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特表2024-525807新規キメラ受容体組成物、組換えベクター、細胞およびそれらの応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】新規キメラ受容体組成物、組換えベクター、細胞およびそれらの応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240705BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240705BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/0783
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K47/68
A61K47/65
A61K48/00
A61K39/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502085
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2022105029
(87)【国際公開番号】W WO2023284700
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110793058.6
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016530
【氏名又は名称】スジョウ イミュノフォコ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU IMMUNOFOCO BIOTECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Unit 504-506, Bldg A3, Creative Industry Park, Xinghu Street, Industrial Park, Suzhou, Jiangsu 201210, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】スン,ミンミン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨウタオ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ルイドゥン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ユンポン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チオユン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF67
4C076FF68
4C084AA13
4C084NA06
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA21
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】新規キメラ受容体組成物、組換えベクター、細胞およびそれらの応用である。当該新規キメラ受容体組成物は、従来のキメラ抗原受容体と、NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列または切断断片を含むNKG2Dキメラ受容体とを含み、SNRを備えたCARと略称される。本発明によって提供されるキメラ受容体組成物は、慣用のCAR-T細胞がNKG2D細胞外領域および細胞内シグナル領域を発現するようにし、CAR-T抗原認識スペクトルを拡大し、腫瘍不均一性を解決し、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対するCAR-Tの殺傷能力を増強すると同時に、比較的低いレベルの因子放出を達成し、サイトカインストームの発生の可能性を低減し、CAR-Tの安全性を向上させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体と、NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列または切断断片を含むNKG2Dキメラ受容体とを含む、ことを特徴とする新規キメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項2】
キメラ抗原受容体およびNKG2Dキメラ受容体を含み、前記NKG2Dキメラ受容体はNKG2D細胞外領域およびDAP12細胞内領域配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項3】
前記NKG2Dキメラ受容体は共刺激分子をさらに含み、前記共刺激分子は、CD28、4-1BB、DAP10、ICOS、OX40およびCD40から選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項4】
前記キメラ抗原受容体は、細胞外認識領域、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項5】
前記キメラ抗原受容体の細胞外認識領域は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原を認識する抗体または抗体断片を含み、前記腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、好ましくは、CD19、BCMA、CD22、CD20、CD123、CD30、CD38、CD138、CD56、CD7、CLL-1、CD10、CD34、CS1、CD16、CD4、CD5、IL-1-RAP、ITGB7、k-IgG、TAC1、TRBC1、MUC1、NKG2D、PD-L1、CD133、CD177、LeY、CD70、ROR1、AFP、AXL、CD80、CD86、DLL3、DR5、FAP、LMP1、MAGE-A1、MAGE-A4、MG7、MUC16、PMEL、ROR2、VEGFR2、CD171、Claudin18.2、Claudin6、EphA2、ErbB、Fra、PSCA、cMet、IL13Ra2、EPCAM、EGFR、PSMA、EGFRvIII、GPC3、CEA、HER2、GD2およびMesothelinから選ばれる、ことを特徴とする請求項4に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項6】
前記ヒンジ領域の配列は、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、およびIgGの少なくとも1つに由来し、前記膜貫通領域の配列は、CD2、CD27、LFA-1、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、CD3ζおよびCD3εの少なくとも1つに由来し、前記細胞内シグナル領域の配列は、Toll様受容体、CD2、CD27、LFA-1、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、DAP10、DAP12、CD3ζおよびCD3εのうちの少なくとも1つに由来する、ことを特徴とする請求項4に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項7】
前記キメラ抗原受容体とキメラ受容体とを連結する連結ペプチドをさらに含み、当該連結ペプチドは自己切断ポリペプチド2Aペプチドであり、当該2AペプチドはF2A、P2A、T2AおよびE2Aを含み、好ましくはP2Aであり、そのアミノ酸配列は配列番号9である、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項8】
前記キメラ受容体のアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号8の配列の1つから選ばれ、好ましくは配列番号3または配列番号6である、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質をコードする、核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質を発現し、請求項10に記載の核酸または請求項11に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項12】
前記細胞は、T細胞、NK細胞、DC細胞およびマクロファージの細胞のうちの1つから選ばれ、好ましくは、αβT細胞、γδT細胞またはNKT細胞である、ことを特徴とする請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
請求項11または12に記載の細胞を主な活性成分として含む、ことを特徴とする腫瘍治療用の生物製剤。
【請求項14】
請求項11に記載のベクターを前記細胞にトランスフェクションするステップを含む、ことを特徴とする請求項11または12に記載の細胞の製造方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質、請求項9に記載の核酸、請求項10に記載のベクター、あるいは請求項11または12に記載の細胞の、抗腫瘍薬の製造における応用。
【請求項16】
前記抗腫瘍薬は、不均一性腫瘍を治療するために使用される、請求項15に記載の応用。
【請求項17】
前記不均一性腫瘍は、NKG2DL陽性腫瘍細胞、および前記キメラ抗原受容体によって標的化される腫瘍細胞を少なくとも含む、請求項16に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年07月14日に中国国家知識産権局に提出された出願番号202110793058.6で、発明名称が「新規キメラ受容体組成物、組換えベクター、細胞およびそれらの応用」である中国特許の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、生物医薬の技術分野に関し、具体的には、新規キメラ受容体組成物、組換えベクター、細胞およびそれらの応用に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の腫瘍治療法には、手術、放射線療法、化学療法、標的療法などが含まれるが、近年の免疫療法の発展は、腫瘍治療の分野、特にCTLA-4、PD-1/PD-L1経路阻害剤に代表される免疫チェックポイント療法とCAR-Tに代表される養子細胞療法に深刻な変化をもたらしている。養子細胞療法は、TIL、NK、TCR-T、CAR-T/NK/NKT/TIL/Mφなどを含む。そのうち、CD19を標的とするCAR-T療法はB細胞腫瘍において優れた臨床効果を達成し、かつ2017年には2種のCAR-T製品がB細胞白血病またはリンパ腫の治療に用いることがFDAによって承認された。
【0004】
CAR-Tは血液腫瘍において重大な進展を遂げたが、血液腫瘍の治療ではサイトカインストームなどの副作用の発生率が比較的高く、ほとんどの患者はCAR-T治療を受ける過程において、サイトカインストームによってもたらされる副作用を低減するために、補助手段を使用する必要がある。CAR-Tは、固形腫瘍の治療において効果が低く、その重要な原因の1つは、腫瘍不均一性で、固形腫瘍を殺傷するCAR-T細胞の能力が比較的弱く、腫瘍細胞を完全に除去することができないことであり、さらにCAR-Tは、固形腫瘍の治療におけるサイトカインストームの発生率およびサイトカインストームのレベルが血液腫瘍より高く、副作用はより重篤で、臨床リスクに対する利益の比率が低いため、CAR-T治療に対する臨床的固形腫瘍患者の受容性に影響を及ぼす。
【0005】
現在の解決策は通常、腫瘍不均一性を解決するために二重標的などを使用し、治療過程中または事前に介入し、抗体を使用してサイトカインストームを対症的に治療するか、あるいはサイトカインストームやCAR-Tの過剰増殖が発生した場合に、抗体を使用してサイトカインを中和したりCAR-T細胞を除去したりしてCAR-Tの毒性副作用を軽減する安全スイッチをCAR-T上に設計する。
【0006】
NK細胞は、表面にNKG2Dを発現し、そのリガンド、例えば、MICAやMICBなどを認識することで下流シグナルDAP10およびDAP12などを活性化して標的細胞を殺傷し、T細胞は、表面自体もNKG2Dを発現し、細胞内にはDAP10を発現するが、DAP12を発現しなく、正常の状況では、T細胞は表面NKG2Dがそのリガンドを認識すると、細胞内シグナルを効果的に活性化できなくなり、ひいては標的細胞を殺傷することができない。本発明は、慣用のCAR-T細胞にNKG2Dの細胞外領域および細胞内シグナル領域を発現させ、CAR-T抗原認識スペクトルを拡大すると同時に、腫瘍不均一性を解決するように設計しようとする。
【発明の概要】
【0007】
従来技術の欠点を克服するために、本発明は、CAR-T抗原認識スペクトルを拡大すると同時に、腫瘍不均一性を解決し、かつサイトカインストームの発生の可能性を低減し、CAR-Tの安全性を高める、新規キメラ受容体組成物または融合タンパク質、組換えベクター、細胞およびそれらの応用を提供する。
【0008】
上記の目的を実現するために、本発明は以下の技術案を採用する:
本発明の第1の態様は、キメラ抗原受容体と、NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列または切断断片を含むNKG2Dキメラ受容体とを含む、新規キメラ受容体組成物または融合タンパク質を提供する。
【0009】
さらに、当該キメラ受容体組成物または融合タンパク質は、キメラ抗原受容体およびNKG2Dキメラ受容体を含み、当該NKG2Dキメラ受容体はNKG2D細胞外領域およびDAP12細胞内領域配列を含む。
【0010】
さらに、上記NKG2Dキメラ受容体は共刺激分子をさらに含み、当該共刺激分子は、CD28、4-1BB、DAP10、ICOS、OX40およびCD40から選ばれる。
【0011】
さらに、上記キメラ抗原受容体は、細胞外認識領域、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含む。
【0012】
さらに、上記細胞外認識領域は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原を認識する抗体または抗体断片を含む。
【0013】
さらに、上記腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、CD19、BCMA、CD22、CD20、CD123、CD30、CD38、CD138、CD56、CD7、CLL-1、CD10、CD34、CS1、CD16、CD4、CD5、IL-1-RAP、ITGB7、k-IgG、TAC1、TRBC1、MUC1、NKG2D、PD-L1、CD133、CD177、LeY、CD70、ROR1、AFP、AXL、CD80、CD86、DLL3、DR5、FAP、LMP1、MAGE-A1、MAGE-A4、MG7、MUC16、PMEL、ROR2、VEGFR2、CD171、Claudin18.2、Claudin6、EphA2、ErbB、Fra、PSCA、cMet、IL13Ra2、EPCAM、EGFR、PSMA、EGFRvIII、GPC3、CEA、HER2、GD2およびMesothelinから選ばれる。
【0014】
さらに、上記ヒンジ領域の配列は、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、およびIgGの少なくとも1つに由来し、上記膜貫通領域の配列は、CD2、CD27、LFA-1(CD11a/CD18)、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、CD3ζおよびCD3εの少なくとも1つに由来し、上記細胞内シグナル領域の配列は、Toll様受容体、CD2、CD27、LFA-1(CD11a/CD18)、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、DAP10、DAP12、CD3ζおよびCD3εなどのうちの少なくとも1つに由来する。
【0015】
さらに、上記キメラ受容体組成物は、上記キメラ抗原受容体とキメラ受容体とを連結する連結ペプチドをさらに含み、当該連結ペプチドは自己切断ポリペプチド2Aペプチドであり、当該2AペプチドはF2A、P2A、T2AおよびE2Aを含み、好ましくはP2Aであり、そのアミノ酸配列は配列番号9である。
【0016】
さらに、上記キメラ受容体のアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号8の配列の1つから選ばれ、好ましくは配列番号3または配列番号6である。
【0017】
本発明の第2の態様は、上記キメラ受容体組成物または融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0018】
本発明の第3の態様は、上記核酸を含むベクターを提供する。
【0019】
本発明の第4の態様は、上記キメラ受容体組成物または融合タンパク質を発現し、上記核酸または上記ベクターを含む細胞を提供する。
【0020】
さらに、上記細胞は、T細胞、NK細胞、DC細胞およびマクロファージの細胞のうちの1つから選ばれる。
【0021】
さらに、上記T細胞は、αβT細胞、γδT細胞またはNKT細胞から選ばれる。
【0022】
本発明の第5の態様は、上記細胞を主な活性成分として含む、腫瘍治療用の生物製剤を提供する。
【0023】
本発明の第6の態様は、上記ベクターを細胞にトランスフェクションするステップを含む、上記細胞の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の第7の態様は、上記キメラ受容体組成物、核酸、ベクターまたは細胞の、抗腫瘍薬の製造における応用を提供する。
【0025】
本発明は上記の技術案を採用し、従来技術と比較して以下の技術的効果を有する:
本発明によって提供されるキメラ受容体組成物または融合タンパク質は、慣用のCAR-T細胞がNKG2D細胞外領域および細胞内シグナル領域を発現するようにし、CAR-T抗原認識スペクトルを拡大し、腫瘍不均一性を解決し、標的抗原を発現する腫瘍細胞に対するCAR-Tの殺傷能力を増強すると同時に、比較的低いレベルの因子放出を達成し、サイトカインストームの発生の可能性を低減し、CAR-Tの安全性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施例における胃癌(A)、膵臓癌(B)および食道癌(C)に由来するPDXモデルにおけるCLDN18.2およびNKG2D Ligands mRNAの発現状況である。
図2】本発明の一実施例における胃癌組織チップにおけるCLDN18.2およびNKG2D ligandsのタンパク質レベルの発現状況である。
図3】本発明の一実施例における配列名が21007、21067~21074のキメラ受容体組成物の構造概略図である。
図4】本発明の一実施例において構築されたCAR-T細胞anti-CLDN18.2-CARおよびNKG2Dの発現結果を示す。
図5】本発明の一実施例において構築された細胞株293-CLDN18.2によるCLDN18.2の高発現を示す。
図6】本発明の一実施例における293Tによる比較的高いレベルのNKG2DリガンドMICA/Bの発現を示す。
図7】本発明の一実施例におけるSNRを備えたCAR-T細胞による細胞株293-CLDN18.2に対する殺傷効果を示す。
図8】本発明の一実施例における細胞株293-CLDN18.2との共インキュベーションによるCAR-Tの増殖倍数を示す。
図9】本発明の一実施例におけるSNRを備えたCAR-T細胞による293T細胞の殺傷効果を示す。
図10】本発明の一実施例におけるSNRを備えたCAR-T細胞が標的細胞293-CLDN18.2を殺傷する時に、より低い因子分泌レベルを有することを示し、そのうち、図A~Dは、それぞれ、IL-2、IFN-γ、IL6およびTNF-αの分泌レベルを示す。
図11】本発明の一実施例におけるSNRを備えたCAR-T細胞が、MICA/Bを発現する標的細胞を殺傷する時に、中程度レベルのサイトカインを放出することを示し、そのうち、図A~Dは、それぞれIFN-γ、TNF-α、IL6およびIL-2の分泌レベルを示す。
図12】本発明の一実施例におけるSNRを備えたCLDN18.2 CARの概略図である。
図13】本発明の一実施例におけるA431のULBP2/5/6の発現結果図である。
図14】本発明の一実施例におけるインビトロ殺傷およびサイトカイン分泌実験の結果の図であり、そのうち、図Cおよび図Dのカラムは、左から右への順次がunT、21047、21326、21327、21328、21329である。
図15】本発明の一実施例におけるCAR-T細胞の増殖、記憶表現型および枯渇に対するSNRの影響である。
図16】本発明の一実施例におけるCLDN18.2均一性発現のインビボモデルの薬効研究実験結果である。
図17】本発明の一実施例におけるA431 rechallenge実験である。
図18】本発明の一実施例におけるA431腫瘍モデルの薬効実験であり、そのうち、図Bのカラムは、左から右への順次がPBS、UNT、21047、21327、21328および21329であり、そのうち、PBS群と横軸は一致している。
図19】本発明の一実施例におけるCLDN18.2不均一性腫瘍モデルの薬効実験結果である。
図20】本発明の一実施例におけるSNRを備えたEPCAM CARとCD19 CARの概略図である。
図21】本発明の一実施例において構築されたCAR-T細胞anti-EPCAM-CAR、anti-CD19-CARおよびNKG2Dの発現結果を示す。
図22】本発明の一実施例におけるEPCAM CAR-Tのインビトロ殺傷およびIFN-γ分泌の実験結果図である。
図23】本発明の一実施例におけるCD19 CAR-Tのインビトロ殺傷およびIFN-γ分泌の実験結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、キメラ受容体組成物または融合タンパク質を構築し、従来のキメラ抗原受容体発現ベクターに基づいて、NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列または切断断片を含むNKG2Dキメラ受容体を増加させ、ベクターをレンチウイルスとしてパッケージングし、レンチウイルスを細胞に形質導入してCLDN18.2を標的とすると同時にNKG2Dを発現する免疫細胞を製造し、免疫細胞療法の安全性を向上させる。
【0028】
「NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列」とは、NKG2Dの全長配列を必ず含み、かつDAP10の全長配列またはDAP12の全長配列の一方または両方を含むことを意味する。
【0029】
いくつかの実施形態において、これは切断断片のNKG2Dキメラ受容体を含み、かつDAP10の全長配列またはDAP12の全長配列の一方または両方を含む。切断断片のNKG2Dキメラ受容体は、NKG2Dの細胞内切断断片(ICD)または細胞外切断断片(ECD)であり得る。
【0030】
本発明の一実施例は、キメラ抗原受容体と、NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列または切断断片を含むNKG2Dキメラ受容体とを含む、新規キメラ受容体組成物または融合タンパク質を提供する。
【0031】
本発明の一好ましい実施形態において、当該キメラ受容体組成物または融合タンパク質は、キメラ抗原受容体およびNKG2Dキメラ受容体を含み、当該NKG2Dキメラ受容体はNKG2D細胞外領域およびDAP12細胞内領域配列を含む。
【0032】
本発明の一好ましい実施形態において、上記NKG2Dキメラ受容体は共刺激分子をさらに含み、当該共刺激分子は、CD28、4-1BB、DAP10、ICOS、OX40およびCD40から選ばれる。
【0033】
本発明の一好ましい実施形態において、上記キメラ抗原受容体は、細胞外認識領域、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含む。
【0034】
本発明の一好ましい実施形態において、上記細胞外認識領域は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原を認識する抗体または抗体断片を含む。
【0035】
本発明の一好ましい実施形態において、上記腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、CD19、BCMA、CD22、CD20、CD123、CD30、CD38、CD138、CD56、CD7、CLL-1、CD10、CD34、CS1、CD16、CD4、CD5、IL-1-RAP、ITGB7、k-IgG、TAC1、TRBC1、MUC1、NKG2D、PD-L1、CD133、CD177、LeY、CD70、ROR1、AFP、AXL、CD80、CD86、DLL3、DR5、FAP、LMP1、MAGE-A1、MAGE-A4、MG7、MUC16、PMEL、ROR2、VEGFR2、CD171、Claudin18.2、Claudin6、EphA2、ErbB、Fra、PSCA、cMet、IL13Ra2、EPCAM、EGFR、PSMA、EGFRvIII、GPC3、CEA、HER2、GD2およびMesothelinから選ばれるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の一好ましい実施形態において、上記ヒンジ領域の配列は、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、およびIgGの少なくとも1つに由来し、上記膜貫通領域の配列は、CD2、CD27、LFA-1(CD11a/CD18)、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、CD3ζおよびCD3εの少なくとも1つに由来し、上記細胞内シグナル領域の配列は、Toll様受容体、CD2、CD27、LFA-1(CD11a/CD18)、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、DAP10、DAP12、CD3ζおよびCD3εなどのうちの少なくとも1つに由来する。
【0037】
本発明の一好ましい実施形態において、上記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、配列番号19である。
【0038】
本発明の一好ましい実施形態において、上記キメラ受容体組成物または融合タンパク質は、上記キメラ抗原受容体とキメラ受容体とを連結する連結ペプチドをさらに含み、当該連結ペプチドは自己切断ポリペプチド2Aペプチドであり、当該2AペプチドはF2A、P2A、T2AおよびE2Aを含み、好ましくはP2Aであり、そのアミノ酸配列は配列番号9である。
【0039】
本発明の一好ましい実施形態において、上記キメラ受容体のアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号8の配列の1つから選ばれ、好ましくは配列番号3または配列番号6である。
【0040】
本発明の一実施例は、上記キメラ受容体組成物または融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0041】
本明細書において、核酸は、その保存的置換の変異体(例えば、縮重コドンの置換)および相補配列を含み、コドン最適化により所望の宿主細胞においてより効率的に発現される変異体も含む。核酸は通常、遺伝子、cDNA分子、mRNA分子およびオリゴヌクレオチドなどのそれらの断片を含む、RNAまたはDNAである。核酸分子は、単鎖または二重鎖であってもよいが、好ましくは二重鎖DNAである。核酸が別の核酸と共に機能的関係に置かれる場合、核酸は「効果的に連結されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を与えると、プロモーターまたはエンハンサーは、上記コード配列に効果的に連結されている。ベクターに連結する場合、DNA核酸を用いることが好ましい。
【0042】
本発明の一実施例は、上記核酸を含むベクターを提供する。
【0043】
用語「ベクター(vector)」とは、ポリヌクレオチドが挿入されることができる核酸ビークルを指す。ベクターは、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、形質転換、形質導入またはトランスフェクションによって宿主細胞に導入でき、それが保持する遺伝物質エレメントを宿主細胞において発現させることができる。ベクターは、当業者に周知であり、プラスミド、ファージミド、CRISPR/CASプラスミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1に由来する人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのファージおよび動物ウイルスなどを含むが、これらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パピローマバキュロウイルス(例えばSV40)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明に記載のベクターは、遺伝子工学において一般的に使用される調節エレメント、例えば、エンハンサー、プロモーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)および他の発現制御エレメント(例えば、転写終結シグナル、またはポリアデニル化シグナルおよびポリU配列)を含む。
【0044】
本発明の一実施例は、上記キメラ受容体組成物または融合タンパク質を発現し、上記核酸または上記ベクターを含む細胞を提供する。
【0045】
細胞は、免疫キラー細胞が好ましい。
【0046】
本発明の一好ましい実施形態において、上記細胞は、T細胞、NK細胞、DC細胞およびマクロファージの細胞のうちの1つから選ばれる。
【0047】
T細胞は、本発明において、当分野の周知のサブクラス、例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、制御性T細胞、MAIT細胞、NKT細胞およびγδT細胞のうちの1つまたは複数を含んでもよい。本発明の一好ましい実施形態において、上記T細胞は、αβT細胞、γδT細胞またはNKT細胞から選ばれる。
【0048】
本発明の一実施例は、主な活性成分として上記の細胞を含み、好ましくは薬学的に許容されるベクター、希釈剤または賦形剤をさらに含む、腫瘍治療用の生物製剤を提供する。
【0049】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容されるベクター、希釈剤または賦形剤」は、活性成分と組み合わせた場合に、上記成分が生物学的活性を維持し、対象の免疫系と反応しないことを可能にする任意の材料を含む。実例は、標準的薬物キャリア剤(例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン))、および様々な種類の湿潤剤のいずれか1つを含むが、これらに限定されない。エアロゾルまたは非経口投与に用いられる例示的な希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または生理(0.9%)食塩水である。このようなキャリア剤を含む組成物は、よく知られた常法によって調製される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編集、Mack PublishingCo.、Easton、PA、1990、およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Mack Publishing、2005)。
【0050】
本発明の一実施例は、上記ベクターを細胞にトランスフェクションするステップを含む、上記細胞の製造方法を提供する。
【0051】
本発明の一実施例は、上記キメラ受容体組成物、核酸、ベクターまたは細胞の、抗腫瘍薬の製造における応用を提供する。
【0052】
好ましい実施形態において、上記抗腫瘍薬は、不均一性腫瘍を治療するために使用される。
【0053】
本発明の一好ましい実施形態において、上記不均一性腫瘍は、NKG2DL陽性腫瘍細胞、および上記キメラ抗原受容体によって標的化される腫瘍細胞を少なくとも含む。
【0054】
以下、本発明をより良好に理解するために、具体的な実施例および図面を用いて本発明を詳細かつ具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0055】
実施例中の方法は、特に断りのない限り、常法により行い、使用する試薬は、特に断りのない限り、慣用の市販試薬または常法に従って調製した試薬である。
【実施例1】
【0056】
CLDN18.2およびNKG2D ligandsの胃癌組織における発現の検出
本発明者らは、まずPDXデータベース(CrownBio)を用いて、CLDN18.2およびNKG2DL mRNAの胃癌、膵臓癌および食道癌由来のPDX組織における発現状況を分析した。その結果は図1に示すように、胃癌、膵臓癌および食道癌のPDX組織におけるCLDN18.2の陽性率は、63%、82%および26%であり、同時に、ほとんどの組織はいずれも少なくとも1つのNKG2DリガンドまたはCLDN18.2の発現を有した。同様に、本発明者らは、胃癌組織チップ(中科光華から購入)におけるCLDN18.2およびNKG2Dリガンド(MICA、MICB、ULBP1~6)の発現を検出した。その結果はPDXデータベースにおける発現状況と一致しており、ほとんどの組織はいずれも少なくとも1つのNKG2DリガンドまたはCLDN18.2の発現を有した(図2)。上記の結果は、標的NKG2DLの使用により、CLDN18.2などの単一標的製品が直面する腫瘍不均一性の難しい問題を解決できる可能性があることが示された。
【実施例2】
【0057】
合成ナチュラルキラー受容体(Synthetic Natural Killer Receptor、SNR)の設計
本実施例は、新規キメラ受容体組成物を提供し、この新規キメラ受容体組成物(以下、Dual CARと称し、SNRまたはSNRを備えたCAR分子とも称し、その対応するCAR-T細胞はDual CAR-TまたはSNRを備えたCAR-Tと称する)は、アミノ酸配列が公開番号CN113621073A、公開日2021年11月09日の中国特許出願の配列番号1のanti-CLDN18.2-CAR(従来の第二世代Claudin18.2 CAR分子、以下21007と称する)であるもの、および配列番号1~8に示されるキメラ受容体配列(構造配列は図3に示されるようである)を含み、具体的なアミノ酸配列は、以下の表1における配列名21067~21074の配列に相当する。
【0058】
【表1】
【0059】
図3に示すように、上記キメラ受容体組成物は、21007のキメラ抗原受容体以外に、以下の配列情報をさらに含む:
(1)P2A、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号9)、
(2)DAP12ICD(細胞内領域)、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
YFLGRLVPRGRGAAEAATRKQRITETESPYQELQGQRSDVYSDLNTQRPYYK(配列番号10)、
(3)DAP10ICD、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
LCARPRRSPAQEDGKVYINMPGRG(配列番号11)、
(4)NKG2DFL(全長配列)、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
MGWIRGRRSRHSWEMSEFHNYNLDLKKSDFSTRWQKQRCPVVKSKCRENASPFFFCCFIAVAMGIRFIIMVTIWSAVFLNSLFNQEVQIPLTESYCGPCPKNWICYKNNCYQFFDESKNWYESQASCMSQNASLLKVYSKEDQDLLKLVKSYHWMGLVHIPTNGSWQWEDGSILSPNLLTIIEMQKGDCALYASSFKGYIENCSTPNTYICMQRTV(配列番号12)、
(5)CD8 hinge(ヒンジ領域)、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号13)、
(6)CD8 TM(膜貫通領域)、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号14)、
(7)DAP10FL、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
MIHLGHILFLLLLPVAAAQTTPGERSSLPAFYPGTSGSCSGCGSLSLPLLAGLVAADAVASLLIVGAVFLCARPRRSPAQEDGKVYINMPGRG(配列番号15)、
(8)DAP12FL、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
MGGLEPCSRLLLLPLLLAVSGLRPVQAQAQSDCSCSTVSPGVLAGIVMGDLVLTVLIALAVYFLGRLVPRGRGAAEAATRKQRITETESPYQELQGQRSDVYSDLNTQRPYYK(配列番号16)、
(9)DAP12ECD+TM(細胞外領域および膜貫通領域)、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
LRPVQAQAQSDCSCSTVSPGVLAGIVMGDLVLTVLIALAV(配列番号17)、
(10)T2A、そのアミノ酸配列は次のとおりである:
GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号18)。
【実施例3】
【0060】
合成ナチュラルキラー受容体(SNR)を備えたCAR分子のプラスミド構築とウイルスパッケージング
本実施例は、上記キメラ受容体を発現するSNRを備えたCAR-T細胞を提供し、その構築方法は以下のステップを含む:
1.発現ベクターの構築:SNRを備えたCAR分子およびレンチウイルスベクターのバックボーン部分は、全遺伝子合成技術を使用してCRO社によりそれぞれ構築した。SNRを備えたCAR断片を、慣用の分子クローニング手段によってレンチウイルスベクターにクローニングし、構築したプラスミド名を上記表1に示した。各プラスミドは、挿入断片の全配列決定を検証することにより、構築が成功したことを確認した。
【0061】
2.レンチウイルスパッケージングおよび力価測定
1日目:
1)T75培養フラスコに293T細胞を接種し、数量が5×106で、培養体積が20 mLであり、
2日目:
2)ウイルスをカプセル化する前に、293T細胞のコンフルエンシーが70%~80%程度であることを確認し、等体積の液体交換を行い、
3)トランスフェクション複合体の調製およびトランスフェクション、
Tube AとTube Bを別々に調製し、系は以下に示すようであり、反転または低速振とうして均一に混合し、
Tube A:Opti-MEM(2 mL)+Lipo3000(55 μL)、
Tube B:Opti-MEM(2 mL)+P3000(46 μL)+ヘルパープラスミド粒18 μg+SNRを備えたCARマスタープラスミド6 μg、
Tube AをTube Bに加え、振とうして均一に混合し、室温で15分間インキュベートし、
ステップ3で液体交換した培養フラスコを回転させ、培地が培養フラスコの反対側になるようにし、Tube A+B混合物を加え、軽く振って均一に混合した後、再び培養フラスコをゆっくりと正面に戻し、その後48 h培養し続け、
4日目:
4)トランスフェクション終了、2日培養した後、上清を収集し、500 gで10 min遠心分離し、上清を0.45 μmフィルターで濾過して50 mL遠沈管に移し、シールフィルムで包み、10000 g、4℃で一晩遠心分離し、白色ウイルスの沈殿が見られ、上清を捨てた後、上清がなくなるまで遠心管を倒置した後、沈殿を200 μLのAIM-V培地で溶解した後、2 μL取って後続のステップに従って力価を測定し、残りは-80℃で保存した。
【0062】
5)2 μLの再懸濁したウイルス上清を198 μLの1640培地に加えてウイルスを希釈し、その後、24ウェルプレートに、希釈したウイルス2 μL、10 μL、および50 μLをそれぞれ、1ウェルあたり2×105の数のJurkat T細胞で、合計3ウェル加え、最終濃度が5 μg/mLのPolybreneヘルパーウイルス感染症を加えた。
【0063】
6日目:
6)Anti-VHH-FITC抗体を用いてウイルス力価を検出し、力価は、2.5×107~1.2×108の間にあり、慣用のインビトロCAR-T構築実験の要件を満たすことができた。
【0064】
3.合成ナチュラルキラー受容体(SNR)を備えたCAR-T細胞の構築
上記パッケージングしたレンチウイルスをT細胞に感染させ、T細胞上のanti-CLDN18.2-CARおよびNKG2Dの発現を測定した結果を図4に示した。
【0065】
図4から、anti-CLDN18.2-CAR-T細胞は、比較的低いレベルのNKG2D発現を有し、SNRを備えたCAR-T細胞は、anti-CLDN18.2-CAR-T細胞と比較して比較的高いNKG2D発現レベルを有し、同時にanti-CLDN18.2-CARを正常に発現することがわかった。NKG2Dキメラ受容体がSNRを備えたCAR-T細胞の表面で首尾よく発現されていることが示された。
【実施例4】
【0066】
本実施例は、SNRを備えたCAR-T細胞の標的細胞に対する殺傷効果を検証し、具体的なステップと結果は以下のとおりである:
(1)293細胞を基にCLDN18.2抗原を高発現する細胞株293-CLDN18.2を構築し、当該細胞株は、CLDN18.2を高発現した(図5に示した)。
【0067】
(2)細胞株NKG2DリガンドMICA/Bの発現の検出:239T細胞株でMICA/Bの発現レベルが同定され、293T細胞株は比較的高いレベルのMICA/Bを発現した(図6に示した)。
【0068】
(3)CAR-T細胞と293-CLDN18.2を2:1および0.5:1の効果対標的比で混合し、5 hインキュベートし、Annexin Vフローサイトメトリーで標的細胞に対するCAR-Tの殺傷効果を検出し、anti-CLDN18.2-CAR-TおよびSNRを備えたCAR-Tは、unT(形質導入されていないT)細胞と比較して、293-CLDN18.2に対してより強い殺傷効果を有し、そのうち、21069および21072は、2:1の効果対標的比で従来のCAR-T(21007)と比較して、より強い殺傷効果を有した(図7に示した)。さらに、293-CLDN18.2をCAR-Tと共インキュベートし、21069および21072のSNRを備えたCAR-Tの増殖倍数は、従来のCAR-T細胞(21007)の増殖倍数より明らかに高かった(図8に示した)。
【0069】
CAR-T細胞と293T細胞を2:1および0.5:1の効果対標的比で混合し、5 hインキュベートし、Annexin Vフローサイトメトリーで標的細胞に対するCAR-Tの殺傷効果を検出し、anti-CLDN18.2-CAR-TおよびSNRを備えたCAR-Tは、unT(形質導入されていないT)細胞と比較して、MICA/Bを発現する標的細胞に対してより強い殺傷効果を有し、そのうち、21069および21072は2:1の効果対標的比で従来のCAR-Tと比較して、より強い殺傷効果を有した(図9に示した)。
【実施例5】
【0070】
本実施例は、SNRを備えたCAR-T細胞が標的細胞293-CLDN18.2を殺傷する時に、より低い因子分泌レベルを有することを検証し、具体的なステップと結果は以下のとおりである:
実施例4で構築された細胞株293-CLDN18.2を採用し、CAR-T細胞と293-CLDN18.2を2:1の効果対標的比で混合し、24 hインキュベートし、フローサイトメトリーでCAR-Tサイトカインの放出を検出し、Biolegendのマルチファクター検出キットを用いて、エフェクター細胞を標的細胞と共にインキュベートした15 μL/試料の上清を、新しいV型96ウェルプレートに取り移し、混合希釈した磁気ビーズ15 μL/試料及び15 μL/試料のassay bufferを加え、シールフィルムでプレートをシールし、500 rpmで室温で2 h振とうし、250 gで5 min遠心分離し、上清を除去し、200 μL/試料のwash bufferを加え、250 gで5 min遠心分離し、上清を除去し、15 μL/試料の検出抗体を加え、500 rpmで室温で1 h振とうし、15 μL/試料のSA-PEを加え、500 rpmで室温で30 min振とうし、250 gで5 min遠心分離し、上清を除去し、200 μL/試料のwash bufferを加え、250 gで5 min遠心分離し、上清を除去し、150 μL/試料のWash Bufferを加え、装置に置いて検出した。その結果は、anti-CLDN18.2-CAR-TおよびSNRを備えたCAR-T細胞が293-CLDN18.2標的細胞を殺傷する時、21067、21068、21069、21070、21072などのSNRを備えたCAR-Tは、明らかにより低いIFN-γ、IL2、IL6およびTNF-α分泌レベルを有することが示された(図10に示した)。
【実施例6】
【0071】
本実施例は、SNRを備えたCAR-T細胞がMICA/Bを発現する標的細胞を殺傷する時に中程度レベルのサイトカインを放出することを検証し、具体的なステップと結果は以下のとおりである:
CAR-T細胞と293Tを2:1の効果対標的比で混合し、24 hインキュベートし、フローサイトメトリーでCAR-Tサイトカインの放出を検出し、anti-CLDN18.2-CAR-T細胞およびSNRを備えたCAR-T細胞が293T標的細胞を殺傷する時、21068、21069、21070、21072などのSNRを備えたCAR-Tは、中程度レベルのIFN-γ分泌レベル、比較的低いTNF-α、IL2およびIL6分泌レベルを有した(図11に示した)。
【実施例7】
【0072】
SNRを備えたCLDN18.2 CAR-T細胞の構築
上記の結果に基づいて、本発明者らは、さらなる検証のために分子21067、21070、21071、21072などの分子内のSNR構造を選んだ。本発明者らは、上記のいくつかのSNRsを第二世代CAR分子21047に構築して、新しいCAR分子21326、21327、21328、21329を形成した。その構造と配列を図12および下表に示した。実施例2における方法を参照し、本発明者らは、上記各分子をプラスミド、レンチウイルス、およびCAR-T細胞として構築した。
【0073】
【表2】
【実施例8】
【0074】
SNRを備えたCLDN18.2 CAR-T細胞の標的細胞を殺傷する能力の検出
SNRがNKG2DLs陽性細胞を首尾よく殺傷するか否かを検証するために、本発明者らは、ULBPs陽性腫瘍細胞A431を使用して、SNRによってもたらされる殺傷能力を検出した。具体的なステップと結果は以下のとおりである:
(1)細胞株におけるNKG2DリガンドULBP2/5/6の発現の検出:A431細胞株におけるNKG2Dリガンドの発現レベルが同定され、A431細胞株は比較的高いレベルのULBP2/5/6を発現した(図13に示した)。
【0075】
(2)CAR-T細胞とNUGC4およびA431を3:1、1:1、0.3:1の効果対標的比で混合し、5 hインキュベートし、Annexin Vフローサイトメトリーで標的細胞に対するCAR-Tの殺傷効果を検出した結果、次の図に示すように、21327と21329は、高い効果対標的比で、NUGC4を殺傷する効率が21047より高く、また21047はA431を殺傷できず、21326~21329はいずれもA431を効果的に殺傷できた。マルチファクター検出により、NUGC4を殺傷する時、21047によって分泌されるIFN-γは21326~21329より高く、これに対して、A431を殺傷する時、21327~21329によって分泌されるIFN-γレベルは、全体的にNUGC4を殺傷する時の分泌レベルより低いことが示された(図14に示した)。この結果は、4種のSNR設計のいずれもCLAUDIN18.2とNKG2DLs陽性の細胞を標的化し殺傷することができ、サイトカインの分泌レベルが比較的低いことが示された。
【実施例9】
【0076】
SNRはCAR-T細胞の増殖能力および記憶レベルを向上させ、同時に枯渇レベルを低下させた
本発明者らは、CAR-T細胞に対するSNRのインビトロ効果をさらに分析した。その結果は、図15に示すように、21047と比較して、各分子の増殖速度は、すべて明らかに増加したが、同時に各枯渇markers(PD1、LAG3、TIM3)の発現は、明らかに減少した。記憶中心記憶細胞の比率をさらに分析した結果、21327分子のTscm細胞比率が他の分子のレベルに対して明らかに上昇したことが示された。上記の利点は、SNRで使用される信号領域の機能に関連している可能性があった。
【実施例10】
【0077】
CLDN18.2均一性発現のインビボモデルの薬効研究
上記各分子のインビボでの薬効を研究するために、本発明者らは、NUGC4(CLDN18.2+、NKG2DLs-)の皮下移植腫瘍モデルを構築し、腫瘍が100 mm3に達した時点で各CAR-Tの投与を行った。研究の結果は、21047と比較して、21327は腫瘍組織を約10日早く除去でき、より良好な薬効を有することを示し、これに対して、21326と21329の薬効は21047に及ばず、21328については、マウスが早期に死亡したため、その薬効は結論付けられなかった(図16のA)ことが示された。上記の結果は、従来の第二世代CAR-T21047と比較して、21327分子は、CLDN18.2均一性発現の腫瘍を除去するより強い能力を有することが示された。
【0078】
マウスの体重をさらに分析し、21328分子は、研究期間中に体重が明らかに減少し、マウスが死亡したことが発生し、明らかなインビボ毒性を有することが示された。21047分子については、研究期間において体重の減少が発生したマウスも1匹いたが、マウスの死亡は発生しなかった。一方で、21326、21327および21329分子は、研究期間全体においてすべて明らかな毒性が発生しなかった(図16のB)。これと一致して、本発明者らは、マウス血液中のサイトカインの発現レベルをさらに分析した結果、21326、21327および21329分子がインビボで分泌したIFN-gamma(図16のC)およびTNF-alpha(図16のD)のレベルがより低いことが示され、この結果は、安全性の結果と一致した。
【0079】
上記の結果をまとめると、21327分子は、従来の第二世代CAR-Tと比較してより良好な薬効およびより低い毒性を有することが示された。SNR3の設計がCAR-Tの有効性と安全性を効果的に向上させることが示された。
【0080】
CLDN18.2陽性腫瘍が除去された後、CLDN18.2陰性再発に対抗するCAR-T細胞の能力をさらに研究するために、本発明者らは、A431細胞(CLDN18.2-、NKG2DLs+)を使用し、21047および21327群の腫瘍除去後のマウスに対して再チャレンジ実験(rechallenge)を行った。研究の結果は、21047と比較して、21327分子がA431腫瘍の増殖を顕著に阻害できることが示された(図17)。上記の結果は、SNRの追加によりCLDN18.2陰性腫瘍の再発を抑制できる可能性があることが示された。
【実施例11】
【0081】
SNRのNKG2DL+腫瘍モデルの薬効実験
各群のSNRが腫瘍を阻害する能力をさらに検証するために、本発明者らは、マウス皮下A431腫瘍移植モデル(CLDN18.2-、NKG2DLs+)を構築し、腫瘍が60 mm3に成長した時に各CAR-Tの投与を行い、その結果を図18に示した。このデータは、21327および21329がA431の増殖を阻害できること、および21329が21327より良好な腫瘍阻害効果を有することが示された。21047は腫瘍阻害効果をほとんど有さず、同時に21327および21329のSNR構造は、NKG2DLを特異的に認識して殺傷作用を開始できることも示された。
【実施例12】
【0082】
CLDN18.2不均一性腫瘍モデルの薬効実験
SNRが、不均一性腫瘍に対抗するCAR-Tの能力を向上させることができるか否かをさらに研究するために、本発明者らは、A431-18.2細胞株をさらに構築し、それをA431と混合してA431/A431-18.2腫瘍モデルを形成した。CAR-T投与は、腫瘍接種7日前後で行った。その結果は、不均一性腫瘍モデルにおいて、従来の第二世代CAR-T分子は、インビボでIFN-gammaを増殖および分泌することができるとはいえ、腫瘍の増殖を明らかに阻害することができないことが示され、CLDN18.2陽性腫瘍細胞が死滅すると同時に、CLDN18.2陰性部分の腫瘍が依然として正常に増殖することができることを示唆した。これに対して、SNR構造を持つ21327分子は混合腫瘍細胞の増殖を効果的に阻害した。IFN-γ分泌レベルの分析結果は、21327と21047のインビボでの分泌レベルに明らかな差がないことが示され(図19)、上記の結果は、SNRの追加がCAR-T細胞により不均一性腫瘍組織に対抗することに効果的に助けることが示された。
【実施例13】
【0083】
SNRを備えたEPCAM CAR-TおよびCD19 CAR-T細胞の構築
上記の結果に基づいて、本発明者らは、21327のSNRを、第二世代EPCAM CAR分子(21002)に構築して、新しいCAR分子22162を形成し、同時に21329のSNRを、第二世代CD19 CAR分子(21144)に構築して、22163を形成した(図20)。その配列を以下の表に示した。実施例2における方法を参照し、本発明者らは、上記各分子をプラスミド、レンチウイルス、およびCAR-T細胞に構築した。上記パッケージングしたレンチウイルスをT細胞に感染させ、T細胞上のanti-EPCAM-CAR、anti-CD19 CARおよびNKG2Dの発現を測定した結果を図21に示した。
【0084】
図21から、anti-EPCAM-CAR-T細胞は、比較的高いレベルのNKG2D発現を有し、SNRを備えたanti-CD19-CAR-T細胞も比較的高いNKG2D発現レベルを有し、同時にEPCAM CARとCD19 CARを正常に発現することがわかった。NKG2Dキメラ受容体がSNRを備えたCAR-T細胞の表面で首尾よく発現されていることが示された。
【0085】
【表3】
【実施例14】
【0086】
SNRを備えたEpCAM CAR-T細胞のサイトカイン分泌レベルの検出
SNRを備えたEpCAM CAR-T細胞が、不均一性腫瘍を殺傷する能力を検証するために、本発明者らは、EpCAM標的陽性(HCT116)または標的陰性細胞(MIA PaCa2)を殺傷する過程中のサイトカイン放出レベルを研究した。
【0087】
CAR-T細胞とHCT116またはMIA PaCa2を1:1の効果対標的比で混合し、24 hインキュベートした後、上清を取り出し、ELISA法を用いてサイトカイン分泌レベルを測定した。IFN-γの検出結果を図22に示し、HCT116を殺傷する時、22162によって分泌されるIFN-γは50000~60000 pg/mLであり、従来の第二世代CAR-T分子の分泌レベルに相当した。これに対して、EpCAM標的陰性細胞MIA PaCa2を殺傷する過程において、SNRは、CAR-T細胞がIFN-γを分泌する分泌レベルを向上させた。以上により、SNRは、EpCAM CAR-TがEpCAM陰性細胞を殺傷する能力を促進した。
【実施例15】
【0088】
SNRを備えたCD19 CAR-T細胞の標的細胞を殺傷する能力の検出
SNRを備えたCD19 CAR-T細胞が、不均一性腫瘍を殺傷する能力を検証するために、本発明者らは、CD19標的陽性(Raji)または標的陰性細胞(MIA PaCa2)を殺傷する過程中のサイトカイン放出レベルを研究した。
【0089】
CAR-T細胞とRajiまたはMIA PaCa2を1:1の効果対標的比で混合し、24 hインキュベートした後、上清を取り出し、ELISA法を用いてサイトカイン分泌レベルを測定した。IFN-γの検出結果は、Rajiを殺傷する時、22163によって分泌されるIFN-γは、30000~40000 pg/mLであり、従来の第二世代CAR-T分子の分泌レベルより明らかに高かった。CD19標的陰性細胞MIA PaCa2を殺傷する過程において、SNRは、CAR-T細胞がIFN-γを分泌する分泌レベルを向上させた。以上により、SNRはCD19 CAR-TがCD19陰性細胞を殺傷する能力を促進した。
【0090】
以上、本発明の具体的な実施例を詳しく説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本発明は、上述した具体的な実施例に限定されない。当業者にとっては、本発明に対して行われたいずれの同等の修正や置換も、本発明の範囲内に含まれる。従って、本発明の精神や範囲から逸脱することなく、行われた同等の変換や修正は、いずれも本発明の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
2024525807000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体と、NKG2D、DAP10および/またはDAP12の全長配列または切断断片を含むNKG2Dキメラ受容体とを含む、ことを特徴とする新規キメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項2】
キメラ抗原受容体およびNKG2Dキメラ受容体を含み、前記NKG2Dキメラ受容体はNKG2D細胞外領域およびDAP12細胞内領域配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項3】
前記NKG2Dキメラ受容体は共刺激分子をさらに含み、前記共刺激分子は、CD28、4-1BB、DAP10、ICOS、OX40およびCD40から選ばれる、ことを特徴とする請求項2に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項4】
前記キメラ抗原受容体は、細胞外認識領域、細胞外ヒンジ領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項5】
前記キメラ抗原受容体の細胞外認識領域は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原を認識する抗体または抗体断片を含み、前記腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、好ましくは、CD19、BCMA、CD22、CD20、CD123、CD30、CD38、CD138、CD56、CD7、CLL-1、CD10、CD34、CS1、CD16、CD4、CD5、IL-1-RAP、ITGB7、k-IgG、TAC1、TRBC1、MUC1、NKG2D、PD-L1、CD133、CD177、LeY、CD70、ROR1、AFP、AXL、CD80、CD86、DLL3、DR5、FAP、LMP1、MAGE-A1、MAGE-A4、MG7、MUC16、PMEL、ROR2、VEGFR2、CD171、Claudin18.2、Claudin6、EphA2、ErbB、Fra、PSCA、cMet、IL13Ra2、EPCAM、EGFR、PSMA、EGFRvIII、GPC3、CEA、HER2、GD2およびMesothelinから選ばれる、ことを特徴とする請求項4に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項6】
前記ヒンジ領域の配列は、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、およびIgGの少なくとも1つに由来し、前記膜貫通領域の配列は、CD2、CD27、LFA-1、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、CD3ζおよびCD3εの少なくとも1つに由来し、前記細胞内シグナル領域の配列は、Toll様受容体、CD2、CD27、LFA-1、CD8α、CD28、4-1BB、ICOS、OX40、CD40、CD80、DAP10、DAP12、CD3ζおよびCD3εのうちの少なくとも1つに由来する、ことを特徴とする請求項4に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項7】
前記キメラ抗原受容体とキメラ受容体とを連結する連結ペプチドをさらに含み、当該連結ペプチドは自己切断ポリペプチド2Aペプチドであり、当該2AペプチドはF2A、P2A、T2AおよびE2Aを含み、好ましくはP2Aであり、そのアミノ酸配列は配列番号9である、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項8】
前記キメラ受容体のアミノ酸配列は、配列番号1~配列番号8の配列の1つから選ばれ、好ましくは配列番号3または配列番号6である、ことを特徴とする請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質をコードする、核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項11】
請求項1に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質を発現する、細胞。
【請求項12】
前記細胞は、T細胞、NK細胞、DC細胞およびマクロファージの細胞のうちの1つから選ばれ、好ましくは、αβT細胞、γδT細胞またはNKT細胞である、ことを特徴とする請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
請求項11または12に記載の細胞を主な活性成分として含む、ことを特徴とする腫瘍治療用の生物製剤。
【請求項14】
請求項11に記載のベクターを前記細胞にトランスフェクションするステップを含む、ことを特徴とする請求項11または12に記載の細胞の製造方法。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載のキメラ受容体組成物または融合タンパク質、請求項9に記載の核酸、請求項10に記載のベクター、あるいは請求項11または12に記載の細胞の、抗腫瘍薬の製造における応用。
【請求項16】
前記抗腫瘍薬は、不均一性腫瘍を治療するために使用される、請求項15に記載の応用。
【請求項17】
前記不均一性腫瘍は、NKG2DL陽性腫瘍細胞、および前記キメラ抗原受容体によって標的化される腫瘍細胞を少なくとも含む、請求項16に記載の応用。
【国際調査報告】