(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】制御装置の回路の短絡スイッチングプロセス監視方法
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
G05B9/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502033
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 EP2022067559
(87)【国際公開番号】W WO2023285122
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】102021207633.5
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヘットリッヒ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュベルツレ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,シユン
【テーマコード(参考)】
5H209
【Fターム(参考)】
5H209AA10
5H209DD05
5H209EE05
5H209FF09
5H209GG05
5H209HH26
5H209HH28
(57)【要約】
本発明は、制御装置(100)の回路(120)、特に出力段回路(120)の短絡スイッチングプロセス監視方法であって、前記制御装置(100)に関する情報が検出され(202)、短絡スイッチングプロセスが存在し、前記回路(120)が短絡中にスイッチオンプロセスを実行するかどうかについて評価され(203)、前記評価の過程で、短絡スイッチングプロセスがあることが検知されると、カウンタ読み取り値が更新され(204)、前記カウンタ読み取り値は前記回路(120)の使用期間にわたって実行される短絡スイッチングプロセス数を特徴付ける方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(100)の回路(120)、特に出力段回路(120)の短絡スイッチングプロセス監視方法であって、
前記制御装置(100)に関する情報が検出され(202)、短絡スイッチングプロセスが存在し、前記回路(120)が短絡中にスイッチオンプロセスを実行するかどうかについて評価され(203)、
前記評価の過程で、短絡スイッチングプロセスがあることが検知されると、カウンタ読み取り値が更新され(204)、前記カウンタ読み取り値は、前記回路(120)の使用期間にわたって実行される短絡スイッチングプロセス数を特徴付ける、方法。
【請求項2】
前記カウンタ読み取り値に応じて、診断区間中に実行される短絡スイッチングプロセス、特にエラー診断の過程で実行される短絡スイッチングプロセスの優先順位付けまたは制限が実行される(206)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カウンタ読み取り値が、所定の閾値、特に診断区間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の所定の最小値と比較される(205)、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値が、診断区間数に応じて設定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値が、短絡スイッチングプロセス数(m)と、診断区間数との間の関係(310)に応じて設定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値が、前記回路(120)の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値に応じて設定される、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値が、短絡スイッチングプロセス数(m)と、前記回路(120)の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値との間の差異に応じて設定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記比較(205)に応じて、短絡スイッチングプロセスの前記優先順位付けが実行され(206)、および/または前記短絡スイッチングプロセス数が制限される(206)、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記評価の過程で、前記回路(120)のハイサイドスイッチがアースへの短絡中にスイッチオンプロセスを実行すること、および/または前記回路(120)のローサイドスイッチがバッテリへの短絡中にスイッチオンプロセスを実行することが検知される場合に、前記カウンタ読み取り値が更新される(204)、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法の全ての方法ステップを実行するために構成された、演算装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両における制御装置の回路の短絡スイッチングプロセス監視方法、および方法を実行するための演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば(自動車)車両における制御装置の出力段または出力段回路は、増幅された信号が負荷に印加される前の電力増幅器の電子最終段を表す。例えば、出力段回路は、アクチュエータを駆動制御するために必要な電力を供給するために、エンジン制御装置に設けることができる。制御装置において、それぞれの出力段回路は、対応する駆動制御信号を用いてマイクロコントローラによって駆動制御することができる。
【0003】
制御装置の(作動上の)安全性を確保するため、出力段回路は一般的に、短絡が発生した場合、すなわちバッテリまたはアースへの短絡が存在する場合に、少なくとも所定の最小数の(オン)スイッチングプロセスに耐え得るだけ頑強である必要がある。しかし、特にパルス幅変調制御の場合、このような短絡スイッチングプロセスが過剰に行われると、出力段、ひいては制御装置全体が損傷するか、破壊されることさえ起こり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような背景から、独立形式請求項の特徴を有する、制御装置の回路の短絡スイッチングプロセス監視方法、および方法を実行するための演算装置が提案される。有利な実施形態は、引用形式請求項および以下の説明の主題である。
【0005】
本方法の過程で、制御装置に関する現在の情報が検出され、短絡スイッチングプロセスが存在するかどうか、すなわち回路が短絡中に(すなわち無負荷で)スイッチオンプロセスを実行するかどうかについて評価される。評価の過程で、短絡スイッチングプロセスが存在することが検知されると、カウンタまたはカウンタ読み取り値が更新または増加され、回路の使用期間にわたって実行される短絡スイッチングお数を特徴付け、または表す。
【0006】
制御装置の情報を検出し評価することにより、有利には制御装置の作動中に、短絡スイッチングプロセスが現在行われているかどうかを検知することができる。したがって、新たな短絡スイッチングプロセスが検知された場合、カウンタ読み取り値は使用期間中、継続的に更新される。
【0007】
カウンタ読み取り値に基づいて、例えば出力段回路を保護するための手段や、エラーを修正するための手段を実行することができる。また、カウンタ読み取り値によって、例えば出力段の損傷または破壊の危険性の大きさを推論することができる。また、カウンタ読み取り値が非常に高く、例えば短絡時に許容される(オン)スイッチングプロセスの所定数に近づくと、出力段の作動を制限したり、影響を与えたりすることができる。
【0008】
カウンタ読み取り値は、有利には作業場で読み取ることができ、例えば、トラブルシューティングや修理を容易にすることができる。また、出力段または制御装置が損傷または破壊された場合、カウンタ読み取り値は、その後の原因究明に有益となり得る。カウンタ読み取り値に基づいて、保証請求が正当で存在するかどうかを特に有利に確認することができる。例えば、カウンタ読み取り値に基づいて、(エンド)顧客が、起動したエンジン検査ランプのような警告を長期間にわたって無視したかどうかを確認することができ、(制御装置)メーカーによる保証サービスの削減または除外につなげることができる。
【0009】
制御装置に関する情報は、特に制御装置の現在の作動、特に出力段回路を駆動制御するための制御装置からの現在の信号、また、特に制御装置の現在のエラーまたはエラーメッセージを特徴付ける。この情報に基づいて、回路が現在駆動制御されているかどうか、制御装置に現在短絡が存在するかどうかを特に有利に推論することができる。例えば、車両制御装置の出力段における短絡を検知するための様々な手段が知られており、一部は規定されている。例えば、検出された測定値を評価することができる。例えば、出力段回路を流れる電流が許容限界値を超えているかどうかを検査することができる。また、エラー診断または制御装置の診断機能を使用して、エラー状態を検知することができる。
【0010】
有利には、カウンタ読み取り値またはカウンタ読み取り値の現在の値に応じて、所定の診断区間、特に現在の診断区間中に実行されるか、実行される予定であるか、実行されてよい短絡スイッチングプロセスの優先順位付けが実行される。例えば、これらの個々の診断区間は、(自動車)車両の走行サイクルにそれぞれ対応することができる。好ましくは、エラー診断またはエラー検知の過程で実行される短絡スイッチングプロセスに優先順位がつけられる。エラー診断のためのこのようなスイッチングプロセスに基づいて、特に、短絡がまだ存在するかどうか、または制御装置が回復後に短絡なしで再びエラーなく機能するかどうかを検査または検知することができる。この優先順位を用いて、短絡がまだ存在するかどうかを診断区間ごとに検査する頻度を、有利には調整または設定することができる。割り当てられた優先順位が高いほど、診断区間ごとに頻繁にエラー診断が実行される。特に、不必要に多くの短絡スイッチングプロセスと、出力段回路の損傷または破壊を避けるために、診断区間ごとに実行されるエラー診断の回数は、回路の使用期間が長くなるにつれて常に低減することができる。
【0011】
例えば、カウンタ読み取り値が低く、これが特に出力段の使用期間が初期であることを反映している場合、短絡が回復または修正される可能性は、使用期間の初期では使用期間の末期よりも高いため、出力段の使用期間の後期段階にカウンタ読み取り値が高くなる場合よりも、エラー診断またはエラー検知の優先順位を高くすることができる。例えば、カウンタ読み取り値が低い場合に高い優先順位が割り当てられることによって、短絡がまだ存在するかどうかを診断区間ごとに複数回検査することが可能である。カウンタ読み取り値が高い場合に低い優先順位が割り当てられることによって、不要な負荷や出力段回路の故障を回避するために、診断区間ごとのエラー診断のためのスイッチングプロセスを少なくするか、またはスイッチングプロセスを行わないようにすることができる。例えば、カウンタ読み取り値が所定の限界値以下であれば、エラー診断のためのスイッチングプロセスには高い優先順位または最も高い優先順位を割り当てることができる。カウンタ読み取り値がこの限界値に近づくと、優先順位を低く選択することができる。
【0012】
従来、診断区間ごとに実行される短絡スイッチングプロセス数は、例えばそれぞれの出力段のタイプ、電源、適用されるシステム、構成、使用されるセンサ、現在の周囲温度等に応じて、固定の最大数に制限される。従来、短絡が検知されると、特にエンジン検査ランプを起動させることによってエラー通知が行われ、診断区間ごとの短絡スイッチングプロセスの固定最大数を上限として、短絡がまだ存在するかどうか、診断区間中の固定間隔で、さらなるスイッチオンプロセスによって検査が行われる。その時までに短絡が修正されていない場合、制御装置の対応する機能は、診断区間の残りの間、持続的に一括停止することが多い。この診断区間で短絡が修正された場合でも、それはもはや確認できず、対応する機能はやはり停止したままとなる。その後の診断区間において、短絡の検査を再度行うことができるようになる。
【0013】
これに対して本方法では、カウンタ読み取り値を用いて、特に使用期間に基づいて、診断区間ごとにエラー検査する頻度を動的に適合させることができる。使用期間が長い場合よりも使用期間の初期の方が修正の可能性が高いため、短絡の修正を検知できるように検査がより頻繁に行われ、短絡がもはや存在しないにもかかわらず、制御装置の機能を不必要に一括停止しなくてよい。使用期間が長い場合、修正の可能性は低くなるが、出力段回路が破壊される危険性が高まるため、エラー検査は診断区間ごとにほとんど行わないか、全く行われなくてよい。
【0014】
好ましくは、カウンタ読み取り値またはカウンタ読み取り値の現在値に応じて、診断区間または走行サイクル中、特に現在の診断区間または走行サイクル中に実行される、または実行される予定である、または実行されてよい短絡スイッチングプロセス数が制限される。上記で説明したように、従来の方法では、エラー診断のための短絡スイッチングプロセスは、診断区間ごとに、静的な固定値に一括して制限されることが多い。対照的に、カウンタ読み取りを導入することにより、回路の使用期間にわたって、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数を動的に、特に好ましく制限することができ、特に回路がこれまでの使用期間中に既に実行した短絡スイッチングプロセス数に動的に適合させることができる。
【0015】
好ましい実施形態によれば、カウンタ読み取り値またはカウンタ読み取り値の現在値は、所定の閾値と比較される。例えば、この閾値は、出力段回路がその使用期間中に少なくとも耐えるべき短絡スイッチングプロセスの最小数に応じて設定することができる。この閾値は、例えば、これまでに実行された短絡スイッチングプロセス数がこの最小数に次第に近づいており、回路が損傷する危険性が高まっていることを表すことができる。閾値に到達するか、または閾値を超えると、さらなるスイッチオンプロセスを中止または禁止することができる。好ましくは、短絡スイッチングプロセスは、現在のカウンタ読み取り値と、所定の閾値との比較に応じて優先順位付けが実行され、および/または短絡スイッチングプロセス数が制限される。したがって、特に診断区間ごとのスイッチングプロセスの静的な一括制限は行われず、出力段回路の現在の使用期間に応じて、短絡時に許容されるスイッチングプロセスの頻度を動的に適合させることができる。
【0016】
特に、診断区間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値は、上記で説明したように閾値として設定することができる。
閾値は、実行される診断区間数に応じて設定されることが特に好ましい。したがって、好ましくは、出力段回路のこれまでの使用期間に応じて閾値を動的に適合させることができる。
【0017】
有利には、特に現在の診断区間に対する閾値は、許容される短絡スイッチングプロセス数と、これまでに実行された診断区間のうち1つとの間の(例えば線形または対数の)関係に応じて設定される。対数関係により、特に出力段の使用期間の初期において、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数を多くすることができる。出力段回路がその使用期間中に少なくとも耐えるべき短絡スイッチングプロセスの最小数に近づくと、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数を少なくすることができる。
【0018】
好ましくは、特に現在の診断区間に対する閾値は、回路の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値に応じて、特に、短絡スイッチングプロセス数と、回路の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値との間の差異に応じて設定される。このような関係により、特に最大値からの差異が大きい場合には、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数を多くすることができる。最大値に近づくと、回路を保護するために、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数が少なくなる。
【0019】
好ましくは、評価の過程で、回路のハイサイドスイッチがアースへの短絡中にスイッチオンプロセスを実行すること、および/または回路のローサイドスイッチが供給電源への短絡中にスイッチオンプロセスを実行することが検知される場合にのみ、カウンタ読み取り値が増加する。アース側に設置された出力段、または端子がアースに接続されたローサイドスイッチ、または負荷がスイッチと供給電源との間に配置されたローサイドスイッチの場合、特にスイッチオンパルスは、供給電源への短絡時に回路に損傷を与える可能性があるため、この場合、このような短絡時のスイッチングプロセスをカウンタ読み取り値で記録することが特に好ましい。一方、電源側に設置された出力段、すなわち、端子が供給電源に接続されたハイサイドスイッチ、または負荷がスイッチとアースとの間に配置されたハイサイドスイッチの場合、特にスイッチオンパルスは、アースへの短絡時に損傷を与える可能性があるため、この場合、アース短絡時のスイッチングプロセスをカウンタ読み取り値でカウントすることが好ましい。
【0020】
本発明に係る演算装置、例えば(自動車)車両の制御装置は、本発明に係る方法を実行するように、特にプログラミング技術を用いて構成されている。
本発明のさらなる利点および実施形態は、説明および添付の図面からわかる。
【0021】
本発明を、実施例によって図面に概略的に示し、以下に図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る方法の好ましい実施形態を実行するように構成された出力段回路を備える制御装置を概略的に示す図である。
【
図2】本発明に係る方法の好ましい実施形態をブロック図として概略的に示す図である。
【
図3】本発明に係る方法の好ましい実施形態の過程で決定され得る、実行される走行サイクル数に対してプロットされた、許容される短絡スイッチングプロセス数を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1では、(自動車)車両の制御装置が概略的に示され、100と記載されている。
制御装置100は、例えば、内燃機関130を駆動制御するためのエンジン制御装置として設けることができ、マイクロコントローラ110と、例えばハイサイドスイッチおよび/またはローサイドスイッチを備えるMOSFETブリッジ回路の形態の半導体出力段回路120と、を有する。対応する駆動制御パルスによって、マイクロコントローラ110は、出力段回路120のこれらの半導体スイッチング素子を駆動制御することができる。
【0024】
出力段120は、損傷することなく、最小数の短絡スイッチングプロセスに耐えられるように構成されている。この短絡スイッチングプロセス数を超えると、出力段120および制御装置100の損傷または破壊の危険性が高まる可能性がある。
【0025】
この危険性を防止するために、制御装置100は、特にプログラミング技術を用いて本発明に係る方法の好ましい実施形態を実行するように構成され、本方法は
図2にブロック図として概略的に示され、以下に説明される。
【0026】
ステップ201で、制御装置100または対応する(自動車)車両が通常の方法で作動する。ステップ202で、制御装置100に関する情報、特に制御装置の現在の作動を特徴付ける情報が検出される。特に、この情報は、出力段回路120を駆動制御するためのマイクロコントローラ110の現在の信号または駆動制御パルス、および制御装置100の現在存在するエラーに関する。例えば、この情報として、半導体スイッチング素子の駆動制御信号のデューティ比、半導体スイッチング素子を通る電流、エラーメモリ情報またはエラーメモリ内のエントリが検出される。
【0027】
ステップ203で、この情報は、短絡スイッチングプロセスが存在するかどうか、すなわち、短絡の形態のエラー状態が出力段回路120に存在する間に、駆動制御パルスまたは(スイッチオン)パルスがマイクロコントローラ110から出力段回路120に出力されるかどうか、特に、ひいては出力段回路120のハイサイドスイッチがアースに対してスイッチオンプロセスを実行しているかどうか、および/またはローサイドスイッチが供給電源(例えばバッテリ)に対してスイッチオンプロセスを実行しているかどうかについて評価される。
【0028】
これに該当せず、そのような短絡スイッチングプロセスが存在しない限り、制御装置に関する情報はステップ202でさらに検出され、ステップ203で評価される。
一方、ステップ203で、そのような短絡スイッチングプロセスが存在することが検知された場合、ステップ204で、出力段回路120の使用期間にわたって実行された短絡スイッチングプロセス数を特徴付けるカウンタ読み取り値が更新または増加される。したがって、このカウンタ読み取り値の現在値は、使用期間の開始以来または最初の運転以来、出力段回路120が制御装置100内で実行した全ての短絡スイッチングプロセス数に相当する。
【0029】
このカウンタ読み取り値は、例えば作業場で読み取ることができ、トラブルシューティング、修理、または保証請求の確認に使用することができる。例えば、カウンタ読み取り値に基づいて、車両の運転者が、長い期間にわたって例えば起動したエンジン検査ランプのような警告を無視したかどうかを検査することができ、これは、制御装置100のメーカーによる保証サービスの削減または除外につなげることができる。
【0030】
ステップ205で、カウンタ読み取り値またはカウンタ読み取り値の現在値が、閾値、特にエラー診断のための診断区間または走行サイクル中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値と比較される。
【0031】
従来の方法では、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数は、静的に一定の固定値に制限されることが多い。これに対し、本カウンタ読み取り値を導入することにより、回路120がこれまでの使用期間中に既に実行した短絡スイッチングプロセス数に応じて、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセスを柔軟かつ動的に適合させることが可能になる。
【0032】
閾値は、特に、出力段回路120または車両が既に実行した診断区間数に応じて設定される。例えば、出力段回路120の使用期間の初期段階においては、使用期間の初期において短絡が回復する可能性がより高いため、診断区間ごとの短絡スイッチングプロセス数を、後の段階よりも多くすることが許容され得る。特に、現在の診断区間の閾値は、許容される短絡スイッチングプロセス数と、実行された診断区間数との間の線形または対数関係に応じて設定される。
【0033】
閾値比較205に基づき、ステップ206で、エラー診断のために現在の診断区間でまだ実行されてよい短絡スイッチングプロセス数が制限される。また、ステップ206で、比較結果に基づいて、個々の短絡スイッチングプロセスの優先順位付けを実行することができる。例えば、回路120の使用期間の初期には、エラー診断の過程で短絡スイッチングプロセスに高い優先順位または最も高い優先順位を割り当てることができ、この場合、回復またはエラー修正の可能性が高いため、診断区間ごとのエラー診断のために、そのようなスイッチングプロセスの高い回数または無制限の回数を許容することもできる。多くの診断区間が実行された後の使用期間の後期段階では、制御装置100の考えられる損傷または破壊を回避するために、例えば、エラー診断のためのそのような短絡スイッチングプロセスの優先順位を低く選択し、エラー診断のための1回の試みまたは1回のスイッチングプロセスのみを設定することができる。
【0034】
図3では、実行された診断区間数nに対してプロットされた、許容される短絡スイッチングプロセス数mが概略的に示されている。
曲線310は対応する線形関係を表し、曲線320は対応する対数関係を表し、これに応じて、ステップ205で現在の診断区間の閾値を設定することができる。
【0035】
Mは、出力段回路120がその使用期間中に少なくとも耐えるべき短絡スイッチングプロセスの最小数を示す。
例えば、315は、線形関係310に従った、診断区間N1について許容される短絡スイッチングプロセス数を示し、325は、対数関係320に従った、診断区間N1について許容される短絡スイッチングプロセス数を示す。
【0036】
対数関係320によれば、特に回路120の使用期間の初期において、線形関係310に従って許容されるよりも多くの診断区間ごとの短絡スイッチングプロセスが許容される。また、対数関係320によれば、最小数Mに近づくと、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセスは少なくなる。
【0037】
例えば、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数は、テイラー展開による対数関係320に基づいて、現在の診断区間中にオンラインで算出することができる。
閾値が、短絡スイッチングプロセス数と、回路の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値との間の差異に応じて設定される場合、質的に同様の曲線が得られる。したがって、特に最大値からの差異が大きい場合、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセス数が多くなる。最大値に近づくと、回路を保護するために、診断区間ごとに許容される短絡スイッチングプロセスは少なくなる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(100)の回路(120)、特に出力段回路(120)の短絡スイッチングプロセス監視方法であって、
前記制御装置(100)に関する情報が検出され(202)、短絡スイッチングプロセスが存在し、前記回路(120)が短絡中にスイッチオンプロセスを実行するかどうかについて評価され(203)、
前記評価の過程で、短絡スイッチングプロセスがあることが検知されると、カウンタ読み取り値が更新され(204)、前記カウンタ読み取り値は、前記回路(120)の使用期間にわたって実行される短絡スイッチングプロセス数を特徴付ける、方法。
【請求項2】
前記カウンタ読み取り値に応じて、診断区間中に実行される短絡スイッチングプロセス、特にエラー診断の過程で実行される短絡スイッチングプロセスの優先順位付けまたは制限が実行される(206)、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カウンタ読み取り値が、所定の閾値、特に診断区間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の所定の最小値と比較される(205)、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値が、診断区間数に応じて設定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値が、短絡スイッチングプロセス数(m)と、診断区間数との間の関係(310)に応じて設定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値が、前記回路(120)の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値に応じて設定される、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
前記閾値が、短絡スイッチングプロセス数(m)と、前記回路(120)の使用期間中に実行されてよい短絡スイッチングプロセス数の最大値との間の差異に応じて設定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記比較(205)に応じて、短絡スイッチングプロセスの前記優先順位付けが実行され(206)、および/または前記短絡スイッチングプロセス数が制限される(206)、請求項
3に記載の方法。
【請求項9】
前記評価の過程で、前記回路(120)のハイサイドスイッチがアースへの短絡中にスイッチオンプロセスを実行すること、および/または前記回路(120)のローサイドスイッチがバッテリへの短絡中にスイッチオンプロセスを実行することが検知される場合に、前記カウンタ読み取り値が更新される(204)、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
請求項
1に記載の方法の全ての方法ステップを実行するために構成された、演算装置(100)。
【国際調査報告】