(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】植物保護剤の液体プロリポソーム組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/653 20060101AFI20240705BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240705BHJP
A01N 25/28 20060101ALI20240705BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20240705BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20240705BHJP
A01N 43/50 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A01N43/653 G
A01P3/00
A01N25/28
A01N25/30
A01N43/653 Q
A01N43/40 101D
A01N43/50 Q
A01N43/653 C
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503644
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 PL2022050047
(87)【国際公開番号】W WO2023003485
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524023653
【氏名又は名称】サイヴェント スポルカ ジー オグラニクゾナ オドパウイエドジアルノシア
【氏名又は名称原語表記】SYVENTO SP. Z O.O.
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】リプカ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】サイザ,マルゴルザタ
(72)【発明者】
【氏名】ザヴィルスカ,パトリシア
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BA05
4H011BB09
4H011BC17
4H011DA06
(57)【要約】
本発明は、植物保護剤の液体プロリポソーム組成物及び当該組成物の製造方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物保護剤の液体プロリポソーム組成物であって、
1重量%~50重量%の少なくとも1つの活性物質と、
20重量%~75重量%の少なくとも1つの脂質と、
少なくとも1つの界面活性剤を15重量%未満の量で含む、0.1重量%~35重量%の少なくとも1つの補助物質と、
20重量%~75重量%の少なくとも1つの生分解性、不燃性、及び不揮発性有機溶媒と、
0~12重量%の水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液と、
を含有している、組成物。
【請求項2】
前記活性物質が除草剤又は殺菌剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活性物質が前記組成物の5重量%~20重量%を構成していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂質と前記活性物質との比が25:1~2:1であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂質が5%~99.99%のホスファチジルコリンを含んでいることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂質がレシチンであることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂質が前記組成物の20重量%~45重量%を構成していることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記組成物の重量に基づいて3重量%を構成していることを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、リゾリン脂質、モノ及びジグリセリド、ポリソルベート、スパン、エトキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化アルコール、エトキシル化脂肪酸アミン、アルカナミン、硫酸アルキル、サポニン、アルコキシル化リン酸エステル、ブチルブロック共重合体、並びに、PEO及びPPOブロック共重合体からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、ポリソルベート20、3~5分子のエチレンオキシドによってエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物、及びオクチルアミンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの界面活性剤に加えて、消泡剤、酸化防止剤、並びに、脂質膜の流動性に影響を及ぼす生分解性、不揮発性及び不燃性の薬剤からなる群より選択される少なくとも1つの他の補助物質を含んでいることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記溶媒が前記組成物の20重量%~30重量%を構成していることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記溶媒が、n-ブチルピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテル、炭酸プロピレン、N、N-ジメチルラクトアミド、及び5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソ吉草酸メチルエステルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1乃至12の何れか1項に記載の組成物。
【請求項14】
8重量%の水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液を含んでいることを特徴とする、請求項1乃至13の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の組成物を調製するための方法であって、この順に、
a)前記脂質を生分解性有機溶媒に溶解し、混合して、混合物を得ることと、
b)混合を続けながら、工程a)から得られた混合物に少なくとも1つの界面活性剤を添加することと、
c)混合を続けながら、工程b)から得られた混合物に少なくとも1つの活性物質を添加することと、
d)任意選択的に、水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液を、工程c)から得られた混合物に添加することと;
e)工程d)で得られた混合物を混合して、プロリポソーム組成物を形成することと、
を含んでいる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物保護剤の液体プロリポソーム組成物及び当該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の間で健康と環境への関心が高まり、化学物質を含まない製品へのニーズが高まっているため、オーガニック製品の需要が増加している。現在、市場及び社会の両方の傾向により、植物保護製品の製造業者は、環境中に有毒廃棄物を発生させず、再生可能資源に由来する、持続可能で環境に優しい植物保護製品を探すことを余儀なくされている。欧州連合における立法作業の一環として、使用されている合成由来の植物保護剤の濃度を下げるか、又は、それらを天然由来の物質に置き換える必要性についての議論がますます高まっている。残念ながら、このような戦略では、有効性の限界に達する量の活性物質が大量に使用されることになり、その結果、特定の物質に対する病原体の耐性現象が促進されるだけでなく、物質の作用の有効性が低下させることになる。
【0003】
この問題に対する効果的な解決策は、農薬をリポソーム担体にカプセル化することであると思われる。リポソームキャリアは、疎水性物質の効率的なカプセル化を可能にする脂質二重層で構成されている。この二重層は、親水性物質を含んでいてもよい水のコア(water core)を取り囲んでいる。ナノキャリアリポソームは、従来の製剤に比べて優れていることから、現在の主要な活性物質送達システムのひとつである。これらは現在、医薬品、化粧品、及び栄養補助食品の活性物質のナノキャリアとして広く使用されている。
【0004】
100nm~1000nmの範囲のサイズを有する活性物質が封入されたリポソームを含む組成物は、とりわけ、持続的放出による活性物質の標的送達を可能にし、その安定性を改善し、その毒性を低減し、その活性を増加させ(これは使用される殺虫剤の量を減少させることにつながる)、例えば、葉の脂質層などの生物学的障壁を介した浸透を改善する。
【0005】
更に、リポソームはリン脂質でできており、100%生分解性であり、葉の表面と親和性があり、環境にとって安全である。リポソームは、その独特な小胞脂質構造及び小さなサイズ(葉の細胞間を蛇行できる最大数μmのサイズ)により、葉に浸透することができるため、活性物質が葉の表面から雨などによって洗い流されない。これにより、活性物質の使用量を大幅に減らして、リポソームから徐々に放出されて、植物を攻撃する菌類の細胞に長期間作用することが可能になる。リポソームキャリアのこのような特性により、活性物質の有効性が大幅に向上し、病原体耐性現象の軽減も可能になる可能性がある。
【0006】
リポソームにはあらゆる利点があり、その応用に関する数多くの研究があるにもかかわらず、植物保護製品のキャリアとしては広く使用されていない。殺虫剤組成物におけるリポソームの使用に対する最大の制限には、リポソーム組成物中に大量の水が存在することに起因する安定性の問題、マイナス温度に対する耐性の欠如(冬の間の製品の輸送及び保管)、並びに活性物質の最大濃度に関連する制限が含まれる。
【0007】
プロリポソーム組成物は、これらの問題の解決策であると思われる。プロリポソーム、即ちリポソーム前駆体は、水分含有量が低いか、又は、水分を含んでいないため、保存安定性を維持しながら疎水性活性物質と親水性活性物質との両方をカプセル化することができ、リポソームの使用から生じる欠点を最小限に抑えることができる。プロリポソームを使用すると、活性物質を損失することなく、またプロリポソームから形成されるリポソームの物理化学的特性を変化させることなく、リポソームを調製することができる。プロリポソームの追加の同様に重要な利点は、調製及び使用が容易であること、並びに、希釈後に最終製品となる濃縮物を得ることが可能であることである。
【0008】
有効成分として植物保護剤を含有するプロリポソーム製剤は当技術分野で知られている。
【0009】
GB2303791Aは、農薬溶液であって、その原液を水と混合することによって農業用殺虫剤のリポソームマイクロカプセル化に効果的に使用できる(プロリポソーム)原液の製造方法を記載している。この方法は、a)有機溶媒(殺虫剤を溶解できる)を植物レシチンと混合して、溶媒中に1:1又は1:2の体積比で飽和レシチン溶液を形成する工程と、b)溶液を放置して、未溶解部分を溶液から分離する工程と、c)飽和レシチン溶液を未溶解部分から分離し、飽和溶液を殺虫剤と混合して次の工程で更に使用する工程と、d)農薬を飽和レシチン溶液と混合して、農業用の農薬溶液を形成する工程と、を含んでいる。既に述べたように、溶液を農業において使用するその前に、それは更に水と混合されて、リポソームが形成される。GB2303791Aも、上記に定義された方法に従って製造される殺虫剤配合物を開示している。
【0010】
GB2303791Aと同じ所有者に属するAU1998053619A1は、GB2303791Aに記載された技術の開発に関し、より具体的には、ホウ素含有殺虫剤、好ましくはホウ酸塩を含むプロリポソーム製剤、及びそのような製剤の製造方法に関する。このような配合物の製造プロセスはGB2303791Aと同一である。
【0011】
WO2013171196A1は、食品、飼料、及び農産物における真菌性疾患及び微生物感染症の制御を提供するリポソーム組成物に関する。その開示は、一般に従来のリポソーム製剤に関するが、当該発明の一態様では、水性及び非水性濃縮組成物(原液、プロリポソーム製剤)が開示されている。これらの濃縮物は、その後に水と混合されて、リポソームを形成する。この文書に記載されている組成物は、有効成分ナタマイシンを含むが、有利には除草剤、殺菌剤、抗菌剤、殺虫剤、又は殺線虫剤を更に含み得る。これらの組成物は、リポソーム形成に関与する脂質として、天然脂質、半合成脂質、及び合成脂質を含み得る。例えば、それらは、レシチン、特に植物性又は動物性レシチンを含むがこれに限定されないリン脂質を純度95%未満で含有している。レシチンは、組成物中に0.02~2.0mg/mLの量で存在している。
【0012】
US5004611Aは、(a)好ましくは35~55重量%の量の少なくとも1つの膜形成脂質(例えばレシチン)、(b)好ましくは35~55重量%の量の脂質(例えば、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール)の溶媒である水混和性有機液体からなる少なくとも1つの非水性液体、(c)生物活性剤、を含み、脂質の重量比は40:1~1:20の範囲内にあり、その生物活性用量を生成するのに十分な活性剤が存在している、均質な混合物を形成するプロリポソーム組成物を記載している。組成物は、5~40%の水を含んでもよい。水を更に加えると、この混合物は、直径0.1~2.5μmのリポソームを自発的に形成し、このリポソームには、脂質1グラムあたり少なくとも2mLのカプセル化された水相が含まれている。例えば脂肪酸エステルなどの追加の成分も組成物中に存在し得る。組成物は、スプレーによって塗布されてもよい。記載された組成物の主な用途は医薬品であるが、US5004611Aには、昆虫防除及び園芸におけるそれらの使用の可能性についても言及されている。
【0013】
本発明の目的は、葉への取り込みを増加させ、効果的な除草活性及び殺真菌活性を維持しながら、使用される農薬の用量の低減を可能とし、良好な保存安定性及び耐久性に特徴付けられるような、浸透作用(systemic-action)プロリポソーム組成物を開発することであった。
【0014】
驚くべきことに、これらすべての要件、及び他の多くの要件が本発明の組成物によって満たされることが見出された。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、植物保護剤の液体プロリポソーム組成物にし、当該組成物は、
1重量%~50重量%の少なくとも1つの活性物質と、
20重量%~75重量%の少なくとも1つの脂質と、
少なくとも1つの界面活性剤を15重量%未満の量で含む、0.1重量%~35重量%の少なくとも1つの補助物質と、
20重量%~75重量%の少なくとも1つの生分解性、不燃性、及び不揮発性有機溶媒と、
0~12重量%の水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液と、
を含有している。
【0016】
好ましくは、活性物質は、除草剤又は殺菌剤である。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つの活性物質は、組成物の5重量%~20重量%を構成している。
【0018】
好ましくは、脂質と活性物質との比は、25:1~2:1である。
【0019】
好ましくは、脂質は、5%~99.99%のホスファチジルコリンを含んでいる。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態では、脂質はレシチンである。
【0021】
好ましくは、脂質は、組成物の20重量%~45重量%を構成している。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、組成物の重量に基づいて3重量%を構成している。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、リゾリン脂質、モノ及びジグリセリド、ポリソルベート、スパン、エトキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化アルコール、エトキシル化脂肪酸アミン、アルカナミン、硫酸アルキル、サポニン、アルコキシル化リン酸エステル、ブチルブロック共重合体、並びに、PEO及びPPOブロック共重合体からなる群より選択される。
【0024】
より好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、ポリソルベート20、3~5分子のエチレンオキシドによってエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物、及びオクチルアミンからなる群より選択される。
【0025】
好ましくは、組成物は、少なくとも1つの界面活性剤に加えて、消泡剤、酸化防止剤、並びに、脂質膜の流動性に影響を及ぼす生分解性、不揮発性及び不燃性の薬剤からなる群より選択される少なくとも1つの他の補助物質を含んでいる。
【0026】
好ましくは、溶媒は、組成物の20重量%~30重量%を構成している。
【0027】
好ましくは、溶媒は、n-ブチルピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテル、炭酸プロピレン、N、N-ジメチルラクトアミド、及び5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソ吉草酸メチルエステルからなる群より選択される。
【0028】
好ましくは、組成物は、8重量%の水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液を含んでいる。
【0029】
本発明はまた、本発明による組成物の製造方法にも関し、その方法においては、順番に:
a)前記脂質を生分解性有機溶媒に溶解し、混合して、混合物を得ることと、
b)混合を続けながら、工程a)から得られた混合物に少なくとも1つの界面活性剤を添加することと、
c)混合を続けながら、工程b)から得られた混合物に少なくとも1つの活性物質を添加することと、
d)任意選択的に、水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液を、工程c)から得られた混合物に添加することと;
e)工程d)で得られた混合物を混合して、プロリポソーム組成物を形成することと、
を含んでいる。
【0030】
本発明の利点
【0031】
発明者らが行った研究により、以下のことが示された。
・本発明によるプロリポソーム組成物(本発明による組成物)は、ストレス条件下で保存した後でも安定性を示す。
・本発明による組成物の水性分散液の調製後の安定性は、使用される水の種類に依存しない。軟水及び硬水の両方を使用しても分散液は安定している。
・本発明による組成物は、非常に高い活性物質のカプセル化効率を達成することができる。
・本発明による組成物は、活性物質の葉への高い浸透性能を得ることを可能とする。
・本発明による殺菌剤含有プロリポソーム組成物は、植物毒性症状を引き起こさない。
・本発明による殺菌剤含有プロリポソーム組成物は、参照製剤と比較して同等又はより優れた静菌効果を示す。
・本発明による殺菌剤含有プロリポソーム組成物は、植物種に関係なく、広範囲の病原体に対して有効である。
・本発明による殺菌剤含有プロリポソーム組成物は、作物収量(1000粒の質量、タンパク質又は油の含有率)のサイズ及び品質に影響を与えたり、増加させたりしない。
【0032】
In vitro研究により、本発明により得られたプロリポソーム組成物は、リポソーム組成物のすべての利点、即ち、毒性の低減、透過性の増大、活性物質の葉中での長期の滞留時間及びその放出の延長を有し、これらは、この物質の長期の作用時間に変換され、同時に、安定性及び貯蔵の問題などのリポソーム特有の欠点を有しないことが示されている。研究では、このような組成物の使用により、植物保護製品の古典的な組成物と比較して、期待される効果を維持しながら、1ha当たり使用される殺虫剤の用量を削減できることが示されている。実地研究に基づいて、特定の病原体の制御において、殺菌剤を含有するプロリポソーム組成物は、有効性を維持しながら、参照製品と比較して活性物質の用量を最大60%削減できることが示されている。プロリポソーム組成物を水と混合してリポソーム組成物を得た後、活性物質が98%もの高い効率でリポソームに封入されることが観察され、これは溶解度の増加によるものであり、これは、遊離物質との比較において生物学的利用能の増加に直接影響する。同時に、本発明の組成物は、遊離活性物質よりも有毒ではない。
【0033】
更なるin vivo研究は、本発明の組成物が、従来の製品、例えば、異なる組成の市販されている製品と比較して、より高い葉浸透を示すことを示している(表8及び9参照)。本発明によるプロリポソーム組成物の使用による、そして更にその組成物中の少なくとも1つの界面活性剤の使用による植物保護剤の葉への浸透の増加は、この植物保護剤の活性の増加に直接変換される。葉への物質の浸透が生物学的利用能に直接影響することに加えて、浸透の増加は、葉の表面にあるときの雨などの外部要因からの保護に影響を与える。
【0034】
本発明による組成物はまた、本発明によるプロリポソーム組成物の使用のおかげで、活性物質の放出時間の延長にも寄与する。これは、開発された製剤の殺菌及び除草活性に直接影響する。殺菌剤散布後の二次真菌感染の可能性があるため、これは重要である。更に、この延長された放出時間により、殺菌剤と真菌との接触時間が延長されるため、より低い製品濃度の使用が可能になる。
【0035】
上述の利点のおかげで、本解決策は、欧州委員会によって提示されたFarm2Fork戦略と組み合わせた新しい規制に従って、農業で使用される農薬の量を削減することを可能にする。植物保護剤の精巧な組成により、使用する活性物質の用量を減らし、PPA組成物の生物学的有効性を高めることができる。更に、生分解性溶媒及びリポソーム膜の主成分としてのレシチンの使用によって、本発明によるプロリポソームは、天然原料に基づく製品の理想的な担体となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の範囲を制限することなく、幾つかの実施形態が添付の図面に示されている。
【0037】
図1は、本発明の水和プロリポソーム組成物を極低温電子顕微鏡の画像で示している。
【0038】
図2は、様々な溶媒を使用して得られた抽出物中のジフェノコナゾールの含有量を示している。
【0039】
図3は、本発明によるジフェノコナゾール含有プロリポソームの分散液で処理された葉の外側及び内側のジフェノコナゾールのパーセント量を示している。
【0040】
図4Aは、葉への散布から23日後の様々な除草剤の効果を示している。
A)活性物質25g/haの用量の実施例5の組成による除草剤;
B)活性物質25g/haの用量の除草剤イマザモックス40SL;
C)除草剤イマザモックス40SL及び実施例5の組成に従って、活性物質25g/haの用量で使用;
D)除草剤イマザモックス40SL及び実施例5の組成に従って、活性物質36g/haの用量で使用。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の目的は、浸透作用性殺菌剤及び除草剤の群からの植物保護剤のための液体プロリポソーム組成物、及びそのような組成物の製造方法である。
【0042】
プロリポソームの組成
【0043】
本発明による液体プロリポソーム組成物は、その組成中に、以下を含んでいる:
・少なくとも1つの活性物質、
・少なくとも1つの脂質形成リポソーム、
・少なくとも1つの生分解性有機溶媒、
・少なくとも1つの界面活性剤を含む少なくとも1つの補助物質、及び、
・任意選択的に、水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液。
【0044】
このような組成物は、保存して使用部位に送達できる、安定で耐久性のある水混和性溶液を形成する。使用前、好ましくは使用直前に、組成物を水と混合し、水和(水希釈)後、疎水性活性物質が封入された1μm未満のサイズのリポソーム小胞が自発的に形成される。
【0045】
本発明による活性物質は、組成物中に、組成物の重量に基づいて、約1重量%~約50重量%、好ましくは約5重量%~約45重量%、40重量%又は35重量%、好ましくは約5重量%~約30重量%又は25重量%、好ましくは約5重量%~約20重量%、より好ましくは約5重量%~約10重量%の範囲の量で存在している。活性物質は、浸透作用のある任意の殺菌剤又は除草剤であり得る。本発明による活性物質を構成し得る殺菌剤の例:ジフェノコナゾール、プロチオコナゾール、メトコナゾール、ペンチオピラド、フェンプロピジン、ピラクロストロビン、トリフロキシストロビン、ペンコナゾール、及びブピリメート。一方、除草剤の例は、フェノキサプロップ-P-エチル、フロラスラム、ニコスルフロン、アミドスルフロン、ヨードスルフロン、ピルロラム、クロピラリド、ピノキサデン、プロパキザホップ、ベンフルラリン、プロスルホカルブ、ペトキサミド、クレトジム、ピコリナフェンである。好ましくは、活性物質は、ジフェノコナゾール、プロチオコナゾール、クロピラリド、又はイマザモックスである。組成物は、上述の活性物質の少なくとも1つ含んでいても良く、好ましくは2つ以上の活性物質を含んでいてもよい。
【0046】
リポソーム形成脂質は、組成物中に、組成物の重量に基づいて、約20重量%~約75重量%、好ましくは約20重量%~約45重量%、より好ましくは約25重量%~約40重量%の範囲の量で存在している。組成物の脂質含量は、好ましくは70重量%未満であり、好ましくは65重量%、より好ましくは60重量%、又は55重量%、又は50重量%未満であり、好ましくは25重量%より多く、好ましくは30重量%、35重量%、40重量%より多い。このような脂質は、5%~99.99%のホスファチジルコリン、好ましくは20%~99.9%のホスファチジルコリン、より好ましくは20%のホスファチジルコリンを含有する天然、半合成、及び合成脂質であってもよい。好ましくは、リポソーム形成脂質はリン脂質であり、より好ましくは植物レシチン又は動物レシチンを含むレシチンである。更により好ましくは、本発明で使用されるレシチンは、植物レシチンであり、より好ましくは大豆レシチンである。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は、レシチンと活性物質との比が、25:1~2:1、例えば20:1、15:1又は10:1であることを特徴とし、より好ましくはそれは6:1~2:1の範囲にある。
【0048】
本発明による少なくとも1つの溶媒は、組成物の重量に基づいて、組成物中に20重量%~75重量%、好ましくは約20重量%~約30重量%、好ましくは約20重量%~約25重量%の量で使用される。組成物の脂質含量は、好ましくは70重量%未満であり、好ましくは65重量%、より好ましくは60重量%、又は55重量%、又は50重量%未満であり、好ましくは25重量%より多く、好ましくは30重量%、35重量%、40重量%より多い。本発明に従って使用され得る溶媒は、任意の生分解性、水混和性、不燃性、保存条件(周囲温度)下で不揮発性の有機溶媒である。組成物中のそれらの量は、使用されるレシチン及び活性物質の量に比例し、両方の物質を溶解するのに十分な量でなければならない。好ましい溶媒としては、エーテル、グリコールエーテル、ラクタムが挙げられ、特に好ましいのは、n-ブチルピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテル、炭酸プロピレン、N、N-ジメチルラクタミド、5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソ吉草酸メチルエステルである。より好ましくは、溶媒は、エチレングリコールモノブチルエーテルである。本発明によれば、2つ以上の溶媒を含む溶媒系を使用することが可能である。
【0049】
本発明による補助物質は、組成物中に約0.1重量%~約35重量%で、好ましくは5重量%~30重量%で、より好ましくは10重量%~25重量%で、最も好ましくは15重量%で、好ましくは約20重量%~約30重量%で存在している。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物に含まれ得る補助物質は、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、又は脂質膜の流動性に影響を及ぼす薬剤を含む群から選択される。補助物質は、系の安定性を高め、脂質及び活性物質の両方の溶解度を改善するのに役立つ。好ましくは、組成物は、2つ以上の補助物質を含んでいる。例えば、グリセロールは、脂質膜の流動性に影響を与える物質として組成物中に含まれる。
【0051】
補助物質の1つは、組成物の重量に基づいて、組成物中に15%を超えない、好ましくは14%を超えない、さらにより好ましくは13%を超えない、例えば12%を超えない、特に好ましくは11%を超えない、特に10%を超えない、更により好ましくは9%を超えない、特に8%を超えない、更により好ましくは7%を超えない、特に6%を超えない、特に好ましくは0.1%~5重量%、更により好ましくは、約3重量%の量で含まれる少なくとも1つの界面活性剤である。界面活性剤は、分子が親油性部分と親水性部分とで構成されている化合物である。界面活性剤の親油性部分は、1つ又は複数の脂肪酸残基、炭化水素鎖の長さ及び飽和度が異なる脂肪族アルコール残基、又は脂質膜に対して高い親和性を有する他の疎水性残基、例えば芳香族化合物、並びに他の分岐状及び環状アルキル基を含んでいてもよい。界面活性剤の親水性部分には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシエチレン基、糖、炭水化物、ホスファチジルコリン又はホスファチジルエタノールアミン残基、及びそれらの誘導体が含まれる。組成物中の界面活性剤の存在により、脂質膜の流動性が増加し、これは葉を通る水和リポソームの浸透の増加につながる。更に、組成物中に界面活性剤が存在すると、水和リポソームへの活性物質のより効率的なカプセル化が可能になる。本発明に従って使用され得る界面活性剤には、特には、リゾリン脂質、モノ及びジグリセリド、ポリソルベート、スパン、エトキシル化脂肪アルコール、アルコキシル化アルコール、エトキシル化脂肪酸アミン、アルカナミン、硫酸アルキル、サポニン、アルコキシル化リン酸エステル、ブチルブロック共重合体、PEO及びPPOブロック共重合体が含まれる。好ましくは、本発明に従って使用される界面活性剤は、3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコール(ROKAnol DB5の名称で市販されている)及びオクチルアミンの混合物であるポリソルベート20である。本発明による組成物は、1種の界面活性剤を含んでいてもよく、好ましくは2種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。
【0052】
好ましくは、本発明の組成物は、0~約12重量%、より好ましくは5~10重量%、最も好ましくは約8重量%の水又は塩(好ましくは塩化ナトリウム)若しくは緩衝系の水溶液も含んでいる。少量の水、塩水溶液、又は緩衝系を添加すると、例えば天然レシチン不純物などの親水性及び両親媒性物質の溶解度が向上し、系の粘度が低下する。
【0053】
プロリポソーム組成物の調製プロセス
【0054】
本発明の組成物は、目標組成物を達成するために成分を混合することを伴う当該技術分野で公知の実質的に任意の方法によって調製することができるが、好ましくは、本発明の組成物は、以下のように調製される。
a)前記脂質を生分解性有機溶媒に溶解し、混合して、混合物を得る。
b)混合を続けながら、工程a)から得られた混合物に少なくとも1つの界面活性剤を添加する。c)混合を続けながら、工程b)から得られた混合物に少なくとも1つの活性物質を添加する。
d)任意選択的に、水又は塩若しくは緩衝物質の水溶液を、工程c)から得られた混合物に添加する。
e)工程d)で得られた混合物を混合して、プロリポソーム組成物を形成する。
【0055】
すべてのプロセス工程は、混合を提供する単一の装置又は容器内で実行されることが好ましい。上述の調製プロセスは追加の工程を必要としないため、製造時間及びコストが削減され、更に特殊な機器(例えば、ミル、ホモジナイザー、キャリブレータなど)の使用も必要とされない。
【0056】
好ましくは、本発明による方法は、上昇温度、好ましくは20℃~70℃の範囲で実施される。
【0057】
本発明によれば、上及び下で使用される「約」という用語は、記載の値からの±5%の偏差として理解されるべきであり、本発明による組成物の調製方法を実施する際に生じ得る、例えば成分の測定中に影響を与える不正確さを反映している。
【実施例】
【0058】
例1:本発明による組成物
【0059】
40gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、40gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、80gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、4gのポリソルベート20と、2gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、18gのジフェノコナゾールを連続的に加えた。最後に、16gの5%NaCl水溶液を添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0060】
例2:本発明による組成物
【0061】
28gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、26gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、26gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、2gのポリソルベート20と、1gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、18gのジフェノコナゾールを連続的に加えた。最後に、8gの5%NaCl水溶液を添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0062】
例3:本発明による組成物
【0063】
40gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、40gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、80gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、4gのポリソルベート20と、2gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、20gのプロチオコナゾールを連続的に加えた。最後に、16gの5%NaCl水溶液を添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0064】
例4:本発明による組成物
【0065】
42gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、42gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、84gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、4gのポリソルベート20と、2gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、10gのクロピラリドを連続的に加えた。最後に、16gの5%NaCl水溶液を添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0066】
例5:本発明による組成物
【0067】
50gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、50gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、100gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、5gのポリソルベート20と、1.25gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、7gのオクチルアミン及び16gのイマザモックスを連続的に添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0068】
例6:本発明による組成物
【0069】
43gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、43gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、86gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、4.4gのポリソルベート20と、2.2gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、22gのメトコナゾールを連続的に加えた。最後に、16gの5%NaCl水溶液を添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0070】
例7:本発明による組成物
【0071】
40gのエチレングリコールモノブチルエーテルと、40gのグリセロールとを、60℃で混合した。次に、79gの大豆レシチン(20%ホスファチジルコリン含有)を加え、溶解後、4gのポリソルベート20と、2gの3~5分子のエチレンオキシドでエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物(ROKAnol DB5)と、を加えた。60℃で撹拌を続けながら、20gのクロピラリドを連続的に加えた。最後に、16gの5%NaCl水溶液を添加した。混合後、組成物を構成する物質の粘稠な溶液が得られた。
【0072】
本明細書において、プロリポソームとは、無水であるか、又は、少量の水を含んだリポソーム前駆体を参照している。リポソームとは、プロリポソームから形成された水希釈分散体を指し、自発的に自己集合してリン脂質二重層で構成される小胞になり、内部の水空間を閉じる。以下の実施例において、水性分散体のパラメータまたは特性のみが言及されている場合には、リポソームが参照される。一方、プロリポソームとその水性分散体(リポソーム)の特徴、パラメータ、特性、有効性を要約する場合、我々は、一般的にプロリポソームと記載する。
【0073】
例8:実施例1~5の組成物の安定性に関する研究
【0074】
水で希釈してリポソームを得た後の本発明による組成物の安定性を研究した。
【0075】
表1:プロリポソーム及びその水分散液の分析結果
【表1】
【0076】
組成物は、軟質(CIPAC水A)及び硬質(CIPAC水D)の両方で、水で希釈した後も安定している。
【0077】
実施例1~5の組成物は、リポソーム形成についても観察された。極低温電子顕微鏡画像(
図1)は、プロリポソーム組成物の水和により自発的に形成されるリポソームの存在を示している。最大1μmのリポソームを観察することができる。この組成物により、追加のサイジング工程を必要とせずに、単層又は多層リポソームを得ることが可能になる。視野内に結晶/沈殿物がないことは、活性物質のカプセル化効率が高い(閉じ込められていない活性物質が存在しない)ことを証明している。
【0078】
例9:実施例6~7の組成物の安定性に関する研究
【0079】
水で希釈してリポソームを得た後の本発明による組成物の安定性を研究した。
【0080】
表2:プロリポソーム及びその水分散液の分析結果
【表2】
【0081】
組成物は、軟質(CIPAC水A)及び硬質(CIPAC水D)の両方で、様々な分散液濃度で、水で希釈した後も安定している。
【0082】
例10:実施例2及び実施例4の組成物の加速老化試験
【0083】
プロリポソーム組成物を、以下の加速老化試験に供した。
・0℃で7日間
・54℃で14日間
・40℃で56日間
【0084】
表3:老化試験後のジフェノコナゾールによるプロリポソームの分析の結果(実施例2)
【表3】
【0085】
表4:老化試験後のクロピラリドによるプロリポソームの分析の結果(実施例4)
【表4】
【0086】
この組成物は、ストレス条件下で保管しても安定である。
【0087】
例11:実施例1の組成物に対するジフェノコナゾールのカプセル化効率
【0088】
水和リポソームにおける活性物質の封入効率を測定するために、モレキュラーシーブを使用して、封入されていない活性物質をリポソームから分離した。ジフェノコナゾールのカプセル化効率は HPLC で測定し、リン脂質のカプセル化効率は分光測光法で測定した。活性物質のカプセル化効率は次の式に従って計算した。
【数1】
【0089】
ここで:
Ap:測定による活性物質の濃度[mg/mL];Fp:測定によるリン脂質の濃度[mg/mL];At:理論上の活性物質の濃度[mg/mL];Ft:理論上のリン脂質の濃度[mg/mL]。
【0090】
表5:結果-組成物の吸光度値、リン脂質及びジフェノコナゾール濃度、並びにカプセル化効率-実施例1
【表5】
【0091】
試験結果は、実施例1のプロリポソーム組成物の水和後のリポソームにおけるジフェノコナゾールの非常に高いカプセル化効率(98%)を示した。活性物質の高いカプセル化効率は、植物保護剤(PPA)の葉へのより良好な浸透につながり、従ってそのより効果的な作用をもたらす。
【0092】
例12:実施例1の組成物におけるジフェノコナゾール含有リポソームの葉への浸透の研究
【0093】
約5mLの緩衝液Aを、それぞれ6つの恒温フランツチャンバ(25℃)に導入した。次に、それぞれにリンゴの葉を入れた。実施例1のジフェノコナゾール含有リポソーム500μlを最初の3つのチャンバ内の葉に適用し、次の3つのチャンバでは市販の製剤Tores 250 ECの溶液を適用した。サンプル(200 μl)を各チャンバから 0、1、2、4、5、24 時間ごとに採取し、差分をバッファaで補充した。
【0094】
【0095】
【0096】
次に、活性成分を次の4段階で葉から抽出した。
・水(葉の表面の洗浄)
・エタノール(葉表面に吸着した活性物質の抽出)
・ヘキサン(キューティクル層に浸透した活性成分の抽出)
・メタノール(切り取った葉の深層からの活性成分の抽出)
【0097】
各段階において、試験管に入れた葉に、所定の溶媒5mLを加えた。内容物全体を60秒間振盪した。
【0098】
結果:
【0099】
表8:抽出後の各相におけるジフェノコナゾールの量
【表8】
【0100】
ここで:
・水+エタノール-葉の表面に残る活性物質の量
・ヘキサン+メタノール-葉の表面を通過した活性物質の量
【0101】
【0102】
表9:ジフェノコナゾールの葉の裏側までの浸透量
【表9】
【0103】
図3は、葉の外側及び内側のジフェノコナゾール含有率の測定結果を示している。
・水+エタノール-葉の表面に残った活性物質の量
・ヘキサン+メタノール-葉の表面を通過した活性物質の量
【0104】
ジフェノコナゾールの葉への浸透について得られた結果は、市場で入手可能な従来の形態のこの物質と比較して、リポソームに封入された活性物質のはるかに効率的な浸透を明らかに示している。このような結果は、本発明による組成物の浸透がより良好であることを示している可能性があり、したがって、これは、圃場条件下で使用される植物保護剤の濃度/用量の低減につながり得る。
【0105】
例13:実施例1の組成物のインビトロ静菌活性研究
【0106】
基質を毒する方法による、制御された条件(25℃)下でのPDA培地上での植物のさまざまな病原性真菌株に対する静真菌活性の研究。培地中の活性物質の濃度:200、20、5、2、1mg/l。
【0107】
【0108】
結果は、対照組み合わせ(溶媒(水)を含むPDA培地上で増殖する真菌コロニー)と比較した、製剤の作用下での所定の病原体種の線状菌糸体増殖の阻害%として表される。
【0109】
結果:実施例1のプロリポソーム組成物は、PDA培地上で試験した7つの病原性真菌株に対して、Tores 250 EC標準と同様の静真菌効果を示した。
【0110】
例15:実施例1の組成物のポット実験における、温室条件下での冬油糧種子ナタネに対する殺菌剤組成物の薬毒性の研究
【0111】
表12:冬油糧種子ナタネ(Gemini品種)に対する殺菌剤組成物の薬毒性
【表12】
【0112】
*スケール0~4; 0:症状なし
【0113】
結果:植物毒性を評価するために、各製剤に対して3用量を使用した:最低及び最高の推奨用量、並びに、うどんこ病に対する油糧種子菜種との併用に推奨されるジフェノコナゾールを含む他の市販薬のラベルからの用量を考慮して2倍にした。実施例1によるプロリポソームの用量は、活性物質含有量に基づいて計算された。処理から7日後、組合せNo.1及び4(両製剤の最高用量である活性物質300g/haは、冬の油糧種子菜種-0.5 L/haに対して推奨される2.4倍の1.2 L/haに相当する)について、菜種植物の成長のわずかな阻害が認められた(スコア0.5(0-4))。これは、処理後4週間でフレッシュ質量が3~4%だけわずかに減少したことを意味している。低用量ですべての対象に適用した後4週間の期間において、ナタネに対する製剤の植物毒性効果に関する他の目に見える症状はなかった。
【0114】
例16:冬ナタネにおけるSclerotinia sclerotiorumの防除における実施例1のプロリポソーム形態の殺菌剤の有効性の生物学的評価
【0115】
【0116】
対照=0
**DAA-適用後の日数
【0117】
表14:蔓延地域の植物の割合と、冬の油糧種子のナタネの新芽を Sclerotinia sclerotiorum(SCLESC)から保護する殺菌剤の有効性
【表14】
【0118】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0119】
表15:冬油糧菜種の収量
【0120】
【0121】
*穀粒収量は湿度9%で再計算した。
【0122】
表16:千個の種の質量
【0123】
【0124】
結論:
1.試験した殺菌剤の0.2N、0.5N及び1Nの用量での実施例1の組成に従ったもの及び比較剤Tores 250 ECの1Nの用量での冬油種ナタネ、Architect品種に対する植物毒性作用は認められなかった。
2.実施例1の組成に従った2つの高用量の試験殺菌剤及び比較剤Tores 250 ECは、冬油種子ナタネ植物におけるSclerotinia sclerotiorumの発生を有意に阻害した。
3.実施例1の組成による試験した殺菌剤の2つの高用量は、同じレベルでSclerotinia sclerotiorumの発生を阻害した。それらの作用の有効性は比較剤Tores 250 ECのそれよりも有意に高く、活性物質の用量は同時に半減した。
4.試験した殺菌剤の最低用量を用いた実験的組合せにおける真菌Sclerotinia sclerotiorumに寄生された冬の油種子ナタネ植物の面積は対照よりわずかに低かった。ただし、これらの違いは統計的に有意ではなかった。
5.得られた冬油種子ナタネ千粒の収量及び質量は、Sclerotinia sclerotiorumの防除レベルを反映していた。実施例1の組成に従って試験した殺菌剤の2つの高用量及び比較剤Tores 250 ECを用いて、収率の有意な増加が認められた。実施例1の組成に従って試験した殺菌剤の最高用量を適用した後に、千個の種子の最大質量が記録された。
【0125】
例17:除草剤Imazamox40SL及び実施例5による組成物の葉への適用から23日後の除草効果(雑草種:デフオーツ、グースグラス、ラムズクウォーターズ、アカザ、チャーロック、ナズナ、自家播種穀物:大麦、小麦))
【0126】
温室条件下での土壌基質でのポット実験(植生時の気温:18~28℃)
適切な葉のフェーズ 1~3にある、生後 18日の指標植物の葉に適用。
評価は適用後 7~21日に実施。
【0127】
表17:Imazamox40 SLと比較したプロリポソーム型除草剤の除草効果。適用から7日後に評価。
【表17】
【0128】
【0129】
【0130】
上記の効果は、
図4A~Eにも示されている。
・
図4Aは、活性物質25g/haの用量で葉に適用してから23日後のプロリポソーム形態の除草剤(実施例5)の効果を示している(左側が対照、右側が試験サンプル)。
・
図4Bは、活性物質25g/haの用量で葉に適用してから23日後のImazamox40SLの効果を示している(左側が対照、右側が試験サンプル)。
・
図4Cは、活性物質25g/haの用量で葉に適用してから23日後の除草剤Imazamox40SLおよび実施例5の組成物の効果を示す(左側がImazamox40SL、右側が実施例5の組成物)。
・
図4Dは、活性物質36g/haの用量で葉に適用してから23日後の除草剤Imazamox40SLおよび実施例5の組成物の効果を示す(左側がImazamox40SL、右側が実施例5の組成物)。
・
図4Eは、活性物質48g/haの用量で葉に適用してから23日後の除草剤Imazamox40SLおよび実施例5の組成物の効果を示す(左側がImazamox40SL、右側が実施例5の組成物)。
【0131】
結果:実施例5の除草剤組成の試験の予備的結果は、活性物質36g/haと25g/haの2つの低用量で、Imazamox40 SL標準と比較して、自己播種穀物に対する除草効果が弱いことを示している。適用7日後、両組成物の活性は全ての試験種で同様であったが、15日後に差が現れた。有効成分48g/haの最高用量では、両方の除草剤の作用に有意差は見つからなかった。
【0132】
表20:実施例5の除草剤組成物の耕作植物:大豆(品種:アルダナ、エリカ)に対する植物毒性製剤の用量(活性物質g/ha単位):36g(最小)、48g(最大)、96(2倍)。ポット実験、温室条件。
【表20】
【0133】
結果:両方の製剤を最高用量(推奨用量の 2倍)で施用してから 1週間後、両品種の大豆植物の葉にわずかに黄色がかった萎黄変色が現れ、これは施用後約15~16日間持続した。生育期に他の被害は見られなかった。
【0134】
表22:ナズナ(Capsella bursa-pastoris)に対する実施例5のプロリポソーム製剤の除草効果
【0135】
【0136】
結果:21日後の最高用量のimazamoxによるプロリポソームの除草効果は、Imazamox40 SL(それぞれ94及び100%)のそれに匹敵したが、参照製品については、そのような結果はより早く、14日後に得られた。活性物質の36及び25g/haの低用量では、プロリポソームの効果は標準より約27%弱かった。各濃度でのImazamox40 SLの最大除草効果は14日後に得られたが、プロリポソームの効果は適用後21日までの長い期間で徐々に増加した。
【0137】
表26:春大麦(自家播種)に対する組成物5による製剤の除草効力
【表26】
【0138】
結果:42日後のオオムギに対する最高用量のプロリポソームの除草効果は良好で、Imazamox40 SL(それぞれ96及び100%)のそれに匹敵した。より低い用量で試験した除草剤は、はるかに低い効力を示した。36g/haの用量でプロリポソーム及びImazamoxの有効性はそれぞれ55及び95%であり、25g/haの用量での有効性は30及び86%であった。
【0139】
例19:耕作植物-大豆に対する除草剤 SNS H01 19(実施例5)の植物毒性
【0140】
表31:耕作植物-大豆、ビオラ品種に対するプロリポソーム型除草剤の植物毒性。温室条件下でのポット実験。適用中の発達段階:開始-2輪生体。1つの組み合わせで5リピートx9植物=45植物。
【表31】
【0141】
*スケール0~9(0-薬害症状なし、9-植物破壊)
【0142】
結果:最高用量(倍量、活性物質96g/ha及び活性物質48g/ha)での両製剤の適用から5~7日後、Violaダイズ植物の葉にわずかに黄色がかったクロロチック変色が現れた。実施例5による組成物を噴霧した植物では、変色は約10~11日目に消失したが、Imazamox40を噴霧した植物では、適用後約15~16日まで変色が残り、その後消失した。残りの対象には、成長期に他の損傷は見つからなかった。Imazamox40 SL の影響下で、大豆植物の成長は 12日目(14%)から観察終了まで、適用後 23日目まで阻害された。これは約20%の質量の減少にも反映されている。
【0143】
表32:プロリポソーム型除草剤が耕作植物である大豆、ビオラ品種の成長と発育に及ぼす影響。温室条件下でのポット実験。適用中の発達段階:開始-2輪生体。1つの組み合わせで5リピートx9植物=45植物。
【表32】
【0144】
例20:冬コムギ、Zyta品種におけるうどんこ病(Blumeriagraminis(Erysiphegraminis))、褐色さび病(Puccinia recondita)、コムギ葉の縞状敗血症(Mycosphaerellagraminicola(anam.Zymoseptoria tritici))の制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の有効性の生物学的評価。
【0145】
【0146】
対照=0
** DAA-適用後の日数
【0147】
表34:冬小麦をうどんこ病から守るための葉表面侵入の平均割合と殺菌剤の有効性-Blumeriagraminis ERYSGR。
【表34】
【0148】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0149】
表35:葉の表面寄生の平均割合、及び、小麦葉の縞模様セプトリ症に対する冬小麦の保護における殺菌剤の有効性-Zymoseptoria tritici SEPTTR
【表35】
【0150】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0151】
表36:冬コムギを黒さび病から守る葉表面寄生の平均割合と殺菌剤の有効性-Puccinia recondita PUCCRE
【0152】
【0153】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0154】
表37:冬小麦の保存緑地(Preservedgreenarea)
【表37】
【0155】
表38:冬小麦のフレッシュ質量含有量、穀粒収量、千粒質量、タンパク質含有量
【表38】
【0156】
*穀粒収量は湿度15%で再計算した。
【0157】
結果:
BBCH32-33耕地植物の発達段階で行われた最初の適用の間に、コムギ葉の縞状敗血症の原因である真菌Zymoseptoria triticiによる寄生の症状が、Zyta品種の冬コムギの下葉で10%の葉寄生面積レベルで観察された。一方、うどんこ病の原因であるBlumeriagraminisの寄生率は3%であった。
【0158】
最初の適用の3週間後に、2回目の処理を耕作可能植物の開発段階BBCH45で実施した。L-4葉にはZymoseptoria triticiとBlumeriagraminisが寄生していた。小対照区(以下、対照ともいう)における寄生率は、それぞれ平均7.38%及び5.5%であった。試験した殺菌剤の最初の適用3週間後の有効性は、うどんこ病の場合には77~100%であったが、コムギ葉の縞状敗血症の場合には8~52%のレベルであった(表34、表35)。
【0159】
2回目の散布から約3週間後、小対照区ではL-3葉で約15%、L-2葉で約5%の強度で、上葉に縞状の敗血症が観察された。テストされた殺菌剤の有効性は以下の通りであった:L-3葉では 45~60%、L-2葉では62~100%。比較薬剤は、L-3葉で56%、L-2葉で73%病気の発生を阻害した(表35)。
【0160】
冬コムギ、Zyta品種の発育段階BBCH75~77で行った評価では、L-2サブフラッグ葉及びL-1フラッグ葉の縞状敗血症及び褐色さび病の発生が、Zymoseptoria triticiではそれぞれ35.31%及び13%、Puccinia reconditaでは5%及び8.63%のレベルで観察された。実施例1の試験した組成物の有効性は、小麦葉の縞状敗血症に対して25~59%、褐色さび病に対して64~100%の範囲であった。一方、比較剤のDaphne 250 ECはL-2葉では40%、L-1葉では51%葉の縞状敗血症の発生を阻害したが、褐色さび病の発生はL-2葉及びL-1葉の両方で100%阻害した(表35、表36)。
【0161】
植物の発育段階BBCH75では、サブフラッグL-2及びフラッグL-1の葉の緑面積は、対照と比較して試験したすべての組み合わせで高かった(表37)。
【0162】
穀物の収量、千粒の質量、及びタンパク質含有率は、試験したすべての実験組み合わせで同レベルであった(表38)。
【0163】
結論:
1.実施した実験では、Zyta品種の冬コムギに対して、種々の用量のプロリポソーム型殺菌剤及び標準剤Dafne 250 ECの植物毒性作用の症状は見られなかった。
2.0.8N及び1Nの用量で試験したプロリポソームは、比較剤Dafne250 EC(1N)のレベルで、L-4葉上のBlumeriagraminisの発生を減少させる100%の有効性を示した。
3.Zymoseptoria triticiに適用した0.8N及び1Nの用量の調査したプロリポゾーム型殺菌剤は、比較剤Dafne250 ECよりも優れた性能を示した。
4.0.6N、0.8N及び1Nの用量で試験したプロリポソームは、比較剤Dafne250 EC(1N)のレベルで、L-2葉上のPuccinia reconditaの発生を減少させる100%の有効性を示した。
5.対照と比較して、試験した全用量のプロリポソーム剤及び比較剤ダフネ250 ECの適用後に、緑色葉面積(GLA)の増加が観察された。
6.プロリポソーム及びDafne250 ECの使用は、使用した用量に関係なく、冬コムギZyta品種の収量のサイズ及び品質(1000粒の質量、タンパク質の含有率)に影響しなかった。
【0164】
例21:冬コムギ、Arkadia品種におけるうどんこ病(Blumeriagraminis(Erysiphegraminis))、コムギ葉の縞状敗血症(Mycosphaerellagraminicola(anam.Zymoseptoria tritici))の制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の有効性の生物学的評価。
【0165】
【0166】
対照=0
** DAA-適用後の日数
【0167】
表40:ウドンコ病(Blumeriagraminis ERYSGR)に対する冬コムギの保護における葉表面寄生の平均割合及び殺菌剤の有効性
【0168】
【0169】
「* アボットの公式を使用して計算された有効性」
** DAA-適用後の日数
【0170】
表41:葉の表面寄生の平均割合、及び、小麦葉の縞模様セプトリ症に対する冬小麦の保護における殺菌剤の有効性-Zymoseptoria tritici SEPTTR
【0171】
【0172】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0173】
表42:冬小麦の保存緑地
【0174】
【0175】
** DAA-適用後の日数
【0176】
表43:冬小麦のフレッシュ質量含有量、穀粒収量、千粒の質量、タンパク質含有量。
【表43】
【0177】
*穀粒収量は湿度15%で再計算した。
【0178】
結果:
BBCH32-33耕地植物の発達段階で行われた最初の適用の間に、コムギ葉の縞状敗血症の原因である真菌Zymoseptoria triticiによる寄生の症状が、Arkadia品種の冬コムギの下葉で15%の葉寄生面積レベルで観察された。一方、うどんこ病の原因となるBlumeriagraminisによる侵入は4%の水準であった。
【0179】
最初の適用の3週間後に、耕作可能植物の発達段階BBCH49-53で2回目の処理を行った。L-4葉の小対照区でのZymoseptoria triticiの寄生率は6.38%程度であり、L-4葉の小対照区でのBlumeriagraminisの寄生率は7.81%程度であった。試験した殺菌剤の最初の適用3週間後の有効性は、うどんこ病の場合にはL-4上で56~94%程度であったが、コムギ葉の縞状敗血症の場合には10~57%のレベルであった(表40、表41)。
【0180】
2回目の散布から約2週間後、小規模対照圃場のL-2では、上部の葉にうどんこ病が約5%の強度で観察された。試験した殺菌剤の有効性は、使用した用量に応じて、L-2葉では54~100%であった。比較薬剤は、L-2葉の病気を 100%抑制した。一方、小さな対照圃場では、葉の縞模様の剥離が、L-2葉で約21%、L-1葉で約5%の強度で発生した。試験した殺菌剤の有効性は、使用した用量に応じて、L-2葉では 36~57%であったのに対し、L-1葉では 40~62%であった。比較薬剤は、L-2葉で32%、L-1葉で50%病気の発生を阻害した(表40、表41)。
【0181】
冬コムギ、Arkadia品種の発達段階BBCH75-77で行った評価では、L-1旗葉における葉の縞状敗血症の発生率は21.38%であった。実施例1の試験組成物の有効性は、L-1に対して49~68%の範囲であった(表41)。
【0182】
植物の発育段階BBCH75-77では、L-1フラッグ葉の緑面積は、対照と比較して試験したすべての組み合わせで高かった(表42)。
【0183】
結論:
1.実施した実験では、Arkadia品種の冬コムギに対して、種々の用量のプロリポソーム型殺菌剤及び標準剤Dafne 250 ECの植物毒性効果は見られなかった。
2.プロリポソーム製剤のBlumeriagraminisに対する有効性は1N用量で標準剤に匹敵した。
3.試験したプロリポソームを0.8N及び1Nの用量で2回適用すると、標準剤Dafne250ECのレベルでZymoseptoria triticiの発生が減少した。
4.対照と比較して、試験した全用量のプロリポソーム剤及び比較剤ダフネ250 ECの適用後に、緑色葉面積(GLA)の有意な増加が観察された。
5.プロリポソームで処理した小圃場では、使用した用量に関係なく、小対照圃場と比較して、収量の平均有意な増加と1000種子質量の増加が観察された。
【0184】
例22:冬コムギ、Tobak品種におけるうどんこ病(Blumeriagraminis(Erysiphegraminis))、褐色さび病(Puccinia recondita)、黄葉斑点(Pyrenophora tritici-repentis)、コムギ葉の縞状敗血症(Mycosphaerellagraminicola(anam.Zymoseptoria tritici))の制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の効率の生物学的評価。
【0185】
【0186】
対照=0
* DAA-適用後の日数
【0187】
表45:ウドンコ病(Blumeriagraminis ERYSGR)に対する冬コムギの保護における葉表面寄生の平均割合及び殺菌剤の有効性。
【0188】
【表45】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0189】
表46a:葉の表面寄生の平均割合、及び、小麦葉の縞模様セプトリ症に対する冬小麦の保護における殺菌剤の有効性-Zymoseptoria tritici SEPTTR
【表46a】
【0190】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0191】
表46b:葉の表面寄生の平均割合、及び、小麦葉の縞模様セプトリ症に対する冬小麦の保護における殺菌剤の有効性-Zymoseptoria tritici SEPTTR
【表46b】
【0192】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0193】
表47:冬コムギを黒さび病から守る葉表面寄生の平均割合と殺菌剤の有効性-Puccinia recondita PUCCRE
【表47】
【0194】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0195】
表48:冬小麦の葉斑病に対する葉表面侵入の平均割合と殺菌剤の有効性-Pyrenophora tritici-repentis PYRNTR
【表48】
【0196】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0197】
【0198】
** DAA-適用後の日数
【0199】
表50:冬小麦のフレッシュ質量含有量、穀粒収量、千粒の質量、タンパク質含有量。
【表50】
【0200】
*穀粒収量は湿度15%で再計算した。
【0201】
結果:
BBCH32-33耕地植物の発達段階で行われた最初の適用の間に、コムギ葉の縞状敗血症の原因である真菌Zymoseptoria triticiによる寄生の症状が、Tobak品種の冬コムギの下葉で3%の葉寄生面積レベルで観察された。一方、うどんこ病の原因となるBlumeriagraminisによる侵入は2%の水準であった。
【0202】
最初の適用の3週間後に、2回目の処理を耕作可能植物の発育段階BBCH45~47で実施した。そのとき、植物は小対照区でZymoseptoria triticiによってL-4葉の8.44%のオーダーで寄生され、小対照区の植物はBlumeriagraminisによってL-4葉の14%及びL-3葉の5.13%のオーダーで寄生された。試験した殺菌剤の最初の適用3週間後の有効性は、うどんこ病の場合にはL-4上で57~89%程度、L-4上で85-93%であったが、コムギ葉の縞状敗血症の場合には7~28%のレベルであった(表45、表46a)。
【0203】
2回目の散布から約2週間後、小対照区ではL-3葉で約22%、L-2葉で約7%のうどんこ病が上葉に発生した。試験した殺菌剤の有効性は、使用した用量に応じて、L-3葉では47~79%であったのに対し、L-2葉では 62~88%であった。比較薬剤は、病気を L-3葉では65%、L-2葉では78%抑制した。一方、小さな対照圃場では、葉の縞模様の剥離が、L-2葉で約13%、L-1葉で約7%の強度で発生した。試験した殺菌剤の有効性は、使用した用量に応じて、L-3葉では26~46%であったのに対し、L-2葉では 15~61%であった。比較薬剤は、L-3葉で39%、L-2葉で50%病気の発生を阻害した(表45、表46a)。
【0204】
冬コムギ、Tobak品種の育成期BBCH75~77で行った評価では、葉の縞状敗血症、褐色さび病、黄斑病などの発生が見られた。L-2サブフラッグ葉及びL-1フラッグ葉に、それぞれ29.69%及び9.19%のレベルで縞状敗血症が生じた。試験したプロリポソーム剤の有効性は、L-2では23~50%、L-1では51~70%の範囲であった(表46b)。小対照区では、Puccinia recondita及びPyrenophora tritici-repentisがそれぞれ10%及び9%のレベルで旗葉に出現した。試験したプロリポソーム型の殺菌剤の有効性は、使用した用量に応じて、茶さび病に対して 53~82%、黄葉斑病に対して 26~54%であった。一方、比較剤Dafne250ECは、茶さび病の発生を79%抑制し、黄葉斑病の発生を33%抑制した(表47、表48)。
【0205】
植物の発育段階BBCH75では、サブフラッグL-2及びフラッグL-1の葉の緑面積は、対照と比較して試験したすべての組み合わせで大きかった(表49)。
【0206】
穀物の収量、千粒の質量、及びタンパク質含有率は、試験したすべての実験組み合わせで同レベルであった(表50)。
【0207】
結論:
1.実施した実験では、Tobak品種の冬コムギに対して、種々の用量のプロリポソーム型殺菌剤及び標準剤Dafne 250 ECの植物毒性作用の症状は見られなかった。
2.Blumeriagraminis に適用した0.8N及び1Nの用量の試験したプロリポゾーム型殺菌剤は、比較剤Dafne250 ECよりも優れた性能を示した。
3.試験したプロリポソームを1Nの用量で2回適用すると、標準剤Dafne250ECよりもZymoseptoria triticiの発生が減少した。
4.1Nの用量で試験したプロリポソームは、比較剤レベルで、Puccinia reconditaの発生を阻害した。
5.Pyrenophora tritici-repentisに適用した0.8N及び1Nの用量の調査したプロリポゾーム型殺菌剤は、比較剤Daphne250 ECよりも優れた性能を示した。
6.プロリポソーム及びDafne250 ECの使用は、平均して、冬コムギZyta品種の収量のサイズ及び品質(1000粒の質量、タンパク質の含有率)に影響しなかった。
【0208】
例23:冬コムギ、Opoka品種におけるうどんこ病(Blumeriagraminis(Erysiphegraminis))、コムギ葉の縞状敗血症(Mycosphaerellagraminicola(anam.Zymoseptoria tritici))の制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の有効性の生物学的評価。
【0209】
【0210】
対照=0
*DAA-適用後の日数
【0211】
表52a:葉の表面寄生の平均割合、及び、小麦葉の縞模様セプトリ症に対する冬小麦の保護における殺菌剤の有効性-Zymoseptoria tritici SEPTTR
【表52a】
【0212】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0213】
表52b:葉の表面寄生の平均割合、及び、小麦葉の縞模様セプトリ症に対する冬小麦の保護における殺菌剤の有効性-Zymoseptoria tritici SEPTTR
【表52b】
【0214】
*アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0215】
【0216】
** DAA-適用後の日数
【0217】
表54:冬小麦のフレッシュ質量含有量、穀粒収量、千粒の質量、タンパク質含有量。
【表54】
【0218】
*穀粒収量は湿度15%で再計算した。
【0219】
結果:
栽培植物BBCH32-33の発育段階で行われた最初の適用の間に、コムギ葉の縞状敗血症を引き起こすZymoseptoria tritici寄生の症状が、2%の葉の寄生面積レベルで、Opoka品種の冬コムギの下葉に観察された。
【0220】
最初の処理の3週間後に、2回目の処理を耕地植物の発育段階BBCH45で行った。その時点で、小規模対照圃場における L-4葉上のZymoseptoria triticiによる植物の平均侵入率は約8%であった。試験した殺菌剤の最初の適用から3週間後の有効性は、コムギ葉の縞状敗血症の場合には17~28%のレベルであった(表52a)。
【0221】
2回目の散布から約2週間後、小対照区ではL-3葉で約14%、L-2で約8%の強度で、上葉に縞状の敗血症が観察された。試験した殺菌剤の有効性は、L-3葉では33~57%であったのに対し、L-2葉では58~86%であった。比較薬剤は、L-3葉で55%、L-2葉で88%病気の発生を阻害した(表52a)。
【0222】
冬コムギ、Opoka種の発育段階BBCH75で行った評価では、L-2サブフラッグ葉及びL-1フラッグ葉における葉の縞状敗血症の発生が、それぞれ25.63%及び9.88%のレベルで観察された。試験されたプロリポソーム剤の小麦葉の縞状敗血症に対する有効性は 、40~74%の範囲であった。比較薬剤は、L-2葉で55%、L-1葉で59%病気の発生を阻害した(表52b)。
【0223】
植物の発育段階BBCH75では、サブフラッグL-2及びフラッグL-1の葉の緑面積は、対照と比較して試験したすべての組み合わせで高かった(表53)。
【0224】
結論:
1.実施した実験では、Opoka品種の冬コムギに対して、種々の用量のプロリポソーム型殺菌剤及び標準剤Dafne 250 ECの植物毒性効果は見られなかった。
2.試験したプロリポソーム形態の殺菌剤を1Nの用量で2回適用すると、標準剤Dafne250ECよりもZymoseptoria triticiの発生が減少した。
3.対照と比較して、試験した全用量のプロリポソーム剤及び比較剤ダフネ250 ECの適用後に、緑色葉面積(GLA)の増加が観察された。
4.プロリポソームで処理した小圃場では、使用した用量に関係なく、小対照圃場と比較して、収量の増加と1000種子質量の増加が観察された。
【0225】
例24:冬の油糧菜種、Architect品種におけるブラックレッグ(Leptosphaeria maculans)の制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の作用の有効性の生物学的評価。
【0226】
【0227】
表56:ブラックレッグ-Leptosphaeria maculans LEPTMAに対する冬の油糧種子の保護における表面寄生率及び殺菌剤効果の平均割合
【0228】
【0229】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0230】
表57:穀物の収量、種子1000個の質量、及び油含有量。
【表57】
【0231】
*穀粒収量は湿度9%で再計算した。
【0232】
結果:
BBCH85相で評価したLeptosphaeria maculansによる冬油種ナタネ、Architect種の寄生は平均レベルであり、小対照区では27%に達した。病原体による侵入は、試験した殺菌剤の有効性を評価するのに十分なレベルであった。
【0233】
結論:
1.試験したプロリポソーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250 ECの用量1Nのいずれにおいても、冬油種ナタネ、Architect品種に対する植物毒性効果は認められなかった。
2.プロリポゾーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250 ECは、使用した用量に関係なく、冬油種子ナタネ植物のブラックレッグの発生を有意に阻害した。適用用量の増加に伴うプロリポソームの有効性の増加が観察された。
3.Leptosphaeria maculansに適用した1Nの用量の調査したプロリポゾーム型殺菌剤は、比較剤Dafne250 ECよりも優れた性能を示した。
4.プロリポソームで処理した小圃場では、使用した用量に関係なく、小対照圃場と比較して、収量の有意な増加と1000種子質量の中程度の増加が観察された。
【0234】
例25:冬の油糧菜種、Architect品種におけるSclerotinia sclerotiorumの制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の作用の有効性の生物学的評価。
【0235】
【0236】
対照=0
** DAA-適用後の日数
【0237】
表59:Sclerotinia sclerotiorum(SCLESC)に対する冬の油糧種子の保護における表面寄生率及び殺菌剤効果の平均割合。
【表59】
【0238】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0239】
表60:穀物の収量、種子1000個の質量、及び油含有量。
【表60】
【0240】
*穀粒収量は湿度9%で再計算した。
【0241】
結果:
Sclerotinia sclerotiorumによる感染の最初の症状は、BBCH75期に観察された。BBCH85相で評価したSclerotinia sclerotiorumによる冬油種ナタネ、Architect種の寄生は中程度であり、小対照区では28%に達した。病原体による侵入は、試験した殺菌剤の有効性を評価するのに十分なレベルであった。
【0242】
結論:
1.試験したプロリポソーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250 ECの用量1Nのいずれにおいても、冬油種ナタネ、Architect品種に対する植物毒性効果は観察されなかった。
2.プロリポゾーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250 ECは、使用した用量に関係なく、冬油種子ナタネ植物のSclerotinia sclerotiorumの発生を有意に阻害した。適用用量の増加に伴うプロリポソームの有効性の増加が観察された。
3.Sclerotinia sclerotiorumに0.8N及び1Nの用量で使用された調査対象のプロリポゾーム型殺菌剤は、比較剤Dafne250 ECよりも優れた性能を示した。得られた結果は、1Nの用量での比較薬剤Dafne250ECに匹敵する、0.5Nの用量でのプロリポソーム組成物の有効性を維持する2倍の用量減少の可能性を実証している。
4.プロリポソームで処理した小圃場では、使用した用量に関係なく、小対照圃場と比較して、収量の増加と1000種子質量の増加が観察された。
【0243】
例26:冬の油糧菜種、Visby品種におけるSclerotinia sclerotiorumの制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の作用効率の生物学的評価。
【0244】
【0245】
対照=0
** DAA-適用後の日数
【0246】
表62:Sclerotinia sclerotiorum(SCLESC)に対する冬の油糧種子の保護における表面寄生率及び殺菌剤効果の平均割合。
【表62】
【0247】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0248】
表63:穀物の収量、種子1000個の質量、及び油含有量。
【表63】
*穀粒収量は湿度9%で再計算した。
【0249】
結果:
Sclerotinia sclerotiorumによる感染の最初の症状は、BBCH75期に観察された。BBCH85相で評価した冬油種ナタネ、Visby種の寄生は中程度であり、小対照区では28%に達した。病原体による侵入は、試験した殺菌剤の有効性を評価するのに十分なレベルであった。
【0250】
結論:
1.試験したプロリポソーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250 ECの用量1Nのいずれにおいても、冬油種ナタネ、Visby品種に対する植物毒性効果は認められなかった。
2.プロリポゾーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250 ECは、使用した用量に関係なく、冬油種子ナタネ植物のSclerotinia sclerotiorumの発生を有意に阻害した。適用用量の増加に伴うプロリポソームの有効性の増加が観察された。
3.Sclerotinia sclerotiorumに使用された調査対象のプロリポゾーム型殺菌剤は、全ての試験された用量において、比較剤Dafne250 ECよりも優れた性能を示した。得られた結果は、プロリポソーム組成物において、比較薬剤Dafne250 EC と同じ有効性を維持しながら、用量を 60%削減できる可能性を示している。
4.プロリポソームで処理した小圃場では、使用した用量に関係なく、小対照圃場と比較して、収量の増加と1000種子質量の増加が観察された。
【0251】
例27:冬の油糧菜種、Alibaba品種におけるSclerotinia sclerotiorumの制御におけるジフェノコナゾール含有プロリポソーム(実施例1)の作用の有効性の生物学的評価。
【0252】
【0253】
対照=0
** DAA-適用後の日数
【0254】
表65:Sclerotinia sclerotiorum(SCLESC)に対する冬の油糧種子の保護における表面寄生率及び殺菌剤効果の平均割合。
【表65】
【0255】
* アボットの公式を使用して計算された有効性
** DAA-適用後の日数
【0256】
表66:穀物の収量、種子1000個の質量、及び油含有量。
【表66】
【0257】
*穀粒収量は湿度9%で再計算した。
【0258】
結果:
Sclerotinia sclerotiorumによる感染の最初の症状は、BBCH75期に観察された。BBCH85相で評価したSclerotinia sclerotiorumによる冬油種ナタネ、Alibaba種の寄生は中程度であり、小対照区では29%に達した。病原体による侵入は、試験した殺菌剤の有効性を評価するのに十分なレベルであった。
【0259】
結論:
1.試験したプロリポソーム型殺菌剤及び比較剤Dafne250ECの用量1Nのいずれにおいても、冬油種ナタネ、Alibaba品種に対する植物毒性効果は認められなかった。
2.調査したプロリポゾーム及び比較剤Dafne250 ECは、使用した用量に関係なく、冬油種子ナタネ植物のSclerotinia sclerotiorumの発生を有意に阻害した。適用用量の増加に伴うプロリポソームの有効性の増加が観察された。
3.Sclerotinia sclerotiorumに0.5N、0.8N及び1Nの用量で使用された調査対象のプロリポゾーム型殺菌剤は、比較剤Dafne250ECよりも優れた性能を示した。得られた結果は、プロリポソーム組成物において、比較薬剤Dafne250ECと比較して、同等の有効性を維持しながら、2倍の用量減少の可能性を実証している。
4.プロリポソーム及びDafne250ECの使用は、平均して、冬油種子ナタネ、Alibaba品種の収量のサイズ及び品質(1000粒の質量、油含有率)に影響しなかった。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物保護剤の液体プロリポソーム組成物であって、
少なくとも1つの植物保護剤と、少なくとも1つのリン脂質と、少なくとも1つの有機溶媒とを含み、
少なくとも1つの植物保護剤が1重量%~50重量%
の範囲で存在しており、
少なくとも1つのリン脂質はレシチンであり且つ20重量%~75重量%
の範囲で存在しており、
少なくとも1つの有機溶媒は、エーテル、グリコールエーテル、n-ブチルピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテル、炭酸プロピレン、N、N-ジメチルラクタミド、及び5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソ吉草酸メチルエステルからなる群より選択され且つ20重量%~75重量%
の範囲で存在しており、
前記組成物は、
0.1重量%~35重量%の少なくとも1つの
農業化学的に許容される補助物質
であって、ポリソルベート20、3~5分子のエチレンオキシドによってエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物、及びオクチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの界面活性剤を15重量%未満の量で含んでいる、補助物質と、
0~12重量%の水又は
農業化学的に許容される塩若しくは緩衝物質の水溶液と、
を
更に含有している、組成物。
【請求項2】
前記
少なくとも1つの植物保護剤が除草剤又は殺菌剤であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの
植物保護剤が前記組成物の5重量%~20重量%を構成していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記
少なくとも1つのリン脂質と前記
少なくとも1つの植物保護剤との比が25:1~2:1であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記
少なくとも1つのリン脂質が5%~99.99%のホスファチジルコリンを含んでいることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記
少なくとも1つのリン脂質が前記組成物の20重量%~45重量%を構成していることを特徴とする、請求項
5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの界面活性剤が、前記組成物の重量に基づいて3重量%を構成していることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの界面活性剤に加えて、消泡剤、酸化防止剤、並びに、脂質膜の流動性に影響を及ぼす生分解性、不揮発性及び不燃性の薬剤からなる群より選択される少なくとも1つの他の補助物質を含んでいることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記
少なくとも1つの有機溶媒が前記組成物の20重量%~30重量%を構成していることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項10】
5~10重量%の水又は
農業化学的に許容される塩若しくは緩衝物質の水溶液を含んでいることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1
又は2に記載の組成物を調製するための方法であって、この順に、
a)
請求項1又は2に記載の最終組成物の20重量%~75重量%の量の少なくとも1つの有機溶媒に、
20重量%~75重量%の少なくとも1つのリン脂質を溶解し、混合して、混合物を得ることと、
b)混合を続けながら、工程a)から得られた混合物に
、ポリソルベート20、3~5分子のエチレンオキシドによってエトキシル化された長鎖(C12~15)脂肪族アルコールの混合物、及びオクチルアミンからなる群より選択される少なくとも1つの界面活性剤を
、請求項1又は2に記載の最終組成物の15重量%未満の量で添加することと、
c)混合を続けながら、工程b)から得られた混合物に、
請求項1又は2に記載の最終組成物の1重量%~50重量%の量で、少なくとも1つの
植物保護剤を添加することと、
d)任意選択的に、水又は
農業化学的に許容される塩若しくは緩衝物質の水溶液を、
請求項1又は2に記載の最終組成物の0重量%~12重量%の量で、工程c)から得られた混合物に添加することと;
e)任意選択的に、少なくとも1つの農業化学的に許容される補助物質を、工程b)で添加された前記界面活性剤を含めて請求項1又は2に記載の最終組成物の0.1重量%~35重量%を構成するような量で、工程c)又はd)から得られた混合物に添加することと;
f)工程
e)で得られた混合物を混合して、
請求項1又は2に記載の最終的なプロリポソーム組成物を形成することと、
を含んでいる、方法。
【国際調査報告】