(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を電解触媒として用いた固体酸化物形電解セル
(51)【国際特許分類】
C25B 11/044 20210101AFI20240705BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240705BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240705BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20240705BHJP
C25B 1/26 20060101ALI20240705BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20240705BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240705BHJP
C25B 11/031 20210101ALI20240705BHJP
【FI】
C25B11/044
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B1/23
C25B1/26 B
C25B9/00 Z
C25B13/07
C25B9/23
C25B11/031
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501935
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022073481
(87)【国際公開番号】W WO2023288174
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GR
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンマード、アフマド ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アムル、イサム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ユークオ
(72)【発明者】
【氏名】リトショース、ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】オスマン、ラシド エム.
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA01
4K011AA11
4K011AA16
4K011AA69
4K011BA01
4K011BA06
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA02
4K021DB18
4K021DB40
4K021DB43
4K021DC01
4K021DC03
4K021DC15
(57)【要約】
固体酸化物形電解セルアセンブリ(SOEC)及びSOECを作製する方法が提供される。例示的な方法は、官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を形成することを含む。官能基化ZTCは、CaXゼオライトを形成することと、化学気相堆積(CVD)プロセスを使用してCaXゼオライト内に炭素を堆積させて炭素/ゼオライト複合体を形成することと、フッ化水素酸を含む溶液を用いて炭素/ゼオライト複合体を処理してZTCを形成することと、ZTCを処理して触媒部位を付加することと、によって形成される。この方法では、官能基化ZTCと仮焼成された固体酸化物電解質との混合物を形成することと、この混合物を仮焼成することと、によって、官能基化ZTCが電極に組み込まれる。この方法は、電極アセンブリを形成することと、SO電解セルアセンブリを形成することと、SO電解セルアセンブリを熱源に結合することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形電解セルアセンブリ(SOEC)を作製するための方法であって、
官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を形成することであり、
CaXゼオライトを形成すること、
化学気相堆積(CVD)プロセスを使用して前記CaXゼオライト中に炭素を堆積させて、炭素/ゼオライト複合体を形成すること、
フッ化水素酸を含む溶液を用いて、前記炭素/ゼオライト複合体を処理して、ZTCを形成すること、及び
前記ZTCを処理して触媒部位を付加し、前記官能基化ZTCを形成すること、
を含む、官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を形成することと、
前記官能基化ZTCを電極に組み込むことであり、
前記官能基化ZTCと仮焼成された固体酸化物電解質との混合物を形成すること、及び
前記混合物を仮焼成すること、
を含む、前記官能基化ZTCを電極に組み込むことと、
電極アセンブリを形成することと、
SO電解セルアセンブリを形成することと、
前記SO電解セルアセンブリを熱源に結合することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記CaXゼオライトが、NaXゼオライトをカルシウムイオンとイオン交換することによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CVDプロセスが、有機前駆体ガスとして、プロピレン、エタノール、若しくはアセチレン、又はそれらの任意の組合せを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CVDプロセスが、有機前駆体ガスとしてアセチレンを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アセチレンがヘリウム中に2体積%の溶体として添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記CVDプロセスが、823K~1123Kの温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記CVDプロセスが、
アセチレンを含むガス流を使用し、第1の温度で前記CaXゼオライトのマトリックス中に炭素を堆積させることと、
前記ガス流をヘリウム流に切り替えることと、
前記温度を第2の温度まで上昇させることと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記第1の温度が875Kよりも低い、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の温度が約823Kである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の温度が1120Kよりも高い、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の温度が約1123Kである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
冷却して前記第1の温度に戻すことと、
前記ガス流を、アセチレンを含む前記ガス流に切り替えることと、
前記第1の温度で前記CaXゼオライトのマトリックス中に炭素を堆積させることと、
前記ガス流を前記ヘリウム流に切り替えることと、
前記温度を前記第2の温度まで上昇させることと、
によって、前記CVDプロセスを繰り返すことを
含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
溶液滴下含浸技術を使用して前記官能基化ZTCを形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
活性金属前駆体を溶解して水溶液を形成することと、
前記ZTCの細孔容積に対応する量の前記水溶液を前記ZTCに添加して、金属/ZTC複合体を形成することと、
前記金属/ZTC複合体を乾燥させることと、
前記金属/ZTC複合体を焼結して前記官能基化ZTCを形成することとを、
含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
スパッタリングによって、前記官能基化ZTCをアノード上、カソード上、又はその両方に組み込むことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記官能基化ZTCが組み込まれた前記アノードを焼成してセラミックアノードを形成することと、
前記固体酸化物電解質(SOE)を焼成してセラミックSOEを形成することと、
前記官能基化ZTCが組み込まれた前記カソードを焼成してセラミックカソードを形成することと、
前記セラミックアノード、前記セラミックSOE、及び前記セラミックカソードをアセンブリに組み立てることと、
前記アセンブリを焼成して前記電極アセンブリを形成することと、
によって、前記電極アセンブリを形成すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
固体酸化物形電解セル(SOEC)であって、
アノード、
固体酸化物電解質、及び
カソード、
を備える電極アセンブリ(EA)であり、
前記アノード、前記カソード、又はその両方が官能基化ゼオライト鋳型化炭素(ZTC)を含む、電極アセンブリ(EA)と、
水蒸気と二酸化炭素との混合物のための入口、
水素と一酸化炭素との混合物のための出口、
酸素のための出口、及び
前記SOECに熱を供給するための加熱システム、
を備える筐体と、
外部電源から前記SO電解セルに電流を供給するために前記カソードに結合されている電源供給配線と、
前記外部電源に結合されている、前記アノードからの戻り配線と、
を具備する、固体酸化物形電解セル(SOEC)。
【請求項18】
前記アノードと前記SOとの間の界面に配置された官能基化ゼオライト鋳型炭素の層、前記カソードと前記SOとの間の界面に配置された官能基化ゼオライト鋳型炭素の層、又は、その両方に配置された官能基化ゼオライト鋳型炭素の層を含む、請求項17に記載のSOEC。
【請求項19】
前記固体酸化物電解質がイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含む、請求項17に記載のSOEC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年7月14日に出願されたギリシャ特許出願第20210100471号及び2021年10月8日に出願された米国特許出願第17/450,406号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を電解触媒として使用することにより、固体酸化物形電解セルの性能を向上させることを目的とする。
【背景技術】
【0003】
電解セルは、エネルギー貯蔵のために水から水素を生成する代替エネルギー技術である。電解セルは、風力タービン、太陽電池、又は水力発電などの再生可能資源からの電力を使用することができる。あるいは、電解セルは、原子炉からの電力、又は化学処理施設若しくは製油所における廃棄物のエネルギーから生成された電力を使用することができる。個々の電解セルは、3つの主要な構成要素である、2本の電極(アノード及びカソード)並びに導電性電解質を含む。
【0004】
固体酸化物形電解セル(SOEC)は、水蒸気を電気分解して水素及び酸素を生成するために使用することができる電解槽の一種である。さらに、SOECを使用して、他の生成物を生成中にCO2を隔離することができる。例えば、SOECは、CO2及びH2Oの原料流を取り込み、他の生成物を生成することができる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の一実施形態は、固体酸化物形電解セルアセンブリ(SOEC)を作製するための方法を提供する。SOECは、官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を形成することを含む。官能基化ZTCは、CaXゼオライトを形成することと、化学気相堆積(CVD)プロセスを使用してCaXゼオライト内に炭素を堆積させて炭素/ゼオライト複合体を形成することと、フッ化水素酸を含む溶液を用いて炭素/ゼオライト複合体を処理してZTCを形成することと、ZTCを処理して触媒部位を付加することと、によって形成される。この方法では、官能基化ZTCと仮焼成された固体酸化物電解質との混合物を形成することと、この混合物を仮焼成することと、によって、官能基化ZTCが電極に組み込まれる。この方法は、電極アセンブリを形成することと、SO電解セルアセンブリを形成することと、SO電解セルアセンブリを熱源に結合することとを含む。
【0006】
別の実施形態は、固体酸化物形電解セル(SOEC)を提供する。SOECは、電極アセンブリ(EA)を含む。EAは、アノード、固体酸化物電解質及びカソードを含み、アノード、カソード、又は、その両方は、官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を含む。SOECには、筐体であって、水蒸気と二酸化炭素との混合物用の入口と、水素と一酸化炭素との混合物用の出口と、酸素用の出口と、SOECに熱を供給するための加熱システムと、を有する筐体が含まれる。SOECは、外部電源からSO電解セルに電流を供給するためにカソードに結合された電源供給配線と、外部電源に結合された、アノードからの戻り配線と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1はZTC担持触媒をアノードとSOとの間の界面及びSOとカソードとの間の界面で使用するSO電解セルの概略図である。
【
図2】
図2は高分子電極膜電解セルアセンブリを作製する方法のプロセスフロー図である。
【
図3】
図3はCaXと市販のNaXとのNH
3-TPD(昇温脱離)プロファイルを比較するプロットを示した図である。
【
図4】
図4はゼオライト鋳型炭素(ZTC)の合成の概略図である。
【
図5】
図5は形成された様々なZTCの結果のXRDプロットを示した図である。
【
図6A】
図6Aは3つの異なるZTCのN
2吸脱着等温線のプロットを示した図である。
【
図6B】
図6BはNLDFTアルゴリズムを使用したZTCの細孔径分布のプロットを示した図である。
【
図7】
図7は合成プロセスの様々な工程で収集されたゼオライト-炭素複合体(ゼオライト鋳型除去なし)のN
2吸脱着等温線のプロットを示した図である。
【
図8A】
図8Aは表3の代表的な試料のN
2吸着等温線及びXRDパターンを示した図である。
【
図8B】
図8Bは表3の代表的な試料のN
2吸着等温線及びXRDパターンを示した図である。
【
図8C】
図8Cは表3の代表的な試料のN
2吸着等温線及びXRDパターンを示した図である。
【
図9】
図9は官能基化ZTCを形成する触媒粒子を含浸させたZTCの図である。
【
図10】
図10はSOとアノードとの間の界面及びSOとカソードとの間の界面に官能基化ZTCが組み込まれた電極アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
固体酸化物形電解セル(SOEC)は、一般に、高温、例えば、約700°C~約1100°Cで動作される。高温CO2電気分解法は、CO2の貯蔵のための技術を提供する。さらに、合成ガス流の形成は、合成炭化水素燃料などの他の物質の製造のための原料流を提供する。しかしながら、高温は、材料の劣化及び腐食速度の上昇を引き起こしかねず、問題をはらんでいる。さらに、電解プロセスは吸熱性であるため、より高い温度を維持するためには、より多くのエネルギーを必要とする。
【0009】
様々な実施形態において、本明細書に記載の技術は、傾斜構造化された炭素-セラミック複合体として形成されたアノード電極及びカソード電極であって、電解触媒としてゼオライト鋳型炭素(ZTC)を含むアノード電極及びカソード電極を提供する。傾斜機能材料(FGM)は、組成及び構造が容積にわたり徐々に変化することにより特徴付けることができ、対応する変化を材料の特性にもたらす。材料は、特定の機能及び用途に向けて設計することができる。バルク(微粒子処理)、プリフォーム処理、層処理及び溶融処理に基づく様々な手法が、傾斜機能材料を作製するために使用されている。FGMには多くの応用分野がある。この概念は、微細構造を材料ごとに特定の勾配で変化させることによって複合材料を製造することである。電解触媒は、カソード側で化学種を還元し、カソードで化学種を酸化する。SO電解セルでは、酸素イオンO2-は、本明細書に記載されるように、例えばマクロスケールで混合導体として効果的に挙動する、固体電解質とゼオライト鋳型炭素(ZTC)とから作られた複合体などの代替カソード材料を使用する固体電解質、並びに、金属及び金属酸化物含有ZTCを使用する固体電解質によって、このプロセスのアノード側に拡散する。上述の材料は、高いイオン伝導率及び電気伝導率を示し、CO2還元及び高い表面酸素交換係数に利用可能な面積を増大させる。
【0010】
固体酸化物形電解セルの動作温度を約600°C以下に低下させることは、材料の安定性及び長期動作安定性にとって望ましい。これには、CO2還元のための高い電解触媒活性を有する新世代のカソード電極の開発が必要である。
【0011】
電解触媒は、電子移動反応に関与して反応速度を上げることができ、したがって平衡電位に可能な限り近い電位の電流にまで増大させることができる。本明細書に記載のZTC電解触媒は、電子移動を促進することができるとともに、動作温度を低下させ得る速度論の効率を高めることができる。SOECは、水蒸気電解並びに二酸化炭素の一酸化炭素及び酸素への電気分解(CO
2→CO+1/2 O
2)に使用することができる。CO
2/H
2O混合物の電気分解は
図1を参照して説明される。
【0012】
図1は、アノード104とSO電解質106との間の界面102及びSO電解質106とカソード108との間の界面102においてZTC担持触媒を使用する固体酸化物形電解セル(SOEC)100の概略図である。様々な実施形態において、SO電解質は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、CeO
2、又は他の種類の酸素イオン伝導体である。正の水素イオン(プロトン)をアノードからカソードに高分子電解質を介して伝導するプロトン交換膜燃料電池とは対照的に、SOECは固体酸化物(SO)電解質を使用して負の酸素イオンをカソードからアノードに伝導する。本明細書で使用される場合、アノード104、SO電解質106、及びカソード108は、ZTC担持触媒層を有しつつ、電極アセンブリ(EA)110を形成している。電極アセンブリ(EA)110は筐体112内に支持されている。
【0013】
アノード104での半反応を以下に示す。
2O2-→ O2+4e-
アノード104で生成された酸素114は、出口を通って筐体112から出ていく。一部の実施形態では、スイープガス流116を使用して、筐体112から酸素114を押し流す。
【0014】
筐体112の別の入口は、二酸化炭素118及び水蒸気120をカソード108に供給するために使用される。カソード108での半反応を以下に示す。
H2O+2e-→ H2+O2-
CO2+2e-→ CO+O2-
カソード108で生成された水素122及び一酸化炭素124は、出口を通って筐体112から出ていく。電子は、外部電源126によって供給される。二酸化炭素118又は水蒸気120の還元によってカソードで生成された酸素イオンは、膜を介してアノードに輸送され、酸素114を生成する。
【0015】
水蒸気120を使用してSOEC100を動作温度に維持することができるが、一部の実施形態では、筐体は、熱を加えるための加熱システム128、例えば、スチームコイル、高温ガス供給などを備えている。図示されていないが、一部の実施形態では、加熱システム128は、熱を供給するためにEA110と接触している配線又はコイルを有する。SOEC100がSO燃料電池(SOFC)として可逆動作で使用される場合、SOFCとしての動作中に発生した熱は、電気分解中に使用するために貯蔵されてもよい。例えば、一実施形態では、燃料電池としての動作中に発生した熱は、溶融塩としてリザーバに貯蔵され、溶融塩はSOEC100全体に送り込まれ、電気分解中に熱を供給する。
【0016】
界面102に位置する官能基化ZTCに担持された触媒は、半電池反応の活性化エネルギーを低下させる。ZTCは非常に大きな表面積を有するので、触媒は効率を高め、動作温度を低下させることができる。
【0017】
水素を生成することに加えて、SOEC100は、CO2ニュートラルな合成炭化水素燃料及び有価物質を供給するために使用することができる。SOEによりもたらされたCOは、水素と組み合わされて、フィッシャー・トロプシュ反応又はメタン化反応を介して、例えば以下の反応において、メタノール、メタン及びジメチルエーテル(DME)などの合成燃料に接触転化され得る。
(2n+1)H2+nCO → CnH2n+2+nH2O
【0018】
高温電解は、変換効率が高いという利点を有し、変換効率は90%を超えることもある。鉱工業生産からの廃熱又は天然資源由来などの外部熱源の使用は、効率を高めるために使用することができる。
【0019】
図2は、高分子電極膜電解セルを作製するための方法200のプロセスフロー図である。方法200は、ブロック202において、NaXゼオライトをCa
2+イオンとイオン交換してCaXゼオライトを形成することから開始する。ゼオライトXが本明細書に詳細に記載されているが、他のゼオライト、例えば、とりわけ、ゼオライトY、又は、ゼオライトBAU等を実施形態で使用してもよい。ゼオライトの選択及び使用される任意の処理(イオン交換など)の選択は、ゼオライトの温度安定性及び細孔径に基づくことができる。
【0020】
ブロック204において、炭素をゼオライト中に堆積して、炭素/ゼオライト複合体を形成する。様々な実施形態では、高温でゼオライトを有機前駆体ガスに曝露することによってゼオライト中に炭素を堆積させるために化学気相堆積(CVD)プロセスが行われ、CVDプロセスによりゼオライトの細孔中に炭素を堆積させる。堆積後、堆積した炭素を含むゼオライトを加熱して堆積炭素を炭化させ、炭素/ゼオライト複合体を形成する。本明細書に記載の実施形態では、ヘリウムとの混合物中のプロピレン、エタノール又はアセチレンにCaXゼオライトを曝露することによって、炭素はCaXゼオライト中に堆積される。様々な実施形態において、堆積及び熱処理の温度範囲は、約820K~1125Kである。一部の実施形態において、堆積温度は、約820K~約975Kである。一実施形態において、堆積温度は、約823Kである。別の実施形態において、堆積温度は、約873Kである。
【0021】
ブロック206において、HFを含む酸水溶液を用いて、炭素/ゼオライト複合体を処理してCaX鋳型を除去し、ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を形成する。様々な実施形態において、酸水溶液は、HF及びHClをほぼ等量含む。様々な実施形態において、酸水溶液はHF及びHClの各々を約2重量%、HF及びHClの各々を約3重量%、又はHF及びHClの各々を約4重量%含む。
【0022】
ブロック208において、ZTCを処理して触媒部位を付加し、官能基化ZTCを形成する。電極又は電解触媒として機能させるために、酸化物、金属、又は金属酸化物がZTCに添加される。これは、当技術分野で公知のいくつかの技術、とりわけ、湿式含浸、スパッタリング、スパッタ蒸着、ドーピング、化学的機能化、熱コーティング、又は電気化学コーティング等によって行うことができる。一部の実施形態では、溶液滴下含浸技術によって実施される。
【0023】
溶液滴下含浸法(IW又はIWI)は、キャピラリー含浸法又は乾式含浸とも呼ばれ、不均一触媒の合成に一般的に使用される技術である。通常は、活性金属前駆体は、水溶液又は有機溶液に溶解される。次いで、金属含有溶液が、添加した溶液の体積と同じ細孔容積を有する触媒担体に添加される。毛細管現象により、溶液が細孔内に吸い込まれる。担体の細孔容積よりも過剰に添加された溶液は、溶液輸送を毛細管現象から拡散プロセスへと変化させ、拡散プロセスははるかに遅い。次いで、溶液中の揮発性成分を放出させるために触媒を乾燥及び仮焼成して、触媒表面に金属を堆積させることができる。最大担持量は、溶液中の前駆体の溶解度によって制限される。含浸化合物の濃度プロファイルは、含浸及び乾燥中の細孔内の物質移動条件に依存する。
【0024】
ブロック210において、官能基化ZTCが電極に組み込まれる。この組込みは、含浸、吸引含浸、化学的架橋、又は混合とそれに続く仮焼成によって行うことができる。例えば、一実施形態では、官能基化ZTCは仮焼成した固体電解質と混合され、次いで両方が一緒に仮焼成される。
【0025】
他の実施形態では、金属スパッタリングによって金属及び金属酸化物アノードを含む電極を作製することができる。官能基化ZTCは、スパッタリング室に導入することができる。薄い金属膜を最初にスパッタリング堆積することができ、官能基化ZTCを含む金属酸化物の第2の層を金属膜の上に堆積することができる。様々な実施形態では、マグネトロンスパッタリングシステムが堆積に使用される。高純度のアルゴン及び酸素をそれぞれスパッタリングガス及び反応性ガスとして用いることができる。
【0026】
ブロック212において、電極アセンブリが形成される。これは、単一のセラミックブロックを形成する、アノードと、固体酸化物と、カソードとを含む多層構造を焼成することによって行うことができる。官能基化ZTCは、アノードと固体酸化物との間のセラミック層、固体酸化物とカソードとの間のセラミック層、又は電極自体の中に組み込まれてもよい。一部の実施形態では、集電体は、電極及びSOを有するブロックに形成される。
【0027】
ブロック214において、SO電解セルアセンブリが形成される。様々な実施形態において、このことは、筐体に電極アセンブリ(EA)を取り付けることによって行われる。筐体は、水蒸気とCO2との混合物用の入口、酸素用の出口及びCOとH2との混合物(合成ガス)用の出口を備えている。一部の実施形態では、筐体は、例えば水蒸気、他のプロセスからの廃熱、太陽熱などによって加熱するためのコイルを備えている。EAは、例えばセラミック接着剤を用いて、筐体に密封され、その後部品が焼成される。こうして、水素側からのガスが酸素側に接触するのを防止する。一部の実施形態では、水素の生産性を高めるために、いくつかの筐体ユニットが積み重ねられる。様々な実施形態において、加熱システムは、電解セルの温度を動作温度に維持するために熱源に結合されている。
【0028】
<実施例>
【0029】
電極作製工程
【0030】
電解質(イオン伝導体)上のゼオライト鋳型炭素(ZTC)の合成。
【0031】
CaXゼオライトの炭素レプリカ
【0032】
0.32MのCa(NO3)2溶液200mL中で試料10gを4時間撹拌することにより、NaX(超大型結晶ではない市販のゼオライト)をCa2+でイオン交換することによって、CaXゼオライトを調製した。Ca2+交換によりゼオライト中に酸性部位を生成することができ、この酸性部位は、ゼオライトのミクロ孔内の炭素堆積に触媒作用を及ぼすとともに、CVDに使用される条件の中でゼオライト鋳型の熱安定性をも高める。
【0033】
図3は、CaX 302と市販のNaX 304とのNH
3-TPD(昇温脱離)プロファイルを比較するプロット300である。プロット300は、NaXゼオライトのCa
2+によるイオン交換により酸性度が生じ得ることを示している。このことは、ミクロ孔内の選択的炭素堆積に役立ち、ゼオライト鋳型の熱安定性を高める。
【0034】
プロット300において、CaX 302は、473K及び653Kにおいて2つの脱着ピークを示し、2種類の酸性部位の存在を示している。対照的に、NaXツールは、いかなる脱着プロファイルも示さず、酸性度も呈さない。
【0035】
表1に示すように、CaXゼオライトはまた、NaXよりも高い熱安定性を有し、結晶化度は973K以下の温度で変化しない。炭素堆積条件が873~973Kの温度における化学気相堆積(CVD)を使用するため、この熱安定性は有用である。
【0036】
【0037】
ゼオライト中の炭素堆積
【0038】
Xゼオライト中の炭素堆積は、従来のプラグフロー反応器で行った。典型的には、1gのNaX試料又はCaX試料をプラグフロー反応器に入れ、He流下で温度を指定の温度に上昇させた。例えば、約823K~約973Kの温度範囲が、ゼオライトのミクロ孔に炭素を選択的に堆積させるのに適している。NaX及びプロピレンを使用する一部の実施形態では、温度は973Kである。温度を30分間安定させた後、ガスを有機前駆体ガスに切り替えた。3種類の異なる有機前駆体ガスを炭素堆積に使用した。有機前駆体ガスは、プロピレン、エタノール及びアセチレンであり、それぞれの動力学径は0.45nm、0.45nm及び0.33nmであった。これらは混合物中で使用し、プロピレンは、プロピレンを2%含むHe(200mL/分・g)混合物として添加した。エタノールは、バブラーを6kPaで使用し、室温においてエタノールを飽和させたヘリウムガス流(200mL/分・g)として添加した。アセチレンは、Heガス中にアセチレンを2体積%含む(200mL/分・g)混合物として添加した。有機前駆体ガスを規定時間流した後、ガスをHeに切り替え、反応器を室温にまで冷却した。有機前駆体ガスのゼオライトへの組込みにより、ゼオライト/炭素複合体が得られた。
【0039】
ゼオライト鋳型の除去
【0040】
ゼオライト鋳型を除去し、ミクロ多孔性炭素を形態化するために、ゼオライト/炭素複合体をHCl及びHF(HClが3.4重量%/HFが3.3重量%)の水溶液を用いて、室温にて2回(1回当たり1時間)処理した。これにより、ミクロ多孔性炭素が形成された。得られた鋳型なし炭素材料を溶液から濾過し、脱イオン水で十分に洗浄し、373Kで一晩乾燥させた。
【0041】
図4はゼオライト鋳型炭素(ZTC)の合成の概略図である。本明細書で使用する場合、ZTCをミクロ多孔性炭素と称することもある。ゼオライト402を、例えばイオン交換で処理してCaXを形成することができる。
図4に示すように、ゼオライト402は、炭素含浸及び炭化によってゼオライトの細孔内に堆積した炭素を有する。これにより、炭素/ゼオライトナノ複合体404が形成される。炭素/ゼオライトナノ複合体404を、HCl/HFを用いた酸浸出に曝露してZTC406を形成する。
【0042】
CaXの炭素レプリカのための有機前駆体の最適化
【0043】
図5は、形成された様々なZTCで得られたX線粉末回折(XRD)プロット500である。本明細書で使用される場合、XRDは結晶材料の相同定に使用され、単位格子の寸法に関する情報を提供することができる。分析する材料を細かく粉砕し、均質化し、平均バルク組成を決定する。XRDは、構造の特徴を明らかにするために使用される。CaX中の炭素堆積のためのCVD条件を最適化するために、2種の異なる炭素前駆体であるプロピレン及びエタノールを異なる温度で堆積させた。
図5及び本明細書の説明では、得られたZTCはCaX-tttNxとして命名し、式中、CaXはゼオライト鋳型を示し、tttはCVDのケルビン(K)単位の温度を示し、Nは有機前駆体ガスを、例えばプロピレンの場合はPで、エタノールの場合はEで、又はアセチレンの場合はAで表す。項目xはCVD反応時間(h)を示す。したがって、CaX-973P5-C 502は、5時間のCVD反応時間の有機前駆体ガスとしてプロピレンを用い、973KのCVD堆積温度で鋳型としてCaXを用いて形成されたZTCである。さらに、鋳型が除去されている場合、これは名称の最後に-Cを追加することによって示される。
図4に示す他のZTCには、CaX-973E6-C 504及びCaX-1073E6-C 506が含まれる。上記の命名法に関して記載したように、後者の2つは両方とも、有機前駆体ガスとしてエタノールを使用して、それぞれ973K及び1073Kの温度で形成された。
【0044】
XRDプロット500に示すように、鋳型としてCaXを使用して形成されたZTCは、約5°~約6°の2θ付近に幅広いピークを有し、この幅広いピークはミクロ孔の配列における構造秩序の存在を示している。CaX-973P5-C 502は、約5°~約6°の2θに最も高精細なピークを示し、ゼオライト構造の最も忠実なレプリカを示した。本明細書で使用される場合、XRDプロット500の参照番号、例えば502,504及び506は、特定の構造を指し、以下のプロットで同じ構造を示すために使用される。
【0045】
図6Aは、3つの異なるZTCのN
2吸脱着等温線のプロットである。これらの各プロット及び以下のプロットにおいて、黒丸は昇圧プロセス中に収集された値を表し、白丸は降圧プロセス中の値を表す。1つの黒丸及び1つの白丸の各グループは、吸着及び脱着の1サイクルを表す。
図6Bは、非局所密度汎関数理論(NLDFT)アルゴリズムを使用したZTCの細孔径分布のプロットである。当技術分野で知られているように、密度汎関数理論(DFT)は、量子力学的計算から構造的特徴を決定するために使用される量子力学的モデリングプロセスである。同様の番号が付けられたプロットは、
図5と同じ材料を参照するための同じ参照番号を使用する。
【0046】
図6AのN
2吸脱着等温線(表2)に示すように、炭素材料は二重多孔性を示し、直径約1.5nm~約2nmのミクロ孔と、約2nm~約5nmの細孔を有するメソ多孔性を示していた。初期CaXはミクロ多孔性構造のみを含有していたので、メソ孔、例えば約0.40cm
3g
-1未満のメソ孔の存在は、ゼオライトのミクロ多孔性構造のレプリカが不完全であることを示している。炭素レプリカ中のメソ孔の存在は、炭素によるゼオライトのミクロ孔の充填が不完全であることに起因する可能性がある。
【0047】
有機前駆体は、立体効果のために、炭素充填が一定レベルを超えるとゼオライトのミクロ孔内に拡散しないことがある。したがって、より大きな表面積及びミクロ孔容積をもたらすより良好な炭素充填は、アセチレンなどのより小さい炭素前駆体を使用して達成され得る。表2において、CaX-1023A2-C試料は、プロピレンを用いて調製された試料(1900m2g-1)及びエタノールを用いて調製された試料(1792m2g-1)よりもはるかに大きな表面積(2567m2g-1)を呈したことに留意されたい。さらに、CaX-1023A2-Cは、最大のミクロ孔容積(1.09cm3g-1)を示した。
【0048】
【0049】
CaXゼオライトへのアセチレン取り込みのためのCVD条件の最適化
【0050】
表2の結果は、ゼオライトの忠実な炭素レプリカに対してアセチレンが最も適していることを示している。これは、アセチレンの動力学径(0.33nm)が最小でありC/H比が最大であることに起因する可能性が高い。アセチレンを用いて1023Kで2時間のCVDによって合成した炭素レプリカは、比較的大きなBET表面積(2567m2g-1)及び大きなミクロ孔容積(>1.00cm3g-1)を示した。しかしながら、このような合成結果は、特に大量のゼオライト鋳型(>1g)を炭素CVDに使用する場合、再現することが困難であった。再現性及びスケールアップの制限は、ゼオライト鋳型炭素材料の実際的応用にとっての主な障害となっている。
【0051】
大きな結晶子のCaX(LCaX)からレプリカされたZTCの特性
【0052】
上記の技術を使用して、大きな結晶子サイズ(例えば約10μm~約20μm)を有するCaXからZTCを合成した。ゼオライト自体は、本明細書のデータ及びプロットにおいてLCaX 702と称する。得られた構造特性を表3に示す。以下では、より大きな結晶のCaXを用いて合成した試料をLCaXという接頭語で表し、小さい結晶子(約2μm以下)を有するCaXを用いて合成した試料と区別する。したがって、試料は、「ゼオライト鋳型-CVD温度-CVD時間-熱処理-鋳型」という命名法で示される。例えば、LCaX-873-4H-Cは、アセチレンを用いて873Kで4時間のCVDによって合成され、熱処理が施された後、ゼオライト鋳型の除去によって合成されたミクロ多孔性炭素試料を示す。LCaX-873-4H4H-C試料は、4時間のアセチレンCVD/熱処理のサイクルを2回繰り返すことによって、同様に合成されている。
【0053】
【0054】
エントリー1、エントリー3及びエントリー4の結果は、より大きな表面積及びミクロ孔容積を得るためには、より高いCVD温度が有用であることを示した。比較的低温(873K,エントリー4)で合成された炭素は、他の試料よりも著しく小さい表面積を示し、この表面積は、炭素構造が873Kにおいて十分に黒鉛化(又は硬化)されていないため、ゼオライト鋳型の除去後に崩壊したことを示している。また、この結果は、高度に黒鉛化された炭素構造のみが高度のミクロ多孔性構造を保持できることを示している。残念ながら、そのような高温アセチレンCVDは、ゼオライト鋳型の開始量、例えば固定床反応器内のベッド厚みに非常に影響を受けやすい。エントリー1とエントリー2との比較によって示されるように、アセチレンを使用するCVDでゼオライトの量を1gから5gに増加させる場合、得られた炭素のBET表面積及び多孔度が大幅に減少した。
【0055】
この問題を克服するために、逐次炭素合成手順が本明細書に記載されている。この合成手順は、低温アセチレン(CVD<873K)と希ガス(He)下での高温熱処理(1123K)とから構成されている。低いCVD温度(<873K)では、ゼオライトベッドの上で炭素堆積が非常に均一に起こる。ゼオライトのミクロ孔が非黒鉛化炭素で完全に充填された後、ガス流をHeに切り替え、炭素構造の黒鉛化(高密度化)のために温度を1123Kに上昇させる。このような連続工程により、ゼオライトのミクロ孔の内部に高度に黒鉛化された炭素を均一かつ選択的に堆積させることができる。その結果、LCaX-873-4H-C試料(エントリー5)は、3049m
2g
-1という非常に大きな表面積及び1.12cm
2g
-1のミクロ孔容積を示し、LCaX-1023-2-C試料802(エントリー1、
図8A~
図8C)のものさえをも上回っている。
【0056】
図7は、合成プロセスの様々な工程で収集されたゼオライト-炭素複合体(ゼオライト鋳型除去なし)のN
2吸脱着等温線のプロット700である。すべての測定値は、LCaX 702のミクロ多孔性と比較したものである。873Kで4時間のアセチレンCVD後(LCaX-873-4試料704)では、ゼオライト鋳型の内部に残っているミクロ多孔性は無視できるほどである。これは、ゼオライトのミクロ孔が非黒鉛化炭素骨格で完全に充填されていることを示している。He下、1123Kで4時間熱処理後(LCaX-873-4H試料706)では、ゼオライトのミクロ孔容積の約25%が再生されている。この結果は、熱処理が高密度化、したがってゼオライトのミクロ孔内部の炭素骨格の体積収縮をもたらしたことを明らかにしている。ゼオライトのミクロ孔のかなりの割合が熱処理後に再生されるため、アセチレンを使用する二次CVD/熱処理サイクルを実行して残りのミクロ孔を充填することができる。CVD・熱処理サイクルを2回繰り返した後(LCaX-873-4H4H試料708)では、ゼオライト鋳型のミクロ孔は、黒鉛化炭素骨格でほぼ完全に充填される。ゼオライト鋳型の除去後、CVD/熱処理サイクルを繰り返して、BET表面積を維持しながら炭素のメソ孔容積を大幅に減少させる。表3のエントリー5とエントリー6を比較することによって分かるように、LCaX-873-4H4H-C試料708の示したメソ孔容積(0.23cm
3g
-1)は、LCaX-873-4H試料706のメソ孔容積(0.45cm
3g
-1)よりも大幅に減少していた。
【0057】
この結果は、ゼオライトのミクロ孔の不完全な充填が、レプリカされた炭素構造にメソ孔の形成をもたらすことを示している。逐次炭素合成手順は、炭素合成に使用されるゼオライト量(ベッド厚み)と無関係に炭素構造の高い再現性を可能にすることに留意されたい(エントリー6及びエントリー7を比較)。
【0058】
アセチレンCVDの初期温度を約873Kから約823Kに下げると、BET表面積及びミクロ孔容積がわずかに増大した炭素(エントリー9)を合成することができる。これらの結果に基づいて、アセチレンCVDの初期温度の最適範囲は約823K~約873Kである。773Kよりも低いCVD温度では、実際的応用に対して炭素堆積はあまりにも遅かった。
【0059】
図8A~
図8Cは、表3の代表的な試料のN
2吸着等温線及びXRDパターンを示す。最も忠実にレプリカされた炭素構造(LCaX-873-4H4H-C試料708)が、高圧領域(P/P
0>0.1)において少量のN
2吸着を伴うI型等温線を示すことは注目に値する。アセチレンCVD/熱処理の単一サイクルによって合成されたLCaX-873-4H-C試料706は、LCaX-873-4H4H-C試料708よりもさらに大きな全細孔容積を示したが、この増大は、P/P
0>0.1におけるより顕著な吸着によって示されるように、二次メソ多孔性の存在にのみ起因する。それに続くアセチレンCVD・熱処理サイクルによって合成された試料である、LCaX-873-4H-C試料706及びLCaX-873-4H4H-C試料708は、ミクロ孔領域(W<2nm)において、はるかに狭く、より集中的な細孔径分布を示した。レプリカされた炭素(LCaX-873-4H4H-C試料708)は、XRDにおいて2θ=6.3°で非常に鋭いピークを示したことに留意することができる。これは、レプリカされた炭素がゼオライトと同様の規則的なミクロ多孔性構造を有することを示している。したがって、2θ=6.3°における鋭いXRDピークの存在は、ゼオライト構造のレプリカを評価するための指標、例えば炭素堆積の効率を評価するための指標として使用することができる。
【0060】
ZTC官能基化
【0061】
図9は、官能基化ZTC 902を形成する触媒粒子 904を含浸させたZTC 906の図である。本明細書に記載の例では、湿式含浸を使用して、白金などの貴金属をZTC 902担体に担持させて触媒として機能させることができる。例えば、Ptを含浸させるために、Pt(NH
3)(NO
3)
2の溶液を所望の量用いて調製することができる。様々な実施形態において、その量は、0.1重量%~5重量%の範囲内であり得る。一部の実施形態では、3重量%が使用され、用いられるZTC 902の細孔容積に等しい容積の溶液が、ZTC 902を湿潤するために添加される。含浸したZTCを80°Cのオーブンで一晩乾燥させる。次いで、乾燥したPt/ZTCを50ml/分の流量のN
2流下で仮焼成する。これを500°Cで12時間行って金属硝酸塩を分解することができる。金属硝酸塩の分解後、Pt/ZTCを、例えば50ml/分の流量で水素を流しながら、500°Cで2時間還元して、ZTC 902上に分散したPt又は触媒粒子 904(本明細書では官能基化ZTC 906と称する)を生成することができる。
【0062】
一部の実施形態では、強静電吸着(SEA)法が使用される。この方法では、含浸は、炭素/水/前駆体スラリーのpHを適切な値に調整して金属前駆体と担体との間の静電相互作用を増強させることによって制御される。
【0063】
官能基化ZTCの電極への組込み
【0064】
触媒粒子の含浸後、官能基化ZTCを電極に添加する。一実施形態では、仮焼成前に、官能基化ZTCは、アノードの表面若しくはカソードの表面又は固体酸化物電解質に添加される。
【0065】
様々な実施形態では、仮焼成したYSZ粉末又は他の固体酸化物電解質は、2~3時間などの期間、プロパノールなどの適切な溶媒中で湿式粉砕される。次いで、官能基化ZTCを粉砕したYSZと混合し、2段階プロセスで仮焼成する。第1の仮焼成は約900°C~約1000°Cで約12時間行い、続いて湿式粉砕し、次いで第2の仮焼成は約1000°C~約1100°Cで約10時間行う。
【0066】
一部の実施形態では、スパッタリングによって電極に官能基化ZTCを含浸させる。例えば、官能基化ZTCは、スパッタチャンバ内のガスに導入することができる。
【0067】
電極アセンブリ(EA)の作製
【0068】
図10は、SOとアノードとの間の界面及びSOとカソードとの間の界面に官能基化ZTCが組み込まれたEA110の概略図である。同様の番号が付けられた項目は、
図1に関して説明したとおりである。一部の実施形態では、個々の層を形成し、積層体に組み立て、次いで焼成して最終EAを形成する。
【0069】
SO電解セルアセンブリ
【0070】
図1に示される最終SOECアセンブリ100は、EA110(
図1及び
図9)を筐体112内に取り付けることによって作製される。
【0071】
本明細書で説明するように、様々な実施形態では、EA110内の加熱システム128は、熱源に結合される。これらは、電気分解中に温度を動作温度範囲内に保つためにEA110に熱を加えるのに使用される。一部の実施形態では、水は水蒸気120として供給され、水蒸気120はSO電解セルに動作する上で十分な熱を供給する。これらの実施形態では、加熱システムは存在しなくてもよく、又は始動のためにのみ使用されてもよい。
【0072】
実施形態
【0073】
本明細書に記載の一実施形態は、固体酸化物形電解セルアセンブリ(SOEC)を作製するための方法を提供する。SOECは、官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を形成することを含む。官能基化ZTCは、CaXゼオライトを形成することと、化学気相堆積(CVD)プロセスを使用してCaXゼオライト内に炭素を堆積させて炭素/ゼオライト複合体を形成することと、フッ化水素酸を含む溶液を用いて炭素/ゼオライト複合体を処理してZTCを形成することと、ZTCを処理して触媒部位を付加することと、によって形成される。この方法では、官能基化ZTCと仮焼成された固体酸化物電解質との混合物を形成することと、この混合物を仮焼成することと、によって、官能基化ZTCが電極に組み込まれる。この方法は、電極アセンブリを形成することと、SO電解セルアセンブリを形成することと、SO電解セルアセンブリを熱源に結合することとを含む。
【0074】
一態様では、CaXゼオライトは、NaXゼオライトをカルシウムイオンとイオン交換することによって形成される。一態様では、CVDプロセスは、プロピレン、エタノール、若しくはアセチレン、又はそれらの任意の組合せを有機前駆体ガスとして使用する。一態様では、CVDプロセスは、アセチレンを有機前駆体ガスとして使用する。一態様では、アセチレンはヘリウム中に2体積%の溶体として添加される。一態様では、CVDプロセスは、823K~1123Kの温度で行われる。
【0075】
一態様では、CVDプロセスは、アセチレンを含むガス流を使用して第1の温度でCaXゼオライトのマトリックス中に炭素を堆積させることと、ガス流をヘリウム流に切り替えることと、温度を第2の温度に上昇させることとを含む。一態様では、第1の温度は875Kよりも低い。一態様では、第1の温度は約823Kである。一態様では、第2の温度は1120Kよりも高い。一態様では、第2の温度は約1123Kである。
【0076】
一態様では、CVDプロセスは、冷却して第1の温度に戻すことと、ガス流をアセチレン含有ガス流に切り替えることと、第1の温度でCaXゼオライトのマトリックス中に炭素を堆積させることと、ガス流をヘリウム流に切り替えることと、温度を第2の温度に上昇させることと、によって繰り返される。一態様では、溶液滴下含浸技術を使用して官能基化ZTCを形成する。
【0077】
一態様では、この方法は、活性金属前駆体を溶解して水溶液を形成することと、ZTCの細孔容積に対応する量の水溶液をZTCに添加して金属/ZTC複合体を形成することと、金属/ZTC複合体を乾燥させることと、金属/ZTC複合体を焼結して官能基化ZTCを形成することとを含む。一態様では、この方法は、アノードに、カソードに、又はその両方に官能基化ZTCをスパッタリングによって組み込むことを含む。
【0078】
一態様では、この方法は、官能基化ZTCが組み込まれたアノードを焼成してセラミックアノードを形成し、固体酸化物電解質(SOE)を焼成してセラミックSOEを形成し、官能基化ZTCが組み込まれたカソードを焼成してセラミックカソードを形成し、セラミックアノード、セラミックSOE及びセラミックカソードをアセンブリに組み立て、並びにアセンブリを焼成して電極アセンブリを形成することによって、電極アセンブリを形成することを含む。
【0079】
別の実施形態は、固体酸化物形電解セル(SOEC)を提供する。SOECは、電極アセンブリ(EA)を含む。EAは、アノード、固体酸化物電解質及びカソードを含み、アノード、カソード、又は、その両方は、官能基化ゼオライト鋳型炭素(ZTC)を含む。SOECには、筐体であって、水蒸気と二酸化炭素との混合物用の入口と、水素と一酸化炭素との混合物用の出口と、酸素用の出口と、SOECに熱を供給するための加熱システムと、を有する筐体が含まれる。SOECは、外部電源からSO電解セルに電流を供給するためにカソードに結合された電源供給配線と、外部電源に結合された、アノードからの戻り配線と、を含む。
【0080】
一態様では、SOECは、アノードとSOとの間の界面に配置された、カソードとSOとの間の界面に配置された、又はその両方の界面に配置された官能基化ゼオライト鋳型炭素の層を含む。一態様では、固体酸化物電解質は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含む。
【0081】
他の実施態様も、以下の特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】