(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/26 20060101AFI20240705BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C07D213/26
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503361
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022106174
(87)【国際公開番号】W WO2023001088
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】202110813487.5
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110814726.9
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522162945
【氏名又は名称】キネート バイオファーマ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,グゥアンヂュイン
(72)【発明者】
【氏名】シゥアイ,バオクイ
(72)【発明者】
【氏名】シアン,ユーチィン
【テーマコード(参考)】
4H039
【Fターム(参考)】
4H039CA71
4H039CB30
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩および(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であって、
(a)N-ベンジルピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを得る工程、
(b)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを溶解し、触媒および水素の存在下で置換反応を行うことで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得る工程、
(c)3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンをボランと反応させ、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得る工程、および
(d)メタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを溶解し、触媒および水素の存在下で反応を行い、前記反応後に反応混合物をろ過し、ろ液を回収し、前記ろ液に塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に前記粗生成物を溶解し、抽出を行い、水相を凍結乾燥させることで、前記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得る工程
を含む調製方法。
【請求項2】
前記工程(a)において、N-ベンジルピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることが、具体的に、
N,N-ジメチルホルムアミド中にN-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を3~8℃に冷却し、次いで、トリフルオロ酢酸無水物および三塩化アルミニウムを連続して添加して反応させることを含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記工程(a)において、N-ベンジルピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比が、1:(1~20):(1~4):(1~3)であり、
反応温度が55~65℃であり、反応時間が12~40時間である、請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記工程(a)が、前記反応後に得られた混合物に抽出およびカラムクロマトグラフィーを行うことをさらに含み、前記抽出に用いられる溶媒が、酢酸エチルであり、前記カラムクロマトグラフィーに用いられる顕色剤が、体積比10:1のPEおよびEAである、請求項2に記載の調製方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールとメタノールと前記触媒との質量比が、1:(1~20):(0.01~0.50)であり、
前記触媒が10%Pd/Cである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
前記工程(b)において、前記置換反応のための条件が、
室温の反応温度、および10~15時間の反応時間であり、
好ましくは、前記工程(b)が、前記反応後に得られた混合物をろ過し、ろ液を回収し、前記ろ液を濃縮し、次いで、2~4回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で有機相を中性になるまで洗浄し、前記有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、前記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得ることをさらに含む、請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
前記工程(c)において、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンをボランと反応させることが、具体的に、
無水テトラヒドロフラン中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を0~4℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加して反応させることを含み、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比が、1:(1~20):(2~10)であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度が、0.8~1.2mol/Lであり、反応温度が30~65℃であり、反応時間が3.5~4.5時間である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
前記工程(c)において、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることが、具体的に、
前記反応混合物を冷却した後、前記反応混合物の0.1~10倍の体積のメタノールを添加してクエンチし、溶媒を濃縮し、次いで、前記反応混合物の1~10倍の体積のメタノールを添加して反応させることを含み、反応温度が65~75℃であり、反応時間が1~8時間であり、
好ましくは、前記工程(c)が、前記反応後に得られた混合物を濃縮し、次いで、塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルでさらに2~4回抽出を行い、次いで、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、前記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得ることをさらに含み、前記塩酸水溶液の濃度が、3~5mol/Lである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
前記工程(d)において、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンとメタノールと前記触媒との質量比が、1:(1~20):(0.01~0.50)であり、
前記触媒が10%Pd/Cである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
前記工程(d)において、反応条件が、室温の反応温度、および10~30時間の反応時間であり、
前記塩化水素のジオキサン溶液と前記ろ液との質量比が、1:0.10~2であり、前記塩化水素のジオキサン溶液の濃度が、3.5~4.5mol/Lである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項11】
(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であって、
(a)R-ナフチルエチルアミンを4-クロロブチリルクロリドと反応させることで、N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得る工程、
(b)N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得る工程、
(c)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、触媒および水素の存在下で置換反応を行うことで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得る工程、
(d)(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをボランと反応させ、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-((ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得る工程、および
(e)メタノール中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを溶解し、触媒および水素の存在下で反応を行い、前記反応後に反応混合物をろ過し、ろ液を回収し、前記ろ液に塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に前記粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、水相を凍結乾燥させることで、前記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得る工程
を含む調製方法。
【請求項12】
前記工程(b)において、N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることが、具体的に、
N,N-ジメチルホルムアミド中にN-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を3~8℃に冷却し、次いで、トリフルオロ酢酸無水物および三塩化アルミニウムを連続して添加して反応させることを含む、請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記工程(b)において、N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比が、1:(1~20):(1~4):(0.3~3)であり、
反応温度が55~65℃であり、反応時間が12~40時間である、請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
前記工程(b)が、前記反応後に得られた混合物に抽出およびカラムクロマトグラフィーを行うことをさらに含み、前記抽出に用いられる溶媒が、酢酸エチルであり、前記カラムクロマトグラフィーに用いられる顕色剤が、体積比10:1のPEおよびEAである、請求項12に記載の調製方法。
【請求項15】
前記工程(c)において、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとメタノールと前記触媒との質量比が、1:(1~50):(0.1~1)であり、
前記触媒がラネーニッケルである、請求項11に記載の調製方法。
【請求項16】
前記工程(c)において、前記置換反応のための条件が、
室温の反応温度、および20~24時間の反応時間であり、
好ましくは、前記工程(c)が、前記反応後に得られた混合物をろ過し、ろ液を回収し、前記ろ液を濃縮し、次いで、2~4回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、前記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得ることをさらに含む、請求項11に記載の調製方法。
【請求項17】
前記工程(d)において、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをボランと反応させることが、具体的に、
無水テトラヒドロフラン中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を0~4℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加して反応させることを含み、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比が、1:(1~20):(2~10)であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度が、0.8~1.2mol/Lであり、反応温度が30~65℃であり、反応時間が3.5~4.5時間である、請求項11に記載の調製方法。
【請求項18】
前記工程(d)において、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることが、具体的に、
前記反応混合物を冷却した後、前記反応混合物の0.1~10倍の体積のメタノールを添加してクエンチし、溶媒を濃縮し、次いで、前記反応混合物の1~10倍の体積のメタノールを添加して反応させることを含み、反応温度が65~75℃であり、反応時間が1~8時間であり、
好ましくは、前記工程(d)が、前記反応後に得られた混合物を濃縮し、次いで、塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルでさらに2~4回抽出を行い、次いで、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、前記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得ることをさらに含み、前記塩酸水溶液の濃度が、3~5mol/Lである、請求項11に記載の調製方法。
【請求項19】
前記工程(e)において、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンとメタノールと前記触媒との質量比が、1:(1~20):(0.01~0.50)であり、
前記触媒が10%Pd/Cである、請求項11に記載の調製方法。
【請求項20】
前記工程(e)において、反応条件が、室温の反応温度、および10~30時間の反応時間であり、
前記塩化水素のジオキサン溶液と前記ろ液との質量比が、1:(0.10~2)であり、前記塩化水素のジオキサン溶液の濃度が、3.5~4.5mol/Lである、請求項11に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物合成の技術分野に関し、特に、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩および(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジンは、重要な中間化合物である。文献、Journal of Organic Chemistry、2019年、p.16105~16115(10.1021/acs.joc.9b02596)では、
図2に示す合成ルートが開示され、ベルギー国ユセベファルマ社による特許WO2013/53725における原料として高価な3,3,3-トリフルオロプロピオンアルデヒドを用いる調製方法の欠点が指摘され、原料としてピロリジン-3-ギ酸を、フッ素化試薬として四フッ化硫黄を用いる調製方法が提案されている。しかし、この方法において用いられるフッ素化試薬である四フッ化硫黄は、融点が-121.5~-120.5℃(lit.)、沸点が-40.4℃(lit.)、圧力が140psi(21℃)の有毒な気体である。したがって、そのような試薬を用いるプロセスでは超低温下でのテトラフルオロエチレン容器が必要であり、このことによりこの方法の適用規模の拡大が限定される。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であって、N-ベンジルピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを得る工程、メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを溶解し、触媒および水素の存在下で置換反応を行うことで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得る工程、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンをボランと反応させ、次いで、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得る工程、およびメタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを溶解し、触媒および水素の存在下で反応を行うことで、上記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得る工程を含む調製方法を開示する。上記調製方法における具体的なプロセスおよびパラメータを規定することにより、高い収率および純度で上記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジンが得られる。
【0004】
【0005】
本発明は、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であって、R-ナフチルエチルアミンを4-クロロブチリルクロリドと反応させることで、生成物1を得る工程、上記生成物1をトリフルオロ酢酸無水物と反応させることで、生成物2を得る工程、メタノール中に上記生成物2を溶解し、触媒および水素の存在下で置換反応を行うことで、生成物3を得る工程、上記生成物3をボランと反応させ、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることで、生成物4を得る工程、およびメタノール中に上記生成物4を溶解し、触媒および水素の存在下で反応を行うことで、上記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得る工程を含む調製方法を開示する。上記調製方法における具体的なプロセスおよびパラメータを規定することにより、高い収率および純度で上記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩が得られる。
【0006】
【0007】
本発明の目的は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法を提供することであり、該方法は、容易に入手可能な原料を用い、かつ高い純度および収率で生成物を生産する。
【0008】
本発明の上記目的を達成するために、以下の技術的解決法を採用する。
【0009】
本発明の第1の態様は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であって、
(a)N-ベンジルピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを得る工程、
(b)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを溶解し、触媒および水素の存在下で置換反応を行うことで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得る工程、
(c)3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンをボランと反応させ、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得る工程、および
(d)メタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを溶解し、触媒および水素の存在下で反応を行い、上記反応後に反応混合物をろ過し、ろ液を回収し、上記ろ液に塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に上記粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、水相を凍結乾燥させることで、上記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得る工程を含む調製方法を提供する。
【0010】
好ましくは、上記工程(a)において、N-ベンジルピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることが、具体的に、
N,N-ジメチルホルムアミド中にN-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を3~8℃に冷却し、次いで、トリフルオロ酢酸無水物および三塩化アルミニウムを連続して添加して反応させることを含む。
【0011】
好ましくは、上記工程(a)において、N-ベンジルピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比が、1:(1~20):(1~4):(1~3)であり、
反応温度が55~65℃であり、反応時間が12~40時間である。
【0012】
好ましくは、上記工程(a)が、上記反応後に得られた混合物に抽出およびカラムクロマトグラフィーを行うことをさらに含み、上記抽出に用いられる溶媒が、酢酸エチルであり、上記カラムクロマトグラフィーに用いられる顕色剤が、体積比10:1のPEおよびEAである。
【0013】
好ましくは、上記工程(b)において、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールとメタノールと上記触媒との質量比が、1:(1~20):(0.01~0.50)であり、
上記触媒が10%Pd/Cである。
【0014】
好ましくは、上記工程(b)において、上記置換反応のための条件が、
室温の反応温度、および10~15時間の反応時間であり、
好ましくは、上記工程(b)が、上記反応後に得られた混合物をろ過し、ろ液を回収し、上記ろ液を濃縮し、次いで、2~4回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で有機相を中性になるまで洗浄し、上記有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、上記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得ることをさらに含む。
【0015】
好ましくは、上記工程(c)において、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンをボランと反応させることが、具体的に、
無水テトラヒドロフラン中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を0~4℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加して反応させることを含み、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比が、1:(1~20):(2~10)であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度が、0.8~1.2mol/Lであり、反応温度が30~65℃であり、反応時間が3.5~4.5時間である。
【0016】
好ましくは、上記工程(c)において、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることが、具体的に、
上記反応混合物を冷却した後、上記反応混合物の0.1~10倍の体積のメタノールを添加してクエンチし、溶媒を濃縮し、次いで、上記反応混合物の1~10倍の体積のメタノールを添加して反応させることを含み、反応温度が65~75℃であり、反応時間が1~8時間であり、
好ましくは、上記工程(c)が、上記反応後に得られた混合物を濃縮し、次いで、塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルでさらに2~4回抽出を行い、次いで、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、上記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得ることをさらに含み、上記塩酸水溶液の濃度が、3~5mol/Lである。
【0017】
好ましくは、上記工程(d)において、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンとメタノールと上記触媒との質量比が、1:(1~20):(0.01~0.50)であり、
上記触媒が10%Pd/Cである。
【0018】
好ましくは、上記工程(d)において、反応条件が、室温の反応温度、および10~30時間の反応時間であり、
好ましくは、上記塩化水素のジオキサン溶液と上記ろ液との質量比が、1:0.10~2であり、上記塩化水素のジオキサン溶液の濃度が、3.5~4.5mol/Lである。
【0019】
先行技術と比較して、本発明は、少なくとも以下の有益な効果を含む。
すなわち、本発明の調製方法は、N-ベンジルピロリドンを原料として用いて、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を調製する。上記調製方法における具体的なプロセスおよびパラメータを規定することにより、高い収率および純度で上記3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジンが得られる。さらに、上記調製方法は、作業が単純であり、かつ大量生産を実現可能とする。
【0020】
本発明の目的は、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法を提供することであり、該方法は、容易に入手可能な原料を用い、かつ高い純度および収率で生成物を生産する。
【0021】
本発明の上記目的を達成するために、以下の技術的解決法を採用する。
【0022】
本発明の第1の態様は、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であって、
(a)R-ナフチルエチルアミンを4-クロロブチリルクロリドと反応させることで、N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得る工程、
(b)N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得る工程、
(c)メタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、触媒および水素の存在下で置換反応を行うことで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得る工程、
(d)(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをボランと反応させ、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-((ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得る工程、および
(e)メタノール中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを溶解し、触媒および水素の存在下で反応を行い、上記反応後に反応混合物をろ過し、ろ液を回収し、上記ろ液に塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に上記粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、水相を凍結乾燥させることで、上記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得る工程を含む調製方法を提供する。
【0023】
好ましくは、上記工程(a)において、R-ナフチルエチルアミンを4-クロロブチリルクロリドと反応させることは、具体的に、
ジクロロメタン中にR-ナフチルエチルアミンを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、激しく撹拌し、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液を滴加し、室温で1時間反応させ、次いで、反応溶液の温度を55~65℃まで上昇させて、2~4時間さらに反応させるか、または室温で20~30時間反応させることを含む。
【0024】
好ましくは、上記工程(a)において、R-ナフチルエチルアミンとジクロロメタンと水酸化ナトリウム水溶液と4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液との質量比は、1:(5~10):(0.6~2.8):(0.4~4)であり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は50%、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液の濃度は50%である。
【0025】
好ましくは、上記工程(b)において、N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをトリフルオロ酢酸無水物と反応させることが、具体的に、
N,N-ジメチルホルムアミド中にN-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を3~8℃に冷却し、次いで、トリフルオロ酢酸無水物および三塩化アルミニウムを連続して添加して反応させることを含む。
【0026】
好ましくは、上記工程(b)において、N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比が、1:(1~20):(1~4):(0.3~3)であり、
反応温度が55~65℃であり、反応時間が12~40時間である。
【0027】
好ましくは、上記工程(b)が、上記反応後に得られた混合物に抽出およびカラムクロマトグラフィーを行うことをさらに含み、上記抽出に用いられる溶媒が、酢酸エチルであり、上記カラムクロマトグラフィーに用いられる顕色剤が、体積比10:1のPEおよびEAである。
【0028】
好ましくは、上記工程(c)において、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとメタノールと上記触媒との質量比が、1:(1~50):(0.1~1)であり、
上記触媒がラネーニッケルである。
【0029】
好ましくは、上記工程(c)において、上記置換反応のための条件が、
室温の反応温度、および20~24時間の反応時間である。
【0030】
好ましくは、上記工程(c)が、上記反応後に得られた混合物をろ過し、ろ液を回収し、上記ろ液を濃縮し、次いで、2~4回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、上記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得ることをさらに含む。
【0031】
好ましくは、上記工程(d)において、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンをボランと反応させることが、具体的に、
無水テトラヒドロフラン中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を0~4℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加して反応させることを含み、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比が、1:(1~20):(2~10)であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度が、0.8~1.2mol/Lであり、反応温度が30~65℃であり、反応時間が3.5~4.5時間である。
【0032】
好ましくは、上記工程(d)において、反応混合物中にメタノールを添加してさらに反応させることが、具体的に、
上記反応混合物を冷却した後、上記反応混合物の0.1~10倍の体積のメタノールを添加してクエンチし、溶媒を濃縮し、次いで、上記反応混合物の1~10倍の体積のメタノールを添加して反応させることを含み、反応温度が65~75℃であり、反応時間が1~8時間であり、
好ましくは、上記工程(d)が、上記反応後に得られた混合物を濃縮し、次いで、塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルでさらに2~4回抽出を行い、次いで、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、上記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得ることをさらに含み、上記塩酸水溶液の濃度が、3~5mol/Lである。
【0033】
好ましくは、上記工程(e)において、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンとメタノールと上記触媒との質量比が、1:(1~20):(0.01~0.50)であり、
上記触媒が10%Pd/Cである。
【0034】
好ましくは、上記工程(e)において、反応条件が、室温の反応温度、および10~30時間の反応時間である。
【0035】
好ましくは、上記工程(e)において、上記塩化水素のジオキサン溶液と上記ろ液との質量比が、1:(0.10~2)であり、上記塩化水素のジオキサン溶液の濃度が、3.5~4.5mol/Lである。
【0036】
先行技術と比較して、本発明は、少なくとも以下の有益な効果を含む。
すなわち、本発明の調製方法は、R-ナフチルエチルアミンを原料として用いて、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を調製する。上記調製方法における具体的なプロセスおよびパラメータを規定することにより、高い収率および純度で上記(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩が得られる。さらに、上記調製方法は、作業が単純であり、かつ大量生産を実現可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の特定の実施形態における、またはより明確には先行技術における技術的解決法を例示するために、特定の実施形態または先行技術の説明において用いる添付の図面を、以下に簡潔に導入する。すべての図面において、類似の構成要素または部分は、概して、類似の参照番号により明示される。図面において、各構成要素または部分は、必ずしも実際の比率とはなっていない。
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態に係る3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の合成手順の図である。
【
図2】
図2は、本発明の背景技術において提供される先行技術の合成手順の図である。
【
図3】
図3は、本発明のある実施形態に係る(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の合成手順の図である。
【
図4】
図4は、本発明の背景技術において提供される先行技術の合成手順の図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の技術的解決法の実施形態を、実施例と組み合わせて下に詳説する。以下の実施例は、本発明の技術的解決法をより明確に例示するために用いられるに過ぎないので、本発明の保護範囲に対して例示的かつ非限定的なものである。
【0039】
ただし、別の意味が特定されていない限り、本願において用いられる技術的用語や科学的用語は、本発明の属する技術分野における当業者により理解されるような一般的意味を有するものとする。
【実施例1】
【0040】
本実施例は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法である。
図1に示すように、上記調製方法は、以下の工程を含む。
【0041】
(a)N,N-ジメチルホルムアミド中にN-ベンジルピロリドンを溶解して、混合物を4℃に冷却し、次いで、トリフルオロ酢酸無水物を添加し、三塩化アルミニウムを徐々に添加して、完全に溶解するまで撹拌することで、混合溶液とし、混合溶液の温度を60℃まで上昇させて、20時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、水を添加して反応をクエンチし、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)を行って、黒みがかった油として生成物3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを得た。
【0042】
ここで、N-ベンジルピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比は、1:4.49:3.60:1.14であった。
【0043】
(b)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で12時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液を濃縮し、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、飽和炭酸水素ナトリウムで生成物を中性になるまで洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得た。
【0044】
ここで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:5.17:0.10であった。
【0045】
(c)無水テトラヒドロフラン中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を2℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加し、60℃で4時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを添加して反応をクエンチし、溶媒を濃縮し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを再度添加して、70℃で7時間反応させ、次いで、反応溶液を回転により蒸発乾固させて、4mol/Lの塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで逆抽出を行い、有機相を廃棄し、6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルで抽出を行い、無水硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得た。
【0046】
ここで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比は、1:1.40:6.99であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度は、1mol/Lであった。
【0047】
(d)メタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で12時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液に4mol/Lの塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相を凍結乾燥させることで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得た。
【0048】
ここで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:10.8:0.11であった。
【実施例2】
【0049】
本実施例は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法であり、以下の工程を含む。
【0050】
(a)N,N-ジメチルホルムアミド中にN-ベンジルピロリドンを溶解して、混合物を4℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物を添加し、三塩化アルミニウムを徐々に添加して、完全に溶解するまで撹拌することで、混合溶液とし、混合溶液の温度を60℃まで上昇させて、12時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、水を添加して反応をクエンチし、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)を行って、黒みがかった油として生成物3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを得た。
【0051】
ここで、N-ベンジルピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比は、1:1.43:1.06:2.7であった。
【0052】
(b)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で8時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液を濃縮し、酢酸エチル中に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウムで生成物を中性になるまで洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得た。
【0053】
ここで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:16.38:0.50であった。
【0054】
(c)無水テトラヒドロフラン中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を2℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加し、30℃で4時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを添加して反応をクエンチし、溶媒を濃縮し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを再度添加して、70℃で2時間反応させ、次いで、反応溶液を回転により蒸発乾固させて、4mol/Lの塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで逆抽出を行い、有機相を廃棄し、6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルでさらに3回抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得た。
【0055】
ここで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比は、1:10.20:2.85であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度は、1mol/Lであった。
【0056】
(d)メタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で30時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液に4mol/Lの塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮し、水中に粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相を凍結乾燥させることで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得た。
【0057】
ここで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:5.4:0.32であった。
【実施例3】
【0058】
本実施例は、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジンの調製方法であり、以下の工程を含む。
【0059】
(a)N,N-ジメチルホルムアミド中にN-ベンジルピロリドンを溶解して、混合物を4℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物を添加し、三塩化アルミニウムを徐々に添加して、完全に溶解するまで撹拌することで、混合溶液とし、混合溶液の温度を60℃まで上昇させて、20時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、水を添加して反応をクエンチし、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)を行って、黒みがかった油として生成物3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを得た。
【0060】
ここで、N-ベンジルピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比は、1:9.48:2.4:1.14であった。
【0061】
(b)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で12時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液を濃縮し、酢酸エチル中に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウムで生成物を中性になるまで洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを得た。
【0062】
ここで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-ベンジルピロールとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:7.91:0.05であった。
【0063】
(c)無水テトラヒドロフラン中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンを溶解し、混合物を2℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加し、60℃で4時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを添加して反応をクエンチし、溶媒を濃縮し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを再度添加して、70℃で7時間反応させ、次いで、反応溶液を回転により蒸発乾固させて、4mol/Lの塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで逆抽出を行い、有機相を廃棄し、6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルでさらに3回抽出を行い、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを得た。
【0064】
ここで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比は、1:4.45:4.00であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度は、1mol/Lであった。
【0065】
(d)メタノール中に3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で12時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液に4mol/Lの塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相を凍結乾燥させることで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得た。
【0066】
ここで、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-ベンジルピロリジンとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:15.8:0.05であった。
【0067】
実験例
【0068】
実施例1~3に従い、それぞれ3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を調製し、各実施例の各工程において調製された生成物の収率を、以下の計算方法に従って計算した。
【0069】
各工程における反応の収率の計算式は、mp×Ms/(ms×Mp)×100%であり、式中、mpは生成物の実際の生成量であり、Msは原料のモル質量であり、msは原料の理論上の添加量であり、Mpは生成物のモル質量である。
【0070】
計算結果は、表1に示す通りである。
【0071】
【0072】
表1から以下のことが分かる。
【0073】
本発明の調製方法は、N-ベンジルピロリドンを原料として用いることにより、3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製を実現する。調製方法における具体的なプロセスおよびパラメータを規定することにより、高い収率および純度で3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジンが得られる。さらに、上記調製方法は、作業が単純であり、かつ大量生産を実現可能とする。
【実施例4】
【0074】
本実施例は、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法である。
図3に示すように、上記調製方法は、以下の工程を含む。
【0075】
(a)ジクロロメタン中にR-ナフチルエチルアミンを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、激しく撹拌し、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液を滴加し、室温で1時間反応させ、次いで、反応溶液の温度を60℃まで上昇させて、3時間さらに反応させ、反応完了後、液体を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、黄色の油として生成物N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0076】
ここで、R-ナフチルエチルアミンとジクロロメタンと水酸化ナトリウム水溶液と4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液との質量比は、1:6:1.6:0.82であり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は50%、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液の濃度は50%であった。
【0077】
(b)N,N-ジメチルホルムアミド中にN-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解して、混合物を4℃に冷却し、次いで、トリフルオロ酢酸無水物を添加し、三塩化アルミニウムを徐々に添加して、完全に溶解するまで撹拌することで、混合溶液とし、混合溶液の温度を60℃まで上昇させて、22時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、水を添加して反応をクエンチし、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)を行って、黒みがかった油として生成物3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0078】
ここで、(R)-N-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比は、1:5.11:2.64:0.84であった。
【0079】
(c)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、触媒としてラネーニッケルを添加し、次いで、水素下で室温で22時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液を濃縮し、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、飽和炭酸水素ナトリウムで生成物を中性になるまで洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、無色の油として生成物(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0080】
ここで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとメタノールと触媒のラネーニッケルとの質量比は、1:10.0:0.40であった。
【0081】
(d)無水テトラヒドロフラン中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を2℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加し、60℃で4時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを添加して反応をクエンチし、溶媒を濃縮し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを再度添加して、70℃で6時間反応させ、次いで、反応溶液を回転により蒸発乾固させて、4mol/Lの塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで逆抽出を行い、有機相を廃棄し、6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルで抽出を行い、無水硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得た。
【0082】
ここで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比は、1:4.35:6.23であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度は、1mol/Lであった。
【0083】
(e)メタノール中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で20時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液に4mol/Lの塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相を凍結乾燥させることで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得た。
【0084】
ここで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:10.8:0.11であった。
【実施例5】
【0085】
本実施例は、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法である。
図3に示すように、上記調製方法は、以下の工程を含む。
【0086】
(a)ジクロロメタン中にR-ナフチルエチルアミンを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、激しく撹拌し、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液を滴加し、室温で24時間反応させる。反応完了後、液体を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、黄色の油として生成物N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0087】
ここで、R-ナフチルエチルアミンとジクロロメタンと水酸化ナトリウム水溶液と4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液との質量比は、1:10:0.8:0.8であり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は50%、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液の濃度は50%であった。
【0088】
(b)N,N-ジメチルホルムアミド中にN-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解して、混合物を4℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物を添加し、次いで、三塩化アルミニウムを徐々に添加して、完全に溶解するまで撹拌することで、混合溶液とし、混合溶液の温度を65℃まで上昇させて、15時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、水を添加して反応をクエンチし、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)を行って、黒みがかった油として生成物3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0089】
ここで、(R)-N-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比は、1:10:1:2であった。
【0090】
(c)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、触媒としてラネーニッケルを添加し、次いで、水素下で室温で24時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液を濃縮し、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、飽和炭酸水素ナトリウムで生成物を中性になるまで洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、無色の油として生成物(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0091】
ここで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとメタノールと触媒のラネーニッケルとの質量比は、1:20:0.1であった。
【0092】
(d)無水テトラヒドロフラン中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を2℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加し、30℃で4.5時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを添加して反応をクエンチし、溶媒を濃縮し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを再度添加して、75℃で2時間反応させ、次いで、反応溶液を回転により蒸発乾固させて、4mol/Lの塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで逆抽出を行い、有機相を廃棄し、6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルで抽出を行い、無水硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得た。
【0093】
ここで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比は、1:1:10であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度は、0.8mol/Lであった。
【0094】
(e)メタノール中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で25時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液に4.5mol/Lの塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相を凍結乾燥させることで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得た。
【0095】
ここで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:5:0.5であった。
【実施例6】
【0096】
本実施例は、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製方法である。
図3に示すように、上記調製方法は、以下の工程を含む。
【0097】
(a)ジクロロメタン中にR-ナフチルエチルアミンを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、激しく撹拌し、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液を滴加し、室温で1時間反応させ、次いで、混合溶液の温度を55℃まで上昇させて、4時間さらに反応させ、反応完了後、液体を分離し、水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、黄色の油として生成物N-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0098】
ここで、R-ナフチルエチルアミンとジクロロメタンと水酸化ナトリウム水溶液と4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液との質量比は、1:6:1.6:0.82であり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は50%、4-クロロブチリルクロリドのジクロロメタン溶液の濃度は50%であった。
【0099】
(b)N,N-ジメチルホルムアミド中にN-(R)-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解して、混合物を4℃に冷却し、トリフルオロ酢酸無水物を添加し、次いで、三塩化アルミニウムを徐々に添加して、完全に溶解するまで撹拌することで、混合溶液とし、混合溶液の温度を55℃まで上昇させて、30時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、水を添加して反応をクエンチし、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)を行って、黒みがかった油として生成物3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0100】
ここで、(R)-N-(1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとN,N-ジメチルホルムアミドとトリフルオロ酢酸無水物と三塩化アルミニウムとの質量比は、1:20:3:3であった。
【0101】
(c)メタノール中に3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、触媒としてラネーニッケルを添加し、次いで、水素下で室温で20時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液を濃縮し、3回にわたり酢酸エチルで抽出を行い、飽和炭酸水素ナトリウムで生成物を中性になるまで洗浄し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、無色の油として生成物(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを得た。
【0102】
ここで、3-(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチリデン)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンとメタノールと触媒のラネーニッケルとの質量比は、1:40:1であった。
【0103】
(d)無水テトラヒドロフラン中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンを溶解し、混合物を2℃に冷却し、次いで、ボランのテトラヒドロフラン溶液を添加し、65℃で3.5時間反応させ、反応溶液を室温に冷却し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを添加して反応をクエンチし、溶媒を濃縮し、反応溶液の5倍の体積のメタノールを再度添加して、65℃で8時間反応させ、次いで、反応溶液を回転により蒸発乾固させて、4mol/Lの塩酸水溶液中に溶解し、酢酸エチルで逆抽出を行い、有機相を廃棄し、6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で水相をアルカリ性に調節し、酢酸エチルで抽出を行い、無水硫酸ナトリウム上で有機相を乾燥させ、ろ過し、溶媒を濃縮することで、淡黄色の油として生成物(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを得た。
【0104】
ここで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリドンと無水テトラヒドロフランとボランのテトラヒドロフラン溶液との質量比は、1:10:4であり、ボランのテトラヒドロフラン溶液の濃度は、1.2mol/Lであった。
【0105】
(e)メタノール中に(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンを溶解し、触媒として10%Pd/Cを添加し、次いで、水素下で室温で15時間反応させ、反応溶液をろ過し、ろ液を回収し、ろ液に3.5mol/Lの塩化水素のジオキサン溶液を添加し、溶媒を濃縮することで粗生成物を得て、次いで、水中に粗生成物を溶解し、酢酸エチルで抽出を行い、有機相を廃棄し、水相を凍結乾燥させることで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を得た。
【0106】
ここで、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-N-((R)-1-(ナフタレン-1-イル)エチル)ピロリジンとメタノールと10%Pd/C触媒との質量比は、1:20:0.3であった。
【0107】
実験例
【0108】
実施例4~6に従い、それぞれ(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩を調製し、各実施例の各工程において調製された生成物の収率を、以下の計算方法に従って計算した。
【0109】
各工程における反応の収率の計算式は、mp×Ms/(ms×Mp)×100%であり、式中、mpは生成物の実際の生成量であり、Msは原料のモル質量であり、msは原料の理論上の添加量であり、Mpは生成物のモル質量である。
【0110】
計算結果は、表2に示す通りである。
【0111】
【0112】
表2から以下のことが分かる。
【0113】
本発明の調製方法は、R-ナフチルエチルアミンを原料として用いることにより、(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩の調製を実現する。調製方法における具体的なプロセスおよびパラメータを規定することにより、高い収率および純度で(S)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン塩酸塩が得られる。さらに、上記調製方法は、作業が単純であり、かつ大量生産を実現可能とする。
【0114】
なお最後に、上記実施形態は、本発明の技術的解決法を限定ではなく例示するためにのみ用いられる。本発明は、前述の実施形態を参照して詳説したが、前述の実施形態において説明した技術的解決法はさらに修正可能であり、またはその中の技術的特徴の一部または全部は等価的に置換可能であり、これらの修正や置換は、対応する技術的解決法を本発明の実施形態の技術的解決法の範囲から本質的に逸脱させるものではなく、かつ本発明の請求項および説明により包含されるものとすることを当業者は理解すべきである。
【国際調査報告】