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特表2024-525879報酬系調節障害(REWARD DYSREGULATION DISORDERS)の防止および/または処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】報酬系調節障害(REWARD DYSREGULATION DISORDERS)の防止および/または処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20240705BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P3/04
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/30
A61P25/32
A61P1/14
A61P43/00 121
A23L33/135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503373
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022070430
(87)【国際公開番号】W WO2023001934
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/070303
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22158054.1
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511294534
【氏名又は名称】ウニベルシテ カソリーク デ ルーベン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エバード,アマンディーン
(72)【発明者】
【氏名】デ ワウターズ ドプリンター,アリス
(72)【発明者】
【氏名】マラレット,ジェフロイ オリヴィエ ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】カニー,パトリス
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD85
4B018ME14
4B018MF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BC31
4C087BC53
4C087BC55
4C087BC68
4C087BC71
4C087CA08
4C087CA11
4C087MA02
4C087MA52
4C087MA60
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA12
4C087ZA18
4C087ZA70
4C087ZC39
4C087ZC61
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、報酬系調節障害(reward dysregulation disorders)の防止および/または処置における使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物および/またはその代謝産物を含む組成物。
【請求項2】
前記パラバクテロイデス属の細菌が、P.ディスタソニス、P.ゴルドステイニイ、P.メルダエ、P.アシジファシエンス、P.ボーチェスダーホネンシス、P.チャルテ、P.チンチラ、P.コンギー、P.ファエシス、P.ゴルドニイ、P.ジョンソニイ、P.マシリエンシス、P.パセンシス、P.プロベンセンシス、P.チモネンシス、パラバクテロイデスspp.、およびそれらの組合わせを含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記報酬系調節障害が、精神障害、神経障害およびそれらの組合わせを含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記精神障害が、依存症関連障害、摂食関連障害、情緒障害、強迫性障害、統合失調症、注意欠陥多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症、大うつ病(MDD)、不安障害および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記摂食関連障害が、拒食症、過食症、無茶食い、過体重関連障害、肥満関連障害、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記依存症関連障害が、アルコール関連依存症、薬物関連依存症、ゲーム関連依存症、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記神経障害が、パーキンソン病、トゥレット症候群、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記組成物が、動物個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が、経口または直腸投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記細菌が、約1×10CFU/g組成物~約1×1012CFU/g組成物を含む用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、1種または複数の有益な微生物(複数可)をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記1種または複数の有益な微生物(複数可)が、クロストリジウム科、ペプトストレプトコッカス科、プレボテラ科、メチロバクテリウム科、トゥリシバクター属、コプロコッカス属、ノエリア属、プレボテラ属、スタフィロコッカス属、アッケルマンシア属、および同様のものの細菌を含む、または前記細菌からなる群において選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、薬学的に許容できる担体をさらに含む医薬組成物の形態である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記組成物が、栄養学的に許容できる担体をさらに含む栄養組成物の形態である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記組成物を投与する手段をさらに含むキットに含まれる、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、報酬系調節障害に関する障害の分野に関する。詳細には本発明は、報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、パラバクテロイデス(Parabacteroides)属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物および/またはその代謝産物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
報酬系は多くの場合、大脳辺縁系、大脳基底核、前頭前皮質、腹側被蓋野、および黒質の中の食欲刺激を処理する神経回路の凝集体に関係すると定義される。
【0003】
報酬系が、適切に機能している場合、報酬の期待または獲得が、例えばドーパミン、GABA、グルタミン酸塩、セロトニン、およびノルエピネフリンなどの神経伝達物質を含む事象のカスケードを触媒する。
【0004】
報酬系機構における機能不全は、自然に(例えば、社会的孤立の際にドーパミンレベルが降下した場合、または加齢によりセロトニンレベルが降下した場合)、または人工的に(例えば、ドーパミンアンタゴニストの摂取の際)起こり得る。報酬系機能障害は、疾病または遺伝性疾患の際に起こる場合もある。これらの機構の機能障害は、例えば快感または満足感の欠如、モチベーションの低下、ならびに情動麻痺などの、報酬学習およびモチベーションの欠如ならびに情動の異常を特徴とする。
【0005】
例えば、過食および高カロリー食の消費が、正のエネルギーバランス(エネルギー投入がエネルギー排出より大きい)および脂肪の蓄積に寄与する主な態様である肥満の状況では、快感に関連する摂食行動を駆動する報酬系は、食物摂取の主な駆動因子になる。脂肪および糖が豊富な美味しい食物は、ドーパミン作動性ニューロンを刺激して、主に脳の皮質辺縁領域(線条体、側坐核および前頭前皮質を含む)でドーパミンの放出を誘導することができる。しかし、長期間の過食の結果であることの多い肥満は、美味しい食物の摂取およびドーパミン作動性マーカーの下方制御に応答したドーパミン濃度の低減に関連する。ドーパミン受容体1(D1R)および2(D2R)の発現、ならびに律速合成酵素(チロシンヒドロキシラーゼ、TH)は減少するが、ドーパミントランスポータ(DAT)は、増加する。ドーパミン経路のこの機能の変化は、肥満発症前と同じ報酬効果を感じようとして脂肪および甘味食の食事量を増加させるため、体重増加の悪循環を助長することが示唆された。
【0006】
報酬系調節障害の機構は、依存症関連障害、感情障害、強迫性障害、統合失調症、注意欠陥多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症、大うつ病(MDD)、不安障害およびパーキンソン病を含む多くの疾患においても起こる場合がある。
【0007】
これまでのところ、報酬系調節障害のための治療は、神経薬理学的化合物および/または心理療法の理由となり得る。
【0008】
それゆえ、報酬系調節障害を処置するための代替治療を先端技術に提供することが、必要とされている。特に、報酬系調節障害のための有効な治療を提供することが、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
概要
本発明は、報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物および/またはその代謝産物を含む組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、P.ディスタソニス(distasonis)、P.ゴルドステイニイ(goldsteinii)、P.メルダエ(merdae)、P.アシジファシエンス(acidifaciens)、P.ボーチェスダーホネンシス(bouchesdurhonensis)、P.チャルテ(chartae)、P.チンチラ(chinchilla)、P.コンギー(chongii)、P.ファエシス(faecis)、P.ゴルドニイ(gordonii)、P.ジョンソニイ(johnsonii)、P.マシリエンシス(massiliensis)、P.パセンシス(pacaensis)、P.プロベンセンシス(provencensis)、P.チモネンシス(timonensis)、パラバクテロイデスspp.、およびそれらの組合わせを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0011】
一実施形態において、報酬系調節障害は、精神障害、神経障害およびそれらの組合わせを含む、またはそれらからなる群において選択される。一実施形態において、精神障害は、依存症関連障害、摂食関連障害、情緒障害、強迫性障害、統合失調症、注意欠陥多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症、大うつ病(MDD)、不安障害および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。一実施形態において、摂食関連障害は、拒食症、過食症、過体重関連障害、肥満関連障害、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。一実施形態において、依存症関連障害は、アルコール関連依存症、薬物関連依存症、ゲーム関連依存症、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。一実施形態において、神経障害は、パーキンソン病、トゥレット症候群、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0012】
一実施形態において、組成物は、動物個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体に投与される。
【0013】
一実施形態において、組成物は、経口または直腸投与される。
【0014】
一実施形態において、細菌は、約1×10CFU/g組成物~約1×1012CFU/g組成物を含む用量で投与される。
【0015】
一実施形態において、組成物は、1種または複数の有益な微生物(複数可)をさらに含む。一実施形態において、1種または複数の有益な微生物(複数可)は、クロストリジウム科、ペプトストレプトコッカス科、プレボテラ科、メチロバクテリウム科、トゥリシバクター属、コプロコッカス属、ノエリア属、プレボテラ属、スタフィロコッカス属、アッケルマンシア属、および同様のものの細菌を含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0016】
一実施形態において、組成物は、薬学的に許容できる担体をさらに含む医薬組成物の形態である。別の実施形態において、組成物は、栄養学的に許容できる担体をさらに含む栄養組成物の形態である。
【0017】
一実施形態において、組成物は、前記組成物を投与する手段をさらに含むキットに含まれる。
【0018】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0019】
値の前に存在する「約」は、前記数字の値のプラスまたはマイナス10%以下を包含する。用語「約」が指す値自体が、具体的に、そして好ましく開示されることが、理解されなければならない。
【0020】
「含む」は、「含有する」、「包含する」および「含む(include)」を意味することが意図される。幾つかの実施形態において、用語「含む」は、用語「からなる」も包含する。
【0021】
「パラバクテロイデス属の細菌」は、20%(w/v)胆汁を含有する培養培地で成長することができるグラム陰性絶対的嫌気性非胞子形成非運動性細菌を指す。パラバクテロイデス属に属する細菌は、生理学的および生化学的アプローチ、それらの細胞内脂肪酸プロファイルの評価、メナキノンプロファイルの評価、ならびに16S rRNA遺伝子配列解析に基づくそれらの系統発生上の位置を含む通常の手順により容易に同定され得る。
【0022】
「単離された細菌」は、天然の、および/または生理的生態環境または生息地にもはや存在しない細菌を指す。例えば微生物叢からの目的の細菌を収集して、他の細菌から分離し、さらに組成物中に配合してもよい。細菌の分離は、微生物学の分野の標準的プロトコル、例えばグラム染色、抗生物質耐性、特異的基質/培養培地で成長する能力、およびそれらから調整されたプロトコルに従って実施され得る。
【0023】
「濃縮組成物」は、パラバクテロイデス属の細菌の集団密度が組成物の全微生物集団内で増強されている組成物を指す。
【0024】
「抽出物」は、目的の細菌から、または目的の細菌を培養した培養培地から得られる任意の画分を指す。実際に、抽出物は、細胞抽出物および細胞外抽出物を含む。一実施形態において、本発明による抽出物は、細菌の代謝産物を含む。
【0025】
「報酬系」は、例えば食物、薬物またはアルコールなどの報酬刺激により誘導される神経生物学的機構の群を指す。報酬系は、大脳辺縁系、大脳基底核、前頭前皮質、腹側被蓋野、線条体、側坐核および黒質を含む脳内の複数の構造を伴う。報酬の期待または獲得による報酬系の活性化は、神経伝達物質ドーパミン、またはGABA、グルタミン酸塩、セロトニン、およびノルエピネフリンなどの他の神経伝達物質だけでなく、オピオイドおよび/またはエンドカンナビノイドの放出にも由来する前向きな感覚または快感を個体において誘導する。特定の薬物は、報酬刺激を用いずに報酬系を直接活性化することが可能である。重要なこととして、報酬系は、3つの成分、つまり「嗜好(liking)」成分、「欲求(wanting)」成分、および「学習(learning)」成分を含む。嗜好成分は、快楽的影響に対応し、報酬刺激により提供される快楽に関係する。欲求成分は、インセンティブサリエンスに対応し、報酬を得るために個体が得るモチベーションまたはインセンティブに関係する。学習成分は、報酬と状況(例えば、場所、時刻、行動または行動順序、ならびに同様の事柄)の間の予測的関連づけを個体が実施し、将来の報酬獲得のためにこの関連づけを永続的に記憶する能力に対応する。
【0026】
「報酬系調節障害」は、個体が快い刺激および期待の快感を追求もしくは実現しようと努力していて、ならびに/あるいは正の合図もしくは報酬のある合図に対する強い応答、もしくは正の情動反応性を経験する障害(Gruber et al., J Abnorm Child Psychol. 2013; 41(7):1053-1065参照)、または個体が同じ快感を得るために報酬に対する高レベルの暴露を必要とする障害を指す。幾つかの実施形態において、報酬系の3つの成分(即ち、嗜好、欲求、および学習成分)の任意の1つが、調節障害になり得る。幾つかの実施形態において、3成分の1つ、2つまたは全てが、調節障害される。「調節障害された」とは、成分が異常に「過剰刺激される」(即ち、活性化される、過剰活性化される、増加する、上方制御される)、または「不十分に刺激される」(即ち、阻害される、減少する、下方制御される)のどちらかであり得る。一実施形態において、1つまたは複数の成分が、過剰に刺激される、または不十分に刺激される。別の実施形態において、1つまたは複数の成分が、過剰に刺激され、1つまたは複数の異なる成分が、不十分に刺激される。実際に、報酬系調節障害は、以下に定義される精神障害および神経障害を包含する。報酬系調節障害を有する個体の診断は、当該分野の標準的プロトコルに従って、特に臨床兆候を、多くの場合問診票で補助しながら、モニタリングすることにより、医師などの認定された職員により実施され得る。
【0027】
本明細書で用いられる「精神障害」は、報酬系調節障害の特定のサブセットを表し、世界保健機関(WHO)により定義された、異常な思考、知覚、情動、行動および他者との関係性の組合わせを特徴とする障害を指す。実際に、精神障害は、依存症関連障害、摂食関連障害、感情障害、強迫性障害、統合失調症、注意欠陥多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症、大うつ病(MDD)、不安障害およびパーキンソン病を含む。幾つかの実施形態において、精神障害は、摂食関連障害および依存症関連障害を含む。
【0028】
「摂食障害」は、精神障害の特定のサブセットを指し、拒食症、過食症、過体重関連障害、肥満関連障害、および同様のものを含む。幾つかの実施形態において、「過体重関連障害」および「肥満関連障害」は、互換的に用いられ、WHOによる定義で、25以上のボディ・マス・インデックス(BMI)(過体重の場合)または30以上のBMI(肥満の場合)に関係する障害を指す。本発明の範囲内では、「過体重関連障害」および「肥満関連障害」は、25または30以上のBMIを誘導および/または維持する異常な食物摂取に関連する。
【0029】
「依存症関連障害」は、精神障害の特別な部分集合を指し、アルコール関連依存症、薬物関連依存症、煙草またはニコチン依存症、ゲーム関連依存症および同様のものを含む。
【0030】
本明細書で用いられる「神経障害」は、報酬系調節障害の特定のサブセットを表し、脳、神経および脊髄に影響を及ぼす障害を指す。実際に、神経障害を有する個体は、例えば、麻痺、筋力低下、協調運動不全、感覚障害、てんかん発作、錯乱、疼痛および意識レベルの変化などの症状を経験することがある。神経障害の非限定的例としては、神経筋障害、自閉症スペクトラム障害、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、トゥレット症候群、てんかん、筋萎縮性側索硬化症が挙げられる。
【0031】
「有益な微生物」は、宿主の腸微生物バランスの改善、腸管バリアの恒常性の維持、病原体の生着の防止、細菌およびウイルス感染の防止を含む健康利益を宿主に提供し得る微小生物体(microorganisms)を指す。
【0032】
「防止」は、報酬系調節障害の症状出現を防止または回避することを指す。本発明において、用語「防止」は、二次的な防止、即ち報酬系調節障害の症状の再発または再燃の防止を指し得る。
【0033】
「処置すること」、「処置」または「軽減」は、対象が標的となる報酬系調節障害を防止または緩徐化(低減)される、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を指す。処置を必要とする対象は、報酬系調節障害を既に有する対象、および調節障害を有し易い対象、または報酬系調節障害が防止される対象を含む。本発明による組成物、医薬組成物の治療量を単独で、または別の処置と組合せて受けた後に、患者が報酬系調節障害に関連する症状の1つもしくは複数の観察可能なおよび/もしくは測定可能な低減、もしくは消失、ならびに/または報酬系調節障害もしくは状態に関連する症状の1つもしくは複数をある程度までの緩和、罹患率および死亡率の低減、ならびに生活の質の問題の改善を示す場合、個体または哺乳動物は、報酬系調節障害または状態の「処置」に成功している。疾患における処置および改善の成功を評価するための上記パラメータは、医師に周知の通常の手順により容易に測定可能である。
【0034】
「治療有効量」は、臨床結果を含む有益な、または所望の結果を実行するのに十分な量を指す。治療有効量は、1回または複数回の投与で投与され得る。一実施形態において、治療有効量は、処置される個体に依存し得る。
【0035】
「薬学的に許容できる担体」は、動物個体、好ましくはヒト個体に投与した場合に、いかなる有害反応、アレルギー反応、他の不適切な反応も生じない担体を指す。それには、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌薬、等張および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含む。ヒトへの投与の場合、調製物は、例えば米国の食品医薬品局(FDA)または欧州連合の欧州医薬品庁(EMA)などの規制当局が要求する無菌性、発熱性、一般的安全性、品質および純度基準に適合しなければならない。
【0036】
「個体」は、動物個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体を指す。幾つかの実施形態において、個体は、哺乳動物個体であり得る。哺乳動物としては、報酬系調節障害のために、医療を受けようと待機している、または医療を受けている、または医療処置の対象であった/対象である/対象になる、または経過についてモニタリングされている、全ての霊長類(ヒトおよび非ヒト)、ウシ(乳牛を含む)、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、および任意の他の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、個体は、報酬系調節障害のために、医療を受けようと待機している、または医療を受けている、または医療処置の対象であった/対象である/対象になる、または経過についてモニタリングされている、「患者」即ち、温血動物、より好ましくはヒトであり得る。幾つかの実施形態において、個体は、成体(例えば、18歳を超える個体)である。幾つかの実施形態において、個体は、小児(例えば、18歳未満の個体)である。幾つかの実施形態において、個体は、雄性である。幾つかの実施形態において、個体は、雌性である。
【0037】
他の定義が、本開示全体の文脈に現れる場合がある。
【0038】
詳細な説明
本発明は、報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物に関する。
【0039】
幾つかの態様において、本発明はまた、報酬系調節障害を防止および/または処置するための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0040】
本発明はさらに、報酬系調節障害を防止および/または処置するための薬剤の調製または製造のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0041】
別の態様において、本発明は、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の治療有効量の投与を含む、それを必要とする個体において報酬系調節障害を防止および/または処置する方法に関する。
【0042】
幾つかの実施形態によれば、パラバクテロイデス属の細菌は、P.ディスタソニス、P.ゴルドステイニイ、P.メルダエ、P.アシジファシエンス、P.ボーチェスダーホネンシス、P.チャルテ、P.チンチラ、P.コンギー、P.ファエシス、P.ゴルドニイ、P.ジョンソニイ、P.マシリエンシス、P.パセンシス、P.プロベンセンシス、P.チモネンシス、パラバクテロイデスspp.、およびそれらの組合わせを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0043】
幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、P.ディスタソニス、P.ゴルドステイニイおよびP.メルダエを含む、またはそれらからなる群において選択される。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、P.ディスタソニスまたはP.ゴルドステイニイである。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、P.ゴルドステイニイである。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、P.ディスタソニスである。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、P.メルダエである。
【0044】
実際に、パラバクテロイデス属に属する細菌は、任意の適切な手順またはそれから適合させた手順により同定され得る。特に適切な手順は、選択された栄養素、例えばマンノース、ラフィノースで発酵する能力の評価;幾つかの抗生物質に対する耐性の評価;例えばアルファガラクトシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、アルファグルクロニダーゼ、アルカリホスファターゼ、L-アルギニンアリールアミダーゼ、ロイシングリシンアリールアミダーゼ、フェニルアラニンアリールアミダーゼなどの特異的酵素活性の評価;細胞内脂肪酸プロファイル、メナキノンプロファイルの評価;マトリックス支援レーザ脱離/イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)によるそれらのプロファイルの評価;16S rRNA遺伝子配列解析に基づくそれらの系統発生上の位置の評価などの、生理学的および生化学的方法を含み得る。
【0045】
幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、単離される。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、例えば腸内微生物叢などの天然の生息地から単離される。実際に、パラバクテロイデス属の細菌は、当該分野の標準的および倫理的手順に従って、新しいまたは凍結された、特定の媒体(凍結防止剤および/または抗酸化剤を含む)中で希釈された、または希釈されていない糞便または盲腸内容物から単離され得る。
【0046】
実際に、パラバクテロイデス属の細菌は、例えば酵母カシトン脂肪酸(YCFA)(Fisher Scientific(登録商標)から販売)、コロンビア血液培地(Sigma Aldrich(登録商標)、DSMZ(登録商標)から販売)、偏性嫌気性ブロス(DSMZ(登録商標)、Neogen(登録商標)から販売)、炭水化物を有するチョップドミート培地(DSMZ(登録商標)から販売)、またはミオイノシトールがグルコースにより置き換えられた改変YCFA培地などの任意の適切な培養培地で培養され得る。
【0047】
実際にパラバクテロイデス属の細菌の培養は、約30℃~約42℃、好ましくは約35℃~約40℃の範囲内の温度、より好ましくは約37℃で実施され得る。本明細書で用いられる用語「約30℃~約42℃」は、約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃および42℃を含む。
【0048】
実際にパラバクテロイデス属の細菌の培養は、嫌気的条件、即ち、Oの非存在下で実施され得る。
【0049】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、個体から得られたパラバクテロイデス属の細菌を有する微生物叢を含む、またはそれから実質的になる。一実施形態において、微生物叢は、個体の糞便から得られた腸内微生物叢である。一実施形態において、微生物叢は、処置される個体の微生物叢と比較してパラバクテロイデス属の細菌に関して濃縮されている。
【0050】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、パラバクテロイデス属の細菌に関して濃縮されている。一実施形態において、本発明の組成物は、パラバクテロイデス属の細菌に関して濃縮されている微生物叢を含む、またはそれから実質的になる。
【0051】
実際に、パラバクテロイデス属の細菌を、パラバクテロイデス属の細菌の成長を優先的に刺激することにより濃縮してもよい。例えば濃縮は、培養の生理学的条件を改変することにより実施され得る。例としては、栄養組成物などの培養培地の組成の改変、ならびに環境pH値、温度および酸素条件などの培養条件の改変、ならびに同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、単離および濃縮されている。幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、パラバクテロイデス属から単離され、濃縮された細菌を含む。
【0053】
一実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、生存可能である。本明細書で用いられる用語「生存可能」は、適切なpH、温度、塩分、栄養素含量、O含量を含む適切な培養条件下、適切な培養培地中で活性代謝を維持することおよび/または増殖することができる細菌を指す。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、長期間持続する指数関数的成長期および/または成長静止期にある。
【0054】
一実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、非生存可能である。本明細書で用いられる用語「非生存可能」は、適切なpH、温度、塩分、栄養素含量、O含量を含む適切な培養条件下、適切な培養培地中で活性代謝を維持することおよび/または増殖することができない細菌を指す。非生存可能細菌の例は、休眠状態の細菌、死菌、および不活性菌である。
【0055】
実際に、細胞生存率(活性代謝)を、培養培地中の1種の栄養素の消費を経時的に測定することにより評価してもよい。細胞生存率(増殖)を、本発明の少なくとも1種の細菌を含有する溶液をペトリ皿に広げること、および適切な培養条件での所定のインキュベーション時間の後にコロニー数をカウントすることにより評価してもよく、あるいは細菌を、液体培地中で成長させてもよく、増殖は、適切な培養条件での所定のインキュベーション時間の後に細菌培養物の光学密度を測定することにより測定してもよい。
【0056】
一実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、低温殺菌される。一実施形態において、低温殺菌されたパラバクテロイデスおよび/またはその抽出物を、約50℃~約100℃、好ましくは約60℃~約95℃、より好ましくは約70℃~約90℃の範囲内の温度で加熱した。
【0057】
幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、低温殺菌されたパラバクテロイデス・ディスタソニス、低温殺菌されたパラバクテロイデス・ゴルドステイニイまたは低温殺菌されたパラバクテロイデス・メルダエである。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、低温殺菌されたパラバクテロイデス・ゴルドステイニイである。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、低温殺菌されたパラバクテロイデス・ディスタソニスである。幾つかの実施形態において、パラバクテロイデス属の細菌は、低温殺菌されたパラバクテロイデス・メルダエである。
【0058】
本明細書で用いられる用語「抽出物」は、細胞抽出物および細胞外抽出物の両方を包含する。
【0059】
実際に、細胞抽出物は、細胞質抽出物、膜抽出物、およびそれらの組合わせ、特に分画法から得られた抽出物を含む。細胞抽出物は、任意の標準の化学的(SDSの実施、プロテイナーゼK、リゾチーム、それらの組合わせ、および同様のもの)、および/もしくは機械的(音波処理、圧力)分画アプローチ、またはそれらから適合させたアプローチにより得られ得る。
【0060】
実際に、細胞外抽出物は、分泌画分、特に可溶性化合物またはエクソソームを包含し得る。本明細書で用いられる用語「エクソソーム」は、タンパク質、核酸、および脂質を含むエンドサイトーシス由来のナノ小胞を指すことが意図される。実際に、分泌画分は、先端技術で公知の任意の適切な方法、またはそれから適合させた方法に従って培養培地から単離および/または精製され得る。例示として細胞外抽出物は、培養培地からの分画遠心分離により;ポリマー沈殿法により;高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、それらの組合わせ、および同様のものにより、単離され得る。
【0061】
培養培地からの分画遠心分離法の非限定的例は、以下のステップを含み得る:
- 細胞を除去するための、約300×g~約500×gの速度で10~20分間の遠心分離;
- 死亡細胞を除去するための、約1,500×g~約3,000×gの速度で10~20分間の遠心分離;
- 細胞片を除去するための、約7,500×g~約15,000×gの速度で20~45分間の遠心分離;
- エクソソームをペレット化するための、約100,000×g~約200,000×gの速度で30~120分間の1回または複数回の超遠心分離。
【0062】
エクソソームを単離するための代替の方法は、例えば、exoEasy Maxi Kit(Qiagen(登録商標))またはTotal Exosome Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific(登録商標))などの市販のキットを利用してもよい。
【0063】
実際に、細胞抽出物および/または細胞外抽出物は、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質およびこれらの組合わせ、例えばリポタンパク質、糖脂質および糖タンパク質、細菌代謝産物、有機酸、無機酸、塩基、ペプチド、酵素およびコエンザイム、アミノ酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、ビタミン、生物活性化合物、無機成分を含有する代謝産物などの代謝産物、ならびに同様のものを含んでもよい。
【0064】
幾つかの実施形態において、細胞抽出物および/または細胞外抽出物は、長期間持続する指数関数的成長期および/または成長静止期に生成される。
【0065】
幾つかの実施形態において、細胞抽出物は、コハク酸塩を含む。幾つかの実施形態において、代謝産物は、コハク酸塩である。したがって本発明の目的は、報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、コハク酸塩を含む組成物である。
【0066】
本発明による報酬系調節障害は、専用の問診票の援助を受けた、または受けない臨床兆候の評価を通して診断および/またはモニタリングされ得ることが、理解されなければならない。実際に、報酬系調節障害の診断および/またはモニタリングは、認定された職員により実施され得る。
【0067】
報酬系は、少なくとも3つの成分、つまり「嗜好」成分、「欲求」成分、および「学習」成分を含む。報酬系の3つの成分の任意の1つが調節障害され得ることが、理解されなければならない。幾つかの実施形態において、3成分の1つ、2つまたは全てが、調節障害される。
【0068】
本明細書で用いられる「調節障害された」とは、成分が異常に「過剰に刺激される」(即ち、活性化される、過剰活性化される、増加する、上方制御される)こと、または異常なほど「不十分に刺激される」(即ち、阻害される、弱く活性化される、減少する、下方制御される)ことを意味する。
【0069】
一実施形態において、1つまたは複数の成分が、過剰に刺激される、または不十分に刺激される。特定の実施形態において、1つの成分が、過剰に刺激される、または不十分に刺激される。特定の実施形態において、2つの成分が、過剰に刺激される、または不十分に刺激される。特定の実施形態において、3つの成分が、過剰に刺激される、または不十分に刺激される。
【0070】
特定の実施形態において、欲求成分が、過剰刺激される。特定の実施形態において、嗜好成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、好き成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、欲求成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、学習成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、学習成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、嗜好および欲求成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、嗜好および欲求成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、嗜好および学習成分が、過剰刺激される。特定の実施形態において、嗜好および学習成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、欲求および学習成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、欲求および学習成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、3つの成分全てが、過剰に刺激される。特定の実施形態において、3つの成分全てが、不十分に刺激される。
【0071】
別の実施形態において、1つまたは複数の成分が、過剰に刺激され、1つまたは複数の異なる成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、1つの成分が、過剰に発現され、2つの成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、1つの成分が、不十分に刺激され、2つの成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、1つの成分が、過剰に刺激され、1つの成分が、不十分に刺激される。
【0072】
特定の実施形態において、嗜好成分が、不十分に刺激され、欲求成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、嗜好成分が、過剰に刺激され、欲求成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、嗜好成分が、不十分に刺激され、学習成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、嗜好成分が、過剰に刺激され、学習成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、欲求成分が、不十分に刺激され、学習成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、欲求成分が、過剰に刺激され、学習成分が、不十分に刺激される。
【0073】
特定の実施形態において、嗜好および学習成分が、不十分に刺激され、欲求成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、嗜好および学習成分が、過剰に刺激され、欲求成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、嗜好および欲求成分が、不十分に刺激され、学習成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、嗜好および欲求成分が、過剰に刺激され、学習成分が、不十分に刺激される。特定の実施形態において、欲求および学習成分が、不十分に刺激され、嗜好成分が、過剰に刺激される。特定の実施形態において、欲求および学習成分が、過剰に刺激され、嗜好成分が、不十分に刺激される。
【0074】
幾つかの実施形態において、本発明による使用のための組成物は、過剰に刺激された、または不十分に刺激された成分を正常レベルに回復させる。幾つかの実施形態において、本発明による使用のための組成物は、少なくとも1つの過剰に刺激された成分を減少させる。幾つかの実施形態において、本発明による使用のための組成物は、少なくとも1つの不十分に刺激された成分を増加させる。
【0075】
特定の実施形態によれば、報酬系調節障害は、精神障害、神経障害、およびそれらの組合わせを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0076】
幾つかの実施形態において、報酬系調節障害は、精神障害である。精神障害または精神病は、精神的健康障害とも呼ばれ、広範囲の精神的健康状態、即ち、気分、思考および行動に影響を及ぼす障害を指す。精神病の例としては、うつ、不安障害、統合失調症、摂食関連障害、強迫行動および依存性行動が挙げられる。
【0077】
幾つかの実施形態によれば、精神障害は、依存症関連障害、摂食関連障害、感情障害、強迫性障害、統合失調症、注意欠陥多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症、大うつ病(MDD)、不安障害および同様のものを含む、またはそれらからなる群におい選択される。幾つかの実施形態によれば、精神障害は、依存症関連障害、摂食関連障害、および強迫性障害を含む、またはそれらからなる群におい選択される。一実施形態によれば、精神障害は、依存症関連障害および摂食関連障害を含む、またはそれらからなる群におい選択される。
【0078】
幾つかの実施形態において、精神障害は、摂食関連障害である。
【0079】
特定の実施形態によれば、摂食障害は、拒食症、過食症、無茶食い、過体重関連障害、肥満関連障害、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0080】
本明細書で用いられる過体重関連障害の個体は、約25.0~約29.9を含むボディ・マス・インデックス(BMI)を有する。本明細書で用いられる肥満関連障害の個体は、約30.0を超えるボディ・マス・インデックス(BMI)を有する。
【0081】
一実施形態において、摂食関連障害は、拒食症である。一実施形態において、摂食関連障害は、過食症である。一実施形態において、摂食関連障害は、無茶食いである。本明細書で用いられる「無茶食い」は、無茶食い障害とも称され、強制的食物摂取、過食および/または食物依存を含む異常行動を指し、無茶食いは、過食症に関連し得る。一実施形態において、摂食関連障害は、過体重関連障害または肥満関連障害である。一実施形態において、摂食関連障害は、過体重関連障害である。一実施形態において、摂食関連障害は、肥満関連障害である。
【0082】
摂食関連障害に罹患した対象は、報酬系の嗜好成分の不十分な刺激および報酬系の欲求成分の調節障害により摂食時の快感が低減し得ることが、理解されなければならない。欲求成分の調節障害は、過剰な刺激または不十分な刺激であってもよく、それが、過剰な、または不十分な食物摂取をもたらし得る。欲求成分の調節障害は、無茶食いおよび拒食などの疾患に一部関与し得る。
【0083】
幾つかの実施形態において、摂食関連障害は、報酬系の欲求成分の調節障害に関連する。幾つかの実施形態において、摂食関連障害は、報酬系の欲求成分の過剰な刺激に関連し、好ましくは摂食関連障害は、報酬系の欲求成分の過剰な刺激および嗜好成分の不十分な刺激に関連する。幾つかの実施形態において、摂食関連障害は、報酬系の欲求成分の過剰刺激により誘導され、好ましくは摂食関連障害は、報酬系の欲求成分の過剰刺激および嗜好成分の不十分な刺激により誘導される。
【0084】
一実施形態において、無茶食いは、報酬系の欲求成分の過剰な刺激に関連する。
【0085】
幾つかの実施形態において、精神障害は、依存症関連障害である。
【0086】
幾つかの実施形態によれば、依存症関連障害は、アルコール関連依存症、薬物関連依存症、煙草またはニコチン依存症、ゲーム関連依存症、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0087】
幾つかの実施形態によれば、強迫性障害(OCD)は、確認OCD、汚染OCD、カウンティングOCD、危害OCD、ため込みOCD、周産期OCD、産後OCD、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0088】
幾つかの実施形態において、OCDおよび摂食関連障害は、同時に起こる。幾つかの実施形態において、OCDは、特定の型の食物または滋養物への個体の食欲を増加または減少させ、ここで「食欲」は、個体の報酬系の欲求および/または嗜好成分を反映する。
【0089】
幾つかの実施形態において、報酬系調節障害は、神経障害である。
【0090】
特定の実施形態によれば、神経障害は、パーキンソン病、トゥレット症候群、および同様のものを含む、またはそれらからなる群において選択される。
【0091】
幾つかの実施形態において、神経障害は、神経伝達物質ドーパミンの調節障害を含み、ここで「調節障害」は、シグナル伝達の変化、ドーパミンマーカーの発現の変化、レベルの変化、リサイクリングの変化、またはそれらの組合わせを意味する。
【0092】
幾つかの実施形態によれば、組成物は、動物個体、好ましくは哺乳動物個体、より好ましくはヒト個体に投与される。
【0093】
一実施形態において、個体は、哺乳動物個体である。一実施形態において、個体は、ヒト個体である。一実施形態において、個体は、雄性である。一実施形態において、個体は、雌性である。
【0094】
特定の実施形態によれば、組成物は、経口または直腸投与される。
【0095】
一実施形態において、組成物は、消化管に投与される。消化管は、本発明による細菌の最終場所であることが、理解されなければならない。言い換えれば、本発明による細菌は、個体の微生物叢に取り込まれることが意図される。
【0096】
一実施形態において、組成物は、固体組成物である。実際に、経口投与のために適合させた固体形態は、丸薬、錠剤、カプセル、軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、糖剤、顆粒、ガム、チューインガム、カプレット、圧縮錠、カシェ、ウエハー、糖衣丸薬、糖衣錠、または分散/もしくは崩壊錠、粉末、経口投与前に液体中の溶液もしくは懸濁液にするのに適した固体形態、および発泡錠を含むが、これらに限定されない。
【0097】
一実施形態において、組成物は、液体組成物である。実際に、経口投与のために適合させた液体形態は、溶液、懸濁液、飲用溶液、エリキシル、密封薬瓶、水薬、ドレンチ、シロップ、リカーおよびスプレーを含むが、これらに限定されない。
【0098】
幾つかの実施形態によれば、細菌は、約1×10CFU/g組成物~約1×1012CFU/g組成物、好ましくは約1×10CFU/g組成物~約1×1011CFU/g組成物、より好ましくは約1×10CFU/g組成物~約1×1010CFU/g組成物を含む用量で投与される。一実施形態において、細菌は、約1×10CFU/g組成物~約1×1011CFU/g組成物、約1×10CFU/g組成物~約1×1011CFU/g組成物、約1×10CFU/g組成物~約1×1011CFU/g組成物、約1×10CFU/g組成物~約1×1011CFU/g組成物、または約1×10CFU/g組成物~約1×1011CFU/g組成物を含む用量で投与される。
【0099】
本明細書で用いられる「CFU」は、「コロニー形成単位」を表す。本明細書で用いられる用語「約1×10CFU/g~約1×1012CFU/g」は、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011および1×1012CFU/gを含む。
【0100】
幾つかの実施形態によれば、細菌は、約1×10細胞/g組成物~約1×1012細胞/g組成物を含む用量で投与される。本明細書で用いられる用語「約1×10細胞/g~約1×1012細胞/g」は、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011および1×1012細胞/gを含む。
【0101】
幾つかの実施形態によれば、組成物が、固体組成物である場合、細菌は、約1×10CFU/g組成物~約1×1012CFU/g組成物を含む用量で投与される。本明細書で用いられる用語「約1×10CFU/g~約1×1012CFU/g」は、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011および1×1012CFU/gを含む。
【0102】
幾つかの実施形態によれば、組成物が、固体組成物である場合、細菌は、約1×10細胞/g組成物~約1×1012細胞/g組成物を含む用量で投与される。本明細書で用いられる用語「約1×10細胞/g~約1×1012細胞/g」は、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011および1×1012細胞/gを含む。
【0103】
幾つかの実施形態によれば、組成物が、液体組成物である場合、細菌は、約1×10CFU/ml組成物~約1×1012CFU/ml組成物を含む用量で投与される。本明細書で用いられる用語「約1×10CFU/ml~約1×1012CFU/ml」は、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011および1×1012CFU/mlを含む。
【0104】
幾つかの実施形態によれば、組成物が、液体組成物である場合、細菌は、約1×10細胞/ml組成物~約1×1012細胞/ml組成物を含む用量で投与される。本明細書で用いられる用語「約1×10細胞/ml~約1×1012細胞/ml」は、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×1010、5×1010、1×1011、5×1011および1×1012細胞/mlを含む。
【0105】
本発明はさらに、報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、コハク酸塩を含む組成物に関する。報酬系調節障害は、本明細書で先に記載されている。
【0106】
幾つかの実施形態において、コハク酸塩は、パラバクテロイデス属の細菌により生成される。幾つかの実施形態において、コハク酸塩は、パラバクテロイデス・ディスタソニス、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイまたはパラバクテロイデス・メルダエにより生成される
【0107】
幾つかの実施形態において、コハク酸塩は、治療有効量で対象に投与される。
【0108】
「治療有効量」とは、個体に有意な負の副作用または有害な副作用を引き起こすことなく、本明細書に定義された少なくとも1つの報酬系調節障害の1つもしくは複数の症状の進行、悪化、もしくは増悪を防止、緩徐化もしくは停止させる、または少なくとも1つの報酬系調節障害の症状を軽減する、または少なくとも1つの報酬系調節障害を治癒するのために必要かつ十分であるレベルまたは量を意味する。特定の実施形態において、コハク酸塩の有効量は、投与単位あたり、約0.001mg~約3,000mgの範囲内であり得る。
【0109】
本発明の範囲内では、約0.001mg~約3,000mgは、投与単位あたり、約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,100mg、1,150mg、1,200mg、1,250mg、1,300mg、1,350mg、1,400mg、1,450mg、1,500mg、1,550mg、1,600mg、1,650mg、1,700mg、1,750mg、1,800mg、1,850mg、1,900mg、1,950mg、2,000mg、2,100mg、2,150mg、2,200mg、2,250mg、2,300mg、2,350mg、2,400mg、2,450mg、2,500mg、2,550mg、2,600mg、2,650mg、2,700mg、2,750mg、2,800mg、2,850mg、2,900mg、2,950mgおよび3,000mgを含む。
【0110】
特定の実施形態において、コハク酸塩は、1日あたり約0.001mg/kg対象体重~約100mg/kg対象体重を送達するのに十分な投与レベルで投与される。
【0111】
本発明はさらに、コハク酸塩を含む組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、報酬系調節障害を防止および/または処置する方法に関する。特定の実施形態において、コハク酸塩の有効量は、投与単位あたり約0.001mg~約3,000mgの範囲内であり得る。
【0112】
本発明はさらに、報酬系調節障害の処置および/または防止のための薬剤の製造における使用のための、コハク酸塩を含む組成物に関する。
【0113】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物はさらに、1種または複数の追加の活性剤(複数可)を含む。
【0114】
特定の実施形態によれば、1種または複数の追加の活性剤(複数可)は、1種または複数の有益な微生物(複数可)である。言い換えれば、一実施形態において、組成物はさらに、1種または複数の有益な微生物(複数可)を含む。
【0115】
幾つかの実施形態によれば、1種または複数の有益な微生物(複数可)は、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、ペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、プレボテラ科(Prevotellaceae)、メチロバクテリウム科(Methylobacteriaceae)、トゥリシバクター属(Turicibacter)、コプロコッカス属(Coprococcus)、ノエリア属(Knoellia)、プレボテラ属(Prevotella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、アッケルマンシア属(Akkermansiaceae)、および同様のものの細菌を含む、または細菌からなる群において選択される。
【0116】
幾つかの実施形態によれば、1種または複数の有益な微生物(複数可)は、クロストリジウム科、ペプトストレプトコッカス科、プレボテラ科、メチロバクテリウム科、トゥリシバクター属、コプロコッカス属、ノエリア属、プレボテラ属、スタフィロコッカス属、および同様のものの細菌を含む、または細菌からなる群において選択される。
【0117】
特定の実施形態によれば、組成物は、薬学的に許容できる担体をさらに含む医薬組成物の形態である。
【0118】
特定の実施形態によれば、本発明による医薬組成物中で用いられ得る薬学的に許容できる担体は、イオン交換剤;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質;リン酸塩などの緩衝物質;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;植物油飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物;水;プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質;コロイダルシリカ;三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン;セルロース系物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール;ポリアクリラート;ワックス;ポリエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー;ポリエチレングリコール;羊毛脂;同様のもの;およびそれらの任意の組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0119】
特定の実施形態によれば、組成物は、栄養学的に許容できる担体をさらに含む栄養組成物の形態である。
【0120】
本明細書で用いられる用語「栄養組成物」は、液体食物製品および固体食物製品を含む任意の食物製品、添加食物、補助食物、強化食物を指すことが意図される。実際に、液体食物製品は、スープ、ソフトドリンク、スポーツドリンク、エナジードリンク、果汁、レモネード、茶、乳性飲料、および同様のものを含むが、これらに限定されない。実際に、固体食物製品は、棒キャンディー、シリアルバー、エナジーバー、および同様のものを含むが、これらに限定されない。
【0121】
幾つかの実施形態において、本発明の栄養組成物は、非治療的使用のためのもの、または非治療的方法における使用のためのものである。
【0122】
幾つかの態様において、本発明は、報酬系調節障害を防止および/または処置することにおける使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の単離細菌および/またはその抽出物の治療有効量を含む薬剤に関する。
【0123】
幾つかの実施形態において、本発明による組成物、医薬組成物、栄養組成物、医薬デバイスまたは薬剤は、滅菌性である。実際に、滅菌医薬組成物を得る方法は、GMP合成(GMPは、「製造管理および品質管理に関する基準」を表す)を含むが、これに限定されない。
【0124】
本発明はまた、報酬系調節障害を防止および/または処置することにおける使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の単離細菌および/またはその抽出物を含む、それからなる、またはそれから本質的になる医療デバイスに関する。一実施形態において、本発明による医療デバイスは、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の単離細菌および/またはその抽出物の治療有効量を含む。
【0125】
特定の実施形態によれば、組成物は、前記組成物を投与する手段をさらに含むキットの中に含まれる。
【0126】
本発明はまた、必要とする個体の微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌レベルを増加させる1種または複数の活性成分または物質を含む組成物に関する。本明細書で用いられる「微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌レベルを増加させること」は、本発明の組成物の投与前の個体の微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌の相対存在率と比較して、本発明の組成物の投与後の個体の微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌の相対存在率を増加させることを意味する。
【0127】
本発明はさらに、必要とする個体において報酬系機能を回復させる方法に関する。一実施形態において、方法は、微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌レベルを増加させる1種または複数の活性成分または物質を含む組成物の投与を含む。特別な実施形態において、方法は、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の投与を含む。別の実施形態において、方法は、コハク酸塩を含む組成物の投与を含む。一実施形態において、この方法は、非治療的である。
【0128】
本発明はさらに、それを必要とする個体の微生物叢を回復させる方法に関する。一実施形態において、方法は、微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌レベルを上昇させる1種または複数の活性成分または物質を含む組成物の投与を含む。特別な実施形態において、方法は、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の投与を含む。一実施形態において、この方法は、非治療的である。
【0129】
本発明はさらに、必要とする個体の微生物叢の中のパラバクテロイデスのレベルを上昇させるための方法に関する。一実施形態において、方法は、微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌レベルを上昇させる1種または複数の活性成分または物質を含む組成物の投与を含む。特別な実施形態において、方法は、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の投与を含む。一実施形態において、この方法は、非治療的である。
【0130】
本発明はまた、必要とする個体における報酬摂食を低減するための方法に関する。一実施形態において、方法は、微生物叢の中のパラバクテロイデス属の細菌レベルを上昇させる1種または複数の活性成分または物質を含む組成物の投与を含む。特別な実施形態において、方法は、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の投与を含む。別の実施形態において、方法は、コハク酸塩を含む組成物の投与を含む。一実施形態において、この方法は、非治療的である。幾つかの実施形態において、方法は、美味しい食物の摂取を低減する。幾つかの実施形態において、方法は、美味しい食物の摂取を低減しない。
【0131】
本発明はさらに、必要とする個体において、美味しい食事の摂取を低減するための方法に関する。一実施形態において、方法は、微生物叢の中のパラバクテロイデスのレベルを上昇させる1種または複数の活性成分または物質を含む組成物の投与を含む。特別な実施形態において、方法は、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物の投与を含む。別の実施形態において、方法は、コハク酸塩を含む組成物の投与を含む。一実施形態において、この方法は、非治療的である。
【0132】
本発明はさらに、必要とする個体において報酬系機能をモジュレートする方法であって、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物を含む組成物を、個体に投与することを含む方法に関する。
【0133】
本明細書で用いられる「報酬系機能をモジュレートする」は、報酬系の3つの成分(即ち、嗜好、欲求および学習)のうちの少なくとも1つの成分の活性を上昇または低下させることで、少なくとも1つの成分を正常レベルに回復させることを意味する。幾つかの実施形態において、1つの成分が、モジュレートされる。幾つかの実施形態において、2つの成分が、モジュレートされる。幾つかの実施形態において、3つの成分が、モジュレートされる。
【0134】
幾つかの実施形態において、方法は、欲求成分をモジュレートするためのものである。幾つかの実施形態において、方法は、欲求成分を増加または減少させるためのものである。好ましい実施形態において、方法は、欲求成分を減少させるためのものである。別の実施形態において、方法は、欲求成分を増加させるためのものである。
【0135】
幾つかの実施形態において、方法は、嗜好成分をモジュレートするためのものである。幾つかの実施形態において、方法は、嗜好成分を増加または減少させるためのものである。好ましい実施形態において、方法は、嗜好成分を増加させるためのものである。別の実施形態において、方法は、嗜好成分を減少させるためのものである。
【0136】
幾つかの実施形態において、方法は、学習成分をモジュレートするためのものである。幾つかの実施形態において、方法は、学習成分を増加または減少させるためのものである。一実施形態において、方法は、学習成分を減少させるためのものである。別の実施形態において、方法は、学習成分を増加させるためのものである。
【0137】
本発明の別の目的は、コハク酸塩を含む組成物を個体に投与することを含む、本明細書の先に記載された方法である。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1A-F】図1A~Cは、肥満マウスが痩せマウスと比較して高脂肪、高スクロース(HFHS)への食物嗜好の低下を呈することを示した一連のグラフである。痩せドナーマウス(Lean_do;四角)およびDIOドナーマウス(DIO_do;三角)の(図1A)体重変動(グラム)および(図1B)5週間後の最終的体重(グラム)。痩せドナーマウス(Lean_do;四角)およびDIOドナーマウス(DIO_do;三角)の(図1C)脂肪量増加の変動(グラム)および(図1D)最終的脂肪量増加(グラム)。(図1E)痩せドナーマウス(Lean_do;四角)およびDIOドナーマウス(DIO_do;三角)による180分のテストの間のHFHSおよびCT摂取量を示した食物嗜好性試験。(図1F図1Eからの総HFHSおよびCT摂取量を示した食物嗜好性試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=5/群)。p値は、二元配置分散分析と、続くボンフェローニ事後検定(図1A、C、E、F)、対応のないスチューデントt検定(図1B、D)の後に得られた。:p値≦0.05;**:p値≦0.01;***:p値≦0.001;****:p値≦0.0001。$$$$:p値≦0.0001 CT摂取量対HFHS摂取量。異なる上付き文字は、各時点での群および食事のタイプ(CTまたはHFHS)の間の有意なp値を表す(図1F)。
図2A-G】図2A~Gは、レシピエントマウスが糞便移植後にドナーマウスと類似の快楽的食事行動を示すこと、を示した一連のグラフである。(図2A)FMTプロトコルの実験計画。痩せレシピエントマウス(Lean_rec;四角)およびDIOレシピエントマウス(DIO_rec;三角)の(図2B)体重変動(グラム)および(図2C)最終的体重(グラム)。痩せレシピエントマウス(Lean_rec;四角)およびDIOレシピエントマウス(DIO_rec;三角)の(図2D)脂肪量増加の変動(グラム)および(図2E)最終的脂肪量増加(グラム)。(図2F)痩せレシピエントマウス(Lean_rec)およびDIOレシピエントマウス(DIO_rec)による180分の試験後の総HFHSおよびCT摂取量を示した食物嗜好性試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=7~8/群)。(図2G)痩せレシピエントマウス(Lean_rec;曲線1および3)およびDIOレシピエントマウス(DIO_rec;曲線2および4) による180分間のHFHS(曲線3および4)およびCT(曲線1および2)摂取量を示した食物嗜好性試験。p値は、二元配置分散分析と、続くボンフェローニ事後検定(図2B、D、F、G)または対応のないスチューデントt検定(図2C、E)の後に得られた。:p値≦0.05;**:p値≦0.01;$$:p値<0.01;$$$$:p値≦0.0001 CT摂取量対HFHS摂取量(図2F)。
図3A-D】図3A~Dは、肥満腸内微生物叢によるレシピエントマウスのドーパミン作動性シグナル伝達の変化を示す一連のグラフである。痩せレシピエントマウス(Lean_rec)およびDIOレシピエントマウス(DIO_rec)においてリアルタイムqPCRにより測定されたドーパミン受容体1(D1R)(図3A)、ドーパミン受容体2(D2R)(図3B)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)(図3C)およびドーパミントランスポータ(DAT)(図3D)の線条体mRNA発現。データは、平均値±SEMとして示される(n=7~8/群)。p値は、対応のないスチューデントt検定(図3C)またはノンパラメトリックマン・ホイットニー検定(図3A、B、D)の後に得られた。
図4A-F】図4A~Fは、レシピエントマウスの腸内微生物叢がドナーマウスからの腸内微生物叢と類似していることを示す一連のグラフである。(図4A~D)ドナーマウス(Lean_doおよびDIO_do)とレシピエントマウス(Lean_recおよびDIO_rec)とのOUT類似性に基づくベン図。(図4E~F)操作上の分類単位(OTU)での非加重UniFrac解析に基づく主座標分析(PCoA);(図4E)PCoA PC1対PC2;(図4F)PCoA PC3対PC2;▽(右向き三角形):Lean_do;■:Lean_rec;●:DIO_do;△:DIO_rec。
図5図5は、腸内微生物とドーパミン作動性マーカーとの相関性を示すグラフである。FDR補正後のスピアマン相関。p値は、スピアマン相関検定の後に得られた。:p≦0.05。
図6A-B】図6A~6Bは、肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウスのドーパミン作動系およびオピオイド系が不十分に刺激されることを示す一連のヒストグラムである。痩せドナーマウスからの腸内微生物叢レシピエントマウス (Lean_rec)および食事誘導性肥満ドナーマウスからの腸内微生物叢レシピエントマウス(DIO_rec)においてqPCRにより測定された、(図6A)ドーパミン受容体2(Drd2)、ドーパミン受容体1(Drd1)、チロシンヒドロキシラーゼ(Th)、ドーパミントランスポータ(Dat)、(図6B)μ-オピオイド受容体(Oprm)、κ-オピオイド受容体(Oprk)、δ-オピオイド受容体(Oprd)およびプレプロジノルフィン(Pdyn)の側坐核mRNA発現。データは、平均値±SEMとして示される(n=6/群)。p値は、対応のないスチューデントt検体またはノンパラメトリックマン・ホイットニー検定の後に得られた。:p値≦0.05。
図7A-B】図7A~7Bは、肥満マウスが腸内微生物叢により一部移行した食物報酬系の学習成分の変化を示すこと、を示す一連のヒストグラムである。図7Aは、痩せドナーマウス(Lean_do)または食事誘導性肥満ドナーマウス(DIO_do)による予備試験および試験の際にケージの美味しい食物関連の側で過ごした時間(秒)対中立関連の側で過ごした時間、の差に基づくに条件づけ場所嗜好性の嗜好性スコアを示す。図7Bは、痩せドナーマウスからの腸内微生物叢レシピエントマウス(Lean_rec)および食事誘導性肥満ドナーマウスからの腸内微生物叢レシピエントマウス(DIO_rec)による予備試験および試験の際にケージの美味しい食物関連の側で過ごした時間(秒)対中立関連の側で過ごした時間、の差に基づく条件づけ場所嗜好性の嗜好性スコアを示す。データは、平均値±SEMとして示される(n=6/群)。p値は、対応のあるスチューデントt検定の後に得られた。:p値≦0.05 試験の際の嗜好性スコアと予備試験の際の嗜好性スコアの対比。
図8A-D】図8A~8Dは、肥満ドナーからの腸内微生物が食物報酬系のための過剰なモチベーションにつながることを示す一連のグラフである。痩せドナーマウス(Lean_do)および食事誘導性肥満ドナーマウス(DIO_do)による、累進比率セッション(PR)の際の(図8A)アクティブレバー押し数、および(図8B)得られたペレット数、を示すオペラント条件づけ試験。痩せドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウス(Lean_rec)および肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウス(DIO_rec)による累進比率セッション(PR)の際の(図8C)アクティブレバー押し数、および(図8D)得られたペレット数、を示すオペラント条件づけ試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=6/群)。p値は、対応のないスチューデントt検定の後に得られた。:p値≦0.05;**:p値≦0.01;***:p値≦0.001;****:p値≦0.0001。
図9A-E】図9A~9Eは、食物摂取の恒常性調節因子がレシピエントマウス間で類似していることを示す一連のヒストグラムである。痩せドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウス(Lean_rec)および肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウス(DIO_rec)の、(図9A)グレリン、(図9B)インスリン、(図9C)レプチン、(図9D)グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、および(図9E)ペプチドYY(PYY)、の血漿濃度。データは、平均値±SEMとして示される(n=7~8/群)。p値は、痩せドナーマウスと肥満(DIO)ドナーマウスの間、および痩せレシピエントマウスと肥満(DIO)レシピエントマウスの間で別々に、対応のないスチューデントt検定またはノンパラメトリックマン・ホイットニー検定の後に得られた。**:p値≦0.01;***:p値≦0.001。
図10図10は、パラバクテロイデス・ディスタソニスがHFDの下で脂肪量増加を低減することを示すヒストグラムである。8週間後のND PBS、ND PD、HFD PBS、HFD PDの脂肪量。データは、平均値±SEMとして示される(n=9~10/群)。P値は、一元配置分散分析と、続くテューキー事後検定の後に得られた。**:P<0.01;****:P<0.0001。
図11図11は、食物嗜好性試験の際の食物報酬系の嗜好成分に及ぼすパラバクテロイデス・ディスタソニスの影響を示すヒストグラムである。ND PBS、ND PD、HFD PBS、HFD PDマウスによる3時間の試験後の総HFHSおよびCT摂取量を示す食物嗜好性試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=5~6/群)。P値は、マン・ホイットニー検定の後に得られた。**:P<0.01 ND PBS群におけるCT対HFHS、および:P<0.05 ND PD群におけるCT対HFHS。
図12図12は、パラバクテロイデス・ディスタソニスが正常食摂取マウスにおいて食物報酬を得るためのモチベーションを低減することを示すグラフである。ND PBS、ND PD、HFD PBS、HFD PDにおいてスクロースペレットを得るためのアクティブレバー押し数を示すオペラントウォール試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=6/群)。P値は、二元配置反復測定分散分析と、続くボンフェローニ事後検定の後に得られた。****:P<0.001 ND PBS対HFD PBS;+P<0.05;++++P<0.001 ND PBS対ND PD。
図13A-B】図13A~13Bは、HFDの下での体重増加および脂肪量に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響を示す一連のヒストグラムである。5週間後のND PBS、ND PG、HFD PBS、HFD PGの体重増加(図13A)および脂肪量(図13B)。データは、平均値±SEMとして示される(n=20/群。これらのデータは、2つの独立した実験の結果に対応する)。P値は、一元配置分散分析と、続くテューキー事後検定の後に得られた。:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;****:P<0.0001。
図14図14は、食物嗜好性試験の際の食物報酬系の嗜好成分に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響を示すヒストグラムである。ND PBS、ND PG、HFD PBSおよびHFD PGマウスによる3時間セッションの後の総HFHSおよびCT摂取量を示す食物嗜好性試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=10~12/群。これらのデータは、2つの独立した実験の結果に対応する)。P値は、二元配置分散分析と、続くボンフェローニ事後検定の後に得られた。:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001。
図15図15は、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイが、正常食摂取マウスにおいて食物報酬を得るためのモチベーションを低減することを示すグラフである。ND PBS、ND PG、HFD PBS、HFD PGマウスにおいてスクロースペレットを得るためのアクティブレバー押し数を示すオペラントウォール試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=11~12/群。これらのデータは、2つの独立した実験の結果に対応する)。P値は、二元配置反復測定分散分析と、続くボンフェローニ事後検定の後に得られた。**:P<0.01;***:P<0.001 ND PBS対HFD PBS;+P<0.05; +++ P<0.001 ND PBS対ND PG;£ P<0.05;££ P<0.01;£££ P<0.001 ND PBS対HFD PG。
図16図16は、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイが食物報酬系の学習成分における強い正の強化を誘導することを示すヒストグラムである。ND PBS、ND PG、HFD PBS、HFD PGマウスにおいてCPPスコアを示す条件づけ場所嗜好性試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=11~12/群。これらのデータは、2つの独立した実験の結果に対応する)。P値は、両側対応のあるt検定の後に得られた。P<0.05;** P<0.01;*** P<0.001;**** P<0.0001 予備試験対試験;P値は、一元配置分散分析と、続くテューキー事故検定の後に得られた。$ P<0.05 HFD PG試験対HFD PBS試験。
図17A-B】図17A~17Bは、コハク酸塩が肥満表現型に有益な効果を有することを示す一連のグラフである。5週間後のND PBS、ND PD、HFD PBS、HFD PDの体重(図17A)および脂肪量(図17B)。データは、平均値±SEMとして示される(n=10/群)。P値は、二元配置反復測定分散分析と、続くボンフェローニ事後検定の後に得られた。£ P<0.05;£££ P<0.001 ND対HFD;P<0.05;** P<0.01;**** P<0.0001 HFD対HFD SUC;$ P<0.05 ND対ND SUC。
図18図18は、コハク酸塩がHFD誘導性肥満の際に変化した食物報酬系の嗜好成分を改善することを示すヒストグラムである。ND、HFD、ND SUCCおよびHFD SUCCマウスにおける3時間セッション後の総HFHSおよびCT摂取量を示す食物嗜好性試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=5~6/群)。P値は、二元配置分散分析と、続くボンフェローニ事後検定の後に得られた。:P<0.05;**:P<0.01;***:P<0.001;***:P<0.0001 CT対HFHS、+P<0.05 HFD SUC HFHS対ND SUC HFHS;++ P<0.01 HFD SUC HFHS対ND HFHS;++++ P<0.0001 HFD SUC HFHS対HFD HFHS。
図19図19は、コハク酸塩が肥満マウスにおける報酬系成分≪欲求≫を逆転させて、正常食摂取マウスにおいて食物報酬を得るためのモチベーションを低減することを示すグラフである。ND、HFD、ND SUC、HFD SUCマウスにおいてスクロースペレットを得るためのアクティブレバー押し数を示すオペラントウォール試験。データは、平均値±SEMとして示される(n=6/群)。P値は、二元配置反復測定分散分析と、続くボンフェローニ事後検定(£ P<0.05;££ P<0.01;£££ P<0.001 ND対HFD)およびPR個別分析のための対応のないt検定(P<0.05 HFD SUC対HFD;$P<0.05 ND SUC対ND)の後に得られた。
【発明を実施するための形態】
【0139】
実施例
本発明をさらに、以下の実施例により例示する。
【0140】
実施例1:
材料および方法
1.マウスおよび実験計画
全てのマウス実験は、2017/UCL/MD/005の特定番号の下で、Health Sector of the UCLouvain, Universite catholique de Louvainの動物飼育のための倫理委員会により認可されており、地方倫理委員会のガイドラインに従い、実験動物の保護に関する2013年5月29日のベルギーの法律に従って実施された(合意番号LA1230314)。
【0141】
2.ドナーマウス
8週齢の特定の日和見病原体および特定病原体のない(SOPF)雄性C57BL/6Jマウス(10匹、n=5/群)(Janvier laboratories(登録商標)、フランス)のコホートを、滅菌飼料(放射線照射)および滅菌水に随意に近づくことができる、ケージごとに2匹の群で管理された環境において(22±2℃の室温、12時間明暗周期)飼育した。搬送の際に、マウスを1週間の馴化期間に供し、その間、マウスに対照食(CT、AIN93Mi、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)を与えた。その後、マウスを2群に無作為に分別し、対照低脂肪食(CT、AIN93Mi)または高脂肪食(HFD、60%脂肪および20%炭水化物(kcal/100g)D12492i、Research diet、米国NJ州ニューブランズウィック)を5週間与えた。体重、摂食量、および摂水量を、週に1回記録した。7.5MHz時間領域核磁気共鳴(TD-NMR、LF50 Minispec、Bruker(登録商標)、ドイツ ラインシュテッテン)を利用することにより、体組成を評価した。4週間の経過観察の後、マウスを代謝チャンバーに入れて、食物嗜好性試験を実施した。
【0142】
3.レシピエントマウス
3週齢の特定の日和見病原体および特定病原体のない(SOPF)雄性C57BL/6Jマウス(15匹、n=7~8/群)(Janvier laboratories(登録商標)、フランス)のコホートを、滅菌飼料(放射線照射)および滅菌水に随意に近づくことができる、ケージごとに2匹の群で管理された環境において(22±2℃の室温、12時間明暗周期)飼育した。マウスに、全移植プロトコルの際、および腸内微生物叢移植の後に、低脂肪対照食(CT、AIN93Mi)を与えた。体重、摂食量、および摂水量を、週1回記録した。7.5MHz、時間領域核磁気共鳴(TD-NMR、LF50 Minispec、Bruker(登録商標)、ドイツ ラインシュテッテン)を利用することにより、体組成を評価した。12週間の経過観察の後、マウスを代謝チャンバーに入れて、摂食量および代謝を精密に評価し、その後、食物嗜好性試験を実施した。
【0143】
4.糞便微生物叢移植
ドナー実験の終了時に、盲腸内容物を、滅菌コンテナに回収して、直ちに滅菌リンゲル緩衝液(4.5g NaCl、200mg KCl、125mg CaCl)で希釈した(1:50w/vol)。この懸濁液を、20%(w/v)スキムミルク(Nonfat dry milk、Biorad(登録商標)、2005668A)で希釈した(1:1v/v)後、-80℃で貯蔵した。ドナーコホートのCT摂食マウス2匹およびHFD摂食マウス2匹を、レシピエントマウス3または4匹につきドナー1匹で、それぞれ群あたりレシピエントマウス7匹または8匹に対する糞便微生物叢ドナーとして選択した。腸内微生物叢接種の前に、抗真菌薬(アンフォテリシンB 1mg/kg)を添加した、広域スペクトラムのほとんど吸収されない抗生物質ミックス(滅菌水で希釈された、100mg/kgアンピシリン、ネオマイシンおよびメトロニダゾール、ならびに50mg/kgバンコマイシン)の5日間の連日強制経口投与により、3週齢SOPFレシピエントマウスの腸微生物叢を枯渇させた。その後、抗生物質処置に続いて、2時間の絶食後の30分間隔での2回の経口強制投与によるPEG溶液600μl(PEG/マクロゴール4000、Colofort(登録商標)、Ipsen、フランス)の投与により腸洗浄を行った。その後、週3回で1週間にわたる300μl接種物の胃内強制経口投与により、生着を得た。抗生物質処置および接種の間、マウスを週あたり4回、清潔なケージに移した。全てのレシピエントマウスを、CT食(CT、AIN93Mi)で飼育した。
【0144】
5.代謝チャンバー
11週間の経過観察の後、レシピエントマウスを、1週間、分離して個別に飼育した後、代謝チャンバー(Labmaster、TSE systems GmbH、ドイツ バードホンブルク)に入れた。その後、マウスに、4日間の代謝評価を行った後に、食物嗜好性試験を行った。マウスを、酸素消費および二酸化炭素生成について、間接的熱量測定(Labmaster、TSE systems GmbH)により分析した。これらのパラメータを、全体重の関数として表した。赤外線ビームを基にした運動モニタリングシステムを用いて、運動活動を記録した(1時間あたりのビームブレークカウントとして表す)。センサーは、各食事の精密な摂食量を15分ごとに記録した。チャンバーの内部で、15分ごとに測定を実施した。最終的なデータ表示(合計、1日または夜間)は、測定および合計された値の全てに対応する(明期または暗期)。平均値(n=7)を、最後に群間で比較した。
【0145】
6.食物嗜好性試験
昼間の3時間の間、マウスを、代謝チャンバー(Labmaster/Phenomaster、TSE systems、ドイツ)内で2種の食事:低脂肪、対照正常食(CT、AIN93Mi、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)または高脂肪高スクロース試料(HFHS、45%脂肪および27.8%スクロース(kcal/100g)D17110301i、Research diet、米国NJ州ニューブランズウィック)に暴露した。センサーは、各食事の精密な摂食量を15分ごとに記録した。
【0146】
7.組織採取
各実験の終了時に、イソフルラン(Forene(登録商標)、Abbott、英国)での麻酔の前に、マウスを摂食させて、HFHSに1時間暴露した。これは、食物嗜好性試験の条件を模倣して、ドーパミン作動性食物報酬系を模倣することを目的とする。その後、マウスを失血および頸椎脱臼により、安楽死させた。線条体、側坐核、前頭前皮質および尾状核被殻を、精密に解剖して、盲腸内容物を回収し、直ちに液体窒素に浸漬し、その後、さらなる分析のために-80℃で貯蔵した。
【0147】
8.RNA調製およびリアルタイムqPCR分析
TriPure試薬(Roche(登録商標))を用いて、総RNAを線条体から調製した。各試料2μlをAgilent(登録商標) 2100 Bioanalyzer(Agilent(登録商標) RNA 6000 Nano Kit、Agilent)で泳動することにより、総RNAの定量および完全性分析を実施した。得られたRNA完全性の数(RIN)が、6未満である場合、試料をさらなる分析から除外した。GoScript(登録商標) Reverse Transcriptaseキット(Promega(登録商標)、米国WI州マディソン)を用いた総RNA 1μgの逆転写により、cDNAを調製した。QuantStudio 3 リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific(登録商標)、米国MA州ウォルサム)で、リアルタイムPCRを実施した。Rpl19 RNAを、ハウスキーピング遺伝子として選択した。全ての試料を二重測定で実施し、データを2-ΔΔCT法に従って解析した。増幅産物の同一性および純度を、増幅終了時の融解曲線分析により評価した。リアルタイムqPCRに用いたプライマーの配列は、表1で入手可能である。
【表1】
【0148】
9.マウス盲腸試料からのDNA単離および配列決定
盲腸内容物を回収して、使用まで-80℃で凍結貯蔵した。メタゲノムDNAを、改変した製造業者の使用説明書に従って、QIAamp(登録商標) DNA Stool Mini Kit(Qiagen(登録商標)、ドイツ ヒルデン)を用いて盲腸内容物から抽出した(Everard et al., ISME J 2014; 8:2116-30参照)。16S rRNA遺伝子のV1~V3領域を、以下のユニバーサル真正細菌プライマーを用いて、マウスの盲腸微生物叢から増幅した:27Fmod(5’-agrgtttgatcmtggctcag-3’;配列番号11)および519Rmodbio(5’-gtnttacngcggckgctg-3’;配列番号12)。精製アンプリコンを、MiSeq(登録商標)を用いて製造業者のガイドラインに従って配列決定した。配列決定をMR DNA(www.mrdnalab.com、米国TX州シャロウォーター)で実施した。配列を逆多重化して、QIIMEパイプライン(デフォルトオプション:Q25、最小配列長=200bp、最大配列長=1,000bp、アンビギュアス塩基(ambiguous bases)の最大数=6、ホモポリマーの最大数=6、プライマーミスマッチの最大数=0を用いたv1.9)を用いて処理した。分析した22の試料に関して、102のOUTが同定されている(97%の類似性)。試料あたりの配列最小数は、48,170であり、試料あたりの配列最大数は、86,360であった。試料あたりの中央配列数は、61,143であり、試料あたりの平均配列数は、63,7392±10,798(標準偏差)であった。配列決定の工程から得られたQ25配列データを、QIIME1.9パイプラインで解析した。手短に述べると、配列のバーコードおよびプライマーを削除した。その後、配列1000bpを除去し、アンビギュアス塩基のコールおよび6bpを超えるホモプライマーランを有する配列も除去した。配列をノイズ除去して、操作上の分類単位(OTU)を作成した。キメラも除去した。3%多様度(97%類似性)でクラスタリングすることにより、OTUを定義した。厳選されたGreengenesデータベースに対してBLASTnを用いて、最終的なOTUを分類学的に分類した。試料間の非加重UniFrac距離行列を用い、過去に34、35、36、37に記載されたとおり、PCoAをQIIMEで作成した。データは、要求に応じて入手できる。
【0149】
10.統計解析
先に記載された微生物叢分析を除き、Windows用のGraphPad Prism(登録商標) version 8.1.2(GraphPad(登録商標) Software、米国CA州サンディエゴ)を用いて、統計解析を実施した。データを、平均値±SEMとして表す。2群間の差を、対応のないスチューデントt検定を用いて評価した。フィッシャー検定に従って群間で有意に異なる相違がある場合、ノンパラメトリック(マン・ホイットニー)検定を実施した。2群を超える群間の差は、一元配置分散分析または反復測定であれば二元配置分散分析を用い、その後、それぞれテューキーまたはボンフェローニ事後検定を用いて評価した。分散が群間で有意に異なる相違がある場合、ノンパラメトリッククラスカル・ウォリス検定の後、ダネット事後検定を実施した。
【0150】
11.条件づけ場所嗜好性試験
食物報酬系の学習成分を、以前に記載されたとおりバイアス装置(biased apparatus)(Phenotyper chambers、Noldus、オランダ)で明期の終了時に実施された条件づけ場所嗜好性(CPP)試験により、ドナーおよびレシピエントマウスにおいて評価した。この行動観察用ケージは、滑らかな床または粗い床および黒色の壁または縞模様の壁を特徴とする2つの区画に分離されている。全ての区画を、各セッションの前および後に完璧に清掃した。各セッション(予備試験、トレーニング、試験)を、厳密に30分間継続する。運動活性を赤外線カメラモニタリングシステムで記録し、提供されたソフトウエア(EthoVision XT 14)で解析した。1日目に、予備試験を利用して、ベースラインの嗜好性の低い区画(マウスが自発的に過ごした時間の短い区画)を決定し、報酬関連区画として定義する(バイアスCPP法)。2日目~9日目に、ドナーおよびレシピエントマウスが、それぞれ嗜好性の低い区画および最も嗜好性のある区画において、報酬刺激(Reese’s(登録商標))を用いた、または用いない8種のトレーニングを受けた(各区画で4セッション)。試験の際、マウスは、ケージの各区画を自由に走ることができ(報酬刺激がない)、各区画で過ごした時間を記録する(EthoVision XT14)。嗜好性スコアは、予備試験および試験の際の、美味しい食物関連の側で過ごした時間(複数可)対ケージの中立関連の側で過ごした時間、の差に基づく。
【0151】
12.オペラントウォール試験
欲求成分は、報酬系を得るためのモチベーションにつながり、これを、以前に記載されたとおりドナーおよびレシピエントマウスにおいてオペラントウォール試験により評価する。試験の各セッションを、オペラント条件づけチャンバー(Phenotyper chambers、Noldus、オランダ)で明期の終了の際に実施し、提供されたソフトウエア(Ethovision XT 14)で解析した。手短に述べると、マウスは、ホームケージ内のオペラントウォールに断続的に近づいた。オペラントウォールシステムは、2つのレバーと、2つの照明と、ペレットディスペンサーと、で構成される。1つのレバーは、任意にアクティブと指定され、つまりこのレバーを押すことが、スクロースペレット(5-TUTピーナッツバター風味スクロースペレット、TestDiet、MO州セントルイス)の送達を開始し、点灯に関連することを意味する。その一方で、消灯に関連するもう1つのレバーは、任意に非アクティブと指定され、報酬を届けることは決してない。マウスを、FR計画(1つのレバーを押すことが、1つの報酬に対応する)によりシステムで一晩に2回トレーニングし、その後、1時間30分の2セッションを行った。その後、マウスをPRセッション(2時間)に移し、報酬を得るためのレバー押し数を、各ペレットで漸増させる(n+3)。異なるセッションの際にアクティブレバーを押さなかったマウスを、除外した。
【0152】
13.他の刺激
例えばアルコールまたは薬物などの食物および異なる報酬刺激を、使用してもよい。
【0153】
結果
1.DIOドナーマウスは快楽的摂食の変化を示す
最初、ドナーマウス10匹を低脂肪食(対照、CT)または高脂肪食(HFD)に5週間暴露して、それぞれ痩せまたは肥満の表現型(食事誘導性肥満、DIO)を誘導した。予想どおり、HFDを摂食したマウスは、CT摂食マウスと比較して、体重の12%増加(図1A~B)および脂肪量増加の230%増加(図1C~D)を示した。その後、摂食の快楽成分を試験するために、これらのマウスにおける美味しい食物消費に関連する快感を分析した。
【0154】
自然な快楽的食物摂取を評価するために、ドナーマウスを食物嗜好性試験に供して、そこで初めて、美味しい食事(高脂肪高スクロース、HFHS)に暴露した。この食物嗜好性試験の際、ドナーマウスを、HFHS食および低脂肪対照食(CT)に明期の3時間暴露して、各食事の消費を記録した(図1Eおよび図1F)。痩せおよび肥満マウスは両者とも、食物嗜好性試験の際にCTより多くのHFHSを摂食したため、CTよりもHFHS食を好んだ。しかし痩せマウスは、試験開始からCTよりも有意に多くのHFHSを摂食したが、DIOマウスは、わずか90分後に対照食より美味しい食事を有意に好んだため、痩せマウスは、HFHSに対してより急速なトロピズムを示した(図1E)。総括すると、DIOは、美味しい食事への魅力をより小さく感じ、全食物嗜好性試験で痩せマウスより58%少ない(p<0.0001)HFHSを摂食した(図1F)。
【0155】
2.肥満マウスの腸内微生物叢移植は肥満に関連する快楽的摂食障害を変化させる
肥満に関連する快楽的摂食障害における腸内微生物の原因的役割を試験するために、痩せマウス2匹および肥満マウス2匹からの腸内微生物叢を、それぞれレシピエントマウス7匹および8匹に移植した。全てのレシピエントマウスが、全実験の際に同じ低脂肪対照食を摂食した(図2A)。
【0156】
痩せおよび肥満腸内微生物叢のレシピエントマウス(それぞれLean_recおよびDIO_rec)は、体重(図2B~C)および脂肪量増加(図2D~E)に関していかなる差も示さなかった。しかし、DIO腸内微生物レシピエントマウスは、経時的により多くの脂肪量を増加させる傾向があり、64日目は統計学的有意性があった(図2D)。痩せおよび肥満腸内微生物叢のレシピエントマウスのエネルギー代謝を調べるために、代謝チャンバー内のO消費およびCO生成の精密測定も実施した。肥満または痩せ腸内微生物叢を受けたマウスの間に、いかなる差も観察されなかった。これらの結果から、ドナーマウスが、糞便移植後の脂肪量および体重に関してそれらの肥満表現型をレシピエントマウスに移行させないことが示唆される。
【0157】
興味深いこととして、全経過観察の際、痩せおよび肥満腸内微生物叢のレシピエントマウスは、類似の対照食摂取を有した。しかし、美味しい食物への最初の暴露(即ち、食物嗜好性試験)の間に、HFHS摂取の差が明らかとなった(図2Fおよび図2G)。痩せ腸内微生物叢のレシピエントマウスは、DIO腸内微生物叢のレシピエントマウスよりも急速なHFHS嗜好性を呈した。実際に、痩せ腸内微生物叢のレシピエントマウスは、試験の90分後にCT試料より有意に多くのHFHSを摂取したが、DIO腸内微生物叢のレシピエントマウスにおけるHFHS摂取とCT摂取との間の差は、150分後および180分後に限って有意であった(図2G)。ドナーマウスと同様に、2つのレシピエントマウス群は、CT試料より美味しい食事への嗜好性を示した。際立っていたこととして、総HFHS摂取は、痩せ腸内微生物叢のレシピエントマウスと比較してDIO腸内微生物叢のレシピエントマウスにおいて40%低いことは重要であった(p<0.01、図2F)。これらの結果は、痩せおよびDIO腸内微生物叢のレシピエントマウスが、快楽的摂食行動に関してそのそれぞれの微生物叢ドナーと類似のパターンを示し、この効果が肥満発症または非快楽的摂食行動とは独立していることを実証する。注目すべきこととして、試験の際の歩行活性が、レシピエントマウス間で同等であり、糖および脂肪量が高いこの新規食物に対する類似の探索的行動を示唆している。要約すると、肥満に関連する快楽的摂食行動の変化における腸内微生物叢の原因的役割は、解明されなかった。
【0158】
3.線条体内のドーパミン作動性マーカーはDIOレシピエントマウスにおける食物報酬系の機能低下を示唆する
美味しい食物摂取に関連する快感は、主に中脳皮質系のドーパミン作動性経路により駆動される。事実、脂肪および糖が豊富な食事の摂取は、食物を摂取することに由来する快感の自己報告レベルに比例した背側線条体でのドーパミン放出に関連することが示されている。ドーパミン受容体1および2(D1RおよびD2R)は、報酬系の最も多く発現されるドーパミン受容体であり、科学文献は、ヒトおよびげっ歯類の肥満の状況でのこれらの受容体の下方制御を記載しているが、このことはそれに応じて美味しい食物摂取に関連する快感の低減に関連する。肥満腸内微生物叢の移植は、肥満に関連する食物嗜好変化を再現することから(図2F)、これがドーパミン作動性マーカーの改変に関連するかについては、疑問があった。それゆえ、レシピエントマウスの線条体内のドーパミン作動性マーカーの発現を、qPCRにより調べた。
【0159】
結果から、微生物叢移植の後、DIOレシピエントマウスが、痩せレシピエントマウスと比較して線条体内で少なくとも60%低いDrd1およびdrd2を発現することが示されるが、これは、Lean_rec群における高い変動により統計学的閾値を満たすことができなかった(p<0.05、図3A~B)。ドーパミンを合成する律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現もまた、痩せ微生物叢を受けたマウスと比較して肥満微生物叢を受けたマウスで減少した(50%)(p<0.05、図3C)。これらの結果と一致して、放出されたドーパミンの80%前後の再捕捉を担うドーパミントランスポーター(DAT)は、Lean_recと比較してDIO_recにおいて2倍多く発現され(p>0.05、図3D)、肥満腸内微生物叢を移植されたマウスにおけるドーパミン作動系の低い機能が示唆された。注目すべきこととして、ドーパミン作動性マーカーの発現の改変は、歩行活性の変化に関連せず、線条体で観察されたqPCR結果が運動機能よりむしろ報酬系に特異的であることが示唆される。
【0160】
線条体におけるドーパミン作動系の他に、尾状核被殻、側坐核および前頭前皮質のような他の脳領域が、食物報酬系に関与する。それゆえ、これらの領域におけるドーパミン作動性マーカーのmRNAレベルをさらに調べて分析した(表2)。
【表2】
【0161】
前頭前皮質および尾状核被殻における痩せ腸内微生物叢のレシピエントマウスと肥満腸内微生物叢のレシピエントマウスの間にはいかなる差も、観察されなかった。しかし、結果は、側坐核内のドーパミン作動性マーカー発現のわずかなモジュレーションを示す傾向がある。
【0162】
これらの結果を確認するために、別の系列の実験を実行したが、この時、試験の際にカロリー制限条件を維持されたマウスを用いた。痩せおよび肥満ドナーからの腸内微生物レシピエントマウスの側坐核(NAc)内のドーパミン作動性マーカーおよびオピオイドマーカーの発現を検査した(図6A~B)。ドーパミン受容体2(Drd2)、ならびにドーパミン合成酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(Th)の発現の有意な減少が、痩せドナーからの腸内微生物のマウスレシピエントと比較して、肥満ドナーからの腸内微生物のマウスレシピエントのNAc内で見出された。ドーパミン受容体1(Drd1)およびドーパミントランスポータ(Dat)は、痩せマウスからの腸内微生物叢を移植されたマウスと比較して、肥満マウスからの調製微生物叢を移植されたマウスにおいて低減する傾向があった(図6A)。
【0163】
オピオイド系もまた、食物報酬系に関与し、肥満状態で鈍くなることが示されているため、幾つかの重要なマーカーの発現を測定したところ、DIO_recがμ-オピオイド受容体(Oprm)のNAc発現の有意な低減を有し、κ-オピオイド受容体(Oprk、p=0.05)およびダイノルフィンの前駆体(Pdyn、プレプロダイノルフィン、p=0.06、図6B)の低減に関して類似の傾向を有することが見出された。δ-オピオイド受容体(Oprd)の発現は、Lean_recとDIO_recとの間で異ならなかった(図6B)。
【0164】
4.肥満ドナーから痩せレシピエントマウスへの糞便材料移植は効率的である
腸内微生物叢移植の効率を検証するために、ドナーおよびレシピエントマウスからの盲腸内容物の細菌組成を、16S rRNA配列決定を利用して分析した。ドナーとレシピエントの一般的OTU(操作上の分類単位)を、食物嗜好性試験の直後の各実験終了時と比較した(図4A~D)。各ドナー群(CT摂食またはHFD摂食)からのマウス2匹が、それぞれLean_recレシピエントマウス7匹およびDIO_recレシピエントマウス8匹のドナーであり、レシピエントマウス3匹または4匹につきドナーマウス1匹とした。ベン図は、ドナーとレシピエントとでOTUの高い類似性(50%を超える)を示し、ドナーからの腸内微生物叢が抗生物質処置レシピエントに生着したことが確認された(図4A~D)。
【0165】
さらに、PCoAで表されたとおり、肥満ドナーおよび肥満腸内レシピエントマウスは、基本成分PC2に従って痩せドナーおよび痩せ腸内微生物叢のレシピエントマウスと異なる腸内微生物叢プロファイルを有する(図4E~F)。
【0166】
5.パラバクテロイデスは快楽的食物摂取を制御する腸・脳相関における潜在的連鎖を表す
肥満の状況下での腸内微生物叢と食物報酬系との潜在的連鎖を強調するための予備的アプローチとして、スピアマンの相関係数を用いて、食物報酬系の複数のパラメータと腸内微生物叢の複数のパラメータとの関連性を確定した。ドナーおよびレシピエントマウスからのデータを組み合わせて、相関行列を作製した。表から18のOUTが食物嗜好性試験の間に測定された総HFHS摂取と相関することが示された(表3)。加えて、正の相関が、ペプトコッカス科の未同定の属とD1R、D2RおよびTHのmRNA発現の間に見出された(表3)。
【表3】
【0167】
しかし、FDR(偽発見率)法を用いた多重比較のための補正後では、パラバクテロイデスのみが、HFHS摂取量と高度に正に相関したままであった(図5)。これにより、マウスが有するパラバクテロイデスが多いほど、マウスが食物嗜好性試験の際に摂食するHFHSが多く、この行動が、機能性報酬系を暗示することが示唆された。
【0168】
6.肥満ドナーからの糞便材料移植は学習成分を変化させる
学習ことにおける腸内微生物の役割を検査するために、食物報酬系の学習成分を、ドナーおよびレシピエントマウスにおいてCPP試験により評価した(図7A~B)。この試験の目的は、食物刺激が取り除かれた後でもその刺激を有した区画を嗜好するようにマウスが条件づけされ得る程度を評価することである。したがって、目標は、報酬系を刺激する美味しい食物ペレット(Reese’s(登録商標))を用いたトレーニングセッションの際にケージの一方の側でマウスを拘束した後に、マウスがその側で過ごす時間を増加させることであった。予備試験を用いて、マウスがベースラインで区画のいずれかに既存の嗜好性を有したかどうかを決定する。
【0169】
痩せおよび肥満の両方のドナーマウスが、予備試験の際より試験の際に美味しい食物に関連する区画でより多くの時間を過ごし、マウスの両方が、トレーニングセッション後にケージの一方の側に対する初期嗜好性を逆転させることができることが示唆された(図7A)。しかし、食物報酬系の学習成分は、肥満マウスより痩せマウスでより効率的である。実際に、中立区画と比較した美味しい食物に関連する区画で過ごした時間の差は、痩せマウスと比較して肥満マウスでより小さい傾向がある(p=0.1、図7A)。
【0170】
痩せドナーからの腸内微生物叢のレシピエントは、1つの区画での初期嗜好性を逆転させて、予備試験と比較して試験の際に美味しい側で過ごす時間を有意に増加させた(図7B)。反対に、マウスが、試験の際に美味しさに関連する区画でより多くの時間を過ごしたとしても、肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウスは、予備試験と比較して試験の際の、美味しい側の嗜好性スコアに有意差を示さなかった(図7B)。DIO_rec群は、ケージの一方の側での初期嗜好性を逆転させることができず、それらのマウスがケージのその側を美味しい食物に誘導された快感と有効に関連づけることができないことを反映した。これらの結果は、肥満ドナーからの腸内微生物叢のレシピエントマウスが食物報酬系の学習成分の調節障害を有することを示唆している。まとめとして、これらのデータから、肥満関連の学習成分の変化がドナーマウスとレシピエントマウスの間のFMTを通して部分的に移行することが、実証される。
【0171】
7.肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウスは食物報酬に対する過剰なモチベーションを示す
食物報酬を得るための欲求成分またはモチベーションを評価するために、ドナーおよびレシピエントマウスに、報酬のスクロースペレットを受け取るためにレバーを押さなければならないオペラントウォール試験を供した(図8A~D)。試験の最初の3セッションは、1つの食物報酬が1つのレバー押しを要求する定比率(FR)原理に基づいた。その後、累進比率セッション(PR)において、食物報酬を得るためのモチベーションを評価するために、マウスは、それぞれの新しいスクロースペレットを得るために徐々に増加する回数(n+3)でレバーを押さなければならなかった。
【0172】
肥満マウスは、痩せマウスと比較してPRセッションの際にレバーを有意に少ない回数押した(図8A)。得られた報酬ペレットの数もまた、PRセッションの際、痩せドナーより肥満ドナーで有意に少ない(図8B)。PRセッションは、報酬を得るためのモチベーションのより良好な反映であるため、本発明者らのデータは、肥満が食物報酬系の欲求成分の変化に関連することを示している。
【0173】
驚くべきことに、肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウスは、痩せの腸内微生物叢レシピエントマウスと比較して、PRセッション2、3および4の際にレバーをより多く押した(PR2の際p=0.05、PR3の際p<0.05、PR4の際p=0.07)(図8C)。この傾向は、PRセッション2、3および4の際に肥満ドナーからの腸内微生物を接種されたマウスにより得られた報酬の数がより多いことにより反映された(図8D)。これらの結果から、肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウスが報酬を得るためのモチベーションを評価するこの試験では、肥満ドナーと反対のやり方で行動し、それが、レシピエントマウスが食物報酬系を得るためにドナーのおよそ100倍多くレバーを押したためであることが、示唆される。レバー押し回数の絶対値がLean_rec群とLean_do群とで類似していることは、注目に値する(図8A、8C)。肥満ドナーからの腸内微生物叢レシピエントマウスは、特により高い値のアクティブレバー押しを示し(図8D)、痩せ状態で観察された正常な動機のある行動よりむしろ食物報酬に対する過剰なモチベーションを示唆した。
【0174】
8.食物報酬に対する過剰なモチベーションは食物摂取の恒常性調節因子のモジュレーションに関連しない
肥満マウスからの腸内微生物が痩せ状態(レシピエントマウス)の行動的な神経報酬系にどのように作用し得るかを理解するために、恒常性食物摂取の調節に関与し、食物報酬系にも影響を及ぼし得る腸・脳相関の複数のメディエータを分析した。それゆえ、グレリン、インスリン、レプチン、GLP-1およびPYYを、レシピエントマウスおよびドナーマウスの血漿で測定した。血漿で分析された恒常性調節因子のいずれも、痩せドナーの腸内微生物叢レシピエントマウスと肥満ドナーの腸内微生物叢レシピエントマウスとで異ならなかった(図9A~E)。対照的に、痩せマウスと比較した、グレリンの有意な減少(図9A)、インスリン血症(図9B)およびレプチン血症(図9C)の有意な増加などの肥満に関連する典型的なホルモン変化が、肥満ドナーマウスの血漿で観察された。GLP-1およびPYYの血漿レベルは、痩せドナーマウスと肥満ドナーマウスとで有意に異ならなかった(図9D~E)。
【0175】
実施例2:
材料と方法
1.マウスおよび実験計画
全てのマウス実験は、2021/UCL/MD/061の特定番号の下で、Health Sector of the UCLouvain, Universite catholique de Louvainの動物飼育のための倫理委員会により認可されており、地方倫理委員会のガイドラインに従い、実験動物の保護に関する2013年5月29日のベルギーの法律に従って実施された(合意番号LA1230314)。
【0176】
9週齢の特定の日和見病原体および特定病原体のない(SOPF)雄性C57BL/6Jマウス(Janvier laboratories、フランス ル・ジュネスト=サン=ティスル)のコホートを、滅菌飼料(放射線照射)および滅菌水に随意に近づくことができる、ケージごとに2匹の群で管理された環境において(22±2℃の室温、12時間明暗周期)飼育した。搬送の際に、マウスを1週間馴化させ、その際、マウスに対照食(CT、AIN93Mi、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)を与えた。その後、マウスを4群に無作為に分別し(40匹、n=10/群 ND PBS、ND PD、HFD PBS、HFD PDと命名)、対照低脂肪食(CT、AIN93Mi)または高脂肪食(HFD、60%脂肪および20%炭水化物(kcal/100g)D12492i、Research diet、米国NJ州ニューブランズウィック)を8週間与えた。1.2%グリセロールを含有する嫌気性PBS 200μL中のマウスあたり2×10コロニー形成単位(CFU)のパラバクテロイデス・ディスタソニス(PD)の経口投与による連日処置を、ND PDおよびHFD PD群で実施した。1.2%グリセロールを含有する同量の滅菌PBSの経口投与による連日処置を、NDおよびHFD対照群で実施した。体重を、週に1回記録した。7.5MHz時間領域核磁気共鳴(TD-NMR、LF50 Minispec、Bruker、ドイツ ラインシュテッテン)を利用することにより、体組成を週1回評価した。4週間の経過観察の後、マウスを行動ケージ(Phenotyper、Noldus、オランダ ヴァーヘニンゲン)に入れて、食物嗜好性試験およびオペラントウォール試験を実施した。最後の試験の際、以前に記載されたとおり、マウスを食事制限し、体重を初期体重(行動試験前)の85%に維持した。カロリー制限により、刺激に対する報酬応答を増強することが可能となった。
【0177】
2.パラバクテロイデス・ディスタソニスの培養および調製
パラバクテロイデス・ディスタソニスを、嫌気性液体YCFA培地および寒天YCFA培地で培養した。パラバクテロイデス・ディスタソニスを、遠心分離(4℃、4000gで20分間を2回)により回収して、25%グリセロールを含む滅菌PBSに再懸濁させて、直後に嫌気性バイアル内で凍結し、-80℃で貯蔵した。投与前に、細胞ペレットを嫌気性PBSに再懸濁させた。
【0178】
3.食物嗜好性試験
昼間の3時間の間、マウスを、行動ケージ(Phenotyper chambers、Noldus、オランダ ヴァーヘニンゲン)内で2種の食事:低脂肪対照食(CT、AIN93Mi、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)または高脂肪高スクロース食(HFHS、45%脂肪および27.8%スクロース(kcal/100g)D17110301i、Research diet、米国NJ州ニューブランズウィック)に暴露した。食物摂取量を、満腹状態にある明期終了時の3時間セッションの際に記録した(試験の前および後は飼料に随意に近づくことができた)。試験の際に重要な食物こぼしを示すマウスは、除外されている。
【0179】
4.オペラントウォール試験
欲求成分は、報酬を得るためのモチベーションに連鎖しており、これを、以前に記載されたオペラントウォール試験を一部変更して評価する。試験の各セッションを、オペラント条件づけチャンバー(Phenotyper chambers、Noldus、オランダ)で明期の終了の際に実施し、提供されたソフトウエア(Ethovision XT 14)で解析した。マウスは、ホームケージ内のオペラントウォールに断続的に近づいた。オペラントウォールシステムは、2つのレバーと、2つの照明と、ペレットディスペンサーと、で構成される。1つのレバーは、このレバーを押すことがスクロースペレット(5-TUTピーナッツバター風味スクロースペレット、TestDiet、MO州セントルイス)の送達を開始し、点灯に関連することを意味するアクティブと任意に指定される。その一方で、消灯に関連するもう1つのレバーは、任意に非アクティブと指定され、報酬を決して送達しない。マウスを、定比率計画(アクティブレバー押しでの1つのレバー押しが、1つの報酬に対応する)で一晩に2回システムでトレーニングし、その後、1時間30分の4セッションに供した。マウスをその後、累進比率セッション(PR)(2時間)に移した。PRセッションの際、報酬を得るためにアクティブレバーのレバー押し数を、各ペレットで漸増させる(n+3)。異なるセッションの際にアクティブレバーを押さなかったマウスを、除外した。
【0180】
5.統計解析
Windows用のGraphPad Prism version 9.1.2(GraphPad Software、米国CA州サンディエゴ)を用いて、統計解析を実施した。データを、平均値±SEMとして表す。群間の差を、一元配置分散分析と、続くテューキー事後検定を用いて評価した。群間の差および異なる時点を、二元一次反復測定分散分析と、続くボンフェローニ事後検定を用いて評価した。外れ値を、グラブス検定の後に除外した。
【0181】
6.他の刺激
例えばアルコールまたは薬物などの食物と異なる報酬刺激を使用してもよい。
【0182】
結果
1.脂肪量増加に及ぼすパラバクテロイデス・ディスタソニスの影響
脂肪量に及ぼすパラバクテロイデス・ディスタソニスの影響を評価するために、マウスをNDおよびHDFに8週間暴露し、パラバクテロイデス・ディスタソニスまたはビヒクル(PBS)の連日投与を、それぞれND PD/HFD PDおよびND PBS/HFD PBS群で実施した(図10)。予想どおり、HFDを摂取したマウスは、NDマウスと比較して経時的に有意な脂肪量増加を示した。さらに、脂肪量の有意な減少もまた、HFD PBSと比較してHFD PDマウスにおいて観察される(P<0.05)。
【0183】
2.食物報酬系の嗜好成分に及ぼすパラバクテロイデス・ディスタソニスの影響
快楽的食物摂取の試験の一部として、食物嗜好性試験を、異なる食事(NDおよびHFD)への暴露の4週間目に実施した。この試験の際、マウスを対照食(CT)ならびに美味しい新規食物(HFHD)に暴露し、これにより食物報酬系の「嗜好」成分を評価することができる(図11)。試験の際に摂取された対照(CT)および美味しい食物(HFHD)の量を比較すると、ND PBSマウスは、CTより有意に多いHFHDを消費したが(マン・ホイットニー検定に従ってp<0.01)、有意差は、HFD PBS群で観察されなかった。
【0184】
これらの結果は、HFD誘導性肥満の際の食物摂取の嗜好成分が損なわれたことを実証している。美味しい食物消費および対照食物消費は、HFD PBSマウスとHFD PDマウスの間で有意差が観察されなかった。
【0185】
これらの結果は、パラバクテロイデス・ディスタソニスが痩せまたは肥満のどちらの状況下でも報酬系の嗜好成分に影響を及ぼさないことを示唆している。
【0186】
3.食物報酬を得るためのモチベーションに及ぼすパラバクテロイデス・ディスタソニスの影響
食物報酬系の異なる成分、特に食物報酬を得るためのマウスのモチベーション(即ち、食物摂取の「欲求」成分)をさらに特徴づけるために、オペラントウォール試験を実施して、マウスのモチベーションを、累進比率セッションの際に評価した(図12)。この試験から、PR1、PR2およびPR3セッションの際のND PBSマウスと比較して、HFD PBSマウスではスクロースペレットを得るためのアクティブレバー押し数の有意な減少が示され、肥満の際の報酬系の欲求成分に関連する行動の欠如を反映した。HFD PBS群とHFD PD群の間で、アクティブレバー押し数に有意差は観察されなかった。
【0187】
驚くべきことに、NDの下でパラバクテロイデス・ディスタソニスを受けたマウスは、PR3(P<0.0001)およびPR4(P<0.05)セッションの際のND PBSマウスと比較してアクティブレバーを有意に少ない回数、押した。正常食の下での対照条件では、アクティブレバー押しの低減は、無茶食いの低減に関連したため、これらの結果は、痩せの状況下での食物報酬の欲求の制御におけるパラバクテロイデス・ディスタソニスの潜在的有益効果を明らかにする。
【0188】
これらの結果は、摂食関連障害を処置するためのパラバクテロイデス・ディスタソニスの使用、より一般的には、典型的には報酬刺激に対して強迫的行動を有する患者において、欲求成分が過剰に刺激される調節障害を処置するための報酬系の使用を裏付ける。
【0189】
実施例3:
材料と方法
1.マウスおよび実験計画
実施例2参照
【0190】
2.パラバクテロイデス・ゴルドステイニイの培養および調製
パラバクテロイデス・ゴルドステイニイ(19448)を、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ、ドイツ)から購入した。パラバクテロイデス・ゴルドステイニイを嫌気性液体YCFA培地および寒天YCFA培地で培養した。パラバクテロイデス・ゴルドステイニイを、遠心分離(4℃、4000gで20分間を2回)により回収して、25%グリセロールを含む滅菌PBSに再懸濁させ、直後に嫌気性バイアル内で凍結し、-80℃で貯蔵した。投与前に、細胞ペレットを嫌気性PBSに再懸濁させた。
【0191】
3.食物嗜好性試験およびオペラントウォール試験
実施例2参照
【0192】
5.条件づけ場所嗜好性試験
実施例1参照
【0193】
6.統計解析
Windows用のGraphPad Prism version 9.1.2(GraphPad Software、米国CA州サンディエゴ)を用いて、統計解析を実施した。データを、平均値±SEMとして表す。予備試験の際のCPPスコアと試験の間のCPPスコアの差を、対応のあるスチューデントt検定を用いて評価した。一元配置分散分析と、続くテューキー事後検定を用いて、群間の差を評価した。群間の差および異なる時点を、二元一次反復測定分散分析と、続くボンフェローニ事後検定を用いて評価した。外れ値を、グラブス検定の後に除外した。
【0194】
結果
1.体重増加および脂肪量に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響
肥満表現型に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響を評価するために、マウスを、NDおよびHFDに5週間暴露し、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイまたはビヒクル(PBS)の毎日投与を、それぞれND PG/HFD PGおよびND PBS/HFD PBS群において実施した(図13A~13B)。予想どおり、HFDを与えたマウスは、ND摂取マウスと比較して体重増加(P<0.0001)および脂肪量(P<0.01)の有意な増加を示す。しかし、プラセボと比較してパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの毎日投与を受けたマウスにおいて、有意差は観察されなかった。これらの結果から、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイがHFDにより誘導された肥満表現型に有意な影響を有さないことが示唆される。同じく、体重増加および脂肪量に関してND PBS群とND PG群の間に有意差が観察されず、ND摂取条件におけるパラバクテロイデス・ゴルドステイニイがこれらのパラメータに影響を及ぼさないことを示唆していることにも留意しなければならない。
【0195】
2.食物報酬系の嗜好成分に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響
食物摂取に関連する快感を評価するために、食物嗜好性試験を、異なる食事(NDおよびHFD)への5週間の暴露後に実施した。この試験の際、マウスを、対照食(CT)および美味しい新規な食物(HFHS)に暴露し、こうして、食物報酬系の「嗜好」成分を評価することができる。異なる食物の消費を、測定した(図14)。この試験の際に摂取したCT食物およびHFHS食物の量を比較した場合、ND PBSおよびND PG群のマウスは、対照食(CT)より有意により多くの美味しい(HFHS)食物を摂取する(P<0.001;P<0.01)。しかし、ND PBSマウスとND PGマウスとで、摂取されたHFHSに関して有意差は観察されなかった。肥満状態では、HFD PBSおよびHFD PGマウスは、美味しい食物(HFHS)摂取量と対照食物(CT)摂取量の間にいずれの有意差も示さない。さらに、HFD PBSマウスは、ND PBSマウスより有意に少ない美味しい食物を摂取した(P<0.05)。
【0196】
これらの結果は、パラバクテロイデス・ゴルドステイニイは、痩せまたは肥満のいずれの状況においても報酬系の嗜好成分に影響を及ぼさないことを示唆している。
【0197】
3.食物報酬を得るためのモチベーションに及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響
食物報酬系の異なる成分、特に食物報酬を得るためのマウスのモチベーション(即ち、食物摂取の「欲求」成分)をさらに特徴づけるために、オペラントウォール試験を実施して、マウスのモチベーションを、累進比率セッションの際に評価した(図15)。この試験から、PR2(P<0.01)、PR3(P<0.001)およびPR4セッション(P<0.01)の際のND PBSマウスと比較してHFD PBSマウスのスクロースペレットを得るためのアクティブレバー押し数の有意な減少が示され、肥満の際の報酬系の欲求成分に関連する行動の欠如が反映された。HFD PBS群とHFD PG群の間で、アクティブレバー押し数に有意差は観察されなかった。
【0198】
驚くべきことに、NDの下でパラバクテロイデス・ゴルドステイニイを受けたマウスも、PR2(P<0.05)、PR3(P<0.001)およびPR4(P<0.001)セッションの際のND PBSマウスと比較してアクティブレバーを有意に少ない回数、押した。正常食の下での対照条件では、アクティブレバー押しの低減は、無茶食いの低減に関連したため、これらの結果から、痩せの状況下での食物報酬の要求の制御におけるパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの潜在的有益効果が強調される。
【0199】
これらの結果は、摂食関連障害を処置するためのパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの使用、より一般的には、典型的には報酬刺激に対して強迫的行動を有する患者において、欲求成分が過剰に刺激される調節障害を処置するための報酬系の使用を裏付ける。
【0200】
4.食物報酬系の痩せ成分における正の補強に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの影響
食物報酬系のもう1つの成分である「学習」を探索するために、条件づけ場所嗜好性試験を用いた。この試験の目的は、食物刺激が取り除かれた後でもその刺激を有した区画を嗜好するようにマウスが条件づけされ得る程度を評価することである。目標は、報酬系を刺激する美味しい食物ペレット(Reese’s(登録商標))を用いたトレーニングセッションの際にケージの一方の側にマウスを拘束した後、マウスがその側で過ごした時間を増加させることであった。予備試験を用いて、マウスがベースラインで区画のいずれかに既存の嗜好性を有したかどうかを決定する。
【0201】
図16に示されるとおり、美味しい食物(Reese’s(登録商標))に関連する区画で過ごした時間に関して、条件づけセッションが、ND PBSマウスでの予備試験の際に過ごした時間と比較して、試験の際にこの区画で過ごした時間の有意な増加を誘導した(P<0.01)。この効果はまた、HFD PBSマウスでも観察されたが、より低い有意な効果を有した(P<0.05)。ND PGマウスでは。予備試験の際に区画で過ごした時間と比較した、試験の際に区画で過ごした時間の有意な増加により、正の補強も観察された(P<0.001)。
【0202】
興味深いこととして、HFD PG群におけるパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの投与は、予備試験の際に区画で過ごした時間と比較した、試験の際に区画で過ごした時間の有意な増加により反映された強い正の強化を誘導した(P<0.0001)。加えて試験の際、HFD PGマウスは、HFD PBS CPPスコアより有意に高いCPPスコアを示す(P<0.05)。
【0203】
これらの結果は、食物に関連する報酬系の学習成分、報酬系に関連する任意の他の刺激学習に及ぼすパラバクテロイデス・ゴルドステイニイの食事依存性効果が裏づけられる。
【0204】
実施例4:
材料と方法
1.マウスおよび実験計画
全てのマウス実験が、2017/UCL/MD/005の特定番号の下で、Health Sector of the UCLouvain, Universite catholique de Louvainの動物飼育のための倫理委員会により認可されており、地方倫理委員会のガイドラインに従い、実験動物の保護に関する2013年5月29日のベルギーの法律に従って実施された(合意番号LA1230314)。
【0205】
9週齢の特定の日和見病原体および特定病原体のない(SOPF)雄性C57BL/6Jマウス(Janvier laboratories、フランス ル・ジュネスト=サン=ティスル)のコホートを、滅菌飼料(放射線照射)および滅菌水に随意に近づくことができる、ケージごとに2匹の群で管理された環境において(22±2℃の室温、12時間明暗周期)飼育した。搬送の際に、マウスを1週間馴化させて、その際、マウスに対照低脂肪食(ctrl、AIN93Mi、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)を与えた。その後、マウスを、4群に無作為に分け(40匹、n=10/群 ND、HFD、ND SUCC、HFD SUCCと命名)、対照低脂肪食(ND)10kcal%脂肪(D1245Oji、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)、高脂肪食(HFD)60kcal%脂肪(D12492i、Research Diet、米国NJ州ニューブランズウィック)、5%w/wのコハク酸ナトリウム(W327700、Sigma)を補充されたND、および5%w/wのコハク酸ナトリウムを補充されたHFDを8週間与えた。ナトリウムレベルを、全ての食事で一致させた。体重を、週1回記録した。7.5MHz時間領域核磁気共鳴(TD-NMR、LF50 Minispec、Bruker、ドイツ ラインシュテッテン)を利用することにより、体組成を週1回評価した。4週間の経過観察の後、マウスを行動ケージ(Phenotyper、Noldus、オランダ ヴァーヘニンゲン)に入れて、食物嗜好性試験およびオペラントウォール試験を実施した。この最後の試験の際、以前に記載されたとおり、マウスを食事制限し、体重を初期体重(行動試験の前)の85%で維持した。カロリー制限により、刺激に対する報酬系応答を増強することが可能となった。
【0206】
2.食物嗜好性試験
実施例2参照
【0207】
3.オペラントウォール試験
実施例2参照
【0208】
4.統計解析
実施例2参照
【0209】
5.他の刺激
例えばアルコールまたは薬物などの食物と異なる報酬刺激を使用してもよい。
【0210】
結果
1.肥満表現型に及ぼすコハク酸塩の影響
肥満表現型に及ぼすコハク酸塩の影響を評価するために、マウスを、それぞれND SUCC/HFD SUCCおよびND/HFD群において5%w/wのコハク酸ナトリウムを補充した、または補充していないNDおよびHFDに8週間暴露した(図17A~17B)。予想どおり、HFDを摂食したマウスは、ND摂食マウスと比較して体重および脂肪量の有意な増加を示した。加えて、コハク酸塩を組み合わせたHFD食を摂食したマウスはまた、HFDマウスと比較して体重および脂肪量の有意な減少を示した。コハク酸塩を組み合わせたND食は、NDマウスと比較してND SUCCマウスにおいて体重の有意な減少を誘導したが、脂肪量の有意な変動は観察されなかった。
【0211】
これらの結果は、食事により誘導された肥満の状況でコハク酸塩補充の潜在的な有益効果を強調する。
【0212】
2.食物報酬系の嗜好成分に及ぼすコハク酸塩の影響
快楽的食物摂取の試験の一部として、食物嗜好性試験を、異なる食事(NDおよびHFD)への暴露の4週間目に実施した。この試験の際、マウスを対照食(CT)および美味しい新規食物(HFHS)に暴露し、これにより食物報酬系の「嗜好」成分を評価することができる(図18)。対照(CT)およびHFHSの摂食量を比較すると、NDおよびND SUCC群のマウスは、CT食物より有意に多いHFHSを摂食する(P<0.01;P<0.001)。しかし、NDマウスとND SUCCマウスの間に、摂取されたHFHS量の有意差は観察されなかった。HFDマウスによるCTおよびHFHS摂取では、HFD SUCCマウスと対照的に、有意差が観察されなかった。HFD SUCCマウスは、この試験においてCTより多くのHFHSを消費したが、同じくND、ND SUCCおよびHFD群のマウスより多くのHFHSを消費した(P<0.01 ND HFHS対HFD SUCC HFHS;P<0.05 ND SUCC HFHS対HFD SUCC HFHS;P<0.0001 HFD HFHS対HFD SUCC HFHS)。
【0213】
これらの結果は、食物に関連する報酬系における嗜好成分の回復におけるコハク酸塩の潜在的関与を強調している。
【0214】
この結果は、摂食関連障害の処置の状況下では特に興味深い。実際に、報酬系の嗜好成分の不十分な刺激は、快感性刺激を実現するための食物消費の増加をもたらし、その結果、コハク酸塩が摂食関連障害(例えば、肥満関連障害、無茶食いおよび同様のもの)における食物消費を低減させるために役立ち得ることが知られている。嗜好成分に及ぼすコハク酸塩の影響は、嗜好成分が調節障害された他の報酬系調節障害の処置のためにも興味深くなり得る。
【0215】
3.食物報酬系の欲求成分に及ぼすコハク酸塩の影響
食物報酬系の異なる成分、特に食物報酬を得るためのマウスのモチベーション(即ち、食物摂取の「欲求」成分)をさらに特徴づけるために、オペラントウォール試験を実施して、マウスのモチベーションを、累進比率セッションの際に評価した(図19)。
【0216】
この試験は、PR2(P<0.05)、PR3(P<0.01)およびPR4セッション(P<0.001)の際のNDマウスと比較したHFDマウスのスクロースペレットを得るためのアクティブレバー押し数の有意な減少を示し、肥満の状況下での報酬系の「欲求」成分に関連する行動の欠如を反映した。異なる累進比率セッションの際の別の分析はまた、PR1およびPR2の際のHFD SUCマウスとHFDマウスの間のアクティブレバー押し数の有意な増加、およびPR2の際のNDマウスと比較したND SUCマウスのアクティブレバー押し数の有意な減少も示す。
【0217】
この試験は、肥満および痩せ状態における報酬系の欲求成分に及ぼすコハク酸塩の影響を示している。
【0218】
これらの結果は、摂食関連障害を処置するためのコハク酸塩の使用、より一般的には、典型的には報酬刺激への強迫的行動を有する患者において、欲求成分が過剰に刺激される調節障害を処置するための報酬系の使用を裏付ける。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
【配列表】
2024525879000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
報酬系調節障害の防止および/または処置における使用のための、パラバクテロイデス属の1種もしくは複数の細菌および/またはその抽出物および/またはその代謝産物を含む組成物。
【請求項2】
前記パラバクテロイデス属の細菌が、P.ディスタソニス、P.ゴルドステイニイ、P.メルダエ、P.アシジファシエンス、P.ボーチェスダーホネンシス、P.チャルテ、P.チンチラ、P.コンギー、P.ファエシス、P.ゴルドニイ、P.ジョンソニイ、P.マシリエンシス、P.パセンシス、P.プロベンセンシス、P.チモネンシス、パラバクテロイデスspp.、およびそれらの組合わせからなる群において選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記報酬系調節障害が、精神障害、神経障害およびそれらの組合わせからなる群において選択される、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記精神障害が、依存症関連障害、摂食関連障害、情緒障害、強迫性障害、統合失調症、注意欠陥多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症、大うつ病(MDD)、不安障害からなる群において選択される、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記摂食関連障害が、拒食症、過食症、無茶食い、過体重関連障害、肥満関連障害からなる群において選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記依存症関連障害が、アルコール関連依存症、薬物関連依存症、ゲーム関連依存症からなる群において選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記神経障害が、パーキンソン病、トゥレット症候群からなる群において選択される、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記組成物が、ヒト個体に投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が、経口または直腸投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記細菌が、約1×10CFU/g組成物~約1×1012CFU/g組成物を含む用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、1種または複数の有益な微生物(複数可)をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記1種または複数の有益な微生物(複数可)が、クロストリジウム科、ペプトストレプトコッカス科、プレボテラ科、メチロバクテリウム科、トゥリシバクター属、コプロコッカス属、ノエリア属、プレボテラ属、スタフィロコッカス属、アッケルマンシア属細菌からなる群において選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、薬学的に許容できる担体をさらに含む医薬組成物の形態である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記組成物が、栄養学的に許容できる担体をさらに含む栄養組成物の形態である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記組成物を投与する手段をさらに含むキットに含まれる、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記報酬系調節障害が、拒食症および過食症からなる群において選択される精神障害である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記報酬系調節障害が、精神障害であり、前記精神障害が、無茶食いである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記報酬系調節障害が、精神障害であり、前記精神障害が、過体重関連障害または肥満関連障害でない摂食関連障害である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
報酬系調節障害を予防および/または処置することにおける使用のための、コハク酸塩を含む組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024525879000001.xml
【国際調査報告】