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特表2024-525812被検者の視力を決定するためのコンピュータープログラム、方法、及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】被検者の視力を決定するためのコンピュータープログラム、方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20240705BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20240705BHJP
   A61B 3/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20240705BHJP
   A61B 3/024 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61B3/103
A61B3/113
A61B3/08
A61B3/11
A61B3/024
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502095
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022069623
(87)【国際公開番号】W WO2023285542
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】21185449.2
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016585
【氏名又は名称】マシンエムディー アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】510239897
【氏名又は名称】ウニベルジテート ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ブルッガー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】セン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】アベッグ,マティアス
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA16
4C316AA18
4C316AA21
4C316AA22
4C316AA28
4C316FA19
4C316FC04
4C316FZ03
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの機能的な眼のパラメーター、すなわち視力、を決定するための方法、特にコンピューターに実装された方法をコンピューターを備えたシステムに実行させるコンピュータープログラムであって、前記システムは:被検者の左眼及び右眼に視覚刺激を独立して投影するように構成される表示システムを備えた光学システムであり、ここで前記視覚刺激が背景上に配置される複数のパッチを備える、前記光学システムと;右眼及び左眼の注視方向を記録するように構成さる視標追跡システムと;前記光学システムを制御し、かつ前記視標追跡システムからの記録されたデータを受信するように構成されるコンピューターとを備え、前記方法は、少なくとも以下の工程:
- 視力を決定するための試行セッションを実行する工程であり、前記試行セッションは、被検者の左眼及び/又は右眼に前記光学システムを用いて提示される複数の前記視覚刺激を備える、前記工程と;
- 前記注視方向に関する情報を含む、前記試行セッション間のデータを記録する工程と;
- 前記試行セッションの記録されたデータから、前記試行セッションの提示された視覚刺激に応答する被検者の左眼及び右眼の運動、特にその運動の相関、を分析することによって、少なくとも視力を決定する工程と、
を含み、
ここで前記パッチは、背景に対して等輝度であり、前記パッチは、空間周波数で周期的に変化する輝度分布を表示し、かつそれぞれのパッチは、背景の一部のみをカバーする有界集合であることにより特徴付けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピューターを備えるシステムに、少なくとも1つの機能的な眼のパラメーター、すなわち視力、を決定するための方法、特にコンピューターに実装された方法、を実行させるコンピュータープログラムであって、前記システムは、被検者の左眼及び右眼に独立して視覚刺激を投影するように構成される表示システムを備えた光学システムであり、ここで前記視覚刺激は背景上に配置される複数のパッチを備える、前記光学システムと、右眼並びに左眼の注視方向を記録するように構成される視標追跡システムと、前記光学システムを制御し、かつ前記視標追跡システムから記録されたデータを受信するように構成されるコンピューターとを備え、前記方法は、少なくとも以下の工程:
- 前記視力を決定するための試行セッションを実行する工程であり、前記試行セッションは、被検者の左眼及び/又は右眼に前記光学システムを用いて、提示される複数の前記視覚刺激を備える、前記工程と;
- 前記注視方向に関する情報を含む前記試行セッションの間のデータを記録する工程と;
- 前記試行セッションの前記記録されたデータから、前記試行セッションの前記提示された視覚刺激に応答する被検者の左眼及び右眼の運動、特に運動の相関、を分析することによって、少なくとも視力を決定する工程と、
を含み、
前記パッチは、前記パッチが前記背景に対して等輝度であり、前記パッチが空間周波数により周期的に変化する輝度分布を表示し、かつそれぞれのパッチが前記背景の一部分のみをカバーする有界集合であることによって特徴付けられる、
前記コンピュータープログラム。
【請求項2】
前記パッチは互いに同一であり、前記パッチは前記背景上に表示される位置が異なる、請求項1に記載のコンピュータープログラム。
【請求項3】
前記パッチは、同じ大きさ、形状、及び輝度分布を有する、請求項1又は2に記載のコンピュータープログラム。
【請求項4】
前記パッチの輝度分布は、単一の空間周波数により変化する、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項5】
前記輝度分布は、前記空間周波数によって少なくとも一方向に沿って変化する、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項6】
前記空間周波数が前記試行セッションの試行の間、前記パッチのすべての方向に沿って同じであるように、前記空間周波数は等方性である、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項7】
前記パッチの空間的に平均化された輝度は、前記背景の輝度と等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項8】
少なくとも一部のパッチは前記背景と等色性であり、特にすべてのパッチは前記背景と等色性である、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項9】
前記パッチの少なくとも一部のパッチは前記背景と異なる色であり、特にすべてのパッチは前記背景と異なる色である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項10】
前記視覚刺激は、少なくとも前記パッチの前記輝度分布の前記空間周波数に関して、異なる試行に対して調整される、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項11】
前記視覚刺激は、少なくとも前記パッチのサイズに関して、異なる試行に対して調整され、特に前記サイズの減少又は増加のいずれかが行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項12】
前記パッチ内の前記変化する輝度分布の周期の数が一定に保たれるように、前記パッチのサイズ及び輝度分布の前記空間周波数は、異なる試行に対して調整される、請求項10又は11に記載のコンピュータープログラム。
【請求項13】
前記パッチのサイズと前記空間周波数の周期との比が一定である、請求項10及び11又は12のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項14】
0.5周期~10周期の前記周期的に変化する輝度分布が前記パッチ内に備えられる、請求項1~13のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項15】
前記パッチは、前記背景上に不規則に重なるように及び/又は重ならないように配置される、請求項1~14のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項16】
前記試行セッションの間、前記パッチは、所定の軌道に沿って少なくとも1回往復移動し、前記視標追跡システムは、前記移動するパッチに応答して眼球運動及び/又は眼の前記注視方向を記録する、請求項1~15のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項17】
前記パッチは、それぞれの試行について周期的な速度プロファイルに従って往復移動し、特に滑らかな周期的な、より特に正弦波状の、速度プロファイルに従って往復移動する、請求項16に記載のコンピュータープログラム。
【請求項18】
前記試行セッションの間に、単眼視力を決定することができるように、前記パッチは片方の眼のみに提示され、かつ次いで、その後に他方の眼に提示される、請求項1~17のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項19】
前記記録された眼球運動と前記パッチの運動との相関から、及び/又は前記記録された眼球位置と前記パッチの位置との相関から、被検者の前記視力が決定され、特に前記視力は、前記眼球運動が前記パッチの運動又は位置から所定の値だけ逸脱する前記パッチのサイズ又は前記パッチの前記空間周波数から決定され、特に前記逸脱は、前記パッチの運動に対する前記眼球運動の最小二乗偏差の形で測定される、請求項1~18のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項20】
前記背景は、均一な輝度を有する均一な色又はグレー値からなる、請求項1~19のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項21】
前記パッチが移動している場合に前記パッチが前記背景上で互いに対して配置されるパターンが変化しないように、前記パッチは互いに対して一定の距離及び一定の相対位置を維持する、請求項1~20のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項22】
前記パッチはガボールパッチである、請求項1~21のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項23】
前記ガボールパッチの前記輝度は、分散を有するガウスカーネル関数に従い、特に等方性分散を有するガウスカーネル関数に従い、ここで前記ガウスカーネル関数は、所定の方向及び所定の周期を有する正弦平面波によって調節される、請求項22に記載のコンピュータープログラム。
【請求項24】
前記正弦平面波の前記周期は、分散及び三重分散の範囲内である、請求項23に記載のコンピュータープログラム。
【請求項25】
前記正弦平面波は、前記ガウスカーネル関数の位置の平均値で最大振幅又はゼロ交差によりセンタリングされる、請求項23又は24に記載のコンピュータープログラム。
【請求項26】
前記ガボールパッチの前記ガウスカーネルの前記分散と前記正弦平面波の前記周期との比は一定であり、特に前記ガボールパッチのサイズに依存せず一定である、請求項23~25のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項27】
求心性瞳孔欠損(APD)、特に相対求心性瞳孔欠損(RAPD)、の前記機能的な眼のパラメーターは、表示システム(4)を用いて被検者の左眼及び右眼に提示される第1の種類の刺激の配列からなる第1の試行セッションから決定され、かつ視野(400)の前記機能的な眼のパラメーターは、表示システム(4)を用いて被検者の左眼及び右眼に提示される第2の種類の刺激の配列からなる第2の試行セッションから決定され、前記第1の試行セッション及び/又は前記第2の試行セッションから、1つ又は複数の斜視角度を決定することによって斜視もまた決定される、請求項1~26のいずれか一項に記載のコンピュータープログラム。
【請求項28】
前記第1の試行セッションの実行は、以下の工程:
- 前記第1の試行セッションの間の瞳孔のサイズ(102)及び注視方向(100)に関する情報を含むデータを記録する工程と;
- 前記第1の試行セッションの前記記録されたデータから、左眼及び右眼の瞳孔のサイズ(102)の時間的経過(103)をコンピュータ(2)により分析することによって、前記APDを決定する工程と;
- 前記第1の試行セッションの前記記録された注視方向(100)から、サッカード眼球運動(101)の大きさ及び方向をコンピュータ(2)により分析することによって、前記1つ又は複数の斜視角度を決定する工程と、
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の試行セッションの実行は、以下の工程:
- 被検者の注視方向(100)に関する情報を含むデータを記録する工程と;
- 前記第2の試行セッションの前記記録された注視方向(100)から、被検者のサッカード眼球運動をコンピュータ(2)により分析することによって、視野(400)及び前記1つ又は複数の斜視角度を決定する工程と、
を含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の種類の視覚刺激のそれぞれの視覚刺激は、表示システム(4)の表示位置に表示システム(4)上に表示される固視物(11)を備え、固視物(11)は、固視物(11)への眼の固定を可能にする空間的に限定されたグラフィカルな物体である、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の種類の視覚刺激は、右眼及び左眼に対して交互に繰り返し表示され、瞳孔のサイズ(102)及び注視方向(100)は、両眼について記録され、特に少なくとも100Hzのフレームレートで記録される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の試行セッションは、複数の注視方向ブロックを備え、それぞれの注視方向ブロックにおいて前記第1の種類の視覚刺激は、右眼と左眼とに繰り返し交互に提示され、前記固視物は、異なる注視方向ブロックに対して異なる表示位置に表示され、特にそれぞれの注視方向ブロックに対して、前記APD及び/又はRAPDもまた決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
固視物(11)は、同じ注視方向ブロックに対して同じ表示位置に表示され、前記第1の種類の刺激が左眼から右眼へ又はその逆へ切り替わる度に、前記記録されたサッカード眼球運動から、サッカード眼球運動(101)の大きさ及び方向が決定され、特に前記少なくとも1つの斜視角度が注視方向に関連して決定されるように、前記少なくとも1つの斜視角度は、それぞれの注視方向ブロックについて決定される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
それぞれ提示された第1の種類の刺激について、及びそれぞれの眼についてのそれぞれの注視方向ブロックにおいて、サッカード眼球運動(101)の大きさ及び方向が決定され、同じ注視方向ブロックの第1の種類の視覚刺激(11)の後続の提示において、前記注視方向ブロックの以前に提示された第1の種類の刺激から決定されるとおりのサッカード眼球運動(101)の大きさ及び方向を補正するように、特にサッカード眼球運動(101)が同じ注視方向ブロックにおいて最小化されるまでサッカード眼球運動(101)の大きさ及び方向を補正するように、前記固視物の前記表示位置が調整され、特に前記少なくとも1つの斜視角度は、前記調整された表示位置に対応し、特に前記斜視角度が注視方向に関連して決定されるように、前記少なくとも1つの斜視角度は、それぞれの注視方向ブロックについて決定される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の種類の視覚刺激のそれぞれの視覚刺激は、表示システム(4)上の相対位置に、均一な背景上に表示される輝度物を備え、前記第2の試行セッションの間、第2の種類の視覚刺激の前記輝度物は、複数の選択される相対位置(402)に順次的に表示され、前記第2の種類の視覚刺激は、右眼と左眼とに交互に、又は順次的に表示され、特にそれぞれの他方の眼に、前記輝度物を有さない前記第2の種類の刺激と同一の中立的な刺激が提示され、前記輝度物が選択される相対位置(402)に表示される度に、被検者が選択される相対位置(402)において前記輝度物を検出したかどうかが決定され、被検者が前記輝度物を検出した場合、前記輝度物は異なる選択される相対位置に順次的に表示され、前記輝度物は、低減された輝度で後の試行において再び前記選択される相対位置に表示され、被検者が前記選択される相対位置において輝度物を検出しなかった場合、被検者が前記輝度物を検出するまで、前記輝度物は輝度を増加して前記選択される相対位置に繰り返し表示され、それにより、それぞれの選択される相対位置について、被検者のそれぞれの眼の輝度検出閾値が決定されるようにし、それにより、視野(400)が閾値ペリメトリック測定の形で決定されるようにする、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記輝度物が表示されている第1の時間間隔内に、前記表示された輝度物に向かうサッカード眼球運動が前記視標追跡システムによって記録される場合に、前記輝度物は被検者によって検出されたとみなされ、かつ前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔内に、前記輝度物に向かうサッカード眼球運動が視標追跡システムによって記録されなかった場合に、前記輝度物の刺激は被検者によって検出されなかったとみなされる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の種類の刺激が左眼から右眼へ、又は右眼から左眼へ切り替わる場合、及び前記輝度物が両眼によって検出されたとみなされる場合に、前記少なくとも1つの斜視角度は、前記サッカード眼球運動から、及び特に前記サッカード眼球運動の振幅及び方向から、前記選択される相対位置(402)について決定され、又は左眼及び右眼の前記注視方向を互いに減算することによって、前記少なくとも1つの斜視角度は、前記選択される相対位置について決定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
注視方向リセットルーチンが実行され、前記ルーチンは、以下の工程:
- 特に、前記選択された相対表示位置が、前記視標追跡システムの物理的追跡限界又は前記表示システムの物理的表示限界の外側に位置しているかどうかを決定する工程と、及び「はい(yes)」の場合:
- 眼の現在の注視方向で輝度検出閾値を超える閾値超の輝度を有する前記固視物又は前記輝度物などの閾値超の物体を提示する工程と、
- 前記閾値超の物体を、所定の水平方向及び垂直方向の速度で軌道に沿って新しい表示位置に移動させる工程と、
- 特に、前記閾値超の物体を隠す工程と;
- 特に、前記注視リセットルーチンが実行される前に、前記視標追跡の前記物理的表示限界又は前記物理的追跡限界の外側にあると決定された前記選択される相対位置で、前の実施形態の前記方法の工程を実行する工程と、
を含む、請求項30、36~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記注視リセットルーチンの間に、前記閾値超の物体が水平方向及び垂直方向に沿って所定の速度パターンで移動し、前記閾値超の物体に追従する前記検出される眼球運動の速度と前記閾値超の物体の前記速度パターンとの間の偏差が、それぞれの閾値超の物体の移動方向について決定され、前記偏差から、滑動性追従眼球運動のゲインが前記注視リセットルーチンから決定される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
決定される前記機能的な眼のパラメーターは:
- 被検者の融像幅;
をさらに含み、
前記融像幅を決定するために、前記方法は以下の工程:
- 第3の試行セッションを実行する工程であって、前記第3の試行セッションは、前記光学システムを用いて被検者の左眼と右眼とに同時に提示される第3の種類の視覚刺激を備える、前記工程と;
- 前記注視方向の情報を含む前記第3の試行セッションの間のデータを記録する工程と;
- 前記第3の試行セッションの前記記録された注視方向から、前記第3の試行セッションの前記提示された第3の種類の視覚刺激に応答する被検者の輻輳眼球運動を前記コンピューターにより分析することにより、少なくとも融像幅を決定する工程と、
をさらに含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
システム、特に神経検眼鏡(1)であって、被検者の左眼及び右眼に独立して視覚刺激を投影するように構成される表示システム(4)を備える光学システム(2)と、左眼並びに右眼の注視方向及び瞳孔のサイズを記録するように構成される視標追跡システム(5)と、光学システム(2)を制御し、かつ視標追跡システム(5)から記録されたデータを受信するように構成されるコンピュータ(2)と、並びに請求項1~40のいずれか一項に記載のコンピュータープログラムを実行するためのコンピューター(2)に保存されたプログラムコードとを備え、特に光学システム(2)及び視標追跡システム(5)は、VRゴーグルなどのニアアイディスプレイ内に備えられ、前記ニアアイディスプレイは、被検者のそれぞれの眼の光学収差がレンズアセンブリ(6)によって補正され得るように調整可能なレンズアセンブリ(6)をそれぞれの眼に対してさらに備える、前記システム、特に前記神経検眼鏡(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の視力を決定するための方法、特にコンピューターに実装された方法を実行するためのコンピュータープログラム、及び本発明によるコンピュータープログラムを実行するように構成されるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、視力、斜視、相対性求心性瞳孔欠損、及び視野などの機能的な眼のパラメーターを決定する方法が知られている。
【0003】
通常、これらのパラメーターの評価は、必要な作業を行うための様々な機器及び専門の医療従事者が必要とされる。したがって、これらのパラメーターの推定に要する時間が長くなる。したがって、被検者からより多くのパラメーターを決定しようとすればするほど、被検者の順守の程度を高くする必要がある。
【0004】
さらに、RAPD測定のための交互対光反応試験(swinging flashlight test)などのいくつかの方法は、試験の繰り返しによる試験結果のばらつきの程度が大きいという問題がある。
【0005】
そのため、被験者の順守及び試験の理解という点で、及び実務者による実行という点で、より複雑でない方法が求められている。
【0006】
仮想現実システムは、例えば米国公開特許(US)第2017/0290504号A1を参照するとおり、ユーザーの視覚に関するいくつかの問題に対処しているが、機能的な眼のパラメーターのコンピューター支援診断の方法は未だ欠如している。
【0007】
視力測定に関して、当技術分野で問題となるのは、いわゆるモアレ効果であり、モアレ効果とは、画面上に表示可能な項目に関して境界を配置し、ディスプレイ上の周期的パターンの適切な表示を妨げる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国公開特許第2017/0290504号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこの欠落を埋めることを目的としている。この目的のため、及び当該技術分野で知られている方法に関連する問題を克服するために、本発明は、これらの問題を解決することを目的とするコンピュータープログラム、コンピューターに実装された方法、及びシステム、特に神経検眼鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、RAPDを決定するための、本発明による瞳孔径の測定を示す。
図2図2は、斜視を測定するための本発明の一実施形態を模式的に示す。
図3図3は、斜視を測定するための本発明の別の実施形態を模式的に示す。
図4図4は、人の視野の測定を模式的に示す。
図5図5は、人の視力を決定するための刺激及び評価を示す。
図6図6は、本発明によるシステムを模式的に示す。
図7図7は、視力の決定に使用される刺激の各種パッチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によれば、コンピュータープログラムがコンピューター上で実行される場合、コンピューターを備えるシステムに、視力を決定するための方法、特にコンピューターに実装された方法を実行させる前記コンピュータープログラムであって、前記システムは、被検者の左眼及び右眼に視覚刺激を独立して投影するように構成される表示システムを備える光学システムを備える、前記コンピュータープログラムが提供される。前記表示システムは、第1及び第2のスクリーンなどの第1及び第2の表示システムを備え得る。前記表示システムは、被検者の左眼と右眼とに独立して視覚刺激を投影するように構成されている。このシステムはさらに、左眼並びに右眼の注視方向と瞳孔のサイズとを同時に、独立して、かつ時間分解方式で、特に20Hzより良好のサンプリング速度、すなわちフレームレート、特に50Hzより良好のサンプリング速度、より特に200Hzより良好のサンプリング速度で、記録するように構成される視標追跡システム(eye-tracking system)を備える。さらに、このシステムは、光学システムを制御するように、例えば、表示システム上の視覚刺激の照明の明るさ及び継続時間を制御するように、かつ、視標追跡システムからデータを受信するように構成されるプロセッサーを備えるコンピューターを備える。
【0013】
本発明に従って実行される方法は、少なくとも以下の工程を備える:
- 被検者の視力を決定するための試行セッションを実行する工程であって、前記試行セッションは、被検者の左眼及び/又は右眼に光学システムを用いて提示され、特に同時に提示される、複数の視覚刺激を備える、前記工程と;
- 注視方向に関する情報を含む視力を決定するための前記試行セッションの間のデータを記録する工程と;
- 前記試行セッションの記録データから、視力を決定するために試行セッションの提示された視覚刺激に応答する被検者の左眼及び右眼の運動、特に運動の相関、を分析することによって、少なくとも視力を決定する工程。
【0014】
前記視覚刺激は、背景(バックグラウンド)上に配置された複数のパッチを備え、前記パッチは、背景に対して等輝度であり、前記パッチは、空間周波数、特に1つの空間周波数のみ、で周期的に変化する輝度分布を表示することにより特徴付けられ、ここでそれぞれのパッチは、背景の一部のみをカバーする有界集合(bounded set)である。
【0015】
視力を決定するための試行セッションは、最初は眼球の動きがなく、被検者が刺激を認識した時点でのみ左右の眼の動きが開始するように構成することができる。
【0016】
本発明は、代替的又は付加的に、方法、特にコンピューターに実装された方法として請求することができる。コンピューターに実装された方法は、方法の工程を実行するために、システムの構成要素と相互連結するように構成され得る。
【0017】
本発明により、1回の試行で視力を測定することができる。
【0018】
前記光学システムは、被検者の眼に視覚刺激を表示するための表示システムを備える。この目的のため、表示システムは、左眼及び/又は右眼に視覚刺激を提示するように構成される2つのディスプレイ部又は2つのディスプレイを備えることができる。この提示は、選択した眼だけに視覚刺激を提示し、一方で同時に被検者のもう一方の眼には刺激を与えないか、あるいは中立的な刺激を与えることが可能であるように、眼ごとに独立して行うことができる。
【0019】
表示システムは、デスクトップアプリケーションに使用される2つ以上の異なるコンピュータースクリーンを備える。あるいは、表示システムは、2つのディスプレイスクリーンのセクションに垂直線に沿って光学的に分離される1つのコンピュータースクリーンのみを備えてもよい。
【0020】
このシステムは、視標追跡システムに対する頭部の動きを低減するために、被検者用のあご乗せ台を備えていてもよい。あるいは、この表示システムは、眼の前に直接、例えば20cmより短い距離で、約0.2m~4m超過の仮想距離で、特に無限遠の距離で、配置される1つ又は複数のニアアイディスプレイ又は同様の装置を備える。特に、ヘッドアップディスプレイ又はバーチャルリアリティゴーグル(VRゴーグル)の形のニアアイディスプレイが、本方法の実行中に被検者に装着されてもよい。これにより、より正確で制御された試験環境を実現することができ、特にこのようなシステムではあご乗せ台を省略することができる。さらに、ニアアイディスプレイを使用することで、両眼の注視位置を記録しながら被験者が頭を動かすことが要求される臨床試験をこのシステムを用いて行うことができる。さらに、このようなシステムはポータブルシステムとして設計することができ、フィールド調査での使用を可能にする。
【0021】
前記システムはさらに視標追跡システムを備える。視標追跡システムは特に、ミリ秒単位の時間分解能を持ち、これは数100Hzの範囲のフレームレートに相当し、これにより眼のサッカード(衝動性)運動を時間的に分解して記録することができる。通常、視標追跡システムは200Hz又はそれより良好のフレームレート又は時間分解能を持つ。
【0022】
しかし、視力を決定するためには、サッカード運動を解決することは特に重要ではないため、本システムが30Hz~60Hzの範囲の低い時間分解能を有していれば十分である。
【0023】
視標追跡システムは、表示システムに配置することも、又はVRゴーグル又は類似の装置などのニアアイディスプレイに組み込むこともできる。
【0024】
視標追跡システムは、瞳孔のサイズと注視方向とのデータを、それぞれの眼について独立して記録するように構成されている。記録されたデータは、コンピューター又は視標追跡システムによって評価することができる。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、試行セッションは複数の試行を備える。
【0026】
一般に、試行セッションは特に、少なくとも1つの試行の配列(一連)を含み、試行は少なくとも1つの視覚刺激を含む。特に試行は、両眼に視覚刺激を順次又は同時のいずれかで提示することを含む。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、パッチは等色性である。
【0028】
それにもかかわらずこの実施形態は、視力の決定を可能にする着色刺激を提供することが可能である。
【0029】
別の実施形態によれば、パッチの少なくとも一部は背景と異なる色である。
【0030】
この実施形態によれば、被検者は、色覚が損なわれている場合、異なる色のパッチを識別できない可能性があるように、パッチは等色性ではなく等輝度性であり得る。
【0031】
後者の実施形態では、視力と同時に、あるいは視力とは別に、被検者の色覚を試験することができる。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、刺激は複数のパッチを備え、各パッチはパッチの背景の限定された領域をカバーする有界集合である。特に、パッチは連結された領域をカバーする。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、パッチは互いに同一であり、これらのパッチは背景上に表示される位置が異なる。本実施形態によるパッチは、同じサイズ、形状、及び輝度分布を有する。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、輝度分布は単一の空間周波数で変化する。
【0035】
これにより、複数の空間周波数と比較して、被検者の視力を一意に定義することができる。単一の空間周波数により、被検者がパッチをもはや知覚しなくなる単一の空間周波数を関連付けることができる。
【0036】
特に、周期的に変化する輝度分布が複数の周期関数の仮定により生成される場合には、最も大きな振幅を備える周期関数が輝度分布の空間周波数として考慮される。空間周波数は、周期的に変化する輝度を持つ輝度分布を生成すると考えられる。つまり、例えばガウス輝度分布は、暗黙的に空間周波数を持つ複数の正弦波関数の重ね合わせでガウス関数を生成する可能性があるにもかかわらず、周期的な輝度分布とはみなされない。輝度分布の空間周波数は、輝度分布に周期性を与える空間周波数と考えられる。好ましくは、輝度分布は単一の空間周波数で変化するため、一意的な周期性を示す。特定の実施形態では、空間周波数は表示システムのピクセルより小さくない。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、輝度分布は、空間周波数により少なくとも一方向に沿って周期的に変化する。方向は、表示システムの2D平面に沿って、及び/又は、これらのパッチが配置され得る関連するデカルト座標系における方向に沿って選択され得る。特に、各パッチの周期的に変化する輝度分布は、各パッチに対して半径方向に変化する。すなわち、各パッチの輝度は、パッチの中心に対して周期的かつ半径方向に変化することができる。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、試行セッションの試行の間、空間周波数はパッチのすべての方向に沿って同じであるように、空間周波数は等方性である。この実施形態では、同心円など、各パッチの放射対称性の周期的に変化する輝度分布が得られる。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、パッチの空間的に平均化された輝度は、パッチが被検者に表示される刺激の背景の輝度に等しい。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、視覚刺激は、輝度分布の空間周波数に関して異なる試行に対して調整される。
【0041】
あるいは、又はさらに、視覚刺激はパッチのサイズに関して異なる試行に対して調整される。
【0042】
両方の実施形態の組み合わせ又は単独により、被検者が背景上のパッチをもはや知覚できなくなる閾値を検出することができる。
【0043】
先の2つの実施形態は試行セッションを定義し、それぞれの試行について、パッチの空間周波数及び/又はサイズが調整され、特にここで輝度分布の空間周波数の方向は一定に保たれる。
【0044】
本発明の別の実施形態によれば、パッチのサイズ及び輝度分布の空間周波数は、パッチ内の変化する輝度分布の周期の数が一定に保たれるように異なる試行について調整される。この実施形態は、パッチが異なる試行用にスケーリングされることを本質的に開示している。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、パッチに備えられるサイズと周期の数との比率は、異なる試行に対して一定である。
【0046】
サイズとは、パッチがカバーする面積、直径、又はパッチの空間周波数が変化する方向に沿う範囲であり得る。
【0047】
本発明の別の実施形態によれば、0.5周期~100周期の周期的に変化する輝度分布がパッチ内に構成され、特にパッチのサイズに依存せず構成される。好ましくは、各パッチは、1周期~5周期の空間的に変化する輝度分布を備える。より特に、各パッチは複数の周期を備える。
【0048】
前述の実施形態は、パッチの同じ外観を維持しながらパッチのサイズを調整することを可能にし、すなわちパッチのみを拡大又は縮小することを可能にする。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、パッチは背景上に不規則に、及び/又は重ならないように配置される。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、試行セッション中、パッチは、所定の軌道に沿って少なくとも1回往復移動し、ここで注視追跡システムは、移動するパッチに応答して、眼の動き及び/又は眼の注視方向を記録する。特に、軌道は、滑動性の軌道であり得、すなわち、突然の、すなわち、大きさも方向もいずれも連続的でない、速度変化を構成しない。
【0051】
本明細書の文脈における「滑動性(滑らかな)」という用語は、特に、数学的な意味で微分される軌道、プロファイル、又は関数の特性に関する。つまり、軌道、プロファイル、又は関数は連続的であるだけでなく、微分可能であり得る。
【0052】
本実施形態では、視力を決定するための測定プロセスを規定する。
【0053】
本発明の別の実施形態によれば、パッチは一方向、特に水平方向、すなわち被検者の眼を結ぶ仮想軸に平行に延びる方向に沿って、往復移動する。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、パッチは、各試行について周期的な、特に滑動性の周期的速度プロファイルに従って往復移動する。速度プロファイルは、すべてのパッチで同じである。速度プロファイルは、例えば一定の速度の大きさを持ちながら、位置に関して、円形、楕円形であり得る。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、速度プロファイルは、一方向に沿って正弦波速度プロファイルに従うことが可能である。つまり、パッチは、正弦波の速度の大きさを示しながら、一方向に沿って往復移動する。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、試行セッションの間、単眼視力を決定できるように、パッチは片方の眼のみに提示され、その後にもう片方の眼に提示される。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、試行セッションの間、パッチのサイズは、異なる試行、特にパッチが所定の軌道に沿って少なくとも1回移動した後に、連続的に縮小又は増大する。
【0058】
この実施形態により、人が移動するパッチの知覚を開始する、あるいは停止する閾値を見つけることができる。
【0059】
この閾値は、以下の実施形態で決定することができる。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、記録された眼の運動とパッチの運動との相関から、被検者の視力が決定され、特に、視力は、眼の運動がパッチの運動、特にパッチの軌道から所定の値だけ逸脱するパッチのサイズ及び/又は空間周波数から決定され、特に、この偏差は、パッチの運動に対する眼の運動の最小二乗偏差の形で測定される。あるいは、又はさらに、眼の位置とパッチの位置との所定の相関値、時間差、及び/又は空間的な差(ラグ)が、所定の値として機能してもよい。
【0061】
眼の運動は、時間的なオフセットを伴うパッチの運動に追随する可能性がある。したがって、前記所定の値は、最大オフセット値であってもよく、この最大オフセット値を超えると、人はもはやパッチを確実に知覚していないことを示す。
【0062】
視覚刺激は、背景と、この背景上に配置されるパッチとを備えてもよく、前記刺激はノイズを含んでもよい。そのため、所定の値はノイズに依存する可能性がある。
【0063】
また、所定の値は、試行中に被験者の眼によって実行され、かつパッチの位置で終了するサッカードの選択された数によって与えられてもよい。パッチの位置で終了しないサッカードの数が所定の数を超える場合、被検者はもはやパッチを知覚していないと結論づけることができる。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、背景は、均一な輝度を有する均一な色又はグレー値からなる。
【0065】
本発明の別の実施形態によれば、パッチが背景上で互いに対して配置されるパターンが、パッチが移動する場合に変化しないように、パッチは互いに対して一定の距離と一定の相対位置とを維持する。
【0066】
本発明の別の実施形態によれば、パッチはガボールパッチである。
【0067】
ガボールパッチは特に視力の決定に十分に適している。
【0068】
本発明の別の実施形態によれば、ガボールパッチの輝度は、分散、特に等方性分散を有するガウスカーネル関数(Gaussian kernel function)に従い、前記ガウスカーネル関数は、所定の方向及び所定の周期を有する正弦平面波(sinusoidal plane wave)によって調整される。
【0069】
この実施形態では、ガボールパッチの外観をさらに規定する。
【0070】
本発明の別の実施形態によれば、正弦平面波の周期は、カーネル関数の分散及び三重分散(triple variance)の範囲内である。
【0071】
本発明の別の実施形態によれば、正弦平面波は、ガウスカーネル関数の位置の平均値でその最大振幅又はゼロ交差によりセンタリングされる。
【0072】
本発明の別の実施形態によれば、ガボールパッチのガウスカーネルの分散と正弦平面波の周期との比は一定であり、特にガボールパッチのサイズに依存しない。
【0073】
本発明の別の実施形態によれば、視覚刺激は均一な背景を備える。「均一」という用語は、特に、背景がいずれの構造的特徴を示さないような、均一な輝度を有する単色又はグレーの背景を指す。
【0074】
本発明の別の実施形態によれば、視覚刺激は、特に色及び輝度が均一な領域からなり、その領域上にパッチが不規則又はランダムに配置される。この領域は、刺激の背景とみなすことができる。この背景は、試行セッションを通して変更されず一定に保たれ得る。
【0075】
本発明の別の実施形態によれば、パッチの輝度、特に輝度分布は、パッチのサイズを規定するように構成されるカーネル関数によって与えられ、前記カーネル関数は、パッチの輝度が周期的に変化するパッチ内の空間周波数を刻むように構成される周期関数によって調節される。特に、この周期関数は正確に1つの空間周波数を備える。
【0076】
この周期関数は、正弦波関数又は矩形波関数であり得る。
【0077】
本発明の別の実施形態によれば、周期関数の周期、特に正弦平面波の周期は、パッチがパッチのサイズ内で半周期から最大3周期の間を備えるように選択される。特に、周期はガウスカーネルの分散から分散の3分の1の範囲であり得る。
【0078】
特に、周期関数はパッチで最大値又は最小値によりセンタリングされる。
【0079】
例えば、パッチがガボールパッチである場合、正弦平面波はガウスカーネル関数の位置の平均値での最大振幅によりセンタリングされる。
【0080】
本発明の別の実施形態によれば、ガボールパッチのガウスカーネルの分散と正弦平面波の周期との比は一定であり、特にガボールパッチのサイズに依存しない。この実施形態は、パッチのサイズと周期の数との間の比率が一定であることを必要とする、前の実施形態の特別なケースである。したがって、ガウスカーネル関数の分散は、パッチのサイズ又はサイズの度合いとしてみなすことができる。
【0081】
本発明の別の実施形態によれば、パッチ、特にガボールパッチは、方向、特に水平方向又は垂直方向、に沿って移動し、パッチの速度は、パッチが周期的な様式で前記方向に沿って往復移動するように、周期的に、特に滑らかに周期的に、より特に正弦波状に変化する。
【0082】
本発明の別の実施形態によれば、周期的速度プロファイルは0.02Hz~2Hz、より特に0.05Hz~0.5Hzの周波数を有する。
【0083】
本発明の別の実施形態によれば、例えばジグザグ又は矩形波の速度プロファイルのような周期的な様式でパッチが前記方向に沿って往復移動するように、パッチの速度は周期的に変化する。後者は、パッチの方向が急激に変化するものである。
【0084】
特に、速度は滑動性周期関数で周期的に変化する。
【0085】
以下では、本発明と組み合わせることで、視力以外の視覚眼球パラメーターを汎用的かつ迅速に決定できる可能性があるさらなる実施形態について記載する。
【0086】
本発明のさらなる実施形態によれば、コンピュータープログラムは、相対性求心性瞳孔欠損(relative afferent pupillary defect:RAPD)、1つ又は複数の斜視角度、及び/又は視野などの複数の求心性及び遠心性の機能的な眼のパラメーターを、本システムを用いて決定する方法、特に、コンピューターに実装された方法を実行するようにさらに構成され、ここで求心性瞳孔欠損(afferent pupillary defect :APD)、特に相対性求心性瞳孔欠損(RAPD)が、表示システムを用いて被検者の眼の左眼及び右眼に自動化された様式で提示される第1の種類の刺激のみの配列(一連)からなる第1の試行セッションから決定され、及び/又は、被検者の左眼及び右眼の視野が、表示システムを用いて被検者の左眼及び右眼に自動化された様式で提示される、第2の種類の刺激のみの配列からなる第2の試行セッションから決定され、ここで第1の試行セッション及び/又は第2の試行セッションから斜視も決定される。斜視は、水平斜視角度、垂直斜視角度及び/又はねじれ斜視角度などの1つ又は複数の斜視角度によって特徴付けられ得る。したがって、この実施形態の方法は、これらの斜視角度の1つ、2つ、又は3つのすべてを決定することにより、斜視を決定することが可能である。特に、少なくとも水平方向の斜視角度が決定される。加えて、垂直斜視角度を決定することも可能である。被検者の斜視を決定する場合には、3つの斜視角度の任意の組み合わせが決定され得ることに留意されたい。
【0087】
この実施形態は、同じシステムを使用して複数の機能的な眼のパラメーターの決定を可能にする一連の1つの種類の視覚刺激による様々な機能的な眼のパラメーターについての短縮かつ単純化された測定方法を提供するという課題を解決する。すなわち、1回の試行セッションの間、ここでは第1の試行セッション又は第2の試行セッションの間に、複数の機能的な眼のパラメーターが客観的な様式で決定される。さらに、本方法は、被検者が言語的又は触覚的なフィードバックを提供する必要がなく、自動化された様式で機能的な眼のパラメーターの測定を可能にし、これにより検査の複雑さを軽減し、エラーの原因を排除する。さらに、完全に自動化された実行により、被検者と医療従事者とが様々な測定システムを切り替える必要がないため、様々な機能的な眼のパラメーターを評価するための測定時間を削減することができる。
【0088】
本明細書の文脈において、APDが同時に又は代替的に決定される場合にRAPDが同じデータセットから決定することが可能であるように、APDの決定は同様にRAPDの決定も含むことができることに留意されたい。このため、以下では、両方の種類ではなく、APDのみを言及する。
【0089】
求心性及び遠心性の眼のパラメーター、すなわち機能的な眼のパラメーターは、以下の群のうちの1つ又は複数を含むことが可能である:
- APD及び/又はRAPD;
- 斜視角度;
- サッカードピーク速度(saccadic peak velocity);
- 遠心性瞳孔機能(efferent pupillary function);
- サッカード精度(saccadic accuracy);
- 滑動性追跡(smooth pursuit);
- 視野、特に閾値ペリメトリーにより決定される視野;
- 視力;
- 融像幅(fusional amplitude)。
【0090】
本明細書で使用するとおりの「第1」の試行セッションという用語は、該第1の試行セッションが一連の試行セッションの中で実行される最初の試行セッションでなければならないという指標として理解されるものではなく、単に、視力を決定するための試行セッション(これにはそれに関連する番号付けを有さない)、第2若しくは第3のセッション(第1の試行セッション又は視力を決定する試行セッションの前又は後に実行されてもよい)などの異なる試行セッションに対する区別を提供する目的を果たすものである。
【0091】
視覚刺激とは、被検者の眼に提示される刺激である。刺激が被検者に見える場合と見えない場合とがあり、後者は例えば、刺激が非刺激、暗刺激、又は中性刺激である場合に起こる。
【0092】
第1の種類の刺激の視覚刺激は、固視物(fixation object)、又は前記視物に眼を焦点調節させることができる任意の物体(object)を備えてもよく、又はそれを備えなくてもよい。特に第1の種類の刺激は、第1の種類の刺激の提示時に瞳孔のサイズが収縮又は拡張するような所定の明るさを備える。
【0093】
このように、第1の種類の刺激は、第1の種類の刺激が提示される眼が所定の調整可能な総計の明るさに曝されるように、所定の明るさの刺激を少なくとも提供するように設計される。刺激に応答する瞳孔の収縮又は拡張を評価することにより、RAPDなどのいくつかの機能的な眼のパラメーターを決定できる。
【0094】
眼の瞳孔を収縮させることが期待される第1の種類の刺激は、本明細書の文脈では明刺激とも呼ばれ、眼の瞳孔を拡張させることが期待される第1の種類の刺激は、本明細書の文脈では暗刺激とも呼ばれる。
【0095】
特に、暗刺激/非刺激は、それぞれの表示システムの黒色、特に非照明表示状態によって表される。
【0096】
特に第1の種類の視覚刺激は、刺激画像からなる。
【0097】
特に、この第1の種類の視覚刺激は、視力を決定するための試行セッションの間提示される刺激とは異なる。
【0098】
第1の試行セッションの中央部分又は中間部分の間に、明刺激を一方の眼に提示することができ、同時に暗刺激を被検者のそれぞれ他方の眼に提示することができる。その後、明刺激がもう一方の眼に提示されるのと同時に、暗刺激が一方の眼に提示されることが可能であり、この手順が数回繰り返される。第1の種類の刺激は、第1の試行セッション中で被検者の左眼と右眼との間で切り替わる。
【0099】
特に、第1の試行セッションの初期部分及び/又は終了部分において、明刺激を両眼に同時に提示し、その後、暗刺激を両眼に同時に提示することができる。この初期部分及び/又は終了部分は、特に中央部分又は中間部分が実行される前の第1の試行セッションの開始時及び/又は中央部分又は中間部分が実行された後の第1の試行セッションの終了時に実行される。
【0100】
第1の試行セッションにおける初期部分及び/又は終了部分の実行は、両眼の収縮した瞳孔のサイズ及び拡張した瞳孔のサイズのベースライン値を確立及び/又は検証する目的で機能し得る。
【0101】
本発明の別の実施形態によれば、第1の試行セッションの初期部分及び/又は終了部分から、遠心性瞳孔機能又は遠心性瞳孔欠損が決定される。特に遠心性瞳孔機能は、明刺激から暗刺激に切り替わった後に瞳孔が拡張する速度から決定される。拡張速度が所定の閾値を下回る場合、被検者は遠心性瞳孔欠損、又は遠心性瞳孔機能障害、例えばホルネル病による障害、に罹患している可能性がある。
【0102】
第1の試行セッションの間、瞳孔のサイズ、例えば瞳孔径又は瞳孔半径は、両眼について、瞳孔のサイズの時間的経過が、時間的経過の任意の時間に提示された提示刺激に関連して決定することができるように、時間分解方式でそれぞれの試行について視標追跡システムによって記録されるデータから、コンピューター又は視標追跡システムによって自動的に決定される。
【0103】
第1の試行セッション中の瞳孔のサイズの変化を定量化することにより、ADP、及び特にRAPD(及び遠心性瞳孔機能)をそれぞれの眼について決定することができる。測定データからAPDを決定し得る方法の詳細は、実施例の項目で詳しく説明する。
【0104】
いずれの試行セッションも、類似の種類の視覚刺激に基づく試行を含む。
【0105】
特に、第1の試行セッションは、第1の種類の刺激のみからなる。
【0106】
表示位置は、当業者によく知られているように、中心注視方向又は主軸に対する表示に対する位置を記述する一対の角度で表すことができることに留意されたい。
【0107】
本発明の別の実施形態によれば、第1の試行セッションの実行は以下の工程を含む:
- 前記視標追跡システムによりデータを記録する工程であって、前記データが、前記第1の試行セッション間の被検者の第1の眼及び第2の眼の瞳孔のサイズ及び注視方向に関する情報を含み、特に、前記瞳孔のサイズ及び注視方向のサンプリング速度が、100Hz超過、特に200Hz超過のサンプリング速度を有し、かつ特に、前記データが、少なくとも1秒間以上記録される、前記工程と;
- 第1の試行セッションの前記記録されたデータから、特に提示された第1の種類の刺激に応答する、左眼及び右眼の瞳孔のサイズの時間的経過をコンピューターで分析することにより、APDを決定する工程と;
- 第1の試行セッションの記録された注視方向から、特に前記提示された第1の種類の視覚刺激に応答する、サッカード眼球運動の大きさ及び方向をコンピューターで分析することにより、少なくとも1つの斜視角度又は複数の斜視角度を決定する工程。
【0108】
本発明の別の実施形態によれば、第2の試行セッションの実行は以下の工程を含む:
- 視標追跡システムにより、第2の試行セッション間の被検者の第1の眼及び第2の眼の注視方向に関する情報を含むデータを記録する工程であって、特に注視方向検出のサンプリング速度が200Hzを超えるサンプリング速度を有し、かつ特に、前記データが少なくとも1秒間以上記録される、前記工程と;
- 第2の試行セッションの記録された注視方向から、特に提示された第2の種類の刺激に応答する、被検者のサッカード眼球運動をコンピューターで分析することにより、視野及び少なくとも1つの斜視角度又は複数の斜視角度を決定する工程。
【0109】
本実施形態では、第1の種類の刺激と比較して異なる種類の視覚刺激を有する第2の試行セッションを実行することにより、被験者の視野を決定すると同時に斜視を決定することができる。
【0110】
本発明の別の実施形態によれば、第1及び/又は第2の試行セッション中に記録されたデータから、及び第1又は第2の種類の刺激の配列から、以下の機能的な眼のパラメーター:
- サッカードピーク速度、
- サッカード精度、
のうちの1つ又は複数が、第1及び/又は第2の試行セッションのデータから決定される。
【0111】
この実施形態では、1種又は2種の視覚刺激による1回又は2回の試行セッションのみ(視力を決定するための試行セッションとは別)を使用する方法により、単一の測定システムのみを使用して複数の機能的な眼のパラメーターを同時に決定することができるため、本方法をさらにより汎用性が高いものにする。
【0112】
本発明の別の実施形態によれば、第1の試行セッションの記録された注視方向から、1つ又は複数の斜視角度が、コンピューターを用いて、サッカード眼球運動の大きさ及び方向、又は固視する眼の注視方向からの非固視の眼の注視方向の偏差を分析することによって決定される。
【0113】
特に、両眼の注視位置/方向の偏差、例えば差がコンピューターによって決定され、この偏差から斜視、特に1つ又は複数の斜視角度が決定される。
【0114】
本発明の別の実施形態によれば、両眼の注視位置/方向の偏差、特に注視方向/位置の間の差が、コンピューターによって決定され、この偏差から斜視、特に1つ又は複数の斜視角度が決定され、ここで、偏差は、試行セッションの間に少なくとも1回決定される。例えば、第1、第2(第3、又は視力を決定する試行セッション)の試行の間に、一方の眼は刺激に眼を固定するように構成される視覚刺激に曝され、かつ他方の眼はそのような視覚刺激に曝されない。
【0115】
以下では、同じ種類の刺激を用いて同じシステム上でさらに多くの機能的な眼のパラメーターを測定することを本発明が可能にする、さらなる有利な実施形態を開示する。
【0116】
本発明の別の実施形態によれば、第1の試行セッションの間に記録された第1の種類の視覚刺激の配列のデータから、両眼の遠心性瞳孔機能が決定される。
【0117】
本発明の別の実施形態によれば、第2の試行セッションの間に記録された第2の種類の視覚刺激の配列のデータから、滑動性追跡のゲインが決定される。
【0118】
本発明の別の実施形態によれば、第1の試行セッション及び視力を決定するための試行セッションのみが実行される。
【0119】
本実施形態では、被検者のAPD及び斜視角という2つの重要な機能的な眼のパラメーターを、1回の試行セッション及び視力を決定する試行セッションをシステム上で実行するだけで、高速かつ確実に測定することができる。
【0120】
本発明の別の実施形態によれば、視力を決定する試行セッションに加えて、正確に2つの試行セッション、すなわち第1の試行セッションと第2の試行セッションとが実行され、ここで第1の試行セッション及び第2の試行セッションの間に記録された第1の種類の視覚刺激及び第2の種類の視覚刺激の配列のデータから、被検者の少なくともAPD、斜視角、及び視野が決定される。特に、斜視角度は、第1の試行セッション又は第2の試行セッションのみの間に記録されたデータのいずれかから決定される。
【0121】
本発明の別の実施形態によれば、第1の種類の視覚刺激のそれぞれの視覚刺激は、表示システムの表示位置において表示システム上に表示される固視物を備え、該固視物は、固視物上、特に固視物の一部分、における眼の固定を可能にする空間的に限定されたグラフィカルな物体である。
【0122】
空間的に限定されたグラフィカルな物体又はより大きな物体の認識可能な部分は、固視物を見る際の注視方向が0.1°以内の固視物の位置を示すほど小さい。特に、固視物は1°より小さい。
【0123】
特に固視物は、刺激画像の背景よりも暗いか、又は明るいことが可能な物体である。
【0124】
RAPDの決定では、固視物はさほど重要ではないが、斜視角度の決定には固視物が必要である。したがって、第1の試行セッションから斜視角度を決定する場合、第1の種類の刺激は固視物を備える。
【0125】
例えば、固視物を備える第1の種類の刺激を左眼から右眼に切り替えたとき、及び/又はその逆に切り替えたときに、サッカード振幅、及び特にサッカード運動の方向を評価することにより、測定データから斜視角度を決定し、かつ特にコンピューターにより定量的に診断することができる。
【0126】
コンピューターが生成したAPD及び斜視の測定値は、訓練を受けた医療従事者にインターフェース上で提示することができる。
【0127】
本発明の別の実施形態によれば、第1の種類の視覚刺激が、右眼及び左眼に交互に、かつ2回以上繰り返し表示され、特に、それぞれの他方の眼に非刺激又は暗刺激が提示され、被検者の瞳孔のサイズ及び注視方向が、視標追跡システムによって両眼について記録され、特に、少なくとも100Hzのフレームレートで記録される。
【0128】
これにより、各眼のAPD及び斜視角度を決定することができる。
【0129】
本発明の別の実施形態によれば、第1の試行セッションは、複数の注視方向ブロックを備え、各注視方向ブロックにおいて、第1の種類の視覚刺激が、右眼と左眼とに繰り返し交互に提示され、異なる注視方向ブロックに対して、固視物が異なる表示位置に表示され、特に、それぞれの注視方向ブロックに対して、斜視角度とRAPDとが別々に決定される。
【0130】
表示位置は、表示位置のセットからランダムに選択することができる。しかしながら、第1の種類の視覚刺激が一方の眼から他方の眼に切り替わったときに、検出された眼の修正サッカード眼球運動に応じて、固視物の表示位置を選択することが可能である。
【0131】
特に、異なる注視方向ブロックの表示位置は、被検者の視野上に配置され、表示位置は特に3×3のマトリックスの区域に配置され、特に、表示位置の1つ、特に中央の表示位置は、主注視方向、すなわち直進注視に対応し、各注視方向ブロックにおいて、そのような1つの区域のみが表示位置で対処される。このようにして、異なる区域の各注視方向ブロックの間に斜視角度を測定することができる。この区域は、垂直方向及び水平方向の一般的な注視方向の組み合わせとして、例えば、右下、上方向のみ、左のみ、左上方向などのように呼ばれることがある。主注視方向は、頭部に対して基本的に直進する注視方向と定義することができる。
【0132】
各注視方向ブロックの間に、APDを決定するための瞳孔のサイズに関するデータが記録される。
【0133】
先に詳述したように、各注視方向ブロックの間、第1の種類の視覚刺激が眼に繰り返し提示され、この実施形態によれば、検出されたサッカード運動及び瞳孔のサイズの平均化が可能となり、第1の試行セッションからの斜視角度及びADPに関してより正確な結果が得られる。
【0134】
斜視をより詳細に決定するために、以下の実施形態は、第1の試行セッションの有利な実行を教示する。
【0135】
本発明の別の実施形態によれば、固視物は、同じ注視方向ブロックに対して同じ表示位置に表示され、第1の種類の刺激が左眼から右眼へ、又は右眼から左眼へ切り替わる度に記録されたサッカード眼球運動からサッカード眼球運動の振幅及び方向が決定され、特に、斜視角度が注視方向に関連して決定されるように、斜視角度が注視方向ブロックごとに決定される。
【0136】
検出されたサッカード眼球運動は、特に両眼について第1の種類の視覚刺激が一方の眼から他方の眼に切り替えられたときに記録されるサッカード開始点と、刺激の切り替え後の固視物が提示される眼が該固視物に焦点を合わせるのにかけた時間の後に両眼について決定されるサッカード終了点とを決定することによって評価することができる。
【0137】
開始点から終了点を指すベクトルによって定義される方向は、斜視の方向の情報を提供し、前記ベクトルの長さは、サッカード眼球運動の振幅に対応し、斜視の大きさに関連付けられ得る。
【0138】
さらに、眼のねじれに関係するねじれ斜視を決定することも可能である。眼のねじれは、視標追跡システムによって記録され、視標追跡システムのデータから、特に、サッカード眼球運動の開始点におけるねじれ状態とサッカード眼球運動の終了点におけるねじれ状態とからも、コンピューターによって評価され得る。このねじれは、サッカード運動の開始点と終了点とにおけるねじれの状態から導き出される。
【0139】
第1の種類の刺激の切り替えに応答するサッカード眼球運動は、特に、サッカード開始点からサッカード終了点を指す方向、サッカード開始点とサッカード終了点との間の距離を示す振幅、及びサッカード開始点とサッカード終了点との間のねじれ、によって特徴付けられ、特に少なくとも1つのサッカード眼球運動から、又は複数のサッカード眼球運動から、斜視角度が決定される。
【0140】
斜視角度は、注視方向ごとに水平角、垂直角、ねじれ角で表すことができる。
【0141】
第1及び第2の表示システムに関する「同じ(同一)」表示位置という用語は、理想的な眼のモデル(斜視なし)において同一の注視方向に対応するとみなされる、第1及び第2の表示システム上の対応する表示位置を指すことに留意されたい。
【0142】
本発明の別の実施形態によれば、サッカード眼球運動の大きさ及び方向は、第1の種類の刺激が左眼から右眼に、又は右眼から左眼に切り替わる度に、記録されたサッカード眼球運動から決定され、ここで同じ注視方向ブロックの同じ眼に対する第1の種類の視覚刺激の後続の提示において、注視方向ブロックの先に提示された第1の種類の刺激から決定されるとおり振幅及び方向においてサッカード眼球運動を補正するように、特に同じ注視方向ブロック内でサッカード運動が最小化されるまで補正するように、固視物の表示位置が調整され、特に斜視角度はこの調整された表示位置に対応し、特に斜視角度が注視方向に関して決定されるように、斜視角度は注視方向ごとに決定される。
【0143】
本方法は視標追跡からの正確な値にそれほど依存せず、眼球の非移動のみを立証すればよいので、この実施形態では、斜視角をより強固に決定することができる。
【0144】
先の実施形態の用語と定義は、この代替的な実施形態にも適用される。
【0145】
この実施形態は、本質的に、シフト及び/又は回転される様式で眼に固視物を提示することにより、修正サッカード眼球運動(corrective saccadic eye movement)を補正することを目的とする。このようにして、斜視の大きさ、方向、及び特にねじれを、固視物の位置及び回転の度合いから直接決定することができる。
【0146】
斜視角度は、特に、第1の種類の刺激の切り替えに応答するサッカード眼球運動の開始点から終了点を指すベクトル間の振幅と方向とを測定し、調整された表示位置に対する大きさと反対方向を斜視角度に割り当てることによって決定される。
【0147】
この実施形態によれば、両眼に提示された視覚刺激の視差を利用して斜視角度を算出する。特に、視差は、修正サッカード眼球運動を補正するために固視物に適用される調整の方向及び振幅として定義される。斜視角度は、注視方向ごとに水平角、垂直角、ねじれ角で表すことができる。
【0148】
本発明の別の実施形態によれば、第2の種類の視覚刺激の各視覚刺激は、表示システム上の相対位置で均一な背景上に表示される輝度物を含み、第2の試行セッションの間、第2の種類の視覚刺激の輝度物は、複数の選択される相対位置で順次表示され、第2の種類の視覚刺激は、右眼と左眼とに交互に又は順次表示され、特に、それぞれの他方の眼には、輝度物なしの第2の種類の刺激と同一の中立刺激が提示され、輝度物が選択される相対位置に表示される度に、被検者が選択される相対位置で輝度物を検出したかどうかがコンピューターによって決定され、被検者が輝度物を検出した場合には輝度物は、その後、特に低減された輝度で、異なる選択される相対位置に表示され、ここで、輝度物は、(被検者がこの選択される相対位置で輝度物を検出した輝度と比較して)低減された輝度で、後の試行で再び選択される相対位置に表示され、ここで被検者が選択される相対位置で輝度物を検出していない場合、輝度物は、必ずしもその後でなくてもよいが、被検者が輝度物を検出するまで、選択される相対位置で、輝度を増加させながら、繰り返し表示され、それにより、各選択される相対位置について、被検者の各眼の輝度検出閾値が決定され、それにより視野が閾値の周辺測定の形で決定されるようにする。
【0149】
相対位置は、被検者の現在の注視方向に依存する。したがって、相対位置は視線中心の座標系で提供される。現在の注視方向は、視標追跡システムによって決定することができる。
【0150】
相対位置は、視野の四分円に分布する複数の相対位置、特に20、50又はそれ以上の相対位置の中から選択することができる。
【0151】
輝度物は、輝度物を見るときの注視方向が0.1°以内の輝度物の位置を示すほど小さい、空間的に限定された物体である。特に、輝度物は0.1°より大きい。例えば、輝度物は、0.1~1.7°の範囲の直径、特に0.3~0.7°の範囲の直径を有し、均一な輝度の背景に配置される。
【0152】
輝度物は、眼に提示される第2の種類の刺激において、その相対位置及びその輝度及び/又は大きさの点で調整され得る。
【0153】
特に、輝度が調整される場合、輝度は2dB~10dB、より特に2、4、6、8、又は10dB減少又は増加する。輝度物の輝度は、コンピューターによって制御することができる。
【0154】
現在の注視方向に対して相対的に配置された輝度物による測定方式は、被検者が特定の方向を恒常的に注視する必要がなく、異なる種類の評価及び試験を実施することを可能にする。そのため、この試験状況では、試験セットアップ及び方法の実行に対する被検者の順守があまり要求されない。後述するように、視野の決定は完全に自動化されて実行され得る。被検者が輝度物を検出したかどうかのフィードバックは、ボタンを押したり、又は大声で話したりするような追加的な動作を実行する場合と比較して、被検者が輝度物を見ているだけで提供することができる。これにより、この方法はより直感的になり、ミスが少なくなる傾向にある。
【0155】
輝度物という用語は、特に物体の機能に関し、すなわち第2の試行セッション中にその輝度を変化させることができることに関する。
【0156】
したがって、第1の種類の視覚刺激と第2の種類の視覚刺激とは、少なくとも、試行セッション中に第1の種類の視覚刺激の輝度が調整されない点で異なる。
【0157】
輝度物は、連続的な背景輝度による均一な灰色又は黒色背景上の明るい物体として提示することができる。
【0158】
第2の試行セッションは、視野の閾値ペリメトリーを可能にする。この目的のため、相対位置は複数の相対位置からランダムに選択することができる。
【0159】
本発明の別の実施形態によれば、輝度物が表示されている第1の時間間隔内に、表示された輝度物に向かうサッカード眼球運動が視標追跡システムによって記録された場合、輝度物は、被検者によって検出されたとみなされ、ここで特に、第1の時間間隔が約500ミリ秒であり、かつ第1の時間間隔内に輝度物に向かうサッカード眼球運動が視標追跡システムによって記録されなかった場合、輝度物の刺激は、被検者によって検出されなかったとみなされる。第1の時間間隔の持続時間は、少なくとも可視刺激に対する平均応答時間の2標準偏差を含む長さ、特に平均応答時間の2倍の長さ、になるように選択することができる。
【0160】
特に、第2の種類の視覚刺激、すなわち輝度物は、輝度物が提示された眼の第1のサッカードが、輝度物の位置の相対位置に向かって2°より大きく、より特に3°より大きい場合にのみ、被検者によって検出されたとみなされる。
【0161】
より特に、それぞれの第2の種類の刺激に対して、輝度物の位置の周囲に広がる仮想のヒットボックスが定義され、このヒットボックスのサイズは輝度物の位置に依存し、ヒットボックスのサイズは、視野の中心領域に近い位置ではより密接し、視野の周辺領域ではより大きい。
【0162】
視覚刺激が検出されたかどうか、すなわち被検者により輝度物が検出されたかどうかの決定は、輝度物の提示時に相関するサッカードが存在するかどうか、及びこのサッカードが正しい方向、すなわち輝度物への方向に向かっているかどうか、及びまた輝度物に向かって正しい方向に十分に沿っているかどうかを決定することにより、偶発的なサッカードを除外することができるように、自動的かつ確実に実行される。
【0163】
眼球が輝度物を検出した場合(すなわち、相対位置で眼球の知覚閾値を超える場合)に、眼球が輝度物に向かってサッカード運動することにより、被検者がディスプレイの表示時に輝度物を検出したかどうかを自動的に決定することができる。
【0164】
この実施形態では、被検者が音声による指示又はボタンを押すなどの非視覚的フィードバックを行うことなく、視野の自動測定を行うことができる。
【0165】
本発明の別の実施形態によれば、斜視角度は、第2の種類の刺激が左眼から右眼へ、又は右眼から左眼へ切り替わる場合、かつ輝度物が両眼によって検出されたとみなされる場合に、サッカード運動から、特にサッカード眼球運動の振幅及び方向から選択される相対位置に対して決定される。
【0166】
本発明の別の実施形態によれば、注視方向のリセットルーチンが実行され、前記ルーチンは以下の工程を含む:
- 特に、選択された相対表示位置が、視標追跡システムの物理的追跡限界又は表示システムの物理的表示限界の外側に位置しているかどうかを決定する工程と、及び「はい(yes)」の場合:
- 眼の現在の注視方向で輝度検出閾値を超える閾値超輝度を有する固視物又は輝度物などの閾値超の物体を提示する工程と、
- 閾値超の物体を、所定の水平方向及び垂直方向の速度で軌道に沿って新しい表示位置に移動させる工程と、
- 特に、閾値超の物体を隠す工程と;
- 特に、注視リセットルーチンが実行される前に、視標追跡の物理的表示限界又は物理的追跡限界の外側にあると決定される選択される相対位置で、前の実施形態の方法の工程を実行する工程。
【0167】
この注視方向リセットルーチンは、例えば、試行が行われる選択される相対位置が表示システムの表示限界、例えば物理的な横画面の限界の外側にある場合に実行され得る。
【0168】
さらに、注視リセットルーチンから、動いている閾値超の物体に対する眼の動きを評価することによって、滑動性追跡のゲインを決定することができる。
【0169】
このように、注視リセットルーチンは、第1及び/又は第2の試行セッション中、あるいは任意の他の試行セッション中に実行することができる。
【0170】
また、注視リセットルーチンは、例えば、ある相対位置で視野を評価する必要があり、かつ視野をプローブするための他の相対位置のほとんど又はすべてがすでに試験されている場合などに、必要かつ有用になる可能性がある。次に、試行が行われる相対位置が表示システムの物理的限界内又は視標追跡システムの物理的追跡限界内にあるように、被験者の注視方向がリセットされる。
【0171】
本発明の別の実施形態によれば、注視リセットルーチンの間、閾値超の物体は(被検者から見て)水平方向及び垂直方向に沿った、特に順次的様式の、所定の速度パターンを有し、ここで注視リセットルーチンから滑動性追跡を決定することができるように、閾値超の物体を追う検出された眼球運動の速度と閾値超の物体の速度パターンとの間の偏差が、閾値超の物体の移動方向ごとに決定される。
【0172】
この実施形態によれば、例えば、第2の試行セッションにおいて、第2の種類の視覚刺激は、被検者の検出/知覚の閾値超過の輝度を有する輝度物を用いて選択され、ここで前記輝度物は、現在の注視方向、すなわち、注視方向の「真正面」に提示されるように被検者に表示され、前記輝度物は、所定の速度パターンで移動する。この場合、閾値超の物体は輝度物に対応する。
【0173】
同様に、このルーチンは、固視物を用いた第1の試行セッション中に実行及び評価されてもよく、又は異なる物体を用いたさらに別の試行セッション中に実行及び評価されてもよい。
【0174】
閾値超の物体は、明るいバックグラウンドに暗い物体であるか、又はその逆である可能性があることに留意されたい。
【0175】
この実施形態は、例えば、同じ第1又は第2の種類の視覚刺激を使用することにより、第1又は第2の試行セッションにおける滑動性追跡の決定を組み入れることを可能にする。
【0176】
本発明の別の実施形態によれば、決定される機能的な眼のパラメーターは:
- 被検者の融像幅;
をさらに含み、
ここで、融像幅を決定するために、本方法は、以下の工程:
- 第3の試行セッションを実行する工程であって、ここで第3の試行セッションは、光学システムを用いて被検者の左眼と右眼とに同時に提示される第3の種類の視覚刺激を備える、前記工程と;
- 注視方向の情報を含む第3の試行セッション中のデータを記録する工程と;
- 前記第3の試行セッションの記録された注視方向から、第3の試行セッションの提示された第3の種類の視覚刺激に応答する被検者の左眼と右眼との輻輳(vergence)をコンピューターで分析することにより、少なくとも融像幅を決定する工程と、
をさらに含む。
【0177】
本発明の別の実施形態によれば、第3の種類の視覚刺激は、局所的な空間構造(それぞれの構造に複数の異なる空間周波数を有する構造)を有する画像を含み、第3の試行セッションの開始時に、左眼用及び右眼用の画像は、ゼロ輻輳(zero vergence)を必要とするゼロ画像視差に配置され、その後、画像は、特に視差を連続的に増加又は減少させて左眼及び右眼に提示され、特に、視差は、水平視差、垂直視差又はねじれ視差であり得る。
【0178】
この実施形態は、被検者が依然として輻輳眼球運動により画像の視差/表示された第3種の刺激の視差を補正することができる、眼の水平方向及び/又は垂直方向の最大輻輳角を決定することによって、融像幅を決定することを可能にする。この点での画像視差の増加により融合が破壊され、輻輳は定常状態(理想的には0度)まで減衰する。
【0179】
本発明の別の実施形態によれば、左眼及び右眼の注視方向は、試行セッションのいずれかの間に視標追跡システムによって記録され、ここで斜視角度は、記録された左眼及び右眼の注視方向を減算することによって決定され、特に、眼の注視方向は、第1、第2、第3又は第4の種類の刺激の提示中に記録される。
【0180】
試行セッションのいずれかは、前記システム上で互いに独立して実行されてもよいことに留意されたい。
【0181】
本発明の第3の態様によれば、神経検眼鏡(neuro-ophthalmoscope)は、前記システムの特徴と、本発明による方法を実行するためにコンピューターに保存されたプログラムコードとを備える。
【0182】
さらに、光学システム及び視標追跡システムは、VRゴーグルなどのニアアイディスプレイに備えられ、又は光学システムはデスクトップスクリーン及びコンピュータースクリーンに配置された別個の視標追跡システムを備え、神経検眼鏡がVRゴーグルを備える場合、前記ゴーグルは、被検者のそれぞれの眼の光学収差がレンズアセンブリによって補正され得るように調整可能なレンズアセンブリをそれぞれの眼に対してさらに備える。
【0183】
特に、例示的な実施形態を図と併せて以下に説明する。図面は特許請求の範囲に添付され、示された実施形態の個々の特徴及び本発明の態様を説明するテキストが付されている。図に示され、及び/又は図の前記テキストに記載された個々の特徴は、本発明による装置に関する請求項に(分離された態様でも)組み込むことができる。
【実施例
【0184】
以下に、本発明による例示的なシステムを開示する。しかしながら、本発明による方法を同じ様式で実行できる別のシステムを使用することも可能であることに留意されたい。
【0185】
本システムは、被検者の眼の前に配置される2つのディスプレイを含む表示システムを備える。該表示システムは、視覚刺激を眼に独立して表示するように構成される2つのディスプレイを備え、該ディスプレイの第1のディスプレイは、視覚刺激を右眼に提示するように配置され、該ディスプレイの第2のディスプレイは、視覚刺激を左眼に提示するように配置される。
【0186】
さらに、これらのディスプレイは、視覚刺激が片眼だけに提示することができるように、眼が1つのディスプレイだけを知覚できるように配置される。これらのディスプレイ間のクロストークは0.2cd/m未満でなければならない。
【0187】
これらのディスプレイは、視覚刺激又は物体が表示され得る表示位置又は表示場所を記述する関連座標系を有することができる。座標系はどちらのディスプレイでも本質的に同じであり、同一の座標は、正常な機能的な眼のパラメーターを持つ眼のモデルに関して、すなわち斜視角度0度に関して、同一の注視方向に対応する。
【0188】
さらに、このシステムは、眼の注視方向及び瞳孔のサイズを記録するように構成される視標追跡システムを備える。さらに、視標追跡システムは、眼の回転及びその他の関連するパラメーターもまた決定することができるように装備され得る。
【0189】
この視標追跡システムは200Hz超過のフレームレートを有し、眼のサッカードを一連の画像に分解することができる。
【0190】
視標追跡システムは、表示システムに統合されていてもよいし、又は表示システムの近傍に配置されていてもよい。これにより、被験者の眼は、試行セッションの間に、常に視標追跡システムに対して可視化されることが保証される。
【0191】
視標追跡システムは、被検者の眼の画像の形でデータを記録することができる。視標追跡システムは、眼の位置、瞳孔位置、瞳孔のサイズ、及び/又は注視方向など、いくつかの眼のパラメーターを決定するためのモジュールを備えることができる。
【0192】
前記モジュールは、眼のパラメーターをコンピューターに転送し、又はこのデータを視標追跡システムにより記録された画像データに含めることができる。
【0193】
瞳孔のサイズを決定する精度は0.01mmより良好である必要があり、一方で精度は0.05mmより良好であり得る。
【0194】
さらに、注視方向を十分に正確に決定するために、視標追跡システムは1°より良好である精度を持つように構成される必要がある。
【0195】
視標追跡システムは、コンピューターと視標追跡システムとの間でデータを交換することができるように、システムのコンピューターに接続される。
【0196】
コンピューターは、視標追跡システム及び表示システムを制御し、したがって、本発明による方法、特に本発明のコンピューターに実装された方法の工程を実行するように構成される。本方法は、視覚刺激の記録と表示とがコンピューターによって連係されるように、コンピュータープログラムがコンピューターにシステムの表示システムと視標追跡システムとを制御させるコンピュータープログラムの形態でコンピューター上で実行することができる。
【0197】
さらに、コンピューターは、視標追跡システムからの記録データを分析するように構成され、かつ特に、コンピューターは、視標追跡システムの記録データと提示される視覚刺激とを時間相関させることができる。
【0198】
表示システムは、被検者の近視に調整されるように構成されるレンズアセンブリを備えてもよい。
【0199】
表示システムと視標追跡システムとは、例えばバーチャルリアリティゴーグル(VRゴーグル)のような形態で、人のヘッドセットとして装着される単一の装置、すなわちニアアイディスプレイに備えることができる。VRゴーグルはレンズアセンブリを備えてもよい。
【0200】
次いで、本発明によるシステムは、複数の機能的な眼のパラメーターを決定するために、本方法の実行に使用することができる。
【0201】
本発明によれば、視力を決定するための試行セッションは、例えばコンピュータープログラム、方法、又はコンピューターに実装された方法によって本システム上で実行することができる。視力の決定については後述の実施例で記載する。
【0202】
瞳孔のサイズからのAPD、RAPDの決定及び第1の試行セッション
以下に、いくつかの機能的な眼のパラメーターについて、それぞれのパラメーターがどのように決定されるかを詳細に示す1つ又は複数の例を示す。
【0203】
従来、求心性瞳孔欠損(APD)は、いわゆる交互対光反応試験(swinging flashlight test)によって決定されるが、この試験は、試験を実施及び評価する人の専門知識並びに被検者の順守に左右される傾向にある。
【0204】
本発明によれば、自動化された客観的な様式で、試験を繰り返し確実に実行することができる。
【0205】
APDの決定の自動化された実行には、本明細書の文脈に記載されるようなシステムが必要である。
【0206】
APDを決定するために、第1の試行セッションが被検者により行われる。第1の試行セッションは、複数の試行からなる。1つの試行は、被験者の少なくとも片方の眼に提示される少なくとも1つの第1の種類の視覚刺激から順次なる。試行セッションの間に、視標追跡システムは両眼の瞳孔のサイズ及び注視方向を連続的に記録する。
【0207】
この例で第1の試行セッションに使用される視覚刺激は、APDの決定に関する試験の特定の目的には固視物は必要ないにもかかわらず、固視物を備える第1の種類の刺激である。
【0208】
第1の種類の刺激は、健康な人、つまり特にAPDを患っていない人の瞳孔が収縮すると予想されるほど、明るい、つまり輝度の高い刺激である。この明るさは約30cd/mであるが、最大50cd/mであり得る。
【0209】
任意に、第1の試行セッションの開始時又は終了時に、被検者の瞳孔を少なくとも数秒間又は数分間(T0-1、T0-2)拡張することができる暗刺激又は非刺激を両眼に同時に提示してもよい(図2図3)。この測定から、瞳孔のサイズのベースラインは、記録されたそれぞれの眼の瞳孔のサイズの時間的経過から独立して計算することができる。その後、両眼の瞳孔の収縮のうち最小の瞳孔のサイズが、記録された両眼の瞳孔のサイズの時間的経過から独立して決定されるように、被検者の両眼に第1の種類の刺激を数秒間同時に与える。
【0210】
この任意の初期の配列の後、それぞれの眼について、最小及び最大の瞳孔のサイズがわかる。
【0211】
次に、被験者に一連の試行が提示され、この一連の試行の間、第1の種類の刺激、すなわち明刺激が交互に眼に提示され、それぞれのもう一方の眼には暗刺激が提示される。つまり、例えば左眼から始めて、明刺激が例えば3秒間左眼に提示され、かつ暗刺激が同じ時間右眼に提示される。次に、同じ時間、明刺激を右眼に提示し、暗刺激を左眼に提示する。固視物の表示位置は、APDを決定するための二次的な性質にすぎない。
【0212】
この配列は少なくとも1回繰り返される。記録されたデータを評価するためには、60Hzの視標追跡システムのフレームレートは十分であり得る。
【0213】
第1の試行セッションから、記録された瞳孔のサイズの時間的経過が得られ、該時間的経過は数百から数千のデータポイントを有する。
【0214】
時間的経過から、明刺激の切り替え前の最大瞳孔のサイズ及び切り替え直後の最小瞳孔のサイズがプロセッサーによって決定され、特に、それぞれの眼の時間的経過が平滑化アルゴリズムで異常値に対して平滑化される。このように、両眼の時間的経過から、プロセッサーによって、第1の種類の刺激に曝されたときの変化の関連する振幅が計算され得る。こうして、それぞれの眼について、収縮した瞳孔と拡張した瞳孔との間の振幅が計算される。瞳孔の応答の差、すなわち左右の眼の間の振幅は、相対性求心性瞳孔欠損(RAPD)の大きさを示す。健康な被験者の正常なデータと比較した絶対振幅は、求心性瞳孔欠損(APD)を示す。後者はそれぞれの眼ごとに決定される。
【0215】
任意に、左眼と右眼との瞳孔のサイズを平均化する。この平均化したトレースに対して、明刺激の開始から0ミリ秒から80ミリ秒までの平均瞳孔サイズが決定される。この値から、全試行で明刺激の開始後に到達した最小の瞳孔のサイズを差し引く。この計算によって瞳孔振幅が得られる。左眼と右眼の瞳孔振幅を比較する。その差はRAPDの大きさを示す。
【0216】
第2のアプローチは、それぞれの試行の開始時と終了時との平均瞳孔サイズを差し引くことからなる。この値は、左眼に対する明刺激の値から右眼に対する明刺激を差し引くことで決定される。得られた値の符号と大きさは、どの眼がどの程度、RAPDの影響を受けているかを示す。
【0217】
図1には、第1の試行セッションによる時間的経過と、関連して記録された時間的瞳孔サイズが示されている。この例では、右眼から左眼への明刺激の変化の振幅が、左眼から右眼への明刺激の変化による瞳孔のサイズの振幅よりも大きいため、右眼のRAPDが検出される。
【0218】
本方法の利点のひとつは、同じ種類の視覚刺激を用いて1回の試行セッション内で斜視角度もまた決定できることである。
【0219】
遠心性瞳孔機能の決定
第1の試行セッションの開始時又は終了時に、収縮瞳孔のサイズ及び拡張瞳孔のサイズのベースラインを確立するために詳細に説明したとおり、第1の試行セッションの初期部分及び終了部分を実施することができる。この目的のために、明刺激を両眼に同時に提示した後に、暗刺激を両眼に同時に提示してもよいし、その逆でもよい。
【0220】
第1の試行セッションの初期部分及び/又は終了部分から、遠心性瞳孔機能又は遠心性瞳孔欠損が決定される。特に、眼球の瞳孔のサイズの記録された時間的経過から、遠心性瞳孔機能がプロセッサーによって決定される。遠心性瞳孔機能は、明刺激から暗刺激に切り替わった後に瞳孔が拡張する速度又は時間間隔から決定される。拡張の速度が所定の閾値速度を下回る場合、又は時間間隔が所定の時間間隔より長い場合、被検者は遠心性瞳孔欠損又は遠心性瞳孔機能障害(例えばホルネル病による障害)に罹患している可能性がある。
【0221】
拡張の速度は、時間的経過の勾配から決定するか、又は刺激が明から暗に切り替わった後に瞳孔が拡張するのに必要な時間間隔を決定することによって決定することができる。
【0222】
第1の試行セッションからの斜視角度の決定
図2及び図3を参照すると、RAPDに加えて第1の試行セッションから斜視角度を決定するために、第1の種類の刺激は固視物を備える。固視物は、固視物に視線を固定することができる空間的に限定された物体であり得る。例えば、物体の直径が1°オーダーの明るい点又は風景中に表示される物体であってもよい。
【0223】
第1の試行セッションでは、T1、T2、T3、T4と異なる試行で、前項で説明したとおり、第1の種類の刺激が左眼と右眼とに交互に繰り返し提示される。
【0224】
視標追跡システムからの眼球と瞳孔との記録は、データセットから瞬き事象が取り除かれるようにフィルタリングされる。眼球運動速度が600°/秒より速いデータはデータセットから削除される。
【0225】
斜視角度の決定の第1の実施形態では、以下の工程が実行される:
【0226】
第1の試行セッションは、注視方向ブロックに細分化され、ここでそれぞれの注視方向ブロックの間では、試行T1、T2、T3、T4の間に、固視物は同じ表示位置に表示され、異なる注視方向ブロックでは、固視物は異なる選択された表示位置に表示される。一般に、9つの表示位置が、主注視方向(つまり、中心の真正面、0,0)にセンタリングされる3×3のマトリックスから選択される。それぞれの選択される表示位置は、αが10~25°の範囲にある間のタプル[-α,0°,+α]から選択される3つの水平注視方向のうちの1つと、βが10°~25°の範囲にある間のタプル[-β,0°,+β]から選択される3つの垂直注視方向のうちの1つとの組み合わせである。
【0227】
したがって、第1の試行セッションの間に9つの注視方向ブロックが実行され、その間、APDの決定について記載したとおり、第1の種類の刺激が右眼と左眼の間で交互に繰り返され、かつ一方でそれぞれの注視方向ブロックについて、選択された表示位置の1つに固視物が表示される。
【0228】
記録された注視方向100と瞳孔のサイズのデータは、前述のようにAPDに関して評価され、かつ斜視角度に関して評価される。斜視角度については、第1の種類の刺激11が左眼から右眼に切り替わる度に、またその逆も同様に、眼の修正サッカード101が記録される。被検者が斜視を患っていない場合、修正サッカードはない可能性がある。被検者が斜視を患っている場合、修正サッカードが顕著になる。修正サッカードの方向及び振幅によって、斜視角度を定量化することができる。さらに、斜視角度は、固視物の表示位置の選択により、その垂直、水平、又はねじれの大きさに関連して決定され得る。したがって、水平、垂直及び/又はねじれ斜視角度は、第1の試行セッションについて決定され得る。
【0229】
特に、左眼の水平方向の注視位置/方向は、視線が9つの表示位置のうち1つに向けられている場合、右眼の水平方向の注視位置/方向から差し引かれる。これにより、9つの表示位置のそれぞれについて、表示位置、すなわち注視方向、に対する水平方向の相対偏差、すなわち水平方向の斜視角度、についての1つの値が得られる。
【0230】
同様にして、9つの表示位置のそれぞれについて、垂直方向の斜視角度及びねじれ斜視角度を算出することができる。
【0231】
つまり、この修正サッカード眼球運動の方向、振幅、及びねじれは、それぞれの眼の水平、垂直、及びねじれ斜視角度を示す。
【0232】
この実施形態では、1つの種類の視覚刺激による1回の試行セッションを用いて、APDと斜視角度とを決定することができるため、2つの異なる試験を1つの試験シリーズに効果的に統合することができる。これにより、2つの機能的な眼のパラメーターを確立するのに必要な時間が短縮される。
【0233】
別の実施形態では、斜視角度は以下の工程で決定される:
【0234】
この別の実施形態による第1の試行セッションは、注視方向ブロックに細分化され、異なる注視方向ブロックでは、異なる選択された表示位置に固視物が表示される。
【0235】
第1の注視方向ブロックでは、前項の記載のとおり、第1の種類の物体が左眼と右眼とに交互に繰り返し表示される。この刺激は、表示位置にて固視物を備える。
【0236】
しかしながら、修正サッカードは、第1の視覚刺激が片方の眼(例えば左眼)からもう片方の眼(例えば右眼)に切り替わった後に評価される。ここで、評価された修正サッカードに従って、固視物の表示位置は、視覚刺激が一方の眼、例えば左眼から、他方の眼、例えば右眼に再び切り替えられる次の試行において、表示位置が予想される修正サッカードを補償するように調整される。第1の注視方向ブロックの間に、どちらかの切り替えの方向に修正サッカードが補正されるように左右の眼の固視物の表示位置を調整することが目標である。この固視物の表示位置の調整は、その後の注視方向ブロックでも同じ様式で繰り返される。
【0237】
一般に、9つの表示位置が、主注視方向(つまり、中心の真正面、0,0)を中心とする3×3のマトリックスから選択される。それぞれの選択された表示位置は、αが10~25°の範囲にある間のタプル[-α,0°,+α]から選択される3つの水平注視方向のうちの1つと、βが10°~25°の範囲にある間のタプル[-β,0°,+β]から選択される3つの垂直注視方向のうちの1つとの組み合わせである。別の実施形態によれば、上述したように、評価された修正サッカードに応じて、右眼に表示される固視物の表示位置が調整され、一方で左眼に表示される固視物の表示位置は変更されない。右眼の修正サッカードの補正が達成されると、左眼の表示位置が調整され、一方で右側に表示される固視物の表示位置は固定されたままである。
【0238】
調整されていない表示位置に対する調整された表示位置の方向と振幅(すなわち視差)により、斜視角度を定量化することができる。さらに、斜視角度は、固視物の調整された表示位置の選択により、その垂直、水平、又はねじれの大きさに関連して決定され得る。
【0239】
この実施形態では、1つの種類の視覚刺激による1回の試行セッションを用いて、(R)APDと斜視角度とを決定することができるため、2つの異なる試験を1つの試験シリーズに統合することができる。これにより、2つの機能的な眼のパラメーターを確立するのに必要な時間が短縮される。
【0240】
斜視角度を決定するための両方の実施形態は、それぞれの表示位置、すなわち注視方向、における斜位(phoria)の合計角度(すなわち斜視角度)を決定する点で共通している。9つの表示位置の各々について、斜視角度、特に水平斜視角度及び垂直斜視角度、が算出され、ここで斜視角度は、右眼が固視物を固視する状況に対し、左眼について斜視角度が決定され、逆も同様であり、すなわち、左眼が固視物を固視する状況に対して、左眼について斜視角度が決定される。
【0241】
したがって、第1の試行セッションの間に、9つの注視方向ブロックが実行され、その間に、APDの決定について記載したとおり、第1の種類の刺激が右眼と左眼の間で交互に繰り返され、かつ一方でそれぞれの注視方向ブロックにおいて、固視物が、斜視角度が決定されるように、選択され、かつ特に調整される表示位置のうちの1つに表示される。
【0242】
視野の決定
図4については、本発明によれば、本方法により、斜視角度の決定と同時に被検者の視野400(図4A参照)を決定することができる。
【0243】
この目的のために、第2の試行セッションでは、被検者に第2の種類の視覚刺激を与える。第2の試行セッションは、第1の試行セッションの前又は後、あるいは第1の試行セッションの代わりに実行されてもよいことに留意されたい。
【0244】
第2の種類の刺激は、輝度物を備え、輝度物は表示システム上に表示され得るコンパクトな、すなわち空間的に限定され、かつ局所的な物体である。
【0245】
第2の種類の刺激は、均一な背景からなり、その上に輝度物が表示されるものである。
【0246】
第2の種類の刺激は、輝度物及びその表示システム上の輝度の観点から調整可能である。さらに、輝度物が被検者の視野内の選択される位置に表示されるように、輝度物の相対位置(本明細書の文脈では相対表示位置とも呼ばれる)を調整することができる。したがって、輝度物が表示システムに表示される位置は、被検者の注視方向に依存する。前記相対位置とは、眼の現在の注視方向に対して相対的に与えられる位置である。したがって、相対表示位置はまた、現在の注視方向403が表示位置の原点を決定するために注視中心表示とも呼ばれる。
【0247】
このように、特定の相対位置で輝度を表示するためには、その相対位置が被検者に知覚可能であるための2つの基準を満たす必要がある:
a)輝度物の相対位置の表示位置は、表示システムの制限内でなければならず、そうでなければ輝度物を表示することはできない。
b)輝度物の相対位置の表示位置は、視標追跡システムの範囲内でなければならず、そうでなければ、眼の位置又は瞳孔のサイズを決定することはできない。
【0248】
被検者の視野400を評価するために、被検者の視野のマップが生成され、このマップは、閾値に関する空間的に分解された情報(視野マップにおける知覚閾値を示すグレーの値の形の図4A参照;暗いほど知覚閾値が低い)を含んでおり、この閾値未満では、試験が行われた相対位置において輝度物の輝度が前記閾値未満である場合、被検者は輝度物を知覚していない。このアプローチは閾値ペリメトリーとも呼ばれる。こうして、閾値ペリメトリー法を用いて被検者の視野が決定され、視野マップ401が得られる。
【0249】
前記マップ401を生成するために、閾値は、視野上に分布する複数の異なる相対位置402について決定される(図4A及び図4B参照)。
【0250】
視野を決定するための試行は、複数の相対位置のうち選択される相対位置に表示される輝度物を有する第2の種類の刺激403の開始により開始され、輝度物の方向への眼球運動が行われた後約500ミリ秒に終了する。このような試行は、被験者によって「視認」と分類され、又は検出されたとみなされる。約1000ミリ秒以内に刺激の方向に眼球運動が行われなかった場合、その試行は被検者によって「未視認」と分類され、又は検出されなかったものとみなされる。それぞれの試行では、複数の相対位置のうち1つが試験される。
【0251】
輝度物は、例えば、10cd/mの均一な背景上に表示された直径約0.5°の明るい点からなる。第2の種類の視覚刺激は200m秒の期間表示される。
【0252】
輝度物の輝度は、輝度物の相対位置に応じて変化し、及び第2の試行セッションの先行する試行において刺激がその特定の位置で検出されたとみなされたか否かに応じて変化する。最初に、輝度物の初期輝度は、その相対位置の年齢補正された正常値より2dB高く選択される。試行後に刺激が検出されたとみなされた場合、輝度物の輝度は後に2dB低減されるが、特にその後の試行では低減されない。検出された刺激の後に、次の試行では輝度物の相対位置が変更される。刺激が認識されない、すなわち検出されないとみなされた場合、輝度物の輝度は適応的に増加され、例えば2dBから10dB、特に2、4、6、8、又は10dB増加される。この手順を、閾値を一度超えるまで繰り返す。あるいは、輝度物の輝度は、固定量ではなく、適応的に増減させることもできる。
【0253】
視野を決定するために、例えば、眼の中心視野の54の相対位置を選択的に検査することができる。輝度物は相対的な位置に表示されるため、鼻側階段(nasal step)付近、垂直子午線沿い、及び中心視野内、の表示位置が過大になる。相対位置は直径120°の視野をカバーする。
【0254】
例えば表示システム又は視標追跡システムの制限などにより、選択される相対位置に輝度物を表示できない場合、8つの相対位置のうち別の相対位置が選択される。すでに試験された相対位置だけが残っている場合、注視リセットの手順が実行されてもよく、その間に閾値超刺激が出現し、被験者はそれを追う必要がある。
【0255】
この目的のために、閾値超刺激が現在の注視方向/位置に現れる。この刺激は、閾値超過の輝度を有する輝度物の形態とすることができ、例えば、最初に新しい横位置まで毎秒8°で水平方向に移動し、続いて新しい垂直位置まで毎秒8°で垂直方向に移動し得る。
【0256】
次に、それまで範囲外であった相対位置に、(より低い輝度を有することができる)輝度物が表示される。
【0257】
それぞれの相対位置について、閾値とも呼ばれる知覚的閾値が決定される。知覚感度は、検出されたとみなされた最小の明るさの刺激及び検出されなかったとみなされた最大の明るさの刺激の平均を用いて、それぞれの相対位置について計算される。
【0258】
注視リセット手順からの滑動性追跡の決定:
注視リセット手順から、動く閾値超の物体に応答する眼球の動きを評価することにより、滑動性追跡もまた決定することができる。この目的のために、記録された眼球のサッカードは、滑動性追跡分析から除かれる。右、左、及び縦の眼球運動が分離される。眼球運動の速度と閾値超の物体の運動の速度との平均の差をパーセントで表したものをゲインと定義することができる。ゲイン100%とは、眼球運動が閾値超の物体の速度にて完全に追従していることを意味する。
【0259】
固視、注視保持、矩形波眼球運動(square wave jerk)、眼振
固視は、いずれの試行セッション間に決定することができる。この分析では、注視リセット中の滑動性追跡眼球運動と、3°超過の振幅のすべてのサッカードは除外される。特に、新しく提示される刺激の後のサッカード反応は除外される。
【0260】
このような固視イベントは、眼中心の視界における5つの異なる相対位置、つまり右注視、左注視、上注視、下注視、及び主注視について個別に分析される。
【0261】
固視安定性は、閾値超の物体が画面上に連続的に存在する間の、眼の固定の変化の回数に対応する。この数値は、閾値超刺激の3°以内で費やされる時間及び1分あたりの固視消失を示している(目標に対する%(割合))。
【0262】
さらに又はあるいは、矩形波眼球運動の周波数が、第1及び/又は第2の試行セッションの間に決定されてもよい。矩形波眼球運動は、200m秒~400m秒の時間間隔を隔てた、5°±1°未満の同じ振幅の2つの水平サッカード(往路サッカードと復路サッカード)によって定義される。このような1分間あたりのイベントの数は、固視、輝度、又は閾値超の物体の存在とは無関係にカウントされる。
【0263】
他の(矩形波眼球運動以外の)サッカーディック・イントルージョン(saccadic intrusion)の有無:連続したサッカード、つまり固視イベントが間にない2つのサッカードを伴うすべてのイベントは、サッカーディック・イントルージョンとして分類される。矩形波眼球運動と同様に、二重のサッカード型パルス、水平眼振、マクロサッカード型振動、マイクロサッカード型振動、及びオプソクローヌスが特定される。
【0264】
眼振の有無:眼球位置のドリフトが1秒間に1°を超え、一定の方向が5秒超過続く場合は、眼振と定義される。緩徐相の平均速度が眼振の大きさとして使用される。これは、5つの患者中心の注視位置/方向、すなわち相対位置のそれぞれで決定される。
【0265】
注視保持機能:これについては、右注視、左注視、上注視、下注視のデータだけが含まれる。眼振検出と同様に、注視位置/方向とは逆方向の眼球運動ドリフト(例えば、上注視中に瞳孔が下方向にドリフトする、左注視中に右方向にドリフトする等)が出現するか否かを決定する。ドリフトが現れた場合、注視保持は異常と判断される。ドリフトは眼振と同じアルゴリズムで定量化される。
【0266】
これらのパラメーターはすべて1回の試行セッションの間に評価できるため、測定時間が劇的に短縮されることが指摘される。
【0267】
サッカード精度の決定
さらに、いずれのセッションからも、被検者の斜視角度及び視野に対し同時にサッカード精度を第2の種類の刺激の配列から決定することができる。サッカード精度を決定するために、検出されたとみなされ、異なる相対位置に表示された後続の第2の種類の刺激のみが、コンピューターによる分析のために選択される。この選択はコンピューターが自動的に行うことも可能である。
【0268】
輝度物が表示されている相対位置の方向(±20°)において3°超過の第1のサッカードを分析に使用する。後続の第2の刺激の相対位置間の距離と第1のサッカードの大きさとの差(パーセント)が計算される。この差はサッカード精度に相当する。
【0269】
サッカード精度は、右方向サッカード、左方向サッカード、及び垂直サッカードについて別々に決定される。
【0270】
3種類のサッカードのそれぞれについて、誤差の中央値(目標振幅に対する割合(%))を計算し、測定過大サッカードの数(パーセント)を算出することができる。後者は、目標振幅の10%を超える振幅を持つサッカードと定義される。
【0271】
サッカード精度決定の変動において、大きなサッカードは生理学的に測定過小であるため、上記の数が目標振幅に対して補正される。それぞれの試行から、振幅に依存する平均年齢相関測定過小が差し引かれる。
【0272】
ピーク速度の決定
ピーク速度を決定するために、特に第2の試行セッション中に記録されたデータから、サッカード眼球運動が分析され、サッカード中の眼球運動のピーク速度が決定される。サッカードが1秒より短くても、ピーク速度は度/秒で表すことができる。さらなる、又は別の実施形態では、第1、第3、又は第4の試行セッション中に記録されたサッカードが、同じ様式でピーク速度について分析される。
【0273】
融像幅の決定
融像幅を決定するために、本システム上で第3の試行セッションを実行する必要があり、ここで第3の試行セッションは、光学システムにより被検者の左眼と右眼とに同時に提示される第3の種類の視覚刺激を備える。
【0274】
したがって、第1と第2の試行に加えて、第3の種類の刺激を被検者に提示する必要がある。
【0275】
融像幅は、第3の試行セッションの間で記録された両眼の注視方向から決定される。
【0276】
第3の種類の刺激は、画像又は構造物体を備え、焦点を合わせることができる。
【0277】
これにより、視標追跡システムが両眼の注視方向を記録している間、この画像は視差を増加させながら、特に連続的に視差を増加させながら被検者に表示される。画像の視差を補正可能にするために、眼球は輻輳運動を行うことが予想される。
【0278】
画像の視差は、被検者が眼の輻輳運動をもはや実行できなくなり、かつ眼の注視方向が本質的に真っすぐ又は自然な注視方向に切り替わって戻るまで増加する。
【0279】
融像幅は、被検者が視差を補正するために必要な輻輳で眼の注視方向を調整することが未だ可能である、被検者に提示された画像の最大視差に相当する。
【0280】
融像幅は、水平方向、垂直方向、及び/又はその他の方向に沿って決定することができる。融像幅は、眼球間の最大輻輳角として与えることができる。
【0281】
視力の決定
視力を決定するために、例示的な実施形態によって、以下に例示する試行セッションを実行することができる。
【0282】
視力は、第1、第2及び/又は第3の試行セッションとは無関係に決定することができる。試行セッションの番号付けは、本発明に従って実行され得る様々な試行セッションを区別するための手段としてのみ提供される。決して、これらの試行セッションを実行する順序を意味するものではない。
【0283】
したがって、視力を決定するための試行セッションは、第1、第2、又は第3の試行セッションのいずれかの前、又は後に実行することができる。
【0284】
視力を決定するための試行セッションは、被検者の左眼と右眼とに光学システムを使用して異なる試行中に提示される複数の視覚刺激を備える。好ましくは、パッチ501、特にガボールパッチは、それぞれの眼に対して視力が眼ごとに別々に決定されるように、左右に順次的な様式で提示される。
【0285】
該パッチはガボールパッチでもよい。一般に、パッチは等輝度である必要があり、有界集合の形態を有し、連結された領域をカバーし、パッチに刻まれる空間周波数に関連付けることができる周期的な空間的輝度分布を備える必要がある。したがって、輝度分布は完全にパッチによって備えられる。
【0286】
それぞれの刺激は複数のパッチ501を備え、これは均一な背景に、被検者に対して、表示システム上に好ましくは不規則なパターンで表示される。パッチは好ましくは重ならないように配置される。平均して、パッチは背景の約0.01%~20%をカバーし、一方で最小距離はパッチのサイズ又は直径の2倍である必要がある。
【0287】
これらのパッチは、均一な輝度を有する均一な、特にグレーの背景上に表示することができ、これらのパッチ501は、前記背景上のより明るい領域とより暗い領域とによって表示される。ただし、これらのパッチは本質的に背景と等輝度である必要がある。
【0288】
「等輝度」という用語は、特に、パッチの輝度をパッチ上で空間的に平均化すると、該平均化された輝度が該背景と等しいというパッチの特性を指す。
【0289】
「等色性」という用語は、特に、パッチの色をパッチ上で空間的に平均化すると、該平均化された色が該背景の色と等しいというパッチの特性を指す。
【0290】
複数のパッチはそれぞれの刺激において同時に提示される。それぞれの試行において、パッチ501は表示システム上の位置を除いて同一の特性を持つ。これらのパッチの文脈における「位置(position)及び配置(location)」は同じ性質を指す。
【0291】
パッチはその大きさ、形状、及び輝度分布によって特徴付けられ得る。特に、これらのガボールパッチは、ガボールパッチが円形物体として見えるような分散、特に等方性分散を有するガウスカーネル関数によって定義され、前記ガウスカーネル関数は、所定の方向及び所定の周期/空間周波数を有する正弦平面波によって調節される。したがって、ガボールパッチのサイズは、ガウスカーネルの分散であり得、該分散が等方的であるとき、形状は円形であり、輝度分布の周期性は周期関数、すなわち正弦平面波関数によって提供される。
【0292】
周期関数の周期は、周期関数の波長とみなすことができる。
【0293】
例えば、このようなガボールの正弦平面波の周波数は、単一分散及び三重分散(triple variance)の範囲にある。しかし、他の周波数を選択することもできる。有利なことに、空間周波数及び分散は、1つの周期がガボールパッチによって構成されるように、すなわち分散と周期とが例えば同一であるが少なくとも互いに比例するように選択することができる。正弦平面波は、ガウスカーネル関数の平均値位置でその最大振幅によりセンタリングしてもよく、又は代替的にゼロ交差によりセンタリングしてもよい。ガウスカーネルの分散とガボールパッチの正弦平面波の周期との比は一定であり得る。これにより、異なる試行中に異なるサイズのガボールパッチを表示することができ、一方でガボールパッチの外観は基本的に同じまま、スケールを拡大又は縮小することができる。
【0294】
代替的に、ガボールパッチの代わりに、リングパターンを形成する明暗の同心円のリングを備えるパッチを使用することもでき(図7A参照)、ここで各パッチの外側のリングが(外側のリングの直径によって)パッチのサイズを定義し、明るいリング及び暗いリングの数がパッチの空間周波数、又はより正確には周期関数を定義することができる。カーネル関数は円階段関数(circular step function)であってもよい。該リングは等輝度である。
【0295】
異なる試行では、リングの直径と「幅」、ひいてはリングパターンの周波数は、リングの数も輝度も変化しないように調整することができる。
【0296】
再度一般的なパッチの特性に関連して、パッチは、周期関数によって与えられる周期的なパターン又は形状を備え、前記周期関数は、サイズだけでなく、外側の輪郭と、未調節の明るさ又は輝度分布とを提供するように構成されるカーネル関数で調節される。
【0297】
周期関数は正弦波関数でもよいが、矩形波関数又は三角波関数として選択されてもよい。周期関数は1つの空間周波数のみに関連付けられ得ることに注意されたい。つまり、矩形波関数であっても、正弦波関数の重ね合わせによって数学的に表すことができ、該矩形波関数は、一意の周期を示し、これは空間周波数の周期を言及する場合に言及される。
【0298】
視力を決定するために、初期サイズのパッチ、特にガボールパッチは、所定の軌道502に沿って表示システム上で往復運動し、視標追跡システムは、パッチが表示される眼の眼球運動503を記録する。この軌道は、1つの軸又は方向に沿った往復運動を構成することができる。前記運動の速度プロファイルは、正弦波であり得、又は他の周期性であるが連続的又は滑らかな速度プロファイルであり得る。
【0299】
例えば、パッチのサイズは、最初は被検者がパッチを検出せず、したがって視線運動が記録されないように小さく選ぶことができる。発生するサッカードはいずれも終了位置に関して評価することができ、ここでパッチが表示される位置でサッカードが終了する場合、パッチは被験者によって検出又は認識されたものとしてカウントされ得る。
【0300】
被検者が動くパッチを検出できなかった場合は、パッチのサイズとパッチあたりの周期の数との比率が一定になるように、パッチのサイズを増大する一方で、周波数を逆に下げることができる。
【0301】
あるいは、又はさらに、被検者がパッチを検出し、パッチの動きに追従するほど大きなパッチのサイズで試行セッションを開始してもよく、その後の試行では、パッチの動きに眼が追従しなくなるまで、又はパッチの動きと眼の動きとの間の遅延(ラグ)又はその相関が所定の値を超えるまで、パッチは連続して小さくなり、かつ空間周波数が高くなる。
【0302】
所定の軌道は、すべての表示されたパッチについて同じである正弦波速度プロファイル502を持つ線形の、すなわち一方向に沿った動きであってもよい。例えば、軌道は、例えばより小さい、又はより大きいパッチを用いて、新しい試行が実行されるまで、2~3周期の周期運動を含むことができる。正弦波運動中の最高速度は20°/秒を超えないものとし、特に10°/秒を超えないものとする。
【0303】
パッチ501が被検者に知覚される限り、又は知覚され次第、視線は前記軌道を追従することが期待される。
【0304】
評価工程では、この眼の運動は、眼の任意のサッカード運動についてフィルタリングされ得、かつサッカードではない眼の運動(503)のみが視力について分析される。フィルタリングされた眼の運動とパッチの動きとは、相関と遅延との観点から比較される。被検者がパッチを知覚している場合、両方の動きはほぼ同じになるはずだが、例えばパッチのサイズが小さすぎるなどの理由で、被検者がパッチを知覚していない場合、眼の運動はパッチの運動に対して十分に相関しないか、又は有意に遅れる。図5Bでは、眼の運動503に対するガボールパッチの運動502を比較することからわかるとおり、この被検者はパッチを追うことができる。
【0305】
しかし、前の段落で開示したとおり、サッカード運動はその終点及び/又は始点に関して代替的又は追加的に分析することができる。終点及び/又は始点がパッチの位置と一致する場合、そのパッチは被検者に知覚されているとみなすことができる。
【0306】
通常、視力は視力表(例えば「ランドルトC」)によって推定されるが、この実施形態では、移動するパッチによって視力を代替的に決定することができる。パッチは本質的に縞模様の小さなパッチであるため、モアレ効果又は干渉の影響も受ける。しかしながら、特にガボールパッチは比較的小さいため、ディスプレイへの干渉の影響も小さい。これとは対照的に、画面全体を覆うような縞模様のものが選択される場合、画面の個別のピクセルによって表示される意図した縞模様がそのような効果を引き起こす可能性があるため、表示される縞模様は意図したものよりはるかに大きく見える可能性がある。本発明によるパッチ、特にガボールパッチではこのようなことは起こらないであろう。
【0307】
図6では、本発明によるシステム1の例示的な一実施形態の概略図を示す。システム1は、表示システム4、視標追跡システム5、レンズアセンブリ6を備える光学システム3と接続された外部コンピューター2、光学システム3を被検者の頭部8に取り付けるための固定機構7を含む。別の実施形態では、光学システムは、固定機構が必要なような、被検者の眼の前に配置されるように配置及び構成された装置に含まれてもよい。
【0308】
さらに、光学システムは、記録されたデータを外部のコンピューターに無線送信するための送信装置8を備える。送信装置8はまた、外部コンピューター2が光学システム3を制御できるように、外部コンピューター2からの指示を受信するように構成されている。光学システム3は、コンピュータープログラム命令及び記録されたデータを記憶するための非一過性のメモリストレージ(図示せず)を備えることができる。さらに、光学システム3は、メモリストレージに保存されたコンピュータープログラムを実行するように構成されるプロセッサー(図示せず)をさらに備えることができる。プロセッサーはさらに、外部コンピューター2によって制御されるように、すなわち、外部コンピューター2から指示を受信し、確認を送信し、表示システム4並びに光学システム3の視標追跡システム5を制御するように構成されている。これにより、本発明による方法のいずれの試行セッションを完全に自動化することができる。
【0309】
光学システム:
光学システム3は、被験者の眼と表示システム4との間に光を通さない密閉容積部を形成することができ、かつ光学システム3の構成要素を収容するハウジングを備える。
【0310】
さらに、光学システム3は、屈折力を調整し、かつ被検者の光学的収差を補正するためのレンズアセンブリ6を備える。レンズアセンブリ6は、その屈折力と、表示される刺激又は画像の仮想距離補正との点で調整可能である。この目的のために、レンズアセンブリ6は、球面レンズ及び円筒レンズを備えることができる。視標追跡システム5は2台のカメラからなり得、それぞれのカメラは被検者の片眼を記録するように構成及び配置されている。これらのカメラは例えば赤外線カメラである。表示システム4は、それぞれの眼に1つの、2つのディスプレイ又はディスプレイ部分を備える。
【0311】
視標追跡システム5によって記録されたデータは、人の眼に提示される刺激に時間的に関連付けることができるように、光学システム3のメモリに保存される。
【0312】
外部コンピューター:
外部コンピューター2は、ユーザー入力を受け、コンピューター2のディスプレイにデータを表示するように構成される従来のコンピューターであり得る。コンピューター2は、無線方式で情報を送受信するための送信装置も備えている。送信装置を介して外部コンピューター2を光学システム3に接続することができる。
【0313】
図7A)~C)は、パッチの様々な例示的実施形態を示す。図7A)は、3つの同心円状の高輝度リングを備える円形パッチを示し、これらのリングは、放射状の空間周波数がパッチに刻まれるように、互いに等距離に離間している。
【0314】
図7B)はガボールパッチを示し、周期関数はパッチの単一方向に沿った正弦平面波であり、平面波から3つの極値がガウスカーネル内に見える。平面波の最大強度はガウスカーネルの中心にある。
【0315】
このパッチは、均一なグレーであり、かつ「強固な」境界のない背景の中に見えなくなる。
【0316】
図7C)は、パッチの強度が一方向に沿って調節されるような正方形の前記一方向に沿った正弦平面波を有する矩形状のパッチである。パッチにははっきりと認識できる境界線がある。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】