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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】尿道カテーテル及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
A61M25/00 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503425
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 US2022035565
(87)【国際公開番号】W WO2023003682
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,503
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】ドー、カイル
(72)【発明者】
【氏名】レガスピ、ロナルド エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB06
4C267CC26
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG10
4C267GG11
4C267HH16
(57)【要約】
本明細書には、尿道カテーテル、製造方法、使用方法が開示される。尿道カテーテルは、カテーテルチューブと、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分の表面上の潤滑性コーティングと、カテーテルチューブの近位部分に結合された漏斗とを含む。カテーテルチューブは、ポリマー材料からなる。潤滑性コーティングは、カテーテルチューブの表面上の親水性コーティングと、親水性コーティング上の潤滑剤とを含む。漏斗は、尿を排出するために漏斗の近位端部に漏斗開口部を含む。尿道カテーテルの方法の一例では、その方法に、尿道カテーテルの製造方法と使用方法とが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道カテーテルであって、
ポリマー材料からなるカテーテルチューブと、
カテーテルチューブの少なくとも遠位部分の表面上の潤滑性コーティングであって、潤滑性コーティングは、カテーテルチューブの表面上の親水性コーティングと、親水性コーティング上の潤滑剤とを含み、潤滑剤の水は、親水性コーティングによって少なくとも部分的に吸収される、潤滑性コーティングと、
カテーテルチューブの近位部分に結合された漏斗であって、漏斗は、尿を排出するために漏斗の近位端部に漏斗開口部を含む、漏斗と
を備える、尿道カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載の尿道カテーテルにおいて、
親水性コーティングは、ポリビニルピロリドン系コーティング又はヒアルロン酸系コーティングである、尿道カテーテル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の尿道カテーテルにおいて、
潤滑剤は、グリセリン、水、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールの組み合わせである、尿道カテーテル。
【請求項4】
請求項3に記載の尿道カテーテルにおいて、
グリセリン、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールは、潤滑性コーティングからのあらゆる水の蒸発を制限する、尿道カテーテル。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の尿道カテーテルにおいて、
ポリマー材料は、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、シリコーン、ポリ塩化ビニル、又はゴムである、尿道カテーテル。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の尿道カテーテルにおいて、
カテーテルチューブの表面は、親水性コーティングの接着を促進する表面エネルギーを有するプラズマ処理された表面である、尿道カテーテル。
【請求項7】
尿道カテーテルを作製する方法であって、
尿道カテーテルのカテーテルチューブの表面上に親水性コーティングを塗布することと、
カテーテルチューブの少なくとも遠位部分を潤滑剤のリザーバに浸漬することであって、それにより、親水性コーティング上に潤滑剤を配置し、潤滑剤の水が親水性コーティングによって少なくとも部分的に吸収される、ことと
を備える、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
カテーテルチューブを潤滑剤のリザーバに浸漬することは、約0.15インチ(0.38cm)/秒~約0.50インチ(1.27cm)/秒の浸漬速度でカテーテルチューブを潤滑剤に浸漬することを含む、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
カテーテルチューブを潤滑剤のリザーバに浸漬することは、約0.33インチ(0.84cm)/秒の浸漬速度でカテーテルチューブを潤滑剤に浸漬することを含む、方法。
【請求項10】
請求項7~9のうちいずれか一項に記載の方法において、
カテーテルチューブを潤滑剤のリザーバに浸漬することは、約0.05インチ(0.13cm)/秒~約0.20インチ(0.51cm)/秒の抜去速度で潤滑剤からカテーテルチューブを抜去することを含む、方法。
【請求項11】
請求項7~9のうちいずれか一項に記載の方法において、
カテーテルチューブを潤滑剤のリザーバに浸漬することは、約0.12インチ(0.30cm)/秒の引き抜き速度で潤滑剤からカテーテルチューブを抜去することを含む、方法。
【請求項12】
請求項7~11のうちいずれか一項に記載の方法において、
カテーテルチューブを潤滑剤のリザーバに浸漬することは、潤滑剤中での滞留時間を実質的に含まない、方法。
【請求項13】
請求項7~12のうちいずれか一項に記載の方法において、
カテーテルチューブを潤滑剤のリザーバに浸漬することは、潤滑剤への一回の浸漬を含む、方法。
【請求項14】
請求項7~13のうちいずれか一項に記載の方法において、
潤滑剤は、グリセリン、水、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールの組み合わせである、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
グリセリン、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールは、潤滑性コーティングからのあらゆる水の蒸発を制限する、方法。
【請求項16】
請求項7~15のうちいずれか一項に記載の方法は、更に、
潤滑剤のリザーバに尿道カテーテルを浸漬した後、尿道カテーテルを空気乾燥させることなく、尿道カテーテルを包装することを含む、方法。
【請求項17】
請求項7~16のうちいずれか一項に記載の方法は、更に、
カテーテルチューブの表面上に親水性コーティングを塗布する前、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分をプラズマ処理してカテーテルチューブの表面を改質することを含む、方法。
【請求項18】
請求項7~17のうちいずれか一項に記載の方法において、
カテーテルチューブは、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、シリコーン、ポリ塩化ビニル、及びゴムから選択されるポリマー材料である、方法。
【請求項19】
請求項7~18のうちいずれか一項に記載の方法において、
親水性コーティングは、ポリビニルピロリドン系コーティング又はヒアルロン酸系コーティングである、方法。
【請求項20】
尿道カテーテルを使用する方法であって、
外側包装内に配置された尿道カテーテルを含む、包装された尿道カテーテルを取得することであって、尿道カテーテルのカテーテルチューブは、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分の表面上の親水性コーティングの潤滑性コーティングと、親水性コーティング上の潤滑剤とを含む、ことと、
尿道カテーテルの漏斗によって、外側包装から尿道カテーテルを取り出すことと、
カテーテルチューブを尿道に挿入することであって、潤滑性コーティングは、外側包装より尿道カテーテルを取り出してから、尿道内へとカテーテルチューブを挿入するまでの間、粘着性の原因となる潤滑性コーティングからの水分の蒸発を制限することにより、使用者又はその介護者に、カテーテルチューブの尿道挿入を成功させるのに十分な時間を提供することと、
膀胱から尿を排出することと
を備える、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法は、更に、
膀胱から尿を排出した後にカテーテルチューブを尿道から抜去することを含む、方法。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の方法において、
尿道カテーテルを外側包装内に配置することと、
外側包装内で尿道カテーテルを再密封し、それによって尿道カテーテルから残った尿が漏れることを防止することと
を含む、方法。
【請求項23】
請求項20~22のうちいずれか一項に記載の方法において、
尿道カテーテルを廃棄することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、尿道カテーテル及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿道カテーテル使用者又はその介護者は、予め湿潤させた親水性コーティングでコーティングされたカテーテルを含む尿道カテーテルパッケージを開封した際に、カテーテル導入のための時間が限られている。これは、親水性コーティング中にある水が、尿道カテーテルパッケージを開封した際に急速に蒸発し始めるためである。そして、水が蒸発し始めると、コーティングは粘着性になり始め、このことがカテーテル導入の困難性を大幅に増大させる。必要とされているのは、そのような水の蒸発及び結果として生じる粘着性を軽減し、それによって、尿道カテーテル使用者又はその介護者に、尿道挿入が成功するのに十分な時間を与える尿道カテーテルである。
【0003】
本明細書に開示されるのは、上述に対処する尿道カテーテル及び方法である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態では、カテーテルチューブと、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分の表面上の潤滑性コーティングと、カテーテルチューブの近位部分に結合された漏斗とを含む尿道カテーテルである。カテーテルチューブはポリマー材料である。潤滑性コーティングは、カテーテルチューブの表面上の親水性コーティングと、親水性コーティング上の潤滑剤とを含む。潤滑剤の水は、親水性コーティングによって少なくとも部分的に吸収される。漏斗は、尿を排出するために漏斗の近位端部に漏斗開口部を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、親水性コーティングは、ポリビニルピロリドン系コーティング又はヒアルロン酸系コーティングである。
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、グリセリン、水、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールの組み合わせである。
【0006】
いくつかの実施形態では、グリセリン、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールは、潤滑性コーティングからのあらゆる水の蒸発を制限する。
【0007】
いくつかの実施形態では、ポリマー材料は、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、シリコーン、ポリ塩化ビニル、又はゴムである。
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブの表面は、親水性コーティングの接着を促進する表面エネルギーを有するプラズマ処理された表面である。
【0008】
本明細書に同様に開示されるのは、尿道カテーテル作製方法である。本方法は、いくつかの実施形態では、親水性コーティング塗布工程及び潤滑剤浸漬工程を含む。親水性コーティング塗布工程は、尿道カテーテルのカテーテルチューブの表面上に親水性コーティングを塗布することを含む。潤滑剤浸漬工程は、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分を潤滑剤のリザーバに浸漬し、それによって親水性コーティング上に潤滑剤を配置することを含む。潤滑剤の水は、親水性コーティングによって少なくとも部分的に吸収される。
【0009】
いくつかの実施形態では、潤滑剤浸漬工程は、約0.15インチ(0.38cm)/秒~約0.50インチ(1.27cm)/秒の浸漬速度でカテーテルチューブを潤滑剤に浸漬することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、潤滑剤浸漬工程は、約0.33インチ(0.84cm)/秒の浸漬速度でカテーテルチューブを潤滑剤に浸漬することを含む。
いくつかの実施形態では、潤滑剤浸漬工程は、約0.05インチ(0.13cm)/秒~約0.20インチ(0.51cm)/秒の抜去速度で潤滑剤からカテーテルチューブを抜去することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、潤滑剤浸漬工程は、約0.12インチ(0.30cm)/秒の引き抜き速度で潤滑剤からカテーテルチューブを抜去することを含む。
いくつかの実施形態では、潤滑剤浸漬工程は、潤滑剤中での滞留時間を実質的に含まない。
【0012】
いくつかの実施形態では、潤滑剤浸漬工程は、潤滑剤への一回の浸漬を含む。
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、グリセリン、水、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールの組み合わせである。
【0013】
いくつかの実施形態では、グリセリン、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールは、潤滑性コーティングからのあらゆる水の蒸発を制限する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、カテーテル包装工程を更に含む。カテーテル包装工程は、潤滑剤浸漬工程の後に尿道カテーテルを空気乾燥させることなく包装することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、表面処理工程を更に含む。表面処理工程は、親水性コーティング塗布工程の前に、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分をプラズマ処理してカテーテルチューブの表面を改質することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、シリコーン、ポリ塩化ビニル、及びゴムから選択されるポリマー材料である。
いくつかの実施形態では、親水性コーティングは、ポリビニルピロリドン系コーティング又はヒアルロン酸系コーティングである。
【0017】
本明細書に同様に開示されるのは、尿道カテーテルの使用方法である。本方法は、いくつかの実施形態では、カテーテルパッケージ取得工程と、開封工程と、カテーテル挿入工程と、排尿工程とを含む。カテーテルパッケージ取得工程は、包装された尿道カテーテルを取得することを含む。包装された尿道カテーテルは、外側包装内に配置された尿道カテーテルを含む。尿道カテーテルのカテーテルチューブは、カテーテルチューブの少なくとも遠位部分の表面上の親水性コーティングの潤滑性コーティングと、親水性コーティング上の潤滑剤とを含む。開封工程は、尿道カテーテルの漏斗によって外側包装から尿道カテーテルを取り出すことを含む。カテーテル挿入工程は、カテーテルチューブを尿道に挿入することを含む。潤滑性コーティングは、開封工程からカテーテル挿入工程まで、そのままでは粘着性の原因となる潤滑性コーティングからの水分の蒸発を制限することにより、使用者又はその介護者に、カテーテルチューブの尿道挿入を成功させるのに十分な時間を提供する。排尿工程は、膀胱から尿を排出することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、カテーテル抜去工程を更に含む。カテーテル抜去工程は、排尿工程の後にカテーテルチューブを尿道から抜去することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、再包装工程及び再密封工程を更に含む。再包装工程は、尿道カテーテルを外側包装内に配置することを含む。再密封工程は、外側包装内で尿道カテーテルを再密封し、それによって尿道カテーテルから、残った尿が漏れることを防止することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、廃棄工程を更に含む。廃棄工程は、尿道カテーテルを廃棄することを含む。
本明細書で提供される構想の、これらの特徴及び他の特徴は、そのような構想の特定の実施形態をより詳細に説明する、添付図面及び以下の説明を考慮することで、当業者にとってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】いくつかの実施形態による男性用尿道カテーテルを示す。
図2】いくつかの実施形態による女性用尿道カテーテルを示す。
図3】いくつかの実施形態による、男性用又は女性用尿道カテーテルの断面を示す。
図4】いくつかの実施形態による男性用尿道カテーテルの使用方法を示す。
図5】いくつかの実施形態による女性用尿道カテーテルの使用方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書において提示される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に切り離すことができ、本明細書に開示される複数の他の実施形態のうちの任意の実施形態の特徴と任意選択で組み合わせまたは置換することができる特徴を有する場合があることも理解されたい。
【0022】
本明細書で使用する用語に関しては、各用語はいくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、本明細書において提示される概念の範囲を限定しないということも理解されたい。序数(たとえば、第1、第2、第3等)は、一般的に、複数の特徴または工程の群の中で互いに異なる特徴または工程を区別または識別するために使用され、順番の限定または数的な限定を加えるものではない。たとえば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴または工程は、必ずしもこの順序で現れる必要はなく、またそのような特徴または工程を含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴または工程に限定される必要はない。また、別段指示がない限り、上記特徴又は工程はいずれも、順に、更には、一以上の特徴又は工程を含むことができる。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等の表記は、便宜的に使用されており、たとえば、いかなる特定の固定的な位置、向き、または方向も意味するものではない。むしろ、こうした表記は、たとえば相対的な位置、向き、または方向を示すために使用される。文脈からそうでないことが明らかに示されていなければ、「a」、「an」、および「the」で表す単数形は、複数形を含む。
【0023】
「近位」に関しては、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「近位部分」または「近位端部分」は、カテーテルが患者又はユーザに使用される場合、臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位長さ(proximal length)」は、カテーテルが患者又はユーザに使用される場合、臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの長さを含む。例えば、ニードルの「近位端」は、カテーテルが患者又はユーザに使用される場合、臨床医の近くにあるように意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長さは、カテーテルの近位端を含むことができるが、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長さは、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈から示唆される場合を除き、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0024】
「遠位」に関しては、例えば、本明細書に開示されているカテーテルの「遠位部分」または「遠位端部分」は、カテーテル又はユーザが患者に使用される場合、患者の近くにあるか、または患者内にあることを意図したカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位長さ(distal length)」は、カテーテルが患者又はユーザに使用される場合、患者又はユーザの近くまたは患者又はユーザ内にあることを意図したカテーテルの長さを含む。例えば、ニードルの「遠位端」は、カテーテルが患者又はユーザに使用される場合、患者の近くまたは患者内にあるように意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長さは、カテーテルの遠位端を含むことができるが、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長さは、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈から示唆される場合を除き、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0025】
別途定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
上述したように、尿道カテーテル使用者又はその介護者は、予め湿潤された親水性コーティングでコーティングされたカテーテルを含む尿道カテーテルパッケージを開封した際に、カテーテル導入のための時間が限られている。これは、親水性コーティング中にある水が、尿道カテーテルパッケージを開封した際に急速に蒸発し始めるためである。そして、水が蒸発し始めると、コーティングは粘着性になり始め、このことがカテーテル導入の困難性を大幅に増大させる。必要とされているのは、そのような水の蒸発及び結果として生じる粘着性を軽減し、それによって、尿道カテーテル使用者又はその介護者に、尿道挿入が成功するのに十分な時間を与える尿道カテーテルである。
【0026】
本明細書に開示されるのは、上述に対処する尿道カテーテル及び方法である。
尿道カテーテル
図1及び図2は、それぞれ、いくつかの実施形態による男性用尿道カテーテル100及び女性用尿道カテーテル200を示す。
【0027】
図示されるように、尿道カテーテル100又は200は、カテーテルチューブ102又は202と、カテーテルチューブ102又は202の近位部分に結合された漏斗104とを含む。カテーテルチューブ102又は202は、カテーテルチューブ102又は202の少なくとも遠位部分の表面からカテーテルチューブ102又は202の全体にわたって配置された潤滑性コーティング106を含む。カテーテルチューブ102又は202及び漏斗104の説明は、このすぐ後に記載される。潤滑性コーティング106についての説明は、その次のセクションに記載される。
【0028】
カテーテルチューブ102及びカテーテルチューブ202は、カテーテルチューブ102がカテーテルチューブ202よりも長い点で異なる。しかしながら、カテーテルチューブ102及び202の各カテーテルチューブは、カテーテル先端部110の周りに複数のアイレット108を含む。アイレット108は、カテーテルを貫通する管腔114によって、以下に記載される漏斗開口部112と流体連通している。加えて、その表面を含むカテーテルチューブ102及び202の各カテーテルチューブはポリマー材料である。ポリマー材料は、TPU、シリコーン、ポリ塩化ビニル、又はゴムである。ゴムは、天然ゴム、合成ゴム、又はそれらの組合せであり得、それらの組合せは、例えば、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとのブレンドを含むレッドゴムである。必要に応じて、カテーテルチューブ102又は202の表面は、カテーテルチューブ102又は202の表面におけるポリマー材料の表面エネルギーSEを増加させ、それによって、以下に記載される親水性コーティング116の接着を促進するために、プラズマ処理によって改質され得る。
【0029】
漏斗104は、尿を排出するためにカテーテルチューブ102又は202の反対側の漏斗104の近位端部に開口する漏斗開口部112を含む。漏斗開口部112は、上述のアイレット108と流体連通している。加えて、漏斗104は、漏斗104の外面に一体化された複数の隆起部117を含む。隆起部117は、以下に記載される包装された尿道カテーテル122又は222の外側包装120又は220から尿道カテーテル100又は200を取り出す間、ハンドルとして漏斗104を把持するように構成されている。追加的に又は代替的に、隆起部117は、尿道カテーテル100又は200を尿道に挿入する間、ハンドルとして漏斗104を把持するように構成されている。
【0030】
図4又は図5に示すように、尿道カテーテル100又は200は、外側包装120又は220内に配置されて、包装された尿道カテーテル122又は222を形成することができる。特に、外側包装120又は220内に配置された尿道カテーテル100又は200は、以下に記載される潤滑剤118の潤滑性コーティングに加えて、水を含まない潤滑性コーティング106を含む。
【0031】
潤滑性コーティング
図3は、いくつかの実施形態による男性用尿道カテーテル100又は女性用尿道カテーテル200の断面を示す。
【0032】
また、潤滑性コーティング106は、カテーテルチューブ102又は202の少なくとも遠位部分の表面から、カテーテルチューブ102又は202の全体にわたって配置される。潤滑性コーティング106は、カテーテルチューブ102又は202の表面上の親水性コーティング116と、親水性コーティング116上の潤滑剤118とを含む。
【0033】
親水性コーティング116は、ヒドロゲルなどのポリビニルピロリドン系コーティング又はヒアルロン酸系コーティングであり得る。また、カテーテルチューブ102又は202の表面は、カテーテルチューブ102又は202の表面におけるポリマー材料の表面エネルギーSEを増加させ、それによって親水性コーティング116の接着を促進するために、プラズマ処理によって改質され得る。
【0034】
潤滑剤118は、グリセリン、水、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールの組合せであり得る。例えば、潤滑剤118は、59.4~72.6重量%のグリセリン、28.0~34.0重量%の水、1.58~1.93重量%のアクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及び0.9~1.1重量%のプロピレングリコールであり得る。このような潤滑剤としては、Ashland(Covington,KY)によるLubrajel(登録商標)CGが挙げられる。
【0035】
有利には、潤滑剤118の水は、以下に記載されるように、カテーテルチューブ102又は202を潤滑剤118のリザーバに浸漬する際に親水性コーティング116によって少なくとも部分的に吸収され、それによって親水性コーティング116を活性化する。グリセリン、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、及びプロピレングリコールは、潤滑コーティング106からのあらゆる水の蒸発を制限し、その結果、尿道カテーテル使用者又はその介護者による尿道挿入のために、潤滑剤118の水のほかにいかなる水も必要とされない。
【0036】
方法
尿道カテーテル100又は200の方法は、尿道カテーテル100又は200の作製方法を含む。例えば、尿道カテーテル100又は200の作製方法は、表面処理工程、親水性コーティング塗布工程、潤滑剤浸漬工程、及びカテーテル包装工程から選択される1つ以上の工程を含むことができる。
【0037】
実施される場合、表面処理工程は、親水性コーティング工程を実施する前に、カテーテルチューブ102又は202の少なくとも遠位部分からカテーテルチューブ102又は202の全体までの表面をプラズマ処理して、カテーテルチューブ102又は202の表面を改質することを含む。上述したように、カテーテルチューブ102又は202の表面を含むカテーテルチューブ102又は202は、TPU、シリコーン、ポリ塩化ビニル、及びゴムから選択されるポリマー材料である。
【0038】
親水性コーティング塗布工程は、尿道カテーテル100又は200のカテーテルチューブ102又は202の表面上に親水性コーティング116を塗布することを含む。親水性コーティング塗布工程は、潤滑剤浸漬工程を実施する前に、カテーテルチューブ102又は202の表面の1つ以上の表面要素(例えば、細孔、表面処理工程からの帯電表面種など)と相互作用するのに十分な時間を親水性コーティング116に与えることを含む。
【0039】
潤滑剤浸漬工程は、カテーテルチューブ102又は202の少なくとも遠位部分を上述の潤滑剤118のリザーバに浸漬し、それによって潤滑剤118を親水性コーティング116上に配置することを含む。潤滑剤浸漬工程は、カテーテルチューブ102又は202を潤滑剤118に、約0.15インチ/秒~約0.50インチ/秒、例えば約0.33インチ/秒の浸漬速度で浸漬することを含む。潤滑剤浸漬工程はまた、約0.05インチ/秒~約0.20インチ/秒、例えば、約0.12インチ/秒の抜去速度で潤滑剤118からカテーテルチューブ102又は202を抜去することを含む。特に、潤滑剤浸漬工程は、カテーテルチューブ102又は202を潤滑剤118に浸漬することと、カテーテルチューブ102又は202を潤滑剤118から抜去することとの間に、潤滑剤118中での滞留時間を実質的に含まない。潤滑剤浸漬工程は任意の回数繰り返すことができるが、潤滑剤浸漬工程のための潤滑剤118への一回の浸漬は、カテーテルチューブ102又は202の尿道挿入のための十分な潤滑性を提供する。
【0040】
カテーテル包装工程は、潤滑剤浸漬工程の後に尿道カテーテル100又は200を空気乾燥させることなく、尿道カテーテル100又は200を外側包装120又は220に包装することを含む。
【0041】
尿道カテーテル100又は200の方法は、尿道カテーテル100又は200の使用方法を含む。例えば、本方法は、カテーテルパッケージ取得工程、開封工程、カテーテル挿入工程、排尿工程、カテーテル抜去工程、再包装工程、再密封工程、及び廃棄工程から選択される1つ以上の工程を含むことができる。
【0042】
カテーテルパッケージ取得工程は、外側包装120又は220内に配置された尿道カテーテル100又は200を含む包装された尿道カテーテル122又は222を取得することを含む。上述したように、尿道カテーテル100又は200のカテーテルチューブ102又は202は、カテーテルチューブ102又は202の少なくとも遠位部分の表面上の親水性コーティング116の潤滑性コーティング106と、親水性コーティング116上の潤滑剤118とを含む。
【0043】
開封工程は、尿道カテーテル100又は200の漏斗104によって外側包装120又は220から尿道カテーテル100又は200を取り出すことを含む。
カテーテル挿入工程は、カテーテルチューブ102又は202を尿道に挿入することを含む。潤滑性コーティング106は、開封工程からカテーテル挿入工程まで、そのままでは粘着性の原因となる潤滑性コーティング106からの水分の蒸発を制限することにより、使用者又はその介護者に、カテーテルチューブ102又は202の尿道挿入を成功させるのに十分な時間を提供する。
【0044】
排尿工程は、膀胱から尿を排出することを含む。
カテーテル抜去工程は、排尿工程の後にカテーテルチューブ102又は202を尿道から抜去することを含む。
【0045】
再包装工程は、尿道カテーテル100又は200を外側包装120又は220内に配置することを含む。
再密封工程は、外側包装120又は220内に尿道カテーテル100又は200を再密封することを含む。再密封工程は、尿道カテーテル100又は200から、残った尿が漏れることを防止する。
【0046】
廃棄工程は、尿道カテーテル100又は200を廃棄することを含む。
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示されるとともに、特定の実施形態がある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態は、本明細書で提供された概念の範囲を制限することを意図するものではない。追加的な適応および/または変更が当業者に理解され得る。より広い態様では、これらの適応および/または変更もまた包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から逸脱してよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】