IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アミカス セラピューティックス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-525760小児患者のファブリー病を治療する方法
<>
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図1A
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図1B
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図1C
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図1D
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図1E
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図2
  • 特表-小児患者のファブリー病を治療する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】小児患者のファブリー病を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/445 20060101AFI20240705BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/445
A61P3/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501910
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022073626
(87)【国際公開番号】W WO2023288210
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,816
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, フランクリン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZC21
4C086ZC51
4C086ZC54
(57)【要約】
青年患者におけるファブリー病の治療方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファブリー病の治療を必要としているヒト患者におけるファブリー病の治療方法であって、前記患者に治療有効用量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を投与することを含む方法において、前記患者が小児患者である、方法。
【請求項2】
前記患者の年齢が約2歳~約<18歳の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の体重が約<15kg~約≧50kgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ミガラスタット又はその塩の前記治療有効用量が、1日おきに約15mg~約150mgの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1日おきに約25mg~約150mgの範囲の用量のミガラスタット塩酸塩の前記治療有効用量、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1日おきに約15mg~約123mgの範囲のミガラスタットFBEの前記治療有効用量、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者の年齢が、約12歳~約<18歳の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の体重が約≧25kgである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ミガラスタット塩酸塩の前記治療有効用量が、1日おきに約80mg~約150mgの範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の体重が約≧45kgである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ミガラスタット塩酸塩の前記治療有効用量が、1日おきに約150mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ミガラスタットFBEの前記治療有効用量が、1日おきに約123mgである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者の年齢が、6歳~<12歳の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記患者の体重が、約≧25kgである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ミガラスタット塩酸塩の前記治療有効用量が、1日おきに約80mg~約150mgの範囲である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者の年齢が、2歳~<6歳の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
前記患者の体重が、約<35kgである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ミガラスタット塩酸塩の前記治療有効用量が、1日おきに約40mg~約80mgの範囲である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、約≧60mL/分/1.73mのeGFRを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ミガラスタット又はその塩がα-ガラクトシダーゼA活性を亢進させるか、又は延長する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記製剤が経口剤形を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記経口剤形が、錠剤、カプセル剤又は溶液を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が男性である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が女性である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、酵素補充療法(ERT)ナイーブな患者である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、ERTを経験した患者であって、ERTを少なくとも14日間にわたって中止している患者である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、α-ガラクトシダーゼAにHEKアッセイ適用可能突然変異を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記突然変異が、薬理学参照表に開示されている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記薬理学参照表が、ファブリー病の治療に承認されているミガラスタット製品の製品ラベルに提供される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記薬理学参照表が、GALAFOLD(登録商標)の製品ラベルに提供される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記薬理学参照表が、ウェブサイトに提供される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ウェブサイトが、www.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.comのうちの1つ以上である、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の原理及び実施形態は、概して、ファブリー病の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのヒト疾患は、突然変異が引き起こすタンパク質のアミノ酸配列の変化によりタンパク質の安定性が低下し、その適切な折り畳みが妨げられ得ることに起因する。タンパク質は概して、小胞体、又はERとして知られる細胞の特異的な領域内で折り畳まれる。細胞は、概してタンパク質トラフィッキングと称されるプロセスである、タンパク質がその正しい三次元形状に折り畳まれた後にERから細胞内の適切な行き先へと移動できることを確実にする品質管理機構を有する。誤って折り畳まれたタンパク質は、当初ERに保持された後に品質管理機構によって排除されることが多い。場合によっては、誤って折り畳まれたタンパク質が排除される前にERに蓄積し得る。誤って折り畳まれたタンパク質がERに保持されていると、その適切なトラフィッキングの妨げになり、結果として生物学的活性が低下することにより細胞機能が損なわれ、最終的に疾患につながり得る。加えて、誤って折り畳まれたタンパク質がERに蓄積すると、細胞に各種のストレスがかかることになる可能性もあり、これもまた細胞機能不全及び疾患の一因となり得る。
【0003】
かかる突然変異は、リソソーム酵素をコードする遺伝子の突然変異に起因するリソソーム酵素の欠損を特徴とするリソソーム蓄積障害(LSD)につながり得る。結果として生じる疾患が、脂質、炭水化物、及び多糖類を含めたこの酵素の基質の病的蓄積を引き起こす。それぞれのLSDに関連して多くの異なる突然変異遺伝子型が存在するが、これらの突然変異の多くは、安定性の低い酵素の産生につながり得るミスセンス突然変異である。こうした安定性の低い酵素は、時にER関連分解経路によって早まって分解される。その結果、リソソームに酵素欠損が起こり、基質が病的に蓄積する。かかる突然変異酵素は、時に関連技術分野において「フォールディング突然変異体」又は「コンホメーション突然変異体」と称される。
【0004】
LSDであるファブリー病は、α-Gal A遺伝子(GLA)における突然変異の結果としてのリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠損に起因するスフィンゴ糖脂質代謝の進行性のX連鎖性先天異常である。女性は、X連鎖性障害であるにもかかわらず、様々な程度の臨床症状を発現し得る。
【0005】
ファブリー病は、臨床症状によって、3つのグループ:全身性脈管障害を伴う古典的形態、心臓組織に限られた臨床症状を伴う非定型な変異形態、及び遅発型疾患に分類され、これは疾患の軽度から重度の形態を有する女性保因者を含む。臨床症状は、被角血管腫(皮膚上の小さく隆起した赤紫色のしみ)、肢端触覚異常(手足のヒリヒリ)、発汗低下(汗をかく能力の減少)、並びに特徴的な角膜及び水晶体混濁を含む(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,8th Edition 2001,Scriver et al.,ed.,pp.3733-3774,McGraw-Hill,New York)。
【0006】
ファブリーは、発生率が一般集団において男性40,000名のうち1名~117,000名のうち1名の間と推定されるまれな疾患である。更に、彼らが古典的な徴候及び症状を呈しないことから不十分な診断がなされ得る、ファブリー病の遅発型表現型の変異体が存在する。この新生児のファブリー病についてのスクリーニングは、ファブリー病の実際の発生率が現在評価されているよりも高い可能性があることを示唆する。
【0007】
ファブリー患者が治療されない場合の平均余命は低下し、腎臓、心臓及び/又は中枢神経系を冒す血管病が原因で、通常は30歳代又は40歳代で死亡が発生する。酵素欠損は、身体全体にわたる血管内皮及び内臓組織において基質グロボトリアオシルセラミド(GL-3)の細胞内蓄積を引き起こす。心臓は肥大を招くこともあり、腎臓は進行性に障害を招くことがある。スフィンゴ糖脂質沈着に起因する、腎機能の緩徐な悪化及び高窒素血症の発現は、通常は人生の20歳代から40歳代で生じるが、早ければ10歳代で生じ得る。腎病変は、ヘミ接合性(男性)及びヘテロ接合性(女性)患者の両方で見いだされる。罹患した男性の平均余命は低下し、心臓、脳、及び/又は腎臓の血管病の結果として、通常は30歳代又は40歳代で死亡が発生する。他の症状は、特に食事後の発熱及び胃腸障害を含む。
【0008】
ファブリー病の結果としての心臓病は、大部分の男性及び多くの女性において発生する。早期の心臓所見は左室肥大、弁膜症及び伝導異常を含む。僧帽弁閉鎖不全は、典型的に小児期又は青年期に最も頻繁にみられる弁病変である。脳血管症状は、主に多巣性小血管障害に起因し、血栓症、一過性脳虚血発作、脳底動脈虚血及び動脈瘤、てんかん発作、片麻痺、片側感覚消失、失語、迷路障害、又は脳出血を含み得る。脳血管症状の発症の平均年齢は33.8年である。人格変化及び精神病的行動は、加齢とともに出現し得る。
【0009】
遅発型ファブリー病を有する個人は、男性又は女性であり得る。遅発型ファブリー病は、非定型な変異形態として現れ、証拠が増えることにより、世界中で説明がなされていない有意な数の「非定型変異体」が存在し得ることが示される。a-GAL突然変異を含むX染色体を受け継ぐ女性は、人生後期に症状を呈し、この疾患の有病率を有意に増加させ得る。これらの患者は、典型的には成人期に最初に病徴を経験し、単一臓器に集中した病徴を有することが多い。例えば、遅発型ファブリー病を有する多くの男性及び女性は、心臓の左室の肥大を有する。また、遅発型ファブリー病は、原因不明の脳卒中の形態で現れることがある。患者の年齢が進むと、疾患の心臓合併症が進行し、死亡を引き起こし得る。
【0010】
ファブリー病のより軽度の「心変異型」を有する患者は、通常は正常なa-Gal活性の5~15%を有し、左室肥大又は心筋症を呈する。これらの心変異型患者は、彼らの古典的に冒された対応部分が著しく損なわれるとき、本質的に無症候性を維持する。心変異型は、未解明の左室肥大型心筋症を有する成人男性患者の11%に見いだされ、ファブリー病が以前の評価よりも頻繁にみられ得ることが示唆される(Nakao et al.,N.Engl.J.Med.1995;333:288-293)。
【0011】
ファブリー病の治療手法は幾つか存在している。ファブリー病の治療に承認されている一つの療法は酵素補充療法(ERT)であり、これは典型的には精製された形態の対応する野生型タンパク質の静脈内注入を伴う(Fabrazyme(登録商標),Genzyme Corp.)。しかしながら、ERTには幾つかの欠点がある。酵素補充療法が複雑化する主な要因の一つは、注入されたタンパク質の急速な分解であり、これは何回もの高額な費用のかかる高用量注入の必要性につながる。ERTには更に注意しておくべき点が幾つかあり、例えば、適切に折り畳まれたタンパク質の大規模な産生、精製、及び貯蔵が困難;グリコシル化された天然タンパク質の入手;抗タンパク質免疫応答の発生;及びタンパク質が血液脳関門を通過できず、中枢神経系の病変を軽減できないこと(即ち、低いバイオアベイラビリティ)などである。加えて、補充酵素は、ファブリー病変に顕著にみられる腎タコ足細胞又は心筋細胞における基質蓄積を減少させるのに十分な量を心臓又は腎臓に浸透させることができない。
【0012】
加えて、ERTは、典型的には精製された形態の対応する野生型タンパク質の静脈内注入を伴う。ファブリー病の治療には、現在2つのα-Gal A製剤:アガルシダーゼアルファ(Replagal(登録商標)、Shire Human Genetic Therapies)及びアガルシダーゼベータ(Fabrazyme(登録商標);Sanofi Genzyme Corporation)が利用可能である。ERTは多くの状況下で有効であるが、この治療は制限も有する。ERTが脳卒中のリスクを低減することは実証されておらず、心筋は緩徐に応答し、及び腎臓の細胞型の一部からのGL-3の除去は制限される。また、一部の患者はERTに対する免疫反応を発現する。
【0013】
ある種の酵素欠損についての別の治療手法は、小分子阻害薬を使用して欠損酵素タンパク質の天然基質の産生を抑え、それにより病変を軽減することを伴う。この「基質抑制」手法は、特にスフィンゴ糖脂質貯蔵障害を含む、リソソーム蓄積障害と呼ばれる約40の関連酵素障害のクラスについて記載されている。療法として使用が提案されている小分子阻害薬は、糖脂質の合成に関わる酵素の阻害に特異的であり、欠損酵素によって分解される必要のある細胞性糖脂質の量を減少させる。
【0014】
3つ目のファブリー病治療手法は、薬理学的シャペロン(PC)と呼ばれるものによる治療となっている。かかるPCはα-Gal Aの小分子阻害薬を含み、これはα-Gal Aに結合して突然変異酵素及び対応する野生型の両方の安定性を増加させることができる。
【0015】
従って、ファブリー病を治療するための療法に対する必要が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の様々な態様は、ファブリー病の治療に関する。
【0017】
本発明の一態様は、ファブリー病の治療を必要としているヒト患者におけるファブリー病の治療方法に関する。1つ以上の実施形態において、本方法は、患者に製剤を投与することを含む。一部の実施形態において、製剤は、治療有効用量のミガラスタット又はその塩を含む。一部の実施形態において、患者は小児患者である。一部の実施形態において、患者の年齢は、約2歳~約<18歳の範囲である。一部の実施形態において、患者の体重は、約<15kg~約≧50kgの範囲である。一部の実施形態において、ミガラスタット又はその塩の治療有効用量は、1日おきに約15mg~約150mgの範囲である。一部の実施形態において、ミガラスタット塩酸塩の治療有効用量は、1日おきに約25mg~約150mgの範囲である。一部の実施形態において、ミガラスタットFBEの治療有効用量は、1日おきに約15mg~約123mgの範囲である。
【0018】
1つ以上の実施形態において、患者の年齢は、12~<18の範囲である。一部の実施形態において、患者の体重は、約≧25kgである。一部の実施形態において、ミガラスタット塩酸塩の治療有効用量は、1日おきに約80mg~約150mgの範囲である。1つ以上の実施形態において、患者の体重は、約≧45kgである。一部の実施形態において、ミガラスタット塩酸塩の治療有効用量は、1日おきに約150mgである。一部の実施形態において、ミガラスタットFBEの治療有効用量は、1日おきに約123mgである。
【0019】
1つ以上の実施形態において、患者の年齢は、約6歳~約<12歳の範囲である。一部の実施形態において、患者の体重は、約≧25kgである。一部の実施形態において、ミガラスタット塩酸塩の治療有効用量は、1日おきに約80mg~約150mgの範囲である。
【0020】
1つ以上の実施形態において、患者の年齢は、約2歳~約<6歳の範囲である。一部の実施形態において、患者の体重は、約<35kgである。一部の実施形態において、ミガラスタット塩酸塩の治療有効用量は、1日おきに約40mg~約80mgの範囲である。
【0021】
1つ以上の実施形態において、患者は、約≧60mL/分/1.73mのeGFRを有する。
【0022】
1つ以上の実施形態において、ミガラスタット又はその塩はα-ガラクトシダーゼA活性を亢進させるか、又は延長する。
【0023】
1つ以上の実施形態において、製剤は経口剤形を含む。一部の実施形態において、経口剤形は、錠剤、カプセル剤又は溶液を含む。
【0024】
1つ以上の実施形態において、患者は男性である。
【0025】
1つ以上の実施形態において、患者は女性である。
【0026】
1つ以上の実施形態において、患者はERTナイーブな患者である。
【0027】
1つ以上の実施形態において、患者はERTを経験した患者であって、ERTを少なくとも14日間にわたって中止している患者である。
【0028】
1つ以上の実施形態では、患者はα-ガラクトシダーゼAにおけるHEKアッセイ適用可能突然変異を有する。1つ以上の実施形態では、突然変異は薬理学的参照表に開示される。1つ以上の実施形態では、薬理学的参照表は、ファブリー病の治療に対して承認されたミガラスタット製品の添付文書で提供される。1つ以上の実施形態では、薬理学的参照表は、GALAFOLD(登録商標)の添付文書で提供される。1つ以上の実施形態では、薬理学的参照表は、あるウェブサイトで提供される。1つ以上の実施形態では、ウェブサイトは、www.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.comの1つ以上である。
【0029】
本発明の更なる特徴は、以下の書面の説明及び添付図面から明白になろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A-E】ヒト野生型GLA遺伝子の完全なDNA配列(配列番号1)を示す。
図2】野生型α-Gal Aタンパク質(配列番号2)を示す。
図3】野生型α-Gal Aタンパク質をコードする核酸配列(配列番号3)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が以下の説明に示される構築又は方法ステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、及び様々な方法で実施されること又は実行されることが可能である。
【0032】
本発明の様々な態様は、小児及び青年患者のファブリー病を治療するためのミガラスタットなどの薬理学的シャペロンの投与に関する。
【0033】
定義
本明細書で使用される用語は、本発明の文脈の中で、及び各用語が使用される具体的な文脈において、概して当該技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物及び方法並びにそれをどのように作成及び使用すればよいかを説明することにおいて実施者に更なる手引きを与えるため、特定の用語を以下で、又は本明細書中の他の箇所で考察する。
【0034】
用語「ファブリー病」は、リソソームα-Gal A活性欠損に起因するスフィンゴ糖脂質異化作用のX連鎖性先天異常を指す。この欠陥により、心臓、腎臓、皮膚、及び他の組織の血管内皮リソソームに基質グロボトリアオシルセラミド(「GL-3」、別名Gb3又はセラミドトリヘキソシド)及び関連するスフィンゴ糖脂質の蓄積が引き起こされる。この酵素の別の基質は血漿グロボトリアオシルスフィンゴシン(「血漿lyso-Gb」)である。
【0035】
用語「非定型ファブリー病」は、主にα-Gal A欠損の心徴候、即ち、心臓、特に左室の有意な肥大を引き起こす心筋細胞内の進行性GL-3蓄積を有する患者を指す。
【0036】
「保因者」は、一方のX染色体が欠陥α-Gal A遺伝子を含んで一方のX染色体が正常な遺伝子を含む、且つ1つ以上の細胞型に正常な対立遺伝子のX染色体不活性化が存在する女性である。保因者は多くの場合にファブリー病と診断される。
【0037】
「患者」は、特定の疾患と診断されているか、又はそれを有する疑いがある対象を指す。患者はヒト又は動物であってよい。
【0038】
「ファブリー患者」は、ファブリー病と診断されているか、又はそれを有する疑いのある、以下に更に定義するとおりの突然変異型α-Gal Aを有する個体を指す。ファブリー病の特徴マーカーはヘミ接合男性及び女性保因者に同じ有病率で出現し得るが、典型的には女性の方が発症しても重症度が低い。
【0039】
ヒトα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)は、ヒトGLA遺伝子によってコードされる酵素を指す。イントロン及びエクソンを含むα-Gal Aの完全DNA配列はGenBank受託番号X14448.1で利用可能であり、図1A~E(配列番号1)に示される。ヒトα-Gal A酵素は429アミノ酸からなり、GenBank受託番号X14448.1及びU78027.1で利用可能であり、図2に示した(配列番号2)。配列番号1のコーディング領域(即ち、エクソン)だけを含む核酸配列は、図3に示した(配列番号3)。
【0040】
用語「突然変異タンパク質」は、タンパク質をコードする遺伝子に、小胞体(ER)に通常存在する条件下ではそのタンパク質が安定したコンホメーションを実現できなくなるような突然変異を有するタンパク質を含む。安定したコンホメーションを実現できないと、相当量の酵素がリソソームに輸送されず、むしろ分解されることになる。かかる突然変異は時に「コンホメーション突然変異体」と呼ばれる。かかる突然変異としては、限定はされないが、ミスセンス突然変異、及びインフレーム小欠失及び挿入が挙げられる。
【0041】
本明細書で一実施形態において使用されるとき、用語「突然変異α-Gal A」は、α-Gal Aをコードする遺伝子に、ERに通常存在する条件下ではその酵素が安定したコンホメーションを実現できなくなるような突然変異を有するα-Gal Aを含む。安定したコンホメーションを実現できないと、相当量の酵素がリソソームに輸送されず、むしろ分解されることになる。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「薬理学的シャペロン」(「PC」)又は「特異的薬理学的シャペロン」(「SPC」)は、タンパク質に特異的に結合する、且つ以下の効果のうちの1つ以上を有する:(i)タンパク質の安定した分子コンホメーションの形成を増進する;(ii)ERから別の細胞部位、好ましくは天然の細胞部位へのタンパク質のトラフィッキングを誘導し、即ちタンパク質のER関連分解を防止する;(iii)誤って折り畳まれたタンパク質の凝集を防止する;及び/又は(iv)タンパク質に少なくとも一部の野生型機能及び/又は活性を回復させる又は増強する、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物等を含めた任意の分子を指す。例えばα-Gal Aに特異的に結合する化合物とは、それが一般的な関連する又は無関係の酵素群でなく、その酵素に結合してシャペロン効果を及ぼすことを意味する。より具体的には、この用語は、BiPなどの内因性シャペロン、又はグリセロール、DMSO若しくは重水など、様々なタンパク質に対する非特異的シャペロン活性を実証している非特異的作用物質、即ち化学的シャペロンは指さない。本発明の1つ以上の実施形態において、PCは可逆的競合阻害薬であってもよい。1つ以上の実施形態において、PCは、ミガラスタット又はその塩である。別の実施形態において、PCは、ミガラスタット遊離塩基(例えば、123mgのミガラスタット遊離塩基)である。更に別の実施形態において、PCは、ミガラスタットの塩(例えば、150mgのミガラスタットHCl)である。
【0043】
酵素の「競合阻害薬」は、酵素基質の化学構造及び分子構造に構造的に類似していて、基質とほぼ同じ位置でその酵素に結合する化合物を指し得る。従って、阻害薬は基質分子と同じ活性部位に関して競合し、ひいてはKmを増加させる。競合阻害は、通常、阻害薬に取って代わるのに十分な基質分子が利用可能であるならば可逆的であり、即ち競合阻害薬は可逆的に結合することができる。従って、酵素阻害の量は、阻害薬濃度、基質濃度、並びに活性部位に対する阻害薬及び基質の相対的親和性に依存する。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「特異的に結合する」は、薬理学的シャペロンとα-Gal Aなどのタンパク質との相互作用、具体的には、薬理学的シャペロンとの接触に直接関与するタンパク質中のアミノ酸残基との相互作用を指す。薬理学的シャペロンは標的タンパク質、例えばα-Gal Aに特異的に結合して、一般的な関連する又は無関係のタンパク質群でなく、そのタンパク質にシャペロン効果を及ぼす。所与の薬理学的シャペロンと相互作用するタンパク質中のアミノ酸残基は、タンパク質の「活性部位」の範囲内にあっても、又はなくてもよい。特異的結合は、ルーチンの結合アッセイによるか、又は構造研究、例えば共結晶化、NMRなどによって評価することができる。α-Gal Aの活性部位は基質結合部位である。
【0045】
「α-Gal A活性欠損」は、ファブリー病又は任意の他の疾患(特に血液疾患)を有しない又はそれを有する疑いがない正常な個体の活性と(同じ方法を用いて)比較したとき正常範囲を下回る患者からの細胞のα-Gal A活性を指す。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「α-Gal A活性を増強する」又は「α-Gal A活性を増加させる」は、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触していない細胞(好ましくは同じ細胞型のもの、又は同じ細胞であって、例えばより早い時期のもの)における量と比べて、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞において安定したコンホメーションをとるα-Gal Aの量を増加させることを指す。この用語はまた、そのタンパク質に特異的な薬理学的シャペロンと接触していないα-Gal Aのトラフィッキングと比べて、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞においてリソソームへのα-Gal Aのトラフィッキングを増加させることも指す。これらの用語は、野生型及び突然変異体の両方のα-Gal Aを指す。一実施形態において、細胞におけるα-Gal A量の増加は、PCで処理した細胞からのライセート中の人工基質の加水分解を測定することにより測定される。加水分解の増加がα-Gal A活性の増加の指標である。
【0047】
用語「α-Gal A活性」は、細胞における野生型α-Gal Aの正常な生理学的機能を指す。例えば、α-Gal A活性にはGL-3の加水分解が含まれる。
【0048】
「奏効例」は、例えばファブリー病など、リソソーム蓄積障害(LSD)と診断された、又はそれ有する疑いがある個体であって、その細胞がPCとの接触に応答して、それぞれ、α-Gal A活性の十分な増加、及び/又は症状の軽減又は代用マーカーの増強を呈する個体である。ファブリーの代用マーカーの増強の非限定的な例は、lyso-GB及び米国特許出願公開第2010/0113517号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)に開示されるものである。
【0049】
米国特許出願公開第2010/0113517号明細書に開示されるファブリー病の代用マーカーの改善の非限定的な例としては、細胞(例えば、線維芽細胞)及び組織におけるα-Gal Aレベル又は活性の増加;GL-3蓄積の減少;ホモシステイン及び血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の血漿濃度の低下;心筋細胞及び弁線維細胞内におけるGL-3蓄積の低下;血漿lyso-Gbの減少;心肥大(特に左心室)の減少、弁閉鎖不全、及び不整脈の軽減;タンパク尿の軽減;CTH、ラクトシルセラミド、セラミドなどの脂質の尿中濃度の低下、並びにグルコシルセラミド及びスフィンゴミエリンの尿中濃度の増加;糸球体上皮細胞に層状封入体(ゼブラ小体)なし;腎機能の改善;発汗低下の緩和;被角血管腫なし;及び高周波感音難聴、進行性難聴、突発性難聴、又は耳鳴りなどの聴力異常の改善が挙げられる。神経症状の改善としては、一過性脳虚血発作(TIA)又は脳卒中の予防;及び先端感覚異常(肢端の灼熱痛又は刺痛)として現れる神経因性疼痛の軽減が挙げられる。ファブリー病を判定し得る別種の臨床マーカーは、有害心血管症状の有病率である。ファブリー病によく見られる心臓関連の徴候及び症状としては、左室肥大、弁膜症(特に僧帽弁逸脱及び/又は逆流)、早期冠動脈疾患、アンギナ、心筋梗塞、伝導異常、不整脈、うっ血性心不全が挙げられる。
【0050】
前述の応答のうちの1つ以上を実現する用量が、「治療有効用量」である。
【0051】
語句「薬学的に許容可能」は、生理学的に忍容可能な、且つ典型的にはヒトへの投与時に有害な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。一部の実施形態において、本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用が連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。医薬担体に関して用語「担体」は、化合物がそれと共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を指す。かかる医薬担体は、水及び油などの滅菌液であってもよい。担体としては好ましくは、特に注射溶液用に、水又は水溶液、生理食塩溶液並びにデキストロース及びグリセロール水溶液が利用される。好適な医薬担体については、“Remington’s Pharmaceutical Sciences” by E.W.Martin,18th Edition、又は他の版に記載されている。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「単離された」は、言及されている材料が、それが通常見出される環境から取り出されることを意味する。従って、単離された生物学的材料は、細胞成分、即ちその材料が見出される又は産生される細胞の構成成分を含まないものであり得る。核酸分子の場合、単離核酸には、PCR産物、ゲル上のmRNAバンド、cDNA、又は制限酵素断片が含まれる。別の実施形態において、単離核酸は、好ましくは、それが見出され得る染色体から切り出され、より好ましくは、染色体中に見出されるときその単離核酸分子に含まれる遺伝子の上流又は下流に位置する非調節領域、非コード領域、又は他の遺伝子ともはやつながっていない。更に別の実施形態において、単離核酸は1つ以上のイントロンを欠いている。単離核酸は、プラスミド、コスミド、人工染色体などに挿入される配列を含む。従って、具体的な実施形態において、組換え核酸は単離核酸である。単離タンパク質は、他のタンパク質又は核酸、又は両方と、細胞においてそれが結び付いているものと、又はそれが膜結合性タンパク質である場合には細胞膜と結び付いていてもよい。単離細胞小器官、細胞、又は組織は、生物においてそれが見出される解剖学的部位から取り出される。単離材料は、必須ではないが、精製されてもよい。
【0053】
用語「酵素補充療法」又は「ERT」は、非天然の精製酵素をかかる酵素が欠損した個体に導入することを指す。投与されるタンパク質は、天然の供給源から又は組換え発現によって(以下に更に詳細に記載するとおり)入手されてもよい。この用語はまた、本来であれば精製酵素の投与が必要な、又はそれから利益を得る個体、例えば酵素欠乏を患っている個体において精製酵素を導入することも指す。導入される酵素は、インビトロで作製された精製組換え酵素であってもよく、又は単離された組織又は体液、例えば胎盤又は動物乳等から精製された、又は植物から精製されたタンパク質であってもよい。
【0054】
用語「ERTナイーブな患者」は、ミガラスタット療法を開始する前に、ERTを決して受けていない、又は少なくとも6か月にわたってERTを受けていないファブリー患者を指す。
【0055】
用語「ERTを経験した患者」は、ミガラスタット療法を開始する直前にERTを受けていたファブリー患者を指す。一部の実施形態では、ERTを経験した患者は、ミガラスタット療法を開始する直前に少なくとも12か月のERTを受けている。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「遊離塩基当量」又は「FBE」は、ミガラスタット又はその塩に存在するミガラスタットの量を指す。換言すれば、用語「FBE」は、ミガラスタット遊離塩基の量、又はミガラスタットの塩によって提供されるミガラスタット遊離塩基の当量のいずれかを意味する。例えば、塩酸塩の重量に起因して、僅か150mgのミガラスタット塩酸塩が、123mgの遊離塩基形態のミガラスタットと同程度のミガラスタットを提供する。他の塩は、塩の分子量に応じて異なる換算係数を有することが予想される。
【0057】
用語「ミガラスタット」は、具体的に反する旨が指示されない限り、ミガラスタット遊離塩基又はその薬学的に許容可能な塩(例えば、ミガラスタットHCl)を包含する。
【0058】
用語「突然変異」及び「変異体」(例えば、「適用可能突然変異又は変異体」におけるような)は、遺伝子又は染色体のヌクレオチド配列の変化を指す。本明細書で言及した2つの用語は、典型的には一緒に-例えば、穿孔配列において言及したヌクレオチド配列の変化を言及する「突然変異又は変異体」として使用される。これら2つの用語の一方だけが何らかの理由から言及される場合は、欠けている用語は含まれており、かかるものとして理解すべきである。更に、用語「適用可能突然変異」及び「適用可能変異体」は、PC療法に適用可能である、例えばミガラスタット療法に適用可能である突然変異又は変異体を指す。特定タイプの適用可能突然変異又は変異体は、本明細書及びこれにより全体として参照により組み込まれる米国特許第8,592,362号明細書に記載されるインビトロHEKアッセイにおける基準に従ってミガラスタット療法に適用可能であると決定された突然変異又は変異体である「HEKアッセイ適用可能突然変異又は変異体」である。
【0059】
用語「約」及び「近似的に」は、概して、計測の性質又は精度を所与として、計測した量の許容可能な誤差程度を意味するものとする。典型的な例示的誤差程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内である。或いは、特に生体系において、用語「約」及び「近似的に」は、所与の値のオーダー内、好ましくは10倍又は5倍以内、及びより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書に提供される数量は、特に明記しない限り近似であり、つまり、明示的に記載されないときも用語「約」又は「近似的に」が暗示され得る。
【0060】
ファブリー病
ファブリー病は、まれな進行性の重篤なX連鎖性リソソーム蓄積障害(LSD)である。GLA遺伝子の突然変異が、スフィンゴ糖脂質代謝に必要なリソソーム酵素α-Gal Aの欠損を引き起こす。幼児期に始まるα-Gal A活性の低下が、GL-3及び血漿lyso-Gbを含めたスフィンゴ糖脂質の蓄積を引き起こし、疼痛、胃腸症状、腎不全、心筋症、脳血管イベント、及び早期の死亡を含めたファブリー病の症状及び致死的続発症につながる。早期の療法開始及び生涯にわたる治療が、疾患の進行を遅らせ、平均余命を延ばす機会を提供する。
【0061】
ファブリー病は様々な疾患重症度及び発症年齢を包含するが、従来、2つの主要な表現型、「古典型」及び「遅発型」に分けられている。古典型表現型は主に、α-Gal A活性が検出不能乃至低く、且つ腎臓、心臓及び/又は脳血管症状の発症が早い男性のものと見なされている。遅発型表現型は主に、残存α-Gal A活性がより高く、これらの疾患症状の発症がより遅い男性のものと見なされている。ヘテロ接合女性保因者は、典型的には遅発型表現型を発現するが、X染色体不活性化のパターンに応じて古典型表現型もまた呈し得る。
【0062】
ファブリー病の原因となるGLA突然変異は1,000超同定されている。GLA突然変異は、小規模な欠失及び挿入、及びより大規模な遺伝子再構成に加えて、限定はされないが、ミスセンス、ナンセンス、及びスプライシング突然変異を含む。約60%が、α-Gal A酵素に単一アミノ酸置換をもたらすミスセンス突然変異である。ミスセンスGLA突然変異は、多くの場合に、異常に折り畳まれた不安定な形態のα-Gal Aの産生をもたらし、その大部分が古典型表現型に関連している。ERにおける正常な細胞品質管理機構は、これらの異常なタンパク質がリソソームに移動するのを阻止し、それらを早期分解及び除去の標的とする。多くのミスセンス突然変異形態が、α-Gal A特異的薬理学的シャペロンであるミガラスタットの標的である。
【0063】
ファブリー病の臨床症状は幅広い重症度にわたり、患者の残存α-Gal Aレベルとおおよそ相関している。現在治療を受けている患者の大多数は古典型ファブリー患者と称され、そのほとんどが男性である。これらの患者は、腎臓、心臓及び脳を含む様々な器官に疾患を生じ、疾患症状は初め青年期に出現し、典型的には30歳代又は40歳代に死亡するまで重症度が進行する。幾つもの最近の研究から、心機能又は腎機能障害及び脳卒中など、通常は成人期に初めて出現する様々なファブリー病症状を有する診断未確定の男性及び女性が多数いることが示唆される。遅発型ファブリー病と称されるこの種のファブリー病者は、古典型ファブリー患者よりも残存α-Gal Aレベルが高い傾向がある。遅発型ファブリー病者は、典型的には成人期に初めて疾患症状を経験し、左心室の肥大又は進行性腎不全など、単一の器官に集中した疾患症状を有することが多い。加えて、遅発型ファブリー病はまた、原因不明の脳卒中の形でも見られ得る。
【0064】
ファブリー病はまれであり、多くの臓器が関わり、発症年齢の範囲が幅広く、及び不均一であるため、適切な診断は難題である。例えば、ファブリー患者は進行性腎臓機能障害を有し、未治療の患者は40歳代までに末期腎機能障害を呈する。α-Gal A活性の欠損は、腎臓の細胞を含め、多くの細胞型におけるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)及び関連するスフィンゴ糖脂質の蓄積につながる。Gb3は、タコ足細胞、遠位尿細管及びヘンレ係締の上皮細胞及び尿細管細胞に蓄積する。腎機能の機能障害はタンパク尿及び糸球体濾過率の低下として現れ得る。
【0065】
更に、医療専門家の間でも認知度が低く、誤診が頻繁に起こる。ファブリー病の診断は、ほとんどの場合、患者が症状を示した後に、突然変異解析と併せて血漿又は末梢白血球(WBC)におけるα-Gal A活性の低下に基づき確認される。女性では、保因者の一部の細胞におけるランダムなX染色体不活性化に起因して保因者女性の酵素的同定の信頼性が低いため、診断は更に一層難題である。例えば、一部の絶対的保因者(古典型罹患男性の娘)は、正常から極めて低い活性にまで及ぶα-Gal A酵素活性を有する。保因者は白血球では正常なα-Gal A酵素活性を有し得るため、正確な保因者同定及び/又は診断を与えるのは、遺伝子検査によるα-Gal A突然変異の同定のみである。
【0066】
1つ以上の実施形態において、ミガラスタットが適用可能と見なされるα-Gal Aの突然変異形態は、優良試験所基準(GLP)でバリデーションされたインビトロアッセイ(GLP HEK又はミガラスタット適用可能性アッセイ)に従いHEK-293細胞で突然変異形態のα-Gal Aを発現させたとき(「HEKアッセイ」と称される)、野生型(WT)の≧1.20倍の相対的増加(+10μMミガラスタット)及び≧3.0%の絶対的増加(+10μMミガラスタット)を示すものとして定義される。かかる突然変異は、本明細書では「HEKアッセイ適用可能」突然変異とも称される。
【0067】
治療開始前に酵素の増強を判定する先行のスクリーニング方法が提供されている。例えば、HEK-293細胞を使用したアッセイが、所与の突然変異が薬理学的シャペロン(例えばミガラスタット)治療に応答性かどうかを予測するため臨床試験において利用されている。このアッセイでは、cDNAコンストラクトを作成する。HEK-293細胞において対応するα-Gal A突然変異形態を一過性に発現させる。次に細胞を±ミガラスタット(17nM~1mM)で4~5日間インキュベートする。その後、合成蛍光発生基質(4-MU-α-Gal)を使用するか、又はウエスタンブロットにより、細胞ライセート中のα-Gal Aレベルを測定する。これは、疾患を引き起こす公知のミスセンス又は小型インフレーム挿入/欠失突然変異について行われている。これまでにこれらの方法を用いてPC(例えばミガラスタット)に応答性であると同定されている突然変異が、米国特許第8,592,362号明細書(本明細書によって全体として参照により援用される)に列挙されている。
【0068】
薬理学的シャペロン
LSDに関連する酵素の小分子阻害薬の結合は、突然変異酵素及び対応する野生型酵素の両方の安定性を増加させることができる(米国特許第6,274,597号明細書;同第6,583,158号明細書;同第6,589,964号明細書;同第6,599,919号明細書;同第6,916,829号明細書、及び同第7,141,582号明細書を参照のこと、全て参照により本明細書に援用される)。詳細には、幾つかの標的リソソーム酵素の特異的で選択的な競合阻害薬であるグルコース及びガラクトースの小分子誘導体を投与すると、インビトロで細胞内の酵素の安定性が有効に増加し、ひいてはリソソームへの酵素のトラフィッキングが増加した。従って、リソソーム内の酵素量が増加することにより、酵素基質の加水分解が増加するものと予想される。この戦略の背後にあった当初の理論は以下のとおりであった:突然変異酵素タンパク質はERにおいて不安定であるため(Ishii et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812-815)、酵素タンパク質は正常な輸送経路(ER→ゴルジ体→エンドソーム→リソソーム)において遅れ、早まって分解される。従って、突然変異酵素に結合してその安定性を増加させる化合物が酵素の「シャペロン」として働き、ERを出てリソソームに移ることのできる量を増加させ得る。加えて、一部の野生型タンパク質のフォールディング及びトラフィッキングは不完全で、場合によっては一部の野生型タンパク質の最大70%がその最終的な細胞部位に到達する前に分解されるため、シャペロンを野生型酵素の安定化に使用して、ERを出てリソソームに輸送されることのできる酵素の量を増加させることができる。
【0069】
1つ以上の実施形態において、薬理学的シャペロンはミガラスタット又はその塩を含む。1-デオキシガラクトノジリマイシン(1-DGJ)又は(2R,3S,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン(piperdine)-3,4,5-トリオールとしても知られる化合物ミガラスタットは、以下の化学式を有する化合物である:
【化1】
【0070】
本明細書で考察するとおり、ミガラスタットの薬学的に許容可能な塩もまた本発明において使用し得る。ミガラスタットの塩が使用されるとき、塩の投薬量は、ミガラスタット遊離塩基が使用されたならば受け取ったであろう量と等価な用量のミガラスタットを患者が受け取るように調整されることになる。ミガラスタットの薬学的に許容可能な塩の一例は、ミガラスタットHClである:
【化2】
【0071】
ミガラスタットは低分子量イミノ糖であり、GL-3の末端ガラクトースの類似体である。インビトロ及びインビボでの薬理学的研究から、ミガラスタットが薬理学的シャペロンとして働き、野生型α-Gal A及び特異的突然変異形態のα-Gal Aの活性部位に高親和性で選択的且つ可逆的に結合することが実証されており、それらの遺伝子型は、HEKアッセイ適用可能突然変異と称される。ミガラスタットが結合すると、これらの突然変異形態のα-Gal Aが小胞体において安定し、リソソームへのその適切なトラフィッキングが促進され、ミガラスタットが解離することにより、α-Gal AがGL-3及び他の基質レベルを低下させることが可能になる。ファブリー病を有する患者の約30~50%がHEKアッセイ適用可能突然変異を有し;その大半が疾患の古典的表現型に関連する。
【0072】
HEKアッセイ適用可能突然変異としては、薬理学的参照表に列挙した少なくともそれらの突然変異(例えば、GALAFOLD(登録商標)等のミガラスタット製品に対する米国若しくは国際添付文書に列挙されたもの)が挙げられる。本明細書で使用されるとき、「薬理学的参照表」は、ミガラスタット製品(例えば、GALAFOLD(登録商標))の包装内又は医療提供者であればアクセス可能な特定の突然変異又は変異体がミガラスタット(例えば、GALAFOLD(登録商標))PC療法に応答性であるかどうかを伝える、及び表の形式で提示される文書記録に必ずしも限定されないウェブサイト内の添付文書のいずれかに含まれる任意の公的にアクセス可能な文書記録若しくは電子記録を指す。従って、本発明の一実施形態において、「薬理学的参照表」は、1つ以上の適用可能突然変異又は変異体を含む任意の情報の保管場所を指す。HEKアッセイ適用可能突然変異についての例示的な薬理学的参照表は、GALAFOLD(登録商標)が使用のために承認されている様々な国において、又はそれぞれがこれにより全体として参照により組み込まれる、www.galafoldamenabilitytable.com又はwww.fabrygenevariantsearch.com等のウェブサイトでGALAFOLD(登録商標)についての製品特徴及び/又は処方情報の概要において見いだすことができる。
【0073】
a-Gal突然変異の大多数がミスセンス変異であるが、ほとんどが触媒部位の外側に存在し、いずれの突然変異が酵素を安定化する薬理学的シャペロン(PC)であれば「救済」可能である不安定な酵素を生じさせるか、及びいずれがPCを用いて安定化できないかを予測することは困難である。
【0074】
HEKアッセイ適用可能突然変異についての例示的な薬理学的参照表は下の表1に提供される。1つ以上の実施形態では、二重変異が同じ染色体(男性及び女性)に存在する場合、その患者は、二重変異が表1の1つの項目に存在する場合(例えば、D55V/Q57L)にHEKアッセイ適用可能と考えられる。一部の実施形態では、二重変異が異なる染色体(女性のみ)に存在する場合、その患者は、個別の突然変異のいずれか1つが表1に存在する場合にHEKアッセイ適用可能と考えられる。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
【表15】
【0090】
【表16】
【0091】
【表17】
【0092】
【表18】
【0093】
【表19】
【0094】
【表20】
【0095】
【表21】
【0096】
【表22】
【0097】
【表23】
【0098】
【表24】
【0099】
【表25】
【0100】
【表26】
【0101】
【表27】
【0102】
【表28】
【0103】
【表29】
【0104】
【表30】
【0105】
【表31】
【0106】
【表32】
【0107】
【表33】
【0108】
用量設定、製剤化及び投与
1つ以上の実施形態において、ファブリー患者にミガラスタット又はその塩が1日おきに1回(「QOD」とも称される)の頻度で投与される。様々な実施形態において、本明細書に記載される用量は、ミガラスタット塩酸塩又は等価な用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩に関する。一部の実施形態において、これらの用量はミガラスタットの遊離塩基に関する。代替的実施形態において、これらの用量はミガラスタットの塩に関する。更なる実施形態において、ミガラスタットの塩はミガラスタット塩酸塩である。ミガラスタット又はミガラスタットの塩の投与は、本明細書では「ミガラスタット療法」と称される。
【0109】
従って、1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg~約300mg、約15mg~約250mg、約15mg~約200mg、約15mg~約150mg又は約15mg~約123mgの範囲内のミガラスタット又はその塩が、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、1日おきに1回(「QOD」又は「Q48H」とも称される)、4日ごとに1回(「Q4D」又は「Q96H」とも称される)又は7日ごとに1回(「Q7D」又は「Q168H」とも称される)の頻度で投与される。一部の実施形態では、投与間隔は、投与間に48時間を超える任意の投与間隔を含んでもよい。例えば、投与間隔は、72、96、120、144、又は168時間ごとの投与を含んでもよい。
【0110】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg~約300mg、約15mg~約250mg、約15mg~約200mg、約15mg~約150mg、約15mg~約123mg、約15mg~約100mg、約15mg~約50mg、約50mg~約300mg、約50mg~約250mg、約50mg~約200mg、約50mg~約150mg、約50mg~約123mg、約50mg~約100mg、約100mg~約300mg、約100mg~約250mg、約100mg~約200mg、約100mg~約150mg、約100mg~約123mg、約150mg~約300mg、約150mg~約250mg、約150mg~約200mg、約200mg~約300mg、約200mg~約250mg又は約250mg~約300mgの範囲内のミガラスタットFBEが、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0111】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約123mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg又は約300mgのミガラスタットFBEが、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0112】
再び、150mgのミガラスタット塩酸塩が、123mgのミガラスタットの遊離塩基形態に等価であることが注目される。従って、1つ以上の実施形態では、用量は、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される、150mgのミガラスタット塩酸塩又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩である。更なる実施形態では、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される、150mgのミガラスタット塩酸塩である。他の実施形態では、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される、123mgのミガラスタット遊離塩基である。
【0113】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg~約300mg、約15mg~約250mg、約15mg~約200mg、約15mg~約150mg、約15mg~約123mg、約15mg~約100mg、約15mg~約50mg、約50mg~約300mg、約50mg~約250mg、約50mg~約200mg、約50mg~約150mg、約50mg~約123mg、約50mg~約100mg、約100mg~約300mg、約100mg~約250mg、約100mg~約200mg、約100mg~約150mg、約100mg~約123mg、約150mg~約300mg、約150mg~約250mg、約150mg~約200mg、約200mg~約300mg、約200mg~約250mg又は約250mg~約300mgの範囲内のミガラスタット塩酸塩が、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0114】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約42mg、約45mg、約50mg、約55mg、約57mg、約60mg、約65mg、約67mg、約70mg、約75mg、約77mg、約79mg、約80mg、約85mg、約90mg、約94mg、約95mg、約97mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約128mg、約130mg、約135mg、約140mg、約144mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg又は約300mgのミガラスタット塩酸塩が、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0115】
一部の実施形態では、患者は、約10kg~約≧50kg、約10kg~約≦50kg、約10kg~約≦45kg、約10kg~約≦40kg、約10kg~約≦35kg、約10kg~約≦30kg、約10kg~約≦25kg、約10kg~約≦20kg、約10kg~約≦15kg、約15kg~約≧50kg、約15kg~約≦50kg、約15kg~約≦45kg、約15kg~約≦40kg、約15kg~約≦35kg、約15kg~約≦30kg、約15kg~約≦25kg、約20kg~約≧50kg、約20kg~約≦50kg、約20kg~約≦45kg、約20kg~約≦40kg、約20kg~約≦35kg、約20kg~約≦30kg、約20kg~約≦25kg、約25kg~約≧50kg、約25kg~約≦50kg、約25kg~約≦45kg、約25kg~約≦40kg、約25kg~約≦35kg、約25kg~約≦30kg、約30kg~約≧50kg、約30kg~約≦50kg、約30kg~約≦45kg、約30kg~約≦40kg、約30kg~約≦35kg、約35kg~約≧50kg、約35kg~約≦50kg、約35kg~約≦45kg、約35kg~約≦40kg、約40kg~約≧50kg、約40kg~約≦50kg、約40kg~約≦45kg、約45kg~約≧50kg又は約45kg~約≦50kgの範囲内の体重である。
【0116】
本発明に従うミガラスタット又はその塩の投与は、任意の投与経路に適した製剤であってもよいが、好ましくは、錠剤、カプセル剤又は溶液等の経口剤形で投与される。例えば、患者は、それぞれが25mg、40mg、50mg、60mg、75mg、80mg、100mg又は150mgのミガラスタット塩酸塩(即ち、1-デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩)又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩を含有する、経口投与されるカプセル剤である。別の例では、患者は、それぞれが150mgのミガラスタット塩酸塩又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩を含有する、経口投与されるカプセル剤である。
【0117】
様々な実施形態では、本明細書に記載の用量は、ミガラスタット塩酸塩又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩に関連する。一部の実施形態では、これらの用量は、ミガラスタットの遊離塩基に関連する。代替的な実施形態では、これらの用量は、ミガラスタットの塩に関連する。更なる実施形態では、ミガラスタットの塩は、ミガラスタット塩酸塩である。ミガラスタット又はミガラスタットの塩の投与は、本明細書では「ミガラスタット療法」と称される。
【0118】
ミガラスタット又はその塩の投与は、特定期間にわたってもよい。1つ以上の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、少なくとも28日、例えば少なくとも30、60若しくは90日又は少なくとも4、6、8、12、16、26若しくは52週又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24、30若しくは36か月又は少なくとも1、2、3、4若しくは5年の継続期間にわたって投与される。一部の実施形態では、ミガラスタット療法は、少なくとも約4週間である。様々な実施形態では、ミガラスタット療法は、少なくとも約2、3、4又は5年の長期ミガラスタット療法である。
【0119】
一部の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は経口投与される。1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は注射によって投与される。PCは薬学的に許容可能な担体を伴うこともあり、これは投与方法に依存し得る。
【0120】
1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は単剤療法として投与され、例えば、錠剤又はカプセル又は液体の形態で経口的に、又は注射用に滅菌水溶液でなど、任意の投与経路に好適な形態であり得る。他の実施形態において、PCは、投与前にインビトロで酵素凝集を防ぐため再構成中又は再構成直後に補充酵素の製剤に加えられる凍結乾燥粉末で提供される。
【0121】
PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)が経口投与用に製剤化される場合、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に従来手段によって錠剤又はカプセルが調製されてもよい。錠剤は当該技術分野において周知の方法によってコーティングされてもよい。経口投与用の液体調合物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとってもよく、又は使用前に水又は別の好適な媒体で構成するための乾燥製剤として調製されてもよい。かかる液体調合物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性媒体(例えば、扁桃油、油性エステル類、エチルアルコール又は分画植物油);及び保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤と共に従来手段によって調製されてもよい。調合物はまた、緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤も適宜含有し得る。経口投与用の調合物は、活性シャペロン化合物の制御放出をもたらすように好適に製剤化されてもよい。
【0122】
非経口/注射使用に好適なPC(例えば、ミガラスタット又はその塩)の医薬製剤としては、概して、滅菌水溶液(水溶性の場合)、又は滅菌注射用溶液若しくは分散液の即時調製用の分散液及び滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合にも、形態は無菌でなければならず、及び易注射針通過性が存在する程度の流動性がなければならない。これは製造及び保管条件下で安定していなければならず、且つ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含めることが妥当となり得る。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することにより、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0123】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に必要な量の精製酵素(存在する場合)及びPC(例えば、ミガラスタット又はその塩)を、必要に応じて上記に列挙される種々の他の成分と共に配合し、続いてろ過又は最終滅菌することにより調製される。概して、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙されるものからの他の必要な成分を含有する滅菌媒体中に様々な滅菌活性成分を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+任意の追加的な所望の成分の粉末を予め滅菌ろ過されたその溶液から生じさせる真空乾燥法及び凍結乾燥法である。
【0124】
製剤は賦形剤を含有し得る。製剤に含まれ得る薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝液、例えば、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール類、アスコルビン酸、及びリン脂質;血清アルブミン、コラーゲン、及びゼラチンなどのタンパク質;EDTA又はEGTAなどの塩、及び塩化ナトリウム;リポソーム;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidone);デキストラン、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールなどの糖類;プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000、PEG-6000);グリセロール;グリシン又は他のアミノ酸;及び脂質である。製剤と使用する緩衝液系としては、クエン酸塩;酢酸塩;重炭酸塩;及びリン酸塩緩衝液が挙げられる。リン酸塩緩衝液が好ましい実施形態である。
【0125】
シャペロン化合物の投与経路は、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、頬側、直腸、腟内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、脳室内、髄腔内、大槽内、嚢内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、又は吸入によることを含め、経口又は非経口であってよい。
【0126】
上述の非経口製剤のシャペロン化合物の投与は、調合物のボーラスの定期的注射によってもよく、又は外部(例えば、点滴静注バッグ)若しくは内部(例えば、生体内分解性インプラント)のリザーバからの静脈内若しくは腹腔内投与によって投与されてもよい。
【0127】
医薬製剤及び投与に関する実施形態は、本発明の他の実施形態のいずれかと、例えばファブリー病を有する患者を治療する方法、ERTナイーブなファブリー患者を治療する方法、ERTを経験したファブリー患者を治療する方法、CBV事象のリスクを低減する方法、複合臨床アウトカムのリスクを低減する方法、患者又は患者の集団の症状又は転帰を評価する方法、治療法を評価する方法、ファブリー病と診断されたか、又はそれを有する疑いのある患者においてα-Gal Aを増強する方法、ファブリー病と診断された患者を治療するための薬剤の製造におけるα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンの使用又はファブリー病と診断された患者の治療において使用するためのα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンに関する実施形態、並びに適用可能突然変異、PC及びそれらの好適な用量に関する実施形態と組み合わされてもよい。
【0128】
1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)はERTと併用して投与される。ERTは、野生型酵素又は生物学的に機能性の酵素を注入によって外因的に導入することによりタンパク質の量を増加させる。この療法は、上述のとおり、ファブリー病などのLSDを含めた多くの遺伝的障害向けに開発された。注入後、外因性酵素は非特異的又は受容体特異的機構を介して組織により取り込まれるものと想定される。一般に、取込み効率は高くなく、外因性タンパク質の循環時間は短い。加えて、外因性タンパク質は不安定で、急速な細胞内分解を受けるとともに、続く治療との有害な免疫反応の可能性もある。1つ以上の実施形態において、シャペロンは補充酵素(例えば、補充α-Gal A)と同時に投与される。一部の実施形態において、シャペロンは補充酵素(例えば、補充α-Gal A)と共に製剤化される。
【0129】
1つ以上の実施形態では、患者は、ERTからミガラスタット療法に切り替えられる。一部の実施形態では、ERTに対する患者が同定され、患者のERTが中断され、患者は、ミガラスタット療法を受け始める。ミガラスタット療法は、本明細書に記載の方法のいずれかに従い得る。様々な実施形態では、患者は、幾つかの程度の腎臓機能障害、例えば軽度、中等度又は重度の腎臓機能障害を有する。
【0130】
ミガラスタットの投与
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、成人患者に投与される。一部の実施形態では、成人患者の年齢は、≧18歳である。一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、青年患者に投与される。一部の実施形態では、青年患者の年齢は、12歳~<18歳、13歳~<18歳、14歳~<18歳、15歳~<18歳、16歳~<18歳、17歳~<18歳、12歳~≦17歳、13歳~≦17歳、14歳~≦17歳、15歳~≦17歳、16歳~≦17歳、12歳~≦16歳、13歳~≦16歳、14歳~≦16歳、15歳~≦16歳、12歳~≦15歳、13歳~≦15歳、14歳~≦15歳、12歳~≦14歳、13歳~≦14歳、又は12歳~≦13歳の範囲内である。
【0131】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、<15kg~≧45kg、15kg~<25kg、25kg~<35kg、又は35kg~<45kgの範囲の体重を有する患者に投与される。一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、体重<15kgを有する患者に投与される。一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、体重≧45kgを有する患者に投与される。
【0132】
一部の実施形態において、約25mgのミガラスタット又はその塩が、体重<15kgの患者に投与される。一部の実施形態において、約50mgのミガラスタット又はその塩が、体重15kg~<25kgの範囲の患者に投与される。一部の実施形態において、約75mgのミガラスタット又はその塩が、体重25kg~<35kgの範囲の患者に投与される。一部の実施形態において、約75mgのミガラスタット又はその塩が、体重35kg~<50kgの範囲の患者に投与される。
【0133】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、第1の頻度で第1の期間にわたって投与され、次に第2の頻度で第2の期間にわたって投与される。第1の頻度は、第2の頻度より大きい(即ち、より頻繁である)。第1の頻度及び第2の頻度は、本明細書で開示される任意の投与間隔であってもよい。一部の実施形態では、第1の頻度は、1日おきであり、且つ第2の頻度は、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと又は7日ごとである。一部の実施形態では、第1の頻度は、4日ごとであり、且つ第2の頻度は、5日ごと、6日ごと、又は7日ごとである。
【0134】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、第1の頻度で第1の期間にわたって投与され、次に第2の頻度で第2の期間にわたって投与され、次に第3の頻度で第3の期間にわたって投与される。第1の頻度は、第2の頻度より大きい(即ち、より頻繁であり)、且つ第2の頻度は、第3の頻度より大きい。例えば、一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、1日おきに1回の第1の頻度で第1の期間にわたって投与され、次にミガラスタット又はその塩は、4日ごとに1回の第2の頻度で第2の期間にわたって投与され、次にミガラスタット又はその塩は、7日ごとに1回の第3の頻度で第3の期間にわたって投与される。
【0135】
Lyso-Gb3及びミガラスタットレベルの監視
Lyso-Gb3(グロボトリアオシルスフィンゴシン)を監視し、基質がファブリー患者の身体から除去されているかどうかを判定することができる。より高レベルのlyso-Gb3は、より高レベルの基質と相関する。患者の治療が成功している場合、lyso-Gb3レベルは低下することが予想される。ファブリー病についての1つの投与計画は、約20mg~約300mgFBEのミガラスタット又はその塩を、1日おきに1回の頻度で患者に投与することである。
【0136】
一部の実施形態では、該方法は、ミガラスタットレベルを測定することを更に含む。1つ以上の実施形態では、ミガラスタット濃度(例えば、ng/mL)が測定される。一部の実施形態では、全曲線下面積(AUC0-∞)が測定される。1つ以上の実施形態では、ミガラスタットが次回投与前に達する最低濃度(Ctrough)が測定される。
【0137】
ミガラスタットレベルは、当該技術分野で公知の方法を介して測定することができる。例えば、組織サンプルからミガラスタットを測定する場合、組織アリコートは、ホモジナイザー(例えば、MP Biomedical,Irvine,CA製のFastPrep-24)を用いて均質化されてもよい(1mgの組織あたり7μLの水)。次に、100μlの組織ホモジネート又は50μlの血漿を含むマイクロ遠心チューブに、500ng/mLの13C d2-AT1001 HCl内部標準(MDS Pharma Services製)が添加されてもよい。次に、95/5のMeOH:HOにおける体積600μlの5mM HClが添加され、チューブが2分間ボルテックスされ、その後、室温、21000×gで10分間かけて遠心分離され得る。次に、上清は、透明な96ウェルプレートに収集され、dHO中の5mM HClで希釈され、96ウェルの固相抽出(SPE)プレート(Waters Corp.,Milford MA)に適用されてもよい。数回の洗浄ステップ及び透明な96ウェルプレートへの溶出後、抽出物はN下でドライダウンされ、移動相Aで再構成されてもよい。次に、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)(例えば、LC:島津製作所;MS/MS:ABSciex API 5500 MS/MS)によって、ミガラスタットレベルを測定することができる。液体クロマトグラフィーは、Halo HILICカラム(150×4.6mm、2.7μm)(Advanced Materials Technology,Inc.)上、0.7mL/分の流速で、ACN:水:ギ酸塩の二成分移動相系(移動相A:5mMのギ酸アンモニウム、0.5%ギ酸、95:5のACN:水;移動相B:5mMのギ酸アンモニウム、0.5%ギ酸、5:47.5:47.5のACN:MeOH:水)を用いて実施することができる。MS/MS分析は、APCi正イオンモード下で実施されてもよい。血漿中のミガラスタット測定の場合、均質化を伴わない場合を除き、同じ手順に従ってもよい。以下の前駆体イオン→生成物イオンへの遷移が監視されてもよく、ミガラスタットの場合、質量/電荷(m/z)164.1→m/z 80.1であり、内部標準の場合、m/z 167.1→m/z 83.1である。12点較正曲線及び品質管理サンプルが調製されてもよい。次に、ミガラスタットの曲線下面積の内部標準の場合に対する比が決定され、各サンプル中のミガラスタットの最終濃度が、較正曲線に適用される線形最小二乗近似式(linear least squares fit equation)を用いて計算される。およそのモル濃度を導き出すため、1gの組織が1mLの体積として評価されてもよい。
【0138】
一部の実施形態では、サンプルは、投与から0、1、2、3、4、6、8、12、24、48、72、96、120、144及び/又は168時間後、採取されてもよい。一部の実施形態では、投与から48時間後のミガラスタット濃度が測定される。一部の実施形態では、第2の期間の投与は、約5、10、15、20、25、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175又は200ng/mLを超えるミガラスタットがミガラスタットの第1の期間中の投与が測定されてから48時間後に測定された後、開始される。
【0139】
一部の実施形態では、Lyso-Gb3は、当該技術分野で公知の方法を介し、検証されたアッセイを用いて測定することができる。ミガラスタットの場合と同様、lyso-Gb3レベルは、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)(例えば、LC:島津製作所;MS/MS:ABSciex API 5500 MS/MS)を用いて測定されてもよい。例えば、血漿lyso-Gb3を測定する1つのプロセスは、Hamler,Rick,et al.“Accurate quantitation of plasma globotriaosylsphingosine(lyso-Gb3)in normal individuals and Fabry disease patients by liquid chromatography-tandem mass spectrometry(LC-MS/MS).”Molecular Genetics and Metabolism,Volume 114.2(2015):S51に記載されている。1つ以上の実施形態では、lyso-Gb3は、患者の尿からのサンプル中で測定される。
【0140】
用量調節
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩の投与頻度は、患者のeGFRの変化に応答して調節される。例示的な実施形態では、患者のeGFRが60mL/分/1.73m未満、45mL/分/1.73m未満、30mL/分/1.73m未満又は15mL/分/1.73m未満に低下するとき、投与頻度を低減することができる。一部の実施形態では、患者のeGFRが60mL/分/1.73m未満、45mL/分/1.73m未満、30mL/分/1.73m未満又は15mL/分/1.73m未満に低下するとき、患者にミガラスタット又はその塩が投与されない。
【0141】
ミガラスタット濃度は、様々な時点で血漿サンプルから測定し、身体からのクリアランスを監視することができる。Ctroughの臨床的に関連する増加は、血漿ミガラスタット濃度の有意な蓄積を示唆する。ミガラスタットが次の用量投与前に身体から十分に除去されない場合、ミガラスタットのレベルは蓄積し、おそらくは阻害効果を引き起こし得る。従って、1つ以上の実施形態では、正常な腎機能のCtroughと比較して、Ctroughにおける1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0倍の増加後、投与頻度の変更がなされる。
【0142】
1つ以上の実施形態では、正常な腎機能のAUC0-∞と比較して、AUC0-∞における1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0倍の増加後、投与頻度の変更がなされる。
【0143】
一部の実施形態では、該方法は、患者からの1つ以上の血漿サンプル中のlyso-Gb3を測定することを更に含む。第1のベースラインlyso-Gb3レベルは、第1の期間中に測定されてもよい。本明細書で使用されるとき、「ベースラインlyso-Gb3レベル」は、所与の期間又は投与計画の間に測定される最低血漿lyso-Gb3値を指す。従って、lyso-Gb3レベルがベースラインlyso-Gb3レベルから有意に増加する場合、これは腎疾患の進行及び/又はミガラスタットの不適当な排除を示し得る。従って、更なる実施形態では、第2の期間の投与は、第1のベースラインlyso-Gb3レベルを超える(例えば、少なくとも約20、25、30、33、35、40、45若しくは50%及び/又は1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5若しくは3nMの)増加が測定された後、開始される。血漿lyso-Gb3におけるベースラインからの33%及び/又は2nMの増加は、腎機能の低下及び/又は病状の進行からのいずれかの阻害誘導性のミガラスタット曝露をシグナル伝達するファブリー患者における第3相データに基づき、臨床的に関連するとみなされている。Lyso-Gb3レベルは、様々な頻度で(例えば、2、3、4又は5か月ごとに約1回)測定されてもよい。ベースラインlyso-Gb3レベルが一旦投与計画が開始されてから確立されるのに約3か月かかると考えられる。
【0144】
一部の実施形態では、第2の期間の投与は、少なくとも約30%若しくは33%及び/又は2nM及び/又は約50ng/mL超のミガラスタットである第1のベースラインlyso-Gb3レベルを上回る増加が、第1の期間中のミガラスタットの投与が測定されてから48時間後に測定された後、開始してもよい。一部の実施形態では、第2の期間の投与は、少なくとも約30%若しくは33%及び/又は2nM及び/又は約50ng/mL超のミガラスタットである第1のベースラインlyso-Gb3レベルを上回る増加が、第1の期間中のミガラスタットの投与が測定されてから48時間後に測定された後、又はAUC0-∞及び/若しくはCtroughにおいて第1の期間中の正常な腎機能と比較して1.5倍より大きい増加が認められた後、開始してもよい。
【実施例
【0145】
実施例1:ERTを経験した及びERTナイーブなファブリー病患者のミガラスタット塩酸塩を使用した治療についての投与計画
本実施例は、ERTを経験した及びERTナイーブなファブリー病患者におけるミガラスタット療法の第2相及び第3相試験について記載する。
【0146】
試験デザイン
これらの分析には、以下の図X1に示すとおりの2017年2月10日をデータカットオフ日とした4件の第2相及び4件の第3相臨床試験のデータが含まれた。
【0147】
FAB-CL-202(NCT00283959)、FAB-CL-203(NCT00283933)、及びFAB-CL-204(NCT00304512)は、ファブリー病患者におけるミガラスタット(用量範囲:50~250mg)の安全性、忍容性、薬物動態(PK)、及び薬力学(PD)を評価する第2相非盲検非対照試験であった。
【0148】
FAB-CL-205(NCT0052607)は、FAB-CL-202、FAB-CL-203、及びFAB-CL-204を含む第2相臨床試験を完了した患者についての第2相長期非盲検延長(OLE)試験であった。この試験には、ミガラスタット150mg、1日おき(QOD)の期間、次に用量漸増期間、続いて150mg QODが含まれた。
【0149】
FACETS(AT1001-011、NCT00925301)は、ファブリー病及びミガラスタット適用可能なGLA変異体を有するERTナイーブな患者におけるプラセボと比べた6ヵ月間のミガラスタット150mg QODの有効性、安全性、及びPDを評価するようにデザインされた第3相プラセボ対照試験と、続くミガラスタットの18ヵ月間非盲検延長(OLE)であった。
【0150】
ATTRACT(AT1001-012、NCT01218659)は、ミガラスタット適用可能なGLA変異体を有するERT治療を受けた患者におけるERTと比べた18ヵ月ミガラスタット150mg QODの有効性及び安全性を比較する第3相非盲検実薬対照試験と、続くミガラスタットの12ヵ月間OLEであった。
【0151】
AT1001-041(NCT01458119)は、FAB-CL-205、AT1001-011、又はAT1001-012を完了した患者におけるミガラスタットの長期安全性及び有効性を評価する長期OLE試験であった。
【0152】
AT1001-042(NCT02194985)は、AT1001-012又はAT1001-041に参加した患者におけるミガラスタットの長期安全性及び有効性を評価する進行中の長期OLE試験である。
【0153】
分析
分析では、第2相及び第3相臨床試験において適用可能突然変異を有する患者のミガラスタット150mg QOD治療の間に、治療中に発生した有害事象(TEAE)として報告されたCBVイベントを評価する。
【0154】
CBVイベントは、病歴及びTEAE一覧を、脳幹虚血、脳梗塞、脳出血、脳虚血、脳血管発作、塞栓性脳卒中、及びTIAを含めた脳卒中関連の用語について検索することにより同定した。
【0155】
この分析には、少なくとも1用量のミガラスタット150mg QODを受けた適用可能な患者のみを組み入れた。
【0156】
適用可能性は、優良試験所基準(GLP)でバリデートされたインビトロミガラスタット適用可能性アッセイの結果に基づいた。
【0157】
【表34】
【0158】
結果
ミガラスタット150mg QOD総曝露量
ミガラスタット150mg QODへの総曝露期間平均値(SD)は4.0(2.0)年であった(N=114)。
【0159】
ミガラスタット150mg QODへの曝露期間は0.1~8.3年の範囲であり、中央値は4.4年であった。
【0160】
人口統計学的情報及びベースライン特性
少なくとも1用量のミガラスタット150mg QODの投与を受けた適用可能な患者全ての年齢平均値(SD)は、46.2(13.1)歳(範囲:16~72歳)であった(表2)。大多数が白人であり、57.0%が女性であった。ファブリー病の診断後経過した時間の平均値(SD)は、9.8(10.1)年(範囲:1~44年)であった。
【0161】
【表35】
【0162】
CBVイベントの病歴
114例中16例の患者(14%)は、ミガラスタット治療前にCBVイベントを起こしたことがあった(表3)。試験AT1001-012の1例の患者は、病歴に2回のCBVイベントが報告されていた。
【0163】
16例中5例の患者では、病歴に報告されるとおり、CBVイベントは試験登録時に目下認められる病態と考えられた。AT1001-011の1例の患者は進行中の脳虚血を有した;別の患者は進行中の脳幹梗塞を有した。AT1001-012の2例の患者は進行中のTIAを有し、1例は進行中の脳血管発作、具体的には左中大脳動脈脳卒中を有した
【0164】
最初にCBVイベントがあった時点での年齢平均値(SD)は、43.6(14.4)歳であった。
【0165】
【表36】
【0166】
ミガラスタット150mg QOD治療の間におけるCBVイベントの発生率
ミガラスタット150mg QODによる治療中、8例の患者(7%)に11件のCBVイベントが報告された(表4)。7件のCBVイベントは重篤有害事象(SAE)に分類されたが;しかしながら、ほとんど(82%)のイベントの重症度は軽度又は中等度であった(表5)。2件のCBVイベントは、治療中止につながった(表5)。11件のCBVイベントの中で、治療に関連すると考えられるものはなかった
【0167】
8例中6例の患者が、ミガラスタット治療を受ける前にCBVを起こしたことがあった;従って、ミガラスタット服用中に初めてCBVイベントを有したのは、114例中2例(2%)の患者のみであった(表5)。ミガラスタット治療中の最初のイベント時の患者の年齢平均値(SD)は50.6(14.6)歳であった(表5)。最初のイベント発生時のミガラスタット150mg QOD服用期間平均値(SD)は、1.1(1.1)年であった。
【0168】
ミガラスタット前にCBVイベントがあった16例の患者中10例(63%)については、ミガラスタット治療中に新規のCBVイベントは起こらなかった。
【0169】
【表37】
【0170】
【表38】
【0171】
【表39】
【0172】
上掲の表を見ると分かるとおり、ミガラスタット治療中のCBVイベントの全体的な発生率は低かった。平均4年のミガラスタット継続中、114例中8例(7%)の患者にCBVイベントが起こり、主にCBVイベント歴のある患者に発生した。
【0173】
実施例2:青年におけるPK/PDパラメータのシミュレーション
PK/PDモデル化
健康成人ボランティア及び経口ミガラスタット投与後の成人ファブリー病患者から以前開発された母集団薬物動態(popPK)モデル。25mg~675mgの範囲の用量及び絶食条件下でのレジメンを使用して成人に経口投与したAT1001の第I、II、及びIII相試験からのプール後血漿濃度-時間データ。AT1001試験に基づいて下された結論には、以下が含まれる:
・線形時間依存的吸収の2コンパートメント母集団薬物動態モデルが、経口投与後の血漿中におけるミガラスタットの薬物動態を特徴付ける。
・腎機能は、ミガラスタット曝露量のばらつきの最も重要な決定因子であり、30~120mL/分/1.73mのeGFR値に対して平均3倍の幅が生じる。
・対象の体重は、ミガラスタット曝露量のばらつきの2番目に大きい決定因子であり、50~170kgの体重に対して平均2倍未満の差がある。
・成人についての用量の理論的根拠(123mg、1日おき(QOD))は、4件の第II相試験における幾つかの用量レベル及びレジメン(50、150、及び250mg QOD;50mg、1日1回;25、100、及び250mg、1日2回;及び250及び500mg×3日及び休薬4日)の評価によって裏付けられた。
・本母集団PKモデルは、成人に適切と見なされた;しかしながら、これは標準的な指数(例えばCLT/Fについて0.75)を用いるアロメトリックな成分がないため、小児予測には実現可能性が低い。このように、この成人母集団PKモデルを2~<6、6~<12及び12~<18歳の小児年齢サブ集団についてのミガラスタットPKの外挿が可能なものとするには、幾らかの調整が必要である。
・ミガラスタットの母集団PKモデルによれば、ベースライン時の対象の体重(WT)及び/又は腎機能(推算糸球体濾過率、eGFR)が、見かけの経口血漿クリアランス(CLT/F)及び見かけの中心コンパートメントの経口分布容積(V/F)に有意な影響を与えることが示された。対照的に、性別、年齢、薬物製剤化(溶液又は懸濁液対25mgカプセル剤対150mgカプセル剤)などの他の共変量は、統計的/臨床的に有意でなかった。腎機能は出生時から徐々に増加し、生後2年までに成人レベルに達するため(Rubin 1949)、2歳以上の小児集団において成人と比べてeGFRの年齢依存的変化はないものと予想される。加えて、ファブリー病の小児患者は、通常、正常な腎機能を有するか、又は腎過剰ろ過を呈し得る(Hopkin 2008);従って、小児ファブリー病患者のシミュレーションには、小児が正常な腎機能を有すると仮定して、体重換算の投与レジメンを計画した。
【0174】
NONMEMプログラムを使用して、相互作用法による一次条件付き推定法(FOCE-I)を用いて成人におけるミガラスタットの母集団PKモデルを開発した。シミュレーションはNONMEMを用いて行い、血漿濃度-時間を入手した;グラフ分析は全て、Rを用いて実施した;ノンコンパートメント解析及び薬物動態パラメータの要約は、Phoenix WinNonlinを用いて行った。ブートストラッピング及び視覚的事後予測性能評価(visual predictive check:VPC)は、popEDのPerl-speaks-NONMEM(PsN)Rパッケージを用いて行い、最適サンプリング戦略でmrgsolveを使用した。
【0175】
母集団PKモデルは、吸収モデルを再検討すること、CLT/F及びQ/Fに0.75に等しいアロメトリック指数で、並びにV/F及びV/Fに1.0に等しいアロメトリック指数でアロメトリックスケーリング成分を加えること、及びアロメトリック指数がCLT/F全体にかかるべきか、それとも非腎クリアランスのみにかかるべきかを評価することのうちの1つ以上によって最適化した。
【0176】
種々の吸収モデルの中から、条件付き重み付き残差(CWRES)の経時的プロットが実質的に改良され、プロファイル全体にわたる偏り及び変動がはるかに小さくなったことが理由で、元の線形時間依存的吸収モデルを選択した。時間と共に変化するKモデルによれば、Kが連続的に増加することが可能になるため、時間依存的吸収係数Kの上限を投与後24時間に設定して、シミュレーション/予測に妥当なK値を提供した;選んだモデルとは無関係に、薬物は7~10時間以内に相当量が完全に吸収されると考えられるため、これは元のモデルに対する最小限の変更と考えられた。
【0177】
モデル開発の全体的な目的は、小児外挿用のモデルを考え出すことであった。0.75(CL及びQについて)、及び1(V2及びV3について)の理論的冪乗モデル指数を適用し、評価した。診断プロットによれば、アロメトリックスケーリングが<70kgの者にのみ適切であることが示唆された。
【0178】
CLT/F、Q/F、V2/F及びV3/Fの最終的な式は、以下のとおり提示された:
・WT≦70のときWTCO=WT/70;WT>70のときWTCO=1、ここでWTCOは、体重≦70kgの対象についてはアロメトリックスケーリングでのアロメトリック重み係数であった。
・CL/F=tvCL×(RF)CLEGFR×WTCO0.75×(1+CLHVT)1-FBRY×exp(CL/F上のIIVのETA)
・V/F=tvV×WTCO×(1+VHVT)1-FBRY×exp(V/F上のIIVのETA)
・Q/F=TVQ×WTCO0.75及びV/F=TVV3×WTCO、式中、TVQ及びTVV3は、それぞれQ/F又はV/Fの典型的な値であった。
【0179】
2歳以上の小児患者と成人との間で腎機能が同等であることを考えて、非腎クリアランス成分のみにアロメトリック指数を適用するようにモデルを修正した。このモデルは収束に成功し、それによれば、非腎クリアランスで説明されるのはCLT/Fのごく僅かな一部であることが示唆された;従って、このごく僅かな非腎クリアランスに適用されるアロメトリックスケーリングは、CL/F全体にあまり大きな影響を与えなかった。診断プロットからはまた、<70kgの対象についてCL/F全体にアロメトリック指数を適用する方が、それを非腎クリアランスに適用するより良いことも示唆された。その上、非腎モデルから外挿される小児CL/F値は、CL/F全体による手法よりも高かったため、成人と等価な曝露量を実現するための小児用量は高くなり、これはあまり保守的でない手法であった。従って、CL/F全体のスケーリング手法の方がより保守的であり、最終的なモデルに選択した。これを表6に示す。
【0180】
【表40】
【0181】
【表41】
【0182】
ブートストラップからの推定パラメータ(表6を参照)は、元のデータセットからの推定とほぼ同一であった。パラメータは全て、十分な精度で推定された。NONMEM推定値(これは、各パラメータが正規分布をとると仮定する)は、ノンパラメトリックブートストラップ推定値(これは、各パラメータが正規分布をとると仮定しない)とほぼ同一であった。
【0183】
成人集団について、モデル性能の比較を行った。150mgのミガラスタット塩QOD用量投与後の模擬成人データセットを使用してシミュレーションを実施し、モデルパラメータ並びに定常状態AUCtau及びCmaxの両方を比較した。表7に示す結果は、元のモデルと最適化した/更新したモデルとの間で同等であったことから、モデル性能が良好であることが指摘される。
【0184】
【表42】
【0185】
次に臨床試験シミュレーションを行い、初期の様々な体重換算投与計画(約3mg/kg用量に相当)を受けた小児患者における曝露量を予測した。シミュレーションに使用した投与計画を表8に掲載する。
【0186】
【表43】
【0187】
用量は、150mgのミガラスタット塩の1日おき(QOD)の投与を受ける正常な腎機能の成人と同様の定常状態AUCtau(及びCmax又はCminでない)を小児サブ群で実現することを目標とした。
【0188】
小児シミュレーションでは、以下を仮定した:(1)3群のファブリー病小児群(2~<6、6~<12及び12~<18歳)及び1群の成人群(腎機能が正常なファブリー病)を含む4群について各群100例の対象、各群50%男性及び50%女性と仮定する;(2)全ての小児(及び成人)が正常な腎機能を有した;(3)小児対象の年齢は、各群の年齢制限の範囲内での一様分布から標本抽出した;(4)小児対象の体重は、5.08歳未満の対象については各年齢の世界保健機関(WHO)の体重一覧表、及び5.08~17.99歳の対象については疾病管理予防センター(CDC)の体重一覧表を使用して正規分布から標本抽出した;及び(5)成人群の体重は、確率的正規分布から標本抽出した(平均値=75、標準偏差(SD)=15)。
【0189】
表9に示すシミュレーションの結果から、Cmax値が群間で同等であった一方、AUCtau(0~48時間)は2~<6歳の年齢群で約25%低く(5570対7580h・ng/ml)、6~<12歳の年齢群で約10%低い(6850対7580h・ng/ml)ことが示された。
【0190】
【表44】
【0191】
模擬データに関する5kg刻みの体重幅での分析を適用した。これを表10に示す。150mg QOD用量を投与した正常な腎機能の成人群のAUCtau幾何平均値を目標として使用して(7580h・ng/ml)、各体重群の対象について、式1:
用量adj,i=用量org,i×AUCtau,a/AUCtau,i 式1
(式中、用量adj,iは、成人と等価なAUC曝露量を実現するための各体重群の調整後の用量であり、用量org,iは、各体重群に使用した元の用量であり、AUCtau,aは、7580h・ng/mlの成人群幾何平均値であり、及びAUCtau,iは、各体重群の幾何平均値である)により用量比例性を考慮して用量調整を実施した。加えて、調整後の用量は、最も近い実際的な用量レベルに丸めて、製剤調製における単純さを確保した。
【0192】
【表45】
【0193】
小児群についての得られた調整後の用量投与スキームを表11に要約する。
【0194】
【表46】
【0195】
用量調整分析及び新たに改訂された用量投与スキームに基づき、3群の小児群(年齢2~<6、6~<12及び12~<18歳の小児群)について、他の全ての仮定及び設定は変更せずに再びシミュレーションを実行した。この結果を表12に示す。
【0196】
【表47】
【0197】
150mgミガラスタットHCLカプセル剤q.o.d.の投与を受ける体重≧45kgの成人及び青年における母集団PKデータを表13に提示する。
【0198】
【表48】
【0199】
ANOVA分析の結果を表14に提示する。
【0200】
【表49】
【0201】
限られた薬物動態データが、体重≧45kgの青年における150mgミガラスタットHCLカプセル剤Q.O.D.用量を裏付けている。
【0202】
実施例3:青年に対するPK/PDモデルバリデーション
本例は、ファブリー病及び適用可能なGLA変異体を有する小児対象(年齢12~<18歳)におけるミガラスタットの安全性、薬物動態、及び薬力学の非盲検試験であるAT1001-020試験について記載する。
【0203】
本開示には、カットオフ日時点で利用可能なステージ1血漿濃度-時間データを有した12~<16歳の年齢群のファブリー病を有する対象のみについてのステージ1(1ヵ月)安全性及びPKデータの結果を提示する中間臨床試験データの分析が含まれる。
【0204】
目的
ステージ1の目的は、ファブリー病を患う青年におけるミガラスタットのPKを特徴付けること、及び1日おきに1回(QOD)投与される123mgミガラスタットカプセル剤について、体重≧45kgの青年に対する成人のミガラスタット血漿曝露量からの外挿をバリデートすることである。
【0205】
別のステージ1の目的は、ファブリー病を患う小児対象であって、ミガラスタットによる治療を適用可能なα-GalA(GLA)をコードする遺伝子の変異を有する対象におけるミガラスタット治療の安全性を評価することである。
【0206】
アウトカム/評価項目
薬物動態評価項目は、以下のとおりであった:
・小児対象における体重及び年齢とミガラスタット薬物動態との間の関係を記述する母集団PKモデル(一次PKパラメータ出力を以下の文に一覧として示す)。
・定常状態濃度での複数回用量投与後のミガラスタットについての模擬血漿-濃度データに基づくPKパラメータ
・Cmax:最高観察血漿濃度
・Cmin:最低観察血漿濃度
・tmax:Cmaxに達するまでの時間
・AUC0-tau:時間0から投与間隔(即ち48時間)にわたる血漿濃度-時間曲線下面積
・t1/2:終末相消失半減期
・CLss/F:定常状態濃度での見かけの経口クリアランス
・Vss/F:定常状態濃度での見かけの経口分布容積
【0207】
試験参加者
本開示は、酵素補充療法(ERT)にナイーブであるか、又はスクリーニング時点でERTを少なくとも14日間中止していたミガラスタット治療を受けた患者におけるPK/PD試験について記載する
【0208】
この試験への組み入れには、対象は以下の判定基準を全て満たしていなければならない:
・ベースライン時に年齢12~<18歳のファブリー病と診断された、及び治験責任医師の意見によれば、その病態に対する特異的な治療から利益を受け得るであろう男性又は女性。
・ミガラスタット適用可能性アッセイを用いて決定される適用可能GLA変異体が確認されている(適用可能GLA変異体が不明の対象については、来院2回目より前にGLA遺伝子タイピングを実施していなければならない。同様に、ミガラスタット適用可能性アッセイではまだ未試験であったGLA変異体を有する対象については、来院2回目の前に適用可能性試験が完了していなければならない)。
・スクリーニング時の体重≧45kg(99ポンド)。
・治療ナイーブであるか、又はスクリーニング5前の少なくとも14日間はERT治療を中止していた。ファブリー病の少なくとも1つの合併症(即ち既往歴上又は現在認められる異常な検査所見及び/又は徴候/症状)を有していた。
・スクリーニング時に中等度又は重度の腎機能障害(推算糸球体濾過率[eGFR]<60mL/分/1.73m)又は透析若しくは移植を必要とする腎疾患の指標を有しなかった。
【0209】
治療
1個のミガラスタット123mgミガラスタット(=150mgミガラスタットHCL)カプセル剤を体重≧45kgの青年に水と共に試験中1日おきに投与した。
【0210】
カプセル剤のサイズ及び試験AT1001-020の組入れ基準に起因して、123mgミガラスタットカプセル剤は、体重45kg未満の患者並びに低体重及び低年齢群には好適でない。このように、提案される年齢群(12~16歳未満)の範囲内にある低体重群には、警告を含めることが推奨された。
【0211】
曝露量を推定するための血漿ミガラスタット濃度のスパースサンプリングをベースライン時、及び15~30日目の間の1回の24時間期間に行った。表15に示すとおり、対象は3つのPKサンプリング群のうちの1つに無作為に割り付けた。
【0212】
【表50】
【0213】
この中間分析には、カットオフ日時点で利用可能な血漿濃度-時間データが1つある患者を組み入れた。
【0214】
血漿試料はLC-MS/MS法を用いて分析した。
【0215】
中間分析の解析対象集団
安全性対象集団には、少なくとも1用量又は部分的用量の試験薬物の投与を受けた、且つカットオフ日時点で利用可能なステージ1血漿濃度-時間データのある年齢12~<16歳の全ての対象を組み入れた。安全性解析は全て、この安全性対象集団を使用して実施した。
【0216】
PK対象集団には、ステージ1を完了した、且つ少なくとも1つの定量可能な濃度の少なくとも1用量のミガラスタットの投与を受けた年齢12~<16歳の対象からのデータを組み入れた。中間分析対象集団PKに組み入れた対象は全て、既知の体重及びeGFRを有した。
【0217】
結果
ベースラインデータ
試験AT1001-020には、合計22例の対象が登録した。カットオフ日時点で、年齢12~<16歳の合計9例の対象、4例の女性及び5例の男性が試験AT1001-020に登録し、試験薬物の投与を受け、及びこの試験のステージ1をPK濃度データを伴い完了した。これらの対象が、この中間分析についての安全性及びPK対象集団を占めた。ファブリー病の診断からの平均経過年数は10.2(±4.12)年であった。4例の対象については、過去の酵素補充療法の使用歴が報告された。
【0218】
試験AT1001-020に登録した9例の対象についてのミガラスタット曝露期間中央値は30日であり、最長曝露は49日であった。
【0219】
人口統計学的情報及びベースライン特性をError! Reference source not found.16及びError! Reference source not found.17に提示する。
【0220】
【表51】
【0221】
【表52】
【0222】
病歴
安全性対象集団における病歴について最も多く見られる器官別大分類は、神経系障害(77.8%)、耳及び迷路障害(66.7%)、胃腸障害(66.7%)、並びに全身障害及び投与局所様態、臨床検査、精神障害、呼吸器、胸郭及び縦隔障害、並びに皮膚及び皮下組織障害(いずれも55.6%)であった。最も多く見られる病歴の基本語(いずれも対象の55.6%によって報告される)は、耳鳴り、腹痛、下痢、頭痛、及び対性知覚麻痺であったが、そのほとんどがファブリー病と一致するものである。
【0223】
過去及び併用の薬物療法
1例を除く全ての対象が、過去に薬物療法の使用歴があると報告された。最も多く見られる以前の薬物療法は、6例(66.7%)の対象が服用していたパラセタモールであった。他の薬物療法については、2例より多い対象が服用したものはなかった。
【0224】
最も高頻度に使用された併用薬物療法は、6例(66.7%)の対象が服用していたパラセタモールであった。他の併用薬物療法については、2例より多い対象が服用したものはなかった。
【0225】
有害事象
ステージ1の間に安全性対象集団の対象に認められたTEAEの全体的な概要を表18及び表19に示す。
【0226】
【表53】
【0227】
【表54】
【0228】
検査所見
ステージ1の間、検尿(アルブミン、タンパク質、比重、pH、及び顕微鏡法)が、1ヵ月目に収集した唯一の臨床検査パラメータであったため、従って中間分析には、これらの唯一の臨床検査パラメータを評価した。
【0229】
1ヵ月目に検尿パラメータについて、ベースラインからの平均値の臨床的に有意味な変化はなかった。
【0230】
ベースラインから1ヵ月目までに幾つかのシフトがあった。3例の対象は、pH値がベースライン時の正常値から1ヵ月目に高値になった。
【0231】
検尿パラメータに臨床的に重大である可能性のある異常はなかった。
【0232】
妊娠の可能性のある全ての女性対象について、来院時に毎回、尿妊娠検査を実施した。ステージ1の間、安全性対象集団の中で妊娠検査結果が陽性となった女性対象はいなかった。
【0233】
臨床上の安全性に関する結論
年齢12~18歳の青年患者(n=9)から入手された限られたデータに基づけば、popPKデータにより、123mgミガラスタットカプセル剤q.o.d.の投与を受ける体重≧45kgの成人及び青年の曝露量は同等であったことが示された。
【0234】
小児患者で観察されたCmaxレベルは、ピボタル試験AT1001-011において成人患者で観察されたCmaxレベルと一致した。
【0235】
この試験のステージ1の間、新たな安全性所見は観察されていない。ひいては年齢≧12~16歳までの小児患者におけるミガラスタット123mgによる治療が、既知のものと異なる安全性プロファイルにつながることはない。
【0236】
年齢2~<18歳の、適用可能なGLA突然変異を有する小児及び青年患者におけるファブリー病の治療のための新規製剤、ミガラスタットHCl経口製剤(サシェ及び/又はカプセル剤)を設計し、評価し得る。
【0237】
実施例4:青年におけるミガラスタット治療の臨床的有効性
本例は、AT1001-020試験について記載し、この試験は、ファブリー病及び適用可能なGLA変異体を有する小児対象(年齢12~<18歳)におけるミガラスタットによる12ヵ月間の治療の有効性に関する非盲検試験であり得る。一部の実施形態において、この臨床的有効性試験はステージ2を含む。
【0238】
それに応じて、一部の実施形態において、ステージ2では、主要目的には、ファブリー病と診断された、ミガラスタットによる治療が適用可能なGLA変異体を有する小児対象におけるミガラスタット治療の安全性を評価することが含まれ得る。
【0239】
一部の実施形態において、ステージ2では、副次的目的には、ファブリー病と診断された、ミガラスタットによる治療が適用可能なGLA変異体を有する小児対象におけるミガラスタットの薬力学(PD)を特徴付けることが含まれ得る。
【0240】
一部の実施形態において、ステージ2では、副次的目的には、ファブリー病と診断された、ミガラスタットによる治療が適用可能なGLA変異体を有する小児患者におけるミガラスタットの有効性を評価することが含まれ得る。
【0241】
一部の実施形態において、ステージ2では、副次的目的には、ミガラスタットへの曝露量と反応との間の関係を評価することが含まれ得る。
【0242】
本明細書において言及される特許及び科学論文は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される全ての米国特許及び公開されている又は未公開の米国特許出願は、参照によって援用される。本明細書に引用される全ての公開されている外国特許及び特許出願は、本明細書によって参照により援用される。本明細書に引用される他の全ての公開されている参考文献、文書、論稿及び科学論文は、本明細書によって参照により援用される。
【0243】
本発明は特にその好ましい実施形態を参照して図示及び説明されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなくそれらにおいて形態及び詳細の様々な変更を行い得ることを理解するであろう。
【0244】
本明細書に記載の実施形態は、本組成物及び本方法を例示することが意図され、本発明の範囲を限定することは意図されない。全体として記載に一致し、当業者に容易に理解される様々な修飾及び変更は包含されることが意図される。添付の特許請求の範囲は、例の中で示される具体的な実施形態によって限定されるべきでないが、全体として記載に一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0245】
特許、特許出願、出版物、製品説明、GenBank受入番号、及びプロトコルは、本願全体を通じて引用され、それらの開示は、あらゆる目的でそれら全体として参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
【配列表】
2024525760000001.xml
【国際調査報告】