(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ガスを圧縮するための要素、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
F04C18/16 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503587
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 EP2022067254
(87)【国際公開番号】W WO2023001485
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギウ ミハイル
(57)【要約】
ガスを圧縮するための要素であって、それぞれの回転軸を有する第1及び第2のロータ(3、4)が取り付けられたハウジング(2)を有し、ハウジング(2)は、軸方向の出口開口部(8)を備え、出口開口部(8)は特に、第1及び第2の近位辺縁(9b)の間の舌状突出部(14)で形成されており、舌状突出部(14)の辺縁は、少なくとも第1及び第2の舌状辺縁(13a、13b)によって形成されており、第1又は第2の舌状辺縁(13a、13b)は、第2又は第1の舌状辺縁(13a、13b)よりも、第1又は第2のロータ(3、4)の回転軸から遠く、第1の回転軸に対する第1の舌状辺縁(13a)の第1の舌状辺縁半径は、これに平行な、第1の回転軸に対する第1の幾何学的経路の半径よりも小さく、この経路は、第1及び第2のローブ(5a、5b)の端面間の第1の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するための要素であって、
前記要素は、内部空間を囲むハウジング(2)を備え、前記内部空間内には、螺旋形の第1のロータ(3)及び螺旋形の第2のロータ(4)が、回転可能に及び前記内部空間の壁に隣接して又はほぼ隣接して取り付けられており、
前記第1のロータ(3)及び前記第2のロータ(4)の反対方向の回転サイクル中に、前記第1のロータ(3)の第1のローブ(5a)及び前記第2のロータ(4)の第2のローブ(5b)が、前記第1のロータ(3)と前記第2のロータ(4)との間の位置で互いに接触又はほぼ接触した状態で回転するようになっており、
前記ハウジング(2)は、圧縮されるガスを前記内部空間に向かって及び前記内部空間の中に案内するための入口(6)と、圧縮されたガスを前記内部空間から外に及び前記内部空間から離れるように案内するための出口(7)とを備え、
前記出口(7)は、前記内部空間に当接する軸方向の出口開口部(8)を備え、
前記第1のロータ(3)の第1の回転軸及び前記第2のロータ(4)の第2の回転軸に平行な方向から見て、前記出口開口部(8)は、
-前記第1の回転軸の周りの第1の回転角の範囲内に完全に位置する第1の遠位辺縁(10a)であって、回転サイクル中に、前記出口開口部(8)に面する前記第1のローブ(5a)の端面が、前記出口開口部(8)に面する前記第2のローブ(5b)の端面の最大旋回円に向かって、又は前記最大旋回円の中で回転する、第1の遠位辺縁(10a)と、
-前記第2の回転軸の周りの第2の回転角の範囲内に完全に位置する第2の遠位辺縁(10b)であって、前記回転サイクル中に、前記第2のローブ(5b)の前記端面が、前記第1のローブ(5a)の前記端面の最大旋回円に向かって、又は前記最大旋回円の中で回転する、第2の遠位辺縁(10b)と、
-前記第1の遠位辺縁(10a)よりも前記第1の回転軸から小さい距離で、前記第1の回転角の範囲内に完全に位置する第1の近位辺縁(9a)と、
-前記第2の遠位辺縁(10b)よりも前記第2の回転軸から小さい距離で、前記第2の回転角の範囲内に完全に位置する第2の近位辺縁(9b)と、
-前記第1の近位辺縁(9a)と前記第2の近位辺縁(9b)との間の舌状突出部(14)であって、前記舌状突出部は、第1に、前記回転サイクル中に、前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面とが互いに接触して又はほぼ接触して回転する、前記第1の回転軸の周りの第3の回転角の範囲内に位置し、第2に、前記回転サイクル中に、前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面とが互いに接触して又はほぼ接触して回転する、前記第2の回転軸の周りの第4の回転角の範囲内に位置する、舌状突出部(14)と、
によって形成されており、
前記舌状突出部(14)は、前記ハウジング(2)の基部要素に締結され、前記基部要素から、前記回転サイクル中にちょうど前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間で前記第1のロータ(3)及び前記第2のロータ(4)が回転する方向とは反対の方向に延びており、
前記舌状突出部(14)の辺縁は、前記基部要素から延びる少なくとも第1の舌状辺縁(13a)及び第2の舌状辺縁(13b)によって形成され、前記第1の舌状辺縁(13a)は、前記第2の舌状辺縁(13b)よりも前記第1のロータ(3)の前記第1の回転軸から離れており、前記第2の舌状辺縁(13b)は、前記第1の舌状辺縁(13a)よりも前記第2のロータ(4)の前記第2の回転軸から離れており、
前記第1の舌状辺縁(13a)の全長にわたって、前記第1の回転軸に対する前記第1の舌状辺縁(13a)の第1の舌状辺縁半径は、前記第1の舌状辺縁半径に平行な、前記第1の回転軸に対する第1の幾何学的経路の半径よりも小さく、前記第1の幾何学的経路は、前記回転サイクル中に前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面との間の前記第1の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表されることを特徴とする、要素。
【請求項2】
前記第1の舌状辺縁(13a)の全長にわたって、前記第1の舌状辺縁半径は、前記第1の幾何学的経路の前記半径よりも少なくとも2.5%小さい、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記第2の舌状辺縁(13b)の全長にわたって、前記第2の回転軸に対する第2の舌状辺縁半径は、前記第2の舌状辺縁半径に平行な、前記第2の回転軸に対する第2の幾何学的経路の半径よりも小さく、前記第2の幾何学的経路は、前記回転サイクル中に前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面との間の前記第2の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表される、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記第2の舌状辺縁(13b)の全長にわたって、前記第2の舌状辺縁半径は、前記第2の幾何学的経路の前記半径よりも少なくとも2.5%小さい、請求項3に記載の要素。
【請求項5】
前記第1のロータ(3)は雄型スクリューロータであり、前記第2のロータ(4)は雌型スクリューロータである、請求項1から4のいずれか一項に記載の要素。
【請求項6】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記出口開口部(8)は、前記舌状突出部(14)の接続辺縁(15)によってさらに形成されており、前記接続辺縁(15)は、前記第1の舌状辺縁(13a)と前記第2の舌状辺縁(13b)とを接続し、前記舌状突出部(14)は、前記接続辺縁(15)で切頂形状を有するようになっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の要素。
【請求項7】
前記要素は、スクリュー圧縮機要素(1)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の要素。
【請求項8】
前記要素は、オイルフリースクリュー圧縮機要素(1)である、請求項7に記載の要素。
【請求項9】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第1の遠位辺縁(10a)の少なくとも一部から前記第1の回転軸までの距離は、前記第1のローブ(5a)の前記端面の最大旋回円の半径よりも小さい、請求項1から8のいずれか一項に記載の要素。
【請求項10】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第2の遠位辺縁(10b)の少なくとも一部から前記第2の回転軸までの距離は、前記第2のローブ(5b)の前記端面の最大旋回円の半径よりも小さい、請求項1から9のいずれか一項に記載の要素。
【請求項11】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第3の回転角において、前記第1の回転軸に対する前記第1の近位辺縁(9a)の半径は、前記第1の回転軸に対する前記第1のローブ(5a)の基部の半径に等しいか又はそれより小さい、請求項1から10のいずれか一項に記載の要素。
【請求項12】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第4の回転角において、前記第2の回転軸に対する前記第2の近位辺縁(9b)の半径は、前記第2の回転軸に対する前記第2のローブ(5b)の基部の半径に等しいか又はそれより小さい、請求項1から11のいずれか一項に記載の要素。
【請求項13】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第3の回転角の外側において、前記第1の近位辺縁(9a)の少なくとも一部から前記第1の回転軸までの距離は、前記第1のローブ(5a)の基部の半径よりも大きい、請求項1から12のいずれか一項に記載の要素。
【請求項14】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第4の回転角の外側において、前記第2の近位辺縁(9b)の少なくとも一部から前記第2の回転軸までの距離は、前記第2のローブ(5b)の基部の半径よりも大きい、請求項1から13のいずれか一項に記載の要素。
【請求項15】
ガスを圧縮する装置であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の要素を備える、装置。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の要素から圧縮ガスを排出する方法であって、
前記出口開口部(8)を介して前記内部空間から前記圧縮ガスを排出するステップを含み、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面との間の接触点は、前記回転サイクル中のいかなるときにも前記舌状突出部(14)と重ならないことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを圧縮するための要素、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からガスを圧縮するための何種類かの要素が知られている。
【0003】
回転変位要素において、この要素は、内部空間を有するハウジングを備え、内部空間には、平行な回転軸を有する1又は2以上のロータが、回転可能に及び内部空間の壁に隣接又はほぼ隣接して取り付けられており、例えば、2つの螺旋形のロータは、それらのローブが協働して反対の回転方向に回転することができ、これらは互いに接触する又はほぼ接触することができる。
【0004】
ハウジングは、圧縮されるガスを内部空間に取り込むための入口及び圧縮されたガスを内部空間から排出するための出口を備える。
【0005】
入口を通って吸い込まれたガスは、ロータが旋回又は回転するとますます小さくなるロータのローブ間の圧縮室を利用して、この螺旋形のロータによって圧縮される。
【0006】
この回転により、圧縮室も入口から出口へと移動する。
【0007】
この出口は、ハウジング内に出口開口部を備える、又は出口開口部で構成される又は規定される。
【0008】
この出口開口部は、螺旋形のロータの端面に対応する内部空間の端面に、いわゆる軸方向出口開口部として配置することができる、及び/又は、内部空間の端面からロータの周囲に延びる半径方向ポートとして設計することができる。
【0009】
回転軸に平行な方向から見て、このような軸方向の出口開口部は、圧縮室及び螺旋形のロータの端面が有する形状に基づく特定の形状を有する。
【0010】
より具体的には、この形状は、通常、いわゆるシールラインによって決定され、このシールラインは、ロータの回転中に互いに接触する又はほぼ接触する、ロータの端面間の接触点の軌跡に対応する幾何学的ラインである。これにより、シールラインは、高圧の圧縮室、すなわち圧縮サイクルの最終段階にある圧縮室を、低圧の別の圧縮室から遮断し、その結果、内部空間において高圧ガスと低圧ガスとを分離する。
【0011】
ここでの「接触点」という用語は、必ずしも直接的な接触点を意味するのではなく、回転中にこのロータが他のロータと接触する又はほぼ接触するロータの外面上の点、換言すれば、このロータが他のロータから1mmより小さい程度の最小距離に位置する点を意味する。
【0012】
シールラインに基づく形状及び内部空間の端面における出口開口部の特定の位置により、圧縮室は、この圧縮室内に位置する圧縮ガスが、所望の圧力で、典型的には出口圧力よりわずかに高く、大きな損失なしに、出口開口部を通ってハウジングから出ることができるように、正確な時間に出口に接続されることになる。
【0013】
加えて、出口開口部は、両ロータのローブがスクリュー圧縮機要素の出口側で接触又はほぼ接触した状態で回転する位置、すなわち圧縮室が出口側に位置する位置に配置される。
【0014】
出口開口部の形状は、2つのいわゆる近位辺縁及び2つのいわゆる遠位辺縁を含む辺縁によって決定される。
【0015】
各近位辺縁は、典型的には、ロータの一方のローブの基部をたどる。換言すれば、近位辺縁は、当該ロータの回転中にローブの基部が描く軌跡の一部に対応する幾何学的経路に対応する。
【0016】
ローブの基部は、ロータの最小半径を有する部分である。
【0017】
各遠位辺縁は、典型的には、ロータのうちの1つのローブの端面の先端部の一部の軌跡をたどるが、これはこのロータのローブの端面が、他方のロータに向かって回転するが、まだ接触していない又はほぼ接触していない場合である。
【0018】
2つの近位辺縁の間には、舌状突出部、いわゆる舌状部が形成され、その形状は上記シールラインによって決定される。
【0019】
ここで、「舌状」という用語は、回転軸に平行な方向から見て、突出部が、下部(foot)又は基部から始まり、最終的におそらく切頂された先端部へと収束する2つの軸方向側方の舌状辺縁によって形成される細長い形状を有すること、換言すれば、典型的には、人間の舌のそのままの自由端の横断面のような形状を有することを意味するために使用される。
【0020】
より具体的には、回転軸に平行な方向から見て、舌状突出部の先端部は、ロータのローブの端面が最初に接触するか又はほぼ接触する接触点によって形成され、先端部から延びる舌状突出部の2つの舌状辺縁のそれぞれは、ローブの端面間の2つの異なる接触点のうちの1つの接触点の軌跡の一部によって形成される。これにより、舌状突出部は、ロータがちょうどそれらの回転軸の間で回転する方向とは反対の方向に延びている。
【0021】
この舌状突出部は、出口開口部のための制限部分であり、この部分は、両ロータのローブの端面が互いに接触して又はほぼ接触して回転するところに位置し、出口開口部を介して内部空間の入口側への圧縮ガスの逆流を防止する(そうでなければ、2つの異なる接触点の間で生じることになる)。
【0022】
しかしながら、出口開口部の公知の形状には、多くの欠点がある。
【0023】
1つの欠点は、圧縮室が出口開口部と流体接触している最終段階で、圧縮室内のガスのいわゆる動的過圧縮が起こることである。これは、その時点で出口ポートと流体接触している圧縮室の面積が、圧縮室から出口への圧縮ガスの適切かつ円滑な排出を得るのに十分でないという事実に起因する。
【0024】
これは、そのために要素が設計されていない圧縮室内の局所的に非常に高い圧力と相まって、要素の損傷につながる可能性がある。
【0025】
別の欠点は、圧縮室内に、出口開口部を通って内部空間から出ることができない圧縮ガスの一部が常に存在することである。これは、ロータのさらなる回転によって、回転軸に平行な方向から見て接触点の各々が、舌状部の先端部から舌状部の下部まで舌状辺縁上を進み、接触点が舌状部の下部に達した後、圧縮室はもはや出口開口部と流体連通していないからである。
【0026】
圧縮ガスの上記部分は、ロータがさらに回転すると、内部チャンバの入口側に向かって漏出することになるので効率の低下を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、上述の及び/又は他の欠点の少なくとも1つに対する解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の主題は、ガスを圧縮するための要素であって、
この要素は、内部空間を囲むハウジングを備え、内部空間内には、螺旋形の第1のロータ及び螺旋形の第2のロータが、回転可能に及び前記内部空間の壁に隣接して又はほぼ隣接して取り付けられており、
第1のロータ及び第2のロータの反対方向の回転サイクル中に、第1のロータの第1のローブ及び第2のロータの第2のローブが、第1のロータと第2のロータとの間の位置で互いに接触又はほぼ接触した状態で回転するようになっており、
ハウジングは、圧縮されるガスを内部空間に向かって及び内部空間の中に案内するための入口と、圧縮されたガスを内部空間から外に及び内部空間から離れるように案内するための出口とを備え、
出口は、内部空間に当接する軸方向の出口開口部を備え、
第1のロータの第1の回転軸及び第2のロータの第2の回転軸に平行な方向から見て、出口開口部は、
-第1の回転軸の周りの第1の回転角の範囲内に完全に位置する第1の遠位辺縁であって、回転サイクル中に、出口開口部に面する第1のローブの端面が、出口開口部に面する第2のローブの端面の最大旋回円に向かって、又は最大旋回円の中で回転する、第1の遠位辺縁(10a)と、
-第2の回転軸の周りの第2の回転角の範囲内に完全に位置する第2の遠位辺縁であって、回転サイクル中に、第2のローブの上記端面が、第1のローブの上記端面の最大旋回円に向かって、又は最大旋回円の中で回転する、第2の遠位辺縁と、
-第1の遠位辺縁よりも第1の回転軸から小さい距離で、第1の回転角の範囲内に完全に位置する第1の近位辺縁と、
-第2の遠位辺縁よりも第2の回転軸から小さい距離で、第2の回転角の範囲内に完全に位置する第2の近位辺縁と、
-第1の近位辺縁と第2の近位辺縁との間の舌状突出部であって、舌状突出部は、第1に、回転サイクル中に、第1のローブの上記端面と第2のローブの上記端面とが互いに接触して又はほぼ接触して回転する、第1の回転軸の周りの第3の回転角の範囲内に位置し、第2に、回転サイクル中に、第1のローブの上記端面と第2のローブの上記端面とが互いに接触して又はほぼ接触して回転する、第2の回転軸の周りの第4の回転角の範囲内に位置する、舌状突出部と、
によって形成されており、
舌状突出部は、ハウジングの基部要素に締結され、基部要素から、回転サイクル中にちょうど第1の回転軸と第2の回転軸との間で第1のロータ及び第2のロータが回転する方向とは反対の方向に延びており、
舌状突出部の辺縁は、基部要素から延びる少なくとも第1の舌状辺縁及び第2の舌状辺縁によって形成され、第1の舌状辺縁は、第2の舌状辺縁よりも第1のロータの第1の回転軸から離れており、第2の舌状辺縁は、第1の舌状辺縁よりも第2のロータの第2の回転軸から離れており、
第1の舌状辺縁の全長にわたって、第1の回転軸に対する第1の舌状辺縁の第1の舌状辺縁半径は、第1の舌状辺縁半径に平行な、第1の回転軸に対する第1の幾何学的経路の半径よりも小さく、第1の幾何学的経路は、回転サイクル中に第1のローブの上記端面と第2のローブの上記端面との間の第1の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表されることを特徴とする。
【0029】
舌状突出部の「辺縁」とは、出口開口部を部分的に形成する舌状突出部の円周の一部を意味する。
【0030】
これに関連する「舌状辺縁半径」とは、一方では舌状辺縁の点と他方では回転軸との間の直線距離を意味し、この直線距離は舌状辺縁の長さにわたって様々とすることができる。
【0031】
好ましくは、第1の舌状辺縁の全長にわたって、第1の舌状辺縁半径は、第1の幾何学的経路の前記半径よりも少なくとも2.5%小さい。
【0032】
第1の舌状辺縁半径を第1の幾何学的経路の半径よりも小さくすることにより、出口開口部は、第1及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の舌状辺縁が第1の幾何学的経路と一致する公知の要素よりも効果的に大きくなる。
【0033】
第1の舌状辺縁の位置における出口開口部の形状のこのような変更は、この変更によりスクリューロータの回転中の特定の時間において、出口開口部が内部空間の入口側の低圧ゾーンと流体連通することになり、その結果、圧縮ガスが入口側に漏れることが知られているため、直感に反していることに留意することが重要である。
【0034】
この出口開口部の形状の変更は、圧縮室内の過圧縮を低減するために所要の圧縮ガスの一部を排出するために、意図的にこのような漏れを生じさせることになる。
【0035】
従って、1つの利点は、出口開口部のこの形状が上述の過圧縮を大幅に低減することができる点である。
【0036】
第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、圧縮室内のガスの過圧縮及び入口側への圧縮ガスの漏れは、ともに第1の舌状辺縁で起こり、それ故に互いに近いことに留意されたい。
【0037】
加えて、出口開口部の形状は、公知の要素と比較して、圧縮室内の圧縮ガスが出口開口部を通じて内部空間から、最終的に要素からより多く出ることも可能にする。
【0038】
この要素では、これにより、相対的電力消費量(SER:比エネルギー要件)又は生成される圧縮ガス量あたりの電力所要量が減少する。
【0039】
その結果、この要素は、公知の要素よりも高い効率を有する。
【0040】
本発明による要素の好ましい実施形態では、第2の舌状辺縁の全長にわたって、第2の回転軸に対する第2の舌状辺縁半径は、第2の舌状辺縁半径に平行な第2の回転軸に対する第2の幾何学的経路の半径よりも小さく、この第2の幾何学的経路は、回転サイクル中に第1のローブの上記端面と第2のローブの上記端面との間の第2の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表される。
【0041】
好ましくは、第2の舌状辺縁の全長にわたって、第2の舌状辺縁半径は、第2の幾何学的経路の半径よりも少なくとも2.5%小さい。
【0042】
第2の舌状辺縁半径を第2の幾何学的経路の半径よりも小さくもすることによって、出口開口部は、第1及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第2の舌状辺縁が第2の幾何学的経路と一致する公知の要素よりも効果的に大きくなる。
【0043】
この利点は、公知の要素と比較して第1の舌状辺縁半径を小さくすることによって得られる上述の利点と明らかに類似している。
【0044】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1のロータは雄型スクリューロータであり、第2のロータは雌型スクリューロータである。
【0045】
実際には、雄型スクリューロータ及び雌型スクリューロータが要素の内部空間に取り付けられている場合、圧縮室が出口開口部と流体接触し、圧縮室内のガスが過圧縮される最終段階において、圧縮室は雌型ロータの基部に接する。
【0046】
その結果、雌型ロータに最も近い舌状辺縁の舌状辺縁半径の減少率の利点は、雄型ロータに最も近い舌状辺縁の舌状辺縁半径の同様に大きい減少率の利点よりも比較的大きくなるであろう。
【0047】
例えば、第1の舌状辺縁半径のみが第1の幾何学的経路の半径よりも小さく、第2の舌状辺縁半径が第2の幾何学的経路の半径よりも小さくない場合には、結果として、第1のロータが雌型ロータで第2のロータが雄型ロータである場合よりも、第1のロータが雄型ロータで第2のロータが雌型ロータである場合の方が有利になるであろう。
【0048】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、出口開口は、舌状突出部の接続辺縁によってさらに形成され、この接続辺縁は、第1の舌状辺縁と第2の舌状辺縁とを接続し、舌状突出部は、接続辺縁で切頂形状を有するようになっている。
【0049】
第1の舌状辺縁と第2の舌状辺縁との間の接続辺縁及びそれに関連する舌状突出部の切頂形状により、出口開口部の面積が増大することになる。
【0050】
これは、圧縮室内の過圧縮をさらに低減し、相対的電力消費をさらに低減する効果を有することになる。
【0051】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、要素はスクリュー圧縮機要素であり、好ましくはオイルフリースクリュー圧縮機要素である。
【0052】
しかしながら、本発明の範囲は、スクリュー圧縮機要素が、流体噴射式スクリュー圧縮機要素、オイルフリースクリュー真空ポンプ要素、流体噴射式スクリュー真空ポンプ要素、オイルフリースクリュー送風機要素又は流体噴射式スクリュー送風機要素であることを除外しない。
【0053】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の遠位辺縁の少なくとも一部から第1の回転軸までの距離は、第1のローブの上記端面の最大旋回円の半径よりも小さい。
【0054】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第2の遠位辺縁の少なくとも一部から第2の回転軸までの距離は、第2のローブの上記端面の最大旋回円の半径よりも小さい。
【0055】
一方では、第1の遠位辺縁及び/又は第2の遠位辺縁と、他方では、それぞれ第1の回転軸又は第2の回転軸との間の距離を、それぞれ第1のローブ又は第2のローブの端面の最大旋回円の半径よりも小さくすることによって、回転サイクル中に圧縮室が出口開口と流体接触する面積は、回転サイクル中に第1のローブの上記端面と第2のローブの上記端面とがまだ接触していないか又はほぼ接触しておらず、圧縮室内にまだ過圧縮が存在しない位置で、所望のように減少させることができる。
【0056】
このようにして、要素を横切る圧力比、すなわち入口での圧力に対する出口での圧力の比率が増大する。
【0057】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第3の回転角において、第1の回転軸に対する第1の近位辺縁の半径は、第1の回転軸に対する第1のローブの基部の半径と等しいか又はそれよりも小さい。
【0058】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第4の回転角において、第2の回転軸に対する第2の近位辺縁の半径は、第2の回転軸に対する第2のローブの基部の半径に等しいか又はそれよりも小さい。
【0059】
第3の回転角又は第4の回転角のそれぞれにおいて、第1及び/又は第2の近位辺縁の半径を、それぞれ第1のローブ又は第2のローブの基部の半径と等しいか又はそれより小さくすることによって、それぞれ第3の回転角又は第4の回転角の範囲内で出口ポートと流体接触する。
【0060】
ガスを圧縮するための公知の要素において、圧縮室内の過圧縮の問題がかなりの程度発生するのは、まさにこの第3の回転角及び第4の回転角の範囲内である。
【0061】
この第3の回転角又は第4の回転角の範囲内でそれぞれ出口ポートと流体接触する圧縮室の面積を可能な限り最大に保つと、圧縮室内の過圧縮のこの問題を最小にすることができる。
【0062】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第3の回転角の外側において、第1の近位端の少なくとも一部から第1の回転軸までの距離は、第1のローブの基部の半径よりも大きい。
【0063】
本発明による要素の別の好ましい実施形態では、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第4の回転角の外側において、第2の近位辺縁の少なくとも一部から第2の回転軸までの距離は、第2のローブの基部の半径よりも大きい。
【0064】
一方では、第1の近位辺縁及び/又は第2の近位辺縁と、他方では、それぞれ第1の回転軸又は第2の回転軸との間の距離を、それぞれ第3の回転角又は第4の回転角の外側で、それぞれ第1のロータ又は第2のロータの基部の半径よりも大きくすることによって、回転サイクル中に圧縮室が出口開口と流体接触する面積は、回転サイクル中に第1のローブ及び第2のローブが互いにまだ接触していないか又はほぼ接触しておらず、圧縮室内にまだ過圧縮が存在しない位置で、所望のように減少させることができる。
【0065】
このようにして、要素を横切る圧力比、すなわち入口での圧力に対する出口での圧力の比率が増大する。
【0066】
また、本発明は、ガスを圧縮する装置に関し、この装置は本発明による要素を備える。
【0067】
このような装置に関連する利点は、当該要素の利点と同じであることは言うまでもない。
【0068】
また、本発明は、本発明による要素から圧縮ガスを排出する方法に関し、この方法は、出口開口を介して内部空間から圧縮ガスを排出するステップを含み、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1のローブの上記端面と第2のローブの上記端面との間の接触点は、回転サイクル中のいかなるときにも舌状突出部と重ならないという特徴を有する。
【0069】
内部空間の入口側への圧縮ガスの漏れが起こり得るのは、第1のロータと第2のロータとの第1の接触点と第2の接触点との間であり、その利点は上述した通りである。
【0070】
本発明の特徴をより良く説明する観点から、本発明によるガスを圧縮するための要素、それを備えた装置、及びガスを圧縮するための本発明による方法のいくつかの好ましい実施形態は、添付図面を参照して、非限定的な例として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本発明によるガスを圧縮するための要素を概略的に示す。
【
図2】
図1の要素の軸方向出口開口部が見える、
図1の線II-IIに沿った断面を示す。
【
図3】
図2と同じ図であるが、公知の軸方向出口開口部を有する公知の要素を示す。
【
図4】
図3の公知の軸方向出口開口部上の
図2の軸方向出口開口部の重ね合わせ及び水平鏡映(horizontal mirroring)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、本発明によるガスを圧縮するための要素、この場合はスクリュー圧縮機要素1を概略的に示す。
【0073】
これは、内部空間を囲むハウジング2を備え、ハウジング2には、ローブ5を有する2つの螺旋形のロータ3、4が回転可能に及び内部空間の壁に隣接又はほぼ隣接して取り付けられており、螺旋形のロータは、第1の雄型ロータ3及び第2の雌型ロータ4であり、これらは互いに協働して回転する。
【0074】
スクリュー圧縮機要素1は、この場合、本発明にとって必須ではないが、オイルフリースクリュー圧縮機要素1であり、これは、ロータ3、4を潤滑、冷却及び/又はシールするためにハウジング2内にオイルが注入されないことを意味する。
【0075】
あるいは、スクリュー圧縮機要素1は、オイル注入式スクリュー圧縮機要素、水注入式スクリュー圧縮機要素、オイルフリースクリュー真空ポンプ要素、オイル注入式スクリュー真空ポンプ要素、水注入式スクリュー真空ポンプ要素、オイルフリースクリュー送風機要素、オイル注入式スクリュー送風機要素、又は水注入式スクリュー送風機要素とすることもできる。
【0076】
ハウジング2は、圧縮されるガスを内部空間へ導き入れるための入口6と、圧縮されたガスを内部空間から導き出すための出口7とを備える。出口7は、ハウジング2の内部空間に接する軸方向の出口開口部8、すなわちハウジング2の物理的な開口部を備える。
【0077】
本発明の範囲は、出口が、出口開口部8を含む内部空間の端面からロータの周囲に延びる半径方向ポートを備えることを除外するものではない。
【0078】
図2及び3は、それぞれ、本発明による出口開口部8と、公知の要素の出口開口部8とを、第1のロータ3の回転軸及び第2のロータ4の第2の回転軸に平行な方向から見て概略的に示し、明瞭化の理由でハウジング2は示されていない。
【0079】
この出口開口部8は、複数の辺縁9a、9b、10a、10b、13a、13bを備える。
【0080】
まず、出口開口部は、2つの近位辺縁9a、9bを備える。
図3に示す公知の要素の出口開口部8において、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の近位辺縁9aは、第1のロータ3のローブ5の基部11aが描く軌跡の一部と完全に一致する。第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、
図3の第2の近位辺縁9bは、第2のロータ4のローブ5の基部11bが描く軌跡の一部と完全に一致する。
【0081】
図2に示す本発明による要素の出口開口部8において、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の回転軸に対する第1の近位辺縁9a又は第2の回転軸に対する第2の近位辺縁9bの半径は、それぞれ、第1のロータ3の基部11a又は第2のロータ4の基部11bの幾何学的経路の半径と同じくらい大きくすることができる。しかしながら、本発明は、第1のロータ3の第1のローブ5a及び第2のロータ4の第2のローブ5bが互いに接触して又はほぼ接触して回転する第1の回転軸の周りの第3の回転角の外側で、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の近位辺縁9aの半径が、基部11aの幾何学的経路の半径よりも大きくなることを除外しない。また、本発明は、第1のロータ3の第1のローブ5a及び第2のロータ4の第2のローブ5bが互いに接触して又はほぼ接触して回転する第2の回転軸の周りの第4の回転角の外側で、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第2の近位辺縁9bの半径が、基部11bの幾何学的経路の半径よりも大きくなることを除外しない。
【0082】
さらに、出口開口部8は、2つの遠位辺縁10a、10bを備える。
【0083】
遠位辺縁10a、10bは、
図3に示す公知の要素の出口開口部8に関して、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、ロータ3、4のローブ5の先端部12の軌跡の一部と完全に一致する出口開口部8の辺縁である。
【0084】
図3の公知の出口開口部8に関して、第1の遠位辺縁10aは、第1の回転軸の周りの第1の回転角の範囲内で第1のロータ3のローブ5の先端部12の軌跡の一部と完全に一致し、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1のロータ3のローブ5の先端部12は、回転サイクル中に、第2のロータ4のローブ5の最大旋回円に向かって、又はまさにその中で回転する。第2の遠位辺縁10bは、第2の回転軸の周りの第2の回転角の範囲内で第2のロータ4のローブ5の先端部12の軌跡の一部と完全に一致し、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第2のロータ4のローブ5の先端部12は、回転サイクル中に、第1のロータ3のローブ5の最大旋回円に向かって又はまさにその中で回転する。
【0085】
図2に示される本発明による要素の出口開口部8において、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の回転軸に対する第1の遠位辺縁10a又は第2の回転軸に対する第2の遠位辺縁10bの半径は、それぞれ、第1のロータ3又は第2のロータ4のローブ5の先端部12の幾何学的経路の半径と同じくらいの大きさとすることができる。しかしながら、本発明は、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、第1の遠位辺縁10a及び/又は第2の遠位辺縁10bの半径は、それぞれ、第1のロータ3又は第2のロータ4のローブ5の先端部12の幾何学的経路の半径よりも小さくなることを除外しない。
【0086】
第3の回転角と第4の回転角の範囲内の2つの近位辺縁9a、9bの間のハウジング2の一部は、舌状突出部14又は舌状部と呼ばれる制限部分である。
【0087】
この舌状突出部14の形状は、第1のロータ3と第2のロータ4との間のシールラインに従って、
図3の既知の出口開口部8において決定される。より具体的には、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、舌状突出部14の2つの舌状辺縁13a、13bの両方は、回転サイクル中に、第1のロータ3及び第2のロータ4の各ローブ5の端面(この端面は出口開口部8に面する)の間の様々な接触点の幾何学的経路をたどる。
【0088】
舌状突出部14は、ハウジング2の一部としてハウジング2の基部要素に締結され、この基部要素から、回転サイクル中にちょうど第1の回転軸と第2の回転軸との間で第1のロータ3及び第2のロータ4が回転する方向とは反対の方向に延びている。
【0089】
第1の舌状辺縁13aは、第2の舌状辺縁13bよりも第1のロータ3の回転軸から離れており、第2の舌状辺縁13bは、第1の舌状辺縁13aよりも第2のロータ4の回転軸から離れている。
【0090】
図2に示すような本発明の一実施形態では、第1の回転軸と第2の回転軸とに平行な方向から見て、第1の舌状辺縁13aの全長にわたって、第1の回転軸に対する第1の舌状辺縁半径は、この第1の舌状辺縁半径に平行な、回転サイクル中に第1のロータ3と第2のロータ4のローブ5の端面間の第1の回転軸から最も遠い接触点によって表される第1の幾何学的経路の半径よりも小さい。
【0091】
その結果、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、この舌状突出部14は、
図2の本発明による出口開口部8では、
図3の公知の出口開口部8よりも面積が小さい。このような調整は、出口7から要素の入口側への圧縮ガスの意図的な漏れを意味するので、このような調整は直感に反することに留意されたい。
【0092】
換言すれば、
図2の本発明による出口開口部8は、
図3の公知の出口開口部8よりも大きい、すなわち大きな面積を有する。上述したように、
図3の公知の要素による出口開口部8においてよりも本発明による出口開口部8において小さいのは、より具体的にはこの舌状突出部14である。
【0093】
好ましくは、第1の舌状辺縁13aの全長にわたって、第1の舌状辺縁半径は、第1の幾何学的経路の上記半径よりも少なくとも2.5%小さい。
【0094】
半径が2.5%よりも小さいことも可能である。
【0095】
本発明の範囲において、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、舌状突出部14が締結されたハウジング2の基部要素の第1の辺縁は、依然として第1の幾何学的経路と少なくとも部分的に重なることは除外されない。
【0096】
図2の本発明による出口開口部8の場合、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、同様に、第2の舌状辺縁13bの全長にわたる第2の回転軸に対する第2の舌状辺縁半径は、この第2の舌状辺縁半径に平行な、回転サイクル中に第1のロータ3と第2のロータ4のローブ5の端面間の第2の回転軸から最も遠い接触点によって表される第2の幾何学的経路の半径よりも小さい。
【0097】
本発明の範囲において、第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、舌状突出部14が締結されたハウジング2の基部要素の第2の辺縁は、依然として第2の幾何学的経路と少なくとも部分的に重なることは除外されない。
【0098】
この場合、
図3に示すような公知の要素と比較して、
図2の本発明による要素における舌状突出部14の面積をさらに減少させるために、
図2の出口開口部8はさらに、舌状突出部14の接続辺縁15によっても形成されており、この接続辺縁15は、第1の舌状辺縁13aと第2の舌状辺縁13bとを接続し、それによって、
図3の公知の要素における舌状突出部14の先端部16を切除しており、
図2の本発明による舌状突出部14は、切頂形状を有するようになっている。
【0099】
図2から分かるように、出口開口部8の辺縁は丸みを帯びている。これは、鋳造によるハウジング2の製造を容易にするためである。
【0100】
図4では、
図2及び
図3の出口開口部8が互いに重ね合わされて水平方向に鏡映されており、結果として、出口開口部8が大きくされた箇所が視覚的に示されている。
【0101】
図4では、本発明による出口開口部8において、この舌状突出部14が小さく、さらに先端部16が切除されていることが明瞭に分かる。
【0102】
スクリュー圧縮機要素1の動作は非常に簡単であり、以下の通りである。
【0103】
動作時、スクリューロータ3、4は、それらのローブ5と一緒に互いに接触して又はほぼ接触して回転する。
【0104】
圧縮されるガス、例えば周囲空気が入口6から吸い込まれる。
【0105】
圧縮されるために吸い込まれたガスは、スクリューロータ3、4のローブ5の間にあるいわゆる圧縮室17に入る。
【0106】
スクリューロータ3、4の回転により、圧縮室17は出口7に向かって移動し、同時に小さくなるので、圧縮室内でガスが圧縮される。
【0107】
第1の回転軸及び第2の回転軸に平行な方向から見て、内部空間の出口側の圧縮室17が、最終的に出口開口部8と重なると、圧縮室17と出口7との間に流体接続が行われることになるので、圧縮室17からの圧縮ガスは、直ちにスクリュー圧縮機要素1から出ることになる。
【0108】
【0109】
出口開口部8の形状は、上述のシールラインによって決定され、圧縮室17と出口7との間の流体連通の瞬間が圧縮の最終段階で生じるように、また、当該圧縮室17が入口6との流体連通に戻る瞬間にこの流体連通が遮断されるのを保証するように選択される。これにより、シールラインは、内部空間において、一方では高圧のガスと他方では低圧のガスとの間の仕切りを形成する。
【0110】
図2と
図3を比較すると、
図2の圧縮室17は、
図3の圧縮室17よりも長い時間、出口開口部8と流体連通していることが明らかである。公知のスクリュー圧縮機要素と比較すると、出口7から内部空間の入口側への意図的な漏れもある。
【0111】
その結果、実質的に全ての圧縮ガスは、
図2の圧縮室17から漏出する機会をもつことになる。
図2の場合、圧縮室17から内部空間の入口側に直接漏出する圧縮ガスの量は、
図3の状況に比べて少なくなる。
【0112】
また、圧縮室17内の過圧縮は少ないことになり、すなわち、圧縮室17が出口開口部8から遮断された直後の
図2の圧縮室17内の最高圧力は、
図3の状況に比べて低いことになる。
【0113】
上述したように、これは、相対的電力消費量(比エネルギー要件、SER)又は生成される圧縮ガス量当たりの電力が低減されるため、スクリュー圧縮機要素1の効率を向上させる効果を有する。
【0114】
相対的電力消費量の減少率の大きさは、圧縮機要素の速度に依存し、典型的には、スクリュー圧縮機要素の速度が高いほど低くなり、速度が低いほど高くなる。
【0115】
本発明は、例として記載され、図に示された実施形態に限定されるものではなく、本発明によるガスを圧縮するための要素、それを備えた装置、及びガスを圧縮するための本発明による方法は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な形状及びサイズで実現することができる。
【符号の説明】
【0116】
2 ハウジング
3 第1のロータ
4 第2のロータ
5a 第1のローブ
5b 第2のローブ
6 入口
7 出口
8 出口開口部
9a 第1の近位辺縁
9b 第2の近位辺縁
10a 第1の遠位辺縁
10b 第2の遠位辺縁
13a 第1の舌状辺縁
13b 第2の舌状辺縁
14 舌状突出部
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを圧縮するための要素であって、
前記要素は、内部空間を囲むハウジング(2)を備え、前記内部空間内には、螺旋形の第1のロータ(3)及び螺旋形の第2のロータ(4)が、回転可能に及び前記内部空間の壁に隣接して又はほぼ隣接して取り付けられており、
前記第1のロータ(3)及び前記第2のロータ(4)の反対方向の回転サイクル中に、前記第1のロータ(3)の第1のローブ(5a)及び前記第2のロータ(4)の第2のローブ(5b)が、前記第1のロータ(3)と前記第2のロータ(4)との間の位置で互いに接触又はほぼ接触した状態で回転するようになっており、
前記ハウジング(2)は、圧縮されるガスを前記内部空間に向かって及び前記内部空間の中に案内するための入口(6)と、圧縮されたガスを前記内部空間から外に及び前記内部空間から離れるように案内するための出口(7)とを備え、
前記出口(7)は、前記内部空間に当接する軸方向の出口開口部(8)を備え、
前記第1のロータ(3)の第1の回転軸及び前記第2のロータ(4)の第2の回転軸に平行な方向から見て、前記出口開口部(8)は、
-前記第1の回転軸の周りの第1の回転角の範囲内に完全に位置する第1の遠位辺縁(10a)であって、回転サイクル中に、前記出口開口部(8)に面する前記第1のローブ(5a)の端面が、前記出口開口部(8)に面する前記第2のローブ(5b)の端面の最大旋回円に向かって、又は前記最大旋回円の中で回転する、第1の遠位辺縁(10a)と、
-前記第2の回転軸の周りの第2の回転角の範囲内に完全に位置する第2の遠位辺縁(10b)であって、前記回転サイクル中に、前記第2のローブ(5b)の前記端面が、前記第1のローブ(5a)の前記端面の最大旋回円に向かって、又は前記最大旋回円の中で回転する、第2の遠位辺縁(10b)と、
-前記第1の遠位辺縁(10a)よりも前記第1の回転軸から小さい距離で、前記第1の回転角の範囲内に完全に位置する第1の近位辺縁(9a)と、
-前記第2の遠位辺縁(10b)よりも前記第2の回転軸から小さい距離で、前記第2の回転角の範囲内に完全に位置する第2の近位辺縁(9b)と、
-前記第1の近位辺縁(9a)と前記第2の近位辺縁(9b)との間の舌状突出部(14)であって、前記舌状突出部は、第1に、前記回転サイクル中に、前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面とが互いに接触して又はほぼ接触して回転する、前記第1の回転軸の周りの第3の回転角の範囲内に位置し、第2に、前記回転サイクル中に、前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面とが互いに接触して又はほぼ接触して回転する、前記第2の回転軸の周りの第4の回転角の範囲内に位置する、舌状突出部(14)と、
によって形成されており、
前記舌状突出部(14)は、前記ハウジング(2)の基部要素に締結され、前記基部要素から、前記回転サイクル中にちょうど前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間で前記第1のロータ(3)及び前記第2のロータ(4)が回転する方向とは反対の方向に延びており、
前記舌状突出部(14)の辺縁は、前記基部要素から延びる少なくとも第1の舌状辺縁(13a)及び第2の舌状辺縁(13b)によって形成され、前記第1の舌状辺縁(13a)は、前記第2の舌状辺縁(13b)よりも前記第1のロータ(3)の前記第1の回転軸から離れており、前記第2の舌状辺縁(13b)は、前記第1の舌状辺縁(13a)よりも前記第2のロータ(4)の前記第2の回転軸から離れており、
前記第1の舌状辺縁(13a)の全長にわたって、前記第1の回転軸に対する前記第1の舌状辺縁(13a)の第1の舌状辺縁半径は、前記第1の舌状辺縁半径に平行な、前記第1の回転軸に対する第1の幾何学的経路の半径よりも小さく、前記第1の幾何学的経路は、前記回転サイクル中に前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面との間の前記第1の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表されることを特徴とする、要素。
【請求項2】
前記第1の舌状辺縁(13a)の全長にわたって、前記第1の舌状辺縁半径は、前記第1の幾何学的経路の前記半径よりも少なくとも2.5%小さい、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記第2の舌状辺縁(13b)の全長にわたって、前記第2の回転軸に対する第2の舌状辺縁半径は、前記第2の舌状辺縁半径に平行な、前記第2の回転軸に対する第2の幾何学的経路の半径よりも小さく、前記第2の幾何学的経路は、前記回転サイクル中に前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面との間の前記第2の回転軸から最も遠くに位置する接触点によって表される、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記第2の舌状辺縁(13b)の全長にわたって、前記第2の舌状辺縁半径は、前記第2の幾何学的経路の前記半径よりも少なくとも2.5%小さい、請求項3に記載の要素。
【請求項5】
前記第1のロータ(3)は雄型スクリューロータであり、前記第2のロータ(4)は雌型スクリューロータである、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項6】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記出口開口部(8)は、前記舌状突出部(14)の接続辺縁(15)によってさらに形成されており、前記接続辺縁(15)は、前記第1の舌状辺縁(13a)と前記第2の舌状辺縁(13b)とを接続し、前記舌状突出部(14)は、前記接続辺縁(15)で切頂形状を有するようになっている、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項7】
前記要素は、スクリュー圧縮機要素(1)である、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項8】
前記要素は、オイルフリースクリュー圧縮機要素(1)である、請求項7に記載の要素。
【請求項9】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第1の遠位辺縁(10a)の少なくとも一部から前記第1の回転軸までの距離は、前記第1のローブ(5a)の前記端面の最大旋回円の半径よりも小さい、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項10】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第2の遠位辺縁(10b)の少なくとも一部から前記第2の回転軸までの距離は、前記第2のローブ(5b)の前記端面の最大旋回円の半径よりも小さい、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項11】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第3の回転角において、前記第1の回転軸に対する前記第1の近位辺縁(9a)の半径は、前記第1の回転軸に対する前記第1のローブ(5a)の基部の半径に等しいか又はそれより小さい、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項12】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第4の回転角において、前記第2の回転軸に対する前記第2の近位辺縁(9b)の半径は、前記第2の回転軸に対する前記第2のローブ(5b)の基部の半径に等しいか又はそれより小さい、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項13】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第3の回転角の外側において、前記第1の近位辺縁(9a)の少なくとも一部から前記第1の回転軸までの距離は、前記第1のローブ(5a)の基部の半径よりも大きい、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項14】
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第4の回転角の外側において、前記第2の近位辺縁(9b)の少なくとも一部から前記第2の回転軸までの距離は、前記第2のローブ(5b)の基部の半径よりも大きい、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項15】
ガスを圧縮する装置であって、請求項1又は2に記載の要素を備える、装置。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の要素から圧縮ガスを排出する方法であって、
前記出口開口部(8)を介して前記内部空間から前記圧縮ガスを排出するステップを含み、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸に平行な方向から見て、前記第1のローブ(5a)の前記端面と前記第2のローブ(5b)の前記端面との間の接触点は、前記回転サイクル中のいかなるときにも前記舌状突出部(14)と重ならないことを特徴とする、方法。
【国際調査報告】