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特表2024-525762安定化フルオロエチレン組成物、並びにその保管方法及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】安定化フルオロエチレン組成物、並びにその保管方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20240705BHJP
   F25B 1/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C09K5/04 F
F25B1/00 396Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501916
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022036661
(87)【国際公開番号】W WO2023287695
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】63/220,717
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/334,442
(32)【優先日】2022-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ション ペン
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ハビランド マイナー
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのフルオロエチレンと有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む安定化組成物に関する。組成物は、フルオロエチレンから誘導されるオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない。安定化組成物は、冷蔵、空調、冷却機、及びヒートポンプなどの冷却装置において、並びに発泡剤、溶媒、エアゾール噴射剤、消火剤、及び滅菌剤としての用途において有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフルオロエチレンと、有効量の少なくとも1つの阻害剤と、を含む安定化組成物であって、前記組成物は、前記フルオロエチレンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、安定化組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフルオロエチレンは、少なくとも1つのジフルオロエチレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのジフルオロエチレンは、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのジフルオロエチレンは、(E)-1,2-ジフルオロエチレン((E)-HFO-1132)を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの阻害剤は、テルペン、テルペノイド、及び直鎖不飽和炭化水素からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの阻害剤は、D-リモネン、テルピネン、ピネン、p-シメン、テルピネオール、ミルセン、ファルネセン、4-メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、tert-ブチルヒドロキノン、メタ-キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、α-メチルスチレン、α-メタ-メチルスチレン、α-オルト-メチルスチレン、及びα-パラ-メチルスチレンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの阻害剤は、約30ppm~約3,000ppmの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、フルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの反応開始剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの酸化防止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、tert-ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、及び2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つのフルオロエチレンと、フッ化ビニル(HFO-1141)と、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン((Z)-HFO-1132)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を少なくとも0.001重量%の量で含む組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つのフルオロエチレンは、少なくとも1つのジフルオロエチレンを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのジフルオロエチレンは、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの追加の化合物は、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つのジフルオロエチレンは、(E)-1,2-ジフルオロエチレン((E)-HFO-1132)を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加の化合物は、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、HFC-32、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン((Z)-HFO-1132))、プロパン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
有効量の少なくとも1つの阻害剤を更に含み、前記組成物は、前記フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの阻害剤は、テルペン、テルペノイド、直鎖不飽和炭化水素、及びフェノールからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの阻害剤は、約30ppm~約3,000ppmの量で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1つの阻害剤は、D-リモネン、テルピネン、ピネン、p-シメン、テルピネオール、ミルセン、ファルネセン、4-メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、tert-ブチルヒドロキノン、メタ-キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、α-メチルスチレン、α-メタ-メチルスチレン、α-オルト-メチルスチレン、及びα-パラ-メチルスチレンからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、並びにフルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項26】
加熱又は冷却のための方法であって:
冷媒ループ内で、冷媒組成物を気相から液相に凝縮させることであって、前記冷媒組成物が、少なくとも1つのフルオロエチレン及び有効量の阻害剤を含み、前記有効量が、前記少なくとも1つのフルオロエチレンからのオリゴマー又はホモポリマー形成を減少させるのに有効である、ことと、
その後、前記冷媒ループ内で、前記冷媒組成物を前記液相から前記気相に蒸発させることと、を含む、方法。
【請求項27】
前記冷媒組成物が、前記接触の前に、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、並びにフルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つに曝露されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記冷媒ループに潤滑剤を供給することを更に含み、前記阻害剤は、前記液相及び前記潤滑剤中に存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記気相は、前記阻害剤を実質的に含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
オリゴマー及びホモポリマーの形成を減少させる方法であって、少なくとも1つのフルオロエチレンを含む組成物を、リモネン、α-テルピネンα-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオール、メタ-キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、α-メチルスチレン、α-メタ-メチルスチレン、α-オルト-メチルスチレン、及びα-パラ-メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素の有効量と接触させるステップを含み、前記有効量は、前記少なくとも1つのフルオロエチレンからのオリゴマー又はホモポリマーの形成を減少させるのに有効である、方法。
【請求項31】
前記組成物が1つ以上の酸化生成物を更に含み、前記酸化生成物は、前記構成要素の酸化生成物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つのテルペンと、前記少なくとも1つのテルペンの少なくとも1つの酸化生成物とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、少なくとも1つのフルオロエチレン及び少なくとも1つの阻害剤を含む安定化組成物、並びにそれらの保管方法及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒に対する新たな環境規制によって、冷蔵及び空調産業は、地球温暖化係数(global warming potential、GWP)の低い新規冷媒を探さなければならなくなっている。
【0003】
低GWP、非毒性、不燃性、合理的なコスト、及び優れた冷蔵性能を有する代替的冷媒が求められている。
【0004】
フルオロエチレンは、場合によっては沸点が低いため、単独又は混合物で冷媒として提案されてきた。しかしながら、特定のフルオロエチレンは、極端な温度、又は汚染された系内での他の化合物(様々な汚染物質の中でも、例えば、過剰な酸素、酸化化学物質、又はラジカル生成化合物)との接触などのある条件下で、劣化を示し得る及び/又は不必要な副生成物を生成し得ることが観察されており、これは、特定の使用及び/又は用途において予想外に起こり得る。このような劣化は、フルオロエチレンを冷媒又は伝熱流体として利用するときに生じ得る。この劣化は、任意の数の異なる機序によって生じ得る。
【0005】
特定の条件下で、及び/又は反応開始剤として機能し得る望ましくない汚染物質の存在下で、フルオロエチレンは、オリゴマー化又はホモポリマー化し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野では、オリゴマー化又はホモポリマー化、並びにヒドロフルオロオレフィン(HFO-1234yf及びHFO-1132Aなど)などの化合物との共重合の可能性が、排除されないとしても低減された、安定化フルオロエチレン含有組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも1つの阻害剤をフルオロオエチレン含有組成物に添加することによって、フルオロエチレン含有組成物が異常な状態に持ちこたえる能力を改善することができ、また、フルオロエチレンをオリゴマー化又はホモポリマー化させる反応開始剤(例えば、汚染物質)に関連する潜在的な問題を解決する。本発明はまた、液体及び/又は蒸気のフルオロオエチレン含有組成物及び潤滑剤中に存在する少なくとも1つの阻害剤を提供することによって、重合の開始に関連する問題を解決することができる。「阻害剤」とは、フルオロオエチレンのオリゴマー又はポリマーへの変換を排除とはいかないまでも低減する、本発明による少なくとも1つの化合物を指すことを意味する。オリゴマー化又はホモポリマー化反応は比較的高い温度により加速され得るが、このような反応はまた、反応開始剤(例えば、汚染物質)の濃度及び種類に応じて周囲条件下で発生し得る。阻害剤は、ラジカル阻害剤として、組成物の冷蔵性能にも冷媒油及び部品との適合性にも影響を及ぼすことなく機能することができる。安定化された組成物は、冷却システムにおいて、そして、より高い地球温暖化係数を有する既存の冷媒の代替品として有用であり得る。
【0008】
フルオロエチレンの起こり得る不安定性を回避するために、特定の阻害剤化合物、すなわち炭化水素であって、環状モノテルペン、α-トコフェロール等のトコフェロールを含む親油性有機化合物、又はフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む少なくとも1つの化学部分-C(OH)を有する芳香族有機化合物、のうちの少なくとも1つを含む炭化水素を、フルオロエチレン含有組成物に添加することにより、包装中、保管中、及び冷蔵又は空調システム用途におけるなど使用中の安定性が増大するということが判明している。阻害剤化合物の具体例は、リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される、少なくとも1つの構成要素を含む。
【0009】
具体的な一実施形態では、本発明は、O及びフルオロオレフィンポリペルオキシドと相互作用又は反応する一方、このような化合物とフルオロエチレンとの反応を阻害又は排除することができる阻害剤を含むフルオロエチレン含有組成物に関する。このような阻害剤の例は、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む。リモネン及びα-テルピネンは、以下の構造を有する:
【0010】
【化1】
【0011】
本発明の一実施形態では、阻害剤は、α-テルピネンを含む。いかなる理論又は説明に束縛されるものではないが、その構造中に共役二重結合が存在することにより、α-テルピネンは、酸化時に芳香環を形成することができると考えられる。
【0012】
本発明の一実施形態では、任意選択で酸化防止剤を含むリモネン又はα-テルピネンは、数ppmレベルであっても、独特の芳香を有する。この心地良い匂いは、少なくとも1つのフルオロエチレンをベースとする冷媒及びブレンドを用いた冷媒漏れ検出に利用することができる。これは、家庭用空調装置又は可搬式空調装置における冷媒漏れを早期に検出するのに特に有益である。というのも、パラプロフェッショナルな電子的漏れ検出器はいずれの場所でも利用できないことが多いからである。
【0013】
本発明の別の実施形態では、以下の阻害剤のうちの少なくとも1つを単独で、又は前述の阻害剤と組み合わせて使用することができる。メタ-キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、α-メチルスチレン、α-メタ-メチルスチレン、α-オルト-メチルスチレン、及びα-パラ-メチルスチレン。
【0014】
本発明の一実施形態は、
a.少なくとも1つのフルオロエチレンと、
b.有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む、安定化された組成物に関し、組成物は、フルオロエチレンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない。
【0015】
一実施形態は、少なくとも1つのジフルオロエチレンを含む、少なくとも1つのフルオロエチレンに関する。
【0016】
具体的な一実施形態は、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)を含む、少なくとも1つのジフルオロエチレンに関する。
【0017】
別の具体的な実施形態は、1,1-ジフルオロエチレン、(E)-1,2-ジフルオロエチレン及び(Z)-1,2-ジフルオロエチレンを含む、少なくとも1つのジフルオロエチレンに関する。別の具体的な実施形態は、HFO-1234yf及びHFC-32のうちの少なくとも1つと組み合わせた、前述の組成物のいずれかに関する。HFO-1234yf及び/又はHFC-32の量は、約50~約95重量%、約60~約90重量%、場合によっては約65~約80重量%の範囲であり得る。この具体的な実施形態の一態様では、組成物は、R1132(E)/R1234yfを、23/77重量%で含む(これは、例えば電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又は燃料電池自動車用のヒートポンプを含む、広範囲の用途において有用である)。この具体的な実施形態の別の態様において、組成物は、R1132a/R32/R1234yfを、5/44/51の割合で、又はR1132(E)/R32/R1234yfを、32/44/24の割合で、含む(これは、GWP<300が望ましい用途を含む、広い範囲の用途において有用である)。この具体的な実施形態の別の態様では、前述の組成物は、組成物の沸点が、低い周囲温度での動作を可能にする様々な用途の中でも、特に、住宅用、商業用、及び工業用の空間の加熱、水の加熱に使用することができる。
【0018】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの阻害剤が、テルペン、テルペノイド、直鎖不飽和炭化水素、及びフェノールからなる群から選択される、前述の組成物のいずれかに関する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの阻害剤が、D-リモネン、テルピネン、ピネン、p-シメン、テルピネオール、ミルセン、ファルネセン、4-メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びtert-ブチルヒドロキノンからなる群から選択される、前述の組成物のいずれかに関する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの阻害剤が、約5ppm~約3,000ppm、約50~約2,000ppm、場合によっては約75~約500ppmの範囲内の量で存在する、前述の組成物のいずれかに関する。
【0021】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、組成物が、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、フルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの反応開始剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0025】
具体的な一実施形態は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、tert-ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシルフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、及び2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される、上記の少なくとも1つの酸化防止剤に関する。
【0026】
本発明の一実施形態は、組成物に関し、その組成物は、
a.少なくとも99.5重量%の量の、少なくとも1つのフルオロエチレン;フッ化ビニル(HFO-1141);並びに
b.0重量%超、場合によっては少なくとも0.1重量%の量の、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン((Z)-HFO-1132)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物、を含む。
【0027】
一実施形態は、少なくとも1つのジフルオロエチレンを含む、少なくとも1つのフルオロエチレンに関する。
【0028】
具体的な一実施形態は、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132)を含む、少なくとも1つのジフルオロエチレンに関する。
【0029】
別の具体的な実施形態は、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(HFC-23)、ジフルオロメタン(HFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物に関する。
【0030】
別の具体的な実施形態は、(E)-1,2-ジフルオロエチレンを含む少なくとも1つのジフルオロエチレンに関する。
【0031】
別の具体的な実施形態は、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HCFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-Z-1132)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記の少なくとも1つの追加の化合物に関する。
【0032】
別の具体的な実施形態は、直鎖化合物、分岐鎖化合物、及び環式化合物を含む、C2~C5炭化水素を含む少なくとも1つの追加の化合物を有する、前述の組成物のいずれかに関する。そのような追加の化合物の例は、プロパン、シクロプロパン、プロピレン、イソブテン、ブタン、及びブテンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0033】
本発明の別の実施形態は、有効量の少なくとも1つの阻害剤を更に含み、その結果、フルオロエチレンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、前述の組成物のいずれかに関する。
【0034】
具体的な一実施形態は、テルペン、テルペノイド、直鎖不飽和炭化水素、及びフェノールからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤に関する。
【0035】
別の具体的な実施形態は、約30ppm~約3,000ppmの量で存在する、上記の少なくとも1つの阻害剤に関する。
【0036】
別の具体的な実施形態は、D-リモネン、テルピネン、ピネン、p-シメン、テルピネオール、ミルセン、ファルネセン、4-メトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びtert-ブチルヒドロキノンからなる群から選択される、上記の少なくとも1つの阻害剤に関する。
【0037】
別の具体的な実施形態は、0重量%超でありかつ約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む組成物に関する。
【0038】
具体的な一実施形態は、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、並びにヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む組成物に関する。
【0039】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0040】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのフルオロエチレンと、少なくとも1つのテルペン阻害剤と、1つ以上の酸化生成物とを含み、その酸化生成物は、テルペン阻害剤の酸化生成物である、前述の組成物のいずれかに関する。
【0041】
本発明の一実施形態は、加熱又は冷却する方法であって、その方法は、
a.冷媒ループ内で、冷媒組成物を冷媒ループ内で気相から液相に凝縮させることであって、冷媒組成物は少なくとも1つのフルオロエチレン及び有効量の阻害剤を含み、その有効量が、上記の少なくとも1つのフルオロエチレンからのオリゴマー又はホモポリマー形成を低減するのに有効である、ことと、
b.その後、冷媒ループ内で、冷媒組成物を液相から気相に蒸発させることと、を含む。
【0042】
本発明の具体的な一実施形態は、当該冷媒組成物が、上記の接触の前に、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、並びにヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素に曝露されている、上記の方法のいずれかに関する。
【0043】
本発明の別の実施形態は、冷媒ループに潤滑剤を提供することを更に含み、阻害剤が液相及び潤滑剤中に存在する、前述の方法のいずれかに関する。
【0044】
上記の方法の具体的な一実施形態は、阻害剤を実質的に含まない蒸気相に関する。
【0045】
本発明の一実施形態は、オリゴマー及びホモポリマーの形成を減少させる方法であって、その方法は:
少なくとも1つのフルオロエチレンを含む組成物を、リモメン、α-テルピネン、α-トコフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオール、メタ-キシレン、オルト-キシレン、パラ-キシレン、α-メチルスチレン、α-メタ-メチルスチレン、α-オルト-メチルスチレン、及びα-パラ-メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素の有効量と接触させるステップを含み、上記の有効量は、上記の少なくとも1つのフルオロエチレンからの、オリゴマー又はホモポリマーの形成を減少させるのに有効な量である、方法に関する。
【0046】
本発明の別の実施形態は、前述の組成物のいずれかを含む冷媒を含む容器に関する。
【0047】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのテルペン、及びその少なくとも1つのテルペンの少なくとも1つの酸化生成物を含む組成物に関する。
【0048】
本発明の実施形態は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができ、その異なる実施形態を組み合わせ、本発明の一部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A】1234yf、1132(E)、32及び143aを含む組成物の冷蔵COP、Cap、及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図1B】1234yf、1132(E)、32及び143aを含む組成物の冷蔵COP、Cap、及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図1C】1234yf、1132(E)、32及び143aを含む組成物の冷蔵COP、Cap、及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図2A】1234yf、1132(E)、及び32を含み、従来使用されているR-404Aと同様の条件下で使用することができる組成物の冷蔵COP、Cap、及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図2B】1234yf、1132(E)、及び32を含み、従来使用されているR-404Aと同様の条件下で使用することができる組成物の冷蔵COP、Cap、及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図2C】1234yf、1132(E)、及び32を含み、従来使用されているR-404Aと同様の条件下で使用することができる組成物の冷蔵COP、Cap、及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図3A】1234yf、1132(E)、及び32を含み、従来使用されているR-123と同様の条件下で使用することができる組成物の冷蔵COP、Cap及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図3B】1234yf、1132(E)、及び32を含み、従来使用されているR-123と同様の条件下で使用することができる組成物の冷蔵COP、Cap及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
図3C】1234yf、1132(E)、及び32を含み、従来使用されているR-123と同様の条件下で使用することができる組成物の冷蔵COP、Cap及びグライド性能をそれぞれ示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つのフルオロエチレンと有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む安定化組成物を提供する。「安定化(された)」とは、組成物が、フルオロエチレンが別の化合物と相互作用し、ダイマー、オリゴマー、ホモポリマー、又はポリマー生成物を形成することを排除とはいかないまでも阻害する、有効量の少なくとも1つの阻害剤化合物を含むことを指すことを意図する。このような相互作用を引き起こし得るこのような化合物の例としては、様々な反応開始剤の中でも、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルサルフェート、ペルカーボネート、ペルボレート、及びヒドロペルサルフェートなどの酸化剤が挙げられる。反応開始剤化合物は、重量基準で約10~約15,000ppm、約1,000~約10,000ppm、場合によっては約1,000~約3,000ppm、場合によっては30~2,000ppmの量で存在し得る。このような反応開始剤化合物は、フルオロエチレン含有組成物を取り扱うために使用される導管、ライン、及び他のシステム;包装(容器)、及び冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムのうちの少なくとも1つにおける汚染物質として存在し得る。理論又は説明に束縛されるものではないが、特定の汚染物質はラジカル反応開始剤として機能し、それによって、フルオロエチレンをオリゴマー化させる、ホモポリマー化させる、又は他のポリマー生成物を形成させると考えられる。
【0051】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、フルオロエチレンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、組成物が、IR又はNMRによって測定されるとき、0重量%超かつ約1重量%未満、0重量%超かつ約0.07重量%未満、0重量%超かつ約0.03重量%未満、場合によっては約0ppmのこのような生成物を含有することを意味する。
【0052】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は、ファルネソール;ファルネセン;[CHCO、[HSO、[CHOSO、[COSO、[AICI、[CO2-、[HCO、[NO、[NO、[SO2-、[PO3-、[HPO2-、[HPO、[HSOからなる群から選択されるアニオン、及び特定のフッ素化アニオンであって、当該フッ素化アニオンが、[BF、[PF、[SbF、[CFSO,[HCFCFSO、[CFHFCCFSO、[HCCIFCFSO、[(CFSON]、[(CFCFSON]、[(CFSOC]、[CFCO、[CFOCFHCFSO、[CFCFOCFHCFSO、[CFCFHOCFCFSO、[CFHCFOCFCFSO、[CFICFOCFCFSO、[CFCFOCFCFSO、[(CFHCFSON]、[(CFCFHCFSON]からなる群から選択される、フッ素化アニオン、を含むイオン性液体などのイオン性液体、及びこれらの混合物、からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素などのセスキテルペン化合物を含む、特定の従来の阻害剤化合物を実質的に含まない。この実施形態の特定の一態様において、組成物は、フェノール及びフェノール基を有する化合物を実質的に含まない。実質的に含まないとは、本発明の組成物が、約500ppm未満、典型的には約250ppm未満、場合によっては約100ppm、場合によっては約0ppmの、このような従来の阻害剤を含有することを意味する。
【0053】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1つのフルオロエチレン、少なくとも1つのテルペン阻害剤、及び1つ以上の酸化生成物を含み、酸化生成物は、テルペン阻害剤の酸化生成物である。テルペン阻害剤は、リモネン、α-テルピネン、α-ピネン、及びβ-ピネンのうちの1つ以上から選択され得る。
【0054】
酸化生成物は、以下に示す、カルボン、カルベオール(Z-及びE-)、及びリモネンオキシド(Z-及びE-)の少なくとも1つから選択されるリモネンの酸化生成物であり得る。
【0055】
【化2】
【0056】
阻害剤がリモネンを含む場合、組成物は、α-テルペン、シメン、1-オクタノール、γ-テルピネン、テルピノレン、及びβ-テルピネンのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0057】
酸化生成物は、3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、6-イソプロピル-3-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1,4-ジオール、E-3-イソプロピル-6-メチルヘプタ-2,6-ジエナール、p-シメン、及びプロパンのうちの少なくとも1つから選択されるα-テルピネンの酸化生成物であり得る。なお、これらは、プロパンを除いて全てが以下に示されるとおりのものである。
【0058】
【化3】
【0059】
阻害剤がα-テルピネンを含む場合、組成物は、カンフェン、イソカンフェン、テルピノレン、メントメンテン、フェランドレン、サビネン、β-テルピネン、1,4-シネオール、カルボメンテンオキシド、d-リモネン、1,8-シネオール、-テルピネンのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0060】
酸化生成物は、α-ピネンの酸化生成物であってもよく、ここで、酸化生成物は、以下に示すように、α-ピネンオキシドである。
【0061】
【化4】
【0062】
阻害剤がα-ピネンを含む場合、組成物は、5-メチル-4-ノネン、-ツジェン、トリシクレン(1,7,7-トリメチルトリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタン)、α-フェンケン、カンフェン、シメン、d-リモネン、α-カンフォレナールのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0063】
酸化生成物は、以下に示すように、ピノカルベオール及びミルテノールのうちの少なくとも1つから選択される、β-ピネンの酸化生成物であり得る。
【0064】
【化5】
【0065】
阻害剤がβ-ピネンを含む場合、組成物は、α-ピネン、α-フェンケン、カンフェン、ベルベネン、ミルセン、フェランドレン、カンファン、シメン、及び2-メンテンのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0066】
本明細書に開示される組成物は、テルペン阻害剤の1つ以上の酸化生成物を含む。酸化生成物は、カルボン、カルベオール、リモネンオキシド、3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、6-イソプロピル-3-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1,4-ジオール、E-3-イソプロピル-6-メチルヘプタ-2,6-ジエナール、p-シメン、プロパン、α-ピネンオキシド、ピノカルベオール、及びミルテノールのうちの1つ以上から選択され得る。
【0067】
阻害剤がリモネンを含む場合、酸化生成物は、上に示したような、カルボン、カルベオール、及びリモネンオキシドのうちの少なくとも1つであってよい。一実施形態では、阻害剤がリモネンである場合、酸化生成物は、リモネンオキシドである。一実施形態では、阻害剤がリモネンである場合、酸化生成物は、カルボンである。一実施形態では、阻害剤がリモネンである場合、酸化生成物は、カルベオールである。一実施形態では、阻害剤がリモネンである場合、酸化生成物は、リモネンオキシド、カルボン及びカルベオールのうちの2つ以上である。
【0068】
阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、6-イソプロピル-3-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1,4-ジオール、E-3-イソプロピル-6-メチルヘプタ-2,6-ジエナール、p-シメン、及びプロパンのうちの少なくとも1つである。なお、プロパンを除き全ては、上に例示されたとおりのものである。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、3-イソプロピル-6-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エンである。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、6-イソプロピル-3-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エンである。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1,4-ジオールである。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、E-3-イソプロピル-6-メチルヘプタ-2,6-ジエナールを含む。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、p-シメンを含む。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、プロパンを含む。一実施形態では、阻害剤がα-テルピネンである場合、酸化生成物は、3-イソプロピル-6-メチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、6-イソプロピル-3-メチル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-2-エン、1-イソプロピル-4-メチル-シクロヘキサ-2-エン-1,4-ジオール、E-3-イソプロピル-6-メチルヘプタ-2,6-ジエナール、p-シメン及びプロパンのうちの2つ以上を組み合わせたものを含む。
【0069】
阻害剤がα-ピネンを含む場合、酸化生成物は、上に示したようなα-ピネンオキシドを含む。
【0070】
阻害剤がβ-ピネンを含む場合、酸化生成物は、上に示したようなピノカルベオール及びミルテノールのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、阻害剤がβ-ピネンを含む場合、酸化生成物は、ピノカルベオールを含む。一実施形態では、阻害剤がβ-ピネンである場合、酸化生成物は、ミルテノールを含む。一実施形態では、阻害剤がβ-ピネンである場合、酸化生成物は、ピノカルベオール及びミルテノールを含む。
【0071】
任意の好適な量の酸化生成物を使用することができるが、酸化生成物の有効量としては、組成物の総重量に基づいて、0.0001重量%~10重量%、0.01重量%~5重量%、0.3重量%~4重量%、0.3重量%~1重量%が含まれる。一実施形態では、有効量は、1~2000ppm、又は1~1000ppm、又は1~500ppmの少なくとも1つの酸化生成物を含む。
【0072】
2種以上の酸化生成物が存在する場合、酸化生成物の総量はまた、組成物の総重量に基づいて、0.0001重量%~10重量%、0.01重量%~5重量%、0.3重量%~4重量%、0.3重量%~1重量%の範囲であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明は、少なくとも1つのフルオロエチレン及び少なくとも1つの追加の化合物を含むフルオロエチレン化合物を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の化合物は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の化合物は、少なくとも2つの追加の化合物を含む。別の実施形態では、少なくとも1つの追加の化合物は、プロパン及びブタンなどの炭化水素を含む。
【0074】
本発明の組成物は、特に、発泡剤、溶媒、エアゾール噴射剤、消火剤、滅菌剤、又は伝熱媒体(冷蔵システム、冷蔵庫、空調システム、ヒートポンプ、冷却機などで使用するための伝熱流体及び冷媒など)を含む作動流体を含む様々な有用性を有する。本発明の化合物は、可搬式空調システムにおいて使用するのに、そして、固定式伝熱システムにおいて使用するための冷媒ブレンドを作製するための成分として特に適している。
【0075】
発泡剤は、ポリマーマトリックスを膨張させて気泡構造を形成する揮発性組成物である。
【0076】
溶媒は、基材から汚れを除去する、又は材料を基材上に堆積させる、又は材料を運ぶ流体である。
【0077】
エアゾール噴射剤は、容器から材料を排出するために1気圧より大きい圧力を及ぼす1つ以上の成分の揮発性組成物である。
【0078】
消火剤は、炎を消す又は抑制する揮発性組成物である。
【0079】
滅菌剤は、生物学的活性物質などを破壊する揮発性殺菌流体を含有する揮発性殺菌流体又はブレンドである。
【0080】
伝熱媒体(本明細書では伝熱流体、伝熱組成物、又は伝熱流体組成物とも呼ばれる)は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体である。
【0081】
冷媒は、流体が液体から気体(又は蒸気)に相変化し、そして、元に戻るサイクルにおいて伝熱流体として機能する化合物又は化合物の混合物である。阻害剤は、少なくとも冷媒の液体フルオロエチレン含有相、並びに冷媒の潤滑剤成分中に存在する。一実施形態では、約10~約80重量%、約25~約75重量%、及び場合によっては、約45~約60重量%の阻害剤が、液体フルオロエチレン含有相中に存在し、残りは主に潤滑剤相中に存在する。一実施形態では、気相は阻害剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、蒸気フルオロエチレン含有相中の阻害剤の量が、約10ppm未満、場合によっては約5未満、典型的には約2ppm未満であることを意味する。一実施形態では、冷媒は、少なくとも1つのフルオロエチレンを含む気相、及び少なくとも1つのフルオロエチレンと、少なくとも1つの潤滑剤と、少なくとも1つの阻害剤と、を含む液相を含み、場合によっては、気相は、阻害剤を実質的に含まない。他の実施形態では、阻害剤は、フルオロエチレン含有気相中に存在する。
【0082】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは装置などに内在する他の要素を含み得る。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0083】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は構成要素を除外する。特許請求の範囲においては、材料に通常付随する不純物を除き、そのような語句は、列挙された材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を限ることになる。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく、ある請求項の本文の節内で現れる場合、この語句はその節内に示される要素のみを限定するものであり、その他の要素が、当該請求項全体から除外されるわけではない。
【0084】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼす。「から本質的になる」という用語は、「~を含む」と「~からなる」との間の中間の意味をもつ。
【0085】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含む」などの非限定的な用語で定義した場合、(特に明記しない限り)その記載は用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いる発明も含むように解釈されるべきであることが容易に理解されるはずである。
【0086】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び構成要素を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の全般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0087】
フルオロエチレンという用語は、本明細書で使用される場合、二重結合によって連結された2個の炭素原子を含み、少なくとも1個のフッ素原子、任意選択で少なくとも1個の水素原子、及び任意選択で少なくとも1個の塩素原子を更に含む化合物を表す。一実施形態では、フルオロエチレンは、式CR=CRで表され、式中、Rはフッ素であり、R、R、及びRは、水素、フッ素、及び塩素から独立して選択されるものである。一実施形態では、フルオロエチレンは、ヒドロフルオロエチレンである。一実施形態では、フルオロエチレンは、ジフルオロエチレンである。一実施形態では、ジフルオロエチレンは、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-Z-1132)である。一実施形態では、ジフルオロエチレンは、(E)-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-E-1132)である。一実施形態では、ジフルオロエチレンは、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)である。一実施形態では、ジフルオロエチレンは、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)である。別の実施形態では、フルオロエチレンは、1141(CFH=CH2)を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも99.5重量%のフルオロエチレンを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、組成物は、フルオロエチレン及び少なくとも1つの他の化合物を含む冷媒ブレンドである。いくつかの実施形態では、上記の少なくとも1つの他の化合物はフルオロオレフィンを含む。
【0090】
本明細書で使用するとき、フルオロオレフィンという用語は、炭素原子、フッ素原子、及び任意選択で水素原子を含む化合物を説明する。一実施形態では、本発明の組成物で使用されるフルオロオレフィンは、2~12個の炭素原子を有する化合物を含む。別の実施形態では、フルオロオレフィンは、3~10個の炭素原子を有する化合物を含み、更に別の一実施形態では、フルオロオレフィンは、3~7個の炭素原子を有する化合物を含む。
【0091】
本組成物の化合物の多くは、異なる立体配置異性体又は立体異性体として存在する。特定の異性体が指定されていない場合、本発明は、全ての単一の立体配置の異性体、単一の立体異性体、又はこれらの任意の組み合わせを含むことを意図する。例えば、F11Eは、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンのE-異性体、Z-異性体、又は両方の異性体の任意の比率での任意の組み合わせ若しくは混合物を表すことを意味する。別の一例として、HFO-1132aは、1,2-ジフルオロエチレンのE異性体、Z異性体、又は任意の比率の両異性体の任意の組み合わせ若しくは混合物を表すことを意味する。
【0092】
具体的な一実施形態では、本発明の組成物のフルオロエチレン成分は、HFO-1132及び/又はHFO-1132aを含む。別の具体的な実施形態では、フルオロエチレンは、99重量%超の純度、99.5重量%超の純度、場合によっては99.5~99.98重量パーセント超の純度を有するHFO-1132及び/又はHFO-1132aを含む。別の具体的な実施形態では、フルオロエチレンは、少なくとも99.5重量%のHFO-1132及び/又はHFO-1132aと、0.5未満かつ0.0001重量%超、0.3未満、場合によっては0.2未満の別のフルオロエチレンと、を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物又はプロセスのフルオロエチレン成分は、当技術分野において公知のプロセスによって形成され、精製され、かつ/又は得られる。
【0094】
いくつかの実施形態では、フルオロエチレン成分は、(E)-1,2-ジフルオロエチレンであり、その(E)-1,2-ジフルオロエチレンは、米国特許出願公開第2021/0107850号に記載のプロセスによって形成され、かつ/又は精製される。なお、この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
いくつかの実施形態では、フルオロエチレン成分は、米国特許第7,294,747号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているプロセスによって形成され、かつ/又は精製される1,1-ジフルオロエチレンである。
【0096】
いくつかの実施形態では、組成物は、約99.5重量%超のフルオロエチレン成分及びフッ化ビニル(HFO-1141)と、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1-クロロ1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、(Z)-1,2-ジフルオロエチレン((Z)-HFO-1132)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物と、を含む。HFO-1141及び少なくとも1つの追加の化合物の量は、重量基準で、約1~約2000ppm、約10~約1000ppm、約100~約500ppm、約50~約200ppm、約10~約100ppm、約0.1%超の範囲、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲であり得る。
【0097】
いくつかの具体的な実施形態では、フルオロエチレン成分は、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132)であり、少なくとも1つの追加の化合物は、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0098】
いくつかの具体的な実施形態では、フルオロエチレン成分は、(E)-1,2-ジフルオロエチレン((E)-HFO-1132a)であり、少なくとも1つの追加の化合物は、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-Z-1132)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
いくつかの実施形態では、フルオロエチレン成分は、冷媒ブレンド組成物中の1,1-ジフルオロエチレンであって、国際公開第2020/035690(A1)号又は国際公開第2020/135569(A1)号に記載のものである。なお、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、フルオロエチレン成分は、米国特許第8,961,812号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような冷媒ブレンド組成物中の(Z)-1,2-ジフルオロエチレンである。
【0101】
いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、フルオロエチレンと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、ジフルオロメタン(HFC-32)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、及び1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)から選択される少なくとも1つの冷媒化合物とを含む。いくつかの実施形態では、冷媒ブレンドは、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、トリフルオロヨードメタン(CFI)、二酸化炭素(R-744、CO)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)から選択される少なくとも1つの冷媒化合物を更に含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、冷媒ブレンド組成物は、約1~約96重量%のフルオロエチレン及び約4重量%~約99重量%の少なくとも1つの他の冷媒化合物、若しくは約1~約20重量%のフルオロエチレン及び約80重量%~約99重量%の少なくとも1つの他の冷媒化合物、若しくは約2~約14重量%のフルオロエチレン及び約86重量%~約98重量%の少なくとも1つの他の冷媒化合物、若しくは約20重量%以上のフルオロエチレン及び約80重量%以下の少なくとも1つの他の冷媒化合物、若しくは約72~約96重量%のフルオロエチレン及び約4重量%~約28重量%の少なくとも1つの他の冷媒化合物、又はそれらの間の任意の値、範囲、若しくは部分範囲を含む。
【0103】
いくつかの具体的な実施形態では、冷媒ブレンド組成物は、2~14重量%のフルオロエチレン、2~96重量%の第2の冷媒化合物(例えばHFC-152aなど)、及び2~96重量%の第3の冷媒化合物(例えばHFO-1234yfなど)、例えば4~10重量%のフルオロエチレン、2~30重量%の第2の冷媒化合物、及び60~94重量%の第3の冷媒化合物などを含む。
【0104】
いくつかの具体的な実施形態では、冷媒ブレンド組成物は、1~20重量%のフルオロエチレン、1~21重量%の例えばHFC-32などの第2の冷媒化合物、及び59~98重量%の例えばHFO-1234yfなどの第3の冷媒化合物を含む(例えば、国際特許出願公開第2020/035690A1号に開示されているものである。なお、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0105】
更なる実施形態では、本発明の阻害剤は、HFO-1132及びHFO-1132aのうちの少なくとも1つと共に、及びHFO-1132及びHFO-1132aのうちの少なくとも1つを含むブレンドの組成物と共に使用することができる。
【0106】
任意の好適な有効量の阻害剤を、少なくとも1つのフルオロエチレンを含む前述の組成物において使用することができる。本明細書に記載のとおり、語句「有効量」は、本発明の阻害剤の量であって、少なくとも1つのフルオロエチレンを含む組成物に添加されたときに、フルオロエチレンが反応開始剤と相互作用しない、かつ/又は劣化して、阻害剤を含まない組成物と比較して、例えば、高純度(例えば、少なくとも99.5重量%の純度)で保管されたり、又は冷却装置中で冷媒ブレンドの一部として使用されたりしたときに、性能を大幅に低下させることのない組成物が得られる、本発明の阻害剤の量を指す。冷却装置の場合、このような有効量の阻害剤は、標準試験ASHRAE 97-2007(RA 2017)の条件下で試験することによって決定することができる。本発明の特定の実施形態では、有効量は、その量の阻害剤が、少なくとも1つのフルオロエチレンを含む組成物と組み合わせたときに、過去に類似のシステムでどの冷媒が使用されていた可能性があるかに応じて、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)又は他の標準的な冷媒(R-12、R-22、R-502、R-507A、R-508、R401A、R401B、R402A、R402B、R408、R-410A、R-404A、R407C、R-413A、R-417A、R-422A、R-422B、R-422C、R-422D、R-423、R-114、R-11、R-113、R-123、R-124、R236fa、又はR-245fa)を含む組成物を作動流体として利用したかのように、当該少なくとも1つのフルオロエチレンを含む組成物を利用する冷却装置に、同レベルの冷蔵性能及び冷却能力を発揮させることができると言うことができる。
【0107】
本発明は、有効量の前述の阻害剤のうちの少なくとも1つを用いる。任意の好適な有効量を用いることができるが、有効量は、本明細書に記載の少なくとも1つのフルオロエチレンを含有する組成物を含む組成物の総重量に基づいて、約0.001重量パーセント~約10重量パーセント、約0.01重量パーセント~約5重量パーセント、約0.3重量パーセント~約4重量パーセント、約0.3重量パーセント~約1重量パーセントを構成する。一実施形態では、有効量は、約10~約2,000重量ppm、約10~約1,000ppm、場合によっては約10~約500ppmの少なくとも1つの阻害剤を含む。
【0108】
一実施形態では、有効量の阻害剤は、約10~約10,000重量ppm、約10~約1,000ppm、約10~約500ppm、場合によっては、約10~約100ppmの少なくとも1つの反応開始剤の存在下で、組成物を安定化させる。
【0109】
本発明の一実施形態は、前述の組成物のいずれかに関し、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む。任意の好適な酸化防止剤を用いることができるが、好適な酸化防止剤の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、第三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。酸化防止剤の量は、約0.01~約5,000重量ppm、約0.03~約2,000ppm、場合によっては約0.05~約1,000ppmの範囲であり得る。具体的な一実施形態の一例は、α-テルピネン及びリモネンを含む少なくとも1つの阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。具体的な一実施形態の一例は、α-テルピネン及びリモネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。
【0110】
一実施形態では、本発明の前述の組成物は、フルオロオレフィン、ヒドロフルオロカーボン、炭化水素、ジメチルエーテル、CF3I、アンモニア、二酸化炭素(CO2)、及びこれらの混合物、すなわち、この段落に列挙される追加の化合物のいずれかの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を更に含んでもよい。上記の追加の化合物の量は、約1~約90重量%、約5~約75重量%、場合によっては約10~約50重量%の範囲であり得る。
【0111】
一実施形態では、追加の化合物は、ヒドロフルオロカーボンを含む。本発明のヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物は、炭素、水素、及びフッ素を含有する飽和化合物を含む。特に有用なのは、1~7個の炭素原子を有し、約-90℃~約80℃の標準沸点を有するヒドロフルオロカーボンである。
【0112】
ヒドロフルオロカーボンは、多くの供給源から入手可能な市販品であるか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。代表的なヒドロフルオロカーボン化合物としては、フルオロメタン(CHF、HFC-41)、ジフルオロメタン(CH、HFC-32)、トリフルオロメタン(CHF、HFC-23)、ペンタフルオロエタン(CFCHF、HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(CHFCHF、HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CFCHF、HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(CFCH、HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(CHFCH,HFC-152a)、フルオロエタン(CHCHF、HFC-161)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CFCFCHF、HFC227ca)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CFCHFCF、HFC-227ea)、1,1,2,2,3,3,-ヘキサフルオロプロパン(CHFCFCHF、HFC-236ca)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(CFCFCHF、HFC-236cb)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CFCHFCHF,HFC-236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CFCHCF、HFC-236fa)、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(CHFCFCHF、HFC-245ca)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(CFCFCH、HFC-245cb)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(CHFCHFCHF、HFC-245ea)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(CFCHFCHF、HFC-245eb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(CFCHCHF,HFC-245fa)、1,2,2,3-テトラフルオロプロパン(CHFCFCHF、HFC-254ca)、1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(CHFCFCH,HFC-254cb)、1,1,2,3-テトラフルオロプロパン(CHFCHFCHF、HFC-254ea)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(CFCHFCH、HFC-254eb)、1,1,3,3-テトラフルオロプロパン(CHFCHCHF、HFC-254fa)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(CFCHCHF、HFC254fb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(CFCHCH、HFC-263fb)、2,2-ジフルオロプロパン(CHCFCH、HFC-272ca)、1,2-ジフルオロプロパン(CHFCHFCH、HFC-272ea)、1,3-ジフルオロプロパン(CHFCHCHF、HFC-272fa)、1,1-ジフルオロプロパン(CHFCHCH、HFC-272fb)、2-フルオロプロパン(CHCHFCH、HFC-281ea)、1-フルオロプロパン(CHFCHCH、HFC-281fa)、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(CHFCFCFCHF、HFC-338pcc)、1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン(CFCHCFCF、HFC-338mf)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(CFCHCHF、HFC-365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(CFCHFCHFCFCF、HFC-43-10mee)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7-テトラデカフルオロヘプタン(CFCFCHFCHFCFCFCF、HFC-63-14mee)が挙げられるが、これに限定されない。
【0113】
別の実施形態では、追加の化合物は、炭化水素を含む。本発明の炭化水素は、炭素及び水素のみを有する化合物を含む。特に、3~7個の炭素原子を有する化合物が有用である。炭化水素は、多数の化学供給元を介して市販されている。代表的な炭化水素としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン、シクロペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、及びシクロヘプタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
別の実施形態では、追加の化合物は、ジメチルエーテル(DME、CHOCH)などの、ヘテロ原子を含有している炭化水素を含む。DMEは市販されている。
【0115】
別の実施形態では、追加の化合物は、様々な供給源から市販されているか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができるヨードトリフルオロメタン(CFI)を含む。
【0116】
別の実施形態では、追加の化合物は、様々な供給源から市販されているか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができる二酸化炭素(CO)を含む。
【0117】
別の実施形態では、追加の化合物は、HFC-23、HFC-41、HFC-134a、HCFC-22、CFC-12、HCC-40、及び143aの群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0118】
別の実施形態では、追加の化合物は、水、空気(N2/O2の比が78/21)、空気(N2/O2の比が78/21より大)、O2、N2、Ar、CO2、CH4、及びHeの群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0119】
前述の実施形態の特定の一態様では、追加の化合物は、トレーサーを含み得る。任意の好適なトレーサーを使用することができるが、好適なトレーサーの例としては:E-1336mzz、1233zd、1224yd、1112、1327、Z-1336mzz、1336yf、1336ze、及び263fbからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素をトレーサーとして含む。
【0120】
別の実施形態では、本発明の前述の組成物は、追加の化合物を実質的に含まず、特に、ジメチルエーテル、CFI、アンモニア、及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを実質的に含まない。この実施形態の好ましい一態様では、前述の組成物は、CFIを実質的に含まない。「追加の化合物を実質的に含まない」とは、組成物及び阻害剤が、約10%未満、通常約5%未満、場合によっては0%の追加の化合物を含むことを意味する。
【0121】
特に注目すべきは、フッ化ビニル(HFO-1141)と、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、及び(Z)-1,2-ジフルオロエチレン((Z)-HFO-1132)から選択される少なくとも1つの追加の化合物と、を更に含むフルオロエチレン組成物である。
【0122】
本発明の他の実施形態では、フルオロエチレンは、少なくとも約99質量%のフルオロエチレンと、0質量%超かつ1質量%未満のフッ化ビニル(HFO-1141)と、クロロトリフルオロメタン(CFC-13)、トリフルオロメタン(CFC-23)、ジフルオロメタン(CFC-32)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HFC-142b)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、テトラフルオロエチレン(HFO-1114)、及び1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HFO-1122)から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0123】
本発明の他の実施形態では、フルオロエチレンは、少なくとも約99質量%のフルオロエチレンと、0質量%超かつ1質量%未満のフッ化ビニル(HFO-1141)と、アセチレン、エチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエタン(HFC-132)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC143)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1122a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1-クロロ-2-フルオロエチレン(HFO-1131)、及び1,2-ジフルオロエチレン(HFO-Z-1132)から選択される少なくとも1つの構成要素とを含む。
【0124】
本発明の他の実施形態では、冷媒ブレンドは、少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンとブレンドされた前述のフルオロエチレンのうちの1つ以上を含む。好適なヒドロフルオロカーボンの例は、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、HFC-236fa、及びHFC-227eaからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。ヒドロフルオロカーボンの量は、約25~約75重量%、約30~約60重量%、場合によっては約30~約50重量%の範囲であり得る。
【0125】
必要に応じて、ブレンドされた組成物は、HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの追加の構成要素を更に含み得る。追加の構成要素の量は、0超~約5重量%、約0~約2重量%、場合によっては約0~約0.5重量%を構成し得る。具体的な一実施形態では、前述の量の追加の構成要素を、HFO-1132及びHFO-1132aのうちの少なくとも1つとブレンドする。別の具体的な実施形態では、前述の量の追加の構成要素を、HFO1132及びHFO-1132aのうちの少なくとも1つと、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa、及びHFC-227eaからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンとブレンドし、場合によっては、二酸化炭素と組み合わせる。
【0126】
潤滑剤
一実施形態では、本発明の前述の組成物は、少なくとも1つの潤滑剤を更に含んでいてもよい。本発明の潤滑剤は、冷蔵又は空調装置と共に使用するのに好適なものを含む。これらの潤滑剤の中でも、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷蔵装置において従来用いられているものである。このような潤滑剤及びその特性は、参照により本明細書に組み込まれる1990 ASHRAE Handbook,Refrigeration Systems and Applications、第8章、表題「Lubricants in Refrigeration Systems」、8.1~8.21頁で論じられている。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「鉱油」として一般的に知られているものを含んでもよい。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖状及び分岐鎖状炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、パラフィンであってもよい環状又は環構造飽和炭化水素)、並びに芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素)を含む。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「合成油」として一般的に知られているものを更に含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分岐鎖状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、シリコーン、並びにポリ-アルファ-オレフィンを含む。本発明の代表的な従来の潤滑剤は、市販されているBVM 100 N(BVA Oilsによって販売されているパラフィン系鉱油)、Crompton Co.によって商標名Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSとして市販されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTとしてPennzoilから市販されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30としてCalumet Lubricantsから市販されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500としてShrieve Chemicalsから市販されている直鎖状アルキルベンゼン、並びにHAB 22としてNippon Oilによって販売されている分岐鎖状アルキルベンゼンである。
【0127】
別の実施形態では、本発明の潤滑剤は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計されており、かつ圧縮冷蔵及び空調装置の動作条件下で本発明の冷媒と混和できるものを含む。このような潤滑剤及びその特性は、「Synthetic Lubricants and High-Performance Fluids」、R.L.Shubkin、Marcel Dekker編、1993年で論じられている。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol,United Kingdom)などのポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemicals(Midland,Michigan))製のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
本発明の潤滑剤は、所与の圧縮器の要件、及び潤滑剤が曝されるであろう環境を考慮することによって選択される。潤滑剤の量は、約1~約50重量%、約1~約20重量%、場合によっては約1~約3重量%の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の組成物は、内燃機関を有する自動車用A/Cシステムで使用するためのPAG潤滑剤と組み合わされる。別の具体的な実施形態では、前述の組成物は、電気又はハイブリッド電気ドライブトレインを有する自動車用A/Cシステムで使用するためにPOE潤滑剤と組み合わされる。
【0129】
阻害剤及び潤滑剤を更に含む冷媒組成物を含む実施形態では、阻害剤は、冷媒組成物の液相中、冷媒組成物の気相中、及び/又は潤滑剤中に存在してもよい。本発明の一実施形態では、阻害剤は、2つの液相、すなわち、液相フルオロオレフィンと潤滑剤との間に分配される。フルオロオレフィンの液相中に存在する阻害剤の量は、約10~約80重量%、約25~約75重量%、及び場合によっては約45~約60重量%の範囲であり得るが、残りの阻害剤は、主に潤滑剤相中に存在する。
【0130】
例示的な実施形態では、阻害剤は、潤滑剤中に阻害剤の一部が存在するように、潤滑剤中に十分な混和性を有する。潤滑剤中に存在する阻害剤の量は、冷媒組成物が作動流体又は伝熱媒体として使用されるときに変化し得る。
【0131】
添加剤
本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤に加えて、組成物は、冷媒及び空調システムの寿命並びに圧縮器の耐久性を改善することができる少なくとも1つの添加剤を含み得ることが望ましい。本発明の一態様では、前述の組成物は、酸スカベンジャー、性能向上剤、及び火炎抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0132】
冷媒及びA/Cの寿命並びに圧縮器の耐久性を改善することができる添加剤が望ましい。本発明の一態様では、本発明の冷媒を含有する組成物を使用して、A/Cシステムの中に潤滑剤、並びに他の添加剤、例えば、a)酸スカベンジャー、b)性能向上剤、及びc)火炎抑制剤を導入する。
【0133】
酸スカベンジャーは、シロキサン、活性化芳香族化合物、又は両方の組み合わせを含んでもよい。Serranoら(米国特許出願公開第2011/0272624(A1)号(参照によって本明細書に組み込まれる)の段落38)には、シロキサンはシロキシ官能基を有する任意の分子であり得ることが開示されている。シロキサンは、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、又はアリール及びアルキル置換基の混合物を含有するシロキサンを含んでもよい。例えば、シロキサンは、ジアルキルシロキサン又はポリジアルキルシロキサンを含むアルキルシロキサンであってよい。好ましいシロキサンとしては、2つのケイ素原子と結合した酸素原子、すなわち構造:SiOSiを有する基が挙げられる。例えば、シロキサンは、式IV:R1[Si(R2R3)4O]nSi(R2R3)R4(式中、nは1以上である)のシロキサンであってよい。式IVのシロキサンは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上(例えば、約4以上)であるnを有する。式IVのシロキサンは、好ましくは約30以下、より好ましくは約12以下、最も好ましくは約7以下であるnを有する。好ましくは、R4基はアリール基又はアルキル基である。好ましくは、R2基は、アリール基若しくはアルキル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、R3基は、アリール基若しくはアルキル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、R4基はアリール基又はアルキル基である。好ましくは、R1、R2、R3、R4、又はこれらの任意の組み合わせは水素ではない。分子内のR2基は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、分子内のR2基は同じである。分子内のR2基は、R3基と同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、分子内のR2基とR3基とは同じである。好ましいシロキサンとしては、R1、R2、R3、R4、R5、又はこれらの任意の組み合わせが、メチル、エチル、プロピル、若しくはブチル基、又はこれらの任意の組み合わせである、式IVのシロキサンが挙げられる。使用されてもよい例示的なシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0134】
Serranoらから参照によって組み込まれるが、段落[0039]は、本発明の一態様では、シロキサンは、約1~約12個の炭素原子を含有するアルキルシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンであるということに留意している。シロキサンはまた、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル、又はこれらの任意の組み合わせであるポリジアルキルシロキサンなどのポリマーであってもよい。好適なポリジアルキルシロキサンは、約100~約10,000の分子量を有する。非常に好ましいシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、又はこれらの組み合わせから本質的になっていてよい。
【0135】
活性化芳香族化合物は、フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された任意の芳香族分子、又はその混合物であってよい。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された芳香族分子は、鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子であると定義される。特に、適用環境(ACシステム)において又はASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」の熱安定化試験中のいずれかに鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子である。このような分子又は化合物は、典型的には、以下の基、すなわち-NH、-NHR、-NRz、ADH、AD、-NHCOCH、-NHCOR、4OCH、-OR、-CH、4C、-R、又は-C(式中、Rは炭化水素(好ましくは、約1~約100個の炭素原子を含有する炭化水素)である)のうちの1つで芳香環の水素原子を置換することによって活性化される。活性化された芳香族分子は、酸素原子(すなわち、アルコール又はエーテル基の酸素原子)が芳香族基に直接結合しているアルコール又はエーテルであってもよい。活性化された芳香族分子は、窒素原子(すなわち、アミン基の窒素原子)が芳香族基に直接結合しているアミンであってもよい。例えば、活性化芳香族分子は式ArXRnを有していてもよく、式中XはO(すなわち酸素)又はN(すなわち窒素)であり、X=Oである場合、nは、1であり、x=Nである場合、nは、2であり、Arは芳香族基(すなわちC基)であり、Rは、H又は炭素含有基であってもよく、n=2である場合、R基は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、Rは、H(すなわち水素)、Ar、アルキル基、又はこれらの任意の組み合わせであってよく、本明細書における教示に係る冷媒組成物で使用されてもよい例示的な活性化された芳香族分子としては、ジフェニルオキシド(すなわち、ジフェニルエーテル)、メチルフェニルエーテル(例えば、アニソール)、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された非常に好ましい一芳香族分子は、ジフェニルオキシドである。
【0136】
Serranoらの段落[0045]から参照によって組み込まれるが、酸スカベンジャー(例えば、活性化された芳香族化合物、シロキサン、又は両方)は、任意の濃度で存在してもよく、その結果、全酸価が比較的低くなる、全ハロゲン化物濃度が比較的低くなる、全有機酸濃度が比較的低くなる、又はこれらの任意の組み合わせになる。好ましくは、酸スカベンジャーは、冷媒組成物の総重量に基づいて、約0.0050重量%超、より好ましくは約0.05重量%超、更により好ましくは約0.1重量%超(例えば、約0.5重量%超)の濃度で存在する。酸スカベンジャーは、冷媒組成物の総重量に基づいて、好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約2.5重量%未満、最もより好ましくは約2重量%未満(例えば、約1.8重量%未満)の濃度で存在する。
【0137】
冷媒組成物中に含まれてもよく、かつ好ましくは冷媒組成物から排除される酸スカベンジャーの追加例としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、オトレノキシド(otolenoxides)、又はエポキシ化大豆油などのエポキシ化合物のうちの1つ以上などの、Kaneko(参照により本明細書に明示的に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0290164号として公開された、米国特許出願第11/575,256号の段落42)によって記載されるもの、及びSinghら(参照により本明細書に明示的に組み込まれる、第20060116310号として公開された、米国特許出願第11/250,219号の段落34~42)によって記載されるものが挙げられる。
【0138】
好ましい添加剤としては、米国特許第5,152,926号、同第4,755,316号に記載されているものが挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。特に、好ましい極圧添加剤としては、(A)トリルトリアゾール若しくはその置換誘導体と、(B)アミン(例えば、Jeffamine M-600)と、(C)第3の成分であって(i)エトキシ化リン酸エステル(例えば、Antara LP-700型)若しくは(ii)リン酸アルコール(例えば、ZELEC 3337型)若しくは(iii)亜鉛ジアルキルジチオリン酸(例えば、Lubrizol 5139、5604、5178、又は5186型)若しくは(iv)メルカプトベンゾチアゾール若しくは(v)2,5-ジメルカプト-1,3,4-トリアジアゾール誘導体(例えば、Curvan 826)又はこれらの混合物である第3の成分との混合物が挙げられる。使用され得る添加剤の追加的な例は、米国特許第5,976,399号(Schnur,5:12-6:51、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0139】
酸価は、ASTM D664-01に従ってmgKOH/gの単位で測定される。全ハロゲン化物濃度、フッ素イオン濃度、及び全有機酸濃度は、イオンクロマトグラフィによって測定される。冷媒システムの化学安定性は、ASHRAE 97:2007(RA 2017)「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って測定される。潤滑剤の粘度は、ASTM D-7042に従って40℃で試験される。
【0140】
Mouliら(国際特許出願公開第2008/027595号及び同第2009/042847号)には、フルオロエチレンを含有する冷媒組成物における安定剤としてのアルキルシランの使用が教示されている。特定の冷媒組成物中では、リン酸塩、亜リン酸塩、エポキシド、及びフェノール系添加剤も使用されている。これらは、例えば、Kaneko(米国特許出願公開第2007/0290164号)及びSignら(米国特許出願公開第2006/0116310号)に記載されている。これら上述の出願は全て、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0141】
好ましい火炎抑制剤としては、参照により本明細書に組み込まれるカナダ特許第2,557,873号、表題「Compositions containing fluorine substituted olefins」に記載されているものが、国際特許出願公開第2009/018117A1号、表題「Compositions comprising fluoroolefins and uses thereof」に記載されている(参照により本明細書に明示的に組み込まれる)HFC-125及び/又はKrytox(登録商標)潤滑剤などのフッ素化生成物と共に挙げられる。
【0142】
本発明の組成物は、所望の量の個々の成分を合わせるための任意の簡便な方法によって調製することができる。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な槽内で成分を組み合わせることである。所望の場合、撹拌を使用してもよい。
【0143】
本発明は更に、少なくとも1つのフルオロエチレンと有効量の阻害剤とを含む組成物を凝縮させ、その後、冷却される対象付近で当該組成物を蒸発させることを含む、冷却を生じさせるためのプロセスに関する。
【0144】
冷却される対象は、冷蔵又は空調を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。固定式用途では、対象は、構造、すなわち、住宅若しくは商業構造の内部、又は食品若しくは医薬品などの腐敗しやすいもののための保管場所に存在していてよい。可搬式冷蔵用途では、対象は、道路、鉄道、海上、又は航空用の輸送ユニットに組み込まれていてよい。特定の冷蔵システムは、任意の可動キャリアに対して独立して動作し、これらは「インターモーダル」システムとして知られている。かかるインターモーダルシステムとしては、「コンテナ」(海上/陸上複合輸送)、並びに「スワップボディ」(道路及び鉄道複合輸送)が挙げられる。
【0145】
本発明は更に、加熱される対象付近で、少なくとも1つのフルオロエチレンと、有効量の、リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤とを含む組成物を凝縮させ、その後、当該組成物を蒸発させることを含む、加熱を生じさせるためのプロセスに関する。
【0146】
加熱される対象は、熱を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。これらは、冷却される対象と同様の方法で住宅又は商業用のいずれかの構造の内部に存在していてよい。更に、冷却について説明したような可搬式ユニットは、加熱を必要とするものと同様であってよい。特定の輸送ユニットは、輸送される材料が輸送コンテナ内で固化するのを防止するために加熱を必要とする。
【0147】
本発明の別の実施形態は、前述の組成物を含む空調又は冷凍装置に関する。
【0148】
本発明の別の実施形態は、気相及び/又は液相中の酸素及び/又は水濃度が約25℃の温度で約3体積ppm~約3,000体積ppm未満、約5体積ppm~約1,000体積ppm未満、場合によっては約5体積ppm~約500体積ppm未満の範囲である密閉容器内で気相及び/又は液相中に前述の組成物を保管することに関する。
【0149】
前述の組成物を保管するための容器は、気相及び液相を維持しながら組成物を密封することができる任意の好適な材料及び設計で構築することができる。好適な容器の例は、タンク、充填シリンダー、及び二次充填シリンダーなどの耐圧容器を含む。容器は、他の低合金鋼、ステンレス鋼、場合によってはアルミニウム合金の中でも、例えば、炭素鋼、マンガン鋼、又はクロム-モリブデン鋼などの、任意の好適な材料から構築することができる。容器は、可燃性物質を分配するのに好適な穿孔上部又は弁を備えていてよい。
【0150】
フルオロカーボン含有組成物を安定化させるために任意の好適な方法を使用することができるが、このような方法の例としては、他の好適な方法の中でも特に、前述の阻害剤を前述のフルオロエチレン組成物とブレンドすること、ライン及び容器を、阻害剤(例えば、窒素キャリアを含む阻害剤、又は本発明の安定化組成物)を含む材料でパージすることが挙げられる。
【0151】
一実施形態では、本発明の組成物は、阻害剤をフルオロエチレン成分及び潤滑剤のうちの少なくとも1つに添加し、次いでフルオロエチレン成分を潤滑剤と組み合わせることによって調製される。阻害剤が、フルオロエチレン又は潤滑剤のうちの1つのみに添加され、次いでフルオロエチレンと潤滑剤とが組み合わされる場合、阻害剤は、阻害剤がフルオロオレフィン及び潤滑剤中に存在するように分配される。別の実施形態では、阻害剤は、少なくとも1つのフルオロエチレン成分及び少なくとも1つの潤滑剤を含む組成物に添加することができる。
【0152】
本発明の別の実施形態は、気相及び/又は液相中の酸素及び/又は水の濃度が、約25℃の温度で約3体積ppm~約3,000体積ppm未満、約5体積ppm~約1,000体積ppm未満、場合によっては約5体積ppm~約500体積ppm未満の範囲、及びその間の全ての値である密閉容器内で、気相及び/又は液相の前述の組成物を保管することに関する。
【0153】
前述の組成物を保管するための容器は、気相及び液相を維持しながら組成物を密封することができる任意の好適な材料及び設計で構築することができる。好適な容器の例は、タンク、充填シリンダー、及び二次充填シリンダーなどの耐圧容器を含む。容器は、様々な低合金鋼、ステンレス鋼、場合によってはアルミニウム合金の中でも、例えば炭素鋼、マンガン鋼、クロム-モリブデン鋼などの任意の好適な材料から構築することができる。容器は、可燃性物質を分配するのに好適な穿孔上部又は弁を備えていてよい。
【実施例
【0154】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供され、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0155】
(実施例1)
対照1では、ロックボンベを排気した後、窒素ガス(N)でブランケットした。次いで、0.2gの開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、AlBN)をロックボンベに入れた。次いで、ロックボンベを排気し、試験組成物200gの、HFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)及び0.1%のAlBN開始剤(阻害剤を含まない)を充填した。次いで、ロックボンベを表1に示した温度及び時間で加熱した。ロックボンベを、ポリマー形成について、及びHFO-1132aポリマーピークを検出することによって、従来の方法に従ってIRを使用して、目視検査した。ポリマーはまた、従来のNMR法を用いることによって検出することもできる。
【0156】
実施例1~3では、試験組成物は、200gのHFO-1132又はHFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)、0.1%のAIBN開始剤、及び阻害剤として表1に列挙された量のd-リモネンを含んでいた。
【0157】
表1は、対照1の試験条件下で阻害剤なしで約3.7重量%のフルオロエチレンが重合したことを示している。実施例1において、阻害剤としてd-リモネンを500ppm添加すると、フルオロエチレンの重合量は0.25重量%に減少した。実施例2及び3において、阻害剤としてd-リモネンをそれぞれ1500ppmm及び3000ppmm添加すると、フルオロエチレンの重合量が0.1重量%未満に更に減少した。
【0158】
【表1】
【0159】
対照2については、40gのHFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)を、開始剤として0.6gの過硫酸アンモニウム及び0.6gのフッ素系界面活性剤を含有する200mLの脱イオン水に添加した。混合物を表1に示した温度及び時間で撹拌した。
【0160】
実施例4では、試験試料は、開始剤として0.6gの過硫酸アンモニウム、0.6gのフッ素系界面活性剤、及び阻害剤として0.34g(8000ppm)のd-リモネンを含有する200mLの脱イオン水に添加された40gのHFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)を含んでいた。
【0161】
表1は、約90重量%のフルオロエチレンが、対照2についての試験条件下で阻害剤なしで重合したことを示す。実施例4における阻害剤としての8000ppmのd-リモネンの添加は、冷媒ブレンドを安定化し、フルオロエチレンの重合量を0.1重量%未満に減少させた。
【0162】
(実施例2)
対照3については、30gのHFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)及び3300ppmの開始剤(空気)を振盪管に添加した。振盪管を表2に示した温度及び時間にわたって維持した。次いで、振盪管を室温に冷却し、ポリマー形成について調べた。
【0163】
実施例5~7について、混合物はまた、阻害剤として表2に列挙された量のd-リモネン又はα-テルピネンを含む。
【0164】
表2は、3重量%を超えるフルオロエチレンが、対照の試験条件下で阻害剤なしで重合したことを示す。表2に列挙された条件に対して実施例5~7に列挙された量で阻害剤を含めることは、冷媒ブレンドを安定化させ、フルオロエチレンの重合量を0.1重量%未満に減少させると予想される。
【0165】
【表2】
【0166】
対照4については、30gのHFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)及び10000ppmの開始剤(空気)を振盪管に添加する。振盪管を表2に示す温度及び時間にわたって維持する。
【0167】
実施例8~10では、混合物は、表2に列挙した量の阻害剤も含む。
【0168】
10重量%を超えるフルオロエチレンが、対照4の試験条件下で阻害剤なしで重合することが予想される。表2に列挙された条件に対して実施例8~10に列挙された量で阻害剤を含めることは、冷媒ブレンドを安定化させ、フルオロエチレンの重合の量を1重量%未満に減少させると予想される。
【0169】
対照5については、30gのHFO-1132a(少なくとも99.5重量%の純度を有する)及び1700ppmの開始剤(クメンヒドロペルオキシド)を210mL振盪管に添加する。振盪管を表2に示す温度及び時間にわたって維持する。
【0170】
実施例11~12では、混合物は、表2に列挙した量の阻害剤も含む。
【0171】
3重量%を超えるフルオロエチレンが、対照5の試験条件下で阻害剤なしで重合することが予想される。表2に列挙された条件に対して実施例11~12に列挙された量で阻害剤を含めることは、冷媒ブレンドを安定化させ、フルオロエチレンの重合の量を0.1重量%未満に減少させると予想される。
【0172】
(実施例3)
対照6については、(E)-HFO-1132、HFC-32、及びHFO-1234yfの混合物(30g)(すなわち、32重量%の1132と、44.2重量%のHFC-32と、23.8重量%の1234yfに相当する)を含む冷媒ブレンドと、2000ppmの開始剤(空気)とを、210mL振盪管に添加する。振盪管を表3に示す温度及び時間にわたって維持する。
【0173】
実施例13~18では、表3に列挙した阻害剤及び潤滑剤を、210mL振盪管中の対照6と同じ冷媒ブレンド及び開始剤に添加する。振盪管を表3に示す温度及び時間にわたって維持する。
【0174】
0.5重量%を超える冷媒が、対照7の試験条件下で阻害剤なしで重合することが予想される。表3に列挙された条件に対して実施例13~18に列挙された量で阻害剤を含むことは、冷媒ブレンドを安定化させ、検出可能な量の冷媒の重合を生成しないことが予想される。
【0175】
【表3】
【0176】
対照7については、(E)-HFO-1132、CFC-32、及びHFO-1234yfの上記混合物(30g)と、10000ppmの開始剤(空気)とを含む冷媒ブレンドを、210mL振盪管に加える。振盪管を表3に示す温度及び時間にわたって維持する。
【0177】
実施例19~24では、表3に列挙した阻害剤及び潤滑剤を、210mL振盪管中の対照7と同じ冷媒ブレンド及び開始剤に添加する。振盪管を表3に示す温度及び時間にわたって維持する。
【0178】
3重量%を超える冷媒が、対照7の試験条件下で阻害剤なしで重合することが予想される。表3に列挙された条件に対して実施例19~24に列挙された量で阻害剤を含むことは、冷媒ブレンドを安定化させ、検出可能な量の冷媒の重合を生成しないと予想される。
【0179】
(実施例4)
本発明の安定化フルオロエチレン組成物は、冷媒用途に使用することができる。図1A、1B、及び1Cは、1234yf、1132(E)、32、及び143aを含む組成物の冷蔵性能を示すチャートである。
【0180】
(実施例5)
本発明の安定化フルオロエチレン組成物は、冷媒用途に使用することができる。図2A、2B、及び2Cは、1234yf、1132(E)、及び32を含む組成物の冷蔵性能を示すチャートであり、本発明の組成物が従来使用されているR-404Aと同様の条件下で使用できることを示している。
【0181】
(実施例6)
本発明の安定化フルオロエチレン組成物は、冷媒用途に使用することができる。図3A、3B及び3Cは、1234yf、1132(E)、及び32を含む組成物の冷蔵能力を示すチャートであり、本発明の組成物が従来使用されているR-123と同様の条件下で使用できることを示している。
【0182】
(実施例7)
(E)1132a(30g)及び開始剤の混合物を、阻害剤と共に又は阻害剤なしで、210mLの振盪管中で一定時間加熱する。振盪管を室温に冷却し、ポリマー形成について目視検査する。結果を表4に示す。
【0183】
【表4】
【0184】
(実施例8)
以下のブレンド、E-1132/1234yf(重量基準で、23/77)、E-1132/32(重量基準で、56/44)、及びE-1132/32/1234yf(重量基準で、32/44.2/23.8)を、実施例7の方法に従って評価する。これらブレンドの評価の結果を、表5に示す。
【0185】
【表5-1】
【0186】
【表5-2】
【0187】
(実施例9)
実施例8に開示された組成物の冷蔵性能を、
コンピュータモデリングを用いて評価した。結果を表6に報告する。
【0188】
【表6】
【0189】
【表7-1】
【0190】
【表7-2】
【0191】
(実施例10)
1132E、1234yf、及びプロパンを含む組成物の冷凍性能を、コンピュータモデリングを用いて評価した。評価結果を下記表7に示す。
【0192】
【表8】
【0193】
【表9-1】
【0194】
【表9-2】
【0195】
特定の態様、実施形態、及び原理を上に記載してきたが、本明細書は例示のためだけに作成されたものであり、本発明又は添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではないと理解される。前述の様々な態様、実施形態、及び原理は、単独で、及び互いに組み合わせて使用することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
【国際調査報告】