(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】複雑な混合物中の改善された物質定量
(51)【国際特許分類】
C07K 1/16 20060101AFI20240705BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240705BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240705BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20240705BHJP
G01N 30/04 20060101ALI20240705BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240705BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20240705BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07K1/16
C07K14/00 ZNA
C07K7/06
C07K7/08
G01N30/04 P
G01N30/88 J
G01N30/26 A
G01N30/86 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501531
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022069372
(87)【国際公開番号】W WO2023285412
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514084004
【氏名又は名称】アイエスエー ファーマシューティカルズ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】ISA Pharmaceuticals B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バーム, ブリジット エリサ アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ビーナッカー, トーマス ヨハネス マリア
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA09
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045BA21
4H045EA50
4H045GA21
(57)【要約】
開示された発明は、分析化学の分野である。特に、複雑な混合物中の分析物の改善された定量方法、及び正確な量の前記分析物を含む組成物に関する。改善された方法は、安定な参照標準を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知量の第1の分析物を含む混合物を製造する方法であって、
i)前記第1の分析物を含む混合物を提供するステップと;
ii)既知量の参照物質を含む参照標準を提供するステップであって、前記参照物質は前記第1の分析物ではなく、前記参照物質は小分子であり、且つ前記第1の分析物のモル吸光係数と前記参照物質のモル吸光係数との間の比は既知であるステップと;
iii)分光光度法を用いて、前記第1の分析物及び前記参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るステップと;
iv)得られた吸光度値及び既知のモル吸光係数比に基づいて、前記混合物中の前記第1の分析物の含有量を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の分析物がペプチドであり、好ましくは、前記第1の分析物が5~100アミノ酸、好ましくは10~50アミノ酸の長さを有するペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の分析物が、配列番号1~12のいずれか1つによって表される配列を含むペプチドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップi)において提供される前記混合物がUV透明溶液である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)において提供される前記混合物が、前記第1の分析物及び溶媒を含み、前記溶媒が、好ましくは、水、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルから選択され、任意選択的に、ギ酸又はトリフルオロ酢酸などの酸が存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が、第2の分析物、及び任意選択的に第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含み、好ましくは、各分析物のモル吸光係数と前記参照物質のモル吸光係数との比が既知である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各分析物の吸光度がステップiii)で決定され、各分析物の含有量がステップiv)で決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップiii)が、HPLC又はUPLCなどの分析液体クロマトグラフィーを用いて実施され、任意選択的にステップiii)が、以下のサブステップ:
iii-a)既知量の参照物質を前記混合物に添加するサブステップ;
iii-b)液体クロマトグラフィーを用いて、前記第1の分析物及び前記参照物質を分離するサブステップ;
iii-c)分光光度計を用いて、前記第1の分析物及び前記参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るサブステップ
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
参照物質及び/又は分析物のモル吸光係数が、180~800nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは220nm、254nm、又は280nmなどの200~400nmの波長で決定されるモル吸光係数である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記参照物質が、0.1・10
4L・mol
-1・cm
-1~3・10
4L・mol
-1・cm
-1、好ましくは0.9・10
4L・mol
-1・cm
-1~1.5・10
4L・mol
-1・cm
-1のモル吸光係数を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記参照標準が、米国薬局方(USP)参照標準である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記参照標準が、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、スルファグアニジン、Val-Tyr-Val、ロイシン-エンケファリン、テルフェナジン又はそれらの塩を含み、好ましくは、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、又はそれらの塩を含み、より好ましくは、レセルピン又はそれらの塩を含む標準である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
各ペプチドの重量百分率が、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の93%~103%である、請求項3に定義される少なくとも4種の異なるペプチドを含む組成物。
【請求項14】
少なくとも第1の組成物及び第2の組成物を含む複数の組成物であって、前記第1の組成物及び前記第2の組成物が、それぞれ請求項13に記載の組成物であり、前記組成物が、前記組成物が異なる製造バッチに由来するという点で互いに異なり、前記第1の組成物中に含まれる各ペプチドの重量百分率が、前記第2の組成物中に含まれるその同一ペプチドの重量百分率の93%~103%であり、好ましくは、前記組成物が、
DP-5P)それぞれのペプチドが配列番号1~5の1種を含む、5種の異なるペプチド;又は
DP-7P)それぞれのペプチドが配列番号6~12の1種を含む、7種の異なるペプチド
のうちの1つを含む、複数の組成物。
【請求項15】
i)請求項3に記載の少なくとも2種の異なるペプチドを含む組成物と、
ii)参照標準、好ましくは請求項11又は12に記載の参照標準と
の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された発明は、分析化学の分野のものである。特に、複雑な混合物中の分析物の改善された定量のための方法、及び前記分析物の正確な量を含む組成物に関する。改善された方法は、安定な参照標準を使用する。
【背景技術】
【0002】
薬品中の薬物の正確な識別及び定量は、特に製薬業界にとって興味深いものである。特に、複数の薬物を含む複雑な混合物では、要求される規格を薬品が満たすことを保証することは技術的に困難である。このような規格には、各物質の必要含有量が記載され、任意の不純物の最大許容含有量も記載される。規格は規制上の注意事項であり、薬品の有効性及び安全性を保証するために有用である。
【0003】
薬品中の薬物及び不純物の従来の定量は、参照標準を使用するクロマトグラフィー法に依存している。このような標準は、既知の量の同薬物を含む。これらの方法には、精度を低下させる可能性のある欠点がある。例えば、多くの薬物は吸湿性であるため、正確な濃度の前記物質を含む参照標準の調製が複雑である。さらに、溶液中の標準は、信頼できる測定標準に要求される安定性よりも低い安定性を有することがあるため、各測定前に新鮮な参照標準を調製することが典型的に必要とされる。標準調製の継続的な必要性は面倒であり、異なる測定間の再現性を低下させる可能性がある。
【0004】
この問題は、特にペプチドベースの薬物で顕著である。一般に知られているように(例えば、Sigma-Aldrich Co.によって2005年に出版された「Storage and handling synthetic peptides-guidelines」、インターネットでは、www.sigmaaldrich.com/deepweb/assets/sigmaaldrich/marketing/global/documents/403/465/peptide_handling_guide.pdfを参照のこと)、ペプチド溶液の保存期間は限られている。N、Q、C、M及びWなど様々な残基を含むペプチドは、溶液中での保存時に不安定である。滅菌バッファー(pH5~6)を使用し、アリコートを凍結することによって、ペプチドの保存期間は延びるが、これには凍結保存が必要である。凍結解凍サイクルを繰り返すと、ペプチドに損傷を与える可能性がある。ペプチドの分解を防ぐ、或いは最小限に抑える最も効果的な方法は、凍結乾燥した状態で-20℃、好ましくは-80℃で保存することである。ペプチドが溶液の場合、凍結解凍サイクルは避けるべきである。凍結乾燥されたペプチド及び溶液を大気中の酸素に曝露することは、標準の信頼性をさらに低下させる大気中の水分の捕獲を避けるために、最小化されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野において、保存中の安定性を向上させるために、例えば人工タンパク質中への標準ペプチドの連結を伴う、ペプチド参照標準が開発されている(国際公開第2016150853号パンフレット)。しかしながら、この方法では、参照標準が必要とされる製品の各混合物に対して、大きなポリペプチドを個別に展開させる必要がある。
【0006】
したがって、混合物中の薬物の改善された定量方法が必要とされている。特に、ペプチド薬品中のペプチドベースの薬物の改善された定量方法が必要とされている。参照標準の調製が不要な、薬物の定量分析法が必要とされている。試料をより厳密でない条件下で保存及び取り扱うことができ、さらなる展開を必要とすることなく試料を容易に利用することができる、複雑な薬品の分析方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、既知量の第1の分析物を含む混合物を製造する方法であって、
i)第1の分析物を含む混合物を提供するステップと;
ii)既知量の参照物質を含む参照標準を提供するステップであって、ここで参照物質は第1の分析物ではなく、参照物質は好ましくは小分子であり、且つ第1の分析物のモル吸光係数と参照物質のモル吸光係数との間の比は既知であるステップと;
iii)分光光度法を用いて、第1の分析物及び参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るステップと;
iv)得られた吸光度値及び既知のモル吸光係数比に基づいて、混合物中の第1の分析物の含有量を決定するステップと
を含む方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、第1の分析物がペプチド、好ましくは5~100アミノ酸、好ましくは10~50アミノ酸の長さを有するペプチドであるようなものである。いくつかの実施形態において、第1の分析物は、配列番号1~12のいずれか1つによって表される配列を含むペプチドである。いくつかの実施形態において、ステップi)において提供される混合物は、UV透明溶液である。いくつかの実施形態において、ステップi)において提供される混合物は、第1の分析物及び溶媒を含み、溶媒は、好ましくは、水、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルから選択され、任意選択的に、ギ酸又はトリフルオロ酢酸などの酸が存在する。いくつかの実施形態において、混合物は、第2の分析物、及び任意選択的に第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含み、好ましくは、各分析物のモル吸光係数と参照物質のモル吸光係数との比が既知である。いくつかの実施形態において、各分析物の吸光度はステップiii)で決定され、各分析物の含有量はステップiv)で決定される。いくつかの実施形態において、ステップiii)は、HPLC又はUPLCなどの分析液体クロマトグラフィーを用いて実施され、任意選択的にステップiii)は、以下のサブステップ:
iii-a)既知量の参照物質を混合物に添加するサブステップ;
iii-b)液体クロマトグラフィーを用いて、第1の分析物及び参照物質を分離するサブステップ;
iii-c)分光光度計を用いて、第1の分析物及び参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るサブステップ
を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、参照物質及び/又は分析物のモル吸光係数は、180~800nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは220nm、254nm、又は280nmなどの200~400nmの波長で決定されるモル吸光係数である。いくつかの実施形態において、参照物質は、0.1・104L・mol-1・cm-1~3・104L・mol-1・cm-1、好ましくは0.9・104L・mol-1・cm-1~1.5・104L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する。いくつかの実施形態において、参照標準は、米国薬局方(United States Pharmacopeia)(USP)参照標準である。いくつかの実施形態において、参照標準は、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、スルファグアニジン、Val-Tyr-Val、ロイシン-エンケファリン、テルフェナジン又はそれらの塩を含み、好ましくは、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、又はそれらの塩を含み、より好ましくは、レセルピン又はそれらの塩を含む標準である。
【0010】
本発明の別の態様は、少なくとも4種の異なるペプチドを含む組成物に関し、前記ペプチドは、配列番号1~12のいずれか1つで表される配列を含み、各ペプチドの重量百分率は、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の93%~103%である。
【0011】
本発明の別の態様は、少なくとも第1の組成物及び第2の組成物を含む、複数の組成物に関し、ここで第1の組成物及び第2の組成物は、それぞれ本発明による組成物であり、組成物は、組成物が異なる製造バッチに由来するという点で互いに異なり、ここで第1の組成物中に含まれる各ペプチドの重量百分率は、第2の組成物中に含まれるその同一ペプチドの重量百分率の93%~103%であり、好ましくは、組成物は、
DP-5P)それぞれのペプチドが配列番号1~5の1種を含む、5種の異なるペプチド;又は
DP-7P)それぞれのペプチドが配列番号6~12の1種を含む、7種の異なるペプチド
のうちの1つを含む。
【0012】
本発明の別の態様は、
i)少なくとも2種の異なるペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが配列番号1~12のいずれか1つによって表される配列を含む組成物と、
ii)参照標準、好ましくは米国薬局方(USP)参照標準、又はカフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、スルファグアニジン、Val-Tyr-Val、ロイシン-エンケファリン、テルフェナジン、又はそれらの塩を含み、好ましくは、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、又はそれらの塩を含み、より好ましくは、レセルピン又はそれらの塩を含む参照標準と
の組み合わせに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の分析法におけるDP-5P混合物(5種のペプチド、配列番号1~5、それぞれ番号1~5で示される)のUPLC-UVクロマトグラム。DP-5P混合物はAで表され、Bはブランク溶液を表す。
【
図2】従来の分析法におけるDP-7P混合物(7種のペプチド、配列番号6~12、それぞれ番号6~12で示される)のUPLC-UVクロマトグラム。DP-7P混合物はAで表され、Bはブランク溶液を表す。
【
図3】本発明による方法におけるDP-5P混合物(5種のペプチド、配列番号1~5、それぞれ番号1~5で示される)UPLC-UVクロマトグラム。
【
図4】本発明による方法におけるDP-7P混合物(7種のペプチド、配列番号6~12、それぞれ番号6~12で示される)のUPLC-UVクロマトグラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、異なる物質を参照標準として使用することにより、複雑な混合物中の分析物を高い精度で定量できることを見出した。両物質の吸光度を決定し、それらの吸光係数の比を知ることにより、吸光度値、既知の吸光係数比、及び使用された参照標準の既知量に基づいて、分析物の量を計算することができる。これにより、複数の長いペプチドを含む薬物などの複雑な混合物の分析に、魅力的な参照標準を使用することができる。小分子の参照標準も使用可能であり、例えば、市販の参照標準も使用可能である。例えば、米国薬局方(USP)参照標準は、その機関によって認証され、その含有量及び安定性の証明書が付属している。より信頼性の高い参照標準を使用することで、より正確な分析物の定量が可能になる。
【0015】
方法
第一の態様において、本発明は、既知量の第1の分析物を含む混合物を製造するための方法であって、
i)第1の分析物を含む混合物を提供するステップと;
ii)既知量の参照物質を含む参照標準を提供するステップであって、ここで参照物質は第1の分析物ではなく、参照物質は好ましくは小分子であり、且つ第1の分析物のモル吸光係数と参照物質のモル吸光係数との間の比は既知であるステップと;
iii)分光光度法を用いて、第1の分析物及び参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るステップと;
iv)得られた吸光度値及び既知のモル吸光係数比に基づいて、混合物中の第1の分析物の含有量を決定するステップと
を含む方法を提供する。このような方法を、本明細書中、本発明による方法と記載する。
【0016】
i)混合物の提供
ステップi)において、第1の分析物を含む混合物が提供される。混合物は均一であっても不均一であってもよいが、後の分光分析のために、均一混合物が好ましい。混合物は有色であっても無色であってもよい。適切な混合物の例としては、溶液、懸濁液、エマルジョン及びコロイドが挙げられる。溶液が好ましく、典型的には、別の物質(溶媒)に溶解した物質(溶質)を含む均一な混合物である。例えば、第2の分析物や第3の分析物など、複数のさらなる溶質が存在してもよい。緩衝塩、或いは追加の溶媒、又は分析試料若しくは薬学的に許容される組成物中に一般的に見出される他の物質が存在してもよい。所与の溶質の濃度は、溶液全体で同一である。溶液は透明であってもよく、本明細書では透明又はUV(紫外線)透明とも記載される。当業者は、UV-透明性は溶液一般に関し、第1の分析物又は参照標準による吸収は溶液を不透明にすることとは考えられないことを理解する。一般に、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%のUV光が溶液を透過する場合、溶液はUV透明性である。好ましくは、混合物1cmのUV透明性は、水1cmの透明性の少なくとも10%以内である。したがって、いくつかの実施形態において、ステップi)で提供される混合物は溶液であり、好ましくは、それはUV透明性溶液である。当業者は、混合物という用語がさらに混合物の試料を含むことを理解する。「試料」とは、本発明の方法を用いて分離及び分析されるより大きな混合物の代表的な部分を指す。試料は、希釈された試料、すなわち、その成分の濃度が既知の係数(希釈係数又はDF)だけ減少した試料であってもよい。また、混合物は、測定される分析物が乾燥物質として提供される再構成混合物であってもよい。乾燥分析物は、好ましくは凍結乾燥分析物である。乾燥混合物が提供される場合、その混合物は第1の分析物のみからなる場合もある。再構成後、上記のような実際の混合物が得られる。当業者であれば、分析物を再構成する方法を知っている。例えば、ペプチドの場合、再構成は国際公開第2017/220463号パンフレットに記載されている。
【0017】
本明細書で使用される場合、「分析物」という用語には、本明細書で後述する方法によって分析できることを条件として、あらゆる種類の分子も含まれる。適切な分析物の例としては、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ポリペプチド類似体、ポリヌクレオチド類似体、糖、複合炭水化物、複合脂質、ポリマー、薬物及び薬物様分子のような有機小分子、並びにそれらの混合物が挙げられる。好ましい分析物はペプチドである。分析されるペプチドは、合成されたものであることも、より大きなタンパク質からの消化に由来するものであることも可能である。好ましくは、ペプチドは合成物である。「ペプチド」又は「タンパク質」又は「アミノ酸配列」という用語は、文脈から明らかなように、本明細書中、互換的に使用することができる。ペプチド中の残基は、タンパク質原性アミノ酸であり得るが、非タンパク質原性アミノ酸、例えば、D-アミノ酸及び翻訳後修飾によって形成された修飾アミノ酸、及び非天然アミノ酸であってもよい。
【0018】
好ましいペプチドはタンパク質抗原由来である。本明細書で使用される場合、「タンパク質抗原」という用語は、被験体において免疫応答を誘導することができる抗原領域を含むタンパク質を指す。ペプチドは、タンパク質抗原から選択されたる連続アミノ酸配列を含む場合、タンパク質抗原に「由来」し、ペプチドは、当業者に既知であり、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,第3版,John Wiley & Sons Inc(2003)、並びにSambrook及びGreen,Molecular Cloning.A Laboratory Manual,第4版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012)などの標準ハンドブックにも記載されている標準分子ツールボックス法を使用して、任意選択的に、1つ若しくは複数のアミノ酸の欠失、挿入若しくは置換によって、又は付加的なアミノ酸若しくは官能基によるN末端及び/若しくはC末端の伸長若しくは短縮によってさらに修飾され得る。ペプチドの修飾は、改善された安定性、生物学的利用能、又はT細胞へのターゲティングを提供し得る。
【0019】
感染細胞、前癌細胞及び/又は癌細胞によって特異的に発現されたタンパク質抗原が特に好ましい。このようなタンパク質抗原はウイルス性抗原であっても非ウイルス性抗原であってもよい。ウイルス抗原の例は、エプスタインバーウイルス誘導リンパ腫(Epstein Bar virus induced lymphoma’s)(EBV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T lymphotrophic virus)I、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)(HBV)、ヒトパピローマウイルス(Human papilloma virus)(HPV)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(Kaposi sarcoma herpes virus)(KSHV)、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus)(HVC)、KSV、メルケル細胞癌ウイルス(Merkel cell carcinoma viru)、SARS関連コロナウイルス(SARS-CoV-2など)などに由来する抗原である。ウイルスタンパク質抗原の例は、EBV由来のタンパク質抗原、例えば、LMP1又は後期膜タンパク質(late membrane protein)1(例えば、UniprotKB P03230)及びLMP2又は後期膜タンパク質2(例えば、UniprotKB PI3285);ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T lymphotrophic virus)I由来のタンパク質抗原、例えば、Taxタンパク質(例えば、UniprotKB P14079;P0C213;P03409);HBV由来のタンパク質抗原、例えば、遺伝子型A、B、C又はD、例えば、タンパク質hBsAg(例えば、UniprotKB Q773S4)、Xタンパク質(例えば、UniprotKB Q8V1H6)、ラージエンベロープタンパク質(例えば、UniprotKB P03138)及びキャプシドタンパク質(例えば、UniprotKB P03147);HCV由来のタンパク質抗原、例えば、ゲノムポリタンパク質(例えば、UniprotKB P26663;Q99IB8;A3EZI9)及びHCVタンパク質(例えば、UniprotKB Q99398);HPV由来のタンパク質抗原、例えば、発癌性遺伝子型6、11、16、18、31、33、45、52、58、59、68、例えば、E6オンコプロテイン(例えば、UniprotKB P03126;P06463)及びE7オンコプロテイン(例えば、UniprotKB P03129;P06788)、KSHV由来のタンパク質抗原、例えば、タンパク質ORF36(例えば、UniprotKB F5HGH5)、コア遺伝子UL42ファミリータンパク質(例えば、UniprotKB Q77ZG5)、ビリオンイーグレスタンパク質(virion egress protein)UL31ホモログ(例えば、UniprotKB F5H982)、トリプレックスカプシドタンパク質(Triplex capsid protein)VP19Cホモログ(例えば、UniprotKB F5H8Y5)、ウイルス性マクロファージ炎症性タンパク質(viral macrophage inflammatory protein)2(例えば、UniprotKB Q98157)、mRNA輸送因子ICP27ホモログ(例えば、UniprotKB Q2HR75)、ORF52(例えば、UniprotKB F5HBL8)、ウイルス性IRF4様タンパク質(Viral IRF4-like protein)(例えば、UniprotKB Q2HR73)、Bcl-2(例えば、UniprotKB Q76RI8)、ラージテグメントタンパク質デネジラーゼ(Large tegument protein deneddylase)(例えば、UniprotKB Q2HR64)、V-サイクリン(V-cyclin)(例えば、UniprotKB 040946)、VIRF-1(例えば、UniprotKB F5HF68)及びE3ユビキチン-タンパク質リガーゼMIR1(例えば、UniprotKB P90495);抗原タンパク質メルケル細胞癌ウイルス(antigen protein Merkel cell carcinoma virus)、例えば、ラージTタンパク質(例えば、UniprotKB E2IPT4;K4P159)、例えば、スモールTタンパク質(例えば、UniprotKB B6DVX0;B6DVX6)である。
【0020】
非ウイルス性抗原は、腫瘍特異性抗原及び/又は腫瘍関連抗原であり得る。腫瘍特異性抗原は、腫瘍細胞によってのみ発現され、他の細胞では発現されない抗原であり、KrasG21D及び変異体P53などの変異タンパク質、或いはDNAの変異及びDNA修復機構の誤作動によってやがて生じる新抗原であることが多い。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞にも正常細胞にも存在する内因性抗原であるが、HER-2/neu受容体のように、その発現又は細胞局在に調節不全がある。非ウイルス性抗原の非限定的な例は、Her-2/neu(又はErbB-2、ヒト上皮成長因子受容体2(例えば、UniprotKB P04626);WT-1又はウィルムス(Wilms)腫瘍タンパク質(例えば、UniprotKB P19544);NY-ESO-1又は癌/精巣抗原1(例えば、UniprotKB P78358);MAGE-A3又はメラノーマ関連抗原-A3(例えば、UniprotKB P43357);BAGE又はBメラノーマ抗原(例えば、UniProtKB Q13072);CEA又は癌胎児性抗原(例えば、UniProtKB Q13984);AFP又はa-フェトプロテイン(例えば、UniProtKB P02771);XAGE-IB又はX抗原ファミリーメンバー1(例えば、UniProtKB Q9HD64);サバイビン(survivin)又はBIRC5、バキュロウイルスlAP反復含有タンパク質5(例えば、UniprotKB 015392);P53(例えば、UniprotKB P04637);h-TERT又はテロメラーゼ逆転写酵素(例えば、UniprotKB 014746);メソセリン(例えば、UniProtKB H3BR90);PRAME又は腫瘍において優先的に発現されるメラノーマ抗原(例えば、UniprotKB P78395);MUC-1又はムチン-1(例えば、UniprotKB P15941);Mart-1/Melan-A又はT細胞によって認識されるメラノーマ抗原1(例えば、UniprotKB Q16655);GP-100又はメラノサイトタンパク質PMEL(例えば、UniprotKB P40967);チロシナーゼ(例えば、UniprotKB U3M8N0);チロシナーゼ関連タンパク質-1(例えば、UniprotKB PI7643);チロシナーゼ関連タンパク質-2(例えば、UniprotKB 075767);PAP又はPAPOLA、ポリ(A)ポリメラーゼアルファ(例えば、UniprotKB P51003);PSA又は前立腺特異性抗原(例えば、UniprotKB P07288);PSMA又は前立腺特異性膜抗原、又はグルタミン酸カルボキシペプチダーゼ2(例えば、UniprotKB Q04609)である。
【0021】
ペプチドは、そのペプチドが由来するタンパク質抗原に由来しない追加のアミノ酸を含む結果として、及び/又は修飾アミノ酸及び/又は非天然由来アミノ酸及び/又は共有結合官能基、例えば、フッ素化基、フルオロカーボン基、ヒトToll様受容体リガンド及び/又はアゴニスト、オリゴヌクレオチド複合体、PSA、糖鎖又はグリカン、pam3cys及び/又はその誘導体、好ましくは国際公開第2013051936A1号パンフレットに記載されているようなもの、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)、環状ジヌクレオチド(CDN)、DCパルスカセット、破傷風毒素由来ペプチド、ヒトHMGB1由来ペプチドを、上記のように、ペプチド内又はペプチドに付加された状態で含む結果として、非天然由来配列を含むか、又はそれらからなり得る。ペプチドは、2-アミノイソ酪酸(Abu、システインのイソステア)を含んでいてもよい。ペプチドのシステインはAbuによって置換されていてもよい。ペプチドは、好ましくは、単離されたペプチドであり、すなわち、人為的な操作を受け、天然の環境から除去されたペプチドである。
【0022】
ペプチドは、好ましくは抗原性ペプチドである。本明細書で使用される場合、「抗原性ペプチド」という用語は、免疫原性であり、例えば、ワクチンなどの医薬組成物中などで、対象、例えば動物又はヒト対象に投与された場合に、複合抗原指向性CD4+Tヘルパー及びCD8+細胞傷害性T細胞応答を誘導することができるペプチドを指す。免疫原性の評価は、放射免疫沈殿、ELISA、電気化学発光などの技術分野で標準的なin vivo、in vitro、又はex vivo技術を使用して行うことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、第1の分析物は、好ましくは、5~100個のアミノ酸の長さを有するペプチドである。好ましくは、ペプチドは、5~100個のアミノ酸、5~95個のアミノ酸、5~90個のアミノ酸、5~85個のアミノ酸、5~80個のアミノ酸、5~75個のアミノ酸、5~70個のアミノ酸、5~65個のアミノ酸、5~60個のアミノ酸、5~55個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、10~40個のアミノ酸、15~40個のアミノ酸、17~39個のアミノ酸、19~43個のアミノ酸、22~40個のアミノ酸、22~45個のアミノ酸、28~40個のアミノ酸、又は30~39個のアミノ酸、より好ましくは10~50個のアミノ酸の長さを有する。好ましくは、ペプチドは、最大で100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、79、78、77、76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、又は30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10個のアミノ酸の長さを有する。好ましくは、ペプチドは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50個のアミノ酸の長さを有する。
【0024】
ペプチドは、ヒトパピローマウイルス(HPV)、例えば初期HPV抗原タンパク質E2、E6、又はE7由来であってもよい。好ましくは、HPVタンパク質はE6又はE7から選択され、血清型6、11、16、18、31、33、45、52、58、59、68などのハイリスクHPV血清型、好ましくは血清型16又は18由来である。HPV由来のペプチドの例は、国際公開第2017/220463号パンフレット及びPCT/EP2021/052738号明細書に記載されている。
【0025】
ペプチドはまた、B型肝炎ウイルス(HBV)由来、例えば表面、ポリメラーゼ、コア又はXタンパク質抗原タンパク質由来であってもよい。好ましくは、HBVタンパク質は、遺伝子型A、B、C又はDなどの一般的なHBV遺伝子型から高度に保存された領域から選択される。HBV由来のペプチドの例は、国際公開第2015/187009号パンフレット及び国際公開第2021/110919号パンフレットに記載されている。
【0026】
さらに、ペプチドは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)由来、例えば構造タンパク質由来であってもよい。好ましくは、SARS-CoVタンパク質は、スパイクタンパク質、エンベロープタンパク質、膜タンパク質又はヌクレオカプシドタンパク質内の、複数のT細胞エピトープを保有する免疫原性領域から選択される。SARS-CoV由来のペプチドの例は、PCT/EP2021/060688号明細書に記載されている。
【0027】
或いは、腫瘍で優先的に発現されるPRAME又はメラノーマ抗原のような癌精巣抗原に由来するペプチドでもよい。好ましくは、ペプチドは、PRAMEタンパク質の免疫原性領域を含むように設計される。PRAME由来ペプチドの例は、国際公開第2008/118017号パンフレット及び国際公開第2017/220463号パンフレットに記載されている。
【0028】
いくつかの実施形態において、第1の分析物は、配列番号1~12のいずれか1つ、或いは配列番号1~12のいずれか1つと少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%を有する配列によって表される、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性又は類似性を有する配列によって表される配列を含むペプチドである。より好ましくは、分析物は配列番号1~12のいずれか1つと少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語は、本明細書に記載される分析物を適切な濃度で溶解することが可能であるいずれかの溶媒又は溶媒の混合物を含む。当業者は、特定の溶媒の選択が分析物に依存することを理解する。ペプチドの場合、典型的に、ペプチド中のイオン電荷の数及び種類が水溶液中でのその溶解性を決定する。一般に、荷電残基の数が多いペプチドほど水溶液中でより溶解性となる。この一般的な規則に対する多くの例外の中には、非常に疎水性であるペプチド配列、及び凝集する傾向のあるペプチド配列がある。配列の疎水性が凝集の主な原因であるが、ペプチドは広範な水素結合ネットワークによって凝集、又は「ゲル化」することもある。様々な溶媒カテゴリーの特性は、Yizhak Marcus,The Properties of Solvents,John Wiley & Sons Inc.(1998)及びPeter Atkins,Physical Chemistry,第11版,Oxford University Press(2018)などの標準的なハンドブックに記載されている。適切な溶媒の例としては、非極性溶媒(例えば、ペンテン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素;1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;クロロホルムのようなクロロカーボン)、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ニトロメタン、プロピレンカーボネート)、極性プロトン性溶媒(例えば、水、アンモニア、ギ酸、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、トリフルオロ酢酸)が含まれる。溶媒は、好ましくは、HPLCなどの液体クロマトグラフィーの間に使用するのに適している。好ましくは、溶媒は、水、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルから選択される。本発明による混合物は、任意選択的に、異なる溶媒の組み合わせを含むことが可能である。任意選択的に、混合物は、酸又は有機酸、例えば、酢酸、ギ酸、又はトリフルオロ酢酸(TFA)、好ましくはギ酸又はTFAをさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、ステップi)において提供される混合物は、第1の分析物、好ましくはペプチド、及び溶媒を含み、溶媒は、好ましくは、水、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルから選択され、任意選択的に、ギ酸又はトリフルオロ酢酸などの酸が存在する。
【0031】
第1の分析物を含む混合物は、さらに1種若しくは複数の分析物を含んでもよい。好ましくは、追加の1種若しくは複数の分析物は、本明細書で前述したようなペプチドである。いくつかの実施形態において、混合物は、第2の分析物、及び任意選択的に、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含む。いくつかの実施形態において、混合物は2種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、3種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、4種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、5種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、6種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、7種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、8種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、9種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、10種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は11種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、12種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、13種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、14種の分析物、好ましくはペプチドを含む。いくつかの実施形態において、混合物は、15種の分析物、好ましくはペプチドを含む。
【0032】
好ましい混合物は、上記のようなペプチドを含み、混合物は、好ましくは、配列番号1~5(DP-5Pと称される)、又は配列番号6~12(DP-7Pと称される)を含む。
【0033】
ii)参照標準の提供
ステップii)において、既知量の参照物質を含む参照標準が提供され、参照物質は第1の分析物ではなく、第1の分析物のモル吸光係数と参照物質のモル吸光係数との間の比は既知である。参照物質は好ましくは小分子である。参照標準は、別々に提供されてもよいし、ステップi)で提供された第1の分析物を含む混合物と組み合わされてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「参照標準」という用語は、本明細書中で「薬剤参照標準」とも記載されるが、慣用的な意味を有する。これは一般に、例えば医薬用途のための物質の同一性、品質、量、及び/又は純度を試験するために適切な、高度に特性化された物質を指す。参照標準は、混合物を調製するための標準的な実験技術を用いて、既知量の参照物質から調製されてもよく、或いは市販の供給業者から購入されてもよい。いずれの場合も、参照標準中の参照物質の量は既知であり、本明細書で後述されるように、ステップiv)で混合物中の分析物の含有量を後で決定することができる。参照標準は、本明細書で前述したような物質の混合物であってもよい。参照標準は、本明細書で前述したように、UV透明性溶液であってもよい。当業者は、この用語が、参照標準の試料及び希釈試料をも包含することを理解する。好ましくは、参照標準は、溶媒又は溶媒の混合物中の既知量の単一参照物質の溶液であり、ここで参照物質は既知濃度で存在する。或いは、参照標準が固体である場合、既知量の溶媒中に溶解させることができ、溶媒は好ましくは分析物混合物に関して記載された通りである。
【0035】
小分子は、好ましくは最大1000ダルトン、より好ましくは最大900ダルトン、さらに好ましくは最大500ダルトンの分子量を有する。小分子は好ましくは有機小分子である。
【0036】
好ましくは、参照標準は米国薬局方(USP)及び/又は欧州薬局方(EDQM)参照標準であり、より好ましくは米国薬局方(USP)参照標準であり;前記標準は好都合には市販品として入手可能である。適切な参照標準の例は、参照物質として、カフェイン(USPカタログ番号1085003)、アセトアミノフェン(USPカタログ番号1003009)、スルファジメトキシン(USPカタログ番号1626001)、ベラパミル(USPカタログ番号1711202)、レセルピン(USPカタログ番号1601000)、アミトリプチリン(USPカタログ番号1029002)、ナフタレン(USPカタログ番号1457083)、ブチルパラベン(USPカタログ番号1084000)、ウラシル(USPカタログ番号1705753)及びそれらの塩を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなり、好ましくはそれらを含む標準である。好ましい参照標準は、レセルピン又はその塩の溶液を含むか、本質的になるか、又はそれらからなり、好ましくはそれらからなる標準である。
【0037】
いくつかの実施形態において、参照標準は、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、スルファグアニジン、Val-Tyr-Val、ロイシン-エンケファリン、テルフェナジン又はそれらの塩を含む標準であり、好ましくはカフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル又はそれらの塩を含む標準であり、より好ましくはレセルピン又はそれらの塩を含む標準である。このような参照標準の例としては、QDa QC参照物質(Waters Corporation,MA,USA,カタログ番号186007345)及び逆相QC参照物質(Water Corporation,MA,USA,カタログ番号186007345)などの市販品として入手可能な混合物が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「モル吸光係数」又は「モル減衰係数」又は「モル吸光率」という用語は、慣用的な意味を有する。これは、所与の波長における物質の光減衰の強さを意味し、前記特性は物質の固有の特性である。モル吸光係数は、平方メートル/モル(m2/mol)で表すこともできるし、リットル/モル/センチメートル(L・mol-1・cm-1)で表すこともできる。所与の物質のモル吸光係数は、以下の式Iで表されるベール-ランバート(Beer-Lambert)の法則を用いて決定され得る:
Αλ=ε・c・L(式I)
(式中、
Aλは、特定の光の波長における物質の(光の)吸光度を表し、前記吸光度は十進法(10を底とする)又はネイピア対数(eを底とする)であり、
εは、m2/mol又はLmol-1・cm-1で表される物質のモル吸光係数を表し、
cは、mol/Lで表される物質のモル濃度を表し、且つ
Lは、cmでの光路長を表す)。
【0039】
濃度に関して、この式を解くと、ペプチド又はタンパク質溶液の濃度c=A/εL(L=1cmの場合、=A/ε)を決定するために必要な値を知ることができる。分析物、例えば、ペプチド又はタンパク質溶液の測定された吸光度を、計算又は既知のモル吸光係数で割ると、分析物溶液のモル濃度が得られる。
【0040】
試料に入射する放射力(P0)に対する、試料を透過する放射力(P)の比は透過率(T)と呼ばれ、T=P/P0の式に従う。吸光度(A)は、A=-logT=log(1/T)の式に従い、透過率の逆数の対数(底10)として定義される。分光光度計では、単色平行光が試料の平面に対して直角に試料に入射する。このような条件下では、試料の透過率及び吸光度は、モル濃度(c)、センチメートル単位の光路長(L)、及び特定の波長(λ)における溶解物質のモル吸光率(ε)に依存する。関連式は、Tλ=10εcL及びAλ=εcLである(式I)。
【0041】
ベール-ランバート(Beer-Lambert)の法則は、所与の溶質中に溶解され、且つ所与の波長で測定された所与の物質に関して、モル吸光率が一定である(吸光度が濃度に比例する)ということを意味する。この理由のため、モル吸光度は、モル吸収係数又はモル吸光係数と呼ばれることもある。透過率及び吸光度には単位がないため、モル吸光度の単位は濃度及び光路の単位と相殺されなければならない。したがって、モル吸光度は、M-1cm-1(L・mol-1・cm-1)の単位を有する。標準的な実験室分光光度計は、1cm幅の試料キュベットを使用するように設計されているため、一般的に光路長は1に等しいと仮定され、ほとんどの計算では、この式に従って、この用語は完全に削除される:L=1cmの場合、Aλ=εcL=εc。分光光度計がHPLCなどのクロマトグラフィー装置にインラインで設置されている場合、装置は一般に、その測定単位で独自の経路長に関して計算する。
【0042】
当業者であれば、ペプチドなどの複雑な分子には単一の正しい吸光係数値は存在しないことを認識する。緩衝液の種類、イオン強度及びpHの違いは、吸光度の値に影響を与える可能性がある。したがって、最適な吸光係数値は経験的に決定されるものである。
【0043】
参照物質及び/又は分析物のモル吸光係数は、前記物質及び/又は分析物に適切な波長で決定されてよい。いくつかの実施形態において、参照物質及び/又は分析物のモル吸光係数は、180~800nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは200nm、254nm、又は280nmなどの200~400nmの波長で決定されたモル吸光係数である。いくつかの実施形態において、参照物質及び/又は分析物のモル吸光係数は、少なくとも180nm、少なくとも190nm、少なくとも200nm、少なくとも210nm、少なくとも220nm、少なくとも230nm、少なくとも240nm、少なくとも250nm、少なくとも260nm、少なくとも270nm、少なくとも280nm、少なくとも290nm、少なくとも300nm、少なくとも310nm、少なくとも320nm、少なくとも330nm、少なくとも340nm、少なくとも350nm、少なくとも360nm、少なくとも370nm、少なくとも380nm、少なくとも390nm、少なくとも400nm、少なくとも410nm、少なくとも420nm、少なくとも430nm、少なくとも440nm、少なくとも450nm、少なくとも460nm、少なくとも470nm、少なくとも480nm、少なくとも490nm、少なくとも500nm、少なくとも510nm、少なくとも520nm、少なくとも530nm、少なくとも540nm、少なくとも550nm、少なくとも560nm、少なくとも570nm、少なくとも580nm、少なくとも590nm、少なくとも600nm、少なくとも610nm、少なくとも620nm、少なくとも630nm、少なくとも640nm、少なくとも650nm、少なくとも660nm、少なくとも670nm、少なくとも680nm、少なくとも690nm、少なくとも700nm、少なくとも710nm、少なくとも720nm、少なくとも730nm、少なくとも740nm、少なくとも750nm、少なくとも760nm、少なくとも770nm、少なくとも780nm、少なくとも790nm、又は少なくとも800nmの波長で決定されたモル吸光係数である。好ましい波長は約220nmである。別の好ましい波長は、254nm又は約254nmである。別の好ましい波長は、280nm又は約280nmである。別の好ましい波長は、510nm又は約510nmである。
【0044】
第1の分析物のモル吸光係数及び参照標準中の参照物質のモル吸光係数は既知である。前記値は、所与の分析物及び/又は参照物質について、当該技術分野で入手可能な標準ハンドブック、例えば、CRC handbook of chemistry and physicsから得られ得る。或いは、所与の波長におけるモル吸光係数は、本発明の方法の一部として、又はその前に、異なるモル濃度における前記分析物及び/又は物質の吸光度を測定することにより、式Iを用いて決定され得る。第1の分析物及び参照物質のモル吸光係数は既知であるので、それらの比が決定され得る。このような比は無次元数である。
【0045】
或いは、第1の分析物のモル吸光係数と参照物質中の参照物質のモル吸光係数との比は、分析物と参照物質との間の「相対応答係数」(RRF)によって表されてもよい。前記係数は、前記モル吸光係数の比に直接依存し、以下:
【数1】
(式中、
RRFは、相対応答係数を表し;
RF
分析物は、分析物の応答係数を表し、HPLCなどのクロマトグラフィー装置にインラインで設置された分光光度計を使用して分析物に関して決定された曲線下面積であり;
RF
参照物質は、参照物質の応答係数を表し、HPLCなどのクロマトグラフィー装置にインラインに設置された分光光度計を使用して参照物質に関して決定された曲線下の面積である)のように算出することができる無次元数である。
【0046】
分析物又は参照物質の応答係数(RF)は、分析物又は参照物質が既知の濃度値(例えば既知のmg/mL値)で含まれる混合物の(特定の光波長、例えば220nmにおける)吸光度を測定することによって決定され得る。次いで、前記分析物又は参照物質の測定された吸光度を、測定された混合物中の既知の濃度で割ることにより、応答係数を算出することができる。前記値は、単一の測定の結果であってもよく、又は精度をさらに高めるために複数の測定の平均値であってもよい。分析物又は参照物質の応答係数は、単一の分析物又は参照物質のみを含む混合物、又は追加の分析物若しくは参照物質が存在する混合物において決定されてよい。相対応答係数の決定例は、本明細書の実験項にさらに記載されている。相対応答係数の決定は、分析物及び参照物質の組ごとに1回実施され得、その後、決定された値はさらなる計算に使用されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、参照物質は、0.1・104~3・104L・mol-1・cm-1、好ましくは0.5・104~2.0・104L・mol-1・cm-1、より好ましくは0.9・104~1.5・104L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する。いくつかの実施形態において、参照物質は、少なくとも0.1・104、少なくとも0.2・104、少なくとも0.3・104、少なくとも0.4・104、少なくとも0.5・104、少なくとも0.6・104、少なくとも0.7・104、少なくとも0.8・104、少なくとも0.9・104、少なくとも0.95・104、少なくとも1・104、少なくとも1.1・104、少なくとも1.2・104、少なくとも1.3・104、少なくとも1.4・104、少なくとも1.5・104、少なくとも1.6・104、少なくとも1.7・104、少なくとも1.8・104、少なくとも1.9・104、少なくとも2.0・104、少なくとも2.1・104、少なくとも2.2・104、少なくとも2.3・104、少なくとも2.4・104、少なくとも2.5・104、少なくとも2.6・104、少なくとも2.7・104、少なくとも2.8・104、少なくとも2.9・104、又は少なくとも3.0・104L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する。好ましいモル吸光係数値は、少なくとも0.975・104L・mol-1・cm-1、又は約0.975・104L・mol-1・cm-1である。
【0048】
第1の分析物を含む混合物が、第2の分析物、及び任意選択的に、本明細書で前述された第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含む実施形態において、各分析物のモル吸光係数と参照物質のモル吸光係数との間の比が既知であることが好ましい。前記比は、各分析物のモル吸光係数及び参照物質のモル吸光係数を知ることによって決定され得、このモル吸光係数は、本明細書において前述されたように得ることができる。比はまた、本明細書において前述されたように、各分析物と参照物質との間の相対応答係数によって表してもよい。好ましくは、前記分析物は、本明細書において前述されたようなペプチドである。
【0049】
分析物を含む組成物及び参照標準である組成物の両方が、同一溶媒又は緩衝液成分を有する類似のものであることが好ましい。換言すれば、これらの組成物は、好ましくは、溶解した標準物質及び溶解した分析物においてのみ異なる。ここで、溶解した分析物質は、もちろん、不純物がある場合には、可能な不純物を指すこともある。
【0050】
ステップiii)吸光度の決定
ステップiii)において、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度を、分光光度法、好ましくは紫外-可視分光法を用いて決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得る。第1の分析物を含む混合物が、第2の分析物、及び任意選択的に、本明細書で前述された第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物、或いはさらに追加の分析物をさらに含む実施形態において、それらの吸光度も同様に決定され得る。混合物中の第1の分析物及び参照標準中に含まれる参照物質の吸光度の決定は、任意選択的に、等容量の前記混合物及び参照標準に対して実行され得る。しかしながら、本方法は、等容量に限定されるものではなく、前記比率が既知である限り、いずれの容量の比率も考慮され得る。
【0051】
本明細書で使用される「紫外-可視分光法」又は「紫外-可視分光光度法」という用語は、慣用的な意味を有する。これは、電磁スペクトルの紫外及び完全な隣接可視領域における吸収分光法を指す。また、吸収比の代わりに反射比を用いて本発明を実施することができる反射率分光法を指すこともあるが、吸収が好ましい。吸光度の決定は、本明細書で前述されたように、分析物及び参照物質のモル吸光係数が既知である波長において実施することが好ましい。吸光度の決定は、分光光度計の使用など、日常的な実験技術を使用して実施されてよい。或いは、吸光度の決定は、インライン分光光度計を備えた装置において、分析液体クロマトグラフィーを用いて実施してもよい。分析液体クロマトグラフィーを用いた混合物中の分析物及び参照標準中に含まれる標準物質の吸光度の決定は、別々に実施されてもよく、又は既知量の標準物質が混合物に添加されてもよい。後者の場合、第1の分析物(及び前述された1種若しくは複数のさらなる分析物)及び参照物質を分離し、それらの吸光度値を個別に決定してもよい。
【0052】
液体クロマトグラフィーは周知であり、液体移動相と固体固定相との間で化合物を分配するクロマトグラフィー法が含まれる。液体クロマトグラフィー法は、化合物の分析、定量及び精製に使用される。液体移動相は、手順全体を通して一定の組成を有することができ(アイソクラティック法)、又は移動相の組成を溶離中に変化させることができる(例えば、グラジエント溶離法のような移動相組成の漸進的変化)。「移動相」という用語は、対象化合物を固相(例えば、固相抽出(SPE)カートリッジ又はHPLCカラム中の固相)と接触させ、対象化合物を固相から溶離するために使用される溶媒系(液体など)を表す。「分離」という用語は、液体によって運ばれる混合物が、固定液相又は固相の周囲又は上を流れる際の溶質の差分分布の結果として成分に分離されるプロセスを表す。適切な液体クロマトグラフィー法の例としては、HPLC、逆相HPLC、逆相高速HPLC(UPLC)、超高速液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、HILIC、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などが挙げられる。液体クロマトグラフィーのプロトコル及び方法は当技術分野で周知であり、Meyer,Practical High-Performance Liquid Chromatography,第5版,John Wiley & Sons Inc.(2010)、Kastner,Protein Liquid Chromatography,61巻,第1版,Elsevier Science(1999)、及びLiquid Chromatography Applications,Fanali,Haddadら編,Elsevier Science(2013)などの標準的なハンドブックにも記載されている。適切なクロマトグラフィー法のさらなる例は、本明細書の実験項に提供される。好ましい液体クロマトグラフィー法はHPLC及びUPLCである。クロマトグラフィーは、単一混合物中の複数の分析物の簡便な分光光度分析を可能にするため、本発明による方法にとって非常に魅力的である。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態において、ステップiii)は、HPLC又はUPLCなどの分析液体クロマトグラフィーを用いて実施され、任意選択的に以下のサブステップ:
iii-a)既知量の参照物質を混合物に添加するサブステップ;
iii-b)液体クロマトグラフィーを用いて、第1の分析物及び参照物質を分離するサブステップ;
iii-c)分光光度計、好ましくは紫外-可視分光法を用いて、第1の分析物及び参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るサブステップ
を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、ステップiii)は、HPLC又はUPLCなどの分析液体クロマトグラフィーを用いて実施され、任意選択的に以下のサブステップ:
iii-a)既知量の参照物質を混合物に添加するサブステップ;
iii-b)液体クロマトグラフィーを用いて、第1の分析物、第2の分析物、任意選択的に第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物などの1種若しくは複数の追加の分析物、及び参照物質を分離するサブステップ;
iii-c)分光光度法、好ましくは紫外-可視分光法を用いて、第1の分析物及び参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度を得るサブステップ
を含む。
【0055】
好ましくは、吸光度は全ての場合において同一条件を使用して決定する。
【0056】
ステップiv)分析物の含有量の決定
ステップiii)の結果、分析物及び参照物質の吸光度が得られる。ステップiv)において、これらの得られた吸光度値及び既知のモル吸光係数の比に基づいて、混合物中の第1の分析物の含有量を決定する。モル吸光係数の既知の比は、本明細書で前述されたように、第1の分析物と参照物質との相対応答係数(RRF)によって表してもよい。本明細書で前述されたように、参照物質の量が既知であるため、混合物中の第1の分析物の含有量を計算することが可能になる。したがって、分析物と参照物質との間の関係において単一の変数(分析物の量)のみが未知のままであり、この方程式は既知の情報に基づいて(分析物の量について)解くことができる。
【0057】
第1の分析物を含む混合物が、第2の分析物、及び任意選択的に、本明細書で前述された第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含む実施形態において、それらの含有量も同様に決定され得る。当業者は、上記のステップi)~iv)のいずれかを、分析物及び/又は参照標準の各々に対して複数回繰り返してもよいことを理解する。次いで、得られた値を平均し、標準偏差の計算など、当該技術分野における標準的な方法に従って統計学的分析を行うことができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「不純物」という用語は、慣用的な意味を有する。これは、上述の混合物及び参照標準などの混合物のいずれかの成分であって、前記混合物に含まれると定義された物質ではないものを指す。不純物の存在は、純度値を用いて定量化することができ、この純度値は、所望の物質の実際の量・100を混合物中に含まれる物質の総量で割った無次元比として表すことができる。完全に純粋な材料の純度は単一(1)の純度を有する。混合物中の物質の純度値は、例えば、前記混合物がUSP参照物質及び標準などの供給業者から購入された場合、既知であり得る。或いは、前記混合物中に含まれる不純物のモル吸光係数が既知であるか、又は上記のように決定される場合、純度値は、本発明の方法を用いて決定され得る。この場合、不純物は混合物中に含まれる分析物として処理される。或いは、前記混合物中に含まれると定義された物質の含有量が定量された後に、前記混合物中の全体的な物質含有量から前記含有量を差し引くことにより、本発明の方法を用いて純度値が決定されてもよい。
【0059】
本発明の方法のステップiv)における混合物中の分析物の含有量の例示的な決定は、実施形態において、以下の式III:
【数2】
(式中、
分析物の含有量はmgで表され、
A
分析物は、分析物の吸光度を表し、
Q
RSは、mgで表される参照物質の量を表し、
P
RSは、(1以下の比率で表される)参照標準中の参照物質の純度を表し、
DFは希釈係数を表し、
A
RSは、参照物質の吸光度を表し、
RRF(相対応答係数)は、本明細書で前述されたように、分析物と参照物質との間のモル吸光係数の比を表す)を用いて実施され得る。
【0060】
或いは、分析物の含有量は、以下の誘導式によって決定することができる。
【数3】
【0061】
当業者は、式IIIが、混合物及び/又は参照標準の調製手順に応じて、並びに等容量の混合物及び参照標準、又はそれらの既知の比が使用されたかどうかに応じて、さらに適合され得ることを理解する。例えば、分析物を含む混合物が凍結乾燥物を含むバイアルを用いて調製される場合、分析物の含有量はバイアルあたりの分析物の含有量として決定されてもよく、このような適応は十分に当業者の技量の範囲内である。このような適応の例示は、実施例にさらに記載されている。
【0062】
したがって、いくつかの実施形態において、混合物は、本明細書で前述されたように、第2の分析物、及び任意選択的に第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含み、好ましくは、各分析物のモル吸光係数と参照物質のモル吸光係数との間の比は既知であり、各分析物の吸光度はステップiii)で決定され、各分析物の含有量はステップiv)で決定される。
【0063】
本発明の方法は、分析物、好ましくはペプチドの、それらの製造後に適用され得る下流プロセス中の損失を決定する際に有用である。これは、それらの製造後に本明細書に記載されるように混合物中の分析物の含有量を決定し、次いで混合物に下流プロセスが適用された後に分析物の含有量を決定することによって達成することができる。その後、分析物の含有量の損失を、測定間の分析物の含有量の差として計算することができる。下流プロセス法は当該技術分野で知られており、Wesselingh,J.A及びKrijgsman,J.,第1版,Downstream Processing in Biotechnology,Delft Academic Press,(2013)、並びにProtein Downstream Processing:Design,Development and Application of High and Low-Resolution Methods,Labrou N.(編),Humana Press(2014)などの標準的なハンドブックで議論されている。例としては、pHの変更、溶媒抽出、透析、濾過、限外濾過、濃縮、凍結乾燥などが挙げられる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明による方法は、分析物濃度を決定するために実行され、その後、濾過などの下流プロセスが実行され、その後、本発明による方法が追加的に実行される。
【0064】
本発明による方法は、複雑な混合物中の分析物及び/又は不純物、特にペプチド薬品中のペプチドベースの薬物及び/又は不純物の定量に関する従来の方法と比較して、以下の利点の少なくとも1つ若しくは複数と関連する:より容易且つ再現性のある参照標準の調製、分析物の定量における増加した精度及び/又は正確さ、異なる製造バッチ、又は同一製造バッチの異なる時点からの混合物中の分析物の定量における減少した測定変動。
【0065】
組成物
本発明は、本明細書で前述されたような分析物を含む組成物を提供し、ここで分析物は、これまで確立が不可能であった正確なマージンの範囲内まで定量される。組成物は、本明細書で前述されたような混合物であってもよい。いくつかの実施形態において、組成物は医薬組成物であり、任意選択的に1種若しくは複数の薬学的に許容される成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、組成物はワクチンである。1種又は複数の薬学的に許容される成分は、例えば、薬学的に許容される担体、充填剤、安定剤、保存剤、可溶化剤、ビヒクル、及び希釈剤であり得る。当業者は、特定の成分は、構成される分析物及び組成物の適用に依存することを理解する。適切な薬学的に許容される賦形剤は当該技術分野で知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第23版,Elsevier(2020)に見られ得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、組成物は、1種若しくは複数の免疫応答刺激化合物又はアジュバントをさらに含む。適切な化合物の例としては、Toll様受容体を介して、及び/又はRIG-1(レチノイン酸誘導性遺伝子-1)タンパク質を介して、及び/又はエンドセリン受容体を介して作用することが知られているアジュバントが挙げられる。自然免疫系を活性化できるアジュバントは、TLR1-10を含むToll様受容体(TLR)を介して特に良好に活性化可能である。TLR受容体を活性化できる化合物、及びその改変体及び誘導体は、当技術分野でよく知られている。TLR1は、細菌性リポタンパク質及びそのアセチル化体によって活性化され得、TLR2はさらに、グラム陽性細菌性糖脂質、LPS、LPA、LTA、フィンブリア、外膜タンパク質、細菌由来又は宿主由来の熱ショックタンパク質、及びマイコバクテリア性リポアラビノマンナンによって活性化され得る。TLR3は、特にウイルス由来のdsRNA、又は化合物ポリ(LC)によって活性化され得る。TLR4は、グラム陰性LPS、LTA、宿主由来又は細菌由来の熱ショックタンパク質、ウイルスのコートタンパク質又はエンベロープタンパク質、タキソール又はその誘導体、ヒアルロナン含有オリゴ糖及びフィブロネクチンによって活性化され得る。TLR5は細菌の鞭毛又はフラジェリンによって活性化され得る。TLR6は、マイコバクテリアリポタンパク質、B群連鎖球菌熱不安定性可溶性因子(GBS-F)又はスタフィロコッカスモジュリンによって活性化され得る。TLR7は、イミキモド、レジキモド、及び誘導体のイミキモド又はレジキモド(3M-052など)などのイミダゾキノリンによって活性化され得る。TLR9は、メチル化されていないCpG DNA又はクロマチン-IgG複合体によって活性化され得る。特に、TLR3、TLR7及びTLR9は、ウイルス感染に対する自然免疫応答を媒介する上で重要な役割を果たしており、これらの受容体を活性化できる化合物が特に好ましい。特に好ましいアジュバントは、限定されないが、dsRNA、ポリ(I:C)、ポリI:CLC、TLR3及びTLR9受容体を誘発する非メチル化CpG DNA、IC31、TLR9アゴニスト、IMSAVAC、TLR4アゴニスト、Montanide ISA-51、Montanide ISA720(Seppic,Franceによって製造されたアジュバント)を含む合成的に製造された化合物である。RIG-1タンパク質は、TLR3と同様にdsRNAによって活性化されることが知られている(Katoら,(2005)Immunity,1:19-28)。特に好ましいTLRリガンドは、pam3cys及び/又はその誘導体、好ましくはpam3cysリポペプチド又はその変異体若しくは誘導体、好ましくは国際公開第2013051936A1号パンフレットに記載されているようなもの、より好ましくはU-Paml2又はU-Paml4又はAMPLIVANT(登録商標)である。さらに好ましいアジュバントは、環状ジヌクレオチド(CDN)、ムラミルジペプチド(MDP)及びポリ-ICLCである。好ましい実施形態において、アジュバントは、非天然由来のアジュバント、例えば、国際公開第2013051936A1号パンフレットに記載されているようなpam3cysリポペプチド誘導体、ポリ-ICLC、イミダゾキノリン、例えば、イミキモド、レジキモド又はそれらの誘導体、非天然由来配列を有するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)、及びペプチドベースのアジュバント、例えば、非天然由来アミノ酸を含むムラミルジペプチド(MDP)又は破傷風トキソイドペプチドである。さらに好ましいのは、1018ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、ImuFactEV1P321、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS1312、Montanide ISA206、Montanide ISA50V、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGA微粒子、SRL172、Virosome及び他のウイルス様粒子、Pam3Cys-GDPKHPKSF、YF-17D、VEGFトラップ、R848、ベータ-グルカン、Aquila’s QS21スティミュロン(stimulon)、バジメザン(vadimezan)、AsA404(DMXAA)、STING(IFN遺伝子の刺激剤)アゴニスト(例えば、c-ジ-GMP VacciGrade(商標))、PCI、NKT(ナチュラルキラーT細胞)アゴニスト(例えば、アルファガラクトシルセラミド又はアルファ-GalCer、RNAdjuvant(登録商標)(Curevac)、レチノイン酸誘導性タンパク質Iリガンド(例えば、3pRNA又は5’-三リン酸RNA)からなる群から選択されるアジュバントである。
【0067】
好ましい実施形態において、組成物はペプチドを含み、そして好ましくは、本明細書において前述されたような、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15のペプチドを含む。組成物が、本明細書の他の箇所に記載されるように、好ましくは5又は7種のペプチドを含むように、少なくとも5種のペプチドを含むことが非常に好ましい。
【0068】
複数の異なるペプチドが組成物中に含まれる実施形態において、前記組成物中の重量百分率で表される各ペプチドの含有量が、全ての異なるペプチドの平均重量百分率に可能な限り近いことが有利である。換言すれば、各ペプチドの重量が同量であることである。前記組成物は、複雑な混合物中のペプチドなどの分析物の改善された定量を可能にする本発明の方法を用いて有利に特定され得る。特に、ワクチンなどの医薬組成物において、前記特性は、その有効性を増加させ、潜在的な副作用を減少させ得る。経時的に前記組成物中の各ペプチドの重量含有量を決定することは、それらの安定性を評価するためにさらに特に重要である。また、コンプライアンス要件を満たすことにおいても役立つ。
【0069】
したがって、いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書で先に定義されたように、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、好ましくは少なくとも4種の異なるペプチドを含み、各ペプチドの重量百分率は、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の93%~103%である。そのような重量百分率は、好ましくは、平均の少なくとも93%を超え、好ましくは94%を超え、より好ましくは95%を超え、より好ましくは96%を超え、より好ましくは97%を超え、より好ましくは98%を超え、最も好ましくは99%を超える。そのような重量百分率は、好ましくは最大でも平均の103%未満、より好ましくは102%未満、最も好ましくは101%未満である。
【0070】
異なるペプチドの重量百分率は、組成物の製造の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30、36、42、48、54又は60ヶ月後、好ましくは48ヶ月後、54ヶ月後、又は60ヶ月後に決定され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書で先に定義されたように、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、好ましくは少なくとも4種の異なるペプチドを含み、各ペプチドの重量百分率は、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の95%~103%であり、前記重量百分率は、組成物の製造から48カ月後に決定される。
【0072】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書で先に定義されたように、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、好ましくは少なくとも4種の異なるペプチドを含み、各ペプチドの重量百分率は、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の95%~101%であり、前記重量百分率は、組成物の製造から54ヶ月後に決定される。
【0073】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書で先に定義されたように、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種、少なくとも15種、好ましくは少なくとも4種の異なるペプチドを含み、各ペプチドの重量百分率は、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の93%~100%であり、前記重量百分率は、組成物の製造から60ヶ月後に決定される。
【0074】
本明細書に記載の好ましい組成物において、組成物中のペプチドなどの分析物の総重量は、最大10mg又は最大5mg、好ましくは最大4mg、より好ましくは最大3mg、最も好ましくは最大約2mg、例えば2mgである。このような少量のペプチドを正確に秤量し、分析することに関連する技術的課題のために、本明細書に記載されている方法は、各ペプチドが等量などの、あらかじめ決められた量で存在し、ペプチドの量が実際にこれらの所望の量であることを定量し、検証することができる、例えば5種又は7種のペプチドの混合物の提供を可能にする。
【0075】
異なる製造バッチ間の組成物中のペプチドの含有量のばらつきを最小化することは、特にワクチンなどの医薬組成物にとってさらに望ましい。したがって、いくつかの実施形態において、少なくとも第1の組成物及び第2の組成物を含む複数の組成物であって、第1の組成物及び第2の組成物はそれぞれ、本明細書で先に記載されたような組成物であり、組成物は、組成物が異なる製造バッチに由来するという点で互いに異なり、第1の組成物に含まれる各ペプチドの重量百分率は、第2の組成物に含まれるその同一ペプチドの重量百分率の93~103%であり、好ましくは、組成物は、
DP-5P)各ペプチドが配列番号1~5の1つを含む、5種の異なるペプチド;又は
DP-7P)各ペプチドが配列番号6~12の1つを含む、7種の異なるペプチド
の1つから構成される。
【0076】
配列番号1~12のいずれか1つに対する各参照について、好ましくは、ペプチドは、最大40個のアミノ酸の長さを有する。より好ましくは、ペプチドは、引用された配列番号によって表される配列からなる。好ましくは、第1の組成物中に含まれる各ペプチドの重量百分率は、第2の組成物中に含まれるその同一ペプチドの重量百分率の95~103%であり、より好ましくは95~101%である。いくつかの実施形態において、それは93~100%である。仕様は好ましくは安定であり、これは、記載された値が少なくとも12カ月後、好ましくは24カ月後、36カ月後、より好ましくは48カ月後、さらに好ましくは54カ月後、最も好ましくは60カ月後に測定可能であることを意味する。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、本明細書で先に記載された組成物と、本明細書で先に記載された参照標準との組み合わせを提供する。いくつかの実施形態において、組み合わせは、
i)少なくとも2種の異なるペプチドを含む組成物であって、各ペプチドが配列番号1~12の1つを含む組成物、及び
ii)参照標準、好ましくは、米国薬局方(USP)参照標準である標準、又はカフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、スルファグアニジン、Val-Tyr-Val、ロイシン-エンケファリン、テルフェナジン又はそれらの塩を含む標準、より好ましくは、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル又はそれらの塩を含む標準、最も好ましくは、レセルピン又はそれらの塩を含む標準
の組み合わせである。
【0078】
一般的な定義
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じて、グローバルアラインメントアルゴリズム又はローカルアラインメントアルゴリズムを用いた2つのペプチド配列のアラインメントによって決定することができる。類似の長さの配列は、好ましくは、配列を全長にわたって最適にアラインメントするグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman-Wunsch)を用いてアラインメントされ、一方、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith-Waterman)を用いてアラインメントされる。配列は、(例えば、プログラムEMBOSS needle又はEMBOSS waterによりデフォルトのパラメーターを用いて最適にアラインメントされた時に)配列同一性の少なくとも一定の最小パーセンテージを共有する場合、「実質的に同一」又は「本質的に類似」と呼ばれることがある(以下に記載)。配列番号への言及は、好ましくは、その全長にわたるその配列番号への言及である。
【0079】
グローバルアラインメントは、2つの配列が類似の長さを有する場合、配列同一性を決定するために適切に使用される。配列が実質的に異なる全長を有する場合、Smith-Watermanアルゴリズムを用いるものなどのローカルアラインメントが好ましい。EMBOSS needleは、Needleman-Wunschグローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、2つの配列をその全長(完全長)にわたってアラインメントし、一致数を最大化し、ギャップ数を最小化する。EMBOSS waterはSmith-Watermanローカルアラインメントアルゴリズムを使用する。一般的に、EMBOSS needle及びEMBOSS waterのデフォルトパラメーターが使用され、ギャップオープンペナルティ=10(塩基配列)/10(タンパク質)及びギャップエクステンションペナルティ=0.5(塩基配列)/0.5(タンパク質)である。ヌクレオチド配列に関して使用されるデフォルトスコアリングマトリックスはDNAfullであり、タンパク質に関しては、デフォルトスコアリングマトリックスはBlosum 62(Henikoff & Henikoff,1992,PNAS89,915-919)である。
【0080】
或いは、類似性又は同一性のパーセンテージは、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、公的データベースに対して検索することによって決定され得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態のタンパク質配列はさらに、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を識別するために、公的データベースに対して検索を行うための「クエリー配列(query sequence)」として使用され得る。このような検索は、Altschulら,(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行うことができる。比較目的のためのギャップドアラインメントを得るために、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されたように、ギャップドBLASTを利用することができる。BLAST及びギャップドBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、BLASTx及びBLASTn)を使用することができる。
【0081】
本明細書及びその特許請求の範囲において、動詞「含む(to comprise)」及びその活用形は、単語の後に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目が除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される。加えて、動詞「からなる(to consist)」は、本明細書に記載される組成物が、具体的に特定されたもの以外の、本発明の固有の特性を変更しない追加の成分を含んでもよいことを意味する「本質的にからなる(to consist essentially of)」によって置き換えられてもよい。さらに、動詞「からなる(to consist)」は、本明細書に記載される方法又は使用が、具体的に特定されたもの以外の、本発明の特有の特性を変更しない追加のステップを含んでもよいことを意味する「本質的にからなる(to consist essentially of)」によって置き換えられてもよい。さらに、動詞「からなる(to consist)」は、本明細書に記載されるヌクレオチド又はアミノ酸配列が、具体的に特定されたもの以外の、本発明の特有の特性を変更しない追加のヌクレオチド又はアミノ酸を含んでもよいことを意味する「本質的にからなる(to consist essentially of)」によって置き換えられてもよい。
【0082】
不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、文脈上明らかに要素が1つ及び1つのみであることが要求されない限り、その要素が2つ以上存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」特定の値は、その特定の値以上を意味する。例えば、「少なくとも2」は、「2以上」、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、...などと同じであると理解される。さらに、本明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用されるものであり、必ずしも連続的又は時系列的な順序を記載するために使用されるものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示される以外の順序で動作可能であることを理解されたい。数値と関連して使用される場合の「約」又は「およそ」という語(例えば、約10)は、好ましくは、その値が(10の)所与の値より10%、好ましくは5%、より好ましくは1%多いか若しくは少なくてもよいことを意味する。
【0084】
様々な実施形態が本明細書に記載されている。本明細書で特定される各実施形態は、特に断りのない限り、一緒に組み合わせてもよい。本明細書で引用する全ての特許出願、特許、及び印刷刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。当業者であれば、本発明の実施において使用することが可能な、本明細書に記載されたものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。実際に、本発明は、記載された方法及び材料に決して限定されない。
【0085】
【実施例】
【0086】
実施例1.ペプチドを含む混合物中のペプチド含有量の決定
未知量のペプチド(配列番号1)を含む混合物が提供され、0.1mgのレセルピンを含む参照標準溶液がさらに提供される。モル吸光係数の比は、式IIを用いて、ペプチドとレセルピンとの間の相対応答係数を計算することにより決定される。相対応答係数を計算するために、既知の濃度のペプチド溶液の220nmにおける吸光度を測定し、次いで、測定された吸光度を前記溶液中のペプチドの既知の濃度で割ることによって、最初にペプチドの応答係数が決定される。220nmにおけるレセルピンの応答係数も同様に決定する。未知量の前記ペプチドを含む混合物中のペプチド及び参照標準溶液中のレセルピンの吸光度は、UPLC-UVにより220nmで決定される。次いで、混合物中のペプチドの未知量を、式IIIを用いて決定する。
【0087】
実施例2.従来の分析法を用いた、異なるペプチドを含む混合物中のペプチド含有量の決定
一般
DP-5P(5種のペプチド、配列番号1~5)及びDP-7P(7種のペプチド、配列番号6~12)混合物の個々の関連物質を含む純度及びアッセイを、アセトニトリル及び水の移動相勾配及びλ=220nmでのUV検出を用いる逆相高速HPLC(UPLC)により決定した。
【0088】
クロマトグラフィー条件
カラム:RP C18、例えば、Waters Acquity、BEH 130PST(1.7μm、150×2.1mm)
試料マトリックス:溶離液A:溶離液B=85:15(v/v)。
試料濃度:100μg/mL純ペプチド(各薬物混合物の)、二重(duplicate)
注入量:5μL
カラム温度:65℃
試料温度:5℃
検出:UV(λ=220nm)
流速:0.3mL/分
溶離液A:水中0.05%v/v TFA及び1%v/v アセトニトリル(ACN)
溶離液B:ACN中0.05%v/v TFA
【0089】
【0090】
報告
DP-5P(配列番号1~5)及びDP-7P(配列番号6~12)混合物の両方のペプチド及び関連物質の相対保持時間(RRT)は、中央で溶離するペプチドの保持時間を参照して算出した(
図1、
図2)。この保持時間は、この薬物のメインピークがクロマトグラムのほぼ中央で検出されることから、基準として使用された。関連物質は面積正規化により決定した。個々の関連物質は0.10%a/a以上であると報告された。全関連物質は、無視限界0.0500%a/a以上の全関連物質の合計として計算された。純度は、全関連物質と100%との差として算出した。
【0091】
各ペプチドのアッセイは、5種のペプチド(DP-5P)又は7種のペプチド(DP-7P)を含む参照標準溶液に対して計算され、パーセント及びmg純ペプチド/バイアルで表された。この参照法では、参照物質が分析物そのものであるため、参照物質及び分析物の吸収比は1である。
【0092】
実施例3.本発明による分析法を用いた、異なるペプチドを含む混合物中のペプチドの含有量の測定
一般
実施例1と同様のUPLC法を使用して、混合物DP-5P(配列番号1~5)及びDP-7P(配列番号6~12)中の分析物(すなわち、個々のペプチド)の定量、並びに混合物DP-5P及びDP-7P(凍結乾燥品)の含有量均一性の決定を行った。この方法は、外部参照標準の使用に基づく。この外部参照標準に対する相対応答係数(モル吸光係数の比、RRF)は、各ペプチドについて確立されている。DP-5P及びDP-7Pの純度、個々の関連物質、及びアッセイは、ACN/IPA及び水の移動相勾配、並びにλ=220nmにおけるUV検出を用いた逆相高速HPLC(UPLC)によって決定された。
【0093】
材料
以下の凍結乾燥ペプチド組成物を使用した:バイアルあたり各ペプチド0.40mg(バイアルあたりのタンパク質の全量は2.00mg)の等しい正味重量で混和された配列番号1~5によって本明細書に表されるペプチドを含むDP-5P、及びバイアルあたり0.56mgのTFA;及びバイアルあたり各ペプチド0.40mg(バイアルあたりのタンパク質の全量は2.80mg)の等しい正味重量で混和された配列番号6~12によって本明細書に表されるペプチドを含むDP-7P、及びバイアルあたり0.96mgのTFA。以下の化学物質を使用した:アセトニトリル(Biosolve、01204102);UPLC水(Type1、milli-Q);トリフルオロ酢酸(Chem Lab、CLoo.2094.0001);2-プロパノール(UPLC/MSグレード、Biosolve、16264102);レセルピン(USP、Sigma Aldrich、1601000)。以下の装置を使用した:QuanRecoveryバイアル(Waters、186009186);グラジエントシステム、オートサンプラー及びUV検出器を備えたUPLCポンプ(Waters Acquity又は同等品)、及びミキサー容量425μL。
【0094】
溶媒及び溶液の調製
移動相A:水中0.1%(v/v)TFA
移動相B:70/30ACN/IPA中の0.1%(v/v)TFA
希釈液A:水中0.05%(v/v)TFA
希釈液B:ACN中0.05%(v/v)TFA
ブランク溶液:80/20(v/v)希釈液A/希釈液B
パージ溶媒80/20(v/v)水/ACN
ニードル洗浄:80/20(v/v)水/ACN中0.05%(v/v)TFA
ストック参照溶液(100μg/mLレセルピン)
【0095】
5.00mgのレセルピン参照物質を正確に量り、容量50mLのフラスコに加えた。40.0mLのブランク溶液を全容ピペットで加えた。溶液をマグネチックスターラーで完全に溶解するまで10分間撹拌した。溶液をブランク溶液で容量まで希釈し、よく混合した。
【0096】
作用参照溶液(10μg/mLレセルピン)
2.0mLのストック参照溶液1を全容ピペットで容量20mLのフラスコに移す。ブランク溶液で容量まで希釈し、均質化する。
【0097】
LOQ溶液(20ng/mLレセルピン)
2.0mLの作用参照溶液1を全容ピペットで容量100mLのフラスコに移す。ブランク溶液で容量まで希釈し、均質化する。上記溶液5mLを全容ピペットで容量50mLのフラスコに移す。ブランク溶液で希釈し、均質化する。
【0098】
試料溶液
初期密封容器中の凍結乾燥品DP-5P及びDP-7Pのために試料調製を設定した。医薬品を開封して溶解する前に、バイアルを室温で少なくとも1時間平衡化した。バイアルの内容物を0.8mLの希釈液Bで溶解し、マグネチックスターラーを用いて20分間撹拌した。3.2mLの希釈液Aを添加した。マグネチックスターラーを用いて、この溶液を20分間よく撹拌した。バイアルの内容物を溶解した後、試料バイアルを実験台の上に30分間静置した。溶液を短時間撹拌し、HPLCバイアルに移した。
【0099】
クロマトグラフィー条件
カラム:Advance Bio Peptide Map(2.7μm、250×2.1mm)
試料マトリックス;ACN:水(1:4v/v)中0.05%v/vTFA
試料濃度100μg/mL純ペプチド(各薬物の)、二重
注入量:10μL
カラム温度:40℃
試料温度:5℃
検出:UV(λ=220nm)
流速:0.2mL/分
ランタイム:65分
パージ溶媒:80/20(v/v)水/ACN
ニードル洗浄:80/20水/ACN(v/v)中の0.05%(v/v)TFA(20秒)
シール洗浄:90/10(v/v)水/MeOH
溶離モード:グラジエント溶離
溶離液A:水中0.1%v/vTFA
溶離液B:ACN/IPA(70:30v/v)中0.1%v/vTFA
【0100】
【0101】
【0102】
相対応答係数(RRF)
RRFは、12種のペプチド全てについて決定し、上記に示すようにレセルピンに対する各ペプチドの定量を可能にした。決定には、既知濃度の当該ペプチドを含む溶液中の各ペプチドの吸光度と、既知濃度のレセルピンを含む参照標準溶液の吸光度を220nmで測定した。各ペプチド及びレセルピンの応答係数は、測定された吸光度を既知の濃度値で割ることにより、上記のように決定された(表5)。次に、式IIを用いて相対応答係数を決定した。
【数4】
【0103】
【0104】
アッセイ計算
各分析における各ペプチドの含有量は、作用参照溶液1を用いた一段階外部標準法を用いて決定した。バイアルあたりの個々のペプチドの含有量を算出する式は、式IIIを用いて以下のようにした。
【0105】
【数5】
A
SLP: 個別のペプチドの応答(面積)(SLPはペプチド溶液を意味する)
A
RS: 作用参照溶液1の5回注入における平均応答レセルピン(RS)(面積)
Q
RS: 作用参照溶液1中のレセルピンの量(mg)
Q
S: DPの量:1(バイアル)
P
RS: レセルピン(RS)の純度(1の比、例えば0.99で表される)
DF: SLP-溶液の希釈係数
【数6】
V
SLP=バイアルの含有物を溶解するために使用された体積(=4mL)
V
ストック溶液 RS=ストック参照溶液の体積(=50mL)
DF
1=作用参照溶液を得るためのストック参照溶液の希釈係数(=10)
RRF: レセルピン及びSLPの間の相対応答係数(応答係数の比,表5に示される)
【0106】
報告
DP-5P及びDP-7Pの両方のペプチド及び関連物質に割り当てられた相対保持時間(RRT)は、中央で溶離するペプチドの保持時間を参照して算出した(
図3、
図4)。この保持時間は、この薬物のメインピークがクロマトグラムのほぼ中央に検出されることから、基準として使用された。関連物質は、総応答の正規化によって決定した。
【0107】
個々の関連物質は0.10%w/w以上であると報告されている。全関連物質は、無視限界0.05%w/w以上の全関連物質の合計として計算された。純度は、全関連物質と100%w/wとの差として算出した。
【0108】
各薬物のアッセイは、USP参照標準レセルピンに対して計算し、mg純ペプチド/バイアルで表した。
【0109】
実施例4.例示的なペプチドの含有量の決定及び計算
分析のために、以下の溶液/試料を調製し、本方法に従って注入する:
【0110】
I.参照溶液
1)50mL中5.08mgのレセルピンからストック溶液を調製する。
2)2mLのストックを合計20mLまで希釈する(希釈係数(DF1)=10)。
レセルピンの純度はそのCoAから求める:98.2%(純度係数0.982)。
5回の注入の平均応答は3088845μV*秒である。
【0111】
II.試料溶液
1)DP-5Pに存在する各ペプチド約0.4mgを含むバイアル1本を4mLに溶解。
2)ペプチド4(配列番号4)の注入に関する応答は4984380μV*秒である。
【0112】
III.ペプチド4(配列番号4)の溶液の希釈係数(DF)は以下のように計算される:
【数7】
【0113】
IV.ここで、ペプチド4(配列番号4)のアッセイは、式IIIに代入することにより算出することができる:
【数8】
【0114】
実施例5.本発明の方法により改善された結果が得られる
DP-5P
表6に示すDP-5Pバッチは、溶液中の5種の別々のペプチドをそれぞれ1:1の比率で組み合わせることによって製造した。その後、バイアルに充填された溶液を凍結乾燥し、各ペプチド0.400mg(すなわち、合計2.00mg)を含むバイアルを得た。各ペプチドの含有量は、いくつかの様式で表すことができるが、中でも、バイアル中に存在する実際の量(mg)、又はバイアルあたり0.400mgの製造目標に対する量の割合で表すことができる。
【0115】
T=0ヶ月(T0M)において、ペプチド含有量を実施例2の従来の方法で測定した。T=48ヶ月(T48M)以降は、実施例2の従来法及び実施例3の本発明による方法でペプチド含有量を測定した。結果を表6に示す:
【0116】
【0117】
DP-7P
表7に示すDP-7Pバッチは、溶液中の7種の別々のペプチドをそれぞれ1:1の比率で組み合わせることによって製造した。その後、バイアルに充填された溶液を凍結乾燥し、各ペプチド0.400mg(すなわち、合計2.80mg)を含むバイアルを得た。各ペプチドの含有量は、いくつかの様式で表すことができるが、中でも、バイアル中に存在する実際の量(mg)、又はバイアルあたり0.400mgの製造目標に対する量の割合で表すことができる。
【0118】
T=0ヶ月(T0M)において、ペプチド含有量を実施例2の従来の方法で測定した。T=48ヶ月(T48M)以降は、実施例2の従来法及び実施例3の本発明による方法でペプチド含有量を測定した。結果を表7に示す:
【0119】
【0120】
評価
いくつかの事実が考えられる:
・製造の観点からは、1バイアルあたり0.4mgという目標より高い値は予想されず、同様に2.0mg(DP-5P)及び2.8mg(DP7P)より高い値も予想されない。製造プロセスでは、1ペプチドあたりのペプチド投入量は標的次第であることが保証されているが、あるとしても、例えば、フィルターや他の表面への吸着の可能性などにより、期待される結果がわずかに低くなる可能性がある。したがって、100%超の値は正確でない確率がより高いが、100%未満の値はこの問題がない。
・安定性の観点からは、アッセイ値は経時的に増加するのではなく、むしろ経時的に生じる可能性のある劣化により減少すると考えられる。経時的に増加する値は正確でない確率がより高い。
・ペプチドごとに、経時的なレベルの傾向が存在し、下向きの傾向を示すことがある。一般的に、レベルが増加すること(方法のばらつきによるわずかな場合を除く)、又は値が傾向を示さないこと(例えば、経時的に値が交互に増加及び減少すること)は期待されない。
【0121】
結果(及び表8の要約)に示されるように、本発明の方法は、従来の方法よりも著しく改善された定量を示す。
【0122】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知量の第1の分析物を含む混合物を製造する方法であって、
i)前記第1の分析物を含む混合物を提供するステップと;
ii)既知量の参照物質を含む参照標準を提供するステップであって、前記参照物質は前記第1の分析物ではなく、前記参照物質は小分子であり、且つ前記第1の分析物のモル吸光係数と前記参照物質のモル吸光係数との間の比は既知であるステップと;
iii)分光光度法を用いて、前記第1の分析物及び前記参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るステップと;
iv)得られた吸光度値及び既知のモル吸光係数比に基づいて、前記混合物中の前記第1の分析物の含有量を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の分析物がペプチドであり、好ましくは、前記第1の分析物が5~100アミノ酸、好ましくは10~50アミノ酸の長さを有するペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の分析物が、配列番号1~12のいずれか1つによって表される配列を含むペプチドである、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
ステップi)において提供される前記混合物がUV透明溶液である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
ステップi)において提供される前記混合物が、前記第1の分析物及び溶媒を含み、前記溶媒が、好ましくは、水、イソプロピルアルコール、及びアセトニトリルから選択され、任意選択的に、ギ酸又はトリフルオロ酢酸などの酸が存在する、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が、第2の分析物、及び任意選択的に第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、又は第15の分析物をさらに含み、好ましくは、各分析物のモル吸光係数と前記参照物質のモル吸光係数との比が既知である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
各分析物の吸光度がステップiii)で決定され、各分析物の含有量がステップiv)で決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップiii)が、HPLC又はUPLCなどの分析液体クロマトグラフィーを用いて実施され、任意選択的にステップiii)が、以下のサブステップ:
iii-a)既知量の参照物質を前記混合物に添加するサブステップ;
iii-b)液体クロマトグラフィーを用いて、前記第1の分析物及び前記参照物質を分離するサブステップ;
iii-c)分光光度計を用いて、前記第1の分析物及び前記参照物質の吸光度を決定し、第1の分析物の吸光度及び参照物質の吸光度の値を得るサブステップ
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
参照物質及び/又は分析物のモル吸光係数が、180~800nm、好ましくは200~600nm、より好ましくは220nm、254nm、又は280nmなどの200~400nmの波長で決定されるモル吸光係数である、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記参照物質が、0.1・10
4L・mol
-1・cm
-1~3・10
4L・mol
-1・cm
-1、好ましくは0.9・10
4L・mol
-1・cm
-1~1.5・10
4L・mol
-1・cm
-1のモル吸光係数を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記参照標準が、米国薬局方(USP)参照標準である、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記参照標準が、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、スルファグアニジン、Val-Tyr-Val、ロイシン-エンケファリン、テルフェナジン又はそれらの塩を含み、好ましくは、カフェイン、アセトアミノフェン、スルファジメトキシン、ベラパミル、レセルピン、アミトリプチリン、ナフタレン、ブチルパラベン、ウラシル、又はそれらの塩を含み、より好ましくは、レセルピン又はそれらの塩を含む標準である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
各ペプチドの重量百分率が、全ての異なるペプチドの平均重量百分率の93%~103%である、請求項3に定義される少なくとも4種の異なるペプチドを含む組成物。
【請求項14】
少なくとも第1の組成物及び第2の組成物を含む複数の組成物であって、前記第1の組成物及び前記第2の組成物が、それぞれ請求項13に記載の組成物であり、前記組成物が、前記組成物が異なる製造バッチに由来するという点で互いに異なり、前記第1の組成物中に含まれる各ペプチドの重量百分率が、前記第2の組成物中に含まれるその同一ペプチドの重量百分率の93%~103%であり、好ましくは、前記組成物が、
DP-5P)それぞれのペプチドが配列番号1~5の1種を含む、5種の異なるペプチド;又は
DP-7P)それぞれのペプチドが配列番号6~12の1種を含む、7種の異なるペプチド
のうちの1つを含む、複数の組成物。
【請求項15】
i)請求項3に記載の少なくとも2種の異なるペプチドを含む組成物と、
ii)参照標準、好ましくは請求項11又は12に記載の参照標準と
の組み合わせ。
【国際調査報告】