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特表2024-525929ディーゼル車両排出量を減少させるための添加剤の組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ディーゼル車両排出量を減少させるための添加剤の組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/183 20060101AFI20240705BHJP
   C10L 1/192 20060101ALI20240705BHJP
   C10L 1/224 20060101ALI20240705BHJP
   C10L 1/22 20060101ALI20240705BHJP
   C10L 1/23 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C10L1/183
C10L1/192
C10L1/224
C10L1/22
C10L1/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503785
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 FR2022051401
(87)【国際公開番号】W WO2023002108
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2107753
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ドゥケンヌ,ベルナール
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CC02
(57)【要約】
本発明は、圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物の排出量ならびに一酸化炭素および未燃である炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染物質の排出量を減少させるための添加剤の組成物の使用であって、前記組成物が、(i)それらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物から選択される1種または複数種の添加剤と、(ii)硝酸アルキル、過酸化アリールおよび過酸化アルキルから選択される、セタン価を改善する1種または複数種の添加剤とを含み、添加剤(i)の量対添加剤(ii)の量の重量比が1:3~3:1の範囲内である、使用に関する。本発明は、圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物の排出量ならびに一酸化炭素および未燃である炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染物質の排出量を減少させるための、この添加剤の組成物を使用する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物ならびに一酸化炭素および未燃炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染物質の排出量を減少させるための、
(i)それらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物から選択される1種または複数種の添加剤と、
(ii)硝酸アルキル、過酸化アリールおよび過酸化アルキルから選択される1種または複数種のセタン価改善添加剤と
を含み、添加剤(i)の量対添加剤(ii)の量の重量比が1:3~3:1の範囲内である、添加剤の組成物の使用。
【請求項2】
添加剤(i)が、メチルおよびt-ブチル基から選択される1個または複数のアルキル基で置換された1または2個のフェノール環を含む化合物(i)a)から、好ましくはメチル-t-ブチルフェノール、ジメチル-t-ブチルフェノール、エチル-t-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリ-t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチル-ジ-メチルフェノール、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
化合物(i)a)が、(ジ)tert-ブチルフェノール、メチル-tert-ブチルフェノールおよびジ-メチル-tert-ブチルフェノール、それらの混合物、ならびにそれらのツーバイツー縮合生成物、特に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,5-ジメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6および2,4 ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、それらの混合物、ならびにそれらのツーバイツー縮合生成物などから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
添加剤(i)が、
・1~8個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルデヒドおよび/またはケトンと、
・1~30個の間の炭素原子、好ましくは4~30個の間の炭素原子を有する、少なくとも1個のアルキルポリアミン基を有する少なくとも1種の炭化水素化合物と
のアルキルフェノール-アルデヒド縮合樹脂のマンニッヒ反応により得ることができる変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂(i)b)から選択され、前記アルキルフェノール-アルデヒド縮合樹脂自体が、
・1~30個の炭素原子を有する少なくとも1個の直鎖または分岐アルキル基で置換された少なくとも1種のアルキルフェノール、好ましくはモノアルキルフェノールの、
・1~8個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルデヒドおよび/またはケトンとの縮合により得ることができることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、p-ノニルフェノールと、ホルムアルデヒドと、少なくとも1個のアルキルポリアミン基を含む少なくとも1種の炭化水素化合物とから得ることができることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂が、少なくとも2個の一級アミン基と、12~24個の炭素原子、好ましくは12~22個の炭素原子を有する少なくとも1本の脂肪鎖とを有する少なくとも1種のアルキルポリアミンから得ることができることを特徴とする、請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
添加剤の組成物が、メチルおよびt-ブチル基から選択される1個または複数のアルキル基で置換された1または2個のフェノール環を含む1種または複数種の化合物(i)a)と、1種または複数種の変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂(i)b)とを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
添加剤(単数)または添加剤(複数)(ii)が、2~12個の炭素原子、より好ましくは4~8個の炭素原子を含むアルキル基Rを有する式R-NOの硝酸アルキルから選択され、さらに良好には添加剤(ii)が硝酸エチルヘキシルであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
添加剤(i)の量対添加剤(ii)の量の重量比が1:2.5~2.5:1の、好ましくは1:2~2:1の、より好ましくは1:1~1.5:1の範囲内であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
添加剤の組成物が、アミン、スクシンイミド、アルケニルスクシンイミド、ポリアルキルアミン、ポリアルキルポリアミン、ポリエーテルアミン、四級アンモニウム塩およびトリアゾール誘導体から、より好ましくは四級アンモニウム基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミド、四級アンモニウム基で官能化された脂肪酸アミドおよびジ-(四級アルキルアミド-プロピル-アンモニウム)化合物などのそのダイマー、脂肪鎖アルキルアミドアルキルベタインおよびトリアゾール誘導体から、さらにより好ましくは四級アンモニウム基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミドおよびトリアゾール基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミドからなる群から選択される1種または複数種の堆積抑制添加剤(iii)をさらに含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
一方でそれらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物(i)の総重量含有量対他方で堆積抑制添加剤(iii)の総重量含有量の比が1:60~1:2の、好ましくは1:20~1:3の範囲であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
燃料が、ガス油、バイオディーゼル、x%(v/v)(xは、ゼロより大きく100以下の数字である)の植物または動物油エステルを含むBタイプのガス油、水素化処理植物油(HVO)、およびそれらの混合物から、好ましくは植物または動物油エステルx%(v/v)(xは、ゼロより大きく100以下の数字である)を含むBタイプのガス油から選択され、植物油エステルが、脂肪酸メチルエステルおよび脂肪酸エチルエステルから好ましくは選択されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
窒素酸化物、一酸化炭素および未燃炭化水素の排出量を同時に減少させるための、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
固体粒子の排出量をさらに減少させるための、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
圧縮-着火エンジンが、ハイブリッドディーゼルエンジンまたは直噴ディーゼルエンジン、好ましくは直噴ディーゼルエンジン、より好ましくはコモンレール噴射システムを備えるディーゼルエンジンであることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
圧縮-着火エンジンが船舶用エンジンであることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の添加剤の組成物を前記燃料に加えることを含む、圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物ならびに一酸化炭素および未燃炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染物質の排出量を低減するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮-着火またはディーゼルエンジンを備えた車両からの汚染物質排出量を減少させるための特定の添加剤の組成物の使用に関する。
【0002】
本発明は、燃料中で添加剤のこの組成物を実現する、圧縮-着火またはディーゼルエンジンを備えた車両からの汚染物質排出量を減少させるためのプロセスまたは方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
軽車両および重量物車両の両方に適用される欧州および全世界の汚染基準は、圧縮-着火エンジン(ディーゼルエンジン)を備えた車両の排出レベルに対してますます厳しい制約を課してきた。
【0004】
それ自体公知であるように、レシプロエンジン内の燃料の燃焼は不完全であるため、これらのエンジンは、燃焼サイクル中に様々なタイプの汚染化合物を排出する。特に、4種の規制汚染物質:3種のガス状(一酸化炭素、窒素酸化物および未燃炭化水素)および固体粒子が存在する。一酸化炭素(CO)は、ある濃度で吸入されると致命的になることがある有毒ガスであり、次に、窒素酸化物(NOx)は、しばしば地域都市汚染問題に関連し、未燃炭化水素は、ある種の化合物の不完全燃焼により生成される。固体粒子も、その上で他の化合物が凝縮して固体すすを生成する炭素に富む化合物(芳香族物質など)から出発する燃料の不完全燃焼の結果生じる。
【0005】
これらの排出量を減少させ、かつ抑制する現在の要求から、エンジンおよび車両メーカーは、排気ガス後処理システムを導入してきた。これらの後処理システムには、以下のような様々な技術が含まれる:
-SCR(選択触媒還元)システム(窒素酸化物NOおよびNO(NOとして一般に公知)が還元剤と接触させられる触媒装置でそれらを減少させる)、
-「NOxトラップ」装置(LNT)(条件が満たされると、NOxを吸着し、次いで減少させることにより作用する(濃混合気運転));
-EGRとして公知の排気ガス再循環システム、および
-DPFSとして一般に公知の微粒子フィルターシステム。SCRoF(SCRオンフィルター(SCR on Filter))またはSCRFまたはSDPFシステムも存在し、それらは、単一のエレメント内でSCRによるNOx還元と粒子濾過の機能を組み合わせる。これらの様々な排気ガス後処理装置は、排気ガス中に存在する同じ汚染物質にそれらが必ずしも作用するとは限らない限り単独でまたは組み合わせて設置することができる。
【0006】
結果として、車両からの汚染物質排出量を減少させる問題の解決策がメーカーの側から主に求められてきた。しかし、ディーゼルゲート後の最も厳密な新しい試験に供された直近の車両でさえ実際の排出レベルはゼロではないことが強調されるべきである。同様に、このタイプの車両は、ある種の実生活の運転(非常に都会的な)条件において、または汚染制御システムのタイプに応じて、高いレベルの汚染物質を依然として排出することがあることが示されている(Euro 6D-Temp車両における2020年末のFrench Ministry of Ecological Transitionに対するIFPEN研究)。研究は、より古い車両について、実際の排出レベルが、先のNew European Driving Cycle(NEDC)の外側で予想されるものよりもはるかに高くなることがあることも示した。したがって、車両において行われる処理を越えて実際の排出レベルを低下させることは特に興味深いであろう。
【0007】
これらのエンジンに供給する燃料中の様々なタイプの添加剤の使用がさらに知られている。これらの添加剤は、それらの固有の性能を改善するために燃料に少量取り込まれる化学化合物である。例には、コールドフロー添加剤(低温で燃料性能を改善するように設計される)、堆積抑制添加剤(燃焼中のエンジン内で燃料の汚損効果を減少させるように設計される)、プロセタン添加剤(セタン価を増加させ、したがって燃料のエネルギー性能を向上させるように設計される)などが含まれる。
【0008】
しかし、添加剤メーカーは、汚染物質排出量を抑制する問題を解決するためにほとんど何もしてこなかった。一方、添加剤は汚染物質排出量にほとんどまたは全く影響しないと一般に考えられる。
【0009】
例えば、「The characteristics of performance and exhaust emissions of a diesel engine using a biodiesel with antioxidants」、Bioresource Technology 101(2010)、S78~82と題する刊行物は、酸化安定性、エンジン性能および汚染物質排出量に対するバイオディーゼルベースの燃料中の公知の抗酸化剤添加剤(特にアルキルフェノール基を含む化合物)の効果の研究結果を報告している。これらの添加剤は排出量に対してほとんど効果がないと著者らは結論付けている。
【0010】
さらに、汚染物質はしばしば個々に処理され、これは、所与の技術がNOxなどの1つのタイプの汚染物質のみ減少させることができ、その他(例えば一酸化炭素、微粒子、未燃炭化水素など)を減少させることができないことを意味する。したがって、規制要件を満たすために異なる技術が並列されなければならない。
【0011】
例えば、刊行物SAE2000-01-1853は、プロセタンを使用するCOおよびHC利益に関する情報を提供しているが、NOxのわずかな増加を明らかにしている。刊行物SAE2009-01-2697は、Cummins6.7Lエンジンに対するセタン価の影響を研究しており、高セタン価(プロセタンを使用することにより調整される)に関連するNOxの増加を確認するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、より包括的に汚染物質排出量に対処することができる完全な解決策を開発することが依然として必要とされている。これらの解決策は、既存の解決策に適合しなければならない。それらは、どんなエンジン技術、後処理システムの実際の効果および/または燃料の性質、特にその起源(石油および/またはバイオ起源)であろうと効果的でなければならない。これらの解決策を提供して高品質燃料中の高性能添加剤の使用から予想される他の特性(エンジン清浄性、防食、消泡など)を損ねてはならず、それらが維持されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで、本出願人は、明確に定義された割合のアルキルフェノール基を含む添加剤とプロセタン添加剤の組合せに基づく添加剤の特定の組成物の使用が、ディーゼルエンジンにおいて使用される燃料からの汚染物質排出量の減少に対して予想外の著しい効果を有し、主な4つのタイプの汚染物質:窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素および固体粒子を含む少なくとも2つのタイプの汚染物質を同時に減少させることを発見した。
【0014】
したがって、本発明の1つの目的は、圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物の排出量ならびに一酸化炭素および未燃炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染物質の排出量を減少させるための、
(i)それらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物から選択される1種または複数種の添加剤と、
(ii)硝酸アルキル、過酸化アリールおよび過酸化アルキルから選択される1種または複数種のセタン価改善添加剤と
を含み、添加剤(i)の量対添加剤(ii)の量の重量比が1:3~3:1の範囲内である、添加剤の組成物の使用である。
【0015】
ディーゼルエンジン燃料への添加剤のこの組成物の取込みは、これらの添加剤を含まない同じ燃料に対して汚染物質排出レベルを著しく低下させることを可能にする。特に予想外にも、低下は、少なくとも窒素酸化物、一酸化炭素および/または未燃炭化水素を含むいくつかのタイプの汚染因子について同時に達成される。
【0016】
好ましい1つの実施形態によれば、本発明は、窒素酸化物、一酸化炭素および未燃炭化水素の排出量を同時に減少させることを可能にする。
【0017】
特に好ましい実施形態によれば、本発明はまた、固体粒子排出量を減少させることを可能にする。
【0018】
本発明による添加剤の組成物は、全部または一部がバイオマス由来の燃料を含め、石油起源のものか否かに関わらずディーゼルエンジンが意図されるガス油としても公知の様々なタイプの燃料において効果的である。
【0019】
それはまた、ディーゼル燃料に必要とされる特性を提供すること、ならびに特にエンジンおよびインジェクター清浄性、セタン価、ならびに消泡および防食性能の点から性能の優れたレベルを維持することを可能にする。
【0020】
本発明の別の目的は、上で定義した添加剤の組成物を液体燃料に加えることを含む、圧縮-着火内燃エンジン内の前記燃料の燃焼中の窒素酸化物ならびに一酸化炭素および未燃炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染物質の排出量を低減するためのプロセスまたは方法である。
【0021】
本発明のさらなる目的、特徴、態様および利点は、以下の説明および例からさらにより明らかになるであろう。
【0022】
以下では、特に示されない限り、ある範囲の値の終点は、特に「の間の」および「…~…の範囲の」という用語において、この範囲に含まれる。
【0023】
さらに、本明細書において使用される「少なくとも1つの」および「少なくとも」という用語は、「1つまたは複数の」および「以上」という表現とそれぞれ等価である。
【0024】
最後に、それ自体公知であるように、C化合物または基は、その化学構造にN炭素原子を含む化合物または基を指す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
アルキルフェノール化合物:
本発明は、それらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する1種または複数種の化合物を添加剤(i)として使用する。
【0026】
これは、この化合物またはこれらの化合物が、1個または複数のアルキル基で置換された少なくとも1個のフェノール環(1個または複数のヒドロキシ-OH基で置換されたベンゼン環である)をそれらの式中に有することを意味する。
【0027】
第1の実施形態によれば、添加剤(i)は、メチルおよびt-ブチル(またはtert-ブチル)基から選択される1個または複数のアルキル基で置換された1または2個のフェノール環を含む化合物(i)a)から選択される。
【0028】
これらの化合物(i)a)は、とりわけ、メチル-t-ブチルフェノール、ジメチル-t-ブチルフェノール、エチル-t-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリ-t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチル-ジ-メチルフェノール、およびそれらの混合物から選択されてもよい。
【0029】
好ましい化合物は、単独でまたは混合物として、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、4,6-ジ-tert-ブチル-2-メチルフェノール、t-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、2,6および2,4 ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)(CAS番号118-82-1)から選択される。
【0030】
特に好ましい化合物は、(ジ)tert-ブチルフェノール、メチル-tert-ブチルフェノールおよびジ-メチル-tert-ブチルフェノール、それらの混合物、ならびにそれらのツーバイツー縮合生成物、特に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,5-ジメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6および2,4 ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、それらの混合物、ならびにそれらのツーバイツー縮合生成物などから選択される。
【0031】
第2の実施形態によれば、添加剤(i)は、
・1~8個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルデヒドおよび/またはケトンと、
・1~30個の間の炭素原子、好ましくは4~30個の間の炭素原子を有する、少なくとも1個のアルキルポリアミン基を有する少なくとも1種の炭化水素化合物と
のアルキルフェノール-アルデヒド縮合樹脂のマンニッヒ反応により得ることができる変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂(i)b)から選択され、前記アルキルフェノール-アルデヒド縮合樹脂自体は、
・1~30個の炭素原子を有する少なくとも1個の直鎖または分岐アルキル基で置換された少なくとも1種のアルキルフェノール、好ましくはモノアルキルフェノールの、
・1~8個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルデヒドおよび/またはケトンとの縮合により得ることができる。
【0032】
アルキルフェノール-アルデヒド縮合樹脂は、既に公知のこのタイプの任意の樹脂、特に文書EP857776およびEP1584673に記載されたものから選択されてもよい。
【0033】
本発明による変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、少なくとも1種のパラ置換アルキルフェノールから有利に得られる。ノニルフェノールが好ましくは使用される。
【0034】
ノニルフェノール-アルデヒド樹脂の分子あたりのフェノール環の平均数は、有利に6~25個の、好ましくは8~17個の、より好ましくは9~16個の範囲内である。
【0035】
フェノール環の数は、核磁気共鳴(NMR)またはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定することができる。
【0036】
有利に、変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、その調製の両方のステップにおいて同じアルデヒドまたはケトンを実現することにより得られる。
【0037】
変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、2-エチル-ヘキサナール、ベンズアルデヒドおよび/またはアセトンから選択される少なくとも1種のアルデヒドおよび/またはケトンから得ることができる。好ましくは、変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、少なくとも1種のアルデヒド、好ましくは少なくともホルムアルデヒド(またはメタナール)から得られる。
【0038】
好ましくは、変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、p-ノニルフェノールと、ホルムアルデヒドと、少なくとも1個のアルキルポリアミン基を含む少なくとも1種の炭化水素化合物とから得ることができる。
【0039】
前記炭化水素化合物は、少なくとも2個の一級および/または二級アミン基を有するアルキルポリアミンでもよい。特に、アルキルポリアミンは、それぞれ、好ましくは、12~24個の炭素原子、より好ましくは12~22個の炭素原子を含む1または2個のアルキル基で置換された一級または二級ポリアミンから有利に選択される。
【0040】
好ましくは、変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、少なくとも2個の一級アミン基、好ましくは3個の一級アミン基を有する少なくとも1種のアルキルポリアミンから得られる。
【0041】
特に、変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、すべてのアミン基が一級アミンである少なくとも1種のアルキルポリアミンから有利に得ることができる。
【0042】
好ましくは、変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂は、12~24個の炭素原子、好ましくは12~22個の炭素原子を有する少なくとも1本の脂肪鎖を含む少なくとも1種のアルキルポリアミンから得られる。
【0043】
特に好ましいアルキルポリアミンは、タロージプロピレントリアミンである。
【0044】
商業的なアルキルポリアミンは、一般に純粋な化合物ではなく混合物である。適した商業的なアルキルポリアミンには、Trinoram(登録商標)、Duomeen(登録商標)、Dinoram(登録商標)、Triameen(登録商標)、Armeen(登録商標)、Polyram(登録商標)、Lilamin(登録商標)およびCemulcat(登録商標)という名称で販売されている脂肪鎖アルキルポリアミンが含まれる。
【0045】
1つの好ましい例は、Trinoram(登録商標)Sであり、それは、N-(タローアルキル)ジプロピレントリアミン(CAS61791-57-9)としても公知のタロージプロピレントリアミンである。
【0046】
両方の実施形態を組み合わせること、および上記のような化合物(i)a)と(i)b)の組合せを使用することがもちろん可能である。
【0047】
したがって、好ましい1つの実施形態によれば、添加剤の組成物は、メチルおよびt-ブチル基から選択される1個または複数のアルキル基で置換された1または2個のフェノール環を含む1種または複数種の化合物(i)a)と、1種または複数種の変性アルキルフェノール-アルデヒド樹脂(i)b)とを含む。
【0048】
セタン価改善添加剤:
本発明は、プロセタン添加剤またはセタンブースター添加剤としても公知の1種または複数種のセタン価改善添加剤を添加剤(ii)として実現する。
【0049】
添加剤(ii)は、硝酸アルキルおよび過酸化アリールまたは過酸化アルキルから選択される。
【0050】
過酸化アリールのうち、とりわけ、過酸化ベンジルを挙げることができる。過酸化アルキルの一例はtert-ブチルペルオキシドである。
【0051】
添加剤(ii)は、好ましくは硝酸アルキル、より好ましくは2~12個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を含むアルキル基Rを有する式R-NOのものから選択される。
【0052】
特に好ましい添加剤(ii)は硝酸エチルヘキシルである。
【0053】
添加剤の組成物
本発明にしたがって使用される添加剤の組成物は、添加剤(i)の量対添加剤(ii)の量の重量比が1:3~3:1の範囲内であることを特徴とする。
【0054】
好ましくは、添加剤(i)の量対添加剤(ii)の量の重量比は、1:2.5~2.5:1の、好ましくは1:2~2:1の、より好ましくは1:1~1.5:1の範囲内である。
【0055】
堆積抑制添加剤
好ましい1つの実施形態によれば、本発明にしたがって使用される添加剤の組成物は、上記のそれらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物(i)およびセタン価を改善する添加剤(ii)以外に堆積抑制添加剤とも呼ばれる1種または複数種の洗浄性添加剤(iii)をさらに含み、それは、通常使用されるディーゼル燃料用の洗浄性添加剤から選択されてもよい。後者は、当業者に周知の化合物である。
【0056】
堆積抑制添加剤は、(これらに限定されないが)アミン、スクシンイミド、アルケニルスクシンイミド、ポリアルキルアミン、ポリアルキルポリアミン、ポリエーテルアミン、四級アンモニウム塩、およびトリアゾール誘導体から、より好ましくは四級アンモニウム塩、およびポリイソブチレンモノ-またはポリ-アミン(またはPIB-アミン)からなる群から、さらにより好ましくは(トリアゾール基で置換されたまたは置換されていない)ポリイソブチレンスクシンイミド、または四級アンモニウム塩の中から、さらにより好ましくは四級アンモニウム基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミド、四級アンモニウム基で官能化された脂肪酸アミドおよび例えば欧州特許出願第18306589.5号に記載されたジ-(四級アルキルアミド-プロピル-アンモニウム)化合物などのそのダイマー、脂肪鎖アルキルアミドアルキルベタインおよびトリアゾール誘導体の中から特に選択されてもよい。四級アンモニウム基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミドおよびトリアゾール基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミドが特に好ましい。
【0057】
堆積抑制添加剤の例は、以下の文書:EP0938535、US2012/010112、WO2012/004300、US4171959およびWO2006/135881に示されている。
【0058】
少なくとも1種の極性単位と1種の無極性単位により生成されるブロックコポリマー、例えば、本出願人に代わって特許出願FR1761700に記載されたものなども使用されてもよい。
【0059】
1つの実施形態によれば、添加剤の組成物は、三級アミン官能基を含む窒素化合物の四級化剤との反応により得られる四級アンモニウム塩からなる少なくとも1種の堆積抑制添加剤を含み、この窒素化合物は、炭化水素基で置換されたアシル化剤と、少なくとも1個の三級アミン基ならびに一級アミン、二級アミンおよびアルコールから選択される少なくとも1個の基を含む化合物との反応の生成物である。好ましくは、前記窒素化合物は、炭化水素基で置換されたコハク酸誘導体、好ましくはポリイソブテニルコハク酸無水物と、三級アミン基も含むアルコールまたは一級もしくは二級アミンとの反応生成物である。そのような堆積抑制添加剤、ならびにそれらを含む堆積抑制添加剤の好ましい組合せは、本出願人に代わって特許出願WO2015/124584に特に記載されている。
【0060】
添加剤の組成物が1種または複数種の堆積抑制添加剤を含むとき、好ましくは一方でそれらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物(i)の総重量含有量対他方で堆積抑制添加剤(iii)の総重量含有量の比は、1:60~1:2の、好ましくは1:20~1:3の範囲である。
【0061】
好ましくは、燃料中の堆積抑制添加剤(iii)の総含有量は、燃料の総重量に対して5~5000重量ppmの、好ましくは10~1000重量ppmの、さらにより好ましくは20~500重量ppmの範囲である。
【0062】
他の添加剤
添加剤の組成物は、それらの構造中に少なくとも1個のアルキルフェノール基を有する化合物(i)、上記のセタン価を改善する添加剤(ii)および上記の堆積抑制添加剤(iii)に加えて、他の添加剤も含んでもよい。
【0063】
これらの他の添加剤は、例えば、これらに限定されないが、防食添加剤、分散剤添加剤、解乳化剤添加剤、消泡剤、殺生物剤、付香剤、摩擦調整剤、潤滑性添加剤、燃焼助剤(触媒燃焼およびすす促進剤)、低温安定性添加剤および特に曇点、流動点、CFPP(「低温フィルター目詰まり点(Colder Filter Plugging Point)」)を改善する薬剤、沈降防止剤、摩耗防止剤、トレーサー、溶剤/担体油および導電性調整剤から選ばれ得る。
【0064】
これらの添加剤の例には以下が含まれる:
a)特に(これらに限定されないが)ポリシロキサン、オキシアルキル化ポリシロキサン、および植物または動物油由来の脂肪酸アミドから選択される消泡添加剤。そのような添加剤の例は、EP861882、EP663000、EP736590に示されている;
b)例えば、文書US3048479、US3627838、US3790359、US3961961およびEP261957に記載されたエチレン/酢酸ビニル(EVA)、エチレン/プロピオン酸ビニル(EVP)、エチレン/エタン酸ビニル(EVA)およびエチレン/プロピオン酸ビニル(EVP)コポリマー、エチレン/エタン酸ビニル(EVE)、エチレン/メタクリル酸メチル(EMMA)、およびエチレン/フマル酸アルキルコポリマーなどのエチレン-不飽和エステルコポリマーから選択されるコールドフロー向上剤(CFI)添加剤;
c)特に(これらに限定されないが)脂肪酸およびそのエステルまたはアミド誘導体、特にグリセロールモノオレエート、ならびに単環式および多環式カルボン酸誘導体からなる群から選択される潤滑性添加剤または摩耗防止剤。そのような添加剤の例は、以下の文書:EP680506、EP860494、WO98/04656、EP915944、FR2772783、FR2772784に示されている;
d)特に(これらに限定されないが)長鎖オレフィン/(メタ)アクリル酸エステル/マレイミドターポリマーおよびフマル酸/マレイン酸エステルポリマーからなる群から選択される曇点添加剤。そのような添加剤の例は、FR2528051、FR2528423、EP112195、EP172758、EP271385、EP291367に示されている;
e)EP573490に記載されているようなオレフィンおよびアルケニルナイトレートベースのポリマーからなる群から選択される多機能性低温作業性添加剤;
f)例えば、脂肪酸エステルダイマーおよびアミノトリアゾールなどの防食添加剤。
【0065】
これらの追加の添加剤は、燃料の総重量に基づいて5~1000重量ppm(それぞれ)の、好ましくは50~500重量ppmの範囲の量で存在し得る。
【0066】
添加剤の組成物は、単独でまたは混合物で有機溶剤を有利に含んでもよく、それは、例えば、「SOLVESSO」という名称で販売されている溶剤などの芳香族炭化水素溶剤、アルコール、エーテルおよび他の酸素化化合物、およびHVOとして公知の水素化処理植物油を含むヘキサン、ペンタンまたはイソパラフィンなどのパラフィン系溶剤から選択されてもよい。
【0067】
好ましい1つの実施形態によれば、添加剤の組成物は、アルコールから選択される少なくとも1種の溶剤を含む。特に有利に、添加剤の組成物は、好ましくはエタノールおよび2-エチルヘキサノールから選択される、少なくとも1種のC1~C8一価アルコールを含む。
【0068】
液体燃料
本発明による添加剤の組成物の使用は、周囲温度(20℃)および大気圧(1.013×10Pa)で液体状の燃料に適用される。この燃料は、ディーゼルエンジンに供給することが意図される。
【0069】
そのような燃料は、鉱物源、動物源、植物源および合成源からなる群から選択される1種または複数種の源からの少なくとも一部の液体炭化水素を典型的に含む。
【0070】
燃料は、炭化水素燃料および非本質的に炭化水素の燃料、ならびにそれらの混合物から有利に選択される。
【0071】
炭化水素燃料により、炭素および水素のみからなる1種または複数種の化合物からなる燃料を意味する。
【0072】
非本質的に炭化水素の燃料により、炭素および水素から本質的にならない1種または複数種の化合物からなる燃料を意味し、すなわち、それらは、他の原子、特に酸素原子も含む。
【0073】
炭化水素燃料は、100~500℃の範囲の沸騰温度を有する中間留分を含む。これらの留出物は、例えば、粗炭化水素の直接蒸留により得られる留出物、真空留出物、水素化処理留出物、真空留出物の接触分解および/または水素化分解からの留出物、ARDS(常圧残油脱硫)および/またはビスブレーキングなどの転換プロセスの結果生じる留出物、フィッシャートロプシュ留分の再生の結果生じる留出物、植物および/または動物バイオマスのBTL(バイオマスツーリキッド)転換の結果生じる留出物などのバイオディーゼルならびにHVOまたはHDRD(水素化由来再生可能ディーゼル)として当業者に公知の水素化処理植物油から選択されてもよい。炭化水素燃料は、典型的にはガス油(ディーゼル燃料とも呼ばれる)である。
【0074】
ガス油には、特に、すべての商業的に入手可能なディーゼルエンジン燃料組成物が含まれる。代表例は、規格NF EN590に準拠するガス油である。
【0075】
非本質的に炭化水素の燃料には、特に、植物および/または動物油および/または油エステルが含まれる。
【0076】
炭化水素燃料と非本質的に炭化水素の燃料のブレンドは、典型的にはタイプBxのガス油である。
【0077】
ディーゼルエンジン用のタイプBxのガス油は、脂肪酸エステル(FAE)を得るためにこの油をアルコールと反応させることにより得られる、エステル交換と呼ばれる化学プロセスにより転換された植物または動物油エステル(使用済み食用油を含む)x%(v/v)を含むガス油である。メタノールおよびエタノールが、それぞれ脂肪酸メチルエステル(FAME)および脂肪酸エチルエステル(FAEE)を得るために使用される。「B」という文字の後に、ゼロより大きく100以下の数字xが続き、それは、ガス油に含まれるFAEの百分率を示す。したがって、B99は、FAE 99%および化石起源(鉱物源)の中間留分1%を含み、一方、B20は、FAE 20%および化石起源の中間留分80%を含む、など。したがって、酸素化化合物を含まないタイプBのガス油と、植物油または脂肪酸エステル、通常メチルエステル(VOMEまたはFAME)x%(v/v)(ここで、xは、0~100の範囲の数字である)を含むタイプBのガス油が区別される。FAEがエンジン内で単独で使用されるとき、燃料はB100と呼ばれる。
【0078】
好ましい1つの実施形態によれば、燃料は、ガス油、バイオディーゼル、植物または動物油エステルx%(v/v)(xは、ゼロより大きく100以下の数字である)を含むBタイプのガス油、水素化処理植物油(HVO)、およびそれらの混合物から選択される。
【0079】
1つの特に好ましい実施形態によれば、燃料は、植物または動物油エステルx%(v/v)(xは、ゼロより大きく100以下の数字である)を含むタイプBxのガス油から選択される。植物油エステルは、とりわけ、脂肪酸メチルエステル(FAME)および脂肪酸エチルエステル(FAEE)から選択される。
【0080】
燃料の硫黄含有量は、好ましくは、1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは50ppm以下、またはさらに10ppm未満であり、有利には硫黄フリーである。
【0081】
使用
本発明による添加剤の組成物は、圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物ならびに一酸化炭素および/または未燃炭化水素の排出量を減少させるために使用される。好ましくは、使用は、微粒子排出量も減少させるためである。
【0082】
これにより、液体燃料への本発明による添加剤の組成物の取込みが、本発明による組成物を含まない同じ燃料に対して、前記燃料が供給される圧縮-着火エンジンから産出される窒素酸化物ならびに一酸化炭素および/または未燃炭化水素の排出量を減少させる効果を生むことを意味する。好ましくは、減少効果は、3つすべてのタイプの排出物、すなわち窒素酸化物、一酸化炭素および未燃炭化水素について生まれる。好ましくは、減少効果は、微粒子排出量についても生まれる。
【0083】
第1の好ましい実施形態によれば、圧縮着火エンジンまたはディーゼルエンジンは、ハイブリッドディーゼルエンジンまたは直噴ディーゼルエンジン、好ましくは直噴ディーゼルエンジン、特にコモンレール直噴(CRDI)システムを備えるディーゼルエンジンである。
【0084】
第2の好ましい実施形態によれば、圧縮着火またはディーゼルエンジンは船舶用エンジンである。
【0085】
窒素酸化物、一酸化炭素、未燃炭化水素および微粒子の排出レベルは、欧州規制ECE-R83.05に定義された方法にしたがって測定される。
【0086】
これらの規制は、欧州における車両の型式承認および異なるタイプの排出物の測定のための調和試験手順を定義する。これらの規制は、世界調和試験手順であるWLTP(World harmonised Light duty Test Procedure)として公知の標準化された試験を参照して定義される。この試験は、高精度排出量分析計を使用して、WLTC(World harmonised Light duty Test Cycle)として公知の定義された試験サイクル中の標準化された車両(Euro 6)の排出量を測定するものである。
【0087】
添加剤の組成物は、以下のような量で有利に使用される:
-添加剤(i)の総重量は、燃料の総重量に対して10~2000重量ppmの、好ましくは20~1000重量ppmの、より好ましくは50~500重量ppmの、さらにより好ましくは200~400重量ppmの範囲である;
-添加剤(ii)の総重量は、燃料の総重量に対して10~1500重量ppmの、好ましくは20~1000重量ppmの、より好ましくは50~500重量ppmの、さらにより良好には150~400重量ppmの範囲である。
【0088】
本発明による使用は、既存の排気ガス後処理装置に適合し、かつそのような装置を備えた車両により排出される汚染物質のレベルをさらに減少させること、および/またはこの装置の寿命を延ばすこと、および/またはこの装置のメンテナンス作業の間隔をあけることを可能にする。
【0089】
したがって、特に有利な実施形態によれば、圧縮着火エンジンは、SCRとして公知の選択触媒還元装置、EGRとして公知の排気ガス再循環装置、DPFとして一般に公知の粒子フィルタータイプ装置、ならびに同じ装置内で選択触媒還元と粒子濾過の機能を組み合わせるSCRoF(SCRオンフィルター)またはSCRFまたはSDPFとして公知の装置の中から好ましくは選択される1つまたは複数の排気ガス後処理装置を備えている。
【0090】
プロセスまたは方法
圧縮-着火内燃エンジン内の液体燃料の燃焼中の窒素酸化物の排出量ならびに一酸化炭素および未燃炭化水素から選択される少なくとも1つのタイプの汚染因子の排出量を低減するためのプロセスまたは方法は、上記のような添加剤の組成物を前記燃料組成物に加えるものである。
【0091】
好ましくは、方法は、窒素酸化物、一酸化炭素および未燃炭化水素の排出量を低減するための方法である。特に好ましい実施形態によれば、それはまた、固体粒子の排出量を減少させる。
【0092】
添加剤の組成物を構成する添加剤は、別々にまたは混合物として、この場合はおそらく有機溶剤中の分散物として、特に添加剤パッケージの形態で精製装置内で液体燃料に取り込むことができ、かつ/または精製装置の下流で取り込むことができる。
【0093】
内燃エンジン内のこうして添加物を添加された燃料の燃焼は、使用の範囲内で先述した方法にしたがって測定される窒素酸化物、一酸化炭素および微粒子の排出量の減少に対する効果を生む。したがって、様々なタイプの汚染物質の同時減少が達成される。
【0094】
添加剤の組成物、燃料および圧縮着火エンジンに供給する燃料におけるその使用の上の説明は、本発明によるプロセスまたは方法に十分に適用される。
【0095】
以下の例は、本発明の例示のために示され、その範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例
【0096】
規格EN590の仕様を満たすB7タイプのオーストリア産ガス油を使用して以下の試験を行った。
【0097】
このバージン燃料はG0と呼ばれる。
【0098】
以下の化合物を含む添加剤パッケージA1を燃料G0に加えることにより第1の燃料組成物G1を調製した:
-プロセタン添加剤:燃料G1中300重量ppmの含有量の硝酸エチルヘキシル、
-堆積抑制添加剤:燃料G1中42重量ppmの含有量の四級アンモニウム基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミド、
-堆積抑制添加剤:燃料G1中30重量ppmの含有量のトリアゾール基で官能化されたポリイソブチレンスクシンイミド。
【0099】
燃料G2中350重量ppmの含有量のアルキルフェノールタイプの化合物の混合物(15重量%の2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、および85重量%の2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールと2,5-ジメチル-4-t-ブチルフェノールの縮合生成物からなる)を燃料組成物G1に加えることにより第2の燃料組成物G2を調製した。
【0100】
1560cmの排気量および88kWのディーゼルエンジンを備えたOpel Crossland Xを使用して、標準化されたWLTP試験プロトコルにしたがって3つの同一の試験を行った。この車両は、Euro6b基準に準拠する。
【0101】
WLTPプロトコルに関連する運転サイクルは、最初に低温始動して、1,800秒(30分)の期間にわたり23キロメートルの規定の距離にわたってシャシダイナモメータ上で車両を運転するものである。運転プロファイルは、停止(速度ゼロ)により分離された主な4つの段階にわたって可変運転速度を交互に切り替える。
【0102】
3つの試験は、エンジンに供給する燃料のタイプ(それぞれG0、G1およびG2)のみが異なる。
【0103】
各試験について5サイクル行った(結果のロバスト性および統計的妥当性を確保するために、各燃料を5回評価した)。
【0104】
欧州規制ECE-R83.05に定義された方法にしたがって各試験中に排出される汚染物質のレベルを測定した。
【0105】
得られた結果(5サイクルの平均)を以下の表Iに示す。
【0106】
【表1】
【0107】
上の結果は、添加剤パッケージA1をバージンガス油G0に加えると、結果として窒素酸化物(NOx)および微粒子排出量が著しく増加することを示す。本発明によるアルキルフェノール添加剤をさらに含むディーゼル組成物G2は、NOx排出量を極めて著しく、比較ガス油G1に対して28%およびバージン参照ガス油G0に対して17%減少させることを可能にする。粒子に関して、組成物G2は、排出量を比較ガス油G1に対して95%およびバージン参照ガス油G0に対して88%減少させることを可能にする。
【0108】
加えて、ガス状排出物の総レベルは、燃料G2により、比較燃料G1およびG0に対して非常に強く低減される。
【国際調査報告】