(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】siRNA共重合体組成物および肝臓がんの治療のための使用の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/713 20060101AFI20240705BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240705BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240705BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240705BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240705BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240705BHJP
C07K 11/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A61K31/713
A61P1/16
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K47/42
C12N15/113 120Z
C12N15/113 130Z
C07K16/28 ZNA
C07K11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502473
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022037460
(87)【国際公開番号】W WO2023288128
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509127310
【氏名又は名称】サーナオミクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モリノー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルー, パトリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB21
4C076CC27
4C076EE41
4C084AA13
4C084AA22
4C084MA17
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
siRNA分子を使用して肝細胞癌(HCC)を治療するための組成物および方法を提供する。組成物は、有利には、ナノ粒子形態で投与され、ナノ粒子は、ヒスチジン-リジン共重合体(「HKP」)も含有する。特定の実施形態では、組成物は、TGF-βiを標的化するsiRNA分子、Cox-2を標的化するsiRNA分子、およびHKP共重合体を含有する。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における肝臓がんを治療するための方法であって、TGF-β1を標的化するsiRNA、COX-2を標的化するsiRNA、および薬学的に有効な担体を含む、治療的有効量の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記薬学的に許容される担体が、HKPを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HKPが、HK34bまたはHK34b(+H)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
TGF-β1を標的化する前記siRNAが、配列番号1および配列番号2を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
COX-2を標的化するsiRNAが、配列番号3および配列番号4を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
肝臓がんが、肝細胞癌(HCC)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
肝臓がんが、肝臓外の身体の別の腫瘍部位から転位した腫瘍である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、腫瘍内に投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、静脈内にもしくは腹腔内経路を通して投与される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、免疫チェックポイント阻害剤と共に投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗体、PD-1、PDL1、Lag3、Tim3、およびCTLA-4/B7からなる群から選択されるチェックポイントタンパク質に結合するかまたはそうでなければ阻害する薬剤;CTLA-4阻害剤;リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)阻害剤;ならびに(i)T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM-3);(ii)T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、(iii)T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA);(iv)B7ホモログ3タンパク質(B7-H3);または(v)BおよびT細胞リンパ球アテニュエーター(BTLA))を標的化する免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、およびセミプリマブ(リブタヨ)からなる群から選択されるPD-1阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
免疫チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、およびデュルバルマブ(イミフィンジ)からなる群から選択されるPD-1阻害剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ(ヤーボイ)である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
免疫チェックポイント阻害剤が、BMS-986016である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月16日に出願された米国特許仮出願第63/222952号の利益および優先権を主張する。
【0002】
共重合体担体と組み合わせたsiRNA分子を含有する組成物を、肝臓がん、例えば肝細胞癌の治療において遺伝子の発現を標的化および調節するための方法と共に提供する。
【背景技術】
【0003】
肝細胞癌(HCC)は、炎症誘導性および化学療法耐性がんである。トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)経路におけるシグナル伝達の調節不全は、HCC微小環境における炎症、線維化、および免疫調節に役割を果たす。TGFβおよびCox2上方制御は、それぞれ炎症の誘導、また活性T細胞の不活性Treg細胞への変換にもネガティブな役割を果たし、腫瘍細胞を攻撃するそれらの能力を減少させる。
【発明の概要】
【0004】
対象における肝臓がんを治療するための方法であって、TGF-β1を標的化するsiRNA、COX-2を標的化するsiRNA、および薬学的に有効な担体を含有する治療的有効量の薬学的組成物を対象に投与することによる、方法が提供される。薬学的に許容される担体は、HK34bまたはHK34b(+H)のようなHKPであり得る。
【0005】
TGF-β1を標的化するsiRNAは、配列番号1および配列番号2の二重鎖であってもよく、COX-2を標的化するsiRNAは、配列番号3および配列番号4の二重鎖であってもよい。
【0006】
肝臓がんは、例えば、肝細胞癌(HCC)であってもよく、または肝臓外の身体の別の腫瘍部位から転位した腫瘍であってもよい。
【0007】
組成物は、腫瘍内に投与されるか、または静脈内もしくは腹腔内経路により投与されてもよい。組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と共に投与されてもよく、それは抗体、PD-1、PDL1、Lag3、Tim3、およびCTLA-4/B7からなる群から選択されるチェックポイントタンパク質に結合するかまたはそうでなければ阻害する薬剤;CTLA-4阻害剤;リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)阻害剤;ならびに(i)T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM-3);(ii)T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、(iii)T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA);(iv)B7ホモログ3タンパク質(B7-H3);または(v)BおよびT細胞リンパ球アテニュエーター(BTLA))を標的化する免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば:ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、およびセミプリマブ(リブタヨ)からなる群から選択されるPD-1阻害剤;アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、およびデュルバルマブ(イミフィンジ)からなる群から選択されるPD-1阻害剤;イピリムマブ(ヤーボイ);またはBMS-986016であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1(a)】マウスの肝細胞癌(HCC)へのSTP705処置の効果を示す図である。
【
図1(b)】マウスの肝細胞癌(HCC)へのSTP705処置の効果を示す図である。
【
図1(c)】マウスの肝細胞癌(HCC)へのSTP705処置の効果を示す図である。
【
図2】Huh7異種移植腫瘍試料のコントロール(ビヒクルのみ)群に対するSTP705処置のTGFβレベルを示す図である。最後のsiRNA処置注射は、24日目に行った。異種移植腫瘍試料は、実験の最後(35日目)に回収し、2ステップリアルタイムPCRにかけた。
【
図3】局所注射後の漏出を試験するための投与レジメンを使用して、C57BL/6マウスにおけるSTP705の肝臓内複数回投与の毒性の評価を示す図である。
【
図4】STP705投与後24時間および14日での血液学および血清パラメーターへの効果がないことを示す図である。
【
図5】STP705投与後24時間および14日での肝臓酵素レベルへの効果がないことを示す図である。
【
図6】STP705処置群の血液学および肝臓機能パラメーターが正常範囲内のままであることを示す図である(O’Connell,KEら “Practical Murine Hematopathology:A Comparative Review and Implications for Research,”Comp.Med.65(2),2015年を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
siRNA分子を使用して肝細胞癌(HCC)を治療するための組成物および方法を提供する。組成物は、有利には、ナノ粒子形態で投与され、ナノ粒子は、ヒスチジン-リジン共重合体(「HKP」)も含有する。特定の実施形態では、組成物は、TGF-β1を標的化するsiRNA分子、Cox-2を標的化するsiRNA分子、およびHKP共重合体を含有する。
【0010】
TGF-β1およびCox-2を標的化するsiRNA分子は、当技術分野で周知であり、例えば米国特許第9642873号に記載される。有利には、siRNAは以下に示す配列を有する:
TGF-β1:
センス鎖:5’CCC AAG GGC UAC CAU GCC AAC UUC U 3’(配列番号1)
アンチセンス鎖:5’AGA AGU UGG CAU GGU AGC CCU UGG G 3(配列番号2)
COX-2:
センス鎖:5’GGU CUG GUG CCU GGU CUG AUG AUG U3’(配列番号3)
アンチセンス鎖:5’ACA UCA UCA GAC CAG GCA CCA GAC C3’(配列番号4)
【0011】
有利には、HKP共重合体はH3K4bであり、それは3つのL-リジン残基の骨格を有する分岐状ペプチドであり、N末端および3つのリジンε-アミノ基は、構造KH
3KH
3KH
3KH
3(配列番号5)を有するヒスチジン-リジンペプチド鎖に連結される。ペプチドのC末端はアミダートである。H3K4bの構造は、以下に示す:
【0012】
HKP重合体は、ヒスチジン-リジンペプチド鎖がさらなるヒスチジン残基:KH3KH4[KH3]2Kを含有する以外、上記に示したのと類似の構造を有するH3K4b(+H)であってもよい。H3K4b(+H)を使用する組成物は、例えば、全身投与のために使用されてもよい。
【0013】
TGFβ1およびCox-2を標的化する2つのsiRNAを含有するナノ粒子の使用は、同じ細胞への同時送達、両標的(TGFβおよびCox2)のサイレンシング、およびHCCにおいて抗腫瘍活性をもたらすことを可能にする。ナノ粒子送達システムでの2つのsiRNAの腫瘍内投与は、HCC腫瘍の発生にも顕著に影響する。腫瘍への直接局所注射は、HCCと胆管癌(CCA)の両方、および下記に述べた他のがんに治療効果を有する。全身投与は、肝臓組織に転移したものを含む、腫瘍へのナノ粒子の直接取込みも可能にする。肝臓に転移したそのような腫瘍は、結腸、食道、胃、膵臓、肺、腎臓、乳房および皮膚で生じるがんを含み得る。
【0014】
一部の実施形態では、組成物は、腫瘍内注射によって投与されてもよく;他の実施形態では、組成物は全身的に投与される。ある特定の実施形態では、投与は、全身性静脈内注射または点滴による。組成物は、付加的効果のため、有効量の免疫チェックポイント阻害剤と共に投与されてもよい。好適な免疫チェックポイント阻害剤は当技術分野で周知であり、典型的には、抗体または、PD-1、PDL1、Lag3、Tim3、およびCTLA-4/B7からなる群から選択されるチェックポイントタンパク質に結合するかまたはそうでなければ阻害する他の薬剤を含有する。チェックポイント阻害剤は、例えば;ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、およびセミプリマブ(リブタヨ)のようなPD-1阻害剤;アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、およびデュルバルマブ(イミフィンジ)のようなPD-L1阻害剤;イピリムマブ(ヤーボイ)のようなCTLA-4阻害剤;BMS-986016のようなリンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)阻害剤であり得る;か、またはT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3(TIM-3)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメイン(TIGIT)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、B7ホモログ3タンパク質(B7-H3)、もしくはBおよびT細胞リンパ球アテニュエーター(BTLA))を標的化する免疫チェックポイント阻害剤であり得る。
【0015】
以下の実施例1により詳細に記載したように、組成物は、マウスの異種移植試験のHCC腫瘍に直接投与され、腫瘍のサイズおよび腫瘍の増殖率の顕著な減少を引き起こした(
図1)。
【0016】
TGFβ1およびCox2 siRNAのセンス鎖の配列は、ヒト、マウス、サルおよびブタの同じ遺伝子の配列と並べて以下に示す。siRNA配列は、ヒト、マウスおよびサルの遺伝子と同一性を有する。Cox2 siRNAは、ブタの遺伝子とも同一性を有する。TGFβ1 siRNAは、単一ヌクレオチド(C-U)を除いて、ブタの配列と同一性を有する。
【0017】
以下に記載の配列は、平滑末端の二本鎖RNA分子のセンス鎖である。当業者は、siRNA分子が、その相補性配列との二重鎖の一部として示したようにセンス鎖を含有することを理解するであろう。配列番号XのsiRNA分子への本明細書での参照は、センス鎖(配列番号X)および相当するアンチセンス鎖によって形成された二重鎖を指すと理解されるであろう。
【0018】
本明細書で使用する場合、遺伝子をサイレンシングすることは、その遺伝子のmRNA転写物の濃度を減少させることを意味し、それはその遺伝子のタンパク質産物の濃度を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%もしくはそれ以上減少させる。
【0019】
これらのsiRNA分子のそれぞれでは、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの1つまたは複数のヌクレオチドは、修飾され得る。修飾されたヌクレオチドは、安定性を改善し、siRNAによる免疫刺激を減少することができる。修飾されたヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル、2’-メトキシエトキシ、2’-フルオロ、2’-アリル、2’-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル]、4’-チオ、4’-CH2-O-2’-架橋、4’-(CH2)2-O-2’-架橋、2’-LNA、2’-アミノまたは2’-0--(N-メチルカルバメート)リボヌクレオチドであり得る。1、2,3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25個のヌクレオチドが修飾され得る。siRNA鎖に複数の修飾が作成される場合、修飾は同じ鎖で同じまたは異なってもよい。
【0020】
さらに、リボヌクレオチド間の1つまたは複数のホスホジエステル結合は、修飾され、ヌクレアーゼ消化に対する耐性を改善することができる。好適な修飾は、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート修飾結合の使用を含む。
【0021】
TGFβ1およびCox2を標的化するsiRNAを含有するナノ粒子の形成
上記を含有するsiRNA分子は、対象への投与のためのナノ粒子に製剤化される。ナノ粒子形成の様々な方法が、当技術分野で周知である。例えば、Babuら,IEEE Trans Nanobioscience,15:849~863頁,2016年を参照。
【0022】
有利には、ナノ粒子は、1つまたは複数のヒスチジン/リジン(HKP)共重合体を使用して形成される。好適なHKP共重合体は、WO/2001/047496、WO/2003/090719、およびWO/2006/060182に記載され、そのそれぞれの内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。HKP共重合体は、典型的には直径100~400nmのsiRNA分子を含有するナノ粒子を形成する。HKPおよびHKP(+H)は両方とも、リジン側鎖εアミノ基およびN末端が[KH3]4K(HKPのため)またはKH3KH4[KH3]2K(HKP(+H)のため)に結合されるリジン骨格(3つのリジン残基)を有する。分岐状HKP担体は、例えば、固相ペプチド合成を含む、当技術分野で周知の方法によって合成され得る。
【0023】
ナノ粒子を形成する方法は、当技術分野で周知である。Babuら、上記。有利には、ナノ粒子は、マイクロ流体ミキサーシステムを使用して形成されてもよく、TGFβ1を標的化するsiRNAおよびCox2を標的化するsiRNAは、一定の流速で1つまたは複数のHKP重合体と混合される。流速は、産生されたナノ粒子のサイズを変えるために変えられ得る。
【0024】
siRNA分子の有効性の決定
特定の標的TGFβ1およびCox2 RNA配列、ならびに送達されるナノ粒子組成物の用量により、TGFβ1およびCox2 RNAの機能の部分的または完全な欠損が観察され得る。少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%もしくはそれ以上の標的細胞において、RNAレベルまたは発現(TGFβ1およびCox2 RNA発現またはコードされたポリペプチド発現のいずれか)の減少または欠損が例示的である。TGFβ1およびCox2 RNAレベルまたは発現の阻害は、TGFβ1およびCox2 RNAまたはTGFβ1およびCox2 RNAコードタンパク質のレベルの不在(または観察可能な減少)を指す。特異性は、細胞の他の遺伝子への明確な効果なく、TGFβ1およびCox2 RNAを阻害する能力を指す。阻害の結果は、細胞もしくは生物体の外見上の特性の検査により、またはRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、および蛍光活性化細胞解析(FACS)のような生化学技術により確かめることができる。開示した実施形態のdsRNA剤による標的TGFβ1およびCox2 RNA配列(複数可)の阻害も、in vivoまたはin vitroのいずれかで、TGFβ1およびCox2関連疾患または障害、例えば腫瘍形成、増殖、転位等の発生/進行時に、そのようなdsRNA剤の投与の効果に基づいて測定され得る。腫瘍またはがん細胞レベルの処置および/または減少は、腫瘍またはがん細胞レベルの増殖の停止もしくは減少、または例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%またはそれ以上の減少を含んでもよく、対数項で測定されてもよく、例えばがん細胞レベルの10倍、100倍、1000倍、105倍、106倍、または107倍の減少が、細胞、組織、または対象へのナノ粒子組成物の投与によって達成することができる。
【0025】
薬学的組成物および投与の方法
ナノ粒子組成物は、当技術分野で周知の方法を使用して、薬学的組成物としてさらに製剤化されてもよい。組成物は、投与のその意図した経路と適合性であるように製剤化されてもよい。哺乳動物であり、ヒトであってもよい対象への投与の経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与を含む。非経口、皮内、または皮下適用のために使用した溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば酢酸、シトレートまたはホスフェートおよび浸透圧の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムによって調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の多人数用バイアルに封入され得る。
【0026】
注射用の使用に好適な薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性)または分散体および滅菌注射用溶液または分散体の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のため、好適な担体は、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor EL(登録商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。いずれの場合においても、組成物は滅菌でなければならず、容易な注入性が存在する程度に流動的であるべきである。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを組成物に含むことによってもたらされ得る。
【0027】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、選択した溶媒中に、上記で列挙される成分の1つまたは組合せと共に組み込み、必要な場合、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散体は、活性化合物を、基本分散媒および上記で列挙した成分から必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中へ組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより活性成分プラス先に滅菌濾過したそれらの溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末を得る。
【0028】
組成物はまた、身体からの迅速な排出に対して化合物を保護する担体を用いて調製されてもよく、制御された放出製剤など、移植およびマイクロカプセル化された送達系を含む。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性重合体が使用され得る。そのような製剤は、標準的な技術を使用して調製され得る。材料は、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に得ることもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により、感染細胞へ標的化されたリポソームを含む)は、薬学的に許容される担体としても使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4522811号に記載の、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0029】
腫瘍内送達のためのSTP705の投与様式
STP705は、厳しく制御された条件下での介入的画像診断で腫瘍内注射を使用して投与され得る。例示的な実施形態では、介入的ガイド手順は、腫瘍内(IT)注射のためのCTまたは超音波(US)ガイダンスのいずれかを使用して実施される。患者は、STP705投与のための最良の手法を評価するために前手順US、CT、MRIまたはPET/CTスキャンを受け、針が主要な構造に影響することまたは針が複数の解剖学的区画にわたること(すなわち、胸膜または管腔器官にわたる針の経路)を避け、大血管への近接、広範囲の壊死または出血のような、高リスクの局所毒性事象を避ける。
【0030】
腫瘍サイズへの処置の効果は、類似の画像化技術(US、CT、MRIまたはPET/CT)を使用して評価されてもよい。さらに、腫瘍進行の増殖または段階を予測するバイオマーカーがモニターされ、転帰への処置の影響を決定することができる。AFPのようなバイオマーカーは、初期のHCC[2]を決定するために使用された。さらに、TGFβシグネチャーは、HCC[1]において「枯渇した」免疫シグネチャーを同定するための可能性があるバイオマーカーとして使用されてもよく、したがって、腫瘍内またはそのすぐ近く(腫瘍微小環境またはTME)のTGFβのサイレンシングはこのシグネチャーを変更し、治療効果を示し得る。さらなるバイオマーカーを使用して、治療有効性を試験するかまたは適切な処置[3]のための患者を選択することもできる。
【0031】
他の実施形態では、本明細書に記載の好適に製剤化された薬学的組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、直腸、経膣および局所(頬側および舌下を含む)投与を含む、非経口経路によるなど、当技術分野で公知の手段によって投与されてもよい。有利には、薬学的組成物は、静脈内または非経口点滴または注射によって投与される。
【0032】
投与量および毒性の決定
組成物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%を死に至らせる用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定することにより、細胞培養物または実験動物での標準的な製剤手順によって決定され得る。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。
【0033】
細胞培養物アッセイおよび動物実験からのデータは、ヒトでの使用のための投与量の範囲の製剤化において使用され得る。組成物の投与量は、有利には、わずかな毒性のまたは毒性のない、ED50を含む、循環濃度の範囲内である。投与量は、用いられた投与形態および利用された投与の経路に応じて、この範囲内で変わり得る。本明細書に記載の組成物については、治療的有効量は、初めに細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の半数阻害を達成する組成物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて製剤化され得る。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定されてもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、薬理的または治療的有効量は、意図した薬理的治療または予防結果を産生するために有効なsiRNA組成物の量を指す。語句「薬理的有効量」および「治療的有効量」または「有効量」は、意図した薬理的治療または予防結果を産生するために有効な組成物の量を指す。例えば、所与の臨床処置が有効であると考えられる場合、疾患または障害と関連する測定可能なパラメーターの少なくとも30%の減少があり、疾患または障害の処置のための治療的有効量の薬物は、そのパラメーターの少なくとも30%減少させるのに必要な量である。
【0035】
本明細書に記載の治療的有効量の組成物は、およそ1ピコグラム(pg)から1000ミリグラム(mg)の範囲であり得る。例えば、10、30、100、もしくは1000pg、または10、30、100、もしくは1000ナノグラム(ng)、または10、30、100、もしくは1000マイクログラム(μg)、または10、30、100、もしくは1000mg、または1~5gの組成物が投与され得る。一般に、本明細書に記載の組成物の好適な投与単位は、1日あたりレシピエントのキログラム(kg)体重あたり0.001~0.25mgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.01~20μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.001~5μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり1~500ngの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.01~10μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.10~5μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.1~2.5μgの範囲である。薬学的組成物は、1日1回、または1日を通して適切な間隔で投与される2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割用量を含有する投与単位で投与されてもよい。その場合、各分割用量に含有されるdsRNAは、1日の総投与単位を達成するために相応して少なくなければならない。投与単位は、例えば、数日間にわたり、dsRNAの持続および一定放出を提供する従来の持続放出製剤を使用して、数日間にわたる単回用量のために配合されてもよい。持続放出製剤は、当技術分野で周知である。この実施形態では、投与単位は、相応する複数の一日用量を含有する。製剤にかかわらず、薬学的組成物は、処置される動物またはヒトにおける標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量のdsRNAを含有しなければならない。組成物は、複数の単位のdsRNAの合計が合わせて十分な用量を含有するような方法で配合され得る。
【0036】
組成物は、1回、1日あたり1回または複数回から週あたり1回または複数回投与されてもよく、1日おきに1回を含む。当業者は、限定はされないが疾患または障害の重症度、事前の処置、健康全般および/または対象の年齢、ならびに他の疾患の存在を含む、特定の因子が対象を効果的に処置するのに必要な投与量およびタイミングに影響し得ることを理解する。さらに、本明細書に記載の治療的有効量の組成物による対象の処置は、単回処置を含んでもよく、または有利には、一連の処置を含み得る。
【0037】
HCCおよび他の増殖性疾患のための処置
本明細書に記載の組成物は、がん、特に、TGFβ1およびCox2の発現、および特に変更された発現によって特徴付けられる肝臓がんのような増殖性疾患を治療するために使用され得る。例示的ながんは、肝細胞癌またはHCCのような肝臓がん、ならびに肺がん(例えば、NSCLC)、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、脳がん(例えば、膠芽細胞腫)、腎がん(例えば、乳頭腎細胞癌)、胃がん、食道がん、髄芽腫、甲状腺癌、横紋筋肉腫、骨肉腫、扁平上皮癌(例えば、口腔扁平上皮癌)、黒色腫、乳がん、および造血障害(例えば、白血病およびリンパ腫、ならびに他の免疫細胞関連障害)などの他の腫瘍から転移した肝臓の腫瘍組織を含む。
【0038】
組成物は、上記のように投与されてもよく、有利には、全身的にまたは腫瘍内に送達されてもよい。組成物は、単剤療法として、すなわち別の処置なく投与されてもよく、または1つもしくは複数のさらなる医薬を含む組合せレジメンの一部として投与されてもよい。有利には、組合せレジメンの一部として使用される場合、有効量の少なくとも1つのさらなる化学療法薬を含む。化学療法薬は、例えば、プラチナ含有薬物、例えばシスプラチン、オキサロプラチン、またはカルボプラチンであってもよい。
【0039】
本明細書で議論した全ての範囲および比率は、全ての目的のためその全ての部分範囲および部分比率を記載することができ、かつそれらを記載する必要があり、全てのそのような部分範囲および部分比率は本開示の実施形態の不可欠な部分も形成する。いずれの列挙した範囲または比率も、少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分けられる同じ範囲または比率を十分に記載および可能にするとして容易に認識することができる。非限定的な例としては、本明細書で議論した各範囲または比率は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1等へと容易に分けることができる。
【0040】
本開示の実施形態は、例示の目的のために意図され、いずれの方法でも添付の特許請求の範囲の範囲を限定すると解釈されることを意図しない、以下の実施例を参照することにより、より理解されるであろう。
【0041】
用語「例示的」は、本明細書で使用され、「実施例、例、または例示として寄与すること」を意味する。「例示的」として本明細書に記載されるいずれの実施形態も、他の実施形態よりも好ましいかまたは有利であると必ずしも解釈されない。
【0042】
特徴またはエレメントに関して用語「第1の」の特許請求の範囲における記載は、第2またはさらなるそのような特徴またはエレメントの存在を必ずしも含まない。ミーンズ・プラス・ファンクション・フォーマットに列挙されたエレメントは、米国特許法第112条6項に従って解釈されることが意図される。本開示の実施形態の基本原理から逸脱することなく、上記の実施形態の詳細に変更が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。
【0043】
本開示の実施形態の特定の実施形態および適用が例示および記載されたが、本開示の実施形態は、本明細書に開示の正確な構成および成分に限定されないことが理解されるべきである。当業者には明らかであろう様々な修飾、変更、およびバリエーションが、添付の特許請求の範囲のものを含む、本明細書に開示の実施形態の方法およびシステムのアレンジ、操作、および詳細に行われてもよい。最終的に、本明細書に開示の実施形態の様々な特徴が組み合わされ、本開示の実施形態の範囲内にある、さらなる構成を提供することができる。以下の実施例は、本開示の実施形態のものを含む、試験した阻害化合物の動力学的測定および有効性を例示することを意図する。
【実施例】
【0044】
実施例1
STP705は、ナノ粒子形態中にHKP共重合体と共に製剤化された、TGFβ(配列番号1および2のsiRNAの二重鎖)およびCox2(配列番号3および4のsiRNAの二重鎖)を標的化するsiRNA分子を含む。SiRNAは、PNIマイクロ流体ミキサーシステム(Precision Nanosystems,Inc.,Vancouver,CA)を使用して、HKP(+H)と、0.5mg/mlで混合した。全流量(TFR)は変えられ、この流速の粒子サイズへの影響は、Malvern Nanosizer system(Malvern Panalytical Inc.,Westborough,MA)を使用して、生じる粒子サイズを測定することにより評価した。多分散指数(PDI)は、およそ平均サイズのナノ粒子の変化の量の指標である。
【0045】
ルシフェラーゼを安定発現するHCC細胞(TERTプロモーター突然変異-124G->Aを有するHuh7)はAccutase(登録商標)によって回収し、密度はPBS中細胞25百万個/mLに調節した。0.2mLの細胞溶液を、NOD-SCIDマウスの両脇腹に皮下注射した。腫瘍サイズは、週に2回測定した(Dmax
*Dmin
2/2)。腫瘍サイズが>100mm
3に達すると、動物の投与は、50μLのsiRNA複合体(STP705)の各腫瘍への直接腫瘍内注射により開始した。マウスが2つの腫瘍を有する場合、同じ製剤を両部位に注射した。siRNA製剤は、64μgのHKPを補足し、50μLのddH2Oに溶解した合成siRNA(TGFβ1)およびsiRNA(COX-2)(それぞれ8μg)の混合物であった。腫瘍は、8回投与により週に2回処置し、腫瘍サイズは、5週目まで処置の間測定した。動物は屠殺し、計量およびH/E染色およびQ-PCR解析のために腫瘍を回収した。上の図は、腫瘍サイズへのSTP705の投与の効果を示すが(
図1(a))、下の図は、腫瘍の増殖率へのSTP705の効果を示す(
図1(b))。下の表(
図1(c))は、腫瘍サイズおよび増殖率における、試験およびコントロール処置した試料の間の比較によって得られたT検定値を示す。両方の場合で、統計的に有意な差が記録され、STP705は1.5週から5週までHuh7異種移植片増殖を阻害した(p<0.05)。
【0046】
HCC腫瘍異種移植片移植を有するマウスへのSTP705の投与は、経時的な腫瘍のサイズならびに時間による腫瘍の増殖率の顕著な減少をもたらした(
図1)。
【0047】
STP705によって処置した組織におけるTGFβ1発現のレベルの観察された減少は、siRNAが組織および組織内の細胞に送達され、タンパク質の発現をサイレンスできることを示す(
図2)。
【0048】
実施例2
STP705が非特異的な手段による効果を産生しなかったことを確かめるため、本発明者らは、経皮注射により肝内に投与した場合、正常な肝臓組織へのSTP705投与の影響を調べた(
図3)。この投与様式は、血液学および血清解析(
図4)、または肝臓酵素レベル(
図5)に効果がなかった。STP705処置は、異常な肝臓酵素レベルをもたらさなかった(
図6)。
【0049】
さらに、最終投与の投与後24時間および14日での胆嚢の平均粘膜好中球浸潤スコアにおいて、STP705処置群(2から5)およびコントロール群(1)のそれぞれの間で顕著な差は観察されなかった。
【0050】
急性凝固性肝細胞壊死は、マウスのビヒクルコントロール群とSTP705投与マウスの両方で観察され、発生率または重症度に一貫した差はなく、注射される試験物よりも注射型(肝内)との関連を示している。
【0051】
亜急性から慢性の肝細胞欠損は、ビヒクルコントロールを含む全ての群において観察され、発生率または重症度に一貫した差がなかった。この発見は、肝内注射と関連するが、試験物の投与とは関連がないと考えられる。病変の重症度は最小から中程度であり、肝内注射後の肝実質への長期効果が低いことを示している。
【0052】
獣医病理学専門医による染色した肝臓組織切片の病理学的評価は、病理学パラメーター(肝細胞壊死、急性/慢性病変、炎症、肉芽腫を含む)についてコントロール群とSTP705処置群の間に観察された顕著な差がなかったことを示した。臨床病理学パラメーター(血液学および血清化学を含む)は、いずれの時点でもコントロール動物とSTP705処置動物の間に差が無かったことを示した。コントロール動物およびSTP705処置動物の全血球計算(CBC)および肝機能検査結果は正常範囲内であった(文献で報告したように)。
【0053】
全体的に、正常なC57BL/6マウスモデルでは、試験は、2μgまでのSTP705用量(2000μgのヒト用量に匹敵する)の肝内送達が良好な耐容性を示し、肝臓毒性の明らかな兆候はなく、HCCおよび他の肝臓状態を処置するためのこの処置オプションの有用性を支持する。
【0054】
肝臓においてHCCに影響する能力に加えて、STP705の治療使用は、肝臓に転移した他の臓器、例えば結腸、食道、胃、膵臓、肺、腎臓、乳および皮膚がんからの腫瘍の処置においても有用性を有し得る。
【0055】
【配列表】
【国際調査報告】