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号;及び同第5,272,057号に記載の方法;「細胞生物学:実験バンドブック(Cell Biology:A Laboratory Handbook)」,I~III巻 Cellis,J.E.(編)(1994);「動物細胞の培養-基本技術のマニュアル(Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique)」 Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),第3版;「免疫学の最新プロトコル(Current Protocols in Immunology)」 I~III巻 Coligan J.E.(編)(1994);Stitesら(編),「基礎免疫学及び臨床免疫学(Basic and Clinical Immunology)」 (第8版),Appleton&Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(編),「タンパク質精製及び特性評価の戦略-実験コースマニュアル(Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual)」 CSHL Press(1996)を参照されたい;これらは全て参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献は、この文書全体に提供されている。
【0278】
実施例1:多機能金ナノ粒子(GNP)は2つの抗体を脳に共送達する
図1は、(i)第1の抗体(3)にコンジュゲートしている第1のポリマーリンカー(2);(ii)第2の抗体(5)にコンジュゲートしている第2のポリマーリンカー(4);(iii)脳内在化トランスポーター部分(例えば、インスリン;7)にコンジュゲートしている第3のポリマーリンカー(6);及び(iv)単官能性ポリマー部分(8)、に結合している金ナノ粒子(GNP;1)を示す非限定的な例示的多機能粒子の概略図を示す。
【0279】
抗IgG1、抗Iba1及びインスリンにコンジュゲートしているGNP(IgG1&Iba1&Ins-GNP)の調製及び特徴付け
GNP合成:20nmの球状GNPをHAuCl4のクエン酸還元により調製した。蒸留水200ml中50%w/vのHAuCl4溶液合計414μlを、加熱プレート上のオイルバス中で攪拌しながら煮沸した。煮沸後、10%クエン酸ナトリウム溶液4.04mlを添加し、混合物をさらに10分間煮沸しながら撹拌した。溶液をプレートから外し、室温まで冷却した後、溶液を遠心分離してナノ粒子を沈殿させた。
【0280】
GNPへのPEG5000のコンジュゲーション:GNPを、最初にmPEG-SH(約5kDa;粒子表面の40%)及びヘテロ官能性HS-PEG-COOH(約5kDa;粒子表面の20%)で部分的にコーティングした(粒子表面の60%)。部分コーティングに必要なmPEG-SH及びHS-PEG-COOHの量は、チオール-PEG分子が金ナノ粒子表面上で0.35nm2のフットプリント領域を占めるという知見に基づく理論計算から導き出した(Qian,Ximeiら Nature biotechnology 26.1(2008):83-90)。GNP溶液にHS-PEG-COOH(193μl、50mg/ml)及びmPEG-SH(387μl、50mg/ml)の混合物を添加し、2時間混合することにより、コンジュゲーションを行った。次いで、溶液を15,000RPMで20分間超遠心分離し、次いで、再び20,000RPMで15分間超遠心分離した。PEGコーティングGNP(合計60%コーティング)を含有する沈殿物をバイアルに移した。
【0281】
インスリンのコンジュゲーション:BBBを介した多機能GNPの輸送を容易にするために、氷上でEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl)及びNHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩)と共に過剰な量のインスリンを添加することにより、インスリンをHS-PEG-COOHのカルボキシル基に共有結合によりコンジュゲートし、2時間混合した。次いで、溶液を15,000RPMで30分間(低温で維持)2回遠心分離し、Ins-PEG-GNPを含有する下相をバイアルに移した。
【0282】
GNPへのPEG3500のコンジュゲーション:GNPに抗体をさらにコンジュゲートするために、271μlのHS-PEG-COOH(約3.5kDa)溶液(50mg/ml)を部分コーティングGNPに添加し、粒子表面の残りの40%をコーティングした。次いで、この溶液を4℃で2時間混合し、続いて、15,000RPMで30分間遠心分離を繰り返した。
【0283】
抗IgG1及び抗Iba1のコンジュゲーション:蛍光標識抗Iba1及び蛍光標識抗IgG1を、EDC及びNHSと共に蛍光標識抗Iba1(Abl95032-Rb Mono&Hu IBA-1-647及び蛍光標識抗IgG1(マウスモノクローナルIgG1 Alexa Fluor 488アイソタイプ対照クローン11711)の1:1モル混合物を添加することにより、HS-PEG-COOH(約3.5kDa)の遊離カルボキシル基に共有結合によりコンジュゲートさせた。次いで、この溶液を4℃で2時間撹拌し、続いて、Auの最終濃度が25mg/mlに達するまで、遠心分離して未結合抗体を除去した。
【0284】
抗体の化学コンジュゲーションを確認するために、多機能デュアル抗体ナノ粒子を、蛍光顕微鏡を用いてイメージングした。抗IgG1と抗Iba1の両方の蛍光シグナルが検出され、化学コンジュゲーションが成功したことが示された。
【0285】
対照実験では、1種のみのコンジュゲート抗体、すなわち抗IgG1又は抗Iba1で同様の粒子を調製した。対照粒子中の異なるコーティング分子の被覆率(%):20% PEG5000(インスリンにコンジュゲート)、20% PEG3500(それぞれの抗体にコンジュゲート)及び60% mPEG5000。
【0286】
デュアル抗体コンジュゲートGNPのマウス脳への送達
雄のBALB/cマウスを5つの処置グループに分けた:
グループ1:生理食塩水注射(未処置、対照;n=2)
グループ2:抗IgG1&インスリンコンジュゲートGNP(IgG1&Ins-GNP;n=2)
グループ3:抗Iba1&インスリンコンジュゲートGNP(Iba1&Ins-GNP;n=2)
グループ4:多機能デュアル抗体GNP(IgG1&Iba1&Ins-GNP;n=2)
グループ5:遊離抗IgG1抗体及び抗Iba1抗体(遊離Ab;n=2)。
【0287】
マウスに、IgG1&Ins-GNP(200μl、25mg/ml)、Iba1&Ins-GNP(200μl 25mg/ml)、IgG1&Iba1&Ins-GNP(200μl 25mg/ml)、又は等量の遊離蛍光標識抗体(0.2mgの抗IgG1及び0.25mgの抗Iba1を含有する200μl溶液)を静脈内注射した。注射の8時間後、マウスに灌流を行い、血管内に存在する全ての粒子/抗体を除去した。次いで、マウスの脳を摘出し、ICP-OES(グループ2、3及び4;グループあたりn=2)又は組織学的評価(グループ1、4及び5:グループあたりn=2)を用いて分析した。
【0288】
図2は、ICP-OESによって測定したマウスの脳内の金の量を示す。IgG1&Ins-GNP、Iba1&Ins-GNP又はIgG1&Iba1&Ins-GNPのIV注射後、かなりの量の金がマウスの脳に見られ、BBBから脳への透過が成功したことが示された。興味深いことに、多機能デュアル抗体GNP(IgG1&Iba1&Ins-GNP)の透過率は、Iba1&Ins-GNPの透過率よりもさらに高かった。
【0289】
マウスの脳(グループ1、4及び5)の組織学的評価のために、大脳皮質及び髄質の7μm脳凍結切片を調製し、免疫染色した(IHC-F二重染色)。蛍光抗体のシグナルを検出し、共焦点顕微鏡で写真を撮影した。各抗体の写真は全て同じ露光条件で撮影した。
【0290】
図3及び
図4は、大脳皮質切片(
図3)及び髄質切片(
図4)の代表的な免疫組織化学蛍光(IHC-F)画像を示す。驚くべきことに、遊離抗体を投与したマウス(グループ5)の脳切片では抗体シグナルは観察されなかったのに対し、これらの抗体とコンジュゲートした多機能脳標的化GNPを投与したマウス(グループ4)の脳では、抗IgG1シグナル及び抗Iba1シグナルの両方が検出された。さらに、融合画像は、大脳皮質と髄質内で2種類の抗体が共局在していることを示しており、脳内で抗体の分布が同期していることを示す。
【0291】
実施例2:インスリン及び2種類の抗Her2抗体、トラスツズマブ及びペルツズマブでコーティングした多機能GNPの調製
非限定的な例として、異なる抗HER2抗体及びインスリンを担持する金ナノ粒子を、
図6に概略的に記載するように生成した。例示的な粒子を、2種類のポリマーリンカー(5-S-PEG-C(O)-、約5kDa及び-S-PEGC(O)-、約3.5kDa)を含むポリマー層(
図6の2~3)でコーティングし、第1のリンカーはインスリン(4)にコンジュゲートし、第2のリンカーは、2種類の異なる抗HER2抗体(5~6)、すなわちトラスツズマブ及びペルツズマブにコンジュゲートしている。追加の(7)ポリマー部分(-S-PEG-O-CH3 約6kDa)を、粒子上の他の部分の密度を制御するためのキャッピングとして使用する。
【0292】
GNP合成
HAuCl4のクエン酸還元により20nmの球状GNPを調製した。200mlの再蒸留水(DDW)中42.77% w/vのHAuCl4合計414μlを、加熱プレート上の油浴中で攪拌しながら煮沸した。煮沸後、DDW中の10%w/vのクエン酸三ナトリウム4.04mlを添加した。溶液をオイルバスから取り出し、攪拌室で放冷した。
【0293】
GNPへのCOOH-PEG5000-SH、COOH-PEG3500-SH及びmPEG6000-SHのコンジュゲーション
GNPを、mPEG6000-SH(約6kDa;粒子表面の80%)、ヘテロ官能性COOH-PEG5000-SH(約5kDa;粒子表面の15%)及びヘテロ官能性COOH-PEG3500-SH(約5kDa;粒子表面の5%)とインキュベートした。コーティングの割合に必要なPEG部分の量は、チオール-PEG分子が金ナノ粒子表面上で0.35nm2の表面積を占めるという知見に基づく理論計算から導き出した(Qian,Ximeiら Nature biotechnology 26.1(2008):83-90)。GNP溶液にCOOH-PEG5000-SH(127μl、DDW中50mg/ml)、mPEG6000-SH(809μl、DDW中50mg/ml)及びCOOH-PEG3500-SH(30μl、DDW中50mg/ml)の混合物を添加し、一晩混合することによってコンジュゲーションを行った。次いで、この溶液を50,000Gで20分間遠心分離し、次いで沈殿物をDDWに再分散させ、50,000Gで20分間遠心分離した。PEGコーティングGNPを含有する沈殿物をバイアルに移した。
【0294】
GNPをEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl、DDW中30mg/ml、100μl)及びスルホNHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩、DDW中30mg/ml、100μl)と混合し、続いて、50,000Gで20分間遠心分離することによって、GNPの活性化を行った。活性化COOH基を含有する沈殿物をバイアルに移した。
【0295】
次いで、インスリンのHS-PEG5000-COOHへのコンジュゲーションを、GNP溶液にインスリン(195IU、100IU/ml)を3時間添加することによって行った。次いで、トラスツズマブ及びペルツズマブを含有する溶液(合計15mg)を2mlのホウ酸緩衝液(PH8、0.1M)に入れ、その後、GNP-インスリン溶液に添加して、一晩混合しながら残りのCOOH-PEG3500-SHをコンジュゲートした。次いで、溶液を10,000Gで20分間遠心分離した。続いて、沈殿物を生理食塩水に再溶解し、次いで、10,000Gで20分間遠心分離した。
【0296】
抗体及びインスリンでコーティングしたGNP(Abs&Ins-GNP)を、調製の各工程後に動的光散乱(DLS)を使用して特徴付けした。GNPの流体力学的サイズとゼータ電位から、コーティングの成功が確認された。
【0297】
GNP上のPEG基に付着している抗体(Ab)及びインスリンの定量化を、遠心分離後に残った未結合タンパク質を含有する上清について試験する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって試験した。
【0298】
実施例3:インスリン、2種類の多機能抗体及び化学療法分子でコーティングした多機能GNPの調製及び特徴付け
この実験は、以下のような4種類のリンカー:化学療法分子についてはSH-PEG3500-SH、トランスポーター分子としてのインスリンについてはCOOH-PEG5000-SH、2種類の異なる抗体についてはCOOH-PEG3500-SH及びスペーサーとキャッピング部分としてのmPEG(5000-6000)-SHの4つのリンカーによるGNPへのコンジュゲーションを実証する。
【0299】
GNP合成
20nmの球状GNPをHAuCl4のクエン酸還元により調製した。200mlの再蒸留水(DDW)中42.77%w/vのHAuCl4合計414μlを、加熱プレート上のオイルバス中で攪拌しながら煮沸した。煮沸後、DDW中10%w/vのクエン酸三ナトリウム4.04mlを添加した。溶液をオイルバスから取り出し、撹拌しながら室温で放冷した。
【0300】
GNPを、mPEG(5000-6000)-SH(約5kDa;粒子表面の75%)、ヘテロ官能性COOH-PEG5000-SH(約5kDa;粒子表面の15%)、ヘテロ官能性COOH-PEG3500-SH(約3.5kDa;粒子表面の5%)及びSH-PEG3500-SH(約3.5kDa;粒子表面の5%)とインキュベートした。コーティングの割合に必要なPEG部分の量は、チオール-PEG分子が金ナノ粒子表面上で0.35nm2の表面積を占めるという知見に基づく理論計算から導き出した(Qian,Ximeiら Nature biotechnology 26.1(2008):83-90)。GNP溶液にCOOH-PEG5000-SH(96.92μl、DDW中50mg/ml)、mPEG5000-SH(512.51μl、DDW中50mg/ml)、COOH-PEG3500-SH(23y.14μl、DDW中50mg/ml)とSH-PEG3500-SH(22.19μl、DDW中50mg/ml)の混合物を添加し、一晩混合することによってコンジュゲーションを行った。溶液を50,000Gで20分間遠心分離し、次いで沈殿物をDDWに再分散させ、50,000Gで20分間遠心分離した。PEGコーティングGNPを含有する沈殿物をバイアルに移した。
【0301】
チオール末端PEGの表面への化学療法分子のコンジュゲーションを、一晩撹拌しながらNP溶液に分子を添加することによって行った。翌日、この溶液を50,000Gで20分間、一回遠心分離した。沈殿物を18mlに再溶解し、バイアルに移した。コンジュゲーションに用いる化学療法分子の量を、反応中の粒子の量に応じて計算し、これは使用する分子ごとに異なる。
【0302】
GNPをEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl、DDW中30mg/ml、100μl)及びスルホNHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩、DDW中30mg/ml、100μl)と混合し、続いて、50,000Gで20分間遠心分離することによって、GNPの活性化を行った。活性化COOH基を含有する沈殿物をバイアルに移した。
【0303】
次いで、インスリンのHS-PEG5000-COOHへのコンジュゲーションを、GNP溶液にインスリン(195IU、100IU/ml)を3時間添加することによって行った。次いで、抗体Ab1とAb2を含有する溶液を2mlのホウ酸緩衝液(PH8、0.1M)に入れ、その後、GNP-インスリン溶液に添加して、一晩混合しながら残りのCOOH-PEG3500-SHをコンジュゲートした。次いで、溶液を10,000Gで20分間遠心分離した。続いて、沈殿物を生理食塩水に再溶解し、次いで、10,000Gで20分間遠心分離した。
【0304】
Abs&Ins-GNPを、調製の各工程後に動的光散乱(DLS)を使用して特徴付けした。GNPの流体力学的サイズとゼータ電位から、コーティングの成功が確認された。
【0305】
GNP上のPEG基に付着している抗体及びインスリンの定量化を、遠心分離後に残った未結合タンパク質を含有する上清について試験する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって試験した。
【0306】
抗体及びインスリンのさらなる定量化を、GNPの表面からコーティングを剥がし、次いで、UV分光光度計を使用してHPLCによる定量化によって行う。
【0307】
GNP上の抗体とインスリンの存在の立体構造を、BT474細胞における細胞アッセイ及びマウスの脳における金の存在によって試験する。
【0308】
実施例4:抗体と低分子薬を脳内へ共送達するための多機能GNP
シスプラチン、抗IgG1及びインスリン(CisPt&IgG1&Ins-GNP)にコンジュゲートしているGNPの調製及び特徴付け
20nmの球状GNPを実施例1に記載したように調製した。
【0309】
GNPへのmPEG5000及びPEG1000のコンジュゲーション:GNPを、最初にmPEG-SH(約5kDa、粒子表面の40%)及びヘテロ官能性HS-PEG-COOH(約1kDa、粒子表面の20%)で部分的にコーティングした(粒子表面の60%)。部分コーティングに必要なmPEG-SH及びHS-PEG-COOHの量は、チオール-PEG分子が金ナノ粒子表面上で0.35nm2のフットプリント領域を占めるという知見に基づく理論計算から導き出した(Qian,Ximeiら Nature biotechnology 26.1(2008):83-90)。GNP溶液にHS-PEG-COOH(40μl、50mg/ml)とmPEG-SH(387μl、50mg/ml)の混合物を添加し、2時間混合することによりコンジュゲーションを行った。次いで、この溶液を15,000RPMで20分間超遠心分離し、次いで、再び20,000RPMで15分間超遠心分離した。PEGコーティングGNP(合計60%コーティング)を含有する沈殿物をバイアルに移した。
【0310】
シスプラチンのコンジュゲーション:シスプラチン(cisPt)を、過剰量のシスプラチンをEDC及びNHSと共に添加し、続いて4℃で3時間混合することにより、HS-PEG-COOH(PEG1000)のカルボキシル基に共有結合によりコンジュゲートさせた。次いで、この溶液を14,000g、4℃で30分間遠心分離し、シスプラチン-GNPを含有する下相をバイアルに移した。
【0311】
PEG5000及びインスリンのコンジュゲーション:GNPにインスリンをさらにコンジュゲートするために、部分コーティングGNPにHS-PEG-COOH(5kDa)(193μl、50mg/ml)を添加し、粒子表面の20%をコーティングした。次いで、溶液を4℃で3時間混合し、続いて、4℃、14,000gで30分間遠心分離した。次いで、インスリンを、EDC及びNHSと共に過剰量のインスリンを添加することにより、HS-PEG-COOH(5kDa)の遊離カルボキシル基に共有結合によりコンジュゲートさせた。次いで、この溶液を4℃で3時間撹拌し、続いて、14,000g、4℃で30分間さらに遠心分離した。
【0312】
GNPへのPEG3500及び抗IgG1のコンジュゲーション:IgG1抗体をGNPにさらにコンジュゲートするために、135μlのHS-PEG-COOH(約3.5kDa)溶液(50mg/ml)を部分コーティングGNPに添加し、粒子表面の残りの20%をコーティングした。次いで、この溶液を4℃で2時間混合し、続いて、14,000RPMで30分間遠心分離した。次いで、EDC及びNHSと共に135μgの抗IgG1抗体を添加することにより、抗IgG1をHS-PEG-COOH(約3.5kDa)の遊離カルボキシル基に共有結合によりコンジュゲートした。次いで、溶液を4℃で2時間撹拌し、続いて、Auの最終濃度が25mg/mlに達するまで、遠心分離して未結合抗体を除去した。
【0313】
対照実験のために、インスリン及び抗IgG1又はシスプラチンのいずれかをコンジュゲートしたGNP(すなわち、IgG1&Ins-GNP及びシスプラチン&Ins-GNP)を調製した。
【0314】
cisPt&IgG1&Ins-GNPコンジュゲートGNPのマウス脳への送達
雄のBALB/cマウスを4つの処置グループに分けた:
グループ1:抗IgG1&インスリンコンジュゲートGNP(IgG1&Ins-GNP;n=2)
グループ2:シスプラチン&インスリンコンジュゲートGNP(CisPt&Ins-GNP;n=2)
グループ3:多機能GNP(cisPt&IgG1&Ins-GNP;n=2)
グループ4:遊離シスプラチン(n=2)
【0315】
IgG1&Ins-GNP(200μl、25mg/ml)、cisPt&Ins-GNP(200μl 25mg/ml)、cisPt&IgG1&Ins-GNP(200μl 25mg/ml)、又は等量の遊離シスプラチンをマウスに静脈内注射した。注射の8時間後、マウスに灌流を行い、血管内に存在する全ての粒子を除去した。次いで、マウスの脳を摘出し、ICP-OESを用いて分析し、脳を透過したAuとPtの量を測定した(それぞれ
図6A及び
図6B)。
【0316】
図5A及び
図5Bに見られ得るように、cisPt&IgG1&Ins-GNPのIV注射後、かなりの量の金とプラチンの両方がマウス脳に見出され、BBBを介した多機能GNPの透過の成功が示された。驚くべきことに、
図6Bは、cisPt&Ins-GNP又はcisPt&IgG1&Ins-GNPのいずれかを投与したマウスの脳内で見出されたPtの量が、等用量の遊離シスプラチンを投与した後の量よりもかなり高かったことを示しており、多機能GNPプラットフォームがBBBを介した低分子シスプラチンの透過を増強することが示された。
【0317】
実施例5:ナノデリバリーシステムがBBBを通過する能力に及ぼすリンカー長の影響
インスリン、IgG1抗体及びIba1抗体にコンジュゲートしている数種類の金ナノ粒子を、表1で特定するPEGリンカーの異なる組み合わせを用いて実施例1に記載のとおりに合成する。
【0318】
【0319】
リンカー長がBBBを通過するナノデリバリーシステムの能力に及ぼす影響を調べるために、表1に列挙する脳標的化粒子を雄性Balb/Cマウスの尾静脈に静脈内注射する(30mg/mlの200μl)。注射の8時間後に、マウスを屠殺して、灌流する。次いで、脳を摘出し、ICP-OES又はICP-MSで分析して、BBBを透過した金の量を定量化化する。
【0320】
興味深いことに、脳への透過率が最も高かったのは、第1のポリマーリンカー及び第2のポリマーリンカーが第3のポリマーリンカーよりも短いGNPであった。BBBを通って脳に効率的に透過するためには、脳内在化部分として作用するインスリンをナノデリバリーシステム全体の表面に露出させる(すなわち、粒子の外表面に存在させる)必要があるという仮説が立てられる。インスリンは抗体よりもかなり小さいため(約150kDaに対して5kDa)、ナノデリバリーシステムの表面に露出したままで、抗体によって遮蔽されないようにするには、抗体に結合するために使用されるリンカーよりも長いリンカーにコンジュゲートする必要がある。
【0321】
実施例6:がん細胞に及ぼすデュアル抗体GNPの効果:インビトロ研究
インスリン及び2種類の異なる抗HER2抗体(トラスツズマブとペルツズマブ;Brockhoffら,Cell Prolif.2007,40,488-507及びScheuerら,Cancer Res.2009,69(24),9330-9336)にコンジュゲートしているGNPを、実施例1に記載のプロトコルに従って調製する。比較のために、インスリン及び単一抗体(トラスツズマブ又はペルツズマブのいずれか)にコンジュゲートしているGNPも調製する。
【0322】
HER-2陽性乳がん細胞株であるBT474を使用して、各抗体にコンジュゲートしているGNPの単一療法としての効果とそれらの複合効果を決定する。細胞を、異なる濃度のトラスツズマブ-GNP、ペルツズマブ-GNP、又はトラスツズマブ&ペルツズマブ-GNPで処理する。無処置細胞を対照試料とする。
【0323】
細胞に対する様々な処置の効果を、細胞周期停止測定、アポトーシス及び増殖アッセイを使用して調べる。各処置を3重に行う。
【0324】
実施例7:二重特異性GNP複合体のin vivoの脳での有効性
多機能薬物キャリアとしてのプラットフォームの有効性を試験した。この実験では、乳がん腫瘍の第一選択処置と考えられ、一緒に投与されるトラスツズマブ抗体及びペルツズマブ抗体の両方を使用した。両方の抗体をGNPにコンジュゲートし、その有効性を転移性乳がん脳腫瘍マウスモデルで試験した。150K乳がんBT474細胞を、ブレグマ座標:前方0.5、側方1.7、深さ3.5に従ってNOD-SCIDマウスの脳に接種した。腫瘍の成長を、毎週BLIイメージングによってモニターした。腫瘍接種の3週間後に、マウスをMRIで測定した腫瘍サイズに応じて4つのグループ;生理食塩水を投与する対照グループ、遊離抗体の混合物を投与する対照グループ、及び二機能GNPを投与する試験グループ(両方の抗体が同じ粒子にコンジュゲートしている)に分けた。処置組成物(40mg/kgのAb)を週に1回、4週間連続でIP注射した。この時点で、腫瘍サイズを再度測定するためにMRIスキャンを行った。結果から、二機能粒子が無処置のマウス又は遊離抗体処置と比較して腫瘍の成長を遅らせることが示された(
図7a)。次いで、脳を摘出し、粒子の透過がICP-OESから裏付けられた。
図7bは、3つの代表的な脳を示し、腫瘍内に蓄積した粒子が紫色であるため、二機能GNPを与えたマウスの脳内で腫瘍がはっきりと見える。
【0325】
実施例8:がん処置のための放射線療法と併用した多機能GNP:インビボ研究
抗EGFR(CTX)及びテモゾロミド(TMZ)にコンジュゲートしている金ナノ粒子を、実施例2のプロトコルに従って調製する。
【0326】
マウス(n=25)を下の表2に示す5つの処置グループ(グループあたりn=5)に分け、処置の成績に対する異なる要因の寄与を調べる。
【0327】
【0328】
マウスにヒトU87 GBM細胞(3×104~3×105)を頭蓋内注射した;注射部位はブレグマに対して後方2mm及び側方1.5mmである。MRIイメージングを用いて、誘導後約14日の時点で測定される腫瘍の発生を確認する。
【0329】
グループ2~3のマウスに、腹腔内TMZ(10mg/kg、5日間)を含む標準処置を与える。静脈内CTX(1mg/kg)をグループ3のマウスに投与する。グループ4及び5のマウスに、等量のTMZ及びCTX(それぞれ10mg/kg及び1mg/kg)を含有するTMZ&CTX-GNPを静脈内投与する。脳全体に6MVのX線を分割照射する(5日で10Gy、2Gy/日)。
【0330】
臨床的に悪化したとき、又は腫瘍注射の約180日後の研究プロトコルの終了時にマウスを屠殺する。
【0331】
経過観察期間中に、マウスの生存と健康状態をモニターする。
【0332】
屠殺後、脳を免疫組織化学により分析する。
【0333】
本発明は、その特定の実施形態と併せて説明されているが、多くの代替、改変及び変形形態が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に入る全てのそのような代替、改変及び変形形態を包含することが意図される。
【国際調査報告】