(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】圧力容器のためのボスアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20240705BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F17C1/06
F16J12/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502144
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022069872
(87)【国際公開番号】W WO2023285660
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・クリエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘールト・ナウエン
(72)【発明者】
【氏名】ドリース・デフィッシェル
(72)【発明者】
【氏名】カン-フン・グエン
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA01
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172CA20
3E172DA36
3J046AA20
3J046BA03
3J046BD09
3J046CA01
3J046CA04
3J046DA05
3J046EA02
(57)【要約】
流体貯蔵チャンバを画定するライナ(3)、およびライナ(3)を囲むまたは包む複合シェル(4)を有する圧力容器(2)のためのボスアセンブリ(1)は、ボス部(1b)に結合された繊維強化複合材料で作られたドーム強化部(1a)を備え、ドーム強化部(1a)は、複合シェル(4)によって覆われるように構成され、ライナ(3)のドーム部(3a)を覆うように構成され、ボス部(1b)は、ドーム強化部製造中に、ドーム強化部(1a)に機械的に結合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵チャンバを画定するライナ(3)、および前記ライナ(3)を囲むまたは包む複合シェル(4)を有する圧力容器(2)のためのボスアセンブリ(1)であって、前記ボスアセンブリ(1)は、ボス部(1b)に結合された繊維強化複合材料で作られたドーム強化部(1a)を備え、前記ドーム強化部(1a)は、前記複合シェル(4)によって覆われるように構成され、前記ライナ(3)のドーム部(3a)を覆うように構成され、前記ドーム強化部(1a)は、前記ドーム強化部の製造中に前記ボス部(1b)に機械的に結合され、前記ドーム強化部(1a)は、前記ボス部(1b)に対する前記ドーム強化部(1a)の軸方向移動を遮断するために、前記ボス部(1b)上に配置された軸方向当接部(8)を備えた固定手段により前記ボス部(1b)に固定して結合されている、ボスアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記ドーム強化部(1a)は、巻取、包装、編込およびテープ固定技術からなる群から選択された技術の少なくとも1つを使用して製造され、前記ボス部(1b)は前記ドーム強化部(1a)を製造するためにマンドレルの一部として使用される、請求項1に記載のボスアセンブリ。
【請求項3】
前記ドーム強化部(1a)は、巻取技術を使用して製造され、前記ボス部(1b)は前記ドーム強化部(1a)を製造するためのマンドレルの巻取部として使用される、請求項2に記載のボスアセンブリ。
【請求項4】
前記ボス部(1b)は、流体流通ポートを提供する軸方向円筒形中空部を含むネック部(11)を備えた極位ボス(10)であり、前記ネック部(11)の一軸方向端部(11b)は、前記ボス部(1b)を前記ライナ(3)に結合するための第1の結合表面を提供するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のボスアセンブリ。
【請求項5】
前記極位ボス(10)はさらに、前記ネック部(11)から径方向外向きに延びるフランジ部(12)を備え、前記フランジ部(12)は内側表面(12a)および外側表面(12b)を有し、前記フランジ部(12)の前記内側表面(12a)は前記ボス部(1b)を前記ライナ(3)に結合するための第2の結合表面を提供するように構成され、前記フランジ部(12)の前記外側表面(12b)は前記ドーム強化部製造中に前記ドーム強化部(1a)を前記ボス部(1b)に結合するための第3の結合表面を提供する、請求項4に記載のボスアセンブリ。
【請求項6】
前記ボス部(1b)はネック部を備えたブラインドボスである、請求項1から3のいずれか一項に記載のボスアセンブリ。
【請求項7】
前記固定手段は、前記フランジ部(12)の前記外側表面(12b)に固定された少なくとも1つのねじ(5)またはピン(6)を備え、前記少なくとも1つのねじ(5)またはピン(6)は、前記ボス部(1b)に対する前記ドーム強化部(1a)の径方向、軸方向および回転移動を遮断するために前記ドーム強化部(1a)を貫通する、請求項5に記載のボスアセンブリ。
【請求項8】
前記固定手段は、前記ボス部(1b)の前記ネック部(11)の外側表面(11a)上に配置された非円形断面形状(7a)の円筒形表面部(7)を備え、非円形断面形状(7a)の前記円筒形表面部(7)は、前記ボス部(1b)に対する前記ドーム強化部(1a)の径方向および回転移動を遮断するために、前記ドーム強化部(1a)によって囲まれまたは包まれ、前記固定手段の前記軸方向当接部(8)は、前記ボス部(1b)に対する前記ドーム強化部(1a)の軸方向移動を遮断するために、前記ボス部(1b)の前記ネック部(11)上に配置されている、請求項4、6または7に記載のボスアセンブリ。
【請求項9】
前記非円形断面形状(7a)は、多角形、楕円形または切頂円形断面形状からなる群から選択され、前記軸方向当接部(8)は、溝(8a)、ウィングレット(8b)、ピン(8c)などの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項8に記載のボスアセンブリ。
【請求項10】
流体貯蔵チャンバを画定するライナ(3)、前記ライナ(3)を囲むまたは包む複合シェル(4)、および請求項1から9のいずれか一項に記載のボスアセンブリ(1)を備えた圧力容器(2)であって、前記ドーム強化部(1a)は、前記複合シェル(4)によって覆われ、前記ライナ(3)のドーム部(3a)を覆う、圧力容器(2)。
【請求項11】
請求項10に記載の圧力容器を備えた車両。
【請求項12】
圧力容器(2)のためのボスアセンブリ(1)を製造する方法であって、前記ボスアセンブリ(1)はドーム強化部(1a)およびボス部(1b)を有し、前記方法は、
ドーム形部を有するマンドレルを提供するステップと、
前記マンドレルの前記ドーム形部上に前記ボス部(1b)を位置決めするステップと、
フィラメント巻取機内に前記ボス部(1b)を備えた前記マンドレルを置くステップと、
前記マンドレルの前記ドーム形部および前記ボス部(1b)上で強化繊維の層を巻き取り、前記ドーム強化部(1a)を前記ボス部(1b)に機械的に結合するように、前記ボス部(1b)に対する前記ドーム強化部(1a)の軸方向移動を遮断するために、前記ボス部(1b)上に配置された軸方向当接部(8)を備えた固定手段により前記ドーム強化部(1a)を前記ボス部(1b)に固定結合することによって、前記ドーム強化部(1a)を製造するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
前記マンドレルおよび前記ボス部(1b)上で強化繊維の層を巻き取ることによって前記ドーム強化部(1a)を製造する前記ステップは、前記ドーム強化部(1a)を前記ボス部(1b)に固定結合するように、前記ボス部(1b)の固定結合部上で強化繊維を巻き取るステップを含む、請求項12に記載のボスアセンブリを製造する方法。
【請求項14】
前記強化繊維は液体マトリックスで含浸され、前記方法は、
前記液体マトリックスを硬化または重合するステップと、
前記ボスアセンブリ(1)を前記マンドレルから取り除くステップと、をさらに含む、請求項12または13に記載のボスアセンブリを製造する方法。
【請求項15】
前記液体マトリックスを硬化または重合する前記ステップは、前記液体マトリックスを完全に硬化または完全に重合するステップである、請求項14に記載のボスアセンブリを製造する方法。
【請求項16】
前記強化繊維は乾燥強化繊維であり、前記方法は、
金型内に前記ドーム強化部(1a)および前記ボス部(1b)を備えた前記マンドレルを置くステップと、
樹脂注入または樹脂移動成形プロセスを行うステップと、
前記金型から前記ドーム強化部(1a)および前記ボス部(1b)を備えた前記マンドレルを取り除くステップと、
前記マンドレルから前記ボスアセンブリ(1)を取り除くステップと、をさらに含む、請求項12または13に記載のボスアセンブリを製造する方法。
【請求項17】
前記マンドレルから前記ボスアセンブリ(1)を取り除く前記ステップは、前記ドーム強化部(1a)を周方向に切断するステップを含む、請求項14から16のいずれか一項に記載のボスアセンブリを製造する方法。
【請求項18】
圧力容器(2)のためのボスアセンブリ(1)の対を製造する方法であって、前記対の各ボスアセンブリ(1)はドーム強化部(1a)およびボス部(1b)を有し、前記方法は、
2つの対称なドーム形部を有するマンドレルを提供するステップと、
前記マンドレルの各ドーム形部上にボスアセンブリ(1)の前記対の各ボス部(1b)を位置決めするステップと、
フィラメント巻取機内にボス部(1b)の前記対を備えた前記マンドレルを置くステップと、
ドーム強化部(1a)の前記対をボス部(1b)の前記対に機械的に結合するように、前記マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリ(1)の前記対の各ボス部(1b)上で強化繊維の層を巻き取り、前記ボス部(1b)に対する前記ドーム強化部(1a)の軸方向移動を遮断するために各ボス部(1b)上に配置された軸方向当接部(8)を備えた固定手段により各ドーム強化部(1a)を各ボス部(1b)に固定結合することによって、ボスアセンブリ(1)の前記対の各ドーム強化部(1a)を製造するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
前記マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリ(1)の前記対の各ボス部(1b)上で強化繊維の層を巻き取ることによって、ボスアセンブリ(1)の前記対の各ドーム強化部(1a)を製造する前記ステップは、ドーム強化部(1a)の前記対をボス部(1b)の前記対に固定結合するように、各ボス部(1b)の固定結合部上で強化繊維を巻き取るステップを含む、請求項18に記載のボスアセンブリ(1)の対を製造する方法。
【請求項20】
前記強化繊維は液体マトリックスで含浸され、前記方法は、
前記液体マトリックスを硬化または重合するステップと、
ボスアセンブリ(1)の前記対を前記マンドレルから取り除くステップと、をさらに含む、請求項18または19に記載のボスアセンブリ(1)の対を製造する方法。
【請求項21】
前記液体マトリックスを硬化または重合する前記ステップは、前記液体マトリックスを完全に硬化または完全に重合するステップである、請求項20に記載のボスアセンブリ(1)の対を製造する方法。
【請求項22】
前記強化繊維は乾燥強化繊維であり、前記方法は、
金型内にドーム強化部(1a)の前記対およびボス部(1b)の前記対を備えた前記マンドレルを置くステップと、
樹脂注入または樹脂移動成形プロセスを行うステップと、
前記金型からドーム強化部(1a)の前記対およびボス部(1b)の前記対を備えた前記マンドレルを取り除くステップと、
前記マンドレルからボスアセンブリ(1)の前記対を取り除くステップと、をさらに含む、請求項18または19に記載のボスアセンブリ(1)の対を製造する方法。
【請求項23】
前記マンドレルからボスアセンブリ(1)の前記対を取り除く前記ステップは、ドーム強化部(1a)の前記対を周方向に2つの別個の部に切断するステップを含む、請求項20から22のいずれか一項に記載のボスアセンブリ(1)の対を製造する方法。
【請求項24】
請求項12から17のいずれか一項に記載のボスアセンブリを製造する方法であって、
ライナ(3)のドーム部(3a)の上に前記ボスアセンブリ(1)を位置決めするステップと、
前記ボスアセンブリ(1)および前記ライナ(3)の上に複合シェル(4)を製造するステップと、を含む、方法。
【請求項25】
前記ボスアセンブリ(1)および前記ライナ(3)の上に前記複合シェル(4)を製造する前記ステップは、前記複合シェル(4)を硬化または重合するステップを含む、請求項24に記載の圧力容器を製造する方法。
【請求項26】
前記ボスアセンブリ(1)および前記ライナ(3)の上に前記複合シェル(4)を製造する前記ステップは、前記ライナ(3)内に処理ガスを射出するステップが先行する、請求項24または25に記載の圧力容器を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体貯蔵チャンバを画定するライナ、およびライナを囲むまたは包む複合シェルを有する圧力容器のためのボスアセンブリに関する。流体は、圧縮二水素ガス(CGH2)、圧縮天然ガス(CNG)などの圧縮ガス、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)などの液化ガス、または他の様々な加圧物質のいずれかである。
【0002】
本発明はまた、本発明によるボスアセンブリを含む様々な構成部品を備えた圧力容器に関する。本発明はさらに、本発明によるボスアセンブリを製造する方法に関する。本発明はさらに、本発明による圧力容器を製造する方法に関する。本発明はさらに、また、本発明による圧力容器を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0003】
高圧で流体を貯蔵するための典型的な圧力容器は、流体貯蔵チャンバを画定するライナを備えている。ライナは概して、長手軸に沿って延びるほぼ円筒形中心部分を備えており、該長手軸の両側にドーム型キャップ(「ドーム」として知られる)が流体貯蔵チャンバを閉じるために設けられる。極位ボスを備えた少なくとも1つの極位開口は、流体を流体貯蔵チャンバ内に充填するまたはそこから排出するために設けられている。
【0004】
ライナを強化し、圧力容器が加圧物質で満たされる際に流体貯蔵チャンバの内側の高圧に耐えるようにするために、ライナは複合シェル内に囲まれるまたは包まれる。
【0005】
フィラメント巻取方法を使用することによって複合シェルを得ることが知られている。フィラメント巻取方法は、トウ状プリプレグを準備するために前もって強化繊維束(糸)が樹脂で含浸され、ライナ上にトウ状プリプレグを巻き取ることによって複合シェルが形成される方法、または、所定の方向に供給される繊維束が樹脂で含浸されて、ライナ上に巻き取られる方法である。
【0006】
フィラメント巻取によって製造される複合シェルを備えた圧力容器では、相当の量の強化繊維が使用される。実際、複合シェルは、径方向および軸方向の両方に圧力強度を提供するために、周縁層(「フープ層」としても知られる)および螺旋状層の両方を備えている。周縁層内の繊維は、圧力容器の円筒形中心部分において周縁方向に圧力強度を提供するために、接線繊維方向を有する。螺旋状層は、その中心部分で圧力容器の軸方向圧力強度を提供するだけでなく、この領域で内部圧力に耐えるためにドームを覆う。
【0007】
圧力容器のドームを強化するために螺旋状層により繊維を巻き取ることは、円筒形中心部分を軸方向に強化するために必要なものより多くの繊維材料を必要とする。しかし、連続巻取プロセスは、ドーム上および中心部分の上に連続して螺旋状層を置くことを伴い、それにより、多くの繊維材料を中心部分で使用しなければならず、圧力容器の重量、製造時間および費用を増加させる。
【0008】
特許文献1は、同じ強度性状を維持しながら、複合シェルを製造するためにより少ない繊維材料を使用することを可能にする極位キャップ強化層を開示している。しかし、この解決法は、ドームの上に極位キャップ強化層を加える前に極位ボスがライナ上に取り付けられることを示唆しており、これは、アセンブリクリアランスの数およびアセンブリ動作の数を増加させ、これにより圧力容器の製造を複雑にするので、満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願第2017137278A号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】国連によって発行された「Agreement Concerning the Adoption of Uniform Technical Prescriptions for Wheeled Vehicles, Equipment and Parts which can be Fitted and/or be Used on Wheeled Vehicles and the Conditions for Reciprocal Recognition of Approvals Granted on the Basis of these Prescriptions」の付録133、規則第134号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、アセンブリアセンブリクリアランスおよびアセンブリ動作の増加を避けながら、できるだけ少量の繊維材料を使用して費用効果および時間効率の両方が良く、ドーム領域内で効果的に強化することができる、圧力容器および圧力容器を製造するための対応する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、流体貯蔵チャンバを画定するライナ、およびライナを囲むまたは包む複合シェルを有する圧力容器のためのボスアセンブリを提供し、ボスアセンブリは、ボス部に結合された繊維強化複合材料で作られたドーム強化部を備え、ドーム強化部は、複合シェルによって覆われるように構成され、ライナのドーム部を覆うように構成され、ドーム強化部は、ドーム強化部製造中にボス部に機械的に結合され、ドーム強化部は、ボス部に対するドーム強化部の軸方向移動を遮断するために、ボス部上に配置された軸方向当接部を備えた固定手段によりボス部に固定して結合されている。
【0013】
従来技術と比較すると、本発明によるボスアセンブリは、ボス部とドーム強化部の間にいかなるアセンブリクリアランスもなしで製造される。この規定により、圧力容器を製造するために必要なアセンブリクリアランスおよびアセンブリ動作の合計数を減らすことが可能になる。さらに、ドーム強化部がドーム強化部製造中にボス部に機械的に結合されるという事実は、本発明によるボスアセンブリが、極位ボス部および極位キャップ強化層がライナ上で交互に取り付けられた2つの別の部である従来技術と比較して、単一のステップでボスアセンブリをライナ上に取り付けることを可能にする独立型ボスアセンブリであることを意味する。固定手段は、ボスアセンブリを単一ユニットとして処理して、製造時間を減らすことができるように、ドーム強化部をボス部に固定することを可能にする。
【0014】
好ましい実施形態では、ライナは熱可塑性材料で作られたプラスチックライナである。これにより、タイプIV圧力容器を製造することが可能になる。
【0015】
好ましい実施形態では、複合シェルは繊維強化複合シェルである。これは、繊維強化複合シェルの重量減少と機械的強度の間の良好な歩み寄りを可能にする。
【0016】
ボス部は、極位ボスまたはブラインドボスのいずれかである。ボス部は、ライナに取り付けられた取付治具であり、極位ボスの場合には弁システムへの接続を行い、ブラインドボスの場合にはフィラメント巻取機内にライナを保持するように構成されている。
【0017】
好ましい実施形態では、ボス部は、金属、プラスチックおよびセラミックからなる群から選択された材料で作られている。ボス部はアルミニウムで作られていることが好ましい。これにより、ボス部の重量減少と機械的強度の間の良好な歩み寄りが可能になる。
【0018】
好ましい実施形態では、繊維強化複合材料の複合材料は、熱硬化性樹脂および熱可塑性ポリマーからなる群から選択される。繊維強化複合材料の複合材料は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0019】
熱硬化性樹脂は、2つ以上の反応性成分を混合して反応性熱硬化性前駆体を形成し、反応性熱硬化性前駆体が硬化条件(例えば、熱、UVまたは他の放射線、または単に互いに接触することなどにより)への露出で反応して熱硬化性樹脂を形成することにより、形成される。熱硬化性マトリックスは、高性能複合材を生じさせるために完全に硬化しなければならない。硬化されると、熱硬化性樹脂は固体であり、樹脂はこれ以上流れることができないので、さらに加工または再成形することができない。熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、ビニルエステル、ポリウレア、イソシアヌレート、およびポリウレタン樹脂が挙げられる。粘着性があるが、まだ柔らかいように部分的にのみ硬化された反応性樹脂で含浸させた繊維で作られた熱硬化性プリプレグを作り出すことが可能である。プリプレグは、貯蔵し、その後、プリプレグの硬化および固化を完了するために、樹脂を加熱する、またはUVに曝すことによって圧力を加えてさらに加工することができる。
【0020】
熱可塑性ポリマーは、固体状態(または、非流動性状態)から液体状態(または、流動性状態)まで通過し、それぞれ温度を上げるまたは下げることによって逆にすることができる。半結晶ポリマーの場合、熱可塑性物質の温度を下げることにより、結晶の形成および熱可塑性物質の固化を推進する。逆に、半結晶ポリマーをその融点より上に加熱することにより、結晶を溶融し、熱可塑性物質が流れることができる。半結晶熱可塑性物質の例として、PEEK、PEKK、PEKKEKなどのポリエーテルケトン、PA6、PA66、PA10、PA11、PA12などのポリアミド、PE、PPなどのポリオレフィンなどが挙げられる。非結晶質熱可塑性物質は、結晶を形成せず、融点がない。非結晶質熱可塑性物質は、材料温度がそのガラス転移温度より下または上であるかどうかによって固化する、または流動可能になる。非結晶質熱可塑性物質の例として、PEI、PSU、PES、PC、PS、TPUなどが挙げられる。半結晶および非結晶質熱可塑性物質は両方ともしたがって、その融点またはガラス転移温度より上に加熱することによって再成形し、それに応じて温度を下げることによって新しい形状に凍結することができる。物理的視点から厳密には正確ではないとしても、単純化のために、液体状態の半結晶および非結晶質熱可塑性物質は両方とも、本明細書では「熱可塑性溶融物」と呼ばれる。
【0021】
好ましい実施形態では、繊維強化複合材料の繊維は、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維からなる群から選択された繊維である。これにより、繊維強化複合材料の重量減少と機械的強度の間の良好な歩み寄りが可能になる。
【0022】
好ましい実施形態では、ドーム強化部を製造するために使用される繊維強化複合材料の繊維は、高い係数を有する連続繊維である。これによりさらに、繊維強化複合材料の機械的強度が改善される。
【0023】
好ましい実施形態では、ドーム強化部は、巻取、包装、編込およびテープ固定技術からなる群から選択された技術の少なくとも1つを使用して製造され、ボス部はドーム強化部を製造するためにマンドレルの一部として使用される。有利には、テープ固定技術は、レーザ支援テープ固定(LATP)技術である。
【0024】
ドーム強化部は、巻取技術を使用して製造され、ボス部はドーム強化部を製造するためのマンドレルの巻取部として使用されることが好ましい。
【0025】
好ましい実施形態では、ボス部は、流体流通ポートを提供する軸方向円筒形中空部を含むネック部を備えた極位ボスであり、ネック部の一軸方向端部は、ボス部をライナに結合するための第1の結合表面を提供するように構成されている。第1の結合表面は、ボス部とライナの間の第1の接触表面であることが好ましい。
【0026】
別の好ましい実施形態では、極位ボスはさらに、ネック部から径方向外向きに延びるフランジ部を備え、フランジ部は内側表面および外側表面を有し、フランジ部の内側表面はボス部をライナに結合するための第2の結合表面を提供するように構成され、フランジ部の外側表面はドーム強化部製造中にドーム強化部をボス部に結合するための第3の結合表面を提供する。第2の結合表面はボス部とライナの間の第2の接触表面であり、第3の結合表面はドーム強化部製造中にドーム強化部とボス部の間の第3の接触表面であることが好ましい。
【0027】
代替実施形態では、ボス部はネック部を備えたブラインドボスである。
【0028】
好ましい実施形態では、ドーム強化部は、ドーム強化部とボス部の間の接着のための、接着要素、例えば糊を備えた固定手段によりボス部に固定して結合される。これにより、ボスアセンブリを単一ユニットとして処理して、製造時間を減らすことができるように、ドーム強化部をボス部に固定することが可能になる。接着要素の使用により、ボスアセンブリのための標準的ボス部を使用することが可能になる。接着要素は、熱活性化接着剤であってもよい。
【0029】
好ましい実施形態では、固定手段は、フランジ部の外側表面に固定された少なくとも1つのねじまたはピンを備えている。少なくとも1つのねじまたはピンは、ボス部に対するドーム強化部の径方向、軸方向および回転移動を遮断するためにドーム強化部を貫通する。ドーム強化部の径方向、軸方向および回転移動は、ボス部のネック部の軸に関して画定されることを理解されたい。
【0030】
別の好ましい実施形態では、固定手段は、ボス部のネック部の外側表面上に配置された非円形断面形状の円筒形表面部の形で径方向および回転当接部を備えている。非円形断面形状の円筒形表面部は、ボス部に対するドーム強化部の径方向および回転移動を遮断するために、ドーム強化部によって囲まれるまたは包まれている。固定手段の軸方向当接部は、ボス部に対するドーム強化部の軸方向移動を遮断するために、ボス部のネック部上に配置されている。断面形状は、ボス部のネック部の軸に垂直な平面に配置されている。
【0031】
好ましい実施形態では、非円形断面形状は、多角形、楕円形および切頂円形断面形状からなる群から選択され、軸方向当接部は、溝、ウィングレット、ピンなどの少なくとも1つからなる群から選択される。
【0032】
本発明はまた、流体貯蔵チャンバを画定するライナ、ライナを囲むまたは包む複合シェル、および本発明によるボスアセンブリを備えた圧力容器に関し、ドーム強化部は、複合シェルによって覆われ、ライナのドーム部を覆う。ライナのドーム部は、ドーム部の表面全体またはその一部のいずれかである。
【0033】
本発明はさらに、本発明による圧力容器を備えた車両に関する。
【0034】
本発明はさらに、ボスアセンブリを製造する方法に関し、ボスアセンブリはドーム強化部およびボス部を有する。方法は、
ドーム形部を有するマンドレルを提供するステップと、
マンドレルのドーム形部上にボス部を位置決めするステップと、
フィラメント巻取機内にボス部を備えたマンドレルを置くステップと、
マンドレルのドーム形部およびボス部上で強化繊維の層を巻き取り、ドーム強化部をボス部に機械的に結合するように、ボス部に対するドーム強化部の軸方向移動を遮断するために、ボス部上に配置された軸方向当接部を備えた固定手段によりドーム強化部をボス部に固定結合することによって、ドーム強化部を製造するステップと、を含む。
【0035】
好ましい実施形態では、マンドレルおよびボス部上で強化繊維の層を巻き取ることによってドーム強化部を製造するステップは、ドーム強化部をボス部に固定結合するように、ボス部の固定結合部上で強化繊維を巻き取るステップを含んでいる。固定結合部は、ねじ、ピン、ウィングレット、溝および非円形断面形状の円筒形表面部の少なくとも1つからなる群から選択される。別の方法では、マンドレルおよびボス部上で強化繊維の層を巻き取ることによってドーム強化部を製造するステップは、ドーム強化部を製造する前にボス部の上に接着要素、例えば糊を塗布するステップを含む。接着要素は、熱活性化接着剤であってもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、強化繊維は液体マトリックスで含浸される。方法はさらに、
液体マトリックスを硬化または重合するステップと、
ボスアセンブリをマンドレルから取り除くステップと、を含み、したがって、繊維強化複合材料を備えた独立型ボスアセンブリが得られる。
【0037】
液体マトリックスは、反応性熱硬化性前駆体および熱可塑性溶融物からなる群から選択される。
【0038】
有利には、液体マトリックスを硬化または重合するステップは、液体マトリックスを完全に硬化または完全に重合するステップである。これにより、複合シェルが硬化または重合される場合に、ドーム強化部が複合シェルと化学反応(例えば、結合)するのを防ぐ。加えて、これにより、別のステップでドーム強化部を切断することが容易になる。
【0039】
代替実施形態では、強化繊維は乾燥強化繊維である。方法はさらに、
金型内にドーム強化部およびボス部を備えたマンドレルを置くステップと、
樹脂注入または樹脂移動成形プロセスを行うステップと、
金型からドーム強化部およびボス部を備えたマンドレルを取り除くステップと、
マンドレルからボスアセンブリを取り除くステップと、を含み、したがって、繊維強化複合材料を備えた独立型ボスアセンブリが得られる。
【0040】
好ましい実施形態では、マンドレルからボスアセンブリを取り除くステップは、ドーム強化部を周方向に切断するステップを含む。これにより、ドーム強化部をマンドレルから解放することが可能になる。さらに、ボス部がボスアセンブリのしっかりした把持を行うので、ドーム強化部がボス部に固定結合されているという事実は、より安定した切断動作を可能にする。
【0041】
代替実施形態では、本発明は、圧力容器のためのボスアセンブリの対を製造する方法に関し、対の各ボスアセンブリはドーム強化部およびボス部を有し、方法は、
2つの対称なドーム形部を有するマンドレルを提供するステップと、
マンドレルの各ドーム形部上にボスアセンブリの対の各ボス部を位置決めするステップと、
フィラメント巻取機内にボス部の対を備えたマンドレルを置くステップと、
ドーム強化部の対をボス部の対に機械的に結合するように、マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリの対の各ボス部上で強化繊維の層を巻き取り、ボス部に対するドーム強化部の軸方向移動を遮断するために各ボス部上に配置された軸方向当接部を備えた固定手段により各ドーム強化部を各ボス部に固定結合することによって、ボスアセンブリの対の各ドーム強化部を製造するステップと、を含む。これにより、同時に2つのボスアセンブリを製造することが可能になる。
【0042】
好ましい実施形態では、マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリの対の各ボス部上で強化繊維の層を巻き取ることによってボスアセンブリの対の各ドーム強化部を製造するステップは、ドーム強化部の対をボス部の対に固定結合するように、各ボス部の固定結合部上で強化繊維を巻き取るステップを含む。固定結合部は、ねじ、ピン、ウィングレット、溝および非円形断面形状の円筒形表面部の少なくとも1つからなる群から選択される。別の方法では、マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリの対の各ボス部上で強化繊維の層を巻き取ることによって、ボスアセンブリの対の各ドーム強化部を製造するステップは、ドーム強化部を製造する前にボス部の上に接着要素、例えば糊を塗布するステップを含む。接着要素は、熱活性化接着剤であってもよい。
【0043】
好ましい実施形態では、強化繊維は液体マトリックスで含浸され、方法はさらに、
液体マトリックスを硬化または重合するステップと、
ボスアセンブリの対をマンドレルから取り除くステップと、を含み、したがって、繊維強化複合材料を備えた2つの独立型ボスアセンブリが得られる。
【0044】
液体マトリックスは、反応性熱硬化性前駆体および熱可塑性溶融物からなる群から選択される。
【0045】
有利には、液体マトリックスを硬化または重合するステップは、液体マトリックスを完全に硬化または完全に重合するステップである。これにより、複合シェルが硬化または重合される場合に、2つのドーム強化部が複合シェルと化学反応(例えば、結合)するのを防ぐ。加えて、これにより、別のステップで2つのドーム強化部を切断することが容易になる。
【0046】
代替実施形態では、強化繊維は乾燥強化繊維であり、方法はさらに、
金型内にドーム強化部の対およびボス部の対を備えたマンドレルを置くステップと、
樹脂注入または樹脂移動成形プロセスを行うステップと、
金型からドーム強化部の対およびボス部の対を備えたマンドレルを取り除くステップと、
マンドレルからボスアセンブリの対を取り除くステップと、を含み、したがって、繊維強化複合材料を備えた2つの独立型ボスアセンブリが得られる。
【0047】
好ましい実施形態では、マンドレルからボスアセンブリの対を取り除くステップは、ドーム強化部の対を周方向に切断するステップを含む。これにより、ドーム強化部の対をマンドレルから解放し、2つの別個のドーム強化部に分割することが可能になる。さらに、ボス部がボスアセンブリのしっかりした把持を行うので、各ドーム強化部がボス部に固定結合されているという事実は、より安定した切断動作を可能にする。
【0048】
本発明はさらに、ボスアセンブリを備えた圧力容器を製造する方法に関し、ボスアセンブリはボス部に固定結合されたドーム強化部を有し、方法は、
ライナのドーム部の上にボスアセンブリを位置決めするステップと、
ボスアセンブリおよびライナの上に複合シェルを製造するステップと、
を含む。
【0049】
好ましい実施形態では、ボスアセンブリおよびライナの上に複合シェルを製造するステップは、複合シェルを硬化または重合するステップを含む。
【0050】
さらに好ましい実施形態では、ボスアセンブリおよびライナの上に複合シェルを製造するステップは、ライナ内に処理ガスを射出するステップが先行する。処理ガスは、製造中にライナおよびドーム強化部の寸法に起こる寸法変化によりライナとドーム強化部の間に現れる可能性があるあらゆる寸法クリアランスをなくすのに十分高い圧力で射出される。
【0051】
本発明によるボスアセンブリのボス部を収納するための手段を有するフィラメント巻取機のためのマンドレルが提供される。
【0052】
好ましい実施形態では、ボスアセンブリのボス部を収納するための手段は、ボス部をマンドレルに締め付けるための締付手段を備えている。締付手段は、ねじ込み手段、機械的連動手段、急速接続手段などの少なくとも1つからなる群から選択されることが好ましい。
【0053】
別の好ましい実施形態では、マンドレルは、ドーム強化部製造中にドーム強化部形状の寸法安定性を増加させるための熱調整システムを備え、したがってさらに、アセンブリクリアランスの増加が避けられる。熱調整システムは、小さな温度範囲内でマンドレルの温度を調節するシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の第1の実施形態の部分断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態の部分断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態の部分断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態の部分断面図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態の部分断面図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態の部分断面図である。
【
図7】本発明の第7の実施形態の部分断面図である。
【
図8】本発明の第8の実施形態の部分断面図である。
【
図10】第6および第7の実施形態の特定の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して記載されるが、本発明はこれに限るものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載した図面は単なる略図であり、非限定的である。図面中、要素のいくつかのサイズは誇張され、例示的目的で等尺に描かれていないことがあり得る。寸法および相対寸法は、本発明の実施への実際の縮小に対応していない。
【0056】
特許請求の範囲で使用される「備えた」という用語は、それ以下に挙げる手段に制限されるものとして解釈すべきではなく、他の要素またはステップを排除するものではないことに留意されたい。したがって、言及したように記された特性、整数、ステップまたは構成部品の存在を特定するものと解釈されるが、1つまたは複数の他の特性、整数、ステップまたは構成部品、またはその群の存在または追加を除外するものではない。したがって、「手段AおよびBを備えたデバイス」という表現の範囲は、構成部品AおよびBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。本発明に関して、デバイスの唯一関連する構成部品がAおよびBであることを意味する。
【0057】
図1に示すように、本発明は、流体貯蔵チャンバを画定するライナ3、およびライナ3を囲むまたは包む複合シェル4を有する圧力容器2のためのボスアセンブリ1に関する。圧力容器2は、長手軸Xを有し、車両の燃料電池に電力を供給するための二水素を含んでいてもよい。「圧力容器」という表現によって、最大700バールまでの内部圧力に耐えることが可能な圧力を受けたガスを貯蔵することを意図した容器を意味する。例えば、圧力容器は、国連によって発行された非特許文献1に準拠してもよい。
【0058】
ボスアセンブリ1は、ボス部1bに結合されたドーム強化部1aを備えている。ボス部1bは、金属、プラスチックおよびセラミックからなる群から選択された材料で作られている。一例では、ボス部はアルミニウムで作られている。ドーム強化部1aは、繊維強化複合材料で作られている。繊維強化複合材料の複合材料は、熱硬化性樹脂および熱可塑性ポリマーからなる群から選択され、繊維強化複合材料の繊維は炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維からなる群から選択された繊維である。繊維強化複合材料の複合材料は熱硬化性樹脂であり、繊維強化複合材料の繊維は高い係数を有する連続繊維であることが好ましい。ドーム強化部1aは、複合シェル4によって覆われるように構成され、ライナ3のドーム部3aを覆うように構成されている。ドーム強化部1aは、ドーム強化部製造中に、ボス部1bに機械的に結合されている。例では、ボス部1bは弁システム9に接続されている。
【0059】
ドーム強化部1aは、巻取、包装、編込およびテープ固定技術からなる群から選択された技術の少なくとも1つを使用して製造され、ボス部1bはドーム強化部1aを製造するためにマンドレル(図示せず)の一部として使用される。有利には、テープ固定技術は、レーザ支援テープ固定(LATP)技術である。
【0060】
ドーム強化部1aは、巻取技術を使用して製造され、ボス部1bはドーム強化部1aを製造するためのマンドレルの巻取部として使用されることが好ましい。
【0061】
図1に示す例では、ボス部1bは、流体流通ポートを提供する軸方向円筒形中空部を含むネック部11を備えた極位ボス10である。ネック部11の一軸方向端部11bは、ボス部1bをライナ3に結合するための第1の結合表面を提供するように構成されている。
【0062】
図2から
図7に示す例では、極位ボス10はさらに、ネック部11の軸方向端部11bから径方向外向きに延びるフランジ部12を備えている。フランジ部12は内側表面12aおよび外側表面12bを有し、フランジ部12の内側表面12aはボス部1bをライナ3に結合するための第2の結合表面を提供するように構成され、フランジ部12の外側表面12bはドーム強化部製造中にドーム強化部1aをボス部1bに結合するための第3の結合表面を提供する。
【0063】
別の例(図示せず)では、ボス部1bはネック部を備えたブラインドボスである。
【0064】
有利には、ドーム強化部1aは、固定手段によりボス部1bに固定結合されている。
【0065】
図1から
図5に示す実施形態では、固定手段は、ボス部1bのネック部11の外側表面11a上に配置された非円形断面形状7aの円筒形表面部7(
図9参照)を備えている。非円形断面形状7aの円筒形表面部7は、ボス部1bに対するドーム強化部1aの径方向および回転移動を遮断するために、ドーム強化部1aによって囲まれるまたは包まれている。固定手段はさらに、ボス部1bに対するドーム強化部1aの軸方向移動を遮断するために、ボス部1bのネック部11上に配置された軸方向当接部8を備えている。
【0066】
図1から
図5に示すように、軸方向当接部8は、溝8a、ウィングレット8b、ピン8cなどの少なくとも1つからなる群から選択される。
【0067】
図6および
図7に示す実施形態では、固定手段は、フランジ部12の外側表面12bに固定された少なくとも1つのねじ5またはピン6を備えている。少なくとも1つのねじ5またはピン6は、ボス部1bに対するドーム強化部1aの径方向、軸方向および回転移動を遮断するためにドーム強化部1aを貫通する。ねじ5の場合、軸方向遮断は、ねじ5がドーム強化部1aを保持するねじヘッドを有するという事実によって保証される。ピン6の場合、軸方向遮断は、ピン6が長手軸Xに沿ったドーム強化部1aのあらゆる移動を防ぐ長手軸Xとの割線であるピン軸を有するという事実によって保証される。
【0068】
図8に示す実施形態では、固定手段は、ネック部11の外側表面11aに固定された少なくとも1つのピン6を備えている。少なくとも1つのピン6は、ボス部1bに対するドーム強化部1aの径方向、軸方向および回転移動を遮断するためにドーム強化部1aを貫通する。
【0069】
図1から
図8に示すように、本発明はまた、圧力容器2に関する。圧力容器2は、流体貯蔵チャンバを画定するライナ3、ライナ3を囲むまたは包む複合シェル4、およびボスアセンブリ1を備えている。ライナは、ドーム部3a、および長手軸Xに沿って延びる円筒形部3bを有する。ドーム強化部1aはライナ3のドーム部3aを覆い、複合シェル4は、ドーム強化部1aおよびライナ3の円筒形部3bを覆う。例では、圧力容器はタイプIV圧力容器であり、ライナは熱可塑性材料で作られたプラスチックライナである。
【0070】
本発明はさらに、圧力容器2のためのボスアセンブリ1を製造するための方法に関する。ボスアセンブリ1はドーム強化部1aおよびボス部1bを有する。方法は、
ドーム形部(図示せず)を有するマンドレルを提供するステップと、
マンドレルのドーム形部上にボス部1bを位置決めするステップと、
フィラメント巻取機内にボス部1bを備えたマンドレルを置くステップと、
ドーム強化部1aをボス部1bに機械的に結合するように、マンドレルのドーム形部およびボス部1b上で強化繊維の層を巻き取ることによってドーム強化部1aを製造するステップと、を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、マンドレルおよびボス部1b上で強化繊維の層を巻き取ることによってドーム強化部1aを製造するステップは、ドーム強化部1aをボス部1bに固定結合するように、ボス部1bの固定結合部上で強化繊維を巻き取るステップを含んでいる。
【0072】
一例では、強化繊維は液体マトリックスで含浸され、方法はさらに、
液体マトリックスを硬化または重合するステップと、
ボスアセンブリ1をマンドレルから取り除くステップと、を含む。
【0073】
有利には、液体マトリックスを硬化または重合するステップは、液体マトリックスを完全に硬化または完全に重合するステップである。
【0074】
代替例では、強化繊維は乾燥強化繊維であり、方法はさらに、
金型内にドーム強化部1aおよびボス部1bを備えたマンドレルを置くステップと、
樹脂注入または樹脂移動成形プロセスを行うステップと、
金型からドーム強化部1aおよびボス部1bを備えたマンドレルを取り除くステップと、
マンドレルからボスアセンブリ1を取り除くステップと、を含む。
【0075】
有利には、マンドレルからボスアセンブリ1を取り除くステップは、ドーム強化部1aを周方向に切断するステップを含む。
【0076】
代替実施形態では、本発明は、圧力容器2のためのボスアセンブリ1の対を製造する方法に関し、対の各ボスアセンブリ1はドーム強化部1aおよびボス部1bを有し、方法は、
2つの対称なドーム形部を有するマンドレルを提供するステップと、
マンドレルの各ドーム形部上にボスアセンブリ1の対の各ボス部1bを位置決めするステップと、
フィラメント巻取機内にボス部1bの対を備えたマンドレルを置くステップと、
ドーム強化部1aの対をボス部1bの対に機械的に結合するように、マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリ1の対の各ボス部1b上で強化繊維の層を巻き取ることによって、ボスアセンブリ1の対の各ドーム強化部1aを製造するステップと、を含む。
【0077】
好ましい実施形態では、マンドレルの各対称ドーム形部およびボスアセンブリ1の対の各ボス部1b上で強化繊維の層を巻き取ることによってボスアセンブリ1の対の各ドーム強化部1aを製造するステップは、ドーム強化部1aの対をボス部1bの対に固定結合するように、各ボス部1bの固定結合部上で強化繊維を巻き取るステップを含む。固定結合部は、ねじ5、ピン6、8c、ウィングレット8b、溝8aおよび非円形断面形状7aの円筒形表面部7の少なくとも1つからなる群から選択される。
【0078】
好ましい実施形態では、強化繊維は液体マトリックスで含浸され、方法はさらに、
液体マトリックスを硬化または重合するステップと、
ボスアセンブリ1の対をマンドレルから取り除くステップと、を含む。
【0079】
液体マトリックスは、反応性熱硬化性前駆体および熱可塑性溶融物からなる群から選択される。
【0080】
有利には、液体マトリックスを硬化または重合するステップは、液体マトリックスを完全に硬化または完全に重合するステップである。
【0081】
代替実施形態では、強化繊維は乾燥強化繊維であり、方法はさらに、
金型内にドーム強化部1aの対およびボス部1bの対を備えたマンドレルを置くステップと、
樹脂注入または樹脂移動成形プロセスを行うステップと、
金型から対のドーム強化部1aおよび対のボス部1bを備えたマンドレルを取り除くステップと、
マンドレルからボスアセンブリ(1)の対を取り除くステップと、を含む。
【0082】
好ましい実施形態では、マンドレルからボスアセンブリ1の対を取り除くステップは、対のドーム強化部1aを周方向に2つの別個の部に切断するステップを含む。
【0083】
本発明はさらに、ボスアセンブリ1を備えた圧力容器2を製造する方法に関する。ボスアセンブリ1はボス部1bに固定結合されたドーム強化部1aを有する。方法は、
- ライナ3のドーム部3a上にボスアセンブリ1を位置決めするステップと、
- ボスアセンブリ1およびライナ3の上に複合シェル4を製造するステップと、を含む。
【0084】
さらに好ましい実施形態では、ボスアセンブリ1およびライナ3の上に複合シェル4を製造するステップは、複合シェル4を硬化または重合するステップを含む。
【0085】
有利には、ボスアセンブリ1およびライナ3の上に複合シェル4を製造するステップは、ライナ3内に処理ガスを射出するステップが先行する。
【0086】
本発明はさらに、圧力容器2を備えた車両にも関する。
【0087】
本発明は最終的に、フィラメント巻取機のためのマンドレル(図示せず)に関する。マンドレルは、ボスアセンブリ1のボス部1bを収納するための手段を有する。
【0088】
一実施形態では、ボスアセンブリ1のボス部1bを収納するための手段は、ボス部1bをマンドレルに締め付けるための締付手段を備えている。締付手段は、ねじ込み手段、機械的連動手段、急速接続手段などの少なくとも1つからなる群から選択される。
【0089】
別の好ましい実施形態では、マンドレルはさらに、ドーム強化部製造中にドーム強化部形状の寸法安定性を増加させるための熱調整システム(図示せず)を備えている。
【0090】
図9に示すように、非円形断面形状7aは、多角形、楕円形および切頂円形断面形状からなる群から選択される。
【0091】
図10に示すように、固定手段は、フランジ部12の外側表面12bに固定された3つのねじ5またはピン6を備えている。3つのねじ5またはピン6は、長手軸Xからほぼ等距離に配置されている。
【符号の説明】
【0092】
1 ボスアセンブリ
1a ドーム強化部
1b ボス部
2 圧力容器
3 ライナ
3a ライナのドーム部
3b ライナの円筒部
4 複合セル
5 ねじ
6 ピン
7 非円形断面形状の円筒形表面部
7a 非円形断面形状
8 軸方向当接部
8a 溝
8b ウィングレット
8c ピン
9 弁システム
10 極位ボス
11 ネック部
11a ネック部の外側表面
11b ネック部の一軸方向端部
12 フランジ部
12a フランジ部の内側表面
12b フランジ部の外側表面
【国際調査報告】