(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 69/26 20060101AFI20240705BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20240705BHJP
C09J 177/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
C09J177/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503646
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 FR2022051439
(87)【国際公開番号】W WO2023002122
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハブラント, エロイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャルニア, ステファン
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DA02
4J001DB02
4J001DC05
4J001DC13
4J001EB09
4J001EB71
4J001EC08
4J001EC13
4J001EC15
4J001EC16
4J001EC28
4J001EC29
4J001EC83
4J001EE28C
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4J001FA01
4J001FB05
4J001FB06
4J001FB07
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4J001FC07
4J001FD03
4J001GA12
4J001JA08
4J001JA18
4J001JB02
4J001JB06
4J001JB07
4J001JB21
4J002CL031
4J002GJ01
4J002GQ00
4J040EG001
4J040JA06
4J040JB01
4J040LA06
4J040LA08
4J040NA19
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド組成物であって、ポリアミドは酸成分とアミン成分との重縮合反応生成物であり、
酸成分は、酸成分1モル当たり
-30~50モル%の脂肪酸ダイマー;
-30~50モル%の脂肪族二酸;
-0~10モル%の連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分は、アミン成分1モル当たり
-10~40モル%の脂環式ジアミン;および
-50~80モル%の、3~12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン;
-0~15モル%のポリエーテルアミン;
を含み、
前記ポリアミド組成物は、
-185℃で4Pa・s以下の粘度;および
-150℃~170℃の軟化点、
を有する、ポリアミド組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分とアミン成分との重縮合生成物であるポリアミドを含むポリアミド組成物であって、
酸成分は、酸成分1モル当たり
-30~50mol%の脂肪酸ダイマー;
-30~50mol%の脂肪族二酸;
-0~10mol%の連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分は、アミン成分1モル当たり
-10~40mol%の脂環式ジアミン;および
-50~80mol%の、3~12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン;
-0~15mol%のポリエーテルアミン;
を含み、
前記ポリアミド組成物は、
-185℃で4Pa・s以下の粘度;および
-150℃~170℃の範囲の軟化点、
を有する、ポリアミド組成物。
【請求項2】
0.5~4Pa・s、好ましくは1~4Pa・s、なおより好ましくは2~3.5Pa・sの範囲の185℃における粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
150℃~165℃、好ましくは155℃~165℃の範囲の軟化点を有することを特徴とする、請求項1および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
脂肪酸ダイマーが、好ましくは10~22個の炭素原子(C
10~C
22)を含む不飽和モノカルボン酸から選択される不飽和モノカルボン酸のカップリングの反応生成物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
脂肪族二酸が、飽和脂肪族ジカルボン酸、好ましくは飽和、直鎖状または分岐状の脂肪族ジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
セバシン酸(C
10)またはドデカン二酸(C
12)が、脂肪族ジカルボン酸の少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも80mol%を占めることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
連鎖制限剤が、少なくとも1つのヘテロ原子(O、S、Cl、F)を含むことができるモノカルボン酸、または対応するエステル、またはモノイソシアネートから選択され、連鎖制限剤が好ましくは脂肪族モノカルボン酸であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
脂肪族ジアミンが、3~12個の炭素原子を含む飽和、直鎖状または分岐状の脂肪族ジアミンから選択され、
-分岐状の脂肪族ジアミンは、好ましくは、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、メチルペンタンジアミン、およびトリメチルヘキサメチレンジアミンから選択される;
-脂肪族ジアミンは、好ましくは、nが3~12の範囲である、式H
2N-(CH
2)
n-NH
2の飽和直鎖状脂肪族ジアミンから選択される
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
脂肪族ジアミンがヘキサンジアミンであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
脂環式ジアミンが、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ジメチルピペラジン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、1,4-シクロヘキサンジアミン、炭素骨格(例えば、ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン)を有する脂環式ジアミン、およびそれらの混合物、から選択され、好ましくは脂環式ジアミンがピペラジンであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
アミン成分が、エチレンジアミン(EDA)を含まないことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
アミン成分が、アミン成分1モル当たり、2~15mol%、好ましくは5~15mol%、なおより好ましくは5~12mol%のポリエーテルアミンを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ポリアミドが、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であり、
酸成分は、酸成分1モル当たり
-42~49mol%の脂肪酸ダイマー;
-39~50mol%の脂肪族二酸;
-3~10mol%の連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分は、アミン成分1モル当たり
-25~40mol%の脂環式ジアミン;および
-55~75mol%の、3~12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン;
-5~15mol%のポリエーテルアミン;
を含み、
-COOH/(-NHおよび/または-NH
2)モル比は、好ましくは0.98~1.20、なおより好ましくは1.00~1.15の範囲であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に定義されるポリアミドを、前記ポリアミド組成物の全重量に対して、90重量%を超え、好ましくは92重量%を超え、なおより好ましくは95重量%を超えて含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
0℃~-67℃、好ましくは-10℃~-60℃、なおより好ましくは-40℃~-60℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
3MPa以上の引張強さをもたらすことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
80%以上、好ましくは90%以上、なおより好ましくは100%以上の破断伸度を示すことを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
組成物がホットメルト接着剤組成物であることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
インサート、好ましくはリチウムポリマー電池および請求項1から18のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含む成形品であって、前記インサートは、ポリアミド組成物によって少なくとも部分的にオーバーモールドされている成形品。
【請求項20】
感熱性電池の低圧オーバーモールド用ホットメルト接着剤としての、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物、その用途、さらにそれから得られる成形品およびその製造方法に関する。
【0002】
ポリアミド組成物は、感熱性電池、例えばリチウムポリマー電池の低圧および低温オーバーモールド用ホットメルト接着剤として特に適している。
【背景技術】
【0003】
数多くの携帯電子機器には電池が搭載されており、電力供給網に接続することなく使用することができる。電池に十分な強度を付与し、環境条件から電池を保護し、ユーザーによる不適切な取り扱いを防止するために、電池は一般に保護ケーシングに包装される。一般に、電池のケーシングは、プラスチック、例えばポリアミドから出発し、低圧で射出するオーバーモールドによって形成することができる。
【0004】
満足のいく性能を示す電池は、例えばリチウムイオン電池のようにすでに利用可能であるが、新たな技術的(電池寿命、性能、重量など)、工業的(出発物質など)、および/または規制的(相互運用性、リサイクル性など)な制約により、リチウムポリマー電池のような代替技術の開発が必要とされている。
【0005】
リチウムポリマー電池(またはリチウムイオンポリマー電池)-LiPO、LIP、Li-poly、lithium-polyとも表記される-は、液体電解質の代わりにポリマー電解質を使用した充電式電池である。これらの電池は、それを搭載した電子機器を破壊したり損傷させたりすることなく交換できるという利点がある。そのため、電子機器の寿命を延ばすことができる。さらに、電池を搭載した電子機器が故障した場合でも、電池のリサイクルが可能である。最後に、これらの電池は満足のいく性能を示す。一方、これらの電池は温度と圧力に敏感であるという欠点がある。例えば、リチウムイオン電池に使用されている従来の低圧オーバーモールド成形法は、プラスチック、例えばポリアミドを使用するため、特にその高い粘度のために、一般に200℃を超える高温で射出しなければならず、適していない。
【0006】
オーバーモールド成形法および/または異なるポリアミド組成物はよく知られている。
【0007】
しかしながら、低圧および低温の射出成型法に適した新規なポリアミド接着剤組成物を提供する真の必要性が存在する。特に、熱に敏感な要素、特にリチウムポリマー電池のオーバーモールド成形法に適したポリアミド組成物を提供する必要性が存在する。特に、感熱素子のオーバーモールド成形法に適したポリアミド組成物であって、(オーバーモールド後に)前記電池が作動中に発する熱に耐えるのにも適したポリアミド組成物を提供する必要性が存在する。
【0008】
特に、良好な機械的および熱的特性を保持しながら、従来のオーバーモールド成形法よりも低い温度で射出成形できるポリアミド組成物を提供する必要がある。
【0009】
また、熱に敏感なデバイスの上に射出成形された後、容易にリサイクルできるポリアミド組成物を提供する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、酸成分とアミン成分との重縮合生成物であるポリアミドを含むポリアミド組成物であって、
酸成分は、酸成分1モル当たり
-30~50mol%の脂肪酸ダイマー;
-30~50mol%の脂肪族二酸;
-0~10mol%の連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分は、アミン成分1モル当たり
-10~40mol%の脂環式ジアミン;および
-50~80mol%の、3~12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン;
-0~15mol%のポリエーテルアミン;
を含み、
前記ポリアミド組成物は、
-185℃で4Pa・s以下の粘度;および
-150℃~170℃の範囲の軟化点、
を有する、ポリアミド組成物に関する。
【0011】
粘度は標準ASTM D3236-15(2021)に従い、ブルックフィールド装置とSC4-A27ニードルを用いて測定される。
【0012】
本発明によるポリアミド組成物は、好ましくは0.5~4Pa・s、より好ましくは1~4Pa・s、なおより好ましくは2~3.5Pa・sの範囲の185℃における粘度を有する。
【0013】
軟化点は、標準ASTM D3461-18(2018)に従い、カップ・アンド・ボール装置と2℃/分の温度勾配を用いて測定することができる。
【0014】
ポリアミド組成物は、好ましくは150℃~165℃、なおより好ましくは155℃~165℃の範囲の軟化点を有する。
【0015】
脂肪酸ダイマー
酸成分は、酸成分1モル当たり、40~50mol%、好ましくは42~49mol%、なおより好ましくは44~49mol%の脂肪酸ダイマーを含むことができる。
【0016】
脂肪酸ダイマーは重合脂肪酸であり、2つの酸官能基を持つ生成物の混合物をもたらす、不飽和脂肪酸のカップリング反応から生成される化合物を示す。脂肪酸ダイマーは、不飽和モノカルボン酸のダイマー化反応によって得ることができる。脂肪酸ダイマーは、このように不飽和モノカルボン酸のカップリングの反応生成物である。不飽和モノカルボン酸は、10~22個の炭素原子(C10~C22)を含む不飽和モノカルボン酸;好ましくは12~18個の炭素原子(C12~C18)を含む不飽和モノカルボン酸;非常に好ましくは16~18個の炭素原子(C16~C18)を含む不飽和モノカルボン酸から選択することができる。
【0017】
脂肪酸ダイマーは、不飽和モノカルボン酸から、例えば米国特許出願第2793219号および第2955121号に記載されているような周知のプロセスによって得ることができる。不飽和モノカルボン酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびそれらの混合物から選択することができる。
【0018】
クルードか蒸留かに応じて、脂肪酸ダイマーは、75%から98%を超える範囲のダイマー含量を示し得、市販のグレードに応じて、モノマー、トリマー、より高次のホモログの量が多いか少ないかの混合物となる。
【0019】
脂肪酸ダイマーは、Oleon社からRadiacid(登録商標)、Croda社からPripol(登録商標)、Kraton社からUnydime(登録商標)という名称で市販されている。
【0020】
脂肪族二酸
本明細書を通じて、「二酸」、「カルボン酸二酸」、「ジカルボン酸」という表現は同じ製品を示す。
【0021】
酸成分は、酸成分1モル当たり、35~50mol%、好ましくは39~50mol%、なおより好ましくは42~48mol%の脂肪族二酸を含むことができる。
【0022】
脂肪族二酸は、飽和脂肪族ジカルボン酸、好ましくは飽和、直鎖状または分岐状の脂肪族ジカルボン酸から選択することができる。
【0023】
ジカルボン酸は、コハク酸(ブタン二酸)(C4)、グルタル酸(ペンタン二酸)(C5)、アジピン酸(ヘキサン二酸)(C6)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)(C7)、スベリン酸(オクタン二酸)(C8)、アゼライン酸(ノナン二酸)(C9)、セバシン酸(デカン二酸)(C10)、ウンデカン二酸(C11)、ドデカン二酸(C12)、ブラシル酸(トリデカン二酸)(C13)、テトラデカン二酸(C14)、ペンタデカン二酸(C15)、タプシン酸(ヘキサデカン二酸)(C16)およびそれらの混合物、なおより好ましくは、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0024】
好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸は、4~22個の炭素原子(C4~22)、なおより好ましくは、6~20個(C6~20)、なおより好ましくは、9~18個(C9~18)を含む。
【0025】
一実施形態によれば、セバシン酸(C10)またはドデカン二酸(C12)は、脂肪族ジカルボン酸の少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも80mol%を占める。
【0026】
酸成分は、合計で少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%、なおより好ましくは少なくとも90mol%の脂肪酸ダイマーおよび脂肪族二酸を含む。
【0027】
連鎖制限剤
ポリアミドは、1つ以上の連鎖制限剤の存在下で合成することができる。
【0028】
連鎖制限剤は、少なくとも1つのヘテロ原子(O、S、Cl、F)を含むことができるモノカルボン酸、または対応するエステル、またはモノイソシアネートから選択することができる。
【0029】
好ましくは、連鎖制限剤はモノカルボン酸である。
【0030】
モノカルボン酸は、脂肪族モノカルボン酸、脂環式酸、芳香族モノカルボン酸およびそれらの混合物から選択することができる。
【0031】
モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、乳酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバル酸、イソ酪酸またはそれらの混合物から選択される脂肪族モノカルボン酸であり得る。
【0032】
脂環式酸としては、シクロヘキサンカルボン酸であり得る。
【0033】
芳香族モノカルボン酸は、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸およびそれらの混合物から選択することができる。
【0034】
好ましくは、連鎖制限剤は脂肪族モノカルボン酸である。
【0035】
例えば、Oleon社から市販されているRadiacid(登録商標)製品が挙げられる。
【0036】
酸成分は、酸成分1モル当たり、1~10mol%、好ましくは3~10mol%、さらに好ましくは4~8mol%の連鎖制限剤を含むことができる。
【0037】
脂肪族ジアミン
アミン成分は、アミン成分1モル当たり、50~75mol%、好ましくは55~75mol%、さらに好ましくは55~70mol%の、3~12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミンを含むことができる。
【0038】
脂肪族ジアミンは、3~12個の炭素原子を含む飽和、直鎖状または分岐状の脂肪族ジアミンから選択することができる。
【0039】
有利な分岐脂肪族ジアミンは、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、メチルペンタンジアミン、およびトリメチルヘキサメチレンジアミンを含む。
【0040】
好ましくは、脂肪族ジアミンは、nが3~12の範囲である、式H2N-(CH2)n-NH2の飽和直鎖脂肪族ジアミンから選択される。
【0041】
脂肪族ジアミンは、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミンおよびそれらの混合物からなる群からのものであり得る。
【0042】
より好ましくは、脂肪族ジアミンはヘキサンジアン(hexanediane)である。
【0043】
脂環式ジアミン
アミン成分は、アミン成分1モル当たり、20~40mol%、好ましくは25~40mol%、なおより好ましくは25~35mol%の脂環式ジアミンを含むことができる。
【0044】
脂環式ジアミンは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、ジメチルピペラジン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、1,4-シクロヘキサンジアミン、炭素骨格(例えば、ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン)を有する脂環式ジアミン、およびそれらの混合物、から選択することができる。
【0045】
好ましくは、脂環式ジアミンはピペラジンである。
【0046】
これらの脂環式ジアミンの非網羅的リストは、“Cycloaliphatic Amines”(Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk-Othmer,4th Edition(1992),pp.386-405)に記載されている。
【0047】
ポリエーテルアミン類
アミン成分は、アミン成分1モル当たり、2~15mol%、好ましくは5~15mol%、なおより好ましくは5~12mol%のポリエーテルアミンを含むことができる。
【0048】
ポリエーテルアミンは、数平均分子量(Mn)が200~4000g/molの範囲のポリオキシアルキレンジアミンから選択することができる。
【0049】
好ましくは、鎖末端にアミン基を有するポリオキシアルキレン鎖に関する。
【0050】
ポリエーテルアミンは、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ビス(ジアミノプロピル)ポリテトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択することができる。
【0051】
好ましくは、ポリエーテルアミンはポリオキシプロピレンジアミンである。
【0052】
ポリエーテルアミンは、Huntsman社からはJeffamine(登録商標)の名称で、BASF社からはBaxxodur(登録商標)の名称で市販されている。
【0053】
ポリアミド
一実施形態によれば、アミン成分は脂肪アミンダイマーを含まない。
【0054】
好ましくは、アミン成分はエチレンジアミン(EDA)を含まない。本発明者らは、エチレンジアミンを含まないにもかかわらず、ポリアミド組成物が良好な射出特性および離型特性を示し、成形品に満足のいく機械的特性を付与することを有利に示した。
【0055】
ポリアミドは、5,000~200,000g/mol、好ましくは10,000~150,000g/mol、なおより好ましくは30,000~100,000g/molの範囲の重量平均分子量を有することができる。
【0056】
ポリアミドの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0057】
ポリアミド中の-COOH/(-NHおよび/または-NH2)モル比は、0.95~1.30、好ましくは0.98~1.20、好ましくは1.00~1.15の範囲であり得る。
【0058】
カルボキシル官能基と第一級および/または第二級アミン官能基との間の-COOH/(-NHおよび/または-NH2)モル比は、その含有量をmgKOH/gで表し、電位差法によって決定される。
【0059】
ポリアミドは、一方では酸によって、あるいは他方ではアミンによって、または酸とアミンの混合物によってターミネーションされることができる。好ましくは、ポリアミドは酸でターミネーションされる。
【0060】
本発明によるポリアミドは、0.28~17mgKOH/g、好ましくは0.5~15mgKOH/g、非常に好ましくは1~12mgKOH/gの範囲の酸価ANを有することができる。
【0061】
酸価(AN)は、標準ASTM D4662および標準ISO2114に従って電位差法によって決定され、ポリアミド1グラムの酸度を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム(mgKOH/g)として表されるカルボキシル官能基の量を表す。
【0062】
一実施形態によれば、ポリアミドは、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であり、
酸成分は、酸成分1モル当たり
-42~49mol%の脂肪酸ダイマー;
-39~50mol%の脂肪族二酸;
-3~10mol%の連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分は、アミン成分1モル当たり
-25~40mol%の脂環式ジアミン;および
-55~75mol%の、3~12個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン;
-5~15mol%のポリエーテルアミン;
を含み、
-COOH/(-NHおよび/または-NH2)モル比は、好ましくは0.98~1.20、なおより好ましくは1.00~1.15の範囲である。
【0063】
ポリアミドは、185℃で4Pa・s以下、好ましくは0.5~4Pa・s、より好ましくは1~4Pa・s、なおより好ましくは2~3.5Pa・sの範囲の粘度を有することができる。
【0064】
ポリアミドは150℃から170℃の範囲の軟化点を有することができる。
【0065】
ポリアミドは、従来のプロセスに従って、酸成分とアミン成分との重縮合によって得ることができる。ポリアミドは特に、反応物を混合した後、100℃以上、好ましくは150℃以上、なおより好ましくは200℃以上の温度に加熱することによって調製することができる。
【0066】
反応は不活性雰囲気下で、例えば窒素雰囲気下などで行うことができる。
【0067】
水および全ての揮発性化合物の痕跡の除去を可能にするために、500~50,000Pa(5~500mbar)の圧力で加熱する第二段階を実施することができる。
【0068】
ポリアミド組成物
ポリアミド組成物は、好ましくはホットメルト接着剤組成物である。
【0069】
ポリアミド組成物は、前記ポリアミド組成物の全重量に対して、90重量%を超え、好ましくは92重量%を超え、なおより好ましくは95重量%を超える前記ポリアミドを含むことができる。
【0070】
ポリアミド組成物は、酸成分とアミン成分との重縮合によって得られるポリアミドの他に、少なくとも1種の添加剤を含むことができる。
【0071】
添加剤は、充填剤、抗酸化剤または安定剤、離型剤、界面活性剤、顔料およびそれらの混合物から選択することができる。
【0072】
離型剤としては、例えばエチレンビスステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0073】
顔料のうち、例えばカーボンブラックを挙げることができる。
【0074】
抗酸化剤としては、例えばアミン化合物、フェノール性化合物またはリン化合物を挙げることができる。
【0075】
ポリアミド組成物は、前記接着剤組成物の全重量に対して、0%~10%、好ましくは1%~8%、なおより好ましくは1%~6%の添加剤を含むことができる。
【0076】
一実施形態において、ポリアミド組成物は、粘着付与樹脂を含まない。
【0077】
ポリアミド組成物は、例えば、上記で定義されたようなポリアミドと、任意に1つ以上の添加剤とを混合することによる、成分の単純な混合によって得ることができる。
【0078】
ポリアミド組成物は、0℃~-67℃、好ましくは-10℃~-60℃、なおより好ましくは-40℃~-60℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することができる。
【0079】
組成物のガラス転移温度は、示差走査熱量測定によって、特に以下の方法に従って測定することができる:-70℃から250℃まで30K/分で加熱する第1段階、次いで250℃から-70℃まで10K/分で冷却し、-70℃で10分間維持し、次いで250℃まで15K/分で加熱するが、全て不活性雰囲気下で行う。
【0080】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明によるポリアミド組成物が、電池、特にリチウムポリマー電池用のケーシングの製造に特に適していることを実証した。なぜなら、ポリアミド組成物は、低圧および低温、特に185℃以下の温度で射出することができ、これは、熱に敏感な要素、特に熱に敏感な電池のオーバーモールドに特に適しているからである。さらに、ポリアミド組成物の粘度および軟化点は、電池のオーバーモールド成形法で使用される公知のポリアミド組成物の粘度および軟化点よりも低いが、このようにしてオーバーモールドによって得られるケーシングは、使用時の高い温度勾配(例えば、季節および電子デバイスの加熱の関数として)において、満足のいく機械的および熱的特性、特に満足のいく衝撃強度(特に破断伸びおよび引張強度)を示す。さらに、ポリアミド組成物は、有利には、良好な射出および離型特性を示す(これは、ポリアミド組成物が、有利には、金型からの容易な取り外しを可能にする凝集の迅速な取り込みを示すためである)。さらに、ポリアミド組成物は、熱(100℃以上の温度)を誘導する電池の使用条件に有利に耐え、オーバーモールド組成物は降伏しない。最後に、射出成形されたポリアミド組成物の様々な種類の基材(例えばアルミニウム-ポリエステル基材)への接着性は満足のいくものである。
【0081】
ポリアミド組成物は、有利には3MPa以上の引張強さをもたらす。引張強さは、標準ISO527に従って、1Aタイプの試験標本を作製し、この試験標本をダイナモメータを用いて50mm/分の速度で引張ることにより測定することができる。
【0082】
ポリアミド組成物は、さらに、80%以上、好ましくは90%以上、なおより好ましくは100%以上の破断伸度を示すことができる。破断伸度は、標準ISO527に従って、1Aタイプの試験標本を作製し、この試験標本をダイナモメータを用いて50mm/分の速度で引張ることにより測定することができる。
【0083】
ポリアミド組成物は、さらに、20以上、好ましくは25以上のショアD硬度を示すことができる。ショアD硬度は、標準ISO868に従って、デュロメーターを用いて、直後と15秒後の値を記録することにより測定することができる。
【0084】
成形品
本発明は、さらに、インサートおよび上記で定義したポリアミド組成物を含む成形品であって、前記インサートは、ポリアミド組成物によって少なくとも部分的にオーバーモールドされている、成形品に関する。前記インサートは、電池、好ましくは感熱電池、非常に好ましくはリチウムポリマー電池であり得る。
【0085】
成形品は、さらに基材を含むことができる。基材は、プラスチック、金属、ガラス、セラミックまたは他の適切な物質から選択される材料から得ることができ、好ましくはプラスチックである。
【0086】
特に、プラスチックはアルミニウム-ポリエステル複合体とすることができる。
【0087】
一実施形態では、2つの部品の接着、漏れ止めおよび衝撃保護を確保するために、ポリアミド組成物をインサートと基材との間に射出することができる。この構成では、基材は成形品の外側のケーシングを形成する。別の実施形態では、ポリアミド組成物は、インサートと、存在する場合には基材の周りに射出することができる。この構成では、オーバーモールドされたポリアミド組成物が成形品の外側のケーシングを形成する。任意の代替構成を想定することができる。
【0088】
ポリアミド組成物がその周辺にオーバーモールドされるインサートは、任意の適切なインサート、特に電池、とりわけ充電式電池、例えば電話、ノートパソコン、電気自動車などの電子機器に使用される電池とすることができる。好ましい実施形態では、インサートはポリマーリチウム電池である。
【0089】
成形品は、例えば、押出成形、鋳造成形、射出成形、圧縮成形またはトランスファー成形などの任意の適切な成形法により得ることができる。
【0090】
好ましい実施形態において、成形品は、以下に記載するような低温低圧射出による成形法によって得られる。
【0091】
成形品の製造方法:
本発明はまた、成形品の製造方法に関する。
【0092】
低温低圧射出による成形法は、以下の段階を含み得る:
-金型の提供;
-接着結合される部品(インサート)、好ましくはリチウムポリマー電池、を金型に挿入;
-溶融ポリアミド組成物を得るために、ポリアミド組成物を185℃以下、好ましくは175℃以下の温度に加熱する工程;
-溶融ポリアミド組成物を、0.5×105~50×105Pa、好ましくは2×105~40×105Paの圧力で射出する工程;
-射出されたポリアミド組成物を冷却する工程;
-任意で、得られた溶融品を型から取り出す工程。
【0093】
構成によれば、金型は、成形品の一体部分を形成することもでき(例えば、ポリアミド組成物がインサートと基材との間に射出される場合)、またはポリアミド組成物のオーバーモールド後に取り外すこともできる。
【0094】
成形品を得るためのポリアミド組成物の使用は、低圧で成形できる点、185℃以下の成形温度で満足な流動特性を示す点、および成形状態で満足な温度強度を示す点で特に有利である。これらの特性は、高温に敏感で発熱する電子機器、特にリチウムポリマー電池の成形に適している。
【0095】
使用
本発明はまた、感熱性電池、好ましくはリチウムポリマー電池、および任意にその基板の低圧オーバーモールド用ホットメルト接着剤としての、上記で定義したポリアミド組成物の使用に関する。
【実施例】
【0096】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するものである。
【0097】
使用材料
脂肪酸ダイマー:Oleon社製Radiacid0970(登録商標)(脂肪酸ダイマー、精製、高純度);
脂肪モノ酸:Oleon社製Radiacid0411(登録商標)(脂肪モノ酸);
脂肪二酸1:Casda Biomaterials社製セバシン酸;
脂肪二酸2:Chematek社製ドデカン二酸;
脂肪二酸3:Emery社製アゼライン酸;
脂肪族ジアミン:BASF社製ヘキサンジアミン;
環状ジアミン:BASF社製ピペラジン;
ポリエーテルアミン:Huntsman社製Jeffamine D2000(登録商標)(ポリオキシプロピレンジアミン);
抗酸化剤:BASF社製Irganox 1010;
顔料:Habich社製カーボンブラックをベースとする液体組成物Habisol Schwarz H28596(カーボンブラック含有量2.5~10%);
離型剤:Croda社製Crodamide EBS(エチレンビスステアリン酸アミド)。
【0098】
ショアD硬度測定:
ショアD硬度は、標準ISO868に従って測定した。
組成物を少なくとも5mmの高さのポリエチレンカプセルに注いだ。測定値は、15秒後に選択したデュロメーター(D)で記録した。数回の測定を行い、平均値を算出した。
【0099】
固有の機械的性能品質の試験は、標準ISO527-2017)に従って実施された。
引張試験による破断伸度の測定は、以下に示すプロトコールに従って実施した。
【0100】
測定の原理は、50mm/分に等しい一定の速度で移動する可動ジョーの引張試験装置で、成形品からなる標準試験標本(下記参照)を引張り、試験標本が破断する瞬間に最大引張応力(MPa)および試験標本の伸び(%)を記録することからなる。標準的な試験標本は、国際標準ISO527に示されているようにダンベル型である。使用するダンベルの細い部分は、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmである。
【0101】
ポリアミドの調製方法
すべての反応物を適切なミキサー付き反応器に装入し、窒素下で4時間30分かけて225℃まで加熱する。その後、反応器をこの温度に2時間30分維持し、1000~5000Paの間の圧力で1時間真空下に置く。
【0102】
【0103】
ポリアミド組成物の調製工程
上記の反応器において、ポリアミドが必要な仕様に達したら、温度を225℃に維持し、攪拌しながら添加剤を加える。
【0104】
【0105】
成形品の調製
ポリアミド組成物が要求される仕様に達したら、サンプルを取り出す準備ができる。機械的特性を測定するための1Aタイプのダンベル型に射出するために、ポリアミド組成物をヒートガンに移す。射出から数秒後、金型を開け、試験標本を金型から取り出す。試験標本は水分の吸収を防ぐため、熱密封されたアルミニウム袋に3日間保管される。3日間の保管が終了したら、ダイナモメータを用いて試験標本に張力をかける(上記方法を参照)。
【0106】
【0107】
比較組成物C3では、射出後数秒の成形品を金型から取り出すことができず、機械的特性を測定するためのダンベルを調製することができない。これは、製品が軟らかく、凝集力に欠けるためである。電子部品、ひいては電池のオーバーモールドも不可能である。
【0108】
それぞれポリアミドP1およびP2を含む組成物C1およびC2(本発明による)は、感熱性インサート、特にリチウムポリマー電池をオーバーモールドするためのプロセスにおけるホットメルト接着剤としての使用に特に適した粘度および軟化点を有し、満足な機械的特性および熱的特性を有する成形品を得ることを可能にする。これは、組成物C1およびC2が、有利には4.4MPa(C1)および5.0(C2)の引張強さ、および満足な破断伸び:93%(C1)および100%(C2)を示す成形品をもたらすからである。さらに、組成物C1およびC2は、有利なことに、型からの容易な除去を可能にする凝集の迅速な取り込みを有する。
【国際調査報告】