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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】無機バインダー系
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/00 20060101AFI20240705BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20240705BHJP
   B22C 1/20 20060101ALI20240705BHJP
   B22C 9/02 20060101ALI20240705BHJP
   B22C 9/12 20060101ALI20240705BHJP
   B22C 5/00 20060101ALI20240705BHJP
   B22C 1/18 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
B22C1/00 D
B22C1/00 B
B22C1/10 C
B22C1/20
B22C9/02 101
B22C9/12 H
B22C5/00 A
B22C1/18 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024501524
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2022069506
(87)【国際公開番号】W WO2023285482
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21184981.5
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーンアッペル,ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】リンケ,トーマス
【テーマコード(参考)】
4E092
4E093
【Fターム(参考)】
4E092AA04
4E092AA05
4E092AA18
4E092CA03
4E093RC01
(57)【要約】
【解決手段】中子を作るためと金属鋳造プロセスのための組成物は、粒状耐熱材料と、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩を含む無機バインダーと、ポゾラン添加剤と、ラストラスカーボンフォーマーとを含む。本発明の方法は、当該組成物から中子を形成することと、中子を備える鋳型を組み立てることと、溶融金属を供給することとを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳造プロセスに使用する中子を作るための組成物において、
粒状耐熱材料と、
少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩を含む無機バインダーと、
ポゾラン添加剤と、
ラストラスカーボンフォーマーと、
を含む組成物。
【請求項2】
鉄系金属鋳造プロセスで使用する中子を作るためのものであり、前記ラストラスカーボンフォーマーは強ラストラスカーボンフォーマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記強ラストラスカーボンフォーマーは、アスファルト、炭化水素樹脂、ポリスチレン、及びギルソナイトのうちの1つ又は複数を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記強ラストラスカーボンフォーマーは、少なくとも15%のラストラスカーボン含有量を有する、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
非鉄金属鋳造プロセスで使用する中子を作るためのものであり、前記ラストラスカーボンフォーマーは弱ラストラスカーボンフォーマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記弱ラストラスカーボンフォーマーは、分級炭、炭塵、及びシーコールのうちの1つ又は複数を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記弱ラストラスカーボンフォーマーは15%未満のラストラスカーボン含有量を有する、請求項5又は請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ラストラスカーボンフォーマーは、前記粒状耐熱材料の重量に対して0.1~1.5重量%を構成する、請求項1乃至7の何れかに記載の組成物。
【請求項9】
前記粒状耐熱材料は、天然耐熱材料、合成耐熱材料、又はそれらの組合せであり、任意選択的に前記粒状耐熱材料は砂を含む、請求項1乃至8の何れかに記載の組成物。
【請求項10】
前記無機バインダーは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、又はそれらの組合せのうちの1つ又は複数を含み、任意選択的に、前記無機バインダーは前記粒状耐熱材料の重量に対して0.5wt%~5wt%を構成する、請求項1乃至9の何れかに記載の組成物。
【請求項11】
前記ポゾラン添加剤は、シリカフューム、溶融シリカ、及び焼成シリカのうちの1つ又は複数を含んでおり、任意選択的に、前記ポゾラン添加剤は前記粒状耐熱材料の重量に対して0.1wt%~2wt%を構成する、請求項1乃至10の何れかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の組成物から形成される中子。
【請求項13】
金属鋳造によって金属製品を製造する方法において、
(i)請求項1乃至12の何れかに記載の組成物を混合して混合物を作る工程と、
(ii)前記混合物をモールディングして硬化させて、前記金属製品の内部キャビティの形状の中子を製造する工程と、
(iii)前記中子を金属鋳造用の鋳型と組み合わせて、前記鋳型と前記中子とが共になってモールドキャビティを画定するようにする工程と、
(iv)前記モールドキャビティが充填されるまで、前記モールドキャビティに溶融金属を供給する工程と、
(v)前記溶融金属を冷却して固化させて前記金属製品を成形する工程と、
を含む方法。
【請求項14】
工程(i)は、請求項2乃至5の何れかに、又はそれに従属する何れかの請求項に記載の組成物を混合することを含んでおり、工程(iv)は少なくとも1000℃の温度で行われる、鉄系金属鋳造によって鉄系金属製品を作るための請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(i)は、請求項6乃至9の何れかに又はそれに従属する何れかの請求項に記載の組成物を混合することを含んでおり、工程(iv)は1200℃未満の温度で行われる、非鉄金属鋳造によって非鉄金属製品を製造するための請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造又はモールディングプロセスにおいて中子として使用するための組成物と、当該組成物を含む中子と、中子を備える鋳型と、中子を使用した製品の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
重力鋳造プロセスでは、溶融金属(又は溶融金属合金)が、鋳物の外形を規定する予め形成されたモールドキャビティに流し込まれて重力の力でモールドキャビティを満たす。鋳物の中空部分又は内部キャビティの形状は、使い捨て中子によって画定することができる。中子は、有機樹脂、粉末状バインダー、粘土鉱物又は水ガラス(液体無機バインダーと呼ばれることもある)を用いて結合することができる。現在、砂中子及び鋳型を有機バインダー、例えば有機樹脂で結合することは一般に好ましい方法ではない。何故ならば、有機バインダーの分解生成物は大抵の場合毒性を有しており、それら組成物は硬化時又は鋳造中に毒性の煙を放出し、これは鋳造作業員にリスクをもたらし、その他の負の環境影響を有しており、緩和するのに費用がかかり得るからである。多くの既存の中子バインダー系に関する更なる問題は、鋳造部品の仕上げ表面の品質である。長い鋳造時間とそれに関連する過酷な条件とは、鋳物の表面への砂の付着と、中子自体の破壊と、中子への金属の侵入を高い頻度でもたらす。
【0003】
米国特許第4,316,744号は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム又はケイ酸リチウムの水溶液を含んでおり、且つ非晶質シリカを含んでおり、ケイ酸塩が高比率である鋳物砂バインダーを開示している。US4,316,744に開示されている中子及び鋳型組成物は冷間硬化性であって、二酸化炭素又は適切な酸性離型硬化剤(acid releasing curing agent)を用いて硬化される。このような鋳型組成物と、特にバインダー系を二酸化炭素で硬化する方法との欠点は、鋳型組成物を二酸化炭素でパージする場合、加熱された金属製中子箱を用いた熱硬化と砂中子をパージするための加熱空気とを含む手法を使用した場合よりも強度が常に低くなることである。したがって、本発明の目的は、加熱空気でパージすることによって鋳型材料を簡単に硬化させることができる、所謂加熱中子箱内で高強度中子をモールディングするのに特に適した鋳造鋳型組成物を提供することである。
【0004】
【0005】
故に、本発明の目的は、上記の問題を軽減又は改善することである。
【発明の概要】
【0006】
<構成>
本発明の第1の態様によれば、金属鋳造プロセスで使用する中子を製造するための組成物が提供される。組成物は粒状耐熱材料を含んでよい。組成物は無機バインダーを含んでよい。無機バインダーは、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩を含んでよい。組成物はポゾラン添加剤を含んでよい。組成物はラストラスカーボンフォーマー(lustrous carbon former)を含んでよい。
【0007】
本明細書では、用語「ラストラスカーボンフォーマー」は、鋳造条件の影響下でラストラスカーボンを形成する鋳造添加剤を指す。この添加剤は通常、有機化合物を含んでおり、鋳造条件下で当該有機化合物が鋳型と金属の界面で揮発することで、ラストラスカーボンが形成される。
【0008】
本発明の発明者は、第1の態様の組成物から作られた中子は、鋳造プロセス中に受ける力に耐えるのに十分な強度を有し、優れた中子抜き(de-coring)特性を有し、金属鋳物の表面欠陥を回避又は最小化することを見い出した。更なる利点として、第1の態様の組成物は、モールディング又は鋳造工程で使用する前に中子に塗布するコーティングを必要とせずに使用することができる。
【0009】
<ラストラスカーボンフォーマー>
一連の実施形態において、ラストラスカーボンフォーマーは強ラストラスカーボンフォーマー(strong lustrous carbon former)であってよい。その組成物は、鉄系金属鋳造プロセスで使用する中子を作るためのものであってよい。代替的な実施形態では、組成物は、銅鋳造や銅合金鋳造のような高温非鉄金属鋳造プロセスで中子を作るためのものであってよい。この文脈では、高温とは約1000℃以上を意味する。
【0010】
強ラストラスカーボンフォーマーは、アスファルト、炭化水素樹脂、ポリスチレン、及びギルソナイト(gilsonite)から選択される1つ又は複数を含んでよい。強ラストラスカーボンフォーマーは、少なくとも15%のラストラスカーボン含有量を有してよい。幾つかの実施形態において、強ラストラスカーボンフォーマーは、少なくとも16%、17%、18%、19%、20%、22%、24%、25%、26%、28%、又は30%のラストラスカーボン含有量を有してよい。
【0011】
強ラストラスカーボンフォーマーは、粒状耐熱材料の重量に対して0.1~1.5wt%を構成してよい。幾つかの実施形態において、強ラストラスカーボンフォーマーは、0.2~1.4wt%、0.3~1.3wt%、0.4~1.2wt%、0.5~1.1wt%、0.6~1.0wt%、0.7~0.9wt%、0.8wt%、又は、これらの組合せから構成される範囲を含んでよい。
【0012】
本発明者らは、鉄鋳物の場合、ラストラスカーボンフォーマーがギルソナイトのような炭素含有樹脂を(ラストラスカーボンフォーマーの全重量に基づいて)10~80wt%含むと有利であることを見出した。この樹脂が粒状耐熱材料の重量に基づいて0.05~0.5wt%、0.1~0.4wt%、0.2~0.4wt%存在すると、高品質の鋳肌が得られることが分かった。特に、組成物中にこのラストラスカーボンフォーマーが存在すると、鋳造プロセス後の中子抜き特性が著しく向上することが分かった。この砂中子は、GJSやGJV(鉄鋳物)の鋳造にコーティングなしで使用できることが意外にも分かった。欠陥のない鋳肌が得られた。
【0013】
発明者はまた、銅鋳造及び銅合金鋳造ではギルソナイトの存在が有利であり、その結果、特に鋳造前に中子にコーティングを施していない場合に、優れた冷間強度と優れた中子抜き特性とを有する中子が得られることを見出した。
【0014】
更なる一連の実施形態において、ラストラスカーボンフォーマーは弱ラストラスカーボンフォーマー(weak lustrous carbon former)であってよい。この組成物は、非鉄金属鋳造プロセスで使用する中子を作るためのものであってよい。例えば、組成物は、低温非鉄金属鋳造プロセスにおいて中子を作るためのものであってよい。この文脈では、低温とは1000℃未満を、任意選択的に900℃未満又は800℃未満を意味する。
【0015】
弱ラストラスカーボンフォーマーは、分級炭(graded coal)、炭塵(coal dust)、及びシーコール(seacoal)のうちの1つ又は複数を含んでよい。弱ラストラスカーボンフォーマーのラストラスカーボン含有率は15%未満である。幾つかの実施形態において、弱ラストラスカーボンフォーマーは、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、又は8%未満のラストラスカーボン含有量を有してよい。
【0016】
弱ラストラスカーボンフォーマーは、粒状耐熱材料の重量に対して0.1~1.5wt%を構成してよい。幾つかの実施形態において、弱ラストラスカーボンフォーマーは、0.2~1.4wt%、0.3~1.3wt%、0.4~1.2wt%、0.5~1.1wt%、0.6~1.0wt%、0.7~0.9wt%、0.8wt%、又はそれらの組合せから構成される範囲を含んでよい。
【0017】
アルミニウム鋳造に特に適した組成物は、5~40wt%、好ましくは5~30wt%、又は5~20wt%の分級炭を含んでよい。その分級炭は、メジアン粒径D50が20μm~500μm、40μm~200μm、又は50μm~100μmであってよい。驚くべきことに、組成物中の微量の分級炭は、分級炭を含まない組成物と比較して鋳肌の品質を向上させる。本発明による組成物に特に適した分級炭のタイプは、30%~45%の揮発分、20%~30%の水分、及び8~12%のラストラスカーボンを特徴とする。
【0018】
本発明の発明者は驚くべきことに、ラストラスカーボンフォーマー、特に少量の炭塵及び/又は天然炭素含有樹脂の存在により、特にアルミニウムなどの非鉄材料を鋳造する際に、滑らかで砂のない鋳肌を保証する中子を製造できることを見出した。本発明者らは、低濃度のラストラスカーボンを含む少量の分級炭を使用することで、特にアルミニウム鋳物の場合に、非常に滑らかで砂のない鋳肌が得られることを見出した。
【0019】
ラストラスカーボンフォーマーが、分級炭、活性炭、カーボンブラック、及び、ギルソナイトのような天然由来の炭素含有樹脂の1つ又は複数からなる群から選択される組成物は、中子の製造に特に良好な結果をもたらす。
【0020】
更なる一連の実施形態では、2種以上の異なるラストラスカーボンフォーマーが使用されてよい。例えば、組成物は、強ラストラスカーボンフォーマーと弱ラストラスカーボンフォーマーの混合物を含んでよい。強ラストラスカーボンフォーマーと弱ラストラスカーボンフォーマーの混合物は、例えば10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、又は、それら間の任意の比率であってよい。混合物は、組成物全体で所望のラストラスカーボン含有量を得るように構成されてよい。
【0021】
<粒状耐熱材料>
粒状耐熱材料は、天然耐熱材料、合成耐熱材料、又はそれらの組合せを含んでよい。粒状耐熱材料は砂を含んでよい。砂は、ケイ砂、ケイ酸ジルコニウム砂、クロマイト砂、ボーキサイト砂、カンラン石砂、又はセラミックのビーズからなる群から選択されてよい。
【0022】
砂は、ケイ砂のような、耐熱材料用途に適した任意のタイプであってよい。幾つかの実施形態において、粒状耐熱材料は、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム及びその他の元素の酸化物、炭化物、及び窒化物のような任意の1つ又は複数の従来の耐熱材料を含んでよい。適切な耐熱材料としては、石英、カンラン石、クロマイト、ジルコン、アルミナなどが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、粒状耐熱材料は、フライアッシュ(fly ash)などの球状粒子及び/又はセノスフェアを含む。幾つかの実施形態では、粒状耐熱材料は、砂とフライアッシュとの混合物のような、砂と球状粒子及び/又はセノスフェアとの混合物を含む。
【0023】
粒状耐熱材料は、再生材料だけでなく、新しい粒状耐熱材料を含んでよい。
【0024】
幾つかの実施形態において、粒状耐熱材料は、少なくとも20μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、少なくとも250μm、又は少なくとも500μmのD50粒子径を有する。幾つかの実施形態において、粒状耐熱材料は、2mm以下、1mm以下、又は500μm以下のD50粒子径を有する。幾つかの実施形態では、粒状耐熱材料は、20μm~2mm、50μm~2mm、又は50μm~1mmのD50粒子径を有する。D50値は、ふるい分けによって分析した場合、粒子の50%が特定の直径未満のサイズをもつことを意味する。ふるい分けは、DIN EN 933に準拠したふるい分け装置を使用して行うことが好ましい。
【0025】
<無機バインダー>
無機バインダーは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、又はそれらの組合せのうちの1つ又は複数を含んでよい。無機バインダーは、粒状耐熱材料の重量に対して0.5wt%~5wt%を構成してよい。無機バインダーは、粒状耐熱材料の重量に対して1~4.5wt%、1.5~4wt%、2~3.5wt%、又は3wt%、又はそれらの組合せから形成される範囲を構成してよい。
【0026】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩はケイ酸ナトリウムを含む。幾つかの実施形態において、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩はケイ酸カリウムを含む。一連の実施形態において、少なくとも1種のアルカリ金属ケイ酸塩はケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムを含む。
【0027】
アルカリ金属ケイ酸塩は水溶液であってよい。水溶液の固形分含量は30~50wt%であってよい。幾つかの実施形態では、固形分は32~48wt%、34~46wt%、35~45wt%、36~44wt%、又は38~42wt%であってよい。固形分は約40wt%であってよい。
【0028】
無機バインダーは、熱硬化性バインダーであってもよい。無機バインダーは、例えば加熱された中子箱内にて50~250℃の温度で硬化されてよい。
【0029】
市販されているバインダーは、リチウムとケイ酸ナトリウムの混合物を含んでおり、重量比は2.1、固形分は40%~45%、粘度mPa.s(20℃)は256、密度は1.45~1.55g/cm(20℃)である。別の市販されている水ガラスは、例えば、固形分が41%~47%、重量比が2.2~2.4、密度が1.45~1.55g/cm(20℃)である純ケイ酸ソーダである。
【0030】
<ポゾラン添加剤>
ポゾラン添加剤は、粒状耐熱材料の重量に対して0.1wt%~2wt%を構成してよい。ポゾラン添加剤は、粒状耐熱材料の重量に対して0.2~1.9wt%、0.3~1.8wt%、0.4~1.7wt%、0.5~1.6wt%、0.6~1.5wt%、0.7~1.4wt%、0.8~1.3wt%、0.9~1.2wt%、1.0~1.1wt%、又はこれらの組合せから構成される範囲を構成してよい。
【0031】
ポゾラン添加剤は、シリカフューム(silica fume)及び/又は溶融シリカ(fused silica)及び/又は焼成シリカ(pyrogenic silica)及び/又はマイクロシリカを含んでよい。シリカフュームは非常に微細な非晶質シリカであって、凝縮シリカフューム、マイクロシリカ、シリカダストとも呼ばれている。幾つかの実施形態では、ポゾラン添加剤は20~90wt%のシリカフュームを含む。
【0032】
本明細書で言及される市販のシリカフュームのかさ密度は、高密度化されていない約120kg/mから高密度化又は圧縮された約800kg/mまでの範囲であり、比重は2.1~2.4、表面積(BET)は5~30m/gであってよい。シリカフュームのD90粒径は0.1μm~1μmであってよい。D90値とは、粒子の90%がある粒径以下の大きさであることを意味する。シリカフュームの典型的な平均粒径は、好ましくは0.10~1.0μm、より好ましくは0.10~0.5μm、最も好ましくは0.10~0.30μmである。しかしながら、粒度分析では、しばしば、10~100μmの平均粒径を有する多数の凝集粒子の存在が示される。凝集体の中には、ケイ素の製錬中に生じる強い結合のために壊れにくいものがあることから、そのため、従来のサイズ測定の結果はしばしば、真の粒子サイズ分布とは著しく異なっている。超音波を内蔵した最新のレーザー粒度分布測定機は、特殊な分散剤と併用することで、上述した粒径を正確に測定することができる。
【0033】
本発明に基づく組成物の添加剤に含まれる好適な溶融シリカは、好ましくは10~90μm、より好ましくは20~70μm、更に好ましくは30~50μmの平均粒径を有する溶融シリカであってよい。組成物は、少量の焼成シリカを、好ましくはD50粒径が0.1~20μm、より好ましくは0.1~15μm、最も好ましくは0.15~12μmである少量の焼成シリカを含んでよい。
【0034】
一連の実施形態において、組成物は、ケイ酸アルミニウム、焼結ムライト、二酸化ケイ素、有機変性(organo-modified)二酸化ケイ素及びフライアッシュの群から選択されるポゾラン充填剤を更に含む。前述の物質は全て、反応性の高いポゾランである。例えば、平均粒径が好ましくは10~120μm、より好ましくは20~100μm、最も好ましくは25~80μmであるケイ酸アルミニウムビーズが特に適している。別の市販品としては、最大で75%のムライトを含むセラミック焼結体がある。ムライトはケイ酸塩鉱物である。更に別の充填剤は、有機変性二酸化ケイ素として入手可能な物質であって、その表面はエポキシシランで変性されている。
【0035】
<界面活性剤>
無機バインダーは、表面活性剤、好ましくはアニオン性界面活性剤を含んでよい。幾つかの実施形態では、界面活性剤はエチルヘキシル硫酸ナトリウムである。幾つかの実施形態では、他のタイプの界面活性剤が、例えばカチオン性、非イオン性、又は両性界面活性剤が、本発明で使用される無機バインダーに含まれてよい。界面活性剤は、液体バインダーの表面張力を低下させて組成物の流動性を向上させる。組成物の流動性は、鋳型及び/又は中子の成形精度に影響する重要な特徴である。一般に、本組成物は鋳造用鋳型及び中子を製造するのに適しているが、本組成物は特に鋳造用中子を製造するのに適している。
【0036】
界面活性剤として特に適しているのは、例えばアニオン性界面活性剤であり、液相中におけるこのタイプの割合は0.05~2.0wt%が好ましく、より好ましくは0.10~1.0wt%、最も好ましくは0.20~0.6wt%である。
【0037】
<その他>
好ましくは、組成物は、砂の重量を基準として0~0.5wt%、より好ましくは0~0.4wt%、最も好ましくは0~0.3wt%の粘土/粘土鉱物を含む。つまり、組成物は粘土を不純物としてのみ含んでいる可能性があり、さもなければ粘土鉱物を含んでいない。
【0038】
組成物は、撥水剤を、例えばケイ素系有機撥水剤を含んでよい。撥水剤は、湿度に対する組成物の耐性を向上させ、組成物から製造される中子の機械的強度を向上させ得る。
【0039】
<中子>
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様の組成物を含んでおり、モールディング又は金属鋳造プロセスで使用するための中子が提供される。
【0040】
<プロセス>
本発明の第3の態様によれば、金属鋳造によって金属製品を製造するためのプロセスが提供される。本プロセスは、前述したような組成物を混合して混合物を作ることを含む。本プロセスは、混合物をモールディングして硬化させて、製品の内部キャビティの形状の中子を製造することを含む。本プロセスは、鋳型と中子が一体となってモールドキャビティを画定するように、金属鋳造用の鋳型に中子を組み合わることを含む。本プロセスは、モールドキャビティが充填されるまで溶融金属をモールドキャビティに供給することを含む。本プロセスは、溶融金属を冷却し、凝固させて製品を形成することを含む。
【0041】
この工程は、前述したような組成物を混合することを含んでおり、この組成物は強ラストラスカーボンフォーマーを含んでいる。本プロセスは、モールドキャビティが充填されるまで、少なくとも1000℃の温度で溶融金属をモールドキャビティに供給することを含んでよい。幾つかの実施形態において、金属は、少なくとも1050℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃、1450℃、又は1500℃の温度で供給されてよい。一連の第1の実施形態において、本プロセスは、鉄系金属鋳造によって鉄系金属製品を製造するためのものであってもよい。例えば、本プロセスは、ねずみ鋳鉄、圧縮黒鉛鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、鋼鉄及びそれらの合金のような鉄から製品を製造するためのものであってよい。一連の更なる実施形態において、本プロセスは、非鉄金属鋳造を用いて非鉄金属製品を製造するためのものであってよい。例えば、本プロセスは、黄銅や青銅などの銅又は銅合金から製品を製造するためのものであってよい。
【0042】
一連の実施形態において、本プロセスは、前述したような組成物であって、弱ラストラスカーボンフォーマーを含む組成物を混ぜることを含んでよい。本プロセスは、非鉄金属鋳造を用いて非鉄金属製品を製造するためのものであってよい。本プロセスは、1200℃未満の温度で金属を供給することを含む。例えば、本プロセスは、黄銅や青銅のような銅や銅合金から成形品を製造するためのものであってよい。一連の更なる実施形態において、本プロセスは、800℃未満の温度で金属を供給することを含んでよい。本プロセスは、アルミニウム、亜鉛、スズ、その他の非鉄金属やそれらの合金から、非鉄金属製品を製造するためのものであってもよい。
【0043】
混合物をモールディングして硬化させる工程は、混合物を乾燥させることを含んでよい。混合物をモールディングして硬化させる工程は、中子型に混合物を詰めることを含んでよい。混合物をモールディングして硬化させる工程は、コアシューティング(core-shooting)装置を使用して実行されてよい。中子を製造するために混合物をモールディングして硬化させる工程には、積層造形(additive manufacturing)又は3Dプリンティングプロセスによって中子を製造することが含まれる。
【0044】
本発明の方法は、組成物を鋳型に導入し、50℃~250℃の温度で、好ましくは30秒~5分の間、組成物を熱硬化させることを含んでよい。熱硬化は、鋳型組成物を熱風でパージすることによって行われてよい。加熱中子箱技術は、本明細書ではホットボックス技術又は加熱金属中子箱とも称されており、組成物を用いて鋳造用中子を調製するのに特に有利である。中子の条件と用途に応じて、中子の強度値は容易に調整され得る。加熱中子箱技術により、200~1500N/cmの曲げ強度が得られる。この加熱中子箱プロセスは通常、砂、合成鉱物、粉末添加剤、及び液体バインダーからコアシューティングマシンで中子を製造し、加熱式金属製中子箱で中子を硬化させる。組成物の流動性と成形精度とが非常に高いので、このプロセスは、複雑度が高い又は非常に高い中子の製造を可能にする。これにより、エッジの鋭さが比較的高い中子の製造が可能になる。このプロセスの利点は、中子が鋳型から容易に離型可能であり、寸法精度が高く、表面が細やかであり、エッジが明確であり、鋳造工程後に中子が容易に分解することである。本プロセスは、コアシューティングマシンで組成物から中子を製造し、加熱金属中子箱にて熱風でパージすることで中子を硬化させることを含んでよい。
【0045】
本プロセスは、鋳型から中子を含む製品を取り出すことを更に含んでよい。この方法は、例えば振盪、水による洗浄、サンドブラスト、ショットブラスト等によって内部キャビティから中子を除去することを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、表1の組成物の流動性特性のグラフである。
図2図2は、表1の組成物から形成された中子の曲げ強度のグラフである。
図3図3は、表2の組成物の流動性特性のグラフである。
図4図4は、表2の組成物から形成された中子の曲げ強度のグラフである。
図5図5は、表3の組成物から形成された中子の曲げ強度のグラフである。
図6図6は、4種類のラストラスカーボンフォーマーの熱重量分析を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<実施例>
<実験1-鉄鋳造用の初期組成物>
H33タイプのケイ砂と下記表1のバインダー及び添加剤を混合させて、一連の中子を製造した。混練はホバートミキサーで1分間行われて、その後、2分間繰り返された。
【0048】
Brookfieldパウダーフローテスターを使用して、組成物の流動特性を試験し、組成物の流動機能を測定した。次に、各組成物のサンプルをBrookfield PFTのセルに装填し、その後、その粉末に垂直方向の力を印加して粉末を詰めた(最大主圧密応力(Major Principal Consolidating Stress))。続いて、粉末の流動を開始させるのに必要な力(一軸圧縮破壊強度(Unconfined Failure Strength))を測定するために、同じ最大主圧密応力を維持したまま、詰められた粉末に回転力を加える。このプロセスを一定範囲の圧密応力で繰り返し、図1に示すように圧密応力に対する一軸破壊強度をプロットすることで流動関数(flow function)を構築し、組成物の流動に対する内部抵抗を決定する。通常、粉末の取り扱いと輸送の問題を軽減し、且つ成形不良を避けるためには、流動性を高めることが望ましい。例1~4と例6との間に明らかな差は観察されなった。例5のみが、組成物中にカーボンブラックが含まれていることから著しく低い流動性を示した。
【0049】
CO、コールドボックス、ホットボックスなどのガス硬化プロセスを用いて、横棒がLaempe実験室用マシンタイプL1で製造された。Laempe実験室用マシンタイプL1は、加熱及び非加熱ツーリング(tooling)で試験用中子を製造するために開発されたものである。砂混合物は、サイドプレスの間にクランプされた中子箱に自動的に注入され、様々な温度で加熱され得る。高圧空気の放出により、砂貯蔵バンカー内の砂が中子箱内に高速で吹き込まれる。合計経過シューティング時間は1秒、シューティング圧力は4bar(400kPa)に設定された。全ての被験物を120℃の加熱空気で120秒間パージした。中子箱の温度は140℃に設定された。
【0050】
サンプルの曲げ強度を、3点曲げ試験についてQ-matソフトウェアでコンピュータ制御されたTinius Olsen H5K-T強度試験機を用いて測定し、結果を図2にグラフ化した。最も低い強度は崩壊剤(breakdown agent)としてカーボンブラックを使用した場合に得られ、50~60N/cmであった。これらの中子は非常にもろかった。
【0051】
【表1】
【0052】
太字の値は粒子の重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総バインダーの重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総添加物の重量に対するwt%である;
ケイ酸ナトリウム M23NL(BASF,モンハイム,ドイツ)
DSK40(2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム),0.5%(陰イオン界面活性剤,Brenntag,エンスヘデ,オランダ)
H10-マイクロシット H10(Microsit H10)フライアッシュ(BauMineral GmbH,ヘルテン,ドイツ)
黒鉛 FP70/75(Graphite FP70/75)(IMCD Benelux BV,ロッテルダム,オランダ)
土状黒鉛(Amorphous Graphite)(Grafitbergbau Kaiserberg,ザンクト・シュテファン・オプ・ローベン,オーストリア)
コークス粉末 M(Coke Flour M) (Muco Mucher & Enstipp GmbH,エッセン,トイツ)
石油コークス粉末(Petrol Coke Flour)(Muco Mucher & Enstipp GmbH,エッセン,トイツ)
カーボンブラック(Carbon Black)(IMCD Benelux BV,オランダ,ロッテルダム)
シリカフュームA(Silica Fume A)(COFERMIN Chemicals GmbH & Co.,エッセン,ドイツ)
10 EFAフィラーHP(EFA Fuller HP)、フライアッシュ(Krahn Chemie,オランダ,ザーンダム,オランダ)
【0053】
上記の中子について、注湯温度1355℃のダクタイル鋳鉄を用いて鋳造試験を行った。鋳造プロセス後、中子残渣を取り出して定性的に測定した。その結果は上記表1に記載されている。鋳造試験後の中子抜きは、カーボンブラックを含む中子において最も容易であった。例4及び例6では、崩壊性(collapsibility)がわずかに低下した。鋳物の内面を調査した。全ての場合において、内面間に有意な差が生じていないことは明らかであった。また、何れの場合も内面は比較的荒れており、砂粒が内面に付着していた。
【0054】
<実験2-更なる鉄の調査>
更なる開発と改良について例6を選択した。タイプH33のケイ砂をベースにした砂混合物を、以下の表2のバインダー及び添加剤と混合した。ギルソナイトは、本発明の文脈では添加剤とみなされるであろうが、比較を容易にし、試験手順を簡略化するために、ギルソナイト含有量は表2にて別個に記載されている。添加剤の総含有量は、添加剤濃度とギルソナイト濃度とを加算することで計算できる。両方とも粒状耐熱材料の重量に対するwt%で記録されているからである。
【0055】
流動性測定を上記の実験1と同様に行った。結果は図3にグラフ化されている。どの組成物も流動しやすく、ギルソナイト含有量が低いほど流動性が高いことが分かった。続いて、上記の実験1と同じ条件で中子を製造して曲げ強度試験を行った。その結果は図4にグラフ化されている。ギルソナイト濃度が増加すると、中子の曲げ強度はほぼ直線的に減少することが示された。全ての横棒のサンプル重量は693g~700gであった。これは、ギルソナイト含有量は圧縮レベルに大きな影響を及ぼさないことを示している。
【0056】
ダクタイル鋳鉄の鋳造試験を1380℃で行った。その後、鋳物を室温まで冷却してから中子残渣を除去した。その結果、下記の表2に示すように、少量のギルソナイト(崩壊剤)が存在する中子は、ギルソナイトを含まない中子と比較して崩壊特性が向上していることが分かった。また、ギルソナイト濃度の増加に伴って崩壊特性も向上した。中子残渣を除去すると、ギルソナイトのレベルが高くなると砂の付着が減少すること、そして、内側鋳肌の観察により、ギルソナイトのレベルが高くなると表面の平滑性が向上することが明らかになった。ギルソナイトの濃度が0.6wt%以上の場合、鋳物に縞模様が形成された。濃度が高いほど、縞模様の感度(sensitivity)は高くなった。サンドブラスト後、ギルソナイトを用いなかった中子に関連した鋳物の内面は、白く光沢のある外観を示していることが明らかにされた。ギルソナイトが存在する場合は、濃度レベルに関係なく、このようなことはなかった。
【0057】
【表2】
【0058】
太字の値は粒子の重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総バインダーの重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総添加物の重量に対するwt%である;
ケイ酸ナトリウム M23NL(BASF,モンハイム,ドイツ)
DSK40(2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム)、0.5%(陰イオン界面活性剤,Brenntag,エンスヘデ,オランダ)
黒鉛FP70/75(IMCD Benelux BV,ロッテルダム,オランダ)
シリカフュームA(COFERMIN Chemicals GmbH & Co.,エッセン,ドイツ)
10 EFAフィラーHP(EFA Fuller HP)、フライアッシュ(Krahn Chemie,オランダ,ザーンダム,オランダ)
11 天然炭素含有樹脂(Natural carbon-containing resin)(American Gilsonite Company,ユタ,米国)
【0059】
発明者は、ラストラスカーボンフォーマー(LCF)が鉄鋳造に使用するのに特に望ましいことを見出した。表面品質の望ましい改善を達成し、鋳造欠陥を減らすために、高温では、組成物全体においてより高いラストラスカーボンフォーマー含有量が必要になると考えられる。この改善は、強LCFを使用することで、組成物の流動性やそれから形成される中子の強度に大きな影響を与えることなく達成される。理論に束縛されることを望まないが、弱LCFの含有量を高くすることで同等のラストラスカーボン含有率が得られて理論的には鋳造品質が同様に改善されるかもしれないが、流動性及び中子強度の低下は鋳造品質の低下につながり、それは理論的な改善を否定する。加工性及び中子強度に影響を与えることなく最適な鋳造条件を達成するためには、組成物中のラストラスカーボンフォーマー含有量は、任意選択的に強LCFと弱LCFのブレンドを含むLCFの混合物を使用することによって慎重に選択できると考えられる。
【0060】
<実験3-非鉄鋳造用組成物>
非鉄鋳造プロセスでの使用におけるラストラスカーボンフォーマーの適合性を調査するために試験が実施された。砂と以下の表3の化合物とを用いて一連の中子を調製した。
【0061】
【表3】
【0062】
太字の値は粒子の重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総バインダーの重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総添加物の重量に対するwt%である;
ケイ酸ナトリウム M23NL(BASF,モンハイム,ドイツ)
DSK40(2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム)、0.5%(陰イオン界面活性剤,Brenntag,エンスヘデ,オランダ)
黒鉛 FP70/75(IMCD Benelux BV,ロッテルダム,オランダ)
シリカフュームA(COFERMIN Chemicals GmbH & Co.,エッセン,ドイツ)
10 EFAフィラーHP(EFA Fuller HP)、フライアッシュ(Krahn Chemie,オランダ,ザーンダム,オランダ)
11 天然炭素含有樹脂(American Gilsonite Company,ユタ,米国)
【0063】
流動性を実験1と同様に試験した。全ての組成物は非常に類似したプロファイルを有しており、流動性において明らかな違いを示さず、容易に流動した。組成物を用いて一連の横棒を形成して固めて、実験1に従って強度を試験した。グラフ化した結果が図5に示されている。少量のリン酸三カルシウムの存在が曲げ強度のかなりの低下をもたらし、低濃度のギルソナイトは強度値にほとんど影響を及ぼさないことが分かった。
【0064】
表3の組成物から形成された中子を、745℃の注入温度でアルミニウムを使用して試しに鋳造して試験した。高い倍率では、少量のギルソナイトを含む例15及び例16の場合、アルミニウム鋳物の内面に小さなガス欠陥が見られた。しかしながら、例15及び例16では、アルミニウム鋳造部材に激しい変形が発生し、ギルソナイトの濃度が高くなるほどより大きな変形が見られた。アルミニウム鋳造にギルソナイトを使用することが有効であるとは考えられなかった。
【0065】
【表4】
【0066】
太字の値は粒子の重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総バインダーの重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総添加物の重量に対するwt%である;
DSK40(2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム)、0.5%(陰イオン界面活性剤,Brenntag,エンスヘデ,オランダ)
黒鉛 FP70/75(IMCD Benelux BV,ロッテルダム,オランダ)
シリカフュームA(COFERMIN Chemicals GmbH & Co.,エッセン,ドイツ)
12 ケイ酸ナトリウム水溶液 Crystal 0230(PQ Corporation,アイスデン,オランダ)
13 ケイ酸ナトリウム水溶液 ZSE874(PQ Corporation,アイスデン,オランダ)
14 Kasil 1841(PQ Corporation,アイスデン,オランダ)
15 Cerabeads AFS 200(Ziegler & Co.ヴンジーデル,ドイツ)
17 分級炭GC-190(James Durrance Sons Ltd,英国)
18 分級炭GC-145(James Durrance Sons Ltd,英国)
【0067】
アルミニウム鋳造において永久ダイ(permanent die)と共に使用する一連の中子を、表4に従って調製した。それら中子は、約730℃の注入温度でアルミニウムを使用して試しに鋳造されて試験された。永久ダイで固めた後、鋳物を予熱炉内に500℃で30分間保管した。固化後、中子の例17(ラストラスカーボンフォーマー無し:分級炭)は、より多くの砂の付着を示した。分級炭-145を使用すると、分級炭-190と比較して表面品質が向上した。
【0068】
理論に束縛されるものではないが、ギルソナイトなどのラストラスカーボンフォーマーは強すぎるため、非鉄及び/又は低温の鋳造に使用するには効果的ではないと考えられる。
【0069】
<実験4-ラストラスカーボンフォーマーの研究>
4種類のラストラスカーボンフォーマー:ギルソナイト、分級炭-190、極細分級炭(Superfine Graded Coal)-240、及びコールサンドについて熱重量分析を行った。20~1000℃且つ10℃/分の速度で分析を行ったが、ギルソナイトだけは例外で、5℃/分の速度で試験した。図6に示すように、4種のラストラスカーボンフォーマーは全て約400℃から質量を失い始めたが、ギルソナイトのサンプルは他の3種のラストラスカーボンフォーマーよりもより急速に質量を失った。
【0070】
表5は、ラストラスカーボンフォーマーとそれに含まれる典型的なラストラスカーボン含有量のリストである。
【0071】
【表5】
【0072】
理論に束縛されることを望まないが、発明者らは、ラストラスカーボンフォーマーが鋳造条件下で揮発できる速度が、鋳物の表面欠陥を低減させるラストラスカーボンフォーマー(LCF)の活性に大きく影響を及ぼすと考える。アルミニウムやその他の非鉄鋳造プロセスのような低い温度では、弱ラストラスカーボンフォーマーが、驚くほど効果的であることが分かった。鉄の鋳造工程で見られるような高い温度では、強ラストラスカーボンフォーマーの使用が驚くほど効果的であることが分かった。本明細書では、用語「強」及び「弱」は、LCFの揮発性と添加剤におけるラストラスカーボンの全体的な含有量の両方を反映している。グラファイトのような代替的な炭素源を使った実験では、LCFよりはるかに効果が低いことが分かった。特定の鋳造工程で最も効果的なLCFは、LCF効果の強さと、鋳造の注湯温度と、LCF添加率による中子の強度低下を最小限に抑える要求との間での兼ね合いによる。
【0073】
<実験6 鋳造鋳型組成物と中子製造>
様々な中子を以下の条件下で製造した:以下の表6aに示されている砂、液体バインダー及び添加剤を、20リットルのバッチサイズを有する市販のバッチミキサー(Hobart)を用いて混合した。添加剤と液体バインダーは、2×1分の混合時間で並行して添加された。
【0074】
【表6a】
【0075】
太字の値は粒子の重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総バインダーの重量に対するwt%である;以下に列挙される個々の化合物の値は、総添加物の重量に対するwt%である;
DSK40(2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム)、0.5%(陰イオン界面活性剤,Brenntag,エンスヘデ,オランダ)
11 天然炭素含有樹脂(American Gilsonite Company,ユタ,米国)
12 ケイ酸ナトリウム水溶液 Crystal 0230(PQ Corporation,アイスデン,オランダ)
13 ケイ酸ナトリウム水溶液 ZSE874(PQ Corporation,アイスデン,オランダ)
14 Kasil 1841(PQ Corporation,アイスデン,オランダ)
15 Cerabead AFS 200(Ziegler & Co.ヴンジーデル,ドイツ)
17 分級炭GC-190(James Durrance Sons Ltd,英国)
19 ケイ素系有機撥水剤(Wacker Chemie AG,シュトゥットガルト,ドイツ)
20 溶融シリカ325(Imerys Fused Minerals Greeneville Inc.,グリーンビル,米国)
21 ポゾラン充填剤-アルミニウムケイ酸塩(Stauss-Perlite GmbH,ポエルテン,オーストリア)
22 QQS 26(D50粒子径 0.26mm)(Wolff und Muller Quarzsande GmbH,ドイツ);
23 F32(D50粒子径 0.24mm)(Quarzwerke GmbH,フレッヒェン,ドイツ);
24 HB32(D50粒子径 0.30mm)(Quarzwerke GmbH,フレッヒェン,ドイツ);
【0076】
以下の表6bに示すコアシューターに混合物を導入し、同表に示す条件下で中子を製造した。
【0077】
例21-気温20℃、相対湿度40%でそれら中子を24時間保管した後、強度試験を行った。上記の実験1に従って測定すると、それら中子は約400N/cmの冷間強度を有していた。合金AlSiCuMg0.5を使用して試し鋳造を実施した。注湯温度は760℃で、アルミニウムの総量は各試し鋳造において39kgであった。鋳造試験品の内面は砂の付着がなくきれいな表面であった。中子にはコーティングを施さなかった。
【0078】
【表6b】
【0079】
例22-気温20℃、相対湿度50%で中子を1時間保管した後、強度試験を行った。上記の実験1に従って測定すると、それら中子は350N/cmの熱間強度を有していた。中子にはコーティングを施さなかった。合金CC491を使用して試し鋳造を実施した。注湯温度は1150℃であって、合金の総量は各試し鋳造において20kgであった。鋳造試験品の内面は砂の付着がなくきれいな表面であった。
【0080】
例23-気温20℃、相対湿度50%で中子を24時間保管した後、強度試験を行った。実験1に従って測定した中子の強度は500N/cmであった。中子にはコーティングを施さなかった。鋳鉄GJS600を使用して試し鋳造を実施した。注湯温度は1450℃で、合金の総量は各試し鋳造において160kgであった。上記のように製造された中子を用いて、試験品であるディファレンシャルハウジングの滑らかで砂のない表面が達成された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
US2015/306658は、少なくとも1種の酸化アルミニウムと水ガラス系バインダーとを含む鋳型混合物を記載している。US7770629には、金属加工用の鋳型を製造するための鋳型混合物を記載しており、当該鋳型混合物は、水ガラスをベースとするバインダーを含んでいる。CN111889616は、特に金属アルカリを含む鋳造用硬化剤を記載している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鋳造プロセスに使用する中子を作るための組成物において、
粒状耐熱材料と、
ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、又はそれらの組合せのうちの1つ又は複数を含んでいる0.5~5wt%の無機バインダーと、
シリカフューム、溶融シリカ、焼成シリカ及びマイクロシリカのうちの1つ又は複数を含んでいる0.1wt%~2wt%のポゾラン添加剤と、
0.1~1.5wt%のラストラスカーボンフォーマーと、
を含んでおり、
上記の重量パーセントは、前記粒状耐熱材料の重量に対してのものである、組成物。
【請求項2】
鉄系金属鋳造プロセスで使用する中子を作るためのものであり、前記ラストラスカーボンフォーマーは強ラストラスカーボンフォーマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記強ラストラスカーボンフォーマーは、アスファルト、炭化水素樹脂、ポリスチレン、及びギルソナイトのうちの1つ又は複数を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記強ラストラスカーボンフォーマーは、少なくとも15%のラストラスカーボン含有量を有する、請求項2又は請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
非鉄金属鋳造プロセスで使用する中子を作るためのものであり、前記ラストラスカーボンフォーマーは弱ラストラスカーボンフォーマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記弱ラストラスカーボンフォーマーは、分級炭、炭塵、及びシーコールのうちの1つ又は複数を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記弱ラストラスカーボンフォーマーは15%未満のラストラスカーボン含有量を有する、請求項5又は請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
記粒状耐熱材料は砂を含む、請求項1乃至の何れかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1乃至の何れかに記載の組成物から形成される中子。
【請求項10】
金属鋳造によって金属製品を製造する方法において、
(i)請求項1乃至の何れかに記載の組成物を混合して混合物を作る工程と、
(ii)前記混合物をモールディングして硬化させて、前記金属製品の内部キャビティの形状の中子を製造する工程と、
(iii)前記中子を金属鋳造用の鋳型と組み合わせて、前記鋳型と前記中子とが共になってモールドキャビティを画定するようにする工程と、
(iv)前記モールドキャビティが充填されるまで、前記モールドキャビティに溶融金属を供給する工程と、
(v)前記溶融金属を冷却して固化させて前記金属製品を成形する工程と、
を含む方法。
【請求項11】
工程(i)は、請求項2乃至の何れかに、又はそれに従属する何れかの請求項に記載の組成物を混合することを含んでおり、工程(iv)は少なくとも1000℃の温度で行われる、鉄系金属鋳造によって鉄系金属製品を作るための請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(i)は、請求項乃至の何れかに又はそれに従属する何れかの請求項に記載の組成物を混合することを含んでおり、工程(iv)は1200℃未満の温度で行われる、非鉄金属鋳造によって非鉄金属製品を製造するための請求項10に記載の方法。
【国際調査報告】