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特表2024-525716予測細胞ベースのフェッドバッチプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】予測細胞ベースのフェッドバッチプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20240705BHJP
   C12M 1/36 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C12N1/00 B
C12M1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501679
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 US2022036913
(87)【国際公開番号】W WO2023287852
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/221,174
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/221,183
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/221,197
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】プライス,ジェイムス,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】フリッドリー,コリーン
(72)【発明者】
【氏名】サベージ,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC01
4B029DA01
4B029DF05
4B029DG06
4B029GA08
4B029GB10
4B065BC18
4B065CA46
(57)【要約】
本明細書では、細胞数に基づく複合供給栄養素の送達に関する方法およびシステムを示す。本明細書では、栄養供給を制御する方法、供給スケジュールを作成する方法、および栄養供給制御システムを示す。1日あたりの供給容積は、現在の供給日から次の供給日までの、積算生細胞(IVS)の予測される変化に比例し得る。細胞あたりの係数(PCF)は、消費された供給物が供給された供給物にほぼ等しい予備的なフェッドバッチバイオリアクター運転の時間間隔にわたって、細胞あたりの正規化された供給値を決定することによって決定することができる。1日あたりの供給容積は、PCFと、現在の供給日から次の供給日までのIVSの変化との積に等しく設定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行する方法であって、
推定された供給物消費速度(q)に少なくとも部分的に基づき、かつ、現在の供給間隔から将来の供給間隔までの積算生細胞(IVC)数の予測される変化に少なくとも部分的に基づいて、バイオリアクターに供給物の量を供給するステップを含む、方法。
【請求項2】
IVC数の変化を、
現在の供給間隔のIVC数を決定し、
前記現在の供給間隔の生細胞密度および以前の供給間隔の生細胞密度に基づいて増殖速度を推定し、
前記推定された増殖速度に少なくとも部分的に基づいて、次の供給間隔のIVC数を予測し、
IVCの前記変化を、前記次の供給間隔の前記IVC数から前記現在の供給間隔の前記IVC数を引いたものに等しく設定して
予測するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオリアクターに供給物の前記量を供給するステップが、細胞あたりの係数(PCF)に少なくとも部分的に基づき、前記PCFが、前記推定された供給物消費速度(q)に比例する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に経時的に変化する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に経時的に増加しない、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養2日目~3日目にかけて0.002g/細胞×日にほぼ等しく、
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養4日目~6日目にかけて0.00175g/細胞×日にほぼ等しく、
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養7日目~8日目にかけて0.0015g/細胞×日にほぼ等しく、
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養9日目~10日目にかけて0.0012g/細胞×日にほぼ等しく、
前記PCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養11日目~13日目にかけて0.0007g/細胞×日にほぼ等しい、
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記フェッドバッチバイオリアクター運転中の各供給間隔について、それぞれの供給間隔運転中に前記バイオリアクターに添加される代謝産物の量が、それぞれの供給間隔中に前記バイオリアクター内で消費される代謝産物の量にほぼ等しくなるように、前記バイオリアクターに供給物の前記量を供給するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バイオリアクターの容積の約20%~約50%の間が供給物で構成されるように、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を完了させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
供給物の前記量を供給するステップが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシ-L-プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アミノ酸ジおよびトリペプチド、ビタミンB群、炭水化物、脂質、抗酸化物質、増殖因子ならびに微量元素のうちの少なくとも1つを含む複合栄養供給物を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の複数の供給間隔を含む初期段階および第2の複数の供給間隔を含む後続の最終段階において、前記バイオリアクターに供給物の前記量を供給するステップをさらに含み、
供給物の前記量が、前記初期段階の前記第1の複数の供給間隔の各々について、ある供給間隔から後続の供給間隔へと増加し、
供給物の前記量が、前記最終段階の前記第2の複数の供給間隔の各々について、ある供給間隔から後続の供給間隔へと減少する、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオリアクター内の生細胞密度が、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転と同様に、ただし供給戦略については、同一の条件下で実行された容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転で得られた生細胞密度の約3倍~約5倍になるように、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を完了させるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記推定された供給物消費速度(q)およびIVCがそれぞれ、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の小スケール研究に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記推定された供給物消費速度(q)およびIVCがそれぞれ、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の約0.25Lの研究に基づく、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成する方法であって、
一定の時間間隔で供給物を添加する細胞株でフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するステップと、
各一定の時間間隔について、細胞あたりの正規化された供給値を、以下のように:
各一定の時間間隔について、それぞれの時間間隔で供給される供給量を、前の時間間隔からそれぞれの時間間隔までの積算生細胞(IVC)数の変化で割った、間隔ごとの細胞あたりの供給値を計算し、
前記計算された間隔ごとの細胞あたりの供給値のうち、最大の間隔ごとの細胞あたりの供給値を決定し、
各一定の時間間隔について、前記細胞あたりの正規化された供給値を、前記それぞれの時間間隔についての前記間隔ごとの細胞あたりの供給値を前記最大の間隔ごとの細胞あたりの供給値で割った値に等しく設定して
計算するステップと、
各一定の時間間隔について、正規化されたIVC数を、以下のように:
各一定の時間間隔について、前記前の時間間隔の推定されたIVC数および前記前の時間間隔から前記それぞれの時間間隔までの生細胞の変化に少なくとも部分的に基づいて、1日のIVC数を推定し、
前記推定された1日のIVC数から1日の最大IVC数を決定し、
各一定の時間間隔について、前記正規化されたIVC数を前記推定された1日あたりのIVC数を前記1日あたりの最大IVC数で割った値に設定して
計算するステップと、
バランスのとれた供給時間間隔を、前記バランスのとれた供給時間間隔について前記細胞あたりの正規化された供給値が前記正規化されたIVC数にほぼ等しくなるように、前記一定の時間間隔から選択するステップと、
細胞あたりの係数(PCF)を、前記バランスのとれた供給時間間隔の前記間隔ごとの細胞あたりの供給値に等しく設定するステップと、
供給間隔ごとに供給量が決定され、それぞれの供給量が前記PCFに少なくとも部分的に基づき、現在の供給間隔から将来の供給間隔までのIVC数の予測される変化に比例するように前記細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
少なくとも4回のフェッドバッチバイオリアクター運転を、前記一定の時間間隔で供給物を添加する前記細胞株で実行するステップと、
前記少なくとも4回のフェッドバッチバイオリアクター運転のそれぞれの各一定の時間間隔について、前記細胞あたりの正規化された供給値を計算するステップと、
前記フェッドバッチバイオリアクター運転のそれぞれの各一定の時間間隔について、前記正規化されたIVC数を計算するステップと、
各フェッドバッチバイオリアクター運転について、前記バランスのとれた供給時間間隔を選択するステップと、
各フェッドバッチバイオリアクター運転について、前記PCFを、前記それぞれのバランスのとれた供給時間間隔の前記それぞれの間隔ごとの細胞あたりの供給値に等しく設定するステップと、
前記少なくとも4回のフェッドバッチバイオリアクター運転のPCFの平均である平均PCFを決定するステップと、
前記細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを、供給間隔ごとに供給量が決定され、それぞれの供給量が、IVC数の予測される変化を平均PCFに乗じたものに等しくなるように作成するステップと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フェッドバッチ供給スケジュールに従って第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するステップと、
バイオリアクターに添加する供給物の量を、増殖、生産性、および/または必須栄養素の枯渇を損なうことなく最小化するように、前記PCFを調整するステップと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記フェッドバッチ供給スケジュールに従って第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するステップと、
前記PCFに少なくとも部分的に基づき、かつ、前記第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転に少なくとも部分的に基づいて、更新されたPCFを決定するステップと、
第2の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転が、前記第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転と比較して減少した総量の添加される供給物を利用するように、前記更新されたPCFを利用する更新されたフェッドバッチ供給スケジュールに従って前記第2の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するステップと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記フェッドバッチ供給スケジュールに従って前記第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するステップと、
前記PCFに少なくとも部分的に基づき、かつ、前記第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転に少なくとも部分的に基づいて、変更可能なPCFおよび変更可能なフェッドバッチ供給スケジュールを決定するステップと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記変更可能なPCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に経時的に増加しない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記変更可能なPCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養2日目~3日目にかけて0.002g/細胞×日にほぼ等しく、
前記変更可能なPCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養4日目~6日目にかけて0.00175g/細胞×日にほぼ等しく、
前記変更可能なPCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養7日目~8日目にかけて0.0015g/細胞×日にほぼ等しく、
前記変更可能なPCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養9日目~10日目にかけて0.0012g/細胞×日にほぼ等しく、
前記変更可能なPCFが、前記細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養11日目~13日目にかけて0.0007g/細胞×日にほぼ等しい、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールが、スケールを超えて移すことができる供給目標を提供するために、小スケールで作成される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールが、約0.25Lスケールで作成され、
前記細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールが、それぞれ約250リットル(L)および約1,000Lのバイオリアクターを利用するフェッドバッチ生産プロセスに移すことができる、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
生産用リアクター内の生細胞密度を決定するように構成される生細胞密度測定システムと、
前記生細胞密度測定値を受け取るように構成され、前記生細胞密度測定値に少なくとも部分的に基づき、将来の供給時間間隔における生細胞の密度を推定するように構成される将来の生細胞密度予測システムと、
細胞あたりの係数(PCF)値を提供するように構成されるPCFシステムと、
前記将来の供給時間間隔における生細胞の密度に少なくとも部分的に基づき、かつ、前記PCF値に少なくとも部分的に基づいて、前記生産用リアクターに供給する供給物の量を計算するように構成される供給物計算システムと
を含む栄養供給制御システム。
【請求項24】
前記PCFシステムが、
前記バイオリアクター内で消費される代謝産物が、前記バランスのとれた供給時間間隔の間に前記バイオリアクターに供給される代謝産物とほぼ等しくなるバランスのとれた供給時間間隔を決定し、
前記バランスのとれた供給時間間隔の細胞あたりの供給値を決定し、
前記バランスのとれた供給時間間隔の細胞あたりの供給値に少なくとも部分的に基づいて前記PCF値を決定するようにさらに構成される、請求項23に記載の栄養供給制御システム。
【請求項25】
プロセッサと、
前記プロセッサと通信可能であり、前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに前記生産用リアクターに供給する供給物の前記量を計算させる命令を含む非一過性のコンピュータ可読媒体と
をさらに含む、請求項14に記載の栄養供給制御システム。
【請求項26】
プロセッサと、
前記プロセッサと通信可能であり、前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに前記PCV値を決定させる命令を含む非一過性のコンピュータ可読媒体と
をさらに含む、請求項14に記載の栄養供給制御システム。
【請求項27】
前記供給物計算システムが、1つまたは複数のより大スケールのフェッドバッチ生産プロセスのより大きな生産用リアクターに供給する供給物の前記量を調整するようにさらに構成される、請求項23に記載の栄養供給制御システム。
【請求項28】
前記供給物計算システムが、0.25Lスケールのプロセスに基づいて、前記より大きな生産用リアクターに供給する供給物の前記量を調整するようにさらに構成される、請求項27に記載の栄養供給制御システム。
【請求項29】
前記供給物計算システムが、ぞれぞれのより大スケールのフェッドバッチ生産プロセスの間に、250リットル(L)および1,000Lのバイオリアクターに供給する供給物の前記量を調整するようにさらに構成される、請求項23に記載の栄養供給制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月13日に出願された米国仮特許出願第63/221,174号、2021年7月13日に出願された米国仮特許出願第63/221,183号、および2021年7月13日に出願された米国仮特許出願第63/221,197号の利益を主張する。それぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞培養の生産性は、高い細胞密度および生産性を可能にする培養培地管理の最適化に依存している。栄養供給は、フェッドバッチ細胞供給プロセスにおけるプロセス最適化のための重要なパラメータである。細胞密度の高いプロセスは、相当量の栄養素を必要とする可能性があり、1日あたりの必要量は細胞の種類および/または細胞密度によって異なる可能性がある。フェッドバッチプロセスにおける既知の複合栄養供給戦略の1つは、バイオリアクター重量またはバイオリアクター容積の一定百分率に基づいてバイオリアクターに培地を供給することである。細胞培養の生産性を向上させることができる代替的な細胞培養プロセスが望まれる。
【発明の概要】
【0003】
本開示では、所定の細胞株に対する1日あたりの栄養目標要求量を予測するための改善された材料および方法を扱う。開示される技術の一態様は、細胞培養プロセスにおいて栄養供給を制御する方法に関し、具体的には、細胞数に基づく複合供給栄養素の送達に関する。1日あたりの供給容積は、現在の供給日から次の供給日までの、積算生細胞(IVC)の予測される変化に比例し得る。本明細書では、細胞あたりの係数(PCF)を作成した。1日あたりの供給容積は、PCFと、現在の供給日から次の供給日までのIVCの変化との積に等しく設定することができる。PCFは、フェッドバッチプロセス中に経時的に変化するようにさらに改良することができる。
【0004】
開示される技術の一態様は、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行する方法に関する。供給物の量は、推定された供給物消費速度(q)に少なくとも部分的に基づき、かつ、積算生細胞(IVC)数の予測される変化に少なくとも部分的に基づいて、バイオリアクターに供給することができ、予測されるIVC数は、現在の供給間隔から将来の供給間隔までである。
【0005】
IVC数の変化は、以下のように予測することができる:現在の供給間隔のIVC数を決定することができ、前の供給間隔のIVC数を決定することができ、現在の供給間隔の生細胞密度および前の供給間隔の生細胞密度に基づいて増殖速度を推定することができ、次の供給間隔のIVC数は、推定された増殖速度に少なくとも部分的に基づき得、IVCの変化は、次の供給間隔のIVC数から現在の供給間隔のIVC数を引いたものに等しく設定することができる。
【0006】
バイオリアクターへの供給物の量の供給は、細胞あたりの係数(PCF)に少なくとも部分的に基づき得る。PCFは、推定された供給物消費速度(q)に比例し得る。
【0007】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に、PCFを経時的に変化させることができる。一実施形態では、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に経時的に増加しない。一実施形態では、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養2~3日目にかけて0.002g/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養4~6日目にかけて0.00175g/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養7~8日目にかけて0.0015g/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養9~10日目にかけて0.0012g/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースフェッドバッチバイオリアクター運転の培養11~13日目にかけて0.0007g/細胞×日にほぼ等しい。
【0008】
供給物の量は、フェッドバッチバイオリアクター運転中の各供給間隔について、それぞれの供給間隔運転中にバイオリアクターに添加される代謝産物の量が、それぞれの供給間隔中にバイオリアクター内で消費される代謝産物の量にほぼ等しくなるように、バイオリアクターに供給することができる。
【0009】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転は、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の完了時に、バイオリアクターの容積の約20%~約50%の間が供給物で構成されるように完了させることができる。
【0010】
供給物の量を供給するステップは、限定されないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシ-L-プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アミノ酸ジおよびトリペプチド、ビタミンB群、炭水化物、脂質、抗酸化物質、増殖因子ならびに微量元素のうちの少なくとも1つを含む複合栄養供給物を供給することを含むことができる。
【0011】
第1の複数の供給間隔を有する初期段階および第2の複数の供給間隔を有する後続の最終段階において、バイオリアクターに供給物の量を供給することができる。供給物の量は、初期段階の第1の複数の供給間隔の各々について、ある供給間隔から後続の供給間隔へと増加させることができる。供給物の量は、最終段階の第2の複数の供給間隔の各々について、ある供給間隔から後続の供給間隔へと減少させることができる。
【0012】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転は、バイオリアクター内の生細胞密度が、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転と同様に、ただし供給戦略については、同一の条件下で実行された容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転で得られた生細胞密度の約3倍~約5倍になるように完了させることができる。
【0013】
推定された供給物消費速度(q)およびIVCはそれぞれ、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の小スケール研究に基づき得る。推定された供給物消費速度(q)およびIVCはそれぞれ、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の約0.25Lの研究に基づき得る。
【0014】
開示される技術の別の態様は、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成する方法に関する。フェッドバッチバイオリアクター運転は、一定の時間間隔で供給物を添加する細胞株で実行することができる。各一定の時間間隔について、細胞あたりの正規化された供給値は、以下のように:各一定の時間間隔について、それぞれの時間間隔で供給される供給量を、前の時間間隔からそれぞれの時間間隔までの積算生細胞(IVC)数の変化で割った、間隔ごとの細胞あたりの供給値を計算し、計算された間隔ごとの細胞あたりの供給値のうち、最大の間隔ごとの細胞あたりの供給値を決定し、各一定の時間間隔について、細胞あたりの正規化された供給値を、それぞれの時間間隔についての間隔ごとの細胞あたりの供給値を最大の間隔ごとの細胞あたりの供給値で割った値に等しく設定して計算することができる。各一定の時間間隔について、正規化されたIVC数は、以下のように:各一定の時間間隔について、前の時間間隔の推定されたIVC数および前の時間間隔からそれぞれの時間間隔までの生細胞の変化に少なくとも部分的に基づいて、1日あたりのIVC数を推定し、推定された1日あたりのIVC数から1日あたりの最大IVC数を決定し、各一定の時間間隔について、正規化されたIVC数を推定された1日あたりのIVC数を1日あたりの最大IVC数で割った値に設定して計算することができる。バランスのとれた供給時間間隔は、バランスのとれた供給時間間隔について細胞あたりの正規化された供給値が正規化されたIVC数にほぼ等しくなるように、一定の時間間隔から選択することができる。細胞あたりの係数(PCF)は、バランスのとれた供給時間間隔の間隔ごとの細胞あたりの供給値に等しく設定することができる。細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、供給間隔ごとに供給量が決定され、それぞれの供給量がPCFに少なくとも部分的に基づき、現在の供給間隔から将来の供給間隔までのIVC数の予測される変化に比例するように作成することができる。
【0015】
少なくとも4回のフェッドバッチバイオリアクター運転は、一定の時間間隔で供給物を添加する細胞株で実行することができる。フェッドバッチバイオリアクター運転のそれぞれの各一定の時間間隔について、細胞あたりの正規化された供給値を計算することができる。フェッドバッチバイオリアクター運転のそれぞれの各一定の時間間隔について、正規化されたIVC数を計算することができる。各フェッドバッチバイオリアクター運転について、バランスのとれた供給時間間隔を選択することができる。各フェッドバッチバイオリアクター運転について、PCFは、それぞれのバランスのとれた供給時間間隔のそれぞれの間隔ごとの細胞あたりの供給値に等しく設定することができる。平均PCFは、少なくとも4回のフェッドバッチバイオリアクター運転のPCFの平均であるように決定することができる。細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、供給間隔ごとに供給量が決定され、それぞれの供給量が、IVC数の予測される変化を平均PCFに乗じたものに等しくなるように作成することができる。
【0016】
第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転は、フェッドバッチ供給スケジュールに従って実行することができる。更新されたPCFは、前記PCFに少なくとも部分的に基づき、第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。更新されたPCFは、第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の終了時に添加される供給物の総量と比較して、第2の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の終了時に添加される供給物の総量が減少する、更新されたフェッドバッチ供給スケジュールをもたらすことができる。細胞の栄養要求量を満たしながら供給物の添加量を減らすことにより、培養の浸透圧が下がり、細胞増殖および組換えタンパク質産生により最適な環境が提供される。
【0017】
第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転は、フェッドバッチ供給スケジュールに従って実行することができる。変更可能なPCFおよび変更可能なフェッドバッチ供給スケジュールは、前記PCFに少なくとも部分的に基づき、第1の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転に少なくとも部分的に基づいて決定することができる。
【0018】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に、PCFを経時的に変化させることができる。一実施形態では、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に経時的に増加しない。一実施形態では、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養2~3日目にかけて0.002mL/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養4~6日目にかけて0.00175mL/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養7~8日目にかけて0.0015mL/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の培養9~10日目にかけて0.0012mL/細胞×日にほぼ等しく、PCFは、細胞ベースフェッドバッチバイオリアクター運転の培養11~13日目にかけて0.0007mL/細胞×日にほぼ等しい。
【0019】
細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、スケールを超えて移すことができる供給目標を提供するために、小スケールで作成される。細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、約0.25Lのスケールで作成され、それぞれ約250リットル(L)および約1,000Lのバイオリアクターを利用するフェッドバッチ産生プロセスに移すことができる。
【0020】
開示される技術の別の態様は、栄養供給制御システムに関する。栄養供給制御システムは、生細胞密度測定システム、将来の生細胞密度予測システム、細胞あたりの係数(PCF)システム、および供給計算システムを含むことができる。生細胞密度測定システムは、生産用リアクター内の生細胞密度を測定するように構成することができる。将来の生細胞密度予測システムは、生細胞密度測定値を受け取るように構成することができ、生細胞密度測定値に少なくとも部分的に基づいて、将来の供給時間間隔における生細胞の密度を推定するように構成することができる。PCFシステムは、PCF値を提供するように構成することができる。供給物計算システムは、将来の供給時間間隔における生細胞の密度に少なくとも部分的に基づき、PCF値に少なくとも部分的に基づいて、生産用リアクターに供給する供給物の量を計算するように構成することができる。
【0021】
PCFシステムは、バイオリアクター内で消費される代謝産物が、バランスのとれた供給時間間隔の間にバイオリアクターに供給される代謝産物とほぼ等しくなるバランスのとれた供給時間間隔を決定するようにさらに構成することができる。PCFシステムは、バランスのとれた供給時間間隔の細胞あたりの供給値を決定するようにさらに構成することができる。PCFシステムは、バランスのとれた供給時間間隔の細胞あたりの供給値に少なくとも部分的に基づいてPCF値を決定するようにさらに構成することができる。
【0022】
一実施形態では、栄養供給制御システムは、プロセッサと、プロセッサと通信可能であり、プロセッサが実行可能な命令を含む、非一過性のコンピュータ可読媒体とをさらに含むことができる。命令は、プロセッサに、生産用リアクターに供給する供給物の量を計算させることができる。さらに、または代替的に、命令は、プロセッサにPCF値を決定させることができる。
【0023】
供給物計算システムは、1つまたは複数のより大スケールのフェッドバッチ生産プロセスのより大きな生産用リアクターに供給する供給物の量を調整するようにさらに構成することができる。供給物計算システムは、0.25Lスケールのプロセスに基づいて、より大きな生産用リアクターに供給する供給物の量を調整するようにさらに構成することができる。供給物計算システムは、それぞれのより大スケールのフェッドバッチ生産プロセスの間に、250リットル(L)および1,000Lのバイオリアクターに供給する供給物の量を調整するように構成することができる。
【0024】
ここで、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、本開示に組み込まれ、本開示の一部を構成し、開示される技術の様々な実施態様および態様を例示し、記載と共に、開示される技術の原理を説明する添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる、例示的な細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチ供給スケジュールと比較して表すプロットである。
図2図1に示した細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールおよび容積ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを実行するそれぞれのフェッドバッチバイオリアクター運転の供給間隔ごとに添加される代謝産物の量を表すプロットである。
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができるPCFを決定するための、細胞あたりの正規化された供給値と正規化されたIVCのプロットである。
図4】容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、およびPCF値が本開示の態様に従って後続の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転ごとに更新される細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の反復を含む、フェッドバッチバイオリアクター運転に1日あたりに添加される供給物の量のプロットである。
図5】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転と、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転との、2つの細胞株についての細胞生存百分率のプロットである。
図6図5に提示した容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転と細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転との、2つの細胞株についての生細胞密度(10個の生細胞(vc)/mLで測定)のプロットである。
図7】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のアルギニンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図8】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のヒスチジンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図9】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のイソロイシンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図10】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のロイシンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図11】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のリジンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図12】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のメチオニンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図13】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のフェニルアラニンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図14】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のスレオニンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図15】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のチロシンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図16】当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のバリンの相対濃度(吸光度単位(AU)で測定)のプロットである。
図17】本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチ戦略を作成するための例示的方法のステップを示すフローダイヤグラムである。
図18】本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するための例示的方法のステップを示すフローダイヤグラムである。
図19】本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる例示的な環境の概略図である。
図20】本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる例示的な環境の概略図である。
図21】本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる栄養供給制御システムのブロックダイヤグラムである。
図22】本開示の態様によるモノクローナル抗体1(MAB1)の産生に関する、3つの異なるスケールでの1日あたりの複合供給目標を示す棒グラフである。
図23】本開示の態様によるMAB1の産生に関する、3つの異なるスケールでの力価値のプロットである。
図24】本開示の態様によるMAB1の産生に関する、3つの異なるスケールでの1日あたりの測定された浸透圧のプロットである。
図25】本開示の態様による二重特異性抗体1(BsAb1)の産生に関する、3つの異なるスケールでの1日あたりの複合供給目標を示す棒グラフである。
図26】本開示の態様によるBsAb1の産生に関する、3つの異なるスケールでの1日に測定された浸透圧のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
開示される技術のいくつかの実施態様を、添付図面を参照してより詳細に説明する。しかしながら、この開示される技術は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載された実施態様に限定して解釈されるべきではない。開示される技術の様々な要素を構成するものとして本明細書の以下に記載される構成要素は、例示を意図したものであり、制限的なものではない。本明細書に記載された構成要素と同一または類似の機能を果たす多くの適切な構成要素が、開示される電子装置および方法の範囲内に包含されることが意図されている。本明細書に記載されていないそのような他の構成要素としては、例えば、開示される技術の開発後に開発された構成要素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
また、1つまたは複数の方法ステップについての言及は、明示的に特定されたステップの間に、追加の方法ステップまたは介在する方法ステップが存在することを排除するものではないことを理解されたい。
【0028】
文脈から明らかな場合を除き、「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、その実体の1つまたは複数を指し、例えば、「1つのアミノ酸(an amino acid)」は、1つまたは複数のタンパク質を表すと理解されることに留意されたい。そのため、本明細書では、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」という用語を互換的に使用することができる。
【0029】
「栄養素」という用語は、生物が生きるため、成長するため、あるいはバイオマスを増やすために使用する化合物、分子、または物質を指し得る。栄養素の例としては、炭水化物源(例えば、グルコース、ガラクトース、マルトース、もしくはフルクトースなどの単糖類、またはより複雑な糖類)、アミノ酸、ビタミン(例えば、ビタミンB群(例えば、B12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミンおよびビオチン)を挙げることができる。本発明では、バイオリアクターに添加する全栄養培地の量を決定するための代替分子として、1つまたは複数の栄養素を利用することができる。いくつかの実施形態では、「栄養素」という用語は、単糖類、ビタミン、およびアミノ酸を指し得る。
【0030】
「アミノ酸」という用語は、20種類の標準アミノ酸、すなわち、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸、それらの単一立体異性体、ならびにそれらのラセミ混合物のいずれかを指し得る。「アミノ酸」という用語はまた、既知の非標準アミノ酸、例えば、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシ-プロリン、s-スルホシステイン、ホスホチロシン、ε-N,N,N-トリメチルリジン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、O-ホスホセリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N-アセチルリジン、ω-N-メチルアルギニン、N-アセチルセリン、N,N,N-トリメチルアラニン、N-ホルミルメチオニン、γ-アミノ酪酸、ヒスタミン、ドーパミン、チロキシン、シトルリン、オルニチン、β-シアノアラニン、ホモシステイン、アザセリン、およびS-アデノシルメチオニンを指し得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸はグルタミン酸、グルタミン、リジン、チロシンまたはバリンである。いくつかの実施形態では、アミノ酸はグルタミン酸またはグルタミンである。
【0031】
「栄養培地」、「供給培地」、「供給物」、「総供給物」、「複合供給物」、および「総栄養培地」という用語は、互換的に使用されることができ、細胞株の増殖、成長、バイオマスの添加に使用される「完全な」培地を含むことができる。栄養培地は、それ自体では細胞株を増殖および成長させるのに十分でない物質または単純な培地とは区別される。したがって、例えば、グルコースまたは単糖は、それ自体では栄養培地ではなく、なぜなら、他の必要な栄養素がなければ、細胞株を増殖および成長させるのに十分ではないからである。
【0032】
本明細書に示す具体例では、バイオリアクター内の生物学的媒体の密度は、約1.0g/mLであると仮定されることが多く、したがって、本明細書ではグラムとmLとを互換的に使用することができる。
【0033】
一態様では、本発明は、バイオリアクターの複合栄養供給物のバランスをとるための複合栄養制御アルゴリズムを教示する。複合栄養供給物の送達は、フェッドバッチ生産バイオリアクターの重要な部分である。遺伝子操作された細胞株を使用した次世代細胞培養プロセスの開発を支援するため、積算生細胞(IVC)数に基づく供給戦略を作製した。この戦略の目的は、生細胞数に比例して複合供給栄養素を送達し、プロセス中の供給不足または供給過剰を防ぐことである。本明細書で提示される例示的な方法は、細胞あたりの係数(PCF)および予測IVC計算を使用して、1日あたりの複合供給物量を求めることができる。細胞ごとの複合供給戦略の開発を本明細書に提示する。栄養供給量の計算に使用する細胞株特異的PCFを決定する例示的な方法を本明細書に提示する。後続の供給サイクルのIVCを予測する例示的な方法を本明細書に提示する。
【0034】
本明細書で提示される実施例は、0日目の細胞および培養培地(すなわち、基礎培地または基本培地)から始めてもよいが、そうでなくてもよい。プロセスの2~4日目またはその前後に、バイオリアクターへの「供給」を開始することができ、追加の細胞培養培地(すなわち、供給培地)をバイオリアクターに添加する。いくつかの供給培地をプロセスに応じて添加することができ、例えば、2種または3種の供給培地を添加することができる。複合/栄養/総供給培地は、2種類以上の主成分(通常50~60種程度の成分)を有する培地を含むことができる。シスチンおよびチロシンを2つの主成分とするグルコース溶液または高pH溶液も、プロセス中にバイオリアクターに添加することができる。
【0035】
図1は、本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる、例示的な細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを、当技術分野で公知の容積ベースまたは重量ベースのフェッドバッチ供給スケジュールと比較して表したプロットである。フェッドバッチバイオリアクター運転の開始時には、生細胞数は少ない。細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、生細胞数の関数として供給物を供給するため、細胞ベースのアプローチでは、バイオリアクター運転の開始時の供給量は少ない。容積ベースまたは重量ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、バイオリアクターの容積または重量の関数として供給物を供給するため、バイオリアクター運転の開始時の供給量は、バイオリアクターの残りの運転時間と比較して低いが、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールの初期供給物よりもはるかに多いと考えられる。容積ベースまたは重量ベースのフェッドバッチ供給スケジュールでは、バイオリアクター内の容積および重量が増加するにつれて、バイオリアクターの運転中に、供給間隔ごとに添加される供給物が時間と共に増加する。細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールでは、1日あたりの生細胞の変化が増加する初期段階では、供給間隔あたりの供給物の量が増加し、1日あたりの生細胞の変化が減少する最終段階では、供給間隔あたりの供給物の量が減少すると考えられる。
【0036】
図1は、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールの一般的な説明を示すものである。細胞ベースのアプローチは、細胞株および供給物の成分に合わせて調整できるため、図1の一般的な説明から逸脱してもよいことを理解されたい。
【0037】
図2は、図1に示した細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールおよび容積ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを実行するそれぞれのフェッドバッチバイオリアクター運転の代謝産物の量を表すプロットである。容積ベースまたは重量ベースのフェッドバッチ供給スケジュールでは、リアクター内の代謝産物は、過剰供給によりバイオリアクターの運転開始時に増加することがあり、その後、添加されるよりも多くの栄養素を消費するところまで生細胞数が増加した後に減少することがある。細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクターのスケジュールの目的は、バイオリアクター内の代謝産物の量をほぼ一定レベルに保つことである。
【0038】
細胞ベースの供給戦略を決定する式を導き出すために、いくつかの仮定をした。これらの仮定は以下の通りである。(1)複合供給物によって各細胞の最小限の栄養要求量が毎日満たされる場合、代謝産物の正味の蓄積または枯渇はない。(2)複合供給物の配合は、モノクローナル抗体を発現する特定の細胞株に対して適切なバランスおよび比率であると仮定する。
【0039】
代謝産物に関する質量バランスSは、式(1)に従って書くことができる。
i,d=Si,d-1+(C・Vf,d)-Q (1)
【0040】
式中、Si,dおよびSi,d-1はそれぞれ、当日およびその前日の培養物中の代謝産物iのモル量である。(C・Vf,d)項は、毎日、複合供給物溶液を通して添加されるモル数であり、Qは、細胞によって消費または生産される総モル数である。代謝産物の正味の蓄積および枯渇がないという仮定では、2つのS項はキャンセルされ(つまり代謝産物の量は変化しない)、式(1)は式(2)に従って並べ替えることができる。
・Vf,d=Q (2)
【0041】
次いで、総消費項Qは、特定の消費速度に変化バイオマスを乗じたものに換算して書き換えることができ、式中、Xは生細胞を表す。
【0042】
【数1】
【0043】
バイオマスの変化は、IVCの式(式(4))を使用して数値的に近似することができる。式(4)および式(5)を組み合わせ、Vf,d(培養日dの供給容積)について解くことができる。得られた式が式(6)である。
【0044】
【数2】
【0045】
【0046】
【数3】
は、1日あたりの細胞あたりの容積(容積/(細胞×日))に換算した細胞あたりの係数(PCF)である。式(6)は、ここでは、所定のPCFおよび培養のIVCの変化に基づいて、培養日ごとに添加する複合供給物の量を記述している。
【0047】
PCFは、細胞株のバイオマスに応じて複合供給速度を適切に調整するために決定できるスケーリングファクターである。PCFは、小スケール生産のバイオリアクターで遺伝子操作された細胞株に基づいて決定することができる。PCFは、最初に、細胞あたりの正規化された供給値(式(7))および正規化されたIVC(式(8))を計算することによって決定することができる。平均PCFは、複数のバイオリアクター運転、好ましくは細胞株あたり最低4回のバイオリアクター運転のPCFを平均することにより決定することができる。
【0048】
【数4】
【0049】
図3は、PCF値を決定するための、細胞あたりの正規化された供給および正規化されたIVCのプロットである。バイオリアクタープロセスについて、これら2つの値の時系列を別々のy軸にプロットすることにより、細胞あたりの正規化された供給および正規化されたIVCがどの培養日に交差するかに基づいて、バランスのとれた供給時間間隔(日)を決定することができる。これらの2本のラインの交点が、バイオリアクターに送達される供給物の量が細胞密度に比例する培養日であると仮定される。言い換えれば、その交点の前では、現在の細胞密度に対して送達される供給量が多すぎ、その交点を過ぎると、現在の細胞密度に対して送達される供給量が少なすぎる。
【0050】
細胞あたりの供給がIVCと一致する培養日(バランスのとれた供給時間間隔)が決定されると、その培養日の細胞あたりの供給の平均値(式(7)の分子)を取ることによって、PCFを決定することができる。図3では、交点は培養8日目にほぼ発生している。したがって、培養8日目の細胞あたりの供給は、各細胞株について平均した。評価に使用した3つのGS_CHO細胞株について、得られた平均PCFを表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
この戦略の初期評価に表1の値を使用する。
【0053】
1日に添加する供給物の量は、その日のPCFと、IVCの予測される変化との積によって計算する(式(3)、エラー。参照元は見当たらない。式(9)では別の形に書き換えている)。
供給量(g)=PCF×(IVCd+1-IVC) (9)
【0054】
IVCd+1という項は、その次の培養日(d+1)の予測されるIVCであり、式(10)で示すように計算することができる。
【0055】
【数5】
【0056】
v,d+1は予測される細胞密度であり、Vrxr,d+1は式(11)および式(12)で定義される翌日の予測されるリアクター容積である。供給前に翌日の容積を合理的に概算できるように、前日の供給容積は当日と十分に類似していると想定される。予測される細胞密度Xv,d+1は、現在の細胞密度に、直近1日間の増殖速度μに細胞密度測定間の時間(通常1日)を乗じた指数関数を乗じることで計算することができる。
v,d+1=Xv,d・eμ・t (11)
【0057】
【数6】
【0058】
上記の手順で生成されたPCFは、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成するのに十分であり得る。さらに、または代替的に、上記の手順から生成されたPCFは、高力価培地における特定の細胞株に対するPCFパラメータのチューニングの出発点として機能し得る。
【0059】
デモンストレーションとして、表1のPCFを使用して細胞単位で5Lリアクターに供給した。
【0060】
図4は、容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、およびPCF値が本開示の態様に従って後続の細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転ごとに更新される細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の反復を含む、フェッドバッチバイオリアクター運転の1日あたりの添加される供給物の量のプロットである。
【0061】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転(細胞ベース#1)の最初の反復の終了時に得られた供給量は、1日のリアクター容積(300mL超)の10%を超え、浸透圧が高くなり、プロセス性能が制限された。一連の実験(細胞ベース#2、細胞ベース#3、細胞ベース#4)において、生産性と生成物の品質を維持しながら浸透圧の蓄積を抑えるようにPCFを調整した。GS-CHO細胞株に対する最終的な推奨PCFを表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
図5は、本開示の態様による、当技術分野で公知の重量ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転(フラット、実線)および細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転(細胞あたり、破線)の2つの細胞株(プロットでは黒丸で表される細胞株1およびプロットでは白色ひし形で表される細胞株2)の細胞生存百分率のプロットである。
【0064】
図6は、図5に示した容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転と細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の2つの細胞株についての生細胞密度のプロットである。図5に示すように、両細胞株ともプロセスの初期(2日目)に生存率が低下している。図6に示すように、重量ベースのアプローチでは、両細胞株とも過供給および浸透圧濃度蓄積のためにほとんど増殖しない。細胞ごとの供給スケジュールを用いると、適切な供給および培養中の浸透圧により増殖が回復する。
【0065】
図7図16は、バイオリアクター内のいくつかの代謝産物の内部標準物質に基づく相対濃度の経時プロットである。代謝産物濃度は、細胞の消費量と共に、供給速度(1日に添加する供給物の量)に依存する。供給のバランスが適切に保たれ、細胞の消費量に見合った速度で添加されている場合、正味の効果は、プロセス全体を通して濃度が変わらないことである。一般的に、容積ベースの供給戦略を使用した場合、過剰供給および代謝産物の蓄積が典型的であった。その結果、バイオリアクターの性能が低下した。細胞ベースの供給戦略では、代謝産物レベルはほぼ安定したままであり、性能は向上している。
【0066】
図7は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のアルギニンの相対濃度のプロットである。
【0067】
図8は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のヒスチジンの相対濃度のプロットである。
【0068】
図9は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のイソロイシンの相対濃度のプロットである。
【0069】
図10は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のロイシンの相対濃度のプロットである。
【0070】
図11は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のリジンの相対濃度のプロットである。
【0071】
図12は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のメチオニンの相対濃度のプロットである。
【0072】
図13は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のフェニルアラニンの相対濃度のプロットである。
【0073】
図14は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のスレオニンの相対濃度のプロットである。
【0074】
図15は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のチロシンの相対濃度のプロットである。
【0075】
図16は、当技術分野で公知の容積ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の第1の反復、および本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転の最終反復の間の、バイオリアクター中のバリンの相対濃度のプロットである。
【0076】
図17は、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチ戦略を作成するための例示的方法200のステップを示すフローダイヤグラムである。ステップ202で、フェッドバッチバイオリアクター運転を細胞株で実行することができる。フェッドバッチバイオリアクター運転中、供給物は一定の時間間隔で添加することができる。ステップ204で、各一定の時間間隔について、細胞あたりの正規化された供給値を計算することができる。ステップ206で、各一定の時間間隔について、正規化されたIVC数を計算することができる。ステップ208で、バランスのとれた供給時間は、バランスのとれた供給時間間隔について細胞あたりの正規化された供給値が正規化されたIVC数にほぼ等しくなるように、一定の時間間隔から選択することができる。ステップ210で、PCFは、バランスのとれた供給時間間隔の間隔ごとの細胞あたりの供給値に等しく設定することができる。ステップ212で、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールは、供給間隔ごとに供給量が決定され、それぞれの供給量がPCFに少なくとも部分的に基づき、現在の供給間隔から将来の供給間隔までのIVC数の予測される変化に比例するように作成することができる。
【0077】
図18は、本開示の態様による細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行するための例示的方法300のステップを示すフローダイヤグラムである。ステップ302で、推定された供給物消費速度(q)に少なくとも部分的に基づき、現在の供給間隔から将来の供給間隔までのIVC数の推定された変化に少なくとも部分的に基づいて、バイオリアクターに供給物の量が供給される。ステップ304で、供給間隔あたりの供給物の量が増加する初期相において、供給物の量をバイオリアクターに供給することができる。ステップ306で、供給間隔あたりの供給物の量が減少する最終相において、供給物の量をバイオリアクターに供給することができる。ステップ308で、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転は、バイオリアクターの容積の約20%~約50%の間が供給物で構成されるように完了させることができる。提供された実施例では、複合供給物は、運転終了時にリアクターの総容積の約25~35%を占める。様々な可能性のある供給シナリオを考慮し、範囲を20%から50%に拡大し、基礎材料+接種材料については約50%、複合供給物については約25~35%、グルコース供給物については約10~15%、および高PH供給物については(約2~5%)である。
【0078】
細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行する方法および細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成する方法は、コンピュータによる自動化によって支援することができる。方法は半自動化または完全自動化であってもよく、生物種に依存しなくてもよい。(バイオリアクターに対しての)外部システムは、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を実行し、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成するための方法ステップを実行する命令を含むことができる。
【0079】
本発明では、様々な分析装置を使用することができる。分析装置は、生細胞数、栄養供給物の成分(例えば、アミノ酸)、および/または細胞培養培地の他の代替成分(例えば、ビタミン、ミネラル、イオン、糖など)を検出および/または定量することができる任意の機器またはプロセスを含むことができる。分析装置は、ガスクロマトグラフィー、HPLC、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、酵素触媒アッセイ、および/または化学反応アッセイを実施するための装置であってもよい。
【0080】
図19は、本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる例示的な環境の概略図である。この環境には、栄養供給システム120、生産用リアクター102、および栄養供給制御システム110が含まれる。この環境には、栄養供給制御システム110から栄養供給システム120へのフィードバックループ114が含まれ、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転中に栄養供給システム120から生産用リアクター102への供給を調節するために使用することができる。この環境はまた、細胞ベースのフェッドバッチ供給スケジュールを作成するために使用することができる。
【0081】
生産用リアクター102は、細胞培養(例えば、哺乳動物細胞培養)を含むことができる。生産用リアクター102は、バイオリアクター、細胞培養リアクター、またはサンプルバイオリアクターであってもよい。生産リアクター102は、以下の、ウェルプレート、シェイクフラスコ、ベンチトップ容器、セルバッグおよびロッカー、使い捨てバイオリアクター、ならびに商業スケール(例えば、15kL)のステンレス鋼リアクターのうちの少なくとも1つであってもよい。反応サンプルを生産用リアクター102から取り出し、栄養供給制御システム110に送る。
【0082】
栄養供給制御システム110は、生産リアクター102内の生細胞の密度を決定する生細胞密度測定システム104を含むことができる。生細胞密度の測定は、オフラインでもオンラインでも行うことができる。栄養供給制御システム110はまた、生細胞密度測定システム104から生細胞密度測定値を受け取り、生細胞密度数予測を実行する将来の生細胞密度予測システム106を含むことができる。栄養供給制御システム110は、PCFシステム116を含むことができる。PCFシステム116は、所与の供給間隔のPCF値を単に提供することができ、および/またはPCFシステム116は、本明細書の他の箇所に開示されるように、PCF値(例えば、単一のPCF値、平均PCF値、および/または調整PCF値)を計算することができる。栄養供給制御システム110は、将来の生細胞密度予測システム106からの予測される生細胞密度およびPCFシステム116からのPCF値を使用して、添加する供給物の量を計算する供給物計算システム108を含むことができる。次いで、栄養供給制御システム110は、供給物計算システム108によって実行された計算に従って供給物を供給するように、栄養供給システム120に命令を送ることができる。一実施形態では、生細胞密度測定システム104、将来の生細胞密度予測システム106、PCFシステム116、および/または供給物計算システム108によって実行されるプロセスは、1つまたは複数のプロセッサによって完了させることができる。
【0083】
栄養供給システム120は、供給物源112から生産用リアクター102に適量の供給物を供給するポンプ111を含むことができる。
【0084】
図20は、本開示の1つまたは複数の実施形態を実施するために使用することができる例示的な環境の概略図を示す。栄養供給制御システム110は、ネットワーク180を介して生産リアクター102および栄養供給システム120と通信することができる。栄養供給制御システム110は、1つまたは複数の栄養を生産用リアクター102に供給するように、栄養供給システム120に指示することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、例示的な方法のステップは、1つまたは複数の自動化された装置によって実行される。「自動」、「自動的に」、または「自動化された」という用語は、タスク実行のために1つもしくは複数の装置を最初に準備するために必要な人間の介入もしくは行動を除き、または1つもしくは複数の装置の自動運転を維持するために必要な場合を除き、人間の介入または行動なしに1つまたは複数のタスクを実行する1つまたは複数の機械装置を表す。1つまたは複数のタスクを自動的に実行する「機械装置」は、任意選択で、コンピュータと、実行されるタスクのタイミング、継続時間、頻度、種類、および/または性格を制御するなど、1つまたは複数の装置の性能を制御し、指示するための意思決定の目的で、コンピュータ中で使用することができる収集されたデータを処理するために必要な命令(コード)とを含むことができる。
【0086】
様々な実施形態では、「オフライン」分析とは、生産プロセスからサンプルを恒久的に除去し、後の時点でサンプルを分析することであり、データ分析がプロセス内条件に関するリアルタイムまたはほぼリアルタイムの情報を伝えないことを指す。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の分析装置がオフラインで使用される。
【0087】
一実施形態では、分析装置(またはそれに接続されたセンサ部分)をバイオリアクターもしくは精製ユニットに直接導入してもよく、または装置もしくはセンサ部分を適切なバリアもしくは膜によってバイオリアクターもしくは精製ユニットから分離してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、分析装置はキット、例えば試験ストリップであってもよく、サンプルに接触させて細胞濃度を迅速に決定することができる。いくつかの実施形態では、キットは、代替マーカー、または特定濃度の代替マーカーの存在下で検出可能なシグナルを生成する化学反応および/または酵素連鎖反応を生じる基質を含むことができる。検出可能なシグナルには、例えば、比色変化またはその他の視覚シグナルが含まれる。いくつかの実施形態では、分析装置は使い捨て分析装置、例えば使い捨て試験ストリップであってもよい。このようなキットは、操作が簡単で、他の大型でより複雑な分析装置に比べてコストを抑えられるため、有用であり得る。このようなキットは、小スケールの細胞培養の増殖中に、培養の最適な健康状態および生産性を決定するためにも有用であり得る。
【0089】
図21は、開示される技術の一態様による栄養供給制御システム110のブロックダイヤグラムである。栄養供給制御システム110は、1つまたは複数のプロセッサ510を含むことができる。生細胞密度測定システム104、将来の生細胞密度予測システム106、PCFシステム116、および/または供給物計算システム108によって実行されるプロセスは、1つまたは複数のプロセッサ510によって完了させることができる。
【0090】
プロセッサ510は、格納された命令を実行し、格納されたデータに基づいて動作することができるマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、コプロセッサなどのうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せを含むことができる。プロセッサ510は、Intel(商標)社製のPentium(商標)ファミリまたはAMD(商標)社製のTurion(商標)ファミリのマイクロプロセッサなど、1つまたは複数の既知の処理装置であってもよい。プロセッサ510は、並列処理を同時に実行するシングルコアまたはマルチコアプロセッサを構成することができる。例えば、プロセッサ510は、仮想処理技術で構成されたシングルコアプロセッサであってもよい。特定の実施形態では、プロセッサ510は、論理プロセッサを使用して、複数のプロセスを同時に実行および制御することができる。プロセッサ510は、仮想マシン技術、または複数のソフトウェアプロセス、アプリケーション、プログラムなどを実行、制御、動作、操作、格納などする能力を提供する他の同様の既知の技術を実装することができる。関連技術の当業者であれば、本明細書に開示される能力を提供する他のタイプのプロセッサ配置が実装され得ることを理解する。
【0091】
非一過性のコンピュータ可読媒体520は、いくつかの実施態様では、1つまたは複数の適切なタイプのメモリ(例えば、揮発性メモリまたは不揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、磁気ディスク、光ディスク、フロッピーディスク、ハードディスク、リムーバブルカートリッジ、フラッシュメモリ、独立ディスクの冗長アレイ(RAID)など)を、オペレーティングシステム522、アプリケーションプログラム(例えば、ウェブブラウザアプリケーション、ウィジェットまたはガジェットエンジン、およびまたは必要に応じてその他のアプリケーションを含む)、実行可能命令、およびデータを含むファイルを格納するために含むことができる。一実施形態では、本明細書に記載された処理技術は、非一過性のコンピュータ可読媒体520内の実行可能命令とデータとの組合せとして実装される。非一過性のコンピュータ可読媒体520は、開示される実施形態の1つまたは複数の特徴を実行するために使用されるデータおよび命令を格納する1つまたは複数のメモリデバイスを含むことができる。非一過性のコンピュータ可読媒体520はまた、メモリコントローラ装置(例えば、サーバなど)またはソフトウェアによって制御される1つまたは複数のデータベース、例えば、文書管理システム、Microsoft(商標)SQLデータベース、SharePoint(商標)データベース、Oracle(商標)データベース、Sybase(商標)データベース、または他のリレーショナルもしくは非リレーショナルデータベースの任意の組合せを含むことができる。非一過性のコンピュータ可読媒体520は、プロセッサ510によって実行されると、開示される実施形態と一致する1つまたは複数のプロセスを実行するソフトウェア構成要素を含むことができる。いくつかの実施形態では、非一過性のコンピュータ可読媒体520は、開示される実施形態に関連する1つまたは複数のプロセスおよび機能を実行するためのデータベース524を含むことができる。非一過性のコンピュータ可読媒体520は、開示される実施形態の1つまたは複数の関数を実行するための1つまたは複数のプログラム526を含むことができる。さらに、プロセッサ510は、システム110から遠隔にある1つまたは複数のプログラム526を実行することができる。例えば、システム110は、実行されると開示される実施形態に関連する関数を実行する1つまたは複数のリモートプログラム526にアクセスすることができる。
【0092】
システム110はまた、システム110によってデータが受信および/または送信されることを可能にする、装置からシグナルまたは入力を受信し、1つまたは複数の装置にシグナルまたは出力を提供するための1つまたは複数のインターフェースを含むことができる1つまたは複数のI/O装置560を含むことができる。例えば、システム110は、1つまたは複数のキーボード、マウス装置、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、スクロールホイール、デジタルカメラ、マイクロフォン、センサなどの1つまたは複数の入力装置へのインターフェースを提供し、システム110が1人または複数人のユーザからデータを受信することを可能にするインターフェース構成要素を含むことができる。システム110は、画像、映像、データ、またはその他の情報を表示するためのディスプレイ、スクリーン、タッチパッドなどを含むことができる。I/O装置560は、グラフィカルユーザインターフェース562を含むことができる。
【0093】
開示される技術の例示的な実施形態では、システム110は、操作のいずれかを容易にするために実行される任意の数のハードウェアおよび/またはソフトウェアアプリケーションを含むことができる。1つまたは複数のI/Oインターフェース560は、多種多様な入力装置からデータおよび/またはユーザの命令を受信または収集するために利用することができる。受信したデータは、開示される技術の様々な実施態様において所望されるように、1つもしくは複数のコンピュータプロセッサによって処理され、および/または1つもしくは複数のメモリデバイスに格納することができる。
【0094】
ネットワーク180は、より一般的にインターネットと呼ばれる相互接続されたコンピューティングデバイスのネットワークを含むことができる。ネットワーク180は、セルラーネットワークまたはWiFiネットワークなどのインターネットを介した個々の接続を含む、任意の適切なタイプであってよい。いくつかの実施形態では、ネットワーク180は、無線周波数識別(RFID)、近距離無線通信(NFC)、Bluetooth(商標)、低エネルギーBluetooth(商標)(BLE)、WiFi(商標)、ZigBee(商標)、周囲後方散乱通信(ABC)プロトコル、USB、WAN、またはLANなどの直接接続を使用して、端末、サービス、およびモバイルデバイスを接続することができる。送信される情報は個人情報または機密情報である可能性があるため、セキュリティ上の懸念から、これらのタイプの接続の1つまたは複数を暗号化またはその他の方法で保護する必要がある場合がある。いくつかの実施形態では、しかしながら、送信される情報はそれほど個人的なものではなくてもよいため、ネットワーク接続はセキュリティよりも利便性を重視して選択することができる。ネットワーク180は、データ交換に使用される任意のタイプのコンピュータネットワーク配置を含むことができる。例えば、ネットワーク180は、インターネット、プライベートデータネットワーク、パブリックネットワークを使用する仮想プライベートネットワーク、および/またはシステム環境内の構成要素がシステム100の構成要素間で情報を送受信できるようにする他の適切な接続であってもよい。ネットワーク180はまた、公衆交換電話網(「PSTN」)および/または無線ネットワークを含むことができる。ネットワーク180はまた、WiFi、Bluetooth(商標)イーサネット、およびシステム環境の構成要素が互いに情報交換することを可能にする他の適切なネットワーク接続など、局所的な領域でデータを交換するために使用される任意のタイプのコンピュータネットワーク配置を含むローカルネットワークを含むことができる。
【0095】
図22から図26は、モノクローナル抗体1(MAB1)およびBsAb1の2つの例示的な分子について、0.25L、250L、1,000Lのスケールでの大スケール生産に関するものである。複合供給目標を、予測細胞ベースのアルゴリズムを使用した小スケール運転中に作成し、生産性を最大化すると同時に、阻害要因となる廃棄副産物(例えば、乳酸およびアンモニウム)の蓄積を最小化するように設計した。MAB1およびBsAb1の大スケール生産により、予測細胞ベースのアルゴリズムを使用した小スケール研究で作成された複合供給目標が、スケールを超えて移すことができることが実証された。
【0096】
図22は、MAB1の生産に関する、3つの異なるスケールでの1日あたりの複合供給目標を示す棒グラフである。培養2日目から11日目には、Ambr250(0.25Lスケール)、250L、および1,000Lのプロセスのバーを、各日数の左から右へ並べた。250Lおよび1,000Lのプロセスでは、Ambr250のデータに基づいて12日目以降にプロセスが停止されたため、培養12日目および13日目の供給目標はない。
【0097】
MAB1の生産バイオリアクタープロセスのために作成された1日あたりの複合供給目標を、細胞ベースのアルゴリズムを使用して、Ambr250実験中に予測した。このアルゴリズムは、生産中に起こり得るわずかな供給ミスの影響を研究するため、リアクター内の現在のバイオマスに基づき、±10%の範囲で1日あたりの供給目標を提供した。プロセス性能を、力価、浸透圧、乳酸およびアンモニウム濃度に関して、送達される複合供給物の範囲の関数として評価する。次いで、研究の各反復条件における1日あたりの供給目標を平均し、その値が将来のプロセス開発研究で使用する推奨目標値となる。次いで、Ambr250(0.25L)の開発研究からの予測される複合供給目標を、パイロットスケール(250L)および大スケールプロセス(1,000L)の両方に適用する。250Lおよび1,000Lの両プロセスとも、開発初期のAmbr250研究で最初に特定されたものと同じ複合供給目標を使用した。
【0098】
図23は、MAB1の生産に関する、3つの異なるスケールでの力価値のプロットである。
【0099】
図24は、MAB1の生産に関する、3つの異なるスケールでの1日あたりの測定された浸透圧のプロットである。
【0100】
図23および図24のプロットでは、Ambr250(0.25L)のデータは長い明灰色のダッシュで示され、250Lのデータは短い濃灰色のダッシュで示され、1,000Lのデータは黒い実線の白抜きのひし形で示されている。
【0101】
スケールアップすると、力価(図23)および浸透圧(図24)の両方が、元のアルゴリズムで予測されるプロセスに沿って推移し、実験的および生物学的変動の範囲内に収まった。このことは、予測される複合供給目標が、スケールにかかわらず適切であることを示している。初期浸透圧のオフセット(図24)は、接種時の分割比の違いによるものと思われる。
【0102】
図25は、BsAb1の生産に関する、0.25L、250L、および1,000Lスケールでの1日あたりの複合供給目標を示す棒グラフである。培養2日目から11日目には、Ambr250(0.25Lスケール)、250L #1、250L #2、および1,000Lのプロセスのバーを、各日数の左から右へ並べた。BsAb1の生産バイオリアクタープロセスのために作成された1日あたりの複合供給目標を、細胞ベースのグルコースアルゴリズムを使用して、Ambr250および2つの250L SUB実験中に予測した。アルゴリズムは、リアクター内の現在のバイオマスに基づいて、1日あたりの複合供給目標を提供した。研究したAmbr250はまた、生産中に起こり得るわずかな供給ミスの影響を研究するため、±10%の範囲の目標も含めた。アルゴリズムが予測した目標を3つの別々のプロセスで評価し、第3の実験(250L #2、図25)からの出力を、大スケール生産に移す複合供給目標として選択した。
【0103】
図26は、BsAb1の生産に関する、3つの異なるスケールでの1日あたりの測定された浸透圧のプロットである。次いで、第2のパイロットスケール実験(250L #2、図25)から予測される複合供給目標を、大スケールプロセス(1,000L)に適用した。追加の開発研究のための資料を作成するために最初にパイロットスケール研究を実施した。スケールアップすると、力価(データは示さず)および浸透圧(図26)の両方が、元のアルゴリズムで予測されるプロセスに沿って推移し、実験的および生物学的変動の範囲内に収まった。このことは、予測される複合供給目標が、スケールにかかわらず適切であることを示している。
【0104】
本明細書では、実施例を使用して、最良の様式を含む開示される技術の特定の実施態様を開示し、また、当業者であれば誰でも、任意の装置またはシステムの製造および使用、ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含む、開示される技術の特定の実施態様を実践できるようにする。開示される技術の特定の実施態様の特許可能範囲は特許請求の範囲に定義されており、当業者に思いつく他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【0105】
開示される技術の特定の実施態様を、現在最も実用的で様々な実施態様であると考えられるものに関連して説明してきたが、開示される技術は、開示される実施態様に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲に含まれる様々な修正および同等の配置をカバーすることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0106】
開示される技術の特定の実施態様を、開示される技術の例示的な実施態様によるシステムおよび方法および/またはコンピュータプログラム製品のブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムを参照して上述した。ブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムの1つまたは複数のブロック、ならびにブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムのブロックの組合せは、それぞれ、コンピュータ実行可能なプログラム命令によって実装できることが理解されよう。同様に、ブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムのいくつかのブロックは、開示される技術のいくつかの実施態様によれば、必ずしも提示された順序で実行される必要はなくてもよく、または必ずしも実行する必要があるわけではない可能性がある。
【0107】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置に特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ読み取り可能なメモリに格納することもでき、コンピュータ読み取り可能なメモリに格納された命令が、フローダイヤグラムの1つまたは複数ブロックで指定された1つまたは複数の関数を実施する命令手段を含む製造品を生成するようにする。
【0108】
開示される技術の実施態様は、組み入れられたコンピュータ可読プログラムコードまたはプログラム命令を有するコンピュータ使用可能媒体を含むコンピュータプログラム製品を提供することができ、前記コンピュータ可読プログラムコードは、フローダイヤグラムの1つまたは複数ブロックにおいて指定された1つまたは複数の関数を実装するために実行されるように適合される。コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置で実行される命令が、フローダイヤグラムの1つまたは複数のブロックで指定された関数を実装するための要素またはステップを提供するように、コンピュータまたは他のプログラム可能な装置でコンピュータ実装プロセスを生成するための一連の動作要素またはステップを実行させるために、コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置にロードすることもできる。
【0109】
したがって、ブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムのブロックは、指定された関数を実行するための手段の組合せ、指定された関数を実行するための要素またはステップの組合せ、および指定された関数を実行するためのプログラム命令手段をサポートする。また、ブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムの各ブロック、ならびにブロックダイヤグラムおよびフローダイヤグラムのブロックの組合せは、指定された関数、要素、もしくはステップを実行する特殊用途のハードウェアベースのコンピュータシステム、または特殊用途のハードウェアとコンピュータ命令との組合せによって実装できることも理解されよう。
【符号の説明】
【0110】
102 生産用リアクター
104 生細胞密度測定システム
106 将来の生細胞密度予測システム
108 供給物計算システム
110 栄養供給制御システム
112 供給物源
114 フィードバックループ
116 PCFシステム 120 栄養供給システム
180 ネットワーク
200、300 方法
202 一定の時間間隔で供給物が添加される細胞株のフェッドバッチバイオリアクター運転を実行する
204 各一定の時間間隔について、細胞あたりの正規化された供給値を計算する
206 各一定の時間間隔について、正規化されたIVC数を計算する
208 一定の時間間隔から、バランスのとれた供給時間間隔について細胞あたりの正規化された供給値が正規化されたIVC数にほぼ等しくなるような、バランスのとれた供給時間間隔を選択する
210 細胞あたりの係数(PCF)を、バランスのとれた供給時間間隔の細胞あたりの供給値に等しく設定する
212 各供給間隔に対して供給量が決定され、それぞれの供給量がPCFに少なくとも部分的に基づき、現在の供給間隔から将来の供給間隔までのIVC数の予測される変化に比例するように細胞ベースのフェッドバッチスケジュールを作成する。
302 推定供給物消費速度(q)に少なくとも部分的に基づき、現在の供給間隔から将来の供給間隔までの積算生細胞(IVC)数の推定変化量に少なくとも部分的に基づいて、バイオリアクターに供給量を供給する
304 供給間隔あたりの供給量が増加する初期相において、バイオリアクターに供給量を供給する
306 供給間隔あたりの供給量が減少する最終相において、バイオリアクターに供給量を供給する
308 バイオリアクターの容積の約2%~約10%の間が供給物で構成されるように、細胞ベースのフェッドバッチバイオリアクター運転を完了させる
510 プロセッサ
520 非一過性のコンピュータ可読媒体
522 オペレーティングシステム
524 データベース
526 プログラム
560 I/O装置
562 グラフィカルユーザインターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】