(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット
(51)【国際特許分類】
B29C 64/124 20170101AFI20240705BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20240705BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20240705BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240705BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20240705BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/255
B29C64/245
B33Y30/00
B33Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502089
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2022009737
(87)【国際公開番号】W WO2023287099
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0092387
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016574
【氏名又は名称】スリーディー コントロールズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】3D CONTROLS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、 クァンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、 ヨンソン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AB11
4F213AB16
4F213AB17
4F213AD04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL24
4F213WL25
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL72
4F213WL73
4F213WL74
4F213WL87
(57)【要約】
本発明は、高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバットに関し、レジン収容空間を有し、レジン収容空間に収容されたレジンを蓋部に形成された少なくとも1つの孔を介して上部に押し出すピストン部材を備える第1バット部と、第1バット部の一側に配置され、第1バット部から供給されたレジンを用いて製作した構造体を支持する製造プラットフォームを備える第2バット部と、を含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジン収容空間を有し、前記レジン収容空間に収容されたレジンを蓋部に形成された少なくとも1つの孔を介して上部に押し出すピストン部材を備える第1バット部と、
前記第1バット部の一側に配置され、前記第1バット部から供給されたレジンを用いて製作した構造体を支持する製造プラットフォームを備える第2バット部と、
を含む、高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項2】
前記ピストン部材は、
前記第1バット部の面積と同一の断面積を有する板状に形成され、前記レジン収容空間に収容されるレジンを支持する支承部と、
前記支承部の下端部に連結され、前記蓋部の下端面の高さまで前記支承部を昇降させる駆動軸と、を含む請求項1に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項3】
前記第1バット部と前記第2バット部との間には、前記バット部の外筐の高さよりも低い壁体が境界面として配置され、
前記壁体の上端面にDLP焦点距離が固定され、前記バット部の一側から前記バット部の他側までの間を往復移動するブレード部と、
をさらに含む、請求項1に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項4】
前記ブレード部は、互いに対称となる方向に所定角度だけ傾斜したブレード縁面を有する第1ブレード及び第2ブレードを含み、
前記ブレード縁面には、前記ブレード部のブレード過程で塗布または回収される前記レジンを加熱する加熱部材が、前記ブレード部の縁面の長手方向に沿って延びて配置される、請求項3に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項5】
前記第1ブレードは、前記孔から吐出されたレジンを前記第2バット部に備えられた前記製造プラットフォーム上へ供給し、
前記第2ブレードは、前記ブレードにより塗布されて硬化されて残った残余レジンを、前記第1バット部の上側に形成された孔の中に回収させる、請求項4に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項6】
前記蓋部は、ベース部と、前記ベース部の上部に配置されて摺動される可変部と、を含む多層構造で形成される、請求項1に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバットに関し、より詳しくは、高粘度材料を効果的に平坦化できるように、材料供給方法が改善された3次元プリンタ用のバットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トップダウン方式の3次元プリンタは、水槽(Vat)に充填されたレジン(Resin)の上部から光を照射して硬化させ、硬化した材料が製造プラットフォーム(Platform)の上面に固定された状態で、Z軸駆動部が下方に移動しながら次の材料層が上方に積層しながら製作される。
【0003】
しかし、トップダウン方式の3次元プリンタの中で、セラミックス(Ceramic)を用いる3次元プリンタは、セラミックスの高い粘度のために製品製作の失敗率が顕著に高く、高い不良率をもたらすという問題点がある。
【0004】
のみならず、セラミックスを含有するレジンを用いる3次元プリンタの場合には、ブレードが両方向に往復運動しながらレジンを平坦化するので、常にブレードの進行方向と反対側に位置したブレードの裏面にレジンが付着してしまう。このとき、裏面に付着したレジンが材料の平坦化のためのブレードの動きによって、ブレードから取り離されながら正常な材料層の高さより高く硬化されるようになる。これにより、高く硬化された材料層には、次の層の積層のために往復運動するブレードと衝突しながらクラックが形成されて製品の完成度を落としてしまうという問題がある。
【0005】
したがって、前述したように、両方向に往復運動しながら、高粘度の材料を積層して製品を製作するトップダウン方式の3次元プリンタの短所を解決するための技術の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、高粘度のレジンを取り扱う3次元プリンタにおいて、レジンの表面を効果的に平坦化することで、製品製作の完成度を向上させることができる3次元プリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述したような課題を解決するため、本発明の一実施形態による高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバットは、レジン収容空間を有し、レジン収容空間に収容されたレジンを蓋部に形成された少なくとも1つの孔を介して上部に押し出すピストン部材を備える第1バット部と、第1バット部の一側に配置され、第1バット部から供給されたレジンを用いて製作した構造体を支持する製造プラットフォームを備える第2バット部と、を含むことができる。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、ピストン部材は、第1バット部の面積と同一の断面積を有する板状に形成され、レジン収容空間に収容されるレジンを支持する支承部と、支承部の下端部に連結され、蓋部の下端面の高さまで支承部を昇降させる駆動軸と、を含むことができる。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、第1バット部と第2バット部との間には、バット部の外筐の高さよりも低い壁体が境界面として配置され、壁体の上端面にDLP焦点距離が固定されて、バット部の一側からバット部の他側までの間を往復移動するブレード部と、をさらに含むことができる。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、ブレード部は、互いに対称となる方向に所定角度だけ傾斜したブレード縁面を有する第1ブレード及び第2ブレードを含み、ブレード縁面には、ブレード部のブレード過程で塗布または回収されるレジンを加熱する加熱部材が、ブレード部の縁面の長手方向に沿って延びて配置されてもよい。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、第1ブレードは、孔から吐出されたレジンを第2バット部に備えられた製造プラットフォーム上へ供給し、第2ブレードは、ブレードにより塗布されて硬化されて残った残余レジンを、第1バット部の上側に形成された孔の中に回収させることができる。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、蓋部は、ベース部と、ベース部の上部に配置されて摺動される可変部と、を含む多層構造に形成してもよい。
【0013】
その他、実施形態の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、加熱部材を含む一対のチルトブレードにより高粘度レジンをブレードする過程で材料を効果的に供給して回収することができる。
【0015】
本発明は、ピストン部材を用いて材料を供給し、回収された材料を保管する方式の水槽(バット)を3次元プリンタに適用することで、より高粘度レジンを取り扱うプリンタの構造を単純化することができる。
【0016】
本発明は、移動方向に沿って交差するブレードは、一時的に高粘度レジンを上昇させてブレード作業を行うことにより、材料の表面にできる気泡を最小化することができる。
【0017】
本発明は、2枚のブレードが互いに異なる方向に対してチルトされて材料を塗布し回収するので、別途の材料回収部を備えなくてもよいので、構造が簡素化されて、3次元プリンタの生産性を向上させることができる。
【0018】
本発明は、一次ブレードが材料を塗布し二次ブレードが材料を再塗布および回収しながら、材料の上端面を2本のブレードが一回往復する際に、材料の供給及び回収が一度に行われるため、製作物の製作速度を向上させることができる。
【0019】
また、本発明は、製品製作の失敗を最小限に抑えることにより、市場競争力を向上させることができる。
【0020】
本発明による効果は、以上で例示された内容によって限定されず、さらに多様な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタの例示図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタ用バット部の第1バット部の内部が投影されるように示した例示図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタ用バット部の断面図である。
【
図4a】
図4aは、本発明の他の実施形態に係る3次元プリンタ用バット部の断面図である。
【
図4b】
図4bは、本発明の他の実施形態による蓋部の平面例示図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るブレードをY軸方向に切断した断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタの動作過程を説明するためのフローチャートである。
【
図7a】
図7aは、本発明の一実施形態による3次元プリンタの動作過程を示した例示図である。
【
図7b】
図7bは、本発明の一実施形態による3次元プリンタの動作過程を示した例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の内容は、単に本発明の原理を例示するものである。したがって、当業者はたとえ本明細書に明確に説明または図示されていないが、発明の原理を具現し、本発明の概念および範囲に含まれた多様な装置を発明することができる。また、本明細書に挙げられたあらゆる条件付き用語及び実施形態などは、原則的には、発明の概念を理解させるための目的にのみ明確に意図され、このように特別に挙げられた実施形態及び状態に限定するものではないことを理解されたい。
【0023】
なお、以下の説明において、第1、第2などのような、序数的表現は、互いに同等であり、かつ独立したオブジェクトを説明するためのものであり、その順序に主(main)/副(sub)または主(master)/従(slave)の意味はないものと理解されるべきである。
【0024】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面に関連した次のような詳細な説明を通じてより明確になり、それによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施することができる。
【0025】
本発明のいろいろな実施形態の各特徴は、部分的にまたは全体的に互いに結合または組合せ可能であり、かつ当業者が十分に理解できるように技術的に多様な連動および駆動が可能であり、各実施形態を互いに対して独立して実施してもよく、相関関係で一緒に実施してもよい。
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の様々な実施形態を詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタの動作過程を示した例示図である。
【0028】
本発明の3次元プリンタ1000は、ブレードが左右方向に往復移動しながら製造プラットフォーム上にレジン(Resin)を塗布するとともに、構造体を積層するトップダウン(Top-down)方式のプリンタである。本発明において、3次元プリンタ1000は、歯科用製作物(例えば、義歯、義歯プロテーゼなどのような小型製作物)を製作することを基本とするが、トップダウン方式である3次元プリンタの特性上、サイズが多少大きくて重い構造も製作可能である。
【0029】
図1を参照すると、3次元プリンタ1000は、ベースプレート110と、前記ベースプレート110の一つの領域に固定されたバット部130と、前記バット部130の一側に配置され、バット部130の一つの領域に収容される高粘性レジンを上部から硬化させる光硬化部120と、前記光硬化部120によって硬化されるレジンが、一層(Layer)ずつ積層される製造プラットフォーム140と、高粘度レジンを塗布または回収する一対のブレードからなるブレード部150と、を含む。このとき、3次元プリンタは、ベースプレート110の一つの領域に配置され、3次元プリンタの全ての動作を観察し、制御することができる表示部160をさらに含むことができる。
【0030】
図1を参照すると、ベースプレート110は、3次元プリンタの上端面を意味する構成であり、複数の構成が配置されることができる。例えば、ベースプレート110の一つの領域には、3次元プリンタを制御するための画面が表示されるディスプレイ装置を配置することができる。また、ベースプレート110には、レジンを硬化させる光硬化部120の垂直距離を制御するためのリニアアクチュエータ(Linear actuator)を配置することができる。
【0031】
バット部130は、高粘度のレジン(Resin)を収容する水槽(Vat)である。ここで、本発明のレジンは、ジルコニア(Zirconia,ZrO2)を含有する粘性の高い物質である。レジンの粘度は、ジルコニア(ZrO2)の含有量によって異なるが、通常、ジルコニア(ZrO2)が含有されていないレジンに比べて、粘性が極めて高いものと理解することが好ましい。本明細書におけるレジンは、光硬化樹脂または光重合材料と呼ばれることがある。
【0032】
一方、本発明の3次元プリンタ1000は、歯科用製作物を作るのに適した用途であることから、使用されるジルコニア(ZrO2)の粒子は、正方晶(Tetragonal)(正方形、六面体)形態の粒子と、立方(Cubic)(立方体、正六面体)形態の粒子とが混合されて製作されることを特徴とする。この際、光が、正方晶(正方形、六面体)形態の粒子が多いジルコニアを通過すると、光の散乱が多く起こるため(以下、「光が水平方向に拡散されるために」という)、透明度が低下する。
【0033】
これとは逆に、立方(立方体、正六面体)形態の粒子を光が通過する場合には、光が散乱することなく真っ直ぐ通過するため(以下、「光が垂直方向に拡散されるため」ともいう)、より透明に見えるようになるので、優れた審美性を有することを特徴とする。これにより、立方形態の粒子の方が正方晶形態の粒子よりも多く含有された材料は、透明度が高く、自然歯に類似した様子を具現できるので、歯科用材料として好適である。
【0034】
光硬化部120は、バット部130内に収容される高粘度の光硬化樹脂を硬化させる構成であって、バット部の一側に垂直方向に延在して配置される。より詳細には、光硬化部120は、
図1に示したように、バット部130の一側に配設されたリニアアクチュエータ121(以下、「固定軸」とも呼ぶ)と、固定軸に固定されてX軸方向(以下、「垂直方向」という)に往復移動する支持ブロック122と、製造プラットフォーム140の上部に配置され、製造プラットフォーム140に対応する領域に、下向きに紫外線(Ultra Violet,UV)を照射する光学レンズ123と、を含むことができる。
【0035】
また、光硬化部120には、ネットワーク通信網によりコンピューティング装置から位置値を伝送されるサーボモータ(Servo motor)またはステッピングモータ(Stepping motor)をさらに含むことができる。これにより、光硬化部の支持ブロック122が固定軸121の側面に沿って上下方向に直線運動することができる。
【0036】
製造プラットフォーム140は、上部から照射されるUVレーザービームまたはパターン化された紫外線画像(DLP)により液状の光硬化樹脂が光重合反応(Photopolymerizaion、以下「劣化反応」とも呼ぶ)によって硬化される固体の材料が積層される構成である。このとき、製造プラットフォーム140と光学レンズ123との間には、UV LEDが照射される経路である光路が形成される。
【0037】
ブレード部150は、左右に所定角度だけ傾斜して単方向にのみ材料を平坦化するように動作する構成であって、一対のチルトブレードからなる。ここで、一対のチルトブレードは、互いに対向する刃の面が互いに対称になるような角度でチルトされた(tilted)形態を有する直角三角形のブレードで構成され、所定の角度で傾斜した縁面には、高粘度のレジンを加熱するための加熱部材を含む。これについてのより詳細な説明は後述する。
【0038】
また、ブレード部150は、ブレード移送ブロックに固定され、Y軸方向に移動されるものと理解することが好ましい。ブレード移送ブロックは、ブレード部150を固定する構成であって、ベースプレート110の一側に配置されたギヤ部に締結されたチェーン(Chain)に締結されてY軸方向に移動することができる。
【0039】
一方、本発明において、ブレード部150は、「チルトブレード(Tilted blades)部」と呼ばれることがある。ブレード部150に対するより詳細な説明は、
図5を参照して後述する。
【0040】
図2は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタ用バット部の第1バット部の内部が投影されるように示した例示図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタ用バット部の断面図である。
【0041】
図2及び
図3を参照すると、バット部130は、第1バット部131及び第2バット部132を含むことができる。
【0042】
第1バット部131は、レジンを収容するレジン収容空間380に収められたレジンを蓋部に形成された少なくとも1つの孔を介して上部に押し出すピストン部材170を備える構成である。より詳しくは、ピストン部材170は、第1バット部131の面積と同一の断面積を持つ板状の支承部171と、支承部171の下端部に連結され、支承部171を往復移動させる駆動軸172と、を含むことができる。このとき、駆動軸172の最下端部には、駆動軸172の動きを制御するモータがさらに連結されて配置されてもよいが、説明の便宜のために省略したことと理解することが好ましい。
【0043】
また、本発明において、レジン収容空間380は、第1バット部170の支承部171の上部領域、すなわち、支承部171と蓋部133との間の空間を意味する。本発明のレジン収容空間380に収容されたレジンを供給する方式は、3次元プリンタ1000のユーザが蓋部133を締結する前にレジン収容空間380に充填する方式であるため、別途のレジン供給用ポンプまたはバット部以外のレジン供給部を省略することができ、プリンタの構造を単純化することができる。
【0044】
また、蓋部133は、第1バット部131の壁面に固定されたベース部133-1と、前記ベース部の上部に配置されて摺動される可変部133-2と、を含む多層構造からなることができる。
【0045】
また、ベース部133-1は、第1バット部131と第2バット部132との間に配置された壁体の上端面と同じ高さに配置される。ここで、壁体は、第1バット部131と第2バット部132との間に配置された境界面であって、バット部150の外筐の高さよりも低く形成されてDLP焦点距離として機能する。このとき、ベース部133-1は、第1バット部131の断面積よりも小さく形成され、これにより、前記壁体とベース部133-1との間に矩形状の孔が形成されることができる。ここで、孔は、レジン収容空間380に収容されたレジンがピストン部材170の動きによって外部に噴出できるようにする構成である。孔の寸法は、第1バット部131の断面積の半分未満のように示しているが、実施形態に応じて容易に設計変更可能である。
【0046】
図4aは、本発明の他の実施形態に係る3次元プリンタ用バット部の断面図である。
図4bは、本発明の他の実施形態による蓋部の平面例示図である。
図4aに示すバット部は、
図3の第1バット部側に配置される蓋部の形態のみが異なり、残りの構成は実質的に同一なので、重複説明は省略する。
【0047】
図4aを参照すれば、第1バット部133-1の上部には、複数の孔が形成されている蓋部433が配置されてもよい。蓋部433に形成された複数の微細な孔を介して高粘度のレジンがピストン部材170の往復移動に伴い上部に噴出されることができる。
【0048】
蓋部433は、
図4bの(i)に示すように、並んで長く形成された複数の孔が形成されている形態であってもよく、(ii)に示すように、正方形状の孔が複数個形成されている網形態であってもよい。この際、蓋部は、バット部130の材質と同じ材質で形成されることができ、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼または鉄からなることができる。
【0049】
一方、他の実施形態に係る蓋部433は1つの層からなるものとして説明したが、本発明の3次元プリンタのブレードによってレジン収容空間480へ再回収されるレジンに含まれた異物質をろ過することができるように、蓋部433の下端部にフィルタ層をさらに配置することができる。このとき、フィルタ層は、蓋部に形成された孔よりも小さいサイズの孔が形成されているメッシュ網であってもよい。
【0050】
図5は、本発明の一実施形態に係るブレードをY軸方向に切断した断面図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る3次元プリンタの動作過程を説明するためのフローチャートである。
図7a及び
図7bは、本発明の一実施形態による3次元プリンタの動作過程を示した例示図である。
【0051】
ステップS100で、第1バット部131のレジン収容空間380に高粘度のレジンを充填した後、ピストン部材170を利用して上部にレジン(Resin)を吐出させる。このとき、レジンは、ユーザによって手動で充填されるものと理解することが好ましい。
【0052】
次いで、ステップS200(以下、「一次平坦化ステップ」ともいう)において、第1バット部131から吐出されたレジンは、第1ブレード151によって第2バット部132側に移動して製造プラットフォーム140の上部に充填される。このとき、製造プラットフォーム140は、1つの層を製作するための高さだけ下降し、製造プラットフォーム140上に充填されるレジンの上端面は、第1ブレード151によって一次平坦化される。
【0053】
より具体的に、一次平坦化ステップS200では、第1ブレード151が下降し、第2ブレード152は上昇した状態で材料が供給され、材料表面の平坦化が行われる。このとき、
図7aの1、2に示しているように、第1ブレード151による平坦化は、ブレード部150が第2バット部152側へ移動する際、第1バット部151と第2バット部152との間に配置された壁面にDLP焦点距離が固定された状態で、第2バット部152側に移動しながら製造プラットフォーム140の上部に充填されたレジンの表面を通りながら行われることがわかる。
【0054】
このとき、第1ブレード151は、所定の角度を有する縁面を介してレジンを塗布しながら移動し、第2ブレード152は、材料塗布に関係しないように、クランクシャフト157の高さに上昇して材料の上端部と離隔された高さを有することができる。ここで、第1ブレード151の縁面は、水平方向に対して鋭角をなしているので、レジンを全部包みながら移動させることができる。一方、
図7aの2ステップで製造プラットフォーム140上に充填されたレジンは、高粘度を有する光硬化樹脂の特性上、ブレードを摺動して塗布しても気泡が生じるなど1つの層の製作のための量だけ満たされない恐れがあるため、製作の精度のために、1つの層を硬化させるための量よりもやや多い量であってもよい。言い換えれば、一次平坦化ステップS200(以下、「一次ブレードステップ」ともいう)の目的は、数十μmの層を硬化して積層させるために数百μmのレジンを塗布するためである。
【0055】
次いで、ステップS300(以下、「ブレード高さ変更ステップ」ともいう)において、
図7aの3のように、一次平坦化作業済みの第1ブレード151を上方に上昇させ、第2ブレード152を、一次平坦化作業後、残余レジンが一次ブレード過程で未だ満たされていない空間に材料を再塗布すると共に、残余レジンが回収されるように、下方へ下降させる。このとき、第2ブレード152は、第1バット部151と第2バット部152の間に配置された壁体の上端面の高さまで下降するように設定される。すなわち、壁体は、ブレードのDLP焦点距離であると理解することができる。このとき、第1ブレード151は、レジンとの干渉がない程度に上昇した高さを維持するものと理解することができる。
【0056】
また、ステップS300で、製造プラットフォーム140は、ステップS200において硬化されて積層された層の上端面と、前記壁体の上端面とが平行な高さだけ上昇することになる。
【0057】
ブレードの動きをより詳細に説明するために、
図5を参照すると、第1ブレード151が上昇して第2ブレード152が下降するとき、クランクシャフト157によって移動軸156が上下方向に直線運動する。このとき、移動軸156は、該移動軸156の下端部の内側に配置されたばね155によって移動されることを特徴とする。移動軸156が上下方向に移動することによって、下端部に配置された移動軸の下端部を取り囲むブロック154が下端部に配置された高さ調節フォーム153を上下方向に移動させて第1、第2ブレード151,152を上下方向に移動させることができる。
【0058】
次いで、ステップS400(以下、「第2の平坦化ステップ」ともいう)において、位置が下方へ下降した第2ブレード152は、第1バット部131に向かって移動しながら材料を二次塗布するとともに残余レジンを回収する。このとき、製造プラットフォーム140の上部に充填されたレジンの最終高さは、1つの層を製作することができる高さであってもよい。このように、
図7aの4と同様にステップS400によってレジンの上端面が二次ブレードされることによって、5段階で完成度の高い層を製作することができる。
【0059】
図7bの6~10は、前述したように同じ手順を繰り返し、二番目の層を製作することを示す例示図であり、重複説明は省略する。
【0060】
一方、本発明の一対のブレードには、縁面に加熱部材158を配置することにより、高粘度のレジンを塗布または回収する過程でレジンの流動性を一時的に高めることができるという効果がある。従って、第1ブレード151の加熱部材158が一次ブレードするステップS200で、縁面に触れるレジンの温度を一時的に上昇させて、高粘度のレジンを第2バット部132側へ容易に移動させることができる。のみならず、第2ブレード152の加熱部材158が二次ブレードするステップ(S400)において、縁面に触れるレジンを一時的に加熱して効果的にブレードさせることで、効果的に材料の回収が行われ、構造体の製作完成度を高めることができる。
【0061】
ブレード151,152の縁面に配置される加熱部材158は、
図5に示すように、板状の熱伝導体であってもよい。
図5では理解を助けるために、加熱部材158の厚さを厚くして図示したが、実質的には非常に薄い導体板又は導線の形態のものと理解することが好ましい。
【0062】
このように、本発明は、加熱部材158を含む1対のチルトブレード151,152により高粘度レジンをブレードする過程で材料を効果的に供給して回収することができる。
【0063】
本発明は、ピストン部材170を用いて、材料を供給して回収された材料を保管する方式のバット(Vat)を3次元プリンタに適用することによって、より高粘度レジンを取り扱うプリンタの構造を単純化することができる。
【0064】
本発明は、移動方向に沿って交差するブレード151,152が、一時的に高粘度レジンを上昇させてブレード操作を行うことにより、材料の表面に発生する気泡を最小化することができる。
【0065】
本発明は2つのブレード151,152が互いに異なる方向に対してチルトされて材料を塗布し回収するために、別途の材料回収部を備えなくてもよいので、構造が簡素化されて3次元プリンタ1000の生産性を向上させることができる。
【0066】
本発明は、第1ブレード151が材料を塗布し、第2ブレード152が材料を再塗布および回収しながら材料の上端面が2枚のブレードが一回往復する際に、材料の供給及び回収が一度に起こるため、製作物の製作速度を向上させることができる。
【0067】
また、本発明は、製品製作の失敗を最小限に抑えることにより、市場競争力を向上させることができる。
【0068】
したがって、本発明は、材料を塗布するブレードと、硬化して残った残余レジンを回収するブレードとが順次に動作することによって、ブレードの裏面に付着した高粘度レジンが光重合反応時にレジンが既に積層済みの材料層に落ちてしまい、正常な高さより高く硬化するという従来の問題点を解決することができる。これにより、既に硬化済みの材料層とブレードとの衝突に起因してクラックが発生する問題を防止することにより、製作の成功率を極大化することができる。
【0069】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で多様に変形して実施することができる。したがって、本発明に開示の実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により、本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。したがって、以上で述べた実施形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジン収容空間を有し、前記レジン収容空間に収容されたレジンを蓋部に形成された少なくとも1つの孔を介して上部に押し出すピストン部材を備える第1バット部と、
前記第1バット部の一側に配置され、前記第1バット部から供給されたレジンを用いて製作した構造体を支持する製造プラットフォームを備える第2バット部と、
を含む、高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項2】
前記ピストン部材は、
前記第1バット部の面積と同一の断面積を有する板状に形成され、前記レジン収容空間に収容されるレジンを支持する支承部と、
前記支承部の下端部に連結され、前記蓋部の下端面の高さまで前記支承部を昇降させる駆動軸と、を含む請求項1に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項3】
前記第1バット部と前記第2バット部との間には
、バット部の外筐の高さよりも低い壁体が境界面として配置され、
前記壁体の上端面にDLP焦点距離が固定され、前記バット部の一側から前記バット部の他側までの間を往復移動するブレード部と、
をさらに含む、請求項1に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項4】
前記ブレード部は、互いに対称となる方向に所定角度だけ傾斜したブレード縁面を有する第1ブレード及び第2ブレードを含み、
前記ブレード縁面には、前記ブレード部のブレード過程で塗布または回収される前記レジンを加熱する加熱部材が、前記ブレード部の縁面の長手方向に沿って延びて配置される、請求項3に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項5】
前記第1ブレードは、前記孔から吐出されたレジンを前記第2バット部に備えられた前記製造プラットフォーム上へ供給し、
前記第2ブレードは、前記
第1ブレードにより塗布されて硬化されて残った残余レジンを、前記第1バット部の上側に形成された孔の中に回収させる、請求項4に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【請求項6】
前記蓋部は、ベース部と、前記ベース部の上部に配置されて摺動される可変部と、を含む多層構造で形成される、請求項1に記載の高粘度レジンを取り扱う3次元プリンタ用のバット。
【国際調査報告】