(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】呼吸器症状の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 33/20 20060101AFI20240705BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240705BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240705BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240705BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240705BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240705BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240705BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K33/20
A61K9/12
A61K9/08
A61P37/06
A61P11/00
A61P31/12
A61P19/02
A61P21/04
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501872
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022069154
(87)【国際公開番号】W WO2023285318
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512263278
【氏名又は名称】ハイポ-ストリーム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイキン マイルズ
(72)【発明者】
【氏名】アスピノール リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ケニー トーマス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076BB27
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC15
4C076CC35
4C076DD22Z
4C076DD26Z
4C076DD43Z
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、患者;好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液に関する。本発明はまた、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける炎症または自己免疫応答、症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液に関し、該次亜塩素酸塩溶液の投与は、該次亜塩素酸塩溶液の吸入による。次亜塩素酸塩溶液は、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)の濃度範囲の次亜塩素酸塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液であって、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)の濃度範囲の次亜塩素酸塩を含む、次亜塩素酸塩溶液。
【請求項2】
前記呼吸器症状または疾患が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS);喘息;気管支炎;慢性閉塞性肺疾患(COPD);風邪;コロナウイルス性疾患、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、COVID-19;嚢胞性線維症;インフルエンザ;中東呼吸器症候群(MERS);肺炎、例えばウイルス性肺炎、細菌性肺炎および人工呼吸器関連肺炎;肺線維症;ライノウイルス性疾患;サルコイドーシス(例えば、肺に影響を及ぼす);結核;または肺組織の炎症である、請求項1に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項3】
前記呼吸器症状または疾患が、急性の呼吸器症状または疾患である、請求項1または請求項2に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液であって、投与が前記次亜塩素酸塩溶液の吸入による、次亜塩素酸塩溶液。
【請求項5】
患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける炎症または自己免疫応答、症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液であって、前記次亜塩素酸塩溶液が、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)の濃度範囲の次亜塩素酸塩を含み、かつ前記次亜塩素酸塩溶液の投与が、前記次亜塩素酸塩溶液の吸入による、次亜塩素酸塩溶液。
【請求項6】
前記炎症または自己免疫応答、症状または疾患が、関節炎、例えば変形性関節症;膵炎;シェーグレン症候群;または重症筋無力症である、請求項5に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項7】
前記炎症または自己免疫応答、症状または疾患が、急性の炎症または自己免疫応答、症状または疾患である、請求項5または請求項6に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液であって、吸入による前記次亜塩素酸塩溶液の前記投与が、ネブライザーまたは吸入器を介したものである、次亜塩素酸塩溶液。
【請求項9】
前記次亜塩素酸塩が次亜塩素酸ナトリウムである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項10】
前記次亜塩素酸塩が、約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、より好ましくは約0.015~0.075重量%(約150~750ppm)、さらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)、最も好ましくは約0.04~0.06重量%(約400~600重量ppm)の濃度範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項11】
塩化ナトリウムをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項12】
前記塩化ナトリウムが、約0.5~3.0重量%の濃度範囲、より好ましくは0.5~1.5重量%、さらにより好ましくは約0.6~1.3重量%の濃度範囲、なおさらにより好ましくは約0.7~1.2%の濃度範囲、最も好ましくは約0.8~1.0重量%の濃度範囲である、請求項11に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項13】
次亜塩素酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびバランスのための水を含む(例えば、それらのみからなる)次亜塩素酸ナトリウム水溶液である、請求項9から12のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項14】
約5~11、好ましくは約6~10、より好ましくは約7~9、さらにより好ましくは約7~8のpHを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項15】
緩衝化されていない、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項16】
約5~11、好ましくは約6~10、より好ましくは約7~9、さらにより好ましくは約7~8のpHに緩衝化されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項17】
前記緩衝液が、リン酸塩/リン酸緩衝液、ホウ酸塩/ホウ酸緩衝液およびクエン酸塩/クエン酸緩衝液からなる群より選択される、請求項16に記載の使用のための次亜塩素酸塩溶液。
【請求項18】
治療有効量の、請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液を、それを必要とする患者に投与することを含む、呼吸器症状または疾患を予防または処置する方法。
【請求項19】
治療有効量の、請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液を、それを必要とする患者に投与することを含む、炎症または自己免疫応答、症状または疾患を予防または処置する方法。
【請求項20】
患者における呼吸器症状または疾患を予防または処置するための医薬の調製における、請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液の使用。
【請求項21】
患者における炎症または自己免疫応答、症状または疾患を予防または処置するための医薬の調製における請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液の使用であって、前記次亜塩素酸塩溶液の投与が、前記次亜塩素酸塩溶液の吸入による、次亜塩素酸塩溶液の使用。
【請求項22】
請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液、およびネブライザーまたは吸入器を含むキット。
【請求項23】
吸入デバイスと共に使用するための医薬容器であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液、および場合により噴射剤を含む、医薬容器。
【請求項24】
患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用するための医薬組成物であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の次亜塩素酸塩溶液を含み、かつ吸入によって投与可能である、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸塩溶液の使用による患者(例えば、哺乳動物、特にヒト)における呼吸器症状の予防および処置への新しいアプローチに関する。本発明はまた、次亜塩素酸塩溶液の吸入による患者(例えば、哺乳動物、特にヒト)における炎症の予防および処置への新しいアプローチに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器症状は、世界中でヒトの健康にとって重大な課題を提起している。最近のWHOの報告(The Global Impact of Respiratory Disease-2017)は、以下を強調している:
・推定6500万人が中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有し、そのうち約300万人が毎年死亡している。これにより、それは世界中で3番目に多い死因となっている。さらに、COPDの患者数は増加している。
・約3億3400万人が喘息を患っており、喘息は小児期の最も一般的な慢性疾患であり、世界中の小児の14%が罹患している。喘息の小児の数も増加している。
・急性下気道感染症は、小児および成人の死因および身体障害の上位3つに含まれる。例えば、インフルエンザによって引き起こされる気道感染症により、毎年250,000~500,000人が死亡している。
・結核(TB)は、歴史的に課題であった別の呼吸器疾患である。2015年では、1040万人がTBを発症した。これらのうち、140万人がTBにより死亡している。
【0003】
特に、前例のないCOVID-19のパンデミックは、世界中の医療施設に多大な圧力を加えている。
【0004】
したがって、呼吸器症状の新しい処置を開発する緊急の必要性がある。
【0005】
ヘルスケアにおける水性塩素の使用は、表面および汚染創傷部の消毒の文脈で以前に記載されている「例えば、Bashford et al、Lancet 1917、2:595-597、Bunyan、Brit Med J.1941、4002-7;およびCentury Pharmaceuticals Inc.、Dakin’s solutions product information and material safety data sheet、2011、http://www.dakins.net/index.html)を参照」。
【0006】
しかしながら、そのような使用のいずれも、ヘルスケアにおける水性塩素の使用に関連する毒性が問題であるという一般的な知識によって制限されてきた。このことは、皮膚組織と比較してより敏感であり得る呼吸器組織に特に当てはまる。
【0007】
本発明は、次亜塩素酸塩溶液の使用による患者(例えば、哺乳動物、特にヒト)における呼吸器症状の予防および処置への新しいアプローチを提供することによって、この必要性に対処する。本発明はまた、次亜塩素酸塩溶液の吸入による患者(例えば、哺乳動物、特にヒト)における炎症の予防および処置への新しいアプローチを提供する。驚くべきことに、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液は、吸入によって安全に投与することができ、本明細書に記載の症状を処置するために使用することができることが見出された。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によれば、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液が提供される。特に、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液が提供され、該次亜塩素酸塩溶液は、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)の濃度範囲の次亜塩素酸塩を含む。
【0009】
一実施形態では、呼吸器症状または疾患は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息;気管支炎;慢性閉塞性肺疾患(COPD);風邪;コロナウイルス性疾患、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、COVID-19;嚢胞性線維症;インフルエンザ;中東呼吸器症候群(MERS);肺炎、例えばウイルス性肺炎、細菌性肺炎および人工呼吸器関連肺炎;肺線維症;ライノウイルス性疾患;サルコイドーシス(例えば、肺に影響を及ぼす);結核;または肺組織の炎症であり得る。
【0010】
一実施形態では、呼吸器症状または疾患は、急性の呼吸器症状または疾患であり得る。
【0011】
一実施形態では、投与は次亜塩素酸塩溶液の吸入により得る。
【0012】
本発明の別の態様によれば、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける炎症または自己免疫応答、症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液が提供され、該次亜塩素酸塩溶液の投与は、該次亜塩素酸塩溶液の吸入による。特に、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける炎症または自己免疫応答、症状または疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液が提供され、該次亜塩素酸塩溶液は、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)の濃度範囲の次亜塩素酸塩を含む。
【0013】
一実施形態では、炎症または自己免疫応答、症状または疾患は、関節炎、例えば変形性関節症;膵炎;シェーグレン症候群;または重症筋無力症であり得る。
【0014】
一実施形態では、炎症または自己免疫応答、症状または疾患は、急性の炎症または自己免疫応答、症状または疾患であり得る。
【0015】
一実施形態では、吸入による次亜塩素酸塩溶液の投与は、ネブライザーまたは吸入器を介してもよい。
【0016】
一実施形態では、次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸ナトリウムであり得る。
【0017】
一実施形態では、次亜塩素酸塩は、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)、より好ましくは約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、さらにより好ましくは約0.015~0.075重量%(約150~750ppm)、なおさらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)、最も好ましくは約0.04~0.06重量%(約400~600重量ppm)の濃度範囲であり得る。
【0018】
一実施形態では、次亜塩素酸塩溶液は、塩化ナトリウムをさらに含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、塩化ナトリウムは、約0.5~3.0重量%の濃度範囲、より好ましくは0.5~1.5重量%、さらにより好ましくは約0.6~1.3重量%の濃度範囲、なおさらにより好ましくは約0.7~1.2%の濃度範囲、最も好ましくは約0.8~1.0重量%の濃度範囲であり得る。
【0020】
一実施形態では、次亜塩素酸塩溶液は、約5~11、好ましくは約6~10、より好ましくは約7~9、さらにより好ましくは約7~8のpHを有し得る。
【0021】
一実施形態では、次亜塩素酸塩溶液は緩衝化されてなくてもよい。
【0022】
一実施形態では、次亜塩素酸塩溶液は、約5~11、好ましくは約6~10、より好ましくは約7~9、さらにより好ましくは約7~8のpHに緩衝化されてもよい。
【0023】
一実施形態では、緩衝液は、リン酸塩/リン酸緩衝液、ホウ酸塩/ホウ酸緩衝液およびクエン酸塩/クエン酸緩衝液からなる群より選択され得る。
【0024】
次亜塩素酸塩溶液は、次亜塩素酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびバランスのための水を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液であり得る。好ましくは、次亜塩素酸塩溶液は、0.005~0.2重量%の次亜塩素酸ナトリウム(約50~2000重量ppm);0.5~3.0重量%の塩化ナトリウム;およびバランスのための水を含む。次亜塩素酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムの濃度は、上記の濃度に従い得る。
【0025】
次亜塩素酸塩溶液は、0.005~0.2重量%の次亜塩素酸ナトリウム(約50~2000重量ppm);0.5~3.0重量%の塩化ナトリウム;およびバランスのための水からなる次亜塩素酸ナトリウム水溶液であり得る。次亜塩素酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムの濃度は、上記の濃度に従い得る。
【0026】
本発明の別の態様によれば、本明細書で定義される次亜塩素酸塩溶液の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、呼吸器症状または疾患を予防または処置する方法が提供される。
【0027】
本発明の別の態様によれば、本明細書で定義される次亜塩素酸塩溶液の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、炎症または自己免疫応答、症状または疾患を予防または処置する方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によれば、患者における呼吸器症状または疾患を予防または処置するための医薬の調製における、本明細書で定義される次亜塩素酸塩溶液の使用が提供される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、患者における炎症または自己免疫応答、症状または疾患を予防または処置するための医薬の調製における本明細書で定義される次亜塩素酸塩溶液の使用が提供され、該次亜塩素酸塩溶液の投与は、該次亜塩素酸塩溶液の吸入による。
【0030】
本発明の別の態様によれば、本明細書で定義される次亜塩素酸塩溶液、およびネブライザーまたは吸入器を含むキットが提供される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用するための医薬組成物が提供され、該医薬組成物は、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液を含み、かつ吸入によって投与可能である。医薬組成物は、噴射剤を含み得る。医薬組成物は、吸入に適した医薬用エアロゾル組成物であり得る。
【0032】
本発明の別の態様によれば、吸入デバイスと共に使用するための医薬容器が提供され、該医薬容器は、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液、および場合により噴射剤を含む。吸入デバイスは吸入器であり得る。吸入デバイスはネブライザーであり得る。医薬容器は、加圧された医薬容器、例えば吸入器との使用に適した加圧された医薬容器であり得る。
【0033】
本発明は、呼吸器、炎症および/または自己免疫症状のための新しい有効な処置選択肢を提供する。
【0034】
本発明は、以下の非限定的な図でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】サイトカインの機能性を求めるために、対照生理食塩水溶液(0.85重量%)に対して透析した実施例1のIL-6細胞を示す。
【
図2】サイトカインの機能性を求めるために、組成物1の溶液に対して透析した実施例1のIL-6細胞を示す。
【
図3】サイトカインの機能性を求めるために、組成物2の溶液に対して透析した実施例1のIL-6細胞を示す。
【
図4】サイトカインの機能性を求めるために、対照生理食塩水溶液(0.85重量%)に対して透析した実施例2のIL-10細胞を示す。
【
図5】サイトカインの機能性を求めるために、組成物1の溶液に対して透析した実施例2のIL-10細胞を示す。
【
図6】サイトカインの機能性を求めるために、組成物2の溶液に対して透析した実施例2のIL-10細胞を示す。
【
図7】IL-10の曝露後のMC9細胞の、A(組成物1)およびB(組成物2)に対する生存を示す。
【
図8】IL-6の曝露後のB9細胞の、A(組成物1)およびB(組成物2)に対する生存を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
以下の実施形態は、本発明のすべての態様に適用される。
【0037】
ここで、本発明をさらに説明する。以下の節では、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義される各態様は、そうでないことが明確に示されていない限り、任意の他の態様(複数可)または実施形態(複数可)と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示された任意の他の特徴(複数可)と組み合わせることができる。
【0038】
本出願では、いくつかの一般的な用語および語句が使用され、これは以下のように解釈されるべきである。
【0039】
「処置する」という用語は、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、そのような用語が適用される疾患もしくは症状、またはそのような障害もしくは症状の1つまたは複数の症候の進行を反転、減弱、緩和または阻害することを意味する。本明細書で使用される処置するという用語はまた、予防的処置、すなわち症状の発生を予防するか、または症状の発生の可能性を最小限に抑えるように設計された処置を含み得る。
【0040】
「患者」には、ヒト、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シカなど)および非哺乳動物(例えば、トリなど)が含まれる。
【0041】
「急性」という用語は、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、数日間(例えば、約1、2、3、4、5、6または7日間)から数週間(例えば、約1、2、3または4週間)続く症状または疾患を意味する。急性の症状または疾患は、典型的には、急性期炎症応答、または優勢な急性炎症細胞(例えば好中球)および急性炎症性滲出液を伴う。
【0042】
「慢性」という用語は、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、数か月間(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月間)から数年間(例えば、約2、3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100年間)続く症状または疾患を意味する。慢性の症状または疾患は、典型的には、マクロファージ、単球、リンパ球の存在、ならびに血管および結合組織の増殖を伴う慢性炎症応答を伴う。
【0043】
急性の症状または疾患は、典型的には、突然発生し、慢性の症状または疾患と比較して、より短い期間続く。例えば、急性の症状または疾患は、急性期応答、自然免疫系によって媒介される急性応答、または全身性急性炎症応答であり得る。本発明の次亜塩素酸塩溶液は、次亜塩素酸塩溶液の所望の治療効果がすぐに(例えば、数分から数時間の程度で)発揮されることが見出されているので、そのような急性の症状または疾患を処置するのに特に適している。処置をすぐに中止することもできる。
【0044】
本発明の次亜塩素酸塩溶液は、呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用することができる。好ましくは、呼吸器症状または疾患は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS);喘息;気管支炎;慢性閉塞性肺疾患(COPD);風邪;コロナウイルス性疾患、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、COVID-19;嚢胞性線維症;インフルエンザ;中東呼吸器症候群(MERS);肺炎、例えばウイルス性肺炎、細菌性肺炎および人工呼吸器関連肺炎;肺線維症;ライノウイルス性疾患;サルコイドーシス(例えば、肺に影響を及ぼす);結核;または肺組織の炎症である。
【0045】
COVID-19には、本明細書で「ロングCOVID-19」と称される、COVID-19の長期的な影響および症候が含まれる。「ロングCOVID-19」患者は、COVID-19から完全には回復していない患者である。「ロングCOVID-19」患者は、COVID-19に罹患後、数週間、数か月、または数年(例えば、少なくとも1か月)さえも、疾患の長期的な影響または症候を経験し続ける。「ロングCOVID-19」患者は、COVID-19のウイルス負荷が明らかに存在しないにもかかわらず、これらの長期的な影響および症候を経験する。
【0046】
本発明の次亜塩素酸塩溶液は、慢性閉塞性肺疾患(COPD);肺炎、例えばウイルス性肺炎、細菌性肺炎および人工呼吸器関連肺炎;およびCOVID-19から選択される呼吸器症状または疾患の予防または処置に使用することができる。
【0047】
好ましくは、呼吸器症状または疾患は、急性の呼吸器症状または疾患である。
【0048】
好ましくは、投与は次亜塩素酸塩溶液の吸入による。例えば、吸入は、鼻および/または口を介してもよい。
【0049】
本発明の次亜塩素酸塩溶液は、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける炎症または自己免疫応答、症状または疾患の予防または処置に使用することができ、該次亜塩素酸塩溶液の投与は、該次亜塩素酸塩溶液の吸入による。例えば、吸入は、鼻および/または口を介してもよい。好ましくは、炎症または自己免疫応答、症状または疾患は、関節炎、例えば変形性関節症;膵炎;シェーグレン症候群;または重症筋無力症である。
【0050】
好ましくは、炎症または自己免疫応答、症状または疾患は、急性の炎症または自己免疫応答、症状または疾患である。
【0051】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の次亜塩素酸塩溶液は、気道上皮などの上皮組織における炎症の既知のイニシエーター、メディエーターおよびレギュレーターに対して作用すると考えられる。本発明の溶液は、血小板からの炎症作用物質(例えば、サイトカインおよびケモカイン)の放出を阻害すると考えられるが、血小板の凝集を妨げない。溶液はまた、サイトカイン、ケモカインおよび他の炎症性メディエーターの効果を減弱すると考えられる。そのような効果が、吸入を介した呼吸器症状もしくは疾患、および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の処置において利用され得るという概念証明が、本明細書に記載の実施例において実証されている。本明細書に記載の実施例において実証されるように、そのような効果が重大な安全性の問題点なしにもたらされ得ることも見出された。
【0052】
本発明者らは、驚くべきことに、かつ予想外に、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液が特定の抗炎症性サイトカインの機能に選択的に影響を及ぼし得ることを発見した。本明細書に記載のデータは、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液が、インビトロでIL-6機能の喪失を引き起こすことを実証している。逆に、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液は、インビトロでIL-10機能に有意な変化をもたらさなかった。
【0053】
したがって、本発明の次亜塩素酸塩溶液は、インビトロで正常なサイトカイン活性を乱すことができ、したがってサイトカイン依存性細胞シグナル伝達経路を制御する手段を提供する。IL-6は、炎症促進活性を有することが公知である。IL-10は、抗炎症活性を有することが公知である。理論に拘束されることを望むものではないが、これらのデータは、次亜塩素酸塩溶液の使用がIL-10機能を維持しながらIL-6機能の喪失を引き起こし、正味の抗炎症性効果をシグナル伝達することを示す。
【0054】
本発明者らは、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液の吸入が、いくつかの呼吸器症状および疾患に罹患している患者に対して有意な軽減をもたらすことを、初めてさらに実証している。例えば、本発明者らは、本明細書に記載の次亜塩素酸塩溶液の吸入が慢性閉塞性肺疾患(COPD);肺炎、COVID-19およびロングCOVID-19に対する有効な処置であることを実証した。これは、上記の正味の抗炎症性効果に起因すると考えられる。
【0055】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、好ましくはネブライザーを介した吸入によって投与される。ネブライザーの種類は、次亜塩素酸塩溶液を吸入用のエアロゾル液滴に細かくできるものであれば特に限定されない。ネブライザーは、次亜塩素酸塩溶液を鼻および/または口を介して患者に送達するように構成された出口に接続されてもよい。例えば、出口はマウスピースまたはフェイスマスクであってもよい。
【0056】
ネブライザーの非限定的な例としては、ジェット式ネブライザー(例えば、溶液を通る圧縮空気または酸素の流れがエアロゾルの生成を引き起こす、圧縮空気または酸素の供給源に接続されたネブライザー)、超音波ネブライザー(例えば、圧電振動子からの振動がエアロゾルの生成を引き起こす、圧電振動子に接続されたネブライザー)およびメッシュ式ネブライザー(例えば、膜を通して溶液を押し込むとエアロゾルの生成を引き起こす、微細孔を有する膜を有するネブライザー)が挙げられる。
【0057】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは吸入器を介した吸入によって投与される。例えば、吸入器は、定量吸入器であってもよい。定量吸入器は、定量吸入器の各作動時に設定用量の次亜塩素酸塩溶液を送達するように構成されてもよい。
【0058】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、吸入デバイスを用いた使用に適した医薬容器で提供されてもよい。医薬容器は、吸入器またはネブライザーなどの吸入デバイスと共に使用するのに適したカートリッジまたはキャニスタを含んでもよい。
【0059】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、噴射剤を含むカートリッジにパッケージされてもよく、このように次亜塩素酸塩溶液および噴射剤を含むカートリッジを形成する。同様に、呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、キャニスタ容器の噴射剤にパッケージされてもよく、このように次亜塩素酸塩溶液および噴射剤を含むキャニスタを形成する。
【0060】
噴射剤は、クロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロアルカンなどであってもよい。
【0061】
カートリッジまたはキャニスタは、吸入器と共に使用されてもよい。カートリッジまたはキャニスタは、吸入器から取り外し可能であってもよい。カートリッジまたはキャニスタは、使用前に吸入器に取り付けられてもよい。
【0062】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは水溶液である。
【0063】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは希釈次亜塩素酸ナトリウム溶液である。
【0064】
次亜塩素酸塩溶液は、治療作用を最適化し、同時に有害作用を回避するように配合された次亜塩素酸塩溶液であり得る。これは、希釈次亜塩素酸塩溶液をもたらすように、溶液の希釈によって達成することができる。
【0065】
好ましくは、次亜塩素酸塩溶液は、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)、より好ましくは約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、さらにより好ましくは約0.015~0.075重量%(約150~750ppm)、なおさらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)、最も好ましくは約0.04~0.06重量%(約400~600重量ppm)の濃度範囲の次亜塩素酸塩を含む。例えば、次亜塩素酸塩溶液は、約0.05重量%(約500重量ppm)で次亜塩素酸塩を含む。
【0066】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは約0.5~3.0重量%の濃度範囲、より好ましくは約0.5~1.5重量%、さらにより好ましくは約0.6~1.3重量%の濃度範囲、なおさらにより好ましくは約0.7~1.2%の濃度範囲、最も好ましくは約0.8~1.0重量%の濃度範囲の塩化ナトリウムをさらに含み得る。
【0067】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、約5~11、好ましくは約6~10、より好ましくは約7~9、さらにより好ましくは約7~8のpHに緩衝化されてもよい。いくつかの実施形態では、pHは、約5~6、約6~7、約8~9、約9~10、または約10~11であり得る。実施形態では、次亜塩素酸塩溶液のpHは7.5より高い。例えば、実施形態では、次亜塩素酸塩溶液のpHは10~11である。次亜塩素酸イオン(ClO-)の存在を確実にするために、アルカリ性pHが一般に好ましい。次亜塩素酸塩の酸性化は、異なる化学的実体である次亜塩素酸を生成する。
【0068】
典型的には、使用される場合、次亜塩素酸塩溶液のpHは、正常な生理学および疾患プロセスにおいて遭遇する範囲内である。これは、次亜塩素酸塩溶液が、pHを自動調整することが好ましいからである。
【0069】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、緩衝化されてなくてもよい。好ましい実施形態では、呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、緩衝化されていない。換言すれば、次亜塩素酸塩溶液は緩衝作用物質を含まない。これにより、次亜塩素酸塩溶液のpHは、それが投与される部位で自由に自動調整され得る。本発明の実施形態では、組成物は、次亜塩素酸塩溶液のpHが、それが投与される部位で自由に自動調整されるようなものである。
【0070】
あるいは、呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、約5~11、好ましくは約6~10、より好ましくは約7~9、さらにより好ましくは約7~8のpHに緩衝化されてもよい。いくつかの実施形態では、pHは、約5~6、約6~7、約8~9、約9~10、または約10~11であり得る。緩衝液は、医薬分野で従来使用されている任意の適切な緩衝液であり得、好ましくは、リン酸塩/リン酸緩衝液、ホウ酸塩/ホウ酸緩衝液、およびクエン酸塩/クエン酸緩衝液からなる群より選択される。
【0071】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、好ましくは安定化剤を含まない。
【0072】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、連続的に投与されてもよい。例えば、そのような連続投与は、人工呼吸器をつけた患者、病院環境にいる患者、鎮静状態の患者、または昏睡もしくは誘導性昏睡の患者に適用されてもよい。場合によっては、投与は約30秒~約90分の期間であり得る。好ましくは、次亜塩素酸塩溶液は、約1分~約90分、約5分~約90分、約10分~約90分、約15分~約90分、約20分~約90分、約30分~約90分、約45分~約90分、約60分~約90分、約30秒~約60分、約30秒~約45分、約30秒~約30分、約30秒~約20分、約30秒~約15分、約30秒~約10分、約30秒~約5分または約30秒~約1分の期間投与される。
【0073】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、1日に1回、2回、3回または4回投与されてもよい。好ましくは、次亜塩素酸塩溶液は1日に1回投与される。
【0074】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、数日(例えば、約1、2、3、4、5、6または7日)から数週(例えば、約1、2、3または4週)の期間にわたって1日に1回、2回、3回または4回の次亜塩素酸塩溶液の投与の処置期間、およびそれに続く数日(例えば、約1、2、3、4、5、6または7日)から数週(例えば、約1、2、3または4週)の期間にわたって次亜塩素酸塩溶液が投与されない期間を含むサイクルで投与されてもよい。サイクルは、少なくとも2回繰り返されてもよい。例えば、サイクルは、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回など繰り返されてもよい。
【0075】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置のための有益な効果は、患者が約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)、なおより好ましくは約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、さらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)の次亜塩素酸ナトリウムの濃度範囲;約0.5~1.5重量%の濃度範囲、好ましくは約0.6~1.3重量%の濃度範囲、より好ましくは約0.7~1.2%の濃度範囲、最も好ましくは約0.8~1.0重量%の濃度範囲の塩化ナトリウムを有する溶液(該溶液は緩衝化されていない)で処置される場合に特に顕著である。なおより好ましくは、溶液は、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)、なおより好ましくは約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、さらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)の次亜塩素酸ナトリウム;約0.5~1.5重量%の濃度範囲、好ましくは約0.6~1.3重量%の濃度範囲、より好ましくは約0.7~1.2%の濃度範囲、最も好ましくは約0.8~1.0重量%の濃度範囲の塩化ナトリウムからなり;該溶液は緩衝化されていない。
【0076】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置のための有益な効果は、患者が約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)、なおより好ましくは約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、さらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)の次亜塩素酸ナトリウムの濃度範囲;約0.5~1.5重量%の濃度範囲、好ましくは約0.6~1.3重量%の濃度範囲、より好ましくは約0.7~1.2%の濃度範囲、最も好ましくは約0.8~1.0重量%の濃度範囲の塩化ナトリウムを有する溶液(該溶液は約5~11、好ましくは約6~10のpHに緩衝化されている)で処置される場合に特に顕著である。
【0077】
例えば、0.85%の塩化ナトリウムおよび0.05%(500ppm)の次亜塩素酸ナトリウム(w/w)を含む溶液は、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおける呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患を予防および処置するのに非常に有益であることが見出されている。この濃度範囲は、医学文献において、特に呼吸器組織に対して毒性であると以前には考えられている。
【0078】
次亜塩素酸塩は、非常に純粋であるべきであり、例えば、理想的には、その純度ならびにその安全性および有効性を確保するために電気分解により生成されるべきである。
【0079】
呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用するための次亜塩素酸塩溶液は、呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患で使用する前に希釈される濃縮次亜塩素酸塩溶液から生産されてもよい。好ましくは、使用前に希釈される濃縮次亜塩素酸塩溶液は、濃縮次亜塩素酸ナトリウム溶液である。次亜塩素酸塩溶液を得るために適切な希釈物に希釈される場合、濃縮次亜塩素酸塩溶液は、呼吸器症状もしくは疾患および/または炎症もしくは自己免疫応答、症状もしくは疾患の予防または処置に使用され得る。これらは、先に論じられ例示されたとおりである。
【0080】
濃縮次亜塩素酸塩溶液中の次亜塩素酸塩の濃度は、約0.5~3重量%の範囲であり得る。さらに、濃縮次亜塩素酸塩溶液は、約9~15、好ましくは約11~13のpHに緩衝化されてもよい。あるいは、濃縮次亜塩素酸塩溶液は緩衝化されてなくてもよい。
【0081】
濃縮次亜塩素酸塩溶液は、1%または2%の次亜塩素酸ナトリウムでの安定化された次亜塩素酸ナトリウム溶液、例えば、塩化ナトリウムを含む「ミルトン(Milton’s)溶液」として公知の消毒剤であってもよい。希釈された次亜塩素酸塩溶液は、水に希釈されたミルトン(Milton’s)溶液の2.5%~10%溶液であってもよい(消毒剤溶液は、2%の次亜塩素酸ナトリウムである)。溶液中の塩化ナトリウムは、典型的には16.5%の濃度である。したがって、次亜塩素酸塩溶液と水との体積比は、1~10から1~40の間の範囲であり得る。あるいは、希釈次亜塩素酸塩溶液は、水に希釈されたミルトン(Milton’s)溶液の5%~20%溶液であってもよい(消毒剤溶液は、1%の次亜塩素酸ナトリウムである)。この場合、次亜塩素酸塩溶液と水との体積比は、1~5から1~20の間の範囲であり得る。
【0082】
両方の場合において、所定量の水および所定量の次亜塩素酸ナトリウム溶液は、希釈消毒剤溶液が安定化された次亜塩素酸ナトリウム溶液であり得るようなものであってもよい(次亜塩素酸ナトリウムは、約0.005~0.2重量%(約50~2000重量ppm)、より好ましくは約0.01~0.1重量%(約100~1000重量ppm)、さらにより好ましくは約0.025~0.075重量%(約250~750重量ppm)の次亜塩素酸ナトリウムの濃度範囲である)。次亜塩素酸ナトリウム溶液の作用は、希釈消毒剤溶液の安定化をもたらし得る。
【0083】
本発明で使用するための次亜塩素酸塩溶液を調製するのに適したデバイスは、WO-A-2011/128862に記載されている。
【0084】
様々な実施形態および任意の特徴が上述されている。これらの実施形態および特徴は、すべての実行可能な並び替えで組み合わせることができることが理解されよう。
【0085】
前述の開示は、本発明の作製および使用の方法ならびにその最良のモードを含む、本発明の範囲内に包含される主題の一般的な説明を提供するが、当業者が本発明を実践し、その完全な書面による説明を提供することをさらに可能にするために、以下の実施例を提供する。しかしながら、当業者は、これらの実施例の詳細が本発明を限定するものとして読まれるべきではなく、その範囲は本開示に添付される特許請求の範囲およびその均等物から理解されるべきであることを理解するであろう。本発明の様々なさらなる態様および実施形態は、本開示を考慮すると当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0086】
実施例1および2-サイトカイン機能に関するインビトロ研究
材料:
・組成物1の溶液-0.85重量%の生理食塩水中、0.005重量%の次亜塩素酸塩
・組成物2の溶液-0.8重量%の生理食塩水中、0.01重量%の次亜塩素酸塩
・IL-6依存性細胞株B9(カタログ番号12121201、マウスB細胞ハイブリドーマ)
・IL-10依存性細胞株MC9(ARCC(登録商標)CRL-8306(商標)、マウス肝臓肥満細胞)
・PrestoBlue(登録商標)(細胞生存率アッセイで使用するための細胞透過性蛍光化合物)
【0087】
方法:血漿サンプルをボランティアから得て、細胞を血漿から分離した。血漿サンプルを、孔径がサイトカインの分子量未満である透析チューブに入れた。これを1000倍過剰(すなわち、1L中に1ml、2L中に2mlなど)の透析媒体に入れた。
【0088】
透析媒体は、対照としての生理食塩水溶液(0.85重量%)、組成物1または組成物2のいずれか中にあり、5分後、15分後、30分後、45分後および60分後に抽出され、次いで分析された。このようにして、サイトカインの機能性を求めた。
【0089】
サイトカイン機能:サイトカイン依存性細胞株の生存を支援する能力を調査するために、患者の血漿を用いて機能的細胞アッセイを行った。
【0090】
血清にヒト組換えサイトカインをスパイクした。熱不活性化ウシ胎児血清を使用し、100ng/mlのヒト組換えIL-6およびIL-10でスパイクした。
【0091】
上記のように、血清サンプルを0.85重量%の生理食塩水溶液、組成物1または組成物2のいずれかで透析した。
【0092】
IL-6依存性細胞株B9の増殖を維持する能力を求めることによって、IL-6機能を評価した。
【0093】
IL-10依存性細胞株MC9の増殖を維持する能力を求めることによって、IL-10機能を評価した。
【0094】
細胞生存率を、蛍光を用いて測定した。細胞透過性非蛍光化合物をアッセイに添加した。生細胞は、蛍光化合物を還元する還元性環境を維持し、560nmで蛍光を発する変色をもたらす。
【0095】
蛍光の程度を測定し、生細胞の数と直接相関させる。結果を
図1から
図8に示す。
【0096】
いくつかの実験では、高レベルのサイトカイン(すなわち、10ng/ml)は、細胞生存率の低下を引き起こした。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、このことが高サイトカインレベルでのプロゾーン様効果によるものであり得ること、および/または高レベルのサイトカインがこの系において細胞死もしくは細胞代謝の阻害を引き起こし得ることを仮定する。
【0097】
実施例1-IL6
図1~
図3は、対照生理食塩水溶液(
図1)、組成物1(
図2)および組成物2(
図3)に対して透析したIL-6スパイク血清サンプルの細胞生存アッセイの結果を示す。
【0098】
これらのグラフにおいて、陽性/陰性の境界を表す線は、陰性対照ウェルの平均(サイトカイン非添加、n=16)+この平均を超える3標準偏差の値を示す。この値を超えるものはすべて陽性と考慮される。
【0099】
図2および
図3は、本発明の組成物1または組成物2を用いた血清サンプルの透析が、細胞生存アッセイで測定した場合に、IL-6分子の機能の喪失をもたらすことを示す。
【0100】
実施例2-IL10
図4~
図6は、対照生理食塩水溶液(
図4)、組成物1(
図5)および組成物2(
図6)に対して透析したIL-10スパイク血清サンプルの細胞生存アッセイの結果を示す。
【0101】
これらのグラフにおいて、陽性/陰性の境界を表す線は、陰性対照ウェルの平均(サイトカイン非添加、n=16)+この平均を超える3標準偏差の値を示す。この値を超えるものはすべて陽性と考慮される。
【0102】
実験データは、組成物1または2を用いた血清サンプルの透析が、細胞生存アッセイで測定した場合に、IL-10分子の機能がわずかに喪失しているにもかかわらず、IL-10は機能的なままであることを示唆する。したがって、IL-10は、機能の喪失が、正味の生存を保つインビトロ分析の予想範囲内であるので、機能的なままである。
【0103】
これをさらに評価するために、データを分析して、組成物1または組成物2への曝露後に見られる細胞生存を、0.85重量%生理食塩水溶液の透析後に同量のサイトカインによって達成されるそのパーセンテージとして調べ(
図7)、結果を、同じ様式で分析したIL-6について得られたものと比較した(
図8)。
【0104】
図7から、IL-10受容体結合が保持され、MC9細胞の生存を確実にすることが分かり得る。対照的に、
図8では、組成物1または組成物2の15分間の曝露後に、IL-6の機能はほぼ完全に喪失している。IL-6機能の完全な喪失およびIL-10機能に対する無視できる影響により、複合効果は有意に抗炎症性である。これは、炎症促進性サイトカイン作用の除去および抗炎症性サイトカイン作用の相対的増加を含む。したがって、正味の効果は抗炎症性である。
【0105】
実施例3~7-インビボでの患者有効性研究
処置は、ネブライザーによって送達される、生理食塩水中の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl:0.05重量%(500ppm)、NaCl:0.85重量%-実施例3~7では組成物3と称される)の投与を含んだ。
【0106】
実施例3
男性。40代。ウイルス性および細菌性病因の肺炎。肺炎の発症は、最初はウイルス性であり、次いで二次的に細菌性である。4日間にわたって2×60分間吸入した組成物3によって処置した。左右の肺における硬化の診断および消散を医師によって確認した。回復は、ネブライズした組成物3の投与を4週間にわたって継続することによって加速された。業務への復帰(臨床診療)が可能であった。肺におけるウイルス性および細菌性感染ならびに炎症応答に対する組成物3の影響。迅速な回復は、先天性炎症応答の向上した消散および滲出液の消散に起因すると仮定された。
【0107】
実施例4
30代の男性。慢性膵炎(内臓の炎症性疾患)の疼痛/疼痛および不快感の軽減のための処置。毎日20分間、ネブライザーから吸入した組成物3による処置。14日間にわたる症候の消散および患者は、胸骨後痛および背部痛のための処方医薬品をやめることができた。組成物3の肺投与を停止すると、疼痛症候が再発し、ネブライズした組成物3の再投与によって消失した。病態生理学は不明であるが、組成物3の肺投与の全身的兆候である可能性がある。
【0108】
実施例5
80代の女性。慢性閉塞性肺疾患における急性エピソードの予防のための処置。血中酸素飽和度に増加/改善が観察された。患者は、急性肺/胸部感染症で入院する頻度が増加している長期COPD患者であった。ネブライズした組成物3の投与を、1日2回20分間開始した。急性エピソードの頻度は、毎週から6週間ごとに減少した。毛細管血中酸素は改善が見られた。急性エピソードの頻度の減少および血中酸素飽和度の増加は、滲出液の減少、微生物負荷の減少および肺胞膜を横切る拡散の改善と一致する。
【0109】
実施例6
80代の女性。炎症性関節疾患(変形性関節症)に関連する疼痛および自己免疫疾患(重症筋無力症)に関連する疼痛のための処置。患者は、排尿のためにトイレへ歩いて行く際の朝の疼痛に対してジクロフェナクナトリウム(50mg BD)ならびにココダモール(パラセタモールコデイン)PRNを服用していた。疼痛は、変形性関節症ならびに重症筋無力症で確認されている、腰および股関節にあった。ネブライザーを介して吸入した、20分間、1日に2回の組成物3の投与。4日後、患者は朝の疼痛がなくなり、ジクロフェナクナトリウム50mg BDを服用しなくなった。これは維持されている。自己免疫疾患および疼痛に対する組成物3の仮定された影響。
【0110】
実施例7
リウマチ専門医によって確認されたシェーグレン症候群に罹患している80代の女性。主訴は、ドライマウスならびに口および咽頭の重度の疼痛であった。疼痛は、食物を食べることがあまりにも痛みを伴い、体重減少をもたらすほど深刻であった。
【0111】
シェーグレン病は自己免疫疾患であり、病的症状により、身体自身の水分産生腺を標的とする抗体が生じる。これらには、肺、腎臓および神経系に対する他の影響を伴う唾液腺、涙液腺が含まれる。筋肉疲労、甲状腺機能への影響、腕および脚のしびれも報告されている。
【0112】
組成物3の投与は、ネブライザーを介してであり、配合物ならびに口中液の蒸気を生成した。投与は、6時間ごとに20~30分間であった。
【0113】
痛みおよびドライマウスの症候は、通常、急性の疼痛および悪化する症候の延長に関連するスパイス入りレシピを含むすべての食品の種類および稠度を、無痛かつ非ドライマウスでの摂食を可能にする程度まで解消されている。他の一般的な症候は改善されており、運動および座位はより快適である。
【0114】
研究中、処置は中止され、痛みの症候および病気の気持ちが再発した。医薬品が再導入され、5日以内に症候が成功裏に消散した。
【0115】
処置前に、患者は、口腔医学の専門家によって処方されたコルチコステロイドを試みて失敗していた。
【0116】
実施例8-インビボでの患者安全性研究
処置は、ネブライザーによって送達される、生理食塩水中の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl:0.05重量%(500ppm)、NaCl:0.85重量%-実施例8では組成物3と称される)の投与を含んだ。
【0117】
全体の研究計画
この研究は、2~80歳のおよそ18人の健常なボランティアにおける第1相非盲検曝露漸増研究として設計された。3つの曝露コホートを計画した。
【0118】
コホート1は、2人の成人からなった:
最初は1人の健常なボランティア。ネブライザー介した組成物3の吸入。酸素飽和度、脈拍数、血圧および協調試験のパフォーマンスのモニタリング。吸入プログラムを30秒、続いて30分の観察。1分、続いて30分の観察。観察期間を30分に保ち、投与期間を5分、10分、15分、20分、30分に増やした。翌日、投与期間を45分および90分に増やした。
【0119】
このプログラムを、第1のボランティアに対する7日の観察期間の後、さらなる健常なボランティアで繰り返した。
【0120】
両方のボランティアは、さらなる吸入なしに6か月間追跡され、有害反応および長期的な影響についてモニターされた。
【0121】
コホート2は、コホート1+追加の4人の成人からなった:
次いで、プログラムを健常なボランティアのさらなる群に拡張し、30秒間、1分間、5分間、10分間、次いで15分間の投与の誘導期の後、機構研究で見られた組成物3を用いた15分のIl-6中和時間と、身体の血液循環のための4~5分の循環時間との仮定に基づいて、1日に20分間の投与時間を推奨した。
【0122】
観察された投与の1週間後。健常なボランティアは、3か月の観察期間中に自己投与し、2年の期間にわたって追跡され、有害反応および任意の長期的な影響についてモニターされた。
【0123】
コホート3は、12人の成人および小児からなった:
次いで、プログラムを極端な年齢の健常なボランティアのさらなる群に拡張し、5分間、10分間、次いで15分間、20分の1日投与時間の投与の誘導期に続けた。健常なボランティアは、3か月の観察期間中に自己投与し、3か月の期間にわたって追跡された。
【0124】
集団の選択
選択基準:
-書面、署名によるインフォームドコンセント、または18歳未満の参加者の場合は、親もしくは法的保護者による書面でのインフォームドコンセントが、研究の性質が説明された後、かつリサーチ関連の手順の前に提供された。
-すべての研究手順を遵守することに同意した。
-身体検査によって証明されるように、一般に健康状態は良好であった。
【0125】
除外基準:
-研究薬物投与前30日以内に、血液または血漿を受けた。
-治験責任医師による評価および承認なしに、研究薬物の投与前7日以内に、ビタミンを含む任意の市販(OTC)医薬品を使用した。
-治験責任医師による評価および承認なしに、研究薬物の投与前14日以内に、任意の処方医薬品を使用した。
-任意の制御されていない肺症状。
【0126】
処置
対象(またはその法的に権限を有する代理人)は、不利益なくいつでも研究に参加する同意を取り下げることができた。治験責任医師は、研究からの離脱を要求した対象を研究から離脱させることとした。研究における対象の参加は、治験責任医師の裁量で、かつ治験責任医師の臨床判断に従っていつでも中断されることとした。
【0127】
対象が予定された訪問に戻ってこなかった場合、その理由を決定するために文書での取組みを行うこととした。対象が7日以内に電話連絡ができなかった場合は、対象(または、適切な場合には、対象の法的に権限を有する代理人)に、治験責任医師への連絡を求める内容証明郵便を送ることとした。この情報を、研究記録に記録することとした。
【0128】
コホート1:
-ネブライザーを介した組成物3の吸入。
-吸入プログラムを30秒、続いて30分の観察。
-1分、続いて30分の観察。
-観察期間を30分に保ち、投与期間を5分、10分、15分、20分、30分に増やした。
-翌日、投与期間を45分および90分に増やした。
-さらなる7日の観察期間の後、同じスケジュールを第2のボランティアに対して繰り返した。
【0129】
コホート2:
-30秒間、1分間、5分間、10分間、次いで15分間の投与の誘導期、その後それぞれ30分の観察期間。
-次いで、2日目から、1日に20分の投与時間。
【0130】
コホート3:
-5分間、10分間、次いで15分間の投与の誘導期、その後それぞれ30分の観察期。
-次いで、2日目から、1日に20分の投与時間。
【0131】
組成物3は、滅菌水溶液として供給された。組成物3は、500ppmの濃度でネブライズされた。
【0132】
これを非盲検研究とした;各コホートに対象を割り当てる際に無作為化を使用しないこととした。
【0133】
スクリーニング前の30日間に対象が服用したすべての処方およびOTC医薬品を、指定されたCRFに記録することとした。治験責任医師は、処方された医薬品がプロトコルによって禁止されていない限り、研究中に追加の医薬品を処方することができた。緊急の事象では、事前の承認なしに必要な医薬品を処方することができたが、その後すぐに、治験依頼者のメディカルモニターに禁忌医薬品の使用を通知しなければならなかった。研究中に追加または中断された任意の併用医薬品をCRFに記録することとした。
【0134】
他の治験薬または治験医療デバイスの使用は、スクリーニング前の30日以内およびすべての予定された研究評価が完了するまで禁止することとした。
【0135】
OTC医薬品およびビタミンは、1日目(研究投与)の前の7日以内、ならびに治験責任医師による評価および承認なしでは、すべての予定された研究評価が完了するまで禁止することとした。
【0136】
処方医薬品の使用は、1日目の前の14日以内、ならびに治験責任医師による評価および承認なしでは、すべての予定された研究評価が完了するまで禁止することとした。
【0137】
すべての使用済みおよび未使用の薬物容器は、治験責任医師が保管することとした。交付された、戻された、使用された、失われたなどの量を、研究のために提供された交付ログに記録することとした。
【0138】
PIは、投与された研究薬物、研究薬物が交付された対象(対象ごとの投与固有の合計)、および研究薬物の喪失または偶発的もしくは意図的な破壊の正確な記録(日付および量を含む)を維持する役割を担うこととした。治験責任医師は、研究モニターがアカウンタビリティデータを確認するまで、未使用または期限切れのすべての研究薬物を保持することとした。
【0139】
未使用の研究薬物は、治験依頼者が薬剤破壊の承認を与えた後にのみ、実施施設の標準的な操作手順によって、実施施設で破壊することができた。モニターは、研究薬物破壊の前の正式な照合プロセスにおいて、すべての研究薬物の説明責任を負うこととした。実施施設で破壊されたすべての研究薬物を記録することとした。文書は、治験依頼者に提供され、治験責任医師の研究ファイルに保持されることとした。ある実施施設が研究薬物を適切に破壊することができなかった場合、その実施施設は、要求に応じて未使用の研究薬物を治験依頼者に返却することができた。研究薬物または研究薬物材料の返却は、治験依頼者に説明責任があることとした。
【0140】
安全性および忍容性の変数
安全性は、研究期間中に報告されたすべての処置下で発現した有害事象(以下、AEと称される)の発生率およびバイタルサインの臨床的に有意な変化を調べることによって評価することとした。
【0141】
バイタルサインは、5分間休息した後に測定することとし、mmHgで測定した着席収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)、心拍数(拍動数/分)、呼吸数(ブレス数/分)および酸素飽和度を含んだ。
【0142】
ICHの定義によれば、有害事象(または有害な経験)は、「医薬プロダクトを投与された、患者または臨床調査対象における任意の不都合な医学的出来事であり、必ずしもこの処置と因果関係を有しない。したがって、AEは、IPに関連すると考えられるかどうかにかかわらず、医薬(治験)プロダクトの使用に伴う時間的に関連する、任意の好ましくないおよび意図しないサイン(異常な検査所見を含む)、症候、または疾患であり得る」。
【0143】
有害薬物反応(ADR)は、ICHによって「任意の用量に関連した医薬プロダクトに対するすべての有害かつ意図しない応答」として記載されている。これは、医薬プロダクトおよびAEの間の因果関係が少なくとも合理的に可能である、すなわち、その関係を排除することができないことを意味する。
【0144】
AEは、既存の症状(例えば、喘息の悪化)の増悪(頻度、重篤度、または特異性の増加)を表す併発疾患または損傷を含み得た。可能な限り、診断に関連する一連の用語ではなく、AE用語として診断を記録することが好ましかった。
【0145】
非重篤なAEの報告期間は、研究薬物の初回投与から26週目または早期終了までの期間とした。非重篤なAEが研究の完了時に未解決のままであった場合、PIおよび治験依頼者のメディカルモニターは、AEの継続的なフォローアップが必要かどうかに関する共同の臨床評価を行い、この評価の結果を文書化することとした。消散は、ベースライン(スクリーニング)状態への復帰または慢性的なままであると予想される症状の安定化として定義することとした。
【0146】
治験責任医師が、重篤度、研究薬物との関係、および事象がSAEの定義の1つまたは複数を満たしているかどうかについてAEを評価することとした。
【0147】
治験責任医師が、各AEの重篤度を決定し、以下に定義されるカテゴリーを使用してソース文書およびAE CRFに記録することとした。
【0148】
統計計画
この研究の探索的性質および全体的に小さいサンプルサイズに起因して、推測のための正式な統計的検定を行わないこととした。推測統計は、記述目的のためだけに使用することとした。別段の指定がない限り、すべての要約は標準的な記述統計で構成することとした。標準的な記述統計は、以下を含むこととした:
-連続パラメータについて:観察(または対象)の数、平均、標準偏差、中央値、最小値、および最大値。
-カテゴリーパラメータについて:各カテゴリーにおける観察の頻度およびパーセント。
【0149】
有効性および安全性データの両方を、個々のコホートおよびすべてのコホートを組み合わせて要約することとした。
【0150】
サンプルサイズの決定:3つのコホートで処置された合計18人の対象を、この研究のために計画した。性別および幅広い年齢範囲で等しくバランスがとれた18人の対象の総コホートサイズは、この研究の目的を満たすのに十分であると考えられた。
【0151】
正式なサンプルサイズの計算およびパワーの決定は行わないこととした。
【0152】
計画された分析:任意の量の研究薬物を受け、投与後の安全性データのある、すべての対象を安全性分析に含めることとした。
【0153】
ドロップアウトおよび欠落データの取扱い:すべての分析を、観察されたデータのみに基づいて示すこととした。
【0154】
データモニタリング委員会:組成物3のこの最初の臨床研究において対象の安全性をモニタリングするために、DMCをこの試験で使用することとした。計画されたレビューを、各コホートの誘導期の完了後、ならびに各コホートの投与および追跡期間の終了時に行うこととした。
【0155】
安全性分析:安全性は、研究期間中に報告されたすべてのAEの発生率およびバイタルサインの臨床的に有意な変化を調べることによって評価することとした。
【0156】
研究期間中に報告されたAEのみを、AEの要約に含めることとした。AEは、研究薬物投与後に新たに発生した、頻度が増加した、または重篤度が悪化した任意のAEとして定義することとした。AEの発症が欠落しており、AEの消散が投与日後または欠落のいずれかであった場合、AEは処置で発現したと考慮することとした。治験責任医師によって研究薬物に関連する可能性がある、またはおそらく関連すると判断されたAEを、薬物関連と考慮することとした。研究薬物との関係が欠落している場合、AEを薬物関連と考慮することとした。
【0157】
すべてのAEおよびすべての薬物関連AEに対して、AEの発生率および重篤度を、器官別大分類(SOC)、基本語、および重篤度によって要約することとした。研究中に複数回発生したAEについては、最大重篤度を使用して重篤度によりAEを要約することとした。共通の基本語またはSOCにコードされる複数の事象を報告した対象は、基本語またはSOCごとに1回だけ計数することとした。
【0158】
治験責任医師によって研究薬物に関連する可能性がある、またはおそらく関連すると評価されたAEを、SOC、基本語、および最大重篤度により要約することとした。薬物関連AEを、AEと同様に要約することとした。
【0159】
研究の実施またはパンされた分析の変更
研究に登録された18人の対象のうち、すべてがプロトコルによって定義された適格基準を満たし、それらのコホートに適切な漸増スケジュールで適切な処置を受けた。
【0160】
【0161】
安全性評価
曝露の程度:すべての対象は、それらのコホートに従った組成物3への曝露であった。
【0162】
有害事象:4人の対象が処置の誘導期の最初のパート中に有害事象(コホート1および2、軽度の咳または咳をしたいという気持ち)を報告し、その後の曝露に対しては経験しなかった。コホート3の患者は、この可能性について注意するように言われており、誰も報告しなかった。
【0163】
基礎喘息を有する1人の対象は、喘息症候に類似する感覚、喘鳴なし、PEFRの低下なしを報告し、処置を1週間一時停止し、再導入したが、知覚の再発はなかった。
【0164】
すべての対象は、投与後に、増加した喀痰を経験した。
【0165】
処置直後の1時間の期間中に他の有害事象は発生しなかった。
【0166】
処置に関連すると考えられた有害事象は、追跡期間中には発生しなかった。
【0167】
重篤な有害事象のリスト:この研究の処置期間またはその後の段階中ではSAEはなかった。
【0168】
安全性研究の概要
健常なボランティアにおけるネブライズした組成物3の安全性および忍容性を評価するための第1相非盲検曝露量漸増研究の結果の概要:
i.サンプルサイズn=18
ii.重篤な有害事象-0
iii.誘導中の有害事象-4(すべてグレード1の事象)
iv.処置中または処置直後1時間の期間中の有害事象-18(すべてグレード1の事象)
v.処置に関連すると考えられる他の有害事象-0
vi.年齢範囲3~80歳
vii.連続投与の最長期間-90分
viii.連続投与のモード期間-20分
ix.1日20分間の反復投与の最長期間-4年間以上
【0169】
全体として、本発明は、本発明による次亜塩素酸塩組成物が、吸入経路を介して投与された場合に安全であり、良好に忍容されることを実証した。本発明はまた、抗炎症性特性を実証するインビトロのデータにより、呼吸器、炎症および/または自己免疫症状の患者においてインビボでの臨床的改善をもたらすことを実証した。本発明は、呼吸器、炎症および/または自己免疫症状のための新しい有効な処置選択肢を提供する。
【0170】
実施例9-COVID-19のインビボでの患者処置研究
処置は、ネブライザーによって送達される、生理食塩水中の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl:0.05重量%(500ppm)、NaCl:0.85重量%-実施例9では組成物3と称される)の投与を含んだ。
【0171】
登録された各患者は、研究に参加する前にCOVID-19について陽性と試験され、COVID-19の症候を呈した。組成物3は、以下の表に示す期間、ネブライザーによって各患者に投与された。吸入頻度は、(1日当たりの回数×各処置セッションの持続時間)として示される。投与が1日に4回であった場合、組成物3は6時間ごとに投与された。投与が1日に3回であった場合、組成物3は8時間ごとに投与された。
【0172】
処置は、陰性の側方流動試験結果が得られるまでの連続した日に、示された頻度で投与された。
【0173】
登録された各患者は、組成物3が最初に投与された日から(すなわち、組成物3の用量1が投与された日付から)2~4日以内に症候がなくなる。各患者は、陰性の側方流動試験(LFT)を受ける前は無症候であった。これらのデータは、吸入を介して投与された組成物3が、COVID-19の症候に対する有効な処置であり、回復時間を短縮することを示している。
【0174】
実施例10-「ロング」COVID-19のインビボでの患者処置研究
処置は、ネブライザーによって送達される、生理食塩水中の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl:0.05重量%(500ppm)、NaCl:0.85重量%-実施例10では組成物3と称される)の投与を含んだ。
【0175】
登録された各患者は、以前にCOVID-19陽性と試験されており、COVID-19陽性試験の日付から少なくとも1か月間「ロングCOVID-19」の症候に罹患していた。組成物3は、以下の表に示す期間、ネブライザーによって各患者に投与された。吸入頻度は、(1日当たりの回数×各処置セッションの持続時間)として示される。投与が1日に4回であった場合、組成物3は6時間ごとに投与された。投与が1日に3回であった場合、組成物3は8時間ごとに投与された。
【0176】
処置は、患者が症候を報告しなくなるまでの連続した日に、示された頻度で投与された。
【0177】
部分的に回復した2人の患者を除いて、ロングCOVID-19の症候は患者において緩和された。2人の患者はロングCOVID-19から完全に回復し、1人の患者はほぼ完全に(90%)回復し、軽度の喘息の症候が残っていた。これらのデータは、吸入を介して投与された組成物3が、ロングCOVID-19の症候に対する有効な処置であり、達成される回復レベルが向上することを示している。
【国際調査報告】