(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】混合装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/10 20060101AFI20240705BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240705BHJP
B01F 23/45 20220101ALI20240705BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240705BHJP
B01F 35/22 20220101ALI20240705BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20240705BHJP
B01F 101/22 20220101ALN20240705BHJP
【FI】
B01J2/10 A
B01J2/00 A
B01F23/45
B01F35/71
B01F35/22
B01F35/75
B01F101:22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503622
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022070489
(87)【国際公開番号】W WO2023001964
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517191921
【氏名又は名称】インノウプ、ファルマ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】INNOUP FARMA, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】サラ、ゴメス、マルティネス
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア、マルティネス、デ、バローハ、コルドビン
(72)【発明者】
【氏名】マイテ、アグエロス、バソ
【テーマコード(参考)】
4G004
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4G004AA01
4G004GA00
4G035AB37
4G035AE13
4G037AA02
4G037AA11
4G037DA30
4G037EA01
(57)【要約】
本発明は、混合装置(1)、より具体的には、少なくとも2つの流体の混合によりナノ粒子を生産するための混合装置(1)に関し、本混合装置(1)は、混合チャンバ(2)と、2つの入口導管(3、4)と、出口(5)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの流体の混合によってナノ粒子を生産するための混合装置(1)であって、
基部(12)および少なくとも1つの壁部(13)を備える混合チャンバ(2)と、
流体を前記混合チャンバ(2)内に供給するように構成された2つの入口導管(3、4)であって、各入口導管(3、4)が、複数の入口開口部(11)を備えた入口部分を備え、前記入口部分が、前記混合チャンバ(2)の内部に配置され、互いに離間され、かつ前記入口開口部(11)により、前記壁部(13)の内面に対して実質的に接線方向に流体を前記混合チャンバ(2)内に供給するように配向される、2つの入口導管(3、4)と、
出口開口部(6)を備える出口導管(5)であって、前記出口開口部(6)が前記入口開口部(11)の位置よりも高い位置で前記混合チャンバ(2)内に位置付けられるように配置されるよう構成された出口導管(5)と
を備える混合装置(1)。
【請求項2】
前記出口導管(5)の少なくとも一部が、前記混合チャンバ(2)の長手方向軸に沿って配置される、請求項1に記載の混合装置(1)。
【請求項3】
前記出口導管(5)の前記出口開口部(6)から前記混合チャンバ(2)の前記基部(12)までの距離が調整可能である、請求項1~2のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項4】
一方の入口導管(3)が、前記混合装置(1)が動作状態にあるときに、他方の入口導管(4)の後ろの場所に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項5】
前記混合チャンバ(2)の前記壁部(13)の前記内面が、実質的に回転面として成形され、好ましくは実質的に円筒形として成形される、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項6】
前記回転面の回転軸が前記混合チャンバの長手方向軸である、請求項5に記載の混合装置(1)。
【請求項7】
各入口導管(3、4)が、複数の前記入口開口部が前記混合チャンバ(2)の長手方向軸に対し略平行な方向に沿って分布するように配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項8】
各入口開口部(11)が、ノズル開口部を有する噴霧ノズルを備え、好ましくは前記噴霧ノズルが、前記ノズル開口部のサイズを調整するサイズ調整手段を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項9】
前記混合チャンバ(2)の上部に結合するように構成されたカバー(10)をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの入口導管(3、4)が流量計を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の混合装置(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の混合装置と、前記出口導管(5)を介して前記混合チャンバ(2)と流体連通する収集チャンバ(21)とを備える、混合システム(20)。
【請求項12】
前記出口導管(5)に結合されるとともに前記収集チャンバとの流体連通をもたらすように構成された屈曲部分(9)をさらに備える、請求項11に記載の混合システム(20)。
【請求項13】
それぞれが一方の入口導管(3、4)に接続された2つのリザーバ(22、23)をさらに備える、請求項11または12のいずれか一項に記載の混合システム(20)。
【請求項14】
少なくとも1つの流体を前記混合チャンバ(2)に供給するためのポンピング手段(24、25)をさらに備える、請求項11~13のいずれか一項に記載の混合システム(20)。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の混合装置(1)または請求項11~14のいずれか一項に記載の混合システムを使用して、ナノ粒子を生産するための方法であって、
(a)前記ナノ粒子を形成する材料および活性成分を含有する第1の溶剤を得る工程と、
(b)前記ナノ粒子を形成する前記材料に対する逆溶剤である第2の溶剤を得る工程と、
(c)第1の入口導管(3)を介して前記第1の溶剤を混合チャンバ(2)内に、かつ第2の入口導管(4)を介して前記第2の溶剤を供給する工程と、
(d)形成された前記ナノ粒子が前記出口導管(6)に浸入して前記混合チャンバ(2)を出るように、前記混合チャンバ(2)内部の液面が前記出口開口部(6)を超えることを可能にする工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品分野に属し、混合装置、より具体的にはナノ粒子を生産するための混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学分野および医薬品分野での薬物生産の部門において、工業製造におけるナノ粒子のスケーリングに存在する問題は、ナノ粒子の物理化学的特性、および製造中のバッチ間での再現性を維持する必要があるということである。
【0003】
開発の初期段階での臨床試験および前臨床試験の特定事例では、少量の生成物で十分であるため、このような小規模生産では、適切に特徴評価されたナノ粒子で大きな再現性を達成することが可能である。
【0004】
しかし、大規模生産が必要とされる場合、ナノ粒子のバッチ間の再現性および多分散性は制御が困難であり、様々なバッチにおけるナノ粒子の物理化学的特性に大きな変動をもたらすおそれがある。これにより、バッチ不合格、および製造コストの増加が生じる場合もある。
【0005】
ナノ粒子の物理化学的特性の変動は、ユーザまたは患者に望ましくない効果を誘導する場合もあるため、大規模な工業生産が達成される前の試験にはさらに長い時間が必要となる。
【0006】
一般に、ナノ粒子製造には、「トップダウン」手法と「ボトムアップ」手法という2つの手法が存在する。トップダウン手法では、ミリングなどの技法によってより大きな構造体からナノメートルサイズの実体が作り出されるが、ボトムアップ手法では、モノマー重合などにおいてより大きな機能的構造体を形成するように集合する、より小さな成分が使用される。
【0007】
ナノ薬物の製剤では、高速均質化、超音波処理、ミリング、乳化、網状化、有機溶剤蒸発、遠心分離、濾過、および/または凍結乾燥などの種々の処理が必要とされ得る。このため、ナノ薬物製品の製造は、単に、個々の成分の添加および混合を伴うものではない。その代わり、十分に定められた工業生産工程、得られた生成物の正確な分析および厳密な品質管理が必要とされ、その結果、製造コストが非常に高くなる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、請求項1による混合装置、および請求項15によるナノ粒子の生産方法により、前述の課題を解決する。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を定める。
【0009】
第1の発明態様では、本発明は、少なくとも2つの流体の混合によってナノ粒子を生産するための混合装置であって、
基部および少なくとも1つの壁部を備える混合チャンバと、
流体を混合チャンバ内に供給するように構成された2つの入口導管であって、各入口導管が、複数の入口開口部を備えた入口部分を備え、入口部分が、混合チャンバの内側に配置され、互いに離間され、かつ入口開口部により、壁部の内面に対して実質的に接線方向に流体を混合チャンバ内に供給するように配向される、2つの入口導管と、
出口開口部を備える出口導管であって、出口開口部が入口開口部の位置よりも高い位置で混合チャンバ内に位置付けられるように配置されるよう構成される出口導管と
を備える混合装置を提供する。
【0010】
本発明の混合装置の入口導管のそれぞれは、流体を混合チャンバ内に供給するために流体源に接続されるように構成される。混合チャンバにおける基部の内面、および少なくとも1つの壁部の内面は、流体を受け入れるための内容積を構成する。
【0011】
使用中、様々な流体が入口導管を介して混合チャンバ内に供給される。複数の入口開口部を通って、壁部の内面に対して実質的に接線方向に流体を混合チャンバ内に挿入することは、混合を促進させる緩やかな流体撹拌を混合チャンバ内部で生じさせるので、追加の撹拌手段を必要とすることなくナノ沈殿によってナノ粒子を調製するのに特に適している。これにより、流体を移動させるために追加の要素の作用を必要とする従来技術の装置よりも単純な装置を得るという利点が得られる。
【0012】
実質的に接線方向とは、接線成分が他の2つの垂直成分よりも大きいことを満たす方向に、流体が混合チャンバ内に挿入されることと理解される。混合チャンバの少なくとも1つの壁部が実質的に回転面として成形される実施形態では、方向における先述の他の2つの垂直成分は、半径方向および軸方向である。壁部の内面に対して接線方向とは、入口開口部に最も近い壁部の内面の点において接線方向にあることと理解される。
【0013】
所望の生成物を包含する混合チャンバ内部の液面が出口開口部を超えると、形成されたナノ粒子は出口導管に浸入し、混合チャンバを出る。このためナノ粒子は、流体の入口が維持されると同時に形成された生成物が出口から提供される、連続処理で得ることができ、この連続処理では、必要な反応物が生産される場合、混合チャンバに浸入する原料と最終生成物との両方に対する処理流を制御することもできる。
【0014】
出口開口部の溢れによる排出によって、ナノ粒子にいかなる力もかけることなくナノ粒子の抽出が可能になる。これは、特に多孔質ナノ粒子の場合、ポンピングなどによってナノ粒子に力がかけられるとナノ粒子の特性に劇的に影響が及ぶ場合があるため都合が良い。また、出口開口部の溢れによる排出によって、少量から大量まであらゆる量のナノ粒子の製造が可能になり、その量は本発明の混合装置で製造処理が維持される時間に左右される。
【0015】
ナノ粒子のサイズは、混合チャンバ内に供給される流体の圧力および流量を制御することによって調整することができる。より大きなナノ粒子サイズが必要な場合、より小さなナノ粒子サイズが所望される場合と比較して低い流量および圧力が流体に使用される。かかる調整は、一次流体を混合チャンバ内に与える入口導管の構成によって生じる。
【0016】
本発明の混合装置は、連続処理でのナノ沈殿によるナノ粒子の製造を可能にするので、実験室規模および工業規模両方での生産に適している。当該連続処理は、必要な流体に対する別個の入口のほか、得られた生成物に対する適切な出口を設ける前述の構成によって達成され、かかる出口は、混合チャンバの内部空間から先述の生成物を抽出するように構成され、そこでは入口からの原料の混合が行われ、生成物は前述のナノ沈殿手順によって得られたナノ粒子である。
【0017】
一実施形態では、本発明の混合装置を用いたナノ沈殿によってナノ粒子を調製するために、2つの混和性溶剤、すなわちナノ粒子を形成する材料に対する良好な溶剤である第1の溶剤と、先述の材料に対する逆溶剤である第2の溶剤が使用される。ナノ粒子のマトリックスを形成する材料(例えば、ポリマー、タンパク質、またはそのあらゆる他の化合物もしくは組合せ)は、第1の溶剤(例えば、有機溶剤)に溶解され、溶剤相を形成する。第1の溶剤および第2の溶剤は、それぞれ1つの入口導管を介して混合チャンバに供給される。溶剤相が逆溶剤(例えば水)と混合されると、溶剤は逆溶剤中に拡散する傾向があり、材料の脱溶媒和、およびその後に材料の崩壊を生じさせてナノ粒子を形成する。溶剤相が活性成分を含む場合、その活性成分はナノ粒子に封入される。
【0018】
本発明の混合装置によって、前述のナノ沈殿によるナノ粒子の、費用効果が良く信頼性の高い工業生産が可能となり、この場合に様々なナノ粒子サイズのバッチを、連続処理でのバッチ間再現性をもって製造することができる。
【0019】
一実施形態では、入口導管は、同じ方向、すなわち時計回りまたは反時計回りに流体を混合チャンバ内に供給するように配置される。有利には、流体の撹拌運動は、ナノ粒子の形成に利用可能な空間に乱流を過度に誘導しない流体を混合チャンバ内部に含めることによって生じる。このため、混合チャンバ内部の流体の流れを導く、入口導管の配向によって生成される運動は、得られた生成物を劣化させる流体運動をもたらすことなくナノ粒子の形成を促進させるのに十分なものである。
【0020】
一実施形態では、出口導管の少なくとも一部は、混合チャンバの長手方向軸に沿って、すなわち混合チャンバの最長寸法の方向に沿って配置され、これにより、中に導入された流体の運動の制御、およびこの流体の運動によるナノ粒子の形成のために、チャンバ内部で利用可能な空間の最適化が有利に可能とされる。
【0021】
一実施形態では、混合チャンバの長手方向軸は、重力方向に配置される。
【0022】
一実施形態では、出口導管は、混合チャンバ内の中央位置に位置付けられる。本実施形態によれば、入口導管は、壁部の内面に対して接線方向に流体を混合チャンバ内に供給するように配置され、このため出口導管を取り囲んでいる。本実施形態は、ナノ粒子の形成、およびその後に、壁部の内面から等距離の位置で混合チャンバ内に位置付けられた出口の溢れを誘導するのに必要な撹拌によって混合チャンバ内部に導入された流体の改善された混合を可能にする。
【0023】
一実施形態では、各入口導管は、複数の入口開口部が混合チャンバの長手方向軸に対し略平行な方向に沿って分布するように配置される。
【0024】
一実施形態では、混合チャンバの少なくとも1つの壁部の内面は、実質的に回転面として成形される。好ましくは、混合チャンバの壁部の内面は実質的に円筒状として成形されるため、基部と一体的となった円筒状チャンバが得られる。
【0025】
一実施形態では、出口導管は、回転面の回転軸に沿って、またはその平行線に沿って配置される。好ましくは、本実施形態では回転軸は、混合チャンバの長手方向軸である。
【0026】
混合チャンバの少なくとも1つの壁部の内面が実質的に回転面として成形される実施形態では、各入口導管は、複数の入口開口部が回転面の回転軸に対し略平行な方向に沿って分布するように配置される。好ましくは、本実施形態では回転軸は、混合チャンバの長手方向軸である。
【0027】
一実施形態では、出口開口部から混合チャンバの基部までの距離は、調整可能である。出口開口部から基部までの距離の調整は、様々な方法で達成することができる。一実施形態では、出口導管は、混合チャンバ内部の出口開口部の位置を調整するために混合チャンバに対して移動可能である。代替的または付加的に、一実施形態では、出口導管は調整可能な長さを有するので、出口開口部を混合チャンバの基部に対して所望の距離に位置付けることが可能になる。混合チャンバの基部からの出口開口部の距離を調整することにより、入口開口部に対する出口開口部の正確な位置決めが可能となるので、製造処理および生産されるバッチ量を制御するために、混合チャンバ内部の流体の運動のほか、得られた生成物の溢れの制御に対して効果を奏する。また、混合チャンバ内部で利用可能な容積は、出口導管が占める容積に左右され、ナノ粒子の物理化学的特性に影響を及ぼす。
【0028】
一実施形態では、入口導管は壁部から離間して配置される。
【0029】
一実施形態では、一方の入口導管は、混合装置が動作状態にあるときに、他方の入口導管の後ろの場所に配置される。本実施形態によれば、各入口導管は、他の入口導管を通って混合チャンバに導入された流体の流れの妨げとなるので、両流体の混合が改善される。
【0030】
一実施形態では、各入口開口部は、ノズル開口部を有する噴霧ノズルを備える。
【0031】
一実施形態では、各噴霧ノズルは、ノズル開口部のサイズを調整するサイズ調整手段を備える。有利には、ノズル開口部のサイズ調節によって、流体が混合チャンバ内部に導入される圧力によって混合チャンバ内部に生じる撹拌効果を制御することのほか、ノズル開口部のサイズを特定の流量および/または使用される流体に適合させることが可能になる。また、本実施形態は、入口導管の入口開口部のうちの1つまたはいくつかを閉鎖することを可能にすることで、選択された入口開口部のみを通って流体が混合チャンバ内に入るのを可能にし、これによりナノ粒子の製造処理を規定するパラメータをより良好に制御する。
【0032】
一実施形態では、各入口導管は流量計を備えている。
【0033】
一実施形態では、混合装置は、混合チャンバの上部に結合して、混合チャンバによって定められた内容積を閉じるように構成されたカバーを備える。
【0034】
一実施形態では、混合装置は、混合チャンバを支持するように構成された支持構造体を備える。当該支持構造体は、生産されたナノ粒子を収集するための適切な位置に混合チャンバを位置付けることを可能にする。一実施形態では、支持構造体は複数の支持脚部を備える。好ましくは、支持脚部は、混合装置の安定性を向上させるためのレベリング手段を備える。
【0035】
本発明はまた、第1の発明態様による実施形態のうちいずれかによる混合装置を備えた混合システムを提供する。
【0036】
一実施形態では、本混合システムは、出口導管を介して混合チャンバと流体連通する収集チャンバを備える。好ましくは、収集チャンバは、中で生産されたナノ粒子を混合チャンバから受け取るために、混合チャンバの下方に配置される。
【0037】
一実施形態では、混合システムは、出口導管に結合されるとともに収集チャンバとの流体連通をもたらすように構成された屈曲部分を備える。
【0038】
一実施形態では、混合装置は、混合チャンバから得た生成物の流れが正確に収集チャンバに導かれるよう、出口導管と屈曲部分との結合を封止するように構成された封止手段を備える。
【0039】
一実施形態では、混合システムは、それぞれが入口導管に接続される2つのリザーバを備える。このリザーバ中、必要とされる流体は、上述の入口導管によって混合チャンバに供給されるように貯蔵される。製造処理のさらなる制御は、リザーバの高さの制御、および混合チャンバ内への流体の提供によって実施することができる。
【0040】
一実施形態では、混合システムは、少なくとも1つの流体を混合チャンバに供給するためのポンピング手段を備える。特定の実施形態では、ポンピング手段は、流体をリザーバから抽出して所定の圧力および速度で入口導管を通過させることで、かかる流体が混合チャンバに向かう流量を制御できるように設けられる。
【0041】
第2の発明態様では、本発明は、本発明の実施形態のうちいずれかによる混合装置または本発明の実施形態のうちいずれかによる混合システムを使用して、ナノ粒子を生産するための方法であって、
(a)ナノ粒子を形成する材料および活性成分を含有する第1の溶剤を得る工程と、
(b)ナノ粒子を形成する材料に対する逆溶剤である第2の溶剤を得る工程と、
(c)第1の入口導管を介して第1の溶剤を混合チャンバ内に供給するとともに第2の入口導管を介して第2の溶剤を混合チャンバ内に供給する工程と、
(d)形成されたナノ粒子が出口導管に浸入して混合チャンバを出るように、混合チャンバ内部の液面が出口開口部を超えることを可能にする工程と
を含む方法を定める。
【0042】
一実施形態では、第1の溶剤および/または第2の溶剤は、ポンピング手段を使用して混合チャンバ内に供給される。
【0043】
一実施形態では、ナノ粒子を形成する材料は、ポリマー、タンパク質、またはそれらの組合せの他のあらゆる化合物であるか、またはそれらを含む。
【0044】
一実施形態では、第1の溶剤は有機溶剤である。
【0045】
一実施形態では、第2の溶剤は水である。
【0046】
本明細書(特許請求の範囲、明細書、および図面を含む)に記載されるすべての特徴、および/または記載された方法のすべての工程は、そのような相互に排他的な特徴および/または工程の組合せを除き、あらゆる組合せで組み合わせることができる。
【0047】
本発明のこれらおよび他の特徴と利点は、図面を参照することによって、単なる例として与えられるがこれに限定されない本発明の好ましい実施形態から明白となる本発明の詳細な説明を考慮することで明確に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の一実施形態による混合装置の正面図および詳細図を示す。
【
図3】カバーが取り外された
図1の混合装置の正面図を示す。
【
図4】
図1の混合装置の混合チャンバの断面平面図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態による入口導管の詳細図を示す。
【
図7】本発明による混合システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1および
図2は、それぞれ本発明の一実施形態による混合装置の正面図および部分断面側面図を示す。混合装置(1)は、混合チャンバ(2)と、2つの入口導管(3、4)と、出口導管(5)とを備える。
【0050】
混合チャンバ(2)は、基部(12)と少なくとも1つの壁部(13)とを備える。混合チャンバ(2)における基部(12)の内面、および少なくとも1つの壁部(13)の内面は、2つの入口導管(3、4)から浸入する流体を受け入れるように構成された内容積を画定する。示される実施形態では、混合チャンバ(2)は、実質的に回転面として成形された、すなわち略円筒形状の内面を有する1つの壁部(13)を備えているため、混合チャンバ(2)を略円筒形のチャンバとして構成する。しかし、他の実施形態では、混合チャンバ(2)はいくつかの壁部分を有してもよく、かつ/または異なる形状で構成されてもよい。本実施形態では、混合チャンバ(2)は、混合チャンバ(2)の内容積が利用可能となるように、その上端、すなわち基部(12)に対向する端部が開口している。
【0051】
入口導管(3、4)は、
図7に概略的に描かれるリザーバまたは保管場所(22、23)などの流体源に接続されて、流体を混合チャンバ(2)内に供給するように構成される。各入口導管(3、4)は、複数の入口開口部(11)を備えた入口部分を備える。
図2に示されるように、本実施形態では、入口開口部(11)は、実質的に入口導管(3、4)の一部に沿って位置合わせされる。混合装置(1)の使用中、入口開口部(11)を包含する入口導管(3、4)の入口部分は、互いに離間して混合チャンバ(2)内に配置され、かつ入口開口部(11)により、壁部(13)の内面に対して実質的に接線方向に流体を混合チャンバ(2)内に供給するように配向されている。本実施形態では、入口導管(3、4)は、同じ方向、すなわち反時計回りに流体を混合チャンバ(2)内に供給するように配置される。また本実施形態では、入口導管(3、4)は、複数の入口開口部(11)が略円筒形の混合チャンバの回転軸に対して略平行な方向に沿って分布するように配置され、この回転軸は混合チャンバ(2)の長手方向軸でもあり、使用時には実質的に重力方向に配置される。本実施形態では、入口導管(3、4)は壁部(13)から離間して配置される。
【0052】
このような入口導管(3、4)の配置は、本発明の入口導管(3、4)構成を有する混合チャンバ(2)の平面断面図を示す
図4で概略的に示される。
【0053】
出口導管(5)は出口開口部(6)を備え、かつ、入口開口部(11)の位置よりも高い位置、すなわち最も高い入口開口部(11)の位置よりも高い位置に出口開口部(6)が混合チャンバ(2)内に位置するように配置されるよう構成される。本実施形態では、出口導管(5)は、略円筒形の混合チャンバの回転軸に対応する混合チャンバ(2)の中心長手方向軸に沿って配置され、かつこの長手方向軸に沿って移動可能である。これは
図2で概略的に示されており、このとき出口導管(5)は2つの異なる位置、すなわち、出口開口部(6)が混合チャンバ(2)内で入口開口部(11)の位置よりも高い位置にある第1の(上方)位置、および出口開口部(6)が第1の位置と比べて低い高さに位置する第2の(下方)位置で描かれている。
図2では、出口導管(5)の第2の位置は、第1の位置と区別するために破線で描かれる。描かれたもの以外の様々な位置、例えば出口導管(5)の中間位置も、出口導管(5)に対して可能である。
【0054】
本実施形態では、混合チャンバ(2)の基部(12)は、出口導管(5)の一部の挿入を可能にする開口部を有する。出口導管(5)を長手方向に移動させることにより、混合チャンバ(2)の内部に挿入される出口導管(5)の長さ、したがって生産されたナノ粒子が取得後に混合チャンバ(2)から抽出される位置を、調整することができる。出口導管(5)の所望の長さが混合チャンバ(2)の内部に入ると、出口導管(5)は取外し可能に固定され、後に出口導管(5)の取外しが必要になるまで混合チャンバ(2)に結合されたままとなる。出口導管(5)と混合チャンバ(2)の基部(12)との結合における封止を確保するために、封止手段が設けられることが好ましい。出口開口部(6)に対向する出口導管(5)の端部は、混合チャンバ(2)の外部に位置するため、製造品を混合チャンバ(2)から排出することが可能になる。混合装置(1)は、収集チャンバ(21)との流体連通を提供するなどによって製造品の排出を向上させるために、出口導管(5)の端部に結合された屈曲部分(9)を備えてもよい。他の実施形態では、製造品の排出は、直接出口導管(5)の端部を介して、またはその他の手段によって行われる。
【0055】
混合チャンバ(2)内部の出口開口部(6)の位置を調整するために混合チャンバ(2)に対して移動可能である出口導管(5)の代わりに、またはそれに加えて、一実施形態では出口導管(5)は、長さを調整可能な伸縮部分を有する。このため、伸縮部分の長さを調整することによって、出口開口部(6)を混合チャンバ(2)の基部に対して所望の距離に位置付けることができる。
【0056】
一実施形態では、入口導管(3、4)の各入口開口部(11)は、ノズル開口部を有する噴霧ノズルを備える。噴霧ノズルは、ノズル開口部のサイズを調整するサイズ調整手段を備える。
図5は、この本発明の実施形態による入口導管の詳細図を示す。
【0057】
示される実施形態では、混合装置(1)は、混合チャンバ(2)の上部に結合して混合チャンバを閉じるように構成されたカバー(10)を備える。
図1、
図2、および
図6ではカバー(10)を視認できるが、
図3ではカバー(10)が取り外された混合装置が示される。本実施形態では、カバー(10)は、固定ボルト(15)によって混合チャンバ(2)に取外し可能に結合される。固定ボルト(15)は、混合チャンバ(2)の上部に配置された対応するラグ(18)に回転可能に固定される。固定ボルト(15)を(
図3に示される)非結合位置から(
図1および
図6に示される)結合位置に回転させることによって、固定ボルト(15)はカバー(10)に設けられたスロット(19)に受け入れられ、カバー(10)は混合チャンバ(2)に結合される。固定ボルト(15)の結合位置は、
図1の拡大詳細図に示される。カバー(10)と混合チャンバ(2)の上部との間には追加または代替の固定手段も可能である。
【0058】
カバー(10)と混合チャンバ(2)との結合を封止するために、封止手段(図示せず)を設けることができる。
図4では、封止手段を受け入れるために混合チャンバ(2)の頂部に配置された環状溝部(17)が視認可能である。
【0059】
本実施形態では、カバー(10)は、入口導管(3、4)の入口部分が混合チャンバ(2)の内部に配されるように、入口導管(3、4)が混合チャンバ(2)内に導入される2つの開口部を備える。入口導管(3、4)の追加部分は、混合チャンバ(2)の外部に留まり、流体源と結合してそこから流体を受け入れるための接続部分(16)を有する。封止手段を設けて、入口導管(3、4)とカバー(10)に実施された開口部との接続を封止することができる。
【0060】
本実施形態では、カバー(10)はまた、カバー(10)によって閉じられた場合でも混合チャンバ(2)の内部を観察できる窓(26)を備える。
【0061】
図1~
図3に示されるように、本実施形態では混合装置(1)は、混合チャンバ(2)を支持するように構成された支持構造体を備える。支持構造体は、混合装置(1)の安定性を向上させてそれを好適な場所に配するためのレベリング手段(8)を設けた、複数の支持脚部(7)を備える。混合装置(1)はまた、得られた製造品、すなわちナノ粒子を混合チャンバ(2)から、ナノ粒子を貯蔵またはさらに処理することのできる収集チャンバ(21)へと誘導するのを向上させるために、混合チャンバの外部に位置する出口導管(5)の端部に接続された屈曲部分(9)も備える。
【0062】
本実施形態では、混合装置は、混合チャンバ(2)からガスを通気するための通気管(14)を備える。
【0063】
一実施形態では、混合装置は、混合チャンバ(2)の底部に位置する出口ポート(27)を備える。出口ポート(27)は、必要に応じて出口ポート(27)を開閉するための閉鎖手段を備える。出口ポート(27)は、出口開口部(6)の溢れによって出口導管(5)を通って排出されなかったナノ粒子、または流体など、処理の最後に混合チャンバ(2)の内部に残っている内容物を混合チャンバ(2)から容易に抽出することを可能にする。出口ポート(27)はまた、生産処理中に試料の収集も可能にする。さらに、出口ポート(27)は、過圧が生じた場合に混合チャンバ(2)から内容物を抽出することを可能にする。これは、例えば入口流の速度が出口導管(5)を通る出口流の速度よりも高い場合に起こり得る。
【0064】
図7は、本発明による混合システム(20)のブロック図を示す。
【0065】
図7は、本発明による混合装置(1)と、収集チャンバ(21)と、第1のリザーバ(22)および第2のリザーバ(23)と、ポンピングシステム(24、25)とを備えた混合システム(20)を概略的に示す。各リザーバ(22、23)は混合装置(1)の1つの入口導管(3、4)に流体連通し、収集チャンバ(21)は出口導管(5)を介して混合チャンバ(2)と流体連通している。ポンピングシステム(24、25)は、入口導管(3、4)を介してリザーバ(22、23)から混合チャンバ(2)に流体を供給するように配置される。
【0066】
本発明の混合装置を用いてナノ粒子を調製するために、2つの混和性溶剤、すなわち第1の溶剤と第2の溶剤が使用される。第1の溶剤は、ナノ粒子を形成する材料に対する良好な溶剤であり、ナノ粒子を形成する材料および活性成分を含有する。第2の溶剤は、ナノ粒子を形成する材料に対する逆溶剤である。
【0067】
第1の工程は、第1の溶剤と第2の溶剤をそれぞれ第1のリザーバ(22)と第2のリザーバ(23)に導入することであり、これらのリザーバは入口導管(3、4)によって混合チャンバに接続されている。次いで、第1のリザーバ(22)および第2のリザーバ(23)に含まれる溶剤は、所望の物理化学的特性を有するナノ粒子の形成に好適な流量で混合チャンバに圧送される。この目的のために、ポンピングシステム(24、25)は、各リザーバ(22、23)と混合チャンバ(2)との間に配される。
【0068】
第1の溶剤および第2の溶剤の流れは、圧力と速度を調整することによって制御される。各溶剤の適切な流量を調整した後、ポンピングシステム(24、25)が作動し、溶剤はそれぞれ異なる入口導管(3、4)を介して混合チャンバ(2)内に導入される。
【0069】
入口導管(3、4)は、同じ方向(例えば、反時計回り)に流体を混合チャンバ(2)内に供給するために、その入口部分が混合装置(1)の内部にあるように配置される。得られた生成物を劣化させる流体運動を生じさせることなくナノ粒子の形成を促進させるのに十分な、乱流を過度に誘導しない流体を混合チャンバ(2)の内部に含めることによって、流体の撹拌運動が生じる。
【0070】
所望の生成物を包含する混合チャンバ(2)内部の液面が出口開口部(6)を超えると、形成されたナノ粒子は出口導管(6)に浸入して混合チャンバ(2)を出て、このようにしてナノ粒子は、あらゆる力をかけられることなく抽出される。
【0071】
最後に、形成されたナノ粒子は収集チャンバ(21)に供給され、そこで貯蔵、または次の工程で処理することができる。
【国際調査報告】