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特表2024-525744高耐熱性半芳香族コポリアミド、その調製方法、組成物及び成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】高耐熱性半芳香族コポリアミド、その調製方法、組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20240705BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08G69/26
C08G69/28
C08L77/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501830
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2022074273
(87)【国際公開番号】W WO2023284285
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110799801.9
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524014754
【氏名又は名称】上海凱賽生物技術股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519322820
【氏名又は名称】シーアイビーティー アメリカ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】馮梧桐
(72)【発明者】
【氏名】趙元博
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シウカイ
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB02
4J001EB03
4J001EB04
4J001EB05
4J001EB06
4J001EB07
4J001EB08
4J001EB09
4J001EB10
4J001EB37
4J001EC04
4J001EC09
4J001EE28C
4J001FA01
4J001FB06
4J001FC05
4J001FC06
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB03
4J001GB04
4J001GB05
4J001GB06
4J001JB02
4J001JB06
4J001JB21
4J002CL031
(57)【要約】
本開示は、高温耐性半芳香族コポリアミド、その調製方法、組成物、及び成形品を提供する。本願発明の前記高温耐性半芳香族コポリアミドのモノマー原料は、二酸モノマー及びジアミンモノマーを含む。前記二酸モノマーとしては、芳香族二酸及び/又は芳香族二酸の誘導体、ならびに、脂肪族二酸などが挙げられるが、これらに限定されない。前記ジアミンモノマーとしては、デカメチレンジアミン及びペンタメチレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。前記ペンタメチレンジアミンに対する前記デカメチレンジアミンのモル比率は、(1~30):1である。本願発明によって提供される前記高温耐性半芳香族コポリアミドは、優れた耐熱性、機械的強度、低吸水性、寸法安定性及び低黄色度指数を有する。本願発明において、コポリアミドPA10T/5T/5X/10Xは、水を反応媒体とする一工程法を採用することによって調製され、環境への親和性、単純かつ簡便な操作、低コスト、高い生産効率などの利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温耐性半芳香族コポリアミドであって、前記コポリアミドのモノマー原料が、二酸モノマーとジアミンモノマーとを含み、
前記二酸モノマーが、芳香族二酸、及び/又は、芳香族二酸の誘導体、ならびに、脂肪族二酸を含み、
前記ジアミンモノマーが、デカメチレンジアミン及びペンタメチレンジアミンを含み、
前記ペンタメチレンジアミンに対する前記デカメチレンジアミンのモル比率が、(1~30):1であることを特徴とする、高温耐性半芳香族コポリアミド。
【請求項2】
前記モノマー中の前記デカメチレンジアミンが、化学的に誘導された、又は、生体物質由来の1,10-デカメチレンジアミンであり、好ましくは、生体物質由来の1,10-デカメチレンジアミンである;及び/又は、
前記モノマー中の前記ペンタメチレンジアミンは、化学的に誘導された、又は、生体物質由来のペンタメチレンジアミンであり、好ましくは生体物質由来の1,5-ペンタメチレンジアミンである;及び/又は
前記芳香族二酸に対する前記デカメチレンジアミンのモル比率は、1:(0.7~1.5)であり、好ましくは1:(0.8~1.2)である;及び/又は
前記ペンタメチレンジアミンに対する前記デカメチレンジアミンのモル比率が(2~30):1であり、好ましくは(2~20):1である;及び/又は、
前記脂肪族二酸に対する前記ペンタメチレンジアミンのモル比率が(1~1.3):1であり、好ましくは(1~1.1):1であり、より好ましくは(1~1.06):1である;及び/又は、
前記二酸モノマーに対する前記ジアミンモノマーのモル比率は、(1~1.3):1であり、好ましくは(1~1.1):1であり;より好ましくは(1~1.06):1であり、さらに好ましくは(1.01~1.04):1である;及び/又は、
前記ジアミンモノマー及び前記二酸モノマーの合計量が、前記コポリアミドの前記モノマー原料の合計量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上を占め、この百分率はモル%を意味する;及び/又は、
前記デカメチレンジアミン及び前記ペンタメチレンジアミンの合計量が、前記ジアミンモノマーの合計量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占め、この百分率はモル%を意味する;及び/又は、
前記芳香族二酸及び/又は前記芳香族二酸の誘導体、ならびに、前記脂肪族二酸の合計量が、前記二酸モノマーの合計量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占め、前記百分率はモル%を意味する;及び/又は、
前記コポリアミドはPA10T/5T/5X/10Xである、ことを特徴とする請求項1に記載の高温耐性半芳香族コポリアミド。
【請求項3】
前記芳香族二酸が、炭素原子数8以上のベンゼン環を含む二酸のいずれか1種又はその2種以上の組み合わせであり、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸のいずれか1種又はその2種以上の組み合わせを含む;及び/又は、
前記芳香族二酸の誘導体は、パラフタロイルクロリド、ジメチルテレフタレート及びジエチルテレフタレートのいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない;及び/又は、
前記脂肪族二酸は、炭素原子数2~18の脂肪族二酸及びその組み合わせのいずれか1つであり、好ましくは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高温耐性半芳香族コポリアミド。
【請求項4】
前記コポリアミドの原料はまた、前記モノマーの総質量に対して0.01%~0.03%を占める添加剤を含み、前記添加剤は、末端封止剤、触媒、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶化核剤、蛍光増白剤及び帯電防止剤のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない;及び/又は、
前記コポリアミドの原料はまた、前記モノマーの総質量に対して0.1%~0.5%を占める酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、無機リン酸系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤及び炭素フリーラジカル捕捉系酸化防止剤のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む;及び/又は、
前記コポリアミドの原料はまた、前記モノマーの総質量に対して0~0.07%、好ましくは0.005~0.05%の触媒を含み、前記触媒は、リン酸塩及び次亜リン酸塩を含み、好ましくは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のリン酸塩、ならびにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を含み、より好ましくは、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム及び次亜リン酸マグネシウムのいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む;及び/又は、
前記コポリアミドの原料はまた、前記モノマーの総質量に対して0~1%、好ましくは0.1~0.5%の末端封止剤を含み、前記末端封止剤は、C2~C16脂肪族カルボン酸、C7~C10芳香族カルボン酸及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含み、好ましくは、前記末端封止剤は、C2~C10脂肪族カルボン酸、C7~C10芳香族カルボン酸及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含み、前記末端封止剤は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、トリメチル酢酸、イソ酪酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、トルイル酸、α-ナフトエ酸、β-ナフトエ酸、メチルナフトエ酸及びフェニル酢酸のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高温耐性半芳香族コポリアミド。
【請求項5】
前記コポリアミドの融点が270℃以上、好ましくは270℃~310℃である、及び/又は、
前記コポリアミドの熱変形温度は95~130℃、好ましくは100~125℃である、及び/又は、
前記コポリアミドの吸水率は0.1~1%、好ましくは0.2~0.8%である;及び/又は、
前記コポリアミドの相対粘度が1.0~3.2、好ましくは2.2~3.0、より好ましくは2.2~2.6である;及び/又は
前記コポリアミドの引張強度が50~140MPa、好ましくは60~120MPa、より好ましくは70~110MPaである;及び/又は、
前記コポリアミドの曲げ強度が70~130MPa、好ましくは85~130MPa、より好ましくは90~130MPaである;及び/又は、
前記コポリアミドの黄色度指数(YI値)は15以下、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の高温耐性半芳香族コポリアミド。
【請求項6】
高温耐性半芳香族コポリアミドを調製する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
1)デカメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、芳香族二酸及び/又は芳香族二酸の誘導体、ならびに、脂肪族二酸を水に加え、70~90℃に加熱し、任意に70~90℃で0.5~3時間保持し、ポリアミド塩を含む混合物を得る;
2)前記ポリアミド塩を含む混合物を120~140℃に加熱し、脱気して加熱生成物を濃縮した後、240~255℃に加熱して反応させる;及び
3)脱気によって反応系の圧力を下げる。
【請求項7】
前記工程1)の加熱工程が不活性ガス雰囲気下で実施される;及び/又は、
前記工程1)において、保持時間は0.5~2時間である;及び/又は、
前記工程2)において、加熱された前記生成物を濃縮して、40重量%~80重量%、好ましくは55重量%~65重量%のポリアミド塩溶液を生成する;及び/又は、
前記工程2)において、反応時間は0.5~2時間、好ましくは1~1.5時間である;及び/又は、
前記工程2)において、反応系の圧力は2.5~3MPaに維持される;及び/又は、
前記工程3)において、前記反応系内の圧力を脱気により0~0.2MPa(ゲージ圧)まで低下させる;及び/又は、
前記工程3)において、減圧後の前記反応系の温度は315~335℃である;及び/又は、
前記方法は、工程4):真空化処理:前記反応系を-0.02MPa以下、好ましくは-0.05MPa~-0.1MPaに真空化し、任意に、前記反応系の真空度を0~300秒間、好ましくは0~90秒間、より好ましくは5~90秒間保持する;を含み、及び/又は、
前記方法は、工程5):排出、ストリップ状への延伸、及びペレット化を含む、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記工程1)、2)、3)及び4)のいずれかの段階で添加剤を添加することを含み、前記添加剤が、前記モノマーの総質量の0.01%~3%を占め、前記添加剤が末端封止剤、触媒、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶化核剤、蛍光増白剤及び帯電防止剤のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組合せを含むが、これらに限定されない、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高温耐性半芳香族コポリアミドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の高温耐性半芳香族コポリアミドを原料として用いることによって調製された製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示はポリマー材料の分野に属し、特に高温耐性半芳香族コポリアミド、その調製方法及び組成物に関わる。
【0002】
〔技術背景〕
表面実装技術(SMT)の台頭と、自動車産業における「鋼鉄の代わりにプラスチックを」との開発トレンドに伴い、高温耐性ポリアミドの市場需要が急増している。SMT技術においては、材料の融点が215℃を下回らないことが要求され、鉛フリーはんだにおいては材料の耐熱性がより高く要求される。自動車燃料の燃焼温度の上昇は、燃料の完全燃焼、燃料消費量の削減、並びに二酸化炭素および他の有毒ガス排出量の削減に寄与する。そして、燃料の燃焼温度の上昇は、自動車エンジンの周辺部品に高い耐熱性を要求する。従来の汎用プラスチックおよび一般的なエンジニアリングプラスチックでは、材料の耐熱性に対する市場の要求に応えることができなかった。高温耐性ポリアミドの融点は270℃より高く、短期及び長期の耐熱性に優れている。一般的な高温耐性ポリアミドはPA46、PA5T、PA6T、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA MXD6、PMIA、PPTAなどである。PA10Tの正式名称はポリ(デカメチレンテレフタルアミド)である。テレフタル酸は、ベンゼン環構造により、剛性、耐熱性、機械的強度、および寸法安定性が高い。また、1,10-デカメチレンジアミンの長い炭素鎖構造により、PA10Tは溶融加工性および低吸水性などの利点を有する。さらに、1,10-デカメチレンジアミンは、ヒマシ油(生体物質)からケン化、アンモニウム化、および他の工程を経て得られるため、PA10Tは、有望なバイオベースの高温耐性ポリアミドである。他の半芳香族高温耐性ポリアミドと同様に、PA10Tにも溶融流動性が悪い、溶融加工域が狭いなどの欠点があるため、溶融流動性を改善し、融点を下げるために他のコポリマーがよく導入される。
【0003】
特許CN101759853Bは、半芳香族ポリアミドの調製方法を提供している:当該方法では、まず、モノマーと助剤とを重合釜に入れて縮合重合し、特定の低粘度のプレポリマーを得た後、当該プレポリマーを乾燥し、固相重縮合用の粘度調整器に移送する。しかしながら、かかる方法は様々な装置を使用することになり、その操作も複雑である。
【0004】
〔発明の概要〕
既存の技術及び製品の欠点を克服することを目的として、本開示は、高温耐性の半芳香族コポリアミド及びその調製方法、組成物ならびに成形品を提供する。
【0005】
前記コポリアミドのモノマーは、二酸モノマー及びジアミンモノマーを含み、前記二酸モノマーは、芳香族二酸及び/又は芳香族二酸の誘導体、ならびに、脂肪族二酸を含み、前記ジアミンモノマーは、デカメチレンジアミン及びペンタメチレンジアミンを含み、前記ペンタメチレンジアミンに対する前記デカメチレンジアミンのモル比率は、(1~30):1である。
【0006】
前記芳香族二酸の誘導体としては、芳香族二酸のアミド及び芳香族二酸のエステル、例えば、芳香族二酸のC1-C10アルキルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0007】
前記モノマー中の1,10-デカメチレンジアミン(デカメチレンジアミンと称する)は、化学的に誘導された、又は、生体物質由来の1,10-デカメチレンジアミンであり、生体物質由来の1,10-デカメチレンジアミンが好ましい。前記モノマー中の1,5-ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジアミンと称する)は、化学的に誘導された、又は、生体物質由来のペンタメチレンジアミンであり、生体物質由来のペンタメチレンジアミンが好ましい。生体物質とは、光合成によって形成される様々な有機物である。生体物質由来の化合物とは、これらの有機物を用いて生物学的手法(例えば生物学的発酵)により調製された化合物を意味する。化学的に誘導された化合物とは、化学的手法により調製された化合物を意味する。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態において、前記芳香族二酸に対する前記デカメチレンジアミンのモル比率は、1:(0.7~1.5)であり、好ましくは1:(0.8~1.2)であり;例えば、1:0.98、1:0.95である。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ペンタメチレンジアミンに対する前記デカメチレンジアミンのモル比率は、(2~30):1であり、好ましくは(2~20):1であり;例えば、19:1、18:1、10:1、6.5:1、4:1である。
【0010】
本開示のいくつかの実施形態において、前記二酸モノマーに対する前記ジアミンモノマーのモル比は、(1~1.3):1であり、好ましくは(1~1.1):1であり;より好ましくは(1~1.06):1であり、さらに好ましくは(1.01~1.04):1である。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態において、前記ジアミンモノマー及び前記二酸モノマーの合計量は、前記コポリアミドのモノマー原料の合計量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上を占め、この百分率はモル%を意味する。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態において、前記デカメチレンジアミン及び前記ペンタメチレンジアミンの合計量は、前記ジアミンモノマーの合計量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占め、この百分率はモル%である。
【0013】
本開示のいくつかの実施形態において、前記芳香族二酸及び/又は前記芳香族二酸の誘導体、ならびに前記脂肪族二酸の合計量は、前記二酸モノマーの合計量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占め、この百分率はモル%を意味する。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態において、前記芳香族二酸は、8個以上の炭素原子を有するベンゼン環を含む二酸のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組合せであり、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組合せを含む。前記芳香族二酸の誘導体としては、塩化ベンゾイル、テレフタル酸ジメチル、およびテレフタル酸ジエチルのいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
【0015】
前記脂肪族二酸は、2~18個の炭素原子を有する脂肪族二酸及びそれらの組み合わせのいずれか1つであり、好ましくは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドは、PA10T/5T/5X/10Xである。前記Xは、脂肪族二酸に由来する構造単位、特に、前記脂肪族二酸に含まれる炭素原子の数を表す。前記脂肪族二酸は上記と同様の限定を有する。Tはテレフタル酸を表す。例えば、コポリアミドPA10T/5T/56/106は、デカメチレンジアミン、テレフタル酸、ペンタメチレンジアミン及びアジピン酸によって調製されるコポリアミドを表す。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの原料はまた、前記モノマーの総質量の0.01%~3%を占める添加剤を含む。前記添加剤としては、末端封止剤、触媒、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶化核剤、蛍光増白剤及び帯電防止剤のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの原料はまた、モノマーの総質量の0.1%~0.5%、好ましくは0.1%~0.3%を占める酸化防止剤を含む。前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、無機リン酸系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤及び炭素フリーラジカル捕捉系酸化防止剤のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの原料はまた、モノマーの総質量に対して0~0.07%、好ましくは0.005~0.05%を占める触媒を含む。前記触媒は、リン酸塩及び次亜リン酸塩を含み、好ましくは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のリン酸塩、ならびにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を含み、より好ましくは、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム及び次亜リン酸マグネシウムのいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む。好ましくは、前記リン酸塩及び前記次亜リン酸塩の総質量は、触媒の総質量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占める。
【0020】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの原料はまた、前記モノマーの総質量の0~1%、好ましくは0.1~0.5%、より好ましくは0.15%~0.4%を占める末端封止剤を含む。前記末端封止剤は、C2~C16脂肪族カルボン酸及びC7~C10芳香族カルボン酸のいずれか1つ、及びそれらの組み合わせを含む。前記脂肪族カルボン酸の末端封止剤の構造は、直鎖モノ酸、枝鎖を有するモノ酸又は環状構造を有するモノ酸であり、好ましくは飽和直鎖モノ酸、枝鎖を有する飽和モノ酸又は環状構造を有する飽和モノ酸である。直鎖構造を有する脂肪族カルボン酸に比べて、環状構造を有する飽和脂肪族カルボン酸の方がポリマーYI値の低減効果が高い。その主な理由は、環状構造を有する脂肪族カルボン酸の方が、立体障害効果が大きいために、原子団のコプラナリティが破壊され、π電子の重なり度合いが小さくなり、吸収スペクトルが短波側に移動するためである。
【0021】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記末端封止剤は、C2~C10脂肪族カルボン酸又はC7~C10芳香族カルボン酸及びそれらの組み合わせのいずれか1つを含む。前記末端封止剤の炭素原子の数は、例えば、3、4、5、6、7、8、9である。
【0022】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記末端封止剤は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、トリメチル酢酸、イソ酪酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、トルイル酸、α-ナフトエ酸、β-ナフトエ酸、メチルナフトエ酸及びフェニル酢酸のいずれか1つ、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0023】
本開示のいくつかの好ましい実施形態において、前記C2~C10脂肪族カルボン酸、前記C7~C10芳香族カルボン酸の総質量は、前記末端封止剤の総質量の85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占める。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの融点は、270℃以上であり、好ましくは270℃~310℃、例えば、280℃、290℃、300℃、305℃である。
【0025】
前記コポリアミドの相対粘度は1.6~3.2、好ましくは2.2~3.0、より好ましくは2.2~2.6、例えば2.3、2.4、2.5である。
【0026】
前記コポリアミドの吸水率は0.1~1%、好ましくは0.2~0.8%、例えば0.4%、0.6%又は0.7%である。
【0027】
前記コポリアミドの引張強度は、50~140MPa、好ましくは60~120MPa、より好ましくは70~110MPaであり、例えば、80MPa、90MPa、95MPa、100MPa又は105MPaである。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの曲げ強度は、70~130MPa、好ましくは85~130MPa、より好ましくは90~130MPaであり、例えば、100MPa、105MPa、110MPa、115MPa、120MPa又は125MPaである。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの熱変形温度は、95~130℃、好ましくは100~125℃であり、例えば105℃、110℃、115℃又は120℃である。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態において、前記コポリアミドの黄色度指数(YI値)は、15以下、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは7以下であり、例えば、2~7、6又は5である。
【0031】
多くの研究の後、本発明者は、アミドゲンが一種の助色素であり、発色団を含むポリマーの色を濃くすることができることを見出した。触媒を使用すると、ポリマーのアミノ末端基の濃度を低下させることができ、ポリマーの分子量を増加させ、より優れた機械的特性と低いYI値とを有するポリマーを得ることができる。
【0032】
さらに、炭素鎖構造の長い半芳香族ポリアミドは、重合時に、ポリマー粘度が高い、溶融流動性が悪いなどの問題が発生しやすい。現在、過度のポリマー溶融粘度を下げる方法として、温度の上昇および剪断速度の加速が一般的に用いられている。しかしながら、温度の上昇はポリマーの黄変現象を促進する。前記末端封止剤を添加すると、ポリマー溶融物の粘度を調整し、高温でのアミノ末端基の架橋を低減し、ポリマー溶融物の流動性を高め、ポリマーのYI値を低下させることができる。
【0033】
別の態様において、本開示は、以下の工程を含む、高温耐性半芳香族コポリアミドを調製する方法を提供する:
1)デカメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、芳香族二酸及び/又は芳香族二酸の誘導体、ならびに、脂肪族二酸を水に加え、70~90℃に加熱し、任意に70~90℃で0.5~3時間保持し、ポリアミド塩を含む混合物を得る;
2)前記ポリアミド塩を含む混合物を120~140℃に加熱し、脱気して加熱生成物を濃縮した後、240~255℃に加熱して反応させる;及び
3)脱気によって反応系の圧力を下げる。
【0034】
当業者であれば、ジアミンと二酸との反応によって形成される塩が、ポリアミド塩(ナイロン塩としても知られている)として知られており、ポリアミド塩の重縮合によってポリアミド又はコポリイミドが合成されることを理解している。
【0035】
別段の記載がない限り、又は明白な矛盾がない限り、本開示で言及される圧力はゲージ圧を意味する。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態において、工程1)における加熱工程は、不活性ガス雰囲気下で実施され;前記不活性ガスは、窒素、アルゴン、又はヘリウムのうちの1つ以上を含む。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態において、工程1)における保持時間は0.5~2時間である。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態において、工程2)において、前記混合物を濃縮して、40重量%~80重量%のポリアミド塩溶液、好ましくは55重量%~65重量%のポリアミド塩溶液を生成する。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態において、工程2)における反応時間は0.5~2時間、好ましくは1~1.5時間である。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態において、工程2)における反応系の圧力は、2.5~3MPaに維持される。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態において、工程3)において、前記反応系の圧力は、脱気により0~0.2MPa(ゲージ圧)まで低下される。
【0042】
本開示のいくつかの実施形態において、工程3)において、減圧後の前記反応系の温度は315~335℃である。
【0043】
本開示のいくつかの実施形態において、前記方法は、工程4):真空化処理:前記反応系を-0.02MPa以下、好ましくは-0.05MPa~-0.1MPaに真空化する工程を含む。溶融排出前の真空化処理工程は、圧力開放段階で圧力が0に低下したときに、前記反応系内に水のような少数の小分子が残存し、これらの小分子が高温環境下でポリマーを劣化させ、材料の性能に影響を与えることを回避させることができる。
【0044】
任意に、0~300秒間、好ましくは0~90秒間、より好ましくは5~90秒間、前記反応系の真空度を保持する。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態において、真空度保持時間が上記範囲内である場合、製品の品質を維持し、コポリアミド溶融物を確実にストランドペレット化することに有益であり、しかして、後続の処理が円滑となる。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態において、前記方法はまた、工程5):排出、ストリップ状への延伸、及びペレット化を含む。
【0047】
本開示のいくつかの実施形態において、前記方法はまた、前記工程1)、2)、3)及び4)のいずれかの段階で添加剤を添加することを含む。前記添加剤は、上記と同様の限定を有する。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態において、前記高温耐性半芳香族コポリアミドを調製する方法は、以下を含む:
1)デカメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、芳香族二酸及び/又は芳香族二酸の誘導体、ならびに、脂肪族二酸を水に加え、70~90℃に加熱し、そして、70~90℃で0.5~3時間保持することで、ポリアミド塩を含む混合物を得る;
2)前記ポリアミド塩を含む混合物を120~140℃に加熱し、加熱生成物を脱気することでポリアミド塩の濃度を40重量%~80重量%に濃縮した後、240~255℃に加熱し、2.5~3MPaで0.5~2時間反応させる。
【0049】
3)脱気により反応系の圧力を0~0.2MPa(ゲージ圧)に減圧し、その後、前記反応系の温度を315~335℃にする;
4)前記反応系を-0.05MPa~-0.1MPaに真空化し、真空度を0~300秒間保持する;
5)排出、ストリップ状への延伸、及びペレット化。
【0050】
この方法におけるパラメーターは、上記のさらなる限定を有する。
【0051】
別の態様において、本開示は組成物を提供し、当該組成物は、上記の高温耐性半芳香族コポリアミドのいずれか1つを含む。
【0052】
別の態様において、本開示は、上記の高温耐性半芳香族コポリアミドを原料として用いて調製された製品を提供する。
【0053】
本開示の製品を得るために、本開示のコポリアミドは、射出、押出、ブロー、真空包装(vacuuming)、溶融紡糸及びフィルム成形などの任意の成形方法によって成形することができる。前記製品は所望の形状に成形することができ、自動車部品及び機械部品用の樹脂成形品として使用することができる。
【0054】
既存の技術と比較して、本開示は少なくとも以下の利点を有する:
1.本開示のコポリアミドは、既存のポリアミドと同様の総合的な性能を有し、かつ、独立した知的財産権によって作製されたモノマーであるペンタメチレンジアミンを使用することができ、外国企業によって独占されたモノマーであるヘキサンジアミンの使用を回避することができる。
【0055】
2.本開示のコポリアミドは、優れた機械的特性を有し、その引張特性、耐曲げ性及び耐衝撃性は、ポリアミドPA6、ポリアミドPA66及び市場で使用される他のポリアミド製品に匹敵し得る。
【0056】
3.本開示のコポリアミドは、より低い吸水率及びより良好な寸法安定性、より高い熱変形温度及びより低い黄色度指数を有し、より厳しい環境で使用することができる。そのため、当該ポリアミドの使用範囲をある程度拡大することができる。
【0057】
4.本開示のコポリアミドの調製方法は、単純であり、プロセスのパラメーターの制御が容易である、大型の器具が不要である、大量生産に好適である、などの利点を有する。
【0058】
〔詳細な説明〕
本開示の目的、技術的提案及び利点をより明確にするために、以下の段落では開示実施例における技術的提案を明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、本開示の実施例の全てではなく、実施例の一部に過ぎない。本開示の実施例に基づき、創造的な作業なしに当業者が得られる他のすべての実施例は、本開示の保護範囲に属する。
【0059】
1.相対粘度ηrの検出方法
相対粘度は、ウベローデ粘度計を用いた、以下の工程を含む濃硫酸法により測定される:0.5±0.0002gの乾燥ポリアミド試料を正確に秤量し、50mLの濃硫酸(98%)を加えることによって溶解する。25℃の恒温水槽中で濃硫酸の流下時間t0と、ポリアミド溶液の流下時間tとを測定し、記録する。
【0060】
相対粘度の計算式は以下の通りである:
相対粘度ηr=t/t0
ここで、tは前記のポリアミド溶液の流下時間であり、t0は前記の濃硫酸溶媒の流下時間である。
【0061】
2.機械的特性の試験方法
曲げ強度試験は、ISO-178(試験条件:2mm/分)による。
【0062】
引張強度試験は、ISO-572-2(試験条件:50mm/分)による。
【0063】
3.吸水試験:ISO-62:2008;
4.熱変形温度試験:ASTM D648;
5.黄色度指数試験
黄色度指数は、国際照明委員会(CIE)のC光源を使用し、酸化マグネシウムを基準とした黄色の色値である。黄色度指数(YI)は以下のように計算される:
YI=(100(1.28X-1.06Z))/Y、ここでX、Y、Zはそれぞれ測定された三刺激値である。黄色度指数測定器は、温度25±5℃、相対湿度50±20%で検出を行うよう、使用される。
【0064】
(実施例1)
1,10-デカメチレンジアミン9.45mol、テレフタル酸9.36mol、1,5-ペンタメチレンジアミン0.54mol、アジピン酸0.53mol、酸化防止剤H10(ドイツBRUGGOLEN社より購入)9.9g、酢酸(末端封止剤)7.83g、次亜リン酸ナトリウム(触媒)0.66gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩(すなわち、ナイロン塩)を含む混合物を得た。
【0065】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気して前記ナイロン塩の質量濃度を65重量%まで濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を335℃とした。その後、前記反応系を-0.07MPaまで真空化することで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/56/106を得た。
【0066】
(実施例2)
1,10-デカメチレンジアミン9.09mol、テレフタル酸9mol、1,5-ペンタメチレンジアミン1.01mol、アジピン酸1mol、酸化防止剤H10 9.9g、安息香酸(末端封止剤)7.83g、次亜リン酸ナトリウム(触媒)0.66gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。
【0067】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気してナイロン塩の質量濃度を65重量%まで濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を325℃とした。その後、前記反応系を-0.07MPaまで真空化し、かつ、30秒間保持することで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/56/106を得た。
【0068】
(実施例3)
1,10-デカメチレンジアミン8.585mol、テレフタル酸8.5mol、1,5-ペンタメチレンジアミン1.5mol、アジピン酸1.5mol、酸化防止剤H10 9.8g、次亜リン酸ナトリウム(触媒)0.65g、酢酸(末端封止剤)7.83gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。
【0069】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気してナイロン塩の質量濃度を65重量%まで濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を325℃とした。その後、前記反応系を-0.07MPaまで真空化し、かつ、30秒間保持することで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/56/106を得た。
【0070】
(実施例4)
1,10-デカメチレンジアミン8.08mol、テレフタル酸8mol、1,5-ペンタメチレンジアミン2.02mol、アジピン酸2mol、酸化防止剤H10 9.8g、次亜リン酸カルシウム(触媒)0.66g、シクロヘキサンカルボン酸(末端封止剤)7.8gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。
【0071】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気によりナイロン塩の質量濃度を65質量%に濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに保持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を325℃とした。その後、前記反応系を-0.07MPaまで真空化し、かつ、70秒間保持することで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/56/106を得た。
【0072】
(実施例5)
基本的には実施例3と同じであり、実施例5と実施例3との唯一の違いは、この実施例5のコポリアミドPA10T/5T/56/106の原料が、触媒を含んでいないことである。
【0073】
(実施例6)
基本的には実施例3と同じであり、実施例6と実施例3との唯一の違いは、この実施例6のコポリアミドPA10T/5T/56/106の原料が、末端封止剤を含んでいないことである。
【0074】
(実施例7)
1,10-デカメチレンジアミン8.08mol、テレフタル酸8mol、1,5-ペンタメチレンジアミン2.02mol、ドデカン二酸2mol、酸化防止剤H10 10.0g、次亜リン酸ナトリウム(触媒)0.70g、シクロヘキサンカルボン酸(末端封止剤)8.3gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。
【0075】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気してナイロン塩の質量濃度を65重量%まで濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を325℃とした。その後、前記反応系を-0.07MPaまで真空化し、かつ、60秒間保持することで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/512/1012を得た。
【0076】
(実施例8)
1,10-デカメチレンジアミン8.585mol、テレフタル酸8.5mol、1,5-ペンタメチレンジアミン1.5mol、ヘキサデカン二酸1.5mol、酸化防止剤H10 10.2g、次亜リン酸カルシウム(触媒)0.72g、酢酸(末端封止剤)8.2gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。
【0077】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気してナイロン塩の質量濃度を65質量%まで濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を325℃とした。その後、前記反応系を-0.07MPaまで真空化し、かつ、30秒間保持することで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/516/1016を得た。
【0078】
(実施例9)
1,10-デカメチレンジアミン8.585mol、テレフタル酸8.5mol、1,5-ペンタメチレンジアミン1.5mol、アジピン酸1.5mol、酸化防止剤H10 9.8g、次亜リン酸ナトリウム(触媒)0.65g、酢酸(末端封止剤)7.83gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、その温度で1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。
【0079】
前記の反応系を130℃に加熱し、脱気してナイロン塩の質量濃度を65重量%まで濃縮した。次いで、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)まで減圧し、減圧後の前記反応系の温度を325℃とすることで、コポリアミド溶融物を得た。排出後、前記コポリアミド溶融物をストリップ状に延伸、及び、ペレット化することで、高温耐性半芳香族コポリアミドである、PA10T/5T/56/106を得た。
【0080】
(比較例1)
(1)予備重合:1,10-デカメチレンジアミン8.585mol、テレフタル酸8.5mol、1,5-ペンテンジアミン1.5mol、アジピン酸1.5mol、酸化防止剤9.8g、次亜リン酸ナトリウム(触媒)0.65g、酢酸(末端封止剤)7.83gを水と均一に混合し、得られた系を窒素雰囲気下で90℃に加熱し、1時間保持することで、質量濃度50重量%のポリアミド塩を含む混合物を得た。前記の反応系を130℃に加熱し、脱気してナイロン塩の質量濃度65重量%まで濃縮し、前記反応系をさらに250℃に加熱し、前記反応系の圧力を2.5MPaに維持して1時間反応させた。次いで、脱気により前記反応系の圧力を0MPa(ゲージ圧)に減圧し、同時に、前記反応系の温度を273℃に保持した。さらに、前記反応系の圧力を-0.07MPaまで真空化し、かつ、30秒間保持した。前記反応系を室温まで冷却した後、固体のプレポリマーを得た。
【0081】
(2)固相重縮合:前記のプレポリマーを粉砕することで、約0.1mmの大きさの固体粒子にし、真空度20~50Paの真空ドラムに入れて250℃で8時間増粘させ、その後、室温まで冷却することで、コポリアミドであるPA10T/5T/56/106を得た。
【0082】
実施例1~9及び比較例1で調製したコポリアミドについて、相対粘度、引張強度、曲げ強度、吸水率、熱変形温度、融点及び黄色度指数(YI値)といった試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から理解できるように、すべての実施例は、操作が簡便な一工程法を採用してコポリアミドPA10T/5T/5X/10Xを調製した。比較例1は、予備重合でコポリアミドを調製した後、固相重縮合する二工程法を採用しており、設備利用効率が低く、操作が複雑であるなどの欠点があった。実施例3と比較例1を比較すると、固相重縮合によるプレポリマーの粘度上昇効果は非常に限定的であり、試料のYI値は一工程法で調製した試料よりもはるかに高いことが分かる。これは固相重縮合装置内での試料の加熱ムラが原因であると考えられる。試料が黄変していることは、当該試料が経時劣化していることを示している。この経時劣化の結果として、当該試料の機械的特性の低下が誘導された。
【0085】
最後に、上述の実施例は、本開示の技術的解決策を説明することのみを意図したものであり、それらを限定するものではないことに留意されたい。本開示は、前述の実施例を参照して詳細に説明されてきたが、当業者は、前述の実施例に記載された技術的解決策に対して依然として修正を加えることができ、又はその技術的特徴の一部又は全部に対して同等の置換を行うことができ、さらに、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決策の本質を本開示の実施例における技術的解決策の範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
【国際調査報告】