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特表2024-525930迅速な記録応答を有する水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】迅速な記録応答を有する水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサー
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/06 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
C23C14/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503798
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 US2022037256
(87)【国際公開番号】W WO2023003764
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,333
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520435429
【氏名又は名称】インフィコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】リー デイヴィッド.ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ソン チュンファ
(72)【発明者】
【氏名】リンザン モハメド ブハリー
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA08
4K029BA02
4K029BA33
4K029BA35
4K029CA05
(57)【要約】
半導体プロセスを監視するための水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーを製造する方法は、自体の表面に堆積された材料の質量を測定するように構成された水晶振動子を設けるステップ(i)と、単位面積当たりの表面欠陥の数を増加させることで水晶振動子の表面を修飾することにより質量の迅速な堆積のための表面積を増加させるステップ(ii)とを含む。交流電源によってパルスされたときの水晶振動子の共振周波数の変化の結果として水晶振動子の質量変化が記録される。表面修飾により、堆積プロセスにさらされたときのQCMセンサーの記録応答が強化される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体プロセスを監視するために使用される水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーを製造する方法であって、
自体の表面の堆積質量を測定するように構成された水晶振動子を設けるステップであって、前記水晶振動子の共振周波数の変化の結果として質量差が記録されるステップと、
前記水晶振動子の前記表面を修飾するステップとを含み、
前記表面を修飾するステップでは、表面欠陥の量を増加させて前記質量を迅速に捕捉することにより、前記QCMセンサーの記録応答を強化する、方法。
【請求項2】
非半金属元素を修飾された前記表面に付着させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
半金属元素を修飾された前記表面に付着させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非半金属元素は、水素、ヘリウム、窒素、酸素、フッ素、ネオン、塩素、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、臭素、炭素、リン、硫黄、セレン及びヨウ素からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記半金属元素は、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記非半金属元素を付着させるステップは、吸着によって実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記半金属元素を付着させるステップは、吸着によって実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記表面を修飾するステップは、欠陥の量をサブマイクロメートルのスケールまで増加させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記表面を修飾するステップは、オングストロームオーダーの表面修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記表面を修飾するステップは、ナノメートルの十分の一のオーダーの表面修飾を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
薄膜堆積プロセスを監視するために使用される水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーであって、
1対の導電性電極の間に配置され、水晶振動子の表面の蓄積質量を測定するように構成された水晶振動子ディスク
を含み、前記水晶振動子の共振周波数の変化の結果として質量変化が記録され、
前記水晶振動子の記録応答を強化するために、前記水晶振動子の前記表面は、表面欠陥の量を増加させることによって修飾される、水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサー。
【請求項12】
前記水晶振動子の修飾された前記表面に付着した半金属元素を更に含む、請求項11に記載のQCMセンサー。
【請求項13】
前記水晶振動子の修飾された前記表面に付着した非半金属元素を更に含む、請求項11に記載のQCMセンサー。
【請求項14】
前記水晶振動子の修飾された前記表面に付着した非半金属元素と半金属元素との組み合わせを更に含む、請求項11に記載のQCMセンサー。
【請求項15】
前記半金属元素は、水素、ヘリウム、窒素、酸素、フッ素、ネオン、塩素、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、臭素、炭素、リン、硫黄、セレン及びヨウ素からなる群から選択される元素を含み、前記非半金属元素は、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルからなる群から選択される元素を含む、請求項14に記載のQCMセンサー。
【請求項16】
定められた堆積速度を迅速に記録するために使用される水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーを製造する方法であって、
QCM表面の欠陥の面積割合を増加させるステップを含む、方法。
【請求項17】
前記QCM表面を非半金属元素で処理するステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記QCM表面を半金属元素で処理するステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記非半金属元素は、水素、ヘリウム、窒素、酸素、フッ素、ネオン、塩素、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、臭素、炭素、リン、硫黄、セレン及びヨウ素からなる群から選択される元素を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記半金属元素は、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルからなる群から選択される元素を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記QCM表面を非半金属元素で処理するステップと、
前記QCM表面を半金属元素で処理するステップとを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記QCM表面を処理するステップは、原子層堆積、化学気相堆積、原子ビーム衝撃又はイオンビーム衝撃及び高電圧スパッタリングからなる群から選択される薄膜堆積を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記QCM表面の欠陥の割合を増加させるステップは、液相環境、気相環境及びプラズマ相環境を含む反応環境内で実行される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記水晶振動子の表面から材料を除去/剥離して、前記表面を修飾するステップを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
表面吸着を達成するために必要な前駆体/試薬は、原子、イオン、ラジカル及びそれらの組み合わせを含む化学的形態及び物理的形態のうちの1つであることができる、請求項15に記載のQCMセンサー。
【請求項26】
前記表面の修飾は、既存の水晶振動子に対して実行される、請求項15に記載のQCMセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条及び米国特許法施行規則1.53の関連部分に従って、本願は、2021年7月19日に出願された米国特許出願第63/223,333号の利益及び優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
堆積プロセスとエッチングプロセスは、無数の産業の製造現場での重要なステップの2つである。製造工場では、多くの場合、質量分析計、光学分光計、RFセンサー、真空計などのセンサーの統合グループをよく使用して、これらのプロセスを監視する。これらのセンサーは、基板に堆積されたか又はそこから除去された材料に関する詳細な情報を提供するが、これらのセンサーによって収集されたデータを相互に関連付けて、様々なチャンバ内にある基板での実際の膜の蓄積又は除去を監視するには多大な労力が必要とされる。
【0003】
膜成長速度を監視するために適用される最もよく知られ、最も汎用性の高いセンサーの1つは、水晶振動子マイクロバランス(Quartz Crystal Microbalance、QCM)センサーである。これらのセンサーは、水晶マイクロバランス(Quartz MicroBalance、QMB)センサー及び水晶振動子ナノバランス(Quartz Crystal Nanobalance、QCN)センサーとしても知られ、水晶振動子の共振周波数の変化を測定することで質量変化を測定する。音響共振器の表面での膜の堆積/除去により結晶表面での質量の付加又は減少により共振周波数が変化する。
【0004】
典型的な堆積プロセスでは、ターゲット基板上にコーティングされる材料がソースから蒸発又は昇華によって到着し、基板で凝縮して所望の膜を形成する。この膜の物理的特性及び電気的特性は、多くの場合、基板の温度及び材料の凝縮速度などの要因によって決定されるため、基板に実際に堆積する前に、蒸発/昇華の速度を完全に制御することが重要である。QCMセンサーは、基板の付近に配置され、堆積速度及び蓄積された厚さを反映する代替手段として機能する。QCMセンサーは、ソースの蒸発速度とQCM検出速度の間の強い相互関係によって、堆積プロセスを制御するための受動的又は能動的に効果的な手段であることが証明されている。
【0005】
QCMセンサーは、連続した基板製造プロセスにおいて定期的かつルーチン的に交換する必要がある消耗品デバイスである。従来のQCMセンサーは、所定の期間(即ち、数分間から数時間程度)にわたって機能し、1つのQCMセンサーが使い果たされると、堆積プロセスが連続している間、別のQCMセンサーを監視位置にその場で交換する必要がある。より具体的には、プロセス監視中に消費された各結晶を交換するために、いくつかのQCMをカルーセル内に収容して順番に回転させ得る。一般的に、特定の時間に特定の場所を監視するために使用されるQCMは、1つだけである。このQCMセンサーは、その耐用期間の終わりに達すると、カルーセルのシャッター付き部分の下にその場で配置された新しいQCMセンサーを前進させて交換される。
【0006】
理論的には、新しく交換された各結晶は、最適な製造制御のために、以前に定められたソースの蒸発速度を即座に記録する必要がある。多くの堆積材料にとって残念なことに、QCMセンサーは、典型的に、正確な定常状態の応答、つまり材料堆積の正確な速度を正確に記録するために必要な応答時間に達するまでに、短いながらも重大な遅延を示す。このような遅延により、電源が誤って反応し、誤った信号がソース制御に送信され、その結果、蒸発能/昇華能が一時的に増加し、基板の実際の膜厚に重大な誤差が生じる可能性がある。一部の材料に対しては、このような誤差が無視できるが、他の材料に対しては、QCMセンサーによる監視の遅延によって引き起こされる問題を軽減するための様々な努力が失敗に終わっている。
【0007】
マグネシウムは、QCMセンサーが初期検出において重大な遅延を示す多くの材料のうちの1つである。現在、真のマグネシウム堆積速度を迅速に応答又は記録するために利用できる解決法がない。応答遅延を軽減するために、操作者は、実際の測定値を受け取る前に、同じプロセスチャンバ内でQCM結晶振動子を少量のマグネシウムでプレコーティングすることが知られている。この追加のステップは、手間がかかり、材料費を追加するため、結晶振動子製造の一部として実行することができない。また、マグネシウムでプレコーティングされた表面層は、輸送及び/又は保管の便宜を目的とした長期間の大気への曝露に耐えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、Mgコーティング堆積プロセスにおいて真のソースフラックスを迅速に検出又は記録するQCMセンサーの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態では、半導体プロセスを監視するための水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーを製造する方法であって、自体の表面に堆積された材料の質量(mass)を測定するように構成された水晶振動子を設けるステップ(i)と、単位面積当たりの表面欠陥の数を増加させることで水晶振動子の表面を修飾することにより質量の迅速な堆積のための表面積を増加させるステップ(ii)とを含む方法が提供される。交流電源によってパルスされたときの水晶振動子の共振周波数の変化の結果として水晶振動子の質量変化が記録される(registered)。表面修飾により、堆積プロセスにさらされたときのQCMセンサーの記録(registration)応答が強化される。
【0010】
別の実施形態では、水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーが薄膜堆積プロセスを監視するために使用され、水晶振動子ディスクが一対の導電性電極の間に配置され、この水晶振動子ディスクは、それ自体の表面に蓄積された膜の質量を測定するように構成される。水晶振動子ディスクの表面は、欠陥の数が表面に沿った単位面積当たりの閾値数を超えて増加するように修飾される。交流電源によってパルスされたときの水晶振動子ディスクの共振周波数の変化の結果として質量変化が記録される。修飾された表面により、質量の迅速な堆積のための表面積が増加し、QCMセンサーの記録応答が強化される。
【0011】
本開示の一実施形態では、QCMの電極表面のナノメートルからサブミリメートのスケールの範囲にある表面欠陥の量が大幅に増加される。微視的な意味では、生成された表面構造欠陥は、ピット、エッジ、アイランド又はそれらの任意の組み合わせの形態であることができる。
【0012】
別の実施形態では、非金属元素(水素、ヘリウム、窒素、酸素、フッ素、ネオン、塩素、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、臭素、炭素、リン、硫黄、セレン及びヨウ素など)及び半金属元素(ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルなど)は、結晶電極の表面に吸着される。表面に追加された元素は、単一種であってもよいし、非金属元素及び/又は半金属元素の任意の混合種の組み合わせであってもよい。更に、表面上に形成されたこれらの追加された非金属元素及び半金属元素の構造は、吸着原子、クラスター、規則的ナノパターン又は非規則的ナノパターン、部分層、完全層又は多層などの任意の形態であることができる。
【0013】
上記実施形態は、単なる例示的なものである。本明細書において説明される他の実施形態は、開示された主題の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の特徴を理解することができるように、特定の実施形態を参照して詳細に説明がされ、これらの実施形態のいくつかは添付図面に示されている。しかしながら、添付図面は、特定の実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するとみなされるべきではなく、これは、開示された主題の範囲が他の実施形態も包含するためであることに留意されたい。図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、一般的に特定の実施形態の特徴を示すことに重点が置かれている。図面において、同様の参照番号は、異なる図面における同様の部品を示すために用いられる。
【0015】
図1】自体の各面に沿って導電性電極の間に配置された水晶振動子ディスクを有する水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーの分離斜視図である。
図2A図1に示される水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーの底面図である。
図2B図1に示される水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーの上面図である。
図3】本開示の教示に従って製造された、処理された水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサー表面の拡大図であり、センサー表面は、トポロジカルに修飾されており、トポロジカル修飾により、固定領域内の表面欠陥が増加し、センサーの応答速度が向上する。
図4】修飾された水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーの拡大図であり、QCMセンサーの応答速度を向上させるために、平方サブマイクロメートルのスケールのセンサー表面が非金属元素及び半金属元素の吸着によって処理されている。
図5】平方サブマイクロメートルのスケールの修飾されたQCMセンサー表面の拡大図であり、センサー表面は、(i)表面欠陥の量を増加させるためにトポロジカルに修飾されており、(ii)QCMセンサーの応答速度を向上させるために非金属元素及び半金属元素の吸着によって処理されている。
図6】従来のQCMセンサーに関連する応答速度と、本開示の教示に従って製造された修飾/処理されたQCMセンサーに関連する応答速度とを比較するグラフである。
図7】複数の従来のQCMセンサーに関連する応答速度と、同じ数の修飾/処理されたQCMセンサーに関連する応答速度とを比較するグラフである。
図8】従来のQCMセンサーと修飾/処理されたQCMセンサーの堆積速度監視における全体的なセンサー安定性を複数時間にわたって比較するグラフである。
【0016】
対応する参照文字は、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書において記載される例は、いくつかの実施形態を例示するものであるが、決して範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1、2A及び2Bにおいて、水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサー10の斜視図、底面図及び平面図はそれぞれ、水晶振動子ディスク30の各面に配置された導電性電極20、24を含む。1対のコネクタ40a、40bはそれぞれ、水晶振動子ディスク30の各側に配置され、導電性電極20、24のそれぞれに接続され、それにより水晶振動子の質量が変化するにつれて、即ち堆積及び/又はエッチングプロセスに応答して、水晶振動子の周波数の変化を記録する。使用時、QCMセンサー10は、半導体又は有機発光ダイオード(OLED)製造システムのプロセスチャンバ内で監視されるエリア又は領域の付近に配置される。QCMの表面の変化を、プロセスチャンバ内の基板材料の表面で実行されている同じプロセスと相互関連付けることができる。より具体的には、QCMセンサー10は、材料の堆積時に変化する共振特性を有する。質量の変化によりQCM結晶の共振応答が変化し、これが、基板の表面で予想される変化が生じていることを示す。
【0018】
本発明の背景技術で述べたように、QCMセンサー10は、消耗品であり、製造サイクルの過程で定期的に交換する必要がある。更に、このようなQCMセンサー10は、典型的に、正確な応答を記録する前にプロセス条件に順応するために、短いながらも重大な期間を必要とする。QCMセンサー10の応答速度を向上させる努力において、本発明者らは、QCMセンサー10の表面修飾により、QCMセンサー10をプロセスチャンバ条件に順応させるのに必要な時間を大幅に短縮することができることを認識した。
【0019】
図3において、水晶振動子(QC)30の第1修飾QC表面100は、本開示の教示に従って製造される。ここで、QC表面100は、サブマイクロメートルのスケールの表面積にわたって、複数のトポロジカルな凹み、欠陥及び等高線/エッジ104、106、108(即ち以下、集合的に表面修飾又は表面欠陥と呼ばれる)を示す。図示されるように、固定エリア内の欠陥104、106、108の割合が増加すると、堆積材料を効率的かつ迅速に付着させるセンサーの能力が強化される。より具体的には、表面修飾は、(i)オングストロームから(ii)数十ナノメートルのスケールである。この極めて小さいサイズ、即ち原子及び分子のサイズに匹敵するサイズでは、表面欠陥により、堆積した原子又は分子を効果的に捕捉することができる。電極の表面修飾により、堆積した原子又は分子を監視するQCMの効率及び容量が向上する。
【0020】
図4において、本開示の別の実施形態は、QCMセンサー30の応答速度を高めるためにQCによって吸着された非金属元素120及び/又は半金属元素122を有する平方サブマイクロメートルの処理表面102を含む。非金属元素120は、水素、ヘリウム、窒素、酸素、フッ素、ネオン、塩素、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、臭素、炭素、リン、硫黄、セレン及びヨウ素からなる群から選択される元素を含んでもよい。半金属元素122は、ホウ素、シリコン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルからなる群から選択される元素を含んでもよい。これらの追加された非金属元素120及び半金属元素122の構造は、吸着原子、クラスター、及び規則的ナノパターン又は非規則的ナノパターンを含む様々な形態であることができる。非金属元素及び/又は半金属元素の表面分布もまた、ランダムな分布、不規則なグループ124(左下隅に示される)又はパターン化されたグループ128(右上隅に示される)を含む様々な形態であり得る。
【0021】
図5において、別の実施形態は、表面修飾104、106、108を含む修飾/処理されたQCM表面103を示し、表面修飾104、106、108はそれぞれ、(図4に関連して説明したものなど)吸着された非金属元素120及び/又は半金属元素122と組み合わせた、面積寸法が平方サブマイクロメートルにわたるピット(図3に示されるものなど)の追加を表す。QCMセンサー表面103は、(i)表面欠陥の量を増加させることによって修飾されており、(ii)非半金属元素120、122元素の吸着によって処理されている。したがって、QCMセンサー30の応答速度を向上させるために、前述の表面処理のうちの少なくとも1つを実行してもよい。
【0022】
図6において、グラフは、従来のQCMセンサーと修飾されたQCMセンサーとの間の比較を示す。このグラフは、従来技術の従来のQCMセンサーに関連する第1曲線200及び修飾されたQCMセンサーに関連する第2曲線300に関する、時間(分単位)に対する(10Hzのデータ収集速度の)応答速度をプロットする。曲線200を調べると、約4~5分間の期間T200にわたって性能が徐々に向上していることが明らかである。曲線200が定常応答を生じたときに定常状態条件に達し、その時点で性能が最適化される。曲線300を調べると、約5秒未満の期間T300にわたって、ほぼ瞬時に性能が向上し、最適な性能条件に達することが明らかである。したがって、修飾されたQCMセンサーは、従来のQCMセンサーと比較して、性能の準備性が大幅に向上する。
【0023】
図7において、グラフは、複数の従来のQCMセンサーと修飾されたQCMセンサーとの間の比較を示す。グラフは、6つの従来のセンサーと6つの修飾されたセンサーの応答速度をプロットする。曲線200-1、200-2、200-3、200-4、200-5及び200-6を調べると、6つの従来のQCMセンサー30は全て、TTR200又は約4~5分間の期間にわたって性能が徐々に向上することが明らかである。一方、修飾されたQCMセンサーに関連する曲線300-1、300-2、300-3、300-4、300-5及び300-6は、わずか数秒程度のTTR300の期間にわたってほぼ瞬時の応答速度を示す。前と同じように、このグラフは、修飾されたQCMセンサーを適用した場合に達成できる一貫性の程度を示す。
【0024】
図8において、グラフは、複数の従来のQCMセンサー及び複数の修飾されたQCMセンサーについての、約5時間の全製造サイクルにわたる応答速度を示す。具体的には、グラフは、6つの従来のセンサーと6つの修飾されたセンサーの応答速度をプロットする。曲線200-1、200-2、200-3、200-4、200-5及び200-6を調べると、6つの従来のQCMセンサーは全て、4~5時間の製造サイクルのTTC200の期間にわたって安定した速度監視性能を示すことが明らかである。同様に、曲線300-1、300-2、300-3、300-4、300-5及び300-6は、同じ期間TTC300(TTC300=TTC200)にわたって同じ性能特性を示す。したがって、QCMセンサーの処理の結果として性能の損失はない。
【0025】
要約すると、従来技術の方法によって作られた結晶は、マイクロメートルのスケールの十分の一の表面粗さを有し、即ち、堆積した原子又は分子のサイズと比較すると、大きすぎる。換言すれば、ランダムに選択されたナノメートルのスケールのエリア内では、電極表面は、局所的に全体的に平坦であるかのように見える。本開示では、原子、分子及び/又はイオンの外部衝撃により、オングストロームから数十ナノメートルのスケールで極めて小さい表面欠陥が生成される。この極めて小さいサイズ、即ち原子及び分子のサイズに匹敵するサイズでは、欠陥により、堆積した原子又は分子を効果的に捕捉することができる。この大量の表面欠陥により、堆積した原子又は分子を監視する際のQCM電極の容量が増加する。
【0026】
一実施形態では、下にある電極-石英界面を維持しながら、即ち従来の滑らかな表面を有しながら、結晶表面30上に所望のサイズ及び量の欠陥が製造される。原子、分子及び/又はイオンの外部衝撃は、慎重に選択され、処理プロセス中に閾値を超える時間とエネルギー量で表面に衝撃を与えるように正確に制御される。ある条件では、衝撃エネルギーが低すぎると、欠陥を効果的に生成することができず、別の条件では、処理時間が不十分であると、単位面積当たりの表面欠陥の量が不十分になる可能性がある。更に別の条件では、非常に大きな衝撃エネルギー又は過度に長い処理がQCM電極表面を破壊するため、音波がランダムに散乱して非干渉性になる可能性がある。その結果、QCMは、正確な速度/厚さの監視に対して不安定になる。
【0027】
追加の実施形態は、上述した実施形態のいずれか1つを含み、その構成要素、機能又は構造のうちの1つ以上が、上述した異なる実施形態の構成要素、機能又は構造のうちの1つ以上と交換され、それに置換されるか又はそれに強化される。
【0028】
本明細書において説明される実施形態に対する様々な変更及び修飾は、当業者に明らかであることを理解されたい。このような変更及び修飾は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、かつ意図される利点を損なうことなく行うことができる。したがって、そのような変更及び修飾は、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図される。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態は、前述の明細書に開示されているが、前述の記載及び関連図面に提示された教示の利益を有する本開示の多くの修飾及び他の実施形態が本開示に関係する範囲で想到されることは、当業者には理解される。したがって、本開示は、本明細書において開示された以上の特定の実施形態に限定されず、多くの修飾及び他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。更に、本明細書及び特許請求の範囲において特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、本開示及び特許請求の範囲を限定するためのものではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】