(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】トリガ遅延を有する同期システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/33 20210101AFI20240705BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240705BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240705BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61B5/33 210
A61B5/352
A61B5/02 C
A61B5/0245 100B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501789
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022069216
(87)【国際公開番号】W WO2023001606
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ワイス ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェンジン
(72)【発明者】
【氏名】デン ブリンカー アルベルトゥス コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア トルモ アルバート
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AC28
4C017DD14
4C017EE15
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG02
(57)【要約】
同期システムは、トリガベースイベントを検出するセンサ装置を備える。解析モジュール及び演算ユニットは、センサ装置によるトリガベースイベントの検出と、撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延に関する事前情報にアクセスするように構成される。取得時間間隔の開始点は、検出されるトリガベースイベントと、時間遅延の事前情報とから計算される。センサ装置によるトリガベースイベントの検出と取得時間間隔との間の時間遅延は、個々の被検体間で異なり得るが、個々の被検体ごとに、時間遅延は良好に再現可能であり、したがって、被検体ごとに較正されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期システムであって、
トリガベースイベントを検出するセンサ装置と、
前記センサ装置によるトリガベースイベントの検出と撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延に関する事前情報にアクセスし、検出されるトリガベースイベント及び前記時間遅延の前記事前情報から、前記取得時間間隔の開始点を計算するよう構成される解析モジュール及び演算ユニットと、有し、
前記解析モジュール及び前記演算ユニットは、検査される被検体の画像情報の形の前記事前情報にアクセスし、アクセスされた前記画像情報に基づいて、前記センサ装置によるトリガベースイベントの検出と撮像データを取得するための前記取得時間間隔の開始点との間の時間遅延を導出するよう構成されている、同期システム。
【請求項2】
前記解析モジュール及び前記演算ユニットは、前記アクセスされた画像情報から、前記検査される被検体の解剖学的距離及びサイズを導出し、前記導出された解剖学的距離及びサイズから前記時間遅延を導出するように構成される、請求項1に記載の同期システム。
【請求項3】
前記解析モジュールは、前記アクセスされた画像情報から、前記時間遅延をリターンする機械学習モジュールを有する、請求項1又は2に記載の同期システム。
【請求項4】
前記取得時間間隔の前記開始点の前記計算は、前記センサ装置のレイテンシ時間を更に考慮する、請求項1に記載の同期システム。
【請求項5】
前記時間遅延に関する前記事前情報は、前記トリガベースイベントの直接測定によって前記取得時間間隔を測定するための較正プロシージャにおける撮像によって、前記検査される被検体について事前に較正されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の同期システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の同期システムのための時間遅延の較正方法であって、前記取得時間間隔は、撮像データの同期された取得とは別個の較正検査において、
(i)前記トリガベースイベントの実際の瞬間時間及び前記取得時間間隔の直接測定と、
(ii)前記センサ装置によるトリガベースイベントの同時の検出と、
によって測定される、方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の同期システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記センサ装置によるトリガベースイベントの検出と撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延に関する事前情報にアクセスし、
検出されるトリガベースイベントと前記時間遅延の前記事前情報とから、前記取得時間間隔の前記開始点を計算する、
コンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の同期システムのための時間遅延の較正を制御するためのコンピュータプログラムであって、
トリガベースイベントの実際の瞬間時間と取得時間間隔との直接測定を実行し、
前記センサ装置によってトリガベースイベントを同時に検出し、
前記トリガベースイベントの実際の瞬間時間と、前記センサ装置によるトリガベースイベントの前記検出との間の時間遅延を決定する、コンピュータプログラム。
【請求項9】
前記センサ装置は、検査される被検体の身体のそれぞれ異なる位置においてトリガベースイベントを検出するように制御され、
前記解析モジュール及び前記演算ユニットは、前記検出されるトリガベースイベント間の時間差及び前記異なる位置間の導出された解剖学的距離から、パルス通過速度を導出するように構成される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の同期システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガ遅延を伴う同期システムに関し、特に撮像データの取得をトリガする同期システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような同期は、文献N. Spicher, M. Kukuk, S. Maderwald, and M. E. Ladd. "Initial evaluation of prospective cardiac triggering using photo plethysmography signals recorded with a video camera compared to pulse oximetry and electrocardiography at 7T MRI", in Biomedical engineering online 2016;15(1):126によって知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
知られている同期システムは、実際、(心臓)運動による撮像アーチファクトを低減するために、MR撮像データ(k空間データ)取得と被検体の心臓アクティビティとの間の同期のための観察的セットアップである。非接触のトリガは、ビデオカメラを用いて皮膚色変化から得られる遠隔フォトプレチスモグラフィ(rPPG)信号から心周期の位相を推定することによって実行される。すなわち、上記の論文は、ビデオトリガ自体に基づくMR画像取得について述べている。
【0004】
本発明の目的は、被検体の運動中の撮像データ取得の同期の基礎を形成するトリガベースイベントをより正確に決定する同期を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、トリガベースイベントを検出する本発明のセンサ装置であって、該センサ装置によるトリガベースイベントの検出と撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延に関する事前情報にアクセスし、検出されるトリガベースイベントと時間遅延の前記事前情報とから取得時間間隔の開始点を計算するように構成される解析モジュール及び演算ユニットを有し、前記解析モジュール及び前記演算ユニットは、被検体の画像情報に含まれる前記事前情報にアクセスし、前記アクセスされた事前情報に基づいて、前記センサ装置によるトリガベースイベントの検出と撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延を導出するように構成されている、センサ装置によって達成される。
【0006】
本発明の洞察は、トリガベースイベントの比較的間接的な測定を実行するセンサ装置に基づく同期システムが、トリガベースイベントの実際の発生と、センサ装置がトリガベースイベントを検出する瞬間時間との間に時間遅延を生じることである。本発明の他の洞察は、この時間遅延が補償されることができることである。本発明のこの態様の同期システムは、MRの k空間データ又はCTの減衰プロファイルなどの撮像データが、例えば撮像される被検体(検査される患者)の運動に起因して、低レベルの摂動がある場合に又は摂動がない場合さえもトモグラフィック(MRI、CT、NM(PET、SPECT)診断撮像システムによって取得されることができる、次回の取得時間間隔を表わすトリガベースイベントを検出するセンサ装置を有する。センサ装置は、心拍を反映する皮膚色の変化を記録するカメラシステムであってもよい。センサ装置は、シンプルな従来の(IR)指先センサであってもよい。この態様によれば、事前情報は、トリガベースイベントのセンサ装置による検出と取得時間間隔の発生との間の時間遅延についてアクセスされる。事前情報は、情報を含むか又は解剖学的距離及びサイズを表わす画像情報を含む。特に、これらの距離及びサイズは、血液が患者の心臓から皮膚色変化が記録される位置まで移動する必要がある経路を決定する。すなわち、事前情報から、画像解析(例えば、自動パターン認識又は人間のユーザによる解剖学的ランドマークの指標)によって、解剖学的サイズ及び距離が計算されることができる。次いで、所定の値又は患者の血流速度の推定値を使用して、トリガベースイベントのセンサ装置による検出とトリガベースイベントの実際の発生との間の時間遅延が計算されることができる。代替として、訓練されたニューラルネットワークが、解析モジュール内に提供されることができ、それにより、解析モジュール内の訓練されたニューラルネットワークが、入力画像情報から時間遅延をリターンすることもできる。これは、機械学習解析モジュールを形成する。画像情報からの時間遅延のこの計算は、適切に訓練された機械学習モデル又は訓練されたニューラルネットワークによって実行されることができる。画像情報からの解剖学的距離の明示的な計算は、比較的単純な特徴認識及び幾何学的計算を使用するインプリメンテーションである。
【0007】
例えば、トリガベースイベントは、患者の心臓の心電図(ECG)におけるRピークであってもよく、取得時間間隔は、Rピークに続く静止心臓位相であってもよく、その場合、心臓の運動は全く又はほとんどなく、取得されるk空間データ又は減衰プロファイルは、運動によってほとんど又は全く影響を受けない。本発明の本態様の洞察は、トリガベースイベントのセンサ装置による検出と取得時間間隔との間の時間遅延は、個々の被検体間で異なり得るが、個々の被検体ごとに、時間遅延は良好に再現可能であり、したがって被検体ごとに較正されることができることである。較正された時間遅延は、撮像データの取得を被検体の運動と同期させることができ、それにより、撮像データが取得されることができる。したがって、本発明のこの態様では、撮像データの取得は、取得時間間隔のすぐ前のトリガベースイベントに基づいて行われることができる。実際の例では、トリガベースイベントは心電図のRピークであってもよく、取得間隔は、検出されたRピークのすぐ後の静止位相にあってもよい。すなわち、検出されたRピークの直後の静止間隔が、撮像データの取得に用られることができる。較正された時間遅延及びトリガベースイベント間の平均時間間隔から、画像取得は、現在のトリガベースイベントの検出と予想される次のトリガベースイベントとの間で利用可能な時間に適応されることができる
【0008】
米国特許出願公開第2010/0308823号明細書から、フォトプレチスモグラフィ(PPG)信号が心室収縮からの時間遅延を伴って現れることがそれ自体知られている。この遅延は、ECG信号を使用することなく、ピクセルごとの血流速度の別々の測定からの血流速度変化から推定されることができる。
【0009】
本発明の同期システムの他の例では、取得時間間隔の開始点の計算は、センサ装置のレイテンシも考慮する。これは、センサ装置がカメラベースのセンサ装置として実現される場合に特に効果的である。この待ち時間は、センサ装置の技術によって引き起こされる技術的遅延を表わす。カメラの場合、実際には、センサ装置のソフトウェアが、血液が皮膚に、例えば患者の顔に流入することを決定できるまで、1~2フレームの遅延が存在しうる。しかしながら、本発明の洞察は、依然として、センサ装置遅延の大部分が、心臓から顔へのパルス通過時間によって引き起こされることである。センサ装置のレイテンシの補正のさらなる詳細は、欧州特許出願第20185605.1号に記載されている。
【0010】
同期システムの別の実施形態では、実際のトリガベースイベントと取得間隔のタイミングとの間の時間遅延に関する事前情報は、別個の(撮像データ取得のための)較正から取得される。この較正では、トリガベースイベント及び取得間隔のタイミングが直接測定される。すなわち、撮像データの同期取得とは別個の検査において、以下が行われる:(a)トリガベースイベントの実際の瞬間時間及び取得時間間隔の直接の測定、及び(b)センサ装置によるトリガベースイベントの同時の検出。
【0011】
この較正では、撮像システムによる撮像データの取得を同期させるために使用される実際の個々のセンサ装置によるトリガベースイベントの検出と、直接測定を比較する必要がなくなりうる。通常、較正は、患者のケアサイクルの後の時点での画像取得において使用される個々のセンサ装置と十分に類似する(同じ種類の同じクラス)センサ装置による決定と直接測定の組み合わせを含むことで十分である。
【0012】
例えば、心臓MRイメージングの場合、トリガベースイベントとして心電図のRピークが使用される。Rピークの直接測定は、患者の胸部上に配置された電極のセットによる心臓の電気的活動の電子的測定に基づくことができる。取得間隔は、心電図における連続するRピーク間の静止(中期から終期)拡張期に計時される。心電図は、患者の胸部に取り付けられた電極によって電子的な心臓信号をピックアップすることによって、電子的に直接測定されることができる。トリガベースイベントの直接検出と共に、トリガベースイベントは更に、センサ装置によっても検出され、かかる検出はカメラベースであってもよい。一方のセンサ装置(構成)によるトリガベースイベントの検出と、他方の直接測定との比較から、トリガベースイベントの実際の発生とセンサ装置(構成)によるその検出との間の時間遅延が較正されることができる。本発明の洞察は、この時間遅延が個々の患者間で異なりうる一方で、時間遅延は、単一の個々の患者について良好に再現されることである。実際には、心電図のRピークの形態のトリガベースイベントの直接測定は、患者のケアサイクルの早期に実行される。この直接測定は、センサ装置(装置)によるトリガベースイベントの検出と組み合わされたとき、後続の撮像プロシージャにおいても使用されることができる較正された時間遅延を提供する。そのために、ECG記録システムは、トリガベースイベントィ(PPG)センサ装置を備えることができ、それカカカカメラベースンサ装置又は従来の指先センサ装置でありうる。PPGセンサ装置を有するそのような統合ECG記録システムは、一般開業医のオフィスなどの局所的なポイントオブケアのところに設置されることができる。カメラベースのPPGセンサ装置は、パルス状の血流を表わす、検査される患者の皮膚色の変化を検出する。通常、皮膚の色は、患者の顔、例えば、前額部又はこめかみから検出される。代替的に又は追加的に、接着接触するPPGセンサ装置が、患者の皮膚上に配置されることができる。更に、患者の指先にクランプされる従来の指先PPGが使用されることもできる。そのようなECG記録とPPGセンサの組み合わせ構成は、実際のトリガベースイベント、すなわち実際のRピークとPPGセンサ装置によって検出されるPPGトリガマーカーとの間の患者固有の遅延を推定することができる。この推定は、患者の胸部上の電極に基づくECG記録システムによってほぼ瞬時に記録される実際のRピークに対するPPGセンサ配置の患者固有の遅延の較正を提供する。この較正された遅延値は、その後、PPGベースのトリガ磁気共鳴イメージングプロトコルにおいて使用されることができる。較正された遅延はまた、トリガベースイベントを形成するRピークに対する磁気共鳴画像を正確にタイムスタンプするために使用されることができる。トリガベースイベント(Rピーク)のPPGセンサ装置の記録と、PPGセンサ装置によるトリガベースイベントの実際の発生との間の較正された遅延は、患者のデジタルヘルスレコードに記憶され、後続の磁気共鳴イメージングプロシージャ中に利用可能にされることができる。
【0013】
更に、直接(ECG)測定値と(PPG)センサベース測定値との比較から見出される較正された遅延は、特に解剖学的距離及びサイズを表わす被検体上の画像情報から計算される遅延と比較されることができる。この比較は、画像情報から導出される遅延時間の精度の定量的測定を提供する。
【0014】
トリガベースイベント(Rピーク)のセンサ装置による検出とトリガベースイベント自体との間の遅延は、心臓からPPG部位へのパルス通過時間(pulse transit time、PTT)によって引き起こされ、心臓トリガを遅延させる。しかしながら、ここでも、顔ベースのカメラ-PPGは、それぞれのPTTが指先-PPGの場合よりも著しく短いので、利点を有する。PTTは、心拍数及び血圧などの様々な生理学的パラメータによって変化することが知られている。磁気共鳴イメージング検査への紹介に先立って、一般開業医又は心臓専門医において、(例えば、サイクルによる身体的ストレス中の)ストレスECGが獲得されることが非常に一般的である。このストレスECG装置にPPGカメラを装備すること、又はPPG信号の動きアーチファクトの影響を受けにくいこめかみに接触PPGセンサ装置を装備することが提案されている。検査中、心拍数は著しく変化する。上記の遅延を心拍数の関数としてマッピングすることが提案される。このマッピングは、MR検査中に使用することができ、現在の心拍数がPPG信号から分かる。
【0015】
本発明の一態様は、センサ装置によるトリガベースイベントの検出と、撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延に関する事前情報にアクセスし、検出されるトリガベースイベントと前記時間遅延の前記事前情報とから取得時間間隔の開始点を計算する命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0016】
本発明の別の態様は、トリガベースイベントの実際の瞬間時間及び取得時間間隔の直接測定を実行し、センサ装置によってトリガベースイベントを同時に検出し、トリガベースイベントの実際の瞬間時間と、センサ装置によるトリガベースイベントの検出との間の時間遅延を決定する命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0017】
したがって、本発明のこれらのコンピュータプログラム態様によれば、本発明は、同期システムのプロセッサ又はコンピュータにインストールされた場合に本発明の技術的効果をもたらすことにおいて少なくとも部分的に実現されることができる。
【0018】
本発明によれば、センサ装置によるトリガベースイベントの検出とトリガベースイベント自体(トリガ遅延)との間の遅延は、被検体の画像情報から導出される。画像情報は、身長、腕の長さ、肩の幅、大動脈弁から患者の前額部又は指までの距離など、被検体の解剖学的情報を表わす。この解剖学的情報は、トリガ遅延の決定に関連する。アクセスされる画像情報は、カメラシステムによって取得される(色又はグレースケール、赤外線)画像であってもよい。カメラシステムは、トモグラフィック診断イメージングシステムの検査ゾーンの外側に取り付けられて、トモグラフィック診断イメージングシステムにおいて検査される被検体の準備中に画像を取得するように制御されることができる。カメラシステムはまた、検査ゾーン内又は検査ゾーンの隣に取り付けられるこいとができる。このようなインボアカメラシステムは、トモグラフィック画像プロシージャ中に画像情報を取得することができる。画像情報は更に、低解像度サーベイ画像などの準備磁気共鳴画像からアクセスされることもできる。同期のこの実施形態は、個々の患者間の差異を考慮に入れてトリガ遅延を正確に決定することを達成する。正確なトリガ遅延は、トモグラフィック診断イメージングシステムによる撮像データの取得を被検体の心臓運動などの反復運動と同期させるために、使用されることができる。正確なトリガ遅延はまた、磁気共鳴イメージングにおける磁化準備(例えば、反転回復、磁化変換技術、及びブラックブラッドアンギオグラフィ)及び励起の正確なタイミングのために使用されることができる。正確な遅延は更に、磁化準備及び撮像データ取得のために、トリガベースイベントのセンサ装置の検出と後続のトリガベースイベントとの間の時間を最適に使用することによって、スキャン効率を最適化するために使用されることができる。
【0019】
本発明の同期システムの別の例では、トリガ遅延は、解剖学的サイズ及び距離に基づいて推定される。これらのパラメータは、主に、トリガ遅延の被検体間のバリエーションを決定するようである。例えば、トリガ遅延は、患者の心臓から解剖学的位置(前額部、指先)への血液の通過時間に起因し得る。他の実現例では、トリガ遅延の推定は、機械学習(たとえば、畳み込みネットワーク)によって実行されることができる。これは、2つの変形例、すなわち、a)入力パラメータとしての画像を用いたネットワークによる遅延の直接推定、又はb)入力画像に基づくネットワークによるアーム長としての解剖学的特徴の推定、及びこれらの解剖学的特徴に基づく遅延の回帰、において達成されることができる。
【0020】
本発明の同期システムの他の実現例では、例えば、異なる位置でのPPG測定に基づく少なくとも2つのトリガベースイベントもまた、パルス通過速度PTV(pulse transit velocity)を推定するために使用される。このアプローチは、PTVが動脈のスチフネス(stiffness)及び血圧などの生理学的パラメータにも依存するという洞察に基づく。PTV及び心臓から顔までの既知の解剖学的距離に基づいて、例えば患者の顔におけるPPG測定によるトリガベースイベントの検出のパルス遅延が計算される。
【0021】
本発明のさらなる態様は、検査される被検体の身体のそれぞれ異なる位置でトリガベースイベントを検出し、検出されるトリガベースイベントの間の時間差及びこれらの異なる位置間の導出された解剖学的距離とからパルス通過速度を導出するよう、センサ装置を制御する命令を含むコンピュータプログラムに関する。本発明のこの態様によれば、パルス通過速度の導出は、ソフトウェアで実現されることができる。本発明のさらなる態様は、検査される被検体の画像情報にアクセスし、アクセスされた画像情報に基づいて、トリガベースのセンサ装置の検出と、撮像データを取得するための取得時間間隔の開始点との間の時間遅延を導出するための命令を含むコンピュータプログラムに関する。本発明のこの態様によれば、画像情報からの時間遅延の導出は、ソフトウェアにおいて実現されることができる。本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項に定義される実施形態を参照して更に詳述される。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照し、添付の図面を参照して説明される
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】時間遅延を引き起こす基礎となる生理学を示す、顔からのカメラPPG信号と、指の接触センサとの例を示す図。
【
図3】本発明の同期システムのための時間遅延の較正を示す概略図。
【
図4】画像情報を使用する本発明の同期システムの実現例を示す概略図。
【
図5】ボランティアスタディにおいて得られた、顔から取得されたPPGトリガとRピークとの間の遅延(ここでは「後方距離」又は「PTT」と呼ぶ)対身長の線形回帰の例を示す図。
【
図6】個々のトリガベースイベントが、検査される患者の体の異なる位置から検出される、本発明の同期システムの実現例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の同期システム1の概略図を示す。同期システムは、検出された現在のトリガベースイベント(trigger base event、TBE)11から後続のトリガベースイベントを推定するように機能する。トリガベースイベントは、例えば、トモグラフィック撮像システム31による画像取得をトリガするように促すインスタンスである。トモグラフィック撮像システムは、核医学トモグラフィック撮像システムの磁気共鳴検査システム、コンピュータトモグラフィックシステムでありうる。取得された撮像情報は、k空間プロファイル、減衰プロファイル、又は検出されたガンマ(γ)光子でありうる。磁気共鳴画像は、k空間プロファイルから再構成されることができ、コンピュータトモグラフィック画像は、様々な向きの(X線)減衰プロファイルから再構成されることができる。検出されたγ光子から、核医学トモグラフィック画像が再構成されることができる。k空間プロファイル、減衰プロファイル、又は検出された光子の形の撮像情報は、連続する間隔において、特に、撮像される被検体(検査される患者)の連続する等しい又は同等の運動状態の最中、撮像データの複数のセットにおいて取得されることができる。例えば、撮像データセットから、対応する心臓又は呼吸位相と等しい、同等のものを取得することができる。同期システムは、現在のトリガベースイベント11を検出するセンサ10を具備する。同期システム1は、検出されるトリガベースイベントの瞬間時間がセンサ10によって適用される解析モデル20を具備する。解析モジュールは、センサ22のレイテンシ(τ)、及び実際のトリガベースイベントと取得間隔のタイミングとの間の時間間隔(Int)21に関する事前情報にアクセスすることができる。この事前情報は、(撮像データ取得に対する)直前の較正から取得されることができる。解析モジュールは、トリガベースイベントの検出された瞬間時間及び事前情報からトリガ信号(TS)を計算し又はリターンする演算ユニット又は機械学習ユニットを有する。トリガ信号は、画像取得システム31の制御ユニットに与えられる。同期システムは、画像取得システムに統合されることができ、又はトリガされた画像取得のために画像取得システムに結合されるスタンドアロン同期システムでありうる。
【0025】
図2は、顔からのカメラPPG信号、ECG信号、及び指からの接触PPG信号の例を示し、これらは全て、約1つの心周期の最中に同時に測定される。「カメラPPGの谷(valley)」及び「接触PPGのピーク」は、心臓トリガに適したPPGマーカを示す。それらは、トリガのために従来使用されているRピークに対して遅延される。
図2は、患者の胸部に配置された電極から直接にECGによって検出されるトリガベースイベントが、無視できるトリガ遅延で検出されることを示す。被検体の前額部トリガよって、又は指先における接触センサによって、検出トトトリガベースイベント直接検出されるECGのRピークに対してそれぞれのトリガ遅延(量)だけ遅延される。
【0026】
図3は、本発明の同期システムのための時間遅延の較正の概略図を示す。この較正は、
図2を参照して示された洞察に依存する。較正プロシージャ60は、トリガベースイベントに対して、無視できるトリガ遅延を有する事前の直接検出61を実行することを含む。すなわち、直接検出61は、無視できる程度の技術的センサ遅延を有しかつ被検体の生理に関連する無視できる程度のパルス通過時間を有する測定セットアップによって行われる。加えて、(同一の又は対応する)トリガベースイベントは、センサ装置(同一の又は対応する等価)によって検出され(62)、トリガ遅延は、センサ装置による検出の瞬間時間と、直接検出との比較から決定される。このトリガ遅延は、トリガベースイベントのセンサ装置による検出と、当該の個々の被検体に関する再現可能な態様でのトリガベースイベントの実際の発生との間の時間スパンを表わす。したがって、較正されたトリガ遅延は、例えば診断画像取得の後続の同期における事前情報として使用されることができる。更なる改良が、較正中及び診断画像取得の同期中に被検体の心拍数の差についてトリガ遅延を補正するために実施されることもできる。
【0027】
図4は、画像情報を使用する本発明の同期システムの実施の概略図を示す。画像情報51は、カメラによって、又は磁気共鳴もしくはコンピュータトモグラフィ(サーベイ)画像から取得されることができる。ジオメトリ解析器53は、画像情報51から、解析モジュールに適用される解剖学的距離を導出する。代替的に、訓練されたニューラルネットワーク55が、入力画像情報51から解剖学的距離をリターンする。訓練されたニューラルネットワークは、画像のセットの訓練データセットと、前記画像によって表される解剖学的構造の別個に測定された解剖学的距離とに基づいて訓練されることができる。解剖学的距離に基づいて、解析モジュール20は、トリガ遅延を推定する。これは、血流速度の代表値を使用する単純な計算に基づいて、又は解析モジュール20に記憶された、又はそれによってアクセスされるルックアップテーブルによって行うことができる。トリガ遅延は、身長対実際のトリガ遅延又はパルス通過時間の較正測定値の線形回帰解析に基づいて推定されることができる。経験的には、パルス通過時間は、身長とほぼ線形であるように見える。これは、ボランティアスタディで得られた身長に対する、顔から得られたPPGトリガとRピーク(ここでは「後方距離(backward distance)」又は「PTT」と呼ばれる)との間の遅延の線形回帰の例を示す
図5に示される。ラベル80Hz及び20Hzは、Rピークのカメラベースの検出において使用されるカメラフレームレートを指す。この実験では、カメラは患者テーブルの上方に配置される。このカメラは、身長、肩幅、腕の長さなどが得られる画像を得るために使用されることができる。カメラの固定された装置及び幾何学的較正は、画像から直接的に絶対サイズを導出することを可能にする。これは、公知の最新の画像処理によって、又は機械学習によって行うことができる。
【0028】
図6は、個々のトリガベースイベントが検査される患者の身体上の異なる位置から検出される、本発明の同期システムの実施の概略図を示す。この実施形態でトリガベースイベントの異なる位置R
1,2,3...71における個々のトリガベースイベントを検出する多数のセンサ素子を有する。センサ素子は、それぞれの到達時間T
a1,2,3...73に、それぞれの位置からトリガベースイベントを検出する。到達時間73及び検出位置71から、解析モジュールは、パルス通過速度(pulse transit velocity)PTVを計算することができる。PTV及び心臓から顔までの既知の解剖学的距離に基づいて、患者の顔におけるPPG測定のパルス遅延が計算される。
【国際調査報告】