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特表2024-525858がんの併用療法におけるVEGFR2およびTGFベータ1に対するsiRNAの組成物および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】がんの併用療法におけるVEGFR2およびTGFベータ1に対するsiRNAの組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20240705BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/713
A61K47/42
A61K9/14
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P27/02
A61P9/00
A61P43/00 105
C12N15/113 140Z
C12N15/113 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502552
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 US2022037519
(87)【国際公開番号】W WO2023288141
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202110806912.8
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】63/222,418
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509127310
【氏名又は名称】サーナオミクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジーユアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, デリン
(72)【発明者】
【氏名】ルー, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジア, ワンイン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジン
(72)【発明者】
【氏名】チュー, シュドン
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジンミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC10
4C076CC15
4C076CC27
4C076CC50
4C076EE41
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA41
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示の技術は、哺乳動物の組織における腫瘍増殖を阻害する方法を提供する。方法は、TGF01タンパク質をコードするmRNAに結合するsiRNA分子、VEGFR2タンパク質をコードするmRNAに結合するsiRNA分子、および薬学的に許容されるポリペプチド重合体を含む薬学的に許容される担体を含む、治療的有効量の組成物を哺乳動物に投与することを含む。本開示の技術は、この組成物を使用するためのさらなる方法も提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFR2を標的化する第1のsiRNA二重鎖、TGFβ1を標的化する第2のRNA二重鎖、および薬学的に許容される担体を含む、ナノ粒子組成物。
【請求項2】
薬学的担体が、分岐状ペプチド、重合体、脂質、およびミセルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記担体が、分岐状HKPポリペプチドである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
VEGFR2を標的化する前記siRNAが、表1に記載の配列から選択される配列を有し、TGFβ1を標的化する前記分子が、表2に記載の配列を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子組成物。
【請求項5】
VEGFR2を標的化する前記siRNAが、表3に記載の配列から選択される修飾配列を有し、TGFβ1を標的化する前記分子が、表5に記載の修飾配列を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子組成物。
【請求項6】
VEGFR2を標的化する前記siRNAが、配列番号40または配列番号41に記載の配列を有し、TGFβ1を標的化する前記siRNA分子が、配列番号3または配列番号6に記載の配列を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
HKP(+H)ポリペプチドを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の治療的有効量の組成物を対象に投与することを含む、前記対象における疾患を処置するための方法。
【請求項9】
増殖性疾患の進行を遅らせる方法であって、そのような処置を必要とする対象に、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を投与することによって増殖性疾患の進行を遅らせる、方法。
【請求項10】
増殖性疾患が、乳がん、結腸がん、膵臓がん、および異常な血管新生によって特徴付けられる疾患からなる群から選択され、異常な血管新生によって特徴付けられる前記疾患が、AMD、糖尿病性血管障害、および臓器線維症からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子担体および組成物を含有する製剤と共に、siRNA分子の組合せを含有する組成物を提供する。方法は、ポリペプチドと共に製剤中で投与される複数のsiRNAを使用する、膵臓がん、乳がん、および前立腺がんを含むがんの処置のためにも提供される。
【背景技術】
【0002】
VEGF/VEGFR2シグナル伝達経路は、腫瘍組織において新血管形成を促進する
血管が栄養分送達および廃棄物処理の細胞への経路であるため、血管新生、または新血管形成は、ホメオスタシス制御ネットワークの不可欠な部分である。血管新生は、生物体発生のプロセス、傷害からの再生、ならびに多くの腫瘍発生にわたって生じる。腫瘍発生における血管新生関与の概念は、Ideおよびその他(Ideら,1939年);Algireら,1945年)によって70年以上前に提案され、腫瘍細胞に増殖優位性を与える「血管増殖刺激因子」によって刺激され得る腫瘍組織における新しい血管の頑強な増殖が観察された。この分野の関心は、血管新生阻害剤ががんおよび他の関連障害の処置に適用された、1971年のFolkmanの提案(Folkman,1971年)によって再燃した。
【0003】
血管新生は、正常な生理的プロセスで生じ、多くの制御因子によって正確に調節されるが、主には血管内皮由来増殖因子(VEGF)による。これは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-EおよびVEGF-F(組織における最も優性なアイソフォームとしてVEG-F165)を含むタンパク質のファミリーである。VEGFの主な標的細胞は、内皮細胞であるが、他の細胞も標的である。VEGFは、細胞膜上のその受容体(VEGFR1、VSGFR2、およびVEGFR3)との結合を通して機能する。VEGF受容体は、細胞外の7つの免疫グロブリン相同性ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内制御チロシンキナーゼドメインからなる受容体チロシンキナーゼ(RTK)であり、主に内皮細胞膜で発現される。受容体への結合後、VEGFは、一連のシグナル伝達効果を誘発し、内皮細胞増殖、遊走および新血管形成を刺激する。
【0004】
VEGFおよびそれらの受容体は、多くの組織におけるホメオスタシスの維持に必須であるが、それらの機能は、FEGF/VEGFRが多くの正常組織におけるホメオスタシスの維持に生理的に必須であるという事実にもかかわらず、腫瘍発生および肥厚性瘢痕形成のような病理過程において主に研究されてきた。VEGF産生は、正常な状況下での組織低酸素症に応答してのみ増加する。しかしながら、ほとんどのがんでは、VEGFは過剰発現され(Kerbel,2008年);血管新生が非制御の腫瘍増殖のために増強された栄養要求を満たすように必要とされるため、腫瘍およびそれらの周辺組織内の構造的に異常な新血管新生と関連する。(Ferrara,2010年;Jain,2003年;Nagyら,2009年)。VEGF機能性の研究に由来する洞察は、VEGF/VEGFRシグナル伝達経路を標的化する治療戦略をもたらした。例えば、VEGF-Aを阻害するアバスチンは、唯一の成功した薬物である。(Ferrara and Adamis,2016年;Jaysonら,2016年)。このヒト化モノクローナル抗体は、結腸がん、非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)、多形神経膠芽腫、卵巣がん、および子宮頸がんを含む、多くのがん治療に広く適用された。しかしながら、薬物の組合せを使用する処置が一般的になっており、現在のがん療法の標準治療を反映している。同時に標的化する複数のペプチドまたはタンパク質は、より効果的であると考えられる(Gerber and Ferrara,2005年)。前臨床試験は、VEGF阻害剤の細胞傷害性剤との組合せから、付加的または相乗的な利点を一貫して示した。
【0005】
TGFβは、腫瘍発生中のキープレイヤーである。
TGFβは、増殖、分化、代謝、およびアポトーシスのような基本的な生理的プロセスに関与するプレイオトロピックなサイトカインのグループである。哺乳動物を含む、多細胞生物のホメオスタシスは、ホルモンの複雑なネットワークによって維持および制御され、サイトカインTGFβは、哺乳動物においてのみ存在し、中でもTGFβ1が最も豊富かつ一様に発現される。報告によれば、遠位に効果を及ぼすことができるが、TGFβ1は、基本的に、主に潜在性の複合体として分泌された後に細胞外マトリックスに保存される場所で、エフェクターとして機能する(Crane & Cao,2014年;Annesら,2003年)。TGFβは、局所組織で炎症を引き起こす損傷に応答することができ、局所的な細胞外マトリックスホメオスタシスを迅速に回復するように作用することが証明されている。(Annes,上記)。したがって、この増殖因子の経時的および空間的な活性は、in vivoでのその文脈依存的な生理的効果に重要な役割を果たす。
【0006】
3つのトランスフォーミング増殖因子β受容体(TGFβR):TGFβR1、TGFβR2、およびTGFβR3がある。(Bierie and Moses,2006年)。TGFβリガンドは、TGFβR受容体のヘテロ四量体複合体への結合を通して機能する。TGFRβR1と2つのTGFβR2の両方とも、セリン/トレオニンキナーゼ活性を示し、下流の成分分子、またはSmadを通したシグナル伝達に関与する(Wranaら,1994年;ten Dijkeら 1994年)。
【0007】
ホメオスタシスのプレイオトロピックな制御因子として、TGFβ/TGFβR2受容体シグナル伝達は、通常、標準のシグナル伝達経路を通して伝達され、下流の分子、Smadを制御する。TGF-β/TβRII受容体シグナル伝達は、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼシグナル伝達経路(これらは、JNK、p38、ERK、およびPI3K/AKTを含む(Ikushima and Miyazono,2010年))のメンバーも活性化し、活性化は非標準のシグナル伝達経路を通る。
【0008】
TGFβは、腫瘍発生および腫瘍進行において重要なプレーヤーとして示されており、そのタイトルでの用語「形質転換する」は、正常な線維芽細胞を、係留依存性細胞増殖の表現型から、腫瘍発生の特徴である、ソフトアガーでの係留依存性の細胞コロニーの表現型へと変換するその能力を指す(Keski-Ojaら、1987年)。より最近の研究は、TGFβが、早期の前悪性増殖において細胞増殖の強力な阻害剤として(Roberts & Wakefield,2003年;Adamら;1994年)、または末期の進行および転移がんにおける腫瘍細胞遊走および増殖のプロモーターとして(Luら、1999年)のいずれかで作用できることを示した。TGFβ増殖阻害の欠損およびTGFβの発現増加は、神経膠腫および黒色腫、ならびに乳がん、胃がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮頸がん、神経膠腫および黒色腫を含む、多くの組織/臓器がんにおける悪性変換および進行と関連する。腫瘍細胞における遺伝子およびエピジェネティック変異の蓄積時に、局所的に分泌されたTGFβレベルの進行性増加は、侵襲および転移を促進する、免疫監視の回避、結合組織形成および血管新生の刺激、ならびに上皮間葉転換(EMT)の刺激による腫瘍増殖を促進することが研究により示された。TGFBシグナル伝達メカニズムにおける重大な異常も明らかにされた:結腸がん進行および薬物耐性において、MEK-Erkおよびp38経路によるVEGFの誘導をもたらす、非標準のシグナル伝達経路の刺激(Papageorgisら,2011年)。
【0009】
TGFβとVEGFの両方とも、共同的にTMEにおいて免疫寛容を誘導する必須のプレーヤーである
血清中のTGFβのレベルの上昇は、患者の末期のがんで観察されることが多く、喪失したTGFβ抑制効果への補填反応として提案された。(Gold,1999年)。しかしながら、TGFβの増加は、制御性T細胞(Treg)の増殖を誘導することができた。腫瘍微小環境(TME)におけるTregは、T細胞慣性収束および枯渇を誘導し、免疫寛容を促進する(Fontenotら,2003年;Yamagiwaら,2001年)。Nakamuraらは、CT26結腸直腸癌細胞におけるTGFβの過剰発現が、免疫コンピテントBalb/cマウスにおける抗腫瘍Tリンパ球応答を抑制することにより、腫瘍増殖を増強したことを報告した。(Nakamuraら,2014年)。この期の腫瘍細胞は、非標準のシグナル伝達経路を介した不規則なシグナル活性化によるかまたはTGF-β経路の成分に体細胞突然変異を得ることにより、TGFβ媒介性抗増殖制御から逃れることができる(Seoane,2006年)。例えば、TGF-βは、MCP-1(単球走化性タンパク質-1、CCL-2としても公知)の分泌を増加させ、TMEに腫瘍形成性を支持する単球を積極的に動員することができる。(Diaz-Valdes,N.ら,2011年)。報告は、抗PD-1耐性が、CCL-2、CCL-7、CCL-8、およびCCL-13のレベルの増加と関連し得ることを示した。これらの走化性遺伝子の過剰発現は、TGFβ活性化によって制御され、TGFβが、免疫寛容の重要なエンフォーサーであり、免疫チェックポイント療法の最適な有効性を達成するために克服しなければならない障害であることが示された。(Hugo,Wら,2016年)。一態様のTGFβは、抑制性TMEのモデルを助け、別の態様では、インテグリンおよびVEGFならびにMMPの発現、分泌および活性化も媒介し、内皮細胞の遊走を刺激し、したがって、腫瘍の新血管新生および転移性播種を促進する。(Padua & Massague,2009年;Hagedornら,2001年;Bachmeier,2001年.Pertovaaraら,1994年;Kang,Y.ら,2003年;de Jong,J.S.ら,1998年;Hasegawaら,2001年;Schadendorfら,1993年;Tai and Wang,2018年)。一方、TGFβ中和抗体によるTGFβシグナル伝達の阻害は、ヒト乳がんおよび前立腺がんの血管新生を抑制することができ、さらに腫瘍の間の血管新生促進因子としてのTGFβの役割を評価することができる。(Tuxhornら、2002年)。
【0010】
特異的si RNAによるVEGFおよびTGFβの二重標的化阻害は腫瘍増殖を阻止することができる
ホメオスタシスは、互いの機能性を補填するように相互作用する、シグナル経路のさらにより複雑なネットワークによって制御および調節されることが研究により示された。しかしながら、細胞におけるこれらのシームレスに介入した協力は、単一薬物療法の困難な障害を引き起こす。例えば、プレイオトロピックなサイトカインTGFβが、Smad依存性の標準群、またはMAPK分子による非標準のシグナル伝達経路でシグナル伝達を実行することができる。
【0011】
さらに、ますます、より侵襲性および浸潤性の腫瘍の出現をもたらし得る血管新生を防止または弱めることを意図した処置のデータが示された。(Bergersら,2008年)。近年の報告は、抗血管新生療法に対する腫瘍耐性の発生が根底にあるいくつかのメカニズムを提供する。例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)では、両経路がNSCLCで活性であり、互いに補填できるため、VEGFを標的化する治療手法はVEGFR標的化療法と対にされるかまたはその逆であるべきである。臨床試験は、NSCLC患者に二重VEGF/VEGFR阻害の適用を実施した。(Kohら、2010年)。
【0012】
RNAi(RNA干渉)は、mRNA発現の生理的制御メカニズムである。それは、標的mRNA分子の発現を減少させるメカニズム、配列特異的な、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)である。siRNA(低分子干渉RNA)は、13~25塩基対(bp)長の二本鎖RNA分子の短い断片である。siRNA二重鎖のアンチセンス鎖は、mRNA分子(標的mRNA)の特定の領域に対合し、その翻訳を防止することができる。細胞内では、細胞室内で、アンチセンス鎖が、RNA干渉サイレンシング複合体、またはRISCと呼ばれるタンパク質粒子へと押し込まれ、次いで標的mRNAとアニールするであろう。その後、RISCの酵素成分はmRNA分子を切断し、mRNA分解プロセスを開始する。外因的な合成siRNAの導入は、研究室および臨床実験での特定の遺伝子の調節に有効な方法であることが分かっている。
【0013】
同時二重標的化は、小分子からモノクローナル抗体および核酸(アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)およびsiRNAを含む)の範囲の異なる薬物カテゴリーにわたる薬物によって実施され得る。合成siRNAは類似の化学特性を共有し、それらを投与しやすくするためにユニークに有利にし;異なる遺伝子を標的化するsiRNAは同じ製剤内で投与され得る。
【0014】
抗TGFB/TGFBR2を他のIO標的化剤と対合する戦略は支持を得ている。Bintrafusp alfaは、両経路を同時にブロックし、TMEにおける免疫寛容を減少させることによって設計された抗PD-L1/TGFBR2融合コンストラクトである(Hanne Lindら,2020年)。Bintrafusp alfaは、腫瘍細胞がTFGB誘導性EMTを受けるのを防ぎ、それらを他の治療により感受性にし(David,2017年)、NKおよびT細胞をTMEに動員し、腫瘍細胞に対するそれらの細胞傷害性能を増強する(Batlle and Massague,2019年)。最終的に、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)によりヒト腫瘍細胞の溶解の増強を媒介することが示された(Grenga,2018年)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】MDA-MB-231細胞株における候補21merのVEGFR2 siRNA配列の予備的なスクリーニング結果を示す図である。
図1B】MDA-MB-231細胞株における候補25merのVEGFR2 siRNA配列の予備的なスクリーニング結果を示す図である。
図2A】U87MG細胞株における候補VEGFR2 siRNA配列の最初のスクリーニング結果を示す図である。
図2B】U87MG細胞株における候補VEGFR2 siRNA配列の最初のスクリーニング結果を示す図である。
図3】DLD-1細胞株における候補TGF-β1 siRNA配列の予備的なスクリーニング結果を示す図である。
図4】RKO細胞株における候補TGF-β1 siRNA配列の予備的なスクリーニング結果を示す図である。
図5】U87MG細胞株における候補TGF-β1 siRNA配列の予備的なスクリーニング結果を示す図である。
図6】PANC-1細胞株における候補TGF-β1 siRNA配列の予備的なスクリーニング結果を示す図である。
図7A】MDA-MB-231細胞株におけるVEGFR2 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図7B】MDA-MB-231細胞株におけるVEGFR2 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図8A】U87MG細胞株におけるVEGFR2 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図8B】U87MG細胞株におけるVEGFR2 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図9A】PANC-1細胞株におけるVEGFR2 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図9B】PANC-1細胞株におけるVEGFR2 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図10A】異なる細胞株(U87MG)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図10B】異なる細胞株(PANC-1)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図10C】異なる細胞株(RKO)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図10D】異なる細胞株(BxPC3)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図11A】異なる細胞株(SK-Hep-1)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図11B】異なる細胞株(HUCCT)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図11C】異なる細胞株(A549)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図11D】異なる細胞株(DLD-1)におけるTGF-β1 siRNA修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較を示す図である。
図12A】組成物中のVEGFR2およびTGF-β1のsiRNA分子の質量比の比較を示す図である。
図12B】組成物中のVEGFR2およびTGF-β1のsiRNA分子の質量比の比較を示す図である。
図13A】マウス膵臓がん(PANC-1)異種移植モデルにおけるSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図13B】マウス膵臓がん(PANC-1)異種移植モデルにおけるSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図13C】マウス膵臓がん(PANC-1)異種移植モデルにおけるSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図14A】乳がん(MDA-MB-231)異種移植腫瘍マウスモデルにおけるSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図14B】乳がん(MDA-MB-231)異種移植腫瘍マウスモデルにおけるSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図15A】免疫コンピテントマウスモデルにおけるヒト化PDL1遺伝子座結腸直腸がん腫瘍(MC38-hPDL1)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図15B】免疫コンピテントマウスモデルにおけるヒト化PDL1遺伝子座結腸直腸がん腫瘍(MC38-hPDL1)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図15C】免疫コンピテントマウスモデルにおけるヒト化PDL1遺伝子座結腸直腸がん腫瘍(MC38-hPDL1)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図16A】免疫コンピテントマウスモデルにおける黒色腫(B16)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図16B】免疫コンピテントマウスモデルにおける黒色腫(B16)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図16C】免疫コンピテントマウスモデルにおける黒色腫(B16)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図16D】免疫コンピテントマウスモデルにおける黒色腫(B16)へのSTP355のin vivo薬力学を示す図である。
図17A】マウス乳がん(MDA-MB-231)異種移植モデルにおける組合せ薬物および単一薬物の薬力学比較試験を示す図である。
図17B】マウス乳がん(MDA-MB-231)異種移植モデルにおける組合せ薬物および単一薬物の薬力学比較試験を示す図である。
図17C】マウス乳がん(MDA-MB-231)異種移植モデルにおける組合せ薬物および単一薬物の薬力学比較試験を示す図である。
図18】マウス膵臓がん(PANC-1)異種移植モデルにおける組合せ薬物および修飾薬物のin vivo薬力学比較を示す図である。
図19】C57BL/6Jマウスにおける修飾および非修飾薬物の安定性の比較を示す図である。
図20】TGFβ1の染色を含む、組織学試験を示す図である。結果は、TGFβ1標的発現が、モデルのコントロール群と比較して両方の薬物投与群で顕著に減少したことを示した。
図21】アポトーシスをもたらす新血管新生の阻害が生じたかどうか評価するCD31またはTUNEL染色を示す図である。血管新生と関連する標的、CD31の発現も、モデルのコントロール群と比較して両方の薬物投与群で顕著に減少した。また、アポトーシス細胞の数の増加も両処置群において観察された。
図22】TUNELによって検出されたように、細胞アポトーシスを実証する染色を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
哺乳動物細胞においてTGFβ1タンパク質をコードするmRNAに結合する第1のsiRNA分子;哺乳動物細胞においてVEGFタンパク質をコードするmRNAに結合する第2のsiRNA分子;および薬学的に許容されるポリペプチドを含む薬学的に許容される担体を含有する組成物が提供される。処置のための組成物を使用する方法も提供される。有利には、担体はヒスチジン-リジン共重合体である。組成物は、VEGF/VEGFRおよび/またはTGFβ経路に含まれる少なくとも2つの異なるmRNA分子の発現を標的化および減少する。
【0017】
一実施形態では、方法は、上記のように治療的有効量の組成物を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物の細胞における免疫寛容促進因子および血管新生促進因子を二重に下方制御するために提供される。別の実施形態では、方法は、腫瘍組織に治療的有効量の組成物を投与することにより、哺乳動物の腫瘍組織においてアポトーシスを誘導するために提供される。さらに別の実施形態では、方法は、哺乳動物の組織における腫瘍のサイズを減少させるために提供され、腫瘍組織に治療的有効量の組成物を投与することを含む。さらに別の実施形態では、方法は、哺乳動物の組織における腫瘍のサイズを減少させるために提供され、腫瘍組織に治療的有効量の組成物および治療用モノクローナル抗体を同時投与することを含む。
【0018】
組成物中のsiRNA分子について、以下に記載の配列は、二本鎖RNA分子のセンス鎖である。二本鎖RNA分子は、平滑末端であるか、または1または2塩基のオーバーハングを有してもよい。有利には、1つまたは両方の鎖は、3’末端に1つまたは2つのデオキシリボヌクレオチド残基を有してもよい。当業者は、siRNA分子が、その相補性配列との二重鎖の一部としてセンス鎖(示した)を含有することを理解するであろう。例えば、配列番号XのsiRNA分子への本明細書での参照は、センス鎖(配列番号X)および相当するアンチセンス鎖によって形成された二重鎖を指すと理解されるであろう。
【0019】
本明細書で使用する場合、遺伝子を「サイレンシングすること」は、その遺伝子のタンパク質産物の濃度が少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%もしくはそれ以上減少されるように、その遺伝子のmRNA転写産物の濃度を減少させることを意味する。有利には、遺伝子をサイレンシングすることは、標的mRNAの濃度を、所望の臨床効果、例えば腫瘍の縮小または除去が達成される程度まで減少させる。
【0020】
siRNA分子は、特定の分子の組成物および構造に応じて、細胞における付加的または相乗的な効果を産生し得る。好ましい実施形態では、それらは相乗的な効果を産生する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「siRNA分子」は、標的細胞への投与および導入後に、細胞における遺伝子の発現と干渉する、短い、二本鎖ポリヌクレオチドである、二重鎖オリゴヌクレオチドである。例えば、siRNAは、mRNAまたはマイクロRNA(miRNA)のような、一本鎖(ss)標的RNA分子の少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を標的化および結合することができる。標的mRNAまたはmiRNAは、次いで細胞によって分解される。
【0022】
siRNA分子は、当業者に公知の技術を使用して調製され得る。そのような技術の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5898031号、同第6107094号、同第6506559号、同第7056704号ならびに欧州特許第1214945号および同第1230375号に記載される。当分野の慣例により、siRNA分子が特定のヌクレオチド配列によって同定される場合、配列は二重鎖(二本鎖)分子のセンス鎖を指す。
【0023】
siRNA分子は、天然に存在するリボヌクレオチド、すなわち、生細胞で見出されるものから作成され得るか、またはそのヌクレオチドの1つもしくは複数が、以下にさらに記載されるように、当技術分野で公知の技術によって化学的に修飾され得る。その個々のヌクレオチドの1つまたは複数のレベルで修飾されることに加えて、オリゴヌクレオチドの骨格は、例えば、1つまたは複数のホスホジエステル分子をホスホロチオエート結合によって置き換えることにより、修飾されてもよい。さらなる修飾は、siRNA分子上でのコンジュゲーションのための小分子(例えば、N-アセチルガラクトサミンのような糖分子)、アミノ酸分子、ペプチド、コレステロール、および他の大分子の使用を含む。
【0024】
一実施形態では、分子は、約19~約34塩基対の長さを有するオリゴヌクレオチドである。本実施形態の一態様では、分子は、約19~約27塩基対の長さを有するオリゴヌクレオチドである。別の態様では、分子は、約21~約25塩基対の長さを有するオリゴヌクレオチドである。分子は、両末端に平滑末端、またはそれぞれの末端に突出末端(オーバーラップ鎖)、二重鎖の1つの末端に平滑末端および二重鎖の他の末端に突出末端を有してもよい。有利には、1つまたは両方の鎖は、3’末端に1つまたは2つのデオキシリボヌクレオチド残基、例えば、dT残基を有してもよい。
【0025】
本明細書に記載の組成物では、相対量の2つの異なる分子および共重合体が変わり得る。一部の実施形態では、2つの異なるsiRNA分子の比は、質量で約1:1である。他の実施形態では、2つの異なるsiRNA分子の比は、質量で約1:1であってもよく、共重合体に対するこれらの分子の比は、質量で約1:2.5であってもよい。選択した比率により、組成物は、直径が約40~400nmのサイズの範囲を有するナノ粒子を形成し得る。
【0026】
一実施形態では、siRNA分子は、表1および2で同定されるものから選択される。例は、hmTF-21-hm3#およびhmVR2-21-h1#と名付けられた対であり、以下の配列を有する:
TGF-β1-21-hm3# 配列番号13:
センス鎖 5‘-AACUAUUGCUUCAGCUCCAdTdT-3’、
アンチセンス 5‘-UGGAGCUGAAGCAAUAGUUdTdT-3’、および
VEGFR2-21-h1## 配列番号40:
センス鎖、5’-GCCUAGUGUUUCUCUUGAUdTdT-3’、
アンチセンス、5’-AUCAAGAGAAACACUAGGCdTdT-3’。
【0027】
これらのsiRNA分子のそれぞれでは、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかの1つまたは複数のヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドであり得る。修飾されたヌクレオチドは、安定性を改善し、siRNAによる免疫刺激を減少することができる。修飾されたヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル、2’-メトキシエトキシ、2’-フルオロ、2’-アリル、2’-O-[2-(メチルアミノ)-2-オキソエチル]、4’-チオ、4’-CH2-O-2’-架橋、4’-(CH2)2-O-2’-架橋、2‘-LNA、2’-アミノまたは2’-0--(N-メチルカルバメート)リボヌクレオチドであり得る。他の好適な修飾が当技術分野で公知である。
【0028】
さらに、リボヌクレオチド間の1つまたは複数のホスホジエステル結合は、修飾され、ヌクレアーゼ消化に対する耐性を改善することができる。好適な修飾は、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート修飾結合の使用を含む。
【0029】
VEGFR2およびTGFβ1を標的化するsiRNAを含有するナノ粒子の形成
上記を含有するsiRNA分子は、有利には、対象への投与のためのナノ粒子に製剤化される。ナノ粒子形成の様々な方法が、当技術分野で周知である。例えば、Babuら,IEEE Trans Nanobioscience,15:849~863頁(2016年)を参照。
【0030】
有利には、ナノ粒子は、1つまたは複数のヒスチジン/リジン(HKP)共重合体を使用して形成される。好適なHKP共重合体は、WO/2001/047496、WO/2003/090719、およびWO/2006/060182に記載され、そのそれぞれの内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。好適なHKP重合体の例は、H3K4b(単位[KHKを含有する)およびH3K4b(+H)(単位KHKH[KHKを含有する)を含む。H3K4bとH3K4b(+H)は両方とも、3つのリジン残基の骨格を有し、リジン側鎖ε-アミノ基およびN末端は、[KHK)またはH3K4b(+H)単位のC末端に結合される。分岐状HKP担体は、例えば、固相ペプチド合成を含む、当技術分野で周知の方法によって合成され得る。
【0031】
ナノ粒子を形成する方法は、当技術分野で周知である。Babuら、上記。有利には、ナノ粒子は、マイクロ流体ミキサーシステムを使用して形成されてもよく、VEGFR2を標的化するsiRNAおよびTGFβ1を標的化するsiRNAは、一定の流速で1つまたは複数のHKP重合体と混合される。流速は、産生されたナノ粒子のサイズを変えるために変えられ得る。HKP共重合体は、有利には、典型的には直径~<100~400nmのsiRNA分子を含有するナノ粒子を形成する。
【0032】
したがって、例えば、VEGFR2を標的化するsiRNAおよびTGFβ1を標的化するsiRNAは、PNIマイクロ流体ミキサーシステム(Precision Nanosystems,Inc.,Vancouver,CA)を使用して、HKP(+H)と、0.5mg/mlで混合した。全流量(TFR)は変えられ、この流速の粒子サイズへの影響は、Malvern Nanosizer system(Malvern Panalytical Inc.,Westborough,MA)を使用して、生じる粒子サイズを測定することにより評価した。多分散指数(PDI)は、およそ平均サイズのナノ粒子の変化の量の指標である。
【0033】
一実施形態では、siRNA分子は、表1および2で同定されるものから選択される。代表的な例は、hmTF-21-hm3#およびhmVR2-21-h2#と名付けられた対であり、以下の配列を有する:
TGF-β1-21-hm3# 配列番号13:
センス鎖、5‘-AACUAUUGCUUCAGCUCCAdTdT-3’、
アンチセンス、5‘-UGGAGCUGAAGCAAUAGUUdTdT-3’、および
VEGFR2-21-h2#配列番号41:
センス鎖、5’-GGUCCAUUUCAAAUCUCAAdTdT-3’、
アンチセンス、5’-UUGAGAUUUGAAAUGGACCdTdT-3’。
【0034】
別の例は、hmTF-21-hm6#およびhmVR2-21-h1#と名付けられた対であり、以下の配列を有する:
TGF-β1-21-hm6# 配列番号16:
センス鎖、5‘-CGGCAGCUGUACAUUGACUdTdT-3’、
アンチセンス、5‘-AGUCAAUGUACAGCUGCCGdTdT-3’、および
VEGFR2-21-h1# 配列番号40:
センス鎖、5’-GCCUAGUGUUUCUCUUGAUdTdT-3’
アンチセンス、5’-AUCAAGAGAAACACUAGGCdTdT-3’。
【0035】
さらに別の例では、siRNA分子は、hmTF-21-hm6#およびhmVR2-21-h2#と名付けられた対であり、以下の配列を有する:
TGF-β1-21-hm6# 配列番号16:
センス鎖、5’-CGGCAGCUGUACAUUGACUdTdT-3’、
アンチセンス、5’-AGUCAAUGUACAGCUGCCGdTdT-3’、および
VEGFR2-21-h2# 配列番号41:
センス鎖、5’-GGUCCAUUUCAAAUCUCAAdTdT-3’
アンチセンス、5’-UUGAGAUUUGAAAUGGACCdTdT-3’。
【0036】
好適なsiRNA分子は、以下の工程を含む方法を使用して同定され得る所望の活性を有する:(a)標的mRNA分子の相補的ヌクレオチド配列を標的化するように設計されたsiRNA分子のコレクションを作成し、siRNA分子の標的化鎖がヌクレオチドの様々な配列を含むこと;(b)一次スクリーニング(図1A~1B)およびEC50アッセイ(図7~9)を含む、in vitroで標的mRNA分子に対する最高の所望の効果を示すsiRNA分子を選択すること;(c)動物腫瘍モデルにおいて選択したsiRNA分子を評価すること(図13~15);ならびに(d)それらのサイレンシング活性および治療効果のため、モデルにおいて最高の有効性を示すsiRNA分子を選択すること。
【0037】
一実施形態では、候補siRNAの評価のための動物モデルは、ヌードマウスの異種移植モデルである。別の実施形態では、動物疾患モデルは、免疫コンピテントC57BL/B6マウスモデルである(図5)。別の実施形態では、方法は、薬学的に許容される担体を工程(c)によって選択されたそれぞれのsiRNA分子に添加し、薬学的組成物を形成する工程および動物腫瘍モデル(複数可)におけるそれぞれの薬学的組成物を評価する工程を含む。
【0038】
siRNA配列は、各二重鎖が、少なくとも、ヒトとマウスの両方、またはヒトと非ヒト霊長類の同じ遺伝子を標的化および阻害することができるように調製され得る(表1および2)。一態様では、siRNA分子は、ヒトmRNA分子および相同マウスmRNA分子の両方に結合する。すなわち、ヒトおよびマウスmRNA分子は、構造または機能が実質的に同じであるタンパク質をコードする。したがって、マウス疾患モデルにおいて観察された有効性および毒性反応は、ヒトにおいて起こるであろうことを予測する。マウスモデルにおいて試験したsiRNA分子は、ヒトで使用するための薬剤の良い候補であると考えられる。
【0039】
一実施形態では、siRNA分子は表1で同定されたものから選択され、哺乳動物細胞または組織においてTGFβ1 mRNAおよびVEGFR2 mRNAに同時に結合し、それらの分解を誘導することができる。
【0040】
siRNA分子は、薬学的に許容される担体と組み合わされ、哺乳動物への投与のための薬学的組成物を提供する。この実施形態の一態様では、哺乳動物は実験動物であり、イヌ、ネコ、ブタ、非ヒト霊長類、および齧歯類、例えばマウス、ラット、およびギニアピッグを含む。別の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0041】
担体は、siRNA分子を含有するナノ粒子を形成するヒスチジン-リジン共重合体である。この実施形態の一態様では、担体は、ヒスチジン、リジン、またはアスパラギンの複数の反復を含有する4つまたは3つの分岐を有するリジン骨格またはRCOOH足場を有する、HKP種、HKPシリーズのH3K4b、H3K(+H)4bおよびHK-RCOOHからなる群から選択される。HKPの水溶液が、質量で2.5:1のN/P比でsiRNAと混合された場合、ナノ粒子(直径40~400nmの平均サイズ)は自己アセンブルされた。別の態様では、HKPは、式:(R)K(R)-K(R)-(R)K(X)、[式中R=KHHHKHHHKHHHKHHHK、またはR=KHHHKHHHNHHHNHHHN、X=C(O)NH、K=リジン、H=ヒスチジン、およびN=アスパラギン]を有し得る。別の態様では、HKPは、式:(R)K(R)-K(R)-(R)K(X)、[式中R=KHHHKHHHKHHHKHHHK、またはR=KHHHKHHHKHHHHKHHHK、X=C(O)NH2、K=リジン、H=ヒスチジン]を有し得る。さらに別の態様では、HKPは、式:(R)-Lys(R)-Lys(R)-Gly-Ala-Pro-Gly-Ala-Pro-Gly-Ala-Pro-Gly-Arg-Gly-Val-Arg-COOH、[式中R=KHHHKHHHKHHHKHHHK]を有し得る。さらに別の態様では、HKPは、式:(R)-Lys(R)-Lys(R)-Gly-Ala-Pro-Gly-Ala-Pro-Ala-Pro-Gly-Ala-Pro-Gly-Arg-Arg-Gly-Val-Arg-COOII、[式中R=KHHHKHHHKHHHKHHHK]を有し得る。
【0042】
本明細書に記載の組成物は、(図5A~5D、組織学的染色)に示すように、哺乳動物の組織の細胞においてTGF-β1/MAPKシグナル伝達およびVEGF/VEGFR2シグナル伝達経路を同時に下方制御するために有用である。一部の実施形態では、投与は、腫瘍組織へであり得る。他の実施形態では、組成物は、皮下注射によって投与される。さらに他の実施形態では、それは静脈内または腹腔内に投与される。一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。治療的有効量の組成物は、HKP-siRNAの製剤中で哺乳動物の組織に投与される。腫瘍増殖は、腫瘍における新血管新生の減少によって阻害された(図16および20~22、CD31染色)。
【0043】
siRNA分子の有効性の決定
特定の標的VEGFR2およびTGFβ1 RNA配列、ならびに送達されるナノ粒子組成物の用量により、VEGFR2およびTGFβ1 RNAの機能の部分的または完全な欠損が観察され得る。少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%もしくはそれ以上の標的細胞において、RNAレベルまたは発現(VEGFR2_およびTGFβ1 RNA発現またはコードされたポリペプチド発現のいずれか)の減少または欠損が例示的である。VEGFR2およびTGFβ1 RNAレベルまたは発現の阻害は、VEGFR2およびTGFβ1 RNAまたはVEGFR2およびTGFβ1 RNAコードタンパク質のレベルの不在(または観察可能な減少)を指す。特異性は、細胞の他の遺伝子への明確な効果なく、VEGFR2およびTGFβ1 RNAを阻害する能力を指す。阻害の結果は、細胞もしくは生物体の外見上の特性の検査により、またはRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、および蛍光活性化細胞解析(FACS)のような生化学技術により確かめることができる。本発明のdsRNA剤による標的VEGFR2およびTGFβ1 RNA配列(複数可)の阻害も、in vivoまたはin vitroのいずれかで、VEGFR2およびTGFβ1関連疾患または障害、例えば腫瘍形成、増殖、転位等の発生/進行時に、そのようなdsRNA剤の投与の効果に基づいて測定され得る。腫瘍またはがん細胞レベルの処置および/または減少は、腫瘍またはがん細胞レベルの増殖の停止もしくは減少、または例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは99%またはそれ以上の減少を含んでもよく、対数項で測定されてもよく、例えばがん細胞レベルの10倍、100倍、1000倍、10倍、10倍、または10倍の減少が、細胞、組織、または対象へのナノ粒子組成物の投与によって達成することができる。対象は、哺乳動物、例えばヒトであってもよい。
【0044】
薬学的組成物および投与の方法
ナノ粒子組成物は、当技術分野で周知の方法を使用して、薬学的組成物としてさらに製剤化されてもよい。組成物は、投与のその意図した経路と適合性であるように製剤化されてもよい。投与の経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与を含む。非経口、皮内、または皮下適用のために使用した溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば酢酸、シトレートまたはホスフェートおよび浸透圧の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムによって調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の多人数用バイアルに封入され得る。
【0045】
注射用の使用に好適な薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性)または分散体および滅菌注射用溶液または分散体の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与のため、好適な担体は、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor EL(登録商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。いずれの場合においても、組成物は滅菌でなければならず、容易な注入性が存在する程度に流動的であるべきである。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンを組成物に含むことによってもたらされ得る。
【0046】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、選択した溶媒中に、上記で列挙される成分の1つまたは組合せと共に組み込み、必要な場合、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散体は、活性化合物を、基本分散媒および上記で列挙した成分から必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中へ組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより活性成分プラス先に滅菌濾過したそれらの溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末を得る。
【0047】
組成物はまた、身体からの迅速な排出に対して化合物を保護する担体を用いて調製されてもよく、制御された放出製剤など、移植およびマイクロカプセル化された送達系を含む。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような、生分解性、生体適合性重合体が使用され得る。そのような製剤は、標準的な技術を使用して調製され得る。材料は、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に得ることもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により、感染細胞へ標的化されたリポソームを含む)は、薬学的に許容される担体としても使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4522811号に記載の、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0048】
投与量および毒性の決定
組成物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%を死に至らせる用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定することにより、細胞培養物または実験動物での標準的な製剤手順によって決定され得る。毒性と治療効果の間の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。化合物は、有利には、高い治療指数を示す。
【0049】
細胞培養物アッセイおよび動物実験からのデータは、ヒトでの使用のための投与量の範囲の製剤化において使用され得る。組成物の投与量は、有利には、わずかな毒性のまたは毒性のない、ED50を含む、循環濃度の範囲内である。投与量は、用いられた投与形態および利用された投与の経路に応じて、この範囲内で変わり得る。本明細書に記載の組成物については、治療的有効量は、初めに細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の半数阻害を達成する組成物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて製剤化され得る。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定されてもよい。
【0050】
本明細書で使用する場合、薬理的または治療的有効量は、意図した薬理的治療または予防結果を産生するために有効なsiRNA組成物の量を指す。語句「薬理的有効量」および「治療的有効量」または「有効量」は、意図した薬理的治療または予防結果を産生するために有効な組成物の量を指す。例えば、所与の臨床処置が有効であると考えられる場合、疾患または障害と関連する測定可能なパラメーターの少なくとも30%の減少があり、疾患または障害の処置のための治療的有効量の薬物は、そのパラメーターの少なくとも30%減少させるのに必要な量である。
【0051】
本明細書に記載の組成物の治療的有効量は、およそ1pg~1000mgの範囲であり得る。例えば、10、30、100、もしくは1000pg、または10、30、100、もしくは1000ng、または10、30、100、もしくは1000μg、または10、30、100、もしくは1000mg、または1~5gの組成物が投与され得る。一般に、本明細書に記載の組成物の好適な投与単位は、1日あたりレシピエントのkg体重あたり0.001~0.25mgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.01~20μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.001~5μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり1~500ngの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.01~10μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.10~5μgの範囲、または1日あたりkg体重あたり0.1~2.5μgの範囲である。薬学的組成物は、1日1回、または1日を通して適切な間隔で投与される2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割用量を含有する投与単位で投与されてもよい。その場合、各分割用量に含有されるdsRNAは、1日の総投与単位を達成するために相応して少なくなければならない。投与単位は、例えば、数日間にわたり、dsRNAの持続および一定放出を提供する従来の持続放出製剤を使用して、数日間にわたる単回用量のために配合されてもよい。持続放出製剤は、当技術分野で周知である。この実施形態では、投与単位は、相応する複数の一日用量を含有する。製剤にかかわらず、薬学的組成物は、処置される動物またはヒトにおける標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量のdsRNAを含有しなければならない。組成物は、複数の単位のdsRNAの合計が合わせて十分な用量を含有するような方法で配合され得る。
【0052】
組成物は、1回、1日あたり1回または複数回から週あたり1回または複数回投与されてもよく、1日おきに1回を含む。当業者は、限定はされないが疾患または障害の重症度、事前の処置、健康全般および/または対象の年齢、ならびに他の疾患の存在を含む、特定の因子が対象を効果的に処置するのに必要な投与量およびタイミングに影響し得ることを理解する。さらに、本明細書に記載の治療的有効量の組成物による対象の処置は、単回処置を含んでもよく、または有利には、一連の処置を含み得る。
【0053】
本明細書に記載の好適に製剤化された薬学的組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、直腸、経膣および局所(頬側および舌下を含む)投与を含む、非経口経路によるなど、当技術分野で公知の手段によって投与されてもよい。有利には、薬学的組成物は、静脈内または非経口点滴または注射によって投与される。
【0054】
処置
本明細書に記載の組成物は、VEGFR2およびTGFβ1の発現、および特に変更された発現によって特徴付けられる、がんのような増殖性疾患を処置するために使用され得る。例示的ながんは、肝臓がん(例えば、肝細胞癌またはHCC)、肺がん(例えば、NSCLC)、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮頸がん、脳がん(例えば、膠芽細胞腫)、腎がん(例えば、乳頭腎細胞癌)、胃がん、食道がん、髄芽腫、甲状腺癌、横紋筋肉腫、骨肉腫、扁平上皮癌(例えば、口腔扁平上皮癌)、黒色腫、乳がん、および造血障害(例えば、白血病およびリンパ腫、ならびに他の免疫細胞関連障害)を含む。他のがんは、膀胱がん、子宮頸部(子宮)がん、子宮内膜(子宮)がん、頭頸部がん、および口腔咽頭がんを含む。有利には、がんは、頭頸部がん、膀胱がん、膵臓がん、胆管細胞癌、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、結腸がん、膠芽細胞腫、乳がん、胃腺癌、前立腺がん、卵巣癌、子宮頸がん、AML、ALL、骨髄腫または非ホジキンリンパ腫である。
【0055】
組成物は、上記のように投与されてもよく、有利には、全身的にまたは腫瘍内に送達されてもよい。組成物は、単剤療法として、すなわち別の処置なく投与されてもよく、または1つもしくは複数のさらなる医薬を含む組合せレジメンの一部として投与されてもよい。有利には、組合せレジメンの一部として使用される場合、有効量の少なくとも1つのさらなる化学療法薬を含む。化学療法薬は、例えば、プラチナ含有薬物、例えばシスプラチン、オキサロプラチン、またはカルボプラチンであってもよい。
【実施例
【0056】
実施例1.ヒトおよびマウスTGF-β1 mRNAに特異的な低分子核酸の選択
所有のコンピューターベースのアルゴリズムに基づき、本発明者らは、以下の特性を有するTGF-β1の低分子核酸(表1)を設計した:(a)最適な熱力学的特性;(b)RISCへの結合の増強;(c)免疫除去活性化ドメイン;(d)ヒトまたはヒト-マウス相同性;(e)所有の知的財産権による配列検索;(f)「オフターゲット効果」を避けるためのblast使用;および(g)複数の配列がカクテル内で混合される場合、相互作用しない。各遺伝子の最も強力な低分子核酸は、Q RT-PCR(MiiQ,Bio Rad)アッセイによって選択された。
【0057】
実施例2.ヒトおよびマウスVEGFR2 mRNAに特異的な低分子核酸の選択
所有のコンピューターベースのアルゴリズムに基づき、本発明者らは、以下の特性を有するVEGFR2の低分子核酸(表2)を設計した:a.最適な熱力学的特性;b.RISCへの結合の増強;c.免疫活性化構造ドメインの除去;d.ヒトまたはヒト-マウス相同性を有する;e.所有の知的財産による配列検索;f.「オフターゲット効果」を避けるためのblast使用;g.カクテル内で混合される場合、複数の配列が相互作用しない。各遺伝子の最も強力な低分子核酸は、Q RT-PCR(MiiQ,Bio Rad)アッセイによって選択された。
【0058】
実施例3:25ヌクレオチド(25mer)および21ヌクレオチド(21mer)の長さを有する低分子核酸のin vitro効果の予備的なスクリーニング(細胞レベルで、検出標的はVEGFR2)
最も有効な低分子核酸をスクリーニングするために使用した細胞株は、標的遺伝子を発現することができるものであるべきである。この実施例では、ヒトMDA-MB-231細胞(図1)およびヒトU87細胞(図2)を使用して、VEGFR2特異的低分子核酸をスクリーニングした。
【0059】
MDA-MB-231およびU87細胞を24ウェル細胞プレートに播種し(細胞1×10個/ウェル)、次いでsiRNA(21merまたは25merまたはネガティブコントロール)を市販のトランスフェクション試薬(lipo2000)によってトランスフェクトし、siRNAトランスフェクション濃度は100nMであった。一方、未処置の細胞は、ブランクコントロールとして設定した。全RNAは、トランスフェクションの24時間後に細胞から抽出した。逆転写は、キットを使用して実施し、製造業者の取扱説明書に従ってcDNAを得た。標的遺伝子VEGFR2 mRNA発現の相対レベルは、リアルタイムPCRによって決定し、ハウスキーピング遺伝子βアクチンに対してノーマライズした。遺伝子ノックダウンの有効性は、ブランクコントロールのパーセンテージとして表した。結果は、図1および2に示す。MDA-MB-231およびU87-MG細胞における予備的なスクリーニングの結果に基づき、75%またはそれ以上のノックダウン効果を有する配列を、続くEC50データ検出および解析のために選択した。VEGFR2-21-h1#、VEGFR2-21-h2#、VEGFR2-21-h5#、VEGFR2-21-h7#、VEGFR2-21-hm17#、VEGFR2-21-hm18#、VEGFR2-25-h3#、およびVEGFR2-25-h4#を選択し、表3に示したように修飾した(配列番号109~124)。
【0060】
実施例4.21ヌクレオチドの長さを有する低分子核酸のin vitro効果の予備的なスクリーニング(細胞レベルで、検出標的はTGFβ1)
最も有効な低分子核酸をスクリーニングするために使用した細胞株は、標的遺伝子を発現することができるものであるべきである。この実施例では、ヒトDLD-1細胞(図3)、ヒトRKO細胞(図4)、ヒトU87-MG細胞(図5)およびヒトPANC-1細胞(図6)を使用して、TGF-β1特異的細胞低分子核酸をスクリーニングした。
【0061】
DLD-1、RKO、U87-MGおよびPANC-1細胞を24ウェル細胞プレートに播種し(細胞1×10個/ウェル)、次いでsiRNA(21merまたはネガティブコントロール)を市販のトランスフェクション試薬(lipo2000)によってトランスフェクトした。siRNAトランスフェクション濃度は100nMであった。未処置の細胞は、ブランクコントロールとして設定した。全RNAは、トランスフェクションの24時間後に細胞から抽出した。逆転写は、キットを使用して実施し、製造業者の取扱説明書に従ってcDNAを得た。標的遺伝子TGF-β1 mRNA発現の相対レベルは、リアルタイムPCRによって決定し、ハウスキーピング遺伝子βアクチンに対してノーマライズした。遺伝子ノックダウンの有効性は、ブランクコントロールのパーセンテージとして表した。結果は、図3~6に示す。DLD-1、RKO、U87-MGおよびPANC-1細胞における予備的なスクリーニングの結果に基づき、75%またはそれ以上のノックダウン効果を有する配列は、続くEC50データ検出および解析のために選択した。したがって、TF1-21-hm3#およびTFI-21-hm6#を候補配列として選択し、これら2つの配列を修飾した(修飾配列については表4を参照)。
【0062】
実施例5.25ヌクレオチドおよび21ヌクレオチドのsiRNA配列の修飾前後のデータ比較(細胞レベルで、検出標的はVEGFR2)
異なる細胞(MDA-MB-231、U87-MGおよびPANC-1)における修飾前後の候補配列のEC50を比較した。MDA-MB-231、PANC-1およびU87-MG細胞を24ウェル細胞プレートに播種し(細胞1×10個/ウェル)、siRNA候補(修飾または非修飾)を異なる細胞に複数の濃度勾配でトランスフェクトした。初代スクリーニングと同じ手順を使用した。最終的に、データは、ソフトウェアGraphPad Prism8を使用してプロットし、EC50値を計算した。
【0063】
MDA-MB-231細胞の修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較結果を図7に示す;U87-MG細胞の修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較結果を図8に示す;PANC-1細胞の修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較結果を図9に示す。表5に要約したデータは、各配列(修飾前後)がPANC-1およびMDA-MB-231において低いEC50値を示し、より顕著なノックダウン効果を示しており、配列VEGFR2-21-h5#、VEGFR2-21-h17#、VEGFR2-21-h1#、VEGFR2-21-h2#およびVEGFR2-21-hm18#は非修飾のものよりもよく;U87-MGにおける修飾前後の候補VEGFR2配列のEC50値は高く、ノックダウン効果は顕著ではなく、図2のU87-MGにおける初代スクリーニング結果と一致するが、修飾前後のノックダウン効果の傾向は、PANC-1およびMDA-MB-231と類似しており、結果は一致したことを示す。
【0064】
実施例6.21ヌクレオチドのsiRNA配列の修飾前後のデータ比較(細胞レベルで、検出標的はTGF-β1)
異なる細胞(U87-MG、DLD-1、SK-Hep-1、BxPC3、A549、HUCCT、PANC-1およびRKO)における修飾前後の候補配列のEC50を比較した。U87-MG、DLD-1、SK-Hep-1、BxPC3、A549、HUCCT、PANC-1およびRKO細胞を24ウェル細胞プレートに播種し(細胞1×10個/ウェル)、siRNA候補(修飾または非修飾)を異なる細胞に複数の濃度勾配でトランスフェクトし、初代スクリーニングと同じ手順を使用した。最終的に、データは、ソフトウェアGraphPad Prism8を使用してプロットし、EC50値を計算した。
【0065】
異なる細胞(U87MG、PANC-1、RKO、BxPC3)の修飾前後の候補配列のEC50曲線の比較結果を図10に示す。異なる細胞(SK-Hep-1、HUCCT、A549およびDLD-1)の修飾前後の候補配列のEC50曲線。比較結果を図11に示し、データは表6に要約し、様々な細胞株(U87-MG、DLD-1、SK-Hep-1、BxPC3、A549、HUCCT、PANC-1およびRKO)で選択した候補(修飾または非修飾)の普遍性の検討を使用して、修飾前後のEC50データを比較および解析した。各配列(修飾前後)は、U87-MG、DLD-1、SK-Hep-1、BxPC3、A549、HUCCT、PANC-1およびRKOにおいて低いEC50値を示し、より顕著なノックダウン効果を有することを示しており、修飾のノックダウン効果は非修飾よりも良かったことを示した(TF1-21-hm3#修飾前後のU87-MGおよびTF1-21-hm6#修飾前後のSK-Hep-1のEC50値を除く)。
【0066】
実施例7.VEGFR2 siRNAおよびTGF-β1 siRNAの併用効果(細胞レベルで、検出標的はTGF-β1およびVEGFR2)
MDA-MB-231細胞では、VEGFR2 siRNAおよびTGF-β1 siRNAのノックダウン効果は、異なる質量比のVEGFR2 siRNAおよびTGF-β1 siRNAで比較した。MDA-MB-231細胞を24ウェル細胞プレートに播種し(細胞1×10個/ウェル)、異なる比のsiRNA(それぞれ、VEGFR2:TGF-β1の分子量比は1.5:1.5、1:2、2:1)をトランスフェクトし、siRNAトランスフェクション濃度は100nMであり、初代スクリーニングと同じ手順を使用した。最終的に、データは、ソフトウェアGraphPad Prism8を使用してプロットし、EC50値を計算した。結果は図12に示す。1:2~2:1の質量比内で、VEGFR2 siRNAおよびTGF-β1 siRNAの併用効果は類似しており、両方ともVEGFR2およびTGF-β1の発現の阻害の良好な効果を達成することができる。操作の便利さを考え、以下の例は、STP355薬中の2つのsiRNAの比として1:1の質量比を選択した。
【0067】
実施例8.薬物候補の活性成分として低分子核酸組成物の選択
本発明の2つの低分子核酸の組合せの新規の薬学的調製物様式を完全使用し、低分子核酸処置の効果を改善するため、以下の組合せ薬が製剤化される:
(1)組合せ1:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-h1#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#:
センス鎖:5’-AACUAUUGCUUCAGCUCCAdTdT-3’(配列番号3);
アンチセンス:5’-UGGAGCUGAAGCAAUAGUUdTdT-3’(配列番号13)
VEGFR2-21-h1#:
センス鎖:5’-GCCUAGUGUUUCUCUUGAUdTdT-3’(配列番号40)
アンチセンス:5’-AUCAAGAGAAACACUAGGCdTdT-3’(配列番号83)。
(2)組合せ2:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-h2#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#:
センス鎖:5’-AACUAUUGCUUCAGCUCCAdTdT-3’(配列番号3)
アンチセンス:5’-UGGAGCUGAAGCAAUAGUUdTdT-3’(配列番号13)、
VEGFR2-21-h2#:
センス鎖:5’-GGUCCAUUUCAAAUCUCAAdTdT-3’(配列番号41)
アンチセンス:5’-UUGAGAUUUGAAAUGGACCdTdT-3’(配列番号84)。
(3)組合せ3:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#およびVEGFR2-21-h1#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#:
センス鎖:5’-CGGCAGCUGUACAUUGACUdTdT-3’(配列番号6)
アンチセンス:5’-AGUCAAUGUACAGCUGCCGdTdT-3’(配列番号16)、
VEGFR2-21-h1#:
センス鎖:5’-GCCUAGUGUUUCUCUUGAUdTdT-3’(配列番号40)
アンチセンス:5’-AUCAAGAGAAACACUAGGCdTdT-3’(配列番号83)。
(4)組合せ4:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#およびVEGFR2-21-h2#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#:
センス鎖:5’-CGGCAGCUGUACAUUGACUdTdT-3’(配列番号6)
アンチセンス:5’-AGUCAAUGUACAGCUGCCGdTdT-3’(配列番号16)
VEGFR2-21-h2#:
センス鎖:5’-GGUCCAUUUCAAAUCUCAAdTdT-3’(配列番号41)
アンチセンス:5’-UUGAGAUUUGAAAUGGACCdTdT-3’(配列番号84)。
(5)組合せ5:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#modおよびVEGFR2-21-h1#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#mod:
センス鎖:5’-mAmAmCmUmAmUfUfGfCmUmUmCmAmGmCmUmCmCmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfGmGmAmGmCmUmGmAmAmGmCmAfAmUmAmGmUmUdTdT-3’、
VEGFR2-21-h1#mod:
センス鎖:5’-mGmCmCmUmAmGfUfGfUmUmUmCmUmCmUmUmGmAmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfUmCmAmAmGmAmGmAmAmAmCmAfCmUmAmGmGmCdTdT-3’。
(6)組合せ6:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#modおよびVEGFR2-21-h2#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#mod:
センス鎖:5’-mAmAmCmUmAmUfUfGfCmUmUmCmAmGmCmUmCmCmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfGmGmAmGmCmUmGmAmAmGmCmAfAmUmAmGmUmUdTdT-3’、
VEGFR2-21-h2#mod:
センス鎖:5’-mGmGmUmCmCmAfUfUfUmCmAmAmAmUmCmUmCmAmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfUmGmAmGmAmUmUmUmGmAmAmAfUmGmGmAmCmCdTdT-3’。
(7)組合せ7:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#modおよびVEGFR2-21-h1#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#mod:
センス鎖:5’-mCmGmGmCmAmGfCfUfGmUmAmCmAmUmUmGmAmCmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfGmUmCmAmAmUmGmUmAmCmAmGfCmUmGmCmCmGdTdT-3’、
VEGFR2-21-h1#mod:
センス鎖:5’-mGmCmCmUmAmGfUfGfUmUmUmCmUmCmUmUmGmAmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfUmCmAmAmGmAmGmAmAmAmCmAfCmUmAmGmGmCdTdT-3’。
(8)組合せ8:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#modおよびVEGFR2-21-h2#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#mod:
センス鎖:5’-mCmGmGmCmAmGfCfUfGmUmAmCmAmUmUmGmAmCmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfGmUmCmAmAmUmGmUmAmCmAmGfCmUmGmCmCmGdTdT-3’、
VEGFR2-21-h2#mod:
センス鎖:5’-mGmGmUmCmCmAfUfUfUmCmAmAmAmUmCmUmCmAmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfUmGmAmGmAmUmUmUmGmAmAmAfUmGmGmAmCmCdTdT-3’。
(9)組合せ9:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-h17#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#:
センス鎖:5’-AACUAUUGCUUCAGCUCCAdTdT-3’(配列番号3)
アンチセンス:5’-UGGAGCUGAAGCAAUAGUUdTdT-3’(配列番号13)
VEGFR2-21-hm17#:
センス鎖:5’-GGACUGGCUUUGGCCCAAUdTdT-3’(配列番号56)
アンチセンス:5’-AUUGGGCCAAAGCCAGUCCdTdT-3’(配列番号99)。
(10)組合せ10:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-h18#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#:
センス鎖:5’-AACUAUUGCUUCAGCUCCAdTdT-3’(配列番号3)
アンチセンス:5’-UGGAGCUGAAGCAAUAGUUdTdT-3’(配列番号13)
VEGFR2-21-hm18#:
センス鎖:5’-GGAAAAAACAAAACUGUAAdTdT-3’(配列番号57)
アンチセンス:5’-UUACAGUUUUGUUUUUUCCdTdT-3’(配列番号100)。
(11)組合せ11:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#およびVEGFR2-21-h17#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#:
センス鎖:5’-CGGCAGCUGUACAUUGACUdTdT-3’(配列番号6)
アンチセンス:5’-AGUCAAUGUACAGCUGCCGdTdT-3’(配列番号16)
VEGFR2-21-hm17#:
センス鎖:5’-GGACUGGCUUUGGCCCAAUdTdT-3’(配列番号56)
アンチセンス:5’-AUUGGGCCAAAGCCAGUCCdTdT-3’(配列番号99)。
(12)組合せ12:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#およびVEGFR2-21-h18#と名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#:
センス鎖:5’-CGGCAGCUGUACAUUGACUdTdT-3’(配列番号6)
アンチセンス:5’-AGUCAAUGUACAGCUGCCGdTdT-3’(配列番号16)
VEGFR2-21-hm18#:
センス鎖:5’-GGAAAAAACAAAACUGUAAdTdT-3’(配列番号57)
アンチセンス:5’-UUACAGUUUUGUUUUUUCCdTdT-3’(配列番号100)。
(13)組合せ13:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#modおよびVEGFR2-21-h17#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#mod:
センス鎖:5’-mAmAmCmUmAmUfUfGfCmUmUmCmAmGmCmUmCmCmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfGmGmAmGmCmUmGmAmAmGmCmAfAmUmAmGmUmUdTdT-3’、
VEGFR2-21-hm17#mod:
センス鎖:5’-mGmGmAmCmUmGfGfCfUmUmUmGmGmCmCmCmAmAmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfUmUmGmGmGmCmCmAmAmAmGmCfCmAmGmUmCmCdTdT-3’。
(14)組合せ14:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm3#modおよびVEGFR2-21-h18#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm3#mod:
センス鎖:5’-mAmAmCmUmAmUfUfGfCmUmUmCmAmGmCmUmCmCmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfGmGmAmGmCmUmGmAmAmGmCmAfAmUmAmGmUmUdTdT-3’、
VEGFR2-21-hm18#mod:
センス鎖:5’-mGmGmAmAmAmAfAfAfCmAmAmAmAmCmUmGmUmAmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfUmAmCmAmGmUmUmUmUmGmUmUfUmUmUmUmCmCdTdT-3’。
(15)組合せ15:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#modおよびVEGFR2-21-h17#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#mod:
センス鎖:5’-mCmGmGmCmAmGfCfUfGmUmAmCmAmUmUmGmAmCmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfGmUmCmAmAmUmGmUmAmCmAmGfCmUmGmCmCmGdTdT-3’、
VEGFR2-21-hm17#mod:
センス鎖:5’-mGmGmAmCmUmGfGfCfUmUmUmGmGmCmCmCmAmAmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfUmUmGmGmGmCmCmAmAmAmGmCfCmAmGmUmCmCdTdT-3’。
(16)組合せ16:
siRNA分子は、表中でTF1-21-hm6#modおよびVEGFR2-21-h18#modと名付けられた対のような、表1および表2で決定したsiRNA分子から選択され、それらの配列は以下の通りである:
TF1-21-hm6#mod:
センス鎖:5’-mCmGmGmCmAmGfCfUfGmUmAmCmAmUmUmGmAmCmUdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmAfGmUmCmAmAmUmGmUmAmCmAmGfCmUmGmCmCmGdTdT-3’、
VEGFR2-21-hm18#mod:
センス鎖:5’-mGmGmAmAmAmAfAfAfCmAmAmAmAmCmUmGmUmAmAdTdT-3’
アンチセンス:5’-PmUfUmAmCmAmGmUmUmUmUmGmUmUfUmUmUmUmCmCdTdT-3’。
【0068】
実施例9.STP355医薬の調製
実施例8で組成物9(TF-21-hm3#およびVEGFR2-21-hm17#)としてTGF-β1 siRNAおよびVEGFR2 siRNAを選択し、1:1(質量比)の比で溶液中にそれらを混合し、次いで安定なナノ粒子製剤からのポリペプチド担体(HKPまたはHKP(+H))と混合した。
【0069】
実施例10.マウス膵臓がん(PANC-1)異種移植モデルにおけるSTP355のin vivo薬力学
この実施例で使用したSTP355薬は、実施例9で調製したSTP355薬である。BALB/cヌードマウスは、それぞれ細胞4×10個/0.2mlのヒト膵臓がんPANC-1細胞を、背中に皮下接種した。腫瘍体積が約200mmに増殖すると、腫瘍を回収し、直径約2mmの小片に切断し、小片に接種した。平均腫瘍体積が100mmに達すると、マウスは皮下投与された。STP355は、1mg/kgおよび2.5mg/kgの用量で、週に2回、全部で8回投与により腫瘍内に投与した。他の群は、ポジティブコントロールとしてゲムシタビン(ジェムザール)(3mg/kg)を与え、週に2回、全部で8回投与により医薬を腫瘍内に投与した。マウスの腫瘍体積およびマウス体重を定期的に測定し、実験の最後に腫瘍重量を集め、ソフトウェアGraphPad Prism8によって解析した。平均±SE。図13は、STP355がマウス膵臓がんに特定の阻害効果を有することを示し、2.5mg/kgの用量はジェムザールに近い。
【0070】
実施例11.マウス乳がん(MDA-MB-231)異種移植モデルにおけるSTP355の薬力学試験
この実施例で使用したSTP355薬は、実施例9で調製したSTP355薬である。BALB/cヌードマウスは、それぞれ細胞4×10個/0.2mlのヒト乳がんMDA-MB-231細胞を背中に皮下接種し、平均腫瘍体積が100mmに達すると、群投与を開始した。STP355は、1mg/kgの用量で、週に2回、全部で8回投与により腫瘍内投与するか、または2mg/kgの用量で、週に2回、全部で8回投与により静脈内投与した。ポジティブコントロールとしてパクリタキセル(PTX)(5mg/kg)を使用し、週に2回、全部で8回投与により腫瘍内に投与した。マウスの腫瘍体積およびマウス体重を定期的に測定し、実験の最後に腫瘍重量を集め、ソフトウェアGraphPad Prism8によって解析した。データポイントは平均±SEとして計算した。図14は、STP355処置により、2つの投与方法でのマウス乳がんへの阻害効果が、パクリタキセルよりもよく、毒性はパクリタキセルよりもずっと低いことを示している。
【0071】
実施例12.免疫コンピテントマウスモデルにおける、ヒト化PDL1遺伝子座結腸直腸がん腫瘍(MC38-hPDL1)へのSTP355のin vivo薬力学
この実施例で使用したSTP355薬は、実施例9で調製したSTP355薬である。C57BL/6Jマウスは、ヒト化PDL1遺伝子座結腸直腸がん腫瘍MC38-hPDL1細胞を、背中に、接種体積:細胞1×10個/100μL/マウス、接種位置:マウスの右もも上部で皮下接種した。平均腫瘍体積が100mmに達すると、群投与を開始し、8匹の動物/群で4群に分けた。この実験では、4mg/kgおよび6mg/kgの用量を試験し、モデル群を確立し、ポジティブコントロール群はテセントリプ(Tecentrip)(アテゾリズマブ)であった。薬物は、週に2回、全部で8回投与した。0日目、3日目、7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目および28日目に、ノギスにより腫瘍体積を測定し、腫瘍増殖阻害率TGI%を式に従って計算した。
計算式:TGI%=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%
Tiは、特定の時点での処置群の平均腫瘍体積を表し、
T0は、0日目の処置群の平均腫瘍体積を表し、
Viは、Tiと同じ時点でのモデル群の平均腫瘍体積を表し、
V0は、0日目のモデル群の平均腫瘍体積を表す。
【0072】
図15は、7日からのポジティブコントロール群(テセントリプ(Tecentrip)、4mpk、BIW4W、I.P.)、STP355低用量群(4mpk、BIW4W、I.V.)およびSTP355高用量群(6mpk、BIW4W、I.V.)を示す。初めから28日目まで、腫瘍体積はモデルコントロール群よりも著しく小さく、高用量STP355群の効果はポジティブコントロール群に匹敵した。腫瘍重量の結果から、STP355高用量群およびコントロール群はモデル群より著しく低く、STP355高用量群は、テセントリプ(Tecentrip)と同じ腫瘍増殖への阻害効果を有した。
【0073】
実施例13.免疫コンピテントマウスモデルにおける黒色腫(B16)へのSTP355のin vivo薬力学
この実施例で使用したSTP355薬は、実施例9で調製したSTP355薬である。C57BL/6Jマウスは、B16-F0細胞を、背中に、接種体積:細胞1×10個/100μL/マウス(50匹のマウスに接種)、位置:マウスの右背部で皮下接種した。平均腫瘍体積は80~100mmであり、群での投与を開始した。2mg/kgの用量を、週に2回、全部で8回投与により静脈内投与し、ポジティブコントロール群は、シスプラチンを投与し、4mg/kgの用量で腫瘍内に投与し、週に2回、全部で8用量が投与された。図16は、現在の試験システム下で、ポジティブコントロール群(シスプラチン、4mg/kg i.p.QW)およびSTP355群(2mg/kg、10μl/g、i.v.、Q2D)は全て、顕著な抗腫瘍効果を示し、STP355群はよい効果および低い毒性を有することを示した。
【0074】
実施例14.マウス乳がん(MDA-MB-231)異種移植モデルにおける組合せ薬および単一薬の薬力学的比較試験
組合せ9(TF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-hm17#)、組合せ10(TF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-hm18#)、組合せ11(TF1-21-hm6#およびVEGFR2-21-hm17#)、組合せ12(TF1-21-hm6#およびVEGFR2-21-hm18#)、TGF-β1 siRNA(TF1-21-hm3#)、TGF-β1 siRNA(TF1-21-hm6#)、VEGFR2 siRNA(VEGFR2-21-hm17#)およびVEGFR2 siRNA(VEGFR2-21-hm18#)をHKP(+H)とセルフアセンブルさせてナノ粒子を形成し、調製したナノ粒子は、STP355(3+17)、STP355(3+18)、STP355(6+17)、STP355(6+18)、siTGF-β1(3)、siTGF-β1(6)、siVEGF-R2(17)、siVEGF-R2(18)としてマークした。
【0075】
NOD SCIDマウスは、それぞれ細胞1×10個/0.2mlのヒト乳がんMDA-MB-231細胞を、背中に皮下接種した。平均腫瘍体積が100mmに達すると、マウスを10個の群、8匹のマウス/群に分けた。上記のSTP355薬、TGF-β1 siRNA単一薬、およびVEGFR2 siRNA単一薬を、2mg/kgの用量で、3日に1回、全部で8回投与により静脈内投与した。パクリタキセル(PTX)(5mg/kg)を、3日に1回、全部で8用量を腹腔内注射によりポジティブコントロールとして使用した。マウスの腫瘍体積およびマウス体重を定期的に測定し、実験の最後に腫瘍重量を集め、ソフトウェアGraphPad Prism9によって解析した。データポイントは平均±SEとして計算した。図17は、ビヒクル群と比較して、STP355(3+18)薬処置は、マウス乳がんに、TGF-β1 siRNA単一薬、VEGFR2 siRNA単一薬およびパクリタキセルよりも著しく良い阻害効果を有したことを示す。
【0076】
実施例15.マウス膵臓がん(PANC-1)異種移植モデルにおける、組合せ薬および修飾薬のin vivo薬力学比較試験
組合せ9(TF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-hm17#)、組合せ10(TF1-21-hm3#およびVEGFR2-21-hm18#)、組合せ13(TF1-21-hm3#modおよびVEGFR2-21-hm17#mod)、組合せ14(TF1-21-hm3#modおよびVEGFR2-21-hm18#mod)をHKP(+H)とセルフアセンブルさせてナノ粒子を形成し、調製したナノ粒子は、STP355(3+17)、STP355(3+18)、STP355(3m+17m)、STP355(3m+18m)として記録した。
【0077】
BALB/cヌードマウスは、それぞれ細胞4×10個/0.2mlのヒト膵臓がんPANC-1細胞を、背中に皮下接種した。平均腫瘍体積が120mmに達すると、マウスを6個の群、8匹のマウス/群に分けた。STP355を、1mg/kgの用量で、3日に1回、全部で8回投与により腫瘍内に投与し、ゲムシタビン(ジェムザール)(60mg/kg)を、3日に1回、全部で8用量を腹腔内にポジティブコントロールとして投与した。マウスの腫瘍体積および体重を定期的に測定し、ソフトウェアGraphPad Prism9によって解析した。平均±SE。図18は、各投与群がPANC-1腫瘍に特定の阻害効果を有し、効果がゲムシタビンに匹敵し、組合せ薬と修飾薬の間に差がないことを示す。
【0078】
実施例16.C57BL/6Jマウスにおける修飾薬および非修飾薬の比較安定性試験
C57BL/6Jマウスを5つの群、6匹のマウス/群に分けた。実施例15のSTP355(3+17)およびSTP355(3m+17m)を使用して、マウスにおける非修飾薬STP355および修飾薬STP355mの効果を比較した。安定性のため、コントロールはブランクコントロール群であり、単一用量群(単回用量)は1回投与され、反復投与群(Q2D×3用量)は2日に1回投与され、3回投与された。最終投与の24時間後にサンプリングし、リアルタイム蛍光定量的PCR法を使用して、肝臓組織におけるTGF-β1 siRNAおよびVEGF-R2 siRNAの含量を決定した。図19は、修飾薬および非修飾薬の両方が、i.p.投与後の肝臓組織において、より高レベルのVEGF-R2 siRNAおよびTGF-β1 siRNAを検出できたことを示す。同じ投与条件下で、修飾群のsiRNAの残量は非修飾群よりも高く;修飾群では、反復投与のsiRNAの残量は単回投与よりも高く;また、非修飾群のsiRNAの残量も単回投与よりも高かった。これは、修飾後、siRNAはin vivoでより安定性を有することを示している。
【0079】
ヒトおよびマウスmRNA分子は、構造または機能が実質的に同一であるタンパク質をコードする。したがって、マウス疾患モデルにおいて観察された有効性および毒性応答は、ヒトで起こるであろうことの十分な理解を提供する。より重要なことは、マウスモデルにおいて試験したsiRNA分子は、ヒトにおける薬学的製剤の良い候補である。上記の実施例では、STP355薬は、ヒトおよびマウスの相同siRNAを採用する。
【0080】
本開示は、そのような組成物および方法のある特定の例を記載するが、多くの詳細は例示の目的のために記載され、これらの組成物および方法が他の実施例に影響され、ある特定の詳細が本開示の基本原理から逸脱することなく本明細書に記載の実施例から変更されてもよいことは当業者には明らかであろう。
【0081】
参考
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024525858000001.xml
【国際調査報告】