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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】RETGC遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20240705BHJP
   C12N 15/60 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 38/54 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240705BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/60 ZNA
C12N15/12
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61K38/54
A61K35/76
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501712
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 IB2022056458
(87)【国際公開番号】W WO2023285987
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/221,883
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517271175
【氏名又は名称】メイラグティーエックス ユーケー アイアイ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシオス ジョージアディス
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084BA02
4C084DC22
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA33
(57)【要約】
本明細書では、網膜膜結合型グアニリルシクラーゼ1(RetGC1)の発現のための発現コンストラクト、ウイルスゲノム、及びベクター、ならびに本明細書で開示されるベクターを含む医薬組成物が提供される。また、本明細書に開示される発現コンストラクト及びベクターを使用する方法であって、網膜疾患の治療を必要とする対象における網膜疾患を治療する方法を含み、網膜疾患は、GUCY2D遺伝子における1つ以上の変異に関連しており、本明細書に開示されるベクターを対象に投与することを含む、方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光受容体細胞に発現を与えるプロモーター配列、及び
(b)網膜膜結合型グアニリルシクラーゼ1(RetGC1)をコードする核酸配列;を含む発現コンストラクトであって、前記核酸配列は前記プロモーターに作動可能に連結されている、前記発現コンストラクト。
【請求項2】
前記プロモーター配列が、ロドプシンキナーゼ(RK)またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である、請求項1に記載の発現コンストラクト。
【請求項3】
前記プロモーター配列が、配列番号7と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項2に記載の発現コンストラクト。
【請求項4】
前記プロモーター配列が、配列番号7を含む、請求項3に記載の発現コンストラクト。
【請求項5】
前記プロモーター配列が、配列番号8と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項2に記載の発現コンストラクト。
【請求項6】
前記プロモーター配列が、配列番号8を含む、請求項5に記載の発現コンストラクト。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の発現コンストラクトであって、転写後調節エレメントをさらに含む、前記発現コンストラクト。
【請求項8】
前記転写後調節エレメントが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む、請求項7に記載の発現コンストラクト。
【請求項9】
前記転写後調節エレメントが、配列番号10と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項7に記載の発現コンストラクト。
【請求項10】
前記転写後調節エレメントが、配列番号10を含む、請求項9に記載の発現コンストラクト。
【請求項11】
前記RetGC1をコードする前記核酸配列が、野生型RetGC1遺伝子である、請求項1~10のいずれか1項に記載の発現コンストラクト。
【請求項12】
前記RetGC1をコードする前記核酸配列が、コドン最適化配列である、請求項1~10のいずれか1項に記載の発現コンストラクト。
【請求項13】
前記RetGC1をコードする前記核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の発現コンストラクト。
【請求項14】
前記RetGC1をコードする前記核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14を含む、請求項13に記載の発現コンストラクト。
【請求項15】
前記RetGC1をコードする前記核酸配列が、配列番号12と少なくとも90%同一である配列を含むタンパク質をコードする、請求項1~10のいずれか1項に記載の発現コンストラクト。
【請求項16】
前記RetGC1をコードする前記核酸配列が、配列番号12を含むタンパク質をコードする、請求項15に記載の発現コンストラクト。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の発現コンストラクトであって、ポリアデニル化シグナルをさらに含む、前記発現コンストラクト。
【請求項18】
前記ポリアデニル化シグナルが、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(BGH-ポリA)シグナルを含む、請求項17に記載の発現コンストラクト。
【請求項19】
前記ポリアデニル化シグナルが、配列番号11と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項17に記載の発現コンストラクト。
【請求項20】
前記ポリアデニル化シグナルが、配列番号11を含む、請求項19に記載の発現コンストラクト。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の発現コンストラクトであって、配列番号1~4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む、前記発現コンストラクト。
【請求項22】
請求項21に記載の発現コンストラクトであって、配列番号1~4からなる群から選択される配列を含む、前記発現コンストラクト。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の発現コンストラクトを含む、ベクター。
【請求項24】
請求項23に記載のベクターであって、ウイルスベクターである、前記ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターであって、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、前記ベクター。
【請求項26】
請求項25に記載のベクターであって、AAV血清型AAV2に由来するゲノムを含む、前記ベクター。
【請求項27】
AAV7m8由来のキャプシドを含む、請求項25または26のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項28】
請求項23~27のいずれか1項に記載のベクター及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項29】
網膜疾患の治療を必要とする対象における網膜疾患を治療するための方法であって、前記網膜疾患は、GUCY2D遺伝子における1つ以上の変異と関連しており、請求項23~27のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項28に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記網膜疾患が、錐体桿体ジストロフィー(CRD)またはレーバー先天性黒内障1型(LCA1)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記網膜疾患が、LCA1である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現の増加を必要とする対象における桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現を増加させる方法であって、請求項23~27のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項28に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項33】
光受容体における環状グアノシン一リン酸(cGMP)レベルの増加を必要とする対象における、光受容体における環状グアノシン一リン酸(cGMP)レベルを増加させる方法であって、請求項23~27のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項28に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
前記ベクターまたは前記医薬組成物を、眼内注射によって投与する、請求項29~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記ベクターまたは前記医薬組成物を、前記対象の網膜中心に注射する、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分子生物学及び医学の分野に関する。より具体的には、本開示は、網膜疾患の治療のための遺伝子治療のための組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
網膜膜結合型グアニリルシクラーゼ(RetGC)は、光受容体外節の円板膜に位置し、光受容体生理学における重要な酵素の1つであり、哺乳動物の桿体及び錐体において光伝達のセカンドメッセンジャーである環状グアノシン一リン酸(cGMP)を産生する。光受容体の興奮と回復の間、2つのRetGCアイソザイム、すなわちRetGC1及びRetGC2(それぞれGC-E及びGC-F、またはROSGC1及びROSGC2としても知られる)は、グアニリルシクラーゼ活性化タンパク質(GCAP)によって媒介されるカルシウムフィードバックによって厳密に調節される。
【0003】
RetGCをコードする遺伝子であるGUCY2Dにおける100を超える変異は、2つの主要な疾患、すなわち常染色体劣性レーバー先天性黒内障1型(arLCAもしくはLCA1)または常染色体優性錐体桿体ジストロフィー(adCRD)を引き起こすことが知られている。CRDでは、錐体で変性が始まり、罹患していない網膜の黄斑に錐体が多く存在するため、中心視野の喪失につながる。錐体の変性に続いて桿体が変性すると、CRDは完全な失明につながる可能性がある。LCA1表現型はさらにより重度であるとみられ、光受容体機能の喪失及び失明が幼児期に現れる。
【0004】
したがって、GUCY2D変異(LCA1及びCRDを含むが、これらに限定されない)に関連する網膜疾患の治療のための新規治療法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、以下:(a)光受容体細胞において発現を与えるプロモーター配列、及び(b)網膜膜結合型グアニリルシクラーゼ1(RetGC1)をコードする核酸配列;を含む発現コンストラクトであって、核酸配列はプロモーターに作動可能に連結されている、発現コンストラクトを提供する。
【0006】
一実施形態では、プロモーター配列は、ロドプシンキナーゼ(RK)またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。
【0007】
一実施形態では、プロモーター配列は、配列番号7と少なくとも90%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号7を含む。
【0008】
一実施形態では、プロモーター配列は、配列番号8と少なくとも90%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号8を含む。
【0009】
一実施形態では、発現コンストラクトは転写後調節エレメントをさらに含む。一実施形態では、転写後調節因子は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。一実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号10と少なくとも90%同一である配列を含む。一実施形態では、転写後調節エレメントは配列番号10を含む。
【0010】
一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、野生型RetGC1(GUCY2D)遺伝子由来のコード配列(cds)である。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、コドン最適化配列である。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12と少なくとも90%同一である配列を含むタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12を含むタンパク質をコードする。
【0011】
一実施形態では、発現コンストラクトは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(BGH-ポリA)シグナルを含む。一実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11と少なくとも90%同一である配列を含む。一実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、発現コンストラクトは、配列番号1~4からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含む。いくつかの実施形態では、発現コンストラクトは、配列番号1~4からなる群から選択される配列を含む。
【0013】
一態様では、本明細書に開示される発現コンストラクトを含むベクターを提供する。実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。一実施形態では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一実施形態では、ベクターは、AAV血清型AAV2に由来するゲノムを含む。一実施形態では、ベクターは、AAV 7m8由来のキャプシドを含む。
【0014】
一態様では、本明細書に開示されるベクター及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
一態様では、網膜疾患の治療を必要とする対象における網膜疾患を治療するための方法であって、網膜疾患は、GUCY2D遺伝子における1つ以上の変異と関連しており、本明細書に開示されるベクターまたは医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、網膜疾患は錐体桿体ジストロフィー(CRD)またはレーバー先天性黒内障1型(LCA1)である。一実施形態では、網膜疾患はLCA1である。
【0016】
一態様では、桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現の増加を必要とする対象における桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現を増加させる方法であって、本明細書に開示されるベクターまたは医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0017】
一態様では、光受容体における環状グアノシン一リン酸(cGMP)レベルの増加を必要とする対象における光受容体における環状グアノシン一リン酸(cGMP)レベルを増加させる方法であって、本明細書に開示されるベクターまたは医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0018】
実施形態では、ベクターまたは医薬組成物は、眼内注射によって投与する。実施形態では、ベクターまたは医薬組成物は、対象の網膜中心に注射する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】細胞層を示すヒト網膜の概略図を示す。
図2】20週目の野生型(WT)網膜オルガノイド及びRetGC KO iPSC網膜オルガノイドを示す。上列:WTとRetGC KOの両方で、周辺縁に外節の「刷子縁」を有するオルガノイド全体を示す明視野画像。中列。錐体及び桿体の外節及び内節は、錐体オプシン及びロドプシンで染色されている。外網状層(OPL)及び内網状層(IPL)のシナプスは、Ribeye及びVGlutで染色されている。双極細胞及びアマクリン/神経節細胞は、PKCa及びカルレチニンで染色されている。RetGCは、WTオルガノイドでは光受容体外節に局在し、RetGC KOオルガノイドでは存在しない。
図3】対照オルガノイド及びRetGC KOオルガノイドにおいて40日目から220日目までのWTオルガノイド及びRetGC KOオルガノイド全体における総タンパク質発現(ウェスタンブロット)を示す(βチューブリンに対して正規化)。
図4】AAV 7m8キャプシドにパッケージ化された4つの導入遺伝子カセットの設計を示す。RKプロモーター及びCMVプロモーターは、WT GUCY2D遺伝子とともに、WPREエレメント及びウシ成長ホルモンポリアデニル化(BGH-ポリA)シグナルを含むかまたは含まずに、組み込まれている。
図5】WTオルガノイド及び形質導入RetGC KOオルガノイドにおけるPDE6染色強度を示す。ロドプシン及びPDE6βで染色した網膜オルガノイド外節の代表的な画像。
図6】ロドプシン陽性外節内のPDE6β染色強度についての定量的免疫蛍光を示す。各点は、個々のオルガノイドのタイルスキャンを表す。染色強度は、同じブロック上で処理、染色、及び画像化されたWTオルガノイドのパーセンテージとして表す。
図7】7m8ベクターによる形質導入後の網膜オルガノイドにおけるRetGC及びβチューブリン(ハウスキーピング)のタンパク質発現を決定するためのウェスタンブロットの結果を示す。βチューブリンに対するRetGCのウェスタンブロットシグナルのレシオメトリック、デンシトメトリー定量化を示す。
図8】FRETアッセイによるcGMP濃度[nM]の定量化を示す。吸光度読み取り値を、総タンパク質量[ug]に対して正規化した。WTオルガノイド対RetGCノックアウト(非形質導入NT)オルガノイドを、4つのベクターで形質導入されたオルガノイドと比較した(各実験群につきn=7胚様体(EB))。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、網膜膜結合型グアニリルシクラーゼ1(RetGC1)の発現のための発現コンストラクト、ウイルスゲノム、及びベクター、ならびにGUCY2D遺伝子の1つ以上の変異に関連する網膜疾患を治療するために発現コンストラクト、ウイルスゲノム、及びベクターを使用する方法が提供される。
【0021】
RetGC
RetGCは、光受容体の桿体及び錐体におけるcGMPの合成を触媒する。このように、RetGCは視覚サイクル中のcGMP補充を媒介することにより、光伝達において必須の役割を果たす。
【0022】
光受容体の興奮と回復の間、2つのRetGCアイソザイム、すなわちRetGC1及びRetGC2(それぞれGC-E及びGC-F、またはROSGC1及びROSGC2としても知られる)は、グアニリルシクラーゼ活性化タンパク質(GCAP)によって媒介されるカルシウムフィードバックによって厳密に調節される。
【0023】
RetGC1の役割は、光曝露後にcGMPレベルを補充することである。暗所では、cGMPレベルは一定の比率で維持され、cGMPゲートチャネルを開口させたままに保ち、内向き電流の流入を可能にすることで細胞の部分的な脱分極を維持する。光に曝露されると、cGMPの加水分解及びチャネル閉鎖がもたらされ、細胞内Ca2+の急激な減少及び細胞の過分極が促進される。低Ca2+濃度下では、グアニル酸シクラーゼ活性化タンパク質(GCAP)がGC1活性を刺激し、cGMP合成、チャネルの再開口、及び暗状態の回復をもたらす。
【0024】
光子が外節を通過すると、光子は外節の膜に埋め込まれたオプシンによって捕捉される。セカンドメッセンジャーcGMPは、視覚サイクルのシグナル伝達ステップにおける主要な構成要素である。外節の細胞質における合成及び分解のバランスによって、視覚サイクルのシグナル伝達ステップが制御される。cGMPは、RetGCによって触媒される反応によってGTPから生成される。cGMPは、Ca2+イオンの流入を可能にするチャネルに結合する。光伝達により、cGMPはPDE6によってGMPに加水分解され、これによってcGMPチャネルが閉鎖される。これにより、Ca2+の流入が阻害され、これに伴って、円板膜からCa2+が流出してその濃度が低下する。
【0025】
光伝達サイクルでは、光子は桿体中のロドプシンと錐体中の錐体オプシンによって吸収され、そこで11-シスレチナールがオールトランスレチナールに変換される。オールトランスレチナールはGタンパク質トランスデューシンのアルファサブユニットを活性化し、そのプロセスでGDPがGTPに変換される。次に、生成されたGTPは、ホスホジエステラーゼ6(PDE6)のガンマサブユニットを活性化し、cGMP産生を阻害することが可能になる。これによって、cGMPゲートチャネルが閉鎖され、したがってカルシウムイオンの流入が停止される。暗状態におけるGCAPは、カルシウムイオンに結合しているため、RetGCと会合することができない。明状態におけるGCAPからのCa2+の放出によって、GCAPがRetGCに結合し、cGMPを産生することが可能になる。これと並行して、オールトランスはロドプシンキナーゼによるリン酸化及びアレスチンへの結合によって不活性化される。Gタンパク質トランスデューシン結合GTPは、再びGDPに変換される。その後、サイクル全体が繰り返される。
【0026】
RetGC1は、ヒトでは遺伝子GUCY2Dによってコードされ、マウスでは遺伝子Gucy2eによってコードされる。RetGC2は、ヒトの遺伝子GUCY2Fによってコードされる。
【0027】
RetGC1をコードするGUCY2D遺伝子の変異は、ヒトにおける重度の網膜疾患、主に常染色体優性錐体桿体ジストロフィー(adCRD)または常染色体劣性レーバー先天性黒内障1型(arLCA)をもたらす。CRDでは、錐体で変性が始まり、罹患していない網膜の黄斑に錐体が多く存在するため、中心視野の喪失につながる。錐体の変性に続いて桿体が変性すると、CRDは完全な失明につながる可能性がある。LCA1表現型はさらにより重度であるとみられ、光受容体機能の喪失及び失明が幼児期に現れる。LCA(12型)の発症に関与する別の遺伝子は、網膜変性3(RD3)タンパク質をコードするrd3であり、これは、RetGC1のGCAP媒介活性化の効果的な阻害剤であり、光受容体の内節から外節へのRetGC1の輸送に関与する。
【0028】
合計144の異なるGUCY2D変異が報告されている。大多数(127の変異)は、罹患患者においてLCA表現型をもたらす。LCA関連変異は通常、劣性及びヌル(主にフレームシフト、ナンセンス、及びスプライシング変異)であり、RetGC酵素のすべてのドメインに影響を与える可能性があるが、CRD変異は主に優性ミスセンスであり、これらは、二量体化ドメインに対応する「ホットスポット領域」のE837とT849の間の位置にクラスター化されている。
【0029】
LCA1患者は、生後1年以内に症状を示し、日常的に、視力の低下、網膜電図(ERG)応答の低下または記録不能、眼振、指眼現象、及び見かけ上正常な眼底を有すると報告される。この疾患に関連する光受容体変性の程度に関する報告は矛盾している。2つの死後網膜(26週齢の早産流産胎児及び12歳のドナー)の組織病理学的分析により、桿体と錐体の両方で光受容体変性の兆候が明らかになった。最新の生前イメージング(すなわち、光干渉断層撮影法)を使用したその後の研究では、53歳という年齢の患者に明白な変性がないことが明らかになった。より最近の研究では、高度の視覚障害にもかかわらず、LCA1患者は、中心窩錐体外節の異常、及び一部の患者における中心窩錐体喪失を除いて、正常な光受容体層構造を保持していることが示されている。
【0030】
CRDでは、桿体機能の異常は錐体機能の異常よりも重度ではなく、疾患の経過において錐体機能不全よりも遅く検出される場合がある。診断は電気生理学的評価によって確立される;機能的結果は、疾患の病期及び個体の年齢によって異なる。錐体桿体ジストロフィーの診断は、末梢視野喪失及び中心視野喪失の実証によって裏付けることができる。
【0031】
発現コンストラクト
一態様では、以下:(a)光受容体細胞において発現を与えるプロモーター配列、及び(b)網膜膜結合型グアニリルシクラーゼ(RetGC1)をコードする核酸配列;を含む発現コンストラクトであって、核酸配列はプロモーターに作動可能に連結されている、発現コンストラクトを提供する。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」とは、RetGC1のコード配列(cds)と連続する発現制御配列(例えば、プロモーター)と、RetGC1の発現を制御するためにトランスでまたは離れて作用する発現制御配列の両方を指す。発現制御配列には、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列及びエンハンサー配列;スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;及び、所望される場合、タンパク質のプロセシング及び/または分泌を強化する配列が含まれる。
【0032】
多数の発現制御配列、例えば天然、構成的、誘導性及び/または組織特異的配列が当技術分野で公知であり、所望の発現のタイプに応じて、RetGC1(GUCY2D)導入遺伝子の発現を駆動するために利用することができる。真核細胞の場合、発現制御配列には典型的には、プロモーター配列、エンハンサー配列、及びスプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位を含み得るポリアデニル化配列が含まれる。ポリアデニル化配列は、一般に、RetGC1をコードする配列の後に、3’ITR配列の前に挿入される。本明細書に開示される方法において有用なrAAVの別の調節成分は、内部リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列を使用して、単一の遺伝子転写物から複数のポリペプチドを産生することができる。IRES(または他の好適な配列)を使用して、複数のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を産生するか、または同じ細胞からまたは同じ細胞内で2つの異なるタンパク質を発現する。例示的なIRESは、光受容体、RPE及び神経節細胞における導入遺伝子の発現を支持するポリオウイルス内部リボソーム進入配列である。好ましくは、IRESは、rAAVベクター中のRetGC1をコードする配列の3’側に位置する。
【0033】
一実施形態では、プロモーター配列はロドプシンキナーゼ(RK)プロモーター配列を含む。実施形態では、プロモーター配列は、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号7を含む。
【0034】
一実施形態では、プロモーター配列は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列を含む。実施形態では、プロモーター配列は、配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号8を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、プロモーターは光受容体細胞に特異的である、すなわち、プロモーターは光受容体細胞では活性を有するが、他の細胞型では活性が低下しているか、または活性を有していない。
【0036】
一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、野生型RetGC1(GUCY2D)遺伝子由来のコード配列である。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、コドン最適化配列である。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含むタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12を含むタンパク質をコードする。
【0037】
一実施形態では、発現コンストラクトは転写後調節エレメントを含む。一実施形態では、発現コンストラクトは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。いくつかの実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号10を含む。
【0038】
一実施形態では、発現コンストラクトはポリアデニル化シグナルを含む。一実施形態では、発現コンストラクトはウシ成長ホルモンポリアデニル化(BGH-ポリA)シグナルを含む。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11を含む。
【0039】
一実施形態では、発現コンストラクトは、1つ以上の逆方向末端反復(ITR)を含む核酸を含む。一実施形態では、ITR配列はAAV血清型2に由来する。一実施形態では、5’ITR配列は、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、5’ITR配列は配列番号5を含む。一実施形態では、3’ITR配列は、配列番号6少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%と同一である配列を含む。一実施形態では、3’ITR配列は配列番号6を含む。
【0040】
ベクター
一態様では、組換えベクター及び細胞への導入遺伝子または発現コンストラクトの導入のためのその使用が提供される。いくつかの実施形態では、組換えベクターは、宿主細胞におけるDNAの複製及び適切なレベルでの標的細胞における標的遺伝子の発現をもたらすDNAセグメントを含む追加のDNAエレメントを含む組換えDNAコンストラクトを含む。当業者は、発現制御配列(プロモーター、エンハンサーなど)が、標的細胞における標的遺伝子の発現を促進する能力に基づいて選択されることを理解する。本明細書で使用される「ベクター」とは、インビトロまたはインビボで宿主細胞に送達されるべきポリヌクレオチドを含むビヒクルを意味する。ベクターの非限定的な例としては、組換えプラスミド、酵母人工染色体(YAC)、ミニ染色体、DNAミニサークル、またはウイルス(ウイルス由来の配列を含む)が挙げられる。ベクターはまた、インビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に送達される核酸を含むビリオンを指してもよい。いくつかの実施形態では、ベクターは、組換えウイルスゲノムを含むビリオンを指し、ここで、ウイルスゲノムは、1つ以上のITR及び導入遺伝子を含む。
【0041】
一実施形態では、組換えベクターは、ウイルスベクターまたは複数のウイルスベクターの組み合わせである。
【0042】
一態様では、本明細書に開示される発現コンストラクトのいずれかを含むベクターが提供される。
【0043】
一態様では、(a)光受容体細胞において発現を与えるプロモーター配列、及び(b)RetGC1をコードする核酸配列、を含む核酸を含むベクターであって、RetGC1をコードする核酸配列は、プロモーターに作動可能に連結されている、ベクターが提供される。
【0044】
一実施形態では、プロモーター配列は、RKプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号7を含む。
【0045】
一実施形態では、プロモーター配列は、CMVプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号8を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、光受容体細胞に特異的である。
【0047】
一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、野生型RetGC1(GUCY2D)遺伝子由来のコード配列である。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、コドン最適化配列である。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含むタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12を含むタンパク質をコードする。
【0048】
一実施形態では、ベクターは、転写後調節エレメントを含む核酸を含む。一実施形態では、ベクターは、WPREを含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号10を含む。
【0049】
一実施形態では、ベクターは、ポリアデニル化シグナルを含む核酸を含む。一実施形態では、ベクターは、BGH-ポリAシグナルを含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11を含む。
【0050】
一実施形態では、ベクターは、1つ以上の逆方向末端反復(ITR)を含む核酸を含む。一実施形態では、ITR配列はAAV血清型2に由来する。一実施形態では、5’ITR配列は、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、5’ITR配列は配列番号5を含む。一実施形態では、3’ITR配列は、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、3’ITR配列は配列番号6を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、ベクターは、配列番号1~4の配列のいずれかと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、配列番号1~4からなる群から選択される配列を含む配列を含む核酸を含む。
【0052】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)RKプロモーター配列を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列がプロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)WPRE;
(d)BGH-ポリAシグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ベクターは、2つのITR配列を含む。
【0053】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)CMVプロモーター配列を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列がプロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)WPRE;
(d)BGH-ポリAシグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0054】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0055】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0056】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0057】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0058】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号7を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14を含む、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0059】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号8を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14を含む、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0060】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号7を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0061】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むベクターが提供される:
(a)配列番号8を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、核酸は、2つのITR配列を含む。
【0062】
ウイルスベクター
標的細胞、組織、または生物において標的遺伝子を発現させるためのウイルスベクターは、当技術分野で公知であり、例えば、AAVベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、または合成ウイルスベクター(例えば、キメラウイルス、モザイクウイルス、もしくはシュードタイプウイルス、及び/または外来タンパク質、合成ポリマー、ナノ粒子、もしくは小分子を含有するウイルス)、が挙げられる。
【0063】
AAVベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、効率的な複製を促進するためにヘルパーウイルスを必要とする小さな一本鎖DNAウイルスである。AAVの4.7kbゲノムは、2つの逆方向末端反復(ITR)と、それぞれRepタンパク質及びCapタンパク質をコードする2つのオープンリーディングフレームを特徴とする。Repリーディングフレームは、分子量78kD、68kD、52kD、及び40kDの4つのタンパク質をコードする。これらのタンパク質は主に、AAVの複製及びレスキュー及び宿主細胞の染色体へのAAVの組み込みの制御において機能する。Capリーディングフレームは、ビリオンキャプシドを形成する、分子量85kD(VP1)、72kD(VP2)、及び61kD(VP3)の3つの構造タンパク質をコードする。AAVビリオン中の総タンパク質の80%超がVP3からなる。rep及びcapのオープンリーディングフレームの5’及び3’末端に隣接するのは、約145bp長の逆方向末端反復(ITR)である。2つのITRは、AAVの複製、レスキュー、パッケージング、及びAAVゲノムの組み込みに必須の唯一のシス要素である。repドメイン及びcapドメイン全体を切り出し、治療用またはレポーター導入遺伝子で置き換えることができる。
【0064】
組換えアデノ随伴ウイルス「rAAV」ベクターには、任意のアデノ随伴ウイルス血清型に由来する任意のベクターが含まれる。rAAVベクターは、全体または一部が欠失したAAV野生型遺伝子、好ましくはRep及び/またはCap遺伝子のうちの1つ以上を有することができるが、機能的な隣接ITR配列を保持している。
【0065】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、rAAVゲノム及び1つ以上のキャプシドタンパク質を含むrAAVビリオンである。いくつかの実施形態では、rAAVゲノムは、本明細書に開示される発現カセットを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるウイルスベクターは、RetGC1をコードする配列に対してそれぞれ5’及び3’に位置するAAV 5’ITR及び3’ITRを含む核酸を含む。しかし、ある特定の実施形態では、核酸が、タンデムに、例えば、5’-3’で、もしくは頭-尾で、または別の代替配置で配置された5’ITR配列及び3’ITR配列を含有することが望ましい場合がある。さらに他の実施形態では、核酸がITRの複数のコピーを含有するか、またはRetGC1をコードする配列の5’及び3’の両方に位置する5’ITR(または逆に3’ITR)を有することが望ましい場合がある。ITR配列は、異種分子のすぐ上流及び/または下流に位置していてもよく、あるいは介在配列が存在していてもよい。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列が機能的なレスキュー、複製、及びパッケージングを提供する限り、(例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって)改変することができる。ITRは、本明細書に記載されるように、AAV2から、または他のAAV血清型の中から選択することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクター、例として、AAV1(すなわち、AAV1 ITR及びAAV1キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV2(すなわち、AAV2 ITR及びAAV2キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV3(すなわち、AAV3 ITR及びAAV3キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV4(すなわち、AAV4 ITR及びAAV4キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV5(すなわち、AAV5 ITR及びAAV5キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV6(すなわち、AAV6 ITR及びAAV6キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV7(すなわち、AAV7 ITR及びAAV7キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV8(すなわち、AAV8 ITR及びAAV8キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAV9(すなわち、AAV9 ITR及びAAV9キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAVrh74(すなわち、AAVrh74 ITR及びAAVrh74キャプシドタンパク質を含有するAAV)、AAVrh.8(すなわち、AAVrh.8 ITR及びAAVrh.8キャプシドタンパク質を含有するAAV)、またはAAVrh.10(すなわち、AAVrh.10 ITR及びAAVrh.10キャプシドタンパク質を含有するAAV)である。
【0068】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、1つのAAV血清型に由来するITR、及び異なるAAV血清型に由来するキャプシドタンパク質を含む、偽型AAVベクターである。いくつかの実施形態では、偽型AAVは、AAV2/9(すなわち、AAV2 ITR及びAAV9キャプシドタンパク質を含有するAAV)である。いくつかの実施形態では、偽型AAVは、AAV2/10(すなわち、AAV2 ITR及びAAV10キャプシドタンパク質を含有するAAV)である。
【0069】
いくつかの実施形態では、偽型AAVはAAV2/7m8(すなわち、AAV2 ITR及びAAV 7m8キャプシドタンパク質を含有するAAV)である。
【0070】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh74、AAVrh.8、またはAAVrh.10由来の1つ以上のキャプシドタンパク質のキメラを含有するキャプシドタンパク質など、組換えキャプシドタンパク質を含有する。実施形態では、キャプシドは、AAV2バリアントrAAV2-レトロ(WO2017/218842からの配列番号44、参照により本明細書に組み込まれる)などのバリアントAAVキャプシドである。
【0071】
一態様では、(a)光受容体細胞において発現を与えるプロモーター配列、及び(b)RetGC1をコードする核酸配列を含む核酸を含むウイルスゲノムであって、RetGC1をコードする核酸配列は、プロモーターに作動可能に連結されている、ウイルスゲノムが提供される。
【0072】
一実施形態では、プロモーター配列は、RKプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号7を含む。
【0073】
一実施形態では、プロモーター配列は、CMVプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、プロモーター配列は配列番号8を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、光受容体細胞に特異的である。
【0075】
一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、野生型RetGC1(GUCY2D)遺伝子由来のコード配列である。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、コドン最適化配列である。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号9を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号13を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号14を含む。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含むタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、RetGC1をコードする核酸配列は、配列番号12を含むタンパク質をコードする。
【0076】
一実施形態では、ウイルスゲノムは、転写後調節エレメントを含む核酸を含む。一実施形態では、ウイルスゲノムは、WPREを含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、転写後調節エレメントは配列番号10を含む。
【0077】
一実施形態では、ウイルスゲノムは、ポリアデニル化シグナルを含む核酸を含む。一実施形態では、ウイルスゲノムは、BGH-ポリAシグナルを含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、ポリアデニル化シグナルは、配列番号11を含む。
【0078】
一態様では、ウイルスゲノムは、1つ以上の逆方向末端反復(ITR)を含む核酸を含む。一実施形態では、ITR配列はAAV血清型2に由来する。一実施形態では、5’ITR配列は、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、5’ITR配列は配列番号5を含む。一実施形態では、3’ITR配列は、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む。一実施形態では、3’ITR配列は配列番号6を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、配列番号1~4の配列のいずれかと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、配列番号1~4からなる群から選択される配列を含む配列を含む核酸を含む。
【0080】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)RKプロモーター配列を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列がプロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)WPRE;
(d)BGH-ポリAシグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0081】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)CMVプロモーター配列を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列がプロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)WPRE;
(d)BGH-ポリAシグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0082】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0083】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0084】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0085】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、プロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、転写後調節エレメント;
(d)配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である配列を含む、ポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0086】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号7を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14を含む、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0087】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号8を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1をコードする核酸配列であって、RetGC1をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されており、RetGC1をコードする核酸配列が、配列番号9、配列番号13または配列番号14を含む、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0088】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号7を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0089】
一実施形態では、以下の1つ以上を含む核酸を含むウイルスゲノムが提供される:
(a)配列番号8を含むプロモーター配列;
(b)RetGC1タンパク質をコードする核酸配列であって、RetGC1タンパク質が、配列番号12を含み、RetGC1タンパク質をコードする核酸配列が、プロモーターに作動可能に連結されている、核酸配列;
(c)配列番号10を含む転写後調節エレメント;
(d)配列番号11の配列を含むポリアデニル化シグナル;及び
(e)1つ以上のITR。いくつかの実施形態では、ウイルスゲノムは、2つのITR配列を含む。
【0090】
他のウイルスベクターとしては、アデノウイルス(AV)ベクター、例えば、E1及びE3領域の欠失により複製欠損性とされたヒトアデノウイルス2型及びヒトアデノウイルス5型に基づくものが挙げられる。転写カセットをE1領域に挿入して、E1/E3欠失組換えAVベクターを得ることができる。アデノウイルスベクターには、ウイルスコード配列を含有しないヘルパー依存性大容量アデノウイルスベクター(大容量、「ガットレス(gutless)」または「ガッティド(gutted)」ベクターとしても知られる)が含まれる。これらのベクターは、ウイルスDNA複製及びパッケージングに必要なシス作用性エレメントを含有し、主に逆方向末端反復配列(ITR)及びパッケージングシグナル(CY)を含有する。これらのヘルパー依存性AVベクターゲノムは、数百塩基対から最大およそ36kbの外来DNAを担持する可能性がある。
【0091】
あるいは、レンチウイルスベクターなどの他の系を使用することもできる。レンチウイルスベースの系は、非分裂細胞ならびに分裂細胞を形質導入することができるため、例えば、CNSの非分裂細胞を標的とする用途に有用になる。レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルスに由来し、そのウイルスと同様に、宿主ゲノムに組み込まれ、非常に長期の遺伝子発現の可能性を提供する。
【0092】
発現カセットを含有する標的遺伝子を担持する、プラスミド、YAC、ミニ染色体及びミニサークルを含むポリヌクレオチドはまた、例えば、カチオン性脂質、ポリマー、またはその両方を担体として使用する非ウイルスベクター系によって細胞または生物に導入することができる。コンジュゲートポリ-L-リシン(PLL)ポリマー及びポリエチレンイミン(PEI)ポリマー系を使用して、ベクターを細胞に送達することもできる。ベクターを細胞に送達する他の方法には、細胞培養と生物の両方に対する、流体力学的注入、及びエレクトロポレーション、及び超音波の使用が含まれる。遺伝子送達のためのウイルス及び非ウイルス送達系の総説については、参照により本明細書に組み込まれるNayerossadat, N. et al.(Adv Biomed Res.2012;1:27)を参照のこと。
【0093】
rAAVビリオン産生
本明細書に開示されるrAAVビリオンは、本明細書に記載される材料及び方法、ならびに当業者に公知の材料及び方法を使用して構築及び産生することができる。本開示の任意の実施形態を構築するために使用されるそのような工学的方法は、核酸操作の当業者に公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を含む。例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1989);及び国際特許公開第WO95/13598号を参照のこと。さらに、アデノウイルスキャプシド内でrAAVカセットを産生するのに好適な方法は、米国特許第5,856,152号及び同第5,871,982号に記載されている。
【0094】
簡単に述べると、rAAVゲノムをrAAVビリオンにパッケージングするために、AAV rep及びAAV capまたはその機能的断片を発現するのに必要な配列、ならびにAAV産生に必須のヘルパー遺伝子を含有する宿主細胞が使用される。AAV rep及びcap配列は、本明細書で見出されるAAV供給源から得られる。AAV rep配列及びAAV cap配列は、当業者に公知の任意の様式で宿主細胞に導入することができ、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染及びプロトプラスト融合、を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、rep配列及びcap配列は、1つ以上の核酸分子によって宿主細胞にトランスフェクトして、エピソームとして細胞内に安定に存在することができる。別の実施形態では、rep配列及びcap配列は、細胞のゲノムに安定して組み込まれる。別の実施形態では、宿主細胞内で一過的に発現するrep配列及びcap配列を有する。例えば、そのようなトランスフェクションに有用な核酸分子は、5’から3’に、プロモーター、プロモーターとrep遺伝子配列の開始部位との間に挿入される任意のスペーサー、AAV rep遺伝子配列、及びAAV cap遺伝子配列を含む。
【0095】
rep配列及びcap配列は、それらの発現制御配列とともに、単一のベクター上に供給してもよく、または各配列をそれ自体のベクター上に供給してもよい。好ましくは、rep配列及びcap配列は、同じベクター上に供給される。あるいは、rep配列及びcap配列は、宿主細胞に導入され得る他のDNA配列を含有するベクター上に供給してもよい。好ましくは、このコンストラクトで使用されるプロモーターは、当業者に公知の任意の好適な構成的プロモーター、誘導性プロモーター、または天然プロモーターであり得る。repタンパク質及びcapタンパク質を提供する分子は、これらの成分を宿主細胞に輸送する任意の形態であってもよい。望ましくは、この分子はプラスミドの形態であり、マーカー遺伝子の配列などの他の非ウイルス配列を含有し得る。この分子はAAV ITRを含有せず、一般にAAVパッケージング配列を含有しない。相同組換えの発生を回避するために、このプラスミドでは他のウイルス配列、特にアデノウイルスの配列は避けられる。このプラスミドは、細胞に安定にトランスフェクトすることができるように構築されることが望ましい。
【0096】
rep及びcapを提供する分子は、宿主細胞に一過的にトランスフェクトすることができるが、宿主細胞は、例えばエピソームとして、または宿主細胞の染色体への組み込みによって、宿主細胞内で機能的rep/capタンパク質を発現するのに必要な配列で安定に形質転換されることが好ましい。そのような安定にトランスフェクトされた宿主細胞の発現を制御するプロモーターに応じて、rep/capタンパク質は一過的に発現することができる(例えば、誘導性プロモーターの使用を通じて)。
【0097】
本開示の実施形態を構築するために使用される方法は、上記の参考文献に記載されているような、従来の遺伝子工学または組換え工学技術である。例えば、rAAVは、製造業者の指示に従って、リン酸カルシウム法(Clontech)またはEffectene試薬(Qiagen、Valencia、Calif.)のいずれかを使用するトリプルトランスフェクション法を利用して生成することができる。導入遺伝子を有するプラスミド、AAV rep及びcapを含有するヘルパープラスミド、ならびにE2A、E4Orf6及びVAのアデノウイルスヘルパー機能を供給するプラスミドを用いる、以下の実施例で使用する方法について、Herzog et al,1999,Nature Medic.,5(1):56-63を参照のこと。本明細書は、本明細書に提供される情報を使用して、特定のコンストラクトの実例を提供するが、当業者は、スペーサー、プロモーター、及び少なくとも1つの翻訳開始及び翻訳停止シグナルを含むその他のエレメントの選択、ならびにポリアデニル化部位の任意選択の付加を使用して、他の好適なコンストラクトを選択し、設計することができる。
【0098】
次に、rAAVビリオンは、rAAVビリオンにパッケージングされるrAAVゲノム、AAV rep配列及びAAV cap配列を含有する、本明細書に記載のrAAVウイルスを含有する宿主細胞を、その発現を誘導する調節配列の制御下で培養することによって産生される。他の考えられるヘルパー遺伝子の中でも、好適なウイルスヘルパー遺伝子、例えばアデノウイルスE2A、E4Orf6及びVAは、当技術分野で公知の様々な方法で、好ましくは別個のプラスミド上で培養物に提供することができる。その後、RetGC1導入遺伝子の発現を誘導する組換えAAVビリオンを、混入ヘルパーウイルスまたは野生型AAVの非存在下で、細胞または細胞培養物から単離する。
【0099】
RetGC1導入遺伝子の発現は、当技術分野で公知の方法で測定することができる。例えば、標的細胞をインビトロで感染させ、細胞内の導入遺伝子のコピー数をサザンブロッティングまたは定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって監視することができる。RNA発現レベルは、ノーザンブロッティングまたは定量的逆転写酵素(RT)-PCRによって監視することができる;またタンパク質発現レベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって、または以下の実施例で詳述する特定の方法によって監視することができる。
【0100】
医薬組成物
本明細書では、本明細書に開示されるベクターのいずれか及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0101】
RetGC1をコードする遺伝子を含むrAAVは、好ましくは従来の方法によって汚染について評価し、次に保存及び/または患者への投与に好適な医薬組成物に製剤化する。
【0102】
本明細書に開示されるベクターの製剤は、pHを適切な生理学的レベルに維持するために、薬学的及び/または生理学的に許容されるビヒクルまたは担体、特に緩衝生理食塩水または他の緩衝液例えば、HEPES、などの網膜下注射に好適なビヒクルまたは担体の使用を伴う。
【0103】
本開示のベクターは、医薬組成物に製剤化することができる。これらの組成物は、ベクターに加えて、薬学的及び/または生理学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、抗酸化剤、防腐剤、または当業者に周知の他の添加剤を含んでもよい。このような材料は非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるものであってはならない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路に従って当業者が決定することができる。医薬組成物は、典型的には液体形態である。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。追加の担体は、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO00/15822号に提供されている。生理食塩水、塩化マグネシウム、デキストロース、もしくは他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含めてもよい。場合によっては、界面活性剤、例としてプルロン酸(PF68)0.001%を使用してもよい。場合によっては、リンゲル液、加乳酸リンゲル液、またはハルトマン液を使用する。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/または他の添加剤を含むことができる。
【0104】
遅延放出の場合、ベクターを、生体適合性ポリマーから形成されたマイクロカプセルまたは当技術分野で公知の方法によるリポソーム担体系など、徐放用に製剤化された医薬組成物に含めてもよい。
【0105】
ベクターを長期保存する場合、グリセロールの存在下で凍結してもよい。
【0106】
治療方法
網膜疾患の治療を必要とする対象における網膜疾患を治療する方法であって、網膜疾患は、GUCY2D遺伝子における1つ以上の変異と関連しており、本明細書に開示されるベクターを対象に投与することを含む、方法が、本明細書において提供される。網膜疾患の治療を必要とする対象における網膜疾患を治療する方法であって、網膜疾患は、GUCY2D遺伝子における1つ以上の変異と関連しており、本明細書に開示されるベクターを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法もまた、本明細書において提供される。網膜疾患の治療を必要とする対象における網膜疾患を治療する方法において使用するためのベクターあって、網膜疾患は、GUCY2D遺伝子における1つ以上の変異と関連している、ベクターが、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、対象は、GUCY2D遺伝子に変異を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト、実験動物、家庭用ペット、及び家畜を含むことを意図しているが、これらに限定されない。哺乳動物には、ヒト、または非ヒト哺乳動物、例としてウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコなどが含まれるが、これらに限定されない。個体及び患者も、本明細書では対象となる。
【0108】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療される(treated)」、「治療すること(treating)」、または「治療(treatment)」という用語は、治療的処置を指し、その目的は、望ましくない生理学的状態、障害または疾患を減速させる(軽減させる)こと、または有益なもしくは所望の臨床結果を得ることである。本開示の目的において、有益なまたは所望の臨床結果としては、症状の軽減;状態、障害、もしくは疾患の程度の低下;病態、障害、もしくは疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない);状態、障害、もしくは疾患の発症の遅延、または状態、障害、もしくは疾患の進行の遅延;状態、障害、もしくは病状の1つ以上の兆候の改善;及び寛解(部分的もしくは完全)、または状態、障害、もしくは疾患の向上または改善が挙げられるが、これらに限定されない。治療には、過剰なレベルの副作用を伴わずに、臨床的に有意な応答を誘発することが含まれる。治療はまた、治療を受けていなかった場合に予測される生存期間と比較して、生存期間を延長することも含む。「予防する」、「予防」などの用語は、明らかな疾患もしくは障害の発症前に作用すること、疾患もしくは障害が発症するのを防ぐこと、または疾患もしくは障害の程度を最小限に抑えるか、あるいはその進行過程を遅らせることを指す。
【0109】
いくつかの実施形態では、治療の成功は、以下、すなわち、視力、網膜電図(ERG)応答、眼振の減少、指眼現象の変化、及び組織病理学的分析または光干渉断層撮影、のうちの1つ以上によって測定される。
【0110】
いくつかの実施形態では、網膜疾患は錐体桿体ジストロフィー(CRD)またはレーバー先天性黒内障1型(LCA1)である。一実施形態では、網膜疾患はLCA1である。一実施形態では、網膜疾患はCRDである。
【0111】
一態様では、以下を含む方法が提供される:
(a)対象がGUCY2D遺伝子に変異を保有しているかどうかを決定すること;及び
(b)対象がGUCY2D遺伝子に変異を保有する場合、本明細書に開示されるベクターを含む医薬組成物を対象に投与すること。
【0112】
投与の経路及び方法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるベクターまたは医薬組成物は、眼内注射によって投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるベクターまたは医薬組成物は、直接網膜注射、網膜下注射、または硝子体内注射によって投与する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるベクターまたは医薬組成物は、対象の網膜中心に投与する。
【0113】
本開示のベクターの用量は、種々のパラメータに従って、特に治療される患者の年齢、体重及び状態、特定の眼障害及び進行性である場合は障害が進行している程度、投与経路、及び必要なレジメンに従って決定することができる。また、医師は特定の患者に必要な投与経路及び投与量を決定することができる。プロモーター配列の制御下でRetGC1をコードする核酸配列を担持するrAAVの有効量は、望ましくは、約1×10~2×1012の間のrAAVゲノム粒子、または1×1010~2×1011の間のゲノム粒子の範囲である。ゲノム粒子は、本明細書では、配列特異的方法(リアルタイムPCRなど)を用いて定量することができる一本鎖DNA分子を含有するAAVキャプシドとして定義される。いくつかの実施形態では、約1×10~2×1012のrAAVゲノム粒子は、約150~約800μlの間の体積で提供される。いくつかの実施形態では、約1×1010~2×1011のrAAVゲノム粒子は、約250~約500μlの間の体積で提供される。これらの範囲のさらに他の用量は、主治医が選択することができる。
【0114】
用量は単回用量として提供してもよいが、僚眼に対して、または何らかの理由(手術合併症など)でベクターが網膜の正しい領域を標的にしなかった場合には、繰り返してもよい。治療は、好ましくは各眼に対する単一の永久治療であるが、例えば将来的に及び/または異なるAAV血清型による反復注射を考慮してもよい。したがって、本明細書に開示される医薬組成物の「ブースター」投与量を複数回投与することが望ましい場合がある。例えば、眼の標的細胞内の導入遺伝子の持続期間に応じて、ブースター投与量を6か月間隔で、または最初の投与の後から1年ごとに送達することができる。このようなブースター投与量及びその必要性は、例えば、当技術分野で公知の網膜及び視覚機能検査及び視覚行動検査を使用して、主治医が監視することができる。他の同様の検査を使用して、治療対象の状態を経時的に判定してもよい。適切な検査の選択は主治医が行うことができる。さらに代替的に、本明細書に開示される方法はまた、野生型網膜で見られるレベルに近い視覚機能のレベルが可能になるために、単一または複数回の感染においてより大量のベクター含有溶液の注射を伴ってもよい。
【0115】
追加の方法
一態様では、桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現の増加を必要とする対象における桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現を増加させる方法であって、本明細書に開示されるベクターを対象に投与することを含む、方法を提供する。一態様では、細胞において桿体cGMP特異的3’,5’-環状ホスホジエステラーゼサブユニットβ(PDE6β)の発現を増加させる方法であって、細胞を、本明細書に開示されるベクターと接触させることを含む、方法を提供する。
【0116】
一態様では、光受容体におけるcGMPレベルの増加を必要とする対象における光受容体におけるcGMPレベルを増加させる方法であって、本明細書に開示されるベクターを対象に投与することを含む、方法を提供する。一態様では、細胞において光受容体におけるcGMPレベルを増加させる方法であって、細胞を、本明細書に開示されるベクターと接触させることを含む、方法を提供する。
【0117】
製造品及びキット
本明細書に記載の方法で使用するためのキットまたは製造品も提供される。態様では、キットは、本明細書に記載される組成物(例えば、RetGC1コード導入遺伝子の送達のための組成物)を好適なパッケージングで含む。本明細書に記載される組成物(注射用の眼用組成物など)の適切なパッケージングは当技術分野で公知であり、これには、例えば、バイアル(密封バイアルなど)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、柔軟なパッケージング(例えば、密封マイラーまたはビニール袋)などが含まれる。これらの製造品は、さらに、滅菌及び/または密封されてもよい。
【0118】
本明細書に記載の組成物を含むキットも提供される。これらのキットは、本明細書に記載される使用など、組成物の使用方法に関する説明書(複数可)をさらに含んでもよい。本明細書に記載されるキットは、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び組成物の投与を実行するためのまたは本明細書に記載される任意の方法を実行するための説明書を含む添付文書を含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、標的細胞におけるRetGC1コード導入遺伝子の発現のためのrAAV、注射に好適な薬学的に許容される担体、ならびに緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び注射を行うための説明書を含む添付文書のうちの1つ以上を含む。
【0119】
本発明は、記載された特定の分子、組成物、方法論、またはプロトコルに限定されず、これらは変化し得ることを理解すべきである。本明細書に記載の方法及び材料に類似したまたは同等の、任意の方法及び材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができる。さらに、本明細書における本発明の開示は、そのような特定の特徴の全ての考えられる組み合わせを含むことを理解すべきである。例えば、特定の特徴が本発明の特定の態様もしくは実施形態、または特定の請求項に関連して開示されている場合、その特徴も、本発明の他の特定の態様及び実施形態と組み合わせて、及び/または本発明の他の特定の態様及び実施形態との関連で、及び本発明において、一般に、可能な限り使用することができる。
【0120】
本明細書において、2つ以上の定義されたステップを含む方法について言及する場合、それらの定義されたステップは、任意の順序でまたは同時に実行することができ(文脈がその可能性を除外する場合を除く)、この方法には、定義されたステップのいずれかの前、定義されたステップのうちの2つの間、または定義されたステップすべての後に行われる1つ以上の他のステップを含めることができる(文脈によりこれらの可能性が除外される場合を除く)。
【0121】
他のすべての参照特許及び出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、参照により本明細書に組み込まれる参考文献における用語の定義または使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と一致しない、または矛盾する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【0122】
本発明のより良い理解を容易にするために、特定の実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲全体を限定または定義するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0123】
実施例1:GUCY2Dの変異に関連する網膜疾患のインビトロ疾患モデルとしてのRetGCノックアウト(KO)オルガノイドの生成
RetGC KOオルガノイドを生成するために、野生型(WT)網膜オルガノイドを発生中のいくつかの時点で採取した。GUCY2D mRNA及びRetGCタンパク質レベルをそれぞれ、網膜オルガノイド発生中の種々の時点で、網膜特異的マーカーを用いて、qPCR及びウェスタンブロット/免疫蛍光によって測定した。エピソームリプログラミング因子及びCRISPR/CAS9を使用して、WTヒト線維芽細胞をリプログラミングし、遺伝子編集して、GUCY2D-RetGCを欠失させた。KO誘導多能性幹細胞(iPSC)クローンを、それらの未編集(WT)同質遺伝子対照株と共に、網膜オルガノイドに分化させた。発生の予想される時点で光受容体マーカーの存在及びRetGCタンパク質の不存在が確認された。
【0124】
RetGCタンパク質を、哺乳動物の網膜の光受容体外節に移行させた。免疫蛍光により、RetGCタンパク質はWTオルガノイドの外節構造で検出することができ、そこではロドプシンと共局在していた。成熟RetGC KOオルガノイドにおけるRetGCタンパク質の喪失を、免疫蛍光及びウェスタンブロットによって確認した。また、GUCY2D(RetGC)mRNAの有意な減少があった。
【0125】
外節におけるRetGCの喪失に加えて、光伝達タンパク質ホスホジエステラーゼ-6-ベータ(PDE6β)が、RetGC KOオルガノイドの外節において減少することが見出された。PDE6βは、光伝達サイクルにおいて中心的な役割を有する。光刺激を受けると、cGMPはPDE6βによってGMPに加水分解され、外節円板のcGMPチャネルが閉鎖され、光受容体細胞の過分極がもたらされる。
【0126】
RetGC KOオルガノイドの上記特性は、これらのオルガノイドを、タンパク質レベルを回復するRetGCウイルスベクターの有効性を試験するためのインビトロ疾患モデルとして利用することができることを示した。
【0127】
実施例2:RetGC KOオルガノイドの特徴付け
確立された分化プロトコルを使用して、ヒト人工多能性細胞(hiPSC)からRetGC KO及びWT網膜オルガノイドを生成した。分化プロトコルにより、140日目(20週)に「成熟」した網膜オルガノイドが産生され、これらをAAV形質導入実験に使用することができた。成熟した網膜オルガノイドは、形態学的に識別可能な変性の兆候を伴わずに、最長300日間(43週間)培養で維持することができた。
【0128】
ヒト神経網膜は、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、ミュラーグリア及び神経節細胞、光受容体、網膜色素上皮細胞を含む神経細胞のいくつかの層で構造化されている(図1)。インビトロ生成されたオルガノイドは、上記の網膜細胞型が適切な層に配置され、2つのシナプス層に接続された神経網膜の積層形態を反映している。
【0129】
WTオルガノイド及びRetGC KOオルガノイドを、免疫蛍光、ウェスタンブロット及びqPCR技術を使用して特徴付けた。網膜におけるさまざまな細胞型に関連するマーカーを使用して、WT細胞株とRetGC KO細胞株の両方におけるインビボヒト網膜と網膜オルガノイドの間の網膜形態の類似性を同定し、説明した。図2は、錐体及び桿体光受容体のLMオプシン及びロドプシン、外網状層のシナプスのRibeye及びV Glut、双極細胞、水平細胞及びアマクリン細胞のPKCα及びカルレチニンの凍結切片及び免疫染色画像を示す。明視野画像は、光受容体の外節である可視「刷子縁」を有する成熟オルガノイドを示す。図3のグラフは、網膜オルガノイド発生の時間経過(40日目~220日目)にわたるRetGCタンパク質発現の分析を示す。RetGCタンパク質レベルは、WTと比較してRetGC KOオルガノイドにおいて有意に低下している。
【0130】
実施例3:KOオルガノイドにおけるRetGC発現を回復するためのベクターの設計
4つの異なる発現コンストラクトのうちの1つを含むウイルスベクターを、図4に示すように、設計した。発現コンストラクトは、2つの異なるプロモーター:RK(光受容体に特異的な光受容体特異的ロドプシンキナーゼプロモーターに由来する)及びCMV(サイトメガロウイルスに由来する)を有していた。発現コンストラクトの一部は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)も含有していた。すべてのウイルスゲノムを、7m8キャプシドにパッケージングした。
【0131】
WT網膜オルガノイド及びRetGC KO網膜オルガノイドに、140日~204日の範囲の日齢で4つの異なるウイルスベクターを形質導入し、採取及び分析前に21日間インキュベートした。形質導入オルガノイドを、免疫蛍光、ウェスタンブロッティング、qPCR、及びcGMP FRETアッセイを使用して評価した。
【0132】
4つのAAV 7m8ベクターはすべて、総RetGCタンパク質定量(ウェスタンブロット)及びmRNA(qPCR)によって決定されるように、RetGC KO網膜オルガノイドにおけるヒト光受容体の形質導入に成功し、RetGCタンパク質発現を駆動した。7m8 CMV-RetGC及び7m8 RK-RetGCによって送達されたトランスジェニックRetGCは、光受容体外節の正しい細胞内コンパートメントにおいて免疫蛍光によって検出可能であった。
【0133】
実施例4:AAVベクター駆動RetGC発現は、光受容体外節におけるPDE6β発現を回復させる
図5は、WTオルガノイド、非形質導入網膜オルガノイド及びウイルスベクター形質導入網膜オルガノイドにおけるPDE6βの免疫染色を示す。PDE6βをロドプシンタンパク質と共染色して、すべてのオルガノイドにおける外節の存在を確立し、WT対照と比較して非形質導入対照でPDE6βタンパク質がどのように減少したかを示した。ウイルスベクターによる形質導入後、PDE6βタンパク質の回復を確認した。
【0134】
非形質導入RetGC KOでは、WT対照網膜オルガノイドと比較して、PDE6β染色強度が有意に減少した;p<0.005(複数の比較を行うため、一元配置ANOVA試験をKruskal-Wallis検定と共に行った)。ロドプシン陽性外節の染色強度を、複数のWTオルガノイド、RetGC KOオルガノイド、及び形質導入オルガノイドにおいて定量した。7m8-CMV-RetGC及び7m8-RK-RetGCで処理したオルガノイドでは、PDE6β発現がWTレベル近くに回復した。7m8-CMV-RetGC-WPRE及び7m8-RK-RetGC-WPREは、KOと比較して改善を示したが、他の2つのベクターと同じレベルには達しなかった(図6及び表1)。
【0135】
【表1】
【0136】
実施例5:AAVベクター駆動RetGC発現は、RetGCタンパク質レベルを回復する
RetGCタンパク質レベルを、ウェスタンブロットによってアッセイした。図7に示すように、RetGC発現は、ベクター7m8-CMV-RetGC(WTの30%)、7m8-CMV-WPRE-RetGC(WTの47%)、及び7m8-RK-RetGC(WTの27%)を形質導入したEBにおいて、非形質導入EBに比べて高かった。各実験群について、2つの試料を採取し、タンパク質発現分析のために処理した。
【0137】
実施例6:AAVベクター駆動RetGC発現は、光刺激後のオルガノイドにおける総cGMPレベルを回復する
RetGC活性を測定するために、ユーロピウムクリプテートで標識された特異的抗体(ドナー)及びd2試薬で標識されたcGMP(アクセプター)を使用する競合アッセイ形式で、cGMPの定量測定を行った。検出原理は、HTRF(登録商標)技術に基づく。色素が非常に近接している場合、光源(レーザーまたはフラッシュランプ)によるドナーの励起により、アクセプターに向けた蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が引き起こされ、次いでアクセプターは特定の波長(665nm)で蛍光を発する。試料中に存在するcGMPは、2つのコンジュゲート間の結合と競合し、それによってFRETの発生を防止する。特定のシグナルは、cGMP濃度に反比例する。
【0138】
WTオルガノイド及び7m8ベクターを形質導入したKOオルガノイド及び非形質導入KOオルガノイドを、明/暗のサイクルに曝露して、cGMPの産生を誘導した。使用した光刺激プロトコルは、光受容体を単離するためにオルガノイドを解剖する前の、5分間の白色光刺激及び5分間の暗期で構成されていた。研究プロトコルに記載のように、試料を解剖し、IBMX(PDE阻害剤)の存在下にて赤色光下で溶解した。このアッセイは、標準曲線に対するcGMP[nM]濃度を決定し、得られた値を、試料あたりの総タンパク質量[ug]に対して正規化した。統計分析を実行して、非形質導入KO対照(NT)と比較した試料間の統計的差異を評価した。
【0139】
図8のグラフに示すように、RetGC KOオルガノイド(NT)は、光刺激後にcGMPレベルが有意に低下した(WTの20%)。形質導入後、ベクター7m8-CMV-GUCY2D(WTの+76%、p=0.0043)及び7m8-RK-GUCY2D(WTの+37%、p=0.0494)で形質導入されたKO RetGC-GUCY2Dオルガノイドにおいて、統計的に有意なcGMPの増加が見出された。WPREエレメントを保有するCMVベクターとRKベクターの両方による形質導入によって、cGMPの増加がもたらされ、これは統計的に有意でなかったが、WT試料に見られるものと同等の平均値であった。グラフでは、1群あたり3つまたは4つの形質導入オルガノイドを用いた2つの別々の実験から得られた結果を示す(図8)。総cGMPレベルがWTレベルを達成または上回るという観察結果は、光感受性ヒト光受容体のとの関係において、これらの上記ベクターの機能的効力を実証している。
【0140】
配列の概要
【0141】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
【表2-22】
【表2-23】
【表2-24】
【表2-25】
【表2-26】
【表2-27】
【表2-28】
【表2-29】
【表2-30】
【0142】
本発明の前述の書面による記載は、当業者が、それの最良の形態であると現在考えられるものを製造して使用することを可能にするが、当業者は、本明細書における特定の実施形態、方法、及び実施例の変形、組み合わせ、ならびに均等物の存在を理解して認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】