(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】マルチアゴニストペプチドを含む組成物並びに製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/575 20060101AFI20240705BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240705BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240705BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C07K14/575 ZNA
A61P3/04
A61P3/00
A61P1/16
A61P3/10
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502438
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022073793
(87)【国際公開番号】W WO2023288313
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524018914
【氏名又は名称】ぺプ2タンゴ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロンディノーネ,クリスティーナ マーサ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,ソウミトラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ダンホ,ワリード
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA20
4C084BA23
4C084DB31
4C084DB37
4C084MA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA58
4C084MA60
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA751
4C084ZC032
4C084ZC062
4C084ZC211
4C084ZC351
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA19
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、一般に、代謝疾患及び障害、例えば、体重減少、血漿グルコース及び脂質レベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化並びに神経変性の予防により軽減され得るものの処置及び予防のための薬剤として有用な新規マルチアゴニストペプチドに関する。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、食物摂取、体重減少、エネルギー代謝、血漿グルコースレベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化、肥満、糖尿病及び糖尿病関連病態、肝臓脂肪関連炎症及び損傷が挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドが、式(I):
X
1-X
2-E-G-T-F-X
3-S-D-Y-S-I-X
4-X
5-D-K-I-X
6-Q-X
7-X
8-F-V-X
9-W-L-X
10-X
11-X
12-X
13-X
14-X
15-X
16-C-N-T-A-T-C-X
17-X
18-X
19-X
20-L-X
21-X
22-X
23-L-X
24-X
25-X
26-X
27-X
28-X
29-X
30-X
31-X
32-X
33X
34-P-X
35-T-N-X
36-G-X
37-N-T-Y-(NR
1R
2)
(I)
(式中、
X
1は、Tyr又は(d)Tyrであり;
X
2は、Ala、(d)Ala、又はAibであり;
X
3は、Ile又はThrであり;
X
4は、Ala、Aib、又はGlnであり;
X
5は、Met、Leu、又はValであり;
X
6は、Ala又はHisであり;
X
7は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
8は、Ala又はAspであり;
X
9は、Asn又はGlnであり;
X
10は、Leu、Val、又はIleであり;
X
11は、Ala又はValであり;
X
12は、Gly又はGlnであり;
X
13は、Gly、Lys、Arg、Ser、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
14は、Pro、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
15は、Ser、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
16は、不存在であるか又はGly若しくはSerであり;
X
17は、Ala、Met又はValであり;
X
18は、Thr又はLeuであり;
X
19は、Gln又はGlyであり;
X
20は、Arg、Lys、Gln、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
21は、Ala又はSerであり;
X
22は、Asn又はGlnであり;
X
23は、Phe又はGluであり;
X
24は、His又はValであり;
X
25は、His又はArgであり;
X
26は、Ser又はLeuであり;
X
27は、Ser又はGlnであり;
X
28は、Asn又はThrであり;
X
29は、不存在であるか又はAsn若しくはGlnであり;
X
30は、不存在であるか又はPheであり;
X
31は、不存在であるか又はGlyであり;
X
32は、不存在であるか又はProであり;
X
33は、不存在であるか又はIle、Lys、若しくはLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
34は、Leu又はTyrであり;
X
35は、Pro、Lys、Arg、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり;
X
36は、Val又はThrであり;
X
37は、Ser、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nR
3であり、
R
1及びR
2は、各々独立してH又はC
1-5アルキルであり、
R
3は、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CO
2NH
2、-CO
2NHCH
3、-CO
2N(CH
3)
2、-CH
3、又は-NH
2であり、
nは、12~20の整数である)
のアミノ酸配列を含む、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
X
1は、Tyrであり;
X
2は、(d)Alaであり;
X
3は、Ileであり;
X
4は、Alaであり;
X
5は、Leuであり;
X
6は、Hisであり;
X
7は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nCO
2Hであり、nは、18であり;
X
8は、Aspであり;
X
9は、Asnであり;
X
10は、Leuであり;
X
11は、Alaであり;
X
12は、Glnであり;
X
13は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
nCO
2Hであり、nは18であり;
X
14は、Proであり;
X
15は、Serであり;
X
16は、Serであり;
X
17は、Alaであり;
X
18は、Thrであり;
X
19は、Glnであり;
X
20は、Argであり;
X
21は、Alaであり;
X
22は、Asnであり;
X
23は、Pheであり;
X
24は、Valであり;
X
25は、Hisであり;
X
26は、Serであり;
X
27は、Serであり;
X
28は、Asnであり;
X
29は、Asnであり;
X
30は、Pheであり;
X
31は、Glyであり;
X
32は、Proであり;
X
33は、Ileであり;
X
34は、Leuであり;
X
35は、Proであり;
X
36は、Valであり;
X
37は、Serである、
請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
X
13は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CO
2H又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CH
3である、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
X
14は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CO
2H又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CH
3である、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
X
15は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CO
2H又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CH
3である、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
X
33は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CO
2H又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CH
3である、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
X
13は、Glyである、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
X
14は、Proである、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
X
15は、Serである、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項10】
以下の配列を有する、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩:
【表1】
【表2】
【表3】
【請求項11】
K
*は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CO
2H又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH
2)
18CH
3である、請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項12】
請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項13】
肥満、代謝障害、又は肝臓障害の処置が必要とされる対象における肥満、代謝障害、又は肝臓障害を処置する方法であって、前記対象に有効量の請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を提供することを含む方法。
【請求項14】
前記ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を、前記対象に経口、非経口、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、髄腔内、吸入、気化、噴霧化、舌下、バッカル、非経口、直腸、眼内、吸入、局所、膣、又は局所の投与経路により提供する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
肥満を処置するための、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
糖尿病の処置が必要とされる対象における糖尿病を処置する方法であって、前記対象に有効量の請求項1に記載のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩を提供することを含む方法。
【請求項17】
前記ペプチド若しくはその薬学的に許容可能な塩又は前記医薬組成物の前記有効量は、1日約0.0001~約300mg/kg体重である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月16日に出願され、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第63/222,747号の利益を主張する。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に付随する配列表は、ST.26XMLフォーマットで提供され、参照により本明細書中に組み込まれる。配列表を含有するテキストファイルの名称は、Pep2-001_01US_ST26.xmlである。テキストファイルは約46KBであり、2022年7月13日に作成され、電子的に提出されている。
【0003】
本発明の分野
本発明は、一般に、代謝疾患及び障害、例えば、体重減少、血漿グルコース及び脂質レベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化並びに神経変性の予防により軽減され得るものの処置及び予防のための薬剤として有用な新規マルチアゴニストペプチドに関する。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、食物摂取、体重減少、エネルギー代謝、血漿グルコースレベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化、肥満、糖尿病及び糖尿病関連病態、肝臓脂肪関連炎症及び損傷が挙げられる。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、摂食障害及び肥満の希少遺伝障害、例えば、プラダーウィリ症候群、クリティカルケア、インスリン抵抗性及びその障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、1型、2型、及び妊娠性糖尿病を含む任意の種類の真性糖尿病、並びにCNS障害、例えば、神経変性の予防、鬱病、アルコール添加(alcohol addition)、アルツハイマー病及びパーキンソン病、並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。
【背景技術】
【0004】
本発明の背景
インクレチンペプチドはホルモンであり、ペプチド模倣体は、グルコースレベルが正常である場合又は特にそれらが上昇する場合、放出されるインスリンの量の増加を引き起こす糖調節剤である。これらのインクレチンペプチドは、インスリン分泌により規定される初期インクレチン作用を超える他の作用を有する。例えば、これらは、グルカゴン産生を低減させ、満腹感を増加させ、胃内容排出を遅延させ、白色及び褐色脂肪組織を調節し、体重減少を誘発する作用も有し得る。さらに、これらは、インスリン感受性を改善する作用を有し得、それらは、膵島細胞新生、新たな膵島の形成を増加させ得る。
【0005】
インクレチン効果の概念は、経口グルコースに対するインスリン応答が当量のグルコースの静脈内投与後に測定されたものを超過する観察から発展した。腸管由来因子、又はインクレチンは、食後インスリン放出に影響することが結論付けられた。胃及び近位胃腸管中への栄養素流入はインクレチンホルモンの放出を引き起こし、次いでそれらはインスリン分泌を刺激する。このインスリン分泌刺激作用、又はインスリン分泌を刺激する能力は、経口対静脈内グルコース負荷に対するインスリン又はC-ペプチド応答を比較することにより定量され得る。このように、インクレチン効果は健常個体において経口グルコースに対するインスリン応答の約50%~70%を担うことが示されている。
【0006】
多くの食後ホルモンはインクレチン様活性を有するが、主なインクレチンペプチドとしては、胃抑制ポリペプチド(GIP)としても公知のグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、及びエキセンジンペプチド(非内因性インクレチン模倣体である)が挙げられる。GIP及びGLP-1は両方ともグルカゴンペプチドスーパーファミリーに属し、したがってアミノ酸配列相同性を共有する。GIP及びGLP-1は、胃腸管中の特殊化細胞により分泌され、膵島細胞及び他の組織上に局在する受容体を有する。インクレチンと同様、両方とも栄養素の摂取に応答して腸から分泌され、インスリン分泌の向上をもたらす。GIP及びGLP-1のインスリン分泌刺激効果は、周囲グルコースの上昇に依存的である。両方とも、ユビキタス酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)により急速に不活性化される。
【0007】
天然ヒトGIPは、特殊化腸内分泌K細胞により合成及び分泌される単一42アミノ酸ペプチドである。これらの細胞は主に十二指腸及び近位空腸中に集中しているが、それらは腸全体にも見出され得る。GIP分泌についての主な刺激は、炭水化物及び脂質が多い食事の摂取である。摂取後、循環血漿GIPレベルは10~20倍増加する。インタクトGIPの半減期は、健常対象においておよそ7.3分、糖尿病対象において5.2分と推定される。
【0008】
GIPの生理学的効果は、GIP注入プロトコルの他、GIP受容体アンタゴニスト、GIPペプチドアンタゴニスト、及びGIP受容体ノックアウトマウスを使用して解明されてきた。GIPのその受容体への結合の遮断は、ラット及びマウスにおいて経口グルコース負荷後にグルコースの依存性インスリン分泌の減衰をもたらす。同様に、GIPアンタゴニスト又はGIP抗血清の投与は、ラットにおいて食後インスリン放出を顕著に低減させる。GIP受容体ノックアウトマウスは、正常な空腹時グルコースレベルを実証するが、経口グルコース負荷後に軽度の耐糖能異常を実証する。興味深いことに、これらは、数ヶ月間の高脂肪給餌後に食物由来肥満に対する耐性も示す。さらに、レプチン欠損ob/obマウスにおいて、GIP受容体ノックアウトゲノタイプは、発症する肥満の程度を減少させると考えられる。
【0009】
GIPは、多くの非インクレチン効果も有する。GIP受容体のGIP活性化は、制吐作用を有する。他のインスリン分泌促進物質と異なり、GIPは、INS-1膵島細胞系の研究においてベータ細胞増殖及び細胞生存を刺激する。さらに、動物研究は、リポタンパク質リパーゼ活性を刺激し、脂肪組織中への脂肪酸取り込みを誘導し、脂肪酸合成を刺激することによる脂質代謝におけるGIPの役割を示唆している。GIPは、単離灌流ラット膵からのグルカゴン分泌を刺激するとも考えられるが、ヒト研究は、グルカゴン分泌に対するいかなる有意な影響も実証していない。さらに、GLP-1と異なり、GIPは、胃腸運動を阻害することではなく、胃の内容排出を加速することにより作用すると考えられる。
【0010】
インスリン分泌のグルコース依存性刺激を介する強力な糖調節作用にもかかわらず、GIPのインスリン分泌刺激効果は、正常個体と比較して糖尿病対象において顕著に低減する(16~18)。結果的に、GIPの臨床的使用は顕著には進行していない。さらに、追加の糖尿病処置モダリティ並びに代謝疾患、病態、及び障害のための処置を開発することが依然として必要とされている。したがって、本発明は、本発明のペプチド並びに代謝疾患、病態、及び障害を処置又は予防するためのその使用方法を包含する。
【0011】
GLP-1は、食物摂取に応答して腸粘膜から分泌される強力なインスリン分泌促進物質である。GLP-1の著しいインクレチン効果は、GLP-1Rノックアウトマウスが耐糖能異常であるという事実により過少評価されている。静脈内注入GLP-1のインクレチン応答は糖尿病対象において保存されるが、それらの対象における経口グルコースに対するインクレチン応答は損なわれる。注入又はsc注射によるGLP-1投与は、糖尿病患者において空腹時グルコースレベルをコントロールし、インスリン分泌についてのグルコース閾値を維持する。GLP-1は、インスリン分泌を生理学的様式で増強し得る一方、スルホニルウレア薬物に伴う低血糖を回避し得る治療剤としての多大な潜在性を示している。グルコース恒常性に対するGLP-1の他の重要な効果は、グルカゴン分泌の抑制及び胃運動の阻害である。グルカゴンの膵アルファ細胞分泌に対するGLP-1阻害作用は、糖新生及びグリコーゲン分解の低減を介して肝臓グルコース産生の減少をもたらす。GLP-1のこの抗グルカゴン効果は、糖尿病患者において保存される。胃運動及び胃液分泌が阻害されるGLP-1のいわゆる理想的なブレーキ効果は、遠心性迷走神経受容体を介して、又は腸平滑筋に対する直接的作用により影響を受ける。GLP-1による胃酸分泌の低減は、栄養素利用性における遅滞期に寄与し、したがって急速なインスリン応答の必要性を除去する。まとめると、GLP-1の胃腸効果は、グルコース及び脂肪酸吸収の遅延に大きく寄与し、インスリン分泌及びグルコース恒常性をモジュレートする。GLP-1は、ベータ細胞特異的遺伝子、例えば、GLUT-1トランスポーター、インスリン(PDX-1とインスリン遺伝子プロモーターとの相互作用を介する)、及びヘキソキナーゼ-1を誘導することも示されている。したがって、GLP-1は、齧歯類実験により実証される通り、加齢に通常伴う耐糖能異常を潜在的に好転させ得た。さらに、GLP-1は、ベータ細胞不全の状態の間のベータ細胞機能の回復に加え、ベータ細胞新生に寄与し、ベータ細胞量を増加させ得る。GLP-1の中心的効果としては、視床下部GLP-1受容体の作用を介して生じる食物摂取の減少と結びつく満腹感の増加が挙げられる。これらの食欲抑制効果は、GLP-1Rノックアウトマウスにおいて不存在であった。さらに、GLP-1受容体シグナリングは、エネルギー消費の調節及び褐色脂肪組織の熱発生に関与するとされている(Beiroa D,et al.Diabetes 63:3346-3358,2014)。
【0012】
代謝疾患及び障害に関与するペプチドホルモンの別のファミリーは、アミリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、アドレノメデュリン、及びインテルメジン(「AFP-6」としても公知)を含むペプチドホルモンのアミリンファミリーである。アミリンは、37アミノ酸ペプチドホルモンである。これは、ヒト2型糖尿病患者の膵島中のアミロイド沈着物の主な構成成分として単離され、精製され、化学的に特徴付けされた(Cooper et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84:8628-8632(1987))。アミリン分子は、2つの翻訳後修飾を有する:C末端はアミド化され、2及び7位のシステインは架橋してN末端ループを形成する。ヒトアミリン遺伝子のオープンリーディングフレームの配列は、LysについてのN末端コドン前のLys-Arg二塩基性アミノ酸タンパク質分解開裂シグナル、及びCLAIMS末端位置、タンパク質アミド化酵素PAMによるアミド化のための典型的な配列におけるLys-Argタンパク質分解シグナル前のGlyの存在を示す(Cooper et al.,Biochem.Biophys.Acta,1014:247-258(1989))。
【0013】
アミリンは、胃内容排出を調節し、グルカゴン分泌及び食物摂取を抑制し、したがって循環中のグルコース出現率を調節すると考えられる。これはインスリンの作用を補うと考えられ、循環からのグルコース消失率及び末梢組織によるその取り込みを調節する。これらの作用は齧歯類及びヒトにおける実験的知見により支持され、このことは全てがグルコース出現率に影響を与える少なくとも3つの独立機序によりアミリンが食後グルコースコントロールにおけるインスリンの効果を補うことを示す。第1に、アミリンは、食後グルカゴン分泌を抑制する。健常成人と比較して、1型糖尿病を有する患者は、循環アミリンを有さず、2型糖尿病を有する患者は、低下した食後アミリン濃度を有する。さらに、循環アミリンに結合するアミリン特異的モノクローナル抗体の注入も、対照に対して大幅に上昇したグルカゴン濃度をもたらした。これらの結果の両方は、食後グルカゴン分泌の調節における内因性アミリンの生理学的役割を指摘する。第2に、アミリンは、胃腸運動及び胃内容排出を緩徐化させる。最後に、ラットアミリンの視床下部内注射は、ラットの摂食を低減させ、視床下部における神経伝達物質代謝を変更することが示された。ある研究において、食物摂取は、ラットアミリン及びラットCGRPの視床下部内注射後8時間まで有意に低減した。ヒト試験において、アミリン類似体プラムリンチドは、体重又は体重増加を低減させることが示されている。アミリンは、代謝病態、例えば、糖尿病及び肥満の処置において有益であり得る。アミリンは、疼痛、骨障害、胃炎を処置するため、脂質、特にトリグリセリドをモジュレートするため、又は体組成に影響を与えるため、例えば、脂肪の優先的喪失及び除脂肪組織の温存、並びにアルコール関連行動の減衰のためにも使用され得る。
【0014】
カルシトニンは、誘発性高カルシウム血症に応答するその分泌及びその急速なカルシウム低下効果にちなんで命名された。これは、以降C細胞と称されている甲状腺中の神経内分泌細胞中で産生され、それから分泌される。カルシトニンの最も研究された作用は、破骨細胞に対するその効果である。カルシトニンのインビトロ効果としては、波状縁の急速な喪失及びリソソーム酵素の放出の減少が挙げられる。最終的に、カルシトニンによる破骨細胞機能の阻害は、骨吸収の減少をもたらす。しかしながら、甲状腺摘出の症例における血清カルシトニンの慢性的低減も、甲状腺髄様癌に見出される増加した血清カルシトニンも、血清カルシウム又は骨量の変化と関連しないと考えられる。したがって、カルシトニンの主な機能は、救急状態における急性高カルシウム血症に有効であること、及び/又は「カルシウムストレス」、例えば、成長、妊娠、及び授乳の期間中に骨格を保護することである可能性が最も高い。カルシトニンは、血漿カルシウムレベルに対する効果を有し、破骨細胞機能を阻害し、骨粗鬆症の処置に広く使用される。治療上、サケカルシトニンは、最小の有害効果で骨密度を増加させ、骨折率を減少させることが考えられる。カルシトニンは、過去25年間にわたり、骨格の1つ以上の領域中の骨の肥大又は変形をもたらし得る慢性骨格障害である骨パジェット病のための治療法としても良好に使用されてきた。カルシトニンは、骨粗鬆症時に認められる骨痛に対するその鎮痛効果のためにも広く使用されるが、この効果についての機序は明確に理解されていない。サケカルシトニンは、骨代謝に関連する効果を超える効果を有する。ヒト研究において、サケカルシトニンは、食後に胃内容排出及びガストリン放出を阻害する一方、食後及び空腹状態の両方において胆嚢の用量依存性弛緩を誘発する。マウス及びサルにおいて、サケカルシトニンは、食欲抑制的に作用し、単一投与後に体重減少を引き起こす。慢性研究において、サケカルシトニンの経口調製物は、肥満及び糖尿病のラットモデルにおいても食物摂取及び体重を低減させる。
【0015】
代謝疾患及び障害は、肥満、糖尿病、脂質異常症、インスリン抵抗性、脂肪肝、脂肪性肝炎、細胞アポトーシスなどを含む多くの形態をとる。肥満及びその関連障害は、米国及び世界中で一般的な極めて深刻な公衆衛生問題である。上半身肥満は、2型真性糖尿病についての公知の最も強力なリスク因子であり、心血管疾患についての強力なリスク因子である。肥満は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、鬱血性心不全、脳卒中、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、前立腺癌、及び結腸癌、並びに全身麻酔の合併症の発生率の増加についての認識されるリスク因子である(例えば、Kopelman,Nature 404:635-43(2000)参照)。肥満は、寿命を減らし、上記の共存症、同様に障害、例えば、感染症、静脈瘤、黒色表皮症、湿疹、運動不耐性、インスリン抵抗性、高血圧高コレステロール血症、胆石症、整形外科的損傷、及び血栓塞栓性疾患の深刻なリスクを抱える(Rissanen et al.,Br.Med.J.301:835-7(1990))。肥満は、あるタイプの癌について、及びインスリン抵抗性症候群、又は「シンドロームX」と呼ばれる病態の群についてのリスク因子でもある。肥満及び関連障害の医療費についての近年の推定は、世界中で2兆ドルである。肥満の病因は多因子性であると考えられるが、根本的な問題は、肥満対象において過剰な脂肪組織が存在するまで栄養素利用性及びエネルギー消費が均衡状態に至らないことである。肥満は現在、治療が困難で、慢性で本質的に難治性の代謝障害である。肥満者の体重低減において有用な治療薬は、その者らの健康に対して著しい有益な効果を有し得る。
【0016】
糖尿病は、インスリンの不十分な産生又は利用から生じる、高血糖及び糖尿により特徴付けられる炭水化物代謝の障害である。糖尿病は、先進国における人口の大部分の生活の質に深刻な影響を与える。インスリンの不十分な産生は1型糖尿病として特徴付けられ、インスリンの不十分な利用は2型糖尿病として特徴付けられる。しかしながら、目下、患者が顕性糖尿病を有すると診断されるよりもかなり前に発病する多くの区別される糖尿病関連疾患が存在することが広く認識される。また、糖尿病におけるグルコース代謝の最適以下のコントロールからの効果は、広範な関連脂質及び心血管障害を生じさせる。
【0017】
脂質異常症、又は血漿中のリポタンパク質の異常レベルは、糖尿病患者の間で頻繁に生じる。脂質異常症は、典型的には、血中の上昇した血漿トリグリセリド、低いHDL(高密度リポタンパク質)コレステロール、正常~上昇レベルのLDL(低密度リポタンパク質)コレステロール及び増加レベルのスモールデンスLDL(低密度リポタンパク質)粒子により特徴付けられる。脂質異常症は、糖尿病対象の間の冠動脈イベント及び死亡の発生率増加への主な寄与因子の1つである。疫学的研究は、非糖尿病対象と比較して糖尿病対象の間の冠動脈死の数倍の増加を示すことによりこれを裏付けている。いくつかのリポタンパク質異常が糖尿病対象の間で記載されている。
【0018】
インスリン抵抗性は、インスリンが広範な濃度にわたりその生物学的作用を発揮する能力の低下である。インスリン抵抗性において、身体は異常に多量のインスリンを分泌してこの欠損を相殺し、耐糖能異常の状態が発症する。インスリン作用の欠損を相殺し得なくなると、血漿グルコース濃度は不可避的に上昇し、糖尿病の臨床的状態をもたらす。インスリン抵抗性及び相対的高インスリン血症は、肥満、高血圧、アテローム性動脈硬化症及び2型糖尿病において寄与的役割を有することが認識される。インスリン抵抗性と肥満、高血圧及び狭心症との関連は、共通の病因の結びつきとしてインスリン抵抗性を有する症候群、シンドロームXとして記載されている。
【0019】
糖尿病に伴う複数の異常を処置する試行は、異なる患者におけるそれらの異常に対処するためにいくつかの抗糖尿病医薬品の投与を促している。抗糖尿病医薬品の例は、タンパク質、例えば、インスリン及びインスリン類似体、GLP-1類似体、並びに小分子、例えば、インスリン増感剤、インスリン分泌促進物質、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤、ナトリウムグルコースコトランスポーター-2(SGLT-2)阻害剤、DPP-IV阻害剤、並びに食欲調節化合物である。
【0020】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は総称であり、肝臓中の脂肪の単純な沈着から、肝炎、線維症、肝硬変、及び一部の症例において肝細胞癌に伴うより進行性の脂肪症を包含する。NAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から構成される。NAFLは、柔組織の5%超に及ぶ肝臓の脂肪症により特徴付けられ、肝細胞損傷の証拠はない[2]。一方、NASHは、組織学的用語により定義され、それは脂肪症のバックグラウンドで肝細胞が損傷に至る壊死炎症プロセスである。NAFLDの自然経過の特徴付けは依然として不完全である。研究は、NAFLDの発生率がメタボリックシンドロームの割合の上昇に協調して増加することを示す。2型糖尿病を有する患者は、NASHを発症する極めて高いリスク及び脂肪肝関連合併症のリスクの2~4倍の増加を呈する。現在、NASHのための承認された処置は存在しない。
【0021】
上記代謝疾患、病態、及び障害において有用な治療薬を開発することが依然として必要とされている。したがって、本発明は、新規マルチアゴニストペプチド並びにその産生及び使用方法を提供する。本発明のペプチドは、上記の及び本明細書に記載される代謝疾患、病態、及び障害において使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の概要
本発明は、とりわけ、新規マルチアゴニストペプチド並びに肥満及び代謝及び肝臓障害を含む関連障害を処置及び予防する方法を提供する。
【0023】
本発明は、一般に、例えば、食物摂取、体重減少、エネルギー代謝、血漿グルコースレベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化により軽減され得る代謝疾患及び障害、肥満、糖尿病及び糖尿病関連病態、肝臓脂肪関連炎症及び損傷の処置及び予防のための薬剤として有用な新規ペプチドに関する。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、摂食障害及び肥満の希少遺伝障害、例えば、プラダーウィリ症候群、クリティカルケア、インスリン抵抗性及びその障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、1型、2型、及び妊娠性糖尿病を含む任意の種類の真性糖尿病、アルコール依存、並びにCNS障害、例えば、神経変性の予防、鬱病、アルコール添加、アルツハイマー病及びパーキンソン病、並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。
【0024】
本発明は、例えば、限定されるものではないが、アミリン、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、及びカルシトニンを含む生物活性構成成分を含む少なくとも2つのペプチドから独立して選択される2つ以上の構成成分ペプチドを含む、本明細書に定義される「本発明のペプチド」を含む。
【0025】
本発明は、少なくとも1つのホルモン活性を示すペプチドを包含する。本発明のペプチドは、任意選択でリンカー基を介して一緒に共有結合している少なくとも2つの生物活性ペプチドを含み、生物活性ペプチドの少なくとも1つは、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す。生物活性ペプチドは、構成成分ペプチド(例えば、GIP、アミリン、GLP-1)、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す構成成分ペプチドの断片、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す構成成分ペプチドの類似体及び誘導体、並びに構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す構成成分ペプチドの類似体及び誘導体の断片から独立して選択される。
【0026】
一実施形態において、ペプチドは、少なくとも1つのホルモン活性を示し、ペプチドは、少なくとも1つの追加のペプチドに共有結合している第1のペプチドを少なくとも含有し;ペプチドは、構成成分ペプチド(例えば、GIP、アミリン、GLP-1);構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す構成成分ペプチドの断片;構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す構成成分ペプチドの類似体及び誘導体;並びに構成成分ペプチドホルモンの少なくとも1つのホルモン活性を示す構成成分ペプチドの類似体及び誘導体の断片からなる群から独立して選択される。
【0027】
本発明は、本発明のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物であって、式(I):
X1-X2-E-G-T-F-X3-S-D-Y-S-I-X4-X5-D-K-I-X6-Q-X7-X8-F-V-X9-W-L-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-C-N-T-A-T-C-X17-X18-X19-X20-L-X21-X22-X23-L-X24-X25-X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33X34-P-X35-T-N-X36-G-X37-N-T-Y-(NR1R2)
(I)
(式中、
X1は、Tyr又は(d)Tyrであり;
X2は、Ala、(d)Ala、又はAibであり;
X3は、Ile又はThrであり;
X4は、Ala、Aib、又はGlnであり;
X5は、Met、Leu、又はValであり;
X6は、Ala又はHisであり;
X7は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X8は、Ala又はAspであり;
X9は、Asn又はGlnであり;
X10は、Leu、Val、又はIleであり;
X11は、Ala又はValであり;
X12は、Gly又はGlnであり;
X13は、Gly、Lys、Arg、Ser、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X14は、Pro、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X15は、Ser、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X16は、不存在であるか又はGly若しくはSerであり;
X17は、Ala、Met又はValであり;
X18は、Thr又はLeuであり;
X19は、Gln又はGlyであり;
X20は、Arg、Lys、Gln、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X21は、Ala又はSerであり;
X22は、Asn又はGlnであり;
X23は、Phe又はGluであり;
X24は、His又はValであり;
X25は、His又はArgであり;
X26は、Ser又はLeuであり;
X27は、Ser又はGlnであり;
X28は、Asn又はThrであり;
X29は、不存在であるか又はAsn若しくはGlnであり;
X30は、不存在であるか又はPheであり;
X31は、不存在であるか又はGlyであり;
X32は、不存在であるか又はProであり;
X33は、不存在であるか又はIle、Lys、若しくはLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X34は、Leu又はTyrであり;
X35は、Pro、Lys、Arg、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X36は、Val又はThrであり;
X37は、Ser、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
R1及びR2は、各々独立してH又はC1~5アルキルであり、
R3は、-CO2H、-CO2CH3、-CO2NH2、-CO2NHCH3、-CO2N(CH3)2、-CH3、又は-NH2であり、
nは、12~20の整数である)
のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる本発明のペプチドを包含する。
【0028】
他の実施形態において、本発明のペプチドのペプチド構成成分は、カルシトニン(CT)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、インテルメジン、オキシントモジュリン(OXM)、及びエキセンジン-4も含み得る。
【0029】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、所望の化学安定性、立体構造安定性、代謝安定性、バイオアベイラビリティ、器官/組織ターゲティング、受容体相互作用、プロテアーゼ阻害、血漿タンパク質結合、又は他の薬物動態特徴をペプチドに付与する構成成分ペプチドの構造モチーフ、及び所望の化学安定性、立体構造安定性、代謝安定性、バイオアベイラビリティ、器官/組織ターゲティング、受容体相互作用、プロテアーゼ阻害、血漿タンパク質結合、又は他の薬物動態特徴を本発明のペプチドに付与する構成成分ペプチドの類似体又は誘導体の構造モチーフを含む。いっそうさらなる実施形態において、ペプチドの少なくとも1つは、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す。
【0030】
さらなる実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、GIP、少なくとも1つのホルモン活性を示すGIPの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すGIPの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すGIPの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0031】
さらなる実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、GLP-1、少なくとも1つのホルモン活性を示すGLP-1の断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すGLP-1の類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すGLP-1の類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0032】
さらなる実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、アミリン、少なくとも1つのホルモン活性を示すアミリンの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すアミリンの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すアミリンの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0033】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、カルシトニン、少なくとも1つのホルモン活性を示すカルシトニンの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すカルシトニンの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すカルシトニンの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0034】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、少なくとも1つのホルモン活性を示すカルシトニン遺伝子関連ペプチドの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すカルシトニン遺伝子関連ペプチドの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すカルシトニン遺伝子関連ペプチドの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0035】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、インテルメジン、少なくとも1つのホルモン活性を示すインテルメジンの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すインテルメジンの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すインテルメジンの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0036】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、コレシストキニン、少なくとも1つのホルモン活性を示すコレシストキニンの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すコレシストキニンの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すコレシストキニンの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0037】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、グルカゴン様ペプチド2、少なくとも1つのホルモン活性を示すグルカゴン様ペプチド2の断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すグルカゴン様ペプチド2の類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すグルカゴン様ペプチド2の類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0038】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、オキシントモジュリン、少なくとも1つのホルモン活性を示すオキシントモジュリンの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すオキシントモジュリンの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すオキシントモジュリンの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0039】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、ナトリウム利尿ペプチド、少なくとも1つのホルモン活性を示すナトリウム利尿ペプチドの断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すナトリウム利尿ペプチドの類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すナトリウム利尿ペプチドの類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0040】
さらなる代替的実施形態において、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す少なくとも1つの構成成分ペプチドは、エキセンジン-4、少なくとも1つのホルモン活性を示すエキセンジン-4の断片、少なくとも1つのホルモン活性を示すエキセンジン-4の類似体若しくは誘導体、又は少なくとも1つのホルモン活性を示すエキセンジン-4の類似体若しくは誘導体の断片、及び少なくとも1つの他のペプチドである。
【0041】
ある実施形態において、本発明のペプチドのGIP構成成分部分は、アミリン受容体リガンド;又はグルカゴン様ペプチド1受容体リガンドと組み合わせられる。
【0042】
他の実施形態において、本発明のペプチドのGIP部分は、EGF受容体リガンド;カルシトニン受容体リガンド;CGRP受容体リガンド、ガストリン/CCK受容体リガンド;ケラチノサイト成長因子(KGF)受容体1リガンド;ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤;REGタンパク質受容体リガンド;成長ホルモン受容体リガンド;プロラクチン(PRL)受容体リガンド;インスリン様成長因子(IGF)受容体リガンド;PTH関連タンパク質(PTHrP)受容体リガンド;肝細胞成長因子(HGF)受容体リガンド;オキシトシン受容体リガンド、線維芽細胞成長因子19(FGF19)受容体リガンド;フィボブラスト(fiboblast)成長因子21(FGF21)受容体リガンド;骨形成タンパク質(BMP)受容体リガンド、トランスフォーミング成長因子(TGF受容体リガンド;ラミニン受容体リガンド;血管作動性腸管ペプチド(VIP)受容体リガンド;線維芽細胞成長因子(FGF)受容体リガンド;神経成長因子(NGF)受容体リガンド;膵島新生関連タンパク質(INGAP)受容体リガンド;アクチビン-A受容体リガンド;血管内皮成長因子(VEGF)受容体リガンド;エリスロポエチン(EPO)受容体リガンド;下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)受容体リガンド;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体リガンド;顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);血小板由来成長因子(PDGF)受容体リガンド、カンナビノイドCB1受容体アンタゴニスト、及びセクレチン受容体リガンドと組み合わせられる。
【0043】
別の実施形態において、本発明のペプチドに含まれるGIPペプチド構成成分としては、グルコース降下活性(例えば、抗糖尿病薬、アミリン)又は胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる能力を有するC末端ペプチド又はその断片との組み合わせのN末端GIP又は新規GIP類似体断片が挙げられる。本発明のこのようなGIPペプチドとしては、アミリン、ガストリン、PYY、セクレチン、CCK、GRP、ニューロメジン、ウロコルチン、C末端、カルシトニン若しくはサケカルシトニン、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP、ウロジラチン)又はそれらの類似体(例えば、アミリン-sCT-アミリンキメラ)、誘導体若しくは断片との組み合わせのN末端GIP断片又は新規GIP類似体若しくは誘導体断片が挙げられる。
【0044】
他の実施形態において、本発明のペプチド内に含まれるGIPペプチド構成成分としては、グルコース降下活性(例えば、抗糖尿病薬、アミリン)又は胃内容排出を阻害するか又は低減させる能力を有するそのN末端ポリペプチド又は断片との組み合わせのC末端GIP又は新規GIP類似体断片が挙げられる。このような実施形態において、キメラペプチドとしては、N末端エキセンジン、GLP-1、アミリン、CCK、ガストリン、PYY、セクレチン、GRP、ニューロメジン、ウロコルチン、カルシトニン、若しくはサケカルシトニン、ナトリウム利尿ペプチド又はそれらの類似体、誘導体若しくは断片との組み合わせのC末端GIP、新規GIP類似体、又はそれらの断片が挙げられ得る。
【0045】
一実施形態において、本発明のペプチドは、GIP部分に対する異種C末端テール又は末端伸長部を含む。本発明のペプチドの一実施形態において、本明細書に記載される他のGIPペプチドを用いると、GIP部分は、天然GIP、その活性断片、又はそれらの類似体若しくは誘導体であり得る。別の態様において、本発明のペプチドのGIP構成成分は、1つ以上の向上した特性、例えば、タンパク質分解消化に対する増加した耐性(したがって、半減期の延長)、腎クリアランスを低減させる脂肪酸アシル誘導体化を提供する少なくとも1つの修飾、置換、欠失又は付加を含む。一実施形態において、テールは、Trp-ケージモチーフ配列を含む。別の実施形態において、GIP類似体ペプチド部分は、天然でないアミノ酸、例えば、Dアミノ酸、例えば、DPP-IVによるタンパク質分解を阻害するか又はその速度を低減させるものを含む。
【0046】
本発明はまた、代謝及び肝臓疾患及び障害、特に食物摂取、体重減少、エネルギー代謝、血漿グルコースレベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化により軽減され得るもの、肥満、糖尿病及び糖尿病関連病態、肝臓脂肪関連炎症及び損傷の処置及び予防のための本発明のペプチドの使用を包含する。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、摂食障害及び肥満の希少遺伝障害、例えば、プラダーウィリ症候群、クリティカルケア、インスリン抵抗性及びその障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、1型、2型、及び妊娠性糖尿病を含む任意の種類の真性糖尿病、並びにCNS障害、例えば、神経変性の予防、アルツハイマー病及びパーキンソン病、並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、並びに糖尿病からの合併症(例えば、神経障害(例えば、エキセンジンファミリー構成成分を含有するGIPペプチドを含む本発明のペプチドで処置)、神経障害痛(例えば、アミリンファミリーホルモンモジュールを含むGIPペプチドを含む本発明のペプチドで処置)、網膜症、腎症、不十分な膵ベータ細胞量の病態(例えば、エキセンジン-4及びGLP-1の膵島新生作用に基づく)が挙げられる。
【0047】
したがって、このような病態を処置又は予防する方法であって、治療又は予防有効量の本発明のペプチドを投与することを含む方法が提供される。ある実施形態において、本発明のペプチドは、それが必要とされる対象へのGIP又は本発明の新規GIP類似体を含むその類似体若しくは誘導体、又は1つ以上の追加のペプチド若しくはペプチド断片を含む本発明のGIPペプチドを含む。
【0048】
一実施形態において、本発明のペプチドは、単剤療法として提供され得る。肥満、糖尿病又は体重の増加若しくはグルコースレベルの上昇に伴う病態を処置するための別の実施形態において、本発明のペプチドは、食物摂取低減若しくはグルコース降下剤(例えば、抗糖尿病薬)又は胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる薬剤若しくは方法を用いる補助療法で投与され得る。このような薬剤の例は、本明細書に提示される。例えば、一実施形態において、対象、例えば、肥満、1型、2型又は妊娠性真性糖尿病を有する対象の体重又は血中グルコースレベルを低減させる補助治療方法であって、対象に治療有効量の本発明のペプチドであって、例えば、前記アゴニストは、GIP若しくは本発明の新規GIP類似体を用いる補助療法を含むペプチドである本発明のペプチド、又は有効量のGIP-GLP-1-アミリンを投与することを含む方法が提供される。
【0049】
本発明のペプチドは、単独で、又はグルコース降下剤(例えば、抗糖尿病薬)若しくは胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる薬剤若しくは方法との組み合わせで、膵島又は細胞におけるグルコース応答性の増強、誘導、向上又は回復にも有用であり得る。これらの作用は、代謝障害に伴う病態、例えば、上記のものを処置又は予防するためにも使用され得る。
【0050】
別の実施形態において、肥満を処置又は予防する方法であって、治療又は予防有効量の本発明のペプチドを、それが必要とされる対象に投与することを含む方法が提供される。ある実施形態において、本発明のペプチドは、GIP又は本発明の新規GIP類似体、若しくは本発明のGIP-ハイブリッド、例えば、GIP-GLP-1-アミリンハイブリッドを含むその類似体若しくは誘導体を含む。
【0051】
別の実施形態において、対象は、肥満又は過体重対象である。「肥満」は一般に体格指数が30超として定義される一方、本開示の目的では、30未満の体格指数を有し、体重の低減を必要とするか又は望む者を含む任意の対象が「肥満」の範囲に含まれる。インスリン抵抗性、耐糖能異常であるか又は任意の形態の真性糖尿病(例えば、1、2型又は妊娠性糖尿病)を有する対象は、この方法から利益を受け得る。本発明のペプチドは、脳卒中、癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、及び結腸癌)、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、低受精率、及び変形性関節症を含む、肥満に伴う他の病態の処置又は予防においても有用であり得る(Lyznicki et al,Am.Fam.Phys.63:2185,2001参照)。病態がグルコースの上昇又は高血糖に伴う場合、方法は、治療又は予防有効量の本発明のペプチドを単独で、又はグルコース降下剤(例えば、抗糖尿病薬)若しくは胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる薬剤若しくは方法との組み合わせで投与することを含む。
【0052】
さらに別の態様において、本発明のペプチド、特に本発明のGIPハイブリッドは、食物摂取を低減させ、食欲を低減させ、満腹感を誘導し、栄養素利用性を低減させ、カロリー効率を低減させ、体重減少を引き起こし、体組成に影響を与え、全身エネルギー含量又はエネルギー消費を変更し、脂質プロファイルを改善する(LDLコレステロール及びトリグリセリドレベルの低減及び/又はHDLコレステロールレベルの変化を含む)方法であって、対象に有効量の本発明のペプチド、例えば、本発明のペプチドのGIPハイブリッドを投与することを含む方法においても使用され得る。一実施形態において、栄養素利用性を低減させることにより軽減され得る病態又は障害の処置又は予防が必要とされる対象において栄養素利用性を低減させることにより軽減され得る病態又は障害を処置又は予防するため、前記対象に治療又は予防有効量の本発明のペプチドを投与することを含む本発明の方法が使用される。
【0053】
病態及び障害としては、限定されるものではないが、食物摂取、体重減少、エネルギー代謝、血漿グルコースレベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化により軽減され得る代謝疾患及び障害、肥満、糖尿病及び糖尿病関連病態、肝臓脂肪関連炎症及び損傷が挙げられる。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、摂食障害及び肥満の希少遺伝障害、例えば、プラダーウィリ症候群、クリティカルケア、インスリン抵抗性及びその障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、1型、2型、及び妊娠性糖尿病を含む任意の種類の真性糖尿病、並びにCNS障害、例えば、神経変性の予防、アルツハイマー病及びパーキンソン病、並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病合併症(神経障害(例えば、エキセンジン-4の神経栄養作用に基づく)、神経障害痛(例えば、アミリン作用に基づく)、網膜症、腎症、不十分な膵ベータ細胞量の病態(例えば、エキセンジン-4及びGLP-1の膵島新生作用に基づく)が挙げられる。病態がグルコースの上昇又は高血糖に伴う場合、方法は、治療又は予防有効量の本発明のペプチドを単独で、又はグルコース降下剤(例えば、抗糖尿病薬)若しくは胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる薬剤若しくは方法との組み合わせで投与することを含む。
【0054】
食物摂取の低減、体重減少、及び/又は肥満の処置の結果としての高血圧の改善が必要とされる対象における高血圧の改善に加え、本発明のペプチドは、高血圧及びそれに伴う病態を処置又は予防するために使用され得る。
【0055】
本発明のペプチド、例えば、GIP構成成分は、ペプチド、例えば、異種C末端テールを任意選択でさらに含む半減期延長GIPハイブリッド(例えば、DPP-IV開裂耐性、例えば、D-Tyr1、D-Ala2、N-アセチル又はN-ピログルタミル類似体)を含む。本発明のペプチドは、有益な心血管効果を提供することが公知の他のホルモンモジュールを含み、心血管疾患及び関連病態を処置するために有用である。本明細書に開示される通り、本発明のペプチドは、心筋収縮能(dp/dt)を増加させ、血圧を減少させ(例えば、急性血管拡張により)、収縮期血圧を減少させ、拡張期血圧を減少させ、心臓細胞に対する直接的な有益作用を提供し得る。本発明のペプチドはまた、代謝作用、例えば、体重低減 グルコース降下、インスリン分泌、ベータ細胞増殖を介して心機能を改善する。しかしながら、心血管系に対する直接的な効果も提供することにより、本発明のペプチドは、驚くべきことに、いっそうより有益である。
【0056】
本発明のペプチドは、過剰の胃液分泌、過剰の腸電解質及び水分分泌並びに吸収の減少に伴うあらゆる胃腸障害、例えば、感染性(例えば、ウイルス性又は細菌性)下痢、炎症性下痢、短腸症候群、又は典型的には外科手術、例えば、イレオストミー後に生じる下痢の処置又は予防においても有用である(例えば、Harrison’s principles of Internal Medicine,McGraw Hill Inc.,New York,12th ed.参照)。感染性下痢の例としては、限定されるものではないが、急性ウイルス性下痢、急性細菌性下痢(例えば、サルモネラ、カンピロバクター、及びクロストリジウム)若しくは原虫感染に起因する下痢、又は旅行者下痢(例えば、ノーウォークウイルス又はロタウイルス)が挙げられる。炎症性下痢の例としては、限定されるものではないが、吸収不良症候群、熱帯性スプー(tropical spue)、慢性膵炎、クローン病、下痢、及び過敏性腸症候群が挙げられる。GIP及び本発明のGIP化合物は、例えば、術後の胃腸障害又はコレラに起因する胃腸障害が関与する、緊急又は生命を脅かす状況を処置又は予防するために使用され得る。さらに、化合物は、特に悪液質の間の後天性免疫不全症候群(AIDS)を有する患者における腸機能不全を処置するために使用され得る。
【0057】
本発明のペプチドは、小腸液及び電解質分泌の阻害、並びに栄養素輸送の増強、並びに胃腸管中の細胞増殖の増加、例えば、脂肪組織中の脂肪分解の調節及び哺乳類における血流の調節にも有用である。本発明のペプチドは、その胃腸保護活性(例えば、胃液分泌の阻害)により上記病態の処置又は予防に有用である。したがって、本発明のペプチドは、胃腸又は粘膜損傷を処置するために使用され得る。損傷の例示的なタイプとしては、限定されるものではないが、炎症性腸疾患、腸萎縮、腸粘膜又は腸粘膜機能の損失により特徴付けられる病態、及び細胞傷害剤、放射線、毒性、感染及び/又は損傷への曝露により生じ得る病態を含む胃腸管の他の病態が挙げられる。さらに、本発明のペプチドは、麻酔薬、抗炎症剤、成長ホルモン、ヘパリン、又は炎症性腸疾患若しくは上に列記される他の病態を処置するために使用され得る任意の他の治療法と組み合わせられ得る。
【0058】
別の実施形態において、本発明のペプチドは、胃炎、膵炎、バレット食道、胃食道逆流症(GERD)及びそれらに伴う病態の処置又は予防に有用である。このような病態としては、限定されるものではないが、胸焼け、口又は肺中への胃/腸内容物の逆流を伴う胸焼け、嚥下困難、咳嗽、間欠型喘鳴及び声帯炎症(GERDに伴う病態)、食道糜爛、食道潰瘍、食道狭窄、バレット化生(正常食道上皮の異常上皮での置換)、並びに誤嚥が挙げられ得る。ある実施形態において、本発明のペプチドは、抗分泌特性、例えば、胃酸の阻害、胆汁酸の阻害、及び膵酵素の阻害を有し得る。さらに、本発明のペプチドはまた、胃保護効果を有し得る。したがって、本発明のペプチドは、胃炎、膵炎、バレット食道、及び/又はGERD並びに関連又は随伴病態の処置又は予防において特に有用であり得る。
【0059】
本発明はまた、治療又は予防有効量の少なくとも1つの本発明のペプチド、又はその薬学的に許容可能な塩を、本発明のペプチドの送達において有用な薬学的に許容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、補助剤及び/又は担体と一緒に含む医薬組成物に関する。
【0060】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下の実施形態及び詳細な説明を参照してより明確に理解される。
【0061】
本発明は、本発明のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物を包含し、ある実施形態において、本発明のペプチドは、式(I):
X1-X2-E-G-T-F-X3-S-D-Y-S-I-X4-X5-D-K-I-X6-Q-X7-X8-F-V-X9-W-L-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-C-N-T-A-T-C-X17-X18-X19-X20-L-X21-X22-X23-L-X24-X25-X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33X34-P-X35-T-N-X36-G-X37-N-T-Y-(NR1R2)
(I)
(式中、
X1は、Tyr又は(d)Tyrであり;
X2は、Ala、(d)Ala、又はAibであり;
X3は、Ile又はThrであり;
X4は、Ala、Aib、又はGlnであり;
X5は、Met、Leu、又はValであり;
X6は、Ala又はHisであり;
X7は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X8は、Ala又はAspであり;
X9は、Asn又はGlnであり;
X10は、Leu又はIleであり;
X11は、Ala又はValであり;
X12は、Gly又はGlnであり;
X13は、Gly、Lys、Arg、Ser、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X14は、Pro、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X15は、Ser、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X16は、不存在であるか又はGly若しくはSerであり;
X17は、Ala、Met又はValであり;
X18は、Thr又はLeuであり;
X19は、Gln又はGlyであり;
X20は、Arg、Lys、又はGlnであり;
X21は、Ala又はSerであり;
X22は、Asn又はGlnであり;
X23は、Phe又はGluであり;
X24は、His又はValであり;
X25は、His又はArgであり;
X26は、Ser又はLeuであり;
X27は、Ser又はGlnであり;
X28は、Asn又はThrであり;
X29は、不存在であるか又はAsn若しくはGlnであり;
X30は、不存在であるか又はPheであり;
X31は、不存在であるか又はGlyであり;
X32は、不存在であるか又はProであり;
X33は、不存在であるか又はIle、Lys、若しくはLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X34は、Leu又はTyrであり;
X35は、Pro、Lys Arg、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X36は、Val又はThrであり;
X37は、Ser、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり、
R1及びR2は、各々独立してH又はC1~5アルキルであり、
R3は、-CO2H、-CO2CH3、-CO2NH2、-CO2NHCH3、-CO2N(CH3)2、-CH3、又は-NH2であり、
nは、12~20の整数である)
のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。
【0062】
特定の実施形態において、本明細書に記載される本発明のペプチドのいずれかは、ペプチドにコンジュゲートしている1つ以上の半減期延長部分及び/又は1つ以上のリンカー部分を含む。特定の実施形態において、半減期延長部分は、1つ以上のリンカー部分を介して本発明のペプチドのペプチド構成成分にコンジュゲートしている。
【0063】
ある実施形態において、本明細書に記載される本発明のペプチドのいずれかは、コンジュゲート化学置換基をさらに含む。特定の実施形態において、コンジュゲート化学置換基は、親油性置換基又はポリマー部分、例えば、Ac、Palm、ガンマ-Glu-Palm、イソGlu-Palm、PEG2-Ac、PEG4-イソGlu-Palm、(PEG)5-Palm、コハク酸、グルタル酸、ピログルタル酸、安息香酸、IVA、オクタン酸、1,4ジアミノブタン、イソブチル、Alexa488、Alexa647、又はビオチンである。ある実施形態において、コンジュゲート化学置換基は、400Da~40,000Daの分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0064】
関連態様において、本発明は、1つ以上のリンカー部分を介して連結されている少なくとも2つのペプチド構成成分を含む本発明のペプチドであって、各ペプチドサブユニットは、式(I)~(V)の配列又は本明細書に記載される任意の他の配列若しくは構造を含む本発明のペプチドを含む。ある実施形態において、リンカーは、本明細書に記載されるもののいずれかである。ある実施形態において、リンカー部分は、部分は、ジエチレングリコールリンカー、イミノ二酢酸(IDA)リンカー、β-Ala-イミノ二酢酸(β-Ala-IDA)リンカー、又はPEGリンカーである。ある実施形態において、PEGリンカーは、400Da~40,000Daの分子量を有するポリエチレングリコールである。ある実施形態において、リンカーは、Fcタンパク質分子である。特定の実施形態において、各ペプチドモノマーサブユニットのN末端は、リンカー部分により連結されている。特定の実施形態において、各ペプチドモノマーサブユニットのC末端は、リンカー部分により連結されている。他の実施形態において、リンカーは、ペプチド構成成分の少なくとも1つの内部アミノ酸残基を別のペプチド構成成分のN末端、C末端、又は内部アミノ酸残基に連結する。
【0065】
さらなる関連実施形態において、本発明は、本発明のペプチド又は本発明のペプチドの1つ以上のペプチドサブユニットをコードする配列を含む。本発明はまた、ポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
【0066】
別の態様において、本発明は、本発明のペプチド、及び薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物を含む。特定の実施形態において、医薬組成物は、腸溶コーティングを含む。ある実施形態において、腸溶コーティングは、医薬組成物を保護し、対象の胃腸系内で放出する。
【0067】
ある実施形態において、医薬組成物は、対象に経口、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、髄腔内、吸入、気化、噴霧化、舌下、バッカル、非経口、直腸、眼内、吸入、膣又は局所の投与経路により提供される。ある実施形態において、医薬組成物は、肥満を処置するために対象に局所、非経口、静脈内、皮下、腹腔内、又は静脈内で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図面の簡単な説明
【
図1A】
図1Aは、例示的な本発明のペプチドの単一投与後の血中グルコースの低減を説明する。血中グルコースは30分後に測定した(
図1A)。
【
図1B】
図1Bは、例示的な本発明のペプチドの単一投与後の血中グルコースの低減を説明する。血中グルコースは120分後に測定した(
図1B)。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明の詳細な説明
定義
本明細書に特に定義されない限り、本出願において使用される科学及び技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するものとする。一般に、本明細書に記載される化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬理学、並びにタンパク質及び核酸化学に関連して使用される命名法、及びそれらの技術は、当該技術分野において周知であり、一般に使用されるものである。
【0070】
本明細書において使用される場合、以下の用語は、特に規定されない限り、それらに属する意味を有する。
【0071】
本明細書全体にわたり、「含む(comprise)」という語又は変形、例えば、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、記述される構成成分又は構成成分の群の包含を意味するが、任意の他の構成成分も構成成分の群も除外するものではないことを意味すると理解される。
【0072】
「a」、「an」、及び「the」という単数形は、特に文脈が明らかに指示しない限り、複数形を含む。
【0073】
「含む(including)」という用語は、「限定されるものではないが、を含む」を意味するために使用される。「含む」及び「限定されるものではないが、を含む」は、互換的に使用される。
【0074】
「ハイブリッド」という用語は、2つ以上のペプチドの組み合わせ又は部分を含むペプチド、例えば、GLP-1-GIP-アミリン;又はGIP-アミリンを意味するために使用される。
【0075】
「患者」、「対象」、及び「個体」という用語は、互換的に使用され、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを指し得る。これらの用語には、哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。
【0076】
本明細書において使用される「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により一緒に接続されている2つ以上のアミノ酸の配列を広く指す。この用語は、規定の長さのアミノ酸のポリマーを意味するものではなく、ポリペプチドが組換え技術、化学的若しくは酵素的合成を使用して産生されるか、又は天然存在かを意味することも区別することも意図しないことを理解されるべきである。ペプチドという用語には、環式ペプチドも含まれる。
【0077】
本明細書で使用される「配列同一性」、「同一性パーセント」、「相同性パーセント」、又は例えば「と50%同一の配列」を含む、という記述は、配列が比較ウィンドウにわたりヌクレオチド基準で、又はアミノ酸基準で同一である程度を指す。したがって、「配列同一性の割合」は、最適にアラインメントされた2つの配列を比較ウィンドウにわたり比較し、同一の核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys及びMet)が両方の配列中に生じる位置の数を決定して一致位置の数を得、一致位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、その結果に100を乗じて配列同一性の割合を得ることにより計算され得る。
【0078】
配列間の配列類似性又は配列同一性(これらの用語は本明細書において互換的に使用される)の計算は、以下の通り実施され得る。2つのアミノ酸配列、又は2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するため、最適な比較目的でこれらの配列をアラインメントすることができる(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列を無視することができる)。ある実施形態において、比較目的のためにアラインメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、いっそうより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列中のある位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占有される場合、その位置で分子は同一である。
【0079】
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入することが必要とされるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一位置の数の関数である。
【0080】
2つの配列間の配列の比較及び同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。一部の実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunsch(1970,J.Mol.Biol.48:444-453)のアルゴリズムを使用し、Blossum62行列又はPAM250行列のいずれか、並びに16、14、12、10、8、6、又は4のギャップ加重及び1、2、3、4、5、又は6の長さ加重を使用して決定される。さらに別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMP行列並びに40、50、60、70、又は80のギャップ重み及び1、2、3、4、5、又は6の長さ重みを使用して決定される。別の例示的なパラメータのセットとしては、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5を有するBlossum62スコア行列が挙げられる。2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers及びW.Miller(1989,Cabios,4:11-17)のアルゴリズムを使用し、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して決定することもできる。
【0081】
本明細書に記載されるペプチド配列は、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定するために公開データベースに対する検索を実行するための「クエリ配列」として使用され得る。このような検索は、Altschul,et al.,(1990,J.Mol.Biol,215:403-10)のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施され得る。NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いてBLASTヌクレオチド検索を実行して本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いてBLASTタンパク質検索を実行して本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップありアラインメントを得るため、Altschul et al.(Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997)に記載される通り、Gapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。
【0082】
本明細書において使用される「保存的置換」という用語は、1つ以上のアミノ酸が別の生物学的に類似の残基により置き換えられることを示す。例としては、類似の特徴を有するアミノ酸残基、例えば、小アミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸の置換が挙げられる。例えば、以下の表参照。本発明の一部の実施形態において、1つ以上のMet残基が、Metについての生物学的等価体であるが、Metと対照的に容易に酸化されないノルロイシン(Nle)で置換されている。内因性の哺乳類ペプチド及びタンパク質中に通常見出されない残基での保存的置換の別の例は、例えば、オルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸でのArg又はLysの保存的置換である。一部の実施形態において、本発明のペプチド類似体の1つ以上のシステインは、別の残基、例えば、セリンで置換され得る。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie et.al.Science 247,1306-1310,1990参照。以下のスキームにおいて、アミノ酸の保存的置換は、物理化学的特性によりグループ化される。I:中性、親水性、II:酸及びアミド、III:塩基性、IV:疎水性、V:芳香族、かさ高いアミノ酸。
【0083】
【0084】
以下のスキームにおいて、アミノ酸の保存的置換は、物理化学的特性によりグループ化される。VI:中性又は疎水性、VII:酸性、VIII:塩基性、IX:極性、X:芳香族。
【0085】
【0086】
本明細書において使用される「アミノ酸」又は「任意のアミノ酸」という用語は、天然存在アミノ酸(例えば、a-アミノ酸)、天然でないアミノ酸、修飾アミノ酸、及び非天然アミノ酸を含む、任意の及び全てのアミノ酸を指す。これには、D-及びL-アミノ酸の両方が含まれる。天然アミノ酸としては、天然に見出されるもの、例えば、組み合わさってペプチド鎖になり、無数のタンパク質のビルディングブロックを形成する23種のアミノ酸などが挙げられる。これらは主にL立体異性体であるが、細菌エンベロープ及び一部の抗生物質中でいくつかのD-アミノ酸が生じる。20種の「標準的な」天然アミノ酸は、上記の表に列記される。「非標準的な」天然アミノ酸は、ピロリジン(メタン生成生物及び他の真核生物中に見出される)、セレノシステイン(多くの非真核生物及びほとんどの真核生物中に存在する)、及びN-ホルミルメチオニン(細菌、ミトコンドリア及び葉緑体中で開始コドンAUGによりコードされる)である。「天然でない」又は「非天然」アミノ酸は、天然に生じるか又は化学合成されるタンパク質を構成しないアミノ酸(すなわち、天然にコードされないか又は遺伝子コードに見出されないもの)である。140種を超える天然でないアミノ酸が公知であり、数千のさらなる組み合わせが可能である。「天然でない」アミノ酸の例としては、β-アミノ酸(β3及びβ2)、ホモアミノ酸、プロリン及びピルビン酸誘導体、3-置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環置換フェニルアラニン及びチロシン誘導体、直鎖コアアミノ酸、ジアミノ酸、D-アミノ酸、アルファ-メチルアミノ酸並びにN-メチルアミノ酸が挙げられる。天然でない又は非天然アミノ酸には、修飾アミノ酸も含まれる。「修飾」アミノ酸としては、アミノ酸上に天然に存在しない1つの基、複数の基、又は化学部分を含むように化学的に修飾されたアミノ酸(例えば、天然アミノ酸)が挙げられる。ある実施形態によれば、ペプチドは、ペプチド中に存在する2つのアミノ酸残基間の分子内結合を含む。結合を形成するアミノ酸残基は、互いに結合していない場合と比較して、互いに結合している場合に幾分変更されることが理解される。特定のアミノ酸への言及は、その非結合状態及び結合状態の両方のアミノ酸を包含することを意味する。例えば、非結合形態のアミノ酸残基ホモセリン(hSer)又はホモセリン(Cl)は、本発明による分子内結合に関与する場合、2-アミノ酪酸(Abu)の形態をとり得る。
【0087】
典型的には、本明細書において使用される天然存在及び非天然存在アミノアシル残基の名称は、“Nomenclature of α-Amino Acids(Recommendations,1974) ”Biochemistry,14(2),(1975)に記載されるIUPAC Commission on the Nomenclature of Organic Chemistry and the IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureにより提案される命名規則に従う。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられるアミノ酸及びアミノアシル残基の名称及び略語がそれらの示唆と異なる場合に限り、それらが読者に明らかにされる。本発明の説明に有用な一部の略語は以下の表1に以下定義される。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
本発明に記載される天然存在アミノ酸についての1文字及び3文字略語は、以下の表2に以下定義される。
【0095】
【0096】
本明細書全体にわたり、天然存在アミノ酸がそれらの完全名称(例えば、アラニン、アルギニンなど)により言及されない場合、それらの慣用の3文字又は1文字略語(例えば、アラニンについてはAla又はA、アルギニンについてはArg又はRなど)により表記される。特に示されない限り、アミノ酸の3文字及び1文字略語は、当該アミノ酸のL-異性体形態を指す。本明細書で使用される「L-アミノ酸」という用語は、ペプチドの「L」異性体形態を指し、逆に「D-アミノ酸」という用語は、ペプチドの「D」異性体形態(例えば、Dasp、(d)Asp又はD-Asp;Dphe、(d)Phe又はD-Phe)を指す。所望の機能がペプチドにより保持される限り、D異性体形態のアミノ酸残基は、任意のL-アミノ酸残基に代えて置換され得る。D-アミノ酸は、1文字略語を使用して言及される場合、慣例により小文字で示され得る。
【0097】
希なアミノ酸又は非天然存在アミノ酸の場合、それらの完全名称(例えば、サルコシン、オルニチンなど)により言及されない限り、Sar又はSarc(サルコシン、すなわち、N-メチルグリシン)、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Dab(2,4-ジアミノブタン酸)、Dapa(2,3-ジアミノプロパン酸)、γ-Glu(γ-グルタミン酸)、Gaba(γ-アミノブタン酸)、β-Pro(ピロリジン-3-カルボン酸)、及び8Ado(8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸)、Abu(2-アミノ酪酸)、βhPro(β-ホモプロリン)、βhPhe(β-ホモフェニルアラニン)及びBip(β,βジフェニルアラニン)、並びにIda(イミノ二酢酸)を含む、その残基について高頻度で用いられる3文字又は4文字コードが用いられる。
【0098】
当業者に明らかな通り、本明細書に開示されるペプチド配列は、左側から右側に進むように示され、配列の左端がペプチドのN末端であり、配列の右端がペプチドのC末端である。本明細書に開示される配列の中には、配列のアミノ末端(N末端)における「Hy-」部分、及び配列のカルボキシ末端(C末端)における「-OH」部分又は「-NH2」部分のいずれかを取り込む配列がある。このような場合、特に示されない限り、当該配列のN末端における「Hy-」部分は、N末端におけるフリー第1級又は第2級アミノ基の存在に対応する水素原子を示す一方、配列のC末端における「-OH」又は「-NH2」部分は、それぞれ、C末端におけるアミド(CONH2)基の存在に対応するヒドロキシ基又はアミノ基を示す。本発明の各配列において、C末端「-OH」部分はC末端「-NH2」部分に代えて置換され得、逆もまた同様である。
【0099】
当業者は、あるアミノ酸及び他の化学部分が別の分子に結合する場合に修飾されることを認識する。例えば、アミノ酸側鎖は、それが別のアミノ酸側鎖との分子内架橋を形成する場合に修飾され得、例えば、1つ以上の水素が、結合により除去又は置換され得る。したがって、本明細書で使用される場合、本発明のペプチド中に存在するアミノ酸又は修飾アミノ酸への言及は、分子内結合を形成する前後の両方でペプチド中に存在するそのようなアミノ酸又は修飾アミノ酸の形態を含むことを意味する。
【0100】
本明細書において使用される「NH2」という用語は、ポリペプチドのアミノ末端に存在するフリーアミノ基を指し得る。本明細書において使用される「OH」という用語は、ペプチドのカルボキシ末端に存在するフリーカルボキシ基を指し得る。さらに、本明細書において使用される「Ac」という用語は、ポリペプチドのC又はN末端のアシル化を介するアセチル保護を指す。本明細書に示されるあるペプチドにおいて、ペプチドのC末端に位置するNH2は、アミノ基を示す。
【0101】
本明細書において使用される「カルボキシ」という用語は、-CO2Hを指す。
【0102】
本明細書において使用される「等価体置換」という用語は、規定のアミノ酸と類似する化学的及び/又は構造的特性を有する任意のアミノ酸又は他の類似体部分を指す。ある実施形態において、等価体置換は、規定のアミノ酸の保存的置換又は類似体である。
【0103】
本明細書において使用される「環化」という用語は、例えば、ジスルフィド架橋又はチオエーテル結合を形成することにより、ポリペプチド分子の一部がそのペプチド分子の別の部分に結合して閉環を形成することを指す。
【0104】
「構成成分」又は「サブユニット」という用語は、互換的に使用され、接続して本発明のペプチドを形成するポリペプチドモノマーのペアの一方を指す。
【0105】
本明細書において使用される「リンカー部分」という用語は、2つのペプチドサブユニットを一緒に結合又は接続させ得る化学構造を広く指す。
【0106】
本明細書において使用される「薬学的に許容可能な塩」という用語は、水溶性若しくは油溶性又は分散性であり、過度の毒性、刺激、及びアレルギー応答なしで疾患の処置に好適であり;合理的なベネフィット/リスク比に相応し、意図される用途に有効であるペプチド又は本発明のペプチドの塩又は双性イオン形態を表す。塩は、化合物の最終単離及び精製中に、又はアミノ基を好適な酸と反応させることにより別個に調製され得る。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。また、本発明の化合物におけるアミノ基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物、及びヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミルの硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリル(steryl)の塩化物、臭化物、及びヨウ化物;並びにベンジル及びフェネチルの臭化物で4級化され得る。治療的に許容可能な付加塩を形成するために用いられ得る酸の例としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸、並びに有機酸、例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸が挙げられる。薬学的に許容可能な塩は、好適には、例えば、酸付加塩及び塩基性塩の中で選択される塩であり得る。酸付加塩の例としては、塩化物塩、クエン酸塩及び酢酸塩が挙げられる。塩基性塩の例としては、カチオンが、アルカリ金属カチオン、例えば、ナトリウム又はカリウムイオン、アルカリ土類金属カチオン、例えば、カルシウム又はマグネシウムイオン、及び置換アンモニウムイオン、例えば、N(R1)(R2)(R3)(R4)+(式中、R1、R2、R3、及びR4の各々は、独立して、典型的には、水素、任意選択で置換されているC1~6アルキル又は任意選択で置換されているC2~6アルケニルを示す)のタイプのイオンの中から選択される塩が挙げられる。関連するC1~6アルキル基の例としては、メチル、エチル、1-プロピル及び2-プロピル基が挙げられる。関連する可能性のあるC2~6アルケニル基の例としては、エテニル、1-プロペニル及び2-プロペニルが挙げられる。薬学的に許容可能な塩の他の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”, 17th edition,Alfonso R.Gennaro(Ed.),Mark Publishing Company,Easton,PA,USA,1985(及びそのより最新版)、“Encyclopaedia of Pharmaceutical Technology”,3rd edition,James Swarbrick (Ed.),Informa Healthcare USA(Inc.),NY,USA,2007、及びJ.Pharm. Sci.66:2(1977)に記載されている。また、好適な塩に関する概説については、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,2002)参照。他の好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。代表的な例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩も形成され得る。
【0107】
本明細書において使用される「N(アルファ)メチル化」という用語は、一般にN-メチル化とも称されるアミノ酸のアルファアミンのメチル化を説明する。
【0108】
本明細書において使用される「symメチル化」又は「Arg-Me-sym」という用語は、アルギニンのグアニジン基の2つの窒素の対称メチル化を説明する。さらに、「asymメチル化」又は「Arg-Me-asym」という用語は、アルギニンのグアニジン基の単一窒素のメチル化を説明する。
【0109】
本明細書において使用される「アシル化有機化合物」という用語は、C末端ダイマーを形成する前にアミノ酸又はペプチド構成成分、例えば、モノマーサブユニットのN末端をアシル化するために使用されるカルボン酸官能基を有する種々の化合物を指す。アシル化有機化合物の非限定的な例としては、シクロプロピル酢酸、4-フルオロ安息香酸、4-フルオロフェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、シクロペンタンカルボン酸、3,3,3-トリフルオロプロペオン酸(3,3,3-trifluoropropeonic acid)、3-フルオロメチル酪酸、テトラヘドロ-2H-ピラン-4-カルボン酸が挙げられる。
【0110】
「アルキル」という用語には、1~24個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖、非環式又は環式飽和脂肪族炭化水素が含まれる。代表的な飽和直鎖アルキルとしては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが挙げられる一方、飽和分枝アルキルとしては、限定されるものではないが、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチルなどが挙げられる。代表的な飽和環式アルキルとしては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる一方、不飽和環式アルキルとしては、限定されるものではないが、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが挙げられる。
【0111】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、ブロモ(Br)、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、又はヨード(I)置換基を指す。
【0112】
「ハロアルキル」という用語には、少なくとも1つの水素がハロゲン原子で置き換えられているアルキル構造が含まれる。2つ以上の水素原子がハロゲン原子で置き換えられているある実施形態において、ハロゲン原子は互いに全て同じである。2つ以上の水素原子がハロゲン原子で置き換えられている他の実施形態において、ハロゲン原子は、互いに全て同じでない。
【0113】
「アルコキシ」基は、(アルキル)O-基(式中、アルキルは、本明細書に定義される通りである)を指す。
【0114】
「アリールオキシ」基は、(アリール)O-基(式中、アリールは、本明細書に定義される通りである)を指す。
【0115】
「アミノカルボニル」又は「カルボキサミド」は、-CONH2基を指す。
【0116】
「2-アミノエトキシ」は、-OCH2CH2-NH2基を指す。
【0117】
「2-アセチルアミノエトキシ」は、-OCH2CH2-N(H)C(O)Me基を指す。
【0118】
「哺乳類」という用語は、任意の哺乳類種、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、ウサギ、家畜を指す。
【0119】
本明細書において使用される場合、本発明のペプチドの「治療有効量」は、本明細書に記載される疾患及び障害のいずれかを処置又は予防するため(例えば、肥満を処置するため)に十分な量を説明することを意味する。特定の実施形態において、治療有効量は、任意の医学的処置に適用可能な所望のベネフィット/リスク比を達成する。
【0120】
アミノ酸の「類似体」、例えば、「Phe類似体」又は「Tyr類似体」は、参照されるアミノ酸の類似体を意味する。Phe及びTyr類似体を含む種々のアミノ酸類似体が当該技術分野において公知であり、利用可能である。ある実施形態において、アミノ酸類似体、例えば、Phe類似体又はTyr類似体は、それぞれ、Phe又はTyrと比較して1、2、3、4又は5つの置換を含む。ある実施形態において、置換は、アミノ酸の側鎖中に存在する。ある実施形態において、Phe類似体は、構造Phe(R2)を有し、R2は、Hy、OH、CH3、CO2H、CONH2、CONH2OCH2CH2NH2、t-Bu、OCH2CH2NH2、フェノキシ、OCH3、Oアリル、Br、Cl、F、NH2、N3、又はグアナジノである。ある実施形態において、R2は、CONH2OCH2CH2NH2、OCH3、CONH2、OCH3又はCO2Hである。Phe類似体の例としては、限定されるものではないが、hPhe、Phe(4-OMe)、α-Me-Phe、hPhe(3,4-ジメトキシ)、Phe(4-CONH2)、Phe(4-フェノキシ)、Phe(4-グアナジノ)、Phe(4-tBu)、Phe(4-CN)、Phe(4-Br)、Phe(4-OBzl)、Phe(4-NH2)、BhPhe(4-F)、Phe(4-F)、Phe(3,5DiF)、Phe(CH2CO2H)、Phe(ペンタ-F)、Phe(3,4-Cl2)、Phe(3,4-F2)、Phe(4-CF3)、ββ-ジPheAla、Phe(4-N3)、Phe[4-(2-アミノエトキシ)]、4-フェニルベンジルアラニン、Phe(4-CONH2)、Phe(3,4-ジメトキシ)、Phe(4-CF3)、Phe(2,3-Cl2)、及びPhe(2,3-F2)が挙げられる。Tyr類似体の例としては、限定されるものではないが、hTyr、N-Me-Tyr、Tyr(3-tBu)、Tyr(4-N3)、及びβhTyrが挙げられる。
【0121】
本発明は、一般に、種々の代謝及び肝臓疾患及び障害を処置又は予防するための本発明のペプチドに関する。ある実施形態において、本発明は、本発明のペプチドの投与による肥満、代謝障害、及び肝臓障害、並びに他の疾患及び障害の処置のための新たなパラダイムを実証する。本発明のペプチドの投与は、循環中の薬物濃度を限定しながら疾患組織中の薬物レベルを最大化し、それにより肥満並びに代謝及び肝臓疾患及び障害の生涯にわたる処置のための有効で安全で持続的な送達を提供することが予測される。
【0122】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、任意選択でジスルフィド又は他の結合を介して環化構造を形成する種々のペプチド、又はペプチドヘテロ若しくはホモモノマーサブユニットを包含する。ある実施形態において、ジスルフィド又は他の結合は、分子内結合である。ペプチドの環化構造は、本発明のペプチドの効力及び選択性を増加させることが示されている。ある実施形態において、本発明のペプチドは、ペプチド内の2つのペプチドサブユニットを結合させる1つ以上の分子間結合を含み得る。
【0123】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、疾患又は障害の存在を陰性対照ペプチドと比較して少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%だけ低減させる。
【0124】
一部の実施形態において、半減期は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を使用してインビトロで測定され、例えば、一部の実施形態において、本発明のペプチドの安定性は、ペプチドを37℃で予め加温されたヒト血清又は血漿とインキュベートすることにより決定される(当業者は、他の種(例えば、ラット、マウスなど)からの血清又は血漿を使用することができることを認識する)。サンプルを典型的には24時間までの種々の時点で採取し、ペプチドを血清又は血漿タンパク質から分離し、次いでLC-MSを使用して目的のペプチドの存在について分析することによりサンプルの安定性を分析する。
【0125】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、対照ペプチドと比較して改善された溶解度又は低減した凝集特徴を示す。溶解度は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を介して決定され得る。一部の実施形態において、溶解度を決定するための当該技術分野において公知の好適な方法は、ペプチドを種々の緩衝液(酢酸塩pH4.0、酢酸塩pH5.0、リン酸塩/クエン酸塩pH5.0、リン酸塩/クエン酸塩pH6.0、リン酸塩pH6.0、リン酸塩pH7.0、リン酸塩pH7.5、強PBS pH7.5、トリスpH7.5、トリスpH8.0、グリシンpH9.0、水、酢酸(pH5.0及び当該技術分野において公知の他のpH)中でインキュベートし、標準的な技術を使用して凝集又は溶解度について試験することを含む。これらとしては、限定されるものではないが、表面疎水性を測定し、例えば、凝集又はフィブリル化を検出するための目視による沈殿、動的光散乱、円二色性及び蛍光色素が挙げられる。一部の実施形態において、改善された溶解度は、ペプチドが所与の液体中で対照ペプチドよりも溶解性であることを意味する。一部の実施形態において、低減した凝集は、ペプチドが所与の条件下で所与の液体中で対照ペプチドよりも凝集が少ないことを意味する。
【0126】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、例えば、一定期間にわたり対照ペプチドよりも分解が少なく(すなわち、より分解安定性であり)、例えば、約10%以上少なく、約20%以上少なく、約30%以上少なく、約40以上少なく、又は約50%以上分解が少ない。一部の実施形態において、分解安定性は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を介して決定される。一部の実施形態において、分解は、酵素的分解である。例えば、ある実施形態において、本発明のペプチドは、トリプシン、キモトリプシン又はエラスターゼによる分解に対して低減した感受性を有する。一部の実施形態において、分解安定性を決定するための当該技術分野において公知の好適な方法としては、全体として本明細書に組み込まれるHawe et al.,J Pharm Sci,VOL.101,No.3,2012,p895-913に記載される方法が挙げられる。このような方法は、一部の実施形態において、向上した保存期間を有する強力なペプチド配列を選択するために使用される。
【0127】
種々の本発明のペプチドは、天然アミノ酸のみから構築され得る。或いは、本発明のペプチドは、限定されるものではないが、修飾アミノ酸を含む非天然アミノ酸を含み得る。ある実施形態において、修飾アミノ酸としては、アミノ酸上に天然に存在しない1つの基、複数の基、又は化学部分を含むように化学的に修飾された天然アミノ酸が挙げられる。本発明のペプチドは、1つ以上のD-アミノ酸をさらに含み得る。またさらに、本発明のペプチドは、アミノ酸類似体を含み得る。
【0128】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、1つ以上の修飾又は天然でないアミノ酸を含む。本発明の一部の実施形態において、本発明のペプチドは、表1に示される1つ以上の非天然アミノ酸を含む。ある実施形態において、本発明のペプチドは、限定されるものではないが、本明細書に示されるアミノ酸配列又はペプチド構造を含むもののいずれかを含む本明細書に記載されるもののいずれかを含む。
【0129】
本発明はまた、遊離又は塩形態のいずれかの本明細書に記載される本発明のペプチドのいずれかを含む。したがって、本明細書に記載される本発明のペプチド(及び関連するその使用方法)のいずれかの実施形態は、本発明のペプチドの薬学的に許容可能な塩を含む。
【0130】
本発明はまた、限定されるものではないが、本明細書における表のいずれか1つに示される配列を含むもののいずれかを含む、本明細書に記載される本発明のペプチドのいずれかの変異体を含み、1つ以上のL-アミノ酸残基は、そのアミノ酸残基のD異性体形態で置換されており、例えば、L-Alaは、D-Alaで置換されている。
【0131】
本明細書に記載される本発明のペプチドは、同位体標識ペプチドを含む。特定の実施形態において、本開示は、1つ以上の原子が通常天然に見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子により置き換えられている事実を除き、本明細書に提示される種々の式及び構造を有するか又はそれらに引用されるペプチドのいずれかと同一である本発明のペプチドを提供する。本発明のペプチド中に取り込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素及び塩素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Clが挙げられる。本明細書に記載されるある同位体標識化合物、例えば、放射性同位体、例えば、3H及び14Cが取り込まれているものは、薬物及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。さらに、同位体、例えば、重水素、すなわち2Hでの置換は、より大きい代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加又は必要投与量の低減から生じるある治療上の利点を生じさせ得る。
【0132】
本発明はまた、本明細書に記載される具体的なリンカー部分のいずれかを含むリンカー部分に結合している本明細書に記載されるペプチド構成成分のいずれかを含む。特定の実施形態において、リンカーはN末端又はC末端アミノ酸に結合している一方、他の実施形態において、リンカーは内部アミノ酸に結合している。特定の実施形態において、リンカーは、2つの内部アミノ酸、例えば、2つのモノマーサブユニットの各々における内部アミノ酸に結合している。一部の実施形態において、本発明のペプチドは、1つ以上のリンカー部分を含む。
【0133】
本発明はまた、本明細書に記載される本発明のペプチドのペプチド配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するペプチドを含むペプチドを含む。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、コアペプチド配列と、1つ以上のN末端及び/又はC末端修飾(例えば、Ac及びNH2)及び/又は1つ以上のコンジュゲートリンカー部分及び/又は半減期延長部分とを含む。本明細書において使用される場合、コアペプチド配列は、そのような修飾及びコンジュゲートが不存在のペプチド構成成分のアミノ酸配列である。
【0134】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、10~90個のアミノ酸残基、15~80個のアミノ酸残基、20~75個のアミノ酸残基、25~70個のアミノ酸残基、30~65個のアミノ酸残基、35~60個のアミノ酸残基、40~55個のアミノ酸残基、45~50個のアミノ酸残基、及び任意選択で、1つ以上の追加の非アミノ酸部分、例えば、コンジュゲート化学部分、例えば、PEG又はリンカー部分を含み、本質的にそれからなり、又はそれからなる。
【0135】
特定の実施形態において、限定されるものではないが、式I~Vの任意の実施形態のものを含む本発明のペプチド(又はその構成成分)は、10個超、12個超、15個超、20個超、25個超、30個超又は35個超のアミノ酸、例えば、35~80個のアミノ酸である。ある実施形態において、本発明のペプチド(又はその構成成分モノマーサブユニット)は、90個未満、75個未満、60個未満、45個未満、30個未満、25個未満、20個未満、又は10個未満のアミノ酸である。特定の実施形態において、本発明のペプチドの構成成分モノマーサブユニットは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35個のアミノ酸残基を含むか又はそれからなる。特定の実施形態において、本発明のペプチドのモノマーサブユニットは、10~75個のアミノ酸残基及び、任意選択で、1つ以上の追加の非アミノ酸部分、例えば、コンジュゲート化学部分、例えば、PEG又は投石(lapidated)アミノ酸残基を含むか又はそれからなる。
【0136】
本発明の特定の実施形態において、本発明のペプチドのアミノ酸配列は、抗体内に存在しないか、又は抗体のVH領域内にもVL領域内にも存在しない。
【0137】
本発明のペプチド
本発明のペプチドは、本明細書に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含むか又はそれからなるペプチド、本明細書に記載される構造のいずれかを有するペプチドを含む。
【0138】
一実施形態において、本発明は、本発明のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物であって、式(I):
X1-X2-E-G-T-F-X3-S-D-Y-S-I-X4-X5-D-K-I-X6-Q-X7-X8-F-V-X9-W-L-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-C-N-T-A-T-C-X17-X18-X19-X20-L-X21-X22-X23-L-X24-X25-X26-X27-X28-X29-X30-X31-X32-X33X34-P-X35-T-N-X36-G-X37-N-T-Y-(NR1R2)
(I)
(式中、
X1は、Tyr又は(d)Tyrであり;
X2は、Ala、(d)Ala、又はAibであり;
X3は、Ile又はThrであり;
X4は、Ala、Aib又はGlnであり;
X5は、Met、Leu、又はValであり;
X6は、Ala又はHisであり;
X7は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X8は、Ala又はAspであり;
X9は、Asn又はGlnであり;
X10は、Leu、Val、又はIleであり;
X11は、Ala又はValであり;
X12は、Gly又はGlnであり;
X13は、Gly、Lys、Arg、Ser、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X14は、Pro、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X15は、Ser、Gly、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X16は、不存在であるか又はGly若しくはSerであり;
X17は、Ala、Met又はValであり;
X18は、Thr又はLeuであり;
X19は、Gln又はGlyであり;
X20は、Arg、Lys、Gln、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X21は、Ala又はSerであり;
X22は、Asn又はGlnであり;
X23は、Phe又はGluであり;
X24は、His又はValであり;
X25は、His又はArgであり;
X26は、Ser又はLeuであり;
X27は、Ser又はGlnであり;
X28は、Asn又はThrであり;
X29は、不存在であるか又はAsn若しくはGlnであり;
X30は、不存在であるか又はPheであり;
X31は、不存在であるか又はGlyであり;
X32は、不存在であるか又はProであり;
X33は、不存在であるか又はIle、Lys、若しくはLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X34は、Leu又はTyrであり;
X35は、Pro、Lys Arg、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X36は、Val又はThrであり;
X37は、Ser、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり、
R1及びR2は、各々独立してH又はC1~5アルキルであり、
R3は、-CO2H、-CO2CH3、-CO2NH2、-CO2NHCH3、-CO2N(CH3)2、-CH3、又は-NH2であり、
nは、12~20の整数である)
のアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる本発明のペプチドを包含する。
【0139】
ある実施形態において、R3は、-CO2Hである。
【0140】
ある実施形態において、R3は、-CO2CH3である。
【0141】
ある実施形態において、R3は、-CO2NH2である。
【0142】
ある実施形態において、R3は、-CO2NHCH3である。
【0143】
ある実施形態において、R3は、-CO2N(CH3)2である。
【0144】
ある実施形態において、R3は、-CH3である。
【0145】
ある実施形態において、R3は、-NH2である。
【0146】
ある実施形態において、nは、12である。
【0147】
ある実施形態において、nは、13である。
【0148】
ある実施形態において、nは、14である。
【0149】
ある実施形態において、nは、15である。
【0150】
ある実施形態において、nは、16である。
【0151】
ある実施形態において、nは、17である。
【0152】
ある実施形態において、nは、18である。
【0153】
ある実施形態において、nは、19である。
【0154】
ある実施形態において、nは、20である。
【0155】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、
X1は、Tyrであり;
X2は、Aibであり;
X3は、Ileであり;
X4は、Alaであり;
X5は、Leuであり;
X6は、Hisであり;
X7は、Lys又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nCH3であり;
X8は、Aspであり;
X9は、Asnであり;
X10は、Leuであり;
X11は、Alaであり;
X12は、Glnであり;
X13は、Lys又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nCH3であり;
X14は、不存在であるか若しくはProであり;
X15は、不存在であるか若しくはSerであり;
X16は、不存在であるか若しくはSerであるか又はX14、X15、及びX16は、共に結合基であり;
X17は、Alaであり;
X18は、Thrであり;
X19は、Glnであり;
X20は、Argであり;
X21は、Alaであり;
X22は、Asnであり;
X23は、Pheであり;
X24は、Valであり;
X25は、Hisであり;
X26は、Serであり;
X27は、Serであり;
X28は、Asnであり;
X29は、不存在であるか又はAsnであり;
X30は、不存在であるか又はPheであり;
X31は、不存在であるか又はGlyであり;
X32は、不存在であるか又はProであり;
X33は、不存在であるか又はIleであり;
X34は、Leuであり;
X35は、Proであり;
X36は、Valであり;
X37は、Serである
式Iのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0156】
別の実施形態において、本発明は、本発明のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物であって、式(II):
X1-X2-E-G-T-F-X3-S-D-Y-S-I-A-X4-D-K-I-X5-Q-X6-X7-F-V-X8-W-L-L-A-Q-X9-X10-X11-X12-C-N-T-A-T-C-A-T-Q-R-L-A-N-F-L-V-H-S-S-N-N-F-G-P-X13-L-P-P-T-N-V-G-X14-N-T-Y(NR1R2)
(II)
(式中、
X1は、Tyr又は(d)-Tyrであり;
X2は、Ala、(d)Ala、又はAibであり;
X3は、Thr又はIleであり;
X4は、Met、Leu、又はValであり;
X5は、His又はAlaであり;
X6は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X7は、Asp又はAlaであり;
X8は、Asn又はGlnであり;
X9は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X10は、任意の天然存在アミノ酸であり;
X11は、任意の天然存在アミノ酸であり;
X12は、任意の天然存在アミノ酸であり;
X13は、Ile、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X14は、Ser、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり、
R1及びR2は、各々独立してH又はC1~5アルキルであり、
R3は、-CO2H、-CO2CH3、-CO2NH2、-CO2NHCH3、-CO2N(CH3)2、-CH3、又は-NH2であり、
nは、12~20の整数である)
のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる本発明のペプチドを包含する。
【0157】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、
X1は、Tyrであり;
X2は、Alaであり;
X3は、Leuであり;
X4は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X5は、Asnであり;
X6は、Glnであり;
X7は、任意のアミノ酸であり;
X8は、任意のアミノ酸であり;
X9は、任意のアミノ酸であり;
X10は、Ileであり;
X11は、Serである
式IIのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0158】
ある実施形態において、天然存在アミノ酸は非天然存在アミノ酸により置換され得、本発明のペプチドは生物学的活性を維持する。
【0159】
別の実施形態において、本発明は、本発明のペプチド又はその薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物であって、式(III):
X1-X2-E-G-T-F-X3-S-D-Y-S-I-X4-L-D-K-I-A-Q-X5-A-F-V-Q-W-L-X6-A-G-G-P-S-C-N-T-A-T-C-V-L-G-R-L-S-Q-E-L-H-R-L-Q-T-Y-P-R-T-N-T-G-X7-N-T-Y(NR1R2)
(III)
(式中、
X1は、(d)Tyr又はTyrであり;
X2は、Ala、(d)Ala又はAibであり;
X3は、Ile又はThrであり;
X4は、Ala又はAibであり;
X5は、Gln、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり;
X6は、Leu又はIleであり;
X7は、Ser、Lys、又はLys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3であり、
R1及びR2は、各々独立してH又はC1~5アルキルであり、
R3は、-CO2H、-CO2CH3、-CO2NH2、-CO2NHCH3、-CO2N(CH3)2、-CH3、又は-NH2であり、
nは、12~20の整数である)
のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる本発明のペプチドを包含する。
【0160】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、
X1は、(d)Tyrであり;
X2は、Aibであり;
X3は、Thrであり;
X4は、Aibであり;
X5は、Glnであり;
X6は、Ileであり;
X7は、Lys-γ-Glu-γ-Glu-C=O(CH2)nR3である
式IVのペプチド又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0161】
ある実施形態において、本発明のペプチドの例示的なペプチド構成成分としては、アミリン、ADM、CT、CGRP、インテルメジン、CCK、レプチン、PYY(1-36)、PYY(3-36)、GLP-1(1-37)、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、GLP-2、OXM、ナトリウム利尿ペプチド、ウロコルチンファミリーペプチド、例えば、Ucn-2及びUcn-3、ニューロメジンファミリーペプチド、例えば、ニューロメジンU25又はスプライスバリアント、エキセンジン-3、及びエキセンジン-4から選択される構成成分ペプチドホルモンの断片が挙げられ、断片は、構成成分ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を示す。
【0162】
本発明のペプチドのさらに他の例示的なペプチド構成成分としては、アミリン、ADM、CT、CGRP、インテルメジン、CCK、レプチン、GLP-1(1-37)、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、GLP-2、ヒトカテスタチン、OXM、ANP、BNP、CNP、ウロジラチン、FGF-19、FGF-21、Ucn-2及びUcn-3、ニューロメジンU25又はスプライスバリアント、ニューロメジンS、エキセンジン-3及びエキセンジン-4から選択される構成成分ペプチドホルモンの類似体又は誘導体の断片が挙げられ、断片は、構成成分ペプチドホルモンの少なくとも1つのホルモン活性を示す。ここでも、本明細書により詳細に記載され、当該技術分野において公知の通り、類似体は、構成成分ペプチドホルモンのアミノ酸配列の1つ以上の挿入、欠失、又は置換を含み得、誘導体は、類似体又は構成成分ペプチドホルモンのアミノ酸残基の1つ以上の化学修飾を含み得る。
【0163】
少なくとも1つのホルモン活性を示すある例示的な断片としては、以下のものが挙げられる。
【0164】
アミリン:アミリン(2-37)、アミリン(1-35)、アミリン(1-20)、アミリン(1-18)、アミリン(1-17)、アミリン(1-16)、アミリン(1-15)、アミリン(1-7)
【0165】
GLP-1:GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、GLP-1(7-35)
【0166】
GIP:GIP(1-14)、GIP(1-28)、GIP(1-30)又はそれより長いもの、GIP(1-39)又はそれより長いもの
【0167】
エキセンジン:エキセンジン-4(1-27)、エキセンジン-4(1-28)、エキセンジン-4(1-29)、エキセンジン-4(1-30)又はそれより長いもの。
【0168】
本発明のペプチドはアミド化され得るが、本発明の文脈内で、特に規定されない限り、任意選択で酸形態であり得る。さらに、上記の例示的なペプチドは、本明細書に考察されるか又は当該技術分野において公知の類似体又は誘導体のいずれかと組み合わせられ得る。例えば、例示的な類似体断片としては、5Ala、14Leu、25Phe-エキセンジン-4(1-28)、14Leu、25Phe-エキセンジン-4(1-27)、5Ala、14Leu、25Phe-エキセンジン-4(1-28)、14Leu、25Phe-エキセンジン-4(1-27)、又は開示される断片、類似体、及び誘導体の任意の他の組み合わせが挙げられ得る。
【0169】
さらに他の例示的なペプチド構成成分としては、所望の化学安定性、立体構造安定性、代謝安定性、バイオアベイラビリティ、器官/組織ターゲティング、受容体相互作用、プロテアーゼ阻害、血漿タンパク質結合、及び/又は他の薬物動態学的特徴をペプチドに付与する構成成分ペプチドホルモン(その類似体及び誘導体を含む)の構造モチーフが挙げられる。本発明のペプチドの例示的なペプチド構成成分は、以下のものが挙げられる。
【0170】
アミリンファミリー:アミリン(32-37)、アミリン(33-37)、アミリン(34-37)、アミリン(35-37)、アミリン(36-37)、アミリン(37)、ADM(47-52)、ADM(48-52)、ADM(49-52)、ADM(50-52)、ADM(51-52)、ADM(52)、CT(27-32)、CT(27-32)、CT(28-32)、CT(29-32)、CT(30-32)、CT(31-32)、CT(32)、CGRP(32-37)、CGRP(33-37)、CGRP(34-37)、CGRP(35-37)、CGRP(36-37)、CGRP(37)、インテルメジン(42-47)、インテルメジン(43-47)、インテルメジン(44-47)、インテルメジン(45-47)、インテルメジン(46-47)、インテルメジン(47)。
【0171】
GLP-1及び2:GLP-1(29-37);GLP-1(30-37);GLP-2(24-31)、GLP-2(25-31)。
【0172】
GIP:GIP(31-42)、GIP(32-42)、GIP(33-42)、GIP(34-42)、GIP(35-42)、GIP(36-42)、GIP(37-42)、GIP(38-42)、GIP(39-42)、GIP(40-42)、GIP(41-42)、GIP(42)。
【0173】
エキセンジン-4:エキセンジン-4(31-39)、エキセンジン-4(32-39)、エキセンジン-4(33-39)、エキセンジン-4(34-39)、エキセンジン-4(35-39)、エキセンジン-4(36-39)、エキセンジン-4(37-39)、エキセンジン-4(38-39)、エキセンジン-4(39)
【0174】
ある実施形態において、本明細書に記載されるペプチド構成成分と一緒に用いられるGIP類似体及び誘導体の組み合わせが企図される。例えば、当該技術分野において公知の及び/又は上記のアミリンファミリーペプチドホルモン類似体及び誘導体の最後の6個のアミノ酸残基も、例示的なペプチド構成成分として企図される。例えば、本明細書にさらに考察される通り、例示的なTrp-ケージ配列であるペプチド性向上剤Ex-4短鎖テール、又はその類似体が任意のGIP類似体のC末端に付加され、さらなる実施形態において、ペプチド性向上剤は、リンカーを使用して結合される。
【0175】
一態様において、本発明のペプチドは、GIP部分の全長にわたり天然GIP(1-30)、天然GIP(1-26)、天然GIP(1-14)、天然GIP(1-39)、天然GIP(19-30)、天然GIP(19-26)、天然GIP(19-39)、天然GIP(19-42)又は天然GIP(1-42)と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の配列同一性を示すGIP部分を含む。
【0176】
したがって、ある実施形態において、本発明のペプチドは、trp-ケージモチーフを含み得る。ある実施形態において、本発明のペプチドは、N末端GIP又は新規GIP類似体断片を、体重降下若しくはグルコース降下活性(例えば、抗糖尿病薬、エキセンジン)又は胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる能力を有するC末端ポリペプチド又はその断片との組み合わせで含む。ある実施形態において、本発明のペプチドは、N末端GIP断片又は新規GIP類似体断片を、C末端エキセンジン、GLP1、アミリン、CCK、ガストリン、セクレチン、GRP、ニューロメジン、ウロコルチン、カルシトニン、若しくはサケカルシトニン、又はそれらの断片との組み合わせで含む。他の実施形態において、本発明のペプチドは、C末端GIP又は新規GIP類似体断片を、体重低減若しくはグルコース降下活性(例えば、抗糖尿病薬、エキセンジン)又は胃内容排出を阻害するか若しくは低減させる能力を有するN末端ポリペプチド又はその断片との組み合わせで含む。ある実施形態において、本発明のペプチドは、C末端GIP、新規GIP類似体(Trp-ケージ形成配列が存在する場合)、又はそれらの断片を、N末端エキセンジン、GLP1、アミリン、CCK、ガストリン、セクレチン、GRP、ニューロメジン、ウロコルチン、カルシトニン、若しくはサケカルシトニン、又はそれらの断片との組み合わせで含む。
【0177】
他の実施形態において、本発明のペプチドのペプチド構成成分は、ガストリン/CCK受容体リガンド;アミリン受容体リガンド;カルシトニン受容体リガンド;CGRP受容体リガンド、EGF受容体リガンド;グルカゴン様ペプチド1受容体リガンド;グルカゴン様ペプチド2受容体リガンド;胃抑制ポリペプチド(GIP)受容体リガンド;ケラチノサイト成長因子(KGF)受容体1リガンド;ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤;REGタンパク質受容体リガンド;成長ホルモン受容体リガンド;プロラクチン(PRL)受容体リガンド;インスリン様成長因子(IGF)受容体リガンド;PTH関連タンパク質(PTHrP)受容体リガンド;肝細胞成長因子(HGF)受容体リガンド;骨形成タンパク質(BMP)受容体リガンド、トランスフォーミング成長因子(TGF受容体リガンド;ラミニン受容体リガンド;血管作動性腸管ペプチド(VIP)受容体リガンド;線維芽細胞成長因子(FGF)受容体リガンド;神経成長因子(NGF)受容体リガンド;膵島新生関連タンパク質(INGAP)受容体リガンド;アクチビン-A受容体リガンド;血管内皮成長因子(VEGF)受容体リガンド;エリスロポエチン(EPO)受容体リガンド;下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)受容体リガンド;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体リガンド;顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);血小板由来成長因子(PDGF)受容体リガンド、及びセクレチン受容体リガンドと組み合わせられる。
【0178】
本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも部分的に、天然ヒトGIPの生物学的活性を保持し、例えば、本発明のペプチドは、一般に、GIPアゴニスト又はアンタゴニストである。一実施形態において、本発明のペプチドは、代謝病態及び障害の処置及び予防において生物学的活性を示す。さらに、本発明のペプチドの新規GIP類似体は、内部リンカー化合物を含み得るか、内部アミノ酸残基における化学修飾を含み得るか、又はN末端若しくはC末端残基において化学修飾され得る。さらに別の実施形態において、本発明のペプチドは、天然Lアミノ酸残基及び/又は修飾天然Lアミノ酸残基のみを含む。或いは、別の実施形態において、本発明のペプチドは、天然でないアミノ酸残基を含まない。
【0179】
例示的な実施形態において、本発明のペプチドのGIP部分は、天然GIPよりも優れたDPP-IV耐性を提供するように修飾又は置換されたGIP N末端領域を含む。
【0180】
例示的な実施形態において、本発明のペプチドはアミリン、アドレノメデュリン(「ADM」)、カルシトニン(「CT」)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(「CGRP」)、インテルメジン(「AFP-6」としても公知)及び関連ペプチドを含むアミリンファミリーペプチドと組み合わせられたGIP又は新規GIP類似体を含む。天然アミリンファミリーペプチドホルモンは、当該技術分野において公知であり、機能ペプチド類似体及び誘導体も同様に公知である。ある例示的な天然ペプチド、ペプチド類似体及び誘導体が本明細書に記載されるが、当該技術分野において公知のホルモン活性を示す任意の公知のアミリンファミリーペプチドが本発明とともに使用され得ることが認識されるべきである。当該技術分野において公知の任意のアミリン類似体又は誘導体が本発明とともに使用され得る。
【0181】
アミリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、アドレノメデュリン、及びインテルメジン(「AFP-6」としても公知)を含むペプチドホルモンのアミリンファミリーは、代謝疾患及び障害に関与する。ある実施形態において、本発明のペプチドは、構成成分ペプチドとして、アミリンファミリーペプチドの1つ以上を含む。アミリンは、37アミノ酸ペプチドホルモンである。これは、ヒト2型糖尿病患者の膵島中のアミロイド沈着物の主な構成成分として単離され、精製され、化学的に特徴付けされた(Cooper et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,84:8628-8632(1987))。アミリン分子は、2つの翻訳後修飾を有する:C末端はアミド化され、2及び7位のシステインは架橋してN末端ループを形成する。ヒトアミリン遺伝子のオープンリーディングフレームの配列は、LysについてのN末端コドン前のLys-Arg二塩基性アミノ酸タンパク質分解開裂シグナル、及びN末端位置、タンパク質アミド化酵素PAMによるアミド化のための典型的な配列におけるLys-Argタンパク質分解シグナル前のGlyの存在を示す(Cooper et al.,Biochem.Biophys.Acta,1014:247-258(1989))。「アドレノメデュリン」又は「ADM」は、ヒトペプチドホルモン及びその種変異体を意味する。より特定すると、ADMは、連続的な酵素的開裂及びアミド化を介して185アミノ酸プレプロホルモンから生成される。このプロセスは、52アミノ酸生物活性ペプチドの遊離で終了する。「カルシトニン」又は「CT」は、ヒトペプチドホルモン及びサケカルシトニン(「sCT」)を含むその種変異体を意味する。より特定すると、CTは、より大きいプロホルモンから開裂される32アミノ酸ペプチドである。これは単一のジスルフィド結合を含有し、それによりアミノ末端が環の形状を取る。カルシトニンプレ-mRNAの選択的スプライシングは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドをコードするmRNAを生じさせ得;そのペプチドは神経及び血管系中で機能すると考えられる。カルシトニン受容体はクローニングされており、7回膜貫通Gタンパク質共役受容体ファミリーのメンバーであることが示されている。「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」又は「CGRP」は、任意の生理学的形態のヒトペプチドホルモン及びその種変異体を意味する。「インテルメジン」又は「AFP-6」は、任意の生理学的形態のヒトペプチドホルモン及びその種変異体を意味する。
【0182】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、構成成分ペプチドとしてアミリンペプチドを含む。アミリンは、胃内容排出を調節し、グルカゴン分泌及び食物摂取を抑制し、したがって循環中のグルコース出現率を調節すると考えられる。これは、インスリンの作用を補うと考えられ、循環からのグルコース消失率及び末梢組織によるその取り込みを調節する。これらの作用は齧歯類及びヒトにおける実験的知見により支持され、このことは全てがグルコース出現率に影響を与える少なくとも3つの独立機序によりアミリンが食後グルコースコントロールにおけるインスリンの効果を補うことを示す。第1に、アミリンは、食後グルカゴン分泌を抑制する。健常成人と比較して、1型糖尿病を有する患者は、循環アミリンを有さず、2型糖尿病を有する患者は、低下した食後アミリン濃度を有する。さらに、循環アミリンに結合するアミリン特異的モノクローナル抗体の注入も、対照に対して大幅に上昇したグルカゴン濃度をもたらした。これらの結果の両方は、食後グルカゴン分泌の調節における内因性アミリンの生理学的役割を指摘する。第2に、アミリンは、胃腸運動及び胃内容排出を緩徐化させる。最後に、ラットアミリンの視床下部内注射は、ラットの摂食を低減させ、視床下部における神経伝達物質代謝を変更することが示された。ある研究において、食物摂取は、ラットアミリン及びラットCGRPの視床下部内注射後8時間まで有意に低減した。ヒト試験において、アミリン類似体プラムリンチドは、体重又は体重増加を低減させることが示されている。アミリンは、代謝病態、例えば、糖尿病及び肥満の処置において有益であり得る。アミリンは、疼痛、骨障害、胃炎を処置するため、脂質、特にトリグリセリドをモジュレートするため、又は体組成に影響を与えるため、例えば、脂肪の優先的喪失及び除脂肪組織の温存のためにも使用され得る。
【0183】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、構成成分ペプチドとしてカルシトニンを含む。ホルモンカルシトニン(CT)は、誘発性高カルシウム血症に応答するその分泌及びその急速なカルシウム低下効果にちなんで命名された。これは、以降C細胞と称されている甲状腺中の神経内分泌細胞中で産生され、それから分泌される。CT(1-32)の最も研究された作用は、破骨細胞に対するその効果である。CTのインビトロ効果としては、波状縁の急速な喪失及びリソソーム酵素の放出の減少が挙げられる。最終的に、CTによる破骨細胞機能の阻害は、骨吸収の減少をもたらす。しかしながら、甲状腺摘出の症例における血清CTの慢性的低減も、甲状腺髄様癌に見出される増加した血清CTも、血清カルシウム又は骨量の変化と関連しないと考えられる。したがって、CT(1-32)の主な機能は、救急状態における急性高カルシウム血症に有効であること、及び/又は「カルシウムストレス」、例えば、成長、妊娠、及び授乳の期間中に骨格を保護することである可能性が最も高い。(Reviewed in Becker,JCEM,89(4):1512-1525(2004)及びSexton,Current Medicinal Chemistry 6:1067-1093(1999))。これは、マウスが正常レベルの基底カルシウム関連値を有したが、増加したカルシウム血症応答を有することを明らかにした、カルシトニン及びCGRP-Iペプチドの両方を除去するカルシトニン遺伝子ノックアウトマウスからの近年のデータと一致する(Kurihara H,et al.,Hypertens Res.2003 February;26 Suppl:S105-8)。
【0184】
CTは、血漿カルシウムレベルに対する効果を有し、破骨細胞機能を阻害し、骨粗鬆症の処置に広く使用される。治療上、サケCT(sCT)は、最小の有害効果で骨密度を増加させ、骨折率を減少させることが考えられる。CTは、過去25年間にわたり、骨格の1つ以上の領域中の骨の肥大又は変形をもたらし得る慢性骨障害である骨パジェット病のための治療法としても良好に使用されてきた。CTは、骨粗鬆症時に認められる骨痛に対するその鎮痛効果のためにも広く使用されるが、この効果についての機序は明確に理解されていない。
【0185】
ヒト研究において、サケカルシトニンは、食後に胃内容排出及びガストリン放出を阻害する一方、食後及び空腹状態の両方において胆嚢の用量依存性弛緩を誘発する。マウス及びサルにおいて、サケカルシトニンは、食欲抑制的に作用し、単一投与後に体重減少を引き起こす。慢性研究において、サケカルシトニンの経口調製物は、肥満及び糖尿病のラットモデルにおいても食物摂取及び体重を低減させる。したがって、治療薬中にカルシトニン構成成分を有することは、体重減少に有益であり得る。
【0186】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、構成成分ペプチドとしてカルシトニン遺伝子関連ペプチドを含む。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、受容体が神経系及び心血管系を含む身体中で広く分布するニューロペプチドである。このペプチドは、感覚神経伝達をモジュレートすると考えられ、これまで発見された最も強力な内因性血管拡張性ペプチドの1つである。CGRPの報告されている生物学的効果としては、炎症におけるサブスタンスPのモジュレーション、神経筋接合部におけるニコチン性受容体活性、膵酵素分泌の刺激、胃酸分泌の低減、末梢血管拡張、心臓加速、神経変調、カルシウム代謝の調節、骨生成刺激、インスリン分泌、体温の増加及び食物摂取の減少が挙げられる。(Wimalawansa,Amylin,calcitonin gene-related peptide,calcitonin and ADM:a peptide superfamily.Crit.Rev Neurobiol.1997;11(2-3):167-239)。CGRPの重要な役割は、α-CGRPの静脈内投与後の平均動脈圧の減少により証明される通りその強力な血管拡張作用により種々の器官への血流をコントロールすることである。血管拡張作用は、末梢交感神経活動の増加により引き起こされる末梢血管耐性の上昇及び高い血圧を実証したホモ接合体ノックアウトCGRPマウスの近年の分析によっても支持される(Kurihara H, et al.,Targeted disruption of ADM and αCGRP genes reveals their distinct biological roles.Hypertens Res.2003 February;26 Suppl:S105-8)。したがって、CGRPは、他の作用のうち血管拡張効果、低血圧効果及び心拍数の増加を誘発すると考えられる。
【0187】
鬱血性心不全を有する患者中へのCGRPの長期注入は、有害効果なしで血行力学的機能に対する持続的で有益な効果を示しており、このことは心不全における使用を示唆する。CGRP使用の他の適応症としては、腎不全、急性及び慢性冠状動脈虚血、心不整脈の処置、他の末梢血管疾患、例えば、レイノー現象、くも膜下出血、高血圧、並びに肺高血圧が挙げられる。妊娠の子癇前中毒症及び早期陣痛も、潜在的に処置可能である。(Wimalawansa,1997)。近年の治療薬使用としては、偏頭痛の処置のためのCGRPアンタゴニストの使用が挙げられる。
【0188】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、構成成分ペプチドとしてアドレノメデュリンを含む。アドレノメデュリン(ADM)は、ペプチドを含有しない組織よりも、ペプチドを含有するはるかに多くの組織でほぼユビキタスに発現される。ADMの公開概説、(Hinson,J.P.et al.,Endocrine Reviews(2000)21(2):138-167)は、血管拡張、細胞成長、ホルモン分泌の調節、及びナトリウム利尿を含む一連の生物学的作用で、心血管系、細胞成長、中枢神経系及び内分泌系に対するその効果を詳述する。ラット、ネコ、ヒツジ、及びヒトにおける研究は、ADMの静脈内注入が強力で持続的な低血圧をもたらし、CGRPのものと同等であることを裏付ける。しかしながら、麻酔ラットにおける平均動脈圧に対するADMの低血圧効果は、CGRPアンタゴニストCGRP8-37により阻害されず、このことはこの効果がCGRP受容体を介して媒介されないことを示唆する。麻酔、有意識又は高血圧ラットにおけるヒトADMの急性又は慢性投与は、血圧降下を伴う全末梢血管抵抗の有意な減少をもたらし、同時に心拍数、心拍出量及び1回拍出量が上昇する。
【0189】
ADMは、胚発生及び分化における重要な因子として、並びにラット内皮細胞についてのアポトーシス生存因子としても提言されている。これは、ADM遺伝子の喪失についてホモ接合体であるマウスが胚発生の間の血管形成の欠損を実証し、したがって妊娠中に死亡した、近年のマウスADMノックアウト研究により支持される。ADM+/-ヘテロ接合体マウスは、組織損傷に対する感受性とともに高い血圧を有することが報告された(Kurihara H,et al.,Hypertens Res.2003 February;26 Suppl:S105-8)。
【0190】
ADMは、下垂体、副腎、生殖器及び膵臓などの内分泌器官に影響を与える。このペプチドは、下垂体からのACTH放出の阻害における役割を有すると考えられる。副腎において、これはラット及びヒトの両方における副腎皮質の分泌活性に影響を及ぼすと考えられ、それはインタクトラットにおいて副腎血流を増加させ、副腎血管床における血管拡張物質として作用する。ADMは女性生殖器官全体にわたり存在することが示されており、血漿レベルは通常の妊娠において上昇する。妊娠高血圧腎症のラットモデルにおける研究は、ADMが妊娠後期の間にラットに与えられた場合、高血圧を好転させ、子の致死率を減少させ得ることを示す。これは妊娠高血圧腎症モデルの妊娠早期の動物又は非妊娠ラットにおいて類似の効果を有さなかったため、このことは、ADMが子宮胎盤心血管系における重要な調節的役割を担い得ることを示唆する。膵臓において、ADMは経口グルコースチャレンジに対するインスリン応答を減衰及び遅延させ、グルコースレベルの初期上昇をもたらしたことから、ADMは阻害的役割を担う可能性が最も高い。ADMは、腎機能にも影響を及ぼし得る。末梢投与されるボーラスは、平均動脈圧を顕著に降下させ得、腎血流量、糸球体濾過率及び尿流量を上昇させ得る。いくつかの場合において、Na+排泄も増加する。
【0191】
ADMは、骨及び肺に対する他の末梢効果も有する。骨については、研究が心血管系及び体液恒常性を超える役割を支持しており、ADMが胎児及び成体齧歯類破骨細胞に作用して公知の破骨細胞成長因子、例えば、トランスフォーミング成長因子-アルファと同等に細胞成長を増加させることを実証している。これは、骨粗鬆症研究の主な困難の1つが、骨芽細胞刺激を介して骨量を増加させる治療法を開発することであるため、臨床的に重要である。肺においては、ADMは、肺血管拡張を引き起こすだけでなく、ヒスタミン又はアセチルコリンにより誘発される気管支収縮も阻害する。ラットモデルにおける肺高血圧を処置するためにエアロゾル化ADMを使用する近年の研究は、ADMで処置されたラットにおいて平均肺動脈圧及び全肺血管抵抗が生理食塩水を与えられたものよりも顕著に降下するという事実により証明される通りこの病態の吸入処置が有効であることを示す。この結果は、全身動脈圧の変更も心拍数の変更もなしで達成された(Nagaya N et al.,Am J Physiol Heart Circ Physiol.2003;285:H2125-31)。
【0192】
健常被験者において、ADMのi.v.注入は動脈圧を低減させ、心拍数、心拍出量、cAMP、プロラクチン、ノルエピネフリン及びレンニンの血漿レベルを刺激することが示されている。これらの患者において、尿量の増加もナトリウム排泄量の増加もほとんど又は全く観察されなかった。心不全又は慢性腎不全を有する患者において、i.v.ADMは、正常対象において見られるものと類似の効果を示し、投与された用量に応じて利尿及びナトリウム利尿も誘導した(Nicholls,M G et al.Peptides.2001;22:1745-1752)実験的ADM処置は、動脈及び肺高血圧、敗血症性ショック及び虚血/再灌流障害において有益であることも示されている(Beltowski J.,Pol J.Pharmacol.2004;56:5-27)。ADM処置についての他の適応症としては、末梢血管疾患、くも膜下出血、高血圧、妊娠の子癇前中毒症及び早期陣痛、並びに骨粗鬆症が挙げられる。
【0193】
AFP-6(すなわち、インテルメジン)は、主に下垂体及び胃腸管中で発現される。AFP-6についての特異的受容体は報告されておらず;しかしながら、結合研究は、AFP-6がアミリンファミリーの全ての公知の受容体に結合することを示す。AFP-6は、内因性CGRP受容体を発現するSK-N-MC及びL6細胞中でcAMP産生を増加させることが示されており、それらの細胞中で標識CGRPとその受容体への結合について競合する。公開インビボ研究において、AFP-6投与は、正常及び本態性高血圧ラットの両方において血圧低減をもたらし、これはCRLR/RAMP受容体との相互作用を介する可能性が最も高い。マウスにおけるインビボ投与は、胃内容排出及び食物摂取の抑制をもたらした。(Roh et al.J Biol.Chem.2004 Feb.20;279(8):7264-74)。
【0194】
アミリンファミリーペプチドホルモンの生物学的作用は、一般に、2つの密接に関連するII型Gタンパク質共役受容体(GPCR)、カルシトニン受容体(CTR)及びカルシトニン受容体様受容体(CRLR)への結合を介して媒介されることが報告されている。クローニング及び機能研究は、CGRP、ADM、及びアミリンがCTR又はCRLR及び受容体活性調節タンパク質(RAMP)の異なる組み合わせと相互作用することを示している。多くの細胞は複数のRAMPを発現する。RAMP及びCTR又はCRLRのいずれかの同時発現は、カルシトニン、CGRP、ADM、及びアミリンについての機能受容体を生成するために要求されることが考えられる。RAMPファミリーは、30%未満の配列同一性を共有するが、共通のトポロジー組織を有する3つのメンバー(RAMP1、-2、及び-3)を含む。CRLR及びRAMP1の同時発現は、CGRPについての受容体の形成をもたらす。CRLR及びRAMP2の同時発現は、ADMについての受容体の形成をもたらす。CRLR及びRAMP3の同時発現は、ADM及びCGRPについての受容体の形成をもたらす。hCTR2及びRAMP1の同時発現は、アミリン及びCGRPについての受容体の形成をもたらす。hCTR2及びRAMP3の同時発現は、アミリンについての受容体の形成をもたらす。
【0195】
ある実施形態において、アミリンファミリーホルモンモジュールを含む本発明のペプチドは、GIP機能に加え、考察の通り、アミリンファミリーモジュール、例えば、アミリン、アミリン/sCT/アミリン、ADM、CGRPと関連する機能及び使用を提供し得る。
【0196】
一実施形態において、アミリン類似体及び誘導体は、天然アミリンの少なくとも1つのホルモン活性を有する。ある実施形態において、アミリン類似体は、天然アミリンが特異的に結合し得る受容体のアゴニストである。例示的なアミリン類似体及び誘導体としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0026812A1号に記載されるものが挙げられる。
【0197】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、構成成分ペプチドとしてCCKを含む。hCCK(コレシストキニン)及び種変異体、並びにそれらの種々の類似体を含むCCKは、当該技術分野において公知である。一般に、CCKは、最初にヒトにおいて同定された33アミノ酸配列を有し、報告によれば、ブタ、ラット、ニワトリ、チンチラ、イヌ及びヒトにおいて実証されている8アミノ酸インビボC末端断片(「CCK-8」)を含む。他の種変異体としては、ブタ、イヌ及びモルモットに見出される39アミノ酸配列、並びにネコ、イヌ及びヒトに見出される58アミノ酸配列、並びにCCK及びガストリンの両方と相同である47アミノ酸配列が挙げられる。C末端チロシン硫酸化オクタペプチド配列(CCK-8)は、種にわたり比較的保存されており、齧歯類の末梢における生物学的活性についての最小配列であり得る。したがって、CCK-33という用語は、一般に、ヒトCCK(1-33)を指す一方、CCK-8(CCK(26-33))は、特に規定されない限り硫酸化及び非硫酸化の両方のC末端オクタペプチドを総称的に指す。さらに、ペンタガストリン又はCCK-5は、C末端ペプチドCCK(29-33)を指し、CCK-4は、C末端テトラペプチドCCK(30-33)を指す。
【0198】
CCKは、胆嚢収縮を刺激するその能力により腸抽出物の調製物から同定された。以降、膵分泌の刺激、胃内容排出の遅延、腸運動の刺激及びインスリン分泌の刺激を含むCCKの他の生物学的作用が報告されている。Lieverse et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.713:268-272(1994)参照。CCKの作用としては、報告によれば、心血管機能、呼吸機能、神経毒性及び発作、癌細胞増殖、無痛覚、睡眠、性及び生殖行動、記憶、不安並びにドーパミン介在行動に対する効果も挙げられる。Crawley and Corwin,Peptides 15:731-755(1994)。CCKの他の報告された効果としては、膵成長の刺激、胆嚢収縮の刺激、胃酸分泌の阻害、膵ポリペプチド放出及び蠕動の収縮要素が挙げられる。CCKの追加的な報告された効果としては血管拡張が挙げられる。Walsh,“Gastrointestinal Hormones,”In Physiology of the Gastrointestinal Tract(3d ed.1994;Raven Press,New York)。
【0199】
グルカゴン、CCK及びボンベシンの組み合わせの注射が非絶食ラットにおける練乳試験食の摂取の阻害を個々の化合物で観察される阻害と比べて増強させたことが報告されている。Hinton et al.,Brain Res.Bull.17:615-619(1986)。グルカゴン及びCCKがラットにおける偽摂食を相乗的に阻害することも報告されている。LeSauter and Geary,Am.J.Physiol.253:R217-225(1987);Smith and Gibbs,Annals N.Y.Acad.Sci.713:236-241 (1994)。エストラジオール及びCCKが満腹感に対する相乗効果を有し得ることも示唆されている。Dulawa et al.,Peptides 15:913-918(1994);Smith and Gibbs,前掲。小腸中の栄養に応答して小腸から生じるシグナルが相乗的にCCKと相乗的に相互作用して食物摂取を低減させ得ることも提言されている。Cox,Behav.Brain Res.38:35-44(1990)。さらに、CCKがいくつかの種において満腹感を誘導することが報告されている。例えば、ラットにおいて腹腔内に、ブタにおいて動脈内に、ネコ及びブタにおいて静脈内に、サル、ラット、イヌ及びヒツジにおいて脳室内に、肥満及び非肥満ヒトにおいて静脈内に注射されたCCKにより摂食抑制が引き起こされたことが報告されている。Lieverse et al.,前掲参照。いくつかの研究機関からの試験は、報告によれば、サル及びラットの両方において食物についての応答を非食物強化因子についての応答と比較することにより、並びにCCKが食後に通常観察される行動の順序(すなわち、食後満腹順序)を誘発することを示すことにより、摂食における阻害に対する低用量のCCKの行動特異性を裏付けている。さらに、CCK後の行動と食物摂取後の行動との比較は、報告によれば、単独で、又はCCKとの組み合わせで、CCKと食物摂取との間の行動類似性を明らかにしている。生理学的血漿濃度におけるCCKが非肥満及び肥満ヒトの両方において食物摂取を阻害し、満腹感を増加させることも報告されている。
【0200】
CCKは、33アミノ酸ペプチドとして特徴付けられる。CCKのアミノ酸配列の種特異的分子変異体が同定されている。報告によれば、33アミノ酸配列及びトランケートペプチド、その8アミノ酸C末端配列(CCK-8)が、ブタ、ラット、ニワトリ、チンチラ、イヌ及びヒトにおいて同定されている。報告によれば、39アミノ酸配列が、ブタ、イヌ及びモルモットにおいて見出された。58アミノ酸配列が、ネコ、イヌ及びヒトにおいて見出されたことが報告された。報告によれば、カエル及びカメは、CCK及びガストリンの両方と相同である47アミノ酸配列を示す。極めて新鮮なヒト腸は、CCK-83と称される少量のさらに大きい分子を含有することが報告されている。ラットにおいては、報告によれば主要な中間形態が同定されており、CCK-22と称される。Walsh,“Gastrointestinal Hormones,”In Physiology of the Gastrointestinal Tract(3d ed.1994;Raven Press,New York)。非硫酸化CCK-8及びテトラペプチド(CCK-4(CCK(30-33)と称される)がラット脳において報告されている。C末端ペンタペプチド(CCK-4(CCK(29-33)と称される)はCCKの構造的相同性、及びニューロペプチド、ガストリンとの相同性も保存する。報告によれば、C末端硫酸化オクタペプチド配列、CCK-8は種にわたり比較的保存されている。報告によれば、ラット甲状腺癌、ブタ脳、及びブタ腸からのプレプロコレシストキニンをコードするcDNAのクローニング及び配列分析は、CCKの前駆体をコードする345個のヌクレオチドを明らかにしたが、それは115個のアミノ酸であり、単離されたことが既に報告されたCCK配列の全てを含有する。Crawley and Corwin,前掲。
【0201】
CCKは、中枢神経系全体にわたり、並びに上部小腸の内分泌細胞及び腸神経中に分布すると言われる。CCKアゴニストとしては、CCK自体(CCK-33とも称される)、CCK-8(CCK(26-33))、非硫酸化CCK-8、ペンタガストリン(CCK-5又はCCK(29-33))、及びテトラペプチド、CCK-4(CCK(30-33))が挙げられる。膵CCK受容体において、CCK-8は、報告によれば、非硫酸化CCK-8又はCCK-4よりも1000~5000大きい効力で結合を置換し、CCK-8は膵アミラーゼ分泌の刺激において非硫酸化CCK-8又はCCK-4よりもおよそ1000倍強力であることが報告されている。Crawley and Corwin,前掲。大脳皮質からのホモジネートにおいて、CCK受容体結合は、非硫酸化CCK-8及びCCK-4により、等モルであった濃度において硫酸化CCK-8よりも10倍又は100倍多く置換されると言われた。同文献。報告によれば、CCKについての受容体は種々の組織中で同定されており、2つの主なサブタイプ、A型受容体及びB型受容体が記載されている。A型受容体は、膵臓、胆嚢、幽門括約筋及び求心性迷走神経線維を含む末梢組織、並びに脳の別々の区域において報告されている。A型受容体サブタイプ(CCKA)は、硫酸化オクタペプチドについて選択的であることが報告されている。B型受容体サブタイプ(CCKB)は、脳全体にわたり、及び胃中で同定されており、報告によれば、硫酸化も8個全てのアミノ酸も要求しない。Reidelberger,J.Nutr.124(8 Suppl.)1327S-1333S(1994);Crawley and Corwin,前掲参照。
【0202】
CCK類似体についての種々のインビボ及びインビトロスクリーニング法が当該技術分野において公知である。例としては、CCK様活性について試験されるべき化合物の急速静脈内注射後のイヌ又はモルモット胆嚢の収縮に関するインビボアッセイ、及びウサギ胆嚢の条片を使用するインビトロアッセイが挙げられる。Walsh,“Gastrointestinal Hormones”,In Physiology of the Gastrointestinal Tract(3d ed.1994;Raven Press,New York)参照。
【0203】
本発明のペプチドの構成成分として有用な構成成分ペプチドホルモンとしては、GLP-1ペプチドホルモンが挙げられる。GLP-1(1-37)、GLP-1(7-37)、及びGLP-1(7-36)アミドを含む天然GLP-1ペプチドホルモンが当該技術分野において公知であり、機能ペプチド類似体及び誘導体も同様に公知である。本明細書において使用される場合、GLP-1は、GLP-1ペプチドホルモンの全ての天然形態を指す。ある例示的な天然ペプチド、ペプチド類似体及び誘導体が本明細書に記載されるが、当該技術分野において公知のホルモン活性を示す任意の公知のGLP-1ペプチドが本発明とともに使用され得ることが認識されるべきである。
【0204】
多くの代謝疾患及び障害の中心は、インスリンレベル及び血中グルコースレベルの調節である。インスリン分泌は、腸内分泌細胞により産生されるインクレチンと称される分泌促進ホルモンにより部分的にモジュレートされる。インクレチンホルモン、グルカゴン様ペプチド-1(「GLP-1」)は、複数の研究においてインスリン分泌に対する向上効果を生じさせることが示されている腸細胞により分泌されるペプチドホルモンである。GLP-1は、腸中でプログルカゴンからプロセシングされ、栄養素誘導インスリン放出を向上させる(Krcymann B.,et al.,Lancet,2:1300-1303(1987))。GLP-1の種々のトランケート形態は、インスリン分泌(インスリン分泌刺激作用)及びcAMP形成を刺激することが公知である(例えば、Mojsov,S.,Int.J.Pep.Pro.Res.,40:333-343(1992)参照)。種々のインビトロ研究機関実験と、GLP-1、GLP-1(7-36)アミド、及びGLP-1(7-37)酸の外因性投与に対する哺乳類、特にヒトのインスリン分泌刺激応答との関係が確立されている(例えば、Nauck,M.A.,et al.,Diabetologia,36:741-744(1993);Gutniak,M.,et al.,New Eng.J.of Med.,326(20):1316-1322(1992);Nauck,M.A.,et al.,J.Clin.Invest.,91:301-307(1993);及びThorens,B.,et al.,Diabetes,42:1219-1225(1993)参照)。
【0205】
GLP-1(7-36)アミドは、インスリン感受性を刺激することにより、及び生理学的濃度でグルコース誘導インスリン放出を向上させることによりインスリン依存性糖尿病患者において優れた抗糖尿病効果を発揮する(Gutniak M.,et al.,New Eng.J. Med.,326:1316-1322(1992))。非インスリン依存性糖尿病患者に投与された場合、GLP-1(7-36)アミドはインスリン放出を刺激し、グルカゴン分泌を降下させ、胃内容排出を阻害し、グルコース利用を向上させる(Nauck,1993;Gutniak,1992;Nauck,1993)。しかしながら、このようなペプチドの血清半減期はかなり短いため、糖尿病の長期療法のためのGLP-1型分子の使用は困難である。
【0206】
より具体的には、GLP-1は、プログルカゴン、160アミノ酸プロホルモンに由来する30アミノ酸ペプチドである。膵臓及び腸中の異なるプロホルモン転換酵素の作用は、グルカゴン及び他の不明ペプチドの産生をもたらす一方、プログルカゴンの開裂は、GLP-1及びGLP-2並びに2つの他のペプチドの産生をもたらす。GLP-1のアミノ酸配列は、全ての哺乳類において100%相同であり、これは重要な生理学的役割を意味する。GLP-1(7-37)酸は、C末端でトランケート及びアミド化されてGLP-1(7-36)NH2を形成する。遊離酸GLP-1(7-37)OH、及びアミド、GLP-1(7-36)NH2の生物学的効果及び代謝ターンオーバーは、区別不能である。慣用により、アミノ酸の番号付与はプログルカゴンからのプロセシングされたGLP-1(1-37)OHに基づく。生物学的に活性なGLP-1は、さらなるプロセシング:GLP-1(7-36)NH2の結果である。したがって、GLP-1(7-37)OH又はGLP-1(7-36)NH2の最初のアミノ酸は7Hisである。
【0207】
胃腸管において、GLP-1は、管腔内グルコースによる刺激に応答して腸、結腸及び直腸粘膜のL細胞により産生される。活性GLP-1の血漿半減期は<5分であり、その代謝クリアランス速度は約12~13分である(Holst,Gastroenterology 107(6):1848-55(1994))。GLP-1の代謝に関与する主なプロテアーゼは、N末端His-Alaジペプチドを開裂し、したがってGLP-1受容体の不活性な弱アゴニスト又はアンタゴニストと種々に記載される代謝産物GLP-1(9-37)OH又はGLP-1(9-36)NH2を産生するジペプチジルペプチダーゼ(DPP-IV又はCD26)である。GLP-1受容体(GLP-1R)は、463アミノ酸のGタンパク質共役受容体であり、膵ベータ細胞、肺、及び程度は少ないが脳、脂肪組織及び腎臓中に位置する。GLP-1(7-37)OH又はGLP-1(7-36)NH2によるGLP-1Rの刺激は、アデニル酸シクラーゼ活性化、cAMP合成、膜脱分極、細胞内カルシウムの上昇及びグルコース誘導インスリン分泌の増加をもたらす(Holz et al.,J.Biol.Chem.270(30):17749-57(1995))。
【0208】
GLP-1は、食物摂取に応答して腸粘膜から分泌される強力なインスリン分泌促進物質である。GLP-1の著しいインクレチン効果は、GLP-1Rノックアウトマウスが耐糖能異常であるという事実により過少評価されている。i.v.注入GLP-1のインクレチン応答は糖尿病対象において保存されるが、それらの対象における経口グルコースに対するインクレチン応答は損なわれる。注入又はsc注射によるGLP-1投与は、糖尿病患者において空腹時グルコースレベルをコントロールし、インスリン分泌についてのグルコース閾値を維持する(Gutniak et al.,N.Engl.J.Med.326:1316-22(1992);Nauck et al.,Diabet.Med.13:(9 Suppl 5):S39-S43(1996);Nauck et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.76:912-917(1993))。GLP-1は、インスリン分泌を生理学的様式で増強し得る一方、スルホニルウレア薬物に伴う低血糖を回避する治療剤としての多大な潜在性を示している。
【0209】
グルコース恒常性に対するGLP-1の他の重要な効果は、グルカゴン分泌の抑制及び胃運動の阻害である。グルカゴンの膵アルファ細胞分泌に対するGLP-1阻害作用は、糖新生及びグリコーゲン分解の低減を介する肝臓グルコース産生の減少をもたらす。GLP-1のこの抗グルカゴン効果は、糖尿病患者において保存される。
【0210】
胃運動及び胃液分泌が阻害されるGLP-1のいわゆる理想的なブレーキ効果は、遠心性迷走神経受容体を介して、又は腸平滑筋に対する直接的作用により影響を受ける。GLP-1による胃酸分泌の低減は、栄養素利用性の遅滞期に寄与し、したがって急速なインスリン応答の必要性を除去する。まとめると、GLP-1の胃腸効果は、グルコース及び脂肪酸吸収の遅延に大きく寄与し、インスリン分泌及びグルコース恒常性をモジュレートする。
【0211】
GLP-1は、ベータ細胞特異的遺伝子、例えば、GLUT-1トランスポーター、インスリン(PDX-1とインスリン遺伝子プロモーターとの相互作用を介する)、及びヘキソキナーゼ-1を誘導することも示されている。したがって、GLP-1は、齧歯類実験により実証される通り、加齢に通常伴う耐糖能異常を潜在的に好転させ得た。さらに、GLP-1は、ベータ細胞不全の状態の間のベータ細胞機能の回復に加え、ベータ細胞新生に寄与し、ベータ細胞量を増加させ得る。
【0212】
GLP-1の中心的効果としては、視床下部GLP-1Rの作用を介して生じる食物摂取の減少と結びつく満腹感の増加が挙げられる。II型糖尿病対象におけるGLP-1の48時間の連続SC注入は、空腹及び食物摂取を減少させ、満腹感を増加させた。これらの食欲抑制効果は、GLP-1Rノックアウトマウスにおいて不存在であった。したがって、インクレチンファミリーホルモンモジュールを含むGIPハイブリッドは、GIP機能を有することに加え、考察の通り、インクレチンファミリーモジュール、例えば、エキセンジン-4、GLP1、GLP2と関連する機能及び使用を提供し得る。
【0213】
当該技術分野において公知の任意のGLP-1ペプチド類似体又は誘導体が本発明とともに使用され得る。一実施形態において、GLP-1ペプチド類似体及び誘導体は、天然GLP-1ペプチドの少なくとも1つのホルモン活性を有する。ある実施形態において、GLP-1ペプチド類似体は、天然GLP-1ペプチドが特異的に結合し得る受容体のアゴニストである。例示的なGLP-1ペプチド類似体及び誘導体としては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第91/11457号に記載されるものが挙げられる。
【0214】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、以下に列記されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むか又はそれである。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
本発明のペプチドのいずれかは、例えば、下記の通りさらに定義され得る。本明細書に記載されるさらなる定義特徴の各々は、特定の位置におけるアミノ酸がさらなる重要な特徴の存在を化学的に可能とする本発明のペプチドのいずれにも適用され得ることが理解される。特定の実施形態において、これらの特徴は、式(I)~(V)の本発明のペプチドのいずれかに存在し得る。
【0219】
種々の実施形態において、本発明のペプチドのアミノ酸のいずれかの窒素基は、任意選択で、C1~C6アルキル、C6~C12アリール、C6~C12アリールC1~C6アルキル、又はC1~C20アルカノイルで置換されていてよく、PEG化バージョンを単独で、又は上記のいずれか、例えば、アセチルのスペーサーとして含む。N置換は不存在であり得ることが理解される。ある実施形態において、本発明のペプチドは、水素、C1~C6アルキル、C6~C12アリール、C6~C12アリールC1~C6アルキル、又はC1~C20アルカノイルから選択されるN末端を含み、PEG化バージョンを単独で、又は上記のいずれか、例えば、アセチルのスペーサーとして含む。本明細書に記載される本発明のペプチドのいずれかの特定の実施形態において、N末端部分は、水素である。
【0220】
本明細書に記載される種々の式のいずれかを有する本発明のペプチドのいずれかのある実施形態において、N置換部分は、メチル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、イソバレリル、イソブチリル、オクタニル、並びにラウリン酸、ヘキサデカン酸、及びγ-Glu-ヘキサデカン酸のコンジュゲートアミドから選択される。ある実施形態において、N置換部分は、pGluである。特定の実施形態において、N置換はアセチルであり、それにより本発明のペプチドはそのNにおいてアシル化されている(例えば、N末端アミノ酸残基、例えば、N末端Pen残基をキャッピング又は保護するため)。
【0221】
本明細書に記載される本発明のペプチドのいずれかのある実施形態において、N置換部分は、酸である。ある実施形態において、N置換部分は、酢酸、ギ酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、イソ吉草酸、イソ酪酸、オクタン酸、ラウリン酸、ヘキサデカン酸、4-ビフェニル酢酸、4-フルオロフェニル酢酸、没食子酸、ピログルタミン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、パルミチン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、4-メチルビシクロ(2.2.2)-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸から選択される酸である。
【0222】
特定の実施形態において、N置換部分は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、及び2-ヒドロキシエタンスルホン酸から選択されるアルキルスルホン酸である。
【0223】
特定の実施形態において、N置換部分は、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、及びカンファースルホン酸から選択されるアリールスルホン酸である。
【0224】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、あるペプチド構成成分を第2のサブユニットと共有結合させる1つ以上のリンカー基を含む。サブユニットは、任意選択で、それらのC末端を介して結合している。
【0225】
本発明のペプチドは、一般に、少なくとも2つのペプチド構成成分を含み、ペプチド構成成分の少なくとも1つ、例えば、GIP構成成分は、少なくとも1つのホルモン活性を示す。本発明の文脈内で、ペプチド構成成分の少なくとも1つは、GIPペプチド、類似体、誘導体、断片、又はペプチド性向上剤から構成される。少なくとも1つのホルモン活性を示すペプチド構成成分は、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端に位置し得るか、又は例えば、ペプチドが3つ以上のペプチド構成成分を含むイベントにおいてペプチドの内部部分中に位置し得る。
【0226】
ある実施形態において、少なくとも1つのホルモン活性を示すペプチド構成成分を、そのペプチド構成成分のC末端がアミド化されるように位置させることが好ましいことがある。ペプチド構成成分のC末端のアミド化は、モジュールをハイブリッドペプチドのC末端に位置させることにより、又はペプチドをペプチドのN末端においてC末端-N末端方向で構成することにより達成され得る。両方の構成において、ペプチド構成成分のC末端は、アミド化に利用可能である。C末端アミド化がある具体的な構成成分ペプチドとしては、好ましくは、アミリンファミリーペプチド、CCK、PYY、hGLP-1(7-36)及びhGLP-2が挙げられ得る。C末端アミドが必ずしも例示的でない(別途記述される場合、モジュールのC末端における伸長は容易に認容される)具体的な構成成分ペプチドとしては、エキセンジン-4、エキセンジン-4(1-28)、GIP、GLP-1(7-37)、カエルGLP-1(7-36)、及びカエルGLP-2が挙げられる。しかしながら、これらの構成成分ペプチドがペプチドのC末端に位置する場合、それらは依然として任意選択でアミド化されていてよく、実際、好ましくは、任意選択でアミド化されていてよい。
【0227】
本発明のペプチドの構成成分ペプチドは、当該技術分野において公知の任意の様式で共有結合していてよい。安定的な結合が使用され得るか、又は開裂性結合が使用され得る。一実施形態において、第1のペプチドのカルボキシは、第2のペプチドのアミノに直接結合していてよい。別の実施形態において、結合されるモジュールに結合基が使用され得る。さらに、所望により、結合を安定化するために当該技術分野において公知のスペーサー又はターンインデューサーが用いられ得る。例として、N末端に位置するペプチド構成成分のC末端のアミド化が望まれない場合、モジュールは、第2のモジュールに直接、又は当該技術分野において公知の任意の適切な結合基、例えば、アルキル;PEG;アミノ酸、例えば、Lys、Glu、ベータ-Ala;ポリアミノ酸、例えば、ポリ-his、ポリ-arg、ポリ-lys、ポリ-ala、Gly-Ser-Gly、Gly-Gly-Pro-Ser、Ala-Lys-Ala、Gly-Lys-Arg(GKR)など;二官能性リンカー(例えば、Pierce catalog,Rockford,Ill.参照);アミノカプロイル(「Aca」)、ベータ-アラニル、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタノイル、又は当該技術分野において公知の他の開裂性及び非開裂性リンカーなどを使用して結合していてよい。本明細書において、各々が明示的に示されるように、例示される各リンカー含有ハイブリッド中のリンカーがGlyリンカーにより置き換えられている具体的なハイブリッドの実施形態、特にGlyリンカーがGly-Gly-Glyである実施形態が具体的に記載される。一実施形態において、リンカー又はスペーサーは、1~30残基長であり、別の実施形態において、2~30残基、さらに別の実施形態において、3~30残基長であり、2~30(両端含む)の任意の整数の長さであり;各整数単位、例えば、2、3、4、5、6、7などが企図される。一実施形態において、Glyリンカーが使用され、特定の実施形態において、3残基リンカーGly-Gly-Glyが使用される。
【0228】
ある実施形態において、本発明のペプチド構成成分は、好適な結合部分、例えば、各ペプチドサブユニット中に1つある2つのシステイン残基間のジスルフィド架橋により、又は限定されるものではないが、本明細書に定義されるものを含む別の好適なリンカー部分により結合していてよい。ある実施形態において、C又はN末端フリーアミンのいずれかを排除し、それにより残りのフリーアミンにおけるダイマー化を可能とするようにサブユニットが修飾され得る。さらに、一部の例において、1つ以上のモノマーサブユニットの末端は、トリフルオロペンチル、アセチル、オクタニル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、パルミチル、トリフルオロメチル酪酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロプロピル酢酸、4-フルオロ安息香酸、4-フルオロフェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、テトラヒドロ-2H-ピラン-4カルボン酸、コハク酸、及びグルタル酸からなる群から選択されるアシル化有機化合物でアシル化されている。一部の例において、サブユニットは、フリーカルボキシ末端及びフリーアミノ末端の両方を含み、それにより使用者は、所望の末端におけるダイマー化を達成するようにサブユニットを選択的に修飾することができる。当業者は、本発明のサブユニットが、所望の結合のための単一の規定のアミンを得るために選択的に修飾され得ることを認識する。
【0229】
本明細書に開示されるサブユニットのC末端残基は、任意選択でアミドであることがさらに理解される。さらに、ある実施形態において、C末端におけるダイマー化は、当該技術分野において一般に理解される通り、アミン官能基を有する側鎖を有する好適なアミノ酸を使用することにより容易にされることが理解される。N末端残基に関しては、カップリングは末端残基のフリーアミンを介して達成され得るか、又は当該技術分野において一般に理解される通り、フリーアミンを有する好適なアミノ酸側鎖を使用することにより達成され得ることが一般に理解される。
【0230】
サブユニットを連結するリンカー部分は、本明細書の教示と適合性である任意の構造、長さ、及び/又はサイズを含み得る。少なくとも1つの実施形態において、リンカー部分は、システイン、リジン、DIG、PEG4、PEG4-ビオチン、PEG13、PEG25、PEG1K、PEG2K、PEG3.4K、PEG4K、PEG5K、IDA、ADA、Boc-IDA、グルタル酸、イソフタル酸、1,3-フェニレン二酢酸、1,4-フェニレン二酢酸、1,2-フェニレン二酢酸、トリアジン、Boc-トリアジン、IDA-ビオチン、PEG4-ビオチン、AADA、好適な脂肪族化合物、芳香族化合物、複素環式芳香族化合物、及びおよそ400Da~およそ40,000Daの分子量を有するポリエチレングリコール系リンカーからなる非限定的な群から選択される。ある実施形態において、PEG2は、HO2CCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CO2Hである。
【0231】
好適なリンカー部分の非限定的な例は、表3に提供される。
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、リンカー部分を含む。一部の実施形態において、本発明のペプチドのサブユニットは、各サブユニット中に1つある2つのシステイン残基間に形成される分子間ジスルフィド結合を介して接続されている。一部の実施形態において、本発明のペプチドは、リンカー部分及び2つのシステイン残基間に形成される分子間ジスルフィド結合の両方を含む。一部の実施形態において、分子内結合は、ジスルフィド結合に代えてチオエーテル、ラクタム、トリアゾール、セレノエーテル、ジセレニド又はオレフィンである。
【0238】
当業者は、本明細書に開示されるリンカー(例えば、C及びN末端リンカー)部分が好適なリンカーの非限定的な例であること、及び本発明が任意の好適なリンカー部分を含み得ることを認識する。したがって、本発明の一部の実施形態は、本明細書の表のいずれかに示されるペプチドから選択される2つのモノマーサブユニットから構成されるか又は本明細書の表のいずれかに提示される配列を含むか若しくはそれからなるホモ又はヘテロダイマーペプチドを含み、それぞれのサブユニットのC又はN末端(又は内部アミノ酸残基)は任意の好適なリンカー部分により結合して本発明のペプチドを提供する。ある実施形態において、リンカーは、あるサブユニットのN又はC末端及び本発明のペプチドを構成する他のサブユニットの内部アミノ酸残基に結合する。ある実施形態において、リンカーは、あるモノマーサブユニットの内部アミノ酸残基及び本発明のペプチドを構成する他のモノマーサブユニットの内部アミノ酸残基に結合する。さらなる実施形態において、リンカーは、両方のサブユニットのN又はC末端に結合する。
【0239】
特定の実施形態において、サブユニットの1つ以上は、式(I)~(V)のいずれか1つの配列若しくは構造、又は本明細書に記載されるペプチドのいずれかを含む。本発明のペプチドの特定の実施形態において、リンカー部分は、本明細書に記載されるリンカーのいずれかである。ある実施形態において、リンカーは、リジンリンカー、ジエチレングリコールリンカー、イミノ二酢酸(IDA)リンカー、β-Ala-イミノ二酢酸(β-Ala-IDA)リンカー、又はPEGリンカーである。
【0240】
本発明のペプチドのいずれかの種々の実施形態において、ペプチドサブユニットの各々は、そのN末端、C末端、又は内部アミノ酸残基を介してリンカー部分に結合している。本発明のペプチドのいずれかのある実施形態において、各ペプチドサブユニットのN末端は、リンカー部分により連結されている。本発明のペプチドのいずれかのある実施形態において、各ペプチドサブユニットのC末端は、リンカー部分により連結されている。本発明のペプチドのいずれかのある実施形態において、各ペプチドサブユニットは、内部アミノ酸に結合しているリンカー部分により連結されている。
【0241】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、1つ以上のコンジュゲート化学置換基、例えば、親油性置換基及びポリマー部分を含み、それらは本明細書において半減期延長部分と称され得る。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、親油性置換基は血流中のアルブミンに結合し、それにより本発明のペプチドを酵素的分解から保護し、したがってその半減期を向上させると考えられる。さらに、ポリマー部分は半減期を向上させ、血流中のクリアランスを低減させると考えられる。
【0242】
追加の実施形態において、本発明のペプチド、例えば、式(I)~(V)のペプチドのいずれかは、ペプチド中に存在するアミノ酸残基に結合しているリンカー部分をさらに含み、例えば、リンカー部分は、ペプチドの任意のアミノ酸の側鎖、ペプチドのN末端アミノ酸、又はペプチドのC末端アミノ酸に結合していてよい。
【0243】
追加の実施形態において、本発明のペプチド、例えば、式(I)~(V)のペプチドのいずれかは、ペプチド中に存在するアミノ酸残基に結合している半減期延長部分をさらに含み、例えば、半減期延長部分は、ペプチドの任意のアミノ酸の側鎖、ペプチドのN末端アミノ酸、又はペプチドのC末端アミノ酸に結合していてよい。
【0244】
追加の実施形態において、本発明のペプチド、例えば、式(I)~(V)のペプチドのいずれかは、ペプチド中に存在するアミノ酸残基に結合しているリンカー部分に結合している半減期延長部分をさらに含み、例えば、半減期延長部分は、ペプチドの任意のアミノ酸の側鎖、ペプチドのN末端アミノ酸、又はペプチドのC末端アミノ酸に結合しているリンカー部分に結合していてよい。
【0245】
特定の実施形態において、ペプチドは、以下に示される構造(式中、n=0~24又はn=14~24である)を有する半減期延長部分を含む:
【化1】
【0246】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、表4に示される半減期延長部分を含む。
【0247】
【0248】
【0249】
ある実施形態において、半減期延長部分はペプチドに直接結合している一方、他の実施形態において、半減期延長部分はリンカー部分、例えば、本明細書に示されるもののいずれかを介してペプチドに結合している。
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、表6に示される以下の組み合わせのいずれかを含む、本明細書に示されるリンカー部分のいずれか及び本明細書に示される半減期延長部分のいずれかを含む。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
一部の実施形態において、ペプチドコンジュゲート部分、例えば、半減期延長部分の間(例えば、表7に示されるような)に存在する複数のリンカーが存在し得る。
【0259】
【0260】
ある実施形態において、コンジュゲート化学置換基、すなわち半減期延長部分を含む本発明のペプチドの半減期は、コンジュゲート化学置換基を有さないことを除き同じペプチドの半減期の少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、又は少なくとも500%である。ある実施形態において、親油性置換基及び/又はポリマー部分は、上皮を通るペプチドの透過性及び/又は粘膜固有層におけるその保持を向上させる。ある実施形態において、コンジュゲート化学置換基を含む本発明のペプチドの上皮を通る透過性及び/又は粘膜固有層における保持は、コンジュゲート化学置換基を有さないことを除き同じペプチドの半減期の100%、少なくとも120%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも400%、又は少なくとも500%である。
【0261】
ある実施形態において、本発明のペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基(例えば、Lys残基)の側鎖は、親油性置換基にコンジュゲート(例えば、共有結合により結合)している。親油性置換基は、アミノ酸側鎖中の原子に共有結合していてよく、又は代替的に1つ以上のスペーサーを介してアミノ酸側鎖にコンジュゲートしていてよい。スペーサーは、存在する場合、ペプチドサブユニットと親油性置換基との間の間隔を提供し得る。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、本明細書に開示されるコンジュゲート部分のいずれかを含む。
【0262】
ある実施形態において、親油性置換基は、4~30個のC原子、例えば、少なくとも8又は12個のC原子、好ましくは、24個以下のC原子、又は20個以下のC原子を有する炭化水素鎖を含み得る。炭化水素鎖は、直鎖又は分枝鎖であり得、飽和又は不飽和であり得る。ある実施形態において、炭化水素鎖は、アミノ酸側鎖又はスペーサーへの結合の一部を形成する部分、例えば、アシル基、スルホニル基、N原子、O原子又はS原子で置換されている。一部の実施形態において、炭化水素鎖は、アシル基で置換されており、したがって炭化水素鎖は、アルカノイル基、例えば、パルミトイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル又はステアロイルの一部を形成し得る。
【0263】
親油性置換基は、本発明のペプチド中の任意のアミノ酸側鎖にコンジュゲートしていてよい。ある実施形態において、アミノ酸側鎖は、スペーサー又は親油性置換基とエステル、スルホニルエステル、チオエステル、アミド又はスルホンアミドを形成するためのカルボキシ、ヒドロキシル、チオール、アミド又はアミン基を含む。例えば、親油性置換基は、Asn、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Ser、Thr、Tyr、Trp、Cys又はDbu、Dpr若しくはOrnにコンジュゲートしていてよい。ある実施形態において、親油性置換基は、Lysにコンジュゲートしている。本明細書に提供される式のいずれかにおいてLysとして示されるアミノ酸は、例えば、親油性置換基が付加されるDbu、Dpr又はOrnにより置き換えられていてよい。
【0264】
ある実施形態において、本発明のペプチドは、ペプチド内の1つ以上のアミノ酸側鎖への化学部分のコンジュゲーションを介して、例えば、安定性を向上させるか、透過性を増加させるか、又は薬物様特徴を向上させるために修飾され得る。例えば、リジンN(イプシロン)のN(イプシロン)、アスパラギン酸のβ-カルボキシル、又はグルタミン酸のγ-カルボキシルは、適切に官能化され得る。したがって、修飾ペプチドを産生するために、ペプチド内のアミノ酸は、適切に修飾され得る。さらに、一部の例において、側鎖は、トリフルオロペンチル、アセチル、オクタニル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、パルミチル、トリフルオロメチル酪酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロプロピル酢酸、4-フルオロ安息香酸、4-フルオロフェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、テトラヒドロ-2H-ピラン-4カルボン酸、コハク酸、グルタル酸又は胆汁酸からなる群から選択されるアシル化有機化合物でアシル化されている。当業者は、一連のコンジュゲート、例えば、PEG4、イソGlu及びそれらの組み合わせなどが結合され得ることを認識する。当業者は、ペプチドを有するアミノ酸が等価的に置き換えられ得ること、例えば、LysがDap、Dab、α-MeLys又はOrnに置き換えられ得ることを認識する。ペプチド内の修飾残基の例は、表8に示される。
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
本発明のさらなる実施形態において、或いは又はさらに、例えば、溶解度及び/又はインビボ(例えば、血漿中)半減期及び/又はバイオアベイラビリティを増加させるために、本発明のペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基の側鎖がポリマー部分にコンジュゲートしている。このような修飾は、治療タンパク質及びペプチドのクリアランス(例えば、腎クリアランス)を低減させることも公知である。
【0269】
本明細書において使用される場合、「ポリエチレングリコール」又は「PEG」は、一般式H-(O-CH2-CH2)n-OHのポリエーテル化合物である。PEGは、ポリエチレンオキシド(PEO)又はポリオキシエチレン(POE)としても公知であり、本明細書において使用される場合、それらの分子量に応じて、PEO、PEE、又はPOGは、エチレンオキシドのオリゴマー又はポリマーを指す。3つの名称は化学的に同義であるが、PEGは20,000Da未満の分子量を有するオリゴマー及びポリマーを、PEOは20,000Da超の分子量を有するポリマーを、POEは任意の分子量のポリマーを指す傾向がある。PEG及びPEOは、それらの分子量に応じて、液体又は低融点固体である。本開示全体にわたり、3つの名称は区別なく使用される。PEGは、エチレンオキシドの重合により調製され、300Da~10,000,000Daの広範囲の分子量にわたり市販されている。異なる分子量を有するPEG及びPEOは異なる用途において使用され、鎖長の効果に起因して異なる物理的特性(例えば粘度)を有するが、それらの化学的特性はほぼ同一である。ポリマー部分は、好ましくは、水溶性(両親媒性又は親水性)であり、非毒性であり、かつ薬学的に不活性である。好適なポリマー部分としては、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGのホモ-若しくはコポリマー、PEGのモノメチル置換ポリマー(mPEG)、又はポリオキシエチレングリセロール(POG)が挙げられる。例えば、Int.J.Hematology 68:1(1998);Bioconjugate Chem.6:150(1995);及びCrit.Rev.Therap.Drug Carrier Sys.9:249(1992)参照。半減期延長の目的で調製されるPEG、例えば、モノ活性化アルコキシ末端ポリアルキレンオキシド(POA)、例えば、モノ-メトキシ末端ポリエチレングリコール(mPEG)も包含され;ビス活性化ポリエチレンオキシド(グリコール)又は他のPEG誘導体も企図される。好適なポリマーは、約200Da~約40,000Da又は約200Da~約60,000Daの範囲の重量でかなり変動し、通常、本発明の目的で選択される。ある実施形態において、200~2,000又は200~500の分子量を有するPEGが使用される。重合プロセスに使用される開始剤に応じてPEGの異なる形態も使用され得、一般的な開始剤は、単官能性メチルエーテルPEG、又はmPEGと略されるメトキシポリ(エチレングリコール)である。
【0270】
低分子量PEGは、単分散、均一、又は離散と称される純粋なオリゴマーとしても入手可能である。これらは、本発明のある実施形態において使用される。
【0271】
異なる形状を有するPEGも利用可能である:分枝PEGは、中央コア基から生じる3~10本のPEG鎖を有し;星型PEGは、中央コア基から生じる10~100本のPEG鎖を有し;櫛型PEGは、通常ポリマー骨格上にグラフトされた複数のPEG鎖を有する。PEGは直鎖でもよい。PEGの名称に含まれることが多い数字はその平均分子量を示し、(例えば、n=9であるPEG)はおよそ400ダルトンの平均分子量を有し、PEG400と標識される。
【0272】
本明細書において使用される場合、「PEG化」は、PEG構造を本発明のペプチドに共有結合によりカップリングさせる作用であり、それは次いで「PEG化ペプチド」と称される。ある実施形態において、PEG化側鎖のPEGは、約200~約40,000の分子量を有するPEGである。ある実施形態において、PEG化スペーサーのPEGは、PEG3、PEG4、PEG5、PEG6、PEG7、PEG8、PEG9、PEG10、又はPEG11である。ある実施形態において、PEG化スペーサーのPEGは、PEG3又はPEG8である。
【0273】
他の好適なポリマー部分としては、ポリアミノ酸、例えば、ポリリジン、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸が挙げられる(例えば、Gombotz,et al.(1995),Bioconjugate Chem.,vol.6:332-351;Hudecz,et al.(1992),Bioconjugate Chem.,vol.3,49-57及びTsukada,et al.(1984),J.Natl.Cancer Inst.,vol.73,:721-729参照。ポリマー部分は、直鎖又は分枝鎖であり得る。一部の実施形態において、これは、500~40,000Da、例えば、500~10,000Da、1000~5000Da、10,000~20,000Da、又は20,000~40,000Daの分子量を有する。
【0274】
一部の実施形態において、本発明のペプチドは、2つ以上のそのようなポリマー部分を含み得、その場合、全てのそのような部分の総分子量は、一般に、上記に提供される範囲内である。
【0275】
一部の実施形態において、ポリマー部分は、アミノ酸側鎖のアミノ、カルボキシル又はチオール基に(共有結合により)カップリングしている。ある例は、Cys残基のチオール基及びLys残基のイプシロンアミノ基であり、Asp及びGlu残基のカルボキシル基も関与し得る。
【0276】
当業者は、カップリング反応を実施するために使用され得る好適な技術を十分に理解する。例えば、メトキシ基を担持するPEG部分は、Nektar Therapeutics ALから市販されている試薬を使用してマレイミド結合によりCysチオール基にカップリングされ得る。好適な化学反応の詳細については、国際公開第2008/101017号、及び上記引用される参照文献も参照。マレイミド官能化PEGは、Cys残基の側鎖スルフヒドリル基にもコンジュゲートされ得る。
【0277】
本明細書において使用される場合、ジスルフィド結合酸化は、単一ステップ内で生じ得るか又は2ステッププロセスである。本明細書において使用される場合、単一酸化ステップについて、アセンブリ中にトリチル保護基が用いられることが多く、それにより開裂中の脱保護とそれに続く溶液酸化が可能となる。第2のジスルフィド結合が要求される場合、天然又は選択的酸化の選択肢がある。オルソゴナル保護基を要求する選択的酸化について、システインのための保護基としてAcm及びトリチルが使用される。開裂は1つの保護ペアのシステインの除去をもたらし、このペアの酸化を可能とする。次いで、システイン保護Acm基の第2の酸化的脱保護ステップが実施される。天然酸化について、全てのシステインにトリチル保護基が使用され、ペプチドの天然フォールディングを可能とする。当業者は、酸化ステップを実施するために使用され得る好適な技術を十分に理解する。
【0278】
ポリ(エチレン)グリコールを含むいくつかの化学部分は、20種の天然存在アミノ酸中に存在する官能基、例えば、リジンアミノ酸残基中のイプシロンアミノ基、システインアミノ酸残基中に存在するチオール、又は他の求核アミノ酸側鎖などと反応する。ペプチド中で複数の天然存在アミノ酸が反応する場合、それらの非特異的化学反応は、本発明のペプチド内の異なる位置において1つ以上のポリ(エチレン)グリコール鎖にコンジュゲートしているペプチドの多くの異性体を含有する最終的な本発明のペプチドをもたらす。
【0279】
本発明のある実施形態の1つの利点としては、本発明のペプチド中に存在する天然存在アミノ酸と非反応性の化学物質により活性化PEGと反応する固有の官能基を有する1つ以上の非天然アミノ酸を取り込むことにより、1つ以上の化学部分(例えば、PEG)を付加する能力が挙げられる。例えば、アジド及びアルキン基は、タンパク質中の全ての天然存在官能基と非反応性である。したがって、非天然アミノ酸は、不所望な非特異的反応なしでPEG又は別の修飾が望まれる本発明のペプチド中の1つ以上の規定の部位中で取り込まれ得る。ある実施形態において、反応に関与する特定の化学物質は、PEG鎖と本発明のペプチドとの間の安定的な共有結合をもたらす。さらに、このような反応は、ほとんどのペプチドに損傷を与えない穏やかな水性条件で実施され得る。ある実施形態において、非天然アミノ酸残基は、AHAである。
【0280】
天然アミノ酸に結合する化学部分は、数及び範囲が制限される。対照的に、非天然アミノ酸に結合する化学部分は、化学部分を標的分子に結合させる顕著に幅広い有用な化学物質を利用し得る。本質的に、非天然アミノ酸、例えば、化学部分が結合し得る反応性部位又は側鎖を含有する非天然アミノ酸、例えば、アルデヒド又はケト誘導体化アミノ酸を含む任意のタンパク質(又はその一部)を含む任意の標的分子が、化学部分を結合させるための基質として機能し得る。
【0281】
多数の化学部分が、当該技術分野における種々の公知の方法を介して特定の分子に接続又は結合され得る。種々のこのような方法は、米国特許第8,568,706号に記載されている。例示的な例として、アジド部分は、化学部分、例えば、本明細書に記載されるPEG又は他のものをコンジュゲートするのに有用であり得る。アジド部分は、反応性官能基として機能し、ほとんどの天然存在化合物中に不存在である(したがって、これは天然存在化合物の天然アミノ酸と非反応性である)。アジドは、限られた数の反応パートナーとの選択的ライゲーションも受け、アジドは小さく、分子サイズを顕著に変更せずに生物サンプルに導入され得る。分子へのアジドの取り込み又は導入を可能とする1つの反応は、アジドの銅媒介ヒュスゲン[3+2]環化付加である。この反応は、ペプチドの選択的PEG化に使用され得る。(Tornoe et al.,J.Org.Chem.67:3057,2002;Rostovtsev et al.,Angew.Chem.,Int.Ed.41:596,2002;及びWang et al.,J.Am.Chem.Soc.125:3192,2003,Speers et al.,J.Am.Chem.Soc.,2003,125,4686)。
【0282】
別の実施形態において、本発明のペプチドに係るペプチドは、天然ペプチド、又は領域Sのアミノ酸配列から欠失された1つ以上のアミノ酸残基を、単独で、又は1つ以上の挿入若しくは置換との組み合わせで有し得る。一態様において、本発明のGIP類似体又はペプチドは、天然GIPのN末端又はC末端から欠失された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。別の実施形態において、本発明のペプチドは、天然GIP、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-30)、GIP(1-39)、GIP(19-26)、GIP(19-30)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)又は領域Sのアミノ酸1~42位で欠失された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。このような欠失としては、2つ以上の連続又は非連続欠失が挙げられ得る。例示的な実施形態において、1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、又は5つ以下のアミノ酸が、天然GIPから、GIP(1-30)、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-39)、GIP(19-30)、GIP(19-26)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)から、又は領域が例えば、エキセンジン(31-39)若しくはエキセンジン(27-39)である場合の領域Sから欠失される。一実施形態において、天然GIPは、ヒト、ラット、マウス、ブタ又はウシである。
【0283】
本発明のペプチドの一実施形態において、GIPペプチド、類似体、誘導体又はハイブリッドのいずれかは、アゴニストとしての使用が意図される場合、GIPのN末端配列の位置YAEGTFISDYSIAMDに対応する1~15位のいずれか1つにおける欠失を含まない。換言すると、GIPの対応する1~15位の各々は存在するが、それらは置換又は誘導体化され得る。さらなる実施形態において、アゴニストGIP化合物は、GIPのC末端配列の位置GTFISDYSIAMDに対応する4~15位のいずれか1つにおける欠失を含まない。換言すると、GIPの対応する4~15位の各々は存在するが、それらは置換又は誘導体化され得る。したがって、アゴニストGIP化合物の実施形態において、1~15又は4~15位の各々は存在し、天然存在GIP種のその位置に存在するアミノ酸により、又はその置換若しくは誘導体により占有される。アゴニストGIP化合物のさらに別の実施形態において、本明細書に記載される種々の実施形態から、示される通り適切な受容体結合活性も受容体活性化活性も実証しなかったGIP化合物が除外される。
【0284】
本発明のペプチドの一実施形態において、GIPペプチド、類似体、誘導体又はハイブリッドのいずれかは、アゴニストとしての使用が意図される場合、GIPのN末端配列の位置YAEGTFISDYSIAMDに対応する1~15位における欠失を含まない。換言すると、GIPの対応する1~15位の各々は存在するが、それらは置換又は誘導体化され得る。さらなる実施形態において、アゴニストGIP化合物は、GIPのC末端配列の位置に対応する4~15位のいずれか1つにおける欠失を含まない。換言すると、GIPの対応する4~15位の各々は存在するが、それらは置換又は誘導体化され得る。
【0285】
本発明のペプチドの別の実施形態において、GIP類似体又はハイブリッドは、GIP(1-30)、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-39)、GIP(19-30)、GIP(19-26)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)からの天然GIP又は領域Sのアミノ酸配列中に挿入された1つ以上のアミノ酸残基を、単独で、又は1つ以上の欠失及び/又は置換との組み合わせで有し得る。一態様において、本発明は、天然GIP、GIP(1-30)、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-39)、GIP(19-30)、GIP(19-26)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)、又は領域S、例えば、エキセンジン(27-39)及びエキセンジン(31-39)のアミノ酸配列中への2つ以上のアミノ酸残基の単一挿入、又は連続若しくは非連続挿入を有するGIP類似体又はハイブリッドペプチドに関する。一実施形態において、天然GIPは、ヒト、ラット、マウス、ブタ又はウシである。
【0286】
本発明のペプチドの別の実施形態において、GIP類似体又はハイブリッドは、GIP、GIP(1-30)、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-39)、GIP(19-30)、GIP(19-26)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)、又は領域S、例えば、エキセンジン(27-39)及びエキセンジン(31-39)の配列中への1つ以上の天然でないアミノ酸及び/又は非アミノ酸の挿入を含み得る。例示的な実施形態において、GIP、GIP(1-30)、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-39)、GIP(19-30)、GIP(19-26)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)又は領域S、例えば、エキセンジン(27-39)及びエキセンジン(31-39)の配列中に挿入される天然でないアミノ酸は、ベータ-ターン模倣体又はリンカー分子であり得る。さらなるこのような実施形態において、天然GIPは、ヒト、ラット、マウス、ブタ又はウシであり得る。
【0287】
したがって、任意選択の結合基を有する化合物が示される一方、本明細書の配列の一実施形態において、リンカーは、Glyリンカー、例えば、Gly-Gly-Gly、又はベータAlaリンカー、例えば、ベータAla-ベータAlaであり、それらの全ては具体的に想定される。特に興味深いリンカー分子としては、アミノカプロイル(「Aca」)、ベータ-アラニル、及び8-アミノ-3,6-ジオキサオクタノイルが挙げられる。さらに他の実施形態において、ミミックA:N-(3S,6S,9S)-2-オキソ-3-アミノ-1-アザビシクロ[4.3.0]-ノナン-9-カルボン酸、ミミックB:N-(3S,6S,9R)-2-オキソ-3-アミノ-7-チア-1-アザビシクロ[4.3.0]-ノナン-9-カルボン酸、並びにさらにはAla-Aib及びAla-Proジペプチドを含むベータ-ターン模倣体が使用される。
【0288】
本発明のペプチドの別の実施形態において、GIP類似体又はハイブリッドは、「伸長部」又は「テール」として公知のポリペプチドのいずれかの末端におけるポリアミノ酸配列(例えば、ポリ-his、ポリ-arg、ポリ-lys、ポリ-alaなど)の挿入を含み得る。
【0289】
一部の実施形態において、本発明の新規ペプチドは、アミノ酸配列挿入を含み、それとしては、天然GIP、GIP(1-30)、GIP(1-14)、GIP(1-26)、GIP(1-39)、GIP(19-30)、GIP(19-26)、GIP(19-39)若しくはGIP(19-42)、又は領域S、例えば、エキセンジン(27-39)及びエキセンジン(31-39)の長さに沿う各アミノ酸位置におけるアラニン置換が挙げられる。
【0290】
本発明のペプチドは、GIP類似体及びハイブリッドペプチドの誘導体も含む。このような誘導体としては、1つ以上の水溶性ポリマー分子、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)若しくは種々の長さの脂肪酸鎖(例えば、ステアリル、パルミトイル、オクタノイルなど)にコンジュゲートしているか又はポリアミノ酸、例えば、ポリ-his、ポリ-arg、ポリ-lys、及びポリ-alaの付加によりコンジュゲートしているGIP類似体及びハイブリッドポリペプチドが挙げられる。ポリペプチドの修飾としては、小分子置換基、例えば、短鎖アルキル及び拘束(constrained)アルキル(例えば、分枝、環式、縮合、アダマンチル)、並びに芳香族基も挙げられ得る。水溶性ポリマー分子は、好ましくは、約500~約20,000ダルトンの範囲の分子量を有する。
【0291】
このようなポリマーコンジュゲーション及び小分子置換基修飾は、GIP類似体及びハイブリッドポリペプチドのN若しくはC末端においてか又はその配列内のアミノ酸残基の側鎖において単独で生じ得る。或いは、GIP類似体及びハイブリッドペプチドに沿う複数の誘導体化の部位が存在し得る。1つ以上のアミノ酸のリジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、又はシステインでの置換は、誘導体化のための追加の部位を提供し得る。例えば、米国特許第5,824,784号及び同第5,824,778号参照。一実施形態において、本発明のペプチドは、1、2、又は3つのポリマー分子にコンジュゲートしていてよい。
【0292】
水溶性ポリマー分子は、好ましくは、アミノ、カルボキシル、又はチオール基に結合しており、N若しくはC末端により、又はリジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、若しくはシステインの側鎖において結合していてよい。或いは、水溶性ポリマー分子は、ジアミン及びジカルボン酸基と結合していてよい。例示的な実施形態において、本発明のペプチドは、リジンアミノ酸上のイプシロンアミノ基を介して1、2、又は3つのPEG分子にコンジュゲートしている。
【0293】
本発明のペプチドは、1つ以上のアミノ酸残基の化学的変更も含む。このような化学的変更としては、アミド化、グリコシル化、アシル化、硫酸化、リン酸化、アセチル化、及び環化が挙げられる。化学的変更は、例えば、GIP類似体及びハイブリッドペプチドのN若しくはC末端又はその配列内のアミノ酸残基の側鎖において単独で生じ得る。一実施形態において、これらのペプチドのC末端は、フリー-OH又は-NH2基を有し得る。別の実施形態において、N末端は、イソブチルオキシカルボニル基、イソプロピルブチルオキシカルボニル基、n-ブトキシオキシカルボニル基、エトキシオキシカルボニル基、イソカプロイル基(イソcap)、オクタニル基、オクチルグリシン基(G(Oct))、又は8-アミノオクタン酸基又はFmoc基でキャッピングされていてよい。例示的な実施形態において、環化は、ジスルフィド架橋の形成を介し得る。或いは、本発明のペプチドに沿う複数の化学的変更の部位が存在し得る。
【0294】
一般に、ペプチド構造及び生物学的活性に影響を与えない多数のシュードペプチド結合が記載されている。このアプローチの一例は、レトロインベルソ型(retroinverso)シュードペプチド結合に置換することである(“Biologically active retroinverso analogues of thymopentin”,Sisto A.et al in Rivier,J.E.and Marshall,G.R.(eds)“Peptides,Chemistry,Structure and Biology”,Escom,Leiden(1990),pp.722-773)及びDalpozzo,et al.(1993),Int.J.Peptide Protein Res.,41:561-566、参照により本明細書に組み込まれる)。この修飾によれば、本発明のペプチドの構成成分ペプチドは、ペプチド結合の1つ以上がレトロインベルソ型シュードペプチド結合により置き換えられていることを除き、例えば、本明細書に記載されるGIPの配列と同一であり得る。好ましくは、ほとんどのN末端ペプチド結合は置換されている。それというのも、このような置換は、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する耐性を付与するためである。さらなる修飾は、アミノ酸の化学基を類似構造の他の化学基で置き換えることによっても行われ得る。生物学的活性の損失なしで又はほとんどなしで酵素的開裂に対する安定性を向上させることが公知の別の好適なシュードペプチド結合は、還元等価体シュードペプチド結合である(Couder,et al.(1993),Int.J.Peptide Protein Res.,41:181-184、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。
【0295】
したがって、これらのペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド結合の1つ以上が等価体シュードペプチド結合により置き換えられていることを除き、例えば、新規GIP類似体及びハイブリッドペプチドの配列と同一であり得る。好ましくは、ほとんどのN末端ペプチド結合は置換されている。それというのも、そのような置換は、N末端に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する耐性を付与するためである。1つ以上の還元等価体シュードペプチド結合を有するペプチドの合成は、当該技術分野において公知である(Couder,et al.(1993)、上記引用)。他の例としては、ペプチド結合を置き換えるためのケトメチレン又はメチルスルフィド結合の導入が挙げられる。
【0296】
別の実施形態において、DPP-IVによる開裂についての標的である第2及び第3の残基間の結合が、本明細書に開示されるペプチダーゼ耐性結合に置き換えられる。
【0297】
本発明のペプチドのペプトイド誘導体は、生物学的活性の重要な構造決定因子を保持するが、ペプチド結合を排除し、それによりタンパク質分解に対する耐性を付与するペプチド模倣体の別のクラスを表す(Simon,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:9367-9371(1992)、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。ペプトイドはN置換グリシンのオリゴマーである。各々が天然アミノ酸の側鎖に対応する多数のN-アルキル基が記載されている(Simon,et al.(1992)、上記引用)。GIPペプチドのアミノ酸の一部又は全てが、置き換えられるアミノ酸に対応するN置換グリシンで置き換えられ得る。
【0298】
一実施形態において、本発明のペプチドは、上記の修飾、すなわち、欠失、挿入、及び置換の組み合わせを含む。
【0299】
示されるアミノ酸残基が化学修飾又は誘導体化されている(例えば、脂肪酸誘導体化、PEG化、アミド化、グリコール化などを介する)構成成分ペプチドも、本発明の範囲内に含まれる。例示的な実施形態としては、特に16又は30位のリジン残基の誘導体化が挙げられる。示されるアミノ酸のD-アミノ酸残基も、本発明の範囲内に企図される。別の実施形態において、例示的なGIP類似体又はハイブリッドポリペプチドとしては、特に本明細書に記載される活性部位に対応しない領域中に内部欠失を有する式のポリペプチドが挙げられる。
【0300】
例示的な本発明のペプチドは、天然でないアミノ酸の置換を含み得る。例えば、本発明のGIP類似体又はハイブリッドポリペプチドの例示的誘導体としては、ポリマーコンジュゲートGIP類似体又はハイブリッドポリペプチドであって、上記の挿入、欠失、置換、又はそれらの組み合わせのいずれかを含み、ポリマー分子はリジン残基においてコンジュゲートしているGIP類似体又はハイブリッドポリペプチドが挙げられる。一実施形態において、本発明のペプチドは、メチオニンの誘導体又は置換を含み、ヒトGIP又は類似体と比較して長い作用持続期間を有する。例えば、メチオニンにおけるオクチル-グリシンは、化合物のインビボ作用持続期間を増加させる。作用持続期間は、この修飾により少なくとも4時間に増加した。したがって、一実施形態において、1つ以上の水溶性ポリマー分子、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)若しくは種々の長さの脂肪酸鎖(例えば、ステアリル、パルミトイル、オクタノイルなど)にコンジュゲートしているか又はポリアミノ酸、例えば、ポリ-his、ポリ-arg、ポリ-lys、ポリ-glu及びポリ-alaの付加によりコンジュゲートしている本発明のペプチドがある。ポリペプチドの修飾としては、小分子置換、例えば、短鎖アルキル及び拘束アルキル(例えば、分枝、環式、縮合、アダマンチル)、並びに芳香族基も挙げられ得る。
【0301】
本明細書の各ペプチド構成成分のD-Tyr1及びD-Ala2変異体がさらに具体的に想定される。さらに他の実施形態において、本発明のペプチドが本明細書に記載される1、2又は3つの修飾により修飾されている上記の配列の各々の変異体が想定される。例示的な修飾は、天然GIPよりも優れたDPP-IV耐性を付与するGIPの1番目、2番目又は3番目のN末端アミノ酸におけるものである。いっそうさらなる実施形態において、本発明の新規ペプチドは、C末端アミドを含む。
【0302】
さらなる実施形態において、本発明のペプチドは、ヒトGIP(1-30)アミドの少なくとも2倍の半減期を含む。さらに半減期は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、36、48、72、又は96時間であり得る。特定の実施形態において、半減期は、少なくとも24時間であり得る。
【0303】
別の実施形態において、本発明のペプチドの薬学的に許容可能な塩がある。本発明のペプチドは、薬学的に許容可能な担体を含む組成物中で配合され得る。
【0304】
本発明のペプチドの合成
本発明のペプチドは、当業者に公知の多くの技術により合成され得る。ある実施形態において、ペプチドサブユニットは、当該技術分野において公知の技術を使用して合成、精製、及びダイマー化される。ある実施形態において、本発明は、本発明のペプチド(又はそのサブユニット)を産生する方法であって、限定されるものではないが、式I~Vのいずれか又は本明細書の表に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む本明細書に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなるペプチドを化学合成することを含む方法を提供する。他の実施形態において、ペプチドは、化学合成に代えて組換え合成される。ある実施形態において、本発明のペプチド、及び方法は、本発明のペプチドの両方のモノマーサブユニットを合成し、次いで2つのサブユニットを結合させて本発明のペプチドを産生することを含む。種々の実施形態において、カップリング又は結合は、本明細書に記載される種々の方法のいずれかを介して達成される。
【0305】
特定の実施形態において、本発明のペプチド(又はそのモノマーサブユニット)を産生する方法は、本発明のペプチド(又はそのモノマーサブユニット)をその合成後に環化させることをさらに含む。特定の実施形態において、環化は、本明細書に記載される種々の方法のいずれかを介して達成される。ある実施形態において、本発明は、ペプチド(又はそのモノマーサブユニット)を産生する方法であって、限定されるものではないが、式(I)~(V)のいずれか、添付の実施例又は表に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む本明細書に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドを含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなるペプチド内の2つのアミノ酸残基間に分子内結合、例えば、ジスルフィド、アミド、又はチオエーテル結合を導入することを含む方法を提供する。
【0306】
本発明のペプチドは、当該技術分野において公知の標準的な組換え技術又は化学ペプチド合成技術を使用して、例えば、自動若しくは半自動ペプチド合成装置、又はその両方を使用して調製され得る。
【0307】
本発明のペプチドは、慣用の技術に従って溶液中で、又は固体担体上で合成され得る。このような方法は、例えば、明細書並びに全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,610,824号及び米国特許第5,686,411号及び米国特許出願第454,533号(1999年12月6日出願)に記載されている。種々の自動合成装置が市販されており、公知のプロトコルに従って使用され得る。例えば、Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2d.ed.,Pierce Chemical Co.(1984);Tam et al,J.Am.Chem. Soc.105:6442(1983);Merrifield,Science 232:341-7(1986);及びBarany and Merrifield,The Peptides,Gross and Meienhofer,eds.,Academic Press,New York,1-284(1979)参照。固相ペプチド合成は、NMP/HOBt(Option 1)システム及びキャッピングを伴うtBoc又はFmoc化学反応を使用する自動ペプチド合成装置(例えば、Model 430A,Applied Biosystems Inc.,Foster City,Calif.)で、実施され得る(Applied Biosystems User’s Manual for the ABI 430A Peptide Synthesizer,Version 1.3B Jul.1,1988,section 6,pp.49-70,Applied Biosystems,Inc.,Foster City,Calif.参照)。ペプチドはまた、Advanced Chem Tech Synthesizer(Model MPS 350,Louisville,Ky.)を使用してアセンブルされ得る。ペプチドは、RP-HPLC(分取及び分析)により、例えば、Waters Delta Prep 3000システム及びC4、C8、又はC18分取カラム(10μ、2.2×25cm;Vydac,Hesperia,Calif.)を使用して精製され得る。ポリペプチドは、適切なオルソゴナル反応性末端を有する2つ以上のペプチド断片を天然アミド結合形成でライゲートする収束的方法、例えば、「天然化学的ライゲーション」、及びそれらの変法により合成され得る。新たに形成されたペプチドは、よりいっそう長いポリペプチドを作出するためにさらにライゲートされ得る。個々の出発ペプチドは、所望により誘導体化され得るか又はライゲーションステップ後に誘導体化され得る。
【0308】
ペプチド類似体は、Pioneer連続流ペプチド合成装置(Applied Biosystems)上で、PAL-PEG-PS樹脂(Applied Biosystems)を0.2mmol/g(0.25mモルスケール)のローディングで使用して合成され得る。Fmocアミノ酸(4.0当量、1.0mmol)残基を、4.0当量のHBTU、4.0当量のHOBT、8.0当量のDIEAを使用して活性化し、樹脂に1時間カップリングさせる。Fmoc基を、ジメチルホルムアミド中20%(v/v)のピペリジンでの処理により除去する。固体担体からのペプチドの最終的な脱保護及び開裂を、試薬B(93%のTFA、3%のフェノール、3%の水及び1%のトリイソプロピルシラン)での樹脂の2~3時間の処理により実施する。開裂されたペプチドを、tert-ブチルメチルエーテルを使用して沈殿し、遠心分離によりペレット化し、凍結乾燥させる。ペレットを水(10~15mL)中で再溶解させ、濾過し、C-18カラム及び0.1%のTFAを含有するアセトニトリル/水勾配を使用する逆相HPLCを介して精製する。精製産物を凍結乾燥させ、ESI-LC/MS及び分析HPLCにより分析し、純粋(>98%)であることを実証した。質量結果は、計算値と全て一致した。
【0309】
或いは、ペプチドをSymphonylペプチド合成装置(Protein Technologies,Inc.,Woburn,Mass.)上で、Rinkアミド樹脂(Novabiochem,San Diego,Calif.)を0.43~0.49mmol/gのローディングで0.050~0.100mmolで使用してアセンブルする。Fmocアミノ酸(Applied Biosystems,Inc.5.0当量、0.250~0.500mmol)残基は、1-メチル-2-ピロリジノン中0.10Mの濃度で溶解させる。全ての他の試薬(HBTU、HOBT及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン)を0.55Mのジメチルホルムアミド溶液として調製する。次いで、Fmoc保護アミノ酸を樹脂結合アミノ酸にHBTU(2.0当量、0.100~0.200mmol)、HOBT(1.8当量、0.090~0.18mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.4当量、0.120~0.240mmol)を使用して2時間カップリングさせる。最後のアミノ酸カップリング後、ペプチドをジメチルホルムアミド中20%(v/v)のピペリジンを使用して1時間脱保護する。ペプチド配列が完了したら、樹脂を開裂するようにSymphonylペプチド合成装置をプログラムする。樹脂からのペプチドのトリフルオロ酢酸(TFA)開裂を、93%のTFA、3%のフェノール、3%の水及び1%のトリイソプロピルシランから構成される試薬混合物を使用して実施する。開裂されたペプチドをtert-ブチルメチルエーテルを使用して沈殿させ、遠心分離によりペレット化し、凍結乾燥させる。ペレットを酢酸中で溶解させ、凍結乾燥させ、次いで水中で溶解させ、濾過し、C18カラム及び0.1%のTFAを含有するアセトニトリル/水勾配を使用する逆相HPLCを介して精製する。分析HPLCを使用してペプチドの純度を評価し、アイデンティティをLC/MS及びMALDI-MSにより確認する。
【0310】
活性タンパク質は容易に合成され、次いで反応性ペプチドを同定するように設計されたスクリーニングアッセイにおいてスクリーニングされ得る。
【0311】
本発明のペプチドは、代替的に、当該技術分野において周知の組換え技術により産生され得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor(1989)参照。組換え技術により産生される本発明のペプチドは、ポリヌクレオチドから発現され得る。当業者は、このようなGIP類似体又はハイブリッドペプチドをコードするDNA及びRNAを含むポリヌクレオチドを野生型cDNA、例えば、GIP、GLP1、アミリンから、コドン使用頻度の縮重を考慮して得ることができるか、又は所望により人工操作することができることを認識する。これらのポリヌクレオチド配列は、微生物宿主中のmRNAの転写及び翻訳を容易にするコドンを取り込み得る。このような製造配列は、当該技術分野において周知の方法に従って容易に構築され得る。例えば、国際公開第83/04053号参照。上記ポリヌクレオチドは、任意選択で、N末端メチオニル残基もコードし得る。本発明において有用な非ペプチド化合物は、当該技術分野において公知の方法により調製され得る。例えば、リン酸含有アミノ酸及びそのようなアミノ酸を含有するペプチドが当該技術分野において公知の方法を使用して調製され得る。例えば、Bartlett and Landen,Bioorg.Chem.14:356-77(1986)参照。
【0312】
種々の発現ベクター/宿主系が、本発明のペプチドのコード配列を含有及び発現させるために利用され得る。これらとしては、限定されるものではないが、微生物、例えば、組換えバクテリオファージ、プラスミド若しくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換される細菌;酵母発現ベクターで形質転換される酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染される昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で形質転換されるか、若しくは細菌発現ベクター(例えば、Ti又はpBR322プラスミド)で形質転換される植物細胞系;又は動物細胞系が挙げられる。組換えタンパク質産生において有用な哺乳類細胞としては、限定されるものではないが、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、COS細胞(例えば、COS-7)、WI38、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562及び293細胞が挙げられる。タンパク質の組換え発現のための例示的プロトコルは、本明細書に記載される。
【0313】
したがって、本発明により提供されるポリヌクレオチド配列は、新たな有用なウイルス及びプラスミドDNAベクター、新たな有用な形質転換及び形質移入原核及び真核宿主細胞(培養物中で成長させた細菌、酵母、及び哺乳類細胞を含む)の生成、並びに本GIPポリペプチドを発現し得るそのような宿主細胞の新たな有用な培養成長の方法において有用である。本明細書のGIP類似体又はハイブリッドをコードするポリヌクレオチド配列は、GIP又はハイブリッドの他の構成成分ペプチドホルモンの産生不足が軽減されるか又はそのようなレベルの増加の必要性が満たされる場合に遺伝子療法に有用であり得る。
【0314】
宿主細胞は原核生物又は真核生物であり得、それとしては、細菌、哺乳類細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル細胞、ベビーハムスター腎細胞、癌細胞又は他の細胞)、酵母細胞、及び昆虫細胞が挙げられる。
【0315】
組換えタンパク質の発現のための哺乳類宿主系も、当業者に周知である。宿主細胞株は、発現タンパク質をプロセシングするか又はタンパク質活性の提供において有用なある翻訳後修飾を生じさせる特定の能力について選択され得る。ポリペプチドのこのような修飾としては、限定されるものではないが、アセチル化、カルボキシ化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化が挙げられる。翻訳後プロセシングは、タンパク質の「プレプロ」形態を開裂させ、正確な挿入、フォールディング及び/又は機能にも重要であり得る。様々な宿主細胞、例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38などは、そのような翻訳後活性の特異的細胞機構及び特徴的機序を有し、導入される外来タンパク質の正確な修飾及びプロセシングを確保するように選択され得る。
【0316】
或いは、酵母系が本発明のペプチドを生成するために用いられ得る。例えば、GIPポリペプチドcDNAのコード領域はPCRにより増幅される。酵母プレ-プロ-アルファリーダー配列をコードするDNAは、酵母ゲノムDNAからPCR反応においてアルファ接合因子遺伝子のヌクレオチド1~20を含むあるプライマー及びこの遺伝子のヌクレオチド255~235と相補的な別のプライマーを使用して増幅される(Kurjan and Herskowitz,Cell,30:933-43(1982))。プレ-プロ-アルファリーダーコード配列及びGIPポリペプチドコード配列断片が酵母アルコール脱水素酵素(ADH2)プロモーターを含有するプラスミド中にライゲートされ、その結果、プロモーターが成熟GIPポリペプチドに融合しているプレ-プロ-アルファ因子からなる融合タンパク質の発現を指向する。Rose and Broach,Meth.Enz.185:234-79,Goeddel ed.,Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.(1990)により教示される通り、ベクターは、クローニング部位の下流のADH2転写ターミネーター、酵母「2-ミクロン」複製起点、酵母leu-2d遺伝子、酵母REP1及びREP2遺伝子、E.コリ(E.coli)ベータ-ラクタマーゼ遺伝子、並びにE.コリ(E.coli)複製起点をさらに含む。ベータ-ラクタマーゼ及びleu-2d遺伝子は、それぞれ細菌及び酵母における選択を提供する。leu-2d遺伝子は、酵母中のプラスミドのコピー数増加も容易にしてより高レベルの発現を誘導する。REP1及びREP2遺伝子は、プラスミドコピー数の調節に関与するタンパク質をコードする。
【0317】
前段落に記載されるDNA構築物は、公知の方法、例えば、酢酸リチウム処理を使用して酵母細胞中に形質転換される(Steams et al.,Meth.Enz.185:280-97(1990))。ADH2プロモーターは、成長培地中のグルコースの枯渇時に誘導される(Price et al.,Gene 55:287(1987))。プレ-プロ-アルファ配列は、細胞からの融合タンパク質の分泌を生じさせる。これに伴い、酵母KEX2タンパク質はプレ-プロ配列を成熟GIPポリペプチドから開裂させる(Bitter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:5330-4(1984))。
【0318】
本発明のペプチドはまた、酵母中で市販の発現系、例えば、Pichia Expression System(Invitrogen,San Diego,Calif.)を使用して、製造業者の指示書に従って組換え発現され得る。この系もプレ-プロ-アルファ配列に依存して分泌を指向するが、インサートの転写はメタノールによる誘導時にアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターにより推進される。分泌されたペプチドは、例えば、ペプチドを細菌及び哺乳類細胞上清から精製するために使用される方法により酵母成長培地から精製される。
【0319】
或いは、本発明のペプチドをコードするcDNAは、発現ベクター、例えば、バキュロウイルス発現ベクターpVL1393中にクローニングされ得る。次いで、このGIP化合物コードベクターを製造業者の指示書(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)に従って使用してスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞をsF9タンパク質不含培地中で感染させ、組換えタンパク質を産生する。タンパク質は、ヘパリン-Sepharoseカラム(Pharmacia,Piscataway,N.J.)及び連続分子サイジングカラム(Amicon,Beverly,Mass.)を使用して培地から精製及び濃縮され、PBS中で再懸濁される。SDS-PAGE分析は単一のバンドを示し、タンパク質のサイズを裏付け、Proton 2090 Peptide Sequencer上でのエドマンシーケンシングはそのN末端配列を裏付ける。
【0320】
別の例において、本発明のペプチドをコードするDNA配列は、PCRにより増幅され、適切なベクター、例えば、pGEX-3X(Pharmacia,Piscataway,N.J.)中にクローニングされ得る。pGEXベクターは、そのベクターによりコードされるグルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、及びベクターのクローニング部位中に挿入されるDNA断片によりコードされるタンパク質を含む融合タンパク質を産生するように設計される。PCR用プライマーは、例えば、適切な開裂部位を含むように生成され得る。次いで、組換え融合タンパク質は、融合タンパク質のGST部分から切断され得る。例えば、pGEX-3X/GIP類似体ペプチド構築物をE.コリ(E.coli)XL-1 Blue細胞(Agilent,Santa Clara,CA)に形質転換し、個々の形質転換体を単離し、37℃でLB培地(カルベニシリンが補給された)中で波長600nmにおける光学密度0.4まで成長させ、次いで0.5mMのイソプロピルベータ-D-チオガラクトピラノシド(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)の存在下で4時間のさらなるインキュベーションを行う。個々の形質転換体からのプラスミドDNAを精製し、自動シーケンサーを使用して部分的にシーケンシングして適切な方向における所望のペプチドをコードする遺伝子インサートの存在を確認する。
【0321】
融合タンパク質は、細菌中で不溶性封入体として産生されると予測され、以下のとおり精製され得る。細胞を遠心分離により収集し;0.15MのNaCl、10mMのトリス、pH8、1mMのEDTA中で洗浄し;及び0.1mg/mlのリゾチーム(Sigma Chemical Co.)で室温で15分間処理する。溶解物を超音波処理により透明化し、細胞屑を12,000×gでの10分間の遠心分離によりペレット化する。融合タンパク質を含有するペレットを、50mMのトリス、pH8、及び10mMのEDTA中で再懸濁させ、50%のグリセロール上に積層し、6000×gで30分間遠心分離する。ペレットを、Mg++及びCa++を有さない標準的なリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)中で再懸濁させる。変性SDSポリアクリルアミドゲル中で再懸濁されたペレットを分画化することにより、融合タンパク質をさらに精製する(Sambrook et al.,前掲)。ゲルを0.4MのKCl中に浸漬してタンパク質を可視化し、それを切り出し、SDSを欠くゲルランニング緩衝液中で電気溶出させる。例えば、GST/GIPポリペプチド融合タンパク質が細菌中で可溶性タンパク質として産生される場合、GST Purification Module(Pharmacia Biotech)を使用してそれを精製することができる。
【0322】
融合タンパク質を消化に供してGSTを成熟GIP類似体又はハイブリッドペプチドから開裂させることができる。消化反応物(20~40μgの融合タンパク質、20~30単位のヒトトロンビン(0.5mLのPBS中4000U/mg(Sigma)を室温で16~48時間インキュベートし、変性SDS-PAGEゲル上にロードして反応産物を分画化する。ゲルを0.4MのKCl中に浸漬してタンパク質バンドを可視化する。ペプチドの予測分子量に対応するタンパク質バンドの同一性は、Orbitrap Exploris 490 Mass Spectrometer(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)を使用する部分アミノ酸配列分析により確認することができる。
【0323】
形質転換細胞は、長期の高収量タンパク質産生に使用されることが好ましく、したがって安定的発現が望ましい。このような細胞は、選択マーカーを所望の発現カセットとともに含有するベクターで形質転換したら、細胞を高栄養培地中で1~2日間成長させてから選択培地に切り替えることができる。選択マーカーは、選択に対する耐性を付与するよう設計され、その存在は、導入配列を良好に発現する細胞の成長及び回収を可能とする。安定的に形質転換された耐性細胞塊は、細胞に適切な組織培養技術を使用して増殖され得る。
【0324】
多くの選択系が組換えタンパク質産生のために形質転換された細胞を回収するため使用され得る。このような選択系としては、限定されるものではないが、tk-、hgprt-又はaprt-細胞中の、それぞれ、HSVチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が挙げられる。また、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt;アミノグリコシドに対する耐性を付与するneo;さらにはクロルスルフロンに対する耐性を付与するG418;及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygroの選択のベースとして抗代謝産物耐性が使用され得る。有用であり得る追加の選択遺伝子としては、細胞がトリプトファンに代えてインドールを利用することを可能とするtrpB、又は細胞がヒスチジンに代えてヒスチノール(histinol)を利用することを可能とするhisDが挙げられる。形質転換体の同定のための可視的指標を与えるマーカーとしては、アントシアニン、ベータ-グルクロニダーゼ及びその基質、GUS、並びにルシフェラーゼ及びその基質、ルシフェリンが挙げられる。
【0325】
本発明のペプチドは、自動ペプチド合成及び組換え技術の両方の組み合わせを使用して産生され得る。例えば、GIPペプチドは、PEG化による欠失、置換、及び挿入を含む修飾の組み合わせを含有し得る。このようなGIPポリペプチドは、段階的に産生され得る。第1の段階において、欠失、置換、挿入、及びそれらの任意の組み合わせの修飾を含有する中間体GIPポリペプチドが、記載される組換え技術により産生され得る。次いで、本明細書に記載される任意選択の精製段階の後、中間体GIPペプチドを適切なPEG化試薬(例えば、NeKtar Transforming Therapeutics,San Carlos,Calif.製)での化学修飾を介してPEG化して所望のGIPペプチドを生じさせる。当業者は、上記の手順が、欠失、置換、挿入、誘導、及び当該技術分野において周知の修飾の他の手段から選択される修飾の組み合わせを含有する本発明のペプチドに適用されるように一般化され得、本発明により企図されることを認識する。
【0326】
本発明により生成されたGIPポリペプチドを精製することが望ましいことがある。ペプチド精製技術は当業者に周知である。これらの技術は、あるレベルで、ペプチド及び非ペプチド分画に対する細胞環境の粗分画化を含む。ペプチドを他のタンパク質から分離したら、目的のペプチドをクロマトグラフィー及び電気泳動技術を使用してさらに精製し、部分的又は完全な精製(又は均質性のための精製)を達成することができる。純粋ペプチドの調製に特に好適な分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、及び等電点電気泳動法である。ペプチドを精製する特に効率的な方法は、逆相HPLCとそれに続く液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)質量分析による精製産物の特徴付けである。純度の追加の確認は、アミノ酸分析を決定することにより得られる。
【0327】
本発明のある態様は精製に関し、特定の実施形態において、コードされるタンパク質又はペプチドの実質的な精製に関する。本明細書において使用される「精製されたペプチド」という用語は、他の構成成分から単離可能な組成物を指すことを意図され、ペプチドは、その天然に得られる状態に対して任意の程度に精製されている。したがって、精製されたペプチドは、天然に生じ得る環境から遊離したペプチドも指す。一般に、「精製された」は、分画化に供されて種々の他の構成成分が除去され、その発現される生物学的活性を実質的に保持するペプチド組成物を指す。「実質的に精製された」という用語が使用される場合、この表記は、ペプチドが組成物の主な構成成分を形成する、例えば、組成物中のペプチドの約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%以上を構成する組成物を指す。
【0328】
ペプチド精製における使用に好適な種々の技術は当業者に周知である。これらとしては、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体などを用いる沈殿;熱変性とそれに続く遠心分離;クロマトグラフィーステップ、例えば、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト及び親和性クロマトグラフィー;等電点電気泳動法;ゲル電気泳動法;並びにこのような及び他の技術の組み合わせが挙げられる。当該技術分野において一般に公知の通り、種々の精製ステップを実施する順序は変更され得ること、又はあるステップは省略され得、それでも実質的に精製されたタンパク質又はペプチドの調製に好適な方法をもたらすことが考えられる。
【0329】
ペプチドが常にその最も精製された状態で提供されることは一般に要求されない。実際、実質的により低い程度で精製された産物がある実施形態において有用性を有することが企図される。部分的精製は、より少ない精製ステップを組み合わせで使用することにより、又は同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することにより達成され得る。例えば、HPLC機器を利用して実施されるカチオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般に低圧クロマトグラフィー系を利用する同じ技術よりも「~倍」大きい精製をもたらすことが認識される。より低い程度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の総回収率、又は発現タンパク質の活性の維持において利点を有し得る。
【0330】
任意選択で、このような本発明のペプチドをそのプロセスにおいて得られる他の構成成分から精製及び単離することができる。ポリペプチドを精製する方法は、米国特許第5,849,883号に見出され得る。これらの文献は、本発明のGIPポリペプチドの単離及び精製において有用であり得るG-CSF組成物の単離及び精製の具体的な例示的方法を記載する。これらの特許の開示を考慮すると、当業者が本発明のペプチドを所与の資源から精製するために使用され得る多数の精製技術を十分に理解することは明らかである。
【0331】
アニオン交換及び免疫親和性クロマトグラフィーの組み合わせが、精製された本発明のペプチドを産生するために用いられ得ることが企図される。
【0332】
処置の方法
本発明のペプチドは、代謝及び肝臓疾患及び障害の処置及び予防において有用である。
【0333】
代謝疾患及び障害は、肥満、糖尿病、脂質異常症、インスリン抵抗性、細胞アポトーシスなどを含む多くの形態をとる。肥満及びその関連障害は、米国及び世界中で一般的な極めて深刻な公衆衛生問題である。上半身肥満は、2型真性糖尿病についての公知の最も強力なリスク因子であり、心血管疾患についての強力なリスク因子である。肥満は、高血圧、アテローム性動脈硬化症、鬱血性心不全、脳卒中、胆嚢疾患、変形性関節症、睡眠時無呼吸、生殖障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、前立腺癌、及び結腸癌、並びに全身麻酔の合併症の発生率の増加についての認識されるリスク因子である(例えば、Kopelman,Nature 404:635-43(2000)参照)。肥満は、寿命を減らし、上記の共存症、同様に障害、例えば、感染症、静脈瘤、黒色表皮症、湿疹、運動不耐性、インスリン抵抗性、高血圧高コレステロール血症、胆石症、整形外科的損傷、及び血栓塞栓性疾患の深刻なリスクを抱える(Rissanen et al.,Br.Med.J.301:835-7(1990))。肥満は、インスリン抵抗性症候群、又は「シンドロームX」と呼ばれる病態の群についてのリスク因子でもある。肥満及び関連障害についての医療費の近年の推定は、世界中で2兆ドルである。肥満の病因は多因子性であると考えられるが、根本的な問題は、肥満対象において過剰な脂肪組織が存在するまで栄養素利用性及びエネルギー消費が均衡状態に至らないことである。肥満は現在、処置不十分で、慢性で本質的に難治性の代謝障害である。肥満者の体重低減において有用な治療薬は、その者らの健康に対して著しい有益な効果を有し得る。
【0334】
糖尿病は、インスリンの不十分な産生及び利用から生じる、高血糖及び糖尿により特徴付けられる炭水化物代謝の障害である。糖尿病は、先進国における人口の大部分の生活の質に深刻な影響を与える。インスリンの不十分な産生は1型糖尿病として特徴付けられ、インスリンの不十分な利用は2型糖尿病として特徴付けられる。しかしながら、目下、患者が顕性糖尿病を有すると診断されるかなり前に発病する多くの区別される糖尿病関連疾患が存在することが広く認識される。また、糖尿病におけるグルコース代謝の最適以下のコントロールからの効果は、広範な関連脂質及び心血管障害を生じさせる。
【0335】
脂質異常症、又は血漿中のリポタンパク質の異常レベルは、糖尿病患者の間で頻繁に生じる。脂質異常症は、典型的には、血中の上昇した血漿トリグリセリド、低いHDL(高密度リポタンパク質)コレステロール、正常~上昇レベルのLDL(低密度リポタンパク質)コレステロール及び増加レベルのスモールデンスLDL(低密度リポタンパク質)粒子により特徴付けられる。脂質異常症は、糖尿病患者の間の冠動脈イベント及び死亡の発生率増加への主な寄与因子の1つである。疫学的研究は、非糖尿病対象と比較して糖尿病患者の間の冠動脈死の数倍の増加を示すことによりこれを裏付けている。いくつかのリポタンパク質異常は、糖尿病患者の間で記載されている。
【0336】
インスリン抵抗性は、インスリンが広範囲の濃度にわたりその生物学的作用を発揮する能力の低下である。インスリン抵抗性において、身体は、異常に多量のインスリンを分泌してこの欠損を相殺し、耐糖能異常の状態が発症する。インスリン作用の欠損を相殺し得なくなると、血漿グルコース濃度は不可避的に上昇し、糖尿病の臨床的状態をもたらす。インスリン抵抗性及び相対的高インスリン血症は、肥満、高血圧、アテローム性動脈硬化症及び2型糖尿病において寄与的役割を有することが認識される。インスリン抵抗性と肥満、高血圧及び狭心症との関連は、共通の病因の結びつきとしてインスリン抵抗性を有する症候群、シンドロームXと記載されている。
【0337】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は総称であり、肝臓中の脂肪の単純な沈着から、肝炎、線維症、肝硬変、及び一部の症例において肝細胞癌に伴うより進行性の脂肪症を包含する。NAFLDは世界中、特に西洋諸国で一般的になりつつある。米国においてこれは慢性肝疾患の最も一般的な形態であり、人口の約4分の1が罹患している。NAFLDを有する一部の個体は、脂肪肝疾患の侵襲的形態の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症し得、それは肝臓の炎症を特徴とし、進行した瘢痕化(肝硬変)及び肝不全に進行し得る。この損傷は、アルコール大量摂取により引き起こされる損傷と類似する。NAFLDには、非アルコール性脂肪肝(NAFL)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が含まれる。NAFLは、柔組織の5%超に及ぶ肝臓の脂肪症により特徴付けられ、肝細胞損傷の証拠はない。一方、NASHは、組織学的用語により定義され、それは脂肪症のバックグラウンドで肝細胞が損傷に至る壊死炎症プロセスである。NAFLDの自然経過の特徴付けは依然として不完全である。研究は、NAFLDの発生率がメタボリックシンドロームの割合の上昇に協調して増加することを示す。2型糖尿病を有する患者は、NASHを発症する極めて高いリスク及び脂肪肝関連合併症のリスクの2~4倍の増加を呈する。
【0338】
アポトーシスは、正常発生の間に生じる外在性及び内在性シグナルにより調節される能動的な細胞自己破壊プロセスである。アポトーシスは、膵内分泌ベータ細胞の調節において重要な役割を担うことが十分記録されている。成体哺乳類において、ベータ細胞量は動的変化に供されて特定の状態、例えば、妊娠及び肥満における正常血糖の維持にインスリン産生が適合される証拠が増えている。ベータ細胞量のコントロールは、細胞増殖、成長及びプログラムされた細胞死(アポトーシス)の間の微妙な均衡に依存する。この均衡のかく乱は、グルコース恒常性の損害をもたらし得る。例えば、ベータ細胞複製率が低減する加齢に伴って耐糖能異常が発症し、ヒト剖検研究が非インスリン依存性真性糖尿病を有する患者において非糖尿病対象と比較してベータ細胞量の40~60%の低減を繰り返し示したことは注目されるべきである。インスリン抵抗性は肥満に必ず伴うものであるが、ベータ細胞がインスリンについての需要増加を満たし得なくなり、2型糖尿病が始まる時点まで代償性高インスリン血症により正常血糖が維持されることが一般に同意される。
【0339】
糖尿病に伴う複数の異常を処置する試行は、異なる患者においてこれらの異常に対処するためにいくつかの抗糖尿病医薬品の投与を促している。しかしながら、本明細書で考察される本発明のペプチドは、治療有効量で投与される場合、全体にわたり考察されるこれらの及び他の疾患及び病態の処置又は予防において単剤療法又は補助療法のいずれかで使用される。
【0340】
本発明の実施形態において、処置糖尿病患者における高血糖の低減(例えば、GLP-1模倣体、例えば、エキセナチドによるもの)は、介入の発端となる。2型糖尿病患者における慢性高血糖病態はGIPのインスリン分泌刺激応答を減衰させる一方、エキセナチド処置から生じる改善された血糖コントロールはGIP刺激に対する膵ベータ細胞の応答性を回復させる。本発明のペプチドの投与は、糖尿病患者又はグルコースの上昇に伴う病態に罹患している患者において所望の正常血糖をもたらす。
【0341】
現在処方されている抗糖尿病剤(メトホルミン、スルホニルウレア、TZD、SGLT2阻害剤など)は種々の程度の血糖コントロールを達成し得るため、本発明のペプチドとそれらの治療法のいずれかとの組み合わせも、グルコースレベルの正常化をもたらす改善された応答を誘発するはずである。
【0342】
したがって、一実施形態において本発明の方法は、患者が、他の抗糖尿病剤、例えば、GLP-I、GLP-I類似体若しくはエキセンジン-4又は他の薬剤、例えばメトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリジンジオン(TZD)、プラムリンチド、インスリン、アカルボース、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-IV)阻害剤、並びにSGLT-2阻害剤での事前のグルコース降下を介して治療法についてプライミングされ得るという概念に基づく。DPP-IV阻害剤は周知であり、例えば、それらの化合物について参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050004117号、米国特許第6,710,040号、及び米国特許第6,645,995号に記載されている。膵組織に作用してインスリンを産生するスルホニルウレア(SFU)の例として、グリメピリドがある。
【0343】
本発明のペプチドは、食物摂取の低減、食欲の低減、カロリー摂取の低減、満腹感の誘導、栄養素利用性の低減、体重減少の惹起、体組成への影響、全身エネルギー含量又はエネルギー消費の変更、脂質プロファイルの改善(LDLコレステロール及びトリグリセリドレベルの低減及び/又はHDLコレステロールレベルの変化を含む)、胃腸運動の緩徐化、胃内容排出の遅延、食後血中グルコース変動の緩和、グルカゴン分泌の予防又は阻害、並びに血圧の減少に有用であり得る。一実施形態において、このようなGIPペプチドは、エキセンジン、GLP1、アミリン及び/又はsCT部分を含有する。
【0344】
食物摂取を有効に低減させ、体組成を変化させ、脂肪を再分布させ、及び/又は体重を低減させ得るGIP、GLP-1、エキセンジン、GLP-1-GIP受容体コアゴニスト、例えば、アミリン(すなわち、二重アミリンカルシトニン受容体アゴニスト)、レプチンファミリーモジュールを含有するそれらの本発明のペプチドは、抗肥満、体重低減、食物低減、代謝率増加、並びに体脂肪低減及び/又は脂肪再分布ペプチドとして特に興味深い。本明細書に考察される肥満及び関連疾患及び病態(体脂肪低減)の処置に特に興味深い実施形態において、GIP、エキセンジン-4又はその類似体若しくは誘導体、アミリン構成成分、例えば、プラムリンチド又は二重アミリンカルシトニン受容体アゴニスト、FN38ファミリーメンバー、例えば、FN38又はその類似体若しくは誘導体を含む本発明のペプチドがある。別の実施形態において、本発明のペプチドは、CNSに作用する少なくとも1つ、好ましくは2つの構成成分を有し得る。前脳(脳の終脳及び間脳由来構成要素)及び後脳又は脳幹(中脳、脳橋及び髄質を含む)の特定区域は、エネルギー収支の制御に関与すると同定されている。食物摂取及び/又は体重モジュレーションに関与する視床下部中に存在する前脳構造又は核としては、例えば、弓状核(ARC)、視床下部室傍核(PVN)、視床下部背内側(DMH)、腹内側核(VMH)、及び外側視床下部核(LHA)が挙げられる。食物摂取及び/又は体重モジュレーションに関与する脳幹中に存在する後脳構造又は核としては、例えば、孤束核(NST)、最後野(AP)、及び外側腕傍核(IPBN)が挙げられる。完了運動制御系(consummatory motor control system)の要素を制御する脳幹核は、NST、AP、及びlPBNのような後脳領域からの一次又は二次投射により制御される可能性が高い。AP、NST及びlPBNは全て、それら自体の統合能を(集合的に及び独立して)有することが示されたことは注目されるべきである。
【0345】
種々のCNS指向抗肥満剤は、食物摂取及び/又は体重モジュレーションに関与する視床下部中に存在するそれらの前脳構造に作用する。さらに、CNS指向抗肥満剤は、食物摂取及び/又は体重モジュレーションに関与する脳幹中に存在する後脳構造に作用する。このような構成成分ペプチドとしては、例えば、本明細書に記載されるものを含め、レプチン及びレプチンアゴニスト、毛様体神経栄養因子(CNTF)並びにCNTFアゴニスト、ペプチドYY(PYY)及びPYYアゴニスト、エキセンジン及びエキセンジンアゴニスト、GLP-1及びGLP-1アゴニスト、グレリン及びグレリンアンタゴニスト、コレシストキニン(CCK)及びCCKアゴニスト、並びにアミリン及びアミリンアゴニストが挙げられる。
【0346】
ある実施形態において、本発明のペプチド及びその使用方法は、視床下部のエネルギー収支センター、例えば、ARC、PVN、VM、及びLHを主に標的化する第1の構成成分を含む。一実施形態において、本発明のペプチドは、同様に視床下部を標的化するが第1の構成成分と異なる位置で、又は異なる作用機序を介して標的化するGIP又はその類似体若しくは誘導体及び1つ以上の他のペプチドファミリー構成成分を含有する。GIPペプチドが2つ以上の他のペプチドファミリー構成成分を含有し、それらも視床下部を標的化する場合、2つ以上の他のペプチドファミリー構成成分は、互いに同じ作用機序を介して同じ位置を標的化し得るか、又はそれらは異なる位置及び/又は異なる作用機序を標的化し得る。別の実施形態において、次いで、GIPペプチドは、所望により、第1の構成成分と、及び互いに異なる位置又は作用機序を介する抗肥満効果、血中グルコースのコントロール、心保護、及び/又は高血圧のコントロールを含む1つ以上の追加の有益な治療効果を提供する1つ以上の他のペプチドファミリー構成成分を含有する。ある実施形態において、追加のペプチドファミリー構成成分は、後脳のエネルギー収支センター、例えば、NST、AP及びlPBNを主に標的化するものである。
【0347】
ある実施形態において、本発明のペプチド及びその使用方法は、後脳のエネルギー収支センター、例えば、NST、AP及びlPBNを主に標的化する第1の構成成分を含む。一実施形態において、GIPペプチドは、同様に視床下部を標的化するが第1の構成成分と、及び互いに異なる位置で、又は異なる作用機序を介して1つ以上の他のペプチドファミリー構成成分をさらに含有する。別の実施形態において、次いで、本発明のペプチドは、所望により、第1の成分と、及び互いに異なる位置又は作用機序を介する抗肥満効果、血中グルコースのコントロール、心保護、及び/又は高血圧のコントロールを含む1つ以上の追加の有益な治療効果を提供する1つ以上の他のペプチドファミリー構成成分を含有する。ある実施形態において、追加のペプチドファミリー構成成分は、視床下部のエネルギー収支センター、例えば、ARC、PVN、VM、及びLHを主に標的化するものである。
【0348】
本明細書において使用される場合、「食物摂取及び/又は体重モジュレーションに関与する前脳構造に作用する」抗肥満剤は、前脳中の特定の領域、例えば、特定の核及び/又は神経回路の活性を刺激又は抑制する。この前脳の刺激又は抑制は、身体に対する栄養素利用性の低減をもたらす。「食物摂取及び/又は体重モジュレーションに関与する後脳構造に作用する」抗肥満剤は、後脳中の特定の領域、例えば、特定の核及び/又は神経回路の活性を刺激又は抑制する。この後脳の刺激又は抑制は、身体に対する栄養素利用性の低減をもたらす。
【0349】
別の態様において、対象における代謝率を増加させることにより脂肪量を低減させる方法であって、対象の代謝率を増加させることにより脂肪量を低減させるために有効な量の本発明のペプチドを投与することを含む方法が提供される。脂肪量は、総体重の割合として表され得る。一部の実施形態において、脂肪量は、処置の経過にわたり少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも25%だけ低減する。一態様において、対象の除脂肪量は、処置の経過にわたり減少しない。別の態様において、対象の除脂肪量は、処置の経過にわたり維持されるか又は増加する。別の態様において、対象は、カロリー食の低減又は制限食を摂っている。「カロリー食の低減」は、対象が同じ対象の通常食に比較して少ない1日当たりのカロリーを摂取していることを意味する。一例において、対象は、1日当たり少なくとも50少ないカロリーを消費している。他の例において、対象は、1日当たり少なくとも100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は1000少ないカロリーを消費している。
【0350】
別の実施形態において、対象における脂肪分布の変更、脂肪量の低減、又はその両方における使用方法が提供される。したがって、体組成の変更が有益である対象も本方法から利益を受け得る。本明細書において意図される体組成の変更としては、体脂肪の喪失又は維持と除脂肪体重の喪失、維持又は増大の最小化が挙げられる。このような状況において、体重は、増加並びに減少し得る。したがって、対象は、非肥満、過体重、又は肥満で有り得、それらの用語は当該技術分野において一般に使用される通りである。提供される方法は、非脂肪組織中の脂肪を低減させる一方、除脂肪量を温存することも含み得る。この方法についての使用としては、疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)又はリポジストロフィーの処置が挙げられる。
【0351】
別の実施形態において、対象における脂肪分布を変更する方法であって、対象における脂肪分布を変更するために有効な量の本発明の抗肥満ペプチドを投与することを含む方法が提供される。一態様において、変更は、対象における内臓若しくは異所性脂肪、又はその両方の代謝の増加から生じる。「脂肪分布」は、体内の脂肪沈着物の位置を意味する。脂肪沈着のこのような位置としては、例えば、皮下、内臓及び異所性脂肪貯蔵物が挙げられる。「皮下脂肪」は、皮膚表面直下の脂質の沈着物を意味する。対象における皮下脂肪の量は、皮下脂肪の測定に利用可能な任意の方法を使用して測定され得る。皮下脂肪を測定する方法、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,530,886号に記載されたものが当該技術分野において公知である。「異所性脂肪貯蔵」は、除脂肪体重を構成する組織及び器官(例えば、骨格筋、心臓、肝臓、膵臓、腎臓、血管)内又はそれらの周囲の脂質沈着物を意味する。一般に、異所性脂肪貯蔵は、体内の古典的な脂肪組織貯蔵物の外部の脂質の蓄積である。「内臓脂肪」は、腹腔内脂肪組織としての脂肪の沈着物を意味する。内臓脂肪は重要器官を包囲し、肝臓により代謝されて血中コレステロールが生成され得る。内臓脂肪は、病態、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、メタボリックシンドローム及び心血管疾患のリスクの増加と関連している。一部の実施形態において、方法は、皮下脂肪についての代謝よりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%多い割合での内臓若しくは異所性脂肪又はその両方の代謝を含む。一態様において、方法は、好ましい脂肪分布をもたらす。一実施形態において、好ましい脂肪分布は、皮下脂肪と、内臓脂肪、異所性脂肪、又はその両方との増加した比である。一態様において、方法は、例えば、筋肉細胞量の増加の結果としての除脂肪体重の増加を含む。
【0352】
別の実施形態において、対象における皮下脂肪の量を低減させる方法であって、それが必要とされる対象に、対象における皮下脂肪の量を低減させるために有効な量の本発明の抗肥満ペプチドを投与することを含む方法が提供される。一例において、皮下脂肪の量は、対象において少なくとも約5%だけ低減する。他の例において、皮下脂肪の量は、本発明の抗肥満ペプチドの投与前の対象と比較して少なくとも約10%、15%、20%、25%、30% 40%、又は50%だけ低減する。
【0353】
本明細書に記載される方法は、対象における内臓脂肪の量を低減させるために使用され得る。一例において、内臓脂肪は、対象において少なくとも約5%だけ低減する。他の例において、内臓脂肪は、対象において本発明の抗肥満ペプチドの投与前の対象と比較して少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%だけ低減する。内臓脂肪は、対象における内臓脂肪の量を決定するために利用可能な任意の手段を介して測定され得る。このような方法としては、例えば、CTスキャン及びMRIによる腹腔断層撮影法が挙げられる。内臓脂肪を決定する他の方法としては、例えば、米国特許第6,864,415号、同第6,850,797号、及び同第6,487,445号に記載されている。
【0354】
別の実施形態において、対象における異所性脂肪の蓄積を予防するか又は異所性脂肪の量を低減させる方法であって、それが必要とされる対象に、対象における異所性脂肪の蓄積を予防するか又は異所性脂肪の量を低減させるために有効な量の本発明の抗肥満ペプチドを投与することを含む方法が提供される。一例において、異所性脂肪の量は、対象において本発明の抗肥満ペプチドの投与前の対象と比較して少なくとも約5%だけ低減する。他の例において、異所性脂肪の量は、対象において少なくとも約10%だけ、又は少なくとも約15%、20%、25%、30% 40%若しくは50%だけ低減する。或いは、異所性脂肪の量は、対象における皮下脂肪と比較して相対的に5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%低減する。異所性脂肪は、異所性脂肪を測定するために利用可能な任意の方法を使用して対象において測定され得る。
【0355】
別の実施形態において、対象におけるより好ましい脂肪分布を生じさせる方法であって、対象に、好ましい脂肪分布を生じさせるために有効な量の抗肥満剤として有効である本発明のペプチドを投与することを含む方法が提供される。一実施形態において、本発明の抗肥満ペプチドの投与は、対象における内臓脂肪若しくは異所性脂肪、又はその両方の量を低減させる。一実施形態において、食物摂取若しくは体重モジュレーション又はその両方に関与する前脳構造に作用する少なくとも1つのファミリーモジュールと、食物摂取若しくは体重モジュレーション又はその両方に関与する後脳構造に作用する少なくとも1つのファミリーモジュールとの組み合わせを含む本発明の抗肥満ペプチドが投与される。一実施形態において、方法は、皮下脂肪の低減と比べて内臓若しくは異所性脂肪、又はその両方の組み合わせの量を優先的に低減させる。このような方法は、皮下脂肪と内臓脂肪又は異所性脂肪とのより高い比をもたらす。このような改善された比は、心血管疾患、嚢胞性卵巣症候群、メタボリックシンドローム、又はそれらの任意の組み合わせの発症のリスクの低減をもたらし得る。一実施形態において、異所性又は内臓脂肪は、皮下脂肪よりも5%高い速度で代謝される。他の実施形態において、異所性又は内臓脂肪は、皮下脂肪よりも少なくとも10%、15%、20%、25%、30% 50%、60%、70%、80%、90%、又は100%高い速度で代謝される。
【0356】
例えば、GIP、エキセンジン、アミリン、(すなわち、二重アミリンカルシトニン受容体アゴニスト)、レプチン、又はGLP-1-GIP受容体コアゴニストを含有する本発明のペプチドは、本明細書に考察される抗肥満、体重及び脂肪組成関連処置について特に対象とする。いっそうさらなる実施形態において、本発明のペプチドは、これらのペプチドファミリーモジュールの少なくとも2つを含有する。本発明のペプチドは、単独で、又は第2の抗肥満剤、例えば、アミリン、レプチン、又はエキセンジンファミリーペプチドとの組み合わせで投与され得る。
【0357】
さらに別の態様において、グルココルチコステロイドとの組み合わせで投与される抗肥満剤として有効な治療有効量の本発明のペプチドの投与の方法が提供される。グルココルチコステロイドは、脂肪量を増加させ、除脂肪量を減少させる有害効果を有する。したがって、この抗肥満剤の組み合わせは、グルココルチコステロイドの有害効果を打ち消すために、グルココルチコステロイド使用が有益である条件下でグルココルチコステロイドとともに使用され得ることが企図される。
【0358】
本明細書に考察される通り、本発明のペプチドは、1つ以上の他の薬剤と、追加の利益を得るために、又は本発明のペプチド若しくはその他の薬剤のいずれかの効果を向上させるために別個に又は一緒に投与され得る。例えば、本発明の抗肥満ペプチドは、処置及び所望の処置アウトカムが必要とされる対象に関するリスク因子に応じて抗肥満剤又は心保護若しくは抗高血圧剤と投与され得る。本発明のペプチドを用いる投与(別個又は混合のいずれか;その前、それと同時又はその後のいずれか)のための例示的な抗肥満剤としては、限定されるものではないが、パロキセチン、フルオキセチン、フェンフルラミン、フルボキサミン、セルトラリン、及びイミプラミンを含むセロトニン(5HT)輸送阻害剤が挙げられる。抗肥満剤としては、限定されるものではないが、デクスフェンフルラミン、フルオキセチン、シブトラミン及びそれらの組み合わせ並びに参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,365,633号及びPCT特許出願公開の国際公開第01/27060号及び国際公開第01/162341号に記載されるものを含む選択的セロトニン再取り込み阻害剤も挙げられる。このような5HT輸送阻害剤及びセロトニン再取り込み阻害剤、類似体、誘導体、調製物、配合物、医薬組成物、用量、及び投与経路は、既に記載されている。
【0359】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第3,914,250号;並びにPCT出願公開の国際公開第02/36596号、国際公開第02/48124号、国際公開第02/10169号、国際公開第01/66548号、国際公開第02/44152号;国際公開第02/51844号、国際公開第02/40456号、及び国際公開第02/40457号を含む選択的セロトニンアゴニスト及び選択的5-HT2C受容体アゴニストも挙げられる。このような選択的セロトニンアゴニスト及び選択的5-HT2C受容体アゴニスト、そのようなアゴニストを含有する組成物、並びに提供される方法における使用に適切な投与経路は、当該技術分野において公知である。例えば、Halford et al.(2005)Curr.Drug Targets 6:201-213及びWeintraub et al.(1984)Arch.Intern.Med.144:1143-1148参照。
【0360】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、リモナバント(Sanofi Synthelabo)、及びSR-147778(Sanofi Synthelabo)を含む中枢カンナビノイド受容体(CB-1受容体)のアンタゴニスト/インバースアゴニストも挙げられる。CB-1アンタゴニスト/インバースアゴニスト、誘導体、調製物、配合物、医薬組成物、用量、及び投与経路は、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,344,474号、同第6,028,084号、同第5,747,524号、同第5,596,106号、同第5,532,237号、同第4,973,587号、同第5,013,837号、同第5,081,122号、同第5,112,820号、同第5,292,736号、同第5,624,941号;欧州特許出願第656354号及び欧州特許出願第658546号;並びにPCT出願公開の国際公開第96/33159号、国際公開第98/33765号、国際公開第98/43636号、国際公開第98/43635号、国際公開第01/09120号、国際公開第98/31227号、国際公開第98/41519号、国際公開第98/37061号、国際公開第00/10967号、国際公開第00/10968号、国際公開第97/29079号、国際公開第99/02499号、国際公開第01/58869号、及び国際公開第02/076949号に既に記載されている。
【0361】
抗肥満剤としては、メラノコルチン及びメラノコルチンアゴニストも挙げられる。受容体MC4Rは、エネルギー収支及び肥満における役割を担うと考えられる。例えば、Anderson et al.,Expert Opin.Ther.Patents 11:1583-1592(2001)、Speake et al.,Expert Opin.Ther.Patents 12:1631-1638 (2002)、Bednarek et al.,Expert Opin.Ther.Patents 14:327-336(2004)参照。限定されるものではないが、MC4Rアゴニストを含むメラノコルチンアゴニスト、及び提供される方法における使用に適切なそのようなアゴニストを含有する組成物は、当該技術分野において公知である。MCRアゴニスト、MC4Rアゴニスト、誘導体、調製物、配合物、医薬組成物、用量及び投与経路は、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる以下のPCT特許出願:国際公開第03/007949号、国際公開第02/068388号、国際公開第02/068387号、国際公開第02/067869号、国際公開第03/040117号、国際公開第03/066587号、国際公開第03/068738号、国際公開第03/094918号、及び国際公開第03/031410号に既に記載されている。
【0362】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、2-メチル-6-(フェニルエチニル)-ピリジン(MPEP)及び(3-[(2-メチル-1,3-チアゾール-4-イル)エチニル]ピリジン)(MTEP)などの化合物並びにAnderson et al.J.Eur.J.Pharmacol.473:35-40(2003);Cosford et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.13(3):351-4(2003);及びAnderson et al.J.Pharmacol.Exp.Ther.303:1044-1051(2002)に記載される化合物を含む代謝型グルタミン酸サブタイプ5受容体(mGluR5)アンタゴニストも挙げられる。
【0363】
抗肥満剤としては、抗痙攣薬及び抗痙攣薬として示されたが、体重減少を増加させることも示されたトピラマート、フェンテルミン又はそれらの組み合わせも挙げられる。
【0364】
抗肥満剤としては、ニューロペプチドY1(NPY1)アンタゴニスト及びNPY5アンタゴニストも挙げられる。NPY1及びNPY5アンタゴニストは、当該技術分野において公知である。例えば、Duhault et al.(2000)Can.J.Physiol.Pharm.78:173-185、並びに米国特許第6,124,331号、同第6,214,853号、及び同第6,340,683号参照。NPY1及びNPY5アンタゴニスト、誘導体、調製物、配合物、医薬組成物、用量、及び投与経路は、既に記載されている。提供される組成物及び方法において有用なNPY1アンタゴニストとしては、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,001,836号;並びにPCT出願公開の国際公開第96/14307号、国際公開第01/23387号、国際公開第99/51600号、国際公開第01/85690号、国際公開第01/85098号、国際公開第01/85173号、及び国際公開第01/89528号が挙げられる。本明細書に提供される組成物及び使用方法において有用なNPY5アンタゴニストとしては、限定されるものではないが、米国特許第6,140,354号、同第6,191,160号、同第6,258,837号、同第6,313,298号、同第6,337,332号、同第6,329,395号、同第6,340,683号、同第6,326,375号、及び同第6,335,345号;欧州特許第01010691号、及び欧州特許第01044970号;並びにPCT特許出願公開の国際公開第97/19682号、国際公開第97/20820号、国際公開第97/20821号、国際公開第97/20822号、国際公開第97/20823号、国際公開第98/27063号、国際公開第00/64880号、国際公開第00/68197号、国際公開第00/69849号、国際公開第01/09120号、国際公開第01/85714号、国際公開第01/85730号、国際公開第01/07409号、国際公開第01/02379号、国際公開第01/02379号、国際公開第01/23388号、国際公開第01/23389号、国際公開第01/44201号、国際公開第01/62737号、国際公開第01/62738号、国際公開第01/09120号、国際公開第02/22592号、国際公開第0248152号、国際公開第02/49648号、及び国際公開第01/14376号に記載される化合物が挙げられる。
【0365】
抗肥満剤としては、メラニン凝集ホルモン1受容体(MCH1R)アンタゴニスト、例えば、T-226296(Takeda)及びメラニン凝集ホルモン2受容体(MCH2R)アンタゴニストを含むメラニン凝集ホルモン(MCH)アンタゴニストも挙げられる。MCH受容体アンタゴニスト、誘導体、調製物、配合物、医薬組成物、用量、及び投与経路は、例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0009815号、同第2005/0026915号、同第2004/0152742号、同第2004/0209865号;PCT特許出願公開の国際公開第01/82925号、国際公開第01/87834号、国際公開第02/06245号、国際公開第02/04433号、及び国際公開第02/51809号;並びに日本特許出願の特開13226269号に既に記載されている。
【0366】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、PCT出願の国際公開第00/21509号に記載されるものを含むオピオイドアンタゴニストも挙げられる。本明細書に提供される組成物及び使用方法において有用な具体的なオピオイドアンタゴニストとしては、限定されるものではないが、ナルメフェン(REVEX(登録商標))、3-メトキシナルトレキソン ナロキソン、ナルトレキソン、ブプロピオン、ナロキソナジン、ベータ-フナルトレキサミン、デルタ1([D-Ala2,Leu5,Cys6]-エンケファリン(DALCE)、ナルトリンドールイソチアシネート、及びノル-ビナルトルファミン又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0367】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、PCT特許出願の国際公開第01/96302号、国際公開第01/68609号、国際公開第02/51232号、及び国際公開第02/51838号に記載されるものを含むオレキシンアンタゴニストも挙げられる。提供される組成物及び使用方法において有用な具体的なオレキシンアンタゴニストとしては、限定されるものではないが、SB-334867-Aが挙げられる。
【0368】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、PYY3-36(例えば、Batterham et al.(2003)Nature 418:650-654)、NPY3-36及び他のY2アゴニスト、例えば、Nアセチル[Leu(28,31)]NPY24-36(White-Smith et al.(1999)NeuroPeptides 33:526-533、TASP-V(Malis et al.(1999)Br.J.Pharmacol.126:989-996)、シクロ-(28/32)-Ac-[Lys28-Glu32]-(25-36)-pNPY(Cabrele et al.(2000)J.Pept.Sci.6:97-122などの化合物を含むニューロペプチドY2(NPY2)アゴニストも挙げられ、それらは本発明のペプチドと同時投与され得るか又は別個に投与され得る。提供される抗肥満剤としては、限定されるものではないが、膵ペプチド(PP)(例えば、Batterham et al.(2003)J.Clin.Endocrinol.Metab.88:3989-3992)及び他のY4アゴニスト、例えば、1229U91(Raposinho et al.(2000)Neuroendocrinology 71:2-7)などの化合物を含むニューロペプチドY4(NPY4)アゴニストも挙げられる。NPY2アゴニスト及びNPY4アゴニスト、誘導体、調製物、配合物、医薬組成物、用量、及び投与経路は、例えば、米国特許出願公開第2002/0141985号及びPCT出願公開の国際公開第2005/077094号に既に記載されている。
【0369】
抗肥満剤としては、限定されるものではないが、PCT出願の国際公開第02/15905号に記載されるもの、O-[3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノール]カルバメート(Kiec-Kononowicz et al.(2000)Pharmazie 55:349-355)、ピペリジン含有ヒスタミンH3受容体アンタゴニスト(Lazewska et al.(2001)Pharmazie 56:927-932)、ベンゾフェノン誘導体及び関連化合物(Sasse et al.(2001)Arch.Pharm.(Weinheim)334:45-52)、置換N-フェニルカルバメート(Reidemeister et al.(2000)Pharmazie 55:83-86)、並びにプロシキファン誘導体(Sasse et al.(2000)J.Med.Chem.43:3335-3343)を含むヒスタミン3(H3)アンタゴニスト/インバースアゴニストも挙げられる。提供される組成物及び使用方法において有用な具体的なH3アンタゴニスト/インバースアゴニストとしては、限定されるものではないが、チオペラミド、3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロピルN-(4-ペンテニル)カルバメート、クロベンプロピト、ヨードフェンプロピト、イモプロキシファン、及びGT2394(Gliatech)が挙げられる。
【0370】
抗肥満剤としては、コレシストキニン(CCK)及びCCKアゴニストも挙げられる。使用されるコレシストキニン-A(CCK-A)アゴニストとしては、限定されるものではないが、米国特許第5,739,106号に記載されるものが挙げられる。具体的なCCK-Aアゴニストとしては、限定されるものではないが、AR-R15849、GI181771、JMV-180、A-71378、A-71623及びSR146131が挙げられる。
【0371】
抗肥満剤としては、グレリンアンタゴニスト、例えば、PCT出願公開の国際公開第01/87335号及び国際公開第02/08250号に記載されるものも挙げられる。グレリンアンタゴニストは、GHS(成長ホルモン分泌促進受容体)アンタゴニストとして公知である。したがって、提供される組成物及び方法は、グレリンアンタゴニストに代えて使用GHSアンタゴニストを企図する。
【0372】
抗肥満剤としては、オベスタチン並びにオベスタチン類似体及びアゴニストが挙げられる。オベスタチンは、グレリンが誘導される同じ前駆体、プレプログレリンから誘導されるペプチドである。例えば、Zhang et al.(2005)Science 310:996-999;Nogueiras et al.(2005)Science 310:985-986;Pan et al. (2006)Peptides 27:911-916参照。グレリンの活性とは対照的に、オベスタチンは、食物摂取、胃内容排出活動、空腸運動性、及び体重増加を減少させることにより、食欲抑制ホルモンとして作用すると考えられる。使用されるオベスタチンペプチドとしては、限定されるものではないが、Zhang et al.(2005)Science 310:996-999に記載されるものが挙げられる。
【0373】
また、アミリン模倣体(例えば、アミリン-カルシトニン受容体コアゴニスト、例えば、ダバリンチド)、GLP-1-GIP受容体コアゴニスト、例えば、インクレチン(例えば、エキセンジン-4、レプチン、及びPYY類似体)は、本発明のGIPを含むペプチドと抗肥満剤として同様に投与され得る抗肥満剤である。
【0374】
したがって、ある実施形態において、本発明のペプチドは、栄養素利用性を低減させることにより軽減され得る病態又は障害の処置又は予防に有用であり、前記対象に治療又は予防有効量の本発明の化合物を投与することを含む。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、食物摂取、体重減少、エネルギー代謝、血漿グルコースレベル、インスリンレベル、及び/又はインスリン分泌、陽性変力作用のコントロール、異化作用の低減、胃内容排出の緩徐化、肥満、糖尿病及び糖尿病関連病態、肝臓脂肪関連炎症及び損傷が挙げられる。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、摂食障害及び肥満の希少遺伝障害、例えば、プラダーウィリ症候群、クリティカルケア、インスリン抵抗性及びその障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、1型、2型、及び妊娠性糖尿病を含む任意の種類の真性糖尿病、並びにCNS障害、例えば、神経変性の予防、アルツハイマー病及びパーキンソン病、並びに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、並びに糖尿病からの合併症(例えば、神経障害(例えば、エキセンジンファミリー構成成分を含有するGIPペプチドを含む本発明のペプチドで処置)、神経障害痛(例えば、アミリンファミリーホルモンモジュールを含むGIPペプチドを含む本発明のペプチドで処置)、網膜症、腎症、不十分な膵ベータ細胞量の病態(例えば、エキセンジン-4及びGLP-1の膵島新生作用に基づく)メタボリックシンドローム、ダンピング症候群、多嚢胞性卵巣症候群、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、高脂血症、睡眠時無呼吸、癌、肺高血圧、胆嚢炎、及び変形性関節症が挙げられる。
【0375】
心血管病態又は疾患の非限定的な例は、高血圧、心筋虚血、及び心筋再灌流である。本発明の化合物は、脳卒中、癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、及び結腸癌)、胆嚢疾患、睡眠時無呼吸、低受精率、及び変形性関節症を含む肥満に伴う他の病態の処置又は予防においても有用であり得る、(Lyznicki et al,Am.Fam.Phys.63:2185,2001参照)。他の実施形態において、本発明のペプチドは、審美的理由から体組成を変更するためか、ある者の身体的能力を向上させるためか、又は低脂肪肉源を生産するために使用され得る。本発明のペプチドは、筋量の顕著な減少なしで脂肪を減少させることにより体組成を変化させるために有用であり、したがって除脂肪体重を保存しながら望ましい体脂肪の喪失を生じさせる。一実施形態において、このような本発明のペプチドは、エキセンジン、GLP1、アミリン、及び/又はsCT部分を含有する。
【0376】
本発明の別の態様において、肥満を処置又は予防する方法であって、治療又は予防有効量の本発明のペプチドを、それが必要とされる対象に投与することを含む方法が提供される。例示的な実施形態において、対象は肥満又は過体重対象である。「肥満」は一般に体格指数が30超として定義される一方、本開示の目的では、30未満の体格指数を有し、体重の低減を必要とするか又は望む者を含む任意の対象が「肥満」の範囲に含まれる。インスリン抵抗性、耐糖能異常であるか又は真性糖尿病の任意の形態(例えば、1、2型又は妊娠性糖尿病)を有する対象がこれらの本発明のペプチドから利益を受け得る。一実施形態において、このような本発明のペプチドは、GIP、アミリンカルシトニン受容体アゴニスト、例えば、ダバリンチド、GLP-1-GIP受容体コアゴニスト、例えば、エキセンジン、GLP1、アミリン及び/又はsCT部分を含有する。
【0377】
本発明の他の態様において、食物摂取を低減させ、栄養素利用性を低減させ、体重減少を引き起こし、体組成に影響を与え、及び全身エネルギー含量を変更するか又はエネルギー消費を増加させ、真性糖尿病を処置し、及び脂質プロファイルを改善する(LDLコレステロール及びトリグリセリドレベルの低減及び/又はHDLコレステロールレベルの変化を含む)の方法であって、対象に有効量の本発明のペプチドを投与することを含む方法が提供される。例示的な実施形態において、栄養素利用性を低減させることにより軽減され得る病態又は障害の処置又は予防が必要とされる対象において栄養素利用性を低減させることにより軽減され得る病態又は障害を処置又は予防するため、前記対象に治療又は予防有効量の本発明のペプチドを投与することを含む本発明の方法が使用される。このような病態及び障害としては、限定されるものではないが、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、摂食障害、インスリン抵抗性、肥満、及び任意の種類の真性糖尿病が挙げられる。一実施形態において、このような本発明のペプチドは、GIP、エキセンジン、GLP1、アミリン及び/又はsCT部分を含有する。
【0378】
本発明に有用な追加のアッセイとしては、体組成に対する本発明のペプチド、特に、GIP、エキセンジン、GLP1、アミリン及び/又はsCT部分を含有するものの効果を決定し得るものが挙げられる。例示的なアッセイは、代謝疾患についての食餌誘発性肥満(DIO)マウスモデルの利用を含むものであり得る。処置期間前、雄C57BL/6Jマウスに高脂肪食(#D12331、脂肪からの58%のカロリー;Research Diets,Inc.,)を6週間、4週齢で開始して給餌することができる。試験中、マウスはその高脂肪食の摂食を継続し得る。試験全体にわたり水を不断で提供することができる。同齢の非肥満マウスの一群に、代謝パラメータをDIO群と比較する目的で低脂肪食(#D12329、脂肪からの11%のカロリー)を給餌することができる。
【0379】
DIOマウスに皮下(SC)肩甲骨内(intrascapular)浸透圧ポンプを埋め込んでビヒクル(水中50%のジメチルスルホキシド(DMSO))又は本発明のペプチドのいずれかを送達することができる。本発明のペプチドの群のポンプは任意の量、例えば、1000μg/kg/日の本発明のペプチドを7~28日間送達するように設定することができる。体重及び食物摂取を規則的間隔にわたり試験期間全体で計測することができる。呼吸商(RQ、CO2産生÷O2消費として定義される)及び代謝率を、動物個体の間接熱量測定法(Oxymax,Columbus Instruments,Columbus,Ohio)を使用して決定することができる。マウスをイソフルラン過量投与により安楽死させ、脂肪症の指標(両側性副睾丸脂肪体重量)を測定することができる。さらに、精巣上体重量の決定前、各マウスについての体組成(除脂肪量、脂肪量)を、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)機器を使用して製造者の指示書(Lunar Piximus,GE Imaging System)に従って分析することができる。本発明の方法において、本発明のペプチド、特に、本明細書に記載されるアッセイの1つ(好ましくは、食物摂取、胃内容排出、膵分泌、体重低減又は体組成アッセイ)において、その同じアッセイにおける構成成分ペプチドホルモンの効力よりも高い効力を有するGIP、エキセンジン、PPF、PYY、GLP1、アミリン及び/又はsCT部分を含むものを同定することができる。
【0380】
食物摂取の低減、体重減少、又は肥満の処置の結果としての高血圧の改善が必要とされる対象における高血圧の改善に加え、本発明のペプチドは低血圧を処置するために使用され得る。
【0381】
別の一般的態様において、本発明のペプチドは、グレリンの分泌を阻害するために使用され得る。したがって、本発明のペプチドはこの機序を利用してグレリン関連障害、例えば、プラダーウィリ症候群、全ての型の糖尿病及びその合併症、肥満、過食症、高脂血症、又は過栄養に伴う他の障害を処置又は予防し得る。
【0382】
本発明のペプチドは、膵島又は細胞におけるグルコース応答性の増強、誘導、向上又は回復にも有用であり得る。これらの作用は、代謝障害に伴う病態、例えば、上記及び米国特許出願の米国特許出願公開第2004/0228846号に記載されるものの処置又は予防に有用であり得る。このような活性を決定するためのアッセイは、当該技術分野において公知である。例えば、公開された米国特許出願の米国特許出願公開第2004/0228846号(参照により全体として組み込まれる)において、膵島単離及び培養並びに胎児膵島成熟を決定するためのアッセイが記載されている。特許出願の米国特許出願公開第2004/0228846号の実施例において、セクレチン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-I)及びボンベシンを含む腸由来ホルモンペプチドがSigmaから購入された。コラゲナーゼXI型がSigmaから入手された。RPMI1640培養培地及びウシ胎仔血清がGibcoから入手された。抗インスリン抗体([125I]-RIAキット)を含有するラジオイムノアッセイキットがLinco,St Louisから購入された。
【0383】
本発明のペプチドは、高血圧性及び糖尿病性腎症を含む腎症、並びにインスリン抵抗性及びメタボリックシンドロームに伴う腎症の予防及び処置に有用である。本発明のペプチドは、他の中でもとりわけ、高血圧、内皮機能、腎機能、及び糸球体硬化症を改善するか又はその悪化を予防することによりこれらの目的を達成する。一実施形態において、本発明は、高血圧性及び糖尿病性腎症を含む腎症、又はインスリン抵抗性に関連する腎症を予防又は処置する方法であって、本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。本発明のペプチドは、低減した血管拡張能を有するか、又は糸球体硬化症若しくは糸球体流量の任意の他の低減を有する患者における内皮機能の改善にさらに使用される。このような内皮機能の改善は、高血圧を低減させること、及び糸球体の毛細管の機能を改善することの両方に役立つ。追加の実施形態において、本発明の分子は、腎症のESRDへの進行を予防するためか、タンパク尿症及び/又は糸球体硬化症を予防し、その進行を緩徐化させ、それを処置又は改善するために有用である。
【0384】
本発明のペプチドは、心不整脈に罹患するリスクの低減、心不整脈の予防、又は処置に有用である。本発明のペプチドは、心虚血、心虚血-再灌流、及び鬱血性心不全を有する患者において抗不整脈効果を提供し得る。例えば、インクレチンGLP-Iは、これらの障害を有する患者における心臓損傷を低減させ、回復を向上させることが見出されている。GLP-Iを含むインクレチンは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ホルモンである。GLP-I及びエキセンジンは、危険な低血糖を誘導せずに末梢グルコース取り込みを有効に向上させる。これらはそのインスリン分泌刺激作用と無関係にグルカゴン分泌も強く抑制し、それにより血漿遊離脂肪酸(FFA)レベルをインスリンで達成され得るものよりも顕著に強力に低減させる。高いFFAレベルは、心筋虚血の間の主な毒性機序として関与するとされている。別の実施形態において、再灌流及び虚血に伴う損傷を確実に低減させ、患者回復を向上させる本発明のペプチドは、心不整脈の予防及び処置に有用である。いっそうさらなる実施形態において、急性脳卒中又は出血後の処置、好ましくは、静脈内投与は、重症低血糖のリスクも他の有害副作用のリスクもなしでインスリン分泌を最適化し、脳同化作用を増加させ、グルカゴンの抑制によりインスリン有効性を向上させ、及び正常血糖又は軽度低血糖を維持するための手段を提供する。一実施形態において、このような本発明のペプチドは、GIP、GLP1又はエキセンジン部分を含有する。
【0385】
いっそうさらなる実施形態において、インスリン抵抗性を降下させ得るか又はインスリン感受性を増加させ得る本発明のペプチドは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を処置するために有用である。本発明のペプチドの投与は、PCOSに罹患している対象におけるインスリン抵抗性を低減させ得るか又は予防し得る。さらに別の実施形態において、本発明のペプチドは、PCOSに罹患している対象における2型糖尿病の発病を予防する。さらなる本発明のペプチドは、PCOSに罹患している対象における規則的な月経、排卵、又は受精能を回復させ得る。一実施形態において、このようなGIPを含有する本発明のペプチドは、GLP1受容体の結合及び活性化のためのGLP1又はエキセンジン部分も含有する。
【0386】
本発明のペプチドの選択により、一部はその抗分泌及び抗運動特性に関連する広範囲の生物学的活性を示し得る。本発明のペプチドは、上皮細胞との直接的相互作用により、又はおそらくは腸分泌を刺激するホルモン若しくは神経伝達物質の分泌を阻害することにより胃腸分泌を抑制し得る。抗分泌特性としては胃液及び/又は膵分泌の阻害が挙げられ、それは胃炎、膵炎、バレット食道、及び胃食道逆流症を含む疾患及び障害、並びに胸焼け、口又は肺中への胃/腸内容物の逆流を伴う胸焼け、嚥下困難、咳嗽、間欠型喘鳴及び声帯炎症(GERDに伴う病態)、食道糜爛、食道潰瘍、食道狭窄、バレット化生(正常食道上皮の異常上皮での置換)、バレット食道腺癌、及び誤嚥を含むそれらに伴う病態の処置又は予防において有用であり得る。別の実施形態において、アミリン及び/又はsCT部分を含有する本発明のGIPペプチドは、これらの疾患及び病態、例えば、バレット食道、胃食道逆流症(GERD)及び本明細書に開示されるそれらに伴う病態の処置又は予防に有用であり得る。このような本発明のペプチドは、特に有効な抗分泌特性、例えば、胃酸の阻害、胆汁酸の阻害、及び膵酵素の阻害を有する。さらに、このような本発明のペプチドは、胃保護効果を有し得、これにより、腸疾患及び病態の、並びにバレット食道、及び/又はGERD及び本明細書に記載される関連若しくは付随病態の処置又は予防において特に有用となる。
【0387】
別の一般的態様において、本発明のペプチドは、骨吸収の減少、血漿カルシウムの減少、及び/又は鎮痛効果の誘導に、特に骨障害、例えば、特に骨減少症及び骨粗鬆症を処置するために有用である。さらに他の実施形態において、本発明のペプチドは、疼痛及び有痛性神経障害を処置するために有用である。一実施形態において、このような本発明のペプチドは、エキセンジン、GLP1、アミリン及び/又はsCT部分を含有する。例えば、本発明のGIP-sCT又はGIP-アミリン/sCTペプチドは、サケカルシトニン又はアミリン/sCT/アミリンキメラの選択可能な特性、例えば、骨量減少及び骨吸収の減少若しくは軟骨ターンオーバーの低減(軟骨保護)、及びGIPの特性、例えば、血漿グルコース降下(本明細書に記載されるとおり抗異化状況に随伴する)及び/又は骨吸収の阻害及び骨密度の維持若しくは増加を有し得る。このような選択可能な特性を有する本発明のペプチドは、特に、血糖コントロールからも利益を得られる者、例えば、糖尿病を有するか又はクリティカルケアを受けている対象において骨粗鬆症又は高い軟骨ターンオーバーの病態の処置を向上させ得る。
【0388】
医薬組成物
特定の実施形態において、本発明のペプチド、又は本発明のペプチドを含む医薬組成物は、徐放性マトリックス中で懸濁される。本明細書において使用される徐放性マトリックスは、酵素的若しくは酸塩基加水分解により、又は溶解により分解可能である材料、通常ポリマーで作製されたマトリックスである。体内に挿入されると、マトリックスは酵素及び体液により作用される。徐放性マトリックスは、望ましくは、生体適合性材料、例えば、リポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコグリコリド(乳酸及びグリコール酸のコポリマー)ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖、核酸、ポリアミノ酸、アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン及びシリコーンから選択される。生分解性マトリックスの一実施形態は、ポリラクチド、ポリグリコリド、又はポリラクチドコグリコリド(乳酸及びグリコール酸のコポリマー)のいずれかの1つのマトリックスである。
【0389】
ある実施形態において、本発明は、1つ以上の本発明のペプチド及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物を含む。薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤は、非毒性の固体、半固体若しくは液体の増量剤、希釈剤、封入材料又は任意のタイプの配合補助剤を指す。種々の抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることにより、微生物の作用の予防が確保され得る。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含めることが望ましいこともある。
【0390】
ある実施形態において、組成物は、経口、非経口、嚢内、膣内、腹腔内、直腸内、局所(散剤、軟膏剤、点眼剤、坐剤、又は経皮パッチによるもの)、吸入(例えば、鼻腔内スプレー)により、眼(例えば、眼内)、又はバッカル投与される。本明細書において使用される「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、皮内及び関節内の注射及び注入を含む投与方式を指す。したがって、ある実施形態において、組成物は、これらの投与経路のいずれかによる送達のために配合される。
【0391】
ある実施形態において、非経口注射用の医薬組成物は、使用直前の滅菌注射溶液又は分散液中への再構成のための、薬学的に許容可能な滅菌水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン、又は滅菌粉末を含む。好適な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの好適な混合物、β-シクロデキストリン、植物油(例えば、オリーブ油)、並びに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により適切な流動性が維持され得る。これらの組成物は、補助剤、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤も含有し得る。注射医薬形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの包含によりもたらされ得る。
【0392】
注射デポ剤形態としては、1つ以上の生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)、及び(ポリ)グリコール、例えば、PEG中の本発明のペプチドのマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製されるものが挙げられる。ペプチドとポリマーとの比及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、ペプチド阻害剤の放出速度がコントロールされ得る。デポ剤注射配合物は、身体組織と適合性であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中でペプチドを捕捉させることによっても調製される。
【0393】
注射配合物は、例えば、細菌保持フィルターに通す濾過により、又は使用直前に滅菌水若しくは他の滅菌注射媒体中に溶解若しくは分散し得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を取り込むことにより滅菌され得る。
【0394】
局所投与としては、肺及び眼の表面を含む皮膚又は粘膜への投与が挙げられる。吸入及び鼻腔内用のものを含む局所肺投与用の組成物は、水性及び非水性配合物中の溶液及び懸濁液を含み得、加圧されても非加圧でもよい乾燥粉末として調製され得る。非加圧粉末組成物において、活性成分は微粉形態であり得、例えば、最大100マイクロメートルの直径のサイズを有する粒子を含むより大きいサイズの薬学的に許容可能な不活性担体との混合物として使用され得る。好適な不活性担体としては、糖、例えば、ラクトースが挙げられる。
【0395】
或いは、組成物は加圧され得、圧縮ガス、例えば、窒素又は液化ガス噴射剤を含有し得る。液化噴射剤媒体及び実際には総組成物は、活性成分がその中でいかなる実質的な程度にも溶解しないようなものであり得る。加圧組成物は、表面活性剤、例えば、液体若しくは固体非イオン性表面活性剤も含有し得るか又は固体アニオン性表面活性剤であり得る。ナトリウム塩の形態の固体アニオン性表面活性剤を使用することが好ましい。
【0396】
局所投与のさらなる形態は、眼への投与である。本発明のペプチドは、ペプチドが眼の角膜及び内部領域、例えば、前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、レンズ、脈絡膜/網膜及び強膜に浸透するのに十分な期間、ペプチドが眼表面と接触して維持されるように、薬学的に許容可能な眼科ビヒクル中で送達され得る。薬学的に許容可能な眼科ビヒクルは、例えば、軟膏、植物油又は封入材料であり得る。或いは、本発明のペプチドは、硝子体液及び房水中に直接注射され得る。
【0397】
直腸又は膣投与用の組成物としては、好ましくは、本発明のペプチドと、室温で固体であるが体温で液体であり、したがって直腸又は膣腔中で溶融して活性化合物を放出する好適な非刺激性賦形剤又は担体、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックスとを混合することにより調製され得る坐剤が挙げられる。
【0398】
本発明のペプチドは、リポソーム又は他の脂質ベース担体中でも投与され得る。当該技術分野において公知の通り、リポソームは、一般に、リン脂質又は他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中で分散される単層又は多層水和液晶により形成される。リポソームを形成し得る任意の非毒性の生理学的に許容可能で代謝可能な脂質が使用され得る。リポソーム形態の本組成物は、本発明のペプチドに加え、安定剤、保存剤、賦形剤などを含有し得る。ある実施形態において、脂質は、天然及び合成の両方のホスファチジルコリン(レシチン)及びセリンを含むリン脂質を含む。リポソームを形成する方法は、当該技術分野において公知である。
【0399】
本発明のペプチドは、Camurusにより記載されるFluidCrystal(登録商標)技術も使用して投与され得る。これらの配合物は、水性環境中で;組織表面で、又は体内で液晶ナノ構造を自発的に形成する内因性極性脂質の特殊な組み合わせをベースとする。このようなFluidCrystal(登録商標)注射デポ剤は、単一注射で長期間(数日間~数ヶ月間)にわたり処置効力を提供し、毎日の投薬の負荷を低減させる一方、治療法への順守を増加させる潜在性を有するように設計される。
【0400】
FluidCrystal(登録商標)注射デポ剤は、細針を有する慣用のシリンジを使用して容易に皮下注射され得る、溶解した本発明のペプチドを有する脂質ベース液体を含む。組織中の体液との接触時、脂質溶液は液晶ゲルに変形し、それはペプチドを有効に封入する。薬物化合物は、液晶マトリックスが組織中で徐々に分解されるにつれてゆっくりと放出され、放出は組成物に応じて数日間~数週間又は数ヶ月間コントロールされ得る。
【0401】
非経口投与に好適な本発明において使用されるべき医薬組成物は、一般に塩化ナトリウム、グリセリン、グルコース、マンニトール、ソルビトールなどを使用してレシピエントの血液と等張にされたペプチド阻害剤の滅菌水溶液及び/又は懸濁液を含み得る。
【0402】
一部の実施形態において、本発明は、経口送達用の医薬組成物を提供する。本発明の組成物及びペプチドは、本明細書に記載される方法、技術、及び/又は送達ビヒクルのいずれかに従って経口投与のために調製され得る。さらに、当業者は、本発明のペプチドが、本明細書に開示されていないが当該技術分野において周知であり、ペプチドの経口送達における使用に適合性である系又は送達ビヒクル中に修飾又は統合され得ることを認識する。
【0403】
ある実施形態において、経口投与用の配合物は、腸壁の透過性を人工的に増加させるための補助剤(例えば、レゾルシノール及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテル)、及び/又は酵素的分解を阻害するための酵素阻害剤(例えば、膵トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFF)又はトラシロール)を含み得る。ある実施形態において、経口投与のための固体型剤形の本発明のペプチドは、少なくとも1つの添加剤、例えば、スクロース、ラクトース、セルロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成若しくは半合成ポリマー、又はグリセリドと混合され得る。これらの剤形は、他のタイプの添加剤、例えば、不活性希釈剤、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、パラベン、保存剤、例えば、ソルビン酸、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール、酸化防止剤、例えば、システイン、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤、甘味剤、風味剤又は着香剤も含有し得る。
【0404】
特定の実施形態において、本発明のペプチドについての使用に適合性の経口剤形又は単位用量は、ペプチド及び非薬物構成成分又は賦形剤の混合物、並びに成分又は包装のいずれかとしてみなされ得る他の使い捨て材料を含み得る。経口組成物は、液体、固体、及び半固体剤形の少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態において、有効量の本発明のペプチドを含む経口剤形であって、丸剤、錠剤、カプセル剤、ゲル剤、ペースト剤、ドリンク剤、シロップ剤、軟膏剤、及び坐剤の少なくとも1つを含む剤形が提供される。一部の例において、対象の小腸及び/又は結腸中のペプチドの遅延放出を達成するように設計及び構成される経口剤形が提供される。
【0405】
ある実施形態において、本発明のペプチドを含む経口医薬組成物は、小腸中の本発明のペプチドの放出を遅延させるように設計される腸溶コーティングを含む。少なくとも一部の実施形態において、本発明のペプチド及びプロテアーゼ阻害剤、例えば、アプロチニンを遅延放出医薬配合物中で含む医薬組成物が提供される。一部の例において、本発明の医薬組成物は、約5.0以上のpHで胃液中で可溶性である腸溶コートを含む。少なくとも1つの実施形態において、解離可能なカルボン酸基、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタル酸セルロース及び酢酸トリメリット酸セルロースを含むセルロースの誘導体及びセルロースの同様の誘導体並びに他の炭水化物ポリマーを有するポリマーを含む腸溶コーティングを含む医薬組成物が提供される。
【0406】
ある実施形態において、本発明のペプチドを含む医薬組成物は、腸溶コーティング中に提供され、腸溶コーティングは、対象の下部胃腸系内でコントロールされた様式で医薬組成物を保護及び放出するように、且つ全身性の副作用を回避するように設計される。腸溶コーティングに加え、本発明のペプチドは、任意の適合性経口薬物送達系又は構成成分内で封入、コーティング、係合又はそうでなければ会合され得る。例えば、一部の実施形態において、本発明のペプチドは、ポリマーヒドロゲル、ナノ粒子、マイクロスフェア、ミセル、及び他の脂質系の少なくとも1つを含む脂質担体系中で提供される。
【0407】
小腸中のペプチド分解を克服するため、本発明の一部の実施形態は、本発明のペプチドが含有されるヒドロゲルポリマー担体系であって、ヒドロゲルポリマーが小腸及び/又は結腸中のタンパク質分解からペプチドを保護するヒドロゲルポリマー担体系を含む。本発明のペプチドは、溶解キネティクスを増加させ、ペプチドの腸吸収を向上させるように設計される担体系との適合性の使用のためにさらに配合され得る。これらの方法としては、ペプチドのGI管透過を増加させるためのリポソーム、ミセル及びナノ粒子の使用が挙げられる。
【0408】
経口送達用の医薬剤を提供するため、種々の生物応答系も1つ以上の本発明のペプチドと組み合わせられ得る。一部の実施形態において、本発明のペプチドは、経口投与用の治療剤を提供するため、生物応答系、例えば、ヒドロゲル及び水素結合基を有する粘膜付着性ポリマー(例えば、PEG、ポリ(メタクリル)酸[PMAA]、セルロース、Eudragit(登録商標)、キトサン及びアルギン酸塩)との組み合わせで使用される。他の実施形態は、本明細書に開示される本発明のペプチドについての薬物滞留時間を最適化又は延長するための方法であって、ペプチド表面の表面を、水素結合、結合ムチンを有するポリマー又は/及び疎水性相互作用を介して粘膜付着特性を含むように修飾する方法を含む。これらの修飾ペプチド分子は、本発明の所望の特徴に従って対象内の増加薬物滞留時間を実証し得る。さらに、標的化粘膜付着系は、腸細胞及びM細胞表面で受容体に特異的に結合し得、それにより、ペプチドを含有する粒子の取り込みをさらに増加させる。
【0409】
他の実施形態は、本発明のペプチドの経口送達の方法であって、ペプチドを対象に、傍細胞又は経細胞透過を増加させることにより腸粘膜を通過するペプチドの輸送を促進する透過向上剤との組み合わせで提供する方法を含む。治療剤の経口送達のための種々の透過向上剤及び方法は、Brayden,D.J.,Mrsny,R.J.,2011.Oral peptide delivery:prioritizing the leading technologies.Ther.Delivery 2(12),1567-1573に記載されている。
【0410】
ある実施形態において、本発明の医薬組成物及び配合物は、本発明のペプチド及び1つ以上の透過向上剤を含む。吸収向上剤の例としては、例えば、胆汁酸塩、脂肪酸、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、及び非アニオン性)キレーター、毛様小帯(Zonular)OT、エステル、シクロデキストリン、デキストラン硫酸、アゾン、クラウンエーテル、EDTA、スクロースエステル、及びホスホチジル(phosphotidyl)コリンが挙げられ得る。吸収向上剤は、典型的には担体自体ではないが、他の担体とも広く会合して腸粘膜を通過してペプチド及びタンパク質を輸送することにより経口バイオアベイラビリティを改善する。このような物質は、意図される本発明のペプチドとの非特異的相互作用を形成するために賦形剤として配合物に添加され得るか又は取り込まれ得る。
【0411】
タイトジャンクション透過を向上させ、一般に安全と認められる(GRAS)と確認された食物構成成分及び/又は他の天然存在物質としては、例えば、アシルグリセリド、アシルカルニチン、胆汁酸塩、及び中鎖脂肪酸が挙げられる。中鎖脂肪酸(MCFAS)のナトリウム塩も、透過向上剤であることが示唆された。最も広範に研究されたMCFASは、カプリン酸の塩であるカプリン酸ナトリウムであり、それは乳脂肪画分中に2~3%の脂肪酸を含む。これまで、カプリン酸ナトリウムは、主に、直腸アンピシリン吸収を改善するための坐剤配合物(Doktacillin(商標))中の賦形剤として使用されている。別の食物性MCFAS、カプリル酸ナトリウム(8炭素)の透過特性は、インビトロでカプリン酸ナトリウムと比較して低いことが示された。カプリル酸ナトリウム及びペプチド薬物は、油中で他の賦形剤との混合物として配合されて透過性を向上させる油性懸濁液(OS)が生成された(Tuvia,S.et al.,Pharmaceutical Research,Vol.31,No.8,pp.2010-2021(2014)。
【0412】
例えば、ある実施形態において、透過向上剤は本発明のペプチドと組み合わせられ、透過向上剤は、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸、胆汁塩、両親媒性界面活性剤、及びキレート剤の少なくとも1つを含む。ある実施形態において、中鎖脂肪酸塩は、腸上皮の傍細胞透過性を増加させることにより吸収を促進する。ある実施形態において、本発明のペプチドとの弱い非共有結合的会合を形成させるためにN-[ヒドロキシベンゾイル)アミノ]カプリル酸ナトリウムを含む透過向上剤が使用され、透過向上剤は、膜輸送及び血液循環到達時のさらなる解離に有利である。ある実施形態において、本発明のペプチドは、オリゴアルギニンにコンジュゲートされ、それにより、種々の細胞タイプ中へのペプチドの細胞浸透を増加させる。さらに、少なくとも1つの実施形態において、本発明のペプチドと、シクロデキストリン(CD)及びデンドリマーからなる群から選択される透過向上剤との間に非共有結合が提供され、透過向上剤は、本発明のペプチドについてのペプチド凝集を低減させ、安定性及び溶解度を増加させる。
【0413】
ある実施形態において、医薬組成物又は配合物は、本発明のペプチド及びtransient permeability enhancer(TPE)を含む。透過向上剤及びTPEは、経口バイオアベイラビリティ又はペプチドを増加させるために使用され得る。使用され得るTPEの一例は、カプリル酸ナトリウム及び治療剤を含有する粉末を分散させる油性懸濁液配合物である(Tuvia,S.et al.,Pharmaceutical Research,Vol.31,No.8,pp.2010-2021(2014)。
【0414】
ある実施形態において、医薬組成物及び配合物は、本発明のペプチド及び1つ以上の吸収向上剤、酵素阻害剤、又は粘膜付着ポリマーを含み得る。
【0415】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、配合ビヒクル、例えば、エマルジョン、リポソーム、マイクロスフェア又はナノ粒子中などで配合される。
【0416】
本発明の他の実施形態は、増加した半減期を有する本発明のペプチドで対象を処置する方法を提供する。一態様において、本発明は、治療有効量の1日1回(q.d.)又は1日2回(b.i.d.)投与に十分な、インビトロ又はインビボ(例えば、ヒト対象に投与される場合)で少なくとも数時間~1日の半減期を有するペプチドを提供する。ある実施形態において、本発明のペプチドは、治療有効量の週1回(q.w.)投与に十分な3日間以上の半減期を有する。ある実施形態において、本発明のペプチドは、治療有効量の隔週(b.i.w.)又は月1回投与に十分な8日間以上の半減期を有する。ある実施形態において、本発明のペプチドは、非誘導体化又は非修飾ペプチドと比較して長い半減期を有するように誘導体化又は修飾される。ある実施形態において、ペプチドは、血清半減期を増加させるための1つ以上の化学修飾を含有する。
【0417】
本明細書に記載される処置又は送達系のうちの少なくとも1つにおいて使用される場合、本発明のペプチドは、純粋な形態で、又は薬学的に許容可能な塩形態が存在する場合はそのような形態で用いられ得る。
【0418】
本発明のペプチド及び本発明の組成物の総1日使用量は、主治医により妥当な医学的判断の範囲内で決定され得る。任意の特定の対象についての具体的な治療有効用量レベルは、:a)処置されている障害及び障害の重症度;b)用いられる具体的な化合物の活性;c)用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別及び食事;d)用いられる具体的な本発明のペプチドの投与時間、投与経路、及び排泄速度;e)処置期間;f)用いられる具体的な本発明のペプチドとの組み合わせで、又はそれと同時に使用される薬物、並びに医療分野において周知の同様の要因を含む種々の要因に依存する。
【0419】
特定の実施形態において、ヒト又は他の哺乳類宿主に単回又は分割用量で投与されるべき本発明のペプチドの総1日用量は、例えば、1日0.0001~300mg/kg体重又は1日1~300mg/kg体重の量であり得る。
【実施例】
【0420】
本発明の実施例
実施例1:ペプチド合成
ペプチドをGyros Protein Technologies Symphony X合成装置上で、固相ペプチド化学反応(SPPS)/Fmoc化学反応を介してポリスチレン又はPEG系樹脂を使用して合成した。Fmoc化学反応は、各アミノ酸のN末端におけるFmoc(フルオレニルメチルオキシカルボニル)保護基を用い、それを塩基(通常、DMF中20%のピペリジン)により除去してから次のカップリングサイクルを行う。一例として、TentaGel RAM樹脂(0.18mmol/gのローディングで)並びにFmoc保護アミノ酸誘導体の連続カップリング及び脱保護を使用して(ペプチド番号12)を作製した。脂質化伸長リジン残基を単一の事前形成されたFmoc誘導体として配列の20位に導入した。
【0421】
SPPSの完了時、樹脂からのTFA媒介開裂を同時の保護基除去とともに実施し、次いでジエチルエーテルでの沈殿及び濾過を介する単離を行って285mgの粗製材料を生じさせた。ジスルフィド結合形成は、水溶液中でpH8.6で過酸化水素を使用して生じさせた。
【0422】
可変波長UV吸収検出器を有するTeledyne Isco ACCQ Prep HP150 System上で分取逆相HPLCを実施し、材料を凍結乾燥させて91mgの精製ペプチドを提供した。Dionex UltiMate 3000system上で実施された分析逆相HPLCにより80.2%の純度が決定され、質量同一性をKratos Axima CFR Plus MALDI-MS上で確認した。7537.39の測定質量は7537.46の計算質量と一致し、産物はそのアミノ酸含有率93.1%によりさらに特徴付けされた。表9は、例示的な本発明のペプチドの分析特徴を説明する。
【0423】
【0424】
実施例2:細胞ベースサイクリックAMP活性アッセイにおけるペプチドの生物学的活性
ペプチドをcAMP細胞ベースアッセイにおいて試験してカルシトニン、AMY3、GLP-1及びGIPヒト受容体に対する効力を決定した。これらの種々の受容体のペプチド活性化はcAMPセカンドメッセンジャーの下流産生をもたらし、それを機能活性アッセイにおいて測定することができる。
【0425】
非タグ化ヒトカルシトニン、AMY3、GLP-1及びGIP受容体を過剰発現する安定的にトランスフェクトされたCHO-K1細胞を使用して異なるヒト受容体についてのペプチドの効力(EC50)を評価し、全てEurofins(Fremont,CA)製である、CTヒトカルシトニンGPCR細胞ベースアゴニストcAMPアッセイ(カタログ86-0007P-2245AG)、AMY3(CT/RAMP3)ヒトカルシトニンGPCR細胞ベースアゴニストcAMPアッセイ(カタログ86-0007P-2276AG)、GIPヒトグルカゴンGPCR細胞ベースアゴニストcAMPアッセイ、(カタログ86-0007P-2308AG)、GLP-1ヒトグルカゴンGPCR細胞ベースアゴニストcAMPアッセイ、(カタログ86-0007P-2309AG)を含むGPCR細胞ベースcAMPアッセイにおいて決定した。
【0426】
実験プロトコル:細胞を白色壁384ウェルマイクロプレート中に20μLの総容量で播種し、試験前に37℃で一晩インキュベートした。試験前、細胞プレーティング培地を10μLのアッセイ緩衝液(HBSS+10mMのHEPES)と交換した。全ての化合物を、0.1%のカゼインを含有するアッセイ緩衝液中でランさせた。簡潔に述べると、サンプル原液の中間希釈を実施してアッセイ緩衝液中の4×サンプルを生成した。5μLの4×サンプルを細胞に添加し、37℃で30分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。適切な化合物インキュベーション後、5ulの抗体及び20ulのcAMP XS+ED/CL溶解カクテルとの1時間のインキュベーションとそれに続く20ulのcAMP XS+EA試薬との室温での2時間のインキュベーションを介してアッセイシグナルを生成した。シグナル生成後にマイクロプレートをPerkinElmer Envision装置で化学発光シグナル検出について読み取った。データを、対照リガンド及びビヒクルの存在下で観察された最大及び最小応答に正規化した。
【0427】
結果を、対照リガンドの最大応答に対する効力パーセントとして表現する。
【0428】
化合物は、サイクリックAMPアッセイにおいて実証される通り、試験された異なるヒト受容体に対する活性を示した。対照ペプチド及び例示的な本発明のペプチドについてのインビトロ結果、EC50のまとめを、表10に説明する。
【0429】
【0430】
実施例3:非肥満マウスにおける急性食物摂取試験
非肥満C57BL/6j雄マウスを使用してペプチドの急性食物摂取効果を評価した。6週齢のC57BL/6j雄マウスをCharles River(Spain)から購入し、個々に収容した。マウスを12時間の明暗サイクル(午前8時に点灯)で、温度(22℃)及び湿度(45~55%)制御室中で飼育した。マウスに標準齧歯類普通食(CHD)(A04,U8220G10R,SAFE)を不断給餌した。8週齢時、マウスをペプチド投与前少なくとも7日間、逆転明暗サイクルに馴化させた。
【0431】
ペプチド番号12、ペプチド番号14、ペプチド番号15、及びペプチド番号17のペプチドをビヒクル20mMのトリス-HCl、7.5mg/mLのマンニトール、pH7.0中で再構成し、ペプチド番号16をビヒクル5mMのNaAc、2.5mg/mLのマンニトール、pH5.0中で1mg/mlで再構成した。全てのペプチド溶液をアリコート化し、使用まで-20℃で貯蔵した。注射のための希釈は生理食塩水緩衝液中で行った。
【0432】
マウスを、体重による実験群に無作為化した。ペプチド番号12、ペプチド番号14、ペプチド番号15及びペプチド番号17については、12時間絶食マウスは、単回皮下(s.c.)注射を消灯2時間前に各実験において示される用量で受けた(1群当たりn=6匹)。対照として、マウスは、等容量の対応するビヒクルの単回注射を受けた。ペプチド番号16については、12時間絶食マウスは、単回s.c.注射を消灯10分前に受けた。対照として、マウスは、等容量のその対応するビヒクルの単回注射を受けた(1群当たりn=5匹)。食物を消灯直後に置き換えた。食物摂取は、注射後に異なる時間間隔で72時間まで精密天秤を使用して測定した。累積食物摂取は、示される期間について計算した。
【0433】
示される全てのデータは、平均±標準誤差(SEM)である。データの統計的評価を一元配置ANOVAを使用して実施し、次いでボンフェローニ事後検定を実施してビヒクル及びペプチド処理群間の任意の統計的有意差を決定した。差は、p<0.05で統計的に有意とみなした。データ分析をGraphPadソフトウェア(GraphPad Prism)で実施した。
【0434】
結果を表11に示す。例示的なペプチドは、単回投与後の非肥満マウスにおいて食物摂取低減を誘導した。
【0435】
【0436】
実施例4:ペプチドの単回投与後の血中グルコースに対する効果
ペプチドのグルコース降下作用を使用して分子のインクレチン部分がインビボ効果を有することを実証した。非絶食マウス(1群当たりn=5匹)は、ペプチドの単回s.c.注射を全て50nmol/kg又は等容量のそれぞれのビヒクルで受けた。グルコース測定のため、血液サンプルを注射の0、30及び120分後にテールクリップから回収した。血糖測定器(Accu-chek Aviva,Roche Diagnostics)を使用するグルコース。30及び120分におけるグルコース降下の計算を0時間に対して行った。
【0437】
示される全てのデータは、平均±標準誤差(SEM)である。データの統計的評価を一元配置ANOVAを使用して実施し、次いでボンフェローニ事後検定を実施してビヒクル及びペプチド処理群間の任意の統計的有意差を決定した。差は、p<0.05で統計的に有意とみなした。データ分析をGraphPadソフトウェア(GraphPad Prism)で実施した。
【0438】
本発明のペプチドは、表12並びに
図1A及び1Bに示される通り0時間と比較して30及び120分で血中グルコースを有意に低減させたが、カグリリチド(Cagrilitide)(二重カルシトニン/アミリンアゴニスト)は、有意に低減させなかった。
【0439】
【0440】
実施例5:非肥満マウスにおける急性食物摂取及び体重低減
Sprague Dawley雄ラット(5週齢)をCharles River(Spain)から購入し、食物消費の個々の登録のために隔離収容した。ラットを逆転明暗サイクル(12時間、明及び12時間、暗)に馴化させ、コントロール温度条件(22℃)及び湿度(45~55%)制御室で試験の少なくとも5日前に隔離収容した。ラットに標準齧歯類普通食(CHD)(A04,U8220G10R,SAFE)を不断給餌した。
【0441】
体重ごとに異なる実験群に無作為化されたSprague Dawleyラット(200~250g)を、消灯(午後8時)の8時間前に絶食させた。暗サイクルの開始2時間前、ラットにペプチド(ペプチド番号12、ペプチド番号14、及びペプチド番号17)又は対応するビヒクルを各実験について示される用量で注射(s.c.)した(1群当たりn=5匹)。ペプチド番号16及びその対応するビヒクル対照(1群当たりn=5匹)については、8時間絶食マウスは、暗サイクルの開始10分前に単回s.c.注射を受けた。全ての実験群について、食物を消灯直後に交換した。
【0442】
食物摂取は、注射後に異なる時間間隔で72時間まで精密天秤を使用して測定した。累積食物摂取は、示される期間について計算した。体重を示される期間で測定した。各投与群における平均累計食物摂取をビヒクルと比較し、100%と定義されるビヒクル群における平均食物摂取の割合として報告した。
【0443】
示される全てのデータは、平均±標準誤差(SEM)である。結果を表13、14、及び15に示す。ペプチドは、単回投与後の非肥満マウスにおいて食物摂取及び体重の低減を誘導する。
【0444】
【0445】
【0446】
【0447】
本明細書に参照される上記米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物の全ては、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0448】
上記から、本発明の具体的な実施形態が説明の目的で本明細書に記載されてきたが、本発明の主旨及び範囲から逸脱せずに種々の改変がなされ得ることが認識される。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲により限定される以外は限定されない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0435
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0435】
【国際調査報告】