(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/63 20060101AFI20240705BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240705BHJP
A61Q 90/00 20090101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K8/63
A61Q19/00
A61Q90/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502162
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2022010405
(87)【国際公開番号】W WO2023287261
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093764
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0087684
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523169877
【氏名又は名称】スカイ・セラピューティクス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・ジャン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AC111
4C083AC112
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4C083AC441
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4C083AD331
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4C083BB24
4C083CC02
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4C083DD08
4C083DD12
4C083DD17
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE11
4C083EE50
(57)【要約】
本発明は、胆汁酸及び胆汁酸塩の分子会合体を含む化粧料組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆汁酸分子又は胆汁酸塩分子が物理的に結合された分子会合体であって、
前記分子会合体に水を含む組成物として形成される場合、
前記組成物のうち、前記分子会合体は凝集された構造を有する分子会合体を含む、化粧料組成物。
【請求項2】
前記分子会合体の平均粒径は、1.0~10nm以下である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記分子会合体は、pHが8.5超過10未満である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記分子会合体は、無定形(amorphous)である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記胆汁酸は、コール酸、ケノデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸からなる群より選択されるいずれか1つの胆汁酸であり、前記胆汁酸塩は、コール酸、ケノデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸からなる群より選択されるいずれか1つの胆汁酸塩である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記分子会合体は、4℃、25℃及び45℃の条件下で12か月間の濃度の変化率が0超過5%未満である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記化粧料組成物は、皮膚透過局所脂肪除去用である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記組成物は、非外科的(non-surgical)、非侵襲的(no injection)な方法である皮膚外用剤として塗布し使用する、第1項又は第7項に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記組成物は、前記分子会合体を0.05~10重量%で含む、第1項又は第7項に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記組成物は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、ヒアルロン酸、グリセリン、白木茸エキス、納豆菌ガム、1,2-ヘキサンジオール及びポリソルベート80からなる群より選択されるいずれか1つ以上をさらに含む、第1項又は第7項に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記組成物は、腹部頸部脂肪、太もも脂肪、前腕脂肪、内臓脂肪の蓄積、乳房増大術後についた脂肪、胸部脂肪、腕周りに拡散した脂肪、目の下の脂肪、顎の下の脂肪、臀部の脂肪、脹ら脛の脂肪、背中の脂肪、大腿部の脂肪、足首の脂肪、セルライト及びそれらの組み合わせからなる群より選択される部位に局所化することを特徴とする、第1項又は第7項に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
前記組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、軟膏(ointment)、軟膏(unguent)、スプレー、粉末、増粘化した剤形及び湿布剤からなる群より選択されるいずれか1つの剤型として使用される、第1項又は第7項に記載の化粧料組成物。
【請求項13】
前記組成物は、皮膚に塗布した後、3時間以降に血漿より測定した胆汁酸の濃度が0.001~0.2μg/mlである、第1項又は第7項に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を含む化粧料組成物に関するが、詳しくは、胆汁酸又は胆汁酸塩にせん断応力を加えて製造した胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を含む化粧料組成物であって、針及び注射器を利用して直接薬物を注入し伝達する外科的方式ではなく、皮膚に直接塗布して使用することができるほか、従来の製品よりも局所部位における脂肪除去の効果に優れる胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁酸(bile acid)及び胆汁酸塩(bile salt)は、脂肪を乳化し、消化酵素であるリパーゼの作用を促進して脂肪酸を溶解させる。人体内の消化器官にも存在する成分であり、摂取した脂肪を分解し消化吸収するのに役立つ。このようなメカニズムを利用してグローバル企業であるAllergan社は、胆汁酸塩の一種であるデオキシコール酸を利用した脂肪除去注射を開発し、ベルカイラ(Belkyra(登録商標), in Canada)製品に対して各国の食品医薬品局から承認を得た経緯がある。しかし、ベルカイラ注射剤を投与されるとデオキシコール酸が脂肪細胞を破壊し、もはや脂肪を貯め込むことができない状態になるものの、その過程で他の細胞も死ぬ恐れがあるため、必ず解剖学の知識を有する医療専門家に注射を打ってもらわなければならないという煩雑さがあった。また、注射剤形であるために副作用として、痛み、腫れ、あざ、赤み、顔面麻痺などの副作用を伴うが、副作用が深刻な場合には顔面筋肉の衰弱、不自然な表情や顔の動き、顎で噛む行為への支障、顎の神経損傷といった副作用が発生していた。
【0003】
デオキシコール酸を利用した既存の脂肪減少製剤は、合成デオキシコール酸を利用しており製造メーカーの製品生産に対する負担が相当なものだと考えられ、注射剤として開発され患者に薬物を投与するために、投与方法の煩雑さや副作用は相当なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針及び注射器を利用して直接薬物を注入し伝達する外科的方式ではなく、皮膚透過が可能な胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を皮膚に塗布する、皮下注射剤と類似した脂肪除去性能を有する分子会合体であって、注射剤の副作用がなく、患者の利便性が担保される物質を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の目的は、胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を含む化粧料組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、胆汁酸分子又は胆汁酸塩分子が物理的に結合された分子会合体であって、前記分子会合体に水を含む組成物として形成される場合、前記組成物のうち、前記分子会合体は凝集された構造を有する分子会合体を含む、化粧料組成物を提供する。
【0008】
また、本発明の一実施例によると、前記分子会合体のpHが8.5超過10未満である、化粧料組成物を提供することができる。
【0009】
また、本発明の一実施例によると、前記分子会合体の平均粒径が1.0~10nm以下である、化粧料組成物を提供することができる。
【0010】
また、本発明の一実施例によると、前記分子会合体は無定形(amorphous)である、化粧料組成物を提供することができる。
【0011】
また、本発明の一実施例によると、44℃、25℃及び45℃の条件下で12か月間の濃度の変化率が0超過5%未満である、化粧料組成物を提供することができる。
【0012】
また、本発明の一実施例によると、前記胆汁酸は、コール酸、ケノデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸からなる群より選択されるいずれか1つの胆汁酸であり、前記胆汁酸塩は、コール酸、ケノデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸からなる群より選択されるいずれか1つの胆汁酸塩である、化粧料組成物を提供することができる。
【0013】
また、本発明の一実施例によると、皮膚透過局所脂肪除去用である化粧料組成物を提供することができる。
【0014】
また、本発明の一実施例によると、前記組成物は、非外科的(non-surgical)、非侵襲的(no injection)な方法である皮膚外用剤として塗布して使用する、化粧料組成物を提供することができる。
【0015】
また、本発明の一実施例によると、前記組成物は、前記分子会合体を0.05~10重量%含有する、化粧料組成物を提供することができる。
【0016】
また、本発明の一実施例によると、上記組成物は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、ヒアルロン酸、グリセリン、白木茸エキス、納豆菌ガム、1,2-ヘキサンジオール及びポリソルベート80からなる群より選択されるいずれか1つ以上をさらに含む、化粧料組成物を提供することができる。
【0017】
また、本発明の一実施例によると、腹部頸部脂肪、太もも脂肪、前腕脂肪、内臓脂肪の蓄積、乳房増大術後についた脂肪、胸部脂肪、腕周りに拡散した脂肪、目の下の脂肪、顎の下の脂肪、臀部の脂肪、脹ら脛の脂肪、背中の脂肪、大腿部の脂肪、足首の脂肪、セルライト及びそれらの組み合わせからなる群より選択される部位に局所化する、化粧料組成物を提供することができる。
【0018】
また、本発明の一実施例によると、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、軟膏(ointment)、軟膏(unguent)、スプレー、粉末、増粘化した剤形及び湿布剤からなる群より選択されるいずれか1つの剤型として使用される、局所脂肪除去用医薬組成物を提供することができる。
【0019】
また、本発明の一実施例によると、皮膚に塗布した後、3時間以降に血漿より測定した胆汁酸の濃度が0.001~0.2μg/mlである、化粧料組成物を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、針及び注射器を利用して直接薬物を注入し伝達する外科的方式ではなく、皮膚に直接塗布して使用でき、投与方法の煩雑さを軽減することができるという利点がある。また、従来の製品形態と異なり、注射剤型でないにもかかわらず、皮膚透過度、脂肪分解及び蓄積の減少に優れた効果を有するという利点がある。
【0021】
また、皮膚の間隙は80nmであるため、従来の医薬製品では皮膚の奥まで浸透することが難しかったが、本発明の場合、1.0~10nmとサイズが小さいために、皮膚透過度が高くなる効果がある。
【0022】
また、ナノサイズの分散された粒子は凝集又はOstwald ripening現象に容易にさらされるため、保存安定性が低い反面、本発明の分子会合体及び組成物は、室温及び4℃、45℃の加速条件下で含量、粒子数量の変化が少なく、安定性に優れた効果を有する。
【0023】
また、本発明は、従来の技術より溶解度を向上させようとAPIと水以外に追加で使用されていた界面活性剤、マイセル、シクロデキストリン、lipid、アルブミン、水溶性高分子、安定化剤/分散剤、ナノ粒子、多孔質粒子といったcarrierなどの第三の物質を必須的に使用する必要がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例によるデオキシコール酸ナトリウムの分子会合体のTEM写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例によるデオキシコール酸ナトリウムの前駆体についてのTEM写真である。
【
図3】
図3は、デオキシコール酸の分子会合体の脂肪前駆細胞の破壊能に関する図である。
【
図4】
図4は、脂肪前駆細胞における脂肪細胞への分化過程である。
【
図5】
図5は、デオキシコール酸の分子会合体の脂肪細胞の破壊能に関する図である。
【
図6】
図6は、生きているラットの皮下組織にデオキシコール酸前駆体を1回注射し、同量のデオキシコール酸前駆体と本発明のデオキシコール酸の分子会合体を皮膚上に連続塗布した後、皮膚透過量を皮下組織を採取して測定した図である。
【
図7】
図7は、生きているラットの皮下組織にデオキシコール酸前駆体を1回注射し、同量のデオキシコール酸前駆体と本発明のデオキシコール酸分子会合体を皮膚上に連続塗布した後、皮下組織を採取して皮膚組織内分布量を比較した図である。
【
図8】
図8は、生きているラットの皮下組織にデオキシコール酸の前駆体を1回皮下注射した場合と同一の量を皮膚に連続塗布したデオキシコール酸の前駆体と分子会合体の時間経過に伴う血漿内分布量を比較した図である。
【
図9】
図9は、生きているラットの皮膚にデオキシコール酸の前駆体を1回皮下注射した場合と同一の量を皮膚に連続塗布したデオキシコール酸の前駆体と分子会合体が塗布時間に伴い皮下組織に及ぼす組織学的影響評価のためのH&E染色結果である。
【
図10】
図10は、生きているラットの皮膚にデオキシコール酸の前駆体を1回皮下注射した場合と同一の量を皮膚に連続塗布したデオキシコール酸の前駆体と分子会合体が塗布時間に伴い皮下組織に及ぼす組織学的影響評価のためのMasson's Trichrome染色結果であり、脂肪細胞の破壊又はコラーゲンの増加により青色に染色された部分が面積増加を示す図である。
【
図11】
図11の左側は、本発明の一実施例によるデオキシコール酸ナトリウムの分子会合体を4週間、8週間二重顎に塗布したときの二重顎の面積変化率を比較したものであり、右側は二重顎の体積の変化率を測定した図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施例によるデオキシコール酸ナトリウムの分子会合体を人の顎に塗布しながら8週間の変化を観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
難溶性薬物は水溶液での飽和溶解度が極めて低く、水との界面エネルギー(interfacial tension/energy)が極めて高いために熱力学的に不安定(thermodynamically unstable)な状態であることから、沈殿(sedimentation)されるか、相分離(phase separation)される。したがって、薬理学的に意味があるように薬物含量(すなわち、溶解度)を高めるためには、界面エネルギーを下げる表面活性物質(surface active agent)や高含量の薬物を含有できるキャリアなど第三の物質が必要であった。
【0026】
こうした従来の溶解度向上技術は、共通してAPIと水を除く第三の物質を必須的に使用しなければならず、又は溶解度を向上させる中核因子として作用していた。例えば、界面活性剤、マイセル、シクロデキストリン、lipid、アルブミン、水溶性高分子、安定化剤/分散剤、ナノ粒子、多孔性粒子などがこのような第三の物質に該当する。
【0027】
しかし、本発明の発明者らは、前記のような第三の物質を使用しなくても、極性相互作用又は水素結合を活用した分子会合体を製造し、構造体の表面に疎水性(hydrophobic)を持たせ、リン脂質膜に対する透過度を増加させ、その会合体の粒径を1.0~10 nmレベルに調節し、約80 nm程度の大きさを有する皮膚の間隙への透過度を高め、これを通じて皮膚内の脂肪細胞に薬理物質を伝達し脂肪分解及び脂肪蓄積の減少に優れた効果を表すことを確認したことで、本発明を完成した。
【0028】
以下、より詳しく説明する。
【0029】
用語
本発明において、前記「胆汁酸(bile acid)」及び「胆汁酸塩(bile salt)」とは、ステロイド酸(及び/又はそのカルボン酸の陰イオン)、及びその塩を意味し、動物(例えば、ヒト)の胆汁より発見されるものだが、これに対する非限定的な例として、コール酸、ケノデオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸及びリトコール酸からなる群より選択されるいずれか1つの胆汁酸又はその塩である胆汁酸塩が挙げられる。
【0030】
本発明において前記「胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体」とは、胆汁酸を含む溶液にせん断応力を加えて胆汁酸分子又は胆汁酸塩分子が物理的に結合されるように分子会合体を製造したものであって、胆汁酸分子が互いに凝集された構造を意味する。
【0031】
本発明において、「胆汁酸分子又は胆汁酸塩分子」とは、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を生成するために使用される前駆物質である胆汁酸又は胆汁酸塩の分子そのものを意味し、「前駆体」と呼んでもよい。 つまり、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子は、せん断応力が加わっていない胆汁酸又は胆汁酸塩を意味する。
【0032】
本発明において、用語「患者(patient)」、「対象(subject)」、「個体(individual)」などは、本明細書において相互交換し使用され、本明細書に記載された方法に順応できるイン・ビトロ又はイン・サイチュなど任意の動物、又はその細胞を指す。特定の非限定的な実施態様では、前記患者、対象又は個体は、人である。
【0033】
本発明において、用語「組成物(composition)」は、本発明の少なくとも1つの化合物と担体(carriers)、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤(thickening agents)及び/又は賦形剤(excipients)のような他の化学成分の混合物を意味する。
【0034】
本発明において、用語「有効量(effective amount)」、「 薬剤学的に有効な量(pharmaceutically effective amount)」及び「治療学的に有効な量(therapeutically effective amount)」は、非毒性であるが、所望の生物学的結果を示すのに十分な量を表す。前記結果は、徴候、症状、又は疾患の原因の減少及び/又は軽減、又は生物学的システムの任意の他の望ましい変化(alteration)であってよい。任意の個々の事象において、適切な治療学的量は、通常の実験を使用し通常の技術者によって決定することができる。
【0035】
本発明において、用語「効能(efficacy)」は、分析方法内で達成される最大効果(Emax)を示す。
【0036】
本発明において、用語「皮膚外用剤として塗布」とは、例えば、非外科的(non-surgical)、非侵襲的(no injection)な方法で皮膚の外部に医薬組成物を塗布し薬物を皮膚内部に伝達することを意味するが、それ以外にも、自らの知識及び本開示を考慮して、当分野において通常の技術を有する者によって通常決定することができる。
【0037】
本発明において、用語「局所脂肪」とは、例えば、腹部頸部脂肪、太もも脂肪、前腕脂肪、内臓脂肪の蓄積、乳房増大術後についた脂肪、胸部脂肪、 腕周りに拡散した脂肪、目の下の脂肪、顎の下の脂肪、臀部の脂肪、脹ら脛の脂肪、背中の脂肪、大腿部の脂肪、足首の脂肪、セルライト及びそれらの組み合わせからなる群より選択される部位に局所化するものを指すが、それ以外にも、自らの知識及び本開示を考慮して、当分野において通常の技術を有する者によって通常決定することができる。
【0038】
本発明において、用語「皮膚外用剤」とは、例えば皮膚に塗布可能な製剤であり、ゲル、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(unguent)、スプレー、増粘化した剤形及び湿布剤からなる群のいずれか1つの剤形として使用されるものをいうが、それ以外にも、自らの知識及び本開示を考慮して、当分野において通常の技術を有する者によって通常決定することができる。
【0039】
胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体
本発明は、胆汁酸分子又は胆汁酸塩分子が物理的に結合された分子会合体であって、前記分子会合体に水を含む組成物として形成される場合、前記組成物のうち、前記分子会合体は凝集された構造を有する分子会合体を提供する。
【0040】
本発明において、前記分子会合体の平均粒径は、1.0~10nmであってもいいが、好ましくは1.5nm以上、2.0nm以上であってもよく、7.0nm以下、5.0nm以下、3.0nm以下であってもよい。前記分子会合体の平均粒径は回折実験を通じて測定することができ、好ましくはZetasizerやSmall Angle Neutron Scattering (SANS)を使用して測定することができる。また、Transmission Electron Microscopyを利用してimageを測定することもできる。前記分子会合体の平均粒径が10nmを超えると、分散性が低下し、透明度と透過度が低下する問題がある。また、前記構造体の平均粒径の下限値は特に制限はないが、約1.0 nm以上のものを使用することができる。
【0041】
本発明による分子会合体は、胆汁酸分子又は胆汁酸塩分子にせん断応力を加えて製造されるため、ナノサイズで製造されるにもかかわらず、無定形(amorphous)の形態を持つことが可能になり、これによりサイズの調節が容易であるだけでなく、皮膚透過度も向上することができる。
【0042】
また、本発明による分子会合体は、pHが8.5超過10未満であってよい。pH値が前記範囲を満足する場合、分子会合体の皮膚透過度が高くなるだけでなく、脂肪細胞に到達した後、脂肪を効果的に分解することができる。また、本発明の分子会合体は、従来の注射剤として使用されていた物質とは異なり、外用剤(topical)として使用されるため、pHが比較的高くなることがあり、pHが高くなるにつれて保管安定性もより向上する可能性がある。具体的に前記分子会合体のpHは、8.6超過、8.7超過、8.8超過、8.9超過、9.0超過、9.1超過であってもよく、9.9未満、9.8未満、9.7未満、9.6未満、9.5未満、9.4未満、9.3未満であってもよい。
【0043】
また、本発明による分子会合体は保管安定性に優れる。一般的なナノサイズの分散された粒子は凝集又はOstwald ripening現象に容易にさらされるため、保存安定性が低いのに対して、本発明の分子会合体及び組成物は、4℃、25℃及び45℃の条件下で12か月間の濃度の変化率が0超過5%未満と変化が少なく、安定性に優れた効果を有する。前記変化率とは、前記期間までの月別の変化率の平均値を求めた平均変化率を意味する。
【0044】
前述のように、本発明による分子会合体の安定性は優秀であることが分かる。
【0045】
分子会合体の製造方法
本発明の一実施例による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体は、前記分子会合体の前駆体である胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液にせん断応力を加えることで製造することができる。
【0046】
前記分子会合体の前駆体である胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に加わるせん断応力は、機械的せん断応力又は超音波印加のいずれかであってよい。
【0047】
前記機械的せん断応力は、溶液をシリカが充填されたカラム又は濾紙に通らせて加えることができる。以下、機械的せん断応力について具体的に説明する。
【0048】
本発明の一実施例によると、前記機械的せん断応力は、前記分子会合体の前駆体である胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液をシリカが充填されたカラムに通らせて加えることができる。前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液がシリカなどで充填されたカラムを通過すると、物理的に狭い領域を通過することにより、前記分子会合体の前駆体である胆汁酸又は胆汁酸塩は非常に高いせん断応力を受けることになる。
【0049】
前記シリカは、球形又は角形であってもよいが、その形状は限定されない。
【0050】
前記シリカの平均粒子の大きさは、1.0~50μmであっていいが、具体的には、1.5μm以上、2μm以上であってもよく、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下であってもよい。前記シリカの大きさが1.0μm未満又は50μm超過である場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液がシリカが充填されたカラムを通過しても、せん断応力が加われないために、分子会合体の変化が表れない場合がある。
【0051】
前記シリカが充填されたカラムの下部には、0.1 bar~1.0 bar又は0.2 bar~0.9 barの負圧をかけることができる。前記シリカが充填されたカラムの下部にかかる負圧が0.1 bar未満の場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液が前記カラムを通過するのにかかる時間が増加し、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体の製造時間が遅延する恐れがある。また、前記シリカが充填されたカラムの下部にかかる負圧が1.0 barを超える場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液が前記カラムを通過するのにかかる時間が短縮され、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体の製造時間が短縮される可能性があるが、さらなるポンプ装置が必要となるため、製造コストが増加する恐れがある。
【0052】
本発明の他の実施例によると、前記機械的せん断応力は、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液を1つ以上の濾紙に通らせて加えることができる。上記1つ以上の濾紙を通過すると、物理的に狭い領域を通過することにより、上記分子会合体の前駆体である胆汁酸又は胆汁酸塩は非常に高いせん断応力を受けることになる。
【0053】
前記濾紙は、1つの濾紙であるか、2つ以上の複数の濾紙であってもよい。前記濾紙が2つ以上の複数の濾紙である場合、前記濾紙を積層して配置することができる。前記濾紙が2つ以上の複数の濾紙である場合、1つの濾紙の方よりも高いせん断応力が提供できる。
【0054】
前記濾紙の細孔の大きさは、0.1~5.0ミクロン又は0.3~4.5ミクロンであってよい。前記濾紙の細孔の大きさが0.1ミクロン未満の場合、前記胆汁酸を含む溶液が前記濾紙を通過し又はろ過される量が少なすぎるため、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体の製造速度が低下する恐れがあり、前記濾紙の細孔の大きさが5.0ミクロンを超える場合、前記胆汁酸を含む溶液が単に前記濾紙を通過し、せん断応力が有効に加われない恐れがある。
【0055】
前記せん断応力は、超音波を利用して加えることができる。以下、超音波印加について具体的に説明する。
【0056】
本発明の一実施例によると、前記せん断応力は、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に超音波を印加して加えることができる。
【0057】
前記超音波を前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に加えると、圧力波が発生し、前記圧力波により、前記分子会合体の前駆体である胆汁酸又は胆汁酸塩にせん断応力を加えることができる。
【0058】
前記の印加される超音波の強度は200 J/sec~800 J/sec又は400 J/sec~600 J/secであってよい。
【0059】
前記の印加される超音波の体積当たりに加わるエネルギーは、超音波の強度(J/sec)×加わった時間(sec)/測定体積(ml)で求めることができる。
【0060】
本発明の一実施例によると、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に印加される超音波の体積当たりに加わるエネルギーは、100J/ml~90kJ/mlであってよい。
【0061】
前記超音波のエネルギーが100 J/ml未満の場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に十分なせん断応力が加われず、分子会合体の形成が困難になる恐れがある。また、前記超音波のエネルギーが90 kJ/mlを超える場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に過度な熱が加わり、分子会合体の形成が困難になる恐れがある。
【0062】
前記超音波は10℃~80℃で10秒~60分間印加することができる。前記超音波が10℃未満の温度で印加される場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に変化がなく、80℃を超える温度で印加される場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に相変化が起こり、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体の形成が困難になる恐れがある。また、前記超音波が10秒未満で印加される場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に変化がなく、60分を超えて印加される場合、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液の分子会合体が変形し、本発明による胆汁酸又は胆汁酸塩の分子会合体を形成することができない。
【0063】
本発明の他の実施例によると、前記せん断応力を加える方法として、シリカが充填されたカラムを超音波発生装置と組み合わせることができる。前記シリカが充填されたカラムが超音波発生装置の内部に配置されるか、前記シリカが充填されたカラム及び超音波発生装置が分離され連続的に配置されることがある。
【0064】
例えば、前記シリカが充填されたカラムに前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液を注いだ後、前記カラムを超音波発生装置内に配置して超音波を印加させることができる。また、前記胆汁酸又は胆汁酸塩を含む溶液に超音波を印加させた後、前記シリカが充填されたカラムに前記溶液を通らせることができる。
【0065】
化粧料組成物
本発明は、前記分子会合体を含む化粧料組成物を提供する。前記化粧料組成物は、局所脂肪除去用として使用することができる。
【0066】
本発明において、前記化粧料組成物は、前記分子会合体の他に、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、ヒアルロン酸、グリセリン、白木茸エキス、納豆菌ガム、1,2-ヘキサンジオール及びポリソルベート80からなる群より選択されるいずれか1つ以上を含めることができる。
【0067】
また、前記化粧料組成物は、クリーム剤形として使用するための成分をさらに含めることができ、このような成分は特に限定されず、変形可能ないかなるものも使用することができる。例えば、精製水、ブチレングリコール、プロパンジオール、水添コメヌカ油、カプリル酸/カプリルトリグリセリド、ペンチレングリコール、デオキシコール酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ジメチコン、水添レシチン、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、カルボマー、ステアロイルグルタミン酸Na、1,2-ヘキサンジオール、水添コメヌカ油、シロキクラゲエキス、ヒアルロン酸ナトリウム、納豆菌ガム、ポリソルベート60、キサンタンガム、香料、アデノシン、イソステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、リナロール、リモネン及びヘキシルシンナマルからなる群より選択されるいずれか1種以上をさらに含めることができる。
【0068】
本発明において、前記化粧料組成物は、前記分子会合体が0.05重量%~10.0重量%となるように含めることができ、具体的には、0.08重量%以上、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上であってもよく、5重量%以下、3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.0重量%以下であってもよい。
【0069】
本発明において、前記化粧料組成物は、皮膚に塗布した後、3時間以降に血漿より測定した胆汁酸又は胆汁酸塩の濃度が0.001~0.2μg/mlであってもよく、具体的には、0.01μg/ml以上、0.05μg/ml以上、0.1μg/ml以上であってもよく、0.18μg/ml以下、0.15μg/ml以下、0.12μg/ml以下であってもよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。当然、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0071】
実施例1:デオキシコール酸ナトリウム(NaDC)の分子会合体
1Lのビーカーにデオキシコール酸ナトリウム(Sodium deoxycholate, NaDC, Sigma Aldrich #30970)18.0gを入れ、水604gにマグネットバーを使用して溶解させた。Silica gel 60 (Merck) 60.5gを0.1M NaHCO3 242gが入った400mLのビーカーに入れ、スパチュラで混ぜた。湿らせたシリカを真空ポンプ付きの真空濾過装置(圧力200 mbar)にゆっくりと注ぎながらパッキングした。パッキングされたシリカに前記NaDC溶液を投入した。シリカベッドが乾燥する前に水160gを80gずつ2回に分けて投入した。流出時間は合計1時間であり、流出が完了した後、0.45um membrane filterを利用してfilterした。 Filterした流出液は808gであった。この溶液の濃度は2.07%、pHは7.67である。この過程でデオキシコール酸ナトリウムの回収率は93%であった。
【0072】
実施例2:デオキシコール酸ナトリウムの分子会合体を含む組成物
前記実施例1は水溶液状態であるため、皮膚に塗布するとき流れ落ちる傾向があり、皮膚内に十分に伝達されない可能性があるため、前記実施例1で製造した分子会合体を経皮に適用可能な製剤として製造しようと、分子会合体1.0重量%にヒアルロン酸を0.7重量%添加した後、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、ヒアルロン酸、グリセリン、白木茸エキス、納豆菌ガム、1,2-ヘキサンジオール、ポリソルベート80を全成分としてさらに添加し、クリームタイプの製剤を製作した。
【0073】
比較例1:デオキシコール酸ナトリウムの前駆体
実施例1のシリカを通過する工程を行っていないデオキシコール酸ナトリウムそのものを使用した。
【0074】
[実験例]
実験例1:分子会合体の粒子径の測定
前記製造された実施例1の無色、無臭、透明な液状のデオキシコール酸ナトリウムの分子会合体に対して下記のZetasizerとTEM分析を通じて粒子径を確認した。
Zetasizer分析
Zetasizer(Malvern、Nano ZSP)を用いて実施例1のデオキシコール酸ナトリウム分子会合体を0.2μmフィルターした後、下記表1の条件で10回測定し、size distribution by volumeから平均粒子径を表1のような条件で測定し表2に示した。
【表1】
【表2】
【0075】
TEM分析
EMS社のFCF300-Cu 50/pk(Formvar/Carbon 300Mesh, Copper)グリッドを濾紙の上に乗せ、その上にmicropipetteで該当サンプルを約20μl滴下し、negative stainingはせずに15分以上待機してグリッドを乾燥させ、TEMイメージで実施例1のデオキシコール酸ナトリウム分子会合体の粒子径を測定し、
図1のように示した。
【表3】
【0076】
前述のように、ZetasizerとTEM分析を通じて分子会合体が1.44~1.79 nmの粒子サイズを有することを確認した。
【0077】
実験例2:安定性試験
(1)材料
本発明が適用されたデオキシコール酸ナトリウムの分子会合体の保管安定性を確認するために、実施例1と同じ方法で、製造した分子会合体を安定性試験の試料として使用した。
【0078】
(2)分析方法
含量及び微粒子の数量分析
HPLCを通じて含量及び微粒子の数量を分析した。
【表4】
【0079】
(3)結果
実施例1で製造した分子会合体を2つの試料とし、いずれも4℃、室温、45℃の条件で12か月間の変化を観察し、その結果を下記表5ないし6に示した。その結果、実施例1で製造した分子会合体の場合、経時的な変化は確認されず、安定的であることがわかった。具体的には、HPLCを通じて測定される濃度の変化は4℃、室温(25℃)及び45℃の条件で12か月間5%未満で測定された。また、不溶性微粒子の数(個数/ml)の変化を測定した結果、4℃、室温、45℃の条件下で12か月間すべて一定の水準を維持することが確認できた。
【表5】
【表6】
【0080】
実験例3:脂肪前駆細胞及び脂肪分化細胞の破壊能の確認
(1)試験物質
脂肪前駆細胞及び脂肪分化細胞の破壊能を比較するために、デオキシコール酸と、本発明が適用されたデオキシコール酸分子会合体(DCA2001JJ43, DCA2001JJ83-1)、デオキシコール酸塩の分子会合体(DCA2001JJ85-1)を使用した。
【0081】
(2)脂肪前駆細胞の破壊能
3T3-L1脂肪前駆細胞を96 well plateにwell当たり5x10
3 96個を接種し、16時間培地(high glucose DMEM, 10% bovine calf serum, 1% penicillin/streptomycin)で育てた後、前記薬物をそれぞれ0.04%及び0.08%含むように製造し、4時間処理した。Dojingo CK04-11 cell counting kit-8をmanualに従って10 μlずつwellに添加し、2時間反応させた後、分光光度計で450 nm吸光度を測定して脂肪前駆細胞の破壊能を比較し、
図3に示した。
【0082】
その結果、0.04%ではデオキシコール酸塩の前駆体とデオキシコール酸の分子会合体、デオキシコール酸塩の分子会合体の脂肪前駆細胞の破壊能は同じであったが、0.08%処理時の前駆体24.6%と比較して、デオキシコール酸塩の分子会合体が添加された脂肪前駆細胞の生存率は11.9%減少した12.7%(*p=0.008)、デオキシコール酸の分子会合体処理区での生存率は13.8%減少した10.8%(#p=0.01)と確認され、本発明の技術が適用されたデオキシコール酸分子会合体の脂肪前駆細胞の破壊能の増加を確認した。
【0083】
(3)脂肪分化細胞の破壊能
Biovision 3T3 L1 differentiation kit manualに従って、3t3 L1脂肪前駆細胞を培養皿に100% confluenceするように育てた後、培養液を分化維持培地に交替した6日後に多数のlipid dropletを有する脂肪分化細胞を誘導した(
図4)。脂肪分化細胞に0.07%のデオキシコール酸の分子会合体(DCA2001JJ43)を処理し、Tomocube HT-2H顕微鏡を利用して1秒当たり2.5 framesで3D imageを得た後、imaging softwareであるTomoStudioを利用してmulti point acquisition機能を適用し、分化した脂肪細胞の変化を25秒の間隔で40分間撮影した。その結果、撮影後5分まで観察されていた脂肪分化細胞のcell membraneと細胞内構造が5分以降から急激に薄くなることが確認でき、8分以降はlipid droplet周辺のRI valueが外のmediumとほぼ同じくなり、分化した脂肪細胞の破壊能を確認した(
図5)。
【0084】
実験例4:前臨床試験
(1)SDラット皮膚透過実験
材料
SD rat皮膚を用いたデオキシコール酸の分子会合体(実施例1の方法で製造されたDCA2002JJ84)の皮膚透過性と皮下脂肪組織の除去能力の確認実験を行った。
【0085】
実験方法
十分な皮下脂肪組織を有する10週齢のSD rat(280~350g)のinterscapular部位(耳の後ろの頸部)を除毛し、麻酔をかける。除毛した部位にdonor cellをテープで付着させる。前駆体である2.5%デオキシコール酸と本発明のデオキシコール酸分子会合体500μlをdonor cellに2.5%乗せた後、麻酔持続状態で3、6、9時間連続的に皮膚に適用する。皮下組織、皮膚、血漿内のデオキシコール酸の分布量を確認して皮膚透過性を確認し、組織染色を通じて皮下脂肪細胞層の破壊能を確認して
図6の下段に示した。陽性対照群としてデオキシコール酸の皮下注射群を用いた(1% DCA、500 μl皮下注射)。
【0086】
皮下組織のDCA分布量の測定結果
デオキシコール酸前駆体とデオキシコール酸分子会合体をSD ratの皮膚に連続塗布すると、両群とも時間経過とともに皮膚透過量が増加することを皮下組織内のデオキシコール酸の定量で確認した。皮下注射群では、皮下注射後、DCAの量が皮下組織内で徐々に減少したのに対し、皮膚塗布群では時間経過に伴い増加傾向を示し、デオキシコール酸分子会合体の透過率の増加幅の方がデオキシコール酸前駆体よりやや高かった(
図6)。
【0087】
皮膚のDCA分布量の測定結果
デオキシコール酸前駆体とデオキシコール酸分子会合体をSD ratの皮膚に連続塗布すると、両群とも時間経過とともに皮膚に分布するデオキシコール酸の増加が確認された。一方、皮下注射群の場合、6時間後に皮膚組織のデオキシコール酸が最も高く分布したが、9時間後には皮膚塗布群よりも低い分布を示した(
図7)。
【0088】
血漿中のDCA分布量の測定結果
図8の結果はラットの血漿のDCA濃度を示したものであり、デオキシコール酸皮下注射群でのみ血漿からDCAが検出され、皮膚塗布群では血漿中のDCAが検出されず、皮膚塗布による皮下脂肪の除去効果はあるが、血漿に移行されず、安全性問題がないデオキシコール酸分子会合体を確認した。
【0089】
組織学的分析結果
デオキシコール酸1% 500μLの皮下注射を行った群、デオキシコール酸2.5% 500μLを皮下塗布した群、そしてデオキシコール酸の分子会合体2.5% 500μLをfranz cellが付着された部位に3、6、9時間連続で適用してからintercapular部位の組織(skin, subcutaneous tissue)を採取し固定した後、H&E stainingとMasson's trichome stainingを行い、顕微鏡観察を通じて組織変化を調査した。
【0090】
H&E染色の結果、デオキシコール酸の皮下注射群では、皮下注射の実施以降、組織がひどく損傷していることが観察できた。皮膚塗布群では、時間の経過とともにdermis white adipose tissueの減少が観察され、これはデオキシコール酸分子会合体の塗布群でより明確に観察された(
図9)。
【0091】
皮膚及び皮下組織内のコラーゲンの増減を観察するためにMasson's trichome stainingを行った結果、皮膚塗布群で脂肪細胞の破壊又はコラーゲン増加により青色にstainingされた面積の増加を観察した(
図10)。デオキシコール酸の皮下注射群では組織に血腫及び浮腫が発生し、組織の損傷が酷烈で、切片生成時に組織が硬化し、9 hr処理群では脂肪組織の硬化によって切片が割れ、適切な組織切片が得られなかった。
【0092】
結論
皮膚塗布群では、時間の経過とともに皮膚及び皮下組織に分布したデオキシコール酸の量が増加傾向を示し、デオキシコール酸の分子会合体がデオキシコール酸の前駆体処理群に比べて皮膚や皮下組織に分布したデオキシコール酸の量がより多かった。血漿でのデオキシコール酸の濃度は皮下注射群でのみ検出され、組織学的分析では皮膚塗布群で投与後に時間の経過とともに組織内のadipose tissueの減少が観察され、このような現象はデオキシコール酸分子会合体の処理群でより明確に現れた。Pharmacokineticの研究結果より、皮下組織内に分布したデオキシコール酸の量は時間の経過とともに蓄積され、組織学的分析では皮膚内のdermis white adipose tissueが減少したことから、デオキシコール酸の分子会合体が効果的に皮膚を透過し、脂肪組織の減少に寄与したと結論付けることができる。
【0093】
実験例5:二重顎の脂肪除去の効果
平均48.8歳の女性42名(試験群21名と対照群21名)が2020年5月27日から7月22日までの8週間、1日1回夕方の洗顔後に顎部に塗布した。試験群は本発明の実施例1の分子会合体が1%含まれた実施例2のクリーム製剤であり、全成分はヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、ヒアルロン酸、グリセリン、白木茸エキス、納豆菌ガム、1,2-ヘキサンジオール及びポリソルベート80であった。対照群は、実施例1の分子会合体の代わりに比較例1のデオキシコール酸ナトリウムそのものを含むクリームを使用した。二重顎リフティングの効果は、DSLRで測定した画像での面積(pixel)と、VECTRA XT機器で測定した二重顎の体積値を使用前、使用から4週間後、使用から8週間後に測定し、群間で比較した。実施例1のクリームを使用した試験群では使用から8週間後に12%の有意な二重顎の面積減少(p<0.05)や、15%の有意な二重顎の体積減少が確認された(p<0.05)。(
図11及び
図12)
被験者が試験製品を使用する期間中、特別な皮膚の異常反応の報告はなく、研究責任者の皮膚科専門医の所見によると、試験群での異常所見がなく、8週間の使用を通じて二重顎のリフティングの改善に役立ったという所見があった。
【国際調査報告】