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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】誘導加熱装置を較正するための方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20240705BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20240705BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/465
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501604
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022069429
(87)【国際公開番号】W WO2023285447
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21185110.0
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ブタン ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】カルヴィーノ フロリアン アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】シャトー マクシム クレマン シャルル
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA22
4B162AB12
4B162AB22
4B162AC12
4B162AC22
4B162AD08
4B162AD23
(57)【要約】
エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置を較正する方法が開示される。方法は、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることであって、較正値のシーケンスは、較正曲線に関連付けられる、得ることと、較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定することと、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することと、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って、誘導加熱装置を動作させることと、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置を較正する方法であって、前記方法が、コントローラによって実施され、
エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることであって、前記較正値のシーケンスが、較正曲線に関連付けられ、前記誘導加熱装置が、エアロゾル形成基体を加熱するためにサセプタに結合されるように構成されたインダクタを含み、前記較正値のシーケンスが、コンダクタンス値のシーケンスおよび抵抗値のシーケンスのうちの一つを含み、前記較正値のシーケンスの値が、前記サセプタの較正温度に関連付けられる、得ることと、
前記較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、
前記平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、
前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の最大値を推定することと、
前記推定された第一の微分値の前記最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することと、
前記判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って、前記誘導加熱装置を動作させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記較正値のシーケンスを前記平滑化すること、および前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値を前記判定することが、一つの計算で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の前記最大値を前記推定することが、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の値を、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の所定の数の値と比較することを含む、請求項1および2のうちの一項に記載の方法。
【請求項4】
前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の値が、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の所定の数の以前の値の平均が、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の前記値より高いときに、前記最大値として推定される、請求項1および2のうちの一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の閾値が、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の前記最大値の分率である、請求項1~4のうちの一項に記載の方法。
【請求項6】
前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値が、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の前記最大値の後に再び増加するときに、前記誘導加熱装置の加熱を停止することをさらに含む、請求項1~5のうちの一項に記載の方法。
【請求項7】
前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の前記最大値の後の、前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の前記再増加が、前記第一の微分値の特定の数の連続値の平均が経時的に増加する場合に判定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記較正曲線を分類することによって、前記較正曲線のタイプを判定することと、
前記判定された較正曲線のタイプに基づいて、前記較正のための少なくとも一つのパラメータを選択することと、をさらに含む、請求項1~7のうちの一項に記載の方法。
【請求項9】
前記較正曲線が、前記較正曲線の勾配に基づいて分類される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プラトー特性および丘点値のうちの前記少なくとも一つを判定することに応答して、前記誘導加熱装置の加熱を停止することをさらに含む、請求項1~9のうちの一項に記載の方法。
【請求項11】
エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置であって、前記誘導加熱装置が、
前記誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることであって、前記較正値のシーケンスが、較正曲線に関連付けられる、得ることと、
前記較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、
前記平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、
前記平滑化された較正値のシーケンスの前記第一の微分値の最大値を推定することと、
前記推定された前記第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することと、を行うように構成されたコントローラを備え、
前記誘導加熱装置が、前記判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って動作され、
前記誘導加熱装置が、エアロゾル形成基体を加熱するためにサセプタに結合されるように構成されたインダクタを含み、前記較正値のシーケンスが、コンダクタンス値のシーケンスおよび抵抗値のシーケンスのうちの一つを含み、前記較正値のシーケンスの値が、前記サセプタの較正温度に関連付けられる、誘導加熱装置。
【請求項12】
前記誘導加熱装置が、
DC供給電圧およびDC電流を提供するための電源と、
前記電源に接続された電源電子回路であって、前記電源電子回路が、
DC/ACコンバータ、
前記インダクタであって、前記インダクタが、前記DC/ACコンバータからの交流電流によって通電されたときに交番磁界を発生するために前記DC/ACコンバータに接続される、前記インダクタ、および、
前記コントローラであって、前記コントローラが、前記電源電子回路に提供される前記電力を制御して、前記サセプタの温度を上昇させるように構成される、前記コントローラ、を含む、電源電子回路と、を備える、請求項11に記載の誘導加熱装置。
【請求項13】
前記較正値のシーケンスを得ることが、前記誘導加熱装置の前記供給電子回路に関連付けられた電流を測定することを含む、請求項12に記載の誘導加熱装置。
【請求項14】
請求項10~13のうちの一項に記載の誘導加熱装置と、エアロゾル発生物品と、を備え、前記エアロゾル発生物品が、前記エアロゾル形成基体および前記サセプタを含む、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアロゾル形成基体を加熱するための誘導加熱装置に関する。本発明はさらに、誘導加熱装置を較正するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル発生装置は、エアロゾルを生成するためにエアロゾル形成基体を加熱するように構成された電気的に作動する熱源を含み得る。したがって、エアロゾル発生装置にとって、エアロゾルの最適な発生およびユーザーへの送達を確実にするために、電気的に作動する熱源の温度を正確に監視および制御することが重要である。過熱は、望ましくない化合物の発生だけでなく、ユーザーにとって不快な味覚および芳香をもたらすことになるエアロゾル形成基体の燃焼につながる可能性があるため、電気的に作動する熱源がエアロゾル形成基体を過熱しないことを確保することが特に重要である。
【0003】
過熱のリスクを低減し、かつエアロゾル発生装置の継続的な通常の動作を確保するために信頼性のある温度調節を提供する、誘導加熱装置を較正するための効率的かつ迅速な方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一実施形態によると、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置を較正するための方法が提供される。方法は、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることを含む。較正値のシーケンスは、較正曲線と関連付けられる。方法はさらに、較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定することと、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することと、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って、誘導加熱装置を動作させることとを含む。誘導加熱装置は、手持ち式の誘導加熱装置であってもよい。あるいは、誘導加熱装置は、手持ち式の装置の一部であってもよい。
【0005】
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定し、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定し、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って、誘導加熱装置を動作させることによって、較正曲線の特徴点または特徴的な特性を、迅速、堅牢かつ確実に判定することができる。判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って誘導加熱装置を動作させることによって、ユーザーの改善された安全のために、較正曲線の特徴点または特徴的な特性を使用して、装置の加熱を防止することができ得る。例えば、エアロゾル形成基体が臨界温度を超えて加熱されたときに望ましくない構成成分が形成されることを回避することができる。
【0006】
較正値のシーケンスを平滑化する工程、および平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定する工程は、一つの計算で実施されてもよく、これにより計算リソースが節約され得る。
【0007】
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定する工程は、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値を、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の所定の数の値と比較することを含み得る。別の方法として、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値は、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の所定の数の以前の値の平均が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値より高いときに最大値として推定されてもよい。
【0008】
第一の閾値は、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の分率であってもよい。第一の閾値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の分率であることに基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することにより、少なくともプラトー特性は、較正曲線が最大値を有さなくても判定し得るため、当該プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定するための堅牢な方法が提供される。
【0009】
方法は、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後に再び増加するときに、誘導加熱装置の加熱を停止することを含んでもよい。平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後の、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の再増加は、第一の微分値の特定の数の連続値の平均が経時的に増加するときに判定され得る。
【0010】
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値が再び増加するときに誘導加熱装置の加熱を停止することによって、過熱から保護する救済方法が提供される。
【0011】
方法はさらに、較正曲線を分類することによって較正曲線のタイプを判定することと、判定された較正曲線のタイプに基づいて、較正のための少なくとも一つのパラメータを選択することとを含み得る。較正曲線は、較正曲線の勾配に基づいて分類されてもよい。別の方法としてまたは追加的に、較正曲線は、第一の微分値の最大値に対応する時間に基づいて分類されてもよい。
【0012】
これにより、パラメータが特定の較正曲線に対して選択され得るため、較正プロセスの精度および信頼性がさらに改善される。
【0013】
方法は、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することに応答して、誘導加熱装置の加熱を停止することをさらに含んでもよい。これにより、方法は、丘点を判定するために丘点を超えて加熱する必要がないため、効率的で安全な較正方法が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によると、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置が提供され、誘導加熱装置は、誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることであって、較正値のシーケンスは、較正曲線に関連付けられる、得ることと、較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定することと、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することと、を行うように構成されたコントローラを備える。誘導加熱装置は、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って動作する。誘導加熱装置は、エアロゾル形成基体を加熱するためにサセプタに誘導的に結合可能なインダクタを備えてもよく、較正値はサセプタと関連付けられる。誘導加熱装置は、DC供給電圧およびDC電流を提供するための電源と、電源に接続された電源電子回路とを備えてもよい。電源電子回路は、DC/ACコンバータと、インダクタであって、DC/ACコンバータからの交流電流によって通電されたときに交番磁界を発生するためにDC/ACコンバータに接続される、インダクタと、コントローラであって、電源電子回路に提供される電力を制御して、サセプタの温度を上昇させるように構成されたコントローラとを含んでもよい。較正値のシーケンスを得ることは、誘導加熱装置の供給電子回路に関連付けられた電流を測定することを含み得る。
【0015】
これにより、継続的に温度を測定することなく、誘導加熱装置を温度に対して較正するために、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを確実かつ堅牢に判定することができる改善された誘導加熱装置が提供される。
【0016】
本発明の一実施形態によると、上述の誘導加熱装置とエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムが提供され、エアロゾル発生物品は、エアロゾル形成基体およびサセプタを備える。
【0017】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾルを発生するためにエアロゾル形成基体と相互作用する装置を指す。エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品と、エアロゾル形成基体を含むカートリッジとのうちの一方または両方と相互作用してもよい。一部の実施例において、エアロゾル発生装置はエアロゾル形成基体を加熱して、基体からの揮発性化合物の放出を容易にする場合がある。電気的に作動するエアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体を加熱してエアロゾルを形成するための、電気ヒーターなどのアトマイザーを備えてもよい。
【0018】
本明細書で使用される「エアロゾル発生システム」という用語は、エアロゾル形成基体とのエアロゾル発生装置の組み合わせを指す。エアロゾル形成基体が、エアロゾル発生物品の一部を形成する時、エアロゾル発生システムは、エアロゾル発生物品とのエアロゾル発生装置の組み合わせを指す。エアロゾル発生システムでは、エアロゾル形成基体およびエアロゾル発生装置は協働して、エアロゾルを発生する。
【0019】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体を指す。揮発性化合物はエアロゾル形成基体を加熱する、または燃焼することによって放出されてもよい。加熱または燃焼に代わるものとして、一部の場合において、化学反応によって、または超音波などの機械的な刺激によって揮発性化合物が放出されてもよい。エアロゾル形成基体は固体であってもよく、または固体構成成分と液体構成成分の両方を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生物品の一部であってもよい。
【0020】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有するエアロゾル形成基体を含む物品を指す。エアロゾル発生物品は使い捨てであってもよい。たばこを含むエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品は、本明細書においてたばこスティックと呼ばれる場合がある。
【0021】
エアロゾル形成基体はニコチンを含んでもよい。エアロゾル形成基体はたばこを含んでもよく、例えば加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。好ましい実施形態において、エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料、例えばキャストリーフたばこを含んでもよい。エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「サセプタ」という用語は、磁場のエネルギーを熱へと変換する能力を有する材料を含む要素を指す。サセプタが交番磁界内に位置しているときに、サセプタは加熱される。サセプタの加熱は、サセプタ材料の電気的特性および磁性に依存して、サセプタ内で誘導されるヒステリシス損失および渦電流のうちの少なくとも一つの結果であり得る。
【0023】
エアロゾル発生装置に言及する際に本明細書で使用される場合、「上流」および「前方」、ならびに「下流」および「後方」という用語は、エアロゾル発生装置の使用中に空気がエアロゾル発生装置を通って流れる方向に関連して、エアロゾル発生装置の構成要素の、または構成要素の部分の相対的な位置を説明するために使用される。本発明によるエアロゾル発生装置は、使用時にエアロゾルが通って装置を出る近位端を備える。エアロゾル発生装置の近位端はまた、口側端または下流端と呼ばれてもよい。口側端は遠位端の下流である。エアロゾル発生物品の遠位端はまた、上流端と呼ばれてもよい。エアロゾル発生装置の構成要素または構成要素の部分は、エアロゾル発生装置の気流経路に対するこれらの相対的な位置に基づいて、互いの上流または下流にあるものとして説明されてもよい。
【0024】
エアロゾル発生物品に言及する際に本明細書で使用される場合、「上流」および「前方」、ならびに「下流」および「後方」という用語は、エアロゾル発生物品の使用中にエアロゾル発生物品を通って空気が流れる方向に関連して、エアロゾル発生物品の構成要素または構成要素の部分の相対的位置を説明するために使用される。本発明によるエアロゾル発生物品は、使用時にエアロゾルが通って物品を出る近位端を備える。エアロゾル発生物品の近位端はまた、口側端または下流端と呼ばれる場合がある。口側端は遠位端の下流である。エアロゾル発生物品の遠位端はまた、上流端と呼ばれてもよい。エアロゾル発生物品の構成要素または構成要素の部分は、エアロゾル発生物品の近位端とエアロゾル発生物品の遠位端との間のこれらの相対的位置に基づき互いの上流または下流にあると説明されうる。エアロゾル発生物品の構成要素または構成要素の部分の前方は、エアロゾル発生物品の上流端に最も近い端にある部分である。エアロゾル発生物品の構成要素または構成要素の部分の後方は、エアロゾル発生物品の下流端に最も近い端にある部分である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「誘導的に結合する」という用語は、交番磁界によって貫通されたときにサセプタを加熱することを指す。加熱は、サセプタ内の渦電流の発生によって引き起こされ得る。加熱は、磁気ヒステリシス損失によって引き起こされてもよい。
【0026】
本発明は特許請求の範囲に定義されている。しかしながら、以下に非限定的な実施例の非網羅的なリストを提供している。これらの実施例の特徴のうちのいずれか一つ以上は、本明細書に記載の別の実施例、実施形態、または態様のうちのいずれか一つ以上の特徴と組み合わされてもよい。
【0027】
実施例1:
エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置を較正する方法であって、方法が、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることであって、較正値のシーケンスが、較正曲線に関連付けられる、得ることと、較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定することと、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することと、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って、誘導加熱装置を動作させることと、を含む、方法。
実施例2:
平滑化することが、較正値のシーケンスを少なくとも一つのガウスカーネルで畳み込むことを含む、実施例1による方法。
実施例3:
少なくとも一つのガウスカーネルが、半ガウスカーネルを含む、実施例2による方法。
実施例4:
少なくとも一つのガウスカーネルが、対称ガウスカーネルを含む、実施例1または2による方法。
実施例5:
平滑化が、較正値のシーケンスを半ガウスカーネルおよび対称ガウスカーネルで畳み込むことを含み、半ガウスカーネルおよび対称ガウスカーネルが、異なる標準偏差と関連付けられる、実施例1による方法。
実施例6:
較正値のシーケンスを平滑化すること、および平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することが、一つの計算で実施される、実施例1~5のいずれかによる方法。
実施例7:
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定することが、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値を、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の所定の数の値と比較することを含む、実施例1~6のいずれかによる方法。
実施例8:
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の所定の数の以前の値の平均が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値より高いときに最大値として推定される、実施例1~6のいずれかによる方法。
実施例9:
第一の閾値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の分率である、実施例1~8のいずれかによる方法。
実施例10:
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後に再び増加するときに、誘導加熱装置の加熱を停止することをさらに含む、実施例1~9のいずれかによる方法。
実施例11:
平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後の、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の再増加が、第一の微分値の特定の数の連続値の平均が経時的に増加する場合に判定される、実施例10による方法。
実施例12:較正曲線を分類することによって較正曲線のタイプを判定することと、判定された較正曲線のタイプに基づいて、較正のための少なくとも一つのパラメータを選択することと、をさらに含む、実施例1~11のいずれかによる方法。
実施例13:較正曲線が、較正曲線の勾配に基づいて分類される、実施例12による方法。
実施例14:
タイプが、再較正曲線および較正曲線のうちの一つ、ならびに再較正曲線および較正曲線のうちの一つの勾配と関連付けられる、実施例12および13のいずれかによる方法。
実施例15:
較正曲線のタイプが、推定された平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値に関連付けられた第二の閾値に基づいて判定される、実施例12~14のいずれかによる方法。
実施例16:
少なくとも一つのパラメータの第一のパラメータが、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定する工程のための第一の閾値を特定する、実施例12~15のいずれかによる方法。
実施例17:少なくとも一つのパラメータの第二のパラメータが、較正値のシーケンスの平滑化を特定する、実施例12~16のいずれかによる方法。
実施例18:
少なくとも一つのパラメータの第三のパラメータが、第一の微分値の最大値を推定する工程で使用される平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の連続値の数を特定する、実施例12~17のいずれかによる方法。
実施例19:
少なくとも一つのパラメータの第四のパラメータが、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定する工程で使用される平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の連続値の数を特定する、実施例12~18のいずれか一つによる方法。
実施例20:
少なくとも一つのパラメータの第五のパラメータが、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後に平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の再増加を判定する工程で使用される平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値の数を特定する、実施例12~19のいずれかによる方法。
実施例21:
第二の閾値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の分率である、実施例12~20のいずれかによる方法。
実施例22:
判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って誘導加熱装置を動作させることが、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに基づいて、エアロゾル発生システムに関連付けられた温度を特定の温度を下回るよう維持することを含む、実施例1による方法。
実施例23:
プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定するのに応答して、誘導加熱装置の加熱を停止することさらに含む、実施例1~22のいずれかによる方法。
実施例24:
較正値のシーケンスが、誘導加熱装置の較正段階中に得られる、実施例1~23のいずれかによる方法。
実施例25:
較正値のシーケンスが、誘導加熱装置の再較正中に得られる、実施例1~23のいずれかによる方法。
実施例26:
エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置であって、誘導加熱装置が、誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることであって、較正値のシーケンスが、較正曲線に関連付けられた較正値である、得ることと、較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得ることと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値を判定することと、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値を推定することと、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することであって、誘導加熱装置が、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って動作する、判定することと、を行うように構成されたコントローラを備える、誘導加熱装置。
実施例27:
誘導加熱装置が、エアロゾル形成基体を加熱するためにサセプタに誘導的に結合可能なインダクタを備え、較正値がサセプタと関連付けられる、実施例26による誘導加熱装置。
実施例28:
誘導加熱装置が、DC供給電圧およびDC電流を提供するための電源と、電源に接続された電源電子回路であって、電源電子回路が、DC/ACコンバータ、インダクタであって、DC/ACコンバータからの交流電流によって通電されたときに、交番磁界を発生するためにDC/ACコンバータに接続される、インダクタ、およびコントローラであって、電源電子回路に提供される電力を制御して、サセプタの温度を上昇させるように構成される、コントローラ、を含む、電源電子回路と、を備える、実施例27による誘導加熱装置。
実施例29:
較正値のシーケンスを得ることが、誘導加熱装置の供給電子回路に関連付けられた電流を測定することを含む、実施例28による誘導加熱装置。
実施例30:
プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つが、既知の温度に対応する、実施例26~29のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例31:較正値のシーケンスが、コンダクタンス値のシーケンスを含み、コンダクタンス値のシーケンスのコンダクタンス値が、サセプタの較正温度に関連付けられる、実施例27~30のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例32:較正値のシーケンスが、抵抗値のシーケンスを含み、抵抗値のシーケンスの抵抗値が、サセプタの較正温度に関連付けられる、実施例27~31のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例33:
プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つが、サセプタの材料のキュリー温度に対応する、実施例27~32のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例34:
サセプタが、第一のキュリー温度を有する第一のサセプタ材料と、第二のキュリー温度を有する第二のサセプタ材料とを含み、第二のキュリー温度が、第一のキュリー温度より低く、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つが、第二のサセプタ材料の第二のキュリー温度に対応する、実施例27~33のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例35:コントローラが、平滑化された較正値のシーケンスの谷点を判定し、判定された谷点および判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに基づいて、誘導加熱装置を較正するように構成される、実施例26~34のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例36:
谷点が、既知の温度に対応する、実施例35による誘導加熱装置。
実施例37:較正が、誘導加熱装置の使用中に再較正として定期的に実施される、実施例26~36のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例38:
DC/ACコンバータの入力側において、電源から引き出されるDC電流を測定するように構成された電流センサと、DC/ACコンバータの入力側において、電源のDC供給電圧を測定するように構成された電圧センサと、をさらに備え、較正値のシーケンスが、コンダクタンス値のシーケンス、または抵抗値のシーケンスを含み、サセプタに関連付けられたコンダクタンス値または抵抗値が、電源のDC供給電圧から、および電源から引き出されるDC電流から判定される、実施例26~37のいずれかによる誘導加熱装置。
実施例39:
較正値が、コンダクタンス値を含み、コントローラが、サセプタに関連付けられたコンダクタンス値を、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを下回るよう維持するために、電源電子回路に提供される電力を制御するように構成される、実施例26による誘導加熱装置。
実施例40:
請求項26~39のいずれか一つによる誘導加熱装置と、エアロゾル発生物品とを備え、エアロゾル発生物品が、エアロゾル形成基体およびサセプタを含む、エアロゾル発生システム。
【0028】
ここで、以下の図を参照しながら実施例をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1はエアロゾル発生物品の概略断面図を示す。
図2A図2Aは、図1に示すエアロゾル発生物品と共に使用するためのエアロゾル発生装置の概略断面図を示す。
図2B図2Bは、図1に示すエアロゾル発生物品と係合するエアロゾル発生装置の概略断面図を示す。
図3図3図2に関連して説明したエアロゾル発生装置の誘導加熱装置を示すブロック図である。
図4図4図3に関連して説明した誘導加熱装置の電子構成要素を示す概略図である。
図5図5は、図4に関連して説明した誘導加熱装置のLC負荷ネットワークのインダクタ上の概略図である。
図6図6はサセプタ材料がそのキュリー点に関連する相転移を受けるときに発生する、遠隔検出可能な電流の変化を示したDC電流対時間のグラフである。
図7図7は、エアロゾル発生装置の動作中のサセプタの温度プロファイルを示す。
図8図8は、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置を較正する方法を示す流れ図である。
図9A図9Aは、試験再較正曲線で訓練され得る分類ツリーを示す。
図9B図9Bは、試験較正曲線で訓練され得る分類ツリーを示す。
図10図10は、再較正曲線の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、エアロゾル発生物品100の概略側面断面図を示す。エアロゾル発生物品100は、エアロゾル形成基体110のロッドと、エアロゾル形成基体110のロッドの下流の位置にある下流セクション115とを備える。エアロゾル発生物品100は、エアロゾル形成基体のロッドの上流の位置にある上流セクション150を備える。したがって、エアロゾル発生物品100は、上流端または遠位端180から下流端または口側端170まで延びる。使用時、空気は、遠位端180から口側端170に、ユーザーによってエアロゾル発生物品100を介して引き出される。
【0031】
下流セクション115は、エアロゾル形成基体のロッドのすぐ下流に位置する支持要素120を含み、支持要素120は、ロッド110と長軸方向に整列している。支持要素120の上流端は、エアロゾル形成基体110のロッドの下流端に当接する。加えて、下流セクション115は、支持要素120のすぐ下流に位置するエアロゾル冷却要素130を含み、エアロゾル冷却要素130は、ロッド110および支持要素120と長軸方向に整列している。エアロゾル冷却要素130の上流端は、支持要素120の下流端に当接する。使用時、エアロゾル形成基体110から放出される揮発性物質は、エアロゾル発生物品100の口側端170に向かって、エアロゾル冷却要素130に沿って通過する。揮発性物質は、エアロゾル冷却要素130内で冷却してユーザーによって吸入されるエアロゾルを形成してもよい。
【0032】
支持要素120は、第一の中空管状セグメント125を含む。第一の中空管状セグメント125は、セルロースアセテートで作製された中空円筒状管の形態で提供される。第一の中空管状セグメント125は、第一の中空管状セグメント125の上流端165から第一の中空管状セグメント125の下流端175まで全面的に延びる内部空洞145を画定する。
【0033】
エアロゾル冷却要素130は、第二の中空管状セグメント135を含む。第二の中空管状セグメント135は、セルロースアセテートで作製された中空円筒状管の形態で提供される。第二の中空管状セグメント135は、第二の中空管状セグメント135の上流端185から第二の中空管状セグメント135の下流端195まで全面的に延びる内部空洞155を画定する。加えて、通気ゾーン(図示せず)は、第二の中空管状セグメント135に沿った位置に提供される。エアロゾル発生物品10の通気レベルは、約25パーセントである。
【0034】
下流セクション115は、エアロゾル冷却要素130のすぐ下流に位置付けられたマウスピース140をさらに含む。図1の図面に示す通り、マウスピース140の上流端は、エアロゾル冷却要素130の下流端195に当接する。マウスピース140は、低密度セルロースアセテートの円筒形プラグの形態で提供される。
【0035】
エアロゾル発生物品100は、エアロゾル発生基体110のロッド内に細長いサセプタ160をさらに備える。より詳細には、サセプタ160は、ロッド110の長軸方向に対してほぼ平行になるようになど、エアロゾル形成基体110内で実質的に長軸方向に配設されている。図1の図面に示されるように、サセプタ160は、ロッド内の半径方向で中央の位置に位置付けられており、実際上ロッド110の長軸方向軸に沿って延びている。
【0036】
サセプタ160は、エアロゾル形成基体110のロッドの上流端から下流端まで全面的に延びる。実際には、サセプタ160は、エアロゾル形成基体110のロッドと実質的に同じ長さを有する。サセプタ160は、エアロゾル形成基体110と熱的に接触して位置しており、その結果、サセプタ160が加熱されたときにエアロゾル形成基体110がサセプタ160によって加熱される。
【0037】
上流セクション150は、エアロゾル形成基体110のロッドのすぐ上流に位置する上流要素190を含み、上流要素190は、ロッド110と長軸方向に整列している。上流要素190の下流端は、エアロゾル形成基体のロッドの上流端に当接する。これにより、有利なことに、サセプタ160が外れることが防止される。さらに、これにより、消費者が使用後に加熱されたサセプタ160に偶発的に接触できないことが確保される。上流要素190は、硬質ラッパーによって囲まれた酢酸セルロースの円筒形プラグの形態で提供される。
【0038】
サセプタ160は、少なくとも二つの異なる材料を含む。サセプタ160は、少なくとも二つの層、すなわち、第二のサセプタ材料の第二の層と物理的に接触して配置される第一のサセプタ材料の第一の層を含む。第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料は各々、キュリー温度を有してもよい。この場合、第二のサセプタ材料のキュリー温度は第一のサセプタ材料のキュリー温度よりも低い。第一の材料は、キュリー温度を有しない場合がある。第一のサセプタ材料は、アルミニウム、鉄またはステンレス鋼であってもよい。第二のサセプタ材料は、ニッケルまたはニッケル合金であってもよい。
【0039】
サセプタ160は、第二のサセプタ材料の少なくとも一つのパッチを第一のサセプタ材料のストリップ上に電気めっきすることによって形成されてもよい。サセプタは、第二のサセプタ材料のストリップを第一のサセプタ材料のストリップに被覆することによって形成され得る。
【0040】
図1に示したエアロゾル発生物品100は、図2Aに示したエアロゾル発生装置200などのエアロゾル発生装置と係合して、エアロゾルを生成するように設計されている。エアロゾル発生装置200は、エアロゾル発生物品100を受容するように構成された空洞220を有するハウジング210と、エアロゾルを生成するためにエアロゾル発生物品100を加熱するように構成された誘導加熱装置230とを備える。図2Bは、エアロゾル発生物品100が空洞220内に挿入されるときの、エアロゾル発生装置200を示す。エアロゾル発生装置200は随意に、吸煙を検出するために空洞220(図示せず)内またはその近くに位置する吸煙検出器をさらに備えてもよい。吸煙検出器は、吸煙検出器が、ユーザーが吸煙するときに気流の経路に沿って定置されるように、空洞200内またはその近くに位置する。吸煙検出器は、ユーザーが吸煙していることを示す、空洞220内の気流の温度変化を検出するための一つ以上の温度検出器を含んでもよい。追加的に、または別の方法として、吸煙検出器は、ユーザーが吸煙していることを示す、空洞220内の気流の圧力減少を検出するための圧力センサを含んでもよい。
【0041】
誘導加熱装置230は、図3のブロック図に示される。誘導加熱装置230は、DC電源310および加熱配設320(電源電子回路とも称される)を備える。加熱配設は、コントローラ330、DC/ACコンバータ340、整合ネットワーク350、およびインダクタ240を含む。
【0042】
DC電源310は、DC電力を加熱配設320に提供するように構成される。具体的には、DC電源310は、DC供給電圧(VDC)およびDC電流(IDC)をDC/ACコンバータ340に提供するように構成される。電源310はリチウムイオン電池などの電池であることが好ましい。代替として、電源310はコンデンサなどの別の形態の電荷蓄積装置であってもよい。電源310は再充電を必要とする場合がある。例えば、電源310はおおよそ六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の例において、電源310は所定の回数の吸煙、または加熱配設の不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0043】
DC/ACコンバータ340は、高周波の交流電流をインダクタ240に供給するように構成される。本明細書で使用される場合、「高周波の交流電流」という用語は、約500キロヘルツ~約30メガヘルツの周波数を有する、交流電流を意味する。高周波の交流電流は、約1メガヘルツ~約30メガヘルツ(約1メガヘルツ~約10メガヘルツ、または約5メガヘルツ~約8メガヘルツなど)の周波数を有してもよい。
【0044】
図4は、誘導加熱装置230、特にDC/ACコンバータ340の電気構成要素を概略的に示す。DC/ACコンバータ340は、好ましくはクラスE電力増幅器を備える。クラスE電力増幅器は、電界効果トランジスタ420と、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタを含むトランジスタスイッチ410、電界効果トランジスタ420に切換信号(ゲート・ソース電圧)を供給するための矢印430で示したトランジスタスイッチ供給回路と、分路コンデンサC1およびインダクタ240に対応するコンデンサC2とインダクタL2の直列接続を含むLC負荷ネットワーク440とを備える。さらに、チョークL1を備えるDC電源310が、動作中にDC電源310から引き出される、DC電流IDCと共に、DC供給電圧VDCを供給するために示されている。インダクタL2のオーム抵抗RCoilと、サセプタ160のオーム抵抗RLoadの和である、合計オーム負荷450を表すオーム抵抗Rが、図5により詳細に示される。
【0045】
DC/ACコンバータ340は、クラスE電力増幅器を含むものとして示されているが、DC/ACコンバータ340は、DC電流をAC電流に変換する任意の適切な回路を使用し得ることが理解されるべきである。例えば、DC/ACコンバータ340は、二つのトランジスタスイッチを含むクラスD電力増幅器を備えてもよい。別の例として、DC/ACコンバータ340は、対で作用する四つのスイッチングトランジスタを有するフルブリッジ電力インバータを備えてもよい。
【0046】
図3に戻ると、インダクタ240は、負荷への最適な適合のために整合ネットワーク350を介してDC/ACコンバータ340から交流電流を受信してもよいが、整合ネットワーク350は必須ではない。整合ネットワーク350は小型の整合変成器を備えうる。整合ネットワーク350は、DC/ACコンバータ340とインダクタ240との間の電力伝達効率を改善しうる。
【0047】
図2Aに示すように、インダクタ240は、エアロゾル発生装置200の空洞220の遠位部分225に隣接して位置する。したがって、エアロゾル発生装置200の動作中に、インダクタ240に供給される高周波の交流電流は、インダクタ240に、エアロゾル発生装置200の遠位部分225内に高周波の交番磁界を発生させる。交番磁界は、好ましくは1~30メガヘルツ、好ましくは2~10メガヘルツ、例えば5~7メガヘルツの周波数を有する。図2Bから分かるように、エアロゾル発生物品100が空洞200に挿入されるとき、エアロゾル発生物品100のエアロゾル形成基体110は、エアロゾル発生物品100のサセプタ160がこの交番磁界内に位置するように、インダクタ240に隣接して位置する。交番磁界がサセプタ160を貫通すると、交番磁界がサセプタ160の加熱を引き起こす。例えば、渦電流は、結果として加熱されるサセプタ160内で発生される。さらなる加熱がサセプタ160内の磁気ヒステリシス損失により提供される。加熱されたサセプタ160は、エアロゾルを形成するのに十分な温度までエアロゾル発生物品100のエアロゾル形成基体110を加熱する。エアロゾルはエアロゾル発生物品100を通って下流に引き出され、ユーザーによって吸い込まれる。
【0048】
コントローラ330はマイクロコントローラ、好ましくはプログラム可能なマイクロコントローラであってもよい。コントローラ330は、サセプタ160の温度を制御するために、DC電源310から誘導加熱配設320への電力供給を調節するようにプログラムされる。
【0049】
図6は、サセプタ160の温度(破線で示される)が増加するにつれて、経時的に電源310から引き出されるDC電流IDC間の関係を示す。より具体的には、図6はサセプタ材料がそのキュリー点に関連する相転移を受けるときに生じる、遠隔検出可能なDC電流の変化を示す。電源310から引き出されるDC電流IDCは、DC/ACコンバータ340の入力側で測定される。この図の目的上、電源310の電圧VDCはほぼ一定であると想定されうる。
【0050】
サセプタ160が誘導的に加熱されると、サセプタ160の見かけの抵抗が増加する。この抵抗の増加は、電源310から引き出されるDC電流IDCの減少として観察され、定電圧では、サセプタ160の温度が上昇するにつれて減少する。インダクタ240によって提供される高周波の交番磁界は、サセプタ表面の近くで、表皮効果として既知の効果である渦電流を誘導する。サセプタ160の抵抗は、第一のサセプタ材料の電気抵抗率、第二のサセプタ材料の抵抗率に部分的に、および誘導された渦電流に利用可能なそれぞれの材料の表皮層の深さに部分的に依存し、抵抗率は温度に依存する。
【0051】
第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達すると、その磁性が失われる。これにより、第二のサセプタ材料内で渦電流に利用可能な表皮層が増え、これによりサセプタ160の見かけの抵抗が減少する。その結果、検出されるDC電流IDCが一時的に増加する。その後、第二のサセプタ材料の表皮の深さが増加し始めると、抵抗が低下し始める。これは図6の谷(局所最小値)として見なされる。
【0052】
加熱を継続すると、電流は、第二のサセプタ材料がその自然磁気特性を失った点と整合する最大の表皮の深さに達するまで増加し続ける。この点はキュリー温度と呼ばれ、図6では丘(局所最大値)として見なされる。この時点で、第二のサセプタ材料は、強磁性またはフェリ磁性状態から常磁性状態への相変化を受けている。この時点で、サセプタ160は既知の温度(固有材料特異的温度であるキュリー温度)にある。
【0053】
インダクタ240が、キュリー温度に達した後、交番磁界を発生し続ける場合(すなわち、DC/ACコンバータ340への電力が中断されない)、サセプタ160内で発生される渦電流が、サセプタ160の抵抗に対して流れ、これにより、サセプタ160のジュール加熱が継続され、これにより、抵抗は再び増加し(抵抗は温度の多項式依存性を有し、大半の金属サセプタ材料については、発明者らの目的のために三次多項式依存性に近似することができる)、電流は、インダクタ240がサセプタ160に電力を供給し続ける限り、再び低下し始める。
【0054】
したがって、第二のサセプタ材料は、(既知の)温度範囲を通して加熱されたときに、図6に示す谷と丘との間で可逆的相転移を受ける。図6から分かるように、サセプタ160の見かけの抵抗、したがって相転移の開始および終了は、電源310から引き出されるDC電流IDCを監視することによって遠隔検出することができる。別の方法として、サセプタ160の見かけの抵抗、したがって相転移の開始および終了は、コンダクタンス値(コンダクタンスはDC電流IDCのDC供給電圧VDCに対する比として定義される)または抵抗値(抵抗はDC供給電圧VDCのDC電流IDCに対する比として定義される)を監視することによって遠隔検出することができる。少なくとも、電源310から引き出されるDC電流IDCは、コントローラ330によって監視される。DC供給電圧VDCは既知であるが、電源310から引き出されるDC電流IDCおよびDC供給電圧VDCの両方が監視されることが好ましい。DC電流IDC、コンダクタンス値、および抵抗値は、電源パラメータと称され得る。
【0055】
サセプタ160が加熱されるとき、第一の転換点(電流の局所最小値および抵抗の局所最大値に対応する)は、相転移の開始に対応する。次に、サセプタの加熱が継続されると、第二の転換点(電流の局所最大値および抵抗の局所最小値に対応する)は、相転移の終了に対応する。
【0056】
さらに、図6から分かるように、サセプタ160の見かけの抵抗(および対応する電源310から引き出される電流IDC)は、サセプタ160の特定の温度範囲(谷と丘の間など)にわたって厳密に単調な関係でサセプタ160の温度と共に変化し得る。厳密に単調な関係により、見かけの抵抗(R)または見かけのコンダクタンス(1/R)の判定からのサセプタ160の温度の明確な判定が可能になる。これは、見かけの抵抗の判定された値がそれぞれ、温度の一つの値のみを表すためであり、その関係に曖昧性がない。サセプタ160の温度と見かけの抵抗との、第二のサセプタ材料が可逆的相転移を受ける温度範囲における単調な関係は、サセプタ160の温度を判定および制御することを可能にし、したがってエアロゾル形成基体110の温度を判定および制御することを可能にする。
【0057】
コントローラ330は、電源パラメータに基づいて、加熱配設320に提供される電力の供給を調節する。加熱配設320は、DC電流IDCを測定するための電流センサ(図示せず)を備えてもよい。加熱配設は、DC供給電圧VDCを測定するための電圧センサ(図示せず)を随意に含みうる。電流センサおよび電圧センサは、DC/ACコンバータ340の入力側に位置する。DC電流IDC、および任意選択でDC供給電圧VDCは、コントローラ330へのフィードバックチャネルによって提供され、インダクタ240へのAC電力PACのさらなる供給を制御する。
【0058】
コントローラ330は、測定された電源パラメータ値を、サセプタ160の目標動作温度に対応する目標値に維持することによって、サセプタ160の温度を制御し得る。コントローラ330は、任意の適切な制御ループを使用して、例えば、比例積分微分制御ループを使用することによって、測定された電源パラメータを目標値に維持してもよい。
【0059】
さらに、コントローラ330は、測定されたコンダクタンスまたは電流値を所定の閾値コンダクタンス値を下回るよう維持することによって、または測定された抵抗値を所定の閾値抵抗値を上回るよう維持することによって、サセプタ160の温度を所定の閾値温度を下回るよう維持してもよい。所定の閾値温度は、エアロゾル形成基体の過熱を防止するように選択される。測定された電源パラメータが、サセプタの温度が所定の閾値温度を上回ることを示す場合、コントローラ330は安全モードに入るようにプログラムされる。安全モードでは、コントローラ330は、(視覚的、および追加的または代替的に可聴的に)ユーザーに過熱警告を提供する警報を発生する、エアロゾル発生装置をオフにする、および所定の期間の間エアロゾル発生装置のさらなる使用を防止するなどの一つ以上の動作を実施するように構成される。
【0060】
サセプタ160の見かけの抵抗(または見かけのコンダクタンス)とサセプタ160の温度との間の厳密に単調な関係を利用するために、エアロゾルを生成するためのユーザー操作中、DC/ACコンバータ340の入力側において測定される電源パラメータが、第一の較正温度に対応する第一の較正値と、第二の較正温度に対応する第二の較正値との間に維持される。第二の較正温度は、第二のサセプタ材料(図6の電流プロットの丘)のキュリー温度である。第一の較正温度は、第二のサセプタ材料の表皮の深さが増加し始め、抵抗の一時的な低下をもたらす(図6の電流プロットの谷)、サセプタの温度以上の温度である。したがって、第一の較正温度は、第二のサセプタ材料の最大透過性における温度以上の温度である。第一の較正温度は、第二の較正温度より少なくとも摂氏50度低い。少なくとも第二の較正値は、以下でより詳細に説明するように、サセプタ160の較正によって判定されてもよい。第一の較正値および第二の較正値は、コントローラ330のメモリ内に較正値として記憶されてもよい。
【0061】
電源パラメータは温度に対して多項式依存性を有するため、電源パラメータは温度の関数として非線形に挙動する。しかしながら、第一および第二の較正値は、第一の較正値と第二の較正値との間の差が小さいために、この依存性が第一の較正値と第二の較正値との間で線形として近似され得るように、そして第一および第二の較正値が動作温度範囲の上部にあるように選択される。したがって、温度を目標動作温度に調整するために、電源パラメータは、線形方程式を介して、第一の較正値および第二の較正値に従って調節される。
【0062】
例えば、第一および第二の較正値がコンダクタンス値である場合、目標動作温度に対応する目標コンダクタンス値は、次のように与えられ得る:
GTarget=GLower+(x×ΔG)
式中、ΔGは、第一のコンダクタンス値と第二のコンダクタンス値との間の差であり、xはΔGの割合である。
【0063】
コントローラ330は、DC/ACコンバータ340のスイッチングトランジスタ410の負荷サイクルを調整することによって、加熱配設320への電力の提供を制御してもよい。例えば、加熱中に、DC/ACコンバータ340は、サセプタ160を加熱する交流電流を継続的に発生し、また同時にDC電流IDCおよび随意にDC供給電圧VDCは、好ましくは一ミリ秒ごとに100ミリ秒間測定されてもよい。
【0064】
例えば、サセプタ温度を調整するためにコントローラ330によってコンダクタンスまたは電流が監視される場合、コンダクタンスまたは電流がサセプタ温度を調整するための目標動作温度に対応する値に達するか、またはこれを超えると、スイッチングトランジスタ410の負荷サイクルが低減される。サセプタ温度を調整するためにコントローラ330によって抵抗が監視される場合、抵抗が目標動作温度に対応する値に達するか、またはこれを下回ると、スイッチングトランジスタ410の負荷サイクルが低減される。例えば、スイッチングトランジスタ410の負荷サイクルは、約10%に低減され得る。言い換えれば、スイッチングトランジスタ410は、1ミリ秒の持続時間の間、10ミリ秒ごとにのみパルスを発生するモードに切り替わってもよい。スイッチングトランジスタ410のこの1ミリ秒のオン状態(導電状態)の間、DC供給電圧VDCの値およびDC電流IDCの値が測定され、コンダクタンスが判定される。コンダクタンスが減少する(または抵抗が増加する)と、サセプタ160の温度は目標動作温度を下回ることを示すため、トランジスタ410のゲートは、システムの選択された駆動周波数でパルスのトレーンを再び供給される。
【0065】
電力は、電流の連続した一連のパルスの形態でコントローラ330によってインダクタ240に供給されてもよい。特に、電力は、それぞれが時間間隔ごとに分離された一連のパルスで、インダクタ240に供給されてもよい。連続した一連のパルスは、二つ以上の加熱パルスおよび連続した加熱パルス間の一つ以上のプロービングパルスを含んでもよい。加熱パルスは、サセプタ160を加熱するなどの強度を有する。プロービングパルスは、サセプタ160を加熱するのではなく、むしろ電源パラメータ、次いでサセプタ温度の進化(減少)に関するフィードバックを得るような強度を有する分離された電力パルスである。コントローラ330は、DC電源によってインダクタ240に供給される電力の連続した加熱パルス間の時間間隔の持続時間を制御することによって、電力を制御してもよい。追加的または代替的に、コントローラ330は、DC電源によってインダクタ240に供給される電力の連続した加熱パルスのそれぞれの長さ(言い換えれば、持続時間)を制御することによって、電力を制御しうる。
【0066】
コントローラ330は、電源パラメータがサセプタ160の既知の温度で測定される較正値を得るために、較正プロセスを実施するようにプログラムされる。サセプタの既知の温度は、第一の較正値に対応する第一の較正温度と、第二の較正値に対応する第二の較正温度とであってもよい。較正プロセスは、ユーザーがエアロゾル発生装置200を動作させるたびに実施される。例えば、コントローラ330は、ユーザーがエアロゾル発生装置をオンにするときに、較正プロセスを実施するために較正モードに入るように構成されてもよい。コントローラ330は、ユーザーがエアロゾル発生物品100をエアロゾル発生装置200内に挿入するたびに、較正モードに入るようにプログラムされてもよい。したがって、較正プロセスは、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置200のユーザー操作の前に、エアロゾル発生装置の第一の加熱段階中に実施される。
【0067】
較正プロセス中、コントローラ330は、DC/ACコンバータ340を制御して、サセプタ160を加熱するために、継続的にまたは断続的に電力をインダクタ240に供給する。コントローラ330は、電源によって引き出される電流IDC、および随意に、電源電圧VDCを測定することによって、電源パラメータを監視する。図6に関連して上述したように、サセプタ160が加熱されると、測定された電流は、第一の転換点に達し、電流が増加するまで減少する。この第一の転換点は、局所最小コンダクタンスまたは電流値(局所最大抵抗値)に対応する。コントローラ330は、第一の転換点における電源パラメータを第一の較正値として記録し得る。
【0068】
コンダクタンスまたは抵抗値は、測定された電流IDCおよび測定された電圧VDCに基づいて判定され得る。あるいは、電源310の既知の特性である、供給電圧VDCがほぼ一定であると仮定されてもよい。第一の較正値におけるサセプタ160の温度は、第一の較正温度と称される。第一の較正温度は、摂氏150度~摂氏350度であることが好ましい。より好ましくは、エアロゾル形成基体110がたばこを含む場合、第一の較正温度は摂氏320度である。第一の較正温度は、第二の較正温度より少なくとも摂氏50度低い。
【0069】
コントローラ330がDC/ACコンバータ340によってインダクタ240に提供される電力を制御し続けるとき、コントローラ330は、第二の転換点に達するまで電源パラメータを監視し続ける。第二の転換点は、測定された電流が減少し始める前の最大電流(第二のサセプタ材料のキュリー温度に対応する)に対応する。この転換点は、局所最大コンダクタンスまたは電流値(局所最小抵抗値)に対応する。コントローラ330は、第二の転換点における電源パラメータ値を第二の較正値として記録する。第二の較正値でのサセプタ160の温度は、第二の較正温度と称される。好ましくは、第二の較正温度は、摂氏200度~摂氏400度である。最大値が検出されると、コントローラ330は、DC/ACコンバータ340を制御して、インダクタ240への電力の提供を中断し、その結果、サセプタ160の温度の低下およびそれに対応する測定電流の低下をもたらす。
【0070】
グラフの形状のために、サセプタ160を継続的に加熱して第一の較正値および第二の較正値を得るこのプロセスは、較正モード中に少なくとも一回繰り返されてもよい。インダクタ240への電力の提供を中断した後、コントローラ330は、第三の転換点が観察されるまで電源パラメータを監視し続ける。第三の転換点は、第二の最小コンダクタンスまたは電流値(第二の最大抵抗値)に対応する。第三の転換点が検出されると、コントローラ330は、監視された電源パラメータの第四の転換点が観察されるまで、DC/ACコンバータ340を制御して、インダクタ240へ継続的に電力を提供する。第四の転換点は、第二の最大コンダクタンスまたは電流値(第二の最小抵抗値)に対応する。コントローラ330は、第三の転換点で測定された電源パラメータ値を第一の較正値として記憶し、第四の転換点で測定された電源パラメータ値を第二の較正値として記憶する。最小および最大測定電流に対応する転換点の測定の繰り返しは、エアロゾルを生成するための装置のユーザー操作中のその後の温度調節を著しく改善する。好ましくは、コントローラ330は、第二の最大値および第二の最小値から得られた電源パラメータ値に基づいて電力を調節するが、これは、熱がエアロゾル形成基体110およびサセプタ160内に分散するためにより多くの時間を必要とするため、より信頼性が高い。
【0071】
さらに、第一の加熱段階中、較正プロセスの信頼性をさらに改善するために、コントローラ310は随意に、較正プロセスの前に予熱プロセスを実施するようにプログラムされてもよい。例えば、エアロゾル形成基体110が特に乾燥しているか、または類似の条件である場合、較正は、熱がエアロゾル形成基体110内に広がる前に実施され、較正値の信頼性が低減されことがある。エアロゾル形成基体110が湿っていた場合、サセプタ160は谷温度に達するのにより長い時間がかかる(基体110の水分含量による)。
【0072】
予熱プロセスを実施するために、コントローラ330は、継続的に電力をインダクタ240に供給するように構成される。図6に関して上述したように、測定電流は、最小測定電流に対応する転換点に達するまで、サセプタ160の温度上昇とともに減少し始める。この段階で、コントローラ330は、加熱を続ける前にサセプタ160が冷却できるように所定の期間待機するように構成される。したがって、コントローラ330は、DC/ACコンバータ340を制御して、インダクタ240への電力の提供を中断する。所定の期間の後、コントローラ330は、DC/ACコンバータ340を制御して、最小測定電流に対応する転換点に再び達するまで電力を提供する。この時点で、コントローラはDC/ACコンバータ340を制御して、再度、インダクタ240への電力の提供を中断する。コントローラ330は再び、同じ所定の時間待機して、加熱を続ける前にサセプタ160を冷却させる。このサセプタ160の加熱および冷却は、予熱プロセスの所定の持続時間にわたって繰り返される。予熱プロセスの所定の持続時間は、好ましくは11秒である。予熱プロセスの所定の組み合わせた持続時間に続いて、較正プロセスは、好ましくは20秒である。
【0073】
エアロゾル形成基体110が乾燥している場合、予熱プロセスの第一の電流最小値は、所定の時間内に達し、電力の中断は、所定の時間の終了まで繰り返される。エアロゾル形成基体110が湿っている場合、予熱プロセスの第一の電流最小値は、所定の時間の終了に向かって達する。したがって、所定の持続時間の間予熱プロセスを実施することは、基体110の物理的状態にかかわらず、継続的に電力を供給して第一の最大値に達する準備ができている状態になるために、基体110が最小動作温度に達するのに十分な時間であることを確保する。これにより、基体110が事前に谷に達していないというリスクを負わずに、可能な限り早期に較正が可能となる。
【0074】
さらに、エアロゾル発生物品100は、電流最小値が常に予熱プロセスの所定の持続時間内に達成されるように構成されてもよい。予熱プロセスの所定の持続時間内に電流最小値に達しない場合、これは、エアロゾル形成基体110を含むエアロゾル発生物品100が、エアロゾル発生装置200での使用に適さないことを示し得る。例えば、エアロゾル発生物品100は、エアロゾル発生装置200で使用することが意図されたエアロゾル形成基体100とは異なる、またはより低品質のエアロゾル形成基体110を含んでもよい。別の例として、エアロゾル発生物品100は、例えば、エアロゾル発生物品100およびエアロゾル発生装置200が異なる製造業者によって製造される場合、加熱配設320と共に使用するように構成されない場合がある。したがって、コントローラ330は、エアロゾル発生装置200の動作を停止する制御信号を発生するように構成されてもよい。
【0075】
上述のように、較正プロセスの第一の段階として、予熱プロセスは、例えば、エアロゾル発生装置200のユーザー起動などのユーザー入力の受信に応答して実施されてもよい。追加的または代替的に、コントローラ330は、エアロゾル発生装置200内のエアロゾル発生物品100の存在を検出するように構成されてもよく、予熱プロセスは、エアロゾル発生装置200の空洞220内のエアロゾル発生物品100の存在を検出することに応答して実施されてもよい。
【0076】
エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置200のユーザー動作中(第二の加熱段階と称される)、図6に示す丘および谷での見かけのコンダクタンス(見かけの抵抗)値は経時的にドリフトする。これは、図5に示すように、サセプタの見かけの抵抗は、インダクタL2のオーム抵抗Rcoilと、サセプタ160のオーム抵抗Rloadの和であるためである。したがって、装置200の動作中のインダクタL2の温度の変化は、見かけの抵抗に影響を与え得る。したがって、第一の加熱段階で較正プロセス中に測定された較正値は、エアロゾル発生装置200の動作中にドリフトする。
【0077】
エアロゾル発生装置200がエアロゾルを発生している通常の動作中、コントローラ330は、エアロゾル形成基体を加熱するために加熱モードで動作する。コントローラ330は、加熱モードから、エアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生装置200のユーザー操作中に、所定の間隔で較正プロセスの少なくとも一部のさらなる繰り返しを実施するために、再較正モードに入るようにプログラムされてもよい。所定の間隔は、所定の時間間隔または所定の吸煙回数であってもよい。追加的に、または別の方法として、コントローラ330は、吸煙の完了の検出に応答して、較正プロセスの少なくとも一部を繰り返すために再較正モードに入るようにプログラムされてもよい。較正プロセスは、実施するのに200ミリ秒~2秒かかる場合がある。
【0078】
較正プロセスの少なくとも一部のさらなる繰り返しを実施することは、両方の転換点(図6に丘および谷として示される)での較正値の両方を再測定すること、または、転換点の一つ、例えば、電流またはコンダクタンスの局所最大値(抵抗の局所最小値)での較正値のみを再測定することを含み得る。
【0079】
較正プロセスのさらなる繰り返しを実施するために(言い換えれば、再較正を実施するために)、コントローラ330は、電源によって引き出される電流IDC、および随意に電源電圧VDCを測定することによって、サセプタ160に関連付けられた電源パラメータを監視する。エアロゾル発生装置の最小動作温度は第一の較正温度より大きいため、サセプタ160が較正プロセスのさらなる繰り返し中に加熱されると、測定電流IDCは、転換点に達し、電流IDCが減少し始めるまで増加する。この転換点は、局所最大コンダクタンスまたは電流値(局所最小抵抗値)として観察される、サセプタ160の可逆的相転移の終了点に対応する。コントローラ330は、転換点における電源パラメータ値を、再測定された第二の較正値として記録する。
【0080】
第一の転換点に達すると、コントローラ330は、DC/ACコンバータ340を制御して、サセプタ160が冷却されることを可能にするために、インダクタ240に提供される電力を減少させる。例えば、コントローラ330は、DC/ACコンバータ340の負荷サイクルを10%に減少してもよい。コントローラ330は、サセプタ160が、その時点でコントローラ300が加熱モードで通常の動作を再開するそれぞれの目標動作温度に達するまで、インダクタ240に提供される電力を減少させてもよい。
【0081】
別の方法として、コントローラ330は、別の転換点が観察されるまで、インダクタ240に提供される電力を減少させ続けてもよい。この別の転換点は、局所最小コンダクタンスまたは電流値(局所最大抵抗値)として観察される、サセプタの可逆的相転移の終了点に対応する。コントローラ330は、別の転換点における電源パラメータ値を、再測定された第一の較正値として記録する。較正プロセスに関して上述したように、第一の較正値および第二の較正値を測定するプロセスは、較正プロセスのさらなる繰り返しそれぞれの間に少なくとも一回繰り返されてもよい。
【0082】
図7は、サセプタ160の加熱プロファイルを示す、時間に対するコンダクタンスのグラフである。グラフは、加熱の二つの連続段階、上述の予熱プロセス710Aおよび較正プロセス710Bを含む第一の加熱段階710、およびエアロゾルを生成するエアロゾル発生装置200のユーザー操作に対応する第二の加熱段階720を示す。上述のように、第一の加熱段階710の間、コントローラ330は較正モードで動作する。較正が完了すると、コントローラは加熱モードに入り、第二の加熱段階720の間、定期的に再較正モードに切り替わり得る。図7は実寸に比例して示されていないことが理解されるべきである。具体的には、第一の加熱段階710は、第二の加熱段階720より短い持続時間を有する。例えば、第一の加熱段階710は、5秒~30秒、好ましくは10~20秒の持続時間を有してもよい。第二の加熱段階720は、140~340秒の持続時間を有してもよい。
【0083】
さらに、図7は、時間に対するコンダクタンスのグラフとして示されているが、コントローラ330は、上述の通り、測定された抵抗または電流に基づいて、第一の加熱段階710および第二の加熱段階720の間のサセプタ160の加熱を制御するように構成され得ることが理解されるべきである。実際に、第一の加熱段階710および第二の加熱段階720の間のサセプタの加熱を制御する技術は、判定されたコンダクタンス値または判定されたサセプタに関連付けられた抵抗値に基づいて上述されてきたが、上述の技術は、DC/ACコンバータ340の入力において測定された電流の値に基づいて実施され得ることが理解されるべきである。
【0084】
図7から分かるように、第二の加熱段階720は、サセプタ160の第一の動作温度からサセプタ160の第二の動作温度までの複数の温度ステップに対応する、複数のコンダクタンスステップを含む。サセプタの第一の動作温度は、エアロゾル形成基体110がエアロゾルを形成し、その結果、各温度ステップの間にエアロゾルが形成される温度である。サセプタの第一の動作温度は、エアロゾル形成基体が、ユーザーが吸入したときに満足のいく経験を得るのに十分な体積および量でエアロゾルを形成する最低温度であることが好ましい。サセプタの第二の動作温度は、ユーザーがエアロゾルを吸入するためにエアロゾル形成基体を加熱することが望ましい最高温度の温度である。
【0085】
サセプタ160の第一の動作温度は、第一の較正値(図6に示す電流プロットの谷)に対応する、サセプタ160の第一の較正温度以上である。第一の動作温度は、摂氏150度~摂氏330度であってもよい。サセプタ160の第二の動作温度は、第二のサセプタ材料のキュリー温度における第二の較正値(図6の電流プロットの丘)に対応する、サセプタ160の第二の較正温度以下である。第二の動作温度は、摂氏200度~摂氏400度であってもよい。第一の動作温度と第二の動作温度の差は、少なくとも摂氏50度である。
【0086】
図7に示した温度ステップの数は例示的であり、第二の加熱段階720は、少なくとも三つの連続的な温度ステップ、好ましくは二つから十四の温度ステップ、最も好ましくは三つから八つの温度ステップを含むことが理解されるべきである。各温度ステップは、所定の持続時間を有してもよい。第一の温度ステップの持続時間は、後続する温度ステップの持続時間より長いことが好ましい。各温度ステップの持続時間は、好ましくは10秒よりも長く、好ましくは30秒~200秒、より好ましくは40秒~160秒である。各温度ステップの持続時間は、所定の数のユーザー吸煙に対応してもよい。好ましくは、第一の温度ステップは、四つのユーザー吸煙に対応し、各後続する温度ステップは、一つのユーザー吸煙に対応する。
【0087】
各温度ステップの持続時間について、サセプタ160の温度は、それぞれの温度ステップに対応する目標動作温度に維持される。したがって、各温度ステップの持続時間中、コントローラ330は、測定された電源パラメータがそれぞれの温度ステップの目標動作温度に対応する目標値で維持されるように、加熱配設320への電力の提供を制御し、目標値は、上述のように、第一の較正値および第二の較正値を参照して判定される。
【0088】
一例として、第二の加熱段階720は、次の五つの温度ステップ、160秒の持続時間およびGTarget=GLower+(0.09×ΔG)の目標コンダクタンス値を有する第一の温度ステップ720a、40秒の持続時間およびGTarget=GLower+(0.25×ΔG)の目標コンダクタンス値を有する第二の温度ステップ720b、40秒の持続時間およびGTarget=GLower+(0.4×ΔG)の目標コンダクタンス値を有する第三の温度ステップ720c、40秒の持続時間およびGTarget=GLower+(0.56×ΔG)の目標コンダクタンス値を有する第四の温度ステップ720d、ならびに、85秒の持続時間およびGTarget=GLower+(0.75×ΔG)の目標コンダクタンス値を有する第五の温度ステップ720eを含んでもよい。これらの温度ステップは、摂氏330度、摂氏340度、摂氏345度、摂氏355度、および摂氏380度の温度に対応し得る。
【0089】
したがって、エアロゾルを発生させるためのサセプタ160の動作温度の制御は、較正プロセス中に測定された第一の較正値(第一の較正温度に対応する)および第二の較正値(第二の較正温度に対応する)に依存する。しかしながら、第二の加熱段階720の持続時間にわたるサセプタの見かけのコンダクタンスのドリフトは、同じサセプタ温度に対して、見かけのコンダクタンスの値が第二の加熱段階720の持続時間にわたって減少することを意味する。したがって、サセプタ温度を正確に制御することができるように、ならびにエアロゾル形成基体110の過熱を防止するために、コントローラ330は、第二の加熱段階720中に較正プロセスの少なくとも一部を繰り返すために、定期的に再較正モードに入るようにプログラムされる。例えば、較正プロセスの少なくとも一部は、15秒~2分ごとに繰り返される。較正プロセスの少なくとも一部は、30秒ごとに繰り返されることが好ましい。これは、温度ステップの各々の間の再較正を含む、第二の加熱段階720をより詳細に示す図8に示される。同じく、図8は例示目的であり、実寸に比例して描かれていない。上述のように、少なくとも第二の較正値は、図8に示す較正プロセスのさらなる繰り返し中に再測定される。随意に、第一の較正値は、較正プロセスのさらなる繰り返し中に再測定される。各温度ステップに対応する目標電源パラメータ値は、コントローラ330のメモリに記憶され、較正プロセスの繰り返しそれぞれの後に更新されてもよい。コントローラ330は、再測定された較正値のうちの少なくとも一つに基づいて、言い換えれば、少なくとも再測定された第二の較正値に基づいて、それぞれの温度ステップに対する目標電源パラメータ値を調整してもよい。追加的に、または別の方法として、コントローラ330は、再測定された第一の較正値に基づいて、それぞれの温度ステップに対する目標電源パラメータ値を調整してもよい。追加的に、または別の方法として、コントローラ330は、第一の加熱段階710中に測定された一つ以上の較正値と、第二の加熱段階720中の較正プロセスの少なくとも一つのさらなる繰り返し中に測定された一つ以上の較正値との組み合わせに基づいて、それぞれの温度ステップに対する目標電源パラメータ値を調整してもよい。
【0090】
したがって、上記の実施例では、第一の温度ステップ720aについて、目標コンダクタンスは、少なくとも最初、加熱モードの開始時には、第一の加熱段階710の較正プロセス710Bの間に得られた較正値GLowerおよびΔGに基づく。コントローラ330が30秒ごとに較正プロセスを繰り返すようにプログラムされていると仮定すると、較正プロセスは、第一の温度ステップ中に五回、30秒、60秒、90秒、120秒、および150秒後に繰り返される。較正プロセスは、第二の温度ステップ720b中に一回、180秒後(第二の温度ステップ開始の20秒後)に繰り返される。較正プロセスは、第三の温度ステップ720c中に一回、210秒後(第三の温度ステップ開始の10秒後)、および240秒後の第三の温度ステップ720cの終了時に繰り返される。較正プロセスは、第四の温度ステップ720d中に一回、280秒後(第三の温度ステップ開始の30秒後)に繰り返される。較正プロセスは、第五の温度ステップ720e中に二回、320秒後(第五の温度ステップ開始の20秒後)、および350秒後(第五の温度ステップ開始の50秒後)に繰り返される。較正プロセスのさらなる繰り返しそれぞれの後、コントローラ330は、較正プロセスの直近のさらなる繰り返しから生じる較正値のうちの少なくとも一つに少なくとも部分的に基づいてGTargetを調整する。例えば、各再較正後の目標コンダクタンスは、それぞれの再較正プロセス中に得られた再測定された較正値GLower iおよびΔGiに少なくとも部分的に基づいて、または、較正値GLowerおよびそれぞれの再較正プロセス中に得られた再測定された値ΔGiに基づいて調整され、ここでi=第二の加熱段階720の開始時間+30秒である。
【0091】
第二の加熱段階720の間、ユーザーは、エアロゾル発生装置によって発生したエアロゾルを自分の身体の中に引き出すことになる。言い換えれば、ユーザーは、エアロゾル発生装置200内に部分的に受容されているエアロゾル発生物品のマウスピース140を吸煙する。ユーザーが吸煙すると、冷気がエアロゾル発生装置200内にエアロゾル発生物品100を通して引き出され、それによってサセプタ160が冷却される。したがって、吸煙中に再較正が実施される場合、サセプタ160の一時的な冷却は、較正値間の差を一時的に減少させる(例えば、ΔGの値を減少させる)効果を有する。言い換えれば、図6を再び参照すると、吸煙の持続時間の間、丘における電流の値の一時的な減少、および谷における電流の値の一時的な増加がある。したがって、ユーザー吸煙中に測定された較正値は正確ではない。特に、吸煙中に得られた較正値を使用してサセプタ160の温度を制御する場合、サセプタ160を過熱するリスクがあり、結果として望ましくないエアロゾル成分が放出されることになる。したがって、コントローラ330は、再較正が吸煙と重ならないようにプログラムされる。
【0092】
誘導加熱装置は、手持ち式の誘導加熱装置であってもよい。誘導加熱装置は、誘導加熱装置内に含まれる電子構成要素の数またはサイズに関して制限され得る。追加的にまたは別の方法として、誘導加熱装置内に含まれる構成要素は、処理電力またはメモリに関して制限され得る。
【0093】
誘導加熱装置または誘導加熱装置に関連付けられたコントローラは、コンダクタンス値を得て、これらのコンダクタンス値を処理して誘導加熱装置を較正するように構成されてもよい。コンダクタンス値とサセプタの温度との間の関係は、少なくとも一つの時点について既知であってもよい。例えば、コンダクタンス値の較正曲線のプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに対する温度が既知であり得る。したがって、較正された誘導加熱装置は、サセプタのキュリー温度を超えることを回避することができる。キュリー温度は、サセプタがその永久的磁性を失う温度であり得る。
【0094】
較正は、S曲線と称され得る較正曲線の谷点、および較正曲線の丘点およびプラトー特性のうちの少なくとも一つを判定することを含み得る。較正曲線は、最小値、変曲点、ならびに最大値およびプラトー特性のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0095】
較正曲線の第一の特徴点は、その後に変曲点、ならびに較正曲線の最大値およびプラトー特性のうちの少なくとも一つが続く、較正曲線の最小値であってもよい。最大値は、誘導加熱装置に供給される電力が過熱を避けるために漸進的に減少する丘点に対応し得る。本明細書では谷または谷点とも称され得る最小値の検出は、当技術分野で公知の異なる方法によって実施することができる。しかしながら、較正曲線の最大値またはプラトー特性を判定することは困難である場合がある。
【0096】
上述のように、第一および第二の較正値は、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに基づいて判定され得る。
【0097】
したがって、較正曲線の最大値またはプラトー特性を、迅速かつ効率的な方法で確実に判定するための改善された方法を提供することが望ましい。誘導加熱装置の小さな処理能力を考慮すると、数値演算を可能な限り単純に保つことが望ましい。さらに、200ms未満で過熱を検出する、または較正曲線の最大値もしくはプラトー特性を判定することが望ましい。
【0098】
較正は、較正曲線および再較正曲線を含む二つのタイプの曲線のうちの一つを参照し得る。較正曲線は、明確に定義された谷で開始し、その後、較正曲線のプラトー特性に達するまで数秒の持続時間の間漸進的に増加し得る。再較正曲線は、増加前に谷を含まない場合があり、より短く、その持続時間は、較正曲線のプラトー特性に達するまで300msほどの短さであり得る。
【0099】
図8は、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置を較正するためのプラトー特性または丘点を判定する方法800を示す流れ図である。方法は、工程810において、エアロゾル発生システム用の誘導加熱装置の較正値のシーケンスを得ることを含む。較正値のシーケンスは、較正曲線と関連付けられる。上述のように、コントローラ330は、方法800を実施するようにプログラムされてもよい。
【0100】
工程820で、較正値のシーケンスを平滑化して、平滑化された較正値のシーケンスを得る。較正曲線Cは、標準偏差σの(半)ガウスカーネルGでそれを畳み込んでノイズ除去することによって平滑化され得る。
【0101】
工程830で、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値が判定される。第一の微分値は、以下の畳み込みの特性を使用して判定され得る。
【数1】
式中、gは、標準偏差2・σの(対称)ガウスカーネルである。σは、中央ガウス密度の標準偏差を示し得る。*は、二つの関数または離散系列の畳み込み積を示し得る。得られた第一の微分値はZ(t)で示される。畳み込みの結合を使用して、第一の微分値は、以下により判定される:
【数2】
【0102】
平滑化された較正のシーケンスの第一の微分値は、ミリ秒ごとに判定されてもよい。平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値は、以下のように判定され得る:
平滑化された微分値の判定:
【数3】
【0103】
工程840で、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値が推定される。変曲点およびプラトー特性を含む較正曲線の形状は、Zが堅牢に検出することができる最大値を有することを保証する。Z(t)の最大値は、時間tmaxにおけるものであり、Z(tmax)がnmax個の以前のステップの平均を下回る時間を判定することによって推定される。nmaxは、最大値を堅牢に検出するために使用される時間ステップの数を示し得る。
【0104】
工程850で、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つが、推定された第一の微分値の最大値に関連付けられた第一の閾値に基づいて判定される。例えば、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つの検索により、最大値が再びp1・Z(tmax)(tp1における)を下回る後にZ(t)の減少を一回開始し得る。p1は、Z(t)がプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つの検索を開始しなければならないZ(tmax)の分率を画定し得る。例えば、p1は、較正曲線については0.1、再較正曲線については0.2であり得る。プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つは、以下のように判定され得る:
Z(t)の最大値の検出およびプラトー検出の開始時間:
【数4】
【0105】
誘導加熱装置の加熱は、誘導加熱装置がプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに関連付けられた温度を超えて加熱しないように、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定することに応答して停止されてもよい。第一の停止基準は、時間tstopで達成成され得、ここでZ(tstop<=pstop 1・Z(tmax)である。pstop1は、Z(t)が第一の停止基準となるZ(tmax)の分率を画定し得る。
【0106】
工程860で、平滑化された較正値のシーケンス第一の微分値が、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後に再増加するときに、誘導加熱装置による加熱は停止されてもよい。例えば、第二の停止基準は、堅牢な基準MAnstop2(Z)(t)>MA(t-ta)・1e 3(Z)(t)を使用してnstop2個の連続的なステップの80%が再増加しているかどうかをチェックすることによって、Z(t)の再増加パターンがtp1/2後に検出されるときに達成され得、式中、MAn(x)は、xに対するn項の移動平均(折り畳み)である。MEn(x)は、xに対するn項の移動中央値である。nstop2は、第二の停止基準を適用するための平滑化カーネルサイズを画定し得る。
【0107】
誘導加熱装置による加熱の停止の判定は、以下のように実施され得る:
停止要件:
【数5】
【0108】
工程810~860は、定期的に繰り返されてもよい。例えば、工程810~860は、10msごとに繰り返されてもよい。
【0109】
工程870で、誘導加熱装置は、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って動作する。判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに従って誘導加熱装置を動作させることは、判定されたプラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つに基づいて、エアロゾル発生システムに関連付けられた温度を特定の温度を下回るよう維持することを含み得る。
【0110】
較正曲線は、異なる形状および/または勾配を有してもよい。例えば、較正曲線の勾配は、加熱される基体の湿度に依存し得る。したがって、異なる較正曲線に対する較正は、異なる時間にわたって続き得、これは、較正曲線の特徴点の検出に必要な平滑化のレベルに影響を与え得る。再較正は、較正より短い場合がある。再較正曲線は、較正曲線と比較して急な勾配を有し得る。例えば、再較正は、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つが判定されるまで300msで実施されてもよい。
【0111】
こうした曲線の持続時間の予測は、時間微分値を入力として使用する機械学習によって行うことができる。
【0112】
微分値(またはその近似値)は、学習特徴として機能してもよく、曲線を平滑化するためにMA10を使用して、最初の38msのコンダクタンスから直接計算されてもよい。特徴は、ti>tvally+10-2+2について、以下のように計算され得る。
【数6】
【0113】
方法800は、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定するために使用される少なくとも一つのパラメータをオートスケールし得る。例えば、工程802で、較正曲線のタイプは、較正曲線を分類することによって判定され得る。較正曲線は、較正曲線の勾配に基づいて分類されてもよい。タイプは、再較正曲線および較正曲線のうちの一つ、ならびに再較正曲線および較正曲線のうちの一つの勾配と関連付けられてもよい。較正曲線のタイプは、推定された平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値に関連付けられた第二の閾値に基づいて判定されてもよい。
【0114】
工程804で、較正のための少なくとも一つのパラメータが、判定された較正曲線のタイプに基づいて選択され得る。少なくとも一つのパラメータは、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定する工程のための第一の閾値を特定する、第一のパラメータ、較正値のシーケンスの平滑化を特定する、第二のパラメータ、第一の微分値の最大値を推定する工程で使用される平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の連続値の数を特定する、第三のパラメータ、プラトー特性および丘点値のうちの少なくとも一つを判定する工程で使用される平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の連続値の数を特定する、第四のパラメータ、および、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の後の、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の再増加を判定する工程で使用される平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の値の数を特定する、第五のパラメータ、のうちの少なくとも一つを含み得る。第二の閾値は、平滑化された較正値のシーケンスの第一の微分値の最大値の分率を画定し得る。
【0115】
再較正曲線は、第一の微分値の最大値の近似時間t=tmaxに関連付けられた閾値に基づいて、「short-R」または「long-R」として分類されてもよい。図9Aは、試験再較正曲線で訓練され得る分類ツリーを示す。分類ツリーは、深さ1のツリーである。
【0116】
較正曲線は、第一の微分値の最大値の近似時間t=tmaxに関連付けられた閾値に基づいて、「short-C」、「medium-C」、または「long‐C」に分類され得る。図9Bは、試験較正曲線で訓練され得る分類ツリーを示す。分類ツリーは、深さ2のツリーであってもよい。
【0117】
別の方法として、再較正曲線および較正曲線は、較正曲線の勾配を示す閾値に基づいて分類されてもよい。例えば、谷点後の特定の時間における較正曲線の平均値を、閾値と比較してもよい。
【0118】
予測カテゴリーに基づいて、曲線が較正曲線であるかどうかを知ることにより、予測カテゴリーを使用して、予め定義されたパラメータの組を選択してもよい。計算時間を低減するために、Z(tm)は2msごとに計算されてもよく(m=1、3、5、7、...、2n-1、...)、
【数7】
は、偶数ステップごとに判定されてもよい。較正のためのパラメータは、以下のように判定され得る:
【数8-1】
【数8-2】
【0119】
実験では、停止時間でのコンダクタンスと予想される最大コンダクタンスとの間の相対差および絶対差を計算した。コンダクタンスの最大値に対する検出された最大値との相対差を、c=valleyが存在する場合には較正曲線に対して
【数9】
または谷が存在しない場合には
【数10】
としてδs(loss)を計算した。
【0120】
再較正曲線1010の例を図10に示す。図10はまた、判定された丘点値1020および第二の停止基準を満たす点1030を示す。
【0121】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的において、別途示されていない限り、量(amounts)、量(quantities)、割合などを表すすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。また、全ての範囲は、開示された最大点及び最小点を含み、かつその中の任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合もあり、列挙されていない場合もある。この文脈内で、数字Aは、数字Aが修正する特性の測定値に対する一般的な標準誤差内にある数値を含むと考えられてもよい。数字Aは、添付の特許請求の範囲で使用される通りの一部の場合において、Aが逸脱する量が特許請求する本発明の基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさないという条件で、上記に列挙された割合だけ逸脱してもよい。また、全ての範囲は、開示された最大点及び最小点を含み、かつその中の任意の中間範囲を含み、これらは本明細書に具体的に列挙されている場合もあり、列挙されていない場合もある。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】