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▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240705BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L29/78 652B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503638
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022065692
(87)【国際公開番号】W WO2023001450
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】21186667.8
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,ジャンパオロ
(72)【発明者】
【氏名】ミハイラ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ベリーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】アランゴ,ユリース
(72)【発明者】
【氏名】クノール,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ドナート,ナザレノ
(72)【発明者】
【氏名】ウドレア,フローリン
(57)【要約】
パワー半導体デバイス(10)は、第1の主面(12)および第2の主面(13)を備える半導体本体(11)と、第1の主面(12)に配置されたゲート絶縁体(14)と、ゲート絶縁体(14)によって半導体本体(11)から分離されたゲート電極(15)とを備える。半導体本体(11)は、第1の導電型のドリフト層(16)と、第1の導電型とは異なり、ドリフト層(16)との第1の接合部(18)を形成する第2の導電型のウェル層(27)と、ウェル層(27)との第2の接合部(21)を形成する第1の導電型のソース領域(20)と、ソース領域(20)が、半導体本体(11)内のアイランド領域(30)のアイランド表面積の少なくとも50%においてアイランド領域(30)とウェル層(27)とを分離するようにソース領域(20)を取り付ける第2の導電型のアイランド領域(30)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイス(10)であって、
-第1の主面(12)および第2の主面(13)を備える半導体本体(11)と、
-前記第1の主面(12)に配置されたゲート絶縁体(14)と、
-前記ゲート絶縁体(14)によって前記半導体本体(11)から分離されたゲート電極(15)と、を備え、
前記半導体本体(11)は、
-第1の導電型のドリフト層(16)と、
-前記第1の導電型とは異なり、前記ドリフト層(16)との第1の接合部(18)を形成する第2の導電型のウェル層(27)と、
-前記ウェル層(27)との第2の接合部(21)を形成する前記第1の導電型のソース領域(20)と、
-前記ソース領域(20)が、前記半導体本体(11)内のアイランド領域(30)のアイランド表面積の少なくとも50%において前記アイランド領域(30)と前記ウェル層(27)とを分離するように前記ソース領域(20)を取り付ける第2の導電型のアイランド領域(30)と、を備え、
-前記アイランド領域(30)は、前記アイランド領域(30)の2つの寸法において前記ソース領域に囲まれており、前記2つの寸法は前記第1の主面(12)に平行である、パワー半導体デバイス(10)。
【請求項2】
前記ウェル層(27)は、前記ソース領域(20)と前記ドリフト層(16)とを分離するウェル領域(17)と、前記ウェル領域(17)よりも高い最大ドーピング濃度を有する前記第1の主面(12)におけるウェルコンタクト領域(19)とを備える、
請求項1に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項3】
前記アイランド領域(30)から前記ウェルコンタクト領域(19)までの距離(D)は、0.05μmよりも大きい、
請求項2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項4】
前記パワー半導体デバイス(10)は、前記ソース領域(20)の少なくとも一部および前記ウェルコンタクト領域(19)の少なくとも一部に配置されたソース電極(22)を備え、
前記ソース電極(22)は、前記ソース領域(20)および前記ウェルコンタクト領域(19)とのオーミックコンタクトを形成し、
前記ソース電極(22)は、前記アイランド領域(30)とのオーミックコンタクトを有しない、
請求項2または3に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項5】
前記パワー半導体デバイス(10)は、前記ソース領域(20)の少なくとも一部と、前記ウェル層(27)の少なくとも一部と、前記アイランド領域(30)の少なくとも一部とに配置されたソース電極(22)を備え、
前記ソース電極(22)は、前記ソース領域(20)および前記ウェル層(27)および前記アイランド領域(30)とのオーミックコンタクトを形成する、
請求項2または3に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項6】
前記アイランド領域(30)は、半導体領域を介して前記ドリフト層(16)に導電接触しておらず、半導体領域を介して前記ウェル層(27)に導電接触していない、
請求項1~5のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項7】
前記ソース領域(20)は、互いに噛み合うフィンガー構造の形態を有し、
前記ウェル層(27)は、前記互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー(32、32’)の間に位置する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項8】
前記アイランド領域(30)は、前記第1の主面(12)において前記互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー(32)内に位置している、
請求項7に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項9】
前記ソース領域(20)はストライプ(33)を備え、
前記互いに噛み合うフィンガー構造の前記フィンガー(32、32’)は、接続領域内の前記ストライプ(33)に接続され、
前記アイランド領域(30)は、前記第1の主面(12)内の前記接続領域内の前記ストライプ(33)内に位置している、
請求項7に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項10】
前記アイランド領域(30)の最大ドーピング濃度は、0.5 1018cm-3~2 1021cm-3の範囲内である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項11】
前記アイランド領域(30)は、前記第1の主面(12)に平行な面内において、長方形、台形、六角形、円形および楕円形からなる群のいずれかとして形成されている、
請求項1~10のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項12】
-前記半導体本体(11)は、ワイドバンドギャップ材料、または炭化ケイ素、またはシリコンであり、あるいは
-前記パワー半導体デバイス(10)は、電界効果トランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタである、の少なくとも1つである
請求項1~11のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項13】
前記アイランド領域(30)の厚さは、前記ソース領域(20)の厚さの95%未満である、
請求項1~12のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項14】
前記半導体本体(11)は、N個のアイランド領域(30)を含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項15】
前記アイランド領域(30)のアイランド領域長さ(L)は、前記ソース領域(20)のソース領域長さ(LS)の5%以上95%以下の範囲内の値を有する、
請求項1~14のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスは、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ、略してMOSFETとして実現される。MOSFETは、例えば炭化ケイ素材料、略してSiC材料などのワイドバンドギャップ材料に基づくことができる。現在、650Vおよび1200V定格のSiC MOSFETが市販されている。SiC市場は主に低電圧デバイスによって牽引されているが、牽引用途のような中電圧および高電圧システムに3.3kV以上のSiCパワーMOSFETを使用することもより注目されている。平面またはトレンチセル設計のいずれかで実装されると、SiC MOSFETは、優れた静的損失、高速動的性能、および適切な信頼性を提供する。障害処理能力に関して、SiC MOSFETは、Si対応製品によって示される典型的な業界標準値に依然として及ばない。これは、通常、SCWTと略される、伝導損失と短絡耐量との間の強いトレードオフに関連する。
【0003】
米国特許出願公開第2017/0229535号明細書は、ソースコンタクト領域、ソース拡張領域、およびソース抵抗制御領域を有するソース領域を有する半導体デバイスに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電損失と短絡耐量とのトレードオフを改善したパワー半導体デバイスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、第1および第2の主面を備える半導体本体と、半導体本体の第1の主面に配置されたゲート絶縁体と、ゲート絶縁体によって半導体本体から分離されたゲート電極とを備える。半導体本体は、第1の導電型のドリフト層と、第1の導電型とは異なり、ドリフト層との第1の接合部を形成する第2の導電型のウェル層と、ウェル層との第2の接合部を形成する第1の導電型のソース領域と、第2の導電型のアイランド領域とを備える。アイランド領域は、ソース領域が、アイランド領域のアイランド表面積の一部、例示的にはアイランド領域のアイランド表面積の少なくとも50%において、アイランド領域とウェル層とを分離するようにソース領域を取り付ける。
【0006】
一例では、アイランド表面積は、アイランド領域の完全な表面である。アイランド表面積は、アイランド領域の各側面の表面を含む。したがって、アイランド表面積は、アイランド領域の底面、上面、および側面の面積を含む。アイランド領域は、例えば、直方体、非直方体などの直方体である。直方体は、丸みを帯びた角部および/または縁部を有することができる。直方体は、6つの面または側面を有する。アイランド表面積は、例示的に、アイランド領域の6つの側面の表面を含む。
【0007】
「取り付ける」は、アイランド領域がソース領域内に埋め込まれるように、アイランド領域がソース領域内に配置され得ることを意味するものとする。したがって、アイランド領域は、アイランド領域の各側面においてソース領域に完全に囲まれてもよい。ソース領域は、アイランド表面積の100%においてアイランド領域とウェル層とを分離することができる。これは、アイランド領域がアイランド領域の3つの寸法の各々においてソース領域に囲まれ得ることを意味する。アイランド領域は、埋め込み領域または埋め込み層として実現され得る。
【0008】
あるいは、「取り付ける」は、アイランド領域が第1の主面まで延びているが、アイランド表面積の少なくとも50%または少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%または100%においてアイランド領域とウェル層とが分離されるように、アイランド領域がソース領域上に配置され得ることを意味するものとする。一例では、ウェル層からのアイランド領域の分離は、部分的にソース領域によって実現され、部分的にアイソレータおよび/またはソース電極などの電極によって実現される。このため、アイランド領域がソース領域に完全に埋め込まれたり、囲まれたりすることはない。これは、アイランド領域がアイランド領域の3つの寸法の各々においてソース領域に囲まれていないことを意味する。しかしながら、一例では、アイランド領域は、アイランド領域の2つの寸法においてソース領域に囲まれており、2つの寸法は、例えば第1の主面に平行であり、例えば上面図で見ることができる。
【0009】
「取り付ける」という表現は、特に、アイランド領域がソース領域に隣接することを意味する。
【0010】
アイランド領域は、例示的に、ソース領域の断面を縮小する。そのため、ソース領域およびアイランド領域の形態では、ソース抵抗値が若干高くなる可能性がある。アイランド領域は、オン抵抗にあまり影響を与えることなく短絡耐量を高めるようにソース抵抗を変更する。
【0011】
一例では、アイランド領域は、半導体本体の第1の主面においてソース領域に囲まれている。アイランド領域は、第1の主面まで延びている。
【0012】
一例では、アイランド領域は、半導体本体の内部であって半導体本体の第1の主面に平行な面内においてソース領域に囲まれている。アイランド領域は、第1の主面まで延びているかまたは延びていない。
【0013】
少なくとも一実施形態によれば、ウェル層は、ソース領域とドリフト層とを分離するウェル領域と、第1の主面におけるウェルコンタクト領域とを備える。ウェルコンタクト領域は、ウェル領域よりも高い最大ドーピング濃度を有する。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、ソース領域の少なくとも一部およびウェルコンタクト領域の少なくとも一部に配置されたソース電極を備える。ソース電極は、ソース領域およびウェルコンタクト領域とのオーミックコンタクトを形成する。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、ソース電極は、アイランド領域とのオーミックコンタクトを有しない。
【0016】
少なくとも1つの代替的な実施形態によれば、ソース電極は、アイランド領域の少なくとも一部に追加的に配置される。また、ソース電極は、アイランド領域とのオーミックコンタクトを形成する。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、電界効果トランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、略してIGBTである。例えば、本明細書に記載のパワー半導体デバイスは、例えば、MISベース(金属絶縁体半導体)もしくはMOSベース(金属酸化物半導体)または接合型電界効果トランジスタ、略してJFETであるか、またはそれらに含まれる。デバイスは、トレンチまたは平面デバイスであってもよい。半導体本体は、炭化ケイ素もしくは窒化ガリウムなどのワイドバンドギャップ材料、またはシリコンに基づくことができる。したがって、パワー半導体デバイスは、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(MISFET)、接合型電界効果トランジスタ(JFET)、および絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を含む、またはそれらからなる群から選択されるデバイスであるか、またはそれらの中に存在することができる。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体はコレクタ層をさらに備える。コレクタ層は、ウェル領域と同じ導電型である。コレクタ層は、第1の主面(半導体本体の上側と呼ばれる)の反対側の半導体本体の第2の主面(下側と呼ばれる)に配置され得る。すべてのソース領域に対して1つのコレクタ層が存在し得る。コレクタ層は、裏面層と呼ばれてもよい。コレクタ電極は、コレクタ層に直接適用することができる。コレクタ層があれば、そのパワー半導体デバイスはIGBTとすることができる。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体は、少なくとも1つのドレイン領域をさらに備える。ドレイン領域は、少なくとも1つのソース領域と同じ導電型である。例えば、ドレイン領域は、第2の主面における層である。ドレイン領域は、命名されてもよく、または裏面層によって形成されてもよい。例えば、ドリフト領域は、第1の主面とドレイン領域との間に位置する。すべてのソース領域に対して1つの共通のドレイン領域が存在し得る。ドレイン電極は、少なくとも1つのドレイン領域と直接接触していてもよい。ドレイン領域が存在する場合、パワー半導体デバイスは、MOSFETまたはMISFETまたはJFETであり得る。ドレイン層は、ドリフト層よりもドーピング濃度が高い。
【0020】
半導体本体は、例えば、ワイドバンドギャップ材料からなる。ワイドバンドギャップ材料は、例えば、炭化ケイ素SiC、窒化ガリウムGaNおよび酸化ガリウムGaのうちの1つ、または別のワイドバンドギャップ材料である。パワーMISFETまたはパワーMOSFETは、ワイドバンドギャップ材料、例えば炭化ケイ素材料に基づく。したがって、パワー半導体デバイスは、SiC MOSFETまたはSiC MISFETとして実現することができる。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスはパワーデバイスである。例えば、パワー半導体デバイスは、少なくとも0.1kVまたは少なくとも0.5kVの最大電圧に構成される。
【0022】
一例では、アイランド領域は、第2の導電型のシャロー注入によって実現される。第2の導電型は、例えば、p導電型またはpドーピングである。
【0023】
一例では、MOSFETまたはMISFETは、短絡能力を高めるためにシャローp注入を含む。pアイランドをソース領域に追加的に注入して、伝導損失とSCWTとの間の改善されたトレードオフを提供する。追加のp+注入によって増加したソース抵抗は、オン状態抵抗をあまり増加させることなくSCWTを減少させる。
【0024】
本開示は、いくつかの態様を含む。それぞれの特徴が特定の態様の文脈で明示的に言及されていなくても、態様の1つに関して説明されたすべての特徴は、他の態様に関しても本明細書に開示される。
【0025】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれる。図では、同じ構造および/または機能の要素は、同じ参照符号で参照され得る。図に示す実施形態は例示的な表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】一例によるパワー半導体デバイスの斜視図である。
図1B】一例によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2A】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2B】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2C】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2D】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2E】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2F】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2G】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図2H】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図3】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの断面図である。
図4A】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスのシミュレートされた特性を示す。
図4B】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスのシミュレートされた特性を示す。
図5A】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図5B】異なる実施形態によるパワー半導体デバイスの上面図である。
図5C】異なる実施形態によるアイランド領域の上面図である。
図5D】異なる実施形態によるアイランド領域の上面図である。
図5E】異なる実施形態によるアイランド領域の上面図である。
図6A】一実施形態によるパワー半導体デバイスのシミュレートされた構造の斜視図である。
図6B】一実施形態によるパワー半導体デバイスのシミュレートされた構造の断面図である。
図6C】一実施形態によるパワー半導体デバイスのシミュレートされた構造の断面図である。
図7】一実施形態によるパワー半導体デバイスのシミュレートされた特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1Aおよび図1Bは、パワー半導体デバイス10の斜視図および上面図である。パワー半導体デバイス10は、例えば、SiC MOSFETまたはSiC MISFETなどのMOSFETまたはMISFETとして実現される。MOSFETまたはMISFETとして実現されるパワー半導体デバイス10の典型的な斜視図が図1Aに示されており、そのソース設計の上面図が図1Bに示されている。パワー半導体デバイス10は、半導体本体11と、ゲート絶縁体14と、ゲート電極15とを備える。半導体本体11は、例えば、炭化ケイ素半導体基板であるワイドバンドギャップ基板として実現される。半導体本体11は、第1の主面12と第2の主面13とを含む。炭化ケイ素はSiCと略記される。ゲート絶縁体14は、半導体本体11の第1の主面12またはその上に配置されている。ゲート電極15は、ゲート絶縁体14またはその上に配置される。
【0028】
半導体本体11は、第1の導電型のドリフト層16と、第2の導電型のウェル層27と、第1の導電型のソース領域20とを備える。第2の導電型は、第1の導電型とは異なる。ウェル層27は、両方とも第2の導電型であるウェル領域17およびウェルコンタクト領域19を含み得る。ウェル層27は、ソース領域20とドリフト層16とを分離する。ウェル領域17は、ドリフト層16との第1の接合部18を形成する。ウェルコンタクト領域19は、例えば、ウェル領域17の内部にある。代替的に、ウェルコンタクト領域19は、ウェル領域17と同じ深さ、またはさらにはより大きい深さを有してもよい。ソース領域20は、ウェル層27、したがってウェル領域17およびウェルコンタクト領域19との第2の接合部21を形成する。
【0029】
半導体本体11は、第2の主面13に位置する第1の導電型の裏面層23を備える。パワー半導体デバイス10は、裏面層23に配置されたドレイン電極24を備える。裏面層23は、例えばドレイン領域を実現する。ドレイン電極24は、裏面層23とのオーミックコンタクトを形成する。ドリフト層16は、ウェル領域17に隣接する接合型電界効果トランジスタ領域25(略してJFET領域)を備える。パワー半導体デバイス10を導電状態としたときに、ウェル領域17の内側であって、ソース領域20とJFET領域25との間に位置する領域がチャネル26を形成する。チャネル26は、ゲート絶縁体14との界面においてウェル領域17の内側に位置する。
【0030】
半導体本体11は、第2の導電型のさらなるウェル層27’と、第1の導電型のさらなるソース領域20’、20”とを備える。さらなるウェル層27’は、第2の導電型のさらなるウェル領域17’と、第2の導電型のさらなるウェルコンタクト領域19*とを備える。パワー半導体デバイス10は、例えば、ゲート電極15の中央を通る中央線に対して対称である。したがって、以下の図では、「右側部分」が「左側部分」に対応するので、パワー半導体デバイス10の「左側部分」のみが論じられる。
【0031】
パワー半導体デバイス10は、例えば、図1Aに示すような平行なストライプを備えるゲート、またはセルを有するメッシュゲートを備える。セルは、正方形、長方形または六角形の形態のうちの1つであるか、または別の形態を有する。
【0032】
例えば、パワー半導体デバイス10はセル設計である。これは、上面視で、ゲート電極15が、例えば、これに限定されないが、正方形またはほぼ正方形の形状であることを意味し得る。そうでなければ、パワー半導体デバイス10は、ゲート電極15が幅よりもかなり長くなるようにストライプ設計のものであり得る。セル設計およびストライプ設計の両方において、複数のゲート電極15が存在し得る。
【0033】
例えば、ゲート電極15は、平面構成である。したがって、ゲート電極15は、半導体本体11の第1の主面12(上側と呼ぶ)上に位置し、第1の主面12は平面状である。この場合、ゲート電極15もゲート絶縁体14も、半導体本体11内に貫通していない。
【0034】
代替的な図示されていない実施形態によれば、ゲート電極15はトレンチ構成である。この場合、ゲート電極15は、半導体本体11のトレンチ内に延びている。例えば、ゲート絶縁体14は、トレンチの側壁およびトレンチの底部を覆う。ゲート電極15は、トレンチ内のゲート絶縁体14上に配置されている。これにより、ゲート絶縁体14は、ゲート電極15と半導体本体11内のいずれかのドープ層とを絶縁する。
【0035】
図1Aおよび図1Bに示す例では、第1の導電型はnドープされ、第2の導電型はpドープされる。一例では、パワー半導体デバイス10の1つのセルの構造が図1Aに示されている。パワー半導体デバイス10は、例えば、図1Aに示され、以下の図で詳細に説明されるセルに対応するいくつかのセルを備える。
【0036】
代替的な実施形態では、図5Bに示す例では、第1の導電型はpドープされ、第2の導電型はnドープされる。したがって、図では、nとpが入れ替えられている。
【0037】
例えば、ソース領域20、裏面層23またはドレイン領域およびウェルコンタクト領域19の最大ドーピング濃度は、1・1018cm-3~5・1020cm-3の範囲内である。また、ウェル領域17の最大ドーピング濃度は、1・1016cm-3以上であってもよい。パワー半導体デバイス10の電圧クラスに応じて、ドリフト領域16の最大ドーピング濃度は、1・1014cm-3~1・1017cm-3の範囲内であってもよい。
【0038】
図1Bに示すように、パワー半導体デバイス10は、ソース領域20の少なくとも一部およびウェルコンタクト領域19の少なくとも一部に配置されたソース電極22を備える。ソース電極22は、ソース領域20およびウェルコンタクト領域19とのオーミックコンタクトを形成する。ゲート電極15およびソース電極22は、図1B図2A図2H図5Aおよび図5Bにハッチングを付して描かれている。ゲート電極15は、半導体本体11の上にあるゲート絶縁体14の上にある。ソース電極22は、半導体本体11の上にある。ゲート電極15およびゲート絶縁体14は、ソース領域20と重なっている。ゲート電極15の一部は、ソース領域20の一部の上方にあるが接触していない。
【0039】
図2Aは、図1Aおよび図1Bに示す実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。半導体本体11は、第2の導電型のアイランド領域30を備える。アイランド領域30は、半導体本体11の第1の主面12に平行な面内においてソース領域20に囲まれている。このため、アイランド領域30は、少なくとも2つの寸法(すなわち、アイランド領域30の長辺に平行な寸法と、第1の主面12に垂直な寸法)においてソース領域20に囲まれている。第1の主面12において、ソース領域20はアイランド領域30と接合型電界効果トランジスタ領域25とを分離している。第1の主面12において、ソース領域20はアイランド領域30とウェルコンタクト領域19とを分離している。図2Aに示すアイランド領域30は、両方ともソース領域20の領域に取り付けられた2つの長辺を有する。アイランド領域30の2つの長辺の側面は、ソース領域20の領域に取り付けられている。
【0040】
例示的に、ソース領域20は(例えば、図3に示すように)アイランド領域30の底面にも取り付けられている。このため、アイランド領域30は、3つの寸法(すなわち、アイランド領域30の幅に平行な寸法、アイランド領域30の長辺に平行な寸法、および第1の主面12に垂直な寸法)ソース領域20に囲まれている。
【0041】
これにより、パワー半導体デバイス10は、例えば、ソース領域20にp+注入を追加したSiC MOSFETまたはSiC MISFETとして実現される。アイランド領域30は、ソース領域20と第3の接合部31を形成する。ウェル領域17、ウェルコンタクト領域19、ソース領域20およびアイランド領域30は、第1の主面12に位置している。一例では、ウェルコンタクト領域19およびアイランド領域30は高pドープされており、ウェル領域17はpドープされている、すなわち、アイランド領域30またはウェルコンタクト領域19よりも低ドープされている。ソース領域20および裏面層23は高nドープされており、ドリフト層16は、弱くnドープされている、すなわち、ソース領域20よりも低ドープされている。一例では、ウェルコンタクト領域19およびアイランド領域30は、同じ最大ドーピング濃度を有する。あるいは、ウェルコンタクト領域19およびアイランド領域30は、異なる最大ドーピング濃度を有する。ウェルコンタクト領域19とアイランド領域30とは、必ずしも同じドーピングレベルでドープされる必要はない。
【0042】
アイランド領域30は、第1の主面12においてソース領域20に配置されてもよい。別の実施形態では、アイランド領域30は、ソース領域20がアイランド領域30を完全に取り囲むように、ソース領域20内に配置される。
【0043】
半導体デバイスの活性領域は、第1の主面12上の主電極(ソース電極22であってもよい)と半導体本体の裏面側の裏面電極(ドレイン電極24またはコレクタ電極であってもよい)との間の領域である。アイランド領域30は、活性領域に配置されている。
【0044】
アイランド領域30は、直方体などの直方体の形態を有している。上面視において、アイランド領域30は長方形の形態を有している。長方形は、丸い角または鋭い角を有してもよい。アイランド領域30の長方形の2つの長辺は、ソース領域20に完全に隣接している。一例では、アイランド領域30の長方形の小さい方の辺の材料(図示せず)は、ソース領域20のさらなる部分であるか、またはアイソレータもしくはアイソレーション構造によって形成される。あるいは、アイランド領域30は、リング構造を形成する。アイランド領域30は、第1の主面12と平行な面内において長方形に形成されている。
【0045】
アイランド領域30は、シャロー領域として実現されている。ソース領域20の一部は、アイランド領域30の「下」にある。アイランド領域30の深さは、ソース領域20の深さ未満である。深さは、第1の主面12を起点として測定される。したがって、ウェルコンタクト領域19とアイランド領域30との間のソース領域20の一部は、ウェル領域17とアイランド領域30との間のソース領域20の一部に接続され、および/またはそれへの導電経路を有する。さらに、ウェルコンタクト領域19とアイランド領域30との間のソース領域20の一部は、チャネル26とアイランド領域30との間のソース領域20の一部に接続され、および/またはそれへの導電経路を有する。アイランド領域30は、半導体領域を介してドリフト層16と導電接触していない。アイランド領域30は、半導体領域を介してウェル層27に導電接触していない。アイランド領域30は、半導体領域を介してウェルコンタクト領域19と導電接触していない。アイランド領域30は、半導体領域を介してウェル領域17と導電接触していない。
【0046】
さらなるウェル領域17’(図示せず)は、ウェル領域17に対応する。さらなるウェルコンタクト領域19*(図示せず)は、ウェルコンタクト領域19に対応する。さらなるソース領域20’(図示せず)は、ソース領域20に対応する。半導体本体11のさらなるアイランド領域(図示せず)は、アイランド領域30に対応する。図2A図2Dに示すように、ソース電極22は、アイランド領域30とのオーミックコンタクトを有しない。つまり、アイランド領域30は、固定電位に電気的に接続されていない。アイランド領域30は、電気的にフローティングである。MOSFETやMISFETはソース領域20への追加のp+注入を用いて作製するため、ソース領域20の抵抗が高まる可能性がある。
【0047】
図2Bは、図1A図1B、および図2Aに示す実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。ソース領域20は、互いに噛み合うフィンガー構造の形態を有するか、または互いに噛み合うフィンガー構造を含む。ウェル層27は、互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー32、32’の間に位置する。ウェルコンタクト領域19は、互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー32、32’の間に位置する。ソース領域20は、ストライプ33を備える。互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー32、32’は、接続領域でストライプ33に接続されている。フィンガー32、32’は、このストライプ33からウェルコンタクト領域19および/またはソース電極22の方向に延びる。ソース領域20は、M個のフィンガー32、32’を有する。図2Bでは、数Mは2である。例えば、数Mは少なくとも2以上である。フィンガーの数は、いずれにせよ、互いに噛み合うフィンガー構造が、例えば、ストライプ33のストライプ長全体にわたって、またはストライプ長全体の一部にわたって延びるような数である。
【0048】
アイランド領域30は、半導体本体11の第1の主面12においてソース領域20に完全に囲まれている。アイランド領域30は、第1の主面12における接続領域のストライプ33内に位置している。アイランド領域30は、ウェルコンタクト領域19、19’の第1の部分および第2の部分に近接している。アイランド領域30は、互いに噛み合うフィンガー構造の正確に1つのフィンガー32に近接している。距離Dは、アイランド領域30からウェルコンタクト領域19およびウェルコンタクト領域19’までの最小距離と考えられる。距離Dは、0.05μm以上とすることができる。
【0049】
アイランド領域30の最大ドーピング濃度は、0.5・1018cm-3~2・1021cm-3の範囲内、あるいは1018cm-3~1020cm-3の範囲内である。
【0050】
図2Bに示す上面図では、アイランド領域30は、例えば長方形の形態を有する。一例では、長方形は正方形の形態を有する。半導体本体11は、N個のアイランド領域30、30’を含む。例えば、N個のアイランド領域30、30’のアイランド領域は、同一に形成されている。フィンガー32、32’の数Mは、アイランド領域30、30’の数Nに等しい。あるいは、フィンガー32、32’の数Mは、アイランド領域30、30’の数Nよりも大きい。図2Bでは、数Nは2である。あるいは、アイランド領域30、30’の数Nは、少なくとも1または少なくとも2、またはそれ以上である。
【0051】
N個のアイランド領域30、30’は、N個のアイランド領域30、30’のアイランド表面積の一部、例えば少なくとも50%において、ソース領域20がN個のアイランド領域30、30’のアイランド領域とウェル層27とを分離するようにソース領域20を取り付ける。一例では、ソース領域20は、アイランド領域30のアイランド表面積の一部、例えば少なくとも50%において、N個のアイランド領域30、30’のアイランド領域の各々とウェル層27とを分離する。
【0052】
図2Cは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。アイランド領域30は、第1の主面12の互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー32内に位置している。アイランド領域30は、ウェルコンタクト領域19、19’の2つの部分の間に位置している。図2Cに示す上面図では、アイランド領域30は長方形の形態を有する。
【0053】
図2Dは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。アイランド領域30は、第1の主面12の互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー32内に位置している。図2Dに示す上面図では、アイランド領域30は台形の形態を有する。台形の幅は、ストライプ33付近の方でより小さい。あるいは、台形の幅は、ストライプ33の近くでより大きい。アイランド領域30は、第1の主面12と平行な面内において台形状に形成されている。
【0054】
アイランド領域30は、半導体本体11の第1の主面12において、図2A図2Cに示すような長方形または図2Dに示すような台形の形態を有する。例えば、上面図において円形、楕円形、三角形、ひし形、五角形、六角形など、アイランド領域30の他の形態も可能である。
【0055】
図2A図2Dでは、アイランド領域30はフローティングであり、すなわち、電極のいずれとも電気的に接続されていない。アイランド領域30は、金属接続を有しない。アイランド領域30は、半導体本体11の内側でソース領域20に囲まれている。アイランド領域30は、第1の主面12において図示しないアイソレータによって覆われている。N個のアイランド領域30、30’の各々は、フローティングである。一例では、N個のアイランド領域のアイランド領域30、30’は、同一に実現される。
【0056】
図2E図2Hは、例えば図2A図2Dに示す、上に示す実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。ソース電極22は、アイランド領域30の少なくとも一部に配置されている。ソース電極22は、アイランド領域30とのオーミックコンタクトを形成する。アイランド領域30は、ソース電極22によってソース領域20およびウェルコンタクト領域19に電気的に接続されている。
【0057】
アイランド領域30またはアイランド領域30、30’を実現する追加のシャローp+注入または注入のいくつかの構成を有する、ソース設計のための異なるレイアウトが、図2A図2H(上面図)に示されている。n+およびp+領域は、図2Aおよび図2Eに示すように単純なストライプ状の設計を有することができるか、または図2B図2Dおよび図2F図2Hに示すように3次元で不均一な設計を有することができ、例えば、p+領域はセグメント化され、追加の注入アイランド30、30’が含まれる。
【0058】
パワー半導体デバイス10は、以下のいくつかの特徴を実装する。
-p+領域によって実現されるウェルコンタクト領域19およびn+領域によって実現されるソース領域20は、図2B図2Dおよび図2F図2Hに示すような「フィンガー」状の設計を有することができる。
【0059】
-p+アイランドによって実現されるアイランド領域30、30’は、図2Bおよび図2Fのように、n+フィンガーによって実現されるソース領域20のフィンガー32、32’の近くに注入することができる。
【0060】
-p+領域によって実現されるアイランド領域30、30’は、ウェルコンタクト領域19のp+部分の間に配置することができ、図2B図2Dおよび図2F図2Hに示すように異なる形状を有することができる。
【0061】
追加のp+注入によって実現されるアイランド領域30、30’は、(図2A図2Dに示すように)フローティングのままにすることができるか、またはソース電極22を介してソース領域20と短絡させることができ、図2E図2Hに示すように金属接触を実現する。記載のレイアウトのいずれについても、アイランドのドーピングプロファイルをウェルコンタクト領域に等しく選択することができる場合、提案された設計は、製造のための追加のマスクを必要とせず、追加のp+注入は、コンタクトプロセス工程中に実現することができる。
【0062】
一例では、ウェルコンタクト領域19を実現するためのマスクは、アイランド領域30を実現するためのさらなる構造を含む。アイランド領域30およびウェルコンタクト領域19は、共通の注入プロセスで一括して注入される。
【0063】
代替的な実施例では、パワー半導体デバイス10を製造するためのマスクのセットは、アイランド領域30を実現するためのマスクを含む。アイランド領域30は、例えばウェルコンタクト領域19の注入プロセスなどの他の注入プロセスとは別に、注入プロセスで注入される。この場合、アイランド領域30のドーピングプロファイルは、ウェルコンタクト領域19のドーピングプロファイルとは異なり得る。
【0064】
アイランド領域30の下の領域では、ソース領域20の一部がアイランド領域30とウェル領域17とを分離している。
【0065】
p+アイランド領域30の深さは、設計パラメータとして使用することができ、n+ソース領域20の深さの95%までとすることができる。p+ストライプ/領域の寸法およびp+フィンガーまでのそれらの距離は、それらのドーピングと同様に変化し得る。距離Dは、アイランド領域30からウェルコンタクト領域19までの最小距離であり、追加の設計パラメータとして使用することができる。アイランド領域30の最大ドーピング濃度は、0.5 1018cm-3から1021cm-3までとすることができ、これも設計パラメータとして使用することができる。ソース電極22を実現する上部金属とソース領域20および/またはアイランド領域30、30’(追加のp+注入と呼ばれる)とのオーバーレイも、設計パラメータとして使用することができる。
【0066】
図2A図2Hには、パワー半導体デバイス10の一部分が示されている。この部分は、並列ストライプを有するMOSFETまたはMISFET、およびメッシュゲートを有するMOSFETまたはMISFETのうちの少なくとも1つの部分とすることができる。
【0067】
図3は、上記の実施形態のさらなる発展形態である異なる実施形態によるパワー半導体デバイス10の断面図である。図3には、注入長さLの値が異なる場合の図2Aまたは図2Eのレイアウトのソース設計が示されている。アイランド領域30は、ソース領域20の厚さよりも小さい厚さを有するシャロー領域として実現される。アイランド領域30の厚さは、例えば、この場合、ソース領域20の厚さの95%未満または50%未満である。一例では、アイランド領域30の厚さは、ウェルコンタクト領域19の厚さよりも小さい。
【0068】
ソース領域長さLSは、ソース領域20における主電流の流れに平行なソース領域20の延長部である。ソース領域長さLSは、ウェルコンタクト領域19からチャネル領域26までの距離、例えば、ウェルコンタクト領域19からチャネル領域26までの最短距離である。アイランド領域長さLは、ウェルコンタクト領域19とチャネル領域26との間の方向にアイランド領域30を延長したものである(チャネル領域26およびウェルコンタクト領域19は、いずれもアイランド領域30との間にギャップを有している)。ソース領域長さLSを有するソース領域20の延長部は、アイランド領域長さLを有するアイランド領域30の延長部と平行である。ソース領域長さLSは、アイランド領域長さLと同じ方向である。アイランド領域長さLは、ソース領域長さLSの5%以上95%以下の範囲内の値を有する。図3に示す例によれば、ソース領域20は、アイランド領域30のアイランド表面積の少なくとも50%(例えば50%超)においてアイランド領域30とウェル層27とを分離する。アイランド領域30のアイランド表面積は、ウェル層27から完全に(すなわち100%)分離していてもよい。アイランド表面積の一部はソース領域20によって覆われ、一部はアイソレータおよび/またはソース電極22などの電極(図示せず)によって覆われている。
【0069】
図2Aおよび図2Eのレイアウトは、例として、アイランド領域長さLの異なる値(LSの約20%、LSの40%、およびLSの75%)に対して1.2kV定格のデバイスを表す構造を考慮して、技術コンピュータ支援設計(TCAD)シミュレーションによって調査されている。アイランド領域30の厚さまたは注入深さとも呼ばれるアイランド領域30の深さは、ソース領域深さの30%に設定され、その最大ドーピング濃度は1020cm-3に設定された。
【0070】
図4Aおよび図4Bは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10のシミュレートされた特性である。図4Aでは、図2Eのソース設計(PまたはP1、P2、P3とマークされたデータ)の静的出力特性(左側)および短絡波形(右側)が、基準MOSFET構造(Rとマークされたデータ)と比較されている。シミュレーションにより、アイランド領域長さL(すなわち、ソース領域長さLSの約20%、40%および75%)の異なる値についてデータを生成した。基準MOSFETは、(ドーピング、寸法などに関して)提案された設計と同じパラメータを使用してシミュレートされるが、アイランド領域はない。
【0071】
左側には、ドレイン電流密度JDがドレイン-ソース間電圧VDSの関数として示されている。以下のパラメータを使用した。ゲート-ソース間電圧VGS=15V、温度T=300K。ドレイン電流密度JDは、図4Aおよび図4Bの最大値に対して1に正規化されている。右側には、電気熱短絡シミュレーション中のドレイン電流密度JDが時間tの関数として示されている。以下のパラメータを使用した。ゲート-ソース間電圧VGS=-10V/+15V、温度T=300K、ドレイン-ソース間電圧VDS=600V。左側および右側の特性のこれらのパラメータは、図4Bおよび図7にも使用した。
【0072】
図4Aの静的出力特性(左側)および短絡波形(右側)は、接地されたp+注入のための図2Eのソース設計を使用して得られる。基準MOSFETと比較して、短絡時のドレイン電流密度JDのピーク値の最大の減少は、L=75%LS(データはP3とマークされている)で達成され、約15%である。L=20%LS(データはP1とマークされている)およびL=40%LS(データはP2とマークされている)を使用した場合の削減は、ほぼ同一である。
【0073】
図4Bの静的出力特性(左側)および短絡波形(右側)は、フローティングp+注入のための図2Aのソース設計を使用して得られる。基準MOSFETと比較したドレイン電流密度JDのピーク値の減少は、Lの3つの異なる値についてほぼ同一であり、一例では約14%である。
【0074】
接地されたp+注入とフローティングp+注入の両方の2つの場合を考慮した。得られた出力波形および短絡波形をそれぞれ図4Aおよび図4Bに報告する。基準設計(左側)と比較して静的性能にほとんど差はないが、短絡中の最大ドレイン電流密度(右側)については、例えば15%までの低減を達成することができる。また、降伏電圧はソース領域20への追加注入の影響を受けない。
【0075】
図5Aは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。アイランド領域30は、半導体本体11の第1の主面12においてソース領域20に完全に囲まれている。N個のアイランド領域30、30’、30”は、例えば直線上またはリング線上に配置される。隣接する2つのアイランド領域30、30’のギャップは、距離D1である。距離D1は、例えば0.05μmよりも大きいか、または0.5μmよりも大きい。
【0076】
図5Bは、例えば図2Aに示すような、上に示した実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の上面図である。第1の導電型はpドープされ、第2の導電型はnドープされる。
【0077】
図5Cは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるアイランド領域10の上面図である。アイランド領域30は、第1の主面12を上面視したときまたは第1の主面12と平行な面内において、六角形などの多角形、例示的には正六角形に形成されている。多角形は、三角形、四角形、五角形、七角形などの他の形態を有してもよい。
【0078】
図5Dは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるアイランド領域10の上面図である。アイランド領域30は、第1の主面12上または第1の主面12に平行な面内において、上面視で楕円形などの卵形に形成されている。
【0079】
図5Eは、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるアイランド領域10の上面図である。アイランド領域30は、第1の主面12上または第1の主面12に平行な面内において、上面視で円形などの卵形に形成されている。円形は楕円の特別な形である。アイランド領域30は、円柱(例えば、斜視図において)の形態を有している。図5C図5Eに示すアイランド領域30の実施形態は、図2A図2Hおよび図5Aに示すN個のアイランド領域30、30’、30”のアイランド領域または各アイランド領域などに配置することができる。
【0080】
図6Aは斜視図であり、図6Bおよび図6Cは、例えば図2Cの上記に示された実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10のシミュレートされた構造の断面図である。提案された設計のシミュレートされた電流密度流線は、図6Aでは3D図として、図6Bおよび図6Cでは2D断面として報告されている。図6Bには、図6AのAAでマークされた断面が示されている。図6Cには、図6AのBBでマークされた断面が示されている。電流経路は矢印付きの線として示されている。領域34では、線は非常に密である。領域34は、電流密度が最も高い領域である。3D図は、p+シャロー注入が短絡中に電流をどのように制約し、したがってソース抵抗を増加させ、自己制限効果をもたらすかを示している。図6A図6Cでは、図2Cの提案された設計の電流ピークに対応する短絡パルス中のシミュレートされた電流密度(Acm-2で測定)が示されている。
【0081】
図6Aに示すように、アイランド領域30とウェルコンタクト領域19との間のギャップ内のソース領域20には高い電流密度が存在する。さらに、図6Bに示すように、アイランド領域30とウェル領域17との間のギャップを充填するソース領域20の部分内を意味する、アイランド領域30の下のソース領域20の内側に高い電流密度が存在する。ソース領域20の他の領域に対して増加した領域34の高い電流密度は、短絡中にプラスの効果を有する。有利には、アイランド領域30は、図7に示すように、短絡におけるドレイン電流密度JDのピーク値JSATの減少をもたらす。しかしながら、領域34は、通常動作中にデバイス10の全体的なオン状態抵抗にわずかな悪影響しか及ぼさないか、または影響を及ぼさない。
【0082】
図7は、上記の実施形態のさらなる発展形態である実施形態によるパワー半導体デバイス10の特性である。図7では、図6の斜視図で表される図2Cのソース設計の静的出力特性(左側)および短絡波形(右側)(Pとマークされたデータ)が、基準MOSFET構造(Rとマークされたデータ)と比較される。
【0083】
左側には、ドレイン電流密度JDがドレイン-ソース間電圧VDSの関数として示されている。図2Cの提案されたソース設計を有する構造では、ドレイン電流密度の定価は2.5%未満、すなわち比オン抵抗の増加は2.5%未満である。パーセンテージ値2.5%は、分析された事例の一例にすぎない。以下のパラメータを使用した。ゲート-ソース間電圧VGS=15V、温度T=300K。ドレイン電流密度JDは、最大値に対して1に正規化されている。
【0084】
右側には、電気熱短絡シミュレーション中のドレイン電流密度JDが時間tの関数として示されている。解析された例において、提案された設計では、基準MOSFETと比較してドレイン電流密度JDのピーク値の低下は約24%である。以下のパラメータを使用した。ゲート-ソース間電圧VGS=-10V/+15V、温度T=300K、ドレイン-ソース間電圧VDS=600V。
【0085】
図7には、標準的なMOSFET設計と比較した、図2Cのデバイス10のシミュレーションされた等温出力JD-VDS曲線および電気熱短絡波形(VGSの変動は-10V~+15V)が示されている。抵抗値RONは少し増加するが、短絡時のドレイン電流密度JDのピーク値であるJSATは大きく低下する。短絡中にパワー半導体デバイス10が受けるエネルギーは、JSATの最大値に直接関係するため、提案された設計は、導電損失に大きな影響を与えることなく短絡耐量を改善する。
【0086】
本開示は、様々な修正および代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、例として図面に示され、詳細に説明されている。しかしながら、その意図は、本開示を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。むしろ、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替形態を網羅することである。
【0087】
上述の図1図7に示す実施形態は、改良されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態を表しており、したがって、それらは改良されたパワー半導体デバイスによるすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際のパワー半導体デバイスは、例えば、配置、デバイス、構造、レイアウト、および層に関して示された実施形態とは異なり得る。
【符号の説明】
【0088】
参照符号
10 パワー半導体デバイス
11 半導体本体
12 第1の主面
13 第2の主面
14 ゲート絶縁体
15 ゲート電極
16 ドリフト層
17,17’ ウェル領域
18,18’ 第1の接合部
19,19’,19” ウェルコンタクト領域
19* さらなるウェルコンタクト領域
20,20’,20” ソース領域
21 第2の接合部
22 ソース電極
23 裏面層
24 ドレイン電極
25 接合型電界効果トランジスタ領域
26 チャネル
27,27’ ウェル層
30,30’ アイランド領域
31 第3の接合部
32,32’ フィンガー
33 ストライプ
34 領域
D 距離
JD ドレイン電流密度
L アイランド領域長さ
LS ソース領域長さ
t 時間
VDS ドレイン-ソース間電圧
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイス(10)であって、
-第1の主面(12)および第2の主面(13)を備える半導体本体(11)と、
-前記第1の主面(12)に配置されたゲート絶縁体(14)と、
-前記ゲート絶縁体(14)によって前記半導体本体(11)から分離されたゲート電極(15)と、を備え、
前記半導体本体(11)は、
-第1の導電型のドリフト層(16)と、
-前記第1の導電型とは異なり、前記ドリフト層(16)との第1の接合部(18)を形成する第2の導電型のウェル層(27)と、
-前記ウェル層(27)との第2の接合部(21)を形成する前記第1の導電型のソース領域(20)と、
-前記ソース領域(20)が、前記半導体本体(11)内のアイランド領域(30)のアイランド表面積の少なくとも50%において前記アイランド領域(30)と前記ウェル層(27)とを分離する、第2の導電型のアイランド領域(30)と、を備え、
-前記アイランド領域(30)は、前記アイランド領域(30)の2つの寸法において前記ソース領域に完全に囲まれており、前記2つの寸法は前記第1の主面(12)に平行である、パワー半導体デバイス(10)。
【請求項2】
前記ウェル層(27)は、前記ソース領域(20)と前記ドリフト層(16)とを分離するウェル領域(17)と、前記ウェル領域(17)よりも高い最大ドーピング濃度を有する前記第1の主面(12)におけるウェルコンタクト領域(19)とを備える、
請求項1に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項3】
前記アイランド領域(30)から前記ウェルコンタクト領域(19)までの距離(D)は、0.05μmよりも大きい、
請求項2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項4】
前記パワー半導体デバイス(10)は、前記ソース領域(20)の少なくとも一部および前記ウェルコンタクト領域(19)の少なくとも一部に配置されたソース電極(22)を備え、
前記ソース電極(22)は、前記ソース領域(20)および前記ウェルコンタクト領域(19)とのオーミックコンタクトを形成し、
前記ソース電極(22)は、前記アイランド領域(30)とのオーミックコンタクトを有しない、
請求項2または3に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項5】
前記パワー半導体デバイス(10)は、前記ソース領域(20)の少なくとも一部と、前記ウェル層(27)の少なくとも一部と、前記アイランド領域(30)の少なくとも一部とに配置されたソース電極(22)を備え、
前記ソース電極(22)は、前記ソース領域(20)および前記ウェル層(27)および前記アイランド領域(30)とのオーミックコンタクトを形成する、
請求項2または3に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項6】
前記アイランド領域(30)は、半導体領域を介して前記ドリフト層(16)に導電接触しておらず、半導体領域を介して前記ウェル層(27)に導電接触していない、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項7】
前記ソース領域(20)は、互いに噛み合うフィンガー構造の形態を有し、
前記ウェル層(27)は、前記互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー(32、32’)の間に位置する、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項8】
前記アイランド領域(30)は、前記第1の主面(12)において前記互いに噛み合うフィンガー構造のフィンガー(32)内に位置している、
請求項7に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項9】
前記ソース領域(20)はストライプ(33)を備え、
前記互いに噛み合うフィンガー構造の前記フィンガー(32、32’)は、接続領域内の前記ストライプ(33)に接続され、
前記アイランド領域(30)は、前記第1の主面(12)内の前記接続領域内の前記ストライプ(33)内に位置している、
請求項7に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項10】
前記アイランド領域(30)の最大ドーピング濃度は、0.5 1018cm-3~2 1021cm-3の範囲内である、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項11】
前記アイランド領域(30)は、前記第1の主面(12)に平行な面内において、長方形、台形、六角形、円形および楕円形からなる群のいずれかとして形成されている、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項12】
-前記半導体本体(11)は、ワイドバンドギャップ材料、または炭化ケイ素、またはシリコンであり、あるいは
-前記パワー半導体デバイス(10)は、電界効果トランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタである、の少なくとも1つである
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項13】
前記アイランド領域(30)の厚さは、前記ソース領域(20)の厚さの95%未満である、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項14】
前記半導体本体(11)は、N個のアイランド領域(30)を含む、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【請求項15】
前記アイランド領域(30)のアイランド領域長さ(L)は、前記ソース領域(20)のソース領域長さ(LS)の5%以上95%以下の範囲内の値を有する、
請求項1または2に記載のパワー半導体デバイス(10)。
【国際調査報告】