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特表2024-525819ガラスの付加製造のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ガラスの付加製造のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/00 20060101AFI20240705BHJP
   C03C 25/104 20180101ALI20240705BHJP
   C03C 25/26 20180101ALI20240705BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240705BHJP
【FI】
C03B19/00 Z
C03C25/104
C03C25/26
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024502124
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022069232
(87)【国際公開番号】W WO2023285338
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】2150939-3
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524017205
【氏名又は名称】ミハイル・フォーキン
(71)【出願人】
【識別番号】524017216
【氏名又は名称】タラス・オリエホフ
(71)【出願人】
【識別番号】524017227
【氏名又は名称】チュンシン・リウ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル・フォーキン
(72)【発明者】
【氏名】タラス・オリエホフ
(72)【発明者】
【氏名】チュンシン・リウ
【テーマコード(参考)】
4G060
【Fターム(参考)】
4G060AC10
4G060AC14
4G060BA01
4G060BC03
4G060CB12
(57)【要約】
本発明は、ガラスでできた三次元構成要素を生成するための付加製造方法であって、表面に適用された難燃性または自己消火性保護フィルム(169)を有するガラスフィラメント(160)を、フィラメント供給ノズル(120)から加熱源に連続的に供給し、前記難燃性または自己消火性保護フィルムを除去し、前記ガラスファイバを軟化させるステップと、前記軟化させたガラスフィラメントを基板(130)または物体の表面に適用するステップと、を含み、前記難燃性または自己消火性保護フィルムがポリイミド系材料でできていて、1ミクロン~50ミクロンの範囲内の厚さを有し、前記供給されたガラスフィラメント長は、5ミリメートル未満である方法、に関する。本発明はまた、ガラスフィラメントおよびその使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスでできた三次元構成要素/物体を生成するための付加製造方法であって、
a.フィラメント供給ノズル(120)からガラスフィラメント(160)を連続的に供給するステップであって、前記ガラスフィラメント(120)が、表面に適用された難燃性または自己消火性保護フィルム(169)を有し、前記難燃性または自己消火性の保護フィルム(169)を除去し、前記ガラスフィラメント(160)を軟化させるために加熱源に供給するステップと、
b.前記軟化させたガラスフィラメント(160)を基板(130)または物体の表面に適用するステップと、を含み、前記難燃性または自己消火性の保護フィルム(169)がポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有し、
c.前記供給されたガラスフィラメント長(L)は、5ミリメートル未満である、前記方法。
【請求項2】
前記ガラスフィラメントが、100~500μmの範囲内の直径を有するガラスファイバである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱源が、少なくとも1つのレーザ源である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスフィラメント(160)が中空であり、前記方法が、前記中空フィラメントの内部にガス圧を供給して、前記中空の特徴を有する三次元構成要素を生成するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ガラスの三次元構成要素の付加製造のためのガラスフィラメント(160)であって、前記ガラスフィラメント(160)が表面に適用された難燃性または自己消火性の保護フィルム(169)を備え、前記フィルム(169)が、ポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有する、前記ガラスフィラメント(160)。
【請求項6】
前記ガラスフィラメント(160)が、100~500μmの範囲内の直径を有するガラスファイバである、請求項5に記載のガラスフィラメント。
【請求項7】
前記ガラスフィラメント(160)が光ファイバである、請求項6に記載のガラスフィラメント。
【請求項8】
前記ガラスフィラメント(160)が中空である、請求項6または7に記載のガラスフィラメント。
【請求項9】
前記中空部分の体積が、前記ガラスフィラメント(160)における前記ガラス含有量の体積の10~70%である、請求項8に記載のガラスフィラメント。
【請求項10】
ガラスでできた三次元構成要素を生成するための付加製造方法におけるガラスフィラメント(160)の使用であって、前記ガラスフィラメント(160)が表面に適用された難燃性または自己消火性の保護フィルム(169)を備え、前記フィルム(169)がポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有する、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、付加製造の分野に関する。特に、本発明は、ガラスでできた原材料から三次元構成要素を形成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス3D印刷、すなわち付加製造において、原材料は、(1)溶融形態(溶融ガラス)、(2)液体形態(ガラスが充填された液体樹脂)、(3)ガラスロッドを使用した固体形態、または(4)ガラスファイバのいずれかで供給され得る。
【0003】
(1)US10464305B2およびUS10266442B2では、並進ステージを使用して所定の幾何形状で溶融ガラスをビルドプレート上に注ぐために、大型るつぼが使用されている。この方法の欠点は、溶融ガラスによるノズルの損傷のリスクであり、したがって、より低い溶融温度を有するソーダ石灰ガラスまたはボロシリケートガラス等の多成分シリケートガラスに限定される。
【0004】
(2)US2019/0292377A1k、US2020/0039868A1、WO2017/214179A1、およびWO2020/118157A1では、例えばフォトリソグラフィーまたはインクジェット印刷技術を使用して3D固形物を構築するために、ガラスナノ粒子が充填された液体樹脂が使用されている。いかなる有機結合剤も後に焼却され、その後に多孔質物体が固体ガラス物体へと高温で焼結される。これらの技術の欠点は、時間のかかる後処理が必要であること、および印刷される物体の厚さ/寸法が(数mmに)制限されることである。印刷精度は、混合物の収縮制御および均質性に大きく依存する。欠陥、すなわち変形、細孔および亀裂を回避することは困難である。
【0005】
(3)WO2018/163006A1、US2020/0016840A1では、連続的なロッド供給がガラス3D印刷に使用されている。その印刷は、ガラスロッドを原料として使用する。供給するロッドは、回転カセット内に装填され、ガラスを溶融する印刷ヘッドを通して供給され、その後基板上に堆積される。連続供給は、プロセス中にロッドを熱的に接合することにより実現される。るつぼを使用してガラスを溶融するこの方法は、より低い溶融温度を有するソーダ石灰ガラスまたはボロシリケートガラス等の多成分シリケートガラスに限定される。この技術はまた、溶融ガラスの腐食性に起因するノズルの損傷のリスクを有する。
【0006】
(4)細いガラスフィラメントまたは光ファイバのレーザベースの溶融[J.M.Hostetlerら、FIBER-FED PRINTING OF FREE-FORM FREE-STANDING GLASS STRUCTURES、Solid Freeform Fabrication 2018: Proceedings of the 29th Annual International、994~1002]、[T.Grabeら、Additive Manufacturing of fused silica using coaxial laser glass deposition, experiment, simulation and discussion、Proc. SPIE 11677、Laser 3D Manufacturing VIII、116770Z(2021年3月8日)]もまた、ガラス3D印刷に使用されている。レーザを使用して、非接触加熱が実現され、したがって、溶融物はるつぼ壁に常に接触しているわけではなく、それによりるつぼの腐食およびガラス溶融物の汚染が回避される。ここで、シリカガラスファイバ/フィラメントは、ガラスを軟化させるのに十分な温度の高温ゾーンに連続的に供給される。シリカガラス(石英または溶融シリカ)の場合、1800~2000℃という高い温度が必要である。1つの方法は、特に典型的には1mm超の直径を有するフィラメントサイズの場合、むき出しのガラスフィラメントを供給することである。
【0007】
しかしながら、光ファイバ製造の分野において、むき出しの細いガラスファイバは壊れやすくなり、薄い保護コーティングまたは保護フィルムで適切に保護されないと壊れることが周知である。保護コーティングまたは保護フィルムは、ファイバの機械的強度を急速に低減する機械的相互作用(例えば擦れ)または化学的相互作用(例えば水もしくは他の化学物質との反応)からファイバ表面を保護するために使用される。通信ファイバの場合、コーティング/フィルムはまた、マイクロベンディングに起因して機械的に誘発される損失を低減する機能を有する。
【0008】
同じ理由から、付加製造に細いガラスファイバを使用する場合、保存および取扱い中にガラスフィラメントを保護するために保護コーティングが必要である。保護コーティングは、フィラメント製作中に適用され得る。
【0009】
先行のフィラメントベースのガラス付加製造では、印刷前にガラスフィラメントから保護コーティングが除去される必要がある[J.M.Hostetlerら、FIBER-FED PRINTING OF FREE-FORM FREE-STANDING GLASS STRUCTURES、Solid Freeform Fabrication 2018: Proceedings of the 29th Annual International、994~1002]。コーティングの剥離は、フィラメントを高温付加製作ゾーンに供給する前に、機械的手段または化学的手段(例えば、硫酸、ジクロロメタンを使用して)を使用して行うことができる。
【0010】
コーティングの機械的剥離は、フィラメントの機械的強度をさらに弱め得るため、印刷中のフィラメント破壊が印刷プロセスの大きな中断を引き起こすことから、これは理想的な解決策ではない。化学的手段の使用は、強酸(硫酸)またはジクロロメタン(発がん性)を使用した場合に問題となるリスクに起因して、好ましくない。しかしながら、このアプローチは、最後の段階、すなわちファイバの高温ゾーンへの機械的供給中に、ファイバを保護されていない状態にする。剥離プロセスはまた、印刷可能なガラスフィラメントの全長を制限し(すなわち、数メートル未満の最大機械的剥離、数十メートル未満の最大化学的剥離)、これは、3D印刷プロセスの連続性および能力(体積)を大きく損なう。
【0011】
フィラメントはコーティングが無いと脆くなり得、コーティングの剥離はフィラメントの機械的強度をさらに弱める可能性があるため、印刷中のフィラメント破壊が印刷プロセスの大きな中断を引き起こすことから、追加のリスクをもたらす。
【0012】
代替の方法は、[T.Grabeら、Additive Manufacturing of fused silica using coaxial laser glass deposition, experiment, simulation and discussion、Proc. SPIE 11677、Laser 3D Manufacturing VIII、116770Z(2021年3月8日)]により実証されているように、コーティングを焼却することである。高温ゾーンが極めて高温まで加熱されると、コーティングは高温ゾーンの近くで焼却され、すなわち、高温ゾーン自体を使用してコーティングを除去することができる。一般的に使用されるファイバコーティングを用いた前記方法に関する問題は、望ましくない燃焼副生成物をもたらし得、印刷物の純度に影響する残渣を残す可能性がより高いことであり、そのためエネルギー効率が良くない。この方法に関する別の問題点は、焼却されるコーティングの量の制御の問題であり、コーティングが発火して、熱源がオフにされた後でもフィラメントを長い長さにわたり燃焼し始めることが生じ得る。
【0013】
実験的な延焼性試験が、標準的な通信ガラスファイバに対して行われてきた。ガラスファイバは、125μmの直径および62.5μm厚の標準的なアクリル系コーティングを有しており、全直径は250μmであった。コーティングはCOレーザを使用して点火され、レーザがオフにされると、延焼が約10mm/秒(600mm/分)の火炎伝播速度で生じたが、これは典型的にはガラス3D印刷中のフィラメント供給速度より速い。
【0014】
第1の層を印刷基板上に堆積させる場合、フィラメント供給は、典型的にはビルドプレートへの十分な付着を確実にするためにゆっくりである。典型的な条件下では、ガラスの3D印刷は、単一の長さが長い連続ガラスフィラメントを一定の供給速度で堆積させることによって行われず、むしろフィラメントは、印刷される物体の幾何形状に応じて一層ずつセグメント単位で堆積される。セグメント間でフィラメントは切断され、切断中、フィラメント供給速度はゼロまたはさらにはマイナス(フィラメントの引き戻し)である。次いで、供給ノズルの相対位置が新たな場所に移動され、印刷物の異なる部分で継続する。したがって、印刷中、多くの異なる印刷条件、レーザ照射条件の組合せ(高温ゾーンの温度)、およびフィラメント供給速度ならびに供給方向が存在する。
【0015】
保護コーティングが自己持続型の焼却(燃焼)を示す場合、供給ノズルを損傷し得る、広範なフィラメント長さを破壊し得る、および潜在的に3Dプリンタを破壊して人身傷害をもたらし得る延焼のリスクがある。したがって、自己持続型の燃焼を示す保護コーティングを使用することは、非常に有害である。
【0016】
[WO2020259898]に記載の3D印刷ガラスフィラメント用のコーティング溶液は、多糖類およびポリエテンを含み、一般に難燃性または自己消火性ではなく、一般的に使用される光ファイバ線引き塔においてガラスフィラメントに適用するのに適していないが、ディップコーティングにより、またはローラにより好適に塗布されている。これらのコーティングは、典型的には400℃未満の分解温度を有し、よって、より長い、典型的には5~20mmより長い長さの押出しフィラメントを必要とする。
【0017】
延焼を低減するために、窒素またはアルゴン等の不活性ガスを使用して炎を消すことができるが、問題は、これがコーティングの燃焼(焼却)効率に著しく影響し、印刷される物体に埋め込まれるコーティング残渣を残すことである。別の選択肢は、空気または酸素ガスの強制対流を使用して、コーティングの効率的な分解を維持しながら延焼速度を低減することである。この方法の問題は、炎を消すことができず、火炎伝播速度を低減するだけかもしれないことである。さらに、注入された気体流は、著しくかつ制御されない温度の変動を引き起こし、高温ゾーンの温度安定性の低下は、印刷品質の低下または印刷の失敗を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の問題を防ぐことを目的とする。本発明の主な目的は、三次元構成要素を形成する際に使用するための改善されたガラスフィラメントを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、ガラスでできた三次元構成要素を生成する付加製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、独立請求項において定義される特徴を有する付加製造方法を用いて、少なくとも主な目的が達成される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態が、従属請求項においてさらに定義されている。
【0022】
本発明の第1の態様によれば、ガラスでできた三次元構成要素/物を生成するための付加製造方法であって、
a.フィラメント供給ノズルからガラスフィラメントを連続的に加熱源に供給するステップであって、特に前記ガラスフィラメントが溶融石英または溶融シリカでできていて、前記ガラスフィラメントが、表面に適用された難燃性または自己消火性保護フィルムを有し、前記難燃性または自己消火性保護フィルムを除去し、前記ガラスフィラメントを軟化させるステップと、
b.前記軟化させたガラスフィラメントを基板または印刷/物の表面に適用するステップと、を含み、前記難燃性または自己消火性保護フィルムは、ポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有し、
c.前記供給されたガラスフィラメント長(L)は、5ミリメートル未満である、方法が提供される。
【0023】
三次元構成要素を製造する際のこの実施形態の利点は、熱源が取り除かれる、またはレーザ照射がオフにされると、コーティングが難燃性および自己消火性であるためコーティングの燃焼が停止することである。別の利点は、コーティングの燃焼が有毒成分を生成しないことである。別の利点は、従来の光ファイバ製作技術を使用したフィラメント製作中に、コーティングがフィラメントの長い長さにわたって容易に適用され得ることである。
【0024】
本発明による様々な例示的実施形態において、前記ガラスフィラメントは、100~500μmの範囲内の直径を有するコーティングされたガラスファイバである。
【0025】
これらの実施形態の利点は、三次元構成要素の複雑性および/または設計に応じて異なる直径のフィラメントが選択され得ることである。
【0026】
本発明の様々な例示的実施形態において、前記加熱源は、少なくとも1つのレーザ源である。
【0027】
これらの実施形態の利点は、1つまたは複数の様々な種類のレーザ源が加熱目的に使用され得ることである。
【0028】
本発明の別の態様において、ガラスの三次元構成要素の付加製造のためのガラスフィラメントであって、前記ガラスフィラメントが表面に適用された難燃性または自己消火性保護フィルムを備え、前記フィルムが、ポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有する、ガラスフィラメントが提供される。
【0029】
この実施形態の利点は、難燃性または自己消火性であり、付加製造において使用された場合にいかなる有毒成分も形成しない付加製造の原材料を提供することである。
【0030】
本発明の様々な例示的実施形態において、前記ガラスフィラメントは、中空である。
【0031】
これらの実施形態の利点は、複雑な構造を付加的に印刷するために、例えば一体化されたマイクロ流体構造、すなわち中空の特徴/構造を有する付加製造された構成要素等のために、毛細管構造のフィラメントが使用され得ることである。前記中空部分の体積は、前記ガラスファイバにおける前記ガラス含有量の体積の10~70%であってもよい。
【0032】
本発明の別の態様において、ガラスでできた三次元構成要素を生成するための付加製造方法におけるガラスフィラメントの使用であって、前記ガラスフィラメントが表面に適用された難燃性または自己消火性保護フィルムを備え、前記フィルムがポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有する、前記使用が提供される。
【0033】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の発明を実施するための形態から明らかとなる。
【0034】
本発明の上述および他の特徴および利点のより完全な理解は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明による方法を実行するために使用され得る、ガラスでできた三次元構成要素を製造するための装置の例示的実施形態の概略側面図である。
図2】ガラスフィラメントおよびフィラメント供給ノズルの概略側面図である。
図3図3a~図3cは、保護コーティングを有するガラスフィラメントの様々な例示的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の方法は、新たな付加製造(AM)プロセスに関し、デジタルモデルを使用して、構成要素の幾何形状が、レーザビーム等のエネルギー源を使用して局所的に溶融させることにより、層ごとに複数のガラスフィラメント、自立しているまたは局所的な堆積物を一緒に融合することにより構築される。
【0037】
本発明は、難燃性および/または自己消火性保護フィルム/コーティングとガラスフィラメントからのその除去とを印刷プロセス内に統合することによる、直接製造プロセスに関する。これは、新たなプロセスが、ガラスフィラメントを使用して完全にまたはほぼ完全に緻密なガラス構成要素/物体を製造することができること、および先行技術のガラス製造方法の全ての欠点を克服することを意味する。
【0038】
新たなプロセスは、有毒副生成物を生成することのない三次元ガラス構成要素の直接製造を可能にし、健康リスクを回避し得る。
【0039】
本発明者らは、今回、レーザベース3D印刷に好適なフィラメントコーティングとしてポリイミド系コーティングを特定した。ポリイミドは本来、耐火炎燃焼性である。ポリイミドは、難燃特性および自己消火特性を示す。実験では、裸火またはCOレーザ加熱を使用して燃焼を開始した場合、約200μmの直径を有するポリイミドコーティングされた溶融シリカおよび溶融石英ファイバは、熱源が除去またはオフにされると発火しない、または持続的な燃焼を示さないことを明らかにしている。
【0040】
ポリイミド系コーティングのさらなる利点は、標準的な光ファイバ線引き塔において一般的に使用される技術を用いてコーティングがガラスフィラメントに適用され得ることである。ポリイミドコーティングの典型的なコーティング厚は、1μm~50μm、典型的には5μm~25μmの範囲である。
【0041】
追加の利点は、概して、空気(または酸素)雰囲気中で燃やされたポリイミドの燃焼副生成物が二酸化炭素、水および酸化窒素であること、すなわち、燃焼により無毒の煙が生じることである。
【0042】
したがって、供給ノズル、フィラメントおよびフィラメントカセット、3Dプリンタ、ならびに操作者の身の安全および環境を保護するためには、ガラスフィラメントフィルム/コーティングが耐火炎燃焼性であること、難燃性であるべきであること、および/または自己消火特性を示すべきであることが極めて重要である。
【0043】
ポリイミドの分解は、400℃超、典型的には600℃超で生じる。このような高温は、コーティングがその後高温ゾーンの極めて近くで除去され、供給ノズルの先端と高温ゾーンとの間の距離をより短くすることができ、それによってノズルから押し出されるフィラメントの長さをより短くすることができるため、有利である。供給されたガラスフィラメント長Lは、5ミリメートル未満であるべきである。ノズルから押し出されるより短い長さのフィラメントを使用することで、フィラメントの機械的特性(剛性)により、印刷中の印刷精度および解像度の大幅な改善が可能となる。約200μmの直径を有する押出フィラメントの好適な長さは、典型的には5mm未満であり、ポリイミドコーティングは、典型的には高温ゾーンの1mm以内で除去される。
【0044】
図1は、ガラスの三次元構成要素を製造するように構成された本発明による付加製造装置100の例示的実施形態の概略側面図を示す。付加製造装置100は、ステージ/基板130、レーザ源110およびフィラメント供給ノズル120を備える。フィラメント供給ノズル120は、前記フィラメント供給ノズル120が前記ステージ130の所定の領域をカバーするように、前記ステージ130に対してx-y平面内で移動するように構成されてもよい。相対移動は、前記ステージ130が固定され、前記フィラメント供給ノズル120がx-y-z方向に移動してもよいし、あるいは、ステージ130がx-y方向に移動可能である一方、前記フィラメント供給ノズルが固定されてもよい。三次元構成要素を付加製造し、フィラメント供給ノズルと新たな層が付着される構成要素の上面との間の距離を一定距離に維持することを可能にするために、前記フィラメント供給ノズル120および/または前記ステージ130の一方または両方がZ方向に移動可能であってもよく、すなわち、フィラメント供給ノズルと新たな層が付着される構成要素の上面との間の距離を一定距離に維持するために、新たに適用される層毎に、ステージ130が新たに適用される層の厚さに対応する距離だけZ方向に下方移動されてもよく、または、フィラメント供給ノズル120が新たに適用される層の厚さに対応する距離だけZ方向に上方移動されてもよく、もしくは、前記ステージのZ方向の下方移動と、前記フィラメント供給ノズルのZ方向の上方移動とが組み合わされてもよい。フィラメント160は、ガイド管170を介してフィラメント供給ノズル120に供給され得る。レーザ源110は、COレーザ、COレーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザ、エキシマレーザ、窒素レーザ等であってもよい。レーザビーム150は、連続またはパルスであってもよい。レーザビームは、ステージに近接する高温ゾーン140内でフィラメントを軟化または溶融し、ステージ上に前記軟化または溶融されたガラスが付着される。
【0045】
フィラメント供給ノズル120および/またはステージ130は、少なくとも1つの電動式支持体上に配設されてもよい。制御ユニットが、前記ステージ130に対する前記フィラメント供給ノズルの相対移動を制御してもよい。前記制御ユニットはまた、レーザおよびレーザ光学系を制御してもよい。
【0046】
図1において、フィラメント供給ノズル120は、三次元構成要素の層を形成するために、原材料160をステージ130上に提供している。三次元構成要素が形成されるステージ130上にビルドプレートが提供されてもよい。ビルドプレートは、任意の材料、例えば、最終的な三次元構成要素と同じ材料、セラミック材料、または三次元構成要素における材料とは異なる任意の他の金属材料でできていてもよい。ビルドプレートの厚さは、十分の数mmから数cmの範囲内であり得る。
【0047】
最初のステップは、ステージ130上への原材料の融合および堆積である。フィラメント供給ノズルは、所定の経路に沿って原材料を局所的に堆積させる。フィラメント供給ノズルは、原材料がノズルから出てステージ130に向かう前に原材料を加熱してもよい。ノズルは、原材料のサイズおよび形状に適合され得る。
【0048】
3軸運動学によりフィラメント供給ノズル120を機械の作業エンベロープ(work envelope)内に位置付けることができ、三次元構成要素が一層ずつ生成される。原材料160は、ガラスフィラメントである。ガラスフィラメント160は、その表面に適用された難燃性および/または自己消火性保護コーティングまたは保護フィルム169を備える。
【0049】
図1では、1つのフィラメント供給ノズル120のみが使用されるように示されている。様々な例示的実施形態において、複数のフィラメント供給ノズルが直列または並列で使用されてもよい。様々な例示的実施形態において、ステージ130上への原材料の堆積を迅速化するために、複数本の原材料160が同時にステージ130上に提供されてもよい。
【0050】
1つの原料供給ノズルが、三次元構成要素の第1の所定の層領域で原材料またはフィラメント160を提供してもよく、また2つ以上のノズルが三次元構成要素の第2の所定の層領域に使用されてもよい、すなわち、形成される層の形状および/または追加される材料の種類に応じて、層の形成が1つ、2つ、3つまたはそれ以上のノズル間で変更されてもよい。様々な例示的実施形態において、基板上に原料/フィラメントを提供するための複数のノズルは、同じ直径または異なる直径を有していてもよい。複数のフィラメント供給ノズルは、異なるガラス材料の原材料を提供してもよい。様々な例示的実施形態において、1つの原料供給ノズルは、複数の異なる原材料、例えば、同じ材料、異なる材料および/または異なる直径の複数のファイバを含んでもよい。
【0051】
フィラメント押出しと同期して、フィラメント180の先端が、事前に定義された経路に従って位置付けられる。この経路は、加工対象物の幾何形状を層にスライスし、フィラメント160の押出しのための時間効率の良い軌道を計算することによって得られる。位置付けは、3軸位置付けユニットによって行われ得る。地球の重力場に対して加工対象物をさらに位置調整するためには、5軸運動学により製造の柔軟性を拡張することが意図される。
【0052】
第1の選択肢は、移動するレーザビームによる同時処理であって、フィラメントの堆積に極めて接近して引き続き、堆積されたガラスフィラメント160を焼結/溶融する。
【0053】
代替として、印刷されたばかりの層の選択的なレーザ走査による、高出力レーザビームでのガラスフィラメントの薄層の焼結/溶融がある。このプロセスは、制御された熱入力およびタイミングを必要としてもよい。幾何形状の精度を確保するために、プロセス変動の直接的な補償を可能にする現場測定が行われてもよい。材料の欠陥は、焼結/溶融されたガラス層の品質検査を必要としてもよい。幾何形状の精度を確保する現場での品質管理は、印刷環境における適切な温度、ガス含有量および圧力を必要としてもよい。
【0054】
プロセス能力を検証および立証するために、以下の態様は、達成可能な製造された層の評価、幾何形状精度の最低要件の実現、公称設計からの材料収縮の定量、達成可能な層の接着および/または欠陥のない3D印刷の確保等、さらなる試験を必要としてもよい。
【0055】
ガラスフィラメントを溶融/軟化するために、1つまたは複数のレーザビームが同時に使用されてもよい。
【0056】
本発明は、レーザベースのガラス3Dプリンタにおける使用のためのガラスフィラメントに関する。むき出しのガラスフィラメントの機械的特性は劣り、したがって破損しやすい。保管および取扱い中のガラスフィラメントの機械的および化学的保護のためには、保護コーティングが必要である。機械操作中の安全性を高めるためには、コーティングは、自己持続型の裸火伝播を回避するように、難燃性および自己消火性のものである必要がある。難燃性および自己消火性保護コーティングは、例えば光ファイバを生成するために用いられるファイバ線引き塔を使用して、フィラメント製作中に適用され得る。炉によってプリフォーム(形状および組成の両面でフィラメントを拡大したようなもの)を加熱する。次いで、軟化させたガラスは、直径ゲージおよび張力計と組み合わせたキャプスタンを使用して正確なフィラメント寸法に引き出される。フィラメントが引き出されるに従い、プリフォームが炉内にさらに供給される。典型的には、フィラメントが通過するコーティングカップにコーティング樹脂が導入され得る。次いで、コーティングはその後フィラメントが保管および移送用スプールに巻かれる前に、熱的に、または例えばUVランプを使用して硬化され得る。ポリイミドは本来、耐火炎燃焼性である。ポリイミドは、難燃特性および自己消火特性を示す。光ファイバ上のポリイミド系コーティングの硬化温度は、典型的には、約100~400℃の温度範囲内で行われてもよい。
【0057】
光ファイバ上のポリイミドベースコーティングは、約300℃の運転温度に耐えることができ、より高温での(感知)用途に一般的に使用される。ここで、典型的には10~15μmのコーティング厚が使用される。コーティング手順を反復して複数のコーティング層を追加することによって、より厚いコーティングを適用することができる。
【0058】
ガラスフィラメントの場合、コーティング厚は、ファイバの十分な機械的および化学的保護を確保しながら、可能な限り薄くするべきである。良好な結果を与えたと評価されたフィラメントは、約5μmの単層ポリイミドコーティング厚を有する。
【0059】
ガラスフィラメントの好適な外径は、100μm~500μmの範囲内である。直径は、フィラメントの機械的特性に大きく影響し、直径が増加するとより硬いフィラメントとなる。印刷中の印刷構造に対するノズルおよびフィラメントの並進は、フィラメントに横力をもたらす。フィラメントの位置のずれは、高温ゾーン140内の液体ガラスの粘度および表面張力、ならびに印刷速度に依存する。印刷ノズルおよび押出されるフィラメントの概略図を、図2に示す。より硬いフィラメントでは、フィラメント供給ノズルと高温ゾーン140との間の距離が増加し得る。したがって、フィラメント直径、ノズル設計、および高温ゾーン140までの距離は、印刷物の解像度、精度および品質に大きく影響する。大きいフィラメント直径および押出されるフィラメントの短い長さは、印刷中のフィラメントのずれを低減する。フィラメント直径が増加すると、プリンタの解像度が低減する。押出されるフィラメントの長さが短すぎる場合、フィラメント供給ノズルは、2000℃を超える温度に達し得る高温ゾーンによって損傷され得る。
【0060】
フィラメントの全たわみ/ずれδは、下式により与えられる。
【0061】
【数1】
式中、Fは、印刷プロセス中の相対移動により印加される保持力であり、Lは、押出されるフィラメント長であり、Eは、フィラメント材料のヤング率であり、rは、フィラメントの半径である。理論的には、同じ処理条件下において、200μmの直径を有するフィラメントは、125μmの直径を有するフィラメントの1/4だけたわむ。200μmのフィラメント直径および5mm未満の押出されるフィラメント長を使用すると、たわみはサブミクロンとなり、無視できると見なされ得る。
【0062】
ガラス3D印刷中、ガラスフィラメントは1800~2200℃の高温ゾーンに連続的に供給される。一般的な方法の1つは、コーティングされていないガラス光ファイバを使用して供給することである。しかしながら、ほとんどの光ファイバはコーティングと共に生成されるため、印刷前に純粋なガラスフィラメントを生成するにはコーティング169の除去が必要である。コーティング169の剥離は、機械的手段または化学的手段を使用して(例えば、硫酸、ジクロロメタンを使用して)行うことができる。剥離プロセスは、印刷可能なガラスフィラメントの全長を制限し(すなわち、数メートルの最大機械的剥離、数十メートルの最大化学的剥離)、これは、3D印刷プロセスの連続性および能力(体積)を大きく損なう。フィラメントはコーティングが無いと脆くなり得、コーティングの剥離はフィラメントの機械的強度をさらに弱める可能性があるため、印刷中のフィラメント破壊が印刷プロセスの大きな中断を引き起こすことから、追加のリスクをもたらす。化学的手段の使用は、強酸(硫酸)またはジクロロメタン(発がん性)を使用した場合に問題となるリスクに起因して、好ましくない。
【0063】
別のアプローチは、コーティングされたフィラメントを直接供給することである。保護コーティング169により、印刷可能なフィラメント長はキロメートル範囲まで拡張される。しかしながら、フィラメントは一般に可燃性のポリマー、例えばアクリル樹脂によりコーティングされるため、このアプローチは、高い印刷温度に起因してフィラメントに裸火を生じさせる可能性があり、印刷の失敗をもたらし、フィラメントの破壊および3Dプリンタへの損傷をもたらし得る。さらに、標準的なコーティングは、約62.5μmの厚さを有し、これはガラス3D印刷には著しく「厚」すぎる。「厚い」コーティングの直接的な焼却は、より多くの燃焼副生成物を生成し得、印刷物の純度に影響する残渣を残す可能性がより高く、エネルギー効率が良くないため、理想的な解決策ではない。
【0064】
本発明者らのアプローチは、薄い難燃性および自己消火性コーティング169を有するガラスフィラメント160を生成することである。例えばCOレーザビームを使用して高温ゾーン140が極めて高温まで加熱されると、コーティングは高温ゾーン140の近くで焼却され始め、すなわち、高温ゾーン140自体を使用して保護コーティング169を除去することができる。保護コーティング169が難燃性および自己消火性である場合、裸火のリスクは排除される。レーザおよびフィラメント供給がオフにされると、コーティングの燃焼プロセスは停止する。薄いコーティングは容易に焼却される。効率を高め環境への影響を低減することに加えて、燃焼副生成物の生成も低減する。理想的なコーティングは、燃焼中に生成される有毒な煙をさらに低減するために、無毒の化学組成物を有していてもよく、例えばハロゲンを含有すべきではない。
【0065】
付加製造のための本発明のフィラメント160は、依然として(一時的)保管および取扱いの間フィラメントの機械的および化学的保護を提供しながら、薄い難燃性および自己消火性保護コーティング層169のガラスフィラメントへの適用可能性を提供する。保護コーティング169は、熱的手段(加熱/プラズマ/レーザ照射)によって容易に除去され得る。保護コーティング169は、有毒成分を含有せず、または焼却された場合に有害な燃焼生成物を生成しないものでもよい。保護コーティング169は、自己持続型燃焼の特性を有していなくてもよい。
【0066】
本発明による付加製造方法は、ガラスでできた三次元構成要素を生成するために使用され得る。前記方法は、表面に適用された難燃性および/または自己消火性保護フィルムを有するガラスフィラメントを、フィラメント供給ノズルから加熱源に連続的に供給し、前記難燃性および自己消火性保護コーティングを除去し、前記ガラスファイバを軟化させるステップと、前記軟化されたガラスファイバを基板または印刷物/物体の表面に適用するステップと、を含み、前記難燃性および自己消火性保護コーティングが、ポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有し、前記供給されたガラスフィラメント長Lは、5ミリメートル未満である。ガラスフィラメントの供給は、連続的または不連続的であってもよい。
【0067】
図2は、フィラメント供給ノズル120の側面図を示す。前記フィラメント供給ノズル120から延在するのは、フィラメント160である。前記フィラメント供給ノズル120の出口から、少なくとも1つのレーザビームが前記フィラメントに衝突する基板130の表面までの前記フィラメントの長さは、Lで示されている。供給されたガラスフィラメント長Lは、フィラメント供給ノズル120と、ガラスフィラメント160が適用される表面、基板130の表面または印刷物/物体の表面のいずれか、との間の距離であることが理解されるべきである。様々な例示的実施形態において、供給されたガラスフィラメント長Lは、10mm超であってもよいが、本発明によれば5mm未満であってもよい。5mmより長いLは、図2において破線のフィラメントで示されるように、フィラメントのずれを増加させる。前記フィラメント160の先端180のずれていない中心部分と同じ先端180のずれた中心部分との間の距離であり得るいかなるフィラメントのずれであっても、前記基板または印刷物/物体の前記表面上のその意図される位置に対する前記フィラメントの位置ずれをもたらし、このことが、欠陥のある三次元物品をもたらし得、および/または付加製造の精度を低下させる。保護コーティングは難燃性および/または自己消火性であることから、保護コーティング169の一部が付加製造の間前記フィラメント供給ノズル出口の外側でフィラメント上に留まる。製造中の前記残留している保護コーティングの一部の長さは、少なくとも十分の数mmであり得る。
【0068】
図3a~cは、付加製造プロセスにおいて使用され得る、保護コーティング169を有する3つの異なる種類のガラスフィラメント160を示す。図3aは、単一組成(ロッド/ファイバフィラメント)を示し、組成(ガラスの種類)は、高純度シリカガラス、例えば溶融シリカおよび溶融石英ガラス(高純度透明ガラスの印刷に使用される)であってもよい。これらの材料は、低い熱膨張係数を有し、すなわち、加熱された印刷版を必要とせず、熱アニール後処理は必ずしも必要ではない。GeO、Al、B、もしくはF共ドーピングまたはそれらの組合せを有するシリカガラスフィラメント。マルチフィラメント印刷(シリカガラスフィラメントと共に)は、設計された形状および屈折率の構造を有する3D印刷物を形成するために使用され得る。その例は、光ファイバプリフォームまたは異なる光学構成要素の製作であり得る。追加のドーパント(例えばGeO、Al、B、F)と組み合わせてEr、Yb、Er/Yb等の希土類酸化物がドープされたシリカガラス。これらのフィラメントは、活性レーザ材料の3D印刷物を形成するために使用され得る。シリケート、ボロシリケート、アルミノボロシリケートおよびソーダ石灰ガラスは、標準型の(より)低コスト材料を示す。より高い熱膨張係数に起因して、これらは、加熱された印刷版および応力を緩和するために熱アニール後処理を必要とし得る。
【0069】
図3bは、中央空気穴162、すなわち毛細管または中空構造を有するガラスフィラメント160を示す。これらの毛細管/中空フィラメントは、異なる種類のガラス/空気構造を印刷するために使用され得る。毛細管フィラメントの内側部分に圧力制御が適用された場合、印刷中のフィラメントの能動的な収縮/膨張が可能である。前記空気穴162の体積は、前記ガラスフィラメント160における前記ガラス含有量の体積の10~70%であってもよい。空気穴162は、前記ガラスフィラメント160の中心にあっても、または中心になくてもよい。様々な例示的実施形態において、前記ガラスフィラメント160は、複数の空気穴を備えてもよい。
【0070】
図3cは、シリカ系組成物からなるガラスフィラメント160が、屈折率を改変するドーパント、例えばGeO、Al、B、Fの中央コア構造160’を含有することを示す。光導波路として機能するこれらのコア/クラッディングフィラメントは、通信、感知または生物医学用途における使用のための異なる種類のガラス基板上に光回路を印刷するために使用され得る。ガラス系以外の他のコア材料は、半導体および合金、例えばケイ素、ゲルマニウム等を含む。
【0071】
フィラメントは基板に向けて連続的に供給されてもよく、同時に、単一または複数のレーザビームにより形成される高温ゾーンはこれらを互いに結合する。基板とフィラメントとの間の相対的な動きは、印刷形状を定義するためにコンピュータ制御下にある。
【0072】
マイクロスフェア、マイクロピラー、マイクロライン、マイクロサークルおよびナノテーパ等の単純構造が、単一の堆積により印刷された。自立モデル/アレイの印刷もまた実証された。複雑な幾何形状での多層印刷が実現された。中空モデル(壺型モデル)および高密度モデル(100%充填)の両方が、ガラスフィラメントを使用して印刷された。結論として、ガラスフィラメントは上記の全てのガラス3D印刷試験に適用可能であり、その性能は、FDMシステムにおけるプラスチックフィラメントと同様である。
【0073】
本発明の実現可能な変更
本発明は、上述の、ならびに主に説明および例示を目的とする図面で示された実施形態のみに限定されない。本特許出願は、本明細書に記載の好ましい実施形態の全ての調整および変形例をカバーすることを意図し、したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の文言およびその均等物により定義される。したがって、機器は、添付の特許請求の範囲内であらゆる種類の様式で変更され得る。
【0074】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体にわたり、文脈により異なる意味が必要とされない限り、「備える(comprise)」という用語、および「備える(comprises)」または「備える(comprising)」等の変化形は、述べられた整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを暗示するが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の除外を暗示しないことが理解される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスでできた三次元構成要素/物体を生成するための付加製造方法であって、
a.フィラメント供給ノズル(120)から単一のガラスフィラメント(160)を連続的に供給するステップであって、前記ガラスフィラメント(120)が、表面に適用された難燃性または自己消火性の単一の保護フィルム(169)を有し、前記難燃性または自己消火性の単一の保護フィルム(169)を除去し、前記ガラスフィラメント(160)を軟化させるために加熱源に供給するステップと、
b.前記軟化させたガラスフィラメント(160)を基板(130)または物体の表面に適用するステップと、を含み、前記難燃性または自己消火性の単一の保護フィルム(169)がポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有し、
c.前記供給されたガラスフィラメント長(L)は、前記フィラメント供給ノズル(120)と前記基板(130)または物体の表面との間の距離であり、5ミリメートル未満である、前記方法。
【請求項2】
前記ガラスフィラメントが、100~500μmの範囲内の直径を有するガラスファイバである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱源が、少なくとも1つのレーザ源である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスフィラメント(160)が中空であり、前記方法が、前記中空フィラメントの内部にガス圧を供給して、前記中空の特徴を有する三次元構成要素を生成するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ガラスの三次元構成要素の付加製造のための単一のガラスフィラメント(160)であって、前記単一のガラスフィラメント(160)が表面に適用された難燃性または自己消火性の単一の保護フィルム(169)を備え、前記フィルム(169)が、ポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有する、前記単一のガラスフィラメント(160)。
【請求項6】
前記ガラスフィラメント(160)が、100~500μmの範囲内の直径を有するガラスファイバである、請求項5に記載のガラスフィラメント。
【請求項7】
前記ガラスフィラメント(160)が光ファイバである、請求項6に記載のガラスフィラメント。
【請求項8】
前記ガラスフィラメント(160)が中空である、請求項6または7に記載のガラスフィラメント。
【請求項9】
前記中空部分の体積が、前記ガラスフィラメント(160)における前記ガラス含有量の体積の10~70%である、請求項8に記載のガラスフィラメント。
【請求項10】
ガラスでできた三次元構成要素を生成するための付加製造方法における単一のガラスフィラメント(160)の使用であって、前記単一のガラスフィラメント(160)が表面に適用された難燃性または自己消火性の単一の保護フィルム(169)を備え、前記フィルム(169)がポリイミド系材料でできていて、1μm~50μmの範囲内の厚さを有する、前記使用。
【国際調査報告】