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  • 特表-非共有結合性遮蔽ポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】非共有結合性遮蔽ポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20240705BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240705BHJP
   C07K 7/04 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240705BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240705BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K45/00
A61K47/34
A61K48/00
C07K14/00 ZNA
C07K7/04
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503841
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022070607
(87)【国際公開番号】W WO2023002014
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】21382665.4
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026366
【氏名又は名称】ポリペプチド セラピューティック ソリューションズ,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フェリップ レオン,カルレス
(72)【発明者】
【氏名】ドルツ ペレス,アイレネ
(72)【発明者】
【氏名】エステバン ペレス,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】エーレラ ムニョス,リディア
(72)【発明者】
【氏名】ネボット カルダ,ヴィセント ジョゼップ
【テーマコード(参考)】
4B029
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB01
4B029BB11
4B029DG10
4C076AA95
4C076EE17
4C076EE41
4C076FF68
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZC80
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045BA21
4H045BA31
4H045BA33
4H045BA56
4H045BA61
4H045BA62
4H045BA71
4H045BA72
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、細胞への、タンパク質または核酸を含む、活性成分の送達のための、正に荷電したタンパク質またはポリカチオンベースの非ウイルスベクターの遮蔽として有用である、新規アニオン性ポリマーに関する。
【選択図】図なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib)のアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムなもしくはブロックのもしくはグラフトのコポリペプチドを含む、式(Ia)または(Ib)の化合物の、またはその薬学的に許容される塩のいずれかの、任意の立体異性体または立体異性体の混合物;
【化1】
式中Yは、-CO(CH)p-CO-および-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-CO-からなる群から選択され;
Zは、単結合、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO(CH)pNH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;
oは、1~2から選択される整数であり;
式中p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:
【化2】
a、b、c、d、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしa、b、c、d、e、f、gおよびhの少なくとも1つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C~C)アルキルからなる群から選択され、ただしRは、XがOである場合存在せず;
およびRは、Hおよび-CHからなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化3】
式中s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中「/」は、記号の両側の角括弧により定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示すが、式IaおよびIb中の角括弧で定義される繰り返し単位は、説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよくかつ繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
式中式Ibにおいて、R5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)のそれぞれの繰り返し単位と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖の-(C~C)アルキル、直鎖または分岐鎖の-CO(C~C)アルキル、-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロアリール、-(C~C10)アラルキル、-(C~C)アルキル-O-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロシクロアルキル、-(C~C10)アルコキシ、-(C~C10)アリールオキシ、-(C~C10)アラルコキシ、-(C~C10)ヘテロアラルコキシ、-(C~C10)アルキル-O-(C~C10)アリールオキシ、アミン保護基、天然のまたは非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF、-NH、-NH-(C~C)アルキル、NR、-NH-CO-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル、-NO、-N、-CO-(C~C)アルキル、-CO-O-(C~C)アルキル、-SOH、-SONH、-SO-N((C~C)アルキル)、-COOH、CONH、および-CON((C~C)アルキル)からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびRは、H、-(C~C)アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される。
【請求項2】
mが、20~160から選択される整数であり、かつnが、4~100から選択される整数であり;ただしm:nの比は1:5~10:1の範囲である、請求項1に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項3】
式(Ia)または(Ib)のものであり、Rが、-CHであり;かつRが、Hである、請求項1または2に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項4】
式(Ib)のものであり、式中Zは、単結合であり;R2は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され:かつR3は、-CH3である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項5】
式Ibのものであり;式中Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO(CH)pNH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-および-(R)z-からなる群から選択され;かつRは、(III)、(VI)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:かつ式中c、e、g、およびhは、1~20から独立して選択される整数であり;かつzは、5~35から選択される整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項6】
式(Ia)のものであり;R2は、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルから選択され;かつR3は、-CHである、請求項1~3のいずれか一項に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項7】
Yは、-CO-(CH)p-COであり;Rは、H、(X)および(XII)からなる群から選択され;RおよびRは、Hであり;mは、20~160から選択される整数であり;nは、4~100から選択される整数であり;ただしm:nの比率は1:5~10:1の範囲である、請求項6に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項8】
a)薬学的活性剤、獣医学的活性剤、美容上の活性剤、診断活的性剤、核酸、ペプチド、抗体、アプタマー、タンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の活性剤と共有結合的にまたは静電結合的に結合するカチオン性ポリマーであって、前記カチオン性ポリマーおよび前記少なくとも1つの活性剤が、正に荷電したナノ粒子を形成する、カチオン性ポリマーと;
b)前記ナノ粒子と静電的に相互作用する請求項1~7のいずれか一項に記載の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、
を含むポリマー錯体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの活性剤が、低分子量薬物、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸、アプタマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のポリマー錯体。
【請求項10】
前記核酸が、DNA/RNAハイブリッド、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、sgRNA、ドナーDNA、自己増幅/複製RNA、環状RNA(oRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、閉じた直鎖状DNA(clDNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、およびアンチセンスRNA(aRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、CRISPRガイドRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマー、およびリボザイムからなる群から選択される、請求項8または9に記載のポリマー錯体。
【請求項11】
前記核酸が、clDNAである、請求項10に記載のポリマー錯体。
【請求項12】
a)カチオンに荷電したタンパク質と、
b)前記タンパク質と静電により相互作用する請求項1~7のいずれか一項に記載の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、
または代わりに
a’)正に荷電したナノ粒子を形成するカチオン性ポリマーに共有結合的にまたは静電的に結合されるアニオンに荷電したタンパク質と、
b’)a’)の正に荷電したナノ粒子と静電的に相互作用する請求項1~7のいずれか一項に記載の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、
を含むタンパク質ベースの錯体。
【請求項13】
1つ以上の薬学的に、診断的に、獣医学的にまたは美容的に許容される賦形剤または担体と一緒に、請求項8~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリマー錯体または請求項12に記載の少なくとも1つのタンパク質ベースの錯体を含む組成物。
【請求項14】
医薬品における使用のための
a.請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、または代わりに
b.請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体、または代わりに
c.請求項13に記載の組成物
である治療用製品。
【請求項15】
細胞、組織または細胞外空間中に核酸またはタンパク質を送達する方法における使用のためのデバイスであって、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体、または請求項13に記載のものを含む組成物を含む、デバイス。
【請求項16】
錯体が標的細胞、組織、または細胞外空間中に導入され得るように、標的細胞、組織または細胞外空間と、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体または請求項13に記載の医薬組成物を含む溶液を接触させること;前記錯体をエンドソームから細胞質に移動させること;前記細胞中の前記錯体を解離すること;および前記細胞質中に前記核酸またはタンパク質を放出することを含む、標的細胞、組織または細胞外空間中に核酸またはタンパク質を送達する方法における使用のための、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体と細胞を接触させることを含む細胞をトランスフェクトする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月22日に出願の欧州特許出願EP21382665.4の利益を主張する。
【0002】
本開示は、タンパク質または核酸を含む、活性成分を細胞に送達するための、正に荷電したタンパク質またはポリカチオンベースの非ウイルスベクターのための遮蔽として有用である新規アニオン性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
細胞内にある標的部位への活性成分の送達は、適切な保護を提供しかつ活性成分を身体内の特定の組織に効率的に送達できる、適切な送達担体を必要とする。それにもかかわらず、送達担体は、細胞内のそれらの標的部位に到達するために、様々な細胞外および細胞内の障壁を克服しなければならない。ウイルスベクターは、非ウイルスベクターと比較して遺伝子送達に効率的であるが、その使用は、毒性、免疫原性、遺伝物質カーゴのサイズ制限を含むいくつかのリスクを伴う。一般に、非ウイルスベクターは、それらのトランスフェクション効率は比較的低いものの、大規模産生のためにより安全であり、かつ簡便である。
【0004】
活性成分、特に核酸を標的細胞に送達するための非ウイルス合成担体としてのカチオン性ポリマーの使用は、かなりの注目を集めている。
【0005】
ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(β-アミノエステル)、ポリアミドアミン、キトサン、およびPAsp(DET)などの他のポリアミンなどの、カチオン性ポリマーは、活性成分、特に核酸を担持し保護するナノ粒子(ポリカチオンベースの非ウイルスベクター)を形成することができる。したがって、これらのカチオン性ポリマーは、活性成分が細胞膜に入り最終的に核に到達するときに、それを運び、保護し得る。
【0006】
それにもかかわらず、ポリカチオンベースの非ウイルスベクターの開発が限られている主な理由の1つは、カチオン性ポリマーが送達プロセスの異なる段階において異なる機能を示すことが必要とされることにある。例えば、ナノ粒子のプロトン化された電位がエンドソーム不安定化の原因となり細胞質媒体中での放出を可能にし得るため、エンドソーム膜障壁を克服するためにベクターが高いアミン密度を有する必要があり得る。逆に、ナノ粒子またはタンパク質の正に荷電された特性は、血流中での凝集、および負に荷電した血清成分との非特異的相互作用を引き起こし得、それにより毛細血管中で血栓を生じる、またはタンパク質がその生理学的機能を行うことを妨げる。この高度に正に荷電された粒子(ポリプレックスまたはタンパク質)は、高い細胞毒性および過剰な免疫応答を誘導するリスクも有し得る。さらに、これらの正に荷電されたナノ粒子は、重度の血清阻害を引き起こし得、かつ血液から急速に除去され、これは、in vivoでのそれらの用途を妨げる。
【0007】
これらの問題を解決するためのよく知られた試みは、ナノ粒子の表面をポリエチレングリコール(PEG)で覆うことによる正電荷の遮蔽である。しかし、共有結合により結合したPEGの存在は、ポリプレックスの場合トランスフェクション効率を大幅に低下させる。なぜならナノ粒子の中性表面が、細胞取り込み効率を低下させ得るためであり、または、タンパク質の場合、活性部位の空間が妨げられるため、活性損失を引き起こし得るためであり、ナノ粒子の中性表面が細胞の取り込み効率を低下させ得るためである。また、PEGが免疫原性およびアレルギー反応を引き起こし得る抗PEG抗体を生成することも、よく知られている。
【0008】
したがって、当該分野で知られていることから、上記の問題を克服する新しい遮蔽戦略を見出す必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明者らは、血流、潜在的な異なる細胞および組織の指向性における凝集の問題が制限されるか完全に抑制されるため低い細胞毒性、高効率を有し、適切な血漿半減期、強化された透過性および滞留性、水溶液中での高溶解度、高い安定性を有して細胞へ、タンパク質または核酸を含む活性成分を送達するための正に荷電したタンパク質またはポリカチオンベースの非ウイルスベクターの遮蔽として有用な、新規アニオン性ポリマーを設計した。
【0010】
本発明の文脈において、用語「アニオン的に荷電したポリマー」、「ポリアニオン的に荷電したポリマー」、「アニオン性ポリマー」または同等物は、塩基性または生理学的pHにおいて正味の負電荷を含む、天然または非天然のアニオン性アミノ酸を含むポリマーを指し、かつ、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、またはそれらの組み合わせ、すなわち水素イオンを喪失すると、すでにアニオン性になっているものであるが、水素イオンを獲得すると中性になるであろうアニオン性基も含むものであり得る。側鎖にアニオン性基を有するポリペプチドはまた、酸性側鎖を有する公知のアミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のペプチド結合により得られるポリペプチド誘導体、ならびに任意のアミノ酸のペプチド結合およびその後の側鎖での置換によって得られ、アニオンに荷電した基を有するようになるポリペプチドを含む。
【0011】
本明細書で使用される、用語「非共有結合による結合」は、電子の共有を伴わず、むしろ分子間の電磁相互作用のより分散した変化を伴う結合を指す。非共有結合による結合は、静電相互作用、π相互作用、ファンデルワールス力、水素結合、および疎水効果などの、様々なカテゴリーに分類され得る。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様は、以下の式(Ia)または(Ib)を含むアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムもしくはブロックもしくはグラフトコポリペプチドを含む、式(Ia)もしくは式(Ib)の化合物のいずれかの任意の立体異性体もしくは立体異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩のいずれかに関する:
【化1】
式中、Yは、-CO(CH)p-CO-および-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-CO-からなる群から選択され;
Zは、単結合、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO(CH)pNH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;
○は、1~2から選択される整数であり;
p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり:
【化2】
a、b、c、d、e、f、g、およびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただし、a、b、c、d、e、f、g、およびhの少なくとも2つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C~C)アルキルからなる群から選択され、ただし、Rは、XがOである場合存在せず;
およびRは、Hおよび-CHからなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただし、m:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化3】
式中、s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中、「/」は、記号の両側の角括弧により定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示し、したがって式IaおよびIb中の角括弧により定義される繰り返し単位は説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよく、かつ繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してもよく;
式中、式Ibにおいて、R5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)のそれぞれの繰り返し単位の連続順序と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してもよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖-(C~C)アルキル、直鎖または分岐鎖-CO(C~C)アルキル、-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロアリール、-(C~C10)アラルキル、-(C~C)アルキル-O-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロシクロアルキル、-(C~C10)アルコキシ、-(C~C10)アリールオキシ、-(C~C10)アラルコキシ、-(C~C10)ヘテロアラルコキシ、-(C~C10)アルキル-O-(C~C10)アリールオキシ、アミン保護基、天然または非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤、および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF、-NH、-NH-(C~C)アルキル、NR、-NH-CO-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル、-NO、-N、-CO-(C~C)アルキル、-CO-O-(C~C)アルキル、-SOH、-SONH、-SO-N((C~C)アルキル)、-COOH、CONH、および-CON((C~C)アルキル)からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびRは、H、-(C~C)アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、
a)好ましくは薬学的活性剤、獣医学的活性剤、美容上の活性剤、診断的活性剤、核酸、ペプチド、抗体、アプタマー、タンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの活性剤と共有結合または静電結合により結合するカチオン性ポリマーであって、ここで、カチオン性ポリマーおよび少なくとも1つの活性剤は、正に荷電したナノ粒子を形成する、カチオン性ポリマーと、
b)ナノ粒子と静電的に相互作用する、本明細書で定義される式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、
を含むポリマー錯体が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、
a)正に荷電したタンパク質と、
b)タンパク質と静電的に相互作用する、本明細書で定義される式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
または代わりに
a’)正に荷電したナノ粒子を形成するカチオン性ポリマーに共有結合的にまたは静電的に結合されるアニオンに荷電したタンパク質と、
b’)a’)の正に荷電したナノ粒子と静電的に相互作用する、請求項1~7のいずれかに記載の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、
を含むタンパク質ベースの錯体が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、本明細書で定義される少なくとも1つのポリマー錯体またはタンパク質ベースの錯体と、1つ以上の適切な(例えば、薬学的に、診断的に、獣医学的にまたは美容上)許容される賦形剤または担体、を含む組成物が提供される。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、医薬品としての使用のための、本明細書に定義されるポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体、または医薬組成物に関する。
【0017】
あるいは、この態様は、医薬品における使用のための、本明細書で定義されるポリマー錯体、あるいは本明細書で定義されるタンパク質ベースの錯体、あるいは本明細書で定義される組成物である、治療用製品として製剤化され得る。
【0018】
本発明のさらなる態様は、
(i)細胞中に少なくとも1つの活性剤をトランスフェクトするためのトランスフェクション試薬としての使用のための;または
(ii)組換えタンパク質、ペプチド、または抗体をコードする生物製剤のin vivoまたはex vivoでの産生における、または組換えウイルスの産生における使用のための;
(iii)ウイルス感染症に対する治療用ワクチンまたは予防用ワクチンとしての、あるいはがんに対する治療用ワクチンとしての使用のための;または
(iv)ゲノム工学、細胞の再プログラミング、細胞の分化、または遺伝子編集における使用のための、
本明細書に定義されるポリマー錯体またはそれらを含む医薬組成物に関する。
【0019】
本発明のさらなる態様は、タンパク質ベースの治療における使用のための、特に、ウイルス感染症に対する治療用または予防用のタンパク質ベースのワクチンとしての、またはがんに対する治療用タンパク質ベースのワクチンとしての使用のための、本明細書に定義されるタンパク質ベースの錯体またはそれらを含む医薬組成物に関する。
【0020】
本発明はまた、例えば活性剤、好ましくは核酸またはタンパク質を細胞、組織または細胞外空間中に送達するのに好適であり得るデバイスを提供し、デバイスは、本明細書で定義されるポリマー錯体またはそれらを含む組成物を含む。この態様はまた、細胞、組織または細胞外空間中に活性剤、例えば核酸またはタンパク質を送達する方法における使用のためのデバイスとして製剤化でき、ここで、デバイスは、本明細書で定義されるポリマー錯体、本明細書で定義されるタンパク質ベースの錯体、または本明細書で定義されるそれらを含む組成物を含む。
【0021】
当業者により認識されるとおり、細胞中に活性剤を送達するための適切なデバイスは、選択される組成物または医薬組成物の製剤化および/または所望の投与部位に依存するであろう。例えば、組成物の製剤化が対象への注射にとって適切である場合、デバイスは、シリンジであり得る。別の例として、所望の投与部位が細胞培養培地である場合、デバイスは、滅菌ピペットであり得る。さらに別の例として、所望の投与部位が、静脈または動脈である場合、デバイスは、移植片であり得る。さらに別の例として、所望の投与部位が皮下または器官特異的デポーである場合、本デバイスは、外科的インプラントであり得る。
【0022】
本発明の送達デバイスは、目的の核酸が種々の疾患のいずれかの原因である細胞中に導入される治療(遺伝子療法)に利用され得る。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、標的細胞、組織または細胞外空間中にタンパク質または核酸を送達するための方法が提供され、本方法は、ヒトを含む動物に本明細書で定義されるポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体、または組成物を含む溶液を投与することを含み、これにより錯体は、標的細胞、組織、または細胞外空間に導入され得る。細胞内空間でその作用を有する活性成分を担持するポリマー錯体またはタンパク質ベースの錯体の場合、輸送は、細胞内在化を介して行われ、内在化機構により細胞質に錯体を移動させ;細胞内部で錯体を解離し;かつ細胞質中にタンパク質または有効成分を放出する。細胞外空間でその作用を有するタンパク質錯体の場合、内在化は、目的とされず、または必要とされない。
【0024】
この態様は、標的細胞中への核酸の送達方法における、本明細書に開示されるポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体または医薬組成物の使用として製剤化でき、この方法は、錯体が標的細胞、組織または細胞外空間中に導入され得るように、本明細書で定義されるポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体または組成物を含む溶液を、標的細胞、組織または細胞外空間と接触させること;エンドソームから細胞質に錯体を移動させること;細胞中で錯体を解離すること;および細胞質中に核酸を放出すること、を含む。
【0025】
あるいは、この態様は、標的細胞、組織または細胞外空間中に核酸またはタンパク質を送達する方法での使用のための、本明細書で定義されるポリマー錯体、本明細書で定義されるタンパク質ベースの錯体、または本明細書で定義される組成物として製剤化でき、この方法は、錯体が標的細胞、組織または細胞外空間中に導入され得るように、本明細書で定義されるポリマー錯体、本明細書で定義されるタンパク質ベースの錯体、または本明細書で定義される組成物を含む溶液を、標的細胞と接触させること;エンドソームから細胞質に錯体を移動させること;細胞中で錯体を解離すること;および細胞質中に核酸またはタンパク質を放出すること、を含む。
【0026】
さらなる態様は、細胞を本明細書で定義されるポリマー錯体、本明細書で定義されるタンパク質ベースの錯体、または本明細書で定義される組成物と接触させることを含む、細胞をトランスフェクトする方法に関する。
【0027】
別の態様では、本開示は、本開示の第1の態様の式(Ia)または(Ib)の化合物またはその任意の実施形態の合成のためのプロセスに関し、本プロセスは一般に、ポリ(アミノ酸)、または保護されたポリアミノ酸エステル、カルバメート、S-アルキルスルホニル、またはトリフルオロアセチル誘導体を産生するために、それ自体公知の保護されたまたは保護されないアミノ酸のN-カルボキシ無水物(NCA)を重合することを含む。次いで、脱保護ステップまたはチオール交換を、当業者に周知の方法によって実施する必要がある。繰り返し単位中に存在する異なるラジカルは、それぞれのブロックのまたはランダムなコポリマーの比率を変更することによって、所望の比率で導入され得る。
【0028】
この態様によれば、本開示の第1の態様またはその任意の実施形態の式(I)の化合物を合成するためのプロセスに関し、本プロセスは、
i)アミンまたはテトラフルオロホウ酸またはトリフルオロ酢酸アンモニウム塩の形態の開始剤を反応させるステップ;
i.1)適切なN-カルボキシ無水物(NCA)を使用して;あるいは、ステップi)のアミンまたはテトラフルオロホウ酸もしくはトリフルオロ酢酸アンモニウム塩の形態の開始剤を、連続的に適切なN-カルボキシ無水物と反応させて、ブロックコポリマーを得るステップ;
i.2)あるいは、ステップi)のアミンまたはテトラフルオロホウ酸またはトリフルオロ酢酸アンモニウム塩の形態の開始剤を、統計的方法で適切なNCA混合物と反応させて、ランダムコポリマーを得るステップ;
ii)任意に、N末端位置のアミン基をアミン反応性基と反応させてR1を導入するステップ;
iii)任意に、アミノ酸側鎖保護基を直交的に除去するステップ;
iv)任意に、側鎖末端位置においてアミン、チオール、ジスルフィド、S-アルキルスルホニル基またはカルボン酸基を、アミンまたはカルボン酸反応性基と反応させて、R2に構造的拡張、コンジュゲーション、標識または遮蔽を導入するステップ;
v)ステップi)、ii)またはiii)で得られた生成物を、任意に細分化、沈殿、限外濾過、透析、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーまたはタンジェンシャルフロー濾過によって精製するステップ;
を含む。
【0029】
上記ステップi)は、a)アミンまたはテトラフルオロホウ酸塩またはトリフルオロ酢酸アンモニウム塩の形態の開始剤を選択されたNCAと反応させることによるアミノ酸N-カルボキシアニドリド(NCA)モノマーの開環重合であって、モノマー/開始剤の比が、、重合の度合い(DP)の制御を可能にする、開環重合;b)逐次重合であって、ブロックコポリペプチドが、連続的に重合反応a’)後に調製され、最初のNCAモノマーが消費されることを可能にし、得られた生成物は、次のポリペプチドブロックを構築するために次のモノマーを添加する前に、精製されても精製されなくてもよい、逐次重合;またはc)a’)の統計的重合であって、ランダムコポリペプチドが、アミンまたはテトラフルオロホウ酸塩またはトリフルオロ酢酸アンモニウム塩の形態の開始剤を添加することにより重合を開始する前に、すべてのNCAモノマーを混合して、統計的方法で重合反応後に調製される、統計的重合、を含み得る。
【0030】
上記のステップii)は、エンドキャッピングに相当し、N末端位置にあるアミン基が、アミン反応性基と反応して、R1を導入する。
【0031】
上記のステップiii)は、交換反応または脱保護に対応し、アミノ酸側鎖が、保護基に応じて、直交して除去される。
【0032】
ステップiv)は、コンジュゲーションに相当し、必要に応じて連続的方法でのクロロアセチル化、メチル化、チオール交換、求核置換、またはペプチドカップリング反応により、側鎖末端位置でアミンまたはカルボン酸基を反応させて、遮蔽部分を達成する。
【0033】
本発明の別の態様によれば、本明細書で定義される式Iの化合物とは構造的に異なる化合物を調製するためのプロセスが提供され、本プロセスは、以下の
i.出発化合物として本明細書で定義される式Iの化合物を使用するステップと;
ii.ステップ(i)の化合物に構造変化を加えて、式Iの化合物とは構造的に異なる化合物を得るステップ、
を含む。
【0034】
本発明のさらなる態様では、式Iの化合物とは構造的に異なる化合物を製造するための、本明細書で定義される式Iの化合物の使用が提供される。
【0035】
本開示の非限定的な例を、添付の図面を参照して以下に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】アガロースゲル電気泳動技術によって分析した遮蔽ポリマーV1とのポリプレックスPXN1_8_0.5mRNA(左上)、PXN1_8_0.5pDNA(右上)の結果を示す。この技術は、定性的方法で、遺伝物質(RNAまたはDNA)に対するポリプレックスの錯体形成能力を示す。また、それは、低濃度および高濃度において、低濃度および高濃度のポリアニオン性競合物質(ヘパリン)の存在下において、遺伝物質を放出する能力も示す。Mと標識したレーンには、遊離mRNAが播種され、レーン4には、pDNAが播種される。確認できるとおり、遊離遺伝物質は、UVトランスイルミネーターの下で光る。レーン1および5では、ポリプレックスが播種され、ポリカチオンが存在しポリプレックスが形成されるときに、遺伝物質が捕捉され、シグナルが観察できないことが確認され得る。レーン2および6では、ポリプレックスは、低濃度のヘパリン競合物質の存在下で播種され、これらの条件で放出を示さない。レーン3および7では、ポリプレックスは、高濃度のアニオン性ヘパリン競合物質と共に播種されており、この場合、遺伝物質の放出が観察される。この挙動は理想的なものであり、なぜならポリプレックスは、細胞外の低濃度の競合分子では安定である必要があるが、細胞内刺激が加えられたときにカーゴを放出できるほど十分に不安定である必要があるためである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本出願で本明細書において使用されるすべての用語は、別段の記載がない限り、当技術分野で知られる通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示すとおりであり、別段の明示的に定められた定義がより広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲全体に均一に適用されることが意図される。
【0038】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」と同義である。特に明記しない限り、本明細書で使用される「the」などの定冠詞はまた、名詞の複数形も含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくはフッ素、塩素および臭素、より好ましくはフッ素および塩素を意味する。
【0040】
用語「アルケニル」は、2つの炭素間に少なくとも1つの二重共有結合による結合を含む、炭素原子および水素原子で構成される有機基を指す。典型的には、本開示で使用される「アルケニル」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または30個の炭素原子、または前述の値のいずれか2つの値の間の、またはそれらを含む任意の範囲の炭素原子を含む有機基を指す。ある場合には、アルケニル基はコンジュゲートされ、他の場合には、アルケニル基はコンジュゲートされず、さらに別の場合には、アルケニル基はコンジュゲーションの拡張部分および非コンジュゲーションの拡張部分を有することがある。さらに、2を超える炭素が存在する場合、炭素は、直線状に接続されてよく、あるいは、3を超える炭素が存在する場合、炭素は、親鎖が1つ以上の第二級炭素、第三級炭素または第四級炭素を含むように、分岐式に連結され得る。アルケニルは、置換されても置換されなくてもよい。
【0041】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、飽和した、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指し、すなわちそれは、炭素間に1つの共有結合による結合を含む、炭素原子および水素原子から構成される有機基を指す。典型的には、本開示で使用される「アルキル」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または30個の炭素原子、または前述の値のいずれか2つの値の間の、またはそれらを含む任意の範囲の炭素原子を含む有機基を指す。炭素原子1~12のアルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、デシル、およびウンデシル基が挙げられ得る。
【0042】
1つを超える炭素が存在する場合、炭素は、直線状に接続されてよく、2つを超える炭素が存在する場合、炭素は、親鎖が1つ以上の第二級、第三級または第四級炭素を含むように、分岐式に連結され得る。アルキルは、置換されても置換されなくてもよい。
【0043】
用語「アルキニル」は、2つの炭素間に三重の共有結合を含む、炭素原子および水素原子で構成される有機基を指す。典型的には、本開示で使用される「アルキニル」は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または30個の炭素原子、または前述の値のいずれか2つの値の間の、またはそれらを含む任意の範囲の炭素原子を含む有機基を指す。C2-アルキニルは、親鎖の炭素への三重結合を形成できる一方で、3個以上の炭素のアルキニル基は、複数の三重結合を含み得る。3つを超える炭素が存在する場合、炭素は、直線状に接続されてよく、4つを超える炭素が存在する場合、炭素は、親鎖が1つ以上の第二級、第三級または第四級炭素を含むように、分岐式に連結され得る。アルキニルは、置換されても置換されなくてもよい。
【0044】
官能基の前の「Cx~Cy」(ここで、xおよびyは、整数であり、かつy>xである)という表記により一般に表される用語、例えば「C1~C12アルキル」は、炭素原子の数の範囲を指す。本開示の目的上、「Cx~Cy」(xおよびyは、整数であり、かつy>xである)により指定される範囲は、表された範囲に限定されず、「Cx~Cy」により指定される範囲を含む、およびその範囲内に入るすべての可能な範囲を含む(xおよびyは、整数であり、かつy>xである)。例えば、用語「C1~C4」は、1~4個の炭素原子の範囲の明確な支持を提供するが、1~2個の炭素原子、1~3個の炭素原子、2~3個の炭素原子、2~4個の炭素原子、および3~4個などの、1~4個の炭素原子により包含される範囲の暗示的な支持をさらに提供する。
【0045】
本明細書で使用される用語「フルオロアルキル」は、1つ以上のフルオロハロで1回以上置換され、好ましくは過フッ素化された、本明細書で定義されるアルキル基を指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、「アルキル-O-」基を指し、ここでアルキルは、上で定義されるとおりである。
【0047】
用語「置換された」は、指定された原子または基上の1つ以上の水素原子が、指定された基から選択されたものと置き換えられることを意味し、ただし現在の状況下での指定された原子の通常の原子価を超えないことが条件である。置換基および/または変数の組み合わせは、許容できる。
【0048】
用語「任意に置換される」は、置換基の数が、ゼロに等しいかまたはゼロと異なってよいことを意味する。別段の指示がない限り、任意に置換される基は、水素原子を、任意の利用可能な炭素原子または窒素原子上で非水素置換基で置換することにより、収容できる限り多くの任意の置換基で置換されることが可能である。本発明による化合物中の基は、1、2、3、4または5個の同一のまたは異なる置換基、特に1、2または3個の置換基で置換されることが可能である。
【0049】
特定の基の置換または非置換が指定されない、すなわち、その基に対する特定の置換が示されず、またその基が置換されないとも示されない、本発明の実施形態において、この基の可能な置換は、本明細書で定義される最も広範なものであることを理解されたい。
【0050】
本明細書で使用される用語「障害」は、すべてがヒトもしくは動物の身体のまたは正常機能を損なうその部分の1つの異常な状態を反映し、特徴的な兆候および症状を典型的に呈するという点で、用語「疾患」、「症候群」、および「状態」(病状でのような)と一般に同義であると意図され、かつ互換可能に使用される。
【0051】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」、または「生理学的に許容される賦形剤」は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材などの、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。各成分は、医薬製剤の他の成分と適合するという意味で、「薬学的に許容される」ものでなければならない。それはまた、合理的な利益/リスク比に見合い、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織または器官と接触しての使用のために好適でなければならない。
【0052】
本明細書において交換可能に使用される用語「美容上許容される担体」または「皮膚科学的に許容される担体」は、とりわけ、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応なしに、ヒトの皮膚と接触しての使用のために好適な賦形剤または担体を指す。
【0053】
用語「治療的に許容される」は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性なしに、患者の組織と接触しての使用のために好適であり、妥当な利益/リスク比に見合い、それらの意図された用途に有効である、化合物を指す。
【0054】
用語「薬学的に、美容上、または診断的に許容される塩」は、一般に使用される非毒性の塩を包含する。本発明の化合物の薬学的に、美容上、または診断的に許容される塩の調製は、当技術分野で周知の方法によって行うことができる。一般に、そのような塩は、本発明の化合物の遊離酸または塩基形態を、水、有機溶媒またはそれらの混合物などの好適な溶媒中で、それぞれ化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製できる。
【0055】
薬学的に、美容上、または診断的に許容される塩の例としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ヨウ化水素酸、メタリン酸、またはリン酸、ならびに有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、樟脳硫酸、イソチオン酸(isothionic)、粘液酸、ゲンチジン酸、イソニコチン酸、糖酸、グルクロン酸、フロ酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルフィニル酸(sulfinilic)、アルギン酸およびガラクツロン酸;およびアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸と形成される酸付加塩;アルカリ金属およびアルカリ土類金属、例えば、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、リジンおよびプロカインなどとで形成される塩基付加塩、ならびに内部で形成される塩が挙げられる。本発明の化合物およびその塩は、いくつかの物理的特性において異なり得るが、それらは、本発明のために同等である。
【0056】
本明細書で使用される、用語「薬学的に活性な剤」は、薬理活性を有し、かつ哺乳動物において、特にヒトにおいて疾患を治癒させる、緩和する、治療するまたは予防するために使用される剤を指す。用語「美容的に活性な剤」は、いかなる治療法も提供しないが、例えば外観を改善する、皮膚、爪または髪を保存する、状態を整える、洗浄する、着色する、または保護するなどの美容目的のために使用される剤を指す。
【0057】
用語「診断用組成物」は、診断、特に画像診断技術における使用に好適な組成物を指す。本明細書で使用される用語「診断的に有効な量」は、投与されると、特に造影イメージング剤として画像診断用として、疾患または障害の診断のために十分な、検出ポリマーの有効な量を指す。投与される検出ポリマーの用量は、当然のことながら、投与されるポリマー、投与経路、診断される特定の状態、および同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。本発明の診断用組成物は、1つ以上の診断的に許容される賦形剤または担体を含む。用語「診断的に許容される」は、特に画像診断用途による、診断用途を有する組成物を調製するための診断技術における使用のために好適な賦形剤または担体を指す。患者の身体におけるこれらの診断剤の検出は、磁気共鳴画像法(MRI)およびX線による画像診断などにおいて用いられる周知の技術により実施され得る。
【0058】
本明細書で使用される、語句「天然のアミノ酸」は、タンパク質中に天然に存在する20個のアミノ酸のいずれかを指す。このような天然のアミノ酸としては、非極性アミノ酸、または疎水性アミノ酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンイソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびプロリンが挙げられる。システインは、非極性または疎水性として分類される場合もあれば、極性として分類される場合もある。天然のアミノ酸はまた、チロシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸(荷電している場合はアスパラギン酸塩としても知られる)、グルタミン酸(荷電している場合はグルタミン酸塩としても知られる)、アスパラギン、およびグルタミンなどの極性または親水性アミノ酸も含む。特定の極性または親水性のアミノ酸は、環境のpHに応じて、荷電した側鎖を有する。このような荷電アミノ酸としては、リジン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられる。当業者であれば、極性または親水性アミノ酸側鎖の保護が、そのアミノ酸を非極性にできることを認識するであろう。例えば、好適に保護されたチロシンヒドロキシル基は、ヒドロキシル基を保護することによって、そのチロインを非極性かつ疎水性にできる。
【0059】
本明細書で使用される場合、語句「非天然のアミノ」は、上記のように、タンパク質中に天然に存在する20個のアミノ酸のリストに含まれないアミノ酸を指す。このようなアミノ酸は、19個の天然に存在するアミノ酸のいずれかのD異性体を含み、グリシンは、非キラルである。また、非天然のアミノ酸としては、ホモセリンおよびオルニチンが挙げられる。他の非天然のアミノ酸側鎖は、当業者によく知られており、非天然の脂肪族側鎖を含む。他の非天然アミノ酸としては、N-アルキル化、環化、リン酸化、アセチル化、アミド化、アジジル化、標識されたものなどを含む、修飾されたアミノ酸が挙げられる。
【0060】
本明細書で使用される、用語「治療する」、「治療すること」および「治療」は、疾患または障害に関連する症状を改善することを指し、疾患または障害の症状の発症を予防することまたは遅延させること、および/または疾患もしくは障害の症状の重症度または頻度を軽減することを含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合を介して互いに連結された2つ以上の連続したアミノ酸を含む分子を指す。ペプチドという用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含む。用語「タンパク質」は、大きいペプチド、特に少なくとも約50個のアミノ酸を有するペプチドを指す。本発明の目的のために、ペプチドおよびタンパク質という用語は、互換的に使用される。
【0062】
本明細書で使用される、用語「繰り返し単位」または「ブロック」は、繰り返すモノマー単位を指す。繰り返し単位またはブロックは、1つのモノマーから構成されてよく、またはランダムにもしくはブロックで1つ以上のモノマーから構成されてよく、「混合されたブロック」をもたらす。したがって、上で定義した式IaおよびIbは、モノマー単位のそれぞれが、同じまたは異なる置換基を含み得る、角括弧により定義される繰り返し単位を含み得る化合物を包含する。同じ繰り返し単位中に存在するモノマー単位が同じである場合、その繰り返し単位は、「ホモポリマー」であり、同じ繰り返し単位中に存在するモノマー単位が異なる置換基を含む場合、繰り返し単位は「コポリマー」であり、これは、「ランダムコポリマー」または「ブロックコポリマー」であってよい。
【0063】
本発明の目的のために、用語「ホモポリマー」は、単一のモノマーから誘導されるポリマーを指す。本明細書で使用される用語「コポリマー」は、2つ以上のモノマーから誘導されるポリマーを指す。コポリマーは、ランダムコポリマーであってもブロックコポリマーであってもよい。本明細書で使用される用語「ランダムコポリマー」は、モノマー単位がポリマー分子中にランダムに配置されるコポリマーを指す。本明細書で使用される用語「ブロックコポリマー」は、重合時に互いに化学的に区別可能な少なくとも2つの化学的に異なる領域、セグメント、またはブロックを形成する少なくとも2つの異なるモノマー単位を含む、コポリマーを指す。ブロックコポリマーという用語は、線状ブロックコポリマー、マルチブロックコポリマー、および星型ブロックコポリマーを含む。
【0064】
当業者は、繰り返し単位が、繰り返すモノマー単位の周囲に描かれた角括弧(「[]」)により定義されることを認識するであろう。括弧の右下の数字(または数値範囲を表す文字)は、ポリマー鎖中に存在するモノマー単位の数を表す。
【0065】
適切な表面官能基を使用して、本開示の化合物は、細胞を能動的に標的化しかつ細胞侵入を助けることができる細胞標的化基および/または透過促進剤によりさらに修飾されてよく、改善された細胞特異的送達を有するコンジュゲート体をもたらす。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「保護基」は、分子内の反応性基に付着すると、その反応性をマスクする、低減するまたは防止する、原子のグループである。カルボキシル基およびアミノ基の保護基は、それぞれ、例えば、T.W.Green and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry(Wiley,3rd ed.1999)、Chapter5(pp.369-451)およびChapter7(pp.495-653)に記載されている。当該技術分野において公知である好適なアミン保護基は、制限なく使用されてよく、その例は、アシルベースの基、カルバメートベースの基、イミドベースの基、スルホンアミドベースの基などを含む。そのうち、メチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn))、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル(Teoc)、ベンズヒドリル、トリフェニルメチル(トリチル)、(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT))、ジメトキシトリチル(DMT)、およびジフェニルホスフィノ基が、好ましい。
【0067】
アミノ保護基の導入および除去は、T.W.Green and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,Wiley,3rd ed.1999,Chapter7(pp.495-653)に記載のものなどの、標準の方法により実施され得る。
【0068】
当技術分野で知られる好適なカルボキシ保護基が、制限なく使用され得る。代表的なカルボキシ保護基としては、アルキル、アリールまたはベンジルエステル、シリルエステル、アミドまたはヒドラジドが挙げられる。特定の実施形態では、カルボキシ保護基は、-(C~C)アルキル、ベンジル、p-メトキシフェニル、トリメチルシリルおよび[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)からなる群から選択される。
【0069】
これらの保護基の導入および除去は、T.W.Green and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry,Wiley,3rd ed.1999,Chapter5(pp.369-451)に記載のものなどの、標準の方法により実施され得る。
【0070】
本明細書で使用される、用語「開始剤」は、通常のアミン機構を介するα-アミノ酸N-カルボキシ無水物の開環重合(ROP)反応の開始のために使用される化学分子を指し、ここで開始剤は、得られるポリアミノ酸の骨格内に組み込まれる。開始剤は、ROP反応を開始できる1つ以上の求核基を含んでよく、したがって、開始剤は、それぞれ、単官能性または多官能性であり得、それぞれ、本発明のポリマー中に1つまたはいくつかの末端X基をもたらす。
【0071】
「部分」という用語は、分子または化合物の特定のセグメントまたは官能基を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒトおよび他の哺乳動物の両方を含む、任意の哺乳動物を指す。
【0073】
本明細書で使用される用語「ナノ粒子」は、ナノスケールにおいて少なくとも2つの次元、特にナノスケールにおいてすべての3つの次元を有する粒子を指す。特に、ナノ粒子が、ナノワイヤまたはナノチューブなどの、実質的に円形断面を有する実質的に棒状である場合、「ナノ粒子」は、ナノスケールにおいて少なくとも2つの次元を有する粒子を指し、この2つの次元は、ナノ粒子の断面である。
【0074】
本明細書で使用される、用語「サイズ」は、特徴的な物理的寸法を指す。例えば、実質的に球形のナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子の直径に相当する。ナノワイヤまたはナノチューブなどの、実質的に円形断面を有する実質的に棒状のナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズは、ナノ粒子の断面の直径に相当する。ナノキューブ、ナノボックス、またはナノケージなどの、実質的に箱形状のナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズは、最大エッジ長に相当する。ナノ粒子のセットが特定のサイズであると言及する場合、ナノ粒子のセットは、指定されたサイズ付近のサイズの分布を有し得ることが企図される。したがって、本明細書で使用される場合、ナノ粒子のセットのサイズは、サイズ分布のピークサイズなどの、サイズ分布の様式を指し得る。
【0075】
用語「多分散指数」(PDI)は、分子量分布の広さの尺度として使用される。PDIが大きいほど、分子量は、より広い。ポリマーのPDIは、重量平均(MW)と数平均(Mn)分子量の比として算出される。
【数1】
【0076】
式(Ia)および(Ib)の化合物は、幾何異性体(すなわち、シス-トランス異性体)、光学異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体、ならびに互変異性体として存在し得る。したがって、式(Ia)および(Ib)の化合物の定義は、シス-トランス異性体、立体異性体および互変異性体を含む、構造式(Ia)および(Ib)に対応するあらゆる個々の異性体、並びにこれらのラセミ混合物、およびそれらの薬学的に許容される塩も含むことを理解されたい。したがって、式(Ia)および(Ib)の化合物の定義はまた、任意の比率のすべてのR-異性体およびS-異性体の化学構造を包含することも意図され、例えば、考えられる異性体の1つの富化(すなわち、エナンチオマー的に過剰またはジアステレオマー的に過剰)、および他の異性体の対応するより小さな比率を有する。アミノ酸の特定の場合には、それらは、L配置またはD配置を獲得し得る。
【0077】
式(Ia)および(Ib)の化合物は、特に式(Ia)および(Ib)の化合物の薬学的に許容される塩を含む、意図される投与に好適な任意の形態で提供され得る。
【0078】
薬学的に許容される塩は、臨床の、獣医学のおよび/または美容の用途に許容されると考えられる式(Ia)および(Ib)の化合物の塩を指す。典型的な薬学的に許容される塩としては、式(Ia)および(Ib)の化合物と、鉱酸もしくは有機酸または有機塩基もしくは無機塩基との反応によって調製される塩が挙げられる。このような塩は、それぞれ酸付加塩および塩基付加塩として知られている。塩が全体的に薬学的に許容される限り、かつ対イオンが塩全体として望ましくない性質を付与しない限り、いずれかの塩の一部を形成する特定の対イオンまたは複数の対イオンは、重要な性質のものではないことが認識されるであろう。これらの塩は、当業者に知られている方法により調製され得る。
【0079】
用語「薬学的に、美容上、または診断的に許容される塩」
は、一般に使用される非毒性の塩を包含する。本発明の化合物の薬学的に、美容上、または診断的に許容される塩の調製は、当技術分野で周知の方法により行うことができる。一般に、そのような塩は、本発明の化合物の遊離酸または塩基形態を、水、有機溶媒またはそれらの混合物などの好適な溶媒中で、それぞれ化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製できる。
【0080】
薬学的に許容される付加塩の例としては、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ヨウ化水素酸、メタリン酸、またはリン酸、ならびに有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、樟脳硫酸、イソチオン酸(isothionic)、粘液酸、ゲンチジン酸、イソニコチン酸、糖酸、グルクロン酸、フロ酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルフィニル酸(sulfinilic)、アルギン酸およびガラクツロン酸;およびアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸と形成される酸付加塩;アルカリ金属およびアルカリ土類金属、例えば、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、リジンおよびプロカインなどとで形成される塩基付加塩、ならびに内部で形成される塩が挙げられる。
【0081】
本明細書で使用される、用語「標識またはイメージング」は、本明細書に開示される標的化分子の可視化および/または検出を容易にする分子を指す。本開示の文脈において、表現「標識剤またはイメージング剤」は、標識として使用される、または任意のイメージング技術において特定の構造を増強する、任意の物質を指す。イメージング剤は、したがって、光学イメージング剤、磁気共鳴イメージング剤、放射性同位体、および造影剤を含む。イメージング剤または標識剤は、当技術分野でよく知られている。イメージング剤または標識剤の特定の例は、滅菌空気、酸素、アルゴン、窒素、フッ素、パーフルオロカーボン、二酸化炭素、二酸化窒素、キセノンおよびヘリウムなどのガス;陽電子放射断層撮影法(PET)、コンピュータ支援断層撮影法(CAT)、単一光子放出コンピュータ断層撮影法、X線、蛍光透視法、および磁気共鳴画像法(MRI)で使用される市販の剤である。MRIにおいて造影剤としての使用に好適な材料の例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびガドペント酸ジメグルミンなどの現在入手可能なガドリニウムキレート、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロムが挙げられる。CATおよびX線に有用な材料の例としては、静脈内投与用のヨウ素ベースの材料、例えばジアトリゾ酸およびイオタラム酸に代表されるイオン性モノマー、非イオン性モノマー、例えばイオパミドール、イソヘキソール、およびイオベルソール、非イオン性ダイマー、イオトロールおよびイオジキサノール、イオン性ダイマー、例えば、イオキサグレート(ioxagalte)が挙げられる。他の有用な物質は、経口使用のためのバリウムおよび酢酸亜鉛などの不溶性塩を含む。いくつかの分子では、イメージング剤は、色素である。いくつかの分子では、イメージング剤は、蛍光部分である。いくつかの分子では、蛍光部分は、蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光色素、蛍光物質、またはそれらの組み合わせから選択される。蛍光色素の例としては、これらに限定されないが、キサンテン(例えば、ローダミン、ロドール、フルオレセイン、およびそれらの誘導体);ビマネス;クマリンおよびその誘導体(例えば、ウンベリフェロンおよびアミノメチルクマリン);芳香族アミン(例えば、ダンシル、スクアレート染料);ベンゾフラン;蛍光シアニン;インドカルボシアニン;カルバゾール;ジシアノメチレンピラン;ポリメチン;オキサベンザントレン(oxabenzanthrane);キサンテン;ピリリウム;カルボスチル;ペリレン;アクリドン;キナクリドン;ルブレン;アントラセン;コロネン;フェナントレセン(phenanthrecene);ピレン;ブタジエン;スチルベン;ポルフィリン;フタロシアニン;ランタニド金属キレート錯体;希土類金属キレート錯体;およびそのような色素の誘導体が挙げられる。フルオレセイン色素の例としては、これらに限定されないが、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、フルオレセイン-6-イソチオシアネートおよび6-カルボキシフルオレセインが挙げられる。ローダミン色素の例としては、これらに限定されないが、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロドール誘導体、テトラメチルおよびテトラエチルローダミン、ジフェニルジメチルおよびジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロリド(商品名TEXAS RED(R)で販売)が挙げられる。シアニン色素の例としては、これらに限定されないが、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRDYE680、AlexaFluor750、IRDye800CW、ICGが挙げられる。蛍光ペプチドの例としては、GFP(緑色蛍光タンパク質)またはGFPの誘導体(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、ECFP、セルリアン、CyPet、YFP、Citrine、Venus、YPet)が挙げられる。蛍光標識は、任意の好適な方法によって検出される。例えば、蛍光標識は、適切な波長の光で蛍光色素を励起すること、およびその結果生じる蛍光を、例えば、顕微鏡検査、目視検査、写真フィルムにより、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管などの電子検出器の使用により検出することにより、検出され得る。いくつかの分子では、イメージング剤は、陽電子放射断層撮影法(PET)の場合、陽電子放出同位体(例えば、18F)、単一光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)の場合、ガンマ線同位体(例えば、99mTc)、または磁気共鳴画像法(MRI)用の常磁性分子またはナノ粒子(例えば、Gd3+キレートまたはコートされたマグネタイトナノ粒子)により標識される。いくつかの分子では、イメージング剤は、ガドリニウムキレート、酸化鉄粒子、超常磁性酸化鉄粒子、超小型常磁性粒子、マンガンキレートまたはガリウム含有剤で標識される。ガドリニウムキレートの例としては、これらに限定されないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、および1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N’’-三酢酸(NOTA)が挙げられる。いくつかの分子では、イメージング剤は、近赤外(近IR)イメージングの場合、近赤外蛍光団、生物発光イメージングの場合、ルシフェラーゼ(ホタル、細菌、または腔腸動物)もしくは他の発光分子、または超音波の場合、パーフルオロカーボン充填小胞である。いくつかの分子では、イメージング剤は、核プローブである。いくつかの分子では、イメージング剤は、SPECTまたはPET放射性核種プローブである。いくつかの分子では、放射性核種プローブは、テクネチウムキレート、銅キレート、放射性フッ素、放射性ヨウ素、インジウムキレートから選択される。Tcキレートの例としては、これらに限定されないが、HYNIC、DTPA、およびDOTAが挙げられる。いくつかの分子では、イメージング剤は、Luらの、放射性部分、例えば211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、64Cu放射性同位体などの放射性同位体を含む。
【0082】
用語「細胞標的化剤」は、ヒトまたは動物の身体に存在する分子に対して親和性を示す任意の生物学的または化学構造を指し、これらは、例えば、それが特定の細胞型上で発現されるまたは過剰発現される受容体に選択的に結合するため、治療的治療の標的部位にそれらを向けることにより官能基化ナノ粒子を方向付けることができる。この用語はしたがって、特定の受容体または抗原に対するリガンド、例えば、特定の抗原に対する抗体、その受容体に対する葉酸、または肝受容体に対するガラクトースなどの糖を含む。標的化剤は、Aおよび/またはA’部分を介してアニオン性ポリマーの官能基化末端基に付着され得る、あるいはそれはまた、カチオン性ポリマーに付着され得る。
【0083】
細胞標的化基は、当技術分野でよく知られている。標的化剤の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(例えばIgG、IgA、IgM、IgD、IgE抗体)、糖(例えば、マンノース、マンノース-6-リン酸、ガラクトース、ガラクトサミン、マンノサミン)、タンパク質(例えば、トランスフェリン)、オリゴペプチド(例えば、環状および非環状のRGD含有オリゴペプチド)、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)、およびビタミン(例えば、葉酸塩)、Her-2結合ペプチド、TLRアゴニスト、β-D-グルコース、Asn-Gly-Argペプチド、angiopep2、アプタマー(A-9、A10、抗gp120、TTA1、sgc8、抗MUC-1、AS1411)、プリマキン、ジドブジン、スーパーオキシドジスムターゼ、プレドニゾロン、プラチナ、シスプラチン、スルファメトキサゾール、アモキシシリン、エトポシド、メサルジン、ドキソルビシン、パクリタキセル、5-アミノサリチル酸、デノスマブ、ドセタキセル、カルシトニン、プロアントシアニジン、メトトレキサート、カンプトテシン、ガラクトース、グリチルレチン酸、乳糖、ヒアルロン酸、オクテオトリド、ラクトビオン酸、β-ガラクトシル部分、アラビノ-ガラクタン、キトサン、アゾ系ポリホスファゼン、アゾ基および4-アミノ-ベンジル-カルバメート、コハク酸、4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼン-3-カルボン酸、環状RGDペンタペプチド、アスパラギン酸オクタペプチド、アレンドロネート、トランスフェリン、ビスホスホネートアデンドロネート、モノシアロガングリオシドGM1、グルタチオン、E-セレクチンチオアプタマー、ポロキサマー-407、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)アンタゴニスト、CXCR4ケモカイン受容体アンタゴニスト、GRP78ペプチドアンタゴニスト、RGDペプチド、RGD環状ペプチド、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストペプチド、アミノペプチダーゼターゲティングペプチド、脳ホーミングペプチド、腎臓ホーミングペプチド、心臓ホーミングペプチド、腸ホーミングペプチド、インテグリンホーミングペプチド、血管新生腫瘍内皮ホーミングペプチド、卵巣ホーミングペプチド、子宮ホーミングペプチド、精子ホーミングペプチド、ミクログリアホーミングペプチド、滑膜ホーミングペプチド、尿路上皮ホーミングペプチド、前立腺ホーミングペプチド、肺ホーミングペプチドRCPLSHSLICY)、ラミニン受容体結合ペプチド(例えば、YIGSR)、皮膚ホーミングペプチド、網膜ホーミングペプチド、膵臓ホーミングペプチド、肝臓ホーミングペプチド、リンパ節ホーミングペプチド、副腎ホーミングペプチド、甲状腺ホーミングペプチド、膀胱ホーミングペプチド、乳房ホーミングペプチド、神経芽腫ホーミングペプチド、リンパ腫ホーミングペプチド、筋肉ホーミングペプチド、創傷血管系ホーミングペプチド、脂肪組織ホーミングペプチド、ウイルス結合ペプチド、または融合誘導ペプチド。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書で定義されるアニオン性ポリマーにおいて、mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数である。
【0085】
特定の実施形態では、本明細書で定義されるアニオン性ポリマーにおいて、m:nの比は、1:8~30:1の範囲好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0086】
特定の実施形態では、本明細書で定義されるアニオン性ポリマーにおいて、mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0087】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ia)または(Ib)のものであり、式中、Rは、-CHであり、Rは、Hである。
【0088】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ia)または(Ib)(式中、Rは、-CHであり、Rは、Hである)のものであり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0089】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ia)または(Ib)のものであり、Rは、Hであり;Rは、(X)および(XII)からなる群から選択される。
【0090】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ia)または(Ib)(式中、Rは、Hであり;Rは、(X)および(XII)からなる群から選択される)のものであり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0091】
式(Ib)によるアニオン性ポリマーのいくつかの好ましい例は、以下に示す式(Ib1)によるものであり、式中、Zは、単結合である。
【化4】
【0092】
特定の実施形態では、アニオン性ポリマーは式(Ib1)のものであり;Rは、(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルからなる群から選択される。
【0093】
特定の実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ib1)(式中、Rは、(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルからなる群から選択される)のものであり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0094】
別の特定の実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ib1)のものであり;式中、Rは、Hである。
【0095】
別の特定の実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ib1)のものであり;式中、RはHであり、Rは、-CHである。
【0096】
好ましい実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ib1)(式中、RはHであり、Rは-CHである)のものであり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは、30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0097】
R5部分が存在する場合、R5部分の目的は、トランスフェクション活性を増強するためのツールとして周知であるGALAペプチド(および類似体)活性をシミュレートまたは模倣することであり、より具体的には、活性剤の細胞取り込み、膜透過およびエンドソーム脱出を増強させること、および活性剤のサイトゾル送達を改善することである。これらのすべては、転写/翻訳プロセスの効率の顕著な改善をもたらす。GALAペプチドは、断片化、膜融合および細孔形成ならびに膜結合特性により、細胞内在化を促進することが示されている。所定のカーゴを効果的に送達するための内在化およびエンドソーム脱出機構の重要な役割を考慮すると、本明細書に記載のアプローチはまた、ナノ粒子表面へのGALA遮蔽ポリマーの非共有結合コーティングにも基づく。細胞膜と接触したときに、GALA由来ポリマーは、ナノ粒子表面から剥離し、疎水性相互作用によって膜中に挿入されて、ナノ粒子カーゴまたはタンパク質のエンドソームスケープ(endosomal scape)またはサイトゾル送達を可能にする細孔を形成する可能性がある。
【0098】
好ましい実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ib)のものであり、式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;式中、Rは、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり;式中、Rの式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)のそれぞれの繰り返し単位と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してもよい。
【0099】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ib)のものであり、式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;Rは、(III)、(VI)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり;式中、c、e、g、およびhは、0~20から独立して選択される整数であり、ただしc、e、g、およびhの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つは、0とは異なり;zは、5~35から選択される整数であり;ここで、R5のそれぞれの繰り返し単位および整数nを有する角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してもよい。
【0100】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ib)のものであり、式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;Rは、(III)、(VI)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり;式中、c、e、g、およびhは、0~20から独立して選択される整数であり、ただしc、e、g、およびhの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つは、0とは異なり;zは、5~35から選択される整数であり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲であり;ここで、R5のそれぞれの繰り返し単位および整数nを有する角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してもよい。
【0101】
式(Ib)によるアニオン性ポリマーのいくつかの好ましい例は、以下に示す式(Ib2)によるものであり、式中、Zは、(R)zである:
【化5】
式中、b、e、f、g、およびhは、それぞれ独立して、0~20から選択される整数であり;ここで、b、e、f、g、およびhの少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つは、0とは異なり;
zは、5~100、好ましくは5~35から選択される整数であり;
mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲であり;
ここで、b、e、n、f、g、およびhの整数を伴う角括弧で囲まれた繰り返し単位間の「/」は、記号の両側の角括弧で囲まれたモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示し、すなわちそれらは、任意の順序で存在でき、それらは、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
ここで、mの整数を伴う角括弧で囲まれた繰り返し単位とz+n整数の角括弧で囲まれた繰り返し単位間の「/」は、記号の両側のモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示し、すなわちそれらは、任意の順序で存在でき、それらは、ブロックでまたはランダムに存在し得る。
【0102】
特定の実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、式(Ia)のものであり;Rは、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルである。
【0103】
別の特定の実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ia)のものであり;Rは、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルから選択され;R3は、-CHである。
【0104】
好ましい実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ia)のものであり;式中、Rは、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルであり、Rは、-CHであり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0105】
好ましい実施形態では、アニオン性ポリマーは、式(Ia)であり、式中、Yは、-CO-(CH)p-CO-であり;Rは、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルであり;RおよびRは、Hであり;mは、5~250、好ましくは20~160、より好ましくは30~150、さらにより好ましくは50~140、特に好ましくは60~125から選択される整数であり;nは、3~200、好ましくは4~100、より好ましくは4~40、好ましくは5~30、より好ましくは6~26、特に好ましくは8~20から選択される整数であり;ただしm:nの比は、1:8~30:1、好ましくは1:5~10:1、より好ましくは1:1~8:1、さらにより好ましくは2:1~7:1の範囲である。
【0106】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-L-ヒスチジン、ポリアミドアミン、ポリアルギニン、ポリ-[2-{(2-アミノエチル)アミノエチル-アスパルタミド](pAsp(DET))、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(pDMAEMA)、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、ポリ(ベータアミノエステル)、カチオン性またはカチオン的にイオン化可能な脂質または脂質様物質、ポリアミノ酸をベースにしたブロックの、ランダムなまたはグラフトのポリカチオンの組み合わせ、例えばポリエチレングリコールおよびポリアルギニンのブロックコポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリリジンのブロックコポリマー、ポリエチレングリコールとポリ-[2-{(2-アミノエチル)アミノ}のブロック共重合体などのポリアミノ酸系]-エチル-アスパルトアミド](PEG-pAsp(DET))のブロックコポリマー、およびそのポリマーが本発明の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマーとポリマー錯体を形成できる限り、任意の他の適切なカチオン性ポリマー、が挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、本発明の式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマーは、正に荷電したタンパク質と静電的に相互作用し、タンパク質の頂部の遮蔽層として作用するか、またはタンパク質中に挿入される。
【0108】
したがって、いくつかの実施形態によれば、本明細書で定義されるポリマー錯体またはタンパク質ベースの錯体は、式(Ia)または(Ib)の1つ以上のアニオン性ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態によれば、ポリマー錯体またはタンパク質ベースの錯体は、本明細書で定義される式(Ia)または(Ib)の少なくとも2つの異なるアニオン性ポリマーを含む。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、アニオン性ポリマーは、請求項1に定義されるR5部分を含み、これは、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位と組み合わせて、ブロックでまたはランダムに存在し得る。
【0110】
アニオン性ポリマーが、式(Ib)のものであり、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位と組み合わせてブロックでまたはランダムに存在し得るR5部分を含む、この実施形態によるいくつかの例は、特定のエンドソーム溶解活性を示し得る。
【0111】
特定の実施形態では、エンドソーム溶解部分は、エンドソームpH(例えば、pH5~6)においてその活性な立体構造を有する。「活性な」立体構造は、エンドソーム溶解性リガンドがエンドソームの溶解および/またはエンドソームから細胞の細胞質への本発明のモジュラー組成物の輸送を促進する、立体構造である。
【0112】
上述のとおり、本発明は、
a)好ましくは、薬学的活性剤、獣医学活性剤、美容上の活性剤、診断的活性剤、核酸、ペプチド、抗体、アプタマー、タンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの活性剤と共有結合または静電結合により結合するカチオン性ポリマーであって、ここで、カチオン性ポリマーおよび少なくとも1つの活性剤が、正に荷電したナノ粒子を形成する、カチオン性ポリマーと、
b)ナノ粒子と静電的に相互作用する、本明細書で定義される式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、
を含むポリマー錯体に関する。
【0113】
当業者は、活性成分をロードするために異なるナノ粒子系を使用できることを知っている。これらのナノ粒子系は、ミセル、円筒状ミセル、逆ミセル、小胞、脂質ポリマーハイブリッドナノ粒子、またはリポソームの形態であってよい。
【0114】
本発明の別の態様によれば、
a)正に荷電したタンパク質と、
b)タンパク質と静電的に相互作用する、本明細書で定義される式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー
を含むタンパク質ベースの錯体が提供される。
【0115】
本発明のこれらの態様によれば、式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマーは、ナノ粒子または正に荷電したタンパク質の頂部の遮蔽層として作用するか、またはその間に挿入される。
【0116】
その少なくとも1つの活性剤(複数可)は、直接にまたは1つ以上のリンカーにより共有結合されてよく、あるいはその少なくとも1つの活性剤(複数可)は、化合物に非共有結合的に結合されてよい。
【0117】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの活性剤は、アミド、エステル、無水物結合を介するアミノ酸側残基、C、またはN末端基を介して、またはこれらに限定されないが、アルキン、アジド、反応性ジスルフィド、マレイミド、ヒドラジド、ヒドラゾン、シフ塩基、アセタール、アルデヒド、カルバメート、および反応性エステルを含む、1つ以上の官能基を含むリンカーを介して、カチオン性ポリマーのポリペプチド骨格に共有結合的に連結される。代替的実施形態では、共有結合的連結は、生体応答性のものである。
【0118】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの活性剤は、静電相互作用を介して、カチオン性ポリマーのポリペプチド骨格に連結される。アニオン性化合物の例としては、タンパク質、多糖類、低分子、および核酸が挙げられる。
【0119】
水性媒体、pH、温度、イオン強度などの、調製のための条件は、当業者により適宜調整され得る。
【0120】
特定の実施形態によれば、ポリマー錯体は、4~9の範囲のpH、好ましくは4.5~8.5の範囲のpH、より好ましくは5~7.5の範囲、特に好ましくは6.5~7.4のpHで、水性媒体中で混合されると得られる。pHは、溶媒として緩衝液を使用して容易に調節され得る。
【0121】
特定の実施形態によれば、混合される溶液のイオン強度は、ナノ粒子の構造を破壊しない、またはナノ粒子中に内包されるべき物質の内包を阻害しない範囲で、適宜調整でき、好ましくは、0~1000mM、好ましくは0~300mM、より好ましくは0~150mM、特に好ましくは、0~50mMの範囲内である。
【0122】
特定の実施形態によれば、本発明による式(Ia)または(Ib)の化合物の平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー-屈折率-多角度光散乱-可視紫外線(GPC-RI-MALS-UV)によって測定した場合、200Da~80000Da、好ましくは500Da~60000Da、より好ましくは2000Da~40000Da、より好ましくは2500Da~30000Daの範囲である。
【0123】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つの活性剤は、低分子量薬物、ペプチド、抗体、ホルモン、酵素、核酸、タンパク質、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0124】
特定の実施形態によれば、ポリマー錯体(本明細書ではポリプレックスとも呼ばれる)は、少なくとも1つの核酸を含む。特定の実施形態では、ポリマー錯体は、2つ以上の核酸の組み合わせを含む。
【0125】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」は、DNAまたはRNAを指す。特定の実施形態では、核酸は、いくつか例を挙げると、DNA/RNAハイブリッド、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、一本鎖RNA(sgRNA)、ドナーDNA、自己増幅/複製RNA、環状RNA(oRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、閉じた直鎖状DNA(clDNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、およびアンチセンスRNA(aRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、CRISPRガイドRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマー、およびリボザイムであり、ヌクレオチド配列と、二本鎖、一本鎖、らせん、ヘアピンなどのその任意の構造的態様の両方を包含し、かつ修飾されたまたは修飾されない塩基を含み得る。
【0126】
別個の核酸が提供される場合、それらは、すべてDNA分子またはすべてRNA分子であってよく、あるいはDNA分子とRNA分子の混合物またはDNA鎖およびRNA鎖の会合物を含む分子であってよい。
【0127】
核酸は、オリゴまたはポリ二本鎖RNA、オリゴまたはポリ二本鎖DNA、オリゴまたはポリ一本鎖RNA、オリゴまたはポリ一本鎖DNAなどの、ポリまたはオリゴヌクレオチドであってよい。核酸に含まれるヌクレオチドのそれぞれは、天然に存在するヌクレオチドまたは化学修飾された非天然のヌクレオチドであってよい。
【0128】
核酸の鎖長は、特に限定されず、核酸は、10~200塩基、好ましくは20~180塩基、好ましくは25~100塩基、好ましくは30~50塩基の範囲の短鎖を有してよく;または核酸は、200~20000塩基、より好ましくは250~約15000塩基の比較的長い鎖を有してよい。
【0129】
特定の実施形態によれば、核酸は、閉じた直鎖状DNA(clDNA)であり、すなわち二本鎖領域が2つの一本鎖ループに隣接し保護され、それによりダンベル型分子を生成する、分子である。
【0130】
より特定の実施形態では、clDNAは、ヘアピンループにより両端で共有結合的に閉じられた目的の二本鎖DNA配列を含むステム領域からなり、clDNAは、少なくとも2つの修飾ヌクレオチドを含む。
【0131】
本明細書で使用される、用語「閉じた直鎖状DNA」または「clDNA」は、ヌクレオチドハイブリダイゼーションを可能にする条件下で「ダンベル」または「ドギーボーン」形状の構造を形成する、共有結合により閉じられた一本鎖DNA分子を指す。したがって、clDNAは、一本鎖DNA分子により形成されるが、同じ分子内の2つの相補的配列のハイブリダイゼーションによる「ダンベル」構造の形成は、2つの一本鎖ループが隣接する二本鎖の中間セグメントからなる構造を生成する。当業者であれば、日常的な分子生物学技術を使用して、開いたまたは閉じた二本鎖DNAからclDNAを生成する方法を認識している。例えば、当業者であれば、clDNAが、開いた二本鎖DNAの両端に、例えば、リガーゼの作用により、ヘアピンDNAアダプターを付着させることにより生成され得ることを認識している。「ヘアピンDNAアダプター」は、2つの相補的配列のハイブリダイゼーションによりステムループ構造を形成する一本鎖DNAを指し、形成されるステム領域は、一本鎖ループにより一端で閉じられ、かつ他端で開いている。
【0132】
「修飾されたヌクレオチド」は、塩基、糖、またはリン酸基の修飾により化学的に修飾されているか、またはその構造に非天然部分を組み込む、任意のヌクレオチド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウラシル、およびチミジン)である。したがって、修飾されたヌクレオチドは、修飾に応じて天然に存在するまたは非天然に存在すしてよい。
【0133】
本開示のポリマー錯体またはタンパク質ベースの錯体は、治療または診断の適応症のための有用なツールを構成し、ここで、本明細書で定義される式(Ia)または(Ib)の化合物は、活性成分を担持する正に荷電したナノ粒子または正に荷電したタンパク質に対する保護遮蔽として作用し、循環時間の延長、安全性または毒物学的プロファイル、または生理学的条件での放出プロファイルなどの特定の特性の改善をもたらし、ポリマー錯体の場合、所望の細胞へのトランスフェクション効率の改善ももたらす。
【0134】
ポリマー錯体は、動的光散乱装置によって測定される場合、10nm~2000nm、好ましくは20nm~800nm、より好ましくは25nm~350nm、30nm~300nm、30nm~200nmの範囲の粒子流体力学的直径を有してよい。
【0135】
タンパク質ベースの錯体は、動的光散乱装置によって測定される場合、2nm~2000nm、好ましくは5nm~1000nm、より好ましくは10nm~800nm、15nm~700nm、20nm~600nmの範囲の粒子流体力学的直径を有してよい。本開示のさらなる態様は、上で定義した少なくとも1つのポリマー錯体または少なくとも1つのタンパク質ベースの錯体を、1つ以上の適切な医薬上または診断上許容される賦形剤と共に含む、医薬の、診断のまたは治療用の組成物に関する。
【0136】
本開示のさらなる態様は、診断またはセラノスティクスにおける、医薬品としての使用のための本開示のポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体、または組成物に関する。
【0137】
本開示のこの態様は、医薬品を製造するのための本開示のポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体、または医薬組成物の使用として再製剤化できる。
【0138】
この態様はまた、疾患の治療、診断、予防および/またはセラノスティクスのための方法として製剤化でき、この方法、ヒトを含む、それを必要とする対象に、1つ以上の適切な薬学的、獣医学的または化粧品的に許容される賦形剤および/または担体と共に、治療的、診断的、予防的および/またはセラノスティックス的に有効な量の本発明のポリマー錯体、タンパク質ベースの錯体、または組成物を投与することを含む。
【0139】
本発明において、「対象」は、ヒトを含む哺乳動物であり得る。対象は、健康な対象であってよく、または何らかの疾患に罹患している対象であってよい。
【0140】
本発明において、「治療」は、疾患もしくは障害を治癒する、予防するもしくは寛解を誘導すること、または疾患もしくは障害の進行速度を低下させることを指す。治療は、医薬組成物の治療的有効量を投与することにより達成できる。
【0141】
本方法が診断に言及する場合、この態様は、対象の単離されたサンプル中の疾患を診断するための方法として製剤化することもでき、方法は、ポリマー錯体のいずれかの有効量を上記対象に、または対象の単離されたサンプルに上で定義した1つ以上のイメージング剤を有する医薬組成物を投与することを含む。これらのイメージング剤の検出は、画像診断技術などの、周知の技術により行われ得る。本開示に好適な画像診断技術の例としては、これらに限定されないが、超音波画像法、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光透視法、X線、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、蛍光顕微鏡検査、およびin vivo蛍光が挙げられる。
【0142】
したがって、本開示はまた、バイオイメージングツールとして、特に活性剤またはイメージング剤の内在化および送達を追跡するための、本開示のポリマー錯体、または医薬組成物の使用に関する。
【0143】
「バイオイメージングツール」は、細胞または特定の組織のいくつかの区画を追跡するために生物学で使用されるイメージング技術において使用される試薬とこの説明により理解されるべきである。バイオイメージングツールの例としては、化学発光化合物、蛍光および燐光化合物、X線またはアルファ線、ベータ線、またはガンマ線を放出する化合物などが挙げられる。
【0144】
本開示のさらなる態様は、CRISP/Cas9手法を使用する遺伝子編集を含む、培養中の宿主真核細胞、in vivoまたはex vivoで、単細胞寄生虫および細菌のトランスフェクションに有効である、ワクチンまたは遺伝子療法などの、生物医学的用途に一般的に使用される非ウイルスベクターとしての、本明細書に定義されるポリマー錯体の使用に関する。
【0145】
本開示のさらなる態様は、ワクチンなどの、タンパク質ベースの治療法における一般的な使用の担体としての、本明細書に定義されるタンパク質ベースの錯体の使用に関する。
【0146】
特定の実施形態では、本発明は、in vivo、in vitroまたはex vivoで、標的細胞に活性剤(サイズおよび構造に関わらず好ましくは核酸、環状および直鎖の核酸)を送達するためのトランスフェクション試薬としての、本明細書で定義されるポリマー錯体の使用に関する。特定の実施形態では、活性剤は、低分子量薬物、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸、アプタマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0147】
上記のトランスフェクション試薬はまた、同時に、2つ以上の活性剤を同時に、例えば2つ以上の核酸の共トランスフェクションのために有用である。
【0148】
トランスフェクション組成物(キットなど)、ならびに標的細胞に核酸を送達するためにトランスフェクション試薬を使用する方法もまた、本発明の範囲内である。さらなる実施形態は、本開示を検討して明らかになるであろう。
【0149】
本発明はまた、本明細書に開示されるポリマー錯体を使用することを含む、活性剤をin vitro、ex vivoおよびin vivoで輸送するための方法にも関する。
【0150】
本発明はまた、遺伝的遺伝性疾患もしくは複雑な遺伝性疾患、免疫疾患、がん、様々な組織/器官におけるウイルス感染症、または腫瘍の原因となる、またはそれらに関与する1つ以上の標的タンパク質の発現に対する調節効果を誘導するための医薬組成物としての使用のための組成物を提供する。
【0151】
本発明はまた、生物製剤、特に組換えタンパク質、ペプチド、または抗体をコードする生物製剤の製造における;またはアデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、アデノウイルス、腫瘍溶解性ウイルス、バキュロウイルス、またはウイルスまたはウイルス様粒子などの、組換えウイルスの産生における、本発明による組成物のin vitroまたはex vivoでの使用に関し、本組成物は、本明細書で定義されるポリマー錯体を含み、トランスフェクションのための少なくとも1つの核酸分子を含む。本明細書で使用される用語「生物製剤」は、タンパク質または核酸またはそれらの組み合わせ、細胞またはウイルスなどの生体実体、細胞区画、オルガノイド、および組織を指す。
【0152】
本発明はまた、ゲノム操作のための、細胞再プログラミングのための、細胞分化または遺伝子編集のための本発明によるポリマー錯体のin vitroまたはex vivoでの使用に関する。
【0153】
細胞をトランスフェクトするための組成物は、本明細書に定義されるポリマー錯体、および許容される賦形剤、緩衝剤、細胞培養培地、またはトランスフェクション培地を含む。
【0154】
本発明はまた、ウイルス感染に対する治療用もしくは予防用ワクチン、あるいはがんに対する治療用ワクチンとしての使用のための、本明細書に定義される組成物に関する。一般に、この態様では、ワクチンは、全身投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、経口投与、局所投与、または皮下投与などの直接投与によって送達され、このワクチンにおいて、組成物は、薬学的に許容されるビヒクルと結合している。換言すれば、ワクチンは、細胞性応答および/または体液性応答を誘導するために、体内に、特にヒト個体に直接注射できる。
【0155】
細胞標的化は、様々なメカニズムを介して達成され、トランスフェクション試薬の性質および特性、方法またはプロトコルの組成物または製剤、および投与経路に依存する。
【0156】
より特定の実施形態では、本発明は、それが担持する活性剤に応じて、とりわけ、神経変性疾患、神経疾患、がん、感染症、老化関連疾患、神経炎症、脱髄性疾患、多発性硬化症、虚血性障害、免疫障害、炎症性障害、希少疾患などの様々な疾患の予防および/または治療における使用のためのポリマー錯体に関する。
【0157】
本開示に記載される化合物、それらの薬学的に許容される塩および溶媒和物、ならびにそれらを含む医薬組成物は、他の追加の薬物と併用されて、併用療法を提供できる。上記の追加の薬物は、同じ医薬組成物の一部であってよく、あるいは、式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体または溶媒和物を含む医薬組成物と同時のまたは同時でない投与のための別個の組成物の形態で提供され得る。
【0158】
本開示の化合物は、遊離型としてまたは溶媒和物としての結晶形態であってよく、両方の形態は、本開示の範囲内に含まれると意図される。この点において、本明細書で使用される、用語「溶媒和物」は、薬学的に許容される溶媒和物、すなわち、医薬品の調製に使用され得る式(I)の化合物の溶媒和物と、薬学的に許容されない溶媒和物の両方を含み、これは、薬学的に許容される溶媒和物または塩の調製において、有用であり得る。薬学的に許容される溶媒和物の性質は、それが薬学的に許容される限り、重要ではない。特定の実施形態では、溶媒和物は、水和物である。溶媒和物は、当業者に周知である従来の溶媒和法によって得ることができる。特に明記しない限り、本開示の化合物はまた、1つ以上の同位体富化原子の存在においてのみ異なる化合物も含む。同位体富化原子の例は、これらに限定されないが、重水素、三重水素、13Cまたは14C、または15Nが豊富な窒素原子である。
【0159】
当業者は、モノマーの繰り返し単位が、繰り返すモノマー単位の周囲に描かれた角括弧(「[]」)によって規定されることを認識するであろう。括弧の右下の数字(または数値範囲を表す文字)は、ポリマー鎖中に存在するモノマー繰り返し単位の数を表す。
【0160】
本開示の文脈において、用語「ポリプレックス」または「ポリマー錯体」は、本明細書に記載されるカチオン性ポリマーと少なくとも1つのポリアニオン性遺伝物質(好ましくは核酸)の間の静電相互作用によって形成される化合物を指す。カチオン性ポリマーは、所定のpHにおいて、ポリアニオン性遺伝物質とは逆の電荷を含み、所定のpHにおいて、ポリアニオン性遺伝物質とポリマーの間の複数の静電結合の形成を生じる。ポリマー錯体形成のための駆動力は、ポリアニオン性核酸およびポリカチオン性ポリマーの両方の多価性であり、これは、非常に効果的なエントロピー的に駆動される遺伝物質の凝縮をもたらす。核酸を含むポリマー錯体(ポリプレックス)は、標的細胞に核酸を送達できる非ウイルス性合成ベクターとして有用である。非ウイルス合成ベクター(例えば、ポリプレックスなど)による標的細胞へのDNAまたはRNA送達は、重大な課題および欠点に直面しているウイルスベクターを使用する有望な代替的送達方法として広く認識されている。これらは、免疫原性応答(これは再投与を妨げ得る)、挿入的変異誘発のリスク、適正製造基準グレードでの大規模製造の難しさ、限られたカーゴサイズ、および生物学的特性に特有のコスト安全性の問題を含む。
【0161】
用語「タンパク質ベースの錯体」は、本発明によるアニオン性ポリマーと所定のpHで正に荷電したタンパク質の間の静電的相互作用、または疎水性相互作用と静電的相互作用との組み合わせにより形成され、タンパク質の頂部の遮蔽層として作用する、またはその間に挿入される化合物を指す。
【0162】
より特定の実施形態によれば、[ブロックコポリマー中のカチオン性基の総数(N)]/[核酸中のリン酸基の総数(P)]として定義される、本開示のポリプレックスにおけるN/P比は、1~200、好ましくは2~100、より好ましくは2~50の範囲である。N/P比は、混合溶液中の式(I)の化合物の側鎖に由来するプロトン性アミノ基のモル濃度(N)と核酸に由来するリン酸基のモル濃度(P)の比を意味する。
【0163】
より特定の実施形態によれば、本開示のカチオン性ポリマーまたは正に荷電したタンパク質と、少なくとも1つの遮蔽ポリマーの間の+/-比は、[ブロックコポリマー中のカチオン性基に由来する正電荷の総数(+)]/[遮蔽ポリマー(複数可)中のポリアニオン性ブロックに由来する負電荷の総数(-)]として定義され、これは、0~1、好ましくは0.1~1、より好ましくは0.3~1の範囲である。+/-比は、混合溶液中のカチオン性ポリマーまたは正に荷電されたタンパク質の側鎖に由来するプロトン性アミノ基に由来する正電荷(+)のモル濃度と、アニオン性ブロックに由来する負電荷(-)のモル濃度の比を意味する。
【0164】
より特定の実施形態では、ポリマー錯体は、ポリマー錯体に対する活性剤の質量比に基づいて、1~50%w/wの範囲で少なくとも1つの活性剤のある量を含み得る。好ましい実施形態では、その範囲は、1~30%w/wである。さらにより好ましい実施形態では、ポリマー錯体は、2~20%w/wの範囲で活性剤のある量を含む。他の好ましい範囲は、2~20%w/w、3~15%w/w、および3~7%w/wである。
【0165】
より特定の実施形態では、タンパク質ベースの錯体は、タンパク質ベースの錯体に対する活性剤の質量比に基づいて、5~99%w/wの範囲でタンパク質のある量を含み得る。好ましい実施形態では、その範囲は、15~98%w/wである。さらにより好ましい実施形態では、タンパク質ベースの錯体は、30~95%w/wの範囲でタンパク質のある量を含む。他の好ましい範囲は、40~92%w/w、50~90%w/w、および60~90w/wである。
【0166】
本開示による医薬組成物、診断組成物、またはセラノスティクス組成物は、薬学的に許容される希釈剤中で、固体形態または水性懸濁液で調製され得る。これらの調製物は、任意の適切な投与経路によって投与でき、そのため、上記調製物は、選択された投与経路に適した医薬形態で製剤化される。より特定の実施形態では、投与は、経口、局所、直腸または非経口経路(皮下、腹腔内、皮内、筋肉内、静脈内経路など)によって行われる。
【0167】
本発明による遮蔽ポリマーについて本明細書において使用される命名法を考慮して、括弧内に記載される数値は、統計数として各モノマー単位の重合の度合い(DP)を指すことに留意されたい。特定のモノマー単位のDPは、ポリマーの分子量をモノマー単位の分子量で割ることにより計算される。DP値は、開環重合機構により、妥当な不確実性に影響され、それは、本発明の文脈では、±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらにより好ましくは±5%であり、特に好ましくは±2%の範囲内であると考えられ得る。したがって、例えば、化合物V1(pSar(72)-b-pGlu(ONa)(9)は、72のpSarDP、9のpGlu(ONa)DPを有すると記載され;ここで引用されるDP数は、上記の範囲内で、合理的な不確実性に影響される。
【0168】
本出願で本明細書において使用されるすべての用語は、別段の記載がない限り、当技術分野で知られる通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示すとおりであり、別段の明示的に定められた定義がより広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲全体に均一に適用されることが意図される。
【0169】
説明および特許請求の範囲全体において、「含む(comprise)」という語およびその語の変形は、他の技術的特徴、添加剤、構成成分、またはステップを排除することを意図するものではない。さらに、「含む(comprise)」という語は、「からなる(consisting of)」場合も含む。本発明の追加の目的、利点および特徴は、詳細な説明を検討するときに、当業者には明らかになる、または本発明を実施することによって知り得る。以下の実施例および図面は、例示として提供され、それらは、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲内で括弧内に置かれる参照符号は、特許請求の完全性を高めることのみを目的としており、請求の範囲を限定するものとして解釈されない。さらに、本発明は、本明細書に記載される特定の好ましい実施形態のあらゆる可能な組み合わせを含む。
【0170】
複数の例のみが本明細書で開示されているが、他の代替、修正、使用および/またはそれらの均等物が可能である。さらに、説明される実施例のすべての可能な組み合わせもカバーされる。したがって、本開示の範囲は、特定の実施例によって限定されるべきではなく、しかし、それは以下の特許請求の範囲を公正に読んだことによってのみ判断されるものとする。
【0171】
実施例
実施例1:遮蔽ブロックコポリマーPSar-b-PGlu(ONa)の合成
ブロック重合による遮蔽コポリマーPSar-b-PGlu(Ona)の合成:
【化6】
【0172】
1.1A PSar-b-PGluOtBuの重合のための一般的手順:
【化7】
サルコシンN-カルボキシ無水物を、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、無水DMFに溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(n-ブチルアミンまたはiプロピルアミン(iPropylamine))を、反応混合物に加え、これを、10℃で16時間撹拌した。NCAの消費をIRにより確認したら、グルタミン酸t-tertブチルエステルNCAを、無水DMFに溶解した反応混合物に加えた。混合物を、10℃で16時間撹拌した。完了時に、反応混合物は透明になり、モノマーの完全な変換をIRにより検出できた。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70~90%。重合生成物は、それが脱保護溶媒にのみ可溶であるため、NMRにより特性評価されなかった。
【0173】
1.2A 脱保護ステップのための一般的手順:
【化8】
PSar-b-PGluOtBuのブロックコポリマーを、0℃でトリフルオロ酢酸に溶解し(100mg/mL)、混合物を、5℃で1時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:95%。
[V1-V2]1H NMR (D2O): δ 1.19 (d, J = 7.2 Hz,CH3), 1.90-2.53 (m, CH2),2.83-3.28 (m, CH3), 3.95-4.63 (m, CH2 PSar + CH GluOtBu).
[V3]1H NMR (D2O): δ 1.19 (t, J = 7.2 Hz,CH3), 1.35 (m, CH2), 1.70-2.53 (m, CH2), 2.82-3.32 (m, CH3), 4.02-4.60 (m, CH2 PSar + CH GluOtBu).
【表1】
【0174】
実施例2.2つのホモポリマーのペプチドカップリングによる遮蔽コポリマーPSar-b-PGlu(Ona)の合成:
【化9】
【0175】
2.1 MeA-PSar-SuccおよびnBu-PGluOBzlの開環重合のための一般的手順
【化10】
サルコシンNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/N2の3サイクル後に、混合物を、無水DMFに溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(2-メトキシエチルアミン)を、反応混合物に加え、それを、10℃で16時間撹拌した。一旦NCAの消費を、IRにより確認した。粉末状の無水コハク酸(10当量)を、反応混合物に添加し、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ホモポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70~90%.1H NMR (300 MHz, TFA): δ 2.71 (brs, 2H, CH2), 2.86-3.22 (m, 3H, CH3), 3.40 (s, 3H, CH3), 4.10-5.58 (m, 2H, CH2)。
【化11】
【0176】
ベンジル-L-グルタメートNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、無水DMFに溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(n-ブチルアミン)を、反応混合物に加え、10℃で16時間撹拌した。一旦NCAの消費を、IRにより確認した。粉末状の無水コハク酸(10当量)を、反応混合物に添加し、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ホモポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70~90%。1H NMR (300 MHz, TFA): δ 0.87 (t, J= 7.3 Hz, CH3);1.29 (dd, J= 7.2, 15.0 Hz, CH2), 1.46 (d, J= 8.0 Hz, CH2), 1.80-2.73 (m, CH2), 4.67 (m, CH), 5.00-5.24 (m,ベンジルCH), 7.15-7.37 (brs,アリールCH):
【表2】
【0177】
2.2 MeA-PSar-succ-PGluOBzl-nBuのコポリマーを生成するペプチドカップリング反応のための一般的手順:
【化12】
MeA-PSar-succ(0.32mmol)を、スターラーバーおよび栓を備えた二口丸底フラスコに加え、次いで真空/N2の3サイクルでパージし、25mLのDMFに溶解した。次いで、CDI(2.1当量、0.68mmol)を、反応混合物に添加し、室温で30分間撹拌した。この時間の後、8mLのDMFに溶解したnBu-PBG(1.2当量、0.38mmol)を、加えた。混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、アセトン中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。最終生成物を、白色固体として単離した。
収率:60~70。1H NMR (DMSO): δ 1.06 (t, J = 7.3 Hz, CH3), 1.48 (dd, J= 7.4, 14.8 Hz, CH2), 1.65 (dd, J= 7.1, 14.4 Hz, CH2), 2.01-2.83 (m, CH2), 3.17-3.55 (m, CH3), 3.72 (s, CH3), 3.81-4.06 (m, CH2), 4.44-4.94 (m, CH) 5.19-5.43 (m, ベンジルCH), 7.24-7.61 (m, アリールCH).
【表3】
【0178】
2.3 脱保護ステップのための一般的手順:
【化13】
MeA-PSar-succ-PBG-nBuのブロックコポリマーを、THF(200mg/mL)に溶解した。NaOH水溶液を、混合物に加え、4℃で16時間撹拌した。反応混合物を、6M HClでpH4に中和し、ジエチルエーテル中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70~80%。[V_1]1H NMR (D2O): δ 0.91 (t, J= 7.0 Hz, CH3), 1.33 (d, J = 6.8 Hz,CH2), 1.50 (d, J = 6.8 Hz,CH2), 2.39 (m, CH2), 2.72-2.81 (m;CH2), 2.88-3.25 (m, CH3), 3.39 (s, CH3), 3.46 (m, CH2), 3.56 (m, CH2), 4.03-4.63 (m, CH2 PSar + CH GluOtBu).
【表4】
【0179】
実施例3.指向剤(directing agent)を用いる遮蔽ブロックコポリマーRn-PSar-b-PGlu(ONa)の合成。
Rn-PSar-b-PGlu(ONa)の遮蔽ブロックコポリマーを、重合のための開始剤として有機低分子を使用して合成する。これらの特定の有機モチーフ(TLR7、ガラクトサミンおよびマノサミン(manosamine)を用いて、特定の臓器を標的とし得るであろう。
【0180】
3.1 指向剤を用いる遮蔽ブロックコポリマーRn-PSar-b-PGlu(ONa)のための合成経路。
3.1.1 指向剤(Rn)-PSarの重合のための一般的手順。
【化14】
*マンノサミンおよびガラクトサミンは、その複数の環状形態と平衡状態にあるその線状形態で示されることに留意のこと。
【0181】
サルコシンN-カルボキシ無水物を、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、無水DMSOに溶解した。次いで、DMSO(2mL)で希釈した開始剤(TLR7、ガラクトサミンまたはマンノサミン)を、反応混合物に加え、室温で16時間撹拌した。一旦NCAの消費を、IRにより確認した。反応混合物を、ジエチルエーテル:THF(8:2)中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ポリサルコシンを、白色固体として単離した。収率:70%。
[X1-X2- X3-X4] 1H NMR (D2O): δ 2.84-3.25 (m, CH3),3.91 (s, CH3), 4.00 (brs, CH2), 4.10 -4.65 (m, CH2).
【0182】
糖の存在を、ベネディクト試験により行う。ベネディクト試験は、所与の分析物中の還元糖の存在を検出するために使用できる、化学試験である。したがって、遊離のケトンまたはアルデヒド官能基を含む単純な炭水化物を、同定できる。
【0183】
ベネディクト試験を、還元糖をベネディクト試薬(硫酸銅五水和物、クエン酸ナトリウム、および炭酸ナトリウムを蒸留水に混合して調製した青い溶液)と共に加熱することにより行う。溶液の色が青から赤に変化する場合、それは、ポリマー中の糖の存在を示す。
【表5】
【0184】
3.2 ブロックコポリマー指向剤-Rn-PSar-b-PGluONaのための一般的な合成手順。
【化15】
グルタミン酸t-tertブチルエステルNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、無水DMFに溶解した。次に、DMF(4mL)で希釈したPサルコシン(前のセクションで合成)を、反応混合物に加え、10℃で16時間撹拌した。一旦NCAの消費をIRにより確認した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。収率:80%。
[5.1-5.2-5.3-5.4] 1H-NMR (TFA): δ 2.29-2.56 (s, CH3), 2.86-3.69 (m, CH2), 3.77-4.33 (m, CH3), 4.97 (brs, CH2), 5.22-5.78 (m, CH2 PSar + CH GluOtBu).
【表6】
【0185】
3.3 脱保護ステップのための一般的手順:
脱保護を、実施例1において上述した手順に従って実施し、指向剤を用いる対応する遮蔽ブロックコポリマーRn-PSar-b-PGlu(ONa)を生成した。収率:90%。
【0186】
[A1-A2-A3-A4] 1H-NMR (D2O):1.67-2.46 (m, CH2);2.74-3.23 (m, CH3);3.71 (brs, CH2), 3.94 (s, CH2), 4.01-4.56 (m, CH2 PSar+ CH PGA).
【化16】
【表7】
【0187】
実施例4.遮蔽ブロックコポリマーPGlu-Diol-b-PGlu(ONa)の合成
4.1 PGluOtBuの重合のための一般的手順:
【化17】
グルタミン酸t-tertブチルエステルNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/N2の3サイクル後に、混合物を、無水DMFに溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(n-ブチルアミン)を、反応混合物に加え、10℃で16時間撹拌した。一旦NCAの消費をIRにより確認した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ホモポリマーを、白色固体として単離した。収率:70~90%。
【0188】
重合生成物を、さらなる特性評価または精製を行わずに使用し、特性評価を、脱保護を行うときに実施する。
【0189】
4.2 脱保護ステップのための一般的手順:
【化18】
【0190】
脱保護を、実施例1において上述した手順に従って実施し、対応するnBu-PGAを生成した。
収率:90%.1H NMR (D2O): δ 0.85 (t, J = 7.03 Hz, CH3),1.28 (m, CH2),1.44 (m, CH2), 1.84-2.39 (m, CH2), 4.15 -4.46 (m, CH ).
【0191】
4.3 ジブロックコポリマーnBu-PGA-b-PGluOtBuの合成のための一般的な手順。
【化19】
【0192】
重合反応を、この場合開始剤としてnBuPGAを使用して、実施例3.1で上述した手順に従って実施した。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。収率:70~80%。1H NMR (TFA): δ 1.62 (t, J = 7.59 Hz), 1.99 (m, CH2), 2.09 (m, CH2), 2.12-2.40 (m, CH3), 2.72-3.59 (m, CH2), 5.49 (brs, CH).
【0193】
4.4 PGlu-ジオール-b-PGluOtBuの合成のためのCDIとのペプチドカップリングのための一般的手順:
【化20】
【0194】
nBuPGA-b-PGluOtBu(3.09mmol)を、スターラーバーおよび栓を備えた二口丸底フラスコに加え、次いで真空/N2の3サイクルでパージし、6mLのDMFに溶解した。次いで、CDI(1.6当量、4.95mmol)を、反応混合物に添加し、室温で30分間撹拌した。この時間の後、2mLのDMFに溶解した3-アミノプロパン-1,2-ジオールを、加えた。混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、アセトン中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。最終生成物を、白色固体として単離した。収率:60~70。
【0195】
1H NMR (DMSO): δ 0.85 (t, J = 7.2 Hz, CH3), 1.20-1.48 (m, CH3), 1.65-2.31 (m, CH2), 2.98 (brs, CH), 4.16 (brs, CH), 4.52 (brs, CH), 4.72 (brs, CH), 7.74 (brs, NH-アミド), 8.10 (brs, NHアミド).
【表8】
【0196】
4.5 脱保護ステップのための一般的手順:
【化21】
脱保護を、実施例1において上述した手順に従って実施し、対応するブロックコポリマーPGlu-ジオール-b-PGlu(ONa)を生成した。
収率:90%。1H NMR (D2O): δ 0.96 (t, J = 7.12 Hz, CH3), 1.36 (dd, J = 15.0, 7.2 Hz, CH2);1.54 (d, J =7,12 Hz), 1.88-2.80 (m, CH2), 3.18-3.48 (m, CH2);3.52-3.74 (m, CH2), 3.83 (brs, CH), 4.37 (brs, CH):
【表9】
【0197】
実施例5.遮蔽ブロックコポリマーPSar-R5(W)の合成
5.1 Boc-NH-エチル-R5ランダムコポリマーの重合のための手順。
【化22】
グルタミン酸t-tertブチルエステルNCA、ロイシンNCAおよびアラニンNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に添加した。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、DMF:THF(1:1)の無水混合物に溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(N-Boc-エチレンジアミン)を、反応混合物に加え、これを、10℃で16時間撹拌した。一旦NCAの消費をIRにより確認した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ランダムコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70~80%。1H NMR (300 MHz, TFA): δ 1.51 (d, J = 8.9 Hz, CH3), 1.94-2.22 (m, CH2), 2.80 (m, CH2), 3.142 (m, CH3), 4.05 (brs, CH2), 4.31 (brs, CH2), 4.88-5.44 (m, CH).
【0198】
5.2 Boc-NH-エチル-R5-b-PSarのワンポット重合/キャッピングのための一般的手順:
【化23】
【0199】
サルコシンN-カルボキシ無水物を、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加えた。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、無水DMFに溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(Boc-NH-エチル-R5ランダムコポリマー)を、反応混合物に加え、これを、10℃で16時間撹拌した。NCAの消費をIRにより確認したら、無水酢酸(10当量、1.47mmol)およびDIPEA(1当量、0.147mmol)を、反応混合物に加えた。次いで、混合物を、10℃で2時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。
収率:60~70%。1H NMR (300 MHz, TFA): δ 1.69 (d, J = 9.0 Hz, CH3), 2.10-2.47 (m, CH2), 2.97 (m, CH2), 3.25 (s, CH3), 3.40 (brs, CH2), 3.75-4.09 (m, CH3), 5.05-5.41 (m, CH + CH2).
【表10】
【0200】
5.3 脱保護ステップのための一般的手順:
【化24】
Boc-NH-エチル-R5-b-PSarのブロックコポリマーを、0℃でトリフルオロ酢酸に溶解し(100mg/mL)、混合物を、5℃で2時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。単離されたポリマーを、pH6.5~7に中和し、遠心式限外濾過により精製した。濾過後、残存するポリマー水溶液を凍結乾燥して、最終生成物を得た。
収率:70~80%(W1)(D2O): δ 0.98 (d, J = 14.2 Hz, CH3), 1.62 (m, CH3 Ala + CH Leu), 1.96-2.62 (m, CH2), 2.77-3.38 (m, CH3), 3.63 (brs, CH2), 4.01 (brs, CH2), 4.05-4.64 (m, CH3 Sar + CH Glu, Ala, Leu).
【表11】
【0201】
実施例6.遮蔽された切り離しできるブロックコポリマーPSar-succ-detachable-GALA様ランダムコポリマー(Y)の合成
6.1 PSar-Succの重合およびエンドキャッピングのための一般的手順。
【化25】
【0202】
実験手順は、セクション1.1Bで説明したものと同じである。
【0203】
6.2 遮蔽された切り離しできるMeA-PSar-succシステアミン-Fmocのための一般的手順。
【化26】
PSar-Succ(0.18mmol,1g)を、スターラーバーおよび栓を備えた二口丸底フラスコに加え、真空/N2の3サイクルでパージし、4mLのDMFに溶解した。次いで、CDI(2.1当量、0.38mmol)を、反応混合物に添加し、室温で30分間撹拌した。この後、30mLのDMFに溶解したFmoc-システアミン(1.2当量、0.21mmol)およびDIPEA(1当量、0.21mmol)を加えた。混合物を、室温で16時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。最終生成物を、白色固体として単離した。これらの系を、fmoc脱保護反応後に分析する。
【0204】
6.3 Fmoc脱保護のための一般的手順:
【化27】
MeA-PSar-Succ-システアミン-Fmoc(1g)を、スターラーバーおよび栓を備えた二口丸底フラスコに加え、真空/N2の3サイクルでパージし、10mLのDMFに溶解した。次いで、ピペリジン(2mL)を、反応混合物に加え、室温で2時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。最終生成物を、白色固体として単離した。
収率:95%.1H NMR (300 MHz, TFA): δ 2.50 (m, CH2), 2.74 (m, CH2), 2.84-3.24 (m, CH2), 3.38 (s, CH3), 3.54 (m, CH2), 4.28 (m, CH2).
【0205】
6.4 コポリマーPSar-succ-detachable-GALA-様ランダムコポリマー(Y)の重合のための手順。
【化28】
グルタミン酸t-tertブチルエステルNCA、ロイシンNCAおよびアラニンNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に添加した。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、DMF:THF(1:1)の無水混合物に溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(MeA-PSar-Succ-システアミン)を、反応混合物に加え、10℃で16時間撹拌した。一旦NCAの消費を、IRにより確認した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ランダムコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:60~70%。1H NMR (300 MHz, TFA): δ 1.07 (d, J = 8.9 Hz, CH3), 1.63 (brs, CH3), 1.69-2.32 (m, CH2), 2.78 (m, CH2), 2.96-3.56 (m, CH3), 3.70 (s, CH3), 3.84 (M, CH2), 3.96 (M, CH2), 4.42-5.06 (m, CH2).
【表12】
【0206】
6.5 脱保護ステップのための一般的手順:
【化29】
PSar(50)-succ-detachable-[PGlu(OtBu)(6)-co-PAla(10)-co-PLeu(5)]のブロックコポリマーを、0℃でトリフルオロ酢酸に溶解し(100mg/mL)、混合物を、5℃で2時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。単離されたポリマーを、pH6.5~7に中和し、遠心式限外濾過により精製した。濾過後、残存するポリマー水溶液を、凍結乾燥して、最終生成物を得た。
収率:70~80% (Y1) 1H NMR (300 MHz (D2O): δ 0.98 (d, J = 20.6 Hz, CH3), 1.53 (brs, CH3 Ala + CH Leu), 1.65-2.44 (m, CH2), 2.69 (m, CH2), 3.60 (s, CH3), 3.75 (m, CH2), 3.86 (m, CH2), 4.05-4.64 (m, CH3 Sar + CH Glu, Ala, Leu).
【表13】
【0207】
実施例7。(R5)が本発明による開示された基の1つのみを含む比較実施例の合成:PGluONa-co-PLeu-b-PSarコポリマー(E)
以下の例を、比較の目的で、以下に説明される手順に従い合成した:Tian,C.,Ling,J.,&Shen,Y.qing.(2015)。Self-assembly and pH-responsive properties of poly(L-glutamic acid-r-L-leucine) and poly(L-glutamic acid-r-L-leucine)-b-polysarcosine.Chinese Journal of Polymer Science(English Edition),33(8),1186-1195.https://doi.org/10.1007/s10118-015-1669-0。以下の生成物をさらに使用して、N1またはPEIのいずれかにより形成された異なるポリプレックスを安定化したが、結果は陰性であった(実施例10.6および10.9を参照されたい)。
【0208】
7.1 PSar-b-PGluOtBuの重合のための一般的手順
【化30】
グルタミン酸t-tertブチルエステルNCAおよびL-ロイシンNCAを、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に添加した。真空/Nの3サイクル後に、混合物を、無水DMF(150mg/mL)に溶解した。次に、DMF(2mL)で希釈した開始剤(ベンジルアミン)を、反応混合物に加え、10℃で16時間撹拌した。NCAの消費をIRにより確認したら、サルコシン-N-カルボキシ無水物(Sar-NCA)を、無水DMFに溶解した反応混合物に加えた。混合物を、10℃で16時間撹拌した。完了すると、反応混合物は透明になり、モノマーの完全な変換を、IRにより検出できた。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70~90%。重合生成物は、それが脱保護溶媒にのみ可溶であるため、NMRにより特徴づけなかった。
【0209】
7.2 脱保護ステップのための一般的手順:
【化31】
Bn-PSar-b-PGluOtBuのブロックコポリマーを、0℃でトリフルオロ酢酸に溶解し(100mg/mL)、混合物を、5℃で1時間撹拌した。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。ブロックコポリマーを、白色固体として単離した。
収率:95%。
[V1-V2]1H NMR (D2O): δ 0.93 (d, J = 27.0 Hz,CH3), 1.62 (brs, CH2), 1.73 (brs, CH), 1.82-2.45 (m, CH2), 2.78-3.17 (m, CH3), 4.00-4.63 (m, CH2 PSar + CH GluONa), 7.38 (m, アリールCH).
【表14】
【0210】
実施例8。ポリカチオン性担体の合成および説明
遮蔽ポリマーによりポリプレックスに付与される安定化能力および増強されたトランスフェクション機能を証明するために、ユニバーサルベンチマークjetPEIを使用した(Polyplus-transfectionS.A,Illkirch,France)(RefPolyplus:101-10N)。JetPEI(登録商標)は、低い毒性を有して哺乳動物細胞中への堅牢かつ効果的かつ再現性の高いDNAトランスフェクションを確実に行う、強力な試薬である。JetPEI(登録商標)は、Polyplus-transfectionで製造された直鎖状ポリエチレンイミンで主に構成される。JetPEI(登録商標)は、滅菌非発熱性水中の7.5mM溶液として提供される(窒素残基の濃度として表される)。また、構造的および組成的に非常に異なる代替ポリカチオンの安定化を証明するために、星型ポリアミノ酸をベースにした異なるポリカチオン性NVVを合成し、そのポリプレックスもまた安定化しアッセイした。以下の実施例は、遺伝物質の錯体形成およびビヒクル化のために使用される前述のポリカチオン性化合物の調製を説明する。
【0211】
8.1 化合物N1の調製
【化32】
【0212】
一般的に言えば、本開示に従う式(N1)の化合物を合成するために、まず、3アーム星型開始剤を、2~3ステップ以内で得た。このような開始剤を次に使用して、γ-ベンジルL-アスパラギン酸-NCAおよびL-フェニルアラニンNCAを重合して、ベンジル保護された星形ランダムコポリマー(St-PAsp(Bz)-co-PPhe)を生成した。ベンジル基を、アミノ分解反応により除去して、対応するStar-PAsp-オリゴアミン-co-PPheを得た。
【0213】
スキーム1は、重合およびアミノ分解のステップの特定の例を示す:
【化33】
【0214】
8.1.A アーム星型開始剤の合成
3アーム星型開始剤の合成経路を以下に説明する。
実施例8.1.A:N,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(St-S-S-開始剤)(15)
【0215】
N,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド(St-S-S-開始剤)のトリフルオロ酢酸塩(17)を、開示されるスキーム2の一般的手順に従って合成した。
【化34】
【0216】
三量体アミン開始剤の合成は、カップリング反応により始まり、その後アミンの脱保護が続く。
【0217】
ステップ(a)トリ-tert-ブチル((((ベンゼントリカルボニルトリス-(アザンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))トリス(ジスルファンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))-トリカルバメートの合成:
【化35】
【0218】
N-(tert-ブチルオキシカルボニル)シスタミン(7.99、27mmol、3.3当量)を、火炎乾燥させた二口丸底フラスコ中に秤量し、56mLの無水THFに溶解した。新たに蒸留したDIPEA(4.75mL、27mmol、3.3当量)を加え、室温で15分間撹拌した。1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(2.25g、8.3mmol、1当量)を、火炎乾燥させた二口丸底フラスコ中に秤量し、28mLの無水THFに溶解した。三塩化物溶液を、シリンジを介してN-(tert-ブチルオキシカルボニル)シスタミン混合物にゆっくりと加えた。反応の進行を、薄層クロマトグラフィー(TLC)により観測した。4時間後に、溶媒を、真空で蒸発させ、残渣を、酢酸エチルに溶解した。有機層を、ミリQ水、1M塩酸および飽和重炭酸ナトリウム溶液で順次洗浄した。有機相を、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空で濃縮して、トリ-tert-ブチル((((ベンゼントリカルボニルトリス-(アザンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))トリス(ジスルファンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))-トリカルバメートを白色泡状物として得た(7.5g、η=98%)。
1H NMR (CDCl3): δ = 1.39 (brs, 27H, -C(CH3)3), 2.84 (t, J = 6.26 Hz, 6H, CH2), 2.96 (t, J = 6.84 Hz, 6H.CH2), 3.46 (m, 6H, CH2), 3.79 (m, 6H, CH2), 5.18 (brs, 3H, -NHBoc), 7.39 (brs, 3H, aryl CH).
【0219】
ステップ(b):N,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(St-S-S-開始剤)の合成(15):
【化36】
【0220】
7.5g(8.19mmol)の開始剤(15)を、無水ジクロロメタン(180mL)に溶解し、90mLのTFAを加えた。反応物を、窒素雰囲気下で60分撹拌し、反応の完了をTLCにより観測した。溶媒を、真空下で蒸発させた。開始剤のTFA塩(15)(7g、7.31mmol)を、定量的収率で得、真空下で乾燥させた。
1H NMR (D2O): δ = 2.86 (m, 12 H), 3.25 (t, J = 6.49 Hz, 8H), 3.60 (t, J = 6.85 Hz, 8H), 8.02 (brs, 3H, アリールCH).
【0221】
実施例8.1.B。疎水性フラグメントを含むStar-PAsp(Bz)(16)コポリマーの合成。
【化37】
疎水性残基を有するコポリマーを合成するために、重合を、開始剤としてN,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩を使用する開環重合機構を介して行った。
【0222】
St-S-S-PAsp(Bz)(45)-co-PLeu(5)を合成するための一般的手順:
β-ベンジル-L-アスパラギン酸-N-カルボキシ無水物(3,5g、14,15mmol)およびL-フェニルアラニン-N-カルボキシ無水物(1.57mmol)を、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に添加し、真空/N2の3サイクルでパージし、無水クロロホルム(100mL)およびDMF(6mL)の混合物に溶解した。次に、星型開始剤を、DMF(4mL)に溶解し、反応混合物に添加した。混合物を、50℃で16時間撹拌した。完了時に、反応混合物は透明になり、モノマーの完全な変換を、IRにより検出できた。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。コポリマーを、白色固体として単離した。
収率:70-80% 1H NMR (TFA): δ = 2.99 (s, 2H, CH), 3.94 (brs, 1H, CH), 4.93 (s, 1H, CH), 5.15 (m, 2H, ベンジル CH2), 7.20 (s, 5H, アリールCH), 8.42 (s, アリールCH)
【0223】
繰り返し単位の導入の割合を、反応させる対応するモノマー単位の混合比を変えることにより調節した。この前駆体では、疎水性残基は、ポリアスパラギン酸の保護基と1H-NMRにより一致する。これらの系を、アミノ分解反応後に分析する(次の実施例5.1.C)。
【0224】
実施例8.1.C 両親媒性ポリアスパルトアミド誘導体St-S-S-PAspDET-co-PR18(X)の合成。
以下の合成経路(7)に示すように、ポリアミノ酸を、PBLAとDETの同時アミノ分解反応により調製した。
【化38】
【0225】
一例として、本明細書で、R18がフェニルアラニン基を表す、合成方法を説明する。St-S-S PAsp(Bz)45-co-PPhe(5)のコポリマー(500mgのコポリマー、470mgのPBLA、DP:45)を、NMP(10mL)に溶解し、4℃に冷却した。得られたコポリマー溶液を、DETの混合物(12mL、PAsp(Bz)単位に対して50当量)に滴下し、溶液を窒素雰囲気下にて4℃で4時間撹拌した。この時間の後、反応混合物を、中和のために冷HCl 6M中に滴下した(pH3.5)。ポリマー生成物を、遠心式限外濾過により精製した。濾過後に、残存するポリマー水溶液を、凍結乾燥して最終生成物を得た。
収率:70~80%。1H NMR (D2O) [R18= Phe側鎖]: δ = 2.91 (brs, 2H, CH2), 3.84-3.18 (m, 2H, CH2), 7.34 (brs, 5H,PheのアリールCH), 8.33 (s,アリールCH).
【0226】
表15は、式(N1)による両親媒性コポリマーSt-S-S-PAspDET-co-R18を指す。
【表15】
【0227】
8.2 化合物N2の調製
【化39】
実施例8.2.A:St-ポリ(β-ベンジル-L-アスパラギン酸)(Star-PAsp(Bz))(Pn)
【0228】
St-PAsp(Bz)(6)の重合のための一般的手順は、次のとおりである:
【化40】
【0229】
化合物N2の合成は、前の実施例で説明したものと非常に似ており、前述したのと同じ開始剤により始まる。β-ベンジル-L-アスパラギン酸-NCA(5g、2mmol)を、スターラーバーおよび栓を備えたシュレンク管に加え、真空/N2の3サイクルでパージし、無水クロロホルム(100mL)およびDMF(6mL)の混合物に溶解した。次に、星型開始剤(St)を、DMF(4mL)に溶解し、反応混合物に添加した。混合物を、50℃で16時間撹拌した。完了時に、反応混合物は透明になり、モノマーの完全な変換を、IRにより検出できた。反応混合物を、ジエチルエーテル中に注いで、生成物を沈殿させた。沈殿物を、遠心分離(3750rpm、4分間)により単離し、真空下で乾燥させた。St-ポリ(β-ベンジル-L-アスパラギン酸)(Star-PAsp(Bz))(Pn)を、白色固体として単離した。
収率:70~90%。1H NMR (TFA): δ = 2.92 (m, 2H, CH2), 4.85 (s, 1H, CH), 5.05 (m, 2H,ベンジルCH2), 7.13 (s, 5H, アリールCH), 8.38 (s, アリールCH).
【表16】
【0230】
実施例8.2.B St-PAsp-DET(Nn)を得るためのポリ(β-ベンジル-L-アスパラギン酸)(6)のアミノ分解反応
重合ステップ中で使用される開始剤の性質に関係なくポリカチオン性ホモポリマーPaspDETを生成するためのアミノ分解反応のための一般的手順:
【化41】
【0231】
St-PAsp(Bz)(6)(DP=50、750mg)を、NMP(15mL)に溶解し、4℃に冷却した。この溶液を、4℃で冷却したDET(Asp単位に対して50当量のDET、19mL)に滴下し、混合物を、同じ温度で4時間撹拌した。この時間の後で、反応混合物を、中和のために冷HCl 6M中に滴下した(pH3.5)。ポリマー生成物を、遠心式限外濾過により精製した。0.22μmのPESフィルターを通す濾過の後で、残存するポリマー水溶液を、凍結乾燥して、最終生成物(370mg、η=50%)を得た。
1H NMR (D2O): δ 2.93 (brs, 2H, CH2), 3.12-3.85 (m, 2H, CH2), 8.33 (s, 3H, アリールCH).
【表17】
【0232】
実施例9。ポリプレックス製剤
ポリプレックス製剤を、「PXn_ratio1_Shielding polymer_ratio2 nuc」と名付け、ここで「n」は、ポリプレックスを形成するために使用される、上で与えられたポリカチオン性化合物の命名法に対応し;ここで「ratio1」は、カチオン性ポリマー対遺伝物質のN/P比を指し、「遮蔽ポリマー」は、ポリアニオン性遮蔽ジブロックコポリマーを指し、「ratio2」は、カチオン性ポリマー対遮蔽(アニオン性)ポリマーの+/-比を指し、「nuc」は、核酸の型:pDNA、clDNAまたはmRNAを指す。
【0233】
以下の実施例では、pDNA(PlasmidFactoryから購入、参照PF461(pCMV-luc)、ルシフェラーゼを発現する6233bpを含む)、および標準的な分子生物学の方法(例えば、Heinrich,M.et al.「Linear closed mini DNA generated by the prokaryotic cleaving-joining enzyme TelN is functional in mammalian cells」,J Mol Med,2002,vol.80,pp.648-654に開示されるもの)に従い得られた配列番号1に記載のclDNAを使用した。mRNAを、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼを発現する参照L-1201-1000 CleanCap Fluc mRNA(5moU)としてTrilinkから購入した。
【0234】
実施例における配列番号1によるcIDNAの配列は、表18の配列である。
【表18】
【0235】
9.1.ポリプレックス製剤化手順1
安定性、サイズ、毒性、およびトランスフェクション能力を試験するための遮蔽ポリプレックス製剤を、以下のようにin-situで(ピペットで混合)調製した:
【0236】
所望の量のpDNA、clDNAまたはmRNA、および示された電荷比(+/-)またはアミン対リン酸塩の比(N/P)で計算された量のカチオン性ポリマーを、別々のチューブ中でPBS中pH7.4で希釈した。アミド窒素ではなく、プロトン化可能な窒素のみを、+/-比およびN/P比の計算において考慮した。ポリプレックス形成の前に、対応する量の遮蔽ポリマーを、核酸試験管に加え混合した。遮蔽されたポリプレックスの形成のために、カチオン性ポリマー溶液および遺伝物質+遮蔽ポリマー溶液を、素早く上下にピペッティングする(10回)ことにより混合し、室温で20分間インキュベートした。次に、形成されたポリプレックスを、DLSにより特性評価して、サイズおよびZ電位を決定した。
【0237】
特定の例として、20μgのpDNA(ポリプレックスの最終容量200μl)をロードした遮蔽ポリプレックスPXN1_8_V1_1 pDNAを示す。他のポリプレックスの製剤化を、同様の方法で行う。本発明による遮蔽アニオン性ポリマーの量を、以下のように計算する:NP8比に必要とされるアミンの量が確立されたら、それらを2で割り、その半分を、ポリマー-DNA相互作用に使用し、他の半分を、必要とされる遮蔽アニオン性ポリマーNP比(NP1)に用いる。
【0238】
最初に、10mg/mlの遮蔽ポリマーストック水溶液および4mg/mlのポリカチオン性ポリマーストック水溶液を、調製した。実験手順を、次のように実施した:
1.エッペンドルフチューブに80μlのPBSを加える。次に、1mg/mlのストックから20μlのpDNAを希釈し、10mg/mlのストックから15.8μlの遮蔽ポリマーを加える(115.8μlの最終容量)。
2.ポリカチオン性ポリマー溶液(ストック4mg/ml)から18.2μlをpDNA-遮蔽ポリマー溶液に加え、PBSにより最終容量200μl(66μl PBS)にする。
3.室温で20分間にインキュベートする。
4.ポリプレックスは、すぐに使用できる。
【0239】
この最初の方法により製剤化されたサンプルを、in-vitro試験用に同様の方法で調製した。24時間のインキュベーション後に、毒性およびトランスフェクション能力を、評価する。各ポリマーについて試験した比率は、N/P8、15、または30であった。トランスフェクションの陽性対照として、jetPEI(登録商標)(Polyplus-transfectionS.A,Illkirch,France)(Ref Polyplus:101-10N)を、窒素対リン比(NP5)で使用した。細胞トランスフェクションを、製造業者の指示に従いjetPEI(登録商標)を使用して実施した。jetPEI(登録商標)は、Polyplus-transfectionで製造された直鎖状ポリエチレンイミンから主に構成される。jetPEI(登録商標)は、無菌で非発熱性の水中の7.5mM溶液(窒素残基の濃度として表される)として提供される。
【0240】
9.2.ポリプレックス製剤化手順2
マイクロ流体デバイスを、ポリプレックス製剤化のこの手順のために使用した。マイクロ流体デバイスを、サンプルの汚染の可能性を回避するために層流フード中に配置し、この製剤化ステップで使用したすべてのポリマーを、それらを0.22μmPESフィルターを通過させることにより、事前に滅菌した。すべてのマイクロ流体実験について、マイクロ流体デバイスは、室温であった。
【0241】
特定の例として、3μgのclDNA(ポリプレックスの最終容量200μl)をロードした遮蔽ポリプレックスPXN1_30_V1_1 clDNAを示す。他のポリプレックスの製剤化を、同様の方法で行う。最初に、50mg/mlの遮蔽ポリマーストック水溶液および10mg/mlのポリカチオン性ポリマーストック水溶液を、調製した。実験手順を、次のように実施した:
1.エッペンドルフチューブに75.81μlのPBSを加える。次に、0.124mg/mlのストックから24.19μlのclDNAを希釈し、50mg/mlのストックから1.78μlの遮蔽ポリマーを加える(101.78μlの最終容量)。
2.他のエッペンドルフチューブに94.13μlのPBSを加え、ポリカチオン性ポリマー溶液(ストック10mg/ml)から4.09μlを希釈する(98.22μlの最終容量)。
3.次に、両方の溶液を、1mlプラスチックシリンジ(BD Plastipak(商標),Spain)中に充填した。2つのプログラム可能な注入シリンジポンプ(NE-4000,SyringePump,USA)を次に、流体注入ならびに側流および中央流の所望の流量比(300μl/分)に従う制御のために使用した。
4.最終ポリプレックス溶液を、収集し、20分間安定化させた。
5.ポリプレックスは、すぐに使用できる。
【0242】
9.2.A.マイクロ流体デバイスおよびセットアップ
マイクロ流体デバイスを、Little Things Factory GmbH(Germany)で購入した。このシステムは、ホウケイ酸ガラス製の2つの接続された反応器で構成され、第1の反応器(LTF-MS)は、2つの入口チャネル(1つはDNA用、および他方はポリマー用)と1つの出口チャネルを有する、容量0.2ml、チャネルサイズ:1mm、0.5~20ml/分/チャネル、閉塞に対して敏感でない。サイズ:115x60x6mm(l、w、h)。第2の反応器(LTF-VS)は、1つの入口チャネル(第1の反応器の出口チャネルに接続)および1つの出口チャネルを有する、容量1.1ml、チャネルサイズ:1mm。サイズ:115x60x6mm(l、w、h)。第1の反応器を、ポリプレックスの混合および形成のために使用し、第2の反応器を、滞留時間を延長させるために使用する。
【0243】
さらに、2つのプログラム可能なポンプが、シリンジの流体流量を制御する(NE-4000プログラマブル2チャネルシリンジポンプ、Syringe Pump,USA)。システムは、1.436μL/時間(1mLシリンジ)~7515mL/時間(60mLシリンジ)の注入速度を受け入れる。
【0244】
この方法論は、ポリプレックスの形成に再現性をもたらし、ならびにプロセスのスケールアップの可能性をもたらす。
【0245】
実施例10 遮蔽ポリプレックスのサイズおよび安定性
ポリプレックスの安定性は、効率的な治療法を開発する上で最も重要な態様である。医薬品製剤の中長期安定性を確認後、標的作用部位への循環中にそれらが安定である必要がある投与経路に従い薬物が満たす生理学的条件を模倣するパネルアッセイを、行う。正の表面電荷を示すポリプレックスは、塩が誘導する凝集を受け、これが、全身に適用されると不正確な細胞生物学的評価および重大な毒性問題を引き起こし得ることは、よく知られている。初期安定性試験は現在、本プロジェクトの間に開発中であり、それらは、ポリプレックス粒子の特性(サイズ)を監視することを目的としている。
【0246】
異なるN/P比、異なるポリカチオンおよび遮蔽ポリマー(V1またはV0.5)でclDNA、mRNA、またはpDNAと形成された安定化ポリプレックスのサイズおよびZ電位を、173°の固定散乱角にて532nmレーザーを備えたMalvern ZetasizerNanoZS装置を使用して実施した。20μlのサンプルを、石英ガラス高性能キュベット(Hellma Analytics)を使用して測定した。サイズ分布を、n>3の測定により測った(直径、nm)。安定性の測定のために、ポリプレックスを、実験の間冷蔵庫に保管し、ポリプレックスの安定性を、様々な時間において測定した。
【0247】
この実施例で示されるcIDNAの配列、配列番号1は、上の表18の配列である。
【0248】
10.1.N1およびV1により形成されるポリプレックスの安定化
ポリプレックス製剤化手順1(上の、実施例8.1で報告したとおり)による、N1ポリプレックスの異なる時間での安定性および形成を、NP比(8および15)を使用し、PBSpH7.4中で異なる+/-電荷比の遮蔽ポリマーV1を使用して、調べた。この実験のために、異なる量の遺伝物質も使用した(表19に示す)。最終ポリプレックス溶液(200μl)を、20分間安定させた後、DLS(MalvernPanalytical,Spain)によりサイズを測定した。ポリプレックスを、実験の間冷蔵庫に保管し、ポリプレックスの安定性を、様々な時間において測定した。
【0249】
表19に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、最大で、少なくとも数日間、溶液中のポリプレックスへ向上した安定性をもたらし、経時的に一定のサイズを維持し、凝集を回避した。
【表19】
【0250】
表で観察できるとおり、ポリプレックスのサイズは、遺伝物質の質量と、最終製剤中に存在する遮蔽ポリマーの比率に依存する。遮蔽ポリマーなしで製剤化されたこれらのポリプレックス(すなわち、PXN1_8_V1_0 pDNAおよびPXN1_8_V1_0 mRNA)は、DLS技術により測定できない大きい凝集体を生成した。
【0251】
10.2.N1およびV2により形成されるポリプレックスの安定化
表20に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、最大で、少なくとも数日間、溶液中の実施例8.1に示した手順により製剤化されたポリプレックスに、向上した安定性をがもたらし、経時的に一定のサイズを維持し、凝集を回避した。
【表20】
【0252】
10.3.N1およびW1により形成されるポリプレックスの安定化
表21に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、最大で、少なくとも数日間、溶液中の実施例6.1に示した手順により製剤化されたポリプレックスに向上された安定性をもたらし、経時的に一定のサイズを維持し、凝集を回避した。
【表21】
【0253】
10.4 N1およびY1により形成されるポリプレックスの安定化
表22に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、溶液中の実施例6.1に示した手順により製剤化されたポリプレックスに安定性をもたらした。
【表22】
【0254】
10.5 N1およびF1により形成されるポリプレックスの安定化
表23に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、実施例9.1に示した手順により製剤化されたポリプレックスに安定性をもたらした。
【表23】
【0255】
10.6 N1および比較実施例E1により形成されるポリプレックスの安定化
表24に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、溶液中の実施例6.1に示した手順により製剤化されたポリプレックスに安定性をもたらさなかった。
【表24】
【0256】
10.7 N1により形成されるポリプレックスへのV1遮蔽ポリマーの添加時のポリプレックスZ電位の変化
Z電位は、遮蔽および凝集の回避を確実にするためのポリプレックスの重要な機能である。増加する量の遮蔽V1を使用して、製剤プロトコル1に従いN1およびpDNAにより形成された同じポリプレックスを遮蔽した。サイズの安定化および凝集の防止にも関わらず、遮蔽ポリマー比率が上昇するにつれて、Z電位の低下を明確に確認し得る。このZ電位の低下は、正電荷の遮蔽が効率よく達成されたことを確認する(表25)。
【表25】
【0257】
10.8.2つの製剤化手順を比較する、JetPEIにより形成されるポリプレックスの安定化
pDNAを含みjetPEI(NP=5)により形成され、かつ異なる遮蔽ポリマーV1の+/-比および製剤化手順で安定化された安定化ポリプレックスのサイズおよび安定性の変動を、DLSにより評価する。表26に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、最大で96時間溶液中のポリプレックスに向上した安定性をもたらし、経時的に一定のサイズを維持し、凝集を回避した。
【表26】
【0258】
10.9.E1を含みjetPEIにより形成されるポリプレックスの安定化
pDNAを含むjetPEI(NP=5)により形成され、遮蔽ポリマーE1の異なる+/-比および製剤化手順1(セクション8.1に説明)で安定化された安定化ポリプレックスのサイズおよび安定性の変動を、DLSにより評価した。表27に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、溶液中のポリプレックスに安定性を付与しなかった。
【表27】
【0259】
10.10.N2およびV1により形成されるポリプレックスの安定化
ポリプレックス製剤化手順1(上で報告したとおり)によるN2ポリプレックスの異なる時間での安定性および形成を、PBSpH7.4中でNP比8を使用しかつ異なる+/-電荷比の遮蔽ポリマーV1を使用して、調べた。遮蔽ポリマーの存在は、pDNAおよびmRNAの両方を含む溶液中のポリプレックスに向上した安定性をもたらし、経時的に一定のサイズを維持し、凝集を回避した(表28)。
【表28】
【0260】
10.11.N1およびclDNAにより形成されるポリプレックスの安定化
N1およびclDNAにより形成されたポリプレックスの安定化を、マイクロ流体デバイスを使用して実施した。ポリプレックスの安定性および形成は、PBSpH7.4中で、ポリプレックス形成については30のNP比、および遮蔽ポリマー(V1)については1のNP比を使用した。表29に示すとおり、遮蔽ポリマーの存在は、溶液中のポリプレックスに向上した安定性を与えた。
【0261】
本実施例で示されるcIDNAの配列、配列番号1は、上記の表18の配列である。
【表29】
【0262】
実施例11。錯体形成/分解実験。
さらに、錯体形成の有効性およびポリプレックス中の遊離pDNAの存在の可能性を、最初のスクリーニング方法として電気泳動ゲルを使用して評価した。電気泳動を実施するために、E-gel Power Snap ElectrophoresisデバイスおよびE-Gel Power Snap Camera(Invitrogen)を使用した。SYBR safe DNAマーカー(SYBR safeを含むE-Gel(登録商標)1.2%、Invitrogen)を含むように調製した1.2%アガロースゲルを、使用した。異なるNPおよび異なる+/-遮蔽ポリマー比でのポリプレックス(20μl)の錯体形成効率を評価し、低ヘパリン濃度(0.075IU/ml)および高ヘパリン濃度(200IU/ml)(PanReacAppliChem,Spain)の存在下でのポリプレックスの分解も、評価した。低濃度の場合、0.1μlの15IU/mlヘパリン溶液を、既に形成されたポリプレックス20μlに添加し、高濃度の場合、20μlのポリプレックスに0.8μlの5000IU/mlヘパリン溶液を、添加した。ゲルをロードしたら(20μl/ウェル)、使用したゲルの種類に応じて、装置のプロトコルを選択する(この場合、プロトコルは約40分であるが、時間を、サンプルに応じて変更してよい)。
【表30】
【0263】
すべての場合において、遊離pDNAは、異なるNPでまたは低濃度のヘパリンで観察されない。しかし、高濃度のヘパリンでは、遊離pDNAシグナルが、ポリマーに結合するヘパリンとpDNAの間の競合のため観察され、ポリマーがそれらのカーゴを放出する能力を示している(ゲルの代表的な画像を、図1において観察できる)。
【0264】
実施例12。In vitro生物学的試験
実施例12A.細胞培養
HeLa細胞を、10%ウシ胎児血清(Hyclone#SV30160.03HI、GE Healthcare Europe GmbHより提供)を補充したGlutamax(Gibco-ThermoFisher#61965-059)を含む高グルコースDMEM中で培養した。トランスフェクションを、最終容量100μlで10000細胞/ウェルを含む96ウェルプレートで行い、細胞を、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。24時間後に、培地を、除去し、90μlの完全培地でリフレッシュした。トランスフェクション混合物を、PBSを使用して調製し、陽性対照(JetPEI)の場合は、製造業者のガイドラインに従い(#101-10N、Polyplus Transfection)、20分間の安定化後に、10μlの各製剤を、細胞に添加した。24時間後に、細胞を、回収し処理した。
【0265】
HEK293(ヒト胎児腎臓)細胞を、高グルコースのDMEM(Gibcoref 61965-059)+10%FBS((Hyclone#SV30160.03HI、GE Healthcare EuropeGmbHにより提供)中で培養した(Gibcoref)61965-059)。トランスフェクションを、100μlの最終容量で10000細胞/ウェルを含む96ウェルプレートで行い、細胞を、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。24時間後に、培地を、除去し、90μlの完全培地でリフレッシュした。トランスフェクション混合物を、PBSを使用して調製し、陽性対照(JetPEI)の場合は、製造業者のガイドラインに従い(#101-10N、Polyplus Transfection)、20分間の安定化後に、10μlの各製剤を、細胞に添加した。24時間後に、細胞を、回収し処理した。
【0266】
実施例12B。細胞毒性評価のためのATP評価
インキュベーション24時間後に、培地を吸引し、50μl/ウェルのATPLite試薬(ATPLite PerkinElmer#6016731)を、添加した。プレートを、暗所にて室温で10分間インキュベートした。発光を、VictorNivo(PerkinElmer)を使用して分光測光法で読み取り、データを、未処置の対照細胞を100%として、細胞生存率のパーセンテージとして表した。
【0267】
実施例12C。ルシフェラーゼアッセイ。
インキュベーション24時間後に、100μlのBrightGlo試薬(Promega#E2620)を、製造業者の指示に従い各ウェル中に添加した。室温で5分間のインキュベーション後に、ルシフェラーゼ活性を、VictorNivo(Perkin Elmer)を使用して測定した。データを、トランスフェクションの陽性対照に対するトランスフェクションのパーセンテージに対する発光として表した。
【0268】
実施例12D。HeLa細胞中でのN1およびV1により形成されたポリプレックスの生物学的活性
HeLa細胞中でのN1およびV1により形成されたポリプレックスのトランスフェクション効率および細胞生存率を、次表で報告する。トランスフェクションデータを、処理24時間後の陽性対照100%である陽性対照jetPEI(登録商標)の%として表し、細胞生存率を、未処置(NT)細胞と比較し、NT細胞のATP含有量の読み出し値は、100%に等しい。
【表31】
【0269】
実施例12E。HeLa細胞中でのN1およびV2により形成されたポリプレックスの生物学的活性
HeLa細胞中でのN1およびV2により形成されたポリプレックスのトランスフェクション効率および細胞生存率を、次表で報告する。トランスフェクションデータを、処理24時間後の陽性対照100%である陽性対照jetPEI(登録商標)の%として表し、細胞生存率を、未処置(NT)細胞と比較し、NT細胞のATP含有量の読み出し値は、100%に等しい。
【表32】
【0270】
実施例12F。HeLa細胞中でのN1およびW1により形成されたポリプレックスの生物学的活性
HeLa細胞中でのN1およびW1により形成されたポリプレックスのトランスフェクション効率および細胞生存率を、次表で報告する。トランスフェクションデータを、処理24時間後の陽性対照100%である陽性対照jetPEI(登録商標)の%として表し、細胞生存率を、未処置(NT)細胞と比較し、NT細胞のATP含有量の読み出し値は、100%に等しい。
【表33】
【0271】
実施例12G。HEK293細胞中でのN1およびV1により形成されたポリプレックスの生物学的活性
HEK293細胞中でのN1およびV1により形成されたポリプレックスのトランスフェクション効率および細胞生存率を、次表で報告する。トランスフェクションデータを、処理24時間後の陽性対照100%である陽性対照jetPEI(登録商標)の%として表し、細胞生存率を、未処置(NT)細胞と比較し、NT細胞のATP含有量の読み出し値は、100%に等しい。
【表34】
【0272】
実施例12H。HEK293細胞中でのN1およびW1により形成されたポリプレックスの生物学的活性
HEK293細胞中でのN1およびW1により形成されたポリプレックスのトランスフェクション効率および細胞生存率を、次表で報告する。トランスフェクションデータを、処理24時間後の陽性対照100%である陽性対照jetPEI(登録商標)の%として表し、細胞生存率を、未処置(NT)細胞と比較し、NT細胞のATP含有量の読み出し値は、100%に等しい。
【表35】
【0273】
上記のデータから導出され得るとおり、遮蔽ポリマーの存在は、HEK293細胞中での細胞生存率を高め、ポリマー錯体の毒性を低下させるのみでなく、最大で6倍トランスフェクション効率を顕著な様式で上昇させる。

参考文献
J Mol Med, 2002, vol. 80, pp. 648-654
- T. W.Green and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, Wiley, 3rd ed. 1999, Chapter 5 (pp. 369-451)
- T. W.Green and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, Wiley, 3rd ed. 1999, Chapter 7 (pp. 495-653)
- Chinese Journal of Polymer Science (English Edition), 33(8), 1186-1195
【0274】
条項
完全性の理由から、本発明の様々な態様を、以下の番号付き条項に記載する:
条項1.式(Ia)または(Ib)のアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムもしくはブロックもしくはグラフトコポリペプチドを含む、式(Ia)または(Ib)の化合物またはその薬学的に許容される塩のいずれかの、任意の立体異性体または立体異性体の混合物;
【化42】
式中、Yは、-CO(CH)p-CO-および-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-CO-からなる群から選択され;
Zは、単結合、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;
○は、1~2から選択される整数であり;
式中、p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり:
【化43】
a、b、c、d、e、f、g、およびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしa、b、c、d、e、f、g、およびhの少なくとも1つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C~C)アルキルからなる群から選択され、ただしRは、XがOである場合存在せず;
およびRは、Hおよび-CHからなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化44】
式中、s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中、「/」は、記号の両側の角括弧で定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示すが、式IaおよびIb中の角括弧で定義される繰り返し単位は、説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよく、繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
式中、式Ibにおいて、R5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)のそれぞれの繰り返し単位の連続順序と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位は、ブロックであってもランダムに存在してもよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖の-(C~C)アルキル、直鎖または分岐鎖の-CO(C~C)アルキル、-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロアリール、-(C~C10)アラルキル、-(C~C)アルキル-O-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロシクロアルキル、-(C~C10)アルコキシ、-(C~C10)アリールオキシ、-(C~C10)アラルコキシ、-(C~C10)ヘテロアラルコキシ、-(C~C10)アルキル-O-(C~C10)アリールオキシ、アミン保護基、天然または非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤、および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF、-NH、-NH-(C~C)アルキル、NR、-NH-CO-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル、-NO、-N、-CO-(C~C)アルキル、-CO-O-(C~C)アルキル、-SOH、-SONH、-SO-N((C~C)アルキル)、-COOH、CONH、および-CON((C~C)アルキル)からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびRは、H、-(C~C)アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される。
【0275】
条項2.mが、20~160から選択される整数であり、nが、4~100から選択される整数であり、ただしm:nの比は、1:5~10:1の範囲である、条項1に記載のアニオン性ポリマー。
【0276】
条項3.式(Ia)または(Ib)のアニオン性ポリマーであり、Rが、-CHであり、Rが、Hである、条項1または2に記載のアニオン性ポリマー。
【0277】
条項4.式(Ib1)のアニオン性ポリマーであり、
【化45】
R2は、(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルからなる群から選択される、条項1~3のいずれかに記載のアニオン性ポリマー。
【0278】
条項5.上で定義した式(Ib1)のアニオン性ポリマーであり、Rは、Hであり、Rは、-CHである、条項1~3のいずれかに記載のアニオン性ポリマー。
【0279】
条項6.式(Ib)のものである、条項1~5のいずれかに記載のアニオン性ポリマー:式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;Rは、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり:式中、Rの式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、および(IX)のそれぞれの繰り返し単位の連続順序と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位は、ブロックであってもランダムに存在してもよい。
【0280】
条項7.式Ibのものである、条項1~6のいずれかに記載のアニオン性ポリマー:式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;Rは、(III)、(VI)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり:式中、c、e、g、およびhは、1~20から独立して選択される整数であり;zは、5~35から選択される整数である。
【0281】
条項8.式(Ib)のものである、条項1~7のいずれかに記載のアニオン性ポリマー;式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;Rは、(III)、(VI)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり:c、e、g、およびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしc、e、g、およびhの少なくとも2つは、0と異なり;zは、5~35から選択される整数であり;ここで、Rのそれぞれの繰り返し単位および整数nを有する角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックであってもランダムに存在してもよい。
【0282】
条項9.式(Ib)のものである、条項1~8のいずれかに記載のアニオン性ポリマー:式中、Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO-(CH)p-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;Rは、(III)、(VI)、(VIII)、および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムまたはブロックコポリマーであり:c、e、g、およびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしc、e、g、およびhの少なくとも2つは、0と異なり;zは、5~35から選択される整数であり;mが5~250から選択される整数であり、nが3~200から選択される整数であり、ここで、m:nの比は、1:8~30:1の範囲であり、ここでRのそれぞれの繰り返し単位および整数nを有する角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックであってもランダムに存在してもよい。
【0283】
条項10.式(Ib)のものであり、式中、Zが(R5)zである、式(Ib2)による、条項1~9のいずれかに記載のアニオン性ポリマー:
【化46】
式中、b、e、f、g、およびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしb、e、f、g、およびhの少なくとも1つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
ここでb、e、n、f、g、およびhの整数を伴う角括弧で囲まれた繰り返し単位間の「/」は、記号の両側の角括弧で囲まれたモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示し;
ここでmの整数を伴う角括弧で囲まれた繰り返し単位とz+n整数の角括弧で囲まれた繰り返し単位間の「/」は、記号の両側のモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示す。
【0284】
条項11.式(Ia)のものである、条項1~3のいずれかに記載のアニオン性ポリマー;R2は、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、R3は、-CHである。
【0285】
条項12.Yは、-CO-(CH)p-CO-であり;Rは、H、(X)および(XII)からなる群から選択され;RおよびRは、Hであり;mは、20~160から選択される整数であり;nは、4~100から選択される整数であり;ただしm:nの比率は、1:5~10:1の範囲である、条項7に記載のアニオン性ポリマー。
図1
【配列表】
2024525935000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024525935000001.xml
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)または(Ib)のアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムなもしくはブロックのもしくはグラフトのコポリペプチドを含む、式(Ia)または(Ib)の化合物の、またはその薬学的に許容される塩のいずれかの、任意の立体異性体または立体異性体の混合物
【化1】
式中Yは、-CO(CH)p-CO-および-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-CO-からなる群から選択され;
Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO(CH)pNH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、および-(R)z-からなる群から選択され;
oは、1~2から選択される整数であり;
式中p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:
【化2】
a、b、c、d、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしa、b、c、d、e、f、gおよびhの少なくともつは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C~C)アルキルからなる群から選択され、ただしRは、XがOである場合存在せず;
およびRは、Hおよび-CHからなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化3】
式中s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中「/」は、記号の両側の角括弧により定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示すが、式IaおよびIb中の角括弧で定義される繰り返し単位は、説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよくかつ繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
式中式Ibにおいて、Rの式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)のそれぞれの繰り返し単位と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖の-(C~C)アルキル、直鎖または分岐鎖の-CO(C~C)アルキル、-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロアリール、-(C~C10)アラルキル、-(C~C)アルキル-O-(C~C10)アリール、-(C~C10)ヘテロシクロアルキル、-(C~C10)アルコキシ、-(C~C10)アリールオキシ、-(C~C10)アラルコキシ、-(C~C10)ヘテロアラルコキシ、-(C~C10)アルキル-O-(C~C10)アリールオキシ、アミン保護基、天然のまたは非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF、-NH、-NH-(C~C)アルキル、NR、-NH-CO-(C~C)アルキル、-(C~C)アルキル、-NO、-N、-CO-(C~C)アルキル、-CO-O-(C~C)アルキル、-SOH、-SONH、-SO-N((C~C)アルキル)、-COOH、CONH、および-CON((C~C)アルキル)からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびRは、H、-(C~C)アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される
【請求項2】
mが、20~160から選択される整数であり、かつnが、4~100から選択される整数であり;ただしm:nの比は1:5~10:1の範囲である、請求項1に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項3】
式(Ia)または(Ib)のものであり、Rが、-CHであり;かつRが、Hである、請求項1または2に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項4】
式(Ib)のものであり、式中Zは、単結合であり;Rは、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され:かつRは、-CHである、請求項1~3のいずれか一項に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項5】
式Ibのものであり;式中Zは、-CO-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-、-CO(CH)pNH-(R)z-、-CO-(CH)p-CO-NH-(CH)q-S-S-(CH)r-NH-(R)z-および-(R)z-からなる群から選択され;かつRは、(III)、(VI)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:かつ式中c、e、g、およびhは、1~20から独立して選択される整数であり;かつzは、5~35から選択される整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項6】
式(Ia)のものであり;Rは、H、ならびに(X)および(XII)からなる群から選択されるラジカルから選択され;かつRは、-CHである、請求項1~3のいずれか一項に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項7】
Yは、-CO-(CH)p-COであり;Rは、H、(X)および(XII)からなる群から選択され;RおよびRは、Hであり;mは、20~160から選択される整数であり;nは、4~100から選択される整数であり;ただしm:nの比率は1:5~10:1の範囲である、請求項6に記載のアニオン性ポリマー。
【請求項8】
a)薬学的活性剤、獣医学的活性剤、美容上の活性剤、診断活的性剤、核酸、ペプチド、抗体、アプタマー、タンパク質、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の活性剤と共有結合的にまたは静電結合的に結合するカチオン性ポリマーであって、前記カチオン性ポリマーおよび前記少なくとも1つの活性剤が、正に荷電したナノ粒子を形成する、カチオン性ポリマーと;
b)前記ナノ粒子と静電的に相互作用する、式(Ia)または(Ib)のアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムなもしくはブロックのもしくはグラフトのコポリペプチドを含む、式(Ia)または(Ib)の化合物の、またはその薬学的に許容される塩のいずれかの、任意の立体異性体または立体異性体の混合物と
【化4】
(式中、Yは、-CO(CH )p-CO-および-CO-(CH )q-S-S-(CH )r-CO-からなる群から選択され;
Zは、単結合、-CO-(CH )q-S-S-(CH )r-NH-(R )z-、-CO(CH )pNH-(R )z-、-CO-(CH )p-CO-NH-(CH )q-S-S-(CH )r-NH-(R )z-、および-(R )z-からなる群から選択され;
oは、1~2から選択される整数であり;
式中p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:
【化5】
a、b、c、d、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしa、b、c、d、e、f、gおよびhの少なくとも2つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C ~C )アルキルからなる群から選択され、ただしR は、XがOである場合存在せず;
およびR は、Hおよび-CH からなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化6】
式中s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中「/」は、記号の両側の角括弧により定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示すが、式IaおよびIb中の角括弧で定義される繰り返し単位は、説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよくかつ繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
式中式Ibにおいて、R5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)のそれぞれの繰り返し単位と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖の-(C ~C )アルキル、直鎖または分岐鎖の-CO(C ~C )アルキル、-(C ~C 10 )アリール、-(C ~C 10 )ヘテロアリール、-(C ~C 10 )アラルキル、-(C ~C )アルキル-O-(C ~C 10 )アリール、-(C ~C 10 )ヘテロシクロアルキル、-(C ~C 10 )アルコキシ、-(C ~C 10 )アリールオキシ、-(C ~C 10 )アラルコキシ、-(C ~C 10 )ヘテロアラルコキシ、-(C ~C 10 )アルキル-O-(C ~C 10 )アリールオキシ、アミン保護基、天然のまたは非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF 、-NH 、-NH-(C ~C )アルキル、NR 、-NH-CO-(C ~C )アルキル、-(C ~C )アルキル、-NO 、-N 、-CO-(C ~C )アルキル、-CO-O-(C ~C )アルキル、-SO H、-SO NH 、-SO -N((C ~C )アルキル) 、-COOH、CONH 、および-CON((C ~C )アルキル) からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびR は、H、-(C ~C )アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される)
を含むポリマー錯体。
【請求項9】
前記少なくとも1つの活性剤が、低分子量薬物、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸、アプタマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のポリマー錯体。
【請求項10】
前記核酸が、DNA/RNAハイブリッド、短鎖干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、sgRNA、ドナーDNA、自己増幅/複製RNA、環状RNA(oRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、閉じた直鎖状DNA(clDNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、およびアンチセンスRNA(aRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、CRISPRガイドRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマー、およびリボザイムからなる群から選択される、請求項8または9に記載のポリマー錯体。
【請求項11】
前記核酸が、clDNAである、請求項10に記載のポリマー錯体。
【請求項12】
a)カチオンに荷電したタンパク質と、
b)前記タンパク質と静電的に相互作用する、式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムなもしくはブロックのもしくはグラフトのコポリペプチドを含む、式(Ia)または(Ib)の化合物の、またはその薬学的に許容される塩のいずれかの、任意の立体異性体または立体異性体の混合物と
【化7】
(式中、Yは、-CO(CH )p-CO-および-CO-(CH )q-S-S-(CH )r-CO-からなる群から選択され;
Zは、単結合、-CO-(CH )q-S-S-(CH )r-NH-(R )z-、-CO(CH )pNH-(R )z-、-CO-(CH )p-CO-NH-(CH )q-S-S-(CH )r-NH-(R )z-、および-(R )z-からなる群から選択され;
oは、1~2から選択される整数であり;
式中p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:
【化8】
a、b、c、d、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしa、b、c、d、e、f、gおよびhの少なくとも2つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C ~C )アルキルからなる群から選択され、ただしR は、XがOである場合存在せず;
およびR は、Hおよび-CH からなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化9】
式中s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中「/」は、記号の両側の角括弧により定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示すが、式IaおよびIb中の角括弧で定義される繰り返し単位は、説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよくかつ繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
式中式Ibにおいて、R5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)のそれぞれの繰り返し単位と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖の-(C ~C )アルキル、直鎖または分岐鎖の-CO(C ~C )アルキル、-(C ~C 10 )アリール、-(C ~C 10 )ヘテロアリール、-(C ~C 10 )アラルキル、-(C ~C )アルキル-O-(C ~C 10 )アリール、-(C ~C 10 )ヘテロシクロアルキル、-(C ~C 10 )アルコキシ、-(C ~C 10 )アリールオキシ、-(C ~C 10 )アラルコキシ、-(C ~C 10 )ヘテロアラルコキシ、-(C ~C 10 )アルキル-O-(C ~C 10 )アリールオキシ、アミン保護基、天然のまたは非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF 、-NH 、-NH-(C ~C )アルキル、NR 、-NH-CO-(C ~C )アルキル、-(C ~C )アルキル、-NO 、-N 、-CO-(C ~C )アルキル、-CO-O-(C ~C )アルキル、-SO H、-SO NH 、-SO -N((C ~C )アルキル) 、-COOH、CONH 、および-CON((C ~C )アルキル) からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびR は、H、-(C ~C )アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される)
を含む、タンパク質ベースの錯体、
または代わりに
a’)正に荷電したナノ粒子を形成するカチオン性ポリマーに共有結合的にまたは静電的に結合されるアニオンに荷電したタンパク質と、
b’)a’)の正に荷電したナノ粒子と静電的に相互作用する式(Ia)または(Ib)の少なくとも1つのアニオン性ポリマー、その薬学的に許容される塩、またはホモポリペプチドまたはランダムなもしくはブロックのもしくはグラフトのコポリペプチドを含む、式(Ia)または(Ib)の化合物の、またはその薬学的に許容される塩のいずれかの、任意の立体異性体または立体異性体の混合物と
【化10】
(式中、Yは、-CO(CH )p-CO-および-CO-(CH )q-S-S-(CH )r-CO-からなる群から選択され;
Zは、単結合、-CO-(CH )q-S-S-(CH )r-NH-(R )z-、-CO(CH )pNH-(R )z-、-CO-(CH )p-CO-NH-(CH )q-S-S-(CH )r-NH-(R )z-、および-(R )z-からなる群から選択され;
oは、1~2から選択される整数であり;
式中p、q、およびrは、それぞれ独立して1~6から選択される整数であり;
は、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むランダムなまたはブロックのコポリマーであり:
【化11】
a、b、c、d、e、f、gおよびhは、それぞれ独立して0~20から選択される整数であり;ただしa、b、c、d、e、f、gおよびhの少なくとも2つは、0と異なり;
zは、5~100から選択される整数であり;
Xは、N、S、およびOから選択され;
は、Hおよび(C ~C )アルキルからなる群から選択され、ただしR は、XがOである場合存在せず;
およびR は、Hおよび-CH からなる群からそれぞれ独立して選択され;
mは、5~250から選択される整数であり;
nは、3~200から選択される整数であり;
ただしm:nの比率は、1:8~30:1の範囲であり;
は、H、ならびに(X)、(XI)、(XII)、および(XIII)からなる群から選択されるラジカルから選択され、
【化12】
式中s、t、u、およびvは、それぞれ独立して1~4から選択される整数であり;
式中「/」は、記号の両側の角括弧により定義されるモノマー繰り返し単位の連続順序が任意であることを示すが、式IaおよびIb中の角括弧で定義される繰り返し単位は、説明の便宜上特定の順序で示されるが、繰り返し単位は、任意の順序で存在してよくかつ繰り返し単位は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
式中式Ibにおいて、R5の式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX)のそれぞれの繰り返し単位と、整数nを伴う角括弧で示される繰り返し単位の連続順序は、ブロックでまたはランダムに存在してよく;
AおよびA’は、それぞれ、H、OH、直鎖または分岐鎖の-(C ~C )アルキル、直鎖または分岐鎖の-CO(C ~C )アルキル、-(C ~C 10 )アリール、-(C ~C 10 )ヘテロアリール、-(C ~C 10 )アラルキル、-(C ~C )アルキル-O-(C ~C 10 )アリール、-(C ~C 10 )ヘテロシクロアルキル、-(C ~C 10 )アルコキシ、-(C ~C 10 )アリールオキシ、-(C ~C 10 )アラルコキシ、-(C ~C 10 )ヘテロアラルコキシ、-(C ~C 10 )アルキル-O-(C ~C 10 )アリールオキシ、アミン保護基、天然のまたは非天然のアルファアミノ酸、カルボキシル保護基、標識剤またはイメージング剤および細胞標的化剤から独立して選択され;
AおよびA’のそれぞれは、-OH、ハロゲン、-CF 、-NH 、-NH-(C ~C )アルキル、NR 、-NH-CO-(C ~C )アルキル、-(C ~C )アルキル、-NO 、-N 、-CO-(C ~C )アルキル、-CO-O-(C ~C )アルキル、-SO H、-SO NH 、-SO -N((C ~C )アルキル) 、-COOH、CONH 、および-CON((C ~C )アルキル) からなる群から選択される1つ以上の基により独立して任意に置換され;
およびR は、H、-(C ~C )アルキルおよびアミン保護基からなる群から独立して選択される)
を含むタンパク質ベースの錯体。
【請求項13】
1つ以上の薬学的に、診断的に、獣医学的にまたは美容的に許容される賦形剤または担体と一緒に、請求項8~11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリマー錯体または請求項12に記載の少なくとも1つのタンパク質ベースの錯体を含む組成物。
【請求項14】
医薬品における使用のための
a.請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、または代わりに
b.請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体、または代わりに
c.請求項13に記載の組成物
である治療用製品。
【請求項15】
細胞、組織または細胞外空間中に核酸またはタンパク質を送達する方法における使用のためのデバイスであって、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体、または請求項13に記載のものを含む組成物を含む、デバイス。
【請求項16】
錯体が標的細胞、組織、または細胞外空間中に導入され得るように、標的細胞、組織または細胞外空間と、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体または請求項13に記載の医薬組成物を含む溶液を接触させること;前記錯体をエンドソームから細胞質に移動させること;前記細胞中の前記錯体を解離すること;および前記細胞質中に前記核酸またはタンパク質を放出することを含む、標的細胞、組織または細胞外空間中に核酸またはタンパク質を送達する方法における使用のための、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー錯体、請求項12に記載のタンパク質ベースの錯体と細胞を接触させることを含む細胞をトランスフェクトする方法。
【国際調査報告】