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特表2024-525729ガスを送り出すためのデバイス、システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ガスを送り出すためのデバイス、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/30 20060101AFI20240705BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20240705BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61M5/30
A61F9/007 130D
A61M5/31 540
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501759
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022036871
(87)【国際公開番号】W WO2023287824
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,917
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518380643
【氏名又は名称】アルタヴィズ,リミティッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ALTAVIZ,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クインタナ,クイントン,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェルシュ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ヒダルゴ,イサベラ,エル.
(72)【発明者】
【氏名】レスキュリー,ジェームズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】オールド,ジャック,アール.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC10
4C066DD02
4C066EE06
4C066HH05
4C066LL20
(57)【要約】
ガスを送り出すためのデバイスおよび方法が提供される。一例では、デバイスが、近位端、出口を含む遠位端、および出口と連通するガスチャンバを含むシリンジ本体と、シリンジ本体内に摺動可能に受け入れられたピストンを担持するプランジャとを含む。ガスを収容したキャニスタは、ガスチャンバと連通するピストン貫通通路に隣接してプランジャ内に設けられている。駆動アクチュエータは、オープナピンがキャニスタの隔壁を開いてガスを放出させるように移動可能であり、その際に、ガスは通路を通ってガスチャンバ内に入り、それによりピストンを近位方向に変位させてガスチャンバを満たすことができる。作動時には、プランジャを前進させて、ガスチャンバ内のガスを出口から患者の体内、例えば、出口に接続されたカニューレを介して眼内に送り込むことができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを送り出すためのシステムであって、
近位端と、出口を含む閉じた遠位端と、近位端と遠位端との間に延びる長手方向軸と、前記出口と連通するガスチャンバとを含むバレルと、
シリンジ本体内に摺動可能に受け入れられるプランジャであって、前記遠位端に隣接する前記バレル内のピストンと、前記シリンジ本体の近位端から延びるハンドルとを含むプランジャと、
前記ガスチャンバと連通するピストンの貫通通路に隣接する、前記プランジャ内にガスを収容するキャニスタであって、オープナピンに隣接する隔壁を備えるキャニスタと、
前記ハンドルに隣接する第1の端部と、前記キャニスタに隣接する前記プランジャ内の第2の端部とを含む駆動アクチュエータとを備え、前記駆動アクチュエータは、前記第2の端部を遠位方向に動かして、前記オープナピンに前記キャニスタからガスを放出させるように移動可能であり、その際に、ガスが通路を通って前記ガスチャンバ内に移動し、それにより前記ピストンを軸に沿って近位方向に変位させて、前記ガスチャンバをガスで満たすことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記出口を通って前記ガスチャンバから出るガスを濾過するために、前記出口に隣接するフィルタをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記フィルタが、ガスが無菌であるとみなされるように細菌を濾過するための孔径を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のシステムにおいて、
前記フィルタが、約0.22μm以下の孔径を有することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記駆動アクチュエータが、前記プランジャのハンドルから延びる作動ボタンを含み、このボタンが、前記駆動アクチュエータを遠位方向に動かして前記キャニスタと前記オープナピンのうちの一方を変位させ、それにより前記オープナピンに前記隔壁を開けさせるように作動可能であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記作動ボタンが、前記長手方向軸に対して横方向に動くことができることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、
前記駆動アクチュエータは、前記作動ボタンによって近位位置にロックされ、また、前記作動ボタンの動きによって前記駆動アクチュエータが解放され、それにより前記駆動アクチュエータが自動的に遠位位置に向かって移動して前記キャニスタからガスを放出するように、前記駆動アクチュエータが遠位位置に付勢されていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項5~7の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記キャニスタが、前記隔壁が近位方向を向くように前記プランジャのキャビティ内に受け入れられ、前記オープナが、初期位置において前記隔壁よりも近位側に、前記隔壁から間隔をあけて配置されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記作動ボタンが作動すると、前記駆動アクチュエータが遠位方向に前進して、前記オープナピンを遠位方向に導いて前記隔壁を開かせることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項5~7の何れか一項に記載のシステムにおいて、
前記キャニスタが、前記隔壁が遠位方向を向くように前記プランジャのキャビティ内に受け入れられ、前記オープナが、初期位置において前記隔壁よりも遠位側に、前記隔壁から間隔をあけて配置されることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記作動ボタンが作動すると、前記駆動アクチュエータが遠位方向に前進して、前記キャニスタを遠位方向に導いて前記オープナピンに前記隔壁を開かせることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ガスが、予混合ガスであることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記予混合ガスが、六フッ化硫黄(SF6)またはオクタフルオロプロパン(C3F8)のうちの一方を含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記予混合ガスが、約20パーセント(20%)の六フッ化硫黄(SF6)を含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムにおいて、
前記予混合ガスが、約14パーセント(14%)のオクタフルオロプロパン(C3F8)を含むことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記隔壁が開かれたときに、前記ガスチャンバがガスで満たされるにつれて、ガスが前記ガスチャンバ内の残留空気を前記出口から追い出すように、圧力下でガスが供給されることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムにおいて、
前記ガスキャニスタが、前記ガスチャンバを予め設定された量のガスで満たすように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記ガスチャンバがガスで満たされたときに前記プランジャと係合するように構成されたロック機構をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、
前記ガスが、予混合ガスであり、前記ロック機構が、バネおよびラックを備え、前記ガスチャンバが予混合ガスで満たされたときに、予混合ガスの投入中に予混合ガスの比率に影響を与えないように前記プランジャの近位方向の移動を前記ラックが阻止するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
注入デバイスを準備する方法であって、
近位端、出口を含む閉じた遠位端、および出口と連通するガスチャンバを含むバレルと、前記遠位端に隣接する前記バレル内のピストンを含む前記バレル内に摺動可能に受け入れられるプランジャと、ガスが充填されたガスキャニスタと、シリンジ本体の近位端上のハンドルと、駆動アクチュエータとを提供するステップと、
前記駆動アクチュエータを作動させて、オープナピンに前記ガスキャニスタの隔壁を開かせて、ガスを前記キャニスタから放出させ、その際に、ガスが前記ピストンを通って前記ガスチャンバ内に入り、それにより前記ピストンを近位方向に変位させて前記ガスチャンバをガスで満たすステップと、
患者の体内にガスを送り出すステップであって、近位端、出口を含む閉じた遠位端、および出口と連通するガスチャンバを含むバレルと、遠位端に隣接する前記バレル内のピストンを含む前記バレル内に摺動可能に受け入れられるプランジャと、ガスが充填されたガスキャニスタと、シリンジ本体の近位端から延びるハンドルと、駆動アクチュエータとを提供することを含むステップと、前記駆動アクチュエータを作動させて、オープナピンに前記ガスキャニスタの隔壁を開かせて、ガスを前記キャニスタから放出させ、その際に、ガスが前記ピストンを通って前記ガスチャンバ内に入り、それによって前記ピストンを近位方向に変位させて前記ガスチャンバをガスで満たすステップと、前記出口と連通するカニューレまたは針の先端を患者の体内に導入するステップと、前記プランジャを前進させて前記ガスチャンバ内のガスを前記出口を介して患者の体内に送り出すステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項21】
患者の体内にガスを送り出す方法であって、
近位端、出口を含む閉じた遠位端、および出口と連通するガスチャンバを含むバレルと、前記遠位端に隣接する前記バレル内のピストンを含む前記バレル内に摺動可能に受け入れられるプランジャと、ガスが充填されたガスキャニスタと、シリンジ本体の近位端から延びるハンドルと、駆動アクチュエータとを提供するステップと、
前記駆動アクチュエータを作動させて、オープナピンに前記ガスキャニスタの隔壁を開かせて、ガスを前記キャニスタから放出させ、その際に、ガスが前記ピストンを通って前記ガスチャンバ内に入り、それによって前記ピストンを近位方向に変位させて前記ガスチャンバをガスで満たすステップと、
前記出口と連通するカニューレまたは針の先端を患者の体内に導入するステップと、
前記プランジャを前進させて前記ガスチャンバ内のガスを前記出口を介して患者の体内に送り出すステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20または21に記載の方法において、
前記カニューレまたは針が前記出口と連通するように、前記カニューレまたは針を前記バレルの遠位端に接続するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項20または21に記載の方法において、
前記カニューレまたは針が、前記バレルの遠位端に恒久的に取り付けられていることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法において、
前記先端が、患者の眼の内部に導入されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項20または21に記載の方法において、
前記ガスチャンバがガスで満たされたときに、前記プランジャが、近位方向に動かないようにロックされることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項20または21に記載の方法において、
前記バレルが、前記出口を通って前記ガスチャンバから出るガスを濾過するために、前記出口に隣接するフィルタを備えることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、
前記フィルタが、ガスが無菌であるとみなされるように細菌を濾過するための孔径を有することを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法において、
前記フィルタが、約0.22μm以下の孔径を有することを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項20または21に記載の方法において、
前記駆動アクチュエータが、前記プランジャのハンドルから延びる作動ボタンを含み、このボタンが、前記駆動アクチュエータを遠位方向に動かして前記キャニスタと前記オープナピンのうちの一方を変位させ、それにより前記オープナピンに前記隔壁を開けさせるように作動可能であることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、
前記作動ボタンが、前記長手方向軸に対して横方向に動くことができることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、
前記駆動アクチュエータは、前記作動ボタンによって近位位置にロックされ、また、前記作動ボタンの動きによって前記駆動アクチュエータが解放され、それにより前記駆動アクチュエータが自動的に遠位位置に向かって移動して前記キャニスタからガスを放出するように、前記駆動アクチュエータが遠位位置に付勢されていることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項20または21に記載の方法において、
前記キャニスタが、前記隔壁が近位方向を向くように前記プランジャのキャビティ内に受け入れられ、前記オープナが、初期位置において前記隔壁よりも近位側に、前記隔壁から間隔をあけて配置されることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、
前記作動ボタンが作動すると、前記駆動アクチュエータが遠位方向に前進して、前記オープナピンを遠位方向に導いて前記隔壁を開かせることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項20または21に記載の方法において、
前記キャニスタが、前記隔壁が遠位方向を向くように前記プランジャのキャビティ内に受け入れられ、前記オープナが、初期位置において前記隔壁よりも遠位側に、前記隔壁から間隔をあけて配置されることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、
前記作動ボタンが作動すると、前記駆動アクチュエータが遠位方向に前進して、前記キャニスタを遠位方向に導いて前記オープナピンに前記隔壁を開かせることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項20または21に記載の方法において、
前記ガスが、予混合ガスであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法において、
前記予混合ガスが、六フッ化硫黄(SF6)またはオクタフルオロプロパン(C3F8)のうちの一方を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法において、
前記予混合ガスが、約20パーセント(20%)の六フッ化硫黄(SF6)を含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項36に記載の方法において、
前記予混合ガスが、約14パーセント(14%)のオクタフルオロプロパン(C3F8)を含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項20または21に記載の方法において、
前記隔壁が開かれたときに、前記ガスチャンバがガスで満たされるにつれて、ガスが前記ガスチャンバ内の残留空気を前記出口から追い出すように、圧力下でガスが供給されることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、
前記ガスキャニスタが、前記ガスチャンバを予め設定された量のガスで満たすように構成されていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、患者の体内に薬剤を送り出すためのデバイス、システムおよび方法に関し、より詳細には、例えば患者の眼内にガス、例えば予混合ガスを送り出すための注入器、並びに、そのような注入器を使用するシステムおよび方法に関する。
【0002】
関連出願データ
本出願は、2021年7月12日に出願された同時係属中の米国仮出願第63/220,917号の利益を主張するものであり、その開示全体が、引用により本明細書に明示的に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
混合ガスを患者の体内、例えば硝子体手術中に眼の内部に送り出すために、様々なデバイスを利用することができる。例えば、混合ガスの供給に使用されるシリンジを手動で混合および充填するために、再使用可能なガスシリンダを使用することができる。しかしながら、そのような手動混合システムは、複数の構成要素、例えば、シリンダからシリンジ内に混合されるガスを移送するための1または複数のフィルタ、チューブ、栓などを含む複雑なものである。また、充填プロセスを調整するために、複数のオペレータ、典型的には巡回看護師および洗浄技術者を必要とし、ガス充填の前に複数のパージサイクルを含むこともある。また、所望のガス/空気混合物を提供するために、ガスと空気の体積を手作業で計算する必要があり、患者の体内に不正確なガス混合物、例えば濃厚なガス混合物を注入するリスクもある。
【0004】
シリンジのパージおよびガス充填を半自動化しようとするシステムを利用することができるが、所望のガス/空気混合物を提供するために、依然として、所望のガスおよび空気の体積をユーザが手作業で計算する必要がある。
【0005】
このため、患者の体内へのガス送出を容易にするデバイス、システムおよび方法が有用であろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、患者の体内に薬剤を送り出すためのデバイス、システムおよび方法に関し、より詳細には、患者の眼内にガス、例えば予め混合されたガスを送り出すための注入器、並びに、そのような注入器を使用するシステムおよび方法に関する。
【0007】
一例では、本明細書のデバイスおよびシステムが、ガス、例えば、20パーセント(20%)の六フッ化硫黄(SF6)または14パーセント(14%)のペルフルオロプロパン(C3F8)などの予混合ガスを送り出すための、すぐに使用可能なかつ/または使い捨てのシリンジシステムとしてユーザに提供することができる。デバイスは、予混合ガスが充填された、例えばガスキャニスタなどの、内部に収容された供給源を含むことができ、かつ/または作動時に自動的にシリンジパージおよび充填を行うことができる。
【0008】
デバイスは、従来のシステムに比べて1または複数の利点を提供することができる。例えば、一例では、予混合ガスがデバイス内に、すなわちガスキャニスタを介して組み入れられているため、デバイスは作動後直ちに使用することができる。また、本明細書のデバイスは、手動によるガス混合が排除されるため、混合比の精度を向上させ、かつ/またはリスクを低減することができる。また、デバイスは、無菌性を維持することもでき、かつ/または、例えば、手動混合システムと比較して、ユーザ一人のみで扱うことができる。さらに、デバイスの自己充足型の性質を考慮すると、外部ガス源および/または他の機器もしくは供給品を不要とすることができる。
【0009】
一例によれば、患者の体内にガスを送り出すためのシステムが提供され、このシステムが、近位端と、出口を含む閉じた遠位端と、近位端と遠位端との間に延びる長手方向軸と、出口と連通するガスチャンバとを含むバレルと、シリンジ本体内に摺動可能に受け入れられるプランジャであって、遠位端に隣接するバレル内のピストンと、シリンジ本体の近位端から延びるハンドルとを含むプランジャと、ガスチャンバと連通するピストンの貫通通路に隣接する、プランジャ内にガスを収容するキャニスタであって、オープナピンに隣接する隔壁を備えるキャニスタと、ハンドルに隣接する第1の端部と、キャニスタに隣接するプランジャ内の第2の端部とを含む駆動アクチュエータとを備え、駆動アクチュエータは、第2の端部を遠位方向に動かして、オープナピンにキャニスタからガスを放出させるように移動可能であり、その際に、ガスが通路を通ってガスチャンバ内に移動し、それによりピストンを軸に沿って近位方向に変位させてガスチャンバをガスで満たすことができる。
【0010】
別の例によれば、注入デバイスを準備する方法が提供され、この方法が、近位端、出口を含む閉じた遠位端、および出口と連通するガスチャンバを含むバレルと、遠位端に隣接するバレル内のピストンを含むバレル内に摺動可能に受け入れられるプランジャと、ガスが充填されたガスキャニスタと、シリンジ本体の近位端上のハンドルと、駆動アクチュエータとを提供するステップと、駆動アクチュエータを作動させて、オープナピンにガスキャニスタの隔壁を開かせて、ガスをキャニスタから放出させ、その際に、ガスがピストンを通ってガスチャンバ内に入り、それによりピストンを近位方向に変位させてガスチャンバをガスで満たすステップとを備える。
【0011】
さらに別の例によれば、患者の体内にガスを送り出すための方法が提供され、この方法が、近位端、出口を含む閉じた遠位端、および出口と連通するガスチャンバを含むバレルと、遠位端に隣接するバレル内のピストンを含むバレル内に摺動可能に受け入れられるプランジャと、ガスが充填されたガスキャニスタと、シリンジ本体の近位端から延びるハンドルと、駆動アクチュエータとを提供するステップと、駆動アクチュエータを作動させて、オープナピンにガスキャニスタの隔壁を開かせて、ガスをキャニスタから放出させ、その際に、ガスがピストンを通ってガスチャンバ内に入り、それによりピストンを近位方向に変位させてガスチャンバをガスで満たすステップと、出口と連通するカニューレまたは針の先端を患者の体内に導入するステップと、プランジャを前進させてガスチャンバ内のガスを出口を介して患者の体内に送り出すステップとを備える。
【0012】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、添付の図面と併せて、以下の特定の例の説明からより良好に理解されると考えられる。図面において、同様の符号は同じ要素を特定している。
図1図1Aおよび図1Bは、それぞれ、予混合ガス送出デバイスの一例の斜視図および側面図である。
図2図2Aおよび図2Bは、初期作動前の図1Aおよび図1Bのデバイスの縦断面図である。図2Cは、初期作動後の図1Aおよび図1Bのデバイスの縦断面図である。図2Dは、作動後にガスキャニスタからデバイスのガスチャンバ内に送り出されるガスの流路を示す、図1Aおよび図1Bのデバイスの詳細図である。
図3図3Aおよび図3Bは、それぞれ、予混合ガス送出デバイスの別の例の斜視図および側面図である。
図4図4Aおよび図4Bは、それぞれ、初期作動前および初期作動後の図3Aおよび図3Bのデバイスの縦断面図である。図4Cは、作動後にガスキャニスタからデバイスのガスチャンバ内に送り出されるガスの流路を示す、図3Aおよび図3Bのデバイスの詳細図である。
図5図5A図5Cは、爪およびラチェット機構を含む代替デバイスの詳細図である。
【0014】
図面は、決して限定することを意図したものではなく、本発明の様々な例は、必ずしも図面に描かれていないものも含めて、他の様々な方法で実施され得ることが考えられる。本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示しており、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つが、本発明は、図示の正確な配置構成に限定されないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特定の例に関する以下の説明は、本発明の範囲を限定するために使用されるべきではない。本発明の他の例、特徴、態様、実施形態および利点は、本発明を実施するために考えられる最良の態様の1つである例示としての以下の説明から当業者には明らかになるであろう。理解されるように、本発明はいずれも、本発明から逸脱することなく、他の様々な自明の態様も可能である。このため、図面および説明は、本質的に例示であって限定的なものではないとみなされるべきである。
【0016】
実施例を説明する前に、本発明は、記載の特定の実施例に限定されるものではなく、当然のことながら、変更し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施例を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0017】
値の範囲が与えられる場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値も具体的に開示されているものと理解されたい。任意の記載値または記載の範囲内の介在値と、任意の他の記載値または記載の範囲内の介在値との間の小さい各範囲は、本発明に包含される。それら小さい範囲の上限値および下限値は、それぞれ独立に範囲に含まれることも除外されることもあり、その両方または一方が小さい範囲に含まれる場合においても、またはどちらも小さい範囲に含まれない場合においても、各範囲は、記載の範囲内の特に除外された限界値を条件として、本発明に包含される。記載の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外した範囲もまた本発明に含まれるものとする。
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの可能性のある例示的な方法および材料をここで説明する。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。このため、例えば、「化合物」に対する言及は、複数のそのような化合物を含み、「ポリマー」に対する言及は、当業者に公知の1または複数のポリマーおよびその均等物に対する言及を含む。
【0020】
本明細書では、特定の範囲が、数値の前に「約」という用語が付されて示される。「約」という用語は、本明細書において、その用語の後の正確な数値と、その用語の後の数値に近い数値または近似値に対する文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数値が具体的に言及された数値に近いかまたは近似しているか否かを判断する際に、その近いまたは近似している未言及の数値は、それが提示される文脈において、具体的に言及された数値と実質的に同等のものを提供する数値であり得る。
【0021】
図面を参照すると、図1Aおよび図1Bは、患者の体内にガスを送り出すための、例えば、約20パーセント(20%)の六フッ化硫黄(SF6)または約14パーセント(14%)のパーフルオロプロパン(C3F8)の予め混合されたガスを患者の眼(図示せず)内に送り出すための、デバイスまたはシステム8の一例を示している。このデバイス8は、概して、開いた近位端12および閉じた遠位端14を含み、それらの間に長手方向軸18を規定するシリンジ本体またはバレル10と、遠位端14の出口15と連通するガスチャンバまたは内部16とを含み、このガスチャンバまたは内部を、例えば、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、眼内に供給するために作動時に自動的に予混合ガスで満たすことができる。
【0022】
細長いプランジャ20は、バレル10内に摺動可能に受け入れられ、例えばバレル10の近位端12から近位方向に延びる近位端22と、例えばガスチャンバ16の近位端で流体密シールを維持するための1または複数のOリングまたは他のシール28aを含む、バレル10の内面に沿って摺動可能なピストン28を担持する遠位端24とを含む。図2Aおよび図2Bに示すように、プランジャ20は、最初は、例えばガスチャンバ16の内部容積を最小にするために、ピストン28がバレル20の遠位端24にすぐ隣接する遠位位置に提供され得る。以下にさらに説明するように、デバイス8が作動すると、プランジャ20は、ガスチャンバ16内にガスが充填されるときに、バレル10内で軸方向に、すなわち、図2Cに示すような近位位置に向かって近位方向に、自動的に移動することができる。
【0023】
予混合ガスを含むキャニスタ40は、プランジャ20内、例えば、ピストン28を貫通する1または複数の通路(1つの通路48aが示されている)を介してガスチャンバ16と流体連通するプランジャ20の遠位端24に隣接するキャビティ26内に設けられている。キャニスタ40は、概して、細長い本体42を含み、この本体が、閉じた第1の端部と、キャニスタ40の内部46を密封するように第2の端部に溶接または他の方法で取り付けられたキャップ44を有する開いた第2の端部とを含む。キャップ44は、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、例えばオープナピン36aによって貫通または他の方法で開くことができる隔壁44aを含む。例えば、隔壁44aは、例えば、キャップ44の周縁の周りに少なくとも部分的に延びる薄壁領域または弱い領域、または比較的薄い中央領域(図示せず)を含み、ピン36aは、隔壁44aを引き裂くように構成された斜めの先端を含む穿刺ピンであってもよい。代替的には、穿刺ピンは、隔壁44aを貫通または引き裂くように構成された、尖った先端、鋭利な先端または他の先端(図示せず)を含むことができる。更なる代替例では、内部46のガスを放出するためにオープナピン36aによって貫通または変位され得る他のシール部材を使用して、隔壁を形成することもできる。
【0024】
内部46は、所望の圧力でガスで満たすことができ、例えば、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、デバイス8が作動すると、ガスチャンバ16がガスで自動的に満たされるようになっている。本明細書のデバイスおよびシステムに含まれ得るキャニスタの例は、米国特許第10,610,351号に開示されている。この出願の開示全体は、引用により本明細書に明示的に援用されるものとする。
【0025】
図2A図2Cに示す例では、例えば、隔壁44aが近位方向を向くように、キャニスタ40が、ピストン28の開口部を介してキャビティ26内に受け入れられるものであってもよい。例えば、ピストン28は、プランジャ20内で近位方向に延び、キャビティ26の壁、例えばキャニスタ40の本体42と同様の輪郭を有する壁を規定する管状の延長部28bを含むことができる。延長部28bは、ピストン28と一体成形または他の方法で形成され、ピストン28およびキャビティ26内のキャニスタ40がプランジャ20の動きに連動するように、プランジャ20に対して固定され得る。代替的には、キャビティは、プランジャ20の遠位端24内に形成され、ピストン28は、遠位端24に取り付けられた別個の部材(図示せず)であってもよい。任意選択的には、キャビティ26の壁は、1または複数のリブ、タブなど(図示せず)を含むことができ、それにより、キャニスタ40を支持すること、例えば、横方向の動きを防止することができ、同時に、キャニスタ40の周りに予混合ガスのための流路を提供することができる。
【0026】
図2A図2Dに示す例では、例えば製造中または他の最終組立中に、キャップ48をピストン28に取り付けることができ、それによりキャビティ26を密封し、かつキャニスタ40の取り外しまたは他の軸方向移動を防止することができる。キャップ48は、キャビティ26内の予混合ガスをガスチャンバ16内に送り出すために、キャップを貫通する通路48aを含むことができる。キャップ48は、接着剤による接合、音波溶接、および1または複数のコネクタ、例えば協働する溝、回り止め、ネジなど(図示せず)のうちの1または複数を使用して、例えば実質的に恒久的にピストン28に取り付けることができる。図2Dは、キャニスタ40の内部46から(開いた隔壁44aを通って)、キャニスタ40の本体42の周りのキャビティ26を通り、通路48aを介してガスチャンバ16内に入る、予混合ガスの例示的な流路を表す一連の矢印を示している。
【0027】
また、プランジャ20は、その中に、例えば、プランジャ20の近位端22と遠位端24との間に延びるチャンバ38内に摺動可能に配置された駆動アクチュエータシャフト30も含む。シャフト30は、プランジャ20の近位端22に隣接して配置された第1の端部または近位端32と、キャニスタ40に隣接して配置された第2の端部または遠位端34とを含む。要素36は、隔壁44aを開けるための第2の端部34に担持され、例えば、第2の端部34から遠位方向に延びるオープナピン36aであり、このオープナピン36aは、キャニスタ40の隔壁44aから間隔を空けて最初に配置されるように、キャニスタ40を収容する管状の延長部28bの開口部28cを通って延びている。シャフト30の遠位端34および/または管状延長部28bは、例えば、キャニスタ40から放出されたガスがプランジャ20のチャンバ38内に近位方向に通過するのを防止するために、1または複数のシール(図示せず)を含むことができる。
【0028】
駆動アクチュエータシャフト30は、例えば、プランジャ20のチャンバ38内で遠位方向に移動可能であり、第2の端部34を遠位方向に動かして、それによりオープナピン36aに隔壁44aを開かせて、キャニスタ40から予混合ガスを放出させる。例えば、駆動アクチュエータシャフト30は、最初は近位位置、すなわち、例えば図2Aに示すように、オープナピン36aが隔壁44aから近位方向に離間した状態で拘束されるが、例えば図2Bに示すように、遠位位置に向かってプランジャ20内で遠位方向に移動するように付勢される。デバイス8が作動すると、シャフト30は、図2Bに示す遠位位置に向かって軸方向に自動的に移動して、本明細書の他の箇所でさらに説明されるように、オープナピン36aに隔壁44aを開かせて、その中の混合ガスを放出させ、それによりガスチャンバ16を充填することができる。
【0029】
例えば、図示のように、デバイス8は、バレル10の近位端22上のハンドル50、すなわちバレル10に対して実質的に静止しているハンドルと、駆動アクチュエータシャフト30に結合され、シャフト30を解放するためにユーザによって作動されるハンドル50上の作動ボタン60とを含むことができる。図1A図2Bに示す例では、ハンドル50は、例えば、使用中にデバイス8を保持および操作することを容易にするために、近位端22から軸18に対して横方向に延びる一対のフィンガグリップ、ウィングまたは他の特徴部52を含む。作動ボタン60は、例えば、ユーザが人差し指と中指でグリップ52を握りながら親指を使用してボタン60を押すことができるように、ハンドル50に取り付けられている。
【0030】
図2Bおよび図2Cに最もよく見られるように、ボタン60はロック部材62に結合され、このロック部材は、ハンドル50内に、例えばバレル20の周りに部分的に延び、最初は、シャフト30をその初期近位位置にロックするために、駆動アクチュエータシャフト30に結合される。例えば、ロック部材62は、シャフト30の移動を防止するために、例えばプランジャ20の壁の開口部22aを介して、駆動アクチュエータシャフト30の近位端32にある凹部、スロットまたは他の対応する特徴部33に受け入れられる戻り止めタブまたは他の特徴部64を含むことができる。バネまたは他の弾性部材66は、プランジャ20の近位端22に、例えば、シャフト30の近位端32とプランジャ20の閉じた端部23との間に設けることができ、それにより、ロック部材62がなければシャフト30が遠位方向に動くように付勢することができる。作動ボタン60が押されると、例えば、長手方向軸18に対して横方向に押されると、ロック部材62が移動して特徴部64、33を解放することができ、その際に、バネ66が自動的にシャフト30を遠位方向に導き、それによりオープナピン36aが隔壁44aを開いて、キャニスタ40内の予混合ガスが流路を通ってガスチャンバ16内に移動する。例えば、図2Bおよび図2Cに示すように、作動ボタン60を押下すると、戻り止め64がプランジャ30の凹部33から横方向に移動し、それによってプランジャ30が解放され、バネ66がプランジャ30を遠位方向に前進させることができる。
【0031】
予混合ガスがキャニスタ40の内部46から放出されると、ピストン28およびプランジャ20は、例えばキャニスタ40内の予混合ガスの圧力下で自動的に、ガスチャンバ16が予混合ガスで満たされるにつれて、バレル10内で軸方向に、すなわち近位方向に変位することができる。さらに、ガスチャンバ16が予混合ガスで満たされるにつれて、予混合ガスの圧力により、出口15を通じてガスチャンバ16内の残留空気を追い出すことができる。キャニスタ40内の予混合ガスの圧力および/または体積により、ガスチャンバ16が予め設定された体積で満たされ、余剰ガスが、出口15を通って排出されて、大気圧での体積が得られる。一例では、キャニスタ40内の予混合ガスの圧力は、ガスチャンバ16が大気圧で約50ミリリットル(40mL)の予混合ガスで満たされるように設定することができ、その際にユーザに要求される唯一の動作は作動ボタン60を押すことである。
【0032】
任意選択的には、出口15を介してガスチャンバ16から出る予混合ガスをフィルタリングするために、出口15に隣接して、例えばバレルの遠位壁14に対してもしくは遠位壁内に、またはガスチャンバ16内に、フィルタ29を設けることができる。このフィルタ29は、例えば、ガスが無菌とみなされるように細菌を濾過するために、約0.22μm以下の孔径を有することができる。代替的には、別個のフィルタを出口15に、例えばバレル10の遠位端14に設けられたルアーフィッティングまたは他のコネクタに取り付けることもできる。
【0033】
デバイス8が作動してガスチャンバ16が混合ガスで満たされると、針または他のカニューレ(図示せず)をバレル10の遠位端14に接続して、患者の体内への送出、例えば、出口15と連通する遠位端14に設けられたルアーフィッティングまたは他のコネクタへの送出を可能にすることができる。代替的には、針または他のカニューレを、必要に応じて、バレル10の遠位端14に一体的に設けることができ、例えば、バレル10内に成形するか、または他の方法でバレルに恒久的に取り付けることができる。
【0034】
任意選択的には、バレル10は、患者内に送り出されたガスチャンバ16内のガスの体積を示す1または複数の区分を含むことができる。例えば、充填中にプランジャ20が後退すると、ピストン28は自動的に「0」または他の初期体積インジケータと整列することができる。次いで、ユーザは、例えば、近位端22のサムレストまたは他の特徴部23aを押して、プランジャ20を単に押し込むことにより、ガスチャンバ16から患者の体内に予混合ガスを送り出すことができ、区分を使用して、送り出された体積を確認することができる。
【0035】
代替的には、他の作動構成を提供することもできる。例えば、図3A図4Cを参照すると、全体としてデバイス8と類似した、バレル110、ピストン128を有するプランジャ120、駆動アクチュエータシャフト130およびキャニスタ140を含むデバイス108の別の例が示されている(同様の特徴の符号が100だけ増加している)。しかしながら、この例では、オープナピン136がピストン128に取り付けられるように設けられ、すなわち、オープナピン144aがキャニスタ140よりも遠位側に位置し、近位方向を向き、プランジャ120に対して実質的に静止している。キャニスタ140は、隔壁144aが遠位方向を向いているが、最初はオープナピン144aから離間するように、配設されている。例えば、キャニスタ140は、例えば、デバイス8と同様に、管状延長部128bのキャビティ126内に受け入れられ、管状延長部は、プランジャ120のチャンバ138内でピストン128と一体的に形成されるか、または他の方法でピストン128から近位方向に延びている。しかしながら、このデバイス108では、キャニスタ140がチャンバ126内で軸方向に移動可能である。
【0036】
例えば、キャニスタ140は、隔壁144aがオープナピン136から近位方向に離間するように、最初にチャンバ126内に設けることができる。駆動アクチュエータシャフト130は、プランジャ120内に設けられ、プランジャ近位端122に隣接する近位端132と、キャニスタ140にすぐ隣接して位置する遠位端134とを含む。例えば、遠位端134は、初期位置で遠位端134がキャニスタ本体142に当接するように、本体142の第1の端部と同様の凹状または他の形状を含むことができる。
【0037】
デバイス160は、駆動アクチュエータシャフト130の近位端132に結合された作動ボタン160を含み、このボタン160が押されると、例えば遠位方向に押し込まれると、シャフト130が解放され、その際に、遠位端134は、遠位方向に前進して、オープナピン136が隔壁144aを開けるまで、キャニスタ140を遠位方向に移動させる。ピストン128は、キャニスタ140から放出されたガスをガスチャンバ116内に送るために、ピストンを貫通する1または複数の通路、例えば通路128aを含むことができる。チャンバ116が充填されると、プランジャ120および内部構成要素、すなわちシャフト130およびキャニスタ140は、デバイス8と同様に、チャンバ116が満たされるまで近位方向に後退することができる。その後、プランジャ120は、例えば、近位端122のサムレストまたは他の特徴部123aを押すことによって前進し、それによりガスをチャンバ116から出口115を介して患者の体内に送り出すことができる。
【0038】
任意選択的には、本明細書のデバイスのいずれかは、ガスチャンバが予混合ガスで満たされると、プランジャが近位方向に移動しないように係合してロックするように構成されたロック機構を含むことができる。例えば、図4Aおよび図4Bに示すように、プランジャ120にラチェット機構を設けることができ、このラチェット機構は、プランジャ120が(充填中に)近位方向に移動する際に受動的な状態に留まり、プランジャ120が近位位置に導かれると係合状態になり、それによりガスチャンバ116が満たされた状態で、プランジャ120をバレル110に対してロックする。例えば、プランジャ120は、プランジャ120の一部に沿って軸方向に延びる、例えば、プランジャ120の外面に形成または取り付けられたラック上の、複数のラチェットまたは係合要素127を含むことができる。プランジャ120上の要素127と相互作用し得る、1または複数のラチェットまたは係合要素154aを含む爪部材154は、バレル110内に取り付けることができる。例えば、爪部材154は、例えば図4Aに示すように、プランジャ120から間隔を空けて配置することができ、それにより、ガスチャンバ116の充填中に、プランジャ120が自由に後退することができる。チャンバ116が充填されると、爪部材154は係合することができ、それにより要素127、154aがプランジャ120の近位方向にさらに移動するのを阻止することができる。このため、ラチェット機構は、最初の作動後(かつガス放出およびチャンバ116の充填の後)にプランジャ120が近位方向に引っ張られるのを防止し、それにより、ガスチャンバ116から送り出される予混合ガスの混合比に影響を与え得る送出を、ユーザが変えるのを阻止することができる。
【0039】
図5A図5Cは、代替デバイス8’の細部を示し、例えば、デバイス8と概ね同様であるが、爪部材54’およびラチェット27’を含み、それらが、図4Aおよび図4Bに示すラチェット機構と同様に動作することができる。図5Aに示すように、爪部材54’は、バレル10’に揺動可能に取り付けることができ、ラチェット27’は、プランジャ20’上に設けることができる。爪部材54’は、最初は、歯54a’がラチェット27’の歯27a’から離間した非作動位置に保持されている。作動ボタン60が作動されると、ガスがキャニスタ60から放出されるにつれてプランジャ20’が後退し、ガスが充填されると、爪部材54’が解放される。爪部材54’は、例えば、図5Bに示すように、内向きに回動して歯54a’、27a’を係合させるように、例えば、バネまたは他の弾性部材54b’によって付勢されている。歯54a’、27a’は、鈍い近位エッジを含むことができ、それにより、プランジャ20’が近位方向にさらに移動するのを防止する。さらに、デバイス8’からガスが送り出されている間に、プランジャ20’が前進するにつれて爪部材54’がラチェット27’上をスライドし得るように、歯54a、’27a’は、テーパの付いた遠位エッジを含むことができる。このため、爪54’およびラチェット27’は、ガスチャンバ16’を満たすガスの送出を妨げることなく、プランジャ20’の取り外しを防止することができる。
【0040】
本明細書のデバイスおよびシステムは、米国特許第8,986,242号(その開示全体が引用により本明細書に明示的に援用される)に開示された方法と同様に、予混合ガスを患者の体内に、例えば、硝子体手術中に患者の眼の内部に送り出すために使用することができる。
【0041】
本発明は、様々な変更および代替的な形態が可能であるが、その具体的な例が図面に示され、本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示の具体的な形態または方法に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての変更物、均等物および代替物を網羅するものであることを理解されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】