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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】尿試料から循環核酸を単離する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240705BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240705BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240705BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240705BHJP
【FI】
C12Q1/6806 ZNA
C12Q1/6813 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503629
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022073904
(87)【国際公開番号】W WO2023004327
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,542
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524023435
【氏名又は名称】ジェイビーシー サイエンス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】リン、セレナ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジリ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA11
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS10
4B063QS17
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、尿試料などの生物学的試料中に存在する標的無細胞核酸(cfNA)分子を特徴付けるための方法を含む。これは、細胞残屑を除去するための遠心分離などの前処理なしに、生物学的試料から全cfNAを単離する工程と、単離された全cfNAに基づいて標的cfNA分子を特徴付けする工程とを含む。標的cfNAが低分子量(LMW)分子である場合、本方法はさらに、特徴付けの前に全cfNAからLMW核酸を得るための分画工程を含む。この方法は、一般的に生物学的試料から細胞残屑を廃棄する既存の方法と比較して、標的cfNA分子のコピーを有意に多く検出することができる。通常廃棄される細胞残屑からcfNAを実質的に回収する別の方法も提供され、これによっても標的cfNA分子の有意により多くのコピーを検出することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中に存在する標的無細胞核酸分子を特徴付けるための方法であって、前記方法は、
前記生物学的試料から細胞残屑を除去する前処理を行わずに、前記生物学的試料から全無細胞核酸を単離する工程と、および、
前記単離された全無細胞核酸から前記標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程と、
を含み、
前記方法は、前記単離する工程で前処理により細胞残屑が除去された場合と比較して、前記生物学的試料中の前記標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも2倍検出することができる、
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記生物学的試料は、尿試料、血清試料、血漿試料、唾液試料、汗試料、リンパ液試料、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記生物学的試料が尿試料であり、前記標的無細胞核酸分子が経腎核酸分子またはアポトーシス由来核酸分子の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の方法において、前記標的無細胞核酸分子は標的無細胞DNA分子であり、
前記生物学的試料から全無細胞核酸を単離する前記工程は、
前記尿試料から全無細胞DNAを単離する工程を含み、および、
前記単離された全無細胞核酸から前記標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程は、前記単離された全無細胞DNAから前記標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程を含む、
方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記標的無細胞DNA分子は約1kbより短い長さを有し、前記方法は、
前記尿試料から全無細胞DNAを単離する前記工程の後、および、前記単離された全無細胞DNAから前記標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程の前に、
前記単離された全無細胞DNAから低分子量DNAを得る工程をさらに含み、
前記単離された全無細胞DNAから前記標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程は、
前記低分子量DNAから前記標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程を含む、
方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記単離された全無細胞DNAから低分子量DNAを得る工程は、カルボキシル化磁気ビーズに基づくアプローチ、アガロースゲルに基づくクロマトグラフィーアプローチ、またはポリアクリルアミドゲルに基づくクロマトグラフィーアプローチから選択される、サイズ分化アプローチによって行われる、方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の方法において、前記低分子量DNAから前記標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、配列決定アッセイ、またはハイブリダイゼーションアッセイの少なくとも1つによって行われる、方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1つに記載の方法において、前記標的無細胞DNA分子が、変異K-ras、メチル化RASSF1A(m RASSF1A)、または、変異TERT(mTERT)から選択される、がん関連DNAマーカーである、方法。
【請求項9】
請求項5~7のいずれか1つに記載の方法において、前記尿試料は、妊娠中の女性から採取されるものであり、前記標的無細胞DNA分子は、性別、常染色体形質、または遺伝的疾患に関連する胎児DNAマーカーである、方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、前記胎児DNAマーカーは、Y染色体(Y-Chr)マーカーを含む、方法。
【請求項11】
請求項5~7のいずれか1つに記載の方法において、前記標的無細胞DNA分子は、微生物のDNAマーカーであり、前記微生物は、ウイルス、細菌、または、真菌である、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記標的無細胞DNA分子は、B型肝炎ウイルス(HBV)のDNAマーカーである、方法。
【請求項13】
請求項1または請求項2記載の方法において、前記標的無細胞核酸分子は標的無細胞RNAであり、
前記生物学的試料から全無細胞核酸を単離する前記工程は、
前記尿試料から全無細胞RNAを単離する工程を含み、および、
前記単離された全無細胞核酸から前記標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程は、
前記単離された全無細胞RNAから前記標的無細胞RNA分子を特徴付けする工程を含む、
方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記標的無細胞RNA分子は、マイクロRNAを含む、方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載の方法において、前記生物学的試料から全無細胞核酸を単離する工程がキャリアRNAを使用して行われる、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法において、前記方法は、前記単離する工程で前処理により細胞残屑が除去された場合と比較して、前記生物学的試料中の前記標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも6倍検出することができる、方法。
【請求項17】
生物学的試料中の標的無細胞核酸分子を特徴付けるための方法であって、前記方法は、
前記生物学的試料を前処理する工程であって、
前記生物学的試料を遠心分離して、上清画分およびペレット画分を得る工程と、洗浄液を用いて前記ペレット画分を洗浄して、洗浄除去画分を得る工程と、および、前記上清画分と前記洗浄除去画分とを合わせて、複合画分を得る工程とを含む、
前処理する工程と、
前記複合画分から全無細胞核酸を単離する工程と、および、
前記単離された全無細胞核酸から前記標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程と
を含み、
前記方法は、前処理された前記生物学的試料の前記上清画分のみから前記全無細胞核酸が単離される場合と比較して、前記生物学的試料から前記標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも1.25倍検出することができる、
方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記洗浄液は約2.0~4.0のpHを有する、方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、前記洗浄液は、約0.15~3Mの濃度を有する塩を含み、前記塩は、NaCl、KC1、MgCl、LiCl、クエン酸ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせである、方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか1つに記載の方法において、前記方法は、前記全無細胞核酸が前処理された生物学的試料中の上清画分のみから単離された場合と比較して、前記生物学的試料から前記標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも2倍検出することができる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年7月19日に出願された米国仮出願第63/223,542号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
尿中に例えば循環DNA(例えば、無細胞DNA、すなわちcfDNA)または循環RNA(例えば、無細胞RNA、すなわちcfRNA)などの循環核酸(NA)が存在することは、十分に確立されている。例えば、妊娠中の女性では、細胞外胎児DNAが母体循環中に存在し、母体血液中だけでなく、母体尿試料中にも検出されることが示されているが、その長さははるかに短く、はるかに低い濃度である(Chan et al. 2003; Tsui et al. 2012; Botezatu et al. 2000; Al-Yatama et al. 2001; Majer et al. 2007; Li et al. 2003; Illanes et al. 2006; Koide et al. 2005; Shekhtman et al. 2009)。これらの所見は、これまでの研究で示唆されてきたように、尿DNAの潜在的な臨床的有用性を明らかに制限するものである。興味深いことに、引用研究のほとんどは、母体尿試料から尿cfDNAを単離し、DNA単離前の前処理工程として遠心分離を行って細胞ペレットを除去しており、これは尿試料からcfNAを回収する既存のアプローチと同様である。循環系胎児遺伝物質は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術などにより、母体ゲノムには全く存在しない胎児遺伝子座を確実に決定するために使用できることが研究で示されており、そのような胎児遺伝子座の例として、母体尿で同定に成功した胎児Y染色体特異的配列がある(Tsui et al. 2012; Al-Yatama et al. 2001; Lin et al. Diagnostics 2021. 11(4))。我々による研究でも、B型肝炎ウイルス感染(Lin et al. Hepatology communication 2022; Jain et al. 2018)、HCC(Lin et al. Diagnostics 2021. 11(8); Hann et al. 2017; Zhang et al. 2018; Kim et al. 2022)およびCRC(Botezatu et al. 2000; Su et al. 2004; Su et al. 2005; Song et al. 2012)患者の尿試料において、それぞれ、肝臓由来のB型肝炎ウイルス(HBV)DNA、肝細胞がんDNAバイオマーカー、結腸直腸がん(CRC)DNAバイオマーカーが検出されたことも示された。
【0003】
現在、尿試料からcfNAを回収するための市販のキットを含むほとんどすべての既存のアプローチは、DNA単離の前に、例えば1,000rpmで10分間、あるいはそれより高速で短時間の遠心分離を行い、DNA単離効率を高めるために細胞残屑を除去するという前処理に依存している。しかし、これらの既存のcfDNA回収アプローチは、たとえその単離方法が血液cfNA単離に適していたとしても、回収率の低さに悩まされている(Chan et al. 2003; Tsui et al. 2012)。
【発明の概要】
【0004】
既存のcfNA検出アプローチに関連する前述の問題に対処するために、本開示は、かなり困難な尿試料のような生物学的試料中に存在する標的無細胞核酸(cfNA)分子を特徴付けるための方法を提供する。
【0005】
本明細書で提供されるそのような方法の1つは、実質的に以下の2つの工程を含む:
【0006】
(1)生物学的試料から細胞残屑を除去する(例えば遠心分離による)生物学的試料の前処理を行わずに、生物学的試料から全無細胞核酸を単離する工程と、および
【0007】
(2)工程(1)で得られた単離された全無細胞核酸から標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程。
【0008】
本明細書において、本方法は、単離する工程(1)の前処理により細胞残屑が除去された場合と比較して、生物学的試料中の標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも2倍、好ましくは少なくとも6倍検出することができる。
【0009】
標的cfNA分子が低分子量(LMW)DNA、すなわち約1kbより短い長さを有する場合、検出感度を高めるために、本方法は、尿試料から全無細胞DNAを単離した後、単離された全無細胞DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする前に、単離された全無細胞DNAから低分子量DNAを得る工程をさらに含む。これに対応して、単離された全無細胞DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程は、低分子量DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程を含む。
【0010】
本明細書で提供されるこのような別の方法は、以下の3つの主要な工程を含む:
【0011】
(a)生物学的試料を前処理する工程であって、具体的には、生物学的試料を遠心分離して、上清画分およびペレット画分を得る工程;洗浄液を用いてペレット画分を洗浄して、洗浄除去画分を得る工程;および上清画分と洗浄除去画分とを合わせて、複合画分を得る工程、を包む、前処理する工程と、
【0012】
(b)工程(a)から得られた複合画分から全無細胞核酸を単離する工程と、および、
【0013】
(c)工程(b)から得られた単離された全無細胞核酸から標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程。
【0014】
本明細書において、本方法は、前処理された前記生物学的試料の上清画分のみから全無細胞核酸が単離される場合と比較して、生物学的試料から標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも1.25倍検出することができる。
【0015】
詳細は後述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、遠心分離後の細胞ペレットと経腎Y-Chr DNAの関連を示す。簡単に説明すると、男性胎児を持つ妊娠中の母親の2人のドナー(ドナー1およびドナー2)からの尿の異なるコレクションからそれぞれ10mLに、1x10コピー/mLの合成二本鎖DNA、人工スパイクイン(SPKN)をそれぞれスパイクし、1,500rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清とペレットを分画した。DNAを単離、溶出し、スパイクコントロールSPKNおよびY-ChrについてqPCRアッセイで定量した(Lin et al. Diagnostics 2021. 11(4))。SPKNからの回収率とY-Chrからの総回収率を計算し、プロットした。
図2図2は、遠心分離後の細胞ペレットと経腎HBV DNAの関連を示す。簡単に説明すると、慢性HBV感染患者の4人のドナー(ドナー1-3)からの尿の異なるコレクションから各10mLを、1x10コピー/mLの合成二本鎖DNA、SPKNで各々スパイクし、1,500rpmで10分間、4℃で遠心分離し、上清とペレットを分画した。DNAを単離、溶出し、表1に詳述するように、スパイクしたコントロールSPKNとHBV pol/SアッセイのqPCRアッセイで定量した。SPKNインプットからの回収率とHBV DNA総回収率を計算し、プロットした。
図3図3は、ゲル電気泳動を用いて全尿DNAから低MW尿DNAを優先的に単離することにより、CRC関連K-ras変異の検出感度が向上したことを実証している。簡単に説明すると、全尿DNAと低MW尿DNAを本文に記載したように調製し、変異K-ras DNAのRE-PCRアッセイに供した。写真は、結腸直腸がんと診断された6人の異なる個人からの全尿DNAと低MW尿DNAの間のRE-PCRの結果の違いを示している。低MW DNAにおける検出感度の倍増が示された。
図4図4は、肝細胞がん(HCC)患者の尿試料からcfDNAを採取し、2つのHCC関連DNAマーカーであるRASSF1A遺伝子の異常メチル化(mRASSF1A)とhTERT-124ホットスポット変異(mTERT)の検出感度を異なる方法で調べるための実験手順の概要を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様において、本開示は、生物学的試料中に存在する標的無細胞核酸分子を特徴付けるための第1の方法を提供する。第1の方法は、実質的に以下の2つの工程を含む:
【0018】
(1)生物学的試料から細胞残屑を除去する生物学的試料の前処理を行わずに、生物学的試料から全無細胞核酸を単離する工程と、および、
【0019】
(2)工程(1)で得られた単離された全無細胞核酸から標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程。
【0020】
本明細書において、本方法は、単離工程(1)の前処理により細胞残屑が除去された場合と比較して、生物学的試料中の標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも2倍検出することができる。
【0021】
本明細書および本開示全体を通して使用される場合、「生物学的試料」という用語は、1または複数の生物学的対象から得られる、尿試料、血清試料、血漿試料、唾液試料、汗試料、またはリンパ液試料の1つまたは組み合わせを含む試料を指す。これらの生物学的試料は核酸を含むが、一般に細胞を含まない。このような生物学的試料は、単一の供給源(例えば、尿試料)から、または尿試料と血漿試料の組み合わせのような複数の供給源の組み合わせから得ることができる。このような生物学的試料は、単一の対象(例えば、がん患者または妊娠中の女性)から得ることもできるし、複数の対象からプールした試料とすることもできる。このような生物学的試料は、新鮮に得られたものであっても、凍結試料から解凍されたものであっても、また、このような処理によってそこから細胞残屑が除去されない限り、処理された生物学的試料であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、DNAおよび/またはRNA分子(複数可)を指し、「無細胞核酸」、「循環核酸」などの用語は、上記で定義されるように、1つの特定の生物学的試料(例えば、尿試料または血漿試料)中に存在する(exist)か、または存在する(are present)1または複数の核酸分子を指す。例えば、尿試料中に存在する無細胞核酸は、経腎DNA(すなわち、もともと循環中に由来するDNAが腎濾過を通過して経腎DNAとなる)を含む可能性があり、またはアポトーシス由来核酸分子(すなわち、尿試料が得られる被験体の尿路由来のアポトーシス細胞に由来する)を含む可能性がある。別の例では、血漿試料中の無細胞核酸は、循環中の他の血液細胞と共存する無細胞核酸に由来する場合がある。ここで、標的の無細胞核酸分子は、DNA(例えば、無細胞DNAまたはcfDNAなど)分子またはRNA分子(例えば、マイクロRNAまたはmiRNA、無細胞RNAまたはcfRNAなど)であり得る。
【0023】
上記単離工程(1)において、「そこから細胞残滓を除去する、生物学的試料の前処理」という語句は、単離工程(1)の前に行われる、生物学的試料または生物学的試料上での前処理工程を意味し、この前処理工程によって、生物学的試料に含まれる細胞残滓がそこから除去される。このような前処理工程の一般的な例としては、典型的には、生物学的試料を遠心分離する工程(例えば、4℃で1,500RPM、10分間)が挙げられ、これは、核酸単離および標的マーカー検出の利便性および有効性のために、より清浄な生物学的試料を提供する目的で、ほぼすべての既存の標的無細胞核酸マーカー特性評価法において従来から適用されている。しかし、このような細胞屑除去前処理工程は、遠心分離に限定されるものではなく、他の手段またはアプローチも含むことができることに留意されたい。
【0024】
上記特徴付けする工程(2)において、「特徴付けする工程」、「特徴付けする」、「特徴付け」などは、定性(すなわち、生物学的試料中に目的の無細胞核酸分子が存在するか否かを検出またはモニタリングする工程)および定量(すなわち、生物学的試料中に目的の無細胞核酸分子が存在するか否かのコピー数、重量、比率、濃度などのレベルを決定する工程)のいずれか1つまたは両方を含むものと解釈される。
【0025】
本明細書において、本方法は、単離工程(1)の前処理で細胞残屑が除去された場合と比較して、生物学的試料中の標的無細胞核酸分子のコピーを少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも6倍検出することができる。
【0026】
以下の実施例で示されるように、全無細胞核酸が生物学的試料(すなわち尿試料)から直接抽出される場合、標的無細胞DNAマーカーの検出能力は、生物学的試料が従来の遠心分離前処理を受け、遠心分離後の上清画分のみがDNA単離および標的マーカー検出に使用される対応する対照実験と比較して、大幅に(最大約30倍)上昇し得る。
【0027】
例えば、以下に示す実施例3では、妊娠中の母親の尿試料を胎児のY-Chr DNA検出能力について試験したところ、従来の方法(すなわち、「遠心分離」群の「上清」群)と比較して、遠心分離を伴わない方法(すなわち、「N.C.」群)では、尿試料中にそのようなマーカーの6.2倍および11.7倍のコピーが劇的に検出されることが実証された(表2参照)。
【0028】
以下の実施例4に示す別の実施例では、肝細胞がん(HCC)患者の尿試料をHCCマーカー(すなわち、メチル化RASSF1A(mRASSF1A)および/または変異hTERT(mTERT))の検出能力について試験したところ、従来の方法(すなわち、「遠心分離」群における「上清」群)と比較して、遠心分離を含まない方法(すなわち「N.C.」群)によって、尿試料中のmRASSF1Aマーカーのコピーが7.1倍および29.2倍と劇的に検出されることが独自に実証され(表3を参照)、mTERTマーカーに関しては、本明細書で提供される第1の方法を用いると、従来の方法と比較して、マーカーの少なくとも6倍のコピーが見出され得る。
【0029】
この第1の態様で提供される方法のいくつかの実施形態によれば、生物学的試料は尿試料であり、標的無細胞核酸分子は、経腎核酸分子またはアポトーシス由来核酸分子の少なくとも1つを含む。
【0030】
ここで任意に、標的無細胞核酸分子は標的無細胞DNA分子であり、それに対応して、第1の方法は以下の工程を含む:
【0031】
尿試料から全無細胞DNAを単離する工程と、および、
【0032】
単離された全無細胞DNAから標的の無細胞DNA分子を特徴付けする工程。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、標的無細胞DNA分子は低分子量(LMW)DNA、すなわち約1kbより短い長さを有するDNAであり、検出感度を高めるために、本方法は、尿試料から全無細胞DNAを単離した後、単離された全無細胞DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする前に、単離された全無細胞DNAから低分子量DNAを得る工程をさらに含む。これに対応して、単離された全無細胞DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程は、低分子量DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程を含む。
【0034】
本明細書において、単離された全DNAから低分子量DNAを得る工程は、カルボキシル化磁気ビーズに基づくアプローチ、アガロースゲルに基づくクロマトグラフィーアプローチ、またはポリアクリルアミドゲルに基づくクロマトグラフィーアプローチから任意に選択されるサイズ分化アプローチによって行うことができる。
【0035】
本明細書において、低分子量DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程は、任意に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ、配列決定アッセイ、またはハイブリダイゼーションアッセイの少なくとも1つによって実現され得る。PCRアッセイは、通常のPCRアッセイ、リアルタイムPCRアッセイ、定量的PCRアッセイ等を含む。配列決定アッセイの例は、サンガー配列決定、次世代配列決定を含む。ハイブリダイゼーションアッセイの例は、サザンブロットアッセイ、マイクロアレイアッセイを含む。これらの上記アッセイは、標的無細胞DNAに特異的に設計された配列を有するプライマー、プローブ等の使用をさらに含み得る。
【0036】
以下の実施例2および4で示されるように、いくつかの実施形態によれば、標的無細胞DNA分子は、変異K-ras、メチル化RASSF1A(mRASSF1A)、または変異TERT(mTERT)から選択されるがん関連DNAマーカーである。
【0037】
以下の実施例1及び3に示されるように、いくつかの実施形態によれば、尿試料は妊娠中の女性から得られ、標的無細胞DNA分子は、性別、常染色体形質、又は遺伝的疾患に関連する胎児DNAマーカーである。ここで、胎児DNAマーカーは、任意にY染色体(Y-Chr)マーカーを含むことができる。ここで、常染色体形質には、(例えば、RhD陰性女性における)胎児RhD状態が含まれ得、遺伝性疾患には、男性性連鎖性疾患、副腎過形成、筋緊張性ジストロフィー、軟骨形成不全、胎児異数性などが含まれ得る。
【0038】
以下の実施例1に示すように、いくつかの実施形態によれば、標的無細胞DNA分子は、HBV DNAマーカーを含む。任意に、標的無細胞DNA分子は、他のウイルス(例えば、HIV、HCV、Covid19、SARSなど)のDNAマーカーであってもよく、または細菌、真菌などの他の微生物のDNAマーカーであってもよい。
【0039】
任意に、本明細書で提供される方法において、標的無細胞核酸分子は標的無細胞RNA分子であり、それに対応して、第1の方法は以下を含む:
【0040】
尿試料から全無細胞RNAを単離する工程と;および
【0041】
単離された全無細胞RNAから標的の無細胞RNA分子を特徴付けする工程。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、標的無細胞RNA分子はマイクロRNAを含む。
【0043】
本明細書において、低分子量DNAから標的無細胞DNA分子を特徴付けする工程は、任意に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイ、RNA配列決定アッセイ、またはハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロットまたはマイクロアレイアッセイ)の少なくとも1つによって行うことができる。
【0044】
上記のような方法の実施形態のいずれにおいても、生物学的試料から全無細胞核酸を単離する工程は、任意に、tRNAなどのキャリアRNAを使用して実施することができる。
【0045】
第2の態様において、本開示はさらに、生物学的試料中の標的無細胞核酸分子を特徴付けるための第2の方法を提供する。第1の態様で上述した第1の方法と比較して、第2の方法は、細胞残屑を除去する遠心分離前処理工程を依然として含む。より具体的には、本方法は以下の3つの主要工程を含む:
【0046】
(a)生物学的試料を前処理する工程であって、具体的には、生物学的試料を遠心分離して、上清画分およびペレット画分を得る工程;洗浄液を用いて前記ペレット画分を洗浄して、洗浄除去画分を得る工程;および前記上清画分と前記洗浄除去画分とを合わせて、複合画分を得る工程、と;
【0047】
(b)工程(a)から得られた前記複合画分から全無細胞核酸を単離する工程と;および
【0048】
(c)工程(b)から得られた単離された全無細胞核酸から標的無細胞核酸分子を特徴付けする工程。
【0049】
本明細書において、本方法は、前処理した生物学的試料中の上清画分のみから全無細胞核酸を単離した場合と比較して、生物学的試料から少なくとも1.25倍、好ましくは少なくとも2倍の標的無細胞核酸分子のコピーを検出することができる。
【0050】
後述の実施例で示されるように、上清画分とペレット画分とが別々にDNAマーカー検出を受ける前に遠心前処理された尿試料では、上清画分のみが検査される対照実験(すなわち、「従来のアプローチ」)と比較して、検出のために両方の画分を合わせる場合(すなわち、「組み合わせアプローチ」)、標的無細胞DNAマーカーを検出する能力が(最大約20倍)上昇する可能性がある。
【0051】
例えば、以下に示す実施例1および3において、「組み合わせアプローチ」は、対応する「従来のアプローチ」と比較して、胎児Y-Chr DNAマーカーの1.26~6.62倍のコピーを検出する(図1および表2参照)ことができ、HBV DNAマーカーの1.34~1.98倍のコピーを検出する(図1および表2参照)ことができると実証された。別の実施例では、以下の実施例4において、「組み合わせアプローチ」は、対応する「従来のアプローチ」と比較して、mRASSF1Aマーカーの4.4~21.2倍コピーを検出する(表3参照)ことが可能であり、mTERTマーカーの少なくとも14.5倍コピーを検出する(表3参照)ことが可能であることが独立して実証される。
【0052】
この第2の態様で提供される方法の任意の実施形態において、洗浄液は、約2.0~4.0のpHを有し得るか、または約0.15~3Mの濃度を有する塩(NaCl、KCl、MgCl2、LiCl、クエン酸ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせ)を含み得る。
【0053】
以下に、合計4つの具体例を示すが、これらは本明細書に開示した発明をさらに説明するためのものであり、決してその範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0054】
実施例
実施例1
【0055】
簡単に説明すると、本実施例において、母体の尿から検出可能な男の胎児DNAまたは慢性HBV感染患者からのHBV DNAを経腎DNAの指標として使用し、遠心分離に依存する前処理がcfDNA回収率に与える影響を評価する。
【0056】
1. 材料と方法
【0057】
1.1 対象と尿試料
【0058】
Y-Chr試験には、男児を妊娠している妊娠第3期のドナー2人からさまざまな日付で採取した保管された尿試料が本研究において用いられた。
【0059】
HBV-DNA試験では、それぞれHBV血清ウイルス量が少なくとも10IU/mL血清であり、および、以前の研究で測定された尿中に検出可能なHBV DNAを有していた3人の慢性HBV感染ドナーから採取された保存尿試料を用いた。
【0060】
1.2 尿試料採取
【0061】
簡単に説明すると、50mlの尿試料をEDTA含有尿保存管に1日間隔で2つの異なる時点で採取した。尿試料の採取方法は以下に詳述する。具体的には、尿試料中の可能性のあるヌクレアーゼ活性を阻害するために、採取した新鮮な尿を直ちに0.5mol/L EDTA(pH8.0)と混合し、最終濃度を10~50mmol/L EDTAとし、-70℃で保存した。全尿DNAを単離するため、凍結した尿試料を室温で解凍し、DNA単離前に直ちに氷中に置いた。解凍された尿は、1時間以内にDNA単離のために処理される。
【0062】
1.3 尿試料の前処理
【0063】
上記で収集した尿試料15mlに、まず合成二本鎖スパイクイン(SPKN)DNA断片を10コピー/mLでスパイクし、DNA単離の前に遠心分離による前処理を行った。簡単に説明すると、遠心分離による前処理では、尿試料を1,500RPM、4℃で10分間遠心分離し、上清を回収して細胞残屑「ペレット」から単離した。2つの尿画分(上清とペレット)それぞれからDNAが単離された。
【0064】
1.4 DNA単離
【0065】
以下に詳述する全DNA単離アプローチに従って、上記の各尿画分からDNAを単離した。具体的には、各尿試料を2M塩酸グアニジン溶解緩衝液中でプロテイナーゼK(1mg/mL)により1時間消化した。その後、尿溶解物を0.8容量の6mol/Lチオシアン酸グアニジン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、1容量のイソプロパノール、50uLのMagsilRed(カタログ番号:A1641、Promega、ウィスコンシン州マディソン)シリカ磁気ビーズと混合し、穏やかに回転混合させながら室温で一晩インキュベートした。ビーズ-DNA複合体を遠心分離し、80%エタノールで2回洗浄し、DNAを20μlの水で溶出した。
【0066】
1.5 リアルタイムPCR定量化
【0067】
Y-Chr qPCRアッセイを用いたY染色体(「Chr」)DNA(Lin et al.11(4); Lin et al. Hepatology communication 2021)およびHBV pol/sアッセイを用いたHBV DNAのリアルタイムPCR定量化を、表1に詳述する。Y染色体(Y-Chr)またはHBV DNAからの配列は、異なる尿画分中の単離された胎児DNAまたはHBV DNAの量を定量するために、リアルタイム定量PCRによってRoche LightCycler480機器プラットフォームで増幅された。Y染色体DNA定量キット(表1に詳述)とHBV pol/s DNA定量キット(表1に詳述)をプロトコールに従って使用し、尿DNA試料6μlを含む15μlで各画分を二重に定量した。合成スパイクインSPKN DNAは、メーカーの仕様書に従ってJBS人工スパイクイン(SPKN)DNA定量キットを用いて定量され(表1に詳述)、各cfDNA試料で回収されたコピーが推定された。
【表1】
【0068】
インプットからのSPKN回収率は、式(1)を用いて計算した:
総アウトプット/総インプット×100%=インプットからのSPKN%; (1)
【0069】
上清またはペレット画分中のY-ChrまたはHBV DNAの分布は、式(2)を用いて計算した:
「ペレット」または「上清」/(ペレット+上清)×100%; (2)
【0070】
図1に示すY-Chr DNAを用いた試験では、外来性のSPKN 131 bp dsDNA(配列ID番号:7)を対照として、遠心分離による上清と細胞ペレットの分画を行った。予想通り、図1の一番上のパネルでは、SPKNは上清画分から48%~99%の範囲で大部分が回収されたが、ペレット画分からのSPKN DNAの回収は1%~7.2%と極めて少ないことが判明した。興味深く、かつ、予想外に、図1の下部パネルに示すように、ペレット画分から回収できるY-Chr DNAの量は試料によって異なるが、通常SPKN DNA対照よりも有意に多く、検出された全Y-Chrの21%~88%に及ぶ。
【0071】
この結果は、外来的に添加されたSPKN DNAとは異なり、Y-Chr DNAには細胞残屑ペレットとの予期せぬ会合があることを示している。このことはさらに、ほとんどすべての既存のcfDNA単離および検出方法において一般的に行われている遠心分離前処理では、遠心分離後のペレット画分中の細胞残屑画分への結合により、循環または経腎DNAからかなりの割合のcfDNAが失われることを示唆している。したがって、通常の遠心分離後の「上清」画分に加え、遠心分離後の「ペレット」画分からもcfDNAを回収する上述の本開示の第2の態様に記載の方法などを用いれば、回収されるcfDNAが実質的に有意に多くなり、有意に多くのコピーのY-Chr DNAマーカーが検出されることになる。「ペレット」画分を「上清」画分と合わせると、図1に示した6つの試験群では、「上清」画分のみと比較して、Y-Chr DNAマーカーはそれぞれ、およそ1.26倍(すなわち1/79.4%)、5.24倍(すなわち1/19.1%)、1.54倍(すなわち1/64.9%)、6.62倍(すなわち1/15.1%)、2.50倍(すなわち1/39.9%)、および、1.72倍(すなわち1/58.2%)となる。
【0072】
図2に示したHBV DNAを用いた試験では、上記の外因性スパイク131 bp dsDNA(配列ID番号:7)も、遠心分離による上清と細胞ペレットの分画の対照として使用した。予想通り、図2の上のパネルに示すように、SPKNは上清画分から77%~82%の範囲でほとんど回収され、ペレット画分からは少量(1.5%~21.4%)のSPKN DNAしか回収されなかった。興味深いことに、予想外であったが、上記のY-Chr DNAの結果と一致して、図2の下のパネルに示すように、検出されたHBV DNA全体の26%~50%の範囲で、かなりの量のHBV DNAが細胞残屑ペレットから回収された。このことは、遠心分離の前処理工程の後、上清画分のみを対象とするほとんどすべての既存のcfDNA単離および検出法では失われていた可能性のある、かなりの量のHBV DNAが細胞残屑ペレットに付随している可能性があることを示している。
【0073】
従って、図1に示した胎児Y-Chr DNAマーカーの検出結果と同様に、「ペレット」画分と従来の「上清」画分との組み合わせでは、「上清」画分のみと比較して、図2に示した3つの検査群について、HBVマーカーをそれぞれ約1.84倍(すなわち1/54.3%)、1.34倍(すなわち1/74.5%)、および1.98倍(すなわち1/50.4%)検出できると予想される。
【0074】
実施例2
【0075】
ゲル電気泳動による高MW DNAの除去が結腸直腸疾患患者の尿中の変異K-ras DNAの検出を促進した。
【0076】
K-rasのコドン12変異を検出するために、制限酵素濃縮ポリメラーゼ連鎖反応(RE-PCR)を、以前に記載されたように(Su et al. 2004)、全尿DNAおよび低MW尿DNAに対して実施した(特異的プライマーおよびアッセイ条件は表1に示す)。
【0077】
簡単に説明すると、200μLの尿に由来する全DNAまたは分画された低MW DNAが各アッセイに用いられた。RE-PCRアッセイによるPCR産物は87bpであり、2回目のBstNI消化後に71bpのフラグメントの出現は、DNA試料中の変異K-ras DNAの証拠である。RE-PCRアッセイの検出限界は、反応ごとに野生型DNA 100ngあたり変異型K-rasの15コピーである(Su et al. 2004)。アッセイ対照として、変異型(ヒト腺がんSW480細胞)または野生型(ヒト肝芽腫HepG2細胞)のK-ras配列を有することが知られている供給源から調製したDNAをPCRにかけた。予想通り、図3に示すように、HepG2細胞から調製したDNAは検出可能なレベルの変異型K-rasを含まなかった(2回目のBstNI消化後に71bpフラグメントが出現しなかった)が、SW480細胞から調製したDNAは変異型K-ras配列を含んでいた(2回目のBstNI消化後に71bpフラグメントが検出された)。検出可能な変異型K-ras DNAを含む各尿試料について、図3の6つの異なる個体(すなわち、「FX」、「GD」、「GG」、「GI」、「GM」、および「GN」)によって示されるように、全尿DNAと比較して、低MW DNAをアッセイに使用した場合に、変異型K-ras配列の存在がより明白であった。
【0078】
LMW DNA分画による検出感度の向上を評価するため、2倍連続希釈によるエンドポイント検出を行った。簡単に説明すると、まず全DNAとLMW DNAの両方を5回の2倍連続希釈(1:2、1:4、1:8、1:16、および、1:32)に供した。各希釈液をRE-PCRアッセイに供し、検出可能なK-ras変異を含む希釈の終点を決定した。Low/全DNAの増加倍率を計算し、図3に示した。検出感度は4~16倍の範囲で増加した。通常、LMW DNA分画の処理工程では、全DNAからcfDNAが失われるため、これは極めて予想外のことである。前述のように、K-ras RE-PCRアッセイは強力なアッセイではなく、その分析感度は100ngのヒト野生型バックグラウンドDNAの追加で約10~20倍に低下する(Su et al. 2004)ため、HMW DNAの除去により検出感度が向上した。全尿DNAあたりの低MW(LMW)DNA中の変異K-ras DNA検出の増加倍率を計算し、図3に示した。K-ras変異検出の基質として低MW尿DNAを用いると、全尿DNAを用いた場合と比較して、検出感度が4~16倍増加した。これは、LMW DNA分画により高分子量(>1kb)を除去した場合、尿中のK-ras変異検出が著しく向上することを示している。
【0079】
実施例3
【0080】
簡単に説明すると、この例では、関連するY-Chr DNAが細胞ペレットから洗浄除去される可能性があることを示唆する指標として、母体尿中で検出可能な男性胎児DNAを使用して、遠心分離に依存した前処理がcfDNA回収率に及ぼす影響を評価する。
【0081】
1. 材料と方法
【0082】
1.1 対象と尿試料
【0083】
本研究では、男の胎児を妊娠している妊娠第3期のドナー1人から採取した保管された尿試料を使用した。
【0084】
1.2 尿試料の採取
【0085】
簡単に説明すると、50mlの尿試料をEDTA含有尿保存管に1日間隔で2つの異なる時点で採取した。尿試料の採取については以下に詳述する。具体的には、尿試料中の可能性のあるヌクレアーゼ活性を阻害するために、新鮮に採取した尿を直ちに0.5mol/L EDTA(pH8.0)と混合し、最終濃度を10~50mmol/L EDTAとし、-70℃で保存した。全尿DNAを単離するため、凍結した尿試料を室温で解凍し、DNA単離前に直ちに氷中に置いた。解凍された尿は1時間以内にDNA単離のために処理される。
【0086】
1.3 尿試料の前処理
【0087】
上記で採取した尿試料15mlを、DNA単離の前に、遠心分離または遠心分離なし(以下、「N.C.」と略す)のいずれかの前処理を行った。簡単に説明すると、遠心分離を伴う前処理では、尿試料を1,500RPM、4℃で10分間遠心分離し、上清を回収して細胞残屑ペレット(以下、これを「洗浄後ペレット」と区別するために「洗浄前ペレット」と呼ぶ)から単離し、上清を氷上に置き、洗浄前ペレットを1mlのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3.0)で短時間洗浄し、洗浄液を13,000RPMで90秒間遠心分離して回収し、3つの尿画分(上清、洗浄除去、洗浄後ペレット)尿画分のそれぞれをDNA単離した。遠心分離を行わない前処理(すなわちN.C.アプローチ)では、尿試料から直接DNA単離し、カルボキシル化ビーズを用いて低MW DNA分画を行った。
【0088】
1.4 DNAの単離
【0089】
以下に詳述する全DNA単離アプローチに従って、上記の各尿画分またはN.C.尿試料からDNAを単離した。具体的には、各尿試料を2M塩酸グアニジン溶解緩衝液中でプロテイナーゼK(1mg/mL)により1時間消化した。その後、尿溶解物を0.8容量の6mol/Lチオシアン酸グアニジン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)、1容量のイソプロパノール、50uLのMagsilRed(カタログ番号:A1641、Promega、ウィスコンシン州マディソン)シリカ磁気ビーズと混合し、穏やかに回転混合させながら室温で一晩インキュベートした。ビーズ-DNA複合体を遠心分離し、80%エタノールで2回洗浄し、DNAを20μlの水で溶出した。
【0090】
1.5 Y-ChrqPCRアッセイを用いたY染色体(「Chr」)DNAのリアルタイムPCR定量化
【0091】
Y染色体(Y-Chr)由来の配列は、表1に詳述するように、Roche LightCycler480装置プラットフォームでリアルタイム定量PCRにより増幅し、異なる尿画分中の単離された胎児DNA量を定量した。表1に詳述するY染色体DNA定量キット(JBS Science, ペンシルバニア州ドイルズタウン)をプロトコールに従って使用し、尿DNA試料6μlを含む15μlで各画分を二重に定量した。
【0092】
2. 結果
【0093】
表2は、各画分/試料の検出結果(すなわち、循環無細胞胎児DNAマーカー「Y-Chr」のコピーを指標として使用した、母体尿試料から循環無細胞胎児DNAを検出する能力に関する結果)をまとめたものであり、具体的には、遠心分離前処理尿試料および遠心分離前処理なし尿試料(すなわち、N.C.尿試料)の各画分/試料、具体的には、「上清」、「洗浄除去」、および「洗浄後ペレット」画分を含む、各画分/試料の検出結果を2つの異なる採尿タイムポイント(すなわち、コレクション#1および#2)のそれぞれでまとめたものである。
【0094】
示されるように、「上清」画分には、検出可能なY-Chr DNAが約7.99および約1.51コピー(それぞれコレクション#1および#2について)含まれており、これは、通常、遠心分離後の上清画分のみを対象とする従来の遠心分離に依存するアプローチによって検出可能な尿試料中の標的DNAの量を実質的に表している。
【0095】
驚くべきことに、また、予想外なことに、遠心分離後に通常は廃棄されるペレット画分を洗浄すると、得られた「洗浄除去」画分には約2.78および1.91コピー(それぞれコレクション#1および#2について)のY-Chr DNAが含まれ、「洗浄後ペレット」画分には検出可能なそのような標的DNAは含まれなかった。「上清」画分および「洗浄除去」画分からのY-Chr DNAのコピーを合算して、回収されたY-Chr DNAの総コピーを求めると(すなわち、「遠心分離後の総回収量」、コレクション#1および#2ではそれぞれ10.77および3.42コピー)、回収されたY-Chr DNAは、「上清」のみに比べて約1.4倍および2.3倍(コレクション#1および#2ではそれぞれ)になる。このように、遠心分離後の上清画分のみを対象とする従来のDNA単離法と比較すると、通常廃棄される遠心分離後のペレット画分には、意外にもかなりの割合の標的Y-Chr DNAが残っていることがわかる。それ以外の場合は失われており、遠心分離後の上清画分から得られたDNAと遠心分離後のペレット画分から得られたDNAを合わせた全標的DNAの約25.8%~55.8%であると推定される(すなわち、コレクション#1の場合:2.78/10.77=25.8%、コレクション#2の場合:1.91/3.42=55.8%)。
【0096】
さらに驚くべきことに、予期しないことであるが、通常の遠心分離の前処理工程を完全に省略または除去して、尿試料からDNAを直接単離した場合、それによって検出される標的DNAのコピーは、遠心分離後の上清画分から検出される標的Y-Chr DNAよりも劇的に多くなる。具体的には、「遠心分離なし」または「N.C.」群で検出可能なY-Chr DNAのコピー数は49.58および17.62(それぞれコレクション#1および#2について)であり、「上清」のみの群と比べて6.2倍および11.7倍(それぞれコレクション#1および#2について)である。したがって、本明細書で開示する遠心分離なしのアプローチと比較して、遠心分離後の上清画分のみに関係する従来の遠心分離を簡略化した方法でDNA単離を行った場合、標的Y-Chr DNAの83.9%~91.4%が失われる可能性があることがわかる(すなわち、コレクション#1の場合:(49.58-7.99)/49.58=83.9%、コレクション#2の場合:(17.62-1.51)/17.62=91.4%)。言い換えれば、尿試料からの細胞残屑の除去(例えば、遠心分離前処理による)を必要とする従来のcfDNA単離法と比較して、細胞残屑除去前処理を実質的に除去する本明細書に開示の方法は、検出可能な標的Y-Chr DNAを約5.2~10.7倍多く単離することができ、したがって、検出感度が劇的に向上し、尿試料中のそのような標的低分子量(LMW)DNAの検出限界が劇的に低下する。
【表2】
【0097】
実施例4
【0098】
HCC関連DNAマーカーと細胞残屑ペレットとの関連。
【0099】
尿中に2つの既知の検出可能なHCC DNAマーカーを有する患者から採取された尿。図4に示すように、それぞれ10mLの異なる尿アリコートを、遠心分離を行わずに全尿DNA単離を行った後、分画して1kbより短い低分子量(LMW)DNAを取得(すなわち、「遠心分離なし」またはN.C.群)、または、または上記の遠心分離前処理とDNA単離を行って、上清(Sup)またはペレット画分からDNAを取得(すなわち、「遠心分離」群)した。次いで、表1に詳述するように、DNAをメチル化RASSF1A(mRASSF1A)およびhTERT-124変異(すなわちmTERT)マーカーアッセイに供した。要約結果を表3に示す。
【表3】
【0100】
表3に示すように、mRASSF1Aマーカーは「遠心分離」群および「遠心分離なし」群のいずれの尿分画からも、量に差はあるものの、再現性よく検出された。従来のcfDNA単離法を適用した場合(すなわち、「遠心分離」群の「上清」画分に対応する場合)、mRASSF1Aマーカーはわずか1.6コピーしか検出されなかったが、表2に示したY-Chrの観察結果と同様に、「遠心分離」群の「ペレット」画分からは、より多くのマーカーが検出された(それぞれ、患者#1では32.3コピー、#2では5.4コピー)。したがって、「上清」画分と「ペレット」画分を合わせると、mRASSF1Aマーカーの総検出可能レベル(すなわち「総回収」)は、遠心分離後の「上清」画分のみを対象とする従来の方法と比較して、約21.2倍と4.4倍(それぞれ患者#1と#2)となる。さらに、遠心分離を行わずにアッセイを行った場合(すなわち、「遠心分離なし」または「N.C.」群)、mRASSF1Aマーカーの総検出可能レベルは、遠心分離後の「上清」画分のみに関係する従来の方法と比較して、約29.2倍および7.1倍(それぞれ患者#1と#2)であった。このような結果は、上記表2に示した胎児Y-Chr DNA検出結果と非常によく一致している。
【0101】
mTERTマーカーについては、2人の患者(#3および#4)のいずれにおいても、遠心分離後の「上清」画分において検出限界以下(すなわちBLOD)であることが示されており、従来の遠心分離を用いたcfDNA単離および検出アッセイではmTERTマーカーが実質的に検出されないことが示されている。患者#3では、遠心分離後の「ペレット」画分でも検出限界以下(すなわちBLOD)であることが示されているが、mTERTマーカーを遠心しないアッセイ法(すなわち「遠心分離なし」または「N.C.」群)で検出した場合、mTERTマーカーは約6コピー検出され、「上清」群と比較して少なくとも6倍であった。患者#4では、遠心分離後の「ペレット」画分に有意に多くのマーカーコピー(すなわち13.5)が検出され、「N.C.」群ではさらに多くのコピー(すなわち16.5)が検出された。このように、両患者のデータから、遠心分離を行わずにアッセイを行った場合、mTERTマーカーの総検出可能レベルは、遠心分離後の「上清」画分のみに実質的に関与する従来の方法と比較して、6倍以上であることがさらに示された。
【0102】
HCC関連DNAマーカーはすべてのペレット画分から検出された。このデータは、尿cfDNA単離から細胞ペレットを除去する前処理の遠心分離によって、目的の経腎DNAが失われる可能性があることを示している。同一人物からの異なる尿分画は異なる量の細胞残屑を含む可能性があるため、同一患者からの分画間のDNAマーカー量の比較は行わなかった。
【0103】
議論
【0104】
実施例1および2に示すように、経腎胎児cfDNAは、実施例2の表1の洗浄後細胞ペレット試料を除く、母体尿試料のほぼすべての試料または画分において検出可能である。さらに驚くべきことに、実施例2に示されるように、「洗浄除去」画分には相当量の胎児cfDNAが含まれており、これはコレクション#1試料の「上清」画分の少なくとも1/3であり、コレクション#2試料の「上清」画分の1.26倍でさえある。これらの結果は、洗浄前ペレット(実施例2)またはペレット(実施例1)画分は、尿試料の従来の遠心分離前処理後に実質的に通常廃棄されるペレットであるが、胎児cfDNAの驚くほど重要な部分を含んでいることを示している。これは、経腎循環細胞外DNA分子の一部が、採取された尿試料中の細胞または細胞残屑と会合していることを示しており、これらの細胞は、典型的な前処理遠心分離速度である1,000rpm、10分間、またはそれより高速で短時間の遠心分離後、細胞ペレットとともにペレット化される。
【0105】
表2にさらに示されるように、N.C.試料で回収されたY-Chrコピーは、すべての画分を合わせた遠心分離前処理試料のY-Chrコピーと比較して約4~5倍であるため、N.C.アプローチは、驚くべきことに、遠心分離-洗浄除去アプローチよりも、母体尿試料からの曖昧さのない経腎DNAマーカーである胎児cfDNAを回収する効率がはるかに高いようである。例えば、コレクション#1では、N.C.試料(すなわち49.58)と遠心分離前処理済み試料の合計(すなわち7.99+2.78=10.77)の差は約4.6倍である。コレクション#2では、N.C.試料(すなわち17.62)と遠心分離前処理済み試料の合計(すなわち1.51+1.91=3.42)の差は約5.2倍である。これは、ペレットの洗浄除去を含む各前処理と、後者の単離工程でDNAが失われるためと推測される。そのため、尿試料から経腎cfDNAを回収するには、前処理として遠心分離を行わず、採取した尿試料から直接DNAを単離する方法が望ましいと考えられる。特筆すべきは、dsDNA SPKN 131bp DNAフラグメントのような外因性スパイクcfDNAは、細胞ペレットとの有意な関連性がほとんど、あるいは全くなく、細胞ペレットからの上清の分画対照として使用できる上清中に残る。このことは、すべての種類のcfDNAが、前処理遠心分離で生じた細胞残屑ペレットと同じ程度に会合するわけではないことを示している。実施例3は、前処理遠心分離後のペレット画分にも検出された別の経腎cfDNA、HCC関連DNAマーカーを提供する。前処理工程としての遠心分離も同様に、cfDNAと同様の物理化学的性質を考慮すると、cfDNAに加えて、HCC由来のDNAマーカー、あるいはmiRNAやcfRNAなどの他の内在性無細胞核酸(cfNA)のかなりの部分が、それによって得られたペレットとともに引き下げられる可能性がある。
【0106】
結論
【0107】
尿中の循環細胞外胎児性DNAと肝細胞がん由来DNAおよびHBV DNAを含む肝臓由来DNAを調べたところ、驚くべきことに2つの重要な観察結果が得られた。第一に、尿中のかなりの量の循環由来の無細胞DNA(cfDNA)または経腎DNAが、遠心分離によって生成された細胞ペレットに関連付けられている。その結果、尿中cfDNA単離のために遠心分離を用いて上清を得る前処理を行うと、上清からのみDNA単離を行った場合、胎児DNA、HCC DNA、結腸直腸がんDNA、HBV DNAなどの目的のcfDNAやその他の経腎DNAが相当量失われる可能性がある。第二に、尿中の循環由来のcfDNAまたは経腎DNAは1kb未満の比較的小さなサイズの低分子量(LMW)DNAであるのに対し、細胞内で得られるゲノムDNAははるかに大きなサイズの高分子量(HMW)DNAである。再処理することなく尿のような体液中のcfDNAを単離するためには、全尿DNAを単離した後、バックグラウンドDNAの大部分であるHMW DNAを除去することにより、目的のDNAの濃度を高め、検出感度を向上させることができる。尿またはその他の体液中の循環由来cfDNAをサイズ分画によって選択的に濃縮し、HMW DNAを除去してLMW DNAを得ることは、以下のような様々な方法によって達成することができるが、これらに限定されるものではない:アガロースまたはポリアクリルアミドゲル上のクロマトグラフィー、イオン対逆相高速液体クロマトグラフィー、自己コーティング、低粘度または他のポリマーマトリックス中のキャピラリー電気泳動、マイクロファブリケーション電気泳動装置での選択的抽出、マイクロチップ電気泳動、吸着膜クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーまたは電気泳動の使用;密度勾配遠心分離、および、マイクロファブリケーションエントロピートラップアレイ、カルボキシル化ビーズなどのナノテクノロジー手段を利用する方法。
【0108】
このようにして、遠心分離や細胞残屑を回収する他の手段を用いることなく、全DNAを単離し、次いでHMW DNAを除去することによって得られるLMW DNA分画は、遺伝性疾患、性別、あるいは早期がん検出、がんスクリーニングのためのがんの遺伝的特徴、および、疾病管理あるいは疾病管理のためのウイルスの遺伝的特徴を検出するリスクのある妊娠における胎児の遺伝形質のその後の決定を可能にするだけではない。
【0109】
このような目的の遺伝的特徴の決定は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術、プローブハイブリダイゼーション、次世代配列決定、核酸アレイ(DNAチップなど)などの方法によって行うことができる。
【0110】
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【配列表】
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【国際調査報告】