(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】架橋シリコン層を有する先端カバー及びそのような先端カバーを形成する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20240705BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61L31/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501998
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022069519
(87)【国際公開番号】W WO2023285492
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガエル プジェ
(72)【発明者】
【氏名】レジャヌ ブルジョア
【テーマコード(参考)】
4C066
4C081
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066NN04
4C066PP04
4C081AC09
4C081BB09
4C081CA272
4C081CC01
4C081DA15
(57)【要約】
本開示は、先端カバー(1、100)の引き抜き力を低減するために注射装置(20、120)の先端カバー(1、100)を処理する方法に関する。この方法は、一定量の第1のシリコーンオイルおよび一定量の第2のシリコーンオイルを先端カバー(1、100)の内面(10、110)に塗布すること、および、シリコーンオイルを処理して、先端カバー(10)の内面(10、110)に架橋シリコーンコーティングを形成することを含み、内面(10、110)は注射装置の先端の外面と係合するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端カバー(1、100)の引き抜き力を低減するために注射装置(20,120)の先端カバー(1,100)を処理する方法であって、
第1の粘度を有する一定量の第1のシリコーンオイルを前記先端カバー(1、100)の内面(10、110)に塗布するステップであって、前記内面(10、110)は前記先端カバーの先端の外面と係合するように構成されるステップと、
第2の粘度を有する一定量の第2のシリコーンオイルを前記先端カバー(1、100)の前記内面(10、110)に塗布するステップであって、前記第2の粘度は前記第1の粘度とは異なるステップと、
前記先端カバー(1、100)の前記内面(10、110)上に架橋シリコーンコーティングを形成するために、前記第1および第2のシリコーンオイルを処理するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記第1または第2のシリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記先端カバー(1、100)はエラストマー材料を含み、前記架橋シリコーンコーティングは前記エラストマー材料に配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エラストマー材料がゴムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記架橋シリコーンコーティングを形成するために前記第1および第2のシリコーンオイルを処理することは、前記第1および第2のシリコーンオイルをプラズマ処理すること、熱処理すること、または放射線処理することのうちの1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記先端カバー(1、100)の前記内面(10、110)に一定量の前記第1および第2のシリコーンオイルを塗布するステップは、300から35,000センチストークス(cSt)の範囲の粘度を有する第1および第2のシリコーンオイルを塗布することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の粘度は前記第1の粘度よりも低い、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記先端カバー(1、100)の前記内面(10、110)に一定量の前記第1および第2のシリコーンオイルを塗布することは、10~300μg/cm
2の前記第1および第2のシリコーンオイルを前記内面(10、110)に塗布し、好ましくは20~200μg/cm
2 の前記第1および第2のシリコーンオイルを前記内面(10、110)に塗布することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記先端カバー(1、100)の前記内面(10、110)に塗布される前記第1のシリコーンオイルの量は、前記先端カバー(1、100)の前記内面(10、110)に塗布される前記第2のシリコーンオイルの量よりも少ない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記注射装置の前記先端から前記先端カバー(1、100)を取り外すための引き抜き力は、架橋されていない同量のシリコーンオイルをその上に有する同一構成の先端カバーを取り外すための引き抜き力よりも5%から35%小さい、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記先端カバーの前記内面に塗布される前記第1のシリコーンオイルの量は、前記先端カバーの前記内面に塗布される前記第2のシリコーンオイルの量よりも少ない、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって形成された架橋シリコーンコーティングを含む先端カバー。
【請求項13】
針シールド(110)を含み、
前記針シールド(110)は、
エラストマー材料で形成され、注射装置(20)の針と密封して係合するように構成された内面を有する内側針シールド(104)と、
前記内側針シールド(104)を取り囲む剛性外側針シールド(106)と、
を有し、
前記架橋シリコーンコーティングは、前記内側針シールド(104)の内面に配置される、請求項12に記載の先端カバー(10、110)。
【請求項14】
一体型先端キャップを含み、
前記一体型先端キャップは、注射装置のルアー先端部と密封係合するように構成される内面を備え、前記架橋シリコーンコーティングは、前記一体型先端キャップの前記内面に配置される、請求項12に記載の先端カバー(10、110)。
【請求項15】
内部に薬液を保持するように構成されるキャビティ(26)を有するバレル(22)であって、前記バレル(22)は近位端(23)および遠位端(24)を有し、前記遠位端(24)は前記薬液が通過するための流体通路を備えるバレル(22)と、
前記バレル(22)の前記遠位端(24)に配置される、請求項12~14のいずれか一項に記載の先端カバー(1、100)と
を備える、注射装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、先端カバー、先端カバーを備える注射装置、および先端カバーを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジ等の注射装置は、患者に薬液(例えば、医薬品、薬物)を投与するように構成された医療送達装置である。シリンジはプレフィルドの形態で販売され、薬液は、例えばシリンジが製造される時に、シリンジ内に配置される。シリンジは、典型的に薬液を収容するための容器を備え、薬液が容器から排出される流体通路を備えるエンドピースを有する。
【0003】
場合によっては、患者の皮膚を刺して薬液を患者に投与するために、針がシリンジのエンドピースに装着される。針カバーは、針を囲むようにエンドピースに取り付けられる。針カバーは、エラストマー材料から作製される内側針シールドを備え、さらに、剛性材料で形成され、内側針シールドの周囲に配置される外側針シールドを備える。 針カバーは、注射装置を取り扱う人が負傷するのを防止できる。さらに、内側針シールドは、針および/またはエンドピースに封止接触し、それによって、針およびエンドピースを外部環境からの薬液の汚染から保護し、および/またはシリンジからの薬液の漏洩を防止することができる。内面に非粘着面が形成される針カバーの一例が欧州特許第2974761号に提供される。
【0004】
あるいは、シリンジは針を用いなく、針がシリンジのエンドピースに接続されるときに、エンドピースは、薬液が容器から排出されるようにエンドピースの流体通路を設ける。シリンジを接続する前に、先端キャップをエンドピースに取り付ける。針カバーと同様に、先端キャップは、エンドピースに密封して接触し、それによって、外部環境からの薬液の汚染からエンドピースを保護し、および/またはシリンジからの薬液の漏れを防ぐことができる。
【0005】
注射器を使用するために、針カバーまたは先端キャップを取り外す必要がある。針カバーまたは先端キャップを取り外すために、ユーザーはシリンジと針カバーまたは先端キャップの両方を掴み、引っ張り力を加えて針カバーまたは先端キャップを引っ張る必要があり、その力は重要である。
【0006】
針カバーまたは先端キャップを取り外すのに必要な力は、「引き抜き力」または「POF」として知られる物理的なパラメータによって測定される。注射装置は、例えば病気により体力が低下したユーザーを含むあらゆるユーザーによって使用可能であるために、充分な小さい引き抜き力が必要である。しかし、例えば輸送中や保管中に針カバーや先端キャップが意図せず外れてしまうことを避けるために、充分な大きい引き抜き力も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の先端カバーと比較して、シリンジから分離するときの引き抜き力が低減される先端カバーを提供する。引抜き力の低減は、先端カバーの生体適合性または他の特性を変えることなく達成できる。
【0008】
さらに、先端カバーは、カバーが配置されるシリンジと密封的に係合する。このような係合により、シリンジに配置される薬液が外部環境から汚染されることが防止でき、それによって、容器の密閉性が保証できる。先端カバーは、シリンジからの薬液の漏れがさらに防止できる。そのために、引き抜き力が低減された先端カバーは、意図せずに取り外されることがなく、長期間の保管期間後など、長期間にわたって容器の密閉性を維持することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、先端カバーの引き抜き力を低減するために注射装置の先端カバーを処理する方法を提案する。この方法は、第1の粘度を有する一定量の第1のシリコーンオイルと、第1の粘度とは異なる第2の粘度を有する一定量の第2のシリコーンオイルとを先端カバーの内面に塗布することを含む。先端カバーの内面は、注射装置の先端の外面と係合するように構成される。この方法はさらに、先端カバーの内面上に架橋シリコーンコーティングを形成するために、第1および第2のシリコーンオイルを処理することを含む。
【0010】
上述の先端カバーを処理する方法の特定の好ましいが非限定的な特徴は、個別にまたは組み合わせて、以下のとおりであり、
シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサンを含み、
先端カバーはエラストマー材料を含み、架橋シリコーンコーティングはエラストマー材料上に配置され、
先端カバーのエラストマー材料がゴムを含み、
架橋シリコーンコーティングを形成するために第1および第2のシリコーンオイルを処理することは、第1および第2のシリコーンオイルをプラズマ処理すること、熱処理すること、または放射線処理することのうちの1つを含み、
シリコーンオイルが処理される前に、少なくとも一つの第1および第2のシリコーンオイルは、300から35,000センチストークス(cSt)または25,000から35,000センチストークスの範囲の粘度を有し、
第2の粘度は第1の粘度よりも低く、
先端カバーの内面に一定量の第1および第2のシリコーンオイルを塗布するステップは、10~300μg/cm2の前記第1および第2のシリコーンオイルを先端カバーの内面に塗布し、好ましくは20~200μg/cm 2 の第1および第2のシリコーンオイルを先端カバーの内面に塗布することを含み、
先端カバーの内面に塗布される第1のシリコーンオイルの量は、先端カバーの内面に塗布される第2のシリコーンオイルの量よりも少なく、および/または
注射装置の先端から先端カバーを取り外すための引き抜き力は、架橋されていない同量のシリコーンオイルをその上に有する同一構成の先端カバーを取り外すための引き抜き力よりも5%から35%小さい。
【0011】
本発明はまた、前述の方法によって形成された架橋シリコーンコーティングを含む先端カバーを提案する。
【0012】
上述の先端カバーの特定の好ましいが非限定的な特徴は、個別にまたは組み合わせて以下のとおりであり、
先端カバーは、エラストマー材料で形成された内側針シールドと、内側針シールドを取り囲む剛性外側針シールドとを有する針シールドを備え、
内側針シールドは、その中に注射装置の針を密封して係合するように構成される内面を有し、
架橋シリコーンコーティングは、内側針シールドの内面に配置され、
先端カバーは一体型先端キャップを備え、および/または
一体型先端キャップは、注射装置のルアー先端と密封係合するように構成された内面を備え、架橋シリコーンコーティングは一体型先端キャップの内面に配置される。
【0013】
本発明はまた、内部に薬液を保持するように構成されるチャンバーを有するバレルを備える注射装置を提案し、バレルは近位端と遠位端を有し、遠位端は薬液が通過するための流体通路を備え、先端カバーはバレルの遠位端に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に示される図は、特定のコンポーネント、デバイス、またはシステムの実際の図を意味するものではなく、本発明の実施形態を説明するために使用される単なる理想化された表現である。本発明の他の特徴、目標、および利点は、以下の詳細な説明を読み、非限定的な例として提供される図面を参照すると、より明確に明らかになるであろう。
【
図2】は、注射装置に取り付けられる
図1の先端キャップの断面図である。
【
図3】は、先端キャップを有する注射装置の側面図である。
【
図6】は、針シールドを有する
図5の注射装置の側面図である。
【
図7】は、引き抜き力を時間との相関関係を示すグラフである。
【
図8】は、注射装置の長さの変化を時間との相関関係を示すグラフである。
【
図9】は、先端キャップをシリンジに取り付ける際に先端キャップに加えられる力を示すグラフである。
【
図10】は、先端キャップをシリンジに取り付ける際に先端キャップに加えられる力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される場合、「近位」という用語は、位置を指し、例えば、近位端は、本明細書に記載の注射装置のプランジャロッドに力を加える使用者の接触点などの基準点に近い端である。本明細書で使用される「遠位」という用語は、位置を指し、例えば、遠位端は、本明細書に記載されるように、注射装置のプランジャに力を加える使用者の接触点などの基準点からさらに遠い端である。したがって、用語「近位」および「遠位」は、例えば、それぞれ、薬液を患者に投与する使用者に近い方向および遠位の方向を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「軸方向」、「軸方向に」、「長手方向の」、および「長手方向に」という用語は、一般に、記載される注射装置の要素の長手方向軸に沿った、または長手方向軸に平行な方向を意味し、指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「半径方向」、「半径方向に」および「横方向」と「横方向に」いう用語は、一般に、説明される注射装置の要素の中心の長手方向軸に垂直な方向を意味し、指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「および/または」には、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意のおよびすべての組み合わせが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される「構成される」という用語は、少なくとも1つの構造および所定の方法で少なくとも1つの構造の操作を容易にする少なくとも1つの装置のサイズ、形状、材料組成、材料分布、配向、および配置を指す。
【0020】
本明細書で使用される「先端カバー」という用語は、この先端を覆うようにシリンジなどの注射装置の遠位端に使い捨て可能な装置を指す。例えば、先端カバーは、先端キャップ、プラスチック製の剛性先端キャップ、針カバーなどであってもよい。本開示において、「先端カバー」という用語は、本明細書で詳細に説明される先端キャップ、および本明細書で詳細に説明される針カバーを個別にまたは集合的に指すために使用される。
【0021】
図1~2は、本開示の一実施形態による先端キャップ1を示す。いくつかの実施形態では、先端キャップ1は、注射装置のルアー先端に配置されるように構成される。先端キャップ1は、モノリシックに形成されるため、当該技術分野では一体型先端キャップとして知られている。
【0022】
先端キャップ1は、その内面10によって画定されるキャビティ14を備える。内面10は、注射装置20の先端27の外面31と係合するように構成される(
図2)。キャビティ14は、先端キャップ1の近位端9から長手方向軸2に沿って遠位端4に向かって延びる。
【0023】
先端キャップ1は、遠位端4に近接した閉鎖遠位部分3と、近位端9に近接した開放近位部分7とを備える。いくつかの実施形態では、閉鎖遠位部分3は、外面8に沿って周方向に離間した複数のノッチ6を備える。ノッチ6は、先端キャップ1を注射装置20から取り外す際に使用者に掴められるように構成されるリブ付き外面を形成する。他の実施形態では、閉鎖遠位部分3の外面8は滑らかであってもよい(すなわち、ノッチがなくてもよい)。開放近位部分7は、注射装置20が先端キャップ1に受容可能であるように、円筒状の周縁スカートとして構成される。開放近位部分7はキャビティ14を含む。
【0024】
先端キャップ1の内面10は、注射装置20の遠位端29をシールするように構成される。先端キャップ1の内面10は、閉鎖遠位端部分3の近位端5から延びる突出部11を備える。先端キャップ1の内面10は、閉鎖遠位部分3の内面16をさらに含む。内面16は、突出部11の周りに環状に延在する。
【0025】
先端キャップ1は、エラストマー特性を有する材料であるエラストマー材料で形成される。先端キャップ1は、熱可塑性エラストマー(TPE)またはゴムで作られる。滅菌可能なエラストマー特性を備える材料が好ましい。
【0026】
エラストマー特性を有する材料は、シリンジ先端をシールするのに好ましく、そのような材料が注射装置20の先端27の形状に適合する。
【0027】
図2に示されるように、先端キャップ1は、注射装置20に配置され、注射装置20と密封的に係合する。動作時に、注射装置20は薬液で満たされる。使用前に、注射装置20のバレル22内の薬液が注射装置20から流出できないように先端キャップ1が設けられる。したがって、先端キャップ1は、注射装置20と流体密封的に係合する。さらに、先端キャップ1は、外部汚染物質が注射装置20に入るのを防止して、その容器の密閉性を維持することができる。
【0028】
注射装置20は、遠位端24と近位端23との間で長手方向軸21に沿って軸方向に延在するバレル22を備える。バレル22は、キャビティ26内に薬液を保持するように構成される。キャビティ26は、円筒形側壁25によって画定される。
【0029】
遠位端24は、薬液が通過するための流体通路を備える。より具体的には、注射装置20は先端27を備え、先端27は先端27の内面30によって画定される流体通路28を有する。
【0030】
注射装置20の先端27は、バレル22の円筒形側壁25から延びる。先端27は、環状外面31および最遠位面17を備える。流体通路28は、チャンバー26と流体連通する。
【0031】
動作時に、先端キャップ1が注射装置20の先端27から取り外されると、患者に薬液を注入するためにカニューレ(例えば、使い捨て針)が先端27に結合できる。カニューレは、遠位端24にスナップ嵌めまたは接着されるアダプタを介して、ねじ込みなどによって遠位端24に結合される(
図3を参照)。あるいは、カニューレは、注射装置20の遠位端24上に直接に積載される(
図5を参照)。
【0032】
先端キャップ1が注射装置20の先端27に配置される時、先端キャップ1の内面10は先端27の外面31と係合する。また、先端27の最遠位面17が閉鎖遠位部分3の内面16に当接し、突出部11の一部が流体通路28内に配置される。
【0033】
図3に示されるように、注射装置20は、バレル22内に配置され、プランジャロッド34に結合されたストッパ32を備える。動作時に、プランジャロッド34およびストッパ32は、バレル22内で軸21に沿って軸方向に変位し、薬液をチャンバー26から流体通路28を通って針および患者に放出する。
図3において、注射装置20は固定針を備えていない。その代わりに、アダプタはバレル22の遠位端に取り付けられ、注射前に注射装置20に針の取付けを可能にする。その場合、注射装置20がアダプタを備える時に、外部汚染物質が注射装置20に侵入するのを防止して容器の密閉性を維持するために、プラスチック製の剛性先端キャップをアダプタに取り付ける。
【0034】
プラスチック製の剛性先端キャップは、エラストマー特性を有する材料であるエラストマー材料で形成する。先端キャップ1は、熱可塑性エラストマー(TPE)またはゴムで作る。滅菌可能なエラストマー特性を備える材料が好ましい。
【0035】
バレル22の材料は、その中に配置される薬液に応じて変わる。バレル22は、ポリマー材料(例えば、プラスチック)またはガラスで形成されてもよい。
【0036】
図4は、本開示の一実施形態による針カバー100を示す。いくつかの実施形態では、針カバー100は、内側針シールド104と、内側針シールド104を取り囲む外側針シールド106とを備える。
【0037】
内針シールド104は、可撓性材料で形成される。外側針シールド106は、剛性材料(例えば、内側針シールド104よりも可撓性が小さい材料)で形成される。
【0038】
内側針シールド104は、エラストマー特性を有する材料であるエラストマー材料で形成する。内側針シールド104は、熱可塑性エラストマー(TPE)またはゴムで作られる。滅菌可能なエラストマー特性を備えた材料が好ましい。内側針シールド104のエラストマー材料は、注射装置120の針103によって貫通可能である。
【0039】
内側針シールド104は、その中で注射装置の針と密封的に係合し、注射装置120の先端と密封的に係合するように構成される内面を備える。
【0040】
外側針シールド106は、硬質プラスチックで形成され、内側針シールド104を取り囲むように構成される。
【0041】
針カバー100は、その内面110によって画定されるキャビティ114を備える。先端キャップ1と同様に、内面110は、注射装置120の先端127の外面と係合するように構成される(
図5)。
【0042】
図5の実施形態では、針カバー100が注射装置120に取り付けられる前に、針103がバレル122の先端127に結合される。したがって、針カバー100の内面110は、針103は、注射装置120の先端127の外面と、注射装置120の先端127に結合された針103とを係合するように構成される。
【0043】
キャビティ114は、針カバー100の近位端109から長手方向軸102に沿って遠位端104に向かって延びる。
【0044】
開放近位部分107は、注射装置120の一部(典型的には先端127)が針カバー100内に収容されるように、円筒状の周縁スカートとして構成される。開放近位部分107はキャビティ114を備える。
【0045】
より具体的には、針カバー100の内面110は、注射装置120の遠位端を流体シールするように構成される。針カバー100の内面110は、形状が多種である。非限定的な例として、内面110は、バレル122の先端127と係合するように構成された部分と、針103と係合するように構成された別の部分とを有する。
【0046】
図4に示されるように、内面110は、第1の部分110a、第2の部分110b、および第3の部分110cを備える。第1の部分110aは近位端109の近位に位置し、第3の部分110cは遠位端104の近位に位置し、第2の部分110bは第1の部分110aと第3の部分110cとの間に位置する。
【0047】
第1の部分110aおよび第2の部分110bは、バレル122の先端127の異なる寸法を有する部分127a、127bと密封的に係合するように構成され、第3の部分110cは、針103と密封的に係合するように構成される。
【0048】
あるいは、針カバー100は、無針注射器と係合するように構成される内側針シールドと、硬質プラスチックで形成され、内側針シールドを取り囲むように構成される外側針シールドとを有する。
【0049】
図6に示すように、針カバー100は、注射装置120上に配置され、注射装置120と密封係合する。動作時に、注射装置120は薬液で満たされることができる。使用前に、注射装置120のバレル122内の薬液が注射装置120から流出できないように、針カバー100を設ける。
【0050】
注射装置120は、遠位端124と近位端123との間で長手方向軸121に沿って軸方向に延びるバレル122を備える。バレル122は、チャンバー内に薬液を保持するように構成される。チャンバー26と同様に、バレル122のチャンバーは、円筒形側壁と環状の壁によって画定され得る。
【0051】
注射装置10は、バレル122内に配置され、プランジャロッド134に結合されるストッパ132を備える。動作時に、プランジャロッド134およびストッパ132は、バレル122内で軸121に沿って軸方向に変位して、薬液を排出し、薬液はチャンバーから流体通路を通って針103に入り、患者に送られる。
【0052】
本開示によれば、先端カバーは、その内面10、110上に配置された架橋シリコーンコーティングを含む。架橋シリコーンコーティングは、内面10、110の少なくとも一部に配置される。例えば、注射装置20の先端27、127の外面と係合する内面10、110の一部は、架橋シリコーンコーティングを含む。任意に、内面10、110の全体は架橋シリコーンコーティングを含んでもよい。
【0053】
架橋シリコーンコーティングを形成するために、シリコーンオイルが内面10、110の少なくとも一部に塗布される。いくつかの実施形態では、2つ以上のシリコーンオイルが内面10、110に塗布される。例えば、第1の粘度を有する第1のシリコーンオイルを内面10、110に塗布し、場合により第1の粘度とは異なる第2の粘度を有する第2のシリコーンオイルを内面に塗布する。1つまたは複数のシリコーンオイルは、水-シリコーンのエマルジョンにおけるスプレー、ディップおよび洗浄を含むものの、それに限定されるものでない任意の適切な方法で塗布できる。
【0054】
シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、またはPDMSを含む。いくつかの実施形態では、シリコーンオイルはPDMSから構成される。
【0055】
シリコーンオイルは、100~50,000センチストークス(cSt)の範囲、好ましくは300~35,000cStの範囲、より具体的には1,000~30,000cStの範囲の粘度を有する。より具体的には、シリコーンオイルは、処理される前に、1,000cStの粘度または30,000cStの粘度を有する。前述したように、いくつかの実施形態では、30,000cStの粘度を有する第1のシリコーンオイルおよび1,000cStの第2のシリコーンオイルを内面10、110に塗布する。前述の粘度は、標準粘度計を用いて25℃で測定される。
【0056】
先端カバーの内面に塗布されるシリコーンオイルの濃度は、10μg/cm2~300μg/cm2の範囲であり、より具体的には、20μg/cm2~200μg/cm2の範囲である。いくつかの実施形態では、シリコーンオイルの濃度は約25μg/cm2である。他の実施形態では、シリコーンオイルの濃度は約200μg/cm2である。シリコーンオイルの濃度は、溶媒中での抽出とそれに続く原子発光分光法によって測定する。
【0057】
シリコーンオイルを内面10、110に塗布した後、シリコーンオイルを架橋してシリコーンコーティングにするためにシリコーンオイルを処理する。架橋シリコーンコーティングを形成するためにシリコーンオイルを処理する方法は、シリコーンオイルのプラズマ処理、熱処理、または放射線処理のうちの1つを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、シリコーンオイルを架橋するために、シリコーンオイルにプラズマ処理が適用される。プラズマ処理は、酸化プラズマ処理であってもよい。
【0059】
プラズマ処理は、酸素およびアルゴンを含む雰囲気中で実行される。プラズマ処理は、シリコーンオイルを架橋して潤滑コーティングを形成するために適用される。プラズマ処理は、酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0060】
好ましい実施形態によれば、雰囲気は、分圧で15~30%の酸素と85~70%のアルゴンとの混合物である。より好ましくは、雰囲気は25%の酸素と75%のアルゴンを含む。
【0061】
一般的に言えば、プラズマは、コロナ放電、マイクロ波、高周波、または他の任意の便利な方法などのさまざまな技術によって生成される。
【0062】
好ましくは、高周波プラズマ処理は、10~20MHzの範囲の周波数で、より好ましくは11~14MHzの範囲の周波数で使用される。プラズマを生成するために加えられる電力は、50~300W、好ましくは100~250Wであってよく、プラズマ処理は、室温(すなわち、25℃)、絶対値で1.33~13.3Pa(10~100mTorr)の範囲の真空下で実施することができる。
【0063】
シリコーンオイル層のプラズマの曝露時間は、典型的には10秒から40秒の間である。
【0064】
上記のパラメータは、プラズマリアクタの形状、シリコーンコーティングを含む先端カバーの表面積および体積、プラズマリアクタ内のデバイスの配置、シリコーン層の厚さ、シリコーンの表面密度などに依存する。
【0065】
結果として、パラメータのわずかな変化が異なるコーティングをもたらす可能性があり、当業者は、使用される装置および処理されるデバイスに応じて処理を最適化するために、プラズマ処理のパラメータを選択する。
【0066】
プラズマ処理の結果として、シリコーンオイルは架橋されて、内面10、110上に架橋コーティングを形成する。多量のシリコーンオイルを架橋することによって形成されたコーティングを有する先端カバーは、注射装置の先端から先端カバーを取り外す際に引き抜き力を得、その引き抜き力は、同じ構成で架橋されていない同量のシリコーンオイルをその上に有する先端カバーを取り外すときの引き抜き力よりも小さい。より詳細には、その上に架橋シリコーンコーティングを有する先端カバーは、同じ構成であり、架橋されていない同量のシリコーンオイルをその上に有する先端カバーを取り外すための引き抜き力より少なくとも5%小さく、最大で35%小さい引き抜き力を得る。前述の減少した引き抜き力は、先端カバーを注射器上に配置してから5日から9週間の範囲で測定される。このような引き抜き力は、滅菌プロセスの前または後に測定する。より好ましくは、その上に架橋シリコーンコーティングを有する先端カバーは、同じ構成であり、架橋されていない同量のシリコーンオイルをその上に有する先端カバーを取り外すための引抜力よりも少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%低い引抜力を得る。引き抜き力は、以下に説明する手順に従って、トラクションベンチを使用して先端カバーごとに測定される。
【0067】
先端カバーを取り外すのに必要な引き抜き力は、先端カバーの構成に基づいて変化する。例えば、シリンジから
図4~
図6を参照して説明される針カバー100を取り外すよりも、シリンジから
図1~
図3を参照して説明される先端キャップを取り外すのに必要な引き抜き力が小さい。先端キャップ10に関して、その上に架橋シリコーンコーティングを有する先端キャップは、2N以上10N以下の範囲の引き抜き力を得る。
【0068】
実験データ
以下の実験データは、比較として、シリンジからの先端キャップの引き抜き力に対する本開示による架橋シリコーンコーティングの効果を示す。引き抜き力は、先端キャップの内面に塗布されたシリコーンオイルの量、および/または先端キャップの内面に塗布されたシリコーンオイルの架橋の関数として影響を受ける。
【0069】
実験データは以下のサンプルについて提供され、
シリコーンオイルを含まない先端キャップ(「No Silicone」を示す)であり、
本明細書に記載されるように、25℃で測定して30,000cStの粘度を有する約25μg/cm2のシリコーンオイル(当技術分野では「輸送シリコーン」としても知られる)を有する先端キャップ(「Reference」を示す)であり、
25℃で測定して30,000cStの粘度を有し、約25μg/cm2の本明細書に記載されるプラズマ処理に従って架橋されるシリコーンオイルを有し、その内面に配置される先端キャップ(「Ref+Cross-linked」を示す)であり、
25℃で測定して30,000cStの粘度を有し、約25μg/cm2のシリコーンオイルおよび25℃で測定して1,000cStの粘度を有し、約175μg/cm2のシリコーンオイルを有し、その内面に配置される先端キャップ(「Sil2」を示す)であり、
25℃で測定して30,000cStの粘度を有し、約25μg/cm2の本明細書に記載されるプラズマ処理に従って架橋されるシリコーンオイルおよび25℃で測定して1,000cStの粘度を有し、約175μg/cm2の本明細書に記載されるプラズマ処理に従って架橋されるシリコーンオイルを有し、その内面に配置される先端キャップ(「Sil2+Cross-linked」を示す)である。
【0070】
前述のサンプルのそれぞれの先端キャップは同じであり、以下の特徴を含み、
スチレンブタジエンゴムである材質、および
図1 ~
図3の先端キャップを参照して本明細書で説明しているような構成。
【0071】
「Reference」および「Ref+Cross-linked」の架橋シリコーンコーティングを形成するために、30,000cStの粘度を有する約25μg/cm2のシリコーンオイルが先端キャップの内面に塗布される。
【0072】
「Reference」のシリコーンオイルは非架橋状態のままであり、「Ref+Cross-linked」のシリコーンオイルは以下の好ましい条件を有するプラズマ処理プロセスを行い、
プラズマタイプ:13.56MHzの高周波電源によって駆動される容量結合プラズマであり、
処理時間:30秒であり、
電力:200Wであり、
圧力:8Pa(0.06Torr)であり、
雰囲気:酸素とアルゴンのそれぞれ15/75分圧である。
【0073】
「Sil2」および「Sil2+Cross-linked」の架橋シリコーンコーティングを形成するために、30,000cStの粘度を有する約25μg/cm2のシリコーンオイルが先端キャップの内面に塗布され、続いて、粘度1,000cStを有する約175μg/cm2のシリコーンオイルを先端キャップの内面に塗布する。「Sil2」のシリコーンオイルは非架橋状態のままであり、「Sil2+Cross-linked」のシリコーンオイルは前述の条件のプラズマ処理プロセスを行う。
【0074】
引き抜き力
ガラスシリンジから先端キャップを取り外すのに必要な力の測定を行う。表1は、上記の測定が行われた先端キャップのサンプルの数、およびシリンジへの先端キャップの取り付けと各サンプルの測定の間の時間遅延を特定するサンプルタイプの先端キャップを特定する。蒸気滅菌されたサンプルに対して、シリンジに先端キャップを取り付けてから1週間後に滅菌プロセスが行われ、滅菌プロセスの1週間後にPOF測定が行われた。
【0075】
【0076】
引き抜き力試験は、牽引ベンチを用いて実施した。この方法は次のステップから構成され、
シリンジをホルダーに置き、
空気圧ジョーで先端キャップを保持し、および
続いて、一定の変位速度でシリンジを引いて、先端キャップを取り外す。
【0077】
先端キャップを取り外すのに必要な力が、シリンジの変位の関数として記録される。シリンジから先端キャップを取り外すのに必要な力の測定は、次の2つの例外を除き、ISO規格11040-4:2015AnnexG.6に従って実行され、(1)前述のISO規格で規定されているように、先端は上向きではなく下向きに向けられ、かつ(2)ISO規格では2mmのグリップの長を使用するが、グリップの長さは2mmを超える。変位速度は500mm/分である。
【0078】
引き抜き力は、記載の引き抜き力試験中に記録された最大の力である。
【0079】
図7は、先端キャップをシリンジに装着してから一定時間経過後、蒸気滅菌後に測定した先端キャップの引き抜き力を示す。先端キャップを取り外すのに必要な引き抜き力(POF)値(ニュートン(N))を4回記録する((1)先端キャップをシリンジに取り付けてから5日後、(2)先端キャップをシリンジに取り付けてから3週間後、(3)先端キャップをシリンジに取り付けてから9週間後、および(4)蒸気滅菌プロセス後)。蒸気滅菌プロセスは、120°C~125°Cの温度で30~40分間行われる。
【0080】
以下の表2は、
図7に示される前述のサンプルについて測定された引き抜き力の値を提供する。
【0081】
【0082】
これらの結果は、先端キャップの内面に架橋シリコーンコーティングを施すと、引き抜き力が低下することを示す。同量のシリコーンオイルを塗布したサンプルを比較すると、シリコーンオイルが架橋することにより引き抜き力が低下する。(例、「Reference」と「Ref+Cross-linked」、および「Sil2」と「Sil2+Cross-linked」を比較)平均して、架橋シリコーンコーティングを有する先端キャップは、架橋されていないシリコーンオイルを有する先端キャップと比較して約25%低い引き抜き力を有する。架橋シリコーンコーティングを有する先端カバーは、同じ構成であり、架橋されていない同量のシリコーンオイルをその上に有する先端カバーを取り外すための引抜力よりも少なくとも約14%、最大で約20%低い引抜力を有する。
図7および表2に示すように、シリコーンオイルを含まない先端キャップと比較して、架橋シリコーンコーティングの存在により、引き抜き力が約50%以上減少する。
【0083】
本開示による先端キャップは、注射装置の先端から先端カバーを取り外すための2Nから10Nの範囲の引き抜き力を得る。
【0084】
図7および表2に示すように、蒸気滅菌により引き抜き力が増加する。それにもかかわらず、同様の量のシリコーンの場合、架橋シリコーンコーティングを有する先端キャップは、蒸気滅菌後であっても、非架橋シリコーンオイルを有する先端キャップに比べて引抜き力が低い。
【0085】
使用する注射装置を準備する通常の過程において、製薬業界の標準は、例えば蒸気滅菌またはエチレンオキシド滅菌により注射装置を滅菌する。典型的には、このような蒸気滅菌またはエチレンオキシド滅菌の前に、先端キャップがシリンジの端に取り付けられる。先端キャップは、引き抜き力が加えられた時に容易に取り外せるので、引き抜き力を減少させることが望ましいが、引抜き力を低減できる程度は、引抜き力が加えられていないときの先端キャップの望ましくない取り外しによって制限される。例えば、引き抜き力を低減するように構成される先端キャップは、蒸気滅菌プロセス中、またはその後、シリンジの保管中に、それが配置されるシリンジに対して移動する。キャップの変位は容器の密閉性を妨げるため、そのような変位は望ましくない。
【0086】
図8は、
図1を参照して示された時間と同じ時間にわたて、注射装置の長さの変化の図である。注射装置の長さの測定された変化は、保管中のシリンジに対する先端キャップの移動に起因する。表3は、
図8に示される長さの変化の平均値を示す。
【0087】
【0088】
図8および表3に示すように、各サンプルの先端キャップは、5日、3週間、蒸気滅菌後、先端キャップの変位は制限され、「Reference」および「Ref+Cross-linked」サンプルは許容範囲内にある。しかし、蒸気滅菌後に、追加の非架橋シリコーンおよび架橋シリコーンを含むサンプル(例えば、「Sil2」および「Sil2+Cross-linked」)は、大きな先端キャップの変位を得る。 蒸気滅菌プロセスはシリンジに対する先端キャップの動きに寄与し、追加の非架橋および架橋シリコーンを含むサンプル(例えば、「Sil2」および「Sil2+Cross-linked」)はより低い引き抜き力を得、先端キャップがずれやすくなる。結果は、容器の密閉性を潜在的に危険にさらすのに十分な、より大きな先端キャップの動きを示す。従って、引き抜く力も低下させながら、シリンジに対する先端キャップの動きを減少させるには、よりも、最小限の量のシリコーンを架橋結合させて追加のシリコーンを添加することが好ましい。
【0089】
組み立て中のスティックスリップ
前述したように、先端キャップはシリンジ上に配置する必要がある。先端キャップをシリンジに装着する時に、スティックスリップ現象が観察されることができる。スティックスリップ現象は、組み立て中にシリンジに対する先端キャップの動きなど、2つの物体が相互にスライドする時に観察されることができる。
【0090】
そのスティックスリップ現象は、シリンジを備える先端キャップアセンブリの自動化および加工性に影響を与える。
図9および
図10は、それぞれ、シリンジの組み立て中、先端キャップの移動距離の関数により、「Reference」および「Ref+Cross-linked」の先端キャップに加えられる力の図である。
図9および10は、架橋シリコーンコーティングが、非架橋シリコーンオイルと比較して、シリンジを備えた先端キャップのスティックスリップ現象を制限するか、さらには排除することを示す。曲線の最も関連性の高い部分は、約2mmから5mmの間に加えられた力を表示する部分である。2mm未満の距離では、先端キャップはまだシリンジの先端に取り付けられない。5mmを超える距離では、先端キャップは注射器の先端に当接し(例えば、押し付けられ)、圧縮される。スティックスリップ現象は、架橋シリコーンを含まないサンプル(例:「Reference」)に関する図に見られる。図において、先端キャップを動かし続けるのに必要な力は、架橋シリコーンを欠く「reference」では2mmと5mmの間で急速に増減する(例えば、変動する)。この挙動は、架橋シリコーンを表面に有するサンプルでは同じ距離にわたって示されない。したがって、先端キャップの内面に架橋シリコーンコーティングを設けることにより、注射器による先端キャップの加工性が向上する。
【0091】
本開示は、特定の例示的な実施形態に関して本明細書に記載されているが、当業者であれば、これに限定されないことを認識し、理解するであろう。むしろ、図示された実施形態に対する多くの追加、削除、および修正は、その法的等価物を含む本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。さらに、一実施形態の特徴は、発明者が考えている本発明の範囲内に含まれながら、別の実施形態の特徴と組み合わせることができる。
【国際調査報告】