(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】BKウイルスの治療のための金属プロトポルフィリン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/555 20060101AFI20240705BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/409 20060101ALI20240705BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/555
A61P31/20
A61K31/409
A61K33/26
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501618
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022036566
(87)【国際公開番号】W WO2023287665
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520457096
【氏名又は名称】レニバス・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,ドナルド・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ギエム,アルバロ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ブピンダー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ステイシー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB04
4C086HA06
4C086HA11
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
BKウイルスと診断された患者、BKウイルスに感染している若しくは感染している疑いのある腎臓を受け入れている患者、又は移植手術の前、間及び/若しくは後の移植された腎臓における、BKウイルスの不活性化が、記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BKウイルスと診断されている患者を治療する方法であって、前記BKウイルスの影響を低減させるか、又は排除するのに有効な量の金属プロトポルフィリンを投与する工程を含む方法。
【請求項2】
金属プロトポルフィリンがスズプロトポルフィリン(SnPP)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が腎移植を受けたことがある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属プロトポルフィリンが、0.06~1.125mg/kg/日の範囲の用量速度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属プロトポルフィリンが、5~90mgの範囲の1日用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
腎移植手術を受ける患者を治療する方法であって、前記腎移植手術の前に、BKウイルスの影響を低減させるか、又は排除するのに有効な量の第1の金属プロトポルフィリン及び鉄源を投与する工程と、前記移植手術の後に、BKウイルスの影響を低減させるか、又は排除するのに有効な量の第2の金属プロトポルフィリンを投与する工程とを含む、方法。
【請求項7】
第1の金属プロトポルフィリン及び第2の金属プロトポルフィリンがスズプロトポルフィリン(SnPP)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ノンエンベロープウイルスがBKウイルスである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
金属プロトポルフィリンが、0.06~1.125mg/kg/日の範囲の用量速度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
金属プロトポルフィリンが、5~90mgの範囲の1日用量で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
金属プロトポルフィリンを含む腎臓保存溶液。
【請求項12】
少なくとも1つの非透過性物質並びにナトリウム(Na
+)及びカリウム(K
+)電解質をさらに含む、請求項11に記載の腎臓保存溶液。
【請求項13】
非透過性物質が、グルコース、ラクトビオネート、マンニトール、ラフィノース又はこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の腎臓保存溶液。
【請求項14】
1つ以上の、コロイド、さらなる電解質、抗酸化剤、栄養素、添加物又はこれらの組み合わせをさらに含む、請求項12に記載の腎臓保存溶液。
【請求項15】
腎臓保存溶液が、少なくとも1つのコロイドを含み、前記コロイドは、ヒドロキシメチルデンプン若しくはPEG-35又はこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の腎臓保存溶液。
【請求項16】
腎臓保存溶液が、少なくとも1つのさらなる電解質を含み、前記さらなる電解質は、カルシウム(Ca
2+)、塩素(Cl
-)、サルフェート(SO
4
2-)、ホスフェート(PO
4
3-)、バイカーボネート(HCO
3
-)、シトレート又はこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の腎臓保存溶液。
【請求項17】
腎臓保存溶液が、少なくとも1つの抗酸化剤を含み、前記抗酸化剤は、アロプリノール若しくはグルタチオン又はこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の腎臓保存溶液。
【請求項18】
腎臓保存溶液が、少なくとも1つの栄養素を含み、前記栄養素は、トリプトファン、アデノシン、アデニン、グルタミン酸、ヒスチジン、ケトグルタレート又はこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の腎臓保存溶液。
【請求項19】
腎臓保存溶液が、少なくとも1つの添加物を含み、前記添加物は、インスリン、ペニシリン、デキサメタゾン又はこれらの組み合わせから選択される、請求項14に記載の腎臓保存溶液。
【請求項20】
腎臓保存溶液のモル浸透圧濃度が300~500mOsm/Lの範囲であり、pHが7.0~7.5の範囲である、請求項11に記載の腎臓保存溶液。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリオーマウイルスは、約5000塩基対の環状ゲノムを有するノンエンベロープ二本鎖DNAウイルスである。ゲノムは、約40~50ナノメートルの直径を有するウイルスキャプシド中にパッケージングされている。ポリオーマウイルス科のメンバーであるBKウイルスは、腎移植を受けている患者における腎症及びその後の同種移植片機能損失の重大な危険因子である。現在のところ、BKウイルスによって誘発される腎症に対する承認された治療は存在しない。
【0002】
コバルト及びスズプロトポルフィリンは、エンベロープウイルスに対してインビトロで広範な抗ウイルス活性を示すことが示されているが、エンベロープを持たないポリオウイルスに対しては活性を示さなかった。Nerisら、“Co-protoporphyrin IX and Sn-protoporphyrin IX inactivate Zika,Chikungunya and other arboviruses by targeting the viral envelope,” Scientific Reports,8:9805(2018),DOI:10.1038/s41598-018-27855-7を参照されたい。Nerisの論文は、ノンエンベロープウイルスを不活性化する際のポルフィリンの[非]効率性は、ポルフィリンがウイルスのエンベロープを標的とするという考えをさらに支持する」と結論づけた。
【0003】
他の研究は、エンベロープウイルスに対する金属プロトポルフィリンの活性を示した。Wen WHら、2009 J Med Chem.(「データは、ザナミビルにコンジュゲートされたプロトポルフィリンとの相加効果を示す;抗ウイルス活性は、プロトポルフィリンの一重項酸素反応性を介したウイルスのノイラミニダーゼの阻害及びウイルスの物理的不活性化によるものであり得る。」);Luら、2021 Bioorg Chem.(「プロトポルフィリンは、ラッサウイルス(LASV)、マチュポウイルス(MACV)、SARS-CoV-2及びA型インフルエンザ株の様々なサブタイプを含む、エンベロープを有する病原性ウイルスの一団に対して広い活性を示す。IC50値は0.91±0.25μM~1.88±0.34μMの範囲である」;「A型インフルエンザ/プエルトリコ/8/24(H1N1)では、プロトポルフィリンIXは、エンベロープを有するビリオンの疎水性脂質と生物物理学的に相互作用することを通じてウイルス侵入の初期段階で感染を阻害し、それによってエンベロープウイルスの宿主細胞内への侵入を阻害する」)。Staudinger Rら、1996 Proc Assoc Am Physicians(「HIV-1逆転写酵素に結合し、HIV-1のcDNA合成を妨げる;メソポルフィリンは効果を有さなかったので、プロトポルフィリン構造に部分的に依存する。」)。Vzorov ANら、2002 Antimicrob Agents Chemother.(「HIV-1 gp120のCD4への結合を阻害し、Envタンパク質が標的細胞上のその受容体への細胞融合を含む能力を阻害することが示された他のプロトポルフィリンを用いて、MOAを評価した。」);Guo Hら、2011 Antimicrob Agents Chemother.(「使用されたアルキル化ポルフィリン(ヘミンを含む);エンベロープポリペプチドの分解なしに、エンベロープに包まれた粒子からのHBVエンベロープタンパク質の破壊及び解離をもたらす」);Huo Wら、2010 Gastroenterology(「ZnPPを用いて評価された抗ウイルス活性;NS5Aタンパク質のポリユビキチン化及びプロテアソーム依存性異化を増強することによってNS5Aタンパク質を下方制御する。」)’Assuncao-Miranda Iら、2016 J Appl Microbiol(黄熱病及びジカウイルスに対して活性を示す)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nerisら、“Co-protoporphyrin IX and Sn-protoporphyrin IX inactivate Zika,Chikungunya and other arboviruses by targeting the viral envelope,” Scientific Reports,8:9805(2018),DOI:10.1038/s41598-018-27855-7
【非特許文献2】Wen WHら、2009 J Med Chem.
【非特許文献3】Luら、2021 Bioorg Chem.
【非特許文献4】Staudinger Rら、1996 Proc Assoc Am Physicians
【非特許文献5】Vzorov ANら、2002 Antimicrob Agents Chemother
【非特許文献6】Guo Hら、2011 Antimicrob Agents Chemother.
【非特許文献7】Huo Wら、2010 Gastroenterology
【非特許文献8】Assuncao-Miranda Iら、2016 J Appl Microbiol
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腎臓治療及び移植手術に適合する、BKウイルスの不活性化のための有効な作用物質を見出すことが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明は、BKウイルスと診断されている患者を治療する方法であって、BKウイルスの影響を低減させるか、又は排除するのに有効な量の金属プロトポルフィリンを投与する工程を含む方法を含む。金属プロトポルフィリンは、スズプロトポルフィリン(SnPP)であり得る。患者は腎移植を受けたことがあり得る。金属プロトポルフィリンは、0.06~1.125mg/kg/日の範囲の用量速度で投与され得る。用量は5~90mgの範囲であり得、90mgの用量が好ましい。
【0007】
別の態様において、本発明は、腎移植手術を受ける患者を治療する方法であって、腎移植手術の前に、BKウイルスの影響を低減させるか、又は排除するのに有効な量の第1の金属プロトポルフィリン及び鉄源を投与する工程と、移植手術の後に、BKウイルスの影響を低減させるか、又は排除するのに有効な量の第2の金属プロトポルフィリンを投与する工程とを含む、方法を含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、金属プロトポルフィリンを含む腎臓保存溶液を含む。腎臓保存溶液は、少なくとも1つの非透過性物質並びにナトリウム(Na+)及びカリウム(K+)電解質も含み得る。非透過性物質は、グルコース、ラクトビオネート、マンニトール、ラフィノース又はこれらの組み合わせであり得る。腎臓保存溶液は、1つ以上の、コロイド、さらなる電解質、抗酸化剤、栄養素、添加物又はこれらの組み合わせも含み得る。コロイドは、ヒドロキシメチルデンプン若しくはPEG-35又はこれらの組み合わせであり得る。さらなる電解質は、カルシウム(Ca2+)、塩素(Cl-)、サルフェート(SO4
2-)、ホスフェート(PO4
3-)、バイカーボネート(HCO3
-)、シトレート又はこれらの組み合わせの1つ以上を含み得る。抗酸化剤は、アロプリノール若しくはグルタチオン又はこれらの組み合わせを含み得る。栄養素は、トリプトファン、アデノシン、アデニン、グルタミン酸、ヒスチジン、ケトグルタレート又はこれらの組み合わせであり得る。添加物は、インスリン、ペニシリン、デキサメタゾン又はこれらの組み合わせを含み得る。腎臓保存溶液は、好ましくは、300~500mOsm/Lの範囲のモル浸透圧濃度及び7.0~7.5の範囲のpHを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、治療的処置のための、BKウイルス感染に対するSnPPのインビトロ有効性を実証するデータを示す。
【
図2】
図2は、予防処置のための、BKウイルス感染に対するSnPPのインビトロ有効性を実証するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、金属プロトポルフィリン、特に第一スズプロトポルフィリン(SnPP)が、特定のポリオーマウイルスであるBKウイルスを不活性化する予想外の能力を示したという本発明者らの発見に関する。これらのデータは、SnPPが、BKウイルスと診断された患者におけるBKウイルス感染の治療に関連して使用され得ること、及び腎移植に関連したSnPPの使用を実証する。
【0011】
第一スズプロトポルフィリン(SnPP)は、傷害前に与えられると、動物における急性腎損傷(AKI)に対して保護的であることが知られている。2017年12月19日に付与された、「Compositions,kits,and methods to induce acquired cytoresistance using stress protein inducers」と題する、Zagerらの米国特許第9,844,563号を参照されたい。本発明者らは、SnPP及び鉄スクロースが十分に耐容されることを実証するSnPP及び鉄スクロースの第I相試験を実施した。
【0012】
この文献は、金属プロトポルフィリンが広い抗ウイルス活性を有することを示唆したが、ポリオウイルスでの否定的な結果に基づいて、金属プロトポルフィリン活性はエンベロープウイルスに限定されると考えられた。本発明者らは、予想外にも、SnPPが、BKウイルスを含むある種のノンエンベロープウイルスに対して広範な不活性化活性を有し、JCウイルスに対して中程度の不活性化活性を有することを発見した。この活性は、アデノウイルス(Adv)及びヒトパピローマウイルス(HPV)に関しては見出されなかった。
【0013】
本発明者らは、特にBKウイルスを含む様々な病原体に対する抗ウイルス活性を決定するためにアッセイを使用した。1)標準的なqPCRベースの抗ウイルスアッセイ-感染の時点でのSnPPによる処理及び2)ウイルス中和-感染1時間の、BKウイルスとのSnPPのプレインキュベーションという、2つの条件を調査した。SnPPを100μMまでの濃度で試験した。ヒト包皮線維芽細胞(HFF)細胞を宿主細胞として使用した。リアルタイムqPCRによってウイルス活性を評価し、CellTiter-Gloによって細胞の生存率を決定した。
【実施例】
【0014】
抗ウイルス材料及び方法
細胞培養。アラバマ大学のBirmingham組織調達施設から、そのIRBの承認を得て、ヒト包皮組織から調製されたヒト包皮線維芽細胞(HFF)細胞を入手した。10%ウシ胎児血清(FBS)(Hyclone,Inc.Logan UT)、L-グルタミン、ファンギゾン及びバンコマイシンが補充されたアール塩を含む最小必須培地(MEM)からなるClinical Medium中で、組織を4℃で4時間インキュベートした。次いで、組織をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に入れ、細かく刻み、すすいで赤血球を除去し、トリプシン/EDTA溶液に再懸濁する。
【0015】
組織懸濁液を37℃でインキュベートし、穏やかに撹拌して細胞を分散させ、遠心分離によって細胞を収集する。細胞を4mlのClinical Mediumに再懸濁し、25cm2フラスコに入れ、加湿されたCO2インキュベータ中で24時間、37℃でインキュベートする。次いで、培地を新鮮なClinical Mediumと交換し、集密状態の単層が形成されるまで細胞増殖を毎日監視する。次いで、10%FBS、L-グルタミン、ペニシリン及びゲンタマイシンが補充されたアール塩を含むMEMの標準増殖培地中で、連続継代によってHFF細胞を拡大増殖させる。細胞は日常的に継代され、継代10以下でアッセイに使用される。Hartlineら、“A standardized approach to the evaluation of antivirals against DNA viruses:Orthopox-,adeno-,and herpesviruses,” Antiviral Res.2018,Nov;159:104-112.doi:10.1016/j.antiviral.2018.09.015.Epub 2018 Oct 1.PMID:30287226;Prichardら、“Activity and mechanism of action of N-methanocarbathymidine against herpesvirus and orthopoxvirus infections,” Antimicrob Agents Chemother,2006;50(4):1336-41.PubMed PMID:16569849;PubMed Central PMCID:PMC1426929を参照されたい。ATCCからCOS7線維芽細胞を取得し、10%FBS、L-グルタミン、ペニシリン及びゲンタマイシンが補充されたアール塩を含むMEMの標準増殖培地中で維持した。
【0016】
BKウイルス及びJCウイルスに対するアッセイ。以前に報告された方法によって、BKV及びJCVに対する一次アッセイを行った。Keithら、上記を参照されたい。BKVについては、細胞を含有するプレート中で化合物希釈液を調製し、続いて感染させ、7日間インキュベートした。全DNAを調製し、プライマー5’-AGT GGA TGG GCA GCC TAT GTA-3’、5’-TCA TAT CTG GGT CCC CTG GA-3’及びプローブ5’-6-FAM AGG TAG AAG AGG TTA GGG TGT TTG ATG GCA CAG TAMRA-3’を使用してリアルタイムPCRによってゲノムコピー数を定量した。Leungら、“Quantification of polyoma BK viruria in hemorrhagic cystitis complicating bone marrow transplantation,” Blood.2001;98(6):1971-8,PubMed PMID:11535537を参照されたい。プラスミドpMP526は、定量目的のためのDNA標準としての役割を果たす。吸着及び侵入を含む複製の初期段階を阻害する化合物を同定するために感染の1時間後に化合物が添加される確立された検査プロトコルに従って、このアッセイにおいて陽性であった化合物を、96ウェルプレート中での同様のアッセイにおいて確認した。上記の方法によって、ゲノムコピー数を決定した。
【0017】
JCウイルスに対する化合物の一次評価も、BKウイルス一次アッセイのための方法と同様の方法によって行ったが、COS7細胞中で行われ、COS7細胞においてJCVの1~4株を使用した。プラスミドpMP508とともにプライマー5’-CTG GTC ATG TGG ATG CTG TCA-3’及び5’-GCC AGC AGG CTG TTG ATA CTG-3’及びプローブ5’-6-FAM-CCC TTT GTT TGG CTG CT-TAMRA-3を使用してウイルスDNAを定量して、絶対的定量化のための標準曲線を得た。JCVに対する二次アッセイも、ウイルスの吸着又は侵入を阻害した化合物を同定するためのBKウイルスに対する方法と同様の方法によってCOS7細胞において行った。
【0018】
EC50-ウイルスの複製を50%低下させる化合物濃度
EC90-ウイルスの複製を90%低下させる化合物濃度
CC50-細胞生存率を50%低下させる化合物濃度
SI50-CC50/EC50
SI90-CC50/EC90
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
SnPPは、両処理条件下でBKウイルスに対して中程度の抗ウイルス活性を示した。50%有効濃度(EC50)は、独立して実行される2回の標準的なqPCRアッセイでは平均5.5μMであり、中和アッセイでは平均5.4μMであった。これらのアッセイにおけるSnPPのEC50は、第1相試験で試験されたSnPPの最高用量よりも11倍低く、十分に耐容されると考えられる。インビトロ研究における50%細胞毒性濃度(CC50)は平均89.2μMであり、SnPPがその有効濃度より16.5倍高い濃度で宿主細胞生存率に悪影響を及ぼさなかったことを示している。
【0024】
インビトロでのBKウイルスに対するSnPPの抗ウイルス活性及び第1相ヒト研究におけるSnPPの安全性プロファイルに鑑みると、SnPPの有効性を評価する臨床研究は、BKウイルスによって誘発される腎症を発症するリスクがある患者において正当とされる。
【0025】
本発明者らは、SnPP活性がAdv、HPV、BK及びJCを含むいくつかのポリオーマウイルスに対して均一であるかどうかを決定することを試みた。一般に、10を超えるSI50は、潜在的に有効であると考えられる必要がある。最も著しい活性はBKウイルスで観察され、続いて中程度の活性を有するJCウイルスで観察された。Adv及びHPVでは、最小の活性が観察されるか、又は活性は全く観察されなかった。以下のデータは、SnPPがいくつかのウイルスを不活性化する能力を要約している。
【0026】
【0027】
これらのデータは、SnPPを含む金属プロトポルフィリンがBKウイルスを不活性化することができることを実証する。一態様において、SnPPは、BKウイルス感染と診断されている患者を治療するための単独治療として使用され得る。これに関して、患者は、BKウイルスの存在を示す陽性PCR試験を受けた後に治療され得る。治療は、BKウイルスの不活性化のために、SnPPなどの金属プロトポルフィリンの有効量を患者に投与することを含み得る。治療は、5~120mg、より好ましくは50~100mg、最も好ましくは80~95mgの範囲の用量でのSnPPの注射を含み得る。例えば、90mgの用量。4。金属プロトポルフィリンは、0.06~1.125mg/kg/日の範囲の用量速度で投与され得る。投薬は、PCR試験が患者におけるBKウイルスの不活性化を示すまで、毎日、毎週又は毎月継続され得る。
【0028】
別の例では、腎移植を受けると予想される患者は、臓器を受ける前、間及び/又は後に、SnPPなどの金属プロトポルフィリンの用量を受け得る。この場合には、患者は、移植された臓器がBKウイルスに感染していることが知られている場合に、金属プロトポルフィリンの用量を受け得る。その他、患者は、移植される臓器がBKウイルスに感染しているかどうかが不明である場合に、予防的に処置され得る。
【0029】
ある場合には、本方法は、急性腎損傷に対して保護するために手術の前に患者を治療するための既知の方法と組み合わされ得る。それらの場合、患者は、手術前にSnPPと鉄スクロースの組み合わせを投与され得る。患者がBKウイルス感染と診断された場合には、患者は、その後、手術後に(補充鉄源なしで)金属プロトポルフィリンでの治療を受け得る。
【0030】
一態様において、移植のために取り出された臓器は、移植されるべき臓器内に存在し得るBKウイルスを不活性化するために金属プロトポルフィリンを含む輸送液又は冷保存液中に保存される。Euro-Collins Solution(EC);Marshall’s溶液としても知られる高浸透圧溶液(HOC)溶液;ラクトビオネート及びラフィノースを含有するウィスコンシン大学(UW)溶液;ヒスチジン-トリプトファン-ケトグルタレート(HTK)溶液;並びにCelsiorを含むいくつかの冷保存液が当技術分野で公知である。
【0031】
一実施形態において、輸送液は、少なくとも1つの非透過性物質と、少なくともナトリウム(Na+)及びカリウム(K+)を含む電解質と、金属プロトポルフィリンとを含む。金属プロトポルフィリンは、コバルト、亜鉛又はスズプロトポルフィリンから選択され得る。好ましくは、金属ポルフィリンはスズプロトポルフィリン(SnPP)である。非透過性物質は、グルコース、ラクトビオネート、マンニトール、ラフィノース又はこれらの組み合わせの1つ以上から選択され得る。任意に含まれるさらなる成分には、コロイド、さらなる電解質、抗酸化剤、栄養素、添加物又はこれらの組み合わせが含まれる。コロイドには、例えば、ヒドロキシメチルデンプン若しくはPEG-35又はこれらの組み合わせが含まれ得る。さらなる電解質には、カルシウム(Ca2+)、塩素(Cl-)、サルフェート(SO4
2-)、ホスフェート(PO4
3-)、バイカーボネート(HCO3
-)、シトレート又はこれらの組み合わせが含まれ得る。抗酸化剤には、アロプリノール若しくはグルタチオン又はこれらの組み合わせが含まれ得る。栄養素には、トリプトファン、アデノシン、アデニン、グルタミン酸、ヒスチジン、ケトグルタレート又はこれらの組み合わせが含まれ得る。添加物には、インスリン、ペニシリン、デキサメタゾン又はこれらの組み合わせが含まれ得る。輸送液のモル浸透圧濃度は、好ましくは300~500mOsm/Lの範囲であり得、pHは、好ましくは7.0~7.5の範囲であり得る。冷保存溶液は、Chenら、“Preservation Solutions for Kidney Transplantation:History,Advances and Mechanisms,” Cell Transplant.28(12):1472-1489(2019)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0032】
金属プロトポルフィリンを含む輸送液は、輸送液を含有する無菌の密封可能なパウチを含むキット内に提供され得る。臓器の輸送中、臓器は、輸送液への曝露によって存在し得る任意のBKウイルスの不活性化を受けることができる。一態様において、臓器は、BKウイルスを含有することが決定された後に輸送液に晒され得る。この場合には、臓器を受けている患者は、移植手術の前、間又は後に金属プロトポルフィリンを投与され得る。
【0033】
本発明の他の実施形態及び使用は、本明細書に開示されている本明細書の考察及び本発明の実施から当業者には明らかであろう。全ての米国及び外国の特許及び特許出願を含む、本明細書に引用される全ての参考文献は、具体的及び全体的に参照により本明細書に組み入れられる。本明細書及び実施例は例示に過ぎないと考えられ、本発明の真の範囲及び精神は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【国際調査報告】