(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】パーキンソン病及び/またはレビー小体型疾患または障害の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/661 20060101AFI20240705BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240705BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240705BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/661
A61P25/16
A61P25/28
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503354
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022074021
(87)【国際公開番号】W WO2023004393
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/042974
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518426332
【氏名又は名称】アティラ・ファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Athira Pharma, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メビウス ハンス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホア シュエ
(72)【発明者】
【氏名】チャーチ ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】カワス リーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA02
4C084ZA15
4C084ZC20
4C084ZC52
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZC52
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、パーキンソン病認知症及びレビー小体型認知症を含む、パーキンソン病及び/またはレビー小体型疾患または障害(複数可)を処置する方法に関し、方法は、対象に1日当たり2~90mgの水溶性プロドラッグを投与することを含む。ATH-1017は、皮下(SC)注射後に血漿中で活性薬物ATH-1001に急速に変換され、水性ビヒクルでのSC投与が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病(PD)及び/またはレビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
パーキンソン病認知症(PDD)を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
レビー小体型認知症(DLB)を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
パーキンソン病(PD)に関連する軽度~中等度の認知症を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
PDD及び/またはDLBと診断された患者における事象関連電位(ERP)P300潜時を改善する方法であって、前記患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
PDD及び/またはDLBと診断された患者の認知力の低下を遅らせるか、または認知力を改善する方法であって、前記患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
PDD及び/またはDLBと診断された患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性の低下を遅らせるか、または日常生活活動を行う能力及び言語流暢性を改善する方法であって、前記患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
PDD及び/またはDLBと診断された患者の機能的または認知能力の低下を遅らせる方法であって、前記患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化8】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
PDD及び/またはDLBと診断された患者の臨床的低下を遅らせる方法であって、前記患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化9】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
PDD及び/またはDLBと診断された患者の実行記憶機能を改善する方法であって、前記患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化10】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
認知症を処置することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記処置することが、認知症の1つ以上の症状を改善することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記処置することが、運動障害の1つ以上の症状を改善することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、PDDと診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、レビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)と診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、特発性パーキンソン病の可能性、またはレビー小体型疾患もしくは障害(複数可)(LBD)の可能性があると診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、少なくとも1年間、特発性パーキンソン病の可能性またはLBDの可能性があると診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、パーキンソン病と診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、少なくとも1年間、PDと診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、LBDの可能性を含むPDDと診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者のモントリオール認知評価(MOCA)スコアが、前記A19の化合物による前記処置開始前に、11~23、12~23、13~23、14~23、15~23、16~23、17~23、18~23、19~23、20~23、21~23、22~23、11~22、11~21、11~20、11~19、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、高用量のドネペジル以外のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)で同時に処置される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、40~85歳である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、ホーエン・ヤールステージ1~4である、先行請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、ホーエン・ヤールステージ2またはホーエン・ヤールステージ3である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩が、皮下注射により投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、2mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、または90mgの用量で投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、40mgまたは70mgの用量で投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、40mgの用量で投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、70mgの用量で投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、26週間以上投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者の機能的または認知能力の低下を遅らせる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者の認知力の低下を遅らせる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者の認知力を改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性の低下を遅らせる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性を改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記低下の減速または前記改善が、前記処置を少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間投与した後に決定される、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
認知能力が、13項目のアルツハイマー病評価スケール-認知サブスケール(ADAS-Cog
13)を使用して、前記式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与前後の前記患者のスコアを決定することにより評価される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
認知能力が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に評価される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ADAS-Cog
13の低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ADAS-Cog
13に対する効果の発生が、前記処置開始後2週間までに、または4週間までに、または6週間までに、または8週間までに、または10週間までに、または12週間までに、または14週間までに、または16週間までに、または18週間までに、または20週間までに、または22週間までに、または24週間までに、または26週間までに開始する、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
ADAS-Cog
13に対する前記効果が、前記処置終了後の少なくとも2週間または少なくとも4週間維持される、請求項38~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
Clinician Global Impression of Change(CGI-C)スコアの低下率を低減さるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項44または請求項45に記載の方法。
【請求項47】
Clinician Global Impression of Severity(CGI-S)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項47または請求項48に記載の方法。
【請求項50】
Alzheimer’s Disease Cooperative Study-日常生活活動、23項目バージョン(ADCS-ADL23)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
運動障害疾患学会統一パーキンソン病評価スケール(MDS-UPDRS)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
MDS-UPDRS、パートIスコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
MDS-UPDRS、パートI、ドメイン1.2、1.5、及び/または1.8スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項53~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項53~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
Caregiver Global Impression of Change(CaGI-C)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項58または請求項59に記載の方法。
【請求項61】
非運動症状スケール(NMSS)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
NMSSドメイン2及び/またはドメイン4スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項61または請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項61~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項65または請求項66に記載の方法。
【請求項68】
統制発語連合検査(COWAT)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者のスコアを決定することにより評価される、請求項68または請求項69に記載の方法。
【請求項71】
ERP P300潜時の改善に持続性を提供する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記処置開始後少なくとも30週間、ERP P300潜時の改善に持続性を提供する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ERP P300値の迅速な改善または正規化を提供する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
ERP P300潜時値の迅速な改善または正規化を提供する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
処置から少なくとも26週間で効果をある程度維持しながら、ERP P300潜時値の迅速な改善または正常化をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
ERP P300潜時値の迅速な改善または正常化を提供し、処置から少なくとも26週間で維持される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
事象関連電位(ERP)P300潜時を改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記改善または正常化が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項71~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記患者の非運動症状の低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記非運動症状が、妄想、無感情、幻覚、日中の眠気、及び/またはうつ病を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項79または請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者の症状(複数可)を決定することにより評価される、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記患者の運動症状の低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記低下率の低減、安定化、または改善が、前記処置開始前と、前記処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に前記患者の症状(複数可)を決定することにより評価される、請求項83または請求項84に記載の方法。
【請求項86】
許容可能な安全性及び忍容性プロファイルを有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
一般に安全で忍容性が良好である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
悪心、嘔吐、または振戦の増加に関連しない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
パーキンソン病のために投与される薬物と薬物間相互作用を生じない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
QT間隔を延長しない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記式A19の化合物のナトリウム塩を投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記式A19の化合物の一ナトリウム塩を投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
ATH-1017を投与することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記患者が、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)を投与されていない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記患者が、過去にAChEIを投与されており、好ましくは、前記化合物の投与の少なくとも4週間前にAChEI療法を中止した、請求項1~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記患者が、AChEIで同時に処置されない、請求項1~21及び23~95のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーキンソン病認知症及びレビー小体型認知症を含む、パーキンソン病及び/またはレビー小体型疾患または障害を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、姿勢の不安定性、他のより微妙な運動機能の範囲、及び多くの非運動機能に加えて、運動緩慢、安静時振戦、及び固縮からなる運動障害を特徴とする一般的な神経変性疾患である(Kalia、2015)。PDの臨床診断は、検証された基準に従う(Postuma、2015)。世界的には、PDの有病率は、1000人に1~2人の範囲であり、年齢と共に増加しており;60歳を超える人口の1%が、PDに罹患している(Tysnes、2017)。PDの有病率は、1990年~2016年に2倍以上に増加している(Rocca、2018)。生活の質スコアと非運動症状の間には、有意な相関関係がある(Duncan、2014)。PD認知症(PDD)の有病率は、30%近くであり、発病率は、対照と比較して4~6倍増加している。累積有病率は、非常に高く;10年以上生存したPD患者の少なくとも75%が、認知症を発症することになる。さらに、軽度認知障害(MCI)は、疾患の発症時であっても一般的であり、認知症までの期間の短縮と関連している(Aarsland、2010a;Hely、2008)。発表時点で、PDを有する者の25%が、軽度認知障害を示す(Aarsland、2010b)
【0003】
PD、PDD、及びレビー小体型認知症(DLB)は、レビー小体型障害と呼ばれる包括的な用語に分類されている(Lippa、2007)。DLBは、解剖時のレビー小体病理を特徴とし、これは、PD及びPDDにも見られるが、DLB、PD、及びPDDを互いに区別する明確な病理学的基準はない。一般に、DLB及びPDDは、症状の順序により臨床的に区別される。1年の運動パーキンソン症候群の前に、同時に、または以内に、認知症が発生した場合、DLBと診断され;PD診断が確立されてから1年以上後に、認知症が発生した場合、PDDと診断される(Emre、2007)。
【0004】
PDDは、進行性の障害であり、患者毎に、かなりのばらつきがある。実質上、PDを有する者は全員、軽度認知障害から認知症に及ぶ、ある程度の認知欠損を経験する。PDDと診断された患者は、一般集団の者と比較して平均余命を大幅に低減させている(Buter、2008)。
【0005】
PDDのような複雑な中枢神経系(CNS)障害が、単一の病理経路により引き起こされる可能性が低いことを示唆する証拠が増えており;それらは、遺伝学、年齢、及び環境に関連する多因子相互作用の結果である可能性が高い。重要な神経栄養因子系(HGF/MET)の薬理学的刺激は、神経変性を停止し、神経再生を促進し得る。神経栄養因子は、既存のニューロンを保護し、シナプス形成を促進し、ニューロンの成長を刺激し、再生機序を誘導することにより、PDDを含む神経変性により引き起こされる認知症の処置における有望な治療標的である。神経栄養系の薬理学的刺激は、炎症を軽減し脳血流を改善することにより、神経変性を直接標的にし、認知力を改善し、複数の態様の疾患に対処することにより、PDDの全ての段階を処置する可能性がある(Funakoshi、2011)。神経変性障害における神経栄養因子の治療の将来性は、脳への効率的且つ非侵襲的な送達の欠如により妨げられている。主に、アデノ随伴ウイルスベクターを使用した遺伝子治療方策が開発されており、PDD病患者の治療可能性について臨床的に評価されている。これらの方策は、限られた脳への曝露、長期処置にわたる制御不能な投与、及び潜在的な免疫合併症を含む遺伝子送達及び形質導入に関連する課題により大きく妨げられている(Piguet、2017)。
【0006】
従って、血液脳関門を通過して脳の全ての領域に侵入することが可能な小分子アプローチは、神経栄養因子を標的として神経変性障害を処置するための優れた治療方策を提示する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、いくつかの実施形態では、パーキンソン病認知症を処置する方法を提供する。
実施形態1.
パーキンソン病(PD)及び/またはレビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態2.
パーキンソン病認知症(PDD)を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態3.
レビー小体型認知症(DLB)を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態4.
パーキンソン病(PD)に関連する軽度~中等度の認知症を処置する方法であって、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態5.
PDD及び/またはDLBと診断された患者における事象関連電位(ERP)P300潜時を改善する方法であって、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態6.
PDD及び/またはDLBと診断された患者の認知力の低下を遅らせるか、または認知力を改善する方法であって、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態7.
PDD及び/またはDLBと診断された患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性の低下を遅らせるか、または日常生活活動を行う能力及び言語流暢性を改善する方法であって、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態8.
PDD及び/またはDLBと診断された患者の機能的または認知能力の低下を遅らせる方法であって、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化8】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態9.
PDD及び/またはDLBと診断された患者の臨床的低下を遅らせる方法であって、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化9】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態10.
PDD及び/またはDLBと診断された患者の実行記憶機能を改善する方法であって、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物
【化10】
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
実施形態11.
認知症を処置することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.
処置することが、認知症の1つ以上の症状を改善することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13.
処置することが、運動障害の1つ以上の症状を改善することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14.
患者が、PDDと診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.
患者が、レビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)と診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16.
患者が、特発性パーキンソン病の可能性、またはレビー小体型疾患もしくは障害(複数可)(LBD)の可能性があると診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態17.
患者が、少なくとも1年間、特発性パーキンソン病の可能性またはLBDの可能性があると診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態18.
患者が、パーキンソン病と診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19.
患者が、少なくとも1年間、PDと診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20.
患者が、LBDの可能性を含むPDDと診断されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21.
患者のMOCAスコアが、A19の化合物による処置の開始前に、11~23、12~23、13~23、14~23、15~23、16~23、17~23、18~23、19~23、20~23、21~23、22~23、11~22、11~21、11~20、11~19、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12である、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態22.
患者が、高用量のドネペジル以外のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)で同時に処置される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態23.
患者が、40~85歳である、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態24.
患者が、ホーエン・ヤールステージ1~4である、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態25.
患者が、ホーエン・ヤールステージ2またはホーエン・ヤールステージ3である、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26.
式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩が、皮下注射により投与される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27.
式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、2mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、または90mgの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28.
式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、40mgまたは70mgの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29.
式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、40mgの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30.
式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、70mgの用量で投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.
式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩を、26週間以上投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32.
患者の機能的または認知能力の低下を遅らせる、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33.
患者の認知力の低下を遅らせる、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34.
患者の認知力を改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態35.
患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性の低下を遅らせる、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36.
患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性を改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37.
低下の減速または改善が、処置を少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間投与した後に決定される、実施形態32~36のいずれか1つに記載の方法。
実施形態38.
認知能力が、13項目のアルツハイマー病評価スケール-認知サブスケール(ADAS-Cog
13)を使用して、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与前後の患者のスコアを決定することにより評価される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39.
認知能力が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に評価される、実施形態38に記載の方法。
実施形態40.
ADAS-Cog
13の低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態40に記載の方法。
実施形態42.
ADAS-Cog
13に対する効果の発生が、処置開始後2週間までに、または4週間までに、または6週間までに、または8週間までに、または10週間までに、または12週間までに、または14週間までに、または16週間までに、または18週間までに、または20週間までに、または22週間までに、または24週間までに、または26週間までに開始する、実施形態38~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43.
ADAS-Cog
13に対する効果が、処置終了後の少なくとも2週間または少なくとも4週間維持される、実施形態38~42のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44.
Clinician Global Impression of Change(CGI-C)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態44に記載の方法。
実施形態46.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態44または実施形態45に記載の方法。
実施形態47.
Clinician Global Impression of Severity(CGI-S)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態48.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態47に記載の方法。
実施形態49.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態47または実施形態48に記載の方法。
実施形態50.
Alzheimer’s Disease Cooperative Study-日常生活活動、23項目バージョン(ADCS-ADL23)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態51.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態50に記載の方法。
実施形態52.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態50または実施形態51に記載の方法。
実施形態53.
運動障害疾患学会統一パーキンソン病評価スケール(MDS-UPDRS)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態54.
MDS-UPDRS、パートIスコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態55.
MDS-UPDRS、パートI、ドメイン1.2、1.5、及び/または1.8スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態56.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態53~55のいずれか1つに記載の方法。
実施形態57.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態53~56のいずれか1つに記載の方法。
実施形態58.
Caregiver Global Impression of Change(CaGI-C)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態59.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態58に記載の方法。
実施形態60.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態58または実施形態59に記載の方法。
実施形態61.
非運動症状スケール(NMSS)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態62.
NMSSドメイン2及び/またはドメイン4スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態63.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態61または実施形態62に記載の方法。
実施形態64.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態61~63のいずれか1つに記載の方法。
実施形態65.
ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態66.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態65に記載の方法。
実施形態67.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態65または実施形態66に記載の方法。
実施形態68.
統制発語連合検査(COWAT)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態69.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態68に記載の方法。
実施形態70.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される、実施形態68または実施形態69に記載の方法。
実施形態71.
ERP P300潜時の改善に持続性を提供する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72.
処置開始後少なくとも30週間、ERP P300潜時の改善に持続性を提供する、実施形態71に記載の方法。
実施形態73.
ERP P300値の迅速な改善または正規化を提供する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態74.
ERP P300潜時値の迅速な改善または正規化を提供する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態75.
処置から少なくとも26週間で効果をある程度維持しながら、ERP P300潜時値の迅速な改善または正常化をもたらす、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76.
ERP P300潜時値の迅速な改善または正常化を提供し、処置から少なくとも26週間で維持される、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態77.
事象関連電位(ERP)P300潜時を改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態78.
改善または正常化が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態71~77のいずれか1つに記載の方法。
実施形態79.
患者の非運動症状の低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態80.
非運動症状が、妄想、無感情、幻覚、日中の眠気、及び/またはうつ病を含む、実施形態79に記載の方法。
実施形態81.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態79または実施形態80に記載の方法。
実施形態82.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者の症状(複数可)を決定することにより評価される、実施形態79~81のいずれか1つに記載の方法。
実施形態83.
患者の運動症状の低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態84.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる、実施形態83に記載の方法。
実施形態85.
低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者の症状(複数可)を決定することにより評価される、実施形態83または実施形態84に記載の方法。
実施形態86.
許容可能な安全性及び忍容性プロファイルを有する、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態87.
一般に安全で忍容性が良好である、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態88.
悪心、嘔吐、または振戦の増加に関連しない、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態89.
パーキンソン病のために投与される薬物と薬物間相互作用を生じない、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態90.
QT間隔を延長しない、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態91.
式A19の化合物のナトリウム塩を投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態92.
式A19の化合物の一ナトリウム塩を投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態93.
ATH-1017を投与することを含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態94.
患者が、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)を投与されていないか、もしくは過去にAChEIを投与されているか、または過去にAChEIを受けており、化合物の投与の少なくとも4週間前に中止されている、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
実施形態95.
患者が、AChEIで同時に処置されない、実施形態1~22及び23~94のいずれか1つに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ATH-1017は、パーキンソン病認知症(PDD)及び/またはレビー小体型認知症(DLB)を含む、レビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)の実験的処置であり、皮下(SC)注射用の滅菌溶液として製剤されている。ATH-1017は、プロドラッグであり、SC注射後の血漿中で活性薬物ATH-1001に急速に変換される。ATH-1017は、水性ビヒクルでのSC投与を可能にするATH-1001の水溶性プロドラッグとして開発された。活性薬物ATH-1001は、脳内で、肝細胞増殖因子(HGF)受容体及びそのチロシンキナーゼMETのアゴニストとして作用する。HGF/MET系は、神経変性を処置し、PDDなどのLBDの認知能力、行動能力、機能能力、及び運動能力を回復するための新しい治療標的を提示する。
【0009】
定義及び一般パラメータ
本明細書で使用される場合、以下の用語及び語句は、一般に、以下に記載の意味を有するものとする。但し、それらが使用される文脈が、別の意味を示す場合を除く。
【0010】
【0011】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に対する実施形態を含む(及び記載する)。特定の実施形態では、「約」という用語は、表示量±10%を含む。他の実施形態では、「約」という用語は、表示量±5%を含む。特定の他の実施形態では、「約」という用語は、表示量±1%を含む。また、「約X」という用語は、「X」の記載を含む。また、単数形「a」及び「the」は、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「化合物(the compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含み、「アッセイ(the assay)」への言及は、当業者らに既知の1つ以上のアッセイ及びその等価物への言及を含む。
【0012】
本明細書に例示的に記載された本開示は、本明細書に具体的に開示されていない、任意の要素(複数可)、制限(複数可)の不存在下で適切に実施され得る。従って、例えば、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」などの用語は、制限なく拡大的に解釈されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、示され記載された特徴またはそのいくつかのいずれかの同等物を除外する、そのような用語及び表現の使用において意図はないが、特許請求された本開示の範囲内で様々な修正が可能であることが認識がされる。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、「プロドラッグ」の形態をとり得る。「プロドラッグ」という用語は、医薬品分野では、人体に投与される時、何らかの化学的または酵素的経路に従って生物学的に活性な親薬物に変換される、薬物の生物学的に不活性な誘導体として定義される。プロドラッグの例としては、エステル化されたカルボン酸が挙げられる。
【0014】
本開示の化合物は、薬学的に許容される塩の形態をとり得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される非毒性の塩基または酸、例えば、無機塩基または酸と、有機塩基または酸、から調製される塩を指す。本開示の化合物が1つ以上の酸性基または塩基性基を含む場合、本開示は、それらの対応する薬学的または毒物学的に許容される塩、特に、それらの薬学的に利用可能な塩も含む。従って、酸性基を含有する本開示の化合物は、これらの基上に存在する可能性があり、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩として、本開示に従って使用することができる。そのような塩のより正確な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはアンモニアもしくは有機アミン、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノ酸、または当業者らに既知の他の塩基との塩が挙げられる。1つ以上の塩基性基、すなわち、プロトン化することができる基、を含有する本開示の化合物は、無機酸または有機酸との付加塩の形態で存在する可能性があり、本開示に従って使用することができる。
【0015】
本開示は、活性成分として本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0016】
「医薬組成物」は、1つ以上の活性成分、及び担体を構成する1つ以上の不活性成分、ならびに、任意の2つ以上の成分の組み合わせ、複合体形成、もしくは凝集から、または成分のうちの1つ以上の解離から、または成分のうちの1つ以上の他のタイプの反応もしくは相互作用から、直接または間接的に生じる任意の製品を意味する。従って、本開示の医薬組成物は、本開示の少なくとも1つの化合物及び薬学的に許容される担体を混合することにより作成される任意の組成物を包含し得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、開示された化合物またはその使用に有害ではない賦形剤または薬剤、例えば、溶媒、希釈剤、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質の組成物を調製する、そのような担体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である(例えば、以下を参照:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Co.,Philadelphia,PA 17th Ed.(1985);及びModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.3rd Ed.(G.S.Banker & C.T.Rhodes,Eds.)。
【0018】
「治療有効量」及び「有効量」という用語は、互換的に使用され、1回以上の用量で、そのような処置を必要とする患者(例えば、ヒト)に投与される場合、本明細書で定義される処置を行うのに十分な化合物の量を指す。治療有効量は、患者、処置される疾患、患者の体重及び/または年齢、疾患の重症度、または資格のある製剤化者もしくは介護者により決定される投与方法に応じて変動する。
【0019】
「処置」または「処置すること」という用語は、以下の目的で化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを意味する:(i)疾患の発症を遅らせること、つまり、疾患の臨床症状を発症させないこと、もしくはその発症を遅延させること;(ii)疾患を阻害すること、つまり、臨床症状の発症を阻止すること;及び/または、(iii)疾患を軽減すること、つまり、臨床症状またはその重症度の退行を引き起こすこと。
【0020】
ATH-1017及び関連化合物
ATH-1017は、A19の式を有する化合物の薬学的に許容される塩である:
【化11】
。
【0021】
本明細書で使用される場合、及びATH-1017の特定の薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物への具体的な言及がない場合、任意の投薬量は、例えば、ミリグラムで表されるか、または重量%で表されるかに関わらず、ATH-1017の量、すなわち、以下の量、を指すものとして解釈されるべきである:
【化12】
。
【0022】
従って、例えば、「40mgのATH-1017またはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物」への言及は、40mgのA19遊離酸と同じ量のATH-1017を提供するATH-1017またはその薬学的に許容される塩及び/または溶媒和物の量を意味する。
【0023】
A19の非限定例の薬学的に許容される塩としては、以下が挙げられる:
【化13】
及び
【化14】
。
【0024】
別途指示のない限り、ATH-1017は、以下に示される、A19の一ナトリウム塩を指す:
【化15】
。
【0025】
A19の化合物及びその薬学的に許容される塩、例えば、ATH-1017は、PCT公開第WO2017/210489A1号に記載されているような、当業者らに既知の方法を使用して合成及び特性評価され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、ATH-1017は、皮下投与用に製剤化される。そのようないくつかの実施形態では、ATH-1017は、40mg/mLのATH-1017または70mg/mLのATH-1017を1mL含有するプレフィルドシリンジで提供される。いくつかの実施形態では、ATH-1017は、10mMのリン酸ナトリウムを含む溶液中にある。
【0027】
パーキンソン病及び/またはレビー小体型疾患または障害(複数可)の処置方法
パーキンソン病認知症(PDD)及び/またはレビー小体型認知症(DLB)を含む、パーキンソン病(PD)及び/またはレビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)を処置する方法が本明細書で提供され、方法は、患者に、治療的有効量のATH-1017を投与することを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、パーキンソン病(PD)及び/またはレビー小体型疾患または障害(複数可)(LBD)を処置する方法が提供され、方法は、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、パーキンソン病認知症(PDD)を処置する方法が提供され、方法は、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、レビー小体型認知症(DLB)を処置する方法が提供され、方法は、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、軽度~中等度のパーキンソン病(PD)と関連する認知症を処置する方法が提供され、方法は、それを必要とする患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLBと診断された患者における事象関連電位(ERP)P300潜時を改善する方法が提供され、方法は、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0033】
事象関連電位(ERP)P300潜時は、認知力と高度に相関する作業記憶処理速度及び実行機能の機能的尺度である。いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLB対象におけるATH-1017の投与は、P300潜時を有意に改善する。
【0034】
いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLBと診断された患者の認知力の低下を遅らせるか、または認知力を改善する方法が提供され、方法は、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLBと診断された患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性の低下を遅らせるか、または日常生活活動を行う能力及び言語流暢性を改善する方法が提供され、方法は、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLBと診断された患者の機能的または認知能力の低下を遅らせる方法が提供され、方法は、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLBと診断された患者の臨床的低下を遅らせる方法が提供され、方法は、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、PDD及び/またはDLBと診断された患者の実行記憶機能を改善する方法が提供され、方法は、患者に、1日当たり2~90mgの式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017、を投与することを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法は、認知症を処置することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、認知症の1つ以上の症状を改善することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、運動障害の1つ以上の症状を改善することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、患者は、PDDと診断されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、患者は、LBDと診断されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、患者は、特発性パーキンソン病の可能性、またはレビー小体型疾患もしくは障害(複数可)(LBD)の可能性があると診断されている。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1年間、特発性パーキンソン病の可能性またはLBDの可能性があると診断されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、患者は、パーキンソン病と診断されている。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1年間、PDと診断されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、患者は、LBDの可能性を含むPDDと診断されている。
【0045】
いくつかの実施形態では、患者のモントリオール認知評価(MOCA)スコアが、A19の化合物による処置の開始前に、11~23、12~23、13~23、14~23、15~23、16~23、17~23、18~23、19~23、20~23、21~23、22~23、11~22、11~21、11~20、11~19、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12である。
【0046】
いくつかの実施形態では、患者は、高用量のドネペジル以外のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)で同時に処置される。いくつかの実施形態では、患者は、AChEIで同時に処置されない。
【0047】
いくつかの実施形態では、患者は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)を投与されていない。いくつかの実施形態では、患者は、過去にAChEIを投与された。いくつかの実施形態では、患者は、式A19の化合物の投与の少なくとも4週間前にAChEI療法を中止した。
【0048】
いくつかの実施形態では、患者は、40~85歳である。
【0049】
いくつかの実施形態では、患者は、ホーエン・ヤールステージ1~4である。いくつかの実施形態では、患者は、ホーエン・ヤールステージ2またはホーエン・ヤールステージ3である。
【0050】
いくつかの実施形態では、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017は、皮下注射で投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩は、2mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、または90mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩は、40mgまたは70mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017は、40mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017は、70mgの用量で投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、式A19の化合物のナトリウム塩、例えば、式A19の化合物の一ナトリウム塩、例えば、ATH-1017は、26週間以上投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、患者の機能的または認知能力の低下を遅らせるか、または改善する。いくつかの実施形態では、処置方法は、患者の認知力の低下を遅らせるか、または改善する。いくつかの実施形態では、処置方法は、患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性の低下を遅らせるか、または改善する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、患者の認知力を改善する。いくつかの実施形態では、処置方法は、患者の日常生活活動を行う能力及び言語流暢性を改善する。
【0055】
いくつかの実施形態では、低下の減速または改善が、処置を少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間投与した後に決定される。
【0056】
患者の認知能力を評価するには、様々な方法が有用である。
【0057】
いくつかの実施形態では、認知能力は、13項目のアルツハイマー病評価スケール-認知サブスケール(ADAS-Cog13)を使用して、式A19の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与前後の患者のスコアを決定することにより評価される。いくつかの実施形態では、認知能力が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に評価される。いくつかの実施形態では、処置方法は、ADAS-Cog13の低下率を低減させるか、安定化させるか、もしくは改善する。いくつかの実施形態では、ADAS-Cog13に対する効果の発生が、処置開始後2週間までに、または4週間までに、または6週間までに、または8週間までに、または10週間までに、または12週間までに、または14週間までに、または16週間までに、または18週間までに、または20週間までに、または22週間までに、または24週間までに、または26週間までに開始する。いくつかの実施形態では、ADAS-Cog13に対する効果は、処置終了後少なくとも2週間または少なくとも4週間維持される。
【0058】
いくつかの実施形態では、処置方法は、Clinical Global Impression of Change(CGI-C)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0059】
いくつかの実施形態では、処置方法は、Clinical Global Impression of Severity(CGI-S)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0060】
いくつかの実施形態では、処置方法は、Alzheimer’s Disease Cooperative Study-日常生活活動、23項目バージョン(ADCS-ADL23)スコアの低下率を低減させるか、安定させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0061】
いくつかの実施形態では、処置方法は、運動障害疾患学会統一パーキンソン病評価スケール(MDS-UPDRS)スコア、例えば、MDS-UPDRS、パートIスコア、例えば、MDS-UPDRS、パートI、ドメイン1.2、1.5、及び/または1.8スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0062】
いくつかの実施形態では、処置方法は、Caregiver Global Impression of Change(CaGI-C)スコアの低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0063】
いくつかの実施形態では、処置方法は、NMSSドメイン2及び/またはドメイン4スコアなどの非運動症状スケール(NMSS)スコアの低下率を低減させるか、安定させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0064】
いくつかの実施形態では、処置方法は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアにおいて低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0065】
いくつかの実施形態では、処置方法は、統制発語連合検査(COWAT)スコアにおいて低下率を低減させるか、安定化させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0066】
いくつかの実施形態では、処置方法は、例えば、処置開始の少なくとも30週間後に、ERP P300潜時の改善の持続性を提供する。いくつかの実施形態では、処置方法は、ERP P300値の迅速な改善または正規化、例えば、ERP P300潜時値の迅速な改善または正規化、例えば、処置から少なくとも26週間で効果がある程度維持されるERP P300潜時値の迅速な改善または正規化、例えば、処置から少なくとも26時間で維持されるERP P300潜時値の迅速な改善または正常化、を提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、処置方法は、事象関連電位(ERP)P300潜時を改善する。いくつかの実施形態では、処置方法は、処置の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後までに、ERP P300潜時値の改善または正常化を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、処置方法は、患者の非運動症状、例えば、妄想、無感情、幻覚、日中の眠気、及び/またはうつ病、の低下率を低減させるか、安定させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0069】
いくつかの実施形態では、処置方法は、患者の運動症状の低下率を低減させるか、安定させるか、または改善する。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始後少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間までに生じる。いくつかの実施形態では、低下率の低減、安定化、または改善が、処置開始前と、処置開始の少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも18週間、少なくとも20週間、少なくとも22週間、少なくとも24週間、または少なくとも26週間後に、患者のスコアを決定することにより評価される。
【0070】
いくつかの実施形態では、処置方法は、許容可能な安全性及び忍容性プロファイルを有する。いくつかの実施形態では、処置方法は、一般に安全であり、忍容性が良好である。
【0071】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、方法は、皮下注射によりATH-1017を投与することを含む。
【0072】
本明細書で提供される薬物の医薬組成物は、投与経路に適した形態であってよい。製剤は、単位剤形で都合よく提供することができ、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかで調製され得る。手法及び製剤化は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)に記載されている。
【0073】
本開示の医薬組成物は、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液などの滅菌注射用調製物の形態をとってもよい。この懸濁液は、上述している好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であってよい。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンガー液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油は、従来、溶媒または懸濁媒体として使用され得る。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の刺激の少ない不揮発性油が使用され得る。さらに、例えば、オレイン酸などの脂肪酸は、同様に、注射可能薬物の調製に使用され得る。
【0074】
非経口投与に適した製剤は、水性及び非水性の滅菌注射液を含み、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質;ならびに、懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液を含有してもよい。
【0075】
製剤は、単位用量または複数回用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提供することができ、使用直前に、滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時の注射液及び懸濁液は、上述の種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製される。好ましい単位用量製剤は、本明細書で上に列挙されるような1日用量もしくは単位1日部分用量(sub-dose)、またはその好適な部分の活性成分を含有するものである。
【0076】
単一剤形を生成するために担体物質と組み合わされ得る活性成分の量は、処置される宿主及び皮下注射などの特定の投与様式に応じて変動するであろう。医薬組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するように調製することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ATH-1017は、皮下投与用に製剤化され、40mg/mLのATH-1017または70mg/mLのATH-1017を1mL含有するプレフィルドシリンジで提供される。いくつかの実施形態では、ATH-1017は、10mMのリン酸ナトリウムを含む溶液中にある。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を示すために含まれる。次に続く実施例で開示される手法は、本開示の実施において良好に機能する手法を表し、従って、その実施のための特定の様式を構成すると考えられ得ることを、当業者らは理解すべきである。しかし、本開示に照らして、これらの例が、例示的なものであり、網羅的なものではないことを、当業者らは理解すべきである。開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、依然として、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得る。
【0078】
実施例1:パーキンソン病認知症に罹患している対象におけるATH-1017を評価する臨床研究
A.研究設計の概要
ATH-1017の臨床研究では、健常若年対象に、2、6、20、40、60、及び90mgを単回SC投与すること、ならびに、健常高齢対象に、20、40、60、及び80mgを(SC、OD、連続9日間以上)複数回投与すること、ならびに、AD対象に、40mg(SC、OD、連続9日間以上)を複数回投与することは、安全で忍容性が高かった。注射部位の反応は、疼痛、そう痒症、または紅斑を含み、本質的には軽度であり、特別な治療なしで治癒した。非臨床研究で特定された肝毒性の潜在的なリスクは、ヒト研究では観察されていないが、本研究では厳密に監視されることになる。現在までに、CNSに特有の有害事象は、ヒトでは観察されていない。
【0079】
これは、第2相の多施設無作為化二重盲検プラセボ対照並行群であり、用量設定試験は、レビー小体型認知症(DLB)の可能性を含むPDDの臨床診断(Postuma、2015;Emre、2007;McKeith、2017)を受け、且つ、スクリーニング時のモントリオール認知評価(MOCA)スコアが11~23である対象において、40mg/日のATH-1017及び70mg/日のATH-1017をプラセボと比較する。研究は、米国と、任意に、カナダの合計約15のセンターで実施される。対象及びその介護者は、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名する必要があり、スクリーニング期間中に選択/除外基準に照らして評価され;全ての適格な対象は、グルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子型について検査される選択肢を有することになる。全ての選択/除外基準を満たす対象は、2回の別々のベースライン来院で、ベースラインERP P300評価を受けることになる。最初のベースライン評価(来院2a、ベースライン前、-10日目~-3日目)で、ERP P300が、来院の完了直後に、品質チェックのためにアップロードされる。2回目のベースライン来院(来院2b、ベースライン、1日目)時、ベースライン前来院の10日以内に、適格な対象は、1:1:1の比で、3つの並行群のうちの1つ(40mg/日のATH-1017または70mg/日のATH-1017またはプラセボのいずれか)に無作為化される。このベースライン来院(来院2b)で、対象は、投与前ベースライン及び投与後のERP P300を受ける。
【0080】
治験薬は、好ましくは、日中に、1日1回(OD)皮下(SC)注射により投与され;対象は、先行投与から8時間以内に別の投与を行ってはならない。治験薬の最初のSC注射は、現場で監督下で実施される。対象は、その後の来院日に治験薬の投与を控えるべきであり;研究薬の投与は、これらの来院時に施設スタッフの監督下、現場で行われる。各対象は、監督するか、または、必要に応じて、全てのプロトコール要件に従って、治験薬を投与し、及び研究全体を通して対象の状態を評価する責任を自発的に受け入れる主要介護者を有する必要がある。二重盲検処置期間中、来院は、1日目以降の2、6、12、16、20、及び26週目に行われ、安全性の追跡来院は、30週目の二重盲検期間の完了の4週間後に予定されている。最初の投与の完了後の1日目に、対象は、処置後の臨床観察のため現場に2時間留まる。ADAS-Cog13、MMSE、及びCOWAT評価は、最初のベースライン評価(来院2b)で実施されたのとほぼ同じ時間(午前中の来院時)に行われる。対象は、ベースライン後のERP P300を来院時(投与前または/または投与後の時点)に受ける。
【0081】
対象は、継続的な介護の必要なく、自宅、高齢者向け住宅環境、または施設環境で生活し得、生活条件の変化(例えば、施設への収容、別の都市への引っ越しなど)または試用期間への参加中に主要介護者の変更を経験する可能性が低いようにするべきである。研究の終了は、安全性追跡来院日、来院9/30週目として定義される。来院8より前に終了した対象は、来院8/早期終了(ET)と同じ評価を完了することになる。
【0082】
独立したデータ安全性監視委員会は、研究対象の安全を確保するために、研究全体を通して非盲検安全性データ(AE、実験的評価、ECGなど)の定期的なレビュー及び評価を実施する。
【0083】
ATH-1017(プロドラッグ)及びATH-1001(劇薬)の血漿ATH濃度の分析のために、予定された来院時に採血が行われる。
【0084】
B.対象集団
研究は、最大約75人の対象を、1:1:1の比で、40mgのATH-1017群、70mgのATH-1017群、及びプラセボ群に無作為化する。
【0085】
選択基準
研究に参加する対象は、以下の選択基準を全て満たさなければならない。
1)インフォームドコンセントへの署名時点で40~85歳(端点を含む)。
2)少なくとも1年間、特発性パーキンソン病の可能性(Postuma、2015)またはDLBの可能性(McKeith、2017)と確定診断されている対象。
3)報告されており、好ましくは、対象の医療記録;実例を含む介護者報告書に文書化されている、DLBの可能性(McKeith、2017)を含む、Emre、2007に従って診断された認知症(PDD)が容認できる。
4)スクリーニング来院時のMOCAスコアが11~23(端点を含む)。
5)スクリーニング時の肥満度指数(BMI)が女性で16.0~35.0kg/m2、男性で18.0~35.0kg/m2。BMIが許容BMI範囲外であるが、16~37kg/m2の対象は、スポンサーの事前の同意がある場合にのみ登録してもよい。
6)妊娠の可能性のある女性対象は、妊娠していてはならず(すなわち、無作為化前に陰性の尿妊娠結果が必要となる)、授乳中であってはならない。
7)妊娠の可能性のある男性及び女性の対象と、そのパートナーは、パートナーが妊娠の可能性がない場合を除き、追跡期間を含む研究期間中、二重障壁の避妊方法を使用することに同意しなければならない。妊娠の可能性のない女性対象(すなわち、永久不妊、閉経後)に、参加資格がある。
8)処置を監督するか、または、必要に応じて、全てのプロトコール要件に従って、治験薬を投与し、及び研究全体を通して対象の状態を評価する責任を自発的に受け入れる信頼でき有能な支援者/介護者。支援者/介護者は、用量投与及び/または観察のために、対象者を1日少なくとも1回は見なければならない。
9)ICF及びこのプロトコールに記載されている要件及び制限への準拠を含む、署名されたインフォームドコンセントを与えることが可能な対象。対象が研究者の判断でインフォームドコンセントを与えることが不可能な場合、法定代理人により同意が与えられ得る。
10)a)対象または法定代理人、及び、b)研究の適格性を評価するスクリーニング手順を開始する前を含む、研究関連手順の前に得られている介護者/支援者、からの書面によるインフォームドコンセント。
11)書面による文書は、該当する場合、関連する国及び地域のプライバシー要件に従って取得されている(例えば、健康及び健康研究研究情報の使用及び公開に関する書面による許可)。
12)対象及び介護者/支援者は、研究者に評価される場合、自主的に研究の指示に従うことが可能であり、必要な研究来院を全て完了する可能性が高い。
13)対象は、病歴及び身体的/神経学的検査、バイタルサイン、ECG、及び標準的な臨床検査から研究者に評価される場合、一般に良好な健康状態にある必要がある。
【0086】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす対象は、研究から除外される:
1)修正ホーエン・ヤールステージ5の対象。
2)認知力に影響を与えるか、または認知症の発症と同時に生じ得る、PDDまたはLBD以外の重大な神経疾患の病歴。
3)対象は、PDの処置のために神経外科的処置を受けたことがある、または、そのような手順が、研究期間中に予想もしくは計画される場合。
4)PDDまたはDLB以外の認知症プロセスを説明する、他の任意の重大な異常を示す脳核磁気共鳴画像法(MRI)スキャンの履歴。注記:MRIスキャンは、PDの最初の診断以降に行われていない場合、新たなMRIスキャンが必要であり;過去12ヶ月に対象の臨床形態に介在する変化があった場合、反復MRIスキャンが必要となる。CTスキャンは、MRI安全でない心臓ペースメーカーを装着している対象、または他の関連する医学的理由により、医療監視の承認があれば許容される。
5)原因不明の意識喪失またはてんかん発作(発熱性でない限り)の病歴。
6)提供された機器で検査される場合、聴覚ERP P300評価に使用される2つの異なるトーンが聞き取れないか、または区別できず;補聴器を装着している対象は、聴覚検査中は補聴器を外さなければならない。
7)重度の大うつ病性障害の現在の症状と診断(スクリーニング時のGDSスコア[15項目スケール]>7)。医療監視との協議では、GDSスコアが8~10(端点を含む)の対象は、スコアの増加が、大うつ病ではなく、パンデミック及びその制限に関連する特定の領域により引き起こされている場合、研究への参加を考慮することができる。
8)過去12ヶ月以内のスクリーニング時及び1日目のC-SSRSに基づいた自殺念慮で定義される重大な自殺リスク(すなわち、質問4もしくは5に対する「はい」の回答または任意の特定の行動)。
9)重度の精神病(精神障害の診断及び統計マニュアル、[第5版;DSM-5;米国精神医学会、2013]による)は、以前は安定していたドーパミン作動性療法を低減させる必要などの理由のために、対象が研究者の判断で研究手順を完了する能力を妨げる。
10)中等度または重度の薬物乱用障害(DSM-5による;米国精神医学会、2013)。
11)研究者の判断で臨床的に関連がある場合、甲状腺機能低下症、糖尿病、低血圧、または高血圧を含む未処置の状態。処置される場合、スクリーニング前の少なくとも2ヶ月間、処置が安定し、症状がなくなっていなければならない。
12)臨床的に重要な血清電解質(カリウム、ナトリウム、マグネシウム)の異常。処置される場合、スクリーニング前の少なくとも30日間、安定した処置されなければならない。
13)あらゆる種類の活動性、急性、または慢性の感染症。
14)過去6ヶ月以内の心筋梗塞もしくは不安定狭心症、またはスクリーニング前5年以内の複数の心筋梗塞の病歴。
15)臨床的に重大な(研究者の判断で)不整脈(心房細動を含む)、心筋症、または心臓伝導障害(注記:ペースメーカーは許容される)。
16)対象は、降圧剤により制御されていない高血圧症(3回の連続測定による仰臥位平均拡張期血圧>95mmHg)、または研究者の判断による症候性低血圧症のいずれかに罹患している。
17)限定されないが、男性の場合450ミリ秒以上、女性の場合470ミリ秒以上である、フリデリシアの式(QTcF)値を使用して確認された修正QT間隔を含む、スクリーニング時の臨床的に重大なECG異常(研究者が判断)。境界線にあるQTcF読み値の場合、T波及びU波が重なっているか、または接続されている場合、医療監視との協議の中で、適格性を判断するために、手動による読み値が考慮されるべきである。QRS値が120ミリ秒を超える対象では、QTcF値が500ミリ秒未満の対象は、医療監視との協議後に、適格となり得る。
18)B型肝炎(B型肝炎表面抗原[HBsAg])、C型肝炎(抗C型肝炎ウイルス[HCV]抗体)、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)(1型及び2型抗体)の血清学スクリーニングの陽性結果;B型肝炎またはC型肝炎が治癒した過去の陽性結果の履歴は、医療監視との協議後に適格となり得、事前の承認が必要である。
19)年齢、性別、及び体重を考慮したコッククロフトとゴートの式を使用した、45mL/分未満の推定糸球体濾過量(eGFR)の慢性腎臓病;30~44mL/分(端点を含む)のeGFRの中等度~重度の障害を有する対象は、医療監視との協議後に適格となる可能性があり、事前の承認が必要である。
20)正常上限の2倍を超えるか、またはチャイルドピュークラスB及びCのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)による肝障害。
21)研究者の判断で安定している以下の状態を除く、スクリーニング前3年以内の悪性腫瘍:
a)適切に処置された扁平上皮癌及び基底細胞癌、または上皮内扁平上皮癌及び基底細胞癌
b)上皮内前立腺癌。
22)スクリーニングから12ヶ月以内の(研究者の判断による)臨床的に重大な意図的でない体重減少。
23)グレープフルーツまたはグレープフルーツ含有製品の摂取は、治験薬の初回投与(1日目)の最初の7日前から及び研究期間中に禁止されている。
24)Axona及び中鎖トリグリセリド(MCT)などの、認知力に影響を与える可能性のある栄養補助食品及び栄養補給食品は、治験薬の初回投与(1日目)の7日前から及び研究期間中に禁止されている。
25)テトラヒドロカンナビノール(THC)は、治験薬の初回投与(1日目)の4週間前から及び研究期間中に禁止されている。THCを含まないカンナビジオール(CBD)は、許容されるが、局所適用を除いて、来院日には許容されていない。
26)スクリーニング前の4週間以内に禁止されている事前の薬及び併用薬は除外される。許容されている全ての薬剤は、研究全体を通じて用量及びレジメンに関して安定したままであるべきであり;認知力に影響を与える薬剤の場合、別途記載のない限り、スクリーニング前の少なくとも4週間及び研究全体にわたって、用量を安定させなければならない。特定の薬剤の許可に疑問がある場合は、無作為化前に、医療監視に問い合わされたい:
a)任意の形態または投薬量のセレギリン及びトリヘキシフェニジル。
b)あらゆる形態、組み合わせ、または投薬量のメマンチン。
c)23mgのドネペジル。
d)抗精神病薬:対象がスクリーニング前に安定した用量を投与されている場合、低用量(研究者の判断による)が許容される。これらの治療薬がPRNベースで服用される場合、認知機能検査前の朝に服用されるべきでない。
e)トリプトファン栄養補助食品。
f)三環系抗うつ薬、非可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害薬B(MAO-B)、及びS-ケタミン:他の全ての抗うつ薬は、対象がスクリーニング前の少なくとも3ヶ月間継続投与を受けている場合にのみ許容される。
g)高用量の抗不安薬;低用量のベンゾジアゼピンは、研究者の判断で許容されるが、任意の認知評価の前夜には許容されない。
h)鎮静催眠薬;ゾルピデムは、許容される。
i)バルビツール酸塩(良性振戦のために低用量で投与しない限り)
j)ニコチン療法(パッチを含む)、バレニクリン(Chantix)、または類似の治療薬
k)コリン作動性神経伝達に影響を与える末梢作用薬、例えば、オキシブチニン。ソリフェナシンは、対象がスクリーニング前に少なくとも3ヶ月間継続投与を受けている場合に許容される。
l)研究者の判断で、臨床的に免疫抑制用量を摂取する場合の全身免疫抑制剤(注記:アレルギーまたは他の炎症に対する免疫抑制剤の使用、例えば、吸入ステロイド、耳用薬、眼科薬、スキンクリーム、及び関節内注射は許容される)。
m)発作を制御するために服用する場合の抗てんかん薬;他の用途、例えば、神経障害及びむずむず脚が許容される。
n)オピオイド含有鎮痛薬の慢性摂取;PRNの使用は、許容される(但し、認知評価前の72時間以内は許容されない)。
o)鎮静作用のあるH1抗ヒスタミン薬;PRNの使用は許容される(が、いかなる認知評価前の夜は許容されない)。
p)中等度~強度のシトクロムP450 3A4(CYP3A4)阻害薬または誘導薬。
27)治験薬もしくはデバイスの研究に現在登録している、またはスクリーニングから4週間以内、または5半減期のいずれか長い方、またはPDもしくは認知障害の治験薬の場合は、スクリーニングから6ヶ月以内に、治験薬を使用する別の臨床試験に参加したことがある。
28)対象は、ATH-1017医薬品の任意の構成成分に対する既知のアレルギー、またはラテックスに対するアレルギーを有する。
29)対象は、研究者の意見で、対象を重大な危険にさらし得るか、研究結果を混乱させ得るか、または対象の服薬遵守もしくは研究への参加を著しく妨げ得る状態に罹患するか、または状況にある。
【0087】
C.医薬品
40mgのATH-1017のプレフィルドシリンジは、10mMのリン酸ナトリウム及び0.5%のNaClの溶液中の40mg/mLのATH-1017 1.0mLを含有する。70mgのATH-1017のプレフィルドシリンジは、10mMのリン酸ナトリウム溶液中の70mg/mLのATH-1017 1.0mLを含有する。プラセボのプレフィルドシリンジは、それぞれ、10mMのリン酸ナトリウム及び1.1%のNaClの溶液1.0mLを含有する。全ての溶液は、約7.6のpHに調整される。
【0088】
ATH-1017及びプラセボは、皮下投与される。
【0089】
D.評価項目
本研究の主要目的及び評価項目は、以下である:
【0090】
【0091】
【0092】
E.評価方法
スクリーニング評価
1.モントリオール認知評価(MOCA)
MOCAは、軽度認知機能障害の迅速なスクリーニング手段として設計された。それは、様々な認知ドメイン:注意及び集中力、実行機能、記憶、言語、視覚構築スキル、概念的思考、計算、及び見当識を評価する。
【0093】
可能な合計スコアは、30点であり;26以上の最終的な合計スコアが正常とみなされる。
【0094】
MOCAは、スクリーニング時にのみ投与され;11~23(端点を含む)のスコアが、対象の適格基準を満たすために必要とされる。
【0095】
臨床効果の変数
各評価スケールで指定されているように、資格を持ち、訓練を受け、認定された評価者が、研究対象及び/または専任の支援者/介護者に質問表を実施する。評価者のトレーニング及び認定(該当する場合)が、標準化された方法で、行われ、必要に応じて、繰り返されるであろう。
【0096】
ADAS-Cog13、MMSE、COWAT、及びMDS-UPDRS評価は、全ての来院時に、午前中に同じ時間枠で行わなければならない。
【0097】
1.認知変数
アルツハイマー病評価スケール-認知サブスケール、13項目バージョン(ADAS-Cog13)
ADAS-Cog13は、MCI及びADを有する対象の認知症状の変化を測定するように設計される(Mohs、1997)。ADAS-Cog11に存在する標準的な11項目(単語の想起、命令、構成の練習、物体及び指の名前の付け方、観念の練習、見当識、単語の認識、話し言葉の能力、話し言葉の理解、喚語困難、ならびに検査指示の記憶)に加えて、ADAS-Cog13は、遅延単語想起検査及び数字抹消課題を含む。この検査は、9つのパフォーマンス項目及び4つの臨床医評価項目を含み、合計スコアは、0(障害なし)~85(重度の障害)の範囲にある。従って、スコアが高いほど、より重度の認知障害を示す。
【0098】
認知能力の既知の日内変動のために(Hilt、2015)、ADAS-Cog13は、全ての好適な来院のベースライン評価とほぼ同じ時間(午前中)に評価される。
【0099】
ADAS-Cog13評価は、来院2b(ベースライン/1日目)の投与前、及び投与後、ならびに来院3(2週目)、来院5(12週目)、来院7(20週目)、及び来院8/ET(26週目)の投与後に実施される。
【0100】
ミニメンタルステート検査(MMSE)
MMSE(Folstein、1975)は、短い一連の検査で、記憶、見当識、及び実践を評価する全体的な認知機能の広く使用される検査である。スコアは、0~30であり、30が可能な限り最高のスコア、0が可能な限り最低のスコアである。
【0101】
MMSE評価は、来院2b(ベースライン/1日目)の投与前と、来院5(12週目)及び来院8/ET(26週目)の投与後(約1時間(±30分))に実施される。
【0102】
統制発語連合検査(COWAT)
統制発語連合検査(COWAT)は、対象が所与の文字で始まる考えられ得る全単語を言うことにより、対象がアルファベットの様々な文字を口頭で連想することを要求される口頭言語流暢性検査である。個体は、1分間が与えられ、文字のそれぞれで始まる可能な限りの多くの単語を挙げる。次に、残りの2文字に対して手順が繰り返される(Benton、1994;Strauss、2006)。検査スコアは、3文字全てに対して生成された異なる単語の合計数である。
【0103】
COWATは、ADAS-Cog13評価に隣接して、すなわち、来院2b(ベースライン/1日目)の投与前と、来院5(12週目)及び来院8/ET(26週目)の投与後約1時間(±30分)に実施される。
【0104】
2.病状
運動障害疾患学会統一パーキンソン病評価スケール(MDS-UPDRS)
MDS-UPDRSは、PDに関連する運動症状及び非運動症状の両方を評価する50の質問であり(Goetz、2006)、対象及び/またはその介護者が独立して完了する必要があるセクションと、臨床医が完了するセクションを特徴とする。それは、4つの部分で構成され、合計スコアがもたらされる:
●パートI-日常生活の経験の非運動的態様
●パートII-日常生活の運動経験
●パートIII-運動検査
●パートIV-運動合併症
【0105】
MDS-UPDRS評価は、来院2b(ベースライン/1日目)時、来院5(12週目)の投与後、及び来院8/ET(26週目)の投与後に実施される。
【0106】
Clinician Global Impression of Change(CGI-C)
CGI-Cは、研究者が完了する1日目の研究開始から、対象の全体的なPDD症状の変化の程度を評価する7ポイントのリッカートスケール質問票(Busner、2007)である。可能な7つの評価は、以下の通りである:
1=非常に改善:ほとんど完全に処置され、最小限の症状、高レベルの機能、実質的な変化がある
2=大幅に改善:症状が大幅に低減されたが、症状が残っており、機能レベルが向上した
3=最小限に改善:わずかに良い、臨床状態もしくは症状、ケアのレベル、または機能的能力の臨床的変化がほとんどない~全くない
4=変化なし:症状は変化しない
5=最小限に悪化:臨床的意味はなくわずかに悪化、臨床状態または機能への変化はほとんどない
6=大幅に悪化:症状の増加及び機能の低下;臨床的に重要
7=非常に悪化:症状が悪化し、機能が失われる。
【0107】
来院2b(ベースライン/1日目)の投与前に行われる最初のCGI-C及びCGI-S検査は、対象のベースライン状態の評価である。変化及び重症度の後続のCGI-C及びCGI-S評価は、それぞれ、来院5(12週目)の投与後及び来院8/ET(26週目)の投与後に完了する。
【0108】
Alzheimer’s Disease Cooperative Study-日常生活活動、23項目バージョン(ADCS-ADL23)
ADCS-ADL23(Galasko、1997)は、支援者/介護者に実施される日常生活活動に関する機能障害の23項目の評価である。それは、日常生活を表す項目にわたる対象の関与及びパフォーマンスのレベルに関する23の質問を含む。質問は、基本的~実践的日常生活活動に及ぶ。各項目は、最高レベルの独立したパフォーマンスから完全な損失まで評価される。合計スコアの範囲は、0~78であり、低いスコアは、大きい機能障害を示す。ADCS-ADL23評価は、来院2b(ベースライン/1日目)の投与前、来院5(12週目)で投与後、及び来院8/ET(26週目)で投与後に実施される。
【0109】
Caregiver Global Impression of Change(CaGI-C)
CaGI-Cは、介護者が完了すべき5点のリッカートスケールの質問票であり、対象の全体的なPD及び認知症の症状の変化について、介護者がどのように感じているかを記載する。質問及び可能な5つの評価は、以下の通りである:
全体として、ベースライン来院から、対象のパーキンソン病/認知症の症状が、どのように変化したか:
1=非常に良い
2=幾分良い
3=変化なし
4=幾分悪い
5=非常に悪い
【0110】
CaGI-Cは、来院2b(ベースライン/1日目)の投与前、来院5(12週目)の投与後、及び来院8/ET(26週目)の投与後に完了する。
【0111】
非運動症状スケール(NMSS)
NMSSは、PD患者の幅広い非運動症状を評価するために支援者/介護者に適用される30項目スケールである(Chaudhuri、2007)。NMSSは、9次元にわたる非運動症状の重症度及び頻度;心臓血管、睡眠/疲労、気分/認知力、知覚の問題、注意/記憶、胃腸、泌尿器、性機能、ならびに混成物を測定する。スケールは、PDの全てのステージの患者に使用することができる。
【0112】
症状は、最終月にかけて評価される。各症状は、以下に関してスコア化される。
重症度:0=なし、1=軽度(症状は存在するが、患者に苦痛または不安をほとんど引き起こさない)、2=中等度(患者に多少の苦痛または不安)、3=重度(患者に苦痛または不安の主な原因)
頻度:1=めったにない(1回/週未満)、2=しばしば(1回/週)、3=頻繁(週に数回)、4=非常に頻繁(毎日または常時)。
【0113】
個々のドメインのスコア及び合計スコアが計算される。スコアが高いほど、症状がより重篤であることを示す。
【0114】
NMSS評価は、来院2b(ベースライン/1日目)の投与前、来院5(12週目)の投与後、及び来院8/ET(26週目)で投与後に実施される。
【0115】
薬力学的変数
薬力学的変数は、約10分間にわたって実施されるERP P300評価を含む。
【0116】
ERP P300は、ベースライン前来院(来院2a、-10日目~-3日目、投与なし)で実施される。ERP P300データは、ベースライン前来院(来院2a)の完了直後に、品質チェックのためにアップロードされるべきである。
【0117】
ベースライン/1日目(来院2b)で、ERP P300は、MMSE及びADAS-Cog13のベースライン評価の完了後の投与前と、CGI-C評価の前(クリニックでの投与の最大1.5時間前)に実施される。ERP P300は、投与後(ATH-1017投与の約2(±1)時間後)に評価される。
【0118】
来院3、5、及び8で、ERP P300が、投与前(クリニックでの投与の最大1時間前)に実施される。ERP P300は、投与後(IMP投与の約2(±1)時間後)のADAS-Cog13評価の完了後且つCGI-C/CGI-S評価前に評価される。
【0119】
ERP P300は、安全性追跡の来院(来院9、投与なし)でも実施される。
【0120】
ERP P300
ERP P300は、外部刺激、例えば、奇妙な聴覚刺激、により引き起こされる脳活動を記録する方法であり、特に、作業記憶アクセスの十分に確立された機能的バイオマーカーである(Ally、2006)。ERP P300は、カウントされるべきそれぞれの不自然な口調の後に発生する定型的な一連の電圧偏向を特徴とし、初期の特徴(100ミリ秒未満)は、無意識の感覚伝達(聴覚皮質、N100)に対応し、腹側注意ネットワークにおける認知処理により生じる後の特徴、すなわち、P300は、健康な成人(若者または高齢者)における約300ミリ秒の大きな正の偏向を指す。P300潜時は、AD患者及び他の認知症の認知機能低下に関連するシナプス伝の低減の検出に敏感である(Olichney、2011)。
【0121】
P300波(潜時及び振幅)を評価するために、対象は、座位で目を閉じ、聴覚刺激に関連するタスクを実施する必要がある。刺激は、2つの音刺激による奇妙なパラダイムから構成される。刺激は、ヘッドフォンを通して提示され、P300の聴覚刺激は、最大10分間の録音で評価される。
【0122】
F.評価のスケジュール及び順序
研究は、最大24日間のスクリーニング(-28日目~-4日目)、ベースライン前来院(来院2a、-10日目~-3日目)、ベースライン(来院2b、1日目、無作為化)、それに続く、26週間の二重盲検処置、及び4週間の安全性追跡からなる。注記:24日がスクリーニング期間を完了するのに不十分である場合は、継続の可能性は、医療監視と協議することができる。
【0123】
対象の認知状態を評価する臨床転帰評価では、一般的な順序に従わなければならない:
(1)MMSE
(2)ADAS-Cog13
(3)COWAT
(4)ERP P300評価
【0124】
MMSE評価は、最初に、他の全ての臨床転帰評価前、ベースライン/1日目(来院2b)の投与前、ならびに12週目(来院5)及び26週目(来院8)の投与後約1時間(±30分)に実施される。
【0125】
ADAS-Cog13及びCOWAT評価は、最初のベースライン/1日目の評価中に実施されたのとほぼ同じ時間(午前中)の来院時に行われる。ADAS-Cog13及びCOWAT評価は、ベースライン/1日目(来院2b)の投与前と、2週目(来院3)、12週目(来院5)、及び26週目(来院8)の投与後約1時間(±30分)に実施される。さらに、ADAS-Cog13は、20週目(来院7)に評価される。
【0126】
MDS-UPDRS評価は、ベースライン/1日目(来院2b)の個別のERP P300評価後、ならびに12週目(来院5)及び26週目(来院8)の投与後の隣接時間に編成される。
【0127】
PK血漿試料は、ベースライン/1日目(来院2b)の投与後;12週目(来院5)及び26週目(来院8)の投与前及び投与後に収集される。投与前のPK試料は、投与前のいつでも収集される。投与後のPK試料は、現実的には、投与後30分間~120分間のいつでも収集される。実際の投与時間及びPKサンプリング時間が記録されることになる。
【0128】
C-SSRSを除き、他の全ての評価項目(CGI-C、CGI-S、CaGI-C、ADCS-ADL23、NMSS、及びGDS)の評価の順序は、フレキシブルである。C-SSRSは、適格基準の一部として、ベースライン/1日目(来院2b)の投与前に完了する必要があり;本評価の順序は、ベースライン後の来院時にフレキシブルである。
【0129】
G.統計的方法
統計分析計画(SAP)が発行され、これは、以下に概説される分析の詳細な方法を提供する。
【0130】
分析の集団
MITT集団
修正包括解析(mITT)集団は、治験薬を少なくとも1回の用量を摂取し、ベースライン時及び少なくとも1回のベースライン後来院中にADAS-Cog13及びERP P300の両方の評価を完了した全ての無作為化対象を含む。対象は、無作為化された用量に従って分析される。
【0131】
プロトコール毎の集団
プロトコール毎の集団は、26週間の処置中に割り当てられた治療薬を摂取し、少なくとも1回のベースライン後来院中に、ADAS-Cog13及びERP P300の両方の評価を完了し、任意の主要なプロトコールからの逸脱がなかった全てのmITT対象を含む。対象は、実際に受けた処置に基づいて分析される。
【0132】
安全性集団
安全性集団は、治験薬を少なくとも1つの用量を摂取した全ての無作為化された対象を含む。対象は、実際に受けた処置に基づいて分析される。
【0133】
一般的な考慮事項
連続変数の記述統計は、別途記載のない限り、対象数(n)、相加平均、標準偏差、中央値、最小値、最大値、ならびに第1四分位数及び第3四分位数の制限を含む。カテゴリー変数の頻度及びパーセンテージが計算される。
【0134】
ベースラインからの変化は、その後の任意の来院時の観察値からベースラインスコアを減算することにより計算される。安全性の概要では、最後の無作為化前の測定値は、ベースライン値として定義される。有効性測定値の場合、ベースラインは、最後の無作為化前の測定値として定義される。
【0135】
パーセンテージは、AE要約表の所定の集団における各処置群の対象数、さらに、病歴、事前の薬及び併用薬の全体に基づいている。他の全ての表では、パーセンテージは、各処置群及び所与の集団全体における欠損データのない対象の数に基づいている。
【0136】
臨床有効性分析
主要臨床効果分析-GST
主要な有効性仮説は、ATH-1017による処置により、mITT集団における26週目のプラセボ群と比較して、(ADAS-Cog13スコア及びERP P300のベースラインからの変化を組み合わせる)GSTスコアのベースラインからの変化が統計的に有意に低減するという仮説である(O’Brien、1984)。主要分析は、プラセボと2つの処置群(40mgのATH-1017及び70mgのATH-1017)のそれぞれの間に差がないという統計的仮説を検証する。
【0137】
主要分析は、GSTスコアにおける積極的処置とプラセボ間の推定されたベースラインからの変化を比較するために、反復測定混合モデル(MMRM)を使用する。この分析は、MMRMモデルの最小二乗平均推定値を使用して、26週間の処置群とプラセボ間で推定GST値に違いがあるかどうかを評価し、モデルにおいて、ベースライン、時間によるベースライン交互作用、及び時間による処置によるベースライン交互作用の項目を含む。ApoE遺伝子型、部位(グループ化された小さな部位を含む)、年齢、及びMMSEスコアに関する追加の用語を含む。最小二乗平均及び標準誤差は、26週目にMMRMモデルから推定される。主要分析に関するさらなる詳細は、SAPに記載されている。
【0138】
副次分析-ADAS-Cog13及びERP P300
ADAS-Cog13及びERP P300の別々の副次変数は、主要評価項目の分析に使用されたものと同じMMRMモデルを使用して分析される。
【0139】
追加の副次変数は、ADCS-ADL23、CGI-C、及びCGI-Sであり;分析の詳細は、SAPに記載されている。
【0140】
探索的分析
本研究の探索的変数は、MMSE、COWAT、MDS-UPDRS、NMSS、CaGI-C、及びPKであり;分析の詳細は、SAPにある。
【0141】
サブグループ分析
サブグループ分析(例えば、性別、年齢、GBA遺伝子型)は、mITT集団で実施される。
【0142】
H.中間分析
中間分析は、少なくとも30人の対象が、2週目の来院を完了した時に実施される。この分析はERP P300の結果に焦点を当てており、ATH-1017の2つの有効用量(40mgまたは70mg)のどちらが他方より優れているか(2標準偏差の差)を判断するために使用される。優位性が達成される場合、75人の対象が登録されるまで、研究に登録された全ての後続の対象は、より優れた用量に割り当てられることになる。それぞれ他の用量レベルの対象は、治験の残りの期間、元々割り当てられた用量を継続することになる。
【0143】
I.結果
ATH-1017による処置は、許容可能な安全性及び忍容性を有しながら、主要、副次、または探索的評価項目のうちの1つ以上を達成する。
【0144】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0145】
従って、本開示は、好ましい実施形態及び任意の特徴により具体的に開示されているが、本明細書で開示のそこで具体化される本開示の修正、改良、及び変形が当業者らに使用され得ること、ならびに、そのような修正、改良、及び変形が、本開示の範囲内にあると考えられることを理解すべきである。本明細書で提供される材料、方法、及び実施例は、好ましい実施形態を代表し、例示であり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0146】
本開示が上記の実施形態に関連して説明しているが、上述の説明及び実施例は、例示を目的とするものであり、本開示の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本開示の範囲内の他の態様、利点、及び修正は、本開示が関係する当業者らには明らかである。
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