(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】新規のT細胞受容体を作製するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240705BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240705BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240705BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12N5/10
C12Q1/02
C12N15/62 Z
C12N15/09 110
C12N15/867 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502111
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 US2022036841
(87)【国際公開番号】W WO2023287803
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524016943
【氏名又は名称】ブイクリエイト・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VCREATE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ビンビン
(72)【発明者】
【氏名】ファスト,イーサン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA07
4B063QA13
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ42
4B063QR08
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4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、概して、T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックの分野、および新規のT細胞受容体または新規のT細胞受容体ミミックを得るための方法に関する。記載した組成物および方法は、T細胞受容体および抗原の対を同定する。組成物および方法はハイスループット解析を可能にし、多くの抗原がT細胞受容体の大きなレパートリーと対合され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックを得るための方法であって、キメラT細胞受容体またはT細胞受容体ミミックのレパートリーをコードする第1の複数の核酸を含む複数の操作した免疫細胞を、その天然の機能を減少させる少なくとも1つの突然変異を含む突然変異ウイルスエンベロープタンパク質、およびリガンドライブラリーをコードする複数の核酸、ならびにバーコードおよびCRISPR編集システムと相互作用し、免疫細胞のゲノム内の部位にPegRNAの挿入を指示する第2の核酸配列を含む前記PegRNAを含む複数のレンチウイルス粒子と混合することであって、前記リガンドライブラリーからのリガンドが各レンチウイルス粒子の表面に存在する、混合すること;前記操作した免疫細胞に前記レンチウイルス粒子によって形質導入することであって、前記レンチウイルス粒子のリガンドが前記免疫細胞の前記T細胞受容体または前記T細胞受容体ミミックに結合する、形質導入すること;前記操作した免疫細胞においてレポーターをコードする核酸を発現すること;前記レポーターを発現する免疫細胞を単離すること;ならびに前記T細胞受容体または前記T細胞受容体ミミックをコードする前記核酸および前記バーコードをシークエンシングすることの工程を含む方法。
【請求項2】
前記リガンドが抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原がMHC分子に融合されるか、またはMHC分子によって提示される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージまたは単球である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記TCRミミックが、一本鎖抗原相互作用受容体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記TCRミミック受容体が、共活性化ドメインをさらに含み、前記共活性化ドメインが、CD3ζ、CD28、B7.1、CD137、CD19細胞内活性化ドメイン、CD64細胞内活性化ドメイン、CD32細胞内活性化ドメイン、CD16細胞内活性化ドメイン、CD23細胞内活性化ドメイン、またはLck活性化ドメインからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックの前記レパートリーが、対象からの複数のT細胞のゲノムDNA、または対象からの複数のT細胞から得られた複数のcDNAに由来する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックの前記レパートリーが、抗原ライブラリーに対してナイーブである対象から、または前記抗原ライブラリーの1つもしくは複数の抗原に対して免疫応答を開始した対象から得られる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックを得るための方法であって、キメラT細胞受容体またはT細胞受容体ミミックのレパートリーをコードする第1の複数の核酸を含む複数のマクロファージ細胞を、光学レポーター、および抗原ライブラリーをコードする第2の複数の核酸を含む複数の抗原提示細胞と混合することであって、前記抗原ライブラリーの抗原が抗原からのペプチドとMHC分子の融合体である、混合すること;前記複数のマクロファージ細胞においてキメラT細胞受容体の前記レパートリーをコードする前記複数の核酸を発現すること;前記複数の抗原提示細胞において前記抗原ライブラリーをコードする前記複数の核酸を発現すること;抗原提示細胞を貪食したマクロファージ細胞を単離すること;ならびに前記第1の複数の核酸と前記第2の複数の核酸をシークエンシングすることの工程を含む方法。
【請求項10】
T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックを得るための方法であって、キメラT細胞受容体またはT細胞受容体ミミックのレパートリーをコードする第1の複数の核酸を含む複数の操作した免疫細胞を、光学レポーターに結合した膜および抗原ライブラリーをコードする第2の複数の核酸を含む、複数の抗原提示細胞と混合することであって、前記抗原ライブラリーの抗原がMHC分子によって融合されるかまたは提示され、前記操作した免疫細胞の膜が核酸バーコードのセットと結び付けられ、前記抗原提示細胞の膜が核酸バーコードの第2のセットと結び付けられる、混合すること;前記複数のT細胞においてキメラT細胞受容体の前記レパートリーをコードする前記複数の核酸を発現すること;前記複数の抗原提示細胞において前記抗原ライブラリーをコードする前記複数の核酸を発現すること;前記抗原提示細胞の前記膜をトロゴサイトーシスした免疫細胞を単離することまたは前記免疫細胞の前記膜をトロゴサイトーシスした抗原提示細胞を単離すること;ならびに前記単離した免疫細胞または前記単離した抗原提示細胞からの前記第1のバーコードおよび前記第2のバーコードをシークエンシングすることの工程を含む方法。
【請求項11】
前記第1の複数の核酸が複数の異なる核酸バーコードをさらに含み、各T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックが異なるバーコードと結び付けられる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の複数の核酸が複数の異なる核酸バーコードをさらに含み、各抗原が異なるバーコードと結び付けられる、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の複数の核酸の前記シークエンシングすることが前記バーコードをシークエンシングする、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の複数の核酸の前記シークエンシングすることが前記バーコードをシークエンシングする、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
T細胞受容体の前記レパートリーが、対象からの複数のT細胞のゲノムDNAまたは対象からの複数のT細胞から得られた複数のcDNAに由来する、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原ライブラリーが、複数のがん関連抗原である、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記がん関連抗原が、KRASバリアント対立遺伝子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記KRASバリアント対立遺伝子が、G12D、G12V、G12R、G12H、G12S、G12L、Q61H、Q61K、Q61R、A11T、G13P、G13D、または二重突然変異G12DおよびQ61Hである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のがん関連抗原が、メソテリン、ジシアロガングリオシド(GD2)、Her-2、MUC1、GPC3、EGFRVIII、CEA、CD19、EGFR、PSMA、GPC2、葉酸受容体β、IgG Fc受容体、PSCA、PD-L1、EPCAM、Lewis Y抗原、L1CAM、FOLR、CD30、CD20、EPHA2、PD-1、C-MET、ROR1、CLDN18.2、NKG2D、CD133、TSHR、CD70、ERBB、AXL、細胞死受容体5、VEGFR-2、CD123、CD80、CD86、TSHR、ROR2、CD147、カッパIGG、IL-13、MUC16、IL-13R、NY-ESO-1、IL13RA2、DLL3、FAP、LMP1、TSHR、BCMA、NECTIN-4、MG7、AFP(アルファ-フェトプロテイン)、GP100、B7-H3、Nectin-4、MAGE-A1、MAGE-A4、MART-1、HBV、MAGE-A3、TAA、GP100、チログロブリン、EBV、HPV E6、PRAME、HERV-E、WT1、GRAS G12V、p53、TRAIL、MAGE-A10、HPV-E7、KRAS G12D、MAGE-A6、CD19、BCMA、CD22、CD123、CD20、CD30、CD33、CD138、CD38、CD7、SLAMF7、IGG FC、MUC1、Lewis Y抗原、CD133、ROR1、FLT3、NKG2D、カッパ軽鎖、CD34、CLL-1、TSLP、CD10、PD-L1、CD44V6、EBV、CD5、GPC3、CD56、インテグリンB7、CD70、MUCL、CKIT、CLDN18.2、TRBC1、TAC1、CD56、CD4、CD2、CD18、CD27、CD37、CD72、CD79A、CD79B、CD83、CD117、CD172、ERBB3、ERBB4、DR5、HER2、CS1、IL-1RAP、ITGB7、SLC2A14、SLC4A1、SLC6A11、SLC7A3、SLC13A5、SLC19A1、SLC22A12、SLC34A1、slc45A3、SLC46A2、Fra、IL-13Ra2、ULBP3、ULBP1、CLD18、NANOG、CEACAM8、TSPAN16、GLRB、DYRK4、SV2C、SIGLEC8、RBMXL3、HIST1HIT、CCR8、CCNB3、ALPPL2、ZP2、OTUB2、LILRA4、GRM2、PGG1、NBIF3、GYPA、ALPP、SPATA19、FCRLI、FCRLA、CACNG3、UPK3B、12UMO4、MUC12、HEPACAM、BPI、ATP6V0A4、HMMR、UPK1A、ADGRV1、HERC5、C3AR1、FASLG、NGB、CELSR3、CD3G、CEACAM3、TNFRSFBC、MS4AB、S1PR5、EDNRB、SCN3A、ABCC8、ABCB1、ANO1、KCND2、HTR4、CACNB4、HTR4、CNR2、26LRB、EXOC1、ENTPP1、ICAM3、ABCGB、SCN4B、SPN、CD68、ITGAL、ITGAM、SCTR、CYYR1、CLCN2、SLARA3、またはJAG3を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記がん関連抗原が腫瘍ネオ抗原である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記抗原ライブラリーが複数の感染性疾患関連抗原である、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記感染性疾患が細菌病原体によって引き起こされる、請求項25に記載の方法。
【請求項23】
前記感染性疾患がウイルス病原体によって引き起こされる、請求項25に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫細胞がT細胞、好中球、マクロファージまたは単球である、請求項9~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記TCRミミックが、一本鎖抗原相互作用受容体を含む、請求項9~24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の背景
免疫細胞は、病原体の防御、炎症の制御、およびがん細胞の除去を含む、多くの重要な免疫機能に関与する不均一な細胞のグループである。免疫細胞の主要なクラスは、T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、および樹状細胞を含む。それらは機能および形態が異なるが、免疫細胞は全てそれらの表面受容体によって正または負に制御される。
【背景技術】
【0002】
T細胞受容体(TCR)は、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識を担うTリンパ球(すなわち、T細胞)の表面に見出される分子である。TCRは、2つの異なるタンパク質鎖から構成されるヘテロ二量体である。ほとんどのT細胞(約95%)では、これら2つのタンパク質鎖はアルファ鎖およびベータ鎖と呼ばれる。しかしながら、少ないパーセンテージのT細胞(約5%)では、これら2つのタンパク質鎖はガンマおよびデルタ(ガンマ/デルタ)鎖と呼ばれる。
【0003】
ヒトは、適応免疫系の主要な成分を提供する数十億のT細胞受容体を有し、T細胞受容体応答は、ウイルス感染、がん、および自己免疫を含む疾患からの保護に重要な寄与を提供することが実証された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定の抗原のためのT細胞受容体を発見する能力には大きな関心がある。そのようなT細胞受容体は、研究ツールとして、ならびに診断および治療適用のために有用である。しかしながら、そのような有用なT細胞受容体の同定は困難であり、また同定された後、これらのT細胞受容体は、それらがヒトでの治療適用に好適である前に大きな再設計を必要とすることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一態様では、本開示は、ある特定のリガンドに結合する受容体または受容体ミミック(例えば、キメラ受容体)を同定するための組成物および方法に関する。本明細書に記載の組成物および方法は、ハイスループット解析を可能にし得る。受容体(例えば、免疫細胞受容体)の高い多様性のレパートリーは、リガンドのライブラリーに対してスクリーニングされ、互いに相互作用する受容体とリガンドの対を同定することができる。レパートリーの各受容体をコードする各核酸を、核酸によってコードされる受容体を同定するバーコードと結び付けることができる。各リガンドをコードする各核酸も、核酸によってコードされるリガンドを同定するバーコートと結び付けることができる。
【0006】
一態様では、本開示は、ある特定のリガンドに結合する免疫細胞受容体または免疫細胞受容体ミミック(例えば、キメラ抗原受容体)を同定するための組成物および方法に関する。本明細書に記載の組成物および方法は、ハイスループット解析を可能にし得る。免疫細胞受容体(例えば、T細胞受容体)の高い多様性のレパートリーは、リガンド(例えば、抗原)のライブラリーに対してスクリーニングされ、互いに相互作用する受容体とリガンドの対を同定することができる。レパートリーの各受容体をコードする各核酸を、核酸によってコードされる受容体を同定するバーコードと結び付けることができる。各リガンドをコードする各核酸も、核酸によってコードされるリガンドを同定するバーコートと結び付けることができる。
【0007】
広範な免疫細胞および/または免疫細胞受容体が、本開示に記載の方法によって使用され得る。T細胞では、適用可能な受容体は、アルファ ベータT細胞受容体、ガンマ デルタT細胞受容体、CD43、CD44、CD45、LFA1、CD4、CD8、CD3、LAT、CD27、CD96、CD28、TIGIT、ICOS、BTLA、HVEM、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、SLAM、CD2、2B4、TIM1、TIM2、TIM3、CD226、CD160、LAG3、LAIR1、CD112R、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2を含む。NK細胞では、適用可能な受容体は、TRAIL、CD16、NKp30ab、NKGC、NKG2D、2B4、DNAM-1、NKG2A、KIR、CD137、OX40、CD27を含む。B細胞では、適用可能な受容体は、Siglec-10、LILRB/PIR-B、CD31、FCγRIIIB、CD19、CD20、CD22、CD25、CD32、CD40、CD47、CD52、CD80、CD86、CD267、CD268、CD268、B細胞受容体、抗体、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEを含む。樹状細胞では、適用可能な受容体は、DNGR-1、MICL、CLEC1、CLEC12B、LOX1、マンノース受容体、DC-SIGN、L-SIGN、SIGN-R1、LSECtin、CIRE、Langerin、MGL、スカベンジャー受容体(SR)、DC-ASGPR、DC-STAMP、CD80/86、TLR、FIRE、FcR、DEC205、BDCA-2、Dectin-2、DCIR、およびケモカイン受容体を含む。マクロファージでは、適用可能な受容体は、CD300a、TREM2/DAP12、Bal-1、TIM4、CR3、SCARF1、CD36、MARCO、スカベンジャー受容体A1、RAGE、Axl、Mer、Tyro3、CD93、Stabilin2、DNGR-1、SIRPを含む。好中球では、適用可能な受容体は、CXCR1、FCγRIIIB、FCγRII、CR3、CR1、C3aR、TNFR、TLR2/6、C5aRを含む。他の受容体(例えば、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル連結(イオンチャネル型)受容体、および/または酵素連結受容体)も、本開示の方法および組成物で使用され得る。本明細書で使用され得る任意の免疫細胞は、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、および/または好中球を含む。
【0008】
一態様では、上記の受容体のレパートリーは、食細胞、例えばマクロファージ、樹状細胞、好中球、および/またはTHP-1細胞などに操作により導入され得る。目的の受容体は、それらの内在性細胞内活性化ドメインによってまたは食作用関連細胞内活性化ドメイン(例えば、Fc受容体細胞内ドメインおよびCD19細胞内ドメイン)によって操作され得る。受容体の細胞外ドメインは、目的の受容体の細胞外ドメインの野生型または改変バージョンであり得る。
【0009】
一態様では、受容体のレパートリーは、免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞等)に操作により導入され得る。受容体のレパートリーは、免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞等)の表面で発現され、トロゴサイトーシスを使用して、受容体を受容体の抗原/リガンドと分離する。ほとんどの免疫細胞は、トロゴサイトーシスが可能であり、例えば、T細胞、マクロファージ、B細胞、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、および樹状細胞を含む。目的の受容体は、それらの内在性細胞内活性化ドメインによってまたはトロゴサイトーシス関連細胞内活性化ドメイン(例えば、Fc受容体細胞内ドメインおよびTCR細胞内ドメイン)によって導入され得る。受容体の細胞外ドメインは、目的の受容体の野生型または改変バージョンであり得る。
【0010】
目的の受容体の抗原/リガンドは、ペプチド、MHC-ペプチド複合体、断片、キメラ、または全タンパク質であり得る。抗原/リガンドは、炭水化物、脂肪酸もしくは脂質、または小分子であってもよい。抗原/リガンドは、共有結合または非共有結合によって抗原提示細胞表面と会合させ得る。抗原/リガンドがポリペプチドである場合、それらは、それらの天然の膜貫通ドメインによりまたは合成の膜貫通ドメインにより、抗原提示細胞表面に係留され得る。合成の膜貫通ドメインは、合成の膜貫通ドメインDNA配列を、抗原/リガンドの所望の部分、一部または全体をコードするDNA配列と作動可能に連結するようにDNA配列を操作することによって抗原/リガンド細胞外ドメインに融合され得る。例示的な合成の膜貫通ドメインは、CD2、CD3d、CD3g、CD3z、CD4、CD8A、CD8B、CD22、CD27、CD28、CD40、CD79a、CD79b、CD80、CD84、CD86、CD137、CD244、CRACC、CRTAM、CLTA-4、MHC-I、MHC-II、血小板由来増殖因子受容体、FCGR1A、FCGR2A、FCG2B、FCGR3A、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、FCRL6、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、LAG3、GITR、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、TLR、SLAMF、LILRB1、LILRB2、NKG2A、NKG2C、NKG2D、TIGIT、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、または免疫グロブリン由来の野生型または改変膜貫通ドメインを含む。抗原/リガンドのレパートリーは、作製され、抗原/リガンド提示細胞に操作により導入され得る。場合により、抗原/リガンドライブラリーのバリエーションは、(例えば、無作為に、または部位特異的に)目的の抗原/リガンドの所望の位置へと遺伝子突然変異を導入することによって作製され得る。遺伝子突然変異は、DNA断片の置換、欠失、挿入、および再編成であり得る。選択の特異的遺伝子突然変異は、無作為に生成されるか、目的の領域に富化されるか(例えば、リガンドの相互作用ドメイン)、または計算アルゴリズムによって推奨されてもよい。推奨される遺伝子突然変異戦略への計算アルゴリズムの例は、タンパク質構造解析、計算ドッキング、分子動態シミュレーション、回帰、統計ベースの分類、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、および神経ネットワークを含む。
【0011】
免疫細胞受容体または免疫細胞受容体ミミックの抗原/リガンド結合部分は、Fc受容体の細胞内ドメインに融合され得る。免疫細胞受容体ミミックは、MHC::抗原複合体と結合および相互作用することができる抗体または抗体断片を指す(academic.oup.com/abt/article/2/1/22/5290150)。場合により、これらのキメラ受容体は、Fc受容体の膜貫通ドメインを含み得るか、またはキメラ受容体は異なる膜貫通ドメインを有し得る。これらのキメラ受容体は、免疫細胞受容体の結合特異性を有し、マクロファージを活性化して、免疫細胞受容体が結合した抗原を提示する標的を貪食することができる。キメラTCRを有するマクロファージ/単球細胞は、CD28、CD137、CD3、B7.1、CD19細胞内活性化ドメイン、CD64細胞内活性化ドメイン、CD32細胞内活性化ドメイン、CD16細胞内活性化ドメイン、CD23細胞内活性化ドメイン、またはLck活性化ドメインの1つまたは複数を発現するようにも操作され得る。これらのさらなる改変は、キメラ免疫受容体Fc融合体に、例えば共刺激ドメインとして含まれ得るか、または単球/マクロファージ細胞で個々に発現され得る。操作した単球/マクロファージが適切な抗原を提示する細胞を貪食する場合、これは、そのバーコードを有する免疫細胞受容体、およびそのバーコードを有する抗原/リガンドを有するマクロファージを産生し得る。そのような個々のマクロファージのシークエンシングは、免疫細胞受容体抗原/リガンド対を同定することができる。
【0012】
T細胞受容体またはT細胞受容体ミミックの抗原結合部分は、Fc受容体の細胞内ドメインに融合され得る。T細胞受容体ミミックは、MHC::抗原複合体と結合および相互作用することができる抗体または抗体断片を指す(academic.oup.com/abt/article/2/1/22/5290150)。場合により、これらのキメラ受容体は、Fc受容体の膜貫通ドメインを含み得るか、またはキメラ受容体は異なる膜貫通ドメインを有し得る。これらのキメラ受容体は、T細胞受容体の結合特異性を有し、マクロファージを活性化して、T細胞受容体が結合した抗原を提示する標的を貪食することができる。キメラTCRを有するマクロファージ/単球細胞は、CD28、CD137、CD3、B7.1、CD19細胞内活性化ドメイン、CD64細胞内活性化ドメイン、CD32細胞内活性化ドメイン、CD16細胞内活性化ドメイン、CD23細胞内活性化ドメイン、またはLck活性化ドメインの1つまたは複数を発現するようにも操作され得る。これらのさらなる改変は、キメラTCR-Fc融合体に、例えば共刺激ドメインとして含まれ得るか、または単球/マクロファージ細胞で個々に発現され得る。操作した単球/マクロファージが適切な抗原を提示する細胞を貪食する場合、これは、そのバーコードを有するT細胞受容体、およびそのバーコードを有する抗原を有するマクロファージを産生し得る。そのような個々のマクロファージのシークエンシングは、T細胞受容体-抗原対を同定することができる。
【0013】
抗原/リガンドライブラリーは、抗原提示細胞(例えば、K562細胞株)で作製することができ、抗原またはリガンドは、場合により、バーコードを有する抗原もしくはリガンドをコードする核酸、または抗原/リガンドポリペプチドおよびバーコードに融合した組換えMHCタンパク質によってコードされ得る。抗原が、非ポリペプチド抗原である場合、抗原提示細胞は、抗原/リガンドを作製するように操作され、それを抗原提示細胞の表面に提示することができる。あるいは、抗原/リガンドは、抗原提示細胞の外で作製し、次いで抗原提示細胞の表面と会合させることができる。提示され得る各抗原/リガンドからのポリペプチド断片は、抗原-MHC結合実験、マススペクトロメトリー実験、全長タンパク質配列のスライディングウィンドウ(ウィンドウあたり8~25)、またはコンピューターアルゴリズムによって提示可能と予測される公知のタンパク質の断片によって同定され得る。抗原由来のこれらの提示可能なペプチド断片は、適切なMHC分子と融合され、提示される抗原のライブラリーを作製することができる。抗原提示細胞は、K562細胞株(ヒト不死化骨髄性白血病細胞株)または操作したHEK293細胞株であり得る。MHC-抗原ポリペプチド融合体を、K562細胞に導入して、抗原ペプチドのライブラリーを作製することができる。場合により、K562細胞は、光学レポーター、例えばGFPによって操作され得る。
【0014】
マクロファージ細胞(例えば、急性単球性白血病由来のヒト単球細胞株であるTHP-1細胞)の免疫細胞受容体レパートリーは、K562細胞の抗原ライブラリーと混合され得る。抗原ペプチド:MHC融合体(または抗原/リガンド)に結合する免疫受容体キメラ受容体または免疫細胞受容体ミミックを有するマクロファージ細胞(例えば、THP-1細胞)は、適切なペプチド:MHC融合体(または抗原/リガンド)を提示するK562細胞を貪食することができる。貪食したK562細胞を有するマクロファージ細胞(例えば、THP-1細胞)を単離し、個々にシークエンシングして、免疫細胞受容体および抗原/リガンドと結び付けられるバーコードを同定することができる。K562細胞がレポーターを含む場合、そのレポーターは、例えば、フローサイトメトリーを使用して、K562細胞を貪食したマクロファージ細胞(例えば、THP-1細胞)のスクリーニングに使用され得る。あるいは、抗原:MHC融合体および免疫受容体キメラ受容体を直接シークエンシングして、免疫細胞受容体および抗原/リガンド対を同定することができる。
【0015】
マクロファージ細胞(例えば、急性単球性白血病由来のヒト単球細胞株であるTHP-1細胞)のT細胞受容体レパートリーは、K562細胞の抗原ライブラリーと混合され得る。抗原ペプチド:MHC融合体に結合するTCRキメラ受容体またはT細胞受容体ミミックを有するマクロファージ細胞(例えば、THP-1細胞)は、適切なペプチド:MHC融合体を提示するK562細胞を貪食することができる。貪食したK562細胞を有するマクロファージ細胞(例えば、THP-1細胞)を単離し、個々にシークエンシングして、T細胞受容体および抗原と結び付けられるバーコードを同定することができる。K562細胞がレポーターを含む場合、そのレポーターは、例えば、フローサイトメトリーを使用して、K562細胞を貪食したマクロファージ細胞(例えば、THP-1細胞)のスクリーニングに使用され得る。あるいは、抗原:MHC融合体およびTCRキメラ受容体を直接シークエンシングして、TCRおよび抗原対を同定することができる。
【0016】
一態様では、キメラTCRを有するマクロファージ/単球/樹状細胞/好中球による貪食は、マクロファージ/単球/樹状細胞/好中球(最終的に分化した細胞ではない場合)、例えば、マクロファージ/単球の分化、T細胞マクロファージハイブリドーマを使用する分化の刺激、CD47経路のブロッキング、またはCD24経路のブロッキングによって促進され得る。
【0017】
あるいは、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、およびマクロファージを含む多くの免疫細胞は、細胞接触依存的および活性化依存的方法で、細胞含有物および膜の一部分を標的細胞と急速に交換する(https://www.mdpi.com/2073-4409/10/5/1255)。この現象は、「トロゴサイトーシス」と呼ばれる。特に、T細胞は、抗原を提示する提示細胞によって提示された抗原(複数可)によって活性化された場合、トロゴサイトーシスを受ける(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17406507/、https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10542149/)。2つの細胞間のトロゴサイトーシスによる細胞膜交換は、二方向性である。この開示は、トロゴサイトーシスおよび膜結合RNA/DNAバーコードを使用して、T細胞のライブラリーと抗原提示細胞のライブラリーの間で抗原/リガンドまたは受容体(例えば、T細胞受容体)情報を移行させる方法を記載する。抗原提示細胞(APC)または細胞膜のいずれかに抗原/リガンドバーコードまたは受容体(例えば、TCR)バーコードDNAまたはRNAを係留することにより、活性化によってトリガーされたトロゴサイトーシスは、下流のシークエンシング解析のため、細胞間でバーコードDNAまたはRNAを自然に移行させる。
【0018】
抗原/リガンドライブラリーは、抗原ポリペプチド(または抗原/リガンド)およびバーコードに融合した組換えMHCタンパク質をコードする核酸を含む、抗原提示細胞(例えば、K562細胞株)で作製することができる。提示され得る各抗原からのポリペプチド断片は、抗原-MHC結合実験、マススペクトロメトリー実験、全長タンパク質配列のスライディングウィンドウ(ウィンドウあたり8~25)、またはコンピューターアルゴリズムによって提示可能と予測される公知のタンパク質の断片によって同定され得る。抗原由来のこれらの提示可能なペプチド断片を、適切なMHC分子と融合して、提示される抗原のライブラリーを作製することができる。抗原提示細胞は、例えば、K562細胞株(ヒト不死化骨髄性白血病細胞株)または操作したHEK293細胞株を含む任意の抗原提示細胞であり得る。MHC-抗原ポリペプチド融合体を、K562細胞に導入して、抗原ペプチドのライブラリーを作製することができる。抗原DNAまたはRNAバーコードを細胞膜に係留するため、K562細胞または類似のAPCは、膜結合DNA結合またはRNA結合タンパク質(複数可)およびその対応する膜結合DNA結合またはRNA結合タンパク質(複数可)に親和性を有する抗原バーコードDNAまたはRNAを発現する。DNA結合またはRNA結合タンパク質(複数可)は、MHCタンパク質に融合し得るか、またはMHCタンパク質に非依存的であり得る。抗原バーコードは、MHCタンパク質に融合し得るか、またはMHCタンパク質に非依存的であり得る。場合により、K562細胞は、光学レポーター、例えばGFPによって操作されるか、または細胞膜色素、例えばDilによって染色され得る。
【0019】
T細胞ライブラリーは、免疫細胞受容体(例えば、T細胞受容体)の多様なセットを有するT細胞を含有し得る。上記の抗原提示細胞と類似して、T細胞は、膜結合DNA結合またはRNA結合タンパク質(複数可)およびその対応する膜結合DNA結合またはRNA結合タンパク質(複数可)に親和性を有する免疫受容体(例えば、TCR)バーコードDNAまたはRNAを発現することができる。DNA結合またはRNA結合タンパク質(複数可)は、免疫受容体タンパク質(例えば、TCR)に融合し得るか、または免疫受容体タンパク質(例えば、TCR)に非依存的であり得る。抗原バーコードは、免疫受容体タンパク質(例えば、TCR)に融合し得るか、または免疫受容体タンパク質(例えば、TCR)に非依存的であり得る。場合により、T細胞(複数可)は、光学レポーター、例えば膜結合GFPによって操作されるか、または細胞膜色素、例えばDilによって染色され得る。操作したT細胞が適切な抗原を提示する細胞と相互作用する場合、それはトロゴサイトーシスにより細胞膜の一片を噛み切ることによりAPC表面に提示されたバーコードを捕捉し得る。活性化T細胞は、トランスフェクト/形質導入した蛍光タンパク質、膜結合色素もしくはAPC表面マーカーを含む抗原提示細胞膜マーカーによるか、またはCD11a、CD69、CD70、CD71、CD25、CD26、CD27、CD28、CD30、CD40L、CD86、CD134、CD154、PD1、IL-2、NKG2D、TNF-アルファ、IFN-ガンマまたはHLA-DRを含むT細胞活性化マーカーにより、ソートまたは富化され得る。トロゴサイトーシスにより、活性化T細胞は、対応する抗原のDNAまたはRNAバーコードを含有する。そのようなT細胞のDNAまたはRNAシークエンシングは、免疫細胞受容体配列(例えば、TCR)、抗原配列およびT細胞受容体-抗原関係を同定することができる。
【0020】
操作した細胞ライブラリー細胞(例えば、Jurkat)の免疫細胞受容体レパートリー(例えば、TCRレパートリー)は、K562細胞の抗原ライブラリーと混合され得る。受容体レパートリー細胞は、適切な抗原/リガンド(例えば、ペプチド-MHC融合体)を提示するK562細胞と相互作用し、トロゴサイトーシスによるバーコード移行を生じる。APC(例えば、K562細胞)によって活性化された細胞を単離し、個々にシークエンシングして、受容体(例えば、TCRなどの免疫細胞受容体)および抗原と結び付けられるバーコードを同定することができる。K562細胞がレポーターを含む場合、そのレポーターは、フローサイトメトリーまたは磁気ビーズ富化を使用して、K562細胞と相互作用した受容体細胞(例えば、Jurkat細胞)のスクリーニングに使用され得る。ソートしたT細胞が両バーコードを含有するので、抗原バーコードおよび受容体(例えば、TCR)/受容体ミミック(例えば、CAR)バーコードを、直接シークエンシングして、受容体および抗原対を同定することができる。
【0021】
同様に、受容体-抗原/リガンド相互作用対は、トロゴサイトーシス後に受容体細胞をシークエンシングすることによっても抽出され得る。抗原/リガンド細胞は、光学レポーター、例えば膜結合GFPを有するように操作されるか、または色素、例えばDilによって染色され得る。受容体細胞(例えば、K562細胞)は、抗原/リガンド細胞とのトロゴサイトーシス事象を経験し得、光学レポーターまたは色素を有する抗原/リガンド細胞膜の断片を保持し得る(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30700903/)。そのようなK562細胞は、フローサイトメトリーによって選別されるか、または膜結合光学レポーターもしくは色素に基づいて磁気ビーズによって富化され得る。ソートしたAPC/K562細胞が両バーコードを含有するので、抗原バーコードおよび受容体(例えば、TCR)/受容体ミミック(例えば、CAR)バーコードを、直接シークエンシングして、受容体(例えば、TCR)および抗原/リガンド対を同定することができる。
【0022】
一態様では、抗原/リガンドは、その天然の機能を減少させる少なくとも1つの突然変異を含む突然変異ウイルスエンベロープ糖タンパク質、pegRNA(プライムエディティングガイドRNA)をコードする核酸、および構造:S-ETD-LGD-IRES-R(ここで、Sはシグナル配列をコードし、ETDは細胞外標的化ドメインをコードし;LGDは抗原/リガンドをコードし、IRESは配列内リボソーム侵入部位をコードし、Rはレポーター(例えば、蛍光タンパク質または抗生物質耐性などの選択マーカー)をコードする)を含む非ウイルス膜結合タンパク質をコードする核酸を有するレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)に操作により導入され得る。IRESおよびRは場合によるものであり、核酸はS-ETD-LGDをコードし得る。IRES配列は、同様に1つのプロモーターによって2つの遺伝子の共発現を可能にする2A自己切断ペプチド配列(T2A、P2A、F2A、およびE2A)によって置換されてもよい。抗原/リガンドのレトロウイルスライブラリーと対合される受容体提示細胞は、受容体をコードする核酸に隣接してかまたは近くにpegRNAの挿入部位を含むように操作される。pegRNA(プライムエディティングガイドRNA)は、受容体をコードする核酸の近くにかまたは隣接して抗原/リガンドに対応するバーコードを挿入する。レトロウイルスによって形質導入された細胞のシークエンシングは、受容体およびリガンド対を同定する配列の文脈でこのバーコードを同定するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
様々な実施形態が記載される前に、本開示の教示が、記載される特定の実施形態に限定されず、当然変更することができることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけであり、本教示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0024】
他に規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する当技術分野の業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等しい任意の方法および材料は、本教示の実施または試験でも使用され得るが、一部の例示的な方法および材料はここに記載される。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が他に明確に指定しない限り、複数の参照対象を含むことに注意すべきである。特許請求の範囲は、任意の選択要素を除外するようにドラフトされ得ることもさらに注意されたい。したがって、この記載は、請求項要素の引用または「ネガティブな」限定の使用と関連して、「単に(solely)」、「のみ(only)」等のような除外用語の使用のための先行詞として機能することを意図する。物質の濃度またはレベルに関して与えられた数値制限は、文脈が他に明確に指定しない限り、およそであることが意図される。したがって、濃度が、(例えば)10マイクログラム(「μg」)であると示される場合、濃度は、少なくともおよそまたは約10μgであると理解されることが意図される。
【0026】
本記載に含まれる組換え技術は、例えば、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学の従来の技術を含み、組換えDNAが使用される。例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、SambrookおよびRussell編(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版;the series Ausubelら編(2007)Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.、N.Y.);MacPhersonら(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press);MacPhersonら(1995)PCR 2:A Practical Approach;HarlowおよびLane編(1999)Antibodies,A Laboratory Manual;Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique、第5版;Gait編(1984)Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;HamesおよびHiggins編(1984)Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization;HamesおよびHiggins編(1984)Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986));Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;MillerおよびCalos編(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides編(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;MayerおよびWalker編(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press、London);ならびにHerzenbergら編(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunologyを参照されたい。
【0027】
本開示を読んだ当業者には明らかであるように、本明細書に記載および例示された個々の実施形態のそれぞれは、本教示の範囲または精神を逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に区別されるかまたはそれらと組み合わせられ得る別個の成分および特徴を有する。任意の列挙した方法は、列挙した事象の順序で、または論理上可能である任意の他の順序で実行され得る。
【0028】
定義
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、適切な条件下で、特定の免疫応答を誘導する、およびその応答の産物、例えば特定の抗体もしくは特異的に感作したTリンパ球、またはその両方と反応することができる物質を指す。抗原は、可溶性物質、例えば毒素、外来タンパク質、突然変異タンパク質、自己タンパク質、または粒子、例えば細菌および組織細胞であってもよいが、抗原決定基(エピトープ)として公知のタンパク質または多糖類分子の一部のみが抗体またはリンパ球の特定の受容体と結合する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語、TCRの「結合特異性」は、TCRが結合する抗原の同一性、好ましくはTCRが結合し、T細胞を活性化するエピトープの同一性を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」または「CDR」は、抗原または抗原:MHC複合体のエピトープへの結合を主に担うTCRの領域を指す。CDRは、超可変領域とも呼ばれる。各TCRのCDRは、典型的には、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、N末端から開始して逐次的に番号付けられ、典型的には、特定のCDRが位置する鎖によっても同定される。異なる特異性を有するTCR(すなわち、異なる抗原の異なる結合部位)は、異なるCDRを有する。CDR内の限られた数のアミノ酸位置のみが、抗原結合に直接関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、特定のB細胞および/またはT細胞が応答する抗原またはハプテン上の部位を指す。用語は、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能にも使用される。エピトープは、抗体の可変領域結合ポケットと相互作用する結合相互作用を形成することができる抗原または他の巨大分子の部分を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「異種」は、ポリヌクレオチドの部分を参照して使用される場合、核酸が、自然では互いに同じ関係で通常見出されない2つまたはそれよりも多いサブ配列を含むことを示す。例えば、核酸は、典型的には組換えにより産生され、例えば、新しい機能性核酸を作製するように配置された無関係の遺伝子からの2つまたはそれよりも多い配列を有する。同様に、「異種」ポリペプチドまたはタンパク質は、自然では互いに同じ関係で見出されない2つまたはそれよりも多いサブ配列を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明のベクターが導入、発現および/または増やされ得る原核または真核細胞を指す。微生物宿主細胞は、細菌、酵母、顕微鏡的な真菌、ならびに真菌および粘菌のライフサイクルの顕微鏡的段階を含む、原核または真核微生物の細胞である。典型な原核宿主細胞は、様々な株の大腸菌(E.coli)を含む。典型的な真核宿主細胞は、酵母もしくは糸状菌、または哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞、マウスNIH 3T3線維芽細胞、ヒト胎児由来腎臓193細胞、または齧歯類骨髄腫もしくはハイブリドーマ細胞である。
【0034】
本明細書で使用される場合、非ヒトタンパク質(例えば、マウスTCR)の用語「ヒト化」形態は、タンパク質の非ヒト相同体由来の最小配列を含有するキメラタンパク質である。ほとんどの部分では、ヒト化タンパク質は、レシピエントの可変領域残基が非ヒト種(ドナーTCR)、例えば所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類由来の可変領域残基(例えば、CDR)によって置き換えられるヒトTCRである。
【0035】
本明細書で使用される場合、組成物またはワクチンに対する用語「免疫学的応答」は、目的の組成物またはワクチンに対する細胞および/または抗体媒介性免疫応答の宿主での発生である。通常、「免疫学的応答」は、限定はされないが、1つまたは複数の以下の効果を含む:目的の組成物またはワクチンに含まれる抗原(複数可)に特異的に向けられる抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞の産生。好ましくは、宿主は、新しい感染に対する耐性が増強され、および/または疾患の臨床的重症度が低減されるように、治療的または保護的な免疫学的応答のいずれかを示す。そのような保護は、感染した宿主によって通常示される症状の減少または喪失、より早い回復時間および/または感染した宿主におけるウイルス力価の低下のいずれかによって実証される。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、核酸またはポリペプチドの天然源に存在する他の核酸またはポリペプチドからだけでなく、ポリペプチドからも分離された核酸またはポリペプチドを指し、好ましくは、(もしある場合)溶媒、緩衝液、イオン、または通常同じ溶液中に存在する他の成分のみの存在下で見出される核酸またはポリペプチドを指す。用語「単離された」および「精製された」は、それらの天然源に存在する核酸もポリペプチドも包含しない。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「哺乳動物」は、温血脊椎動物を指し、その全てが毛を有し、子供に授乳する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「MHC分子」、「MHCタンパク質」または「HLAタンパク質」は交換可能に使用され、特に、タンパク質抗原のタンパク質切断から生じ、潜在的なT細胞エピトープを示すペプチドに結合し、それらを細胞表面に輸送し、そこで特定の細胞、特に、ナイーブT細胞、細胞傷害性Tリンパ球、調節性T細胞、またはヘルパーT細胞にそれらを示すことができるタンパク質を意味すると理解されるべきである。ゲノムの主要組織適合性複合体は、その遺伝子産物が細胞表面で発現され、内在性および/または外来抗原の結合および提示に重要であり、したがって免疫学的プロセスを制御するための遺伝子領域を含む。主要組織適合性複合体は、異なるタンパク質をコードする2つの遺伝子群:MHCクラスIおよびMHCクラスIIの分子に分類される。2つのMHCクラスの分子は、異なる抗原起源に特化される。MHCクラスIの分子は、内在的に合成された抗原、例えば、ウイルスタンパク質および腫瘍抗原を典型的には提示するが、これらに限定されない。MHCクラスIIの分子は、外因性起源、例えば細菌産物から生じるタンパク質抗原を提示する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「天然に存在する」は、成分が、組換え手段によって変更されておらず、生物、例えばナイーブ細胞または抗原に曝露された細胞から作出された抗体ライブラリーに前から存在する単一遺伝子によってコードされることを意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「ポリペプチド断片」は、本明細書で交換可能に使用されて、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは、線状または分岐状であってもよく、改変アミノ酸またはアミノ酸類似体を含んでもよく、アミノ酸以外の化学部分によって中断されてもよい。用語は、自然にまたは介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは改変、例えばラベリングまたは生物活性成分とのコンジュゲーションによって改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「精製された」は、示された核酸またはポリペプチドが、他の生物学的巨大分子、例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質等の実質的に非存在下で存在することを意味する。一実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、存在する示された生物学的巨大分子の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99.8重量%を構成するように精製される(しかし、水、緩衝液、および他の小分子、特に1000ダルトンより小さい分子量を有する分子が存在し得る)。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「組換え核酸」は、通常自然では見出されない形態の核酸を指す。すなわち、組換え核酸は、自然では核酸に隣接しないヌクレオチド配列に隣接するか、または通常自然では見出されない配列を有する。組換え核酸は、制限エンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって、あるいはポリメラーゼ連鎖反応のような技術を使用して最初にin vitroで形成され得る。組換え核酸が作製され、宿主細胞または生物に再導入されると、それは、非組換えにより、すなわちin vitro操作ではなく宿主細胞のin vivoでの細胞機構を使用して複製すると理解されるが、そのような核酸は、組換えにより産生されると、続いて非組換えにより複製されるが、依然として本開示の目的のための組換え体であると考えられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「組換えポリペプチド」は、組換え核酸から発現されたポリペプチド、またはin vitroで化学的に合成されたポリペプチドを指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「レパートリー」または「ライブラリー」は、抗体、T細胞受容体、または抗体断片、例えばFab、scFv、Fd、LC、VH、もしくはVL、または可変領域のサブ断片、例えば、ヒトドナーに存在する、抗体遺伝子の自然アンサンブル、または「レパートリー」から得られる、ならびに末梢血および脾臓の細胞から主に得られる、例えば交換カセットをコードする遺伝子のライブラリーを指す。一部の実施形態では、ヒトドナーは、「非免疫」、すなわち感染の症状を提示しない。現在の発明では、ライブラリーまたはレパートリーは、所与のV領域の部分の交換カセットであるメンバーを含むことが多い。
【0045】
本明細書で使用される場合、「一本鎖TCR」は、2つのTCR鎖がTCRを形成することができるように配置された、TCRのアルファ鎖とベータ鎖の両方、またはTCRのガンマ鎖とデルタ鎖の両方を有する単一のポリペプチド鎖である。用語は、限定はされないが、リンカー有りまたは無しで、共有結合的に連結しているTCRアルファおよびTCRベータまたはTCRガンマおよびTCRデルタ可変鎖断片をさらに含む。一本鎖TCRは、場合により、単独でまたはCD28シグナル伝達ドメインと組み合わせて、CD3またはCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「T細胞」は、通常胸腺で発生する造血細胞であると規定される。T細胞は、限定はされないが、ナチュラルキラーT細胞、調節性T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、ガンマ デルタT細胞および粘膜インバリアントT細胞を含む。T細胞は、限定はされないが、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、Th1 T細胞およびTh2 T細胞も含む。T細胞は、初代T細胞またはT細胞株であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞受容体」または「TCR」は交換可能に使用され、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合している免疫グロブリンスーパーファミリーのヘテロ二量体細胞表面タンパク質を指す。TCRは、2つの同族タンパク質鎖:アルファ鎖とベータ鎖またはガンマ鎖とデルタ鎖から構成される。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「TCRライブラリー」は、TCRをコードするベクターのポリクローナルコレクションまたはそれらのベクターを含有する細胞を指す。「TCRライブラリー」は、TCRをコードするベクターのサブセットまたは選択のコレクションを含み得る。「TCRライブラリー」は、対象で見出され得るTCRのレパートリーのコレクションを指し得る。「TCRライブラリー」は、対象で見出されたTCRのレパートリーのサブセットも指し得る。
【0049】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が他に明確に指定しない限り、複数の参照対象を含む。同様に、「または(or)」という言葉は、文脈が他に明確に指定しない限り、「および(and)」を含むことが意図される。物質、例えば抗原の濃度またはレベルに関して与えられた数値制限は、およそであることが意図される。したがって、濃度が、少なくとも(例えば)200μgであると示される場合、濃度は、少なくともおよそ「約(about)」または「約(about)」200μgであると理解されることが意図される。
【0050】
新規の受容体
広範な免疫細胞および/または免疫細胞受容体は、本開示に記載の方法で使用され得る。T細胞では、適用可能な受容体は、キメラ抗原受容体、アルファ ベータT細胞受容体、ガンマ デルタT細胞受容体、CD43、CD44、CD45、LFA1、CD4、CD8、CD3、LAT、CD27、CD96、CD28、TIGIT、ICOS、BTLA、HVEM、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、SLAM、CD2、2B4、TIM1、TIM2、TIM3、CD226、CD160、LAG3、LAIR1、CD112R、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2を含む。NK細胞では、適用可能な受容体は、TRAIL、CD16、NKp30ab、NKGC、NKG2D、2B4、DNAM-1、NKG2A、KIR、CD137、OX40、CD27を含む。B細胞では、適用可能な受容体は、Siglec-10、LILRB/PIR-B、CD31、FCγRIIIB、CD19、CD20、CD22、CD25、CD32、CD40、CD47、CD52、CD80、CD86、CD267、CD268、CD268、B細胞受容体、抗体、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEを含む。樹状細胞では、適用可能な受容体は、DNGR-1、MICL、CLEC1、CLEC12B、LOX1、マンノース受容体、DC-SIGN、L-SIGN、SIGN-R1、LSECtin、CIRE、Langerin、MGL、スカベンジャー受容体(SR)、DC-ASGPR、DC-STAMP、CD80/86、TLR、FIRE、FcR、DEC205、BDCA-2、Dectin-2、DCIR、およびケモカイン受容体を含む。マクロファージでは、適用可能な受容体は、CD300a、TREM2/DAP12、Bal-1、TIM4、CR3、SCARF1、CD36、MARCO、スカベンジャー受容体A1、RAGE、Axl、Mer、Tyro3、CD93、Stabilin2、DNGR-1、SIRPを含む。好中球では、適用可能な受容体は、CXCR1、FCγRIIIB、FCγRII、CR3、CR1、C3aR、TNFR、TLR2/6、C5aRを含む。他の受容体(例えば、Gタンパク質共役型受容体、イオンチャネル連結(イオンチャネル型)受容体、および/または酵素連結受容体)も、本開示の方法および組成物で使用され得る。本開示でスクリーニングされるリガンドは、標的受容体の公知のリガンド(例えば、PD-1受容体へのPD-1L)、または未知の親和性を有する全タンパク質、または未知の親和性を有するペプチドであり得る。
【0051】
本明細書に記載の組成物および方法は、抗原とT細胞受容体またはT細胞受容体ミミックの新規の対を見出すために使用され得る。T細胞受容体ミミックは、MHC提示抗原に結合することができる抗体または抗体断片を指す。T細胞受容体レパートリーは、単球(例えば、マクロファージ)または他の貪食細胞型で作製される。T細胞受容体の抗原結合部分は、Fc受容体の全てまたは一部分に融合され、その結果、このキメラ受容体が抗原に結合すると、マクロファージは抗原を貪食する。TCR受容体またはT細胞受容体ミミックをコードする核酸は、TCRおよび共活性化ドメイン(例えば、Fcドメイン)を同定するバーコードを含む。TCRキメラ受容体またはT細胞受容体ミミックライブラリーは、適切な単球細胞(例えばマクロファージ)または他の貪食細胞型(例えば、好中球、樹状細胞、マスト細胞等)で発現され得る。
【0052】
本明細書に記載の組成物および方法は、他の受容体およびリガンド(例えば、抗原)の新規の対を見出すために使用され得る。T細胞受容体およびT細胞受容体ミミックに加えて、他の受容体が使用されてもよい。例えば、イオンチャネル連結(イオンチャネル型)受容体、Gタンパク質共役型(代謝型)受容体、および酵素連結受容体が、導入遺伝子の発現に関連し得る。使用され得る受容体の1つのクラスは、免疫受容体、例えばT細胞受容体、B細胞受容体(別名、抗原受容体または免疫グロブリン受容体)、および自然免疫受容体などである。
【0053】
T細胞受容体は、2つの異なるポリペプチド鎖のヘテロ二量体である。ヒトでは、ほとんどのT細胞が、アルファ(α)鎖およびベータ(β)鎖から作製されたT細胞受容体を有するガンマおよびデルタ(γ/δ)鎖(それぞれ、TRGおよびTRDによってコードされる)から作製されたT細胞受容体を有する。リンパ球からT細胞受容体鎖をコードする核酸を増幅するための技術およびプライマーは、当技術分野で周知であり、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Clontechによって市販されているSMARTer Human TCR a/b Profiling Kits、Boriaら,BMC Immunol.9巻:50~58頁(2008);Moonkaら、J.Immunol.Methods 169巻:41~51頁(1994);Kimら、PLoS ONE 7巻:e37338(2012);Seitzら、Proc.Natl Acad.Sci.103巻:12057~62頁(2006)に記載される。TCRレパートリーを、別々の鎖として使用して、抗原結合ドメインを形成することができる。TCRレパートリーは、一本鎖抗原結合ドメインに変換され得る。一本鎖TCRは、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0252742号、Schodinら、Mol.Immunol.33巻:819~829頁(1996);Aggenら、「Engineering Human Single-Chain T Cell Receptors」、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の博士論文(2010)(そのコピーがideals.illinois.edu/bitstream/handle/2142/18585/Aggen_David.pdf?sequence=1に見出される)に記載されるものを含む、当技術分野で周知の技術を使用して、ヒトアルファおよびベータ鎖をコードする核酸から作製され得る。
【0054】
B細胞受容体は、膜結合型である免疫グロブリン、シグナル伝達部分、CD79、およびITAMを含む。ヒト抗体軽鎖および重鎖をコードする核酸を増幅するための技術およびプライマーは、当技術分野で周知であり、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、ProGenのヒトIgGおよびIgMライブラリープライマーセット、カタログ番号F2000;Andris-Widhopfら、「Generation of Human Fab Antibody Libraries:PCR Amplification and Assembly of Light and Heavy Chain Coding Sequences」、Cold Spring Harb.Protoc.2011;Limら、Nat.Biotechnol.31巻:108~117頁(2010);Sunら、World J.Microbiol.Biotechnol.28巻:381~386頁(2012);Coronellaら、Nucl.Acids.Res.28:e85(2000)に記載される。マウス抗体軽鎖および重鎖をコードする核酸を増幅するための技術およびプライマーは、当技術分野で周知であり、例えば、その両方が全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、米国特許第8,143,007号;Wangら、BMC Bioinform.7巻(補遺):S9(2006)に記載される。抗体レパートリーは、抗原結合ドメインにおいて別々の鎖として使用されるか、または一本鎖抗原結合ドメインに変換されてもよい。一本鎖抗体は、例えば、その両方が全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Pansriら、BMC Biotechnol.9巻:6(2009);Peraldi-Roux、Methods Molc.Biol.907巻:73~83頁(2012)に記載されるものを含む、当技術分野で周知の技術を使用して、ヒト軽鎖および重鎖をコードする核酸から作製することができる。一本鎖抗体は、例えば、その両方が全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Imaiら、Biol.Pharm.Bull.29巻:1325~1330頁(2006);Chengら、PLoS ONE6巻:e27406(2011)に記載されるものを含む、当技術分野で周知の技術を使用して、マウス軽鎖および重鎖をコードする核酸から作製することができる。
【0055】
自然免疫受容体は、例えば、CD94/NKG2受容体ファミリー(例えば、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKG2H)、2B4受容体、NKp30、NKp44、NKp46、およびNKp80受容体、Toll様受容体(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、RP105)を含む。
【0056】
7回膜貫通ドメイン受容体としても公知のGタンパク質連結受容体は、リガンドの受容体結合を、Gタンパク質を通して細胞応答にカップリングする、受容体の大きなファミリーである。これらのGタンパク質は、α、β、およびγサブユニット(それぞれ、Gα、Gβ、およびGγとして公知)の三量体であり、GTPに結合すると活性であり、GDPに結合すると不活性である。受容体がリガンドに結合すると、構造変化を受け、アロステリックにGタンパク質を活性化して、GTPに結合したGDPと交換する。GTP結合後、Gタンパク質は受容体から解離して、Gα-GTP単量体およびGβγ二量体を生じる。Gタンパク質連結受容体は、例えば、ロドプシン様受容体、セレクチン受容体、代謝型グルタミン酸/フェロモン受容体、真菌交配フェロモン受容体、サイクリックAMP受容体、およびfrizzled/smoothened受容体を含むクラスに、共にグループ分けされている。Gタンパク質受容体は、電磁放射の検出、味覚(味)、臭いの感覚、神経伝達、免疫系制御、増殖、細胞密度感知等を含む、多種多様な生理学的プロセスで使用される。
【0057】
触媒受容体としても公知の酵素連結受容体は、膜貫通受容体であり、細胞外リガンドの結合が、細胞内側で酵素活性を引き起こす。酵素連結受容体は、ポリペプチドの膜貫通部分(またはドメイン)によって共に接合された2つのドメインを有する。2つの末端ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインおよび触媒機能を有する細胞内ドメインである。例えば、Erb受容体ファミリー、グリア細胞由来神経栄養因子受容体ファミリー、ナトリウム利尿ペプチド受容体ファミリー、trkニューロトロフィン受容体ファミリー、およびtoll様受容体ファミリーを含む、酵素連結受容体の多数のファミリーがある。
【0058】
リガンド依存性イオンチャネルとしても公知のイオンチャネル連結受容体は、受容体へのリガンドの結合に応答して、イオン、例えばNa+、K+、Ca2+およびCl-などが膜を通過できるようにする受容体である。例えば、カチオンcys-ループ受容体、アニオンcys-ループ受容体、イオンチャネル型グルタミン酸受容体(AMPA受容体、NMDA受容体)、GABA受容体、5-HT受容体、ATP依存性チャンネル、およびPIP2依存性チャンネルを含む、リガンド依存性イオンチャネルの多数のファミリーがある。
【0059】
T細胞受容体レパートリーは、適切なHLA対立遺伝子(例えば、HLA-A02:01)を有するドナー/患者から、操作した細胞株(例えば、Jurkat細胞)から作製されるか、または公知の配列(例えば、GenBank)から合成されてもよい。多様性は、VおよびJ遺伝子の範囲にわたる特定のアルファおよびベータ鎖TCRを導入するプラスミドを介して操作した細胞に導入され得る。CDR3、アルファ、およびベータ遺伝子の組合せは、以下の方法のいずれかでまとめることができる:(1)場合により、抗原標的と相互作用することが公知の、公知の非対合(例えば、ベータまたはアルファ)TCRのサンプリング(2)場合により、抗原標的と相互作用することが公知の、対合したTCRのサンプリング(3)抗原標的と相互作用することが公知の、公知の対合または非対合TCRから開始し、結合に重要であることが公知か、結合に重要ではないことが公知のいずれかのエリアのそのCDR3領域を突然変異させること。
【0060】
他の受容体のレパートリーも、適切なHLA対立遺伝子(例えば、HLA-A02:01)を有するドナー/患者から作製されるか、または適切な細胞株から採取されるか、または公知の配列(例えば、GenBankに見出される配列)から合成されてもよい。多様性は、当技術分野で公知の方法を使用して受容体のレパートリーに導入され得る(例えば、受容体に突然変異を操作する、鎖のスワッピング、受容体鎖のキメラを作製する、2つまたはそれよりも多いポリペプチドから作製された受容体の鎖のスワッピング等)。
【0061】
目的の受容体をコードするDNAは、個々に、またはプールしたライブラリーフォーマットで合成されてもよい。バリエーション(例えば、多様性)は、目的の受容体の任意の位置に導入された遺伝子突然変異を使用して、受容体ライブラリーまたはレパートリーに導入され得る。あるいは、バリエーションは、鎖のスワッピング技術、または例えば一部のガイド進化法で行われるように、受容体(鎖(複数可))をコードする核酸のセグメントの混合によって導入され得る。遺伝子突然変異は、DNA断片の置換、欠失、挿入、および再編成であり得る。選択の特定の遺伝子突然変異は、無作為に生成されるか、目的の領域(例えば、受容体の相互作用ドメイン)に富化されるか、または計算アルゴリズムによって推奨されてもよい。推奨された遺伝子突然変異戦略への計算アルゴリズムの例は、タンパク質構造解析、計算ドッキング、分子動態シミュレーション、回帰、統計ベースの分類、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、および神経ネットワークを含む。
【0062】
目的の受容体の抗原/リガンドは、ペプチド、MHC-ペプチド複合体、断片、キメラ、または全タンパク質であり得る。抗原/リガンドは、炭水化物、脂肪酸もしくは脂質、または小分子であってもよい。抗原/リガンドは、共有結合または非共有結合によって抗原提示細胞表面と会合させ得る。抗原/リガンドがポリペプチドである場合、それらは、それらの天然の膜貫通ドメインによりまたは合成の膜貫通ドメインにより、抗原提示細胞表面に係留され得る。合成の膜貫通ドメインは、合成の膜貫通ドメインDNA配列を、抗原/リガンドの所望の部分、一部または全体をコードするDNA配列と作動可能に連結するようにDNA配列を操作することによって抗原/リガンド細胞外ドメインに融合され得る。例示的な合成の膜貫通ドメインは、CD2、CD3d、CD3g、CD3z、CD4、CD8A、CD8B、CD22、CD27、CD28、CD40、CD79a、CD79b、CD80、CD84、CD86、CD137、CD244、CRACC、CRTAM、CLTA-4、MHC-I、MHC-II、血小板由来増殖因子受容体、FCGR1A、FCGR2A、FCG2B、FCGR3A、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、FCRL6、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、LAG3、GITR、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、TLR、SLAMF、LILRB1、LILRB2、NKG2A、NKG2C、NKG2D、TIGIT、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、または免疫グロブリン由来の野生型または改変膜貫通ドメインを含む。抗原/リガンドのレパートリーは、作製され、抗原/リガンド提示細胞に操作により導入され得る。場合により、抗原/リガンドライブラリーのバリエーションは、目的の抗原/リガンドの所望の位置へと(例えば、無作為に、または部位特異的に)遺伝子突然変異を導入することによって作製され得る。遺伝子突然変異は、DNA断片の置換、欠失、挿入、および再編成であり得る。選択の特異的遺伝子突然変異は、ランダムに生成されるか、目的の領域(例えば、リガンドの相互作用ドメイン)に富化されるか、または計算アルゴリズムによって推奨されてもよい。推奨される遺伝子突然変異戦略への計算アルゴリズムの例は、タンパク質構造解析、計算ドッキング、分子動態シミュレーション、回帰、統計ベースの分類、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、および神経ネットワークを含む。
【0063】
抗原ライブラリーは、適切なMHC分子またはペプチドおよびMHCの2つの別々の分子との抗原ポリペプチドの融合体として作製され得る。アルゴリズムは、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Chenら、Nature Biotechnology 37巻:1332~43頁(2019)、Jurtzら、J.Immunol.199巻:3360~68頁(2017)、およびAbelinら、Immunity 51巻:766~79頁(2019)に開示のものを含む、提示可能な抗原を同定するために使用され得る。抗原-MHC融合体をコードする核酸は、場合により、融合体の抗原ポリペプチドを同定するバーコードを含み得る。抗原-MHC分子融合体のライブラリーは、融合したかまたは融合していない抗原-MHC分子複合体ならびにバーコードをその表面に提示する適切な宿主細胞に入れられる(例えば、K562などの細胞株)。このバーコードは、DNAまたはRNAであってもよく、細胞膜に直接、MHC分子に結合されるか、または発現された場合、バーコードを細胞表面に輸送する別のタンパク質(例えば、GFP)に結合され得る。抗原ライブラリーのための宿主細胞は、レポーターも含み得る(例えば、細胞は膜GFPを発現するように操作され得る)。
【0064】
単球細胞でのTCR-Fc融合体のレパートリーは、抗原::MHC融合タンパク質のライブラリーと混合され得る。MHCに提示された抗原ポリペプチドに結合することができるTCR抗原結合ドメインを有するマクロファージ細胞は、TCR-Fcキメラ受容体のTCRに結合する抗原-MHC融合体を提示する細胞を貪食することができる。抗原-MHC融合体を提示する細胞がレポーターを含む場合、受容体からのシグナルは、抗原-MHC融合体提示細胞を貪食したTCR-Fc細胞を分離するために使用され得る。例えば、レポーターが光学レポーターである場合、その光学レポーターは、FACsソーティングを使用して、抗原-MHCを貪食したTCR-Fc細胞を分離するために使用され得る。場合により、キメラTCRレパートリーを有する貪食細胞型は、レポーターを含み得る(例えば、抗原提示細胞レポーターとは異なる光学レポーター)。キメラTCRレパートリーを有する細胞と抗原ライブラリーを有する細胞の両方が異なる光学レポーターを有する場合、FACsソーティングを使用して、両方の光学シグナルを有する細胞を選択することができる(例えば、まず光学シグナルの一方を有する細胞を選択し、次いで他方の光学シグナルを有する細胞を選択することにより)。
【0065】
あるいは、操作した受容体細胞のレパートリー(例えば、TCRを有する単球)は、リガンドのライブラリー(例えば、抗原-MHC融合体タンパク質)と混合することができる。受容体細胞は、操作した細胞(例えば、単球またはマクロファージ)の受容体(例えば、TCR)に結合するリガンド(例えば、抗原-MHC複合体が融合したかまたは融合していない)を提示する細胞と相互作用し、それに対して活性化する。受容体細胞は、トロゴサイトーシスにより、(リガンドを同定する)細胞表面のDNAまたはRNAバーコードを含む、リガンド細胞の膜の断片を捕捉する。リガンド(例えば抗原-MHC融合体)を提示する細胞が膜結合レポーターまたは色素を含む場合、膜結合レポーターからのシグナルを使用して、他の細胞から、リガンド提示細胞(例えば、抗原-MHC融合体提示細胞)と相互作用した操作した受容体細胞を分離することができる。例えば、レポーターが光学レポーターである場合、その光学レポーターは、FACsソーティングを使用して、リガンド(例えば、抗原-MHC)に対して活性化された受容体細胞を分離するために使用され得る。場合により、トロゴサイトーシスする細胞型は、レポーターを含み得る(例えば、抗原提示細胞レポーターとは異なる光学レポーター)。操作した受容体細胞とリガンドライブラリーを有する細胞の両方が異なる光学レポーターを有する場合、FACsソーティングを使用して、両方の光学シグナルを有する細胞を選択することができる(例えば、まず光学シグナルの一方を有する細胞を選択し、次いで他方の光学シグナルを有する細胞を選択することにより)。
【0066】
リガンド(例えば、抗原-MHC)に対して活性化された、操作した受容体細胞(複数可)を、バルクシークエンシングまたは単一細胞シークエンシングのために分離して、受容体-リガンド対を形成した抗原ポリペプチドおよび受容体(例えば、TCR可変領域)を同定することができる。受容体およびリガンドのバーコードをシークエンシングして、受容体およびリガンドを同定することができるか、または受容体(例えば、TCR可変領域)および受容体(例えば、抗原)をコードする核酸を直接シークエンシングして、受容体およびリガンドを同定することができる。
【0067】
操作した受容体(例えば、T細胞受容体またはT細胞受容体ミミック)のライブラリーは、最大103、104、105、106、107、108、109、または1010個の異なる受容体(例えば、T細胞受容体)を示し得る。リガンド(例えば、抗原-MHC融合体)のライブラリーは、103または104または105または106または107または108または109または1010個の異なるリガンド(例えば、抗原-MHC融合体)を示し得る。
【0068】
バーコード受容体レパートリー
受容体レパートリーは、適切な細胞型由来の目的の受容体(例えば、上記のT細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージおよび/または好中球の開示された受容体)をコードする核酸から開始して得ることができる。例えば、T細胞受容体レパートリーは、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、調節性T細胞、メモリーT細胞、ヘルパーT細胞、または細胞傷害性T細胞の1つまたは複数から得ることができる。T細胞は、ナイーブであるか、または目的の抗原もしくは他の抗原に曝露されたエフェクターおよび/もしくはメモリーT細胞を含んでもよい。メモリーT細胞は、ステムセルメモリーT細胞(TSCM)、セントラルメモリー細胞(TCM)、トランジショナルメモリー細胞(TTM)、および/またはエフェクターメモリー細胞(TEM)であってもよい。T細胞は、Th1、Th2、Th9、Th17、Th22、Treg、Tfhおよび細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であってもよい。T細胞受容体は、T細胞(または、T細胞の亜集団)のゲノムDNAおよび/またはT細胞(または、T細胞の亜集団)のmRNAのいずれか(または両方)から得ることができる。T細胞受容体のレパートリーは、当技術分野で周知であり、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Clontechによって市販されているSMARTer Human TCR a/b Profiling Kits、Boriaら、BMC Immunol.9巻:50~58頁(2008);Moonkaら、J.Immunol.Methods 169巻:41~51頁(1994);Kimら、PLoS ONE 7巻:e37338(2012);Seitzら、Proc.Natl Acad.Sci.103巻:12057~62頁(2006)に記載される技術およびプライマーを使用して得ることができる。T細胞受容体ポリペプチドを、別々の鎖として使用して、TCRを形成することができる。あるいは、T細胞受容体ポリペプチド鎖は、一本鎖TCRに変換され得る。一本鎖T細胞受容体は、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0252742号、Schodinら、Mol.Immunol.33巻:819~829頁(1996);Aggenら,「Engineering Human Single-Chain T Cell Receptors」、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の博士論文(2010)(そのコピーがideals.illinois.edu/bitstream/handle/2142/18585/Aggen_David.pdf?sequence=1に見出される)に記載されるものを含む、当技術分野で周知の技術を使用して、ヒトアルファ鎖およびヒトベータ鎖をコードする核酸から作製され得る。
【0069】
免疫細胞(例えば、T細胞)は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、胚、および腫瘍を含む、いくつかの起源から得ることができる。免疫細胞(例えば、T細胞)は、Ficoll分離などの、当業者に公知のいくつもの技術を使用して対象から収集した血液の単位から得ることができる。個体の循環する血液由来の免疫細胞(例えば、T細胞)は、アフェレーシスまたは白血球除去輸血によって得ることができる。ゲノムDNAまたはmRNA/cDNAを使用して、受容体(例えば、T細胞受容体)をコードする核酸を得ることができる。
【0070】
腫瘍に浸潤したT細胞は、T細胞レパートリーの起源として使用することができる。T細胞は、外科手術中に除去され得る。T細胞は、生検による腫瘍組織の除去後に単離され得る。T細胞は、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって腫瘍試料からのT細胞のバルク集団から単離され得る。例えば、T細胞のバルク集団は、そこから特定の細胞集団が選択され得る細胞懸濁液へと腫瘍試料を解離することによって腫瘍試料から得ることができる。T細胞のバルク集団を得る好適な方法は、限定はされないが、腫瘍を機械的解離すること(例えば、刻む)、腫瘍を酵素的に解離すること(例えば、消化する)、および吸引(例えば、注射によるように)のいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0071】
負の選択によるT細胞集団の富化は、負の選択された細胞にユニークな表面マーカーに対する抗体の組合せによって達成することができる。好ましい方法は、負の選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介した細胞ソーティングおよび/または選択である。例えば、負の選択によってCD4+細胞を富化するため、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0072】
T細胞はまた、抗原特異性T細胞であってもよい。例えば、腫瘍特異的T細胞が使用され得る。抗原得的T細胞は、目的の患者、例えばがんまたは感染性疾患に苦しむ患者から単離され得る。抗原特異的T細胞は、単独でもしくはアジュバントと組み合わせた、または樹状細胞にパルスされた、特定の抗原による対象のワクチン接種によって誘導され得る。拡大での使用のための抗原特異的細胞は、当業者に公知のいくつもの方法を使用してin vitroでも生成され得る。
【0073】
各T細胞受容体は、2つのタンパク質鎖:アルファ鎖およびベータ鎖、またはガンマ鎖およびデルタ鎖から作製される。各鎖は、2つの細胞外ドメイン:可変(V)領域および定常(C)領域を有する。定常領域は、細胞膜の近位にあり、膜貫通領域および短い細胞質テイルが続くが、可変領域は、抗原:MHC複合体に結合する。TCRアルファ鎖とベータ鎖の両方の可変ドメインは、それぞれ、3つの超可変領域または相補性決定領域(CDR)を有する。通常抗原と接触せず、したがって、CDRとは考えられないベータ鎖には超可変なさらなるエリアもある(HV4)。CDR3は、プロセシングされた抗原の認識を担う主要なCDRであり、アルファ鎖のCDR1も抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されているが、ベータ鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHCを認識する。ベータ鎖のCDR4は、抗原認識に参加するとは考えられないが、超抗原と相互作用することが示されている。TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖間の連結を形成する短い接続配列からなる。
【0074】
TCRミミックの形態は、キメラT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)を含む。キメラT細胞受容体は、適切な細胞質領域を一本鎖TCRまたはT細胞受容体の1つの鎖と融合することによって作製される。一本鎖T細胞受容体は、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Zhangら、Cancer Gene Therapy 11巻:487~496頁(2004)に従って作製され得る。適切な細胞質領域は、Fc細胞質ドメイン、CD3ζ、CD28、B7.1、CD137、CD19細胞内活性化ドメイン、CD64細胞内活性化ドメイン、CD32細胞内活性化ドメイン、CD16細胞内活性化ドメイン、CD23細胞内活性化ドメイン、またはLck活性化ドメインの1つまたは複数を含む。キメラTCRにおいて使用され得る共刺激ドメインは、例えば、CD3ζ、CD28、B7.1、CD137、CD19細胞内活性化ドメイン、CD64細胞内活性化ドメイン、CD32細胞内活性化ドメイン、CD16細胞内活性化ドメイン、CD23細胞内活性化ドメイン、Lck活性化ドメイン、CD27、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、MyD88等を含む。Fcシグナル伝達ドメイン、および場合により、1つまたは複数の共刺激ドメインと融合したキメラT細胞受容体は、TCRへのリガンド結合に応答して単球/マクロファージの貪食を引き起こすことができる。あるいは、シグナル伝達ドメイン、および場合により、1つまたは複数の共刺激ドメインを有するキメラT細胞受容体またはキメラ抗原受容体は、受容体と相互作用する抗原に応答してトロゴサイトーシスを引き起こすことができる。
【0075】
場合により、T細胞は、膜結合DNAまたはRNA結合タンパク質を介して、それらの細胞膜に結合したTCRバーコードを含有する。抗原提示細胞の抗原バーコードは、cDNAまたはmRNAをコードする抗原と同時にまたは逐次的に導入され得る。膜結合核酸(DNAまたはRNA)結合タンパク質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写因子結合タンパク質、複製タンパク質A、CRISPR Cas9、Cas13、Cpf1、ファージRNA結合タンパク質、細菌一本鎖結合タンパク質、または操作した制限消化酵素から操作され得る。核酸結合タンパク質は結合モチーフを有し、これらは表1にタンパク質の例示的なセットについて記載される。
【0076】
【0077】
膜結合核酸結合タンパク質は、(必要な場合)合成の膜貫通ドメインによって操作した核酸結合タンパク質から操作され得る。例示的な合成の膜貫通ドメインは、CD2、CD3d、CD3g、CD3z、CD4、CD8A、CD8B、CD22、CD27、CD28、CD40、CD79a、CD79b、CD80、CD84、CD86、CD137、CD244、CRACC、CRTAM、CLTA-4、MHC-I、MHC-II、血小板由来増殖因子受容体、FCGR1A、FCGR2A、FCG2B、FCGR3A、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、FCRL6、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、LAG3、GITR、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、TLR、SLAMF、LILRB1、LILRB2、NKG2A、NKG2C、NKG2D、TIGIT、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、または免疫グロブリン由来の野生型または改変膜貫通ドメインを含む。核酸結合ドメインは、当技術分野で公知の操作技術を使用して、膜の細胞質側に存在するように操作され得る。例えば、多くの合成の膜貫通ドメインは、膜の細胞質側にポリペプチド鎖のc末端を有する。したがって、核酸結合タンパク質は、合成の膜貫通ドメインのc末端に操作により導入することができ、こうして、核酸結合タンパク質部分は膜の細胞質側に存在する。バーコードは、TCRのCDRもしくは抗原のユニーク配列であってもよく、またはバーコードは、発現されたmRNAがバーコードを含むように受容体もしくは抗原もしくはリガンドをコードする核酸に導入されてもよい。受容体/抗原/リガンドをコードする核酸はまた、発現されたmRNAが結合モチーフを含むように膜結合核酸結合タンパク質の結合モチーフを含むように操作されてもよい。これは、膜結合核酸結合タンパク質に結合している受容体または抗原のmRNAを生じる。トロゴサイトーシスが受容体細胞とリガンド提示細胞の間で生じる場合、バーコードを有する膜結合核酸結合タンパク質も移行され、受容体(例えば、TCRまたはCAR)およびリガンド(例えば、抗原)の膜結合バーコードを有する両細胞を生じる。
【0078】
キメラTCRのレパートリーは、103、104、105、106、107、108、109、または1010個の異なるTCRを有し得る。キメラTCRのレパートリーは、対象の、またはナイーブT細胞の、または目的の抗原に対する免疫応答を開始した対象由来もしくは上記のT細胞の集団のいずれか由来のT細胞のゲノムDNAに見出されるTCRの集団を表し得る。キメラTCRのレパートリーの好適な細胞型は、例えば、THP-1細胞を含むマクロファージの単球である。
【0079】
バーコード抗原/リガンドレパートリー
リガンドライブラリーは、所望のリガンド(例えば、抗原)から作製される。HLA遺伝子および抗原配列は、単一ペプチドに融合されるかまたは別々のペプチドとしてコードされ得る。HLAアルファおよびベータ鎖は、融合されるかまたは別々のペプチドとしてコードされ得る。HLAは全長タンパク質の断片のみ結合し、提示し得るので、抗原配列は、8~25アミノ酸長である。コンピューターアルゴリズムは、提示可能な抗原として使用するペプチドを選択するために使用されてもよく、提示可能なペプチド抗原を同定する好適な方法は、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Chenら、Nature Biotechnol.37巻:1332~43頁(2019)、Jurtzら、J.Immunol.199巻:3360~68頁(2017)、Abelinら、J.Thero.Biol.389巻:214~224頁(2016)に記載される。
【0080】
T細胞受容体は、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合した抗原を認識することができる。MHC分子は、クラスI、クラスII、およびクラスIIIを含む。クラスIとクラスII両方のMHC分子は、免疫応答に役割を果たす。クラスIのMHC分子は、重鎖および軽鎖からなり、約8~11アミノ酸だが、通常9または10アミノ酸のペプチドに結合し、それをナイーブおよび細胞傷害性Tリンパ球に提示することができる。クラスIのMHC分子が結合したペプチドは、内在性タンパク質抗原から生じ得る。クラスIのMHC分子のアルファ鎖は、HLA-A、HLA-BまたはHLA-C単量体であってもよく、ベータ鎖はベータ2ミクログロブリンであってもよい。
【0081】
クラスIIのMHC分子は、アルファ鎖およびベータ鎖からなり、約8~24アミノ酸のペプチドに結合することができ、それをT細胞に提示する。MHCクラスII分子が結合したペプチドは、細胞外または外因性タンパク質抗原から生じ得る。アルファ鎖およびベータ鎖は、HLA-DR、HLA-DQおよびHLA-DP単量体であり得る。MHCクラスIIは、全ての細胞型によって発現され得るが、通常、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC):マクロファージ、B細胞、および特に樹状細胞で生じる。APCは、抗原性タンパク質を取込み、抗原プロセシングを実施し、その分子画分-エピトープと呼ばれる画分-を戻し、MHCクラスII分子内にカップリングしたAPCの表面にそれを提示する(抗原提示)。細胞の表面では、エピトープはT細胞受容体(TCR)のような免疫構造によって認識され得る。
【0082】
場合により、抗原提示細胞は、膜結合DNAまたはRNA結合タンパク質を介して、それらの細胞膜に結合した抗原バーコードを含有する。抗原提示細胞の抗原バーコードは、cDNAまたはmRNAをコードする抗原と同時にまたは逐次的に導入され得る。膜結合DNAまたはRNA結合タンパク質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写因子結合タンパク質、複製タンパク質A、CRSIPR Cas9、Cas13、Cpf1、ファージRNA結合タンパク質、細菌一本鎖結合タンパク質、または操作した制限消化酵素によって操作され得る。膜結合抗原バーコードは、トロゴサイトーシス時にAPCとT細胞の間で情報を移行することができる。
【0083】
MHC抗原複合体は、抗原ライブラリーを作出するための以下の方法の1つまたはいずれかの組合せで共に連結され得る:遺伝的に連結するMHCアルファ鎖、MHCベータ鎖、および可動性リンカー(例えば、GCGGSGGGGSGGGGS)を有する配列をコードする抗原、遺伝的に連結する、自己切断ペプチド配列(例えば、T2A、P2A、またはF2A)を有するMHC遺伝子、または所望のMHC対立遺伝子を有する細胞株における抗原ペプチドの過剰発現。抗原DNAまたはRNAは、ライブラリーのAPCのバルクまたは単一細胞シークエンシングによって回収することができ、天然のバーコードとして機能する。抗原DNA/RNAバーコード(抗原配列)は、PCRおよび抗原隣接領域を標的化するプライマーを使用して増幅することができる。APCがマクロファージによって消費される貪食後、対合した抗原およびTCRデータを、DNAまたはRNAシークエンシングを介して、1つの細胞(APCを「食べた」マクロファージ)から回収することが可能になる。あるいは、T細胞活性化ならびにAPCおよびT細胞が膜片を交換するトロゴサイトーシス後、バーコード(DNAまたはRNAのいずれか)は、対合した抗原およびTCRデータを、DNAまたはRNAシークエンシングを介して、1つの細胞(APCまたはT細胞は、抗原とTCRバーコードの両方を含有する)から回収することを可能にする。抗原ペプチドを有する一本鎖MHC分子を作製するための方法は、例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Mottezら、Cells expressing a major histocompatibility complex class I molecule with a single covalently bound peptide are highly immunogenic,J.Exp.Med.181巻:493~502頁(1995);Ignatowiczら、Cell surface expression of class II MHC proteins bound by a single peptide,J.Immunol.154巻:3852~3862頁(1995);Ugerら、Creating CTL targets with epitope-linked B2 microglobulin constructs,J.Immunol.160巻:1598~1605頁(1998);Yuら、Cutting edge:single-chain trimers of MHC class I molecules form stable structures that potently stimulate antigen-specific T cells and B cells,J.Immunol.168巻:3145~3149頁(2002);Hansenら、Translational and Basic applications of peptide-MHCI single chain trimers,Trends Immunol 31巻:363~369頁(2010);Kotsiouら、Properties and applications of single-chain major histocompatibility complex class I molecules,Antioxidants Redox Signaling 15巻:645~655頁(2011);Zhaoら、Use of single chain MHC technology to investigate co-agonism in human CD8+ T cell activation,J.Vis.Exp.144巻:e59126(2019)に記載される。あるいは、MHC鎖(クラスIまたはII)は、組換えにより別々に作製され、組換え細胞においてアセンブルされて、MHC分子を形成する。抗原は、MHC分子との組合せのためのペプチドとして、またはMHC分子に提示され得るペプチドへの分解でプロセシングされる全抗原タンパク質として細胞において共発現され得る。このように抗原::MHC複合体を発現するための方法は、例えば、Stevensら、Efficient generation of major histocompatibility complex class I peptide complexes using synthetic peptide libraries,J.Bio.Chem.273巻:2874~2884頁(1998);Braendstrupら、MHC class II tetramers from isolated recombinant alpha and beta chains refolded with affinity tagged peptides,PLoS ONE 8巻:E73648(2013);Sainiら、Empty peptide receptive MHC class I molecules for efficient detection of antigen specific T cells,Sci.Immunol.4巻:eaau9039(2019)に記載される。
【0084】
抗原ライブラリーで使用され得る感染性疾患抗原は、感染病原体由来の抗原を含む。感染病原体は、細菌病原体またはウイルス病原体であり得る。細菌病原体は、例えば、ブドウ球菌(Staphylococci)、連鎖球菌(Streptococcus)、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)、サルモネラ(Salmonella)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、A群連鎖球菌(Group A Streptococcus)、B群連鎖球菌(Group B Streptococcus(ストレプトコッカス・アグラクチア(Streptococcus agalactiae)))、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)の菌株、マイコバクテリア(Mycobacteria sps.)(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム(M. avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M. intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシ(M. kansaii)、またはマイコバクテリウム・ゴルドナエ(M. gordonea))、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、リケッチア・リケッチイ(R. rickettsia)、サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、ブルセラ属菌(Brucella spp.)、赤痢菌属(Shigella spp.)の菌株、ある特定の大腸菌株または侵襲性因子を有する遺伝子を獲得した他の細菌、および抗生物質耐性因子を獲得した前述のいずれかまたは他の細菌を含む。
【0085】
ウイルス病原体は、例えば、エボラ、ジカ、RSV、レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、HIV-1およびHIV-LPなどのヒト免疫不全ウイルス)、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコサッキーウイルス、ライノウイルス、およびエコーウイルス)、風疹ウイルス、コロナウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス科(AdenoViridae)、ヘルペスウイルス科(Herpesyiridae)[例えば、1型および2型単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、およびヘルペスウイルス]、ポックスウイルス科(Poxviridae)(例えば、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス)、C型肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、またはカポジ肉腫ウイルスを含む。
【0086】
抗原ライブラリーは、腫瘍関連抗原、腫瘍ネオ抗原、またはがん細胞で優先的に見出される他の抗原のいずれかを含み得る。抗原ライブラリーで使用され得る腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞において過剰または異常に発現された任意の遺伝子またはタンパク質、例えば、メソテリン、ジシアロガングリオシド(GD2)、Her-2、MUC1、GPC3、EGFRVIII、CEA、CD19、EGFR、PSMA、GPC2、葉酸受容体β、IgG Fc受容体、PSCA、PD-L1、EPCAM、Lewis Y抗原、L1CAM、FOLR、CD30、CD20、EPHA2、PD-1、C-MET、ROR1、CLDN18.2、NKG2D、CD133、TSHR、CD70、ERBB、AXL、細胞死受容体5、VEGFR-2、CD123、CD80、CD86、TSHR、ROR2、CD147、カッパIGG、IL-13、MUC16、IL-13R、NY-ESO-1、IL13RA2、DLL3、FAP、LMP1、TSHR、BCMA、NECTIN-4、MG7、AFP(アルファ-フェトプロテイン)、GP100、B7-H3、Nectin-4、MAGE-A1、MAGE-A4、MART-1、HBV、MAGE-A3、TAA、GP100、チログロブリン、EBV、HPV E6、PRAME、HERV-E、WT1、GRAS G12V、p53、TRAIL、MAGE-A10、HPV-E7、KRAS G12D、MAGE-A6、CD19、BCMA、CD22、CD123、CD20、CD30、CD33、CD138、CD38、CD7、SLAMF7、IGG FC、MUC1、Lewis Y抗原、CD133、ROR1、FLT3、NKG2D、カッパ軽鎖、CD34、CLL-1、TSLP、CD10、PD-L1、CD44V6、EBV、CD5、GPC3、CD56、インテグリンB7、CD70、MUCL、CKIT、CLDN18.2、TRBC1、TAC1、CD56、CD4、CD2、CD18、CD27、CD37、CD72、CD79A、CD79B、CD83、CD117、CD172、ERBB3、ERBB4、DR5、HER2、CS1、IL-1RAP、ITGB7、SLC2A14、SLC4A1、SLC6A11、SLC7A3、SLC13A5、SLC19A1、SLC22A12、SLC34A1、slc45A3、SLC46A2、Fra、IL-13Ra2、ULBP3、ULBP1、CLD18、NANOG、CEACAM8、TSPAN16、GLRB、DYRK4、SV2C、SIGLEC8、RBMXL3、HIST1HIT、CCR8、CCNB3、ALPPL2、ZP2、OTUB2、LILRA4、GRM2、PGG1、NBIF3、GYPA、ALPP、SPATA19、FCRLI、FCRLA、CACNG3、UPK3B、12UMO4、MUC12、HEPACAM、BPI、ATP6V0A4、HMMR、UPK1A、ADGRV1、HERC5、C3AR1、FASLG、NGB、CELSR3、CD3G、CEACAM3、TNFRSFBC、MS4AB、S1PR5、EDNRB、SCN3A、ABCC8、ABCB1、ANO1、KCND2、HTR4、CACNB4、HTR4、CNR2、26LRB、EXOC1、ENTPP1、ICAM3、ABCGB、SCN4B、SPN、CD68、ITGAL、ITGAM、SCTR、CYYR1、CLCN2、SLARA3およびJAG3を含む。抗原ライブラリーで使用され得る腫瘍ネオ抗原は、腫瘍細胞にユニークなまたは富化された任意の突然変異遺伝子またはタンパク質、例えば、ACVR2A K435fs、AKT1 E17K、AR Q58L、ASXL1 G610、ATR K771fs、BRAF V600E、CHEK2 K416E、CRIPAK R154fs、CTNNB1 S26F、CTNNB1 S30C、CTNNB1 D25N、CTNNB1 G27R、CTNNB1 S26C、CTNNB1 S30F、DNMT3A R882H、DNMT3A R882C、EGFR A244V、EGFR G553V、EGFR A244T、EGFR R177C、EGFR L813R、EP300 D1399N、FBXW7 R465H、FBXW7 R505G、FBXW7 R505C、FBXW7 R465C、FGFR2 N550K、FGFR2 S252W、FGFR3 S249C、FLT3 D835Y、GATA3 P409fs、IDH1 R132C、IDH1 R132H、IDH2 R88Q、KRAS G12V、KRAS G13D、KRAS G12D、KRAS G12C、KRAS A146T、KRAS G12A、KRAS Q61L、MTOR S2215Y、NFE2L2 R18G、NFE2L2 E63Q、NFE2L2 D13H、NPM1 W288fs、NRAS G13D、NRAS Q61R、NRAS G12D、NRAS Q61K、NRAS Q61L、PIK3CA E453K、PIK3CA E545A、PIK3CA M1043I、PIK3CA M1043V、PIK3CA R108H、PIK3CA H1047R、PIK3CA Q546K、PIK3CA G118D、PIK3CA N345K、PIK3CA H1047L、PIK3CA R88Q、PIK3CA K111E、PIK3CA Q546R、PIK3CA Q546P、PIK3CA E726K、PIK3CA E542K、PIK3CA E81K、PIK3CA E545K、PIK3CA C420R、PIK3CA R93Q、PPP2R1A P99R、PPP2R1A R103W、PTEN A328fs、PTEN R130Q、PTEN R130G、PTEN T319fs、RPL22 K15fs、SF3B1 K700E、SMAD4 R361H、TGFBR2 E150fs、TP53 R249M、TP53 E285K、TP53 R249S、TP53 G266V、TP53 R158H、TP53 C141Y、TP53 Y236C、TP53 V173M、TP53 S241F、TP53 V173L、TP53 E271K、TP53 E286K、TP53 C275Y、TP53 R110L、TP53 R273L、TP53 H179Y、TP53 V216M、TP53 V157F、TP53 H193R、TP53 T125、TP53 I195T、TP53 H179R、TP53 G245S、TP53 R282W、TP53 R273C、TP53 Y220C、TP53 R248W、TP53 R248Q、TP53 R273H、TP53 R175H、TP53 Y205C、TP53 M237I、TP53 C238F、TP53 V272M、TP53 C242F、TP53 L194R、TP53 A159V、TP53 G245D、TP53 H193L、TP53 Y163C、TP53 R158L、TP53 G108fs、TP53 G245V、TP53 C238Y、TP53 C176F、TP53 Y234C、TP53 C176Y、TP53 K132N、U2AF1 S34F、VHL L89H、VHL S111N、VHL W117fsを含む。腫瘍ネオ抗原は、単一のヌクレオチド突然変異、フレームシフト突然変異、挿入、欠失、オルタナティブスプライシング、または染色体外の環状DNAによって生成され得る。
【0087】
ライブラリーに好適な抗原は、膵臓がん、肺がん、結腸がん、および胆管がんで見出されることが多い腫瘍ネオ抗原である、KRASバリアントを含む。以下の表2は、ある特定のがんと関連する共通のKRAS突然変異を示す。
【0088】
【0089】
これらのKRAS突然変異対立遺伝子は、突然変異対立遺伝子に結合することができるが、野生型対立遺伝子には結合することができないTCRのスクリーニングのため、抗原ライブラリーで使用することができる。そのような識別力があるTCRを使用して、これらのKRAS突然変異を有するがんの免疫療法を標的化することができる。
【0090】
抗原ライブラリーの好適な細胞型は、抗原提示細胞である。APCは、その表面にMHC分子を欠損し得る。好適な抗原提示細胞は、例えば、K562細胞を含む。
【0091】
また、本明細書では、例えば、ウイルスを作製するために使用した対応する移入プラスミドにこれらの抗原/リガンドバリアントをコードすることにより、分子相互作用を選択する方法としてウイルス向性を、目的を変更して利用し、目的の抗原/リガンドのものにより野生型ウイルス表面タンパク質の結合機能を置き換え、それにより、生じるウイルスがその表面に抗原/リガンドバリアントを提示し、対応する遺伝子配列をパッケージングすることを確実にする、レトロウイルスベースのシステムも記載する。したがって、ウイルスが標的細胞(例えば、提示された抗原/リガンドバリアントの細胞外標的化ドメインに結合する受容体を持つ)に侵入すると、細胞侵入が、所望の位置で標的細胞のゲノムへの提示したタンパク質の遺伝子配列のインテグレーションを生じる。
【0092】
レトロウイルスは、構造:S-ETD-LGD-IRES-R(ここで、Sはシグナル配列をコードし、ETDは細胞外標的化ドメインをコードし;LGDは抗原/リガンドをコードし、IRESは配列内リボソーム侵入部位をコードし、Rはレポーター(例えば、蛍光タンパク質または抗生物質耐性などの選択マーカー)をコードする)をコードする核酸を有し得る。IRESおよびRは場合によるものであり、核酸はS-ETD-LGDをコードし得る。レトロウイルスは、その天然の侵入機能を減少させる少なくとも1つの突然変異を含む突然変異ウイルスエンベロープタンパク質もコードする。IRES配列は、1つのプロモーターによって2つの遺伝子の共発現を同様に可能にする、2A自己切断ペプチド配列(T2A、P2A、F2A、およびE2A)によって置換され得る。
【0093】
本明細書では、その天然の機能を減少させる少なくとも1つの突然変異を有するウイルスエンベロープタンパク質;膜結合ドメイン、細胞外抗原/リガンドドメイン、およびレポーターをコードする核酸を含む非ウイルス膜結合タンパク質を含むレトロウイルスを記載する。本明細書に開示のレトロウイルスは、好適な種のレトロウイルスゲノム(天然に存在するまたは改変された)由来の1つまたは複数のエレメントを有し得る。レトロウイルスは、7つのファミリー:アルファレトロウイルス(トリ白血病ウイルス)、ベータレトロウイルス(マウス乳癌ウイルス)、ガンマレトロウイルス(マウス白血病ウイルス)、デルタレトロウイルス(ウシ白血病ウイルス)、イプシロンレトロウイルス(ウォールアイ皮膚肉腫ウイルス)、レンチウイルス(ヒト免疫不全ウイルス1)、およびスプーマウイルス(ヒトスプーマウイルス)を含む。レトロウイルスの他の例は、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、米国特許第7,901,671号に提供される。
【0094】
改変されたレンチウイルスゲノムは、宿主細胞への核酸の送達のためのウイルスベクターとして有用であり得る。宿主細胞は、レンチウイルスベクター、および場合によりレンチウイルスのパッケージングタンパク質(例えば、VSV-G、Rev、およびGag/Pol)を発現するためのさらなるベクターをトランスフェクトされて、培養培地中にレンチウイルス粒子を産生することができる。本明細書において有用なレトロウイルス構築物の非限定的な例は、例えば、レンチウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、トリ白血病ウイルス(ALV)ベクター、マウス白血病ウイルス(MLV)ベクター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)ベクター、マウス幹細胞ウイルス、およびヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)ベクターを含む。これらのレトロウイルス構築物は、対応するレトロウイルス由来のプロウイルス配列を含む。
【0095】
本明細書に記載のレトロウイルスベクターは、安全性の懸念に対処するならびに/またはベクター機能、例えば、パッケージング効率および/もしくはウイルス力価を改善する、当技術分野で公知のさらなる機能性エレメントをさらに含み得る。さらなる情報は、そのそれぞれが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、US20150316511、WO2015/117027、およびWO2019/056015に見出すことができる。
【0096】
ウイルスエンベロープタンパク質は、任意のレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)の任意のウイルスエンベロープタンパク質であってもよい。ウイルスエンベロープタンパク質は、VSV-Gエンベロープタンパク質、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質、ニパウイルスエンベロープタンパク質、または球菌ウイルスGタンパク質であってもよい。ウイルスエンベロープタンパク質の突然変異によって減少される天然の機能は、ウイルス向性(例えば、細胞に感染する、細胞に結合する能力等)であり得る。例えば、突然変異VSV-Gエンベロープタンパク質は、アミノ酸H8、K47、Y209、および/またはR354で突然変異され得る。突然変異VSV-Gエンベロープタンパク質は、以下の変化、H8A、K47A、K47Q、Y209A、R354A、および/またはR354Qの1つまたは複数を有し得る。例示的な突然変異VSV-Gエンベロープタンパク質は、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Nikolicら、「Structural basis for the recognition of LDL-receptor family members by VSV glycoprotein.」Nature Comm.,2018,9:1029に記載される。突然変異麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は、Y481、R533、S548、および/またはF549に突然変異(複数可)を有し得る。突然変異麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は、Y481A、R533A、S548L、および/またはF549Sの1つまたは複数を有し得る。突然変異ニパウイルスエンベロープタンパク質は、E501、W504、Q530、および/またはE533に突然変異(複数可)を有し得る。突然変異麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は、E501A、W504A、Q530A、および/またはE533Aの1つまたは複数を有し得る。突然変異球菌ウイルスGタンパク質は、K64および/またはR371に突然変異(複数可)を有し得る。突然変異球菌ウイルスGタンパク質は、K64Q、および/またはR371Aの1つまたは複数を有し得る。
【0097】
膜結合ドメインは、タンパク質またはペプチドを完全にまたは部分的にレトロウイルスの膜(例えば、エンベロープ)に包埋させるかまたは会合させることができるアミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドである。膜結合ドメインは、細胞外環境への細胞外抗原/リガンドドメインの提示および送達を可能にし得る。膜結合ドメインは、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインを有し得る。膜結合ドメインは、主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質またはその断片であり得る。MHCタンパク質は、クラスIまたはクラスII MHCタンパク質であり得る。
【0098】
レトロウイルスのライブラリーに存在するレトロウイルスは、膜結合ドメインに融合した異なる抗原/リガンドのライブラリーをまとめて含み得る。細胞外抗原/リガンドは、標的細胞に結合することができる。細胞外抗原/リガンドドメインは、細胞または細胞の集団のサブセットの細胞表面に存在するタンパク質または受容体リガンド(例えば、T細胞受容体)に結合することができる。リガンド-細胞外抗原/リガンドドメインは、T細胞またはT細胞の集団のサブセットの細胞表面に存在する受容体に結合する。レトロウイルスの細胞外抗原/リガンドドメインと細胞の受容体、タンパク質またはリガンドの間のこの結合相互作用は、レトロウイルスを細胞(例えば、抗原特異的細胞、例えば、T細胞)に侵入させることができる。
【0099】
非ウイルス膜結合タンパク質は、膜結合ドメインと細胞外抗原/リガンドドメインの間に位置するリンカーを含み得る。リンカーは、アミノ酸リンカーであってもよく、リジットリンカー、可動性リンカー、またはオリゴマー化リンカーであってもよい。リジットリンカーは、可動性を欠損するアミノ酸配列であり得る(例えば、少なくとも1つのプロリンを含み得る)。例えば、リジットリンカーは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)ストークまたはCD8-アルファストーク由来であり得る。可動性リンカーは、多くの自由度を有するアミノ酸配列である(例えば、小さい側鎖を有する複数のアミノ酸、例えばグリシンまたはアラニンを含み得る)。オリゴマー化リンカーは、別の関連アミノ酸にオリゴマー化することができるアミノ酸である。オリゴマー化リンカーは、二量体、三量体、または四量体を形成することができるアミノ酸配列であり得る。例えば、オリゴマー化リンカーは、IgG4ヒンジドメインから作製され得る。
【0100】
本明細書は、レトロウイルスのライブラリーにも関し、ライブラリーは複数のユニークなレトロウイルスを含み、各ユニークなレトロウイルスは、その天然の機能を減少させる少なくとも1つの突然変異を含むウイルスエンベロープタンパク質、膜結合ドメインおよび細胞外標的化ドメインを含む非ウイルス膜結合タンパク質、ならびに場合により、レポーターをコードする核酸を含み、各ユニークなレトロウイルスは、異なるおよびユニークな細胞外標的化ドメインを含む。また、本明細書では、レトロウイルスを含む細胞のライブラリーも記載され、ライブラリーは複数のユニークな細胞を含み、各ユニークな細胞はユニークなレトロウイルスを含む。
【0101】
ライブラリーは、T細胞の集団のスクリーニングにおける使用のための異なるMHC-ペプチド融合体をコードする核酸を有する複数のレトロウイルスを含み得る。そのようなライブラリーでは、ウイルス表面に提示されたMHC-ペプチド融合体は、TCR特異的な方法でT細胞感染を可能にする。感染したT細胞を収集およびシークエンシングし、目的のT細胞集団のサブセットに感染することができるMHC-ペプチドリガンドの同定、ならびにTCR配列および反応性MHC-ペプチドリガンドを同時に追跡する能力を可能にすることができる。MHC-ペプチドレトロウイルスライブラリーは、ランダム化したMHC-ペプチド標的化エレメントを含有するランダム化した移入ベクターを含み得る。ランダムに生じたライブラリーは、変性したオリゴヌクレオチドプライマーを使用して生成され得る。標的化ライブラリーは、抗原のユニークなセットに特異的であり得る(例えば、目的の特定の標的のための全ての可能なウイルスまたは細菌抗原-ヒト免疫不全ウイルス、結核TB等;または特定の対象の全ての可能なネオ抗原)。抗原/リガンド配列は、受容体または結合タンパク質と相互作用するそれらの機会を最大にするように選択され得る。抗原/リガンドライブラリーのバリエーションは、遺伝子突然変異を、目的の抗原/リガンドの所望の位置に(例えば、ランダムに、または部位特異的に)導入することによって作製され得る。遺伝子突然変異は、DNA断片の置換、欠失、挿入、および再編成であり得る。選択の特異的遺伝子突然変異は、ランダムに生成されるか、目的の領域に富化されるか(例えば、リガンドの相互作用ドメイン)、または計算アルゴリズムによって推奨されてもよい。遺伝子突然変異戦略のための計算アルゴリズムの例は、タンパク質構造解析、計算ドッキング、分子動態シミュレーション、回帰、統計ベースの分類、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、および神経ネットワークを含む。
【0102】
バーコード配列は、ランダムに生成された4を超える任意の長さのヌクレオチド配列であり得る。例えば、15ヌクレオチドのDNA配列は、415=1e9の多様性を提供し得る。バーコード配列は、マーカー配列をコードするアミノ酸であっても、マーカー配列として純粋に機能するアミノ酸であってもよい。例えば、レトロウイルスプラスミドの1つのデザインは、2つのクローニング部位を含有する:一方は抗原をコードする配列用、一方はバーコード配列用。
【0103】
バーコードとリガンド配列の両方をウイルスプラスミドに挿入し、PCRまたは大腸菌増幅のいずれかでウイルスプラスミドを増幅した後、プラスミドの一部分は、バルクシークエンシングによってシークエンシングされ得る。バーコードおよびリガンド配列が互いに近いため、バルクシークエンシングデータは、バーコード配列とリガンド配列の間の1対1マッピングを確立することができる。
【0104】
宿主細胞
本明細書に記載のポリペプチド(例えば、TCRまたは抗原)をコードする核酸は、宿主細胞でのポリペプチドの発現のための適切な発現ベクターへとクローニングされる。宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ブタ、ウシ、ネコ、またはイヌであってもよい。哺乳動物細胞はまた、限定はされないが、サル、チンパンジー、ゴリラ、およびヒトを含む霊長類の細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、マウスが他の哺乳動物、最も具体的にはヒトのためのモデルとして通常機能するため、マウス細胞であってもよい(例えばHanna,J.ら、Science 318巻:1920~23頁、2007;Holtzman,D.M.ら、J Clin Invest.103巻(6号):R15~R21、1999;Warren,R.S.ら、J Clin Invest.95巻:1789~1797頁、1995を参照されたい;各刊行物は、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる)。宿主細胞は、例えば、線維芽細胞、上皮細胞(例えば、腎臓、乳房、前立腺、肺)、ケラチノサイト、肝細胞、脂肪細胞、内皮細胞、および造血細胞(例えば、マクロファージ、他の単球、抗原提示細胞、B細胞、好中球、マスト細胞、樹状細胞、または他の貪食細胞型)を含む。宿主細胞は、成熟細胞(例えば、最終的に分化した、分裂または非分裂)または胚細胞(例えば、胚盤胞細胞等)または幹細胞であってもよい。宿主細胞は、動物または他の起源由来の細胞株であってもよい。
【0105】
哺乳動物細胞は、ヒトを含む、哺乳動物の循環系で見出される細胞であり得る。例示的な循環系細胞は、中でも、赤血球、血小板、形質細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、マクロファージ、好中球等、およびそれらの前駆体細胞を含む。グループとして、これらの細胞は循環する真核細胞であると規定される。そのような循環する細胞は、初代細胞または初代細胞由来であり得る。循環する細胞は、自家、同系または同種異系であってもよい。哺乳動物細胞は、これらの循環する真核細胞のいずれかに由来してもよい。循環する細胞または循環する細胞由来の細胞が使用されてもよい。哺乳動物細胞は、マクロファージまたはマクロファージへの前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。単球またはマクロファージ細胞は、raw264.7細胞、K562細胞またはTHP-1細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、T細胞またはT細胞前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞、ガンマ デルタT細胞、または前述の細胞への前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、ナチュラルキラー細胞、またはナチュラルキラー細胞への前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、B細胞、または形質細胞、またはB細胞前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、好中球または好中球前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、巨核球または巨核球への前駆体もしくは前駆細胞であってもよい。哺乳動物細胞は、抗原提示細胞、例えば単球、マクロファージ、樹状細胞、上皮細胞等であってもよい。APCは、その表面にMHC分子を欠損するように操作されてもよい。そのようなAPCは、抗原ライブラリーのMHC:抗原融合ポリペプチドからのMHC分子のみを提示する。
【0106】
本明細書において、宿主細胞として使用され得る任意の免疫細胞は、例えば、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、および/または好中球を含む。宿主細胞は、受容体特異的免疫細胞または標的受容体を発現するように遺伝子改変された細胞株であり得る。宿主細胞は、ヒト初代免疫細胞、マウス初代免疫細胞、ラット初代免疫細胞、および不死化哺乳動物細胞株を含む。使用され得る不死化哺乳動物細胞株の例は、Jurkat、K562、Tall-104、Raji、HEK293、HEK293T、3T6、A559、A9、AtT-20、3T3、BHK-21、BHL-100、BT、Caco-2、Chang、CHO-K1、COS-1、COS-3、COS-7、Daudi、H9、HeLa、Hep-2、HL-60、HT-1080、HT-29、HUVEC、I-10、IM-9、JEG-2、MDA-MB-231、L2、KB、KG-1、MCF7、WI-38、WISH、XC、Y1、Jeko、NK-92、NK-92 MI、J76、CCRF-CEM、DND-41、HPB-ALL、MOL-4、RPMI-8402、GRANTA、MINO、REC-1、U-2940、BJAB、VAL、THP-1、MUTZ-3、U-937、ME-1、MOLM13、U-937、およびSEMを含む。
【0107】
宿主細胞は、対象から得ることができる。対象は、任意の生きた生物であってもよい。対象の例は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種を含む。マクロファージ、T細胞、抗原提示細胞等は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、いくつかの起源から得ることができる。いくつものマクロファージ細胞株、抗原提示細胞株、またはT細胞株が当技術分野で入手可能であり、使用され得る。マクロファージ、抗原提示細胞、またはT細胞は、Ficoll分離などの、当業者に公知のいくつもの技術を使用して対象から収集した血液の単位から得ることができる。個体の循環する血液からの宿主細胞は、アフェレーシスによって得ることができる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含むリンパ球を含有する。アフェレーシスによって収集した細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、細胞を後のプロセシング工程のために適切な緩衝液または培地に入れてもよい。細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)によって洗浄されてもよい。代替の態様では、洗浄溶液はカルシウムを欠損し、マグネシウムを欠損してもよく、または全てではないにしても多くの二価の陽イオンを欠損してもよい。カルシウムの非存在下での最初の活性化工程は、活性化の拡大をもたらし得る。
【0108】
一態様では、宿主細胞のゲノムは、CRISPRなどの標的化システムによる挿入核酸の挿入のためのユニークな部位を有する第1の核酸によって操作される。宿主細胞は、場合により、例えば、Cas9、Cas12a(別名、Cpf1)、適切なジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZEN)、または転写活性化因子様ヌクレアーゼ(TALEN)を含む標的化システムの酵素によって操作され得る。第1の核酸は、宿主細胞の受容体または結合タンパク質をコードする核酸の近くにまたは隣接して操作されてもよい。これは、受容体をコードする核酸の近くのまたは隣接したこの部位への核酸の指向性挿入を可能にする。抗原/リガンドが宿主細胞の受容体/結合タンパク質と相互作用する場合、これは宿主細胞に核酸を導入することができる。この核酸が適切な標的化核酸(例えば、ガイドRNA)を伴う場合、抗原/リガンドを示す核酸は、受容体をコードする核酸の近くにまたは隣接してインテグレートされ得る。例えば、本明細書に記載のpegRNAは、この部位に挿入され得る。適切なプライマーは、受容体の核酸(またはバーコード)および抗原/リガンドの核酸(またはバーコード)の両方を増幅および/またはシークエンシングする。
【0109】
核酸
核酸は、少なくとも部分的に、本明細書に記載の個々のペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびバーコードをコードし得る。核酸は、天然、合成またはこれらの組合せであってもよい。核酸は、RNA、mRNA、DNAまたはcDNAであってもよい。
【0110】
核酸は、発現ベクター、例えば、プラスミド、またはウイルスベクター、または線状ベクター、または染色体DNAにインテグレートするベクターも含む。発現ベクターは、1つまたは複数の選択された宿主細胞において、ベクターの複製を可能にする核酸配列を含有し得る。そのような配列は、様々な細胞で周知である。プラスミドpBR322からの複製の起源は、ほとんどのグラム陰性細菌に好適である。真核の宿主細胞、例えば哺乳動物細胞では、発現ベクターは宿主細胞の染色体にインテグレートされ、次いで宿主の染色体によって複製され得る。同様に、ベクターは原核細胞の染色体にインテグレートされ得る。
【0111】
発現ベクターは、通常、選択可能マーカーとも呼ばれる、選択遺伝子も含有する。選択可能マーカーは、本発明の宿主細胞を含む、原核細胞および真核細胞について、当技術分野で周知である。通常、選択遺伝子は、選択培養培地中で増殖する、形質転換した宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターによって形質転換されない宿主細胞は、培養培地中で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに耐性を付与する、(b)栄養要求性欠損を補足する、または(c)複合培地から入手できない重要な栄養素、例えばバシラス綱のD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。例示的な選択スキームは、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を利用することができる。異種遺伝子によって形質転換が成功したそれらの細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、したがって選択レジメンで生存する。細菌または真核生物(哺乳動物を含む)システムでの使用のための他の選択可能マーカーは、当技術分野で周知である。
【0112】
哺乳動物宿主細胞において、本明細書に記載のTCRまたは抗原をコードする導入遺伝子を発現することができるプロモーターの例は、EF1aプロモーターである。天然EF1aプロモーターは、リボソームへのアミノアシルtRNAの酵素的送達を担う、伸長因子1複合体のアルファサブユニットの発現を駆動する。EF1aプロモーターは、哺乳動物発現プラスミドで広く使用され、レンチウイルスベクターにクローニングされた導入遺伝子からの発現の駆動に有効であることが示されている。例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Miloneら、Mol.Ther.17巻(8号):1453~1464頁(2009)を参照されたい。プロモーターの別の例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結した任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強い構成的プロモーター配列である。他の構成的プロモーター配列も使用されてもよく、限定はされないが、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、MNDプロモーター(骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーを有する改変MoMuLV LTRのU3領域を含有する合成プロモーター、例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Liら、J.Neurosci.Methods 189巻、56~64頁(2010)を参照されたい)、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、限定はされないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子-1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターを含む。さらに、本明細書の発現ベクターは、構成的プロモーターの使用に限定されない。
【0113】
誘導性プロモーターも、発現ベクターでの使用のために企図される。誘導性プロモーターの例は、限定はされないが、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、テトラサイクリンプロモーター、c-fosプロモーター、テトラサイクリンオペレーター(複数可)の制御下でヒトサイトメガロウイルス最初期プロモーターから発現を起こすThermoFisherのT-RExシステム、およびIntrexonのRheoSwitchプロモーターを含む。その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Karzenowski,D.ら、BioTechiques 39巻:191~196頁(2005);Dai,X.ら、Protein Expr.Purif 42巻:236~245頁(2005);Palli,S.R.ら、Eur.J.Biochem.270巻:1308~1515頁(2003);Dhadialla,T.S.ら、Annual Rev.Entomol.43巻:545~569頁(1998);Kumar,M.B,ら、J.Biol.Chem.279巻:27211~27218頁(2004);Verhaegent,M.ら、Annal.Chem.74巻:4378~4385頁(2002);Katalam,A.K.,ら、Molecular Therapy 13巻:S103(2006);およびKarzenowski,D.ら、Molecular Therapy 13巻:S194(2006)、米国特許第8,895,306号、同第8,822,754号、同第8,748,125号、同第8,536,354号。
【0114】
発現ベクターは、典型的には、プロモーターエレメント、例えば、エンハンサーを有して、転写開始の頻度を制御する。典型的には、これらは、開始部位の上流30~110bpの領域に位置するが、いくつかのプロモーターは同様に開始部位の下流に機能性エレメントを含有することが示されている。プロモーターエレメント間のスペーシングは多くの場合フレキシブルであり、そのため、プロモーター機能は、エレメントが互いに関して逆位にまたは移動される場合保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント間のスペーシングは、活性が減少し始める前に50bp離れるまで増加され得る。プロモーターに応じて、個々のエレメントは協同的にまたは独立してのいずれかで機能し、転写を活性化することができると思われる。
【0115】
本明細書に記載のポリペプチドを改変することが望ましいこともある。当業者は、所与の核酸構築物に変更を生じさせてバリアントポリペプチドを生成する多くの方法を認識するであろう。そのような周知の方法は、部位特異的突然変異誘発、変性したオリゴヌクレオチドを使用するPCR増幅、核酸を含有する細胞の突然変異誘発物質または放射線への曝露、所望のオリゴヌクレオチドの化学合成(例えば、ライゲーションおよび/またはクローニングと併せて大きな核酸を生成する)および他の周知の技術(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、GillamおよびSmith、Gene 8巻:81~97頁、1979;Robertsら、Nature 328巻:731~734頁、1987を参照されたい)を含む。本明細書に記載のポリペプチドをコードする組換え核酸は、改変されて、選択した生物における核酸の翻訳を増強する好ましいコドンを提供することができる。
【0116】
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリヌクレオチドと実質的に同等のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドも含む。ポリヌクレオチドは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、少なくとも約80%、より典型的には少なくとも約90%、さらにより典型的には少なくとも約95%の配列同一性を有し得る。ポリヌクレオチドは、上記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、少なくとも約80%、より典型的には少なくとも約90%、さらにより典型的には少なくとも約95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドの補体を含む。ポリヌクレオチドは、DNA(ゲノム、cDNA、増幅、または合成)またはRNAであってもい。そのようなポリヌクレオチドを得るための方法およびアルゴリズムは、当業者に周知であり、例えば、所望の配列同一性のポリヌクレオチドを通常単離し得るハイブリダイゼーション条件を決定するための方法を含み得る。
【0117】
タンパク質類似体またはバリアントをコードする(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸が、野生型ポリペプチドとは異なるように設計される)核酸は、プライマー(複数可)が所望の点突然変異を有する、部位特異的突然変異誘発またはPCR増幅を使用して産生され得る。好適な突然変異誘発技術の詳細な説明については、そのそれぞれが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)および/またはCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、Green Publishers Inc.and Wiley and Sons、N.Y(1994)を参照されたい。当技術分野で周知の方法を使用する化学合成は、例えば、Engelsら、Angew Chem Intl版28巻:716~34頁、1989(全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる)によって記載され、そのような核酸を調製するためにも使用され得る。
【0118】
バリアントを作出するためのアミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、類似の構造および/または化学特性を有する別のアミノ酸によって置き換える結果、すなわち保存アミノ酸置き換えであり得る。アミノ酸置換は、含まれる残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて作製され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含み;極性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含み;正に帯電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、およびヒスチジンを含み;負に帯電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。
【0119】
核酸は、好適なプロモーターの制御下で発現されるように、別の核酸に連結され得る。核酸は、核酸の効率的な転写を達成するために、プロモーターまたは転写開始部位と連携する他の調節エレメント、例えば、エンハンサー配列、ポリA部位、または終止配列を含む核酸にも連結され得る。核酸に加えて、核酸の発現を確認するためのマーカーであり得る遺伝子(例えば、薬物耐性遺伝子、レポーター酵素をコードする遺伝子、または蛍光タンパク質をコードする遺伝子)が組み込まれてもよい。
【0120】
核酸がex vivoで細胞に導入される場合、核酸は、細胞への核酸の移動を促進する物質、例えば、前述の賦形剤に加えて、リポソームまたはカチオン性脂質などの核酸を導入するための試薬と組み合わされてもよい。あるいは、核酸を運ぶベクターも有用である。特に、好適なベクターによって運ばれた核酸を含有する生体への投与に好適な形態の組成物が、in vivo遺伝子治療に好適である。
【0121】
宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入
核酸は、トランスフェクション(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Gormanら Proc.Natl.Acad.Sci.79巻22号(1982):6777~6781頁)、形質導入(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、CepkoおよびPear(2001)Current Protocols in Molecular Biology unit 9.9;DOI:10.1002/0471142727.mb0909s36)、リン酸カルシウム形質転換(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Kingston、ChenおよびOkayama(2001)Current Protocols in Molecular Biology Appendix 1C;DOI:10.1002/0471142301.nsa01cs01)、組換えDNAを微細藻類細胞へと導入する塩化カルシウムおよびポリエチレングリコール(PEG)(クロレラ・エリプソイデア(Chlorella ellipsoidea)のプロトプラストを形質転換するこの方法の使用を報告し、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Kimら、(2002)Mar.Biotechnol.4巻:63~73頁を参照されたい)、細胞透過性ペプチド(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Copolovici、Langel、Eriste、およびLangel(2014)ACS Nano 2014 8巻(3号)、1972~1994頁;DOI:10.1021/nn4057269)、エレクトロポレーション(例えば、これらの参照の両方が全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Potter(2001)Current Protocols in Molecular Biology unit 10.15;DOI:10.1002/0471142735.im1015s03およびKimら(2014)Genome 1012~19頁.doi:10.1101/gr.171322.113、Kimら 2014は最適化したエレクトロポレーションシステムであるAmaza Nucleofectorを記載する)、マイクロインジェクション(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、McNeil(2001)Current Protocols in Cell Biology unit 20.1;DOI:10.1002/0471143030.cb2001s18)、リポソームまたは細胞融合(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Hawley-NelsonおよびCiccarone(2001)Current Protocols in Neuroscience Appendix 1F;DOI:10.1002/0471142301.nsa01fs10)、機械的操作(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Sharonら(2013)PNAS 2013 110巻(6号);DOI:10.1073/pnas.1218705110)、遺伝子銃法(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Sanford、Trends in Biotech.(1988)6巻:299~302頁、米国特許第4,945,050号を参照されたい)、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、酢酸リチウム/PEG形質転換(GietzおよびWoods(2006)Methods Mol.Biol.313巻,107~120頁)およびその改変、または宿主細胞への核酸の送達のための他の周知の技術によって真核細胞へと導入され得る。導入されると、本発明の核酸は、エピソームとして発現され得るか、または周知の技術、例えば組換え(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、LisbyおよびRothstein(2015)Cold Spring Harb Perspect Biol.Mar 2;7巻(3号).pii:a016535.doi:10.1101/cshperspect.a016535)、非相同インテグレーション(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Deyle and Russell(2009)Curr Opin Mol Ther.2009 Aug;11巻(4号):442~7頁)または転位(可動遺伝因子について上記のように)を使用して宿主細胞のゲノムにインテグレートされ得る。相同および非相同組換えの効率は、標的一本鎖または二本鎖切断(DSB)を導入するゲノム編集技術によって促進され得る。DSB生成技術の例は、CRISPR/Cas9、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、または同等のシステム(例えば、その全てが全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Congら Science 339巻6121号(2013):819~823頁、Liら Nucl.Acids Res(2011):gkr188、Gajら Trends in Biotechnology 31巻7号(2013):397~405頁)、トランスポゾン、例えば、Sleepeing Beauty(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Singhら(2014)Immunol Rev.2014 Jan;257巻(1号):181~90頁.doi:10.1111/imr.12137)、例えば、FLPリコンビナーゼを使用する標的化組換え(例えば、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、O’Gorman、FoxおよびWahl Science(1991)15巻:251(4999):1351~1355頁)、CRE-LOX(例えば、SauerおよびHenderson PNAS(1988):85巻;5166~5170頁)、または同等のシステム、あるいは真核細胞ゲノムへと本発明の核酸をインテグレートするための当技術分野で公知の他の技術である。
【0122】
宿主細胞へとポリヌクレオチドを導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、微粒子、ビーズ、ならびに水中油系エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースのシステムを含む。in vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとしての使用のための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜ベシクル)である。核酸の最新式の標的化送達の他の方法、例えば、標的化ナノ粒子によるポリヌクレオチドの送達または他の好適なサブミクロンサイズの送達系が利用可能である。
【0123】
新規の受容体
T細胞受容体および対応する抗原/リガンドは、本明細書に記載のTCRレパートリーを本明細書に記載の抗原ライブラリーと混合し、ある特定の抗原-MHC融合タンパク質を有する細胞を貪食した、キメラTCRを有する個々の細胞を分離することによって見出される。あるいは、T細胞受容体および対応する抗原/リガンドは、本明細書に記載のTCRレパートリーを本明細書に記載の抗原ライブラリーと混合し、トロゴサイトーシスマーカーおよび抗原/TCRバーコードを有する個々の細胞を分離することによって見出される。例えば、抗原ライブラリーを有する細胞は光学プローブによって標識され得、場合によりTCRレパートリーを有する細胞は、異なる光学プローブによって標識され得る。FACsソーティングは、次いで、抗原ライブラリーから抗原バーコードを得る、TCRレパートリーから細胞を単離するために使用され得る。次いで、分離した細胞をシークエンシングして、TCRおよび抗原対を同定する。シークエンシングは、TCRおよび抗原を同定するために実施され得る。例えば、シークエンシングは、各TCRおよび各抗原と関連するバーコードを同定することができるか、またはTCRおよび抗原融合体は、全体もしくは部分的にシークエンシングされ得る。これらのシステムおよびこれらの方法のハイスループットは、TCRおよびTCRが結合する抗原の同定を可能にする。同定されたTCRは、目的の抗原と相互作用することが公知ではない多くの新規のTCRを含む。
【0124】
本明細書に記載の方法および組成物は、がん、感染性疾患、自己免疫疾患等の処置において有用な新規のTCRを見出すために使用され得る。これらの疾患と関連する標的抗原が公知であり、抗原と相互作用する新規のTCRを見出すために使用され得る。これらの方法によって同定されたTCRを使用して、これらの疾患を処置するための免疫療法を産生することができる。例えば、多くの腫瘍関連抗原(TAA)が公知である。本明細書に記載の方法および組成物は、TAAに結合するTCRを見出すために使用され得る、TAAからの抗原ライブラリーを産生することができる。これらのTCRを使用して、細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞をがん細胞へと標的化するキメラTCRSおよび/またはキメラ抗原受容体を作製することができる。同様に、多くの抗原が、様々な感染性疾患について公知である。本明細書に記載の方法および組成物は、これらの感染性疾患を処置するために使用され得るTCRを同定することができる。例えば、Fcシグナル伝達部分(および場合により共活性化因子)とTCRリガンド結合部分を組み合わせるキメラTCRを使用して、感染性疾患を引き起こす微生物因子を貪食するマクロファージまたは他の貪食細胞を作製することができる。あるいは、キメラTCRまたはキメラ抗原受容体は、T細胞活性化、トロゴサイトーシスおよび抗原/TCRバーコード交換を誘発する。TCRを使用して、腫瘍細胞を溶解するヘルパーT細胞を活性化する、腫瘍微小環境を活性化する、または中和抗体の産生におけるB細胞を支援することができるキメラ抗原受容体を作製することもできる。
【0125】
例示的な腫瘍関連抗原は、ある特定のがんと関連するKRASバリアント対立遺伝子である。膵臓がんの90%、ならびに肺、結腸、および胆管がんの30%より多くが、これらのKRASバリアント対立遺伝子の1つを有する。KRASバリアント対立遺伝子は、例えば、G12D、G12V、G12R、G12H、G12S、G12L、Q61H、Q61K、Q61R、A11T、G13P、G13D、ならびに二重突然変異G12DおよびQ61Hを含む。抗原ライブラリーは、抗原ライブラリーによる提示のための突然変異を含むペプチドに集中するこれらの突然変異KRASバリアント対立遺伝子の一部または全てによって作製される。多くの異なるT細胞受容体レパートリーを、KRAS抗原ライブラリーと組み合わせて、異なるKRASバリアント対立遺伝子に結合するTCRを見出すことができる。使用したT細胞受容体レパートリーは、TCR、または目的のがん(例えば、膵臓がん、または肺がん、または結腸がん、または胆管がん)を生き延びたがん患者からのTCRのゲノムライブラリーから起源し得る。TCRレパートリーは、患者の免疫系ががんと戦うことができたことを示す、免疫療法を受け、生き延びた(または部分的な応答を示した)患者から作製することができる。
【0126】
抗KRASバリアントTCRは、異なるKRASバリアント対立遺伝子と野生型KRASの間を区別するそれらの能力について評価され得る。KRASバリアントおよび野生型の、抗KRASバリアントTCRの親和性も評価され得る。抗KRASバリアントT細胞受容体は、これらの特徴に基づいてグループに層別化することができ、抗KRASバリアントT細胞受容体を使用して免疫療法のためのキメラ抗原受容体を作製することができる。
【0127】
他の腫瘍関連抗原は、例えば、メソテリン、ジシアロガングリオシド(GD2)、Her-2、MUC1、GPC3、EGFRVIII、CEA、CD19、EGFR、PSMA、GPC2、葉酸受容体β、IgG Fc受容体、PSCA、PD-L1、EPCAM、Lewis Y抗原、L1CAM、FOLR、CD30、CD20、EPHA2、PD-1、C-MET、ROR1、CLDN18.2、NKG2D、CD133、TSHR、CD70、ERBB、AXL、細胞死受容体5、VEGFR-2、CD123、CD80、CD86、TSHR、ROR2、CD147、カッパIGG、IL-13、MUC16、IL-13R、NY-ESO-1、IL13RA2、DLL3、FAP、LMP1、TSHR、BCMA、NECTIN-4、MG7、AFP(アルファ-フェトプロテイン)、GP100、B7-H3、Nectin-4、MAGE-A1、MAGE-A4、MART-1、HBV、MAGE-A3、TAA、GP100、チログロブリン、EBV、HPV E6、PRAME、HERV-E、WT1、GRAS G12V、p53、TRAIL、MAGE-A10、HPV-E7、KRAS G12D、MAGE-A6、CD19、BCMA、CD22、CD123、CD20、CD30、CD33、CD138、CD38、CD7、SLAMF7、IGG FC、MUC1、Lewis Y抗原、CD133、ROR1、FLT3、NKG2D、カッパ軽鎖、CD34、CLL-1、TSLP、CD10、PD-L1、CD44V6、EBV、CD5、GPC3、CD56、インテグリンB7、CD70、MUCL、CKIT、CLDN18.2、TRBC1、TAC1、CD56、CD4、CD2、CD18、CD27、CD37、CD72、CD79A、CD79B、CD83、CD117、CD172、ERBB3、ERBB4、DR5、HER2、CS1、IL-1RAP、ITGB7、SLC2A14、SLC4A1、SLC6A11、SLC7A3、SLC13A5、SLC19A1、SLC22A12、SLC34A1、slc45A3、SLC46A2、Fra、IL-13Ra2、ULBP3、ULBP1、CLD18、NANOG、CEACAM8、TSPAN16、GLRB、DYRK4、SV2C、SIGLEC8、RBMXL3、HIST1HIT、CCR8、CCNB3、ALPPL2、ZP2、OTUB2、LILRA4、GRM2、PGG1、NBIF3、GYPA、ALPP、SPATA19、FCRLI、FCRLA、CACNG3、UPK3B、12UMO4、MUC12、HEPACAM、BPI、ATP6V0A4、HMMR、UPK1A、ADGRV1、HERC5、C3AR1、FASLG、NGB、CELSR3、CD3G、CEACAM3、TNFRSFBC、MS4AB、S1PR5、EDNRB、SCN3A、ABCC8、ABCB1、ANO1、KCND2、HTR4、CACNB4、HTR4、CNR2、26LRB、EXOC1、ENTPP1、ICAM3、ABCGB、SCN4B、SPN、CD68、ITGAL、ITGAM、SCTR、CYYR1、CLCN2、SLARA3、およびJAG3を含む。
【0128】
他の腫瘍関連抗原は、例えば、補体因子H(例えば、肺がん、乳がん、他の固形腫瘍)、デルタオピオイド受容体(例えば、小細胞肺がん)、c-Met(例えば、NSCLC)、gpNMB(例えば、メラノーマ、乳がん、他の固形腫瘍)、TRAP-2(例えば、上皮腫瘍および他の固形腫瘍)、CEACAM5(例えば、結腸直腸がん)、CD56(例えば、SCLC)、CD25(例えば、血液がん)、グアニルシクラーゼC(例えば、膵臓がん)、CAG(例えば、固形腫瘍)、LIV-1(例えば、乳がん)、PTK7(例えば、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、および卵巣がん)、LAMP-1(例えば、結腸直腸がん、メラノーマ、喉頭がん)、P-カドヘリン3(例えば、上皮腫瘍)、HER-3(例えば、乳がん)、CD133(例えば、肝細胞癌、膵臓がん、結腸直腸がん、胆管細胞癌)、GPRC5D(例えば、多発性骨髄腫)、BCMA(例えば、多発性骨髄腫)、CD138(例えば、多発性骨髄腫)、Igカッパ軽鎖(例えば、白血病、リンパ腫、NHL、および多発性骨髄腫)、CD30(例えば、NHL、HD)、IL13Ra2(例えば、神経膠芽腫)、およびNKG2Dのリガンド(例えば、AML、MDS、およびMMなどの結合ドメインとしてNKG2D受容体を使用する)を含む。
【0129】
あるいは、上記のレトロウイルスは、その表面に受容体または他の結合分子を提示する宿主細胞と使用され得る。レトロウイルス(抗原/リガンドを提示する)および宿主細胞の集団は組み合わされる(例えば、物理的に組み合わせるかまたは接触させる)。宿主細胞の集団は、レポーター(レトロウイルスによって運ばれた核酸にコードされる)の存在または非存在に基づきソートされ得る。レポーターを含有する(例えば、レポーターを発現する)宿主細胞の集団のサブセットは、レポーターを含有しない宿主細胞の集団の残りのサブセットからソートされ得る。細胞の集団のソーティングは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞ソーティング)、磁気富化、または抗生物質選択を使用して実施され得る。このFACsまたは他のソーティングは、レトロウイルスによって感染された宿主細胞を、感染していない宿主細胞(レトロウイルス核酸を有さない)から分離する。
【0130】
レンチウイルスまたはレトロウイルスは、宿主細胞の感染後に発現されるいくつかの遺伝成分を運ぶことができる:1)抗原/リガンドの遺伝子配列、2)鋳型領域にバーコードを含むプライムエディティングガイドRNA(pegRNA)、3)ウイルス形質導入の存在を示すレポーター遺伝子(例えば、GFPなどのレポーター)、および4)他のヘルパータンパク質(例えば、MHC)。これらの遺伝成分は、受容体または結合タンパク質を有する宿主細胞(例えば、T細胞)で発現される。レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)は、潜在的な抗原/リガンドおよび宿主細胞の受容体または結合タンパク質に結合するために必要なヘルパータンパク質を示し得る。レポーター遺伝子(例えば、GFP)は、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)によって感染した宿主細胞によって発現され、感染していない宿主細胞からの、感染した宿主細胞のスクリーニングおよびソーティング(例えば、FACsによる)を可能にする。レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクターは、以下の2つの機能を提供するpegRNAを送達する:1)受容体または結合タンパク質をコードする核酸の近くにまたは隣接してインテグレートされたユニークな部位を有する配列相同性に基づき、CRISPR編集複合体を特定の挿入部位に標的化する、および2)相同性に基づく修正により、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)核酸(例えば、バーコード配列)を特定の挿入部位に挿入する。
【0131】
レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)にパッケージされる構築物は、定常領域および2つの可変領域を有し得る。1つの可変領域は、宿主細胞の標的部位にpegRNA足場によって挿入されるバーコードをコードする。第2の可変領域は、抗原/リガンドの可変領域をコードして、受容体/結合タンパク質、例えば、S-ETD-LGD-IRES-R(ここで、Sはシグナル配列をコードし、ETDは細胞外標的化ドメインをコードし;LGDは抗原/リガンドをコードし、IRESは配列内リボソーム侵入部位をコードし、Rはレポーター(例えば、蛍光タンパク質または抗生物質耐性)をコードする)と相互作用する。IRESおよびMは場合によるものであり、核酸はS-ETD-LGDをコードし得る。ヌクレオチド配列は、I型制限消化ベースのアセンブリー、Golden Gateアセンブリー、GatewayアセンブリーまたはGibsonアセンブリーによって同時にまたは逐次的にこれら2つの可変領域に挿入され得る。I型制限消化ベースのアセンブリーを使用する場合、2つの異なる消化酵素が各可変領域に使用される。Golden Gateアセンブリーを使用する場合、4つのII型制限消化部位を導入して、バーコードおよび抗原ヌクレオチド配列を同時に挿入することを可能にし得る。
【0132】
ウイルス構築物のためのフソゲンは、抗原/リガンド-受容体(または結合タンパク質)相互作用時にのみ、細胞間の膜融合を可能にするように操作される。そのようなフソゲンの1つの例は、突然変異水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)である。VSV-Gは、シュードタイプレンチウイルスに広く使用されてきたウイルスエンベロープタンパク質である。突然変異の例は、宿主細胞のLDLRのその直接認識および相互作用を妨害する、K47QおよびR354Aである(全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Nikolicら、2018 CITE)。ここで、VSV-Gは、ユーザーが規定したリガンド-受容体相互作用に基づき細胞侵入を媒介することができる。
【0133】
レンチウイルスおよび/またはレトロウイルスは、出芽中に、それら自体のウイルス膜として宿主細胞膜を使用することができ、したがって、産生細胞膜に存在する任意のタンパク質がウイルス粒子によって提示され得る。産生細胞は、レンチウイルスおよび/またはレトロウイルス構築物が抗原/リガンドタンパク質配列を含有し、抗原/リガンドタンパク質が膜に結合している限り、それらの細胞膜上に全長抗原/リガンドタンパク質を提示することができる。多くのリガンドは、本来、膜タンパク質(例えば、PD-L1およびMHC-抗原複合体)である。本来、膜に結合していない抗原/リガンドは、それを膜貫通ドメインDNA配列、例えばウイルス外被タンパク質に融合することにより、細胞膜に係留され得る。例示的な膜貫通ドメインは、CD2、CD3d、CD3g、CD3z、CD4、CD8A、CD8B、CD22、CD27、CD28、CD40、CD79a、CD79b、CD80、CD84、CD86、CD137、CD244、CRACC、CRTAM、CLTA-4、MHC-I、MHC-II、血小板由来増殖因子受容体、FCGR1A、FCGR2A、FCG2B、FCGR3A、FCRL1、FCRL2、FCRL3、FCRL4、FCRL5、FCRL6、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、LAG3、GITR、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、TLR、SLAMF、LILRB1、LILRB2、NKG2A、NKG2C、NKG2D、TIGIT、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、または免疫グロブリン由来の野生型または改変膜貫通ドメインを含む。
【0134】
MHC-抗原複合体は、一本鎖三量体を使用して、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)に提示され得る(全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Mottezら、Cells expressing a major histocompatibility complex class I molecule with a single covalently bound peptide are highly immunogenic,J.Exp.Med.181巻:493~502頁(1995))。一本鎖三量体は、縦一列にシグナルペプチド、抗原ペプチド、リンカー、MHCベータ鎖、第2のリンカーおよびMHCアルファ鎖を有し得る。例えば、ヒト増殖ホルモンシグナルペプチドからベータ2ミクログロブリン(MHCベータ鎖)までをコードするDNAを合成し、MHCアルファ鎖と共にレンチウイルス構築物に挿入され得る。一本鎖三量体DNA(本発明者らのレンチウイルスおよびレトロウイルスプラスミドの一部)をパッケージング細胞株(293T)にコトランスフェクトすることは、膜結合MHC-抗原複合体を産生するであろう。レンチウイルスおよびレトロウイルスがそれらのウイルス膜としてパッケージング細胞膜を使用する場合、MHC-抗原複合体はウイルス膜に提示され得る。
【0135】
レポーター(例えば、GFPなどのなレポーター)は、ウイルスの侵入を示す2つの方法で宿主細胞に導入され得る:1)レンチウイルスまたはレトロウイルスは、事前に翻訳されたレポーター遺伝子産物(タンパク質)を運ぶ、2)レンチウイルスまたはレトロウイルスは、レポーター遺伝子を受容体細胞ゲノムに送達およびインテグレートする。ウイルスによりレポーター遺伝子産物を運ぶ例示的な方法は、GFPをウイルス構造タンパク質(例えば、ウイルスエンベロープタンパク質またはMタンパク質)と融合することである。レンチウイルスおよびレトロウイルスは、天然では、レポーターを有する構築物を宿主細胞ゲノムに送達する。
【0136】
パッケージング細胞によりレンチウイルスまたはレトロウイルスを産生した後、ウイルス懸濁液は受容体宿主ライブラリーと混合され得る。レンチウイルスまたはレトロウイルスは、それらの間に正しい抗原/リガンド-受容体/結合タンパク質対がある場合、受容体宿主細胞に感染する。レンチウイルスまたはレトロウイルスは、ウイルスRNAおよび関連タンパク質(逆転写酵素および/またはレポータータンパク質)を受容体細胞に送達する。逆転写酵素によってインテグレートされたウイルスRNAまたはウイルスDNAは、レポーター遺伝子産物(例えば、GFP)およびpegRNA(バーコード配列)を産生することができる。
【0137】
pegRNAは、Cas9またはCas12aまたは他の遺伝子編集酵素と相互作用することにより、受容体宿主細胞ゲノム(例えば、受容体遺伝子の近くのまたは隣接する領域)の特定の部位へとバーコードを導入することができる。CRISPR編集酵素は、宿主細胞、レンチウイルスウイルスDNAによって産生されるか、またはエレクトロポレーションによって導入され得る。次いで、バーコードを、受容体(および/またはそのバーコード)によってシークセンスして、抗原/リガンドおよび受容体/結合タンパク質対を同定することができる。
【0138】
pegRNAは、以下の3つの成分を有し得る:1)足場領域(定常領域としても公知)、2)配列標的化領域、および3)バーコード領域。配列標的領域は、宿主細胞の挿入部位に特異的である。1e0~1e5の配列標的領域を使用して、受容体宿主細胞の複数の領域を標的化することができるが、各個々のpegRNAは1つの領域のみを標的化することができる。バーコード領域は、挿入部位に挿入される特異的配列を決定する。1e0~1e10の異なるバーコードが使用され得る。配列標的化領域およびバーコード領域は、ウイルスプラスミド上で互いに近接し、したがって、それらは同じクローニング部位または別々のクローニング部位を使用することができる。
【0139】
感染細胞は、例えば、フローサイトメトリーFACSまたは磁気ビーズプルダウンを使用して、レポーター遺伝子産物(GFP)に基づいて単離され得る。磁気ビーズは、表面受容体タンパク質(例えば、MYC-タグまたはFLAG-タグ)に結合することができるタンパク質または抗体にコンジュゲートされ得る。磁気ビーズに結合した細胞は、感染細胞が富化される。
【0140】
これらの富化した宿主細胞はバルクであり、ハイスループットシークエンシングして受容体/結合タンパク質および抗原/リガンドを同定することができる。このシークエンシングは、pegRNAバーコードを同定して、受容体に結合する抗原/リガンドを同定する。pegRNAは、受容体遺伝子の近くにまたは隣接して挿入されるため、従来のシークエンシング(100~600ntの長さ)またはロングリードシークエンシング(600~30,000nt)のいずれかを実施して、抗原/リガンドバーコードと受容体/結合タンパク質の間の関係を捉えることができる。バーコード-リガンド関係は、構築物バルクシークエンシングによって先に確立することができるため、結合対は計算により推測され得る。
【0141】
本明細書に開示の本発明は、以下に詳述した実験により、より良く理解されるであろう。しかしながら、当業者は、特定の方法および議論した結果が、後述の特許請求の範囲により完全に記載されるように、単に本発明の例示にすぎないことを容易に認識するであろう。他に示さない限り、本開示は、特定の手順、材料等に限定されず、変化し得るものである。本明細書で使用した用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0142】
実施例1:TCRミミック様キメラTCRまたはキメラ抗原受容体(CAR)を作製する
一本鎖T細胞受容体を、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、Zhangら、Cancer Gene Therapy 11巻:487~496頁(2004)に従って作製する。適切な細胞質領域を、一本鎖TCRと融合して、キメラT細胞受容体を作製する。細胞質領域は、Fc細胞質ドメイン、CD3ζ、CD28、B7.1、CD137、CD19細胞内活性化ドメイン、CD64細胞内活性化ドメイン、CD32細胞内活性化ドメイン、CD16細胞内活性化ドメイン、CD23細胞内活性化ドメイン、またはLck活性化ドメインの1つまたは複数を含む。
【0143】
一本鎖または天然の二本鎖TCRまたは天然の二本鎖TCRを、T細胞受容体、Flu-TCR1、Flu-TCR2、DMF-5、1G4、CSS-944-8、CSS-930-1a、CSS-930-1b、PMEL-1、PMEL-2およびPMEL-3から作製する。これらのTCRのそれぞれのアルファおよびベータTCR鎖のある特定の配列は、以下の表3および4である:
【0144】
【0145】
【0146】
TCRおよびそれらの抗原の一部は、Spindlerら、Nature Biotechnol.38巻:609~619頁(2020)に記載される。
【0147】
複数のキメラ抗原受容体を、各一本鎖TCRについて作製する。TCR CDR3領域およびその隣接領域(約150nt)は、TCR同定のためのバーコードとして機能する。
【0148】
TCRレパートリーは、ヒトドナー組織(血液を含む)で同定されたTCR配列、改変された天然のヒトTCR配列、またはコンピューターアルゴリズムによって生成されたTCR配列も含み得る。スクリーニングの成功率を増強するため、以下のアプローチの1つを使用してTCR配列を選択することができる:目的のHLA対立遺伝子を有するドナーからTCRを選択する、目的の条件によってドナーを選択する(例えば、CMV状態もしくはがん状態、またはTCR配列に基づくアルゴリズムを予測するHLAを使用する。
【0149】
実施例2:THP-1細胞におけるTCRのレパートリー
実施例1で作製したキメラTCRのレパートリーを、THP-1細胞に操作により導入する。個々のTHP-1細胞が1つの構築物を有し、1つのキメラTCRを発現するように、キメラTCRをコードする構築物を導入する。キメラTCRのレパートリーを有するTHP-1細胞の集団は、後の工程で使用され得る。
【0150】
実施例3:Jurkat細胞におけるTCRのレパートリー
実施例1で作製したキメラTCRのレパートリーを、Jurkat細胞に操作により導入する。個々のJurkat細胞が1つの構築物を有し、1つのキメラTCRを発現するように、キメラTCRをコードする構築物を導入する。キメラTCRのレパートリーを有するJurkat細胞の集団は、後の工程で使用され得る。
【0151】
実施例3:K562細胞における抗原ライブラリー
抗原ライブラリーを、適切なインフルエンザHLA、ヒトMART-1、エピトープNY-ESO-1(SLLMWITQC)、LMP2(CLG)、A2/MEL(KTW)のpMHCデキストラマー、gp100から、ならびにT細胞受容体Flu-TCR1、Flu-TCR2、DMF-5、1G4、CSS-944-8、CSS-930-1a、CSS-930-1b、PMEL-1、PMEL-2およびPMEL-3のために作製する。HLA遺伝子および抗原配列は、単一ペプチドに融合されるか、または別々のペプチドとしてコードされ得る。HLAアルファおよびベータ鎖は融合されるか、または別々のペプチドとしてコードされ得る。HLAは全長タンパク質の断片のみに結合し、それを提示することができるため、抗原配列は8~25アミノ酸長である。コンピューターアルゴリズムは、提示可能な抗原として使用するためのペプチドを選択し、他のエピトープは、全ての目的のためにその全体を参照により組み込まれる、IEDB(iedb.org)、例えば、Vitaら、The Immune Epitope Database(IEDB):2018年改訂で以前に報告されている。抗原提示細胞の抗原バーコードは、抗原をコードするDNAまたはRNAと同時にまたは逐次的に導入され得る。DNAまたはRNAのいずれかで作製された抗原バーコードは、操作したジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写因子結合タンパク質、複製タンパク質A、CRSIPR Cas9、Cpf1、Cas13、ファージRNA結合タンパク質、細菌一本鎖結合タンパク質、または操作した制限消化酵素であり得るDNAまたはRNA結合タンパク質を介して細胞膜に結合され得る。
【0152】
フルデータ生成実験のため、抗原配列のレパートリー(>100)をK562細胞に導入する。抗原配列は、in vitro結合実験、マススペクトロメトリー実験、タンパク質配列のスライディングウィンドウ(ウィンドウあたり8~25)、またはコンピューターアルゴリズムによって提示可能と予測される公知のタンパク質の断片で同定されたペプチド配列であり得る。このコンピューターアルゴリズムを、in vitro結合データ、マススペクトロメトリーデータ、または遺伝子発現データのいずれかで訓練して、MHC/HLA複合体によって提示され可能性が高い配列を同定する。
【0153】
実施例4:抗原ライブラリーに対するキメラT細胞受容体レパートリーのスクリーニング
TCRレパートリーを有するTHP-1細胞および抗原ライブラリーを有するK562細胞を、それぞれ、異なる蛍光タンパク質またはそれらの核に制限された生細胞色素によっても標識する。キメラTCRレパートリーを有するTHP-1細胞を、抗原ライブラリーを有するK562細胞と混合し、THP-1細胞は、キメラTCRによって認識されたMHC:抗原融合体を提示するK562細胞を貪食することができる。インキュベーション後、全ての細胞を、フローサイトメトリーおよび細胞ソーティングによって解析して、両方の蛍光シグナルを有する細胞(THP-1細胞およびK562細胞が共にあることを示す)を単離する。2つの異なる蛍光シグナルを有する細胞は、K562細胞を貪食したTHP-1細胞である。この細胞集団を、バルクまたは単一細胞DNAシークエンシングのいずれかによってシークエンシングする。プライマーを使用して、抗原コード領域(抗原バーコード)およびCDR3領域(TCRバーコード)を増幅する。バルクシークエンシングから、抗原およびTCR配列の結合対を同定する。
【0154】
単一細胞シークエンシングから、活性化イベントに関与する対合した抗原およびTCR配列が同定され得る。抗原またはTCR読み取りの頻度を使用して、最も相互作用する可能性が高い対を同定することができる。
【0155】
実施例5:抗原ライブラリーに対するT細胞受容体レパートリーのスクリーニング
TCRレパートリーを有するJurkat細胞および抗原ライブラリーを有するK562細胞を、それぞれ異なる膜結合蛍光タンパク質または生細胞色素によっても標識する。さらに、TCRレパートリーおよび抗原ライブラリーを、核酸結合タンパク質のための適切な結合モチーフによって操作する。Jurkat細胞およびK562細胞を、核酸結合ドメインが膜の細胞質側に存在するように、核酸結合タンパク質および合成の膜貫通ドメインの融合タンパク質によって操作する。キメラTCRレパートリーを有するJurkat細胞を、抗原ライブラリーを有するK562細胞と混合し、Jurkat細胞は、キメラTCRによって認識されるMHC:抗原融合体を提示するK562細胞からの膜片をトロゴサイトーシスすることができる(K562細胞はKurkat細胞膜片もトロゴサイトーシスすることができる)。インキュベーション後、全ての細胞を、フローサイトメトリーおよび細胞ソーティングによって解析して、両方の蛍光シグナルを有する細胞(Jurkat細胞がK562細胞膜をトロゴサイトーシスしたことを示す)を単離する。2つの異なる蛍光シグナルを有する細胞は、K562細胞によって活性化されたJurkat細胞である。抗原およびTCRをコードする核酸の部分を、バルクまたは単一細胞DNAシークエンシングのいずれかによってシークエンシングする。プライマーを使用して、抗原コード領域(および/または抗原バーコード)およびCDR3領域(および/またはTCRバーコード)を増幅する。バルクシークエンシングから、抗原およびTCR配列の結合対を同定する。
【0156】
単一細胞シークエンシングから、活性化イベントに関与する対合した抗原およびTCR配列が同定され得る。抗原またはTCR読み取りの頻度を使用して、最も相互作用する可能性が高い対を同定することができる。
【0157】
実施例6:レトロウイルス抗原ライブラリーに対するT細胞受容体レパートリーのスクリーニング
上記のTCRレパートリーを有するJurkat細胞を、この実施例で使用する。これらのJurkat細胞を操作して、Cas12aを発現させる。レンチウイルス構築物を、pegRNAおよびGFPと融合した抗原-MHC複合体によって操作する。pegRNAは、レンチウイルス構築物を標的化して、Jurkat細胞ゲノムにおけるTCR遺伝子付近をシークエンシングする。pegRNAは、15ntの長さのランダム配列であり得るバーコード配列を含む(1e9の理論的多様性)。pegRNA配列を、U6プロモーターによって発現させ、ポリT配列によって終結させる。レンチウイルス構築物は、GFPと融合した一本鎖三量体として導入される抗原-MHC複合体のライブラリーを発現する。レンチウイルス粒子は、異なるウイルス粒子に抗原MHC複合体ライブラリーを提示する。MHC一本鎖三量体の発現を、哺乳動物遺伝子プロモーター(例えば、EF1aプロモーター)によって制御する。抗原多様性は1e5であり、アプリケーションに基づいて調整され得る。MHC対立遺伝子は、任意のヒトMHC対立遺伝子または突然変異を有する任意のヒトMHC対立遺伝子であり得る。バーコードおよびリガンド配列領域の両方は、PaqCIクローニング部位を含有する(したがって、異なる切断部位配列を有する4つのPaqCI切断部位)。バーコードおよびリガンド配列は、Golden Gateアセンブリーによってレンチウイルス構築物ライブラリーへと導入され得る。プラスミド増幅後、1%の構築物材料が、バーコード-抗原対合を確立するためにシークエンシングされたpegRNA-抗原領域を有する。
【0158】
レンチウイルス構築物を、パッケージングヘルパープラスミド(例えば、Gag-polプラスミドおよびVSV-Gプラスミド)によって操作したHEK293Tパッケージング細胞によってパッケージングする。VSV-Gプラスミドは、VSV-Gのコード領域に突然変異を含有し、T細胞上のLDLRとのVSV-Gの直接相互作用を不可能にするが、抗原-TCR相互作用がウイルスを細胞付近に運ぶ場合、ウイルスの侵入を依然として可能にする。ウイルス懸濁液を、パッケージング細胞株のトランスフェクションの48時間および72時間後に収集する。膜結合GFPシグナルをチェックして、通常細胞表面およびウイルス表面に提示されるGFPと融合したMHC一本鎖三量体を確認する。
【0159】
MHC-抗原ライブラリーを有するレンチウイルス粒子のライブラリーを使用して、TCRレパートリーを有するJurkat細胞の集団をトランスフェクトする。レンチウイルス構築物のpegRNAは、ヒトTRBC1(TCRベータ定常領域1)、TRBC2(TCRベータ定常領域2)および/またはTRAC(TCRアルファ定常領域)に隣接するJurkatゲノムへの挿入のための構築物を標的化する。形質導入したJurkat細胞を、フローサイトメトリーFACSデバイスでGFPシグナルを検出することにより、同定およびソートする。生細胞色素を使用して、死細胞を除去して、GFPの偽陽性シグナルを減少させることができる。GFP発現によりソートしたJurkat細胞をプールし、溶解してDNAを抽出する。DNAを、TCRおよびレンチウイルスバーコードの増幅プライマーを使用してシークエンシングする。精製したPCR産物を、ロングリードシークエンシング(例えば、PacBio HiFiロングリードシークエンシング)によってバルクシークエンシングフォーマットでシークエンシングする。TCR配列と抗原バーコード間の対関係は、バックグラウンド分布と比較して共通のTCR-抗原対の頻度をランキングすることによって確立され得る。バックグラウンド分布は、計算モデリングまたは陰性対照試料のシークエンシングによって確立され得る。
【0160】
場合により、シークエンシングによって同定された標的抗原は、以下のように検証され得る。抗原は、DNAプラスミド、mRNA、ペプチド、または全タンパク質によって、MHC対立遺伝子が適合した抗原提示細胞株(APC、例えば、初代B細胞、T2細胞、またはK562細胞)に導入され得る。目的のTCRを有するT細胞株は、抗原提示APCと混合することができ、T細胞活性化マーカーは、イメージング、ELISAまたはフローサイトメトリーによって測定することができる。T細胞活性化マーカーは、IL-2、TNF-アルファ、IFN-ガンマ、NFAT媒介転写活性、AP-1媒介転写活性、NF-kB媒介転写活性、CD69、CD107a、CD137(4-1BB)、HLA-DR、CD38、トロゴサイトーシス、PD-1、CD25、CD71および形態変化を含む。TCRの正しい標的抗原は、T細胞およびAPCの同時インキュベーション後に上記のマーカーの1つまたは複数によって測定した場合、T細胞を活性化する。
【0161】
本明細書に引用した全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的におよび個々に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用された方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0162】
当業者は、ただ通常の実験、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態との多くの均等物を使用して認識または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図される。
【配列表】
【国際調査報告】