(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】製造方法およびパワー半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240705BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L29/78 658E
H01L29/78 652E
H01L29/78 653A
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 652K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024502155
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2022069647
(87)【国際公開番号】W WO2023285557
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ガウラブ
(72)【発明者】
【氏名】デ-ミキエリス,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ビターレ,ボルフガング・アマデウス
(57)【要約】
少なくとも1つの実施形態では、パワー半導体デバイス(1)は、
-第1の導電型のソース領域(21)および第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域(22)を有する半導体本体(2)であって、ウェル領域(22)がソース領域(21)に直接あるチャネル領域(220)を含む、半導体本体(2)と、
-半導体本体(2)とゲート電極(31)との間に直接あるゲート絶縁体(4)とを備え、
チャネル領域(220)は、ゲート絶縁体(4)に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)を有し、その結果、チャネル領域(220)内のドーピング濃度NAは、ソース領域(21)から離れた第1のセクション(61)において最大である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイス(1)を製造するための方法であって、
-半導体基板を設けることと、
-前記半導体基板上に少なくとも1つの半導体層をエピタキシャル成長させることと、
-ゲート絶縁体(4)およびゲート電極(31)を設けることであって、前記ゲート絶縁体(4)が、前記少なくとも1つの半導体層と前記ゲート電極(31)との間に直接位置する、設けることと
を含み、
-前記半導体基板および/または前記少なくとも1つの半導体層が、第1の導電型のソース領域(21)および前記第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域(22)を有する半導体本体(2)を構成し、前記ウェル領域(22)が、前記ソース領域(21)に直接チャネル領域(220)を含み、
-前記チャネル領域(220)が、前記ゲート絶縁体(4)に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)を有し、その結果、前記チャネル領域(220)内のドーピング濃度N
Aが、前記ソース領域(21)から離れた第1のセクション(61)において最大であり、前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)が、前記少なくとも1つの半導体層の前記エピタキシャル成長によって完全または部分的に形成される、
方法。
【請求項2】
前記半導体本体(2)が、前記ソース領域(21)から離れた前記ウェル領域(22)の側に直接前記第1の導電型の強化層(27)をさらに備え、
前記チャネル領域(220)内の前記ドーピング濃度N
Aが、少なくとも0.5μmの前記半導体本体(2)の上面(20)からの深度において最大である、
先行する請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ドーピング濃度N
Aが、複数の階段(53)を含む、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記ドーピング濃度N
Aが、前記ソース領域(21)からドリフト領域(23)まで直線的またはほぼ直線的に増加し、
ほぼ直線的が、実際のドーピング濃度が、前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)の線形適合から、前記ウェル領域(22)内の前記ゲート絶縁体(4)に沿った前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)の最大ドーピング濃度の多くとも0.1だけ逸脱することを意味する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
-第1の導電型のソース領域(21)および前記第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域(22)を有する半導体本体(2)であって、前記ウェル領域(22)が前記ソース領域(21)に直接チャネル領域(220)を含む、半導体本体(2)と、
-前記半導体本体(2)と前記ゲート電極(31)との間に直接あるゲート絶縁体(4)と
を備える、パワー半導体デバイス(1)であって、
前記チャネル領域(220)が、前記ゲート絶縁体(4)に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)を有し、その結果、前記チャネル領域(220)内のドーピング濃度N
Aが、前記ソース領域(21)から離れた第1のセクション(61)において最大であり、
以下の
-前記ドーピング濃度N
Aが複数の階段(53)を含むか、または
-前記ドーピング濃度N
Aが、前記ソース領域(21)からドリフト領域(23)まで直線的もしくはほぼ直線的に増加する
のうちの1つが当てはまる、
パワー半導体デバイス(1)。
【請求項6】
-前記ソース領域(21)が、前記ゲート絶縁体(4)および前記チャネル領域(220)と直接接触し、
-前記半導体本体(2)が、前記ゲート絶縁体(4)と直接接触し、前記チャネル領域(220)に直接ある、前記第1の導電型の前記ドリフト領域(23)をさらに備え、
-前記パワー半導体デバイス(1)が、金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ、MISFET、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ、MOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、IGBT、または逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、RC-IGBTである、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項7】
前記ゲート絶縁体(4)に沿って、前記チャネル領域(220)内の前記ドーピング濃度N
Aが、前記ドリフト領域(23)において直接最も高い、
2つの先行する請求項のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項8】
前記ドーピング濃度N
Aが、前記ソース領域(21)から離れる方向に前記ゲート絶縁体(4)に沿った前記チャネル領域(220)において単調または厳密に単調に増加する、
請求項5~7のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項9】
前記ドーピング濃度N
Aが直線的に増加する、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項10】
前記ドーピング濃度N
Aが、前記ソース領域(21)からドリフト領域(23)まで単調に増加せず、その結果、前記ドーピング濃度N
Aが、前記チャネル領域(220)の中間セクション(63)内にピークを含む、
請求項5~7のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項11】
前記第1のセクション(61)の長さが、前記ゲート絶縁体(4)に沿った前記チャネル領域(220)の全長Lの少なくとも10%および多くとも40%である、
請求項5~10のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項12】
前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)が、前記ゲート絶縁体(4)に沿って前記ソース領域(21)に延在する第2のセクション(64)を有し、前記ドーピング濃度N
Aが、前記第2のセクション(64)内で前記ゲート絶縁体(4)に沿って一定である、
請求項5~11のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項13】
前記ドーピング濃度N
Aが、前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)の最大ドーピング濃度の少なくとも50%だけ前記チャネル領域(220)に沿って変化する、
請求項5~12のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項14】
-前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)の前記最大ドーピング濃度が、少なくとも5×10
16cm
-3および多くとも3×10
18cm
-3であるか、または
-前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)の前記最小ドーピング濃度が、多くとも2×10
17cm
-3もしくは多くとも1×10
17cm
-3である
のうちの少なくとも1つである、
先行する請求項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項15】
前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)が、前記ゲート絶縁体(4)に沿って前記不均一なチャネルドーピングプロファイル(6)に少なくとも1つの階段(53)が存在するように階段状に構成される、
請求項5~14のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項16】
前記ゲート電極(31)が、前記半導体本体(2)内に前記ウェル領域(22)を貫通して形成されたトレンチ内に少なくとも部分的に配置される、
請求項5~15のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項17】
前記ゲート電極(31)および前記ゲート絶縁体(4)が、前記半導体本体(2)の平坦な上面(20)に配置される、
請求項5~15のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項18】
前記ウェル領域(22)が、前記ウェル領域(22)が異なる最大ドーピング濃度を有する少なくとも2つの副層(51、52)を含むように多層形式である、
請求項5~17のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項19】
前記チャネル領域(220)の外側で前記ウェル領域(22)の深さに沿って、前記ウェル領域(22)が少なくとも所々に一定のドーピング濃度を有する、
請求項5~18のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項20】
前記ゲート絶縁体(4)が、前記チャネル領域(220)に沿って不均一な厚さを有し、その結果、前記チャネル領域(220)に沿って、前記ゲート絶縁体(4)は前記第1のセクション(61)において最も厚い、
請求項5~19のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項21】
以下の
-前記チャネル領域(220)が、前記ゲート絶縁体(4)に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイルを有し、その結果、前記チャネル領域(220)内のドーピング濃度N
Aが、前記第1のセクション(61)において最大であるか、または
-前記ゲート絶縁体(4)が、前記チャネル領域(220)に沿って不均一なゲート誘電率プロファイルを有し、その結果、前記ゲート絶縁体(4)の比誘電率が、前記ソース領域(21)から離れた前記チャネル領域(220)の前記第1のセクション(61)において最も低い、
のうちの少なくとも1つが真である、
請求項5~20のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
パワー半導体デバイスのための製造方法が提供される。さらに、対応するパワー半導体デバイスが提供される。
【背景技術】
【0002】
文献米国特許第6573561B1号は、非対称傾斜チャネルプロファイルを有する縦型MOSFETに言及している。
【0003】
文献米国特許第6664594B2号は、線形動作能力を向上させるための非対称チャネル構造を有するパワーMOSデバイスを開示している。
【0004】
文献米国特許第8067797B2号は、オフセットエミッタ接点を有する可変閾値トレンチIGBTを記載している。
【0005】
文献米国特許出願公開第2016/0064550A1号は、パワーデバイスに言及している。
【0006】
文献米国特許出願公開第2021/0111279A1号および米国特許出願公開第2005/0133833A1号は、電子デバイスに言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の実施形態は、改善された電気的挙動を示すパワー半導体デバイスおよび対応する製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、とりわけ、独立請求項に定義された製造方法およびパワー半導体デバイスによって実現される。例示的なさらなる発展形態は、従属請求項の主題を構成する。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、パワー半導体デバイスを製造するための方法は、例えば記載された順序で、
-半導体基板を設けることと、
-半導体基板上に少なくとも1つの半導体層をエピタキシャル成長させることと、
-ゲート絶縁体およびゲート電極を設けることであって、ゲート絶縁体(4)が、少なくとも1つの半導体層とゲート電極との間に直接位置する、設けることと
を含み、
-半導体基板および/または少なくとも1つの半導体層は、第1の導電型のソース領域および第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域を有する半導体本体を構成し、ウェル領域はソース領域に直接あるチャネル領域を含み、
-チャネル領域は、ゲート絶縁体に沿って不均一なチャネルドーピングプロファイルを有し、その結果、チャネル領域内のドーピング濃度NAは、ソース領域から離れた第1のセクションにおいて最大であり、不均一なチャネルドーピングプロファイルは、少なくとも1つの半導体層のエピタキシャル成長によって完全または部分的に形成される。
【0010】
パワー半導体デバイスがさらに提供される。方法によって、以下に述べられる実施形態の少なくとも1つに関連して示されるように、パワー半導体モジュールが製造される。したがって、パワー半導体デバイスの特徴も方法について開示され、逆もまた同様である。
【0011】
少なくとも1つの実施形態では、パワー半導体デバイスは、
-第1の導電型のソース領域および第1の導電型とは異なる第2の導電型のウェル領域を有する半導体本体であって、ウェル領域がソース領域から直接始まるチャネル領域を含む、半導体本体と、
-半導体本体に配置され、少なくとも1つのチャネル領域に割り当てられた少なくとも1つのゲート電極と、
-半導体本体と少なくとも1つの割り当てられたゲート電極との間に直接ある少なくとも1つのゲート絶縁体と
を備え、
チャネル領域は、ゲート絶縁体に沿って意図的に不均一なチャネルドーピングプロファイルを有し、その結果、チャネル領域内のドーピング濃度は、ソース領域から離れた第1のセクションにおいて最大である。
【0012】
ゲート電極は、ゲート絶縁体によって半導体本体から絶縁されている。
例えば、少なくとも1つのソース領域は、割り当てられたゲート絶縁体と直接接触し、かつ/または割り当てられたチャネル領域に直接存在する。第1の導電型は、例えばn導電型であり、したがって、少なくとも1つのソース領域はnドープされる。
【0013】
少なくとも1つのウェル領域、その結果少なくとも1つのチャネル領域は、第1の導電型とは異なる第2の導電型である。第2の導電型は、例えばp導電型であり、したがって、少なくとも1つのチャネル領域はpドープされる。少なくとも1つのウェル領域および/または少なくとも1つのチャネル領域の最大ドーピング濃度は、少なくとも1つのソース領域の最大ドーピング濃度よりも低いことが可能である。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体は、第1の導電型であり得るドリフト領域もさらに備える。例えば、ドリフト領域は、ゲート絶縁体と直接接触し、かつ/またはチャネル領域に直接存在する。ドリフト領域は、例えば、半導体本体の上面に垂直な方向で、半導体本体のチャネル領域とドレイン領域またはコレクタ領域との間に位置する場合がある。例えば、オプションのトレンチは、ドリフト領域内で終端することができる。
【0015】
オプションとして、半導体本体は強化層を備えることができる。例えば、強化層は、ウェル領域とドリフト領域との間に直接位置し、ドリフト領域よりも高い最大ドーピング濃度を有する場合がある。強化層も、第1の導電型であり得る。強化層は、正孔阻止層として機能することができ、すなわち、Eoffを過度に増加させることなく、ソース側近くのプラズマ濃度を高め、改善されたVce-satをもたらす。さらに、強化層はまた、チャネル領域の長さを制御するのに役立ち、製造プロセスに起因するばらつきを最小化する。例えば、強化層の厚さは、少なくとも1μmおよび/または多くとも5μmである。
【0016】
少なくとも1つの実施形態によれば、チャネル領域内のドーピング濃度NAは、少なくとも0.5μmまたは少なくとも1.5μmの半導体本体の上面からの深さにおいて最大である。前記最大ドーピング濃度NAはまた、ゲート絶縁体に沿って見ると、ソース領域から少なくとも0.5μmまたは少なくとも1.5μmの距離にあり得る。前記最大値は、ウェル領域内に位置する場合がある。したがって、前記最大値は、イオン注入ではなくエピタキシャル成長によって実現される。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタ、MISFET、金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタ、MOSFET、または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、IGBTもしくは逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、RC-IGBTである。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、ウェル領域は、半導体本体の上面からドリフト領域まで延在する。チャネル領域はウェル領域の一部であり、同じドーピング濃度を有することができる。動作中、電子は、ゲート絶縁体に沿ってソース領域からドリフト領域までチャネル領域内を流れる。チャネル領域は、ゲート絶縁体とウェル領域との間の界面に垂直な方向に、例えばナノメートルの範囲で、例示的に1nm~50nmの厚さを有する。
【0019】
例えば、半導体本体は、シリコン、略してSi製である。しかしながら、半導体本体は、代替として、SiC、Ga2O3、またはGaNのようなワイドバンドギャップ半導体材料製であり得る。
【0020】
ゲート絶縁体は、酸化物であり得る任意の絶縁材料から作られる。例えば、ゲート絶縁体は、以下の材料:SiO2、Si3N4、Al2O3、Y2O3、ZrO2、HfO2、La2O3、Ta2O5、TiO2のうちの少なくとも1つから作られる。したがって、ゲート絶縁体はゲート酸化物と呼ばれる場合もある。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスはパワーデバイスである。例えば、パワー半導体デバイスは、少なくとも0.2kVまたは少なくとも0.6kVまたは少なくとも1.2kVの最大電圧向けに構成される。
【0022】
パワー半導体デバイスは、例えば、ハイブリッド自動車またはプラグイン電気自動車において、バッテリまたは燃料電池からの直流電流を電動機用の交流電流に変換する車両内のパワーモジュール向けである。その上、パワー半導体デバイスは、例えば自動車のような車両内のヒューズであり得る。
【0023】
簡略化のために、以下では、ただ1つのチャネル領域および割り当てられた構成要素が言及される。複数のチャネル領域および割り当てられた構成要素が存在する場合、以下に記載される特徴は、ただ1つ、複数、またはすべてのチャネル領域および割り当てられた構成要素に当てはまる場合がある。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、チャネル領域において、ドーピング濃度は、ゲート絶縁体に沿って、例えばドリフト領域に向かって、単調または厳密に単調に増加する。単調には、ドーピング濃度が一定であるか、または増加することを意味し、厳密に単調には、ドーピング濃度がドリフト領域に向かって連続的に増加することを意味する。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体に沿って見ると、不均一なチャネルドーピングプロファイルは、ソース領域から離れてドリフト領域に隣接する第1のセクションを有する。ドーピング濃度は、第1のセクションにおいて最も高い。
【0026】
そうでない場合、ドーピング濃度は、第1のセクションと第2のセクションとの間のチャネル領域の中間セクションにおいて最も高く、第2のセクションは、割り当てられたソース領域に近く、ドリフト領域から離れている。
【0027】
そのような中間セクションが存在しない場合、チャネル領域は、最も高いドーピング濃度を有する第1のセクション、およびソース領域に隣接する第2のセクションから構成される場合がある。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1のセクションおよび/または中間セクションの長さは、ゲート絶縁体に沿ったチャネル領域の全長の少なくとも5%であるか、または少なくとも10%であるか、または少なくとも15%である。代替または追加として、前記長さは、前記全長の多くとも40%であるか、または多くとも30%であるか、または多くとも25%である。存在する場合、同じことが第2のセクションに当てはまる場合がある。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、ドーピング濃度は、第2のセクションおよび/または中間セクション内のゲート絶縁体に沿って一定である。一定は、例えば、製造公差に起因する変動が無視され得るようにドーピング濃度の意図的な変動がないことを意味する。例えば、一定は、チャネル領域内に存在する最大ドーピング濃度の5%を超えるか、または10%を超えるか、または15%を超える第2のセクションおよび/または中間セクション内のドーピング濃度の変化がないことを意味する場合がある。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、ドーピング濃度は、不均一なチャネルドーピングプロファイルの最大ドーピング濃度の少なくとも50%または少なくとも65%または少なくとも80%だけチャネル領域に沿って変化する。例えば、第2のセクションは、第1のセクションの、または最大ドーピング濃度が中間セクションにある場合は中間セクションの、最大ドーピング濃度の多くとも50%または多くとも35%または多くとも20%の最大ドーピング濃度を有する。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、チャネルドーピングプロファイルは、チャネル領域内のゲート絶縁体に沿ってチャネルドーピングプロファイルに1つまたは複数の階段が存在するように階段状に構成される。そうでない場合、ゲート絶縁体に沿ったチャネルドーピングプロファイルは、連続的に階段なしで変化する場合がある。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極は、半導体本体内に形成された少なくとも1つのトレンチ内に部分的または完全に配置される。少なくとも1つのトレンチ、したがって割り当てられたゲート電極は、例えば、半導体本体の上面から離れる方向に、ウェル領域を通ってドリフト領域内に延在する。その結果、ゲート絶縁体も、割り当てられたトレンチ内に部分的または完全に位置する。したがって、パワー半導体デバイスは、トレンチベースのデバイスであり得る。
【0033】
そうでない場合、ゲート電極およびゲート絶縁体は、半導体本体の上面に塗布される。したがって、上面は平面であり得る。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、ウェル領域が少なくとも2つの副層を含むように、ウェル領域は多層形式である。例えば、副層は、エピタキシャル成長してもよく、イオン注入および/または熱処理によって生成されてもよい。副層は同じ材料からなるが、それらのドーピング濃度が異なることが可能である。したがって、副層の間にはドーピング濃度に明確な飛躍が存在する場合があり、それぞれの副層内では、ドーピング濃度は、例えば、それぞれの層の最大ドーピング濃度の多くとも5%の許容差で一定であり得る。例えば、上面に平行な少なくともいくつかの平面では、この場合、ドーピング濃度はウェル領域全体にわたって一定であることが可能である。言い換えれば、ウェル領域の深さに沿ってのみ意図的なドーピング勾配が存在する場合があり、上面と平行な横方向には意図的なドーピング勾配が存在しない場合がある。
【0035】
そうでない場合、ウェル領域は単層形式であり、ドーピングプロファイルが確立される1つの層のみを含む。そのようなドーピングプロファイルは、階段がない連続的な方形状であり得、例えば、イオン注入および/または熱処理によって生成される場合がある。
【0036】
複数の副層が存在する場合、副層は、異なるドーパントを塗布することによって作製される場合があり、かつ/またはエピタキシャル成長中にそれぞれのドーピング濃度が加えられる異なるエピタキシャル成長ステップで成長する場合がある。ドーパントの塗布は、例えば、異なる注入エネルギーまたは異なるドーパントを使用することにより、単一のステップで、または2つ以上の塗布ステップによって行われる場合がある。平面デバイスの場合、ドーパントを塗布して不均一なチャネルドーピングプロファイルを実現するために、マスクが使用される場合がある。ドーパントを塗布した後またはエピタキシャル成長の後に熱処理ステップが続く場合がある。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、チャネル領域の外側でウェル領域の深さに沿って、すなわち上面に垂直に、ウェル領域は少なくとも所々に一定のドーピング濃度を有する。したがって、少なくともいくつかの垂直交点に沿って、ドーピング濃度はウェル領域内で一定であり得る。したがって、ウェル領域内で、不均一なチャネルドーピングプロファイルは、ゲート絶縁体に隣接する領域に制限される場合がある。例えば、不均一なチャネルドーピングプロファイルは、例えば、多くとも0.5μmの許容差でチャネル領域に制限される。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体は、チャネル領域に沿って不均一な厚さを有する。例えば、チャネル領域に沿って、ゲート絶縁体は第1のセクションにおいて最も厚い。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート電極は、ゲート電極の閾値電圧が第1のセクションにおいて最も高くなるように、チャネル領域に沿って不均一なゲート電極仕事関数プロファイルを有する。したがって、ソース領域から離れた第1のセクション内のゲート電極の仕事関数Φmは、p型ドープウェル領域、およびそれに応じてp型ドープチャネル領域を有するデバイスの場合最大であり、n型ドープウェル領域、およびそれに応じてn型ドープチャネル領域を有するデバイスの場合最小である。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体は、チャネル領域に沿って不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルを有する。言い換えれば、ゲート絶縁体の厚さは、チャネル領域に沿って変化する。前記厚さのばらつきは、連続的または非連続的、すなわち階段状であり得る。例えば、チャネル領域に沿って、ゲート絶縁体は第1のセクションで最も厚く、その結果、第2のセクションで最も薄くなり得る。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、ゲート絶縁体は、ゲート絶縁体の比誘電率がソース領域から離れたチャネル領域の第1の部分において最も低くなるように、チャネル領域に沿って不均一なゲート誘電率プロファイルを有する。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、不均一な厚さプロファイル、ならびに不均一なチャネルドーピングプロファイルおよび/または不均一なゲート電極仕事関数プロファイルおよび/または不均一なゲート誘電率プロファイルが存在する。すなわち、不均一なチャネルドーピングプロファイルは、不均一なゲート絶縁体厚さ、不均一なゲート電極仕事関数プロファイル、もしくは不均一なゲート誘電率プロファイルと組み合わせることができるか、または不均一なチャネルドーピングプロファイル、不均一なゲート電極仕事関数プロファイル、および不均一なゲート誘電率プロファイルのうちの2つと組み合わせることができるか、または3つの他の不均一なプロファイルすべてと組み合わせることができる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、例えば、コレクタ-エミッタ飽和電圧Vce-sat、したがってオン状態損失が影響を受けないままであり得る間に、飽和電流および短絡電流の両方が減少するように構成される。これは、不均一なチャネルドーピングプロファイルのために真であり、ゲート絶縁体に沿ったチャネル領域の不均一なチャネルドーピングプロファイルと同じ積分ドーピング濃度を有する均一なドーピングプロファイルを有する同様にセットアップされた基準半導体デバイスと比較される場合がある。
【0044】
パワー半導体デバイスは、図面を参照して例示的な実施形態によって、以下でより詳細に説明される。個々の図の中の同じ要素は、同じ参照番号で示されている。しかしながら、要素間の関係は縮尺通りには示されず、むしろ個々の要素は、理解を助けるために誇張して大きく示されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図2】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図3】
図2のパワー半導体デバイスの上面図である。
【
図4】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図5】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図6】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図7】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データの概略図である。
【
図8】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスのドープングプロファイルの概略図である。
【
図9】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスおよび基準半導体デバイスの電気データのシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図11】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図12】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図13】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図14】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図15】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【
図16】本明細書に記載されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、ウェル領域22に含まれるチャネル領域220内のチャネルドーピングプロファイル6、69を除き、本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1の例示的な実施形態に対応する基準半導体デバイス9を示す。パワー半導体デバイス1と同様に、基準半導体デバイス9は、例えばSi製である半導体本体2を備える。
【0047】
半導体本体2はまた、半導体本体2の上面20にソース領域21を備える。トレンチは、ウェル領域22およびソース領域21の両方を貫通する。ソース領域21は、n導電性のような第1の導電型であり、ウェル領域22、その結果、ウェル領域22によって含まれるチャネル領域220は、p導電性のような第2の異なる導電型である。トレンチ内には、電気絶縁ゲート絶縁体4によって半導体本体2から分離されたゲート電極31が存在する。トレンチ、したがってゲート電極31は、半導体本体2のドリフト領域23内で終端する。ドリフト領域23も第1の導電型である。
【0048】
基準半導体デバイス9では、チャネル領域220は、均一な基準ドーピングプロファイル69でドープされる。すなわち、ソース領域21からドリフト領域23に向かう方向xに沿って、一定のドーピング濃度NAが存在する。例えば、ゲート絶縁体4に隣接して、ソース領域21とチャネル領域220が直接接する場所、x=0である。例えば、ゲート絶縁体4に隣接して、チャネル領域220とドリフト領域23が直接接する場所、x=Lである。すなわち、Lはチャネル領域220のチャネル長に相当する。例えば、xは、半導体層本体2の上面20に対して垂直に延びる。したがって、長さLは、ゲート絶縁体4において直接ソース領域21とドリフト領域23との間の距離に相当する場合がある。したがって、長さLは、第1の導電型の層、すなわちソース領域21とドリフト領域23との間の第2の導電型の層の長さとして定義される場合があり、ドリフト領域23は、図示されていない低いドーピング濃度の層を含む場合がある。
【0049】
チャネル領域220の形状は、非常に概略的に描かれているに過ぎず、図面の簡略化のため、ゲート電極31の片側のみに沿って描かれている。
【0050】
図2および
図3に示されたパワー半導体デバイス1の例示的な実施形態によれば、ウェル領域は、不均一なチャネルドーピングプロファイル6を含み、それはウェル領域22全体に存在する場合があるか、またはチャネル領域220もしくはチャネル領域220およびウェル領域22の隣接領域に限定される場合がある。したがって、ドーピング濃度N
Aは、ドーピングプロファイル6が階段53を有するように階段状に変化する。階段53は、テータ関数または単位階段関数に厳密に従う必要はないが、遷移セクション62が存在する可能性がある。チャネル長Lと比較して、遷移セクション62の長さは小さく、例えば、チャネル長Lの多くとも2%または多くとも5%になる。
【0051】
その結果、ドーピング濃度N
Aは、ドーピングプロファイル6の第1のセクション61内のドリフト領域23に隣接して最も高い。第1のセクション61の長さは、例えば、チャネル長Lの1/4または1/3である。例えば、第1のセクション61の長さは、チャネル長Lの20%~40%である。階段53におけるドーピング濃度N
Aの変化量は、
図2に概略的にのみ示されている。
【0052】
例えば、第1のセクション61内の最大ドーピング濃度NAは、チャネル領域220の残り、すなわち、第1のセクション61および遷移セクション62の外の第2のセクション64内の最大ドーピング濃度NAを、少なくとも2倍もしくは少なくとも5倍および/または多くとも10倍もしくは多くとも8倍超える。第2のセクション64では、ドーピング濃度NAは実質的に一定であり得る。ソース領域21とウェル領域22の両方は、上面20に位置する少なくとも1つのソース電極32によって電気的に接続される場合がある。
【0053】
オプションとして、チャネル領域220に電気的に接触するために、半導体本体2の上面20に少なくとも1つのプラグ25が存在する可能性がある。プラグ25は、プラグ25がウェル領域22よりも深くまたは浅く半導体本体2内に延在することができるように、ウェル領域22とは異なる厚さを有する場合がある。さらに、ソース領域21とプラグ25の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
さらに、ドリフト領域23とウェル領域22との間には、強化層27が存在する。強化層27も、第1の導電型である。
【0055】
ソース領域21と少なくとも1つのプラグ25の両方は、上面20に位置する少なくとも1つのソース電極32によって電気的に接続される場合がある。例示的に、プラグ25は、ウェル領域22またはチャネル領域220よりも高い最大ドーピング濃度を有する。プラグの深さは、ウェル領域/チャネル領域の深さよりも低いか、深いか、または同じであり得る。
【0056】
図2および
図3では、ソース領域21およびオプションの少なくとも1つのプラグ25は、ゲート電極31の片側のみに沿って位置する。しかしながら、ソース領域21およびオプションの少なくとも1つのプラグ25は、例えば
図10と比較して、ゲート電極31の両側に沿って、またはすべてゲート電極31の周りに配置することもできる。
【0057】
例えば、パワー半導体デバイス1は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、略してIGBTである。したがって、ウェル領域22から離れたドリフト領域23の側には、第2の導電型のコレクタ領域26も存在する。コレクタ領域26には、コレクタ電極34が存在する。さらに、さらなるオプションとして、ドリフト領域23とコレクタ領域26との間に第1の導電型のバッファ領域が存在する可能性がある。図示されていないそのようなバッファ領域のドーピング濃度は、ドリフト領域26のドーピング濃度よりも高い可能性がある。
【0058】
上面20の上面図で見ると、ゲート電極31およびゲート絶縁体4を収容するトレンチは引き伸ばされた形状であり得る。ソース領域21、少なくとも1つのプラグ25、ならびにチャネル領域220は、トレンチの両側に対称的に配置される場合がある、
図3参照。
【0059】
例えば、ソース領域21、コレクタ領域26またはドレイン領域24の代わりに、および少なくとも1つのプラグ25の最大ドーピング濃度は、少なくとも1×1018cm-3もしくは少なくとも5×1018cm-3もしくは少なくとも1×1019cm-3および/または多くとも5×1020cm-3もしくは多くとも2×1020cm-3もしくは多くとも1×1020cm-3である。さらに、ウェル領域22、したがってチャネル領域220の最大ドーピング濃度は、少なくとも5×1016cm-3もしくは少なくとも1×1017cm-3および/または多くとも5×1019cm-3もしくは多くとも5×1018cm-3であり得る。例えば、第1のセクション61内の最大ドーピング濃度は、少なくとも1.5×1017cm-3および/または多くとも3×1018cm-3である。例えば、不均一なチャネルドーピングプロファイル6に存在する最大ドーピング濃度は、少なくとも5×1016cm-3および多くとも3×1018cm-3であり、かつ/または不均一なチャネルドーピングプロファイル6に存在する最小ドーピング濃度は、多くとも2×1017cm-3もしくは多くとも1×1017cm-3である。例えば、強化層27の最大ドーピング濃度は、少なくとも1015cm-3であり、かつ/または多くとも1018cm-3である。
【0060】
パワー半導体デバイス1の電圧クラスに応じて、ドリフト領域23の最大ドーピング濃度は、少なくとも1×1011cm-3もしくは少なくとも1×1012cm-3もしくは少なくとも1×1013cm-3および/または多くとも1×1017cm-3もしくは多くとも5×1016cm-3もしくは多くとも1×1016cm-3であり得る。
【0061】
例えば、半導体本体2は、少なくとも部分的にエピタキシャル成長によって製造される。すなわち、半導体本体2のそれぞれの層のドーピング濃度は、成長中に生成される場合があり、成長後に、例えばイオン注入によって生成されない場合がある。これは、例えば、少なくとも強化層27およびウェル領域22に当てはまり、それらは、このようにエピタキシャル成長によってドープすることができる。オプションとして、ドリフト領域23は、部分的または完全に成長基板の一部であり得る。すべての他の例に同じことが当てはまる。
【0062】
そうでない場合、
図1に関して同じことが
図2および
図3にも当てはまる場合がある。
不均一なチャネルドーピングプロファイル6を有するチャネル領域220の背後にある概念が以下に説明される。
【0063】
パワー半導体デバイス1の場合、例示的には低周波数用途の場合、総電気損失を最小化するために、オン状態損失を可能な限り低くすることが望ましい場合がある。さらに、デバイスの信頼性の観点から、低い短絡電流を有することが有利であり得る。したがって、オン状態損失を最小化し、短絡能力を向上させたパワー半導体デバイス1が望まれる場合がある。
【0064】
しかしながら、例えば、チャネル長Lを減少させるかまたはチャネル幅Wを増加させることによってオン状態電圧降下V
ce-satを低下させるいくつかの手段は、出力特性I
c対V
ceを使用して概略的に示されたように、望ましくないより高い飽和電流I
satをもたらすことが多い、
図4参照。高いI
satは高い短絡電流I
scに直接関係し、パワー半導体デバイス1の短絡能力に悪影響を及ぼす。一方、例えばチャネルドーピング濃度を増加させることによってI
satを低下させるために、パワー半導体デバイス1の閾値電圧V
thを上昇させると、
図5に示されたようにV
ce-satが高くなる。したがって、
図4および
図5は、チャネル領域全体に沿って均一な閾値プロファイルを有するIGBTの典型的な出力特性の概略図であり、
図4では、同じV
thおよび異なるチャネル抵抗の場合であり、
図5では、異なる閾値電圧V
thの場合である。
【0065】
a)チャネル長Lを増加させること、
b)アノードインプラントドーズを低減することによってアノード注入効率を低減すること、
c)トレンチに沿ってソースカバレッジを減少させることによってチャネル幅を低減すること、および
d)セルピッチを増加させることによってチャネル幅を低減すること
などの、短絡電流を低減するための他の技法はまた、望ましくないことに、より高いオン状態損失をもたらす。その上、d)などの技法も、パワー半導体デバイス1の絶縁破壊能力に悪影響を及ぼす可能性がある。短絡電流を低減するためにゲートバイアスを低減することはまた、不安定な動的挙動につながり、さらに、主に用途の要件によって規定されるので、望ましくない場合がある。
【0066】
したがって、従来のMISFETデバイスまたはIGBTデバイスでは、オン状態損失を最小化することと短絡電流を低減することとの間にはトレードオフが存在する。改善された短絡能力を必要とする用途の場合、Vce-satに影響を与えることなく短絡電流Iscを減少させることができることが望ましい場合がある。
【0067】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1では、オン状態損失と短絡電流との間のトレードオフは、前者に悪影響を及ぼすことなく後者を改善することによって改善される。他の手法とは異なり、記載された設計は、所与のVce-satに対する飽和電流を低下させるために、ゲート絶縁体4に隣接するチャネル領域220に沿った不均一な閾値電圧プロファイルを特徴とする。本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1において提案された不均一なVthは、チャネル領域220内の不均一なチャネルドーピングプロファイル6を実装することによって実現される。記載されたパワー半導体デバイス1は、破壊能力に悪影響を及ぼさず、さらにもっと、パワー半導体デバイス1のターンオフ損失に悪影響を及ぼさない。加えて、記載された概念は、パワーMOSFETまたはIGBTまたは逆導通IGBTなどの一般に任意のMOSデバイスに適用可能であり、平面アーキテクチャとトレンチアーキテクチャの両方との互換性さえある。
【0068】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1では、オン状態損失に有害な影響を及ぼすことなく、短絡能力が向上した改良されたMISFET、MOSFET、またはIGBTもしくはRC-IGBTデバイスが導入される。改善された設計はまた、IGBTの設計制約を緩和し、それぞれのデバイスの短絡能力によって通常制限されるオン状態損失を最小化するために、上述された他の方法を独立して探索する可能性を可能にする。
【0069】
以下では、本明細書に記載された半導体デバイス1の着想に対するいくつかの理論的背景が提示される。
【0070】
基準のロングチャネルMOSデバイスの場合、高Vceでのチャネルピンチオフが出力特性における電流飽和の原因となり、それが最終的に短絡電流を決定することが知られている。チャネルピンチオフ電圧Vpinch-offは、閾値電圧Vthによって決定される。例示的には、印加されたバイアスVceがピンチオフ電圧Vpinch-off≒(Vg-Vth)を超えると、チャネルは、x=Lにおいてそのドレイン端付近でピンチオフを開始する、ここで、Vgは印加されたゲート電圧であり、Lはチャネル長である。そのように印加されたVceにおいて、チャネルに垂直な電圧降下はVthより小さく、したがって、チャネルはドレイン端付近でもはや持続することができない。
【0071】
しかしながら、デバイスのより詳細な理解のために、チャネルピンチオフは、どちらかというと局所的な現象であり、具体的にチャネルのドレイン端付近で起こると考えられるべきである。したがって、より正確には、ピンチオフ点、したがって飽和電流を決定するのは、局所閾値電圧Vth(x)である。これは、チャネル端部、すなわちドリフト領域23付近の第1のセクション61において、Vth(L)を局所的に増加させることによってVpinch-offを低減することが可能であることを意味する。
【0072】
さらに、全体的なチャネル抵抗を保持し、それによってVce-satに影響を与えないようにするために、チャネルの残りの部分でVth(x)を減少させることができる。
【0073】
これは、基準半導体デバイス9を指す曲線がチャネル全体に沿って均一な閾値電圧V
th-1プロファイルを含む
図6に概略的に示されている。一方、パワー半導体デバイス1の曲線は、チャネルに沿った不均一なV
thプロファイルから構成され、V
thは、ピンチオフ点を下げるためにV
th-2(L)>V
th-1となるようにチャネル端部付近、すなわち第1のセクション61内で局所的に上昇し、チャネルの残りでは、全体のチャネル抵抗を同じに保つためにV
th-2’<V
th-1となる。このようにして、
図7の概略出力に示されたように、オン状態損失に影響を及ぼすことなく、飽和電流、それによって短絡電流を大幅に低減することができる。したがって、局所的なV
th変動は、MISFETまたはMOSFETまたはIGBTデバイスの短絡能力を改善するための鍵を保持する。
【0074】
チャネルのVthは、以下の式に示されたような様々な他のMOSセル設計パラメータの関数である。
【0075】
【0076】
ここで、Vtは閾値電圧であり、Vfbはフラットバンド電圧であり、Vfb=(φm-φs)であり、ここで、φmおよびφsは、それぞれ、ゲート金属仕事関数および半導体仕事関数である。NAはチャネル本体のドーピングであり、εsは半導体の誘電率であり、Coxはゲート絶縁体容量であり、φBは半導体表面電位であり、
【0077】
【0078】
であり、ここで、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、niは半導体の真性キャリア濃度である。
【0079】
したがって、第1のセクション61内の比較的高いVthを有するチャネルにわたって必要とされる不均一なVthプロファイルは、以下のMOS設計パラメータのうちの1つまたは任意の組合せにおいて不均一性を導入することによって実現することができる。
【0080】
1.本明細書で詳述されたチャネルドーピングプロファイル、NA(x)、
2.ゲート酸化膜厚、Tox(x)、
3.ゲート誘電率、εox(y)、および/または
4.Vfb=(φm-φs)なので、ゲート金属仕事関数φm(x)。
【0081】
以下では、チャネルドーピングプロファイルの変化に焦点を合わせているが、前記ドーピング濃度の変化は、当然ながら、変化するゲート絶縁体厚さ、変化するゲート誘電率、および/または変化するゲート金属仕事関数と組み合わせることができる。
【0082】
上記の
図1および
図2は、以下に提示されるシミュレーションにおいて実装される、均一なドーピングプロファイル69を有する基準半導体デバイス9および不均一なチャネルドーピングプロファイル6を有するパワー半導体デバイス1の概略断面図を示す。3つの異なるドーピングプロファイルA、B、Cが調査された、
図8参照。
【0083】
すなわち、不均一なチャネルドーピングプロファイルN
A(x)は、オン状態性能に影響を与えることなく飽和電流を低減する目的で局所的に変化するV
thプロファイルを取得するために、技術コンピュータ支援設計、TCAD、シミュレーションにおいて実装されている。これらの設計A、B、Cでは、チャネル領域220に沿ったホウ素濃度N
A(x)は、
図8に示されたように、そのピーク位置がチャネル領域220の上部x=0から下部x=Lまでシフトするように変化した。比較のために、基準半導体デバイス9の均一なドーピングプロファイル69も示されている。しかしながら、これらの4つの設計A、B、C、69のすべてについて、チャネルに沿った総積分ドーピング濃度は、同一のV
ce-satを維持するために同じに保たれた。
【0084】
出力特性、
図9参照、は、不均一なチャネルドーピングプロファイル6に起因する局所的なV
th変動に起因する予想される効果を示している。チャネル領域220の第1のセクション61にホウ素ピークを有する設計、すなわち設計Aは、ソース領域21に隣接する第2のセクション64にピークドーピング濃度を有する設計Cと比較して、低減されたI
satを示す。設計Aはまた、同じ理由で、すなわち、チャネル領域端部でのより高い局所的なV
thに起因して、基準均一ドーピングプロファイル69と比較してより良好である。さらに、設計Cは、短絡電流が低減される必要がある用途には望ましくない場合があることに留意されたい。短絡問題は、すなわち、ソースとコレクタとの間の電流を低減するために、本明細書に記載されたパワー半導体デバイス1では、チャネル端付近でより高いドーピングを有する、すなわち、設計BおよびAのようにドレイン領域に隣接する中間セクション63または第1のセクション61でより高いドーピング濃度を有する不均一なチャネルドーピングプロファイル6を導入することによって解決されている。
【0085】
Vce-satを固定するチャネルの他の部分におけるドーピングを低下させることによって、全体的なチャネル抵抗が同じに保たれる。設計Bでは、第2のセクション64と第1のセクション61との間の中間セクション63におけるピークドーピング濃度、およびIsatは、基準半導体デバイス9と比較してすでに低減されている。
【0086】
デバイスの破壊特性は、不均一なチャネルドーピングプロファイル6を有することによって影響を受けないままである。スイッチング損失E
offは、不均一なチャネルドーピングプロファイル6を有することによってほとんど影響を受けないままであり、設計A、B、およびCについてのシミュレーション結果を要約する以下のリストを、
図8に示された異なるドーピングプロファイルと比較する。
【0087】
ソース領域21に隣接する第1のセクション64にドーピングピークを有する半導体デバイスの設計C:
-150AでのVce-sat:1.667V
-10mAでのVth:7.12V
-Eoff:13.76mJ
-Isc:=100%
中間セクション63にドーピングピークを有する例示的なパワー半導体デバイス1の設計B:
-150AでのVce-sat:1.676V
-10mAでのVth:7.12V
-Eoff:13.58mJ
-Isc:=設計CのIscの約73%
第1のセクション61にドーピングピークを有する例示的なパワー半導体デバイス1の設計A:
-150AでのVce-sat:1.688V
-10mAでのVth:7.08V
-Eoff:13.72mJ
-Isc:=設計CのIscの約62%
例えば、チャネルの長さLは、いずれの場合も1μm~10μmまたは1μm~5μmである。例示的なデバイス9、A、B、Cでは、チャネルの長さLは、いずれの場合も2.5μmであり、設計Aの第1のセクション61は0.5μmの長さを有する。
【0088】
図10のパワー半導体デバイス1の例示的な実施形態では、ドーピングプロファイル6は、ここでも1つの階段53を有する。任意選択で、チャネル領域220は、例えば、成長中にドープされ得る第1の副層51および第2の副層52を用いて、例えば成長して生成されるので、この例示的な実施形態では実質的に遷移領域は存在しない。
【0089】
すべての他の例示的な実施形態では、ゲート電極31を収容するトレンチは、ドリフト領域23内に丸い端部を有する必要はないが、断面で見ると、長方形の形状、または他の形状でもあり得、
図10も比較されたい。
【0090】
パワー半導体デバイス1のすべての他の例示的な実施形態において可能であるように、半導体本体2に面するゲート絶縁体4の外側は、少なくともチャネル領域220に沿って平面状であり得る。
【0091】
その上、
図10のパワー半導体デバイス1は、IGBTではなく、MISFETまたはMOSFETであることが示されている。その結果、パワー半導体デバイス1は、コレクタ領域26の代わりにドレイン領域24を備える。したがって、ウェル領域22から離れたドリフト領域23の側にも、第1の導電型であるが、例えば、ドリフト領域23よりも高い最大ドーピング濃度を有するドレイン領域24が存在する。ドレイン領域24には、ドレイン電極33が存在する。
【0092】
もちろん、IGBTのパワー半導体デバイス1のすべてのゲート絶縁体の設計をMOSFETおよびMISFETのパワー半導体デバイス1に適用することができ、逆もまた同様である。
【0093】
そうでない場合、
図2~
図9に関して同じことが
図10にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0094】
図11によれば、ドーピングプロファイル6は、複数の階段53、例えば、2つの階段53を含む。例えば、ドリフト領域23に近い第2の階段は、ソース領域21に近い第1の階段よりも大きい。第1の階段は、第1のセクション61の開始を画定することができる。
【0095】
オプションとして、不均一なチャネルドーピングプロファイル6は、ゲート絶縁体4の様々な厚さと組み合わせることができる。例えば、端部の外のチャネル領域に沿った第1のセクションでは、ゲート絶縁体4の厚さは、20nm以上80nm以下であるか、または40nm以上80nm以下である。
【0096】
すべての他の例示的な実施形態と同様に、これらの2つの考え、すなわち非対称の不均一なゲート絶縁体厚さおよび不均一なチャネルドーピングプロファイル6を有することは、互いに組み合わせることができる。この場合、ゲート絶縁体4は、第1のセクション61において最も厚い場合がある。ゲート絶縁体61の厚さは、ドーピング濃度NAと同じように増加してもよく、異なるように増加してもよい。したがって、本明細書に記載された不均一なチャネルドーピングプロファイル6の概略的な進行は、不均一なゲート絶縁体厚さにも適用することができ、不均一なチャネルドーピングプロファイル6および不均一なゲート絶縁体厚さの進行は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0097】
代替または追加として、ドリフト領域23に隣接するセクションでは、したがって第1のセクション61では、前記厚さは、120nm以上250nm以下または120nm以上180nm以下であり得る。例えば、ゲート絶縁体4のこれら2つの厚さは、少なくとも1.5倍および/または多くとも5倍異なる。ゲート絶縁体厚さの飛躍位置Jは、例えば、第1のセクション61内にある。例えば、前記位置Jは、ドーピングプロファイル6の2つの階段53の間にある。
【0098】
そうでない場合、
図2~
図10に関して同じことが
図11にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0099】
図12では、ドーピング濃度N
Aは階段状に形成されず、第1のセクション61の開始時に連続的に変化することが示されている。ドーピング濃度N
Aが変化する遷移セクション62は、例えば、長さLの少なくとも2%および/または多くとも15%もしくは多くとも10%もしくは多くとも5%になる。
図11と同様に、2つ以上のそのような遷移セクション61が存在してもよい。
【0100】
そうでない場合、
図2~
図11に関して同じことが
図12にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0101】
図13によれば、ドーピング濃度N
Aは単調に増加しない。したがって、ソース領域21付近のより高いドーピング濃度N
Aへの小さい第1の階段および元のドーピング濃度N
Aに戻る小さい第2の階段が存在する可能性があり、ドリフト領域23に隣接してより高い、最終的な最大ドーピング濃度N
Aへの大きい第3の階段が存在する。ドーピング濃度N
Aの小さいピークは、中間セクション63に位置する場合がある。
【0102】
そうでない場合、
図2~
図12に関して同じことが
図13にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0103】
図14の例示的な実施形態では、ドーピング濃度N
Aは、第2のセクション64から第1のセクション61まで直線状に連続して増加する。したがって、第1のセクション61と第2のセクション64との間に明確に画定された界面または分割線は必要でない。
【0104】
そうでない場合、
図2~
図13に関して同じことが
図14にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0105】
図15によれば、パワー半導体デバイス1は平面設計であり、例えば、
図2および
図3のパワー半導体デバイス1のようなトレンチ設計ではない。したがって、上面20は平面であり、ゲート絶縁体4およびゲート電極31は上面20に塗布される。その結果、ソース領域21とドリフト領域23との間の長さLは、上面20と平行であり、上面20に垂直な他の例示的な実施形態とは異なる。それに沿ってドーピング濃度N
Aが変化する方向xにも同じことが当てはまる。
【0106】
図15では、ウェル領域22は、横方向に、すなわち上面20と平行にソース領域21から突出し、ゲート絶縁体4の下に延在する。また、ソース領域21は、ゲート絶縁体4の下に延在する場合があるが、それほどではない。
【0107】
ドーピングプロファイル6の上述された異なる設計はすべて、MISFETまたはMOSFETの場合ならびにIGBTの場合の両方とも、
図15の平面概念に同様に適用することができる。したがって、
図2~
図13に関して同じことが
図14にも当てはまる場合がある。
【0108】
その上、
図16では、ゲート絶縁体4が構成される、任意選択で存在する少なくとも2つの異なる材料81、82に起因するゲート絶縁体4の不均一なチャネルドーピングプロファイルだけでなく、不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルおよび不均一なゲート誘電率プロファイルも存在することが示されている。すなわち、ゲート絶縁体4の厚さは、チャネル領域220に沿って変化する。
【0109】
例えば、少なくとも2つの異なる材料81、82に起因するチャネル領域220に沿った比誘電率の差は、少なくとも2.0であるか、または少なくとも3.0であるか、または少なくとも3.5である。代替または追加として、前記差は多くとも50であるか、または多くとも25である。それぞれの比誘電率を比較するとき、室温、すなわち300K、および多くとも1kHzの変動電界の周波数でのそれぞれの材料のテキストブック値が使用される場合がある。
【0110】
例えば、第1のセクション61内の第1の材料81の厚さは、第2のセクション64内の第2の材料82の厚さを超えており、逆もまた同様である。例えば、第1の材料81と第2の材料82との間の厚さの差は、チャネル領域220に沿ったゲート絶縁体4の最大厚さの少なくとも20%または少なくとも40%である。不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルおよび均一なゲート誘電率プロファイルのみが存在する場合、ゲート絶縁体4は単一の材料製であり得る。
【0111】
例えば、第2のセクション64内のゲート絶縁体4の厚さは、50nm以上100nm以下であり、かつ/または、第1のセクション61内のゲート絶縁体4の厚さは、100nm以上240nm以下である。しかしながら、
図16に示された以外に、第1のセクション61内のゲート絶縁体4の厚さは、代替的に第2のセクション64内よりも小さい可能性があり、最大厚さが代わりに第2のセクション64内に存在する可能性がある。
【0112】
したがって、第1のセクション61と第2のセクション64との間の界面で不均一なゲートチャネルドーピングプロファイル6に階段が存在する、
図16の挿入図参照。
【0113】
不均一なゲート誘電率プロファイルおよび/または不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルに加えて、またはその代わりに、不均一なゲート電極仕事関数プロファイル72が存在する可能性がある。したがって、ゲート電極31は、ソース領域21に隣接する第1のゲート材料84と、ドレイン領域23に隣接する第2のゲート材料85とを含むことができる。ゲート材料84、85は、ゲート絶縁体4の材料81、82が変化する場所で変化する場合がある。したがって、ソース領域21から離れた第1のセクション61内のゲート電極31の仕事関数Φmは、pドープウェル領域22を有するデバイス1の場合最大であり、nドープウェル領域22を有するデバイス1の場合最小である。
【0114】
例えば、チャネル領域220に沿ったゲート電極の仕事関数差は、少なくとも0.7eVであるか、または少なくとも1.0eVであるか、または少なくとも1.1eVである。これは、例えば、ゲート電極31がポリシリコンに基づくときに当てはまる。低い仕事関数のためのLi、Zn、Hfのような金属、または高い仕事関数のためのPt、Pd、もしくはAuのような金属も考慮される場合、仕事関数差は、少なくとも1.3eVまたは少なくとも1.4eVであり得る。例えば、仕事関数差は、多くとも2.0eVまたは多くとも1.5eVである。
【0115】
例えば、第2のゲート材料85は、約5.22eVの仕事関数Φmを有するp+ドープポリシリコンである。例えば、第1のゲート材料84は、約4.1eVの仕事関数Φmを有するn+ドープポリシリコンである。シリコンをベースとしているが、これらの第1のゲート材料84および第2の材料85は、異なるゲート電極金属と呼ばれる場合がある。
【0116】
不均一なゲート絶縁体厚さプロファイル、不均一なゲート絶縁体誘電率プロファイル、および不均一なゲート絶縁体厚さプロファイルのうちのそのような少なくとも1つも、すべての他の例示的な実施形態に類似的に存在する可能性がある。
【0117】
そうでない場合、
図2~
図15に関して同じことが
図16にも当てはまる場合があり、逆もまた同様である。
【0118】
図に示された構成要素は、特に指示のない限り、例示的に指定された順序で直接重なって続く。図の中で接触していない構成要素は、例示的に互いに離間している。線が互いに平行に引かれている場合、対応する表面は互いに平行に向けられる場合がある。同様に、特に指示のない限り、描かれた構成要素の互いに対する位置は、図面内で正確に再現される。
【0119】
本明細書に記載されたパワー半導体デバイスは、例示的な実施形態に基づく説明によって限定されない。むしろ、この特徴またはこの組合せ自体が特許請求の範囲または例示的な実施形態において明示的に指定されていない場合でも、パワー半導体デバイスは、任意の新しい特徴、および特許請求の範囲における特徴の任意の組合せを含む特徴の任意の組合せも包含する。
【0120】
本特許出願は、欧州特許出願第21186114.1号の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0121】
参照符号のリスト
1 パワー半導体デバイス
2 半導体本体
20 上面
21 ソース領域
22 ウェル領域
220 チャネル領域
23 ドリフト領域
24 ドレイン領域
25 プラグ
26 コレクタ領域
27 強化層
31 ゲート電極
32 ソース電極
33 ドレイン電極
34 コレクタ電極
4 ゲート絶縁体
51 チャネル領域の第1の副層
52 チャネル領域の第2の副層
53 ドーピング濃度の階段
6 不均一なチャネルドーピングプロファイル
61 第1のセクション
62 遷移セクション
63 中間セクション
64 第2のセクション
69 均一な基準ドーピングプロファイル
72 不均一なゲート電極仕事関数プロファイル
81 第1の材料
82 第2の材料
84 第1のゲート材料
85 第2のゲート材料
9 基準半導体デバイス
A 第1の例示的なパワー半導体デバイス
B 第2の例示的なパワー半導体デバイス
C 第3の例示的なパワー半導体デバイス
J ゲート絶縁体厚さの飛躍位置
Isat 飽和電流
L ゲート絶縁体に沿ったチャネル領域の長さ
NA ドーピング濃度
Vth 閾値電圧
x チャネル領域に沿った長さ
【国際調査報告】