(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】非同時送信/受信リンク上でのチャネルアクセス
(51)【国際特許分類】
H04W 74/0808 20240101AFI20240705BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240705BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20240705BHJP
【FI】
H04W74/0808
H04W84/12
H04W72/0446
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503498
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2022056470
(87)【国際公開番号】W WO2023002307
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504257564
【氏名又は名称】ソニー コーポレイション オブ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シン リャンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】アブエルサウード モハメド
(72)【発明者】
【氏名】スン リ-シャン
(72)【発明者】
【氏名】シャ チン
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE25
5K067EE72
5K067JJ01
(57)【要約】
特にマルチリンク装置(MLD)の局(STA)間の非同時送受信(NSTR)通信においてマルチリンク動作が効率を高める無線通信プロトコル。MLD1がリンク1のTXOP所有者であり、MLD2がMLD1への送信のためにリンク2でチャネルにアクセスする際に、MLD1がリンク1上で受信中である場合、MLD2は直ちにリンク2を介してMLD1に送信を行う。MLD1がリンク1上で送信中である場合、MLD2はリンク2を介してフレームを送信してチャネルを占有し、その後にMLD1がリンク1上で受信中である時に、MLD2はMLD1に別のフレームを送信する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークにおける無線通信のための装置であって、
(a)ネットワークの他の無線局(STA)と通信するために、チャネルの複数のリンクを介してマルチリンク動作を実行し、キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用してチャネルにアクセスする局(STA)としての無線通信回路と、
(b)前記無線通信回路に結合されて通信プロトコルを実行するプロセッサと、
(c)前記プロセッサによって実行可能な、前記ネットワーク上の他のSTAと通信するための命令を記憶する非一時的メモリと、
を備え、(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)第1のマルチリンク装置(MLD1)が、非同時送受信(NSTR)通信を実行するように構成されるとともに、第1のリンク(リンク1)の送信機会(TXOP)所有者であることと、
(ii)前記STAが、第2のマルチリンク装置(MLD2)内で動作しており、MLD1への送信のために第2のリンク(リンク2)上のチャネルにアクセスすることと、
(iii)MLD1がリンク1上で受信中である場合、MLD2が直ちにリンク2を介してMLD1に送信を行うことと、
(iv)MLD1がリンク1上で送信中である場合、MLD2がチャネルを占有するためにリンク2を介してフレームを送信し、その後MLD1がリンク1上で受信中である時に、MLD2がMLD1に別のフレーム送信を実行することと、
を含む1又は2以上のステップを実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
MLD2は、TXOPの一部を予約してチャネルを占有するために、データパケットを含まないダミーフレームを送信し、その後にMLD1が前記TXOPの終了前にリンク1上で受信を開始すると、リンク2を介してデータパケットを含むフレームをMLD1に送信する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中である時間を待たないと決定した場合、自機のコンテンションウィンドウ(CW)を増加させることなくチャネルを求めて再競合する、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにパディングを組み込んだ送信要求(RTS)又はマルチユーザRTS(MU-RTS)を送信する、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにMLD1への送信許可(CTS)、又はCTS-to-Selfを送信する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中になるまでリンク2上で他のSTAとTXOPを共有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
ネットワークにおける無線通信のための装置であって、
(a)ネットワークの他の無線局(STA)と通信するために、チャネルの複数のリンクを介してマルチリンク動作を実行し、キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用してチャネルにアクセスする局(STA)としての無線通信回路と、
(b)前記無線通信回路に結合されて通信プロトコルを実行するプロセッサと、
(c)前記プロセッサによって実行可能な、前記ネットワーク上の他のSTAと通信するための命令を記憶する非一時的メモリと、
を備え、(d)前記命令は、前記プロセッサによって実行された時に、
(i)非同時送受信(NSTR)通信を実行するために、前記STAが第2のマルチリンク装置(MLD2)に関連付けられる一方で、別のSTAが第1のマルチリンク装置(MLD1)に関連付けられることと、
(ii)MLD1が第1のリンク(リンク1)の送信機会(TXOP)所有者であることと、
(iii)第2のMLD(MLD2)が、第2のリンク(リンク2)のTXOP所有者であるとともに、リンク2上でMLD1に送信を行う予定であることと、
(iv)MLD2による非同時送受信(NSTR)調整要求を、リンク2を介してMLD1に送信することと、
(v)MLD2が、MLD1に応答フレームを要求した場合に、MLD1が前記NSTR協調要求を受け入れたか、それとも拒絶したかを示す応答フレームをMLD1から受け取ることと、
(vi)前記NSTR協調要求が受け入れられた場合、MLD1又はMLD2のいずれかによってリンク1及びリンク2の両方で送信が手配され、その後に送信が実行されることと、
を含む1又は2以上のステップを実行する、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
MLD2は、MLD1に応答フレームを要求することなくNSTR協調を開始するためにNSTR協調指示フレームを送信する、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
MLD2は、NSTR協調要求を拒絶したことを示すフレームをMLD1から受け取ったことに応答して、自機の現在のTXOPの停止を実行する、
請求項8に記載の装置。
【請求項11】
MLD1は、前記NSTR協調要求の拒絶を示すものを何も返送しないことができるので、MLD2は、前記NSTR協調要求の拒絶を受け取る必要がない、
請求項8に記載の装置。
【請求項12】
ネットワークにおいて無線通信を行う方法であって、
(a)局(STA)としての無線通信回路が、ネットワークの他の無線局(STA)と通信するために、チャネルの複数のリンクを介してマルチリンク動作を実行し、キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用してチャネルにアクセスすることと、
(b)第1のリンク(リンク1)の送信機会(TXOP)所有者になった第1のマルチリンク装置(MLD1)が非同時送受信(NSTR)通信を実行することと、
(c)第2のマルチリンク装置(MLD2)に関連付けられた前記STAが、MLD1への送信のために第2のリンク(リンク2)上のチャネルにアクセスすることと、
(d)MLD1がリンク1上で受信中である場合、MLD2が直ちにリンク2を介してMLD1に送信を行うことと、
(e)MLD1がリンク1上で送信中である場合、MLD2がチャネルを占有するためにリンク2を介してフレームを送信し、その後MLD1がリンク1上で受信中である時に、MLD2がMLD1に別のフレームを送信することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
MLD2は、TXOPの一部を予約してチャネルを占有するために、データパケットを含まないダミーフレームを送信し、その後にMLD1が前記TXOPの終了前にリンク1上で受信を開始すると、リンク2を介してデータパケットを含むフレームをMLD1に送信する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中である時間を待たないと決定した場合、自機のコンテンションウィンドウ(CW)を増加させることなくチャネルを求めて再競合する、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにパディングを組み込んだ送信要求(RTS)又はマルチユーザRTS(MU-RTS)を送信する、
請求項12に記載の方法。
【請求項16】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにMLD1への送信許可(CTS)、又はCTS-to-Selfを送信する、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、
請求項12に記載の方法。
【請求項18】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中になるまでリンク2上で他のSTAとTXOPを共有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年6月23日に出願された米国特許出願シリアル番号第17/847,342号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この文献は全体が引用により本明細書に組み入れられる。本出願は、2021年7月20日に出願された米国仮特許出願シリアル番号第63/223,634号に対する優先権及びその利益を主張するものでもあり、この文献は全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
〔連邦政府が支援する研究又は開発に関する記述〕
該当なし
【0003】
〔著作権保護を受ける資料の通知〕
本特許文献中の資料の一部は、アメリカ合衆国及びその他の国の著作権法の下で著作権保護を受けることができる。著作権の権利所有者は、合衆国特許商標庁の一般公開ファイル又は記録内に表される通りに第三者が特許文献又は特許開示を複製することには異議を唱えないが、それ以外は全ての著作権を留保する。著作権所有者は、限定ではないが米国特許法施行規則§1.14に従う権利を含め、本特許文献を秘密裏に保持しておく権利のいずれも本明細書によって放棄するものではない。
【0004】
本開示の技術は、一般にチャネルアクセスのためにキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用する無線LAN(WLANS)に関し、具体的には、非同時送信/受信(NSTR)マルチリンク装置(MLDS)の局のためのチャネルアクセス権を取得することに関する。
【背景技術】
【0005】
CSMA/CAを使用する現在の無線技術は、ネットワークの高スループット性能には重点を置いているが、十分な低遅延能力に欠けている。従って、リアルタイムアプリケーション(RTA)を含むますます多くのアプリケーションが低遅延通信能力を必要としているため、技術ギャップが存在する。
【0006】
RTAは低遅延通信を必要とし、ベストエフォート通信を使用する。RTAから生成されたデータはRTAトラフィックと呼ばれ、送信側STAにおいてRTAパケットとしてパケット化される。一方で、非時間依存アプリケーションから生成されたデータは非RTAトラフィックと呼ばれ、送信側STAにおいて非RTAパケットとしてパケット化される。
【0007】
RTAパケットは、パケット配信の高適時性要件に起因して低遅延を必要とする。RTAパケットは、一定時間内に配信された場合にのみ有効である。
【0008】
局STAの中には、同時送受信(STR)STAとしてSTRを実行できる局もあれば、送信と受信を同時に行うことができない非STR STAと呼ばれる局もあるため、これらの問題はさらに複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、STR STA及び非STR STAの両方のRTA通信をサポートできるWLAN CSMA/CAプロトコルが必要とされている。本開示は、これらの問題点を克服しながらさらなる利点を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用する802.11beなどのIEEE802.11プロトコル下で動作する無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)が、非同時送信/受信(NSTR)局(STA)がチャネルアクセス権を獲得した後に直ちに送信を行えない場合でもNSTR STAがチャネルを占有することを可能にする。このプロトコルでは、2つのリンク上の送信機会(TXOP)所有者が異なるマルチリンク装置(MLD)からのものである場合でも、関連するMLDが同時にリンクを介して送信を手配する。
【0011】
本明細書の以下の部分では、本明細書で説明する技術のさらなる態様が明らかになり、この詳細な説明は、本技術の好ましい実施形態を限定することなく完全に開示するためのものである。
【0012】
本明細書で説明する技術は、例示のみを目的とする以下の図面を参照することによって十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】IEEE802.11無線LANにおけるCSMA/CAチャネルアクセスプロセスのフロー図である。
【
図2】通常のWLANシステムにおけるデータフレームフォーマットを示すデータフィールド図である。
【
図3】通常のWLANシステムにおけるACKフレームフォーマットを示すデータフィールド図である。
【
図4】IEEE802.11axでの送信に使用される高効率(HE)シングルユーザ(SU)物理層プロトコルデータユニット(PPDU)フォーマットを示すデータフィールド図である。
【
図5】再送に起因してバックオフ時間が増加するCSMA/CA下での再送の通信図である。
【
図6】再送回数が再試行制限を超えた後にパケットが破棄される例の通信図である。
【
図7】IEEE802.11における拡張型DFCチャネルアクセス(EDCA)キューの参照モデルの通信図である。
【
図8】IEEE802.1DにおけるEDCAのチャネルアクセス手順の通信図である。
【
図9】IEEE802.11axにおいて定められるA-制御(A-Control)サブフィールド変種のHT制御フィールドフォーマットを示すデータフィールド図である。
【
図10】制御情報がBSRのためのものであることを
図9の制御IDフィールドが示す場合の制御情報サブフィールドフォーマットのデータフィールド図である。
【
図11】制御情報がCASのためのものであることを
図9の制御IDフィールドが示す場合の制御情報サブフィールドフォーマットのデータフィールド図である。
【
図12】NSTRリンクペアを介した通信で発生し得る問題の通信図である。
【
図13】本開示の少なくとも1つの実施形態による無線局(STA)ハードウェアのハードウェアブロック図である。
【
図14】本開示の少なくとも1つの実施形態による、マルチリンク装置(MLD)ハードウェアなどに含まれる局構成のハードウェアブロック図である。
【
図15】本開示の少なくとも1つの実施形態による一般的なマルチリンク接続のネットワークトポロジーである。
【
図16】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA1がリンク1上で送信を行っている時のSTA4によるリンク2上でのチャネルアクセスのフロー図である。
【
図17】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA4がダミーフレームを使用してリンク2上のTXOPを予約する通信図である。
【
図18】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA4がダミーフレームを使用してリンク2上のTXOPを予約するが、予約されたTXOP中にSTA2に送信する機会がなかった通信図である。
【
図19】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA4がダミーフレームを使用してリンク2上のチャネルを占有する通信図である。
【
図20】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA4がチャネルにアクセスした直後にリンク2上でSTA2にPPDUを送信する通信図である。
【
図21】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA4が共有フレームを使用してリンク2上のTXOPを予約する通信図である。
【
図22】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA4がリンク2上の対象の受信側と通信するためにバックオフがゼロの状態で待機する通信図である。
【
図23】本開示の少なくとも1つの実施形態による共有フレームを示すデータフィールド図である。
【
図24】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MLD1又はMLD2のいずれかがリンク1及びリンク2の両方で同時に送信を手配するようにSTA4がNSTR協調を要求するフロー図である。
【
図25】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA2又はMLD1がNSTR協調要求に応答するフロー図である。
【
図26】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MLD1によるNSTRリンク上での送信手配を可能にするためにSTA4がNSTR協調を要求する通信図である。
【
図27】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MLD2によるNSTRリンク上での送信手配を可能にするためにSTA4がNSTR協調を要求する通信図である。
【
図28】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MLD1がNSTR協調要求を拒絶する通信図である。
【
図29】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MLD1がNSTRリンク上で送信を手配することをSTA4が示す(要求する)通信図である。
【
図30】本開示の少なくとも1つの実施形態による、NSTR協調のために逆方向グラント(Reverse Direction Grant:RDG)を再使用する通信図である。
【
図31】本開示の少なくとも1つの実施形態による、NSTR協調のために逆方向グラント(RDG)を再使用する通信図である。
【
図32】本開示の少なくとも1つの実施形態によるNSTR協調要求、応答及び指示フレームを示すデータフィールド図である。
【
図33】本開示の少なくとも1つの実施形態による転送要求(Ready-to-Forward:RTF)フレームを示すデータフィールド図である。
【
図34】本開示の少なくとも1つの実施形態による、A-制御サブフィールドの拡張CAS制御サブフィールド変種を示すデータフィールド図である。
【
図35】本開示の少なくとも1つの実施形態による、本節において説明するMLD接続のネットワークトポロジーである。
【
図36】本開示の少なくとも1つの実施形態による、STA1がSTA5に送信を行っている間にSTA4がダミーフレームを使用してリンク2のTXOPを予約する通信図である。
【
図37】本開示の少なくとも1つの実施形態による、MLD1がNSTR協調要求を受け入れて異なるMLDのためにNSTRリンク上で送信を配置する通信図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.WLAN概論
1.1.CSMA/CA WLANシステム
WLANシステムでは、IEEE802.11は、STAがパケット送信及び再送のためにチャネルにアクセスできるようにするためにキャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用する。
【0015】
図1に、CSMA/CAチャネルアクセスプロセスを示す。CSMA/CAシステムでは、STAが各送信及び再送前にチャネルを検知し、チャネルアクセス権を求めて競合するためにバックオフ時間を設定する必要がある。バックオフ時間は、ゼロとコンテンションウィンドウのサイズとの間の一様なランダム変数によって決定される。STAは、競合中にチャネルがアイドルであることを検知してバックオフ時間を減分する。バックオフがゼロに到達すると、STAはパケットを送信するためのチャネルを取得したことになる。STAがタイムアウト間隔の満了前に確認応答(ACK)を受け取らなかった場合には、再送が必要になることがある。そうでなければ、送信は成功である。
【0016】
再送が必要である場合、STAはパケットの再送回数をチェックする。再送回数が再試行制限を上回る場合、パケットは破棄されて再送はスケジュールされない。そうでなければ再送がスケジュールされる。
【0017】
再送の実行前には、チャネルアクセス権を求めて競合するために別のバックオフ時間が必要である。コンテンションウィンドウ(CW)のサイズがCWサイズの上限に達していない場合、STAはCWサイズを増加させる。STAは、コンテンションウィンドウの新たなサイズに応じて別のバックオフ時間を設定する。STAは、再送のためにバックオフ時間にわたって待機し、正常な送信又は再送が達成されるまでこれを継続する。
【0018】
図2に、通常のWLANシステムにおけるデータフレームフォーマットを示す。フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。期間(Duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。シーケンス制御(Sequence control)フィールドは、パケットのフラグメント番号及びシーケンス番号を含む。
【0019】
図3に、通常のWLANシステムにおけるACKフレームのフォーマットを示す。フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。期間(Duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。
【0020】
図4に、IEEE802.11axにおいて送信に使用される高効率(HE)シングルユーザ(SU)物理層プロトコルデータユニット(PPDU)フォーマットを示す。なお、PPDUは少なくともプリアンブルフィールド及びデータフィールドを含み、少なくとも1つの実施形態では以下のフィールドを有する。L-STFフィールドは、非高スループット(non-HT)短期訓練フィールドである。L-LTFフィールドは、非HT長期訓練フィールドである。L-SIGフィールドは、非HT信号フィールドである。RL-SIGフィールドは、反復する非HT信号フィールドである。HE-SIG-Aフィールドは、HE信号Aフィールドである。HE-STFフィールドは、HE短期訓練フィールドである。HE-LTFフィールドは、HE長期訓練フィールドである。データ(Data)フィールドは、(PSDU)と呼ばれる物理層収束手順(PLCP)プロトコルデータユニットのデータを搬送する。PEフィールドは、パケット拡張フィールドである。
【0021】
図5に、再送に起因してバックオフ時間が増加するCSMA/CAにおける再送の一例を示す。データフレーム及びACKフレームは、それぞれ
図2及び
図3に示すようなフォーマットを使用する。これらのフレームは、
図4に示すようなパケットフォーマットを使用してパケット化される。送信側は、最初のパケット送信を行った後、タイムアウトまでにACKを受け取っていない。この結果、送信側は、コンテンションウィンドウのサイズが「n」スロットである別のバックオフ時間を設定する。送信側STAは、バックオフ時間にわたって待機した後に初めてパケットを再送する。しかしながら、この例ではこの再送にも失敗している。送信側STAは、パケット再送のためのチャネルアクセス権を求めて競合するために再びバックオフ時間を設定する。しかしながら、今回は再送であることによってコンテンションウィンドウのサイズは2倍の2*nスロットである。このコンテンションウィンドウサイズによって予想バックオフ時間も2倍になる。2回目の再送は、タイムアウト前にACKを受け取ったため成功している。
【0022】
図6に、再送回数が再試行制限を超えた後にパケットが破棄される一例を示す。この例では、再試行制限を「R」によって示す。データフレーム及びACKフレームは、それぞれ
図2及び
図3に示すようなフォーマットを使用する。これらのフレームは、
図4に示すようなパケットフォーマットを使用してパケット化される。
図6に示すように、送信側STAは最初のパケット送信に失敗した後にこのパケットを複数回再送している。しかしながら、どの再送も成功していない。R回の再送後に再送回数が再試行制限を上回り、送信側STAはパケットの再送を停止し、このパケットは破棄される。
【0023】
1.2.EDCAシステム
図7に、IEEE802.11における(拡張型DFCチャネルアクセス)EDCAキューの参照モデルを示す。システムは、6つの送信キュー及び4つのアクセスカテゴリ(AC)を含む。各ACは、対応する送信キュー内のパケットを送信できるように、EDCA機能(EDCAF)を使用してチャネルアクセス権を求めて競合する。
【0024】
6つの送信キューは、ボイス(VO)、代替ボイス(A_VO)、代替ビデオ(A_VI)、ビデオ(VI)、ベストエフォート(BE)バックグラウンド(BK)である。各送信キューは、キュー内のパケットの送信順を決定する。
【0025】
4つのACは、ボイス(VO)、ビデオ(VI)、ベストエフォート(BE)及びバックグラウンド(BK)である。各ACは、チャネル競合の機能を提供するEDCA機能(EDCAF)を有する。複数のEDCAFが同時にチャネルにアクセスしようと試みる際には、内部衝突回避機構が使用される。内部衝突が発生した場合には、より高い優先度のEDCAFがチャネルアクセス権を獲得する。
【0026】
表1に、IEEE802.11のEDCAキューにおいて使用されるUP-to-ACマッピングをリストする。2列目及び3列目は、トラフィックのユーザ優先度及びその対応するIEEE802.1Dでの指定を表す。各行では、ユーザ優先度に従って、トラフィックが対応する送信キュー及びアクセスカテゴリに加えられる。優先度は、最上行から最下行に向かって高くなる。優先度の高いトラフィックほど早く送信される確率が高い。
【0027】
図8に、EDCAのチャネルアクセス手順を示す。図示のように、分散協調機能(DCF)のみを使用した場合のEDCAチャネルアクセスも比較している。
【0028】
DCFのみを使用する場合、STAは直ちにチャネルにアクセスすることができ、DCFフレーム間隔(DIFS)時間よりも長い期間にわたって媒体が解放され、そうでなければ、STAはCSMA/CAを使用してチャネルを求めて競合する。STAは、DIFS時間にわたってチャネルがアイドルであることを検知した後に、媒体がアイドルである限りバックオフをカウントダウンし始める。バックオフスロットの数は、ゼロとコンテンションウィンドウとの間でランダムに選択される。STAは、CCAビジー(又は媒体ビジー)が発生し、例えばチャネルがビジーであることを感知すると、バックオフのカウントダウンを一時停止する。バックオフカウントがゼロに到達すると、STAはパケットを送信し始める。
【0029】
EDCAでは、媒体がDIFS時間よりも長い期間にわたって、又はチャネルアクセス権を獲得するのに必要なACの仲裁的フレーム送信間隔(AIFS)時間にわたって解放されている場合、
図7に示すような各EDCAFは直ちにチャネルにアクセスすることができる。なお、図に示すAIFS[i]はAC iのAIFS時間を表す。そうでなければ、各EDCAFは、CSMA/CAを使用して、チャネルアクセス権を取得する予定である各ACのためのチャネルを求めて競合する。各EDCAFは、AIFS時間にわたってチャネルがアイドルであることを検知した後に、媒体がアイドルである間にバックオフをカウントダウンし始める。カウントダウンすべきバックオフスロットの数は、ゼロとそのコンテンションウィンドウサイズとの間でランダムに選択される。STAは、CCAビジー(又は媒体ビジー)が発生し、すなわちチャネルがビジーであることが検知されると、バックオフのカウントダウンを一時停止する。STAは、バックオフがゼロまでカウントダウンされると、そのACのパケットを送信し始める。
【0030】
なお、複数のEDCAFが同時にチャネルを求めて競合することもできる。例えば、
図8に示すように、AC iのEDCAFとAC jのEDCAFとが同時にチャネルを求めて競合することができる。内部衝突が発生すると、優先度の高いEDCAFがチャネルアクセス権を獲得し、優先度の低いEDCAFはそのコンテンションウィンドウを2倍にする。ACがVO又はVIである場合、これらはパケットを送信するためにTXOPなどの非競合期間を予約することができる。TXOPの最大継続時間はTXOP制限と呼ばれる。
【0031】
表2に、EDCAチャネルアクセスのためのデフォルトパラメータ設定を示す。各ACは、独自の最小コンテンションウィンドウ及び最大コンテンションウィンドウを有する。AIFSNは、AIFS期間をバックオフスロット数の単位で表す。TXOP制限は、各ACが毎回予約できるTXOPの最大継続時間を表す。
【0032】
1.3.A-制御サブフィールドの制御サブフィールド変種
図9に、IEEE802.11axで定められるA-制御サブフィールド変種のHT制御フィールドフォーマットを示す。フォーマット指示(Format indication)フィールドは、HT制御フィールドのフォーマットを示すために使用される。ビットB0及びB1が1に設定されると、このフィールドは、HT制御フィールドがHE/EHTフォーマットを使用することを示す。このフィールドの後にはA-制御(A-Control)フィールドが存在する。A-制御フィールドは、異なるタイプのバッファステータスレポートを搬送する。制御ID(Control ID)フィールドは、制御情報サブフィールドのタイプを示す。例えば、このビットが値「3」に設定されると、制御情報フィールドはBSR情報を搬送する。制御情報フィールドは、制御IDフィールドに示される制御情報を搬送する。
【0033】
図10に、制御情報がBSRのためのものであることを
図9の制御IDフィールドが示す場合の制御情報サブフィールドフォーマットを示す。
【0034】
図11には、制御情報がCASのためのものであることを
図9の制御IDフィールドが示す場合の制御情報サブフィールドフォーマットを示す。
【0035】
2.課題の記述
MLDは、同時送受信(Simultaneous Transmit and Receive:STR)の能力を提供することができ、これらのMLDは装置内共存干渉(in-device coexistence interference)が低いため、あるリンク上で送信を行いながら同時に他のいずれかのリンク上で受信を行うことができる。しかしながら、非STR(NSTR)MLDは、これらの同時送受信を安全に実行することができない。ただし、STR-MLD又は非STR MLDの両STAは、同時送信又は同時受信を行うことができる。
【0036】
本開示は、CSMA/CAを使用するマルチリンク装置(MLD)によってNSTRリンクペアを介して実行されるチャネル競合について考察する。NSTRリンクペアのリンク間の装置内共存干渉が高いMLDでは、例えばMLDのSTAがNSTRリンクペアの一方のリンク上で信号を送信することに起因する干渉が、同じMLDの別のSTAがNSTRリンクペアの他方のリンク上で信号を受信するのを妨害又は阻止することがある。従って、MLDは、同じNSTRリンクペアの一方のリンク上で受信を行っている間に、そのNSTRリンクペアの他方のリンク上で同時に送信を行うべきではない。
【0037】
図12に、STR MLDがNSTR MLDのNSTRリンクペアを介してNSTR MLDと通信する際に発生し得る問題を示す。このシナリオの例については後節で説明するが、MLD1がNSTR MLDであり、リンク1及びリンク2がMLD1の1つのNSTRリンクペアである。
【0038】
図12を参照すると、MLD1に所属するSTA1がリンク1上のTXOP所有者であり、MLD2に所属するSTA4がSTA2への送信のためのチャネルアクセス権をリンク2上で獲得した時に問題が発生する恐れがある。STA3は、STA1がリンク1上のTXOP所有者であると判定してSTA1の状態をモニタし、例えばSTA1が送信中であるか、それとも受信中であるかを判定することができる。STA1が送信中であってSTA4が直ちにチャネルにアクセスしてSTA2に送信を行う場合、NSTRリンク間の装置内共存干渉によって送信衝突が発生する恐れがある。STA4は、直ちにチャネルにアクセスしない場合、STA1がリンク1上で送信を終了した後に、もはやチャネルにアクセスしないことができる。最も単純な解決策は、STA4がリンク2上のチャネルにアクセスするのを禁止することである。しかしながら、この従来の技術は送信効率を低下させてしまう。従って、本開示の教示は、非STR MLDのSTA(例えば、STA4)がチャネルにアクセスしてSTA2と通信することを可能にすることで、帯域幅の拡大、スループットの向上及び遅延時間の短縮をもたらす。しかしながら、単純な実装ではこのプロセスでも問題が発生する恐れがある。
【0039】
具体的には、STA4が、自機がリンク2のTXOP所有者であることをSTA2又はMLD1に通知する方法に問題が発生する。STA4は、チャネルにアクセスした直後にチャネルを占有する必要がある。しかしながら、STA4がチャネルにアクセスした時には、STA1がリンク1上で送信を行っている可能性がある。この時、MLD1(すなわち、MLD1に所属するSTA2)はSTA4から通信を受け取ることができない。
【0040】
リンク1上及びリンク2上ではTXOP所有者が異なるので、2つのリンクの送信方向が異なる場合には、しばしば装置内共存干渉(IDC)が発生し得る。従って、本開示では、リンク1上及びリンク2上の送信を手配するプロセスについて説明する。
【0041】
3.本開示の寄与
本開示は、非STR MLDのSTA(例えば、STA4)が(例えば、リンク2上の)チャネルアクセス権を取得した直後に(例えば、STA2への)送信を許可されていない場合であってもチャネルを占有することを可能にするプロトコル(装置/方法)について教示する。
【0042】
開示するCSMA/CA WLANプロトコルは、2つのリンク上のTXOP所有者が異なるMLDからのものであるにもかかわらず、MLDのうちのいずれか(例えば、MLD1又はMLD2)が同時に2つのリンクを介して送信を手配することを可能にする。
【0043】
4.ハードウェアの実施形態
4.1.STA及びMLDのハードウェア構成
図13に、本開示のプロトコルを実行するように構成されたSTAハードウェアの実施形態例10を示す。外部I/O接続14が回路12の内部バス16に結合し、内部バス16上には、通信プロトコルを実装する(単複の)プログラムを実行するためにCPU18及びメモリ(例えば、RAM)20が接続されることが好ましい。ホストマシンは、1又は複数のアンテナ29、26a、26b、26c~26nにそれぞれが接続された少なくとも1つのRFモジュール24、28に結合された、通信をサポートする少なくとも1つのモデム22を収容する。複数のアンテナ(例えば、アンテナアレイ)を有するRFモジュールは、送信及び受信中にビームフォーミングを実行することを可能にする。このように、STAは、複数組のビームパターンを使用して信号を送信することができる。
【0044】
バス14は、センサ及びアクチュエータなどの様々な装置をCPUに接続することができる。プロセッサ18上では、STAがアクセスポイント(AP)局又は通常の局(非AP STA)の機能を実行することを可能にするように実行される通信プロトコルを実装するプログラムを実行するための、メモリ20からの命令が実行される。また、このプログラミングは、現在の通信状況でどのような役割を果たしているかに応じて異なるモード(TXOP所有者、TXOP共有参加者、ソース、中間、宛先、第1のAP、他のAP、第1のAPに関連する局、他のAPに関連する局、調整機(coordinator)、被調整機(coordinatee)、OBSS内のAP、及びOBSS内のSTAなど)で動作するように構成されると理解されたい。
【0045】
従って、図示のSTA HWは、少なくとも1つのモデムと、少なくとも1つの帯域で通信を提供するための関連するRF回路とで構成される。本開示は、主にサブ6GHz帯を対象とする。
【0046】
なお、本開示は、それぞれが任意の数のRF回路に結合された複数のモデム22を使用して構成することができると理解されたい。一般に、使用するRF回路の数が多ければ多いほど、アンテナビーム方向のカバレッジは広くなる。なお、利用するRF回路の数及びアンテナの数は、特定の装置のハードウェア制約によって決まると理解されたい。RF回路及びアンテナの一部は、STAが近隣STAと通信する必要がないと判定した時に無効にすることができる。少なくとも1つの実施形態では、RF回路が周波数変換器及びアレイアンテナコントローラなどを含み、送受信のためにビームフォーミングを実行するように制御される複数のアンテナに接続される。このように、STAは、各ビームパターン方向がアンテナセクタとみなされる複数のビームパターンの組を使用して信号を送信することができる。
【0047】
また、図示のような局ハードウェアの複数のインスタンスはマルチリンク装置(MLD)に組み合わせることができ、通常、このMLDは局の活動を協調させるプロセッサ及びメモリを有する。
【0048】
図14に、マルチリンク装置(MLD)ハードウェア構成の実施形態例40を示す。MLDには、一次リンク及び条件付きリンクとして知られている2つのリンクが存在する。条件付きリンクは、いくつかの基本リンクと共に非同時送受信(NSTR)リンクペアを形成するリンクである。
【0049】
MLDには複数のSTAが所属し、各STAは異なる周波数のリンク上で動作する。MLDは、アプリケーションへの外部I/Oアクセスを有し、このアクセスは、CPU62及びメモリ(例えば、RAM)64を有するMLD管理エンティティ48に接続して、MLDレベルで通信プロトコルを実装する(単複の)プログラムの実行を可能にする。MLDは、ここではSTA1 42、STA2 44~STA N 46として例示する接続先の各所属する局にタスクを配分してこれらから情報を収集し、所属するSTA間で情報を共有することができる。
【0050】
少なくとも1つの実施形態では、MLDの各STAが独自のCPU50及びメモリ(RAM)52を有し、これらは1又は2以上のアンテナを有する少なくとも1つのRF回路56に接続された少なくとも1つのモデム54にバス58を通じて結合される。本例では、RF回路が、アンテナアレイなどの形の複数のアンテナ60a、60b、60c~60nを有する。RF回路及び関連する(単複の)アンテナと組み合わせたモデムは、近隣STAとの間でデータフレームを送信/受信する。少なくとも1つの実装では、RFモジュールが、周波数変換器、アレイアンテナコントローラ、及びそのアンテナと連動するためのその他の回路を含む。
【0051】
MLDの各STAは、特定のMLD実装に応じて互いに及び/又はMLD管理エンティティとリソースを共有することができるので、必ずしも独自のプロセッサ及びメモリを必要としないと理解されたい。なお、上記のMLD図は限定ではなく一例として示すものであり、本開示は、幅広いMLD実装と共に動作することができると理解されたい。
【0052】
4.2.使用例のSTAトポロジー
図15に、本開示の目的を説明するために利用するネットワークトポロジー例の実施形態70を示す。なお、本開示の装置及び方法は特定のトポロジーに限定されるものではないため、このトポロジー(及び本明細書で例示する全てのトポロジー)は限定ではなく一例として示すものであると理解されたい。また、本開示全体を通じて参照する特定のMLD、STA及びリンクは、動作の理解を単純化にするために示すものにすぎない。なお、リンク1及びリンク2は、MLD1の1つのNSTRリンクペアである。
【0053】
マルチリンク装置(MLD)は、複数(通常は2つ)の所属するSTAと、1つのMACデータサービスを含む、論理リンク制御(logical link control:LLC)への1つのMACサービスアクセスポイント(SAP)とを有する装置である。MLDのSTAがAP STAである場合、そのMLDはAP MLDとみなされ、一方でMLDに非AP STAが所属している場合、そのMLDは非AP MLDである。
【0054】
例図に示すように、2つのMLD74、76上のこれらのSTAは会議室などの構造72内に存在すると仮定する。STA1 78及びSTA2 80はMLD1に所属し、STA3 82及びSTA4 84はMLD2に所属する。STA1及びSTA2は、リンク1 86及びリンク2 88を介してそれぞれSTA3及びSTA4に関連付けられる。
【0055】
いくつかの事例では、このようなNSTR状況における本開示の動作実証に例示するように、リンク1及びリンク2が、MLD1などのNSTRリンクペアであると認識されるであろう。なお、全てのSTAは、全てのリンク上でのランダムチャネルアクセスにCSMA/CAを使用する。この具体的なトポロジー例では、MLD1をNSTR MLDとみなし、MLD2をSTR MLDとみなす。リンク1及びリンク2は、MLD1の1つのNSTRリンクペアである。STA1はリンク1を介してSTA3と通信し、STA2はリンク2を介してSTA4と通信している。図示のようなネットワークトポロジーは、(a)MLD2がSTR AP MLDであり、MLD1がNSTR非AP MLDであるシナリオ、又は(b)MLD1がソフトAPであり、MLD2がSTR非AP MLDであるシナリオ、という2つのシナリオを表すことができる。
【0056】
なお、「ソフトAP」という用語は、局ハードウェアは通常の(非AP)STAと同じであることができるが、ソフトウェアによってSTAがAPであることを可能にする、「ソフトウェア対応アクセスポイント」又は「NSTRモバイルAP MLD」の略語である。
【0057】
図示のネットワークトポロジーでは、MLD2に所属するSTA3がリンク1上でSTA1と送信又は受信を行っているため、MLD2がリンク1上のSTA1の送信及び受信ステータスを判定できるものと仮定する。また、MLD2は、リンク1上のSTA1のステータス情報をリンク2上の所属するSTA4と共有することができる。
【0058】
4.3.NSTRリンク上でのチャネルアクセス
本節では、STA1がリンク1のTXOP所有者である場合にSTA4がリンク2上のチャネルにアクセスする方法について説明する。なお、説明を単純にするために、フローチャート及び通信例では
図15に示すネットワークトポロジーを使用する。
【0059】
4.3.1.チャネルアクセスプロセス
図16に、STA1がリンク1上で送信を行っている時のリンク2上でのSTA4によるチャネルアクセスの実施形態例90を示す。
【0060】
MLD1に所属するSTA1がリンク1上で送信を行っている時に(92)、MLD2に所属するSTA4が、リンク2上のチャネルにアクセスして、MLD1に所属するSTA2と通信する。
【0061】
リンク1及びリンク2がMLD1のNSTRリンクペアである場合には、STA1がリンク1上で送信を行っている時に、STA2がリンク2上でSTA4から受信(感知)を行えないことがある。従って、ブロック94において、STA4は、リンク2上のTXOP期間を予約するために、データパケットを含まない短フレームなどのダミーフレームをSTA2に送信する。なお、STA4は、ダミーフレームをブロードキャストすることもできる。ダミーフレームは、例えば
図23に示すような送信要求(RTS)、マルチユーザRTS(MU-RTS)、MU-RTS TXOP共有(TXS)フレーム、送信許可(CTS)、CTS-to-Selfフレーム、又はその他の共有フレームなどの数多くの形態で作成することができる。ダミーフレームによって要求される予約されたTXOP時間は、STA2がリンク2上でSTA4から受信できるようになるまでチャネルを占有し、その後にSTA4は直ちにSTA2にフレームを送信することができる。
【0062】
チェック96において、ダミーフレームによって予約されたTXOPが終了する前に、STA4がSTA2に送信を行う機会(チャンス)があるかどうか(例えば、STA2が受信中であるかどうか)を判定する。条件が満たされた場合、STA4はSTA2にパケットを送信する(98)。
【0063】
そうでなければ、STA4はSTA2にパケットを送信しない(100)。この結果、STA4は、直ちに新たなバックオフを開始することができ、或いは場合によってはSTA1のTXOPの終了まで新たなバックオフを開始せず、或いは他のSTAに送信すべきパケットを有している時に新たなバックオフを開始することもでき、或いはバックオフカウントを0に維持する。
【0064】
4.3.2.リンクアクセス例
本節では、STA1がリンク1上のTXOP所有者である場合にSTA4がリンク2上のチャネルにアクセスする複数の例を示す。これによってMLD(MLD1及びMLD2)間のチャネル通信帯域が広くなり、結果的にスループットが向上して遅延時間が減少する。なお、本節の例に示す(STA4からSTA2への)PPDUは、(例えば、
図32~
図34に示すような)NSTRCrd要求/指示(NSTRCrd Request/Indication)フレーム、又は4.4節に示すような、RDG=1であってNSTR協調指示が第1の状態(例えば、「1」)に設定された、NSTR協調を開始するPPDUを含むことができる。
【0065】
本節に示す例では、MLD2に所属するSTA3がリンク1上でSTA1と送信又は受信を行っているため、MLD2がリンク1上のSTA1の送信及び受信ステータスを判定できるものと仮定する。また、MLD2は、リンク1上のSTA1のステータス情報をリンク2上の所属するSTA4と共有する。
【0066】
図17に、STA4がダミーフレームを使用してリンク2上のTXOPを予約する実施形態例110を示す。この図には、関連するSTA1 78及びSTA2 80を有するMLD1 74と通信する、関連するSTA3 82及びSTA4 84を有するMLD2 76を示す。
【0067】
STA1がリンク1上でTXOP112を取得し、リンク1上でSTA3への送信114を開始する。次に、STA1がリンク1上で送信を行っている間に、STA4がSTA2への送信のためにチャネルアクセス権を取得する。STA4は、短期間のTXOPを予約するためにダミーフレーム116を送信する。STA1は、予約された短期間のTXOPが終了する前に自機の送信を完了し、リンク1を介してSTA3からの受信118を開始する。STA1が受信中である場合、STA4は、STA2の受信が装置内共存干渉によって阻止されないことが保証された状態でSTA2に(単複の)PPDU120を送信することができる。
【0068】
なお、2つのリンク間のPPDUアライメントは必要ない場合もあるが、2つのリンク上でのPPDU送信の方向は一致すべきである。換言すれば、2つのリンク上でのPPDU送信の方向は、いずれも同時にUL又はいずれも同時にDLとすべきである。リンク1上の送信情報(PPDUのプリアンブル及びMACヘッダ)は、STA1が受信中である時にSTA4が(STA4からSTA2に)PPDUを送信するのを支援することができる。
【0069】
STA4は、リンク2上でのダミーフレームとSTA4からSTA2へのPPDUとの間の時間中に、チャネル状態を検知するためにキャリアセンシング(CS)を実行することが必要な場合がある。この時間中にチャネルがビジーになると、STA4はSTA4からSTA2にPPDUを送信できず、新たなチャネル競合を開始することができる。
【0070】
なお、MLD2はSTR MLDである。従って、STA4は、STA4がリンク1上で受信を行っている時間内に(例えば、複数のPPDUを含むことができる)STA2へのPPDU送信を開始して終了することができる。
【0071】
図18に、STA4がダミーフレームを使用してリンク2上のTXOPを予約するが、予約されたTXOP中にSTA2に送信する機会がなかった実施形態例130を示す。この事例では、STA1が、リンク1上での送信中に順次に複数のPPDUを送信している。MLD、STA及びリンクは
図17と同じでものある。
【0072】
ここでも、STA1がTXOPを取得して(112)STA3への送信114を開始することが分かる。次に、STA1がリンク1上で送信を行っている間に、STA4がSTA2への送信のためにリンク2へのチャネルアクセス権を取得し、短期間のTXOPを予約するためにダミーフレームを送信する(116)。予約された短期間のTXOP132内では、STA1が依然としてリンク1上で送信中であり、このためSTA4は、STA2が感知できるPPDUをSTA2に送信することができない。従って、STA4は、短期間のTXOP中にSTA2にPPDUを送信せず、チャネルへのアクセスに失敗する。
【0073】
STA4は、短時間のTXOP後にチャネルを求めて再競合することができる。この場合、少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、STA4が、チャネルのためのコンテンションウィンドウ(CW)を増加させることなくチャネルアクセスを続行する。
【0074】
図19に、STA4がダミーフレームを使用してリンク2上のチャネルを占有する実施形態例150を示す。MLD、STA及びリンクは
図18に示すものと同じである。
【0075】
ここでも、STA1がTXOPを取得して(112)STA3への送信114を開始していることが分かる。次に、STA1がリンク1上で送信を行っている間に、STA4がSTA2への送信のためにリンク2へのチャネルアクセス権を取得し、STA2への送信のためのチャネルを占有するためにダミーフレームを送信する(152)。
【0076】
この例では、STA4が、ダミーフレーム152の終了時刻をSTA1送信の終了時刻に一致させる。これを行える理由は、STA4が、STA3からのPPDU長さ情報などに基づいて、STA1が送信を終える時刻を判定できるからである。ダミーフレームは、アライメントを達成するためにフレーム内にパディングを含むことができる。
【0077】
STA4は、STA1がリンク1上での送信を終了して受信154を開始した後にSTA2にPPDU(又は複数のPPDU)156を送信することができ、STA2がこれを感知するのを阻止する装置内共存干渉が存在しないことが保証される。なお、例えば2つのリンク上のPPDU送信の方向が正しく一致している場合には、STA4がSTA2に(単複の)PPDUを送信する際の2つのリンク間のPPDUアライメントは不要であることもできる。
【0078】
STA4は、ダミーフレームとSTA4からリンク2上のSTA2へのPPDUとの間の時間中に、チャネル状態を判定するためにキャリアセンシング(CS)を実行することが必要な場合がある。この時間中にチャネルがビジーになると、STA4はSTA4からSTA2への(単複の)PPDUを送信できず、新たなチャネル競合を開始することができる。
【0079】
図20に、STA4がチャネルにアクセスした直後にリンク2上でSTA2にPPDUを送信する実施形態例170を示す。MLD、STA及びリンクは
図19に示すものと同じである。
【0080】
STA1がTXOPを取得して(112)STA3からの送信を受け取り始めている(172)ことが分かる。その後、STA1がリンク1上で受信を行っている間に、STA4がSTA2への送信のためにリンク2へのチャネルアクセス権を取得して、干渉を防ぐのに必要な遅延を伴わずにSTA2に(単複の)PPDU174を送信し、従ってSTA4のPPDUは直ちにSTA2によって受け取られる。
【0081】
図21に、STA4が共有フレームを使用してリンク2上のTXOPを予約する実施形態例190を示す。MLD、STA及びリンクは
図17に示すものと同じである。
【0082】
ここでも、STA1がTXOPを取得して(112)STA3への送信114を開始していることが分かる。次に、STA1がリンク1上で送信を行っている間に、STA4がSTA2への送信のためにリンク2へのチャネルアクセス権を取得し、他のSTAによるTXOPの共有を可能にするために
図23に示すような共有フレーム192を送信する。その後、STA1がSTA3に送信を行っている(114)間に、STA4は他のSTAとTXOPを共有する(194)。
【0083】
STA4は、STA2にPPDU(すなわち、図ではSTA4からSTA2へのPPDU)を送信する前に他のSTAとTXOPを共有する。すなわち、他のSTAは、共有TXOP時間(すなわち、共有フレームとSTA4からSTA2へのPPDUとの間の時間)中に送信を行うことができる。共有TXOP時間は、例えば共有フレーム内のTXOP共有時間フィールドから取得することができる。他のSTAの送信は、TXOP共有時間を超えることはできない。その後、STA4は、TXOP共有を停止してSTA2にパケット156を送信する。
【0084】
なお、例えば2つのリンク上のPPDU送信の方向が一致している状況では、STA4がSTA2に(単複の)PPDUを送信する際の2つのリンク間のPPDUアライメントは不要であることもできる。
【0085】
少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、共有フレームがマルチユーザ(MU)RTS TXOP共有(TXS)フレームに置き換えられる。STA4は、STA2との送信を開始する前にいくつかの送信をトリガーするように、共有フレームの代わりにトリガーフレームを送信することも可能である。STA4は、STA2への送信を開始する前に他のSTAとフレームを交換することが可能である。
【0086】
図22に、STA4がリンク2上の対象の受信側と通信するためにバックオフがゼロの状態で待機する実施形態例210を示す。MLD、STA及びリンクは
図17に示すものと同じである。
【0087】
ここでも、STA1がTXOPを取得して(112)STA3への送信114を開始していることが分かる。その後、STA1がリンク1上で送信を行っている間に、STA4は、
図23で説明するようにリンク2のバックオフ(BO)をゼロにカウントダウンしてBOカウントをゼロに維持する。
【0088】
STA4は、STA2にPPDU(すなわち、図ではSTA4からSTA2へのPPDU)を送信できる場合、チャネルにアクセスして(214)STA2に(単複の)PPDU156を送信する。
【0089】
なお、2つのリンク上のPPDU送信の方向が正しく一致している場合などには、STA4がSTA2にPPDUを送信する際の2つのリンク間のPPDUアライメントは不要であることもできる。
【0090】
3.3.3.フレームフォーマット
図23に、以下のフィールドを有する共有フレームの実施形態例230を示す。
【0091】
フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。期間(Duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。このRAフィールドはブロードキャストすることもできる。TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。
【0092】
TXOP共有情報フィールド。他のSTAは、TXOPを取得するためにチャネルを求めて競合することができるが、TXOP共有が終了する前に自機のTXOPを終了する(TXOPを超えて送信しない)必要がある。TXOP共有指示(TXOP sharing Indication)フィールドは、TXOP共有が許可されるかどうかを示す。このフィールドは1ビット指示(フラグ)から成ることができ、例えばこのフィールドが第1の状態(例えば、「1」)に設定された場合、TXOP共有は許可される。このフィールドが第2の状態(例えば、「0」)に設定された場合、TXOP共有は許可されない。受信側STAは、このフィールドを受け取ると、このフィールドがTXOP共有状態に設定されている場合にはTXOP共有時間中に送信を行えると認識する。TXOP共有時間(TXOP sharing Time)フィールドは、受信側STAがこのフレームを受け取った後に送信に使用できる時間を示す。受信側STAの送信はTXOP共有時間を超えてはならない。RAがブロードキャストである場合、受信側STAは送信前にチャネルを求めて競合する。
【0093】
アクセスクラスフィールドも含まれる。AC制約(AC constraint)フィールドは、ACIフィールドに指定されたACのみをTXOP共有時間中に送信できるかどうかを示す。このフィールドは1ビット指示を含むことができ、例えば第1の状態(例えば、「1」)に設定されると、受信側STAはACIフィールドに指定されたACからのトラフィックのみを送信することができる。そうでなければ、STAは全てのACからのトラフィックを送信することができる。ACIフィールドは、TXOP共有時間中にトラフィックを送信できるACを示す。このフィールドのフォーマットは、
図10に示すACIビットマップフィールド又はACI高フィールドと同じである。
【0094】
4.4.NSTRリンクペアのリンク上での協調
実施例の説明を単純にするために、フローチャート及び実施例では
図15に示すネットワークトポロジーを使用する。
【0095】
本節では、STA1及びSTA4がそれぞれリンク1上及びリンク2上のTXOP所有者である時に、STA4がリンク1及びリンク2の両方での送信の協調を要求するNSTR協調と呼ばれる方法について説明する。送信のNSTR協調が発生すると、MLD1又はMLD2のいずれかが両リンク上で同時に送信を手配する(すなわち、TXOP所有者の機能を果たす)。また、送信を手配するMLDは、2つのリンク間の装置内共存(IDC)干渉を避けるために2つのリンク上で同時に送信又は受信を行うことができる。
【0096】
4.4.1.NSTR要求プロセス
図24に、MLD1又はMLD2のいずれかがリンク1及びリンク2の両方で同時に送信を手配するようにSTA4がNSTR協調を要求する実施形態例250を示す。なお、MLD及びSTAの番号は、MLD及びSTAの区別のために使用するものにすぎず、フロー図をいずれかの特定の番号のMLD又はSTAに限定するものではないと理解されたい。
【0097】
MLD1に所属するSTA1がリンク1上のTXOP所有者である時に(252)、MLD2に所属するSTA4がリンク2上のチャネルアクセス権を有しており、MLD1に所属するSTA2と通信する予定である。
【0098】
次に、ブロック254において、STA4は、MLD1(又はMLD2)にリンク1及びリンク2の両方で同時に送信を手配させるようにSTA2又はMLD1に要求する。なお、STA4は、リンク2上のチャネルにアクセスした時に、STA1がリンク1上で送信中である場合にはリンク2上でSTA2に送信を行えないことがある。限定ではなく一例として、STA4は、4.3節で説明した方法を使用してチャネルを占有し、正しいタイミングでSTA2にパケットを送信することができる。
【0099】
チェック256において、MLD(MLD1)が要求を受け入れたかどうかを判定する。条件が満たされた場合、MLD1(又はMLD2)は、装置内共存(IDC)干渉が発生する可能性を排除するためにリンク1及びリンク2の両方で同時に送信を手配する(258)。なお、いくつかの事例では、2つのリンク上でのTXOPの一方が終了した時にMLD1(又はMLD2)が送信の配置を停止することができる。
【0100】
一方で、要求が受け入れられなかったことによってチェック256が満たされない場合、ブロック260において、STA4は現在のTXOPを停止する。
【0101】
図25に、STA2又はMLD1がNSTR協調要求に応答する実施形態例270を示す。STA1がリンク1上のTXOP所有者である時に、STA2は、MLD1(又はMLD2)が両リンク上で同時に送信を手配することを可能にするNSTR協調要求をリンク2上でSTA4から受け取る(272)。
【0102】
チェック272において、要求が受け入れられたかどうかを判定する。要求が受け入れられた場合、ブロック276において、MLD1が要求を受け入れる旨をMLD2に応答する。その後、MLD1(又はMLD2)は、両リンク上で同時に送信を手配し始める(278)。
【0103】
一方で、ブロック274においてSTA2又はMLD1によって要求が拒絶されたと判定された場合、ブロック280においてオプションを決定する。オプション1が選択された場合(282)、STA2又はMLD1は、要求を拒絶する旨をMLD2に応答する。一方で、オプション2が選択された場合、STA2又はMLD1は、応答を送信する必要なく要求を拒絶することができる(284)。
【0104】
4.4.2.NSTR要求動作の例
本節では、4.3節で説明したような、STA4がチャネルにアクセスした後にMLD1にNSTR協調を要求する複数の例について詳述する。
【0105】
図26に、MLD1がNSTRリンク上で送信を手配することを可能にするためにSTA4がNSTR協調を要求する実施形態例310を示す。この図には、関連するSTA1 78及びSTA2 80を有するMLD1 74と通信する、関連するSTA3 82及びSTA4 84を有するMLD2 76を示す。
【0106】
STA1は、リンク1上のTXOP112を取得し、リンク1上でSTA3からの受信を開始する(312)。STA4は、MLD1がリンク1及びリンク2の両方で送信を手配することを要求するために、最初にリンク2を介してSTA2にNSTR協調要求フレーム(図示のようなNSTRCrd Req)314を送信する。STA4は、NSTR協調要求フレームにおいて、MLD1が両リンク上で送信を手配するNSTR協調時間を示すこともできる。NSTR協調要求フレームによってSTA4又はMLD2のバッファ状態を送信することもできる。図示のように、STA2は、STA1がリンク1上のTXOP所有者であるにもかかわらず、STA1が受信を行っている時に同時にNSTR協調要求フレームを受け取ることができる。
【0107】
次に、MLD1は、NSTR協調要求を受け入れ(315)、共有要求を受け入れるために、MLD2、並びに関連するSTA3及びSTA4にNSTR協調応答フレーム(図示のようなNSTRCrd Res)316、318を返送する。なお、リンク1上でのNSTR協調応答フレームの送信は不要な場合もあり、このフレームはSTA1によって送信される他のいずれかのPPDUに置き換えることもできる。一方で、MLD1は両リンク上で同時に送信を手配している。例えば、MLD1は、両リンク上での送信又は両リンク上での受信を同時に制御することができる。
【0108】
なお、NSTR協調要求フレーム及びNSTR協調応答フレームのフォーマットは
図32のものと同様であることができる。少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、NSTR協調要求フレームが、
図33に示すような転送要求(RTF)フレーム、又はIEEE802.11axで定められるようなBSRフレームを含むことができ、NSTR協調応答フレームが、IEEE802.11axで定められるようなトリガーフレームである。
【0109】
MLD1が両リンク上のTXOPを引き継ぐ場合、これらの2つのリンクは同じNSTRリンクペアに属するので、これらのリンク上でのPPDU送信方向は同じにすべきである。この図には、TXOP内でPPDU送信320及び322が実行されていることを示す。
【0110】
なお、リンク2上の(STA2からSTA4への)NSTRCrd ResはNSTR協調要求の結果を提供できるので、図示のリンク1上の(STA1からSTA3への)NSTRCrd Resは他のいずれかのPPDUに置き換えることができる。すなわち、リンク1上の(STA1からSTA3への)NSTRCrd Resを送信する必要はない。
【0111】
図27に、MLD2によるNSTRリンク上での送信手配を可能にするためにSTA4がNSTR協調を要求する実施形態例330を示す。MLD、STA及びリンクは
図26に示すものと同じである。
【0112】
STA1は、リンク1上のTXOP112を取得し、リンク1上でSTA3からの受信を開始する(312)。STA4は、リンク1及びリンク2の両方での送信手配を求めるためにNSTR協調要求フレーム(図示のようなNSTRCrd Req)314を送信する。STA4は、NSTR協調要求フレーム内にMLD1が両リンク上で送信を手配すべき期間を示すこともできる。NSTR協調要求フレームによってSTA4又はMLD2のバッファ状態を送信することもできる。図示のように、STA2は、STA1がリンク1のTXOP所有者であるにもかかわらず、STA1が受信を行っている時に共有要求フレームを受け取ることができる。
【0113】
次に、MLD1は、NSTR協調要求を受け入れ(315)、NSTR協調要求を受け入れるNSTR協調応答フレーム(図示のようなNSTRCrd Res)316及び318をMLD2に返送する。なお、リンク1上でのNSTR協調応答フレームの送信は不要な場合もあり、このフレームはSTA1によって送信される他のいずれかのPPDUに置き換えることもできる。その後、MLD2は両リンク上での送信を手配し始める(319)。MLD2が両リンク上のTXOPを引き継ぐ場合、これらの2つのリンクは同じNSTRリンクペアに属するので、これらのリンク上でのPPDU送信方向は同じにすべきである。この図には、STA3からSTA1へのPPDU送信332、及びSTA4からSTA2への同時PPDU送信334を示す。
【0114】
なお、NSTR協調要求フレーム及びNSTR協調応答フレームのフォーマットは、
図32に示すものと同様であることができる。少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、NSTR協調要求フレームが、
図33に示すような転送要求(RTF)フレーム、又はIEEE802.11axで定められるようなBSRフレームを含み、及び/又はNSTR協調応答フレームが、IEEE802.11beで定められるようなMU-RTS TXSトリガーフレームである。
【0115】
図28に、MLD1がNSTR協調要求を拒絶する実施形態例350を示す。MLD、STA及びリンクは
図27に示すものと同じである。
【0116】
STA1は、リンク1上でTXOP112を取得し、リンク1上でSTA3からの受信を開始する(352)。この時、リンク2上のSTA4は、MLD1又はMLD2のいずれかがリンク1及びリンク2の両方で送信を手配することを要求するためにNSTR協調要求フレーム(図示のようなNSTRCrd Req)354を送信している。STA4は、NSTR協調要求フレーム内にMLDが両リンク上で送信を手配すべき時間を示すこともできる。NSTR協調要求フレームによってSTA4又はMLD2のバッファ状態を送信することもできる。図示のように、STA2は、STA1がリンク1のTXOP所有者であるにもかかわらず、STA1が受信を行っている時に共有要求フレームを受け取ることができる。
【0117】
MLD1は、NSTR協調要求を拒絶し、STA2は、NSTR協調要求を拒絶するNSTR協調応答フレーム(図示のようなNSTRCrd Res)をSTA4に返送する(358)。一方で、STA1はリンク1上で送信を継続することができる(356)。その後、MLD2は、リンク2上のTXOPを終了し、チャネルを求めて再競合することができる。
【0118】
なお、NSTR協調要求フレームのフォーマットは
図32に示すものと同様であることができる。
【0119】
図29に、STA4がMLD1によるNSTRリンク上での送信手配を許可することを示す(要求する)実施形態例370を示す。MLD、STA及びリンクは
図28に示すものと同じである。
【0120】
STA1は、リンク1上のTXOP112を取得し、リンク1上でSTA3からの受信を開始する(312)。この時、リンク2上のSTA4は、STA2にNSTR協調指示フレーム(図示のようなNSTRCrd Ind)314を送信しており、MLD1がリンク1及びリンク2の両方で送信を手配すべきであることを示す(要求)する。STA4は、NSTR協調指示フレーム内にMLD1が両リンク上で送信を手配すべき時間を示すことを選択することもできる。NSTR協調要求フレームによってSTA4又はMLD2のバッファ状態を送信することもできる。図に示すように、STA2は、STA1がリンク1のTXOP所有者であるにもかかわらず、STA1が受信を行っている時に同時にNSTR協調指示フレームを受け取ることができる。
【0121】
その後、MLD1は要求を受け入れ、両リンク上でPPDU送信を手配し始める。図示のように、STA1はリンク1上でSTA3にPPDU372及び376を送信し始めることができ、STA2はリンク2上でSTA4にPPDU374及び378を送信し始めることができる。MLD1は、2つのリンク上で送信を手配する際に、2つのリンク上での送信方向が同じになるように手配すべきである。各リンク上での送信中には、PPDUを一致させることも又はさせないこともできる。
【0122】
なお、NSTR指示フレームのフォーマットは、
図32に示すものと同様であることも、或いはIEEE802.11beで定められるようなMU-RTS TXSトリガーフレームであることもできる。
【0123】
また、リンク2上の(STA2からSTA4への)最初のPPDUは、NSTRCrd Indフレームが正常に受信されたことを示す確認応答フレームを搬送することができる。
【0124】
図30及び
図31に、NSTR協調のために逆方向グラント(RDG)を再使用する実施形態例390を示す。この図のPPDUは、そのHT制御フィールド内で
図34に示すような拡張CAS制御(extended CAS Control)サブフィールドを搬送することができる。
【0125】
MLD、STA及びリンクは
図29に示すものと同じである。STA1はリンク1上でTXOP112を取得し、リンク1上でSTA3からの受信を開始する(392)。
【0126】
STA4は、MLD1がリンク1及びリンク2の両方で送信を手配できることを示すために、RDGをアクティブ(例えば、「1」)に設定してNSTR協調指示をアクティブ(例えば、「1」)に設定したPPDU394をリンク2上で送信する。
【0127】
その後、MLD1は、PPDU398、400、402、404、406、408、410及び412を使用して、リンク1及びリンク2の両方で送信を手配する。MLD1によって送信されたPPDU内のRDG/さらなるPPDU(RDG/More PPDUs)フィールドは、進行中のNSTR協調を示すようにアクティブ(例えば、「1」)に設定される。PPDU送信の境界を定めるNSTR協調期間396を示す。
【0128】
PPDU内のRDG/さらなるPPDUフィールドは、両リンク上でのPPDU送信方向が同じであることを確実にするように設定される。例えば、リンク1上でRDGが非アクティブ(例えば、「0」)であり、リンク2上でさらなるPPDUがアクティブ(例えば、「1」)である場合、リンク1上及びリンク2上の次のPPDUはMLD1によって送信される。リンク1上でRDGがアクティブに設定され、同時にリンク2上でさらなるPPDUが非アクティブに設定された場合、リンク1上及びリンク2上の次のPPDUはMLD2によって送信される。リンク1上でさらなるPPDUがアクティブ(例えば、「1」)に設定され、同時にリンク2上でRDGが非アクティブ(例えば、「0」)に設定された場合、リンク1上及びリンク2上の次のPPDUはMLD2によって送信される。リンク1でさらなるPPDUが非アクティブ(例えば、「0」)であり、リンク2上でRDGがアクティブ(例えば、「1」)である場合、リンク1上及びリンク2上の次のPPDUはMLD1によって送信される。
【0129】
なお、RDGサブフィールド及びさらなるPPDUサブフィールドは、PPDU内で同じビットを共有する。STAがTXOP所有者である場合、このSTAが送信するのはPPDU内のRDGフィールドである。STAがTXOP応答者である場合、このSTAが送信するのはPPDU内のさらなるデータ(More data)フィールドである。PPDU内のNSTR協調指示が非アクティブである場合、NSTR協調は終了する。
【0130】
4.4.3.NSTR協調フォーマット
図32に、以下のフィールドを有するNSTR協調要求、応答及び指示フレームの実施形態例430を示す。従って、このフレームは、少なくとも1つの実施形態ではNSTR協調要求、NSTR協調応答及びNSTR協調指示のために利用されると理解されたい。
【0131】
フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。このフレームは、このフレームがNSTR協調要求フレームであるか、NSTR協調応答フレームであるか、それともNSTR協調指示フレームであるかを示すことができる。少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、このフィールドが、フレームがNSTR協調情報を搬送していることのみを示し、NSTR協調要求フレームであるか、NSTR協調応答フレームであるか、それともNSTR協調指示フレームであるかは示さない。期間(Duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。
【0132】
NSTRCrdフレームタイプ(NSTRCrd frame type)フィールドは、NSTR協調フレームのタイプを示すように設定される。このフィールドが「要求」に設定された場合、フレームはNSTR協調要求フレームである。この要求に応答して、受信側は、フレームに示されるNSTR協調情報に基づいて要求を受け入れるかどうかを判定する。このフレームの受信側は、その判定を示すためにNSTR協調応答フレームで応答することもできる。このフィールドが「応答」に設定された場合、フレームはNSTR協調応答フレームである。このフレームを受け取ると、そのNSTR協調要求の結果(判定)が決定される。要求が受け入れられた場合、このフレームの送信側及び受信側は、いずれもこのフレームに示されるNSTR協調情報に従う。要求が拒絶された場合、このフレームの受信側は現在のTXOPを終了し、チャネルを求めて再競合することができる。このフィールドが「指示」に設定された場合、このフレームはNSTR協調指示フレームである。従って、このフレームの受信側は、NSTR協調指示フレームに示されるTXOPリソースを自機が引き継いでTXOP所有者の機能を果たすことができると判定する。
【0133】
NSTRCrd情報(NSTRCrd information)フィールドは、NSTR協調情報を示すように設定される。STA又はMLDは、この情報を受け取ると、このフィールド内の情報を使用してNSTR協調を実行することができる。NSTRCrd指示(NSTRCrd indication)フィールドは、NSTR協調状態を示すように設定されるNSTR協調指示である。このフィールドは、1ビット指示として実装することができる。
【0134】
このフィールドは、NSTR協調要求フレーム内でアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、送信側がNSTR協調を要求していることを示す。そうでなければ、このフィールドは非アクティブ(例えば、「0」)に設定される。受信側は、NSTR協調要求フレーム内でこのフィールドを受け取ると、送信側がNSTR協調を要求していると認識し、この要求を受け入れるか、それとも拒絶するかを決定し、この決定をNSTR協調応答フレーム内に示すことができる。
【0135】
このNSTR協調フィールドは、NSTR協調応答フレーム内でアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、NSTR協調応答フレームの送信側がNSTR協調応答フレームの受信側からのNSTR協調要求を受け入れることを示す。そうでなければ、このフィールドは非アクティブ(例えば、「0」)に設定されて、送信側がNSTR協調要求を拒絶することを示す。このフィールドがアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、このフレームの送信側及び受信側はNSTR協調を開始する。そうでなければ、受信側はNSTR協調要求が拒絶されたと認識し、現在のTXOPを終了し、チャネルを求めて再競合することができる。
【0136】
このNSTR協調フィールドは、NSTR協調指示フレーム内でアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、NSTR協調指示フレームの送信側がNSTR協調指示フレームの受信側にNSTR協調時間中に送信の手配を許可していることを示す。この結果、受信側はTXOPを引き継ぎ、NSTR協調時間中にTXOP所有者の機能を果たすことができる。そうでなければ、このフィールドは非アクティブ(例えば、「0」)に設定される。
【0137】
NSTRコーディネータ(NSTR coordinator)フィールドは、リンクを介したNSTR協調期間中にどのMLDが送信を手配すべきであるか、又はTXOP所有者の機能を果たすべきであるかを示すように設定される。
【0138】
このフィールドは、NSTR協調要求フレームの送信側MLDに設定された場合、NSTR協調時間中にNSTRリンクペアの両リンク上で送信側MLDがTXOP所有者の機能を果たすべきであることを表す。
【0139】
このフィールドは、NSTR協調要求フレーム又はNSTR協調指示フレームの受信側MLDに設定された場合、受信側MLDがTXOP所有者の機能を果たし、NSTRリンクペアの両リンク上でNSTR協調時間中に送信を手配すべきであることを示す。
【0140】
NSTRCrd時間(NSTRCrd time)フィールドは、リンクを介したNSTR協調時間を示すように設定される。このフィールドは、NSTRコーディネータが後続のNSTR協調時間中に送信を手配し又はTXOP所有者の機能を果たせることを示す。
【0141】
AC制約(AC constraint)フィールドは、NSTR協調時間中にトラフィックを送信できるACを示すように設定される。なお、このフィールドは、このフィールドが送信されているリンク上でのみ有効である。このフィールドが両リンク上で有効である場合、両リンク上での送信は、このフィールドに示されるAC制約に従うべきである。
【0142】
このAC制約フィールドは、単一のACに設定することができる。少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、NSTR協調時間中にそのACからのトラフィックのみを送信することができる。いくつかの事例では、このフィールドが、NSTR協調時間中の一次ACを表すことができる。このフィールドの送信側及び受信側は、NSTR協調時間中にIEEE802.11axのTXOP共有ルールなどの送信ルールに従って送信を行うべきである。少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、NSTR協調時間中に、このフィールドに示されるACと等しい又はそれよりも高い優先度のACからのトラフィックを送信することができる。
【0143】
このAC制約フィールドは、各ビットがACを表すACビットマップを含むこともできる。このフィールド内のビットがアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、このビットに対応するACからのトラフィックがNSTR協調時間中に送信される。そうでなければ、このビットは、このビットに対応するACからのトラフィックがNSTR協調時間中に送信されないように非アクティブ(例えば、「0」)に設定される。
【0144】
このAC制約フィールドは、1ビット指示で構成することもできる。このビットがアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、一次ACからのトラフィックのみをNSTR協調時間中に送信することができる。一方で、このビットが非アクティブ(例えば、「0」)に設定された場合、NSTR協調時間中にあらゆるACからのトラフィックを送信することができる。IEEE802.11axで定められるTXOP共有を許可することができる。
【0145】
NSTRリンクID(NSTR link ID)フィールドは、NSTR協調中にNSTRコーディネータが送信を手配してTXOP所有者の機能を果たすべきであることをNSTRリンクペアの他方のリンクに示すように設定される。
【0146】
NSTR協調要求又は指示フレームでは、最小MPDUサイズ(Min MPDU size)フィールドが設定されて、このフィールドを設定するSTAがNSTR協調時間中に送信を要求する最小MPDUサイズを示す。NSTR協調プロセスの開始時には、このフィールドを設定するSTAによって送信されるMDPUを最小MPDUサイズよりも大きくすべきである。このフィールドは、限定ではなく一例として以下に示す複数の方法で設定することができる。NSTR協調要求が受け入れられた場合には、対応するNSTR協調要求フレームの値を複製することによって、このフィールドをNSTR協調応答フレーム内に設定することができる。このフィールドは、NSTR協調応答フレーム内に設定して、このフィールドを設定するSTAがNSTR協調時間中に送信するMPDUの最小サイズを示すこともできる。なお、このフィールドは、このフィールドを設定するSTAがNSTR協調時間中に送信する最小MSDU又はA-MSDUサイズを示す最小MSDUサイズを含むこともできる。
【0147】
NSTR協調要求又は指示フレームでは、送信時間(Transmitting time)フィールドが設定されて、このフィールドを設定するSTAがNSTR協調時間中にこのフィールドの受信者にPPDUを送信するように要求した最小時間を示す。NSTR協調の開始時には、このフィールドを設定するSTAに少なくともこの時間が送信のために割り当てられるべきである。このフィールドは、限定ではなく一例として以下に示す複数の方法で設定することができる。NSTR協調要求が受け入れられた場合には、対応するNSTR協調要求フレームの値を複製することによって、このフィールドをNSTR協調応答フレーム内に設定することができる。このフィールドは、このフィールドを設定するSTAがNSTR協調時間中に送信を実行するのに必要な最小時間を示すようにNSTR協調応答フレーム内に設定することもできる。
【0148】
バッファ状態報告(Buffer Status Report)フィールドは、送信側STAによってそのバッファ状態を示すように設定される。NSTRコーディネータは、このフィールドを受け取った場合、受け取られた送信側のバッファ状態に基づいてNSTR協調時間中に送信を手配すべきである。少なくとも1つの実施形態では、このフィールドをIEEE802.11axで定められるようにフォーマットすることができる。
【0149】
図33に、RTFフレームの実施形態例450を示す。フレーム制御(Frame Control)フィールドは、フレームのタイプを示す。期間(Duration)フィールドは、CSMA/CAチャネルアクセスに使用されるNAV情報を含む。RAフィールドは、フレームの受信者のアドレスを含む。TAフィールドは、フレームを送信したSTAのアドレスを含む。BSR制御(BSR control)フィールドは、送信側によってバッファの状態を示すように設定される。STAは、このフィールドを受け取ると、受け取られた送信側のバッファ状態に基づいて送信を手配することができる。このフィールドのフォーマットは、IEEE802.11axに定められるものと同じであるように実装することができる。トリガータイプ(Trigger type)フィールドは、送信側が受信側にこのフレームを受け取った後に送信するように要求するトリガータイプを示すように設定される。共通情報(Common Information(Info))フィールドは、トリガータイプに示されるトリガーフレームの共通情報フィールドと同じものである。受信側は、送信する応答型トリガーフレーム(solicited trigger frame)内の共通情報を複製すべきである。ユーザ情報(User Information(Info))フィールドは、トリガータイプに示されるトリガーフレームのユーザ情報フィールドと同じものである。受信側は、送信する応答型トリガーフレーム内の共通情報を複製すべきである。
【0150】
図34に、A-制御サブフィールドの拡張CAS制御サブフィールド変種の実施形態例470を示す。
【0151】
AC制約(AC constraint)フィールドは、1ビット指示の使用を含む異なる方法で表すことができる。限定ではなく一例として、以下に1ビットインジケータ(フラグ)の実装を示す。このビットが第1の状態(例えば、「1」)に設定された場合、一次ACからのトラフィックのみをNSTR協調時間中に送信することができる。一方で、このビットが第2の状態(例えば、「0」)に設定された場合、NSTR協調時間中にあらゆるACからのトラフィックを送信することができる。IEEE802.11axで定められるTXOP共有を許可することができる。
【0152】
RDG/さらなるPPDU(RDG/More PPDU)フィールドは多目的フィールドである。このフィールドの送信者がTXOP所有者である場合、このフィールドは逆方向グラント(RDG)フィールドである。このビットがアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、次のPPDUは受信側から送信されるべきである。このビットが非アクティブ(例えば、「0」)に設定された場合、次のPPDUも送信側によって送信される。
【0153】
このフィールドの送信者がTXOP応答者である時、このフィールドはさらなるPPDUフィールドである。このビットがアクティブ(例えば、「1」)に設定された場合、次のPPDUは送信側によって送信されるべきである。このビットが非アクティブ(例えば、「0」)に設定された場合、次のPPDUは受信側によって送信されるべきである。
【0154】
PSRT PPDUのサブフィールドは、IEEE802.11axで定められるものと同じであることができる。
【0155】
NSTRCrd指示(NSTRCrd indication)フィールドは、NSTR協調状態を示すように設定されるNSTR協調指示である。このフィールドは、1ビット指示(フラグ)の使用を含む複数の方法で実装することができる。NSTR協調指示フレーム内でこのフィールドが第1の状態(例えば、「1」)に設定されると、NSTR協調が進行中であることを示す。次のPPDUを送信するMLDは、リンク上のPPDUの方向が同じであることを保証すべきである。そうでなければ、このフィールドは第2の状態(例えば、「0」)に設定される。
【0156】
NSTRCrd時間(NSTRCrd time)フィールドは、リンクを介したNSTR協調時間を示すように設定される。このフィールドは、NSTRコーディネータが後続のNSTR協調時間中に送信を手配し又はTXOP所有者の機能を果たせることを示す。
【0157】
ACI、スケーリングファクタ(Scaling Factor)、及びキューサイズ(Queue Size)フィールドは、送信側のバッファ状態を表すフィールドである。受信側は、この情報を使用して送信を手配することができる。ACIフィールドは、送信側によって報告されたバッファのアクセスカテゴリを示す。スケーリングファクタフィールドは、キューサイズの単位を示す。このフィールドの符号化は、IEEE802.11axのものと同じである。キューサイズフィールドは、送信側のバッファされたトラフィックの量をスケーリングファクタの単位で示す。
【0158】
4.5.別のネットワークトポロジーの例
先の4.4.2節の例には、MLD1に所属するSTA1がリンク1のTXOP所有者であってMLD2に所属するSTA3と通信する際のMLD1とMLD2との間のNSTR協調を示した。しかしながら、STA4がリンク1上のチャネルアクセス権を獲得してNSTR協調を開始する際に、STA1がTXOP所有者でありながらSTA3と通信していない可能性もある。本節では、このようなシナリオについて説明する。
【0159】
図35に、本節で説明するようなネットワークトポロジーの実施形態例490を示す。
図15と比較すると、
図35に示すネットワークトポロジーには、リンク1上でSTA1と通信できる別の局STA5が追加されている。STA5は、図示のようなMLD3などのMLD所属するSTA、又はMLDに所属しないSTAであることができる。
【0160】
なお、実施形態490は、本節での動作を説明するために利用するネットワークトポロジー例であると理解されたい。本開示の装置及び方法はいずれかの特定のトポロジーに限定されるものではないため、このトポロジーは、
図15と同様に限定ではなく一例として示すものであると理解されたい。また、本開示全体を通じて参照する特定のMLD、STA及びリンクは、動作の理解を単純化するために示すものにすぎない。
【0161】
例図に示すように、会議室などの構造492内に見られるような3つのMLD494、496及び498上にSTAが存在すると仮定する。STA1 500及びSTA2 502はMLD1 494に所属し、STA3 504及びSTA4 506はMLD2 496に所属し、STA5 508及びSTA6 510はMLD3 498に所属する。STA1及びSTA2は、リンク1 512及びリンク2 514を介してそれぞれSTA3及びSTA4に関連付けられる(これらと通信する)。なお、リンク1及びリンク2は、MLD1の1つのNSTRリンクペアである。STA1及びSTA5は、ピアツーピア(P2P)通信であるリンク1 516を介して通信する。
【0162】
この図では、MLD2がSTR APであり、MLD1及びMLD3がMLD2に関連する非AP MLDである事例について考察する。なお、図にはMLD2及びMLD3間の関連付けを示していないが、この関連付けは、リンク1又はリンク2、或いは他のいずれかのリンクを介したMLD2に所属するAP STAとMLD3に所属する非AP STAとの関連付けを通じて達成することができる。
【0163】
全てのSTAは、全てのリンク上でのランダムチャネルアクセスにCSMA/CAを使用する。また、
図35のネットワークトポロジーでは、MLD2に所属するSTA3がTDLSフレームのTA、RAフィールドのチェックに応答することなどによってリンク1上でのSTA1とSTA5との間の送信をモニタしているので、MLD2がリンク1上のSTA1の送信及び受信ステータスを決定できるものと仮定する。また、MLD2は、リンク1上のSTA1のステータス情報をリンク2上の所属するSTA4との間で共有することができる。
【0164】
4.3節に示す例では、STA1がSTA3と通信している時のSTA4のチャネルアクセスを示した。しかしながら、STA4がチャネルにアクセスする際に、STA1がSTA4と同じMLDに所属していない他のSTAと通信していることも考えられる。本節では、4.3節に示した同じチャネルアクセス方法がこのようなシナリオでも動作することを示す。
【0165】
図36に、STA1がSTA5に送信していることを除いて
図17と同様の、STA4がダミーフレームを使用してリンク2のTXOPを予約する実施形態例530を示す。この例のネットワークトポロジーは
図35に示している。
【0166】
STA1がTXOPを取得し(532)、その後にSTA5への送信を開始する(534)。STA4がSTA2への送信のためのチャネルアクセス権を獲得した時に、STA1はリンク1上で送信中である。従って、STA4は、短期間のTXOPを予約するためにダミーフレームを送信する(536)。STA1は、予約された短期間のTXOPが終了する前に送信を終了し、リンク1上でSTA5からの受信を開始する(540)。STA1が受信を開始すると、STA4はSTA2にPPDU542を送信し、STA2は装置内共存干渉の可能性を伴わずにこれを受け取ることができる。なお、2つのリンク間のPPDUアライメントは不要であることができる。しかしながら、2つのリンク上でのPPDU送信の方向は一致すべきである。また、リンク1の送信情報(PPDUのプリアンブル及びMACヘッダ)は、STA1がPPDUを受信している時にSTA4が(STA4からSTA2に)PPDUを送信するのを支援することができる。
【0167】
STA4は、リンク2上でのダミーフレームとSTA4からSTA2へのPPDUとの間の時間中に、チャネル状態を検知するためにキャリアセンシング(538 CS)を実行することが必要な場合がある。この時間中にチャネルがビジーになると、STA4はSTA4からSTA2にPPDUを送信できず、新たなチャネル競合を開始することができる。
【0168】
なお、MLD2はSTR MLDである。STA4は、STA4がリンク1上で受信を行っている時間内にSTA2へのPPDU送信(複数のPPDUであることもできる)を開始して終了することができる。
【0169】
4.4節に示す例には、STA1がSTA3と通信している時にSTA4がNSTR協調を開始する例を示した。しかしながら、いくつかの事例では、STA4がチャネルにアクセスする際に、STA1がSTA4と同じMLDに属していない他のSTAと通信している可能性がある。本節では、このようなシナリオでもNSTR協調メカニズムが動作することを示す。
【0170】
図37に、MLD1がNSTR協調要求を受け入れて異なるMLDのためにNSTRリンク上で送信を手配する実施形態例570を示す。この例のネットワークトポロジーは
図35に示している。
【0171】
STA1がTXOPを取得し(532)、その後にSTA5からの受信を開始する(572)。STA4は、最初にSTA2にNSTR協調要求フレーム(図示のようなNSTRCrd Req)574を送信して、MLD1にリンク1及びリンク2の両方で送信を手配するように要求する。STA4は、NSTR協調要求フレーム内に、MLD1が両リンク上で送信を手配すべき期間を示すこともできる。NSTR協調要求フレームによってSTA4又はMLD2のバッファ状態を送信することもできる。図示のように、STA2は、STA5と通信しているSTA1がリンク1のTXOP所有者であるにもかかわらず、STA1が受信を行っている時に同時にNSTR協調要求フレームを受け取ることができる。
【0172】
次に、MLD1はNSTR協調を受け入れ(575)、STA2は、MLD1のSTA1がSTA5にPPDU576を送信している時に、NSTR協調要求を受け入れるNSTR協調応答フレーム(図示のようなNSTRCrd Res)578をSTA4に返送する。MLD1は両リンク上で同時に送信を手配する。なお、リンク1上のTXOP応答者は、MLD2に所属していないSTA5である。この場合、MLD1は、2つのリンク上で送信の手配を開始すると、STA5とのPPDU576及び578として示す送信をリンク1上で継続するとともに、STA4とのPPDU582として示す送信をリンク2上で開始する。なお、MLD1が2つのリンク上で送信を手配する際には、これらの2つのリンク上の送信方向を同じにすべきである。各リンク上での送信中には、PPDUを一致させることも又はさせないこともできる。
【0173】
なお、NSTR協調要求フレーム及びNSTR協調応答フレームのフォーマットは
図32に示すものと同様であることができる。少なくとも1つの実施形態/モード/事例では、NSTR協調要求フレームが、
図33に示すようなRTFフレーム、又はIEEE802.11axで定められるようなBSRフレームであり、NSTR協調応答フレームが、IEEE802.11axで定められるようなトリガーフレームである。
【0174】
5.実施形態の一般的範囲
本明細書では、コンピュータプログラム製品としても実装できる、本技術の実施形態による方法及びシステム、及び/又は手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式又はその他の計算表現のフローチャートを参照して本技術の実施形態を説明することができる。この点、フローチャートの各ブロック又はステップ、及びフローチャートのブロック(及び/又はステップ)の組み合わせ、並びにいずれかの手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はコンピュータ可読プログラムコードの形で具体化された1又は2以上のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段によって実装することができる。理解されるように、このようないずれかのコンピュータプログラム命令は、以下に限定されるわけではないが、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は機械を生産するための他のいずれかのプログラマブル処理装置を含む1又は2以上のコンピュータプロセッサによって実行して、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令が、(単複の)特定される機能を実施するための手段を生み出すようにすることができる。
【0175】
従って、本明細書で説明したフローチャートのブロック、並びに手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現は、(単複の)特定の機能を実行する手段の組み合わせ、(単複の)特定の機能を実行するステップの組み合わせ、及びコンピュータ可読プログラムコードロジック手段の形で具体化されるような、(単複の)特定の機能を実行するコンピュータプログラム命令をサポートする。また、本明細書で説明したフローチャートの各ブロック、並びにいずれかの手順、アルゴリズム、ステップ、演算、数式、又は計算表現、及びこれらの組み合わせは、(単複の)特定の機能又はステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコードとの組み合わせによって実装することもできると理解されるであろう。
【0176】
さらに、コンピュータ可読プログラムコードなどの形で具体化されるこれらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置に特定の態様で機能するように指示することができる1又は2以上のコンピュータ可読メモリ又はメモリ装置に記憶して、これらのコンピュータ可読メモリ又はメモリ装置に記憶された命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック内に指定される機能を実施する命令手段を含む製造の物品を生産するようにすることもできる。コンピュータプログラム命令をコンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置によって実行し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で一連の動作ステップが実行されるようにしてコンピュータで実施される処理を生成し、コンピュータプロセッサ又は他のプログラマブル処理装置上で実行される命令が、(単複の)フローチャートの(単複の)ブロック、(単複の)手順、(単複の)アルゴリズム、(単複の)ステップ、(単複の)演算、(単複の)数式、又は(単複の)計算表現に特定される機能を実施するためのステップを提供するようにすることもできる。
【0177】
さらに、本明細書で使用する「プログラム」又は「プログラム実行文」という用語は、本明細書で説明した1又は2以上の機能を実行するために1又は2以上のコンピュータプロセッサが実行できる1又は2以上の命令を意味すると理解されるであろう。命令は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで具体化することができる。命令は、装置の非一時的媒体に局所的に記憶することも、又はサーバなどに遠隔的に記憶することもでき、或いは命令の全部又は一部を局所的に又は遠隔的に記憶することもできる。遠隔的に記憶された命令は、ユーザが開始することによって、或いは1又は2以上の要因に基づいて自動的に装置にダウンロード(プッシュ)することができる。
【0178】
さらに、本明細書で使用するプロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、中央処理装置(CPU)及びコンピュータという用語は、命令、並びに入力/出力インターフェイス及び/又は周辺装置との通信を実行できる装置を示すために同義的に使用されるものであり、プロセッサ、ハードウェアプロセッサ、コンピュータプロセッサ、CPU及びコンピュータという用語は、単一の又は複数の装置、シングルコア装置及びマルチコア装置、及びこれらの変種を含むように意図するものであると理解されるであろう。
【0179】
本明細書の説明から、本開示は、限定ではないが以下の内容を含む複数の技術実装を含むと理解されるであろう。
【0180】
ネットワークにおける無線通信のための装置であって、(a)ネットワークの他の無線局(STA)と通信するために、チャネルの複数のリンクを介してマルチリンク動作を実行し、キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用してチャネルにアクセスする局(STA)としての無線通信回路と、(b)前記無線通信回路に結合されて通信プロトコルを実行するプロセッサと、(c)プロセッサによって実行可能な、ネットワーク上の他のSTAと通信するための命令を記憶する非一時的メモリとを備え、(d)前記命令は、プロセッサによって実行された時に、(d)(i)第1のマルチリンク装置(MLD1)が、非同時送受信(NSTR)通信を実行するように構成されるとともに、第1のリンク(リンク1)の送信機会(TXOP)所有者であることと、(d)(ii)前記STAが、第2のマルチリンク装置(MLD2)内で動作しており、MLD1への送信のために第2のリンク(リンク2)上のチャネルにアクセスすることと、(d)(iii)MLD1がリンク1上で受信中である場合、MLD2が直ちにリンク2を介してMLD1に送信を行うことと、(d)(iv)MLD1がリンク1上で送信中である場合、MLD2がチャネルを占有するためにリンク2を介してフレームを送信し、その後MLD1がリンク1上で受信中である時に、MLD2がMLD1に別のフレーム送信を実行することと、を含む1又は2以上のステップを実行する、装置。
【0181】
ネットワークにおける無線通信のための装置であって、(a)ネットワークの他の無線局(STA)と通信するために、チャネルの複数のリンクを介してマルチリンク動作を実行し、キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用してチャネルにアクセスする局(STA)としての無線通信回路と、(b)前記無線通信回路に結合されて通信プロトコルを実行するプロセッサと、(c)プロセッサによって実行可能な、ネットワーク上の他のSTAと通信するための命令を記憶する非一時的メモリとを備え、(d)前記命令は、プロセッサによって実行された時に、(d)(i)非同時送受信(NSTR)通信を実行するために、前記STAが第2のマルチリンク装置(MLD2)に関連付けられる一方で、別のSTAが第1のマルチリンク装置(MLD1)に関連付けられることと、(d)(ii)MLD1が第1のリンク(リンク1)の送信機会(TXOP)所有者であることと、(d)(iii)第2のMLD(MLD2)が、第2のリンク(リンク2)のTXOP所有者であるとともに、リンク2上でMLD1に送信を行う予定であることと、(d)(iv)MLD2による非同時送受信(NSTR)調整要求を、リンク2を介してMLD1に送信することと、(d)(v)MLD2が、MLD1に応答フレームを要求した場合に、MLD1が前記NSTR協調要求を受け入れたか、それとも拒絶したかを示す応答フレームをMLD1から受け取ることと、(d)(vi)NSTR協調要求が受け入れられた場合、MLD1又はMLD2のいずれかによってリンク1及びリンク2の両方で送信が手配され、その後に送信が実行されることと、を含む1又は2以上のステップを実行する、装置。
【0182】
ネットワークにおいて無線通信を行う方法であって、(a)局(STA)としての無線通信回路が、ネットワークの他の無線局(STA)と通信するために、チャネルの複数のリンクを介してマルチリンク動作を実行し、キャリア検知多重アクセス/衝突回避(CSMA/CA)を使用してチャネルにアクセスすることと、(b)第1のリンク(リンク1)の送信機会(TXOP)所有者になった第1のマルチリンク装置(MLD1)が非同時送受信(NSTR)通信を実行することと、(c)第2のマルチリンク装置(MLD2)に関連付けられた前記STAが、MLD1への送信のために第2のリンク(リンク2)上のチャネルにアクセスすることと、(d)MLD1がリンク1上で受信中である場合、MLD2が直ちにリンク2を介してMLD1に送信を行うことと、(e)MLD1がリンク1上で送信中である場合、MLD2がチャネルを占有するためにリンク2を介してフレームを送信し、その後MLD1がリンク1上で受信中である時に、MLD2がMLD1に別のフレームを送信することと、を含む方法。
【0183】
パケットの送信を実行する無線通信システム/装置であって、CSMA/CA及びマルチリンク動作が適用され、リンク1及びリンク2がMLD1のNSTRリンクペアであり、MLD1がリンク1上のTXOP所有者であり、前記無線通信システム/装置は、(a)MLD2がリンク2上のチャネルにアクセスし、MLD1に送信を行う予定であることと、(b)MLD1がリンク1上で受信中である場合、MLD2が直ちにリンク2上でMLD1に送信することと、(c)MLD1がリンク1上で送信中である場合、MLD2が、チャネルを占有するためにフレームを送信し、MLD1がリンク1上で受信中である時にMLD1に別のフレームを送信することと、を含む、無線通信システム/装置。
【0184】
パケットの送信を実行する無線通信システム/装置であって、CSMA/CA及びマルチリンク動作が適用され、リンク1及びリンク2がMLD1のNSTRリンクペアであり、MLD1がリンク1上のTXOP所有者であり、MLD2がリンク2上のTXOP所有者であってリンク2上のMLD1に送信を行う予定であり、前記無線通信システム/装置は、(a)MLD2がリンク2を介してMLD1にNSTR協調要求を送信することと、(b)その後にMLD1が、要求を受け入れる又は拒絶する応答フレームを送信することと、(c)要求が受け入れられた場合、MLD1又はMLD2のいずれかがリンク1及びリンク2の両方で送信を手配することと、を含む、無線通信システム/装置。
【0185】
MLD2は、TXOPの一部を予約してチャネルを占有するために、データパケットを含まないダミーフレームを送信し、その後にMLD1がTXOPの終了前にリンク1上で受信を開始すると、リンク2を介してデータパケットを含むフレームをMLD1に送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0186】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中である時間を待たないと決定した場合、自機のコンテンションウィンドウ(CW)を増加させることなくチャネルを求めて再競合する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0187】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにパディングを組み込んだ送信要求(RTS)又はマルチユーザRTS(MU-RTS)を送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0188】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにMLD1への送信許可(CTS)、又はCTS-to-Selfを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0189】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0190】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中になるまでリンク2上で他のSTAとTXOPを共有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0191】
MLD2は、MLD1に応答フレームを要求することなくNSTR協調を開始するためにNSTR協調指示フレームを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0192】
MLD2は、NSTR協調要求を拒絶したことを示すフレームをMLD1から受け取ったことに応答して、自機の現在のTXOPの停止を実行する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0193】
MLD1は、前記NSTR協調要求の拒絶を示すものを何も返送しないことができるので、MLD2は、前記NSTR協調要求の拒絶を受け取る必要がない、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0194】
MLD2は、TXOPの一部を予約してチャネルを占有するために、データパケットを含まないダミーフレームを送信し、その後にMLD1がTXOPの終了前にリンク1上で受信を開始すると、リンク2を介してデータパケットを含むフレームをMLD1に送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0195】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中である時間を待たないと決定した場合、自機のコンテンションウィンドウ(CW)を増加させることなくチャネルを求めて再競合する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0196】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにパディングを組み込んだ送信要求(RTS)又はマルチユーザRTS(MU-RTS)を送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0197】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにMLD1への送信許可(CTS)、又はCTS-to-Selfを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0198】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0199】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中になるまでリンク2上で他のSTAとTXOPを共有するために送信機会(TXOP)共有フレームを送信する、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0200】
MLD2は、チャネルを占有するために短いTXOPを予約するフレームを送信し、TXOPの終了前にチャンスがあればMLD1にフレームを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0201】
MLD2は、リンク2を介してMLD1に送信を行わないと決定することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0202】
MLD2は、MLD1がリンク1上で受信中である時間を待つことができない場合、CWを増加させることなくチャネルを求めて再競合することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0203】
MLD2が、リンク2上のチャネルを占有するために、パディングを含むRTS又はMU-RTSを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0204】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するために、MLD1へのCTS、又はCTS-to-selfを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0205】
MLD2は、リンク2上のチャネルを占有するためにTXOP共有フレームを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0206】
MLD2は、MLD1に送信するチャンスを獲得するまで、他のSTAとTXOPを共有するためにリンク2上でTXOP共有フレームを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0207】
MLD2は、MLD1に応答フレームを要求することなくNSTR協調を開始するためにNSTR協調指示フレームを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0208】
MLD1は、NSTR協調要求を拒絶するフレームを送信することができる、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0209】
MLD1は、NSTR協調要求を拒絶するものを何も返送することができない、いずれかの先行する実装の装置、システム又は方法。
【0210】
本明細書で使用する「実装」という用語は、本明細書で説明する技術を実践するための実施形態、実施例、又はその他の形態を制限なく含むように意図される。
【0211】
本明細書で使用する単数形の「a、an(英文不定冠詞)」及び「the(英文定冠詞)」は、文脈において別途明確に示されていない限り複数形の照応を含む。ある物体に対する単数形での言及は、明確にそう述べていない限り「唯一」を意味するものではなく、「1又は2以上」を意味する。
【0212】
本開示における「A、B及び/又はC」などの表現構造は、A、B又はCのいずれか、或いは項目A、B及びCのいずれかの組み合わせが存在し得ることを表す。「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」の後にリストされた一群の要素が続くものなどを示す表現構造は、該当する際にはこれらのリストされた要素のいずれかの考えられる組み合わせを含む、これらの一群の要素のうちの少なくとも1つが存在することを示す。
【0213】
本開示における「ある実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」又は同様の実施形態という言い回しについて言及する参照は、説明する実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを示す。従って、これらの様々な実施形態の表現は、必ずしも全てが同じ実施形態、又は説明されている他の全ての実施形態とは異なる特定の実施形態を意味するわけではない。実施形態という表現は、所与の実施形態の特定の特徴、構造又は特性を、開示する装置、システム又は方法の1又は2以上の実施形態においていずれかの好適な形で組み合わせることができることを意味するものとして解釈すべきである。
【0214】
本明細書で使用する「組(set)」という用語は、1又は2以上の物体の集合を意味する。従って、例えば物体の組は、単一の物体又は複数の物体を含むことができる。
【0215】
本文書における第1及び第2、頂部及び底部などの関係語は、1つの実体又は行動を別の実体又は行動と区別するために使用しているにすぎず、必ずしもこのような実体又は行動同士のこのようないずれかの実際の関係又は順序を必要としたり、又は意味したりするものではない。
【0216】
「備える、有する、含む(comprises、comprising、has、having、includes、including、contains、containing)」という用語、又はこれらの用語の他のあらゆる変化形は、非排他的包含を含むことが意図されており、従って、ある要素リストを備える、有する又は含むプロセス、方法、物品又は装置は、これらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙していない、又はこのようなプロセス、方法、物品又は装置に特有の他の要素を含むこともできる。「~を備える、有する、又は含む(comprises … a、has … a、includes … a、contains … a)」に続く要素は、その要素を備える、有する又は含むプロセス、方法、物品又は装置にさらなる同一要素が存在することを、さらなる制約を受けることなく除外するものではない。
【0217】
本明細書で使用する「近似的に(approximately)」、「近似する(approximate)」、「実質的に(substantially)」、「基本的に(essentially)」及び「約(about)」という用語、又はこれらのいずれかの変形形態は、わずかな変動の記述及び説明のために使用するものである。これらの用語は、事象又は状況に関連して使用した時には、これらの事象又は状況が間違いなく発生する場合、及びこれらの事象又は状況が発生する可能性が非常に高い場合を意味することができる。これらの用語は、数値に関連して使用した時には、その数値の±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下などの、±10%以下の変動範囲を意味することができる。例えば、「実質的に」整列しているということは、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、又は±0.05°以下などの、±10°以下の角度変動範囲を意味することができる。
【0218】
また、本明細書では、量、比率及びその他の数値を範囲形式で示すこともある。このような範囲形式は、便宜的に単純化して使用するものであり、範囲の限界として明確に指定された数値を含むが、この範囲に含まれる全ての個々の数値又は部分的範囲も、これらの各数値及び部分的範囲が明確に示されているかのように含むものであると柔軟に理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比率は、約1及び約200という明確に列挙した限界値を含むが、約2、約3、約4などの個々の比率、及び約10~約50、約20~約100などの部分的範囲も含むと理解されたい。
【0219】
本明細書で使用する「結合される(coupled)」という用語は、「接続される」と定義されるが、必ずしも直接的な機械的接続ではない。特定の形で「構成される(configured)」装置又は構造は、少なくともその形で構成されるが、列挙していない形で構成することもできる。
【0220】
利点、長所、問題解決手段、及びいずれかの利点、長所又は解決手段を生じさせる、又はより顕著にするいずれかの(単複の)要素は、本明細書で説明した技術、或いは一部又は全部の請求項の重要な、必要な又は不可欠な特徴又は要素として解釈すべきでない。
【0221】
また、上述した開示では、開示を合理化する目的で様々な実施形態において様々な特徴を共にグループ化することができる。本開示の方法は、請求項に記載する実施形態が、各請求項に明示的に記載する特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映したものであると解釈すべきではない。本発明の主題は、開示した単一の実施形態の全ての特徴よりも少ないものによって成立することができる。
【0222】
本開示の要約書は、読者が技術開示の本質を素早く確認できるように示すものである。要約書は、特許請求の範囲又はその意味を解釈又は限定するために使用されるものではないという理解の下で提示するものである。
【0223】
管轄によっては、出願後に本開示の1又は2以上の部分の削除を求める慣行もあると理解されたい。従って、読者は、本開示の元々の内容については出願日時点の出願を参照すべきである。開示内容のいずれかの削除は、当初出願時の出願のいずれかの主題の放棄、失権又は公衆への献呈として解釈すべきではない。
【0224】
以下の特許請求の範囲は、各請求項が単独の発明主題として自立した状態で本開示に組み込まれる。
【0225】
本明細書の説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本開示の範囲を限定するものではなく、現在のところ好ましい実施形態の一部を例示するものにすぎないと解釈すべきである。従って、本開示の範囲は、当業者に明らかになると考えられる他の実施形態も完全に含むと理解されるであろう。
【0226】
当業者に周知の本開示の実施形態の要素の構造的及び機能的同等物も、引用によって本明細書に明確に組み入れられ、本特許請求の範囲に含まれるように意図される。さらに、本開示の要素、構成要素又は方法ステップは、これらが特許請求の範囲に明示されているかどうかにかかわらず、一般に公開されるように意図するものではない。本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のための手段」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ミーンズプラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。また、本明細書における請求項の要素については、その要素が「~のためのステップ」という表現を使用して明確に示されていない限り、「ステッププラスファンクション」の要素として解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0227】
74 MLD1
76 MLD2
78 STA1(リンク1)
80 STA2(リンク2)
82 STA3(リンク1)
84 STA4(リンク2)
110 実施形態例
112 STA1によって取得されたTXOP
114 STA1がSTA3に送信中
116 短期間のTXOPを予約するための(STA4からの)ダミーフレーム
118 STA1がSTA3から受信中
119 CS
120 PPDU(STA4→STA2)
表1
UP-ACマッピング
表2
デフォルトパラメータ設定例
【国際調査報告】