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特表2024-525941ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240705BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240705BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K31/436
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503894
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 IB2022054639
(87)【国際公開番号】W WO2022243906
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,078
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026492
【氏名又は名称】イメル バイオセラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】五條 理志
(72)【発明者】
【氏名】上 大介
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA30
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA16
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB22
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087DA31
4C087NA05
4C087ZB02
4C087ZB09
(57)【要約】
本開示は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞、例えばT細胞を生成するための方法および組成物であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共にインキュベートするステップを伴う方法および組成物を提供する。さらに、本開示は、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置する方法、ならびにミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法であって、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を投与するステップを伴う、方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性ミトコンドリアDNA(mtDNA)の少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、
内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共に十分な期間にわたってインキュベートして、前記外因性ミトコンドリアを前記リンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、前記内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記mTOR阻害薬が、ラパマイシンまたはその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記mTOR阻害薬が、ラパマイシンである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記mTOR阻害薬の有効量が、約100nM~約1000nMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記mTOR阻害薬の有効量が、約200nM~約500nMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記mTOR阻害薬の有効量が、約100nMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記mTOR阻害薬の有効量が、約200nMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記mTOR阻害薬の有効量が、約500nMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記mTOR阻害薬の有効量が、約1000nMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ミトコンドリア置換リンパ球系細胞が、TaqMan一塩基多型(SNP)アッセイによって測定して少なくとも20%の外因性mtDNAおよび80%以下の内因性mtDNAを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nM~約1000nMのラパマイシンと共に十分な期間にわたってインキュベートして、前記外因性ミトコンドリアを前記リンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記単離された外因性ミトコンドリアが、細胞1×10個当たりタンパク質約20μg~80μgである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
インキュベートするステップの前に前記リンパ球系細胞を遠心分離するステップをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
遠心分離するステップが、室温、1,500相対遠心力(RCF)でおよそ5分間実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記十分な期間が、少なくともおよそ24時間である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記十分な期間が、少なくとも36時間である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記十分な期間が、少なくとも48時間である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記十分な期間が、およそ2日間であるか、またはそれよりも長い、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記十分な期間が、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記十分な期間が、およそ2日間~およそ7日間である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、
(a)リンパ球系細胞および単離された外因性ミトコンドリアを、細胞ペレットが生成されるのに十分な条件下で遠心分離するステップであって、前記リンパ球系細胞が、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていない、ステップと、
(b)前記リンパ球系細胞を100nM~1000nMのラパマイシンと共におよそ24時間またはそれよりも長くインキュベートするステップであって、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成する、ステップ
を含む、方法。
【請求項22】
インキュベートするステップが、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
インキュベートするステップが、およそ2日間~およそ7日間である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記リンパ球系細胞が、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、または顆粒球である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記リンパ球系細胞が、T細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記T細胞が、疲弊T細胞、老化T細胞、またはこれらの組合せを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記リンパ球系細胞が、ヒトリンパ球系細胞である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
有効量の、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法によって生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項29】
それを必要とする対象に対するミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法であって、前記対象に、請求項28に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
それを必要とする対象に対するヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置するための方法であって、前記対象に、請求項28に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項31】
前記対象が、逆転写酵素阻害薬を受けている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、B型肝炎ウイルス(HBV)を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、ヒトである、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2021年5月18日出願の米国仮出願第63/190,078号の利益を主張するものである。
【0002】
1.配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。前記ASCIIコピーは2022年5月18日に作成されたものであり、名称は14595-008-228_SL.txt、サイズは3,681バイトである。
【0003】
2.緒言
本開示は、一部において、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法および組成物に関する。具体的な態様では、本開示は、ラパマイシンおよびその等価物を含む組成物を使用し、事前にミトコンドリアを欠失または枯渇させることなく、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞(例えば、T細胞)を生成するための方法、ならびにそのようなミトコンドリア置換リンパ球系細胞を使用して疾患を処置するための治療方法に関する。ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を使用して処置することができる疾患には、遺伝性および後天性ミトコンドリアDNA変異によって引き起こされる疾患、例えばミトコンドリア病だけでなく、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全も含まれる。
【背景技術】
【0004】
3.背景
ミトコンドリア機能不全は、遺伝障害などの様々な因子から生じ得る。ある特定の状況では、ミトコンドリア病または障害は、リンパ球の機能に負に影響を及ぼし得る。例えば、ミトコンドリア複合体IIIは調節性T細胞(Treg)の抑制機能に関与し、ミトコンドリア複合体III欠損症によりTreg機能が損なわれる恐れがある。ミトコンドリア機能不全はまた、遺伝毒性薬剤、加齢、酸化ストレス炎症、および/または傷害の結果として生じる場合もある。例えば、治療剤(例えば、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害薬)への曝露によりミトコンドリアDNA(mtDNA)コピー数が減少し得る。健康な細胞から損傷を受けたまたは機能障害性の細胞へのミトコンドリアの移入が、ミトコンドリア機能のレスキューおよび回復に役立つ可能性がある。
【0005】
ミトコンドリアをレシピエント細胞に移入する現行の方法としては、内因性mtDNAの部分的または完全な枯渇を伴う方法が挙げられる。例えば、内因性mtDNAを除去するための古典的方法は、低濃度の臭化エチジウム(EtBr)を用いた細胞の長期にわたる処置を伴うものであり、臭化エチジウムは発がん物質および催奇形物質であることが公知であり、それにより治療目的での適用が限定される。ミトコンドリアを移入するための追加的な技法として、侵襲的な機器を使用する方法が挙げられるが、それらはレシピエント細胞に対して有害であり、非効率的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
リンパ球を伴う細胞に基づく治療が、疾患と闘い、医学的状態を緩和するための手段として出現した。多くの場合、そのような治療のために利用可能なリンパ球の数は限られている。したがって、細胞に対するいかなる改変も、患者への投与に関して安全であるだけでなく、リンパ球に損傷を与えない程度に穏やかなものでなければならない。したがって、リンパ球を伴う細胞に基づく治療の状況を含め、リンパ球にミトコンドリアを移入するための安全かつ有効な方法の開発という重要なまだ対処されていない必要性が存在する。
【0007】
4.概要
一態様では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。具体的な実施形態では、内因性ミトコンドリアDNA(mtDNA)の少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。一実施形態では、mTOR阻害薬はラパマイシンまたはその誘導体を含む。具体的な実施形態では、mTOR阻害薬はラパマイシンである。ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約100nM~約1000nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約200nM~約500nMの濃度である。一実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約100nMの濃度である。別の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約200nMの濃度である。別の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約500nMの濃度である。別の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約1000nMの濃度である。具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、TaqMan一塩基多型(SNP)アッセイによって測定して、少なくとも20%の外因性mtDNAおよび80%以下の内因性mtDNAを含む。
【0008】
具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nM~約1000nMのラパマイシンと共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、細胞1×10個当たりタンパク質約20μg~80μgの単離された外因性ミトコンドリアを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、インキュベートするステップの前にリンパ球系細胞を遠心分離するステップをさらに含む。一実施形態では、遠心分離は、室温、1,500相対遠心力(RCF)でおよそ5分間実施される。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に関して十分な期間は、少なくともおよそ24時間である。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される方法に関して十分な期間は、少なくとも36時間である。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に関して十分な期間は、少なくとも48時間である。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される方法に関して十分な期間は、およそ2日間であるか、またはそれよりも長い。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に関して十分な期間は、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い。一実施形態では、本明細書に提供される方法に関して十分な期間は、およそ2日間~およそ7日間である。
【0011】
さらに別の態様では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、(a)リンパ球系細胞および単離された外因性ミトコンドリアを、細胞ペレットが生成されるのに十分な条件下で遠心分離するステップであって、リンパ球系細胞が、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていない、ステップと、(b)リンパ球系細胞を100nM~1000nMのラパマイシンと共におよそ24時間またはそれよりも長くインキュベートするステップであって、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成する、ステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0012】
ある特定の実施形態では、インキュベートするステップは、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い。一部の実施形態では、インキュベートするステップは、およそ2日間~およそ7日間である。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法のリンパ球系細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、または顆粒球である。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される方法のリンパ球系細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、疲弊T細胞、老化T細胞、またはこれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される方法のリンパ球系細胞は、ヒトリンパ球系細胞である。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載の方法によって生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞、およびそのような細胞を含む組成物が本明細書に提供される。
【0014】
別の態様では、有効量の本開示のミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物が本明細書で提供される。
【0015】
別の態様では、それを必要とする対象に対する、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法であって、対象に、有効量の本開示のミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を投与するステップを含む、方法が本明細書に提供される。具体的な実施形態では、対象はヒトである。
【0016】
別の態様では、それを必要とする対象に対する、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置するための方法であって、対象に、有効量の本開示のミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を投与するステップを含む、方法が本明細書に提供される。具体的な実施形態では、対象は、逆転写酵素阻害薬を受けている。ある特定の実施形態では、対象は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を有する。一部の実施形態では、対象は、B型肝炎ウイルス(HBV)を有する。具体的な実施形態では、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
5.図面の簡単な説明
図1】ミトコンドリアDNA(mtDNA)配列。ヒトGJ T細胞およびEPC100細胞から単離されたMtDNA配列を配列決定し、比較した。Dループを配列決定することによってmtDNA配列の差異を検出し、Dループ超可変領域1(「HVR1」)にいくつかの差異が観察された。
【0018】
図2-1】SNPアッセイ用のプライマーおよびプローブ。図2Aは、ヒトGJ T細胞由来およびEPC100細胞由来のヒトmtDNAのHVR1における差異を検出するためのSNPアッセイ用のプライマー(配列番号5および6)とプローブ(配列番号1および2)のセットを示す。図2Bは、プライマー(配列番号5および6)およびプローブ(配列番号1および2)がヒトGJ T細胞由来およびEPC100細胞由来のヒトmtDNAのHVR1のどこに結合するかを示す。
図2-2】同上。
【0019】
図3図3Aは、EPC100細胞由来の単離されたミトコンドリアをヒトGJ T細胞に移入するためのプロトコールを示す。図3Bは、GJ T細胞mtDNAのEPC100細胞由来のmtDNAによる置換を検出するためのSNPアッセイの結果を示す。
【0020】
図4図4Aは、B6マウス胚線維芽細胞(MEF)細胞由来のミトコンドリアをマウスNZB T細胞に移入するためのプロトコールを示す。図4Bは、ウェル中のラパマイシンの力価測定の描写を示す。
【0021】
図5-1】図5Aは、2日目におけるSNPアッセイの結果を示す。図5Bは、7日目におけるSNPアッセイの結果を示す。オレンジ色はNZB T細胞の内因性ミトコンドリア遺伝子型の比であり、青色はB6 MEF細胞由来の外因性ミトコンドリア遺伝子型の比である。
図5-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0022】
6.詳細な説明
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共にインキュベートするステップを伴う、方法が本明細書に提供される。本明細書に開示される方法に従って生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞には、例えば、ミトコンドリア複合体III欠損症またはヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全の症状を好転させるための、治療としての有用性がある。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア置換リンパ球系細胞」という用語は、一般に、内因性ミトコンドリアおよび/または内因性mtDNAが外因性ミトコンドリアおよび/または外因性mtDNAによって置換されているリンパ球系細胞を意味することが意図されている。ある特定の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、リンパ球系細胞内の全ての内因性ミトコンドリアおよび/または内因性mtDNAが外因性ミトコンドリアおよび/または外因性mtDNAによって置換されたものである。具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、外因性ミトコンドリアによって置換された内因性ミトコンドリアを有する。そのような状況では、内因性ミトコンドリアの外因性ミトコンドリアによる置換は、mtDNAマーカーを評価することによって評価される。具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ある特定のパーセンテージの内因性mtDNAが外因性mtDNAによって置換されたものである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、リンパ球系細胞内の内因性ミトコンドリアおよび/または内因性mtDNAの約5%もしくはそれよりも多く、約10%もしくはそれよりも多く、約20%もしくはそれよりも多く、約30%もしくはそれよりも多く、約40%もしくはそれよりも多く、約50%もしくはそれよりも多く、約60%もしくはそれよりも多く、約70%もしくはそれよりも多く、約80%もしくはそれよりも多く、約90%もしくはそれよりも多く、または約95%もしくはそれよりも多くが外因性ミトコンドリアおよび/または外因性mtDNAによって置換されたものである。ある特定の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、リンパ球系細胞内の内因性ミトコンドリアおよび/または内因性mtDNAの約5%~約10%、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約20%~約40%、約25%~約50%、約25%~約75%、約50%~約75%、約40%~約50%、約75%またはそれよりも多く~約85%、約75%~約95%が外因性ミトコンドリアおよび/または外因性mtDNAによって置換されたものである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、リンパ球系細胞内の内因性ミトコンドリアおよび/または内因性mtDNAの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が外因性ミトコンドリアおよび/または外因性mtDNAによって置換されたものである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、ミトコンドリアに関して使用される場合、一般に、その天然の生物学的環境の他の細胞構成成分から物理的に分離されたまたは取り出されたミトコンドリアを指す。具体的な実施形態では、下記の実施例に記載されている技法を使用してミトコンドリアを単離する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、細胞に関して使用される場合、一般に、参照される細胞が天然に見いだされる場合の少なくとも1つの構成成分を実質的に含まない細胞を意味する。用語は、その天然の環境において見いだされる場合の一部または全部の構成成分から取り出された細胞を含む。用語はまた、細胞が天然に存在しない環境において見いだされる場合の少なくとも1つ、一部または全部の構成成分から取り出された細胞も含む。したがって、単離された細胞は、それが天然に見いだされる場合、または天然に存在しない環境において成長する、貯蔵されるもしくは存在する場合の他の物質から部分的にまたは完全に分離されたものである。単離された細胞の具体的な例として、他の細胞型(例えば、非リンパ球系細胞)から富化された、部分的に純粋な細胞(例えば、リンパ球系細胞)、および実質的に純粋な細胞(例えば、リンパ球系細胞)が挙げられる。したがって、単離されたものである参照される細胞は、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%、他の細胞および/または物質を含まず純粋なものであり得る。具体的な実施形態では、下記の実施例に記載されている技法を使用して、参照される細胞を単離する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、当業者には理解される。一般に、「外因性」という用語は、レシピエント細胞に由来するものではない細胞内材料(例えば、ミトコンドリアまたはmtDNA)を指す。例えば、下記の実施例に記載のように、外因性ミトコンドリアまたはmtDNAを、T細胞に導入された線維芽細胞から単離することができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、当業者には一般に理解される。一般に、「内因性」という用語は、レシピエント細胞に対してネイティブな細胞内材料(例えば、ミトコンドリアまたはmtDNA)を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、一般に、関連性のある条件下で所望の結果(複数可)を実現するために必要な化合物または組成物の量を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、数と併せて使用される場合、一般に、参照される数だけでなく、参照される数の1%、5%、10%、15%または20%以内の任意の数を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「十分な期間」という用語は、一般に、所望の結果(複数可)がもたらされる時間の量を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「非侵襲的に」という用語は、外因性材料(例えば、ミトコンドリアおよび/またはmtDNA)の移入に関して使用される場合、一般に、侵襲的な機器(例えば、ナノブレードもしくはエレクトロポレーション)、または細胞の構造を損なう有害な条件の使用を伴わないことを意味することが意図されている。
【0032】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、一般に、動物を意味することが意図されている。対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ科動物、ウマ科動物、マウス、ラット、ウサギ、またはこれらのトランスジェニック種であり得る。「対象」は、「患者」、例えばヒト患者を指す場合もあることが理解される。
【0033】
「ヘテロプラスミー」および「ヘテロプラスミック」という用語は当業者には理解される。一般に、「ヘテロプラスミー」および「ヘテロプラスミック」という用語は、個体または試料の中に1種よりも多くの型のmtDNAゲノムが存在することを指す。
【0034】
本明細書で提供される実施形態の実施には、別段の指定のない限り、当業者の技能の範囲内である分子生物学、微生物学、および免疫学の従来の技法が用いられる。そのような技法は、文献において十分に説明されている。参考とするのに特に適したテキストの例として、以下が挙げられる:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York (2001); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, MD (1999); Glover, ed., DNA Cloning, Volumes I and II (1985); Gait, ed., Oligonucleotide Synthesis (1984); Hames & Higgins, eds., Nucleic Acid Hybridization (1984); Hames & Higgins, eds., Transcription and Translation (1984); Freshney, ed., Animal Cell Culture: Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, 1986); Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Academic Press, London); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (Springer Verlag, N.Y., 2d ed. 1987); and Weir & Blackwell, eds., Handbook of Experimental Immunology, Volumes I-IV (1986)。
6.1 ミトコンドリア置換細胞(MirC)を生成する方法
【0035】
本開示は、mTOR阻害薬の使用により、レシピエント細胞の内因性ミトコンドリアおよび/または内因性ミトコンドリアDNA(mtDNA)のいかなる事前の減少も枯渇も必要なくドナーミトコンドリアのレシピエントリンパ球への移入を増強することができるという発見に一部基づく。したがって、一態様では、mTOR阻害薬を使用し、内因性ミトコンドリアおよび/または内因性mtDNAの事前の減少または枯渇のためのいかなる手順も使用せずに、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法が本明細書に提供される。具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。別の具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬を含む組成物と共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。例えば、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)枯渇剤(例えば、臭化エチジウム(EtBr)、またはmtDNAを分解することが可能な酵素、例えば制限酵素)と接触させていないか、またはそうではなくmtDNA枯渇剤をコードするポリヌクレオチドを用いたトランスフェクトも形質導入もしていないものであり得る。一部の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞は、mtDNAを分解することが可能な酵素と接触させてもおらず、mtDNAを分解することが可能な酵素をコードするポリヌクレオチドを用いたトランスフェクトも形質導入もしていないものであり得る。ある特定の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための本明細書に提供される方法をin vitroまたはex vivoで実施する。
【0036】
本明細書で提供される方法に従って置換される内因性mtDNAのレベルは、外因性mtDNAによる内因性mtDNAの完全な置換(すなわち、100%の置換)がもたらされるものである必要はない。例えば、一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも10%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも15%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも25%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも30%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも35%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも40%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも45%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも50%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも55%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも60%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも65%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも70%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも80%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも90%が外因性mtDNAによって置換されている。一部の実施形態では、内因性mtDNAの100%が外因性mtDNAによって置換されている。
当業者に公知のまたは本明細書に記載の技法(例えば、実施例におけるもの)を使用して、外因性mtDNAによる内因性mtDNAの置換を測定することができる。
【0037】
具体的な実施形態では、内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアと、有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0038】
当業者に公知のまたは本明細書に記載の技法(例えば、実施例におけるもの)を使用して、外因性mtDNAによる内因性mtDNAの置換を測定することができる。例えば、種々の配列決定方法を本明細書に提供される方法のいずれかと組み合わせて使用して、外因性ミトコンドリアおよび/もしくは外因性mtDNAの移入を評価もしくは確認すること、またはヘテロプラスミーを数量化することができる。一般に、mtDNAの差異は、mtDNAのDループを配列決定することによって検出することができる。Dループは、ミトコンドリアゲノムの他のいずれの場所よりも変異が蓄積する頻度が高い領域を2つ含有する。領域は、それぞれ超可変領域(HVR)-1およびHVR2と称される。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に関連して、mtDNAのDループのHV1および/またはHV2を配列決定することにより、内因性mtDNAおよび外因性mtDNAを配列決定し、数量化する。具体的な実施形態では、配列決定方法は一塩基多型(SNP)アッセイを含む。他の実施形態では、配列決定方法はデジタルPCRを含む。具体的な実施形態では、デジタルPCRはドロップレットデジタルPCRである。
【0040】
一般に、mTOR阻害薬の有効量は、約60ナノモル(nM)~約1000nMの濃度である。しかし、ミトコンドリアをリンパ球に移入するために有効なmTOR阻害薬の量には、細胞密度、処置時間、mTOR阻害薬の型、およびリンパ球の型を含む因子が影響を及ぼし得る。
【0041】
一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約60nM~約1000nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約100nM~約1000nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約200nM~約500nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約300nM~約600nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約400nM~約700nMの濃度である。
【0042】
ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約60nMの濃度である。ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約70nMの濃度である。ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約80nMの濃度である。ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約90nMの濃度である。ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約100nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約150nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約200nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約250nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約300nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約350nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約400nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約450nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約500nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約550nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約600nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約650nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約700nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約750nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約800nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約850nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約900nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約1000nMの濃度である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬の有効量は、約1000nMより大きい濃度である。
【0043】
本開示に従ってミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するために、種々のmTORの阻害薬、例えば、6.2節に記載の例示的なmTOR阻害薬を使用することができる。ある特定の実施形態では、mTOR阻害薬はラパマイシンまたはその誘導体である。具体的な実施形態では、mTOR阻害薬はラパマイシンである。
【0044】
一部の実施形態では、mTOR阻害薬は、約100ナノモル(nM)~約1000nMの濃度のラパマイシンまたはその誘導体である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬は、約200ナノモル(nM)~約500nMの濃度のラパマイシンまたはその誘導体である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬は、約300ナノモル(nM)~約600nMの濃度のラパマイシンまたはその誘導体である。一部の実施形態では、mTOR阻害薬は、約400ナノモル(nM)~約700nMの濃度のラパマイシンまたはその誘導体である。
【0045】
ある特定の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約100nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約150nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約200nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約250nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約300nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約350nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約400nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約450nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約500nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約550nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約600nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約650nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約700nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約750nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約800nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約850nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約900nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、約1000nMの濃度である。一部の実施形態では、有効量のラパマイシンまたはその誘導体は、1000nMよりも高い濃度である。
【0046】
具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nM~約1000nMのラパマイシンと共に十分な期間にわたってインキュベートして、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0047】
一実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0048】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約200nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0049】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約300nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0050】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約400nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0051】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約500nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0052】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約600nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0053】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約700nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0054】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約800nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0055】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約900nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0056】
別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約2~7日間インキュベートする。別の実施形態では、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約1000nMのmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に7日間より長くインキュベートする。
【0057】
一部の実施形態では、mTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)を、リンパ球系細胞および外因性ミトコンドリアとのある特定の期間にわたるインキュベーション後、洗い出すおよび/または細胞培養物中で希釈する。例えば、一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地をmTOR阻害薬を伴わない新鮮な培地と交換し、次いで、細胞を少なくともさらに12時間培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地を交換する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地を交換する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約48時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地を交換する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共に約60時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地を交換する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を、リンパ球系細胞の水分平衡を維持する適切な緩衝剤(例えば、補充を伴うまたは伴わない、PBS、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、アール平衡塩類溶液(EBSS)、培養培地など)を用いて1回または複数回すすいだ後、mTOR阻害薬を含有しない新鮮な培養培地で培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞をmTOR阻害薬および外因性ミトコンドリアと共にインキュベートし、培養の持続時間にわたって培地を交換しない。
【0058】
一部の実施形態では、mTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)を、リンパ球系細胞および外因性ミトコンドリアとのインキュベーション後、細胞培養物から希釈する。例えば、一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約12時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地の一部をmTOR阻害薬を含まない新鮮な培地と交換し(例えば、培養培地の約25%、約50%、または約75%を新鮮な培地と交換し)、したがって、mTOR阻害薬の濃度を希釈し、次いで、細胞を少なくともさらに12時間(例えば、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、132時間、約148時間、約172時間、約200時間、約250時間、約275時間またはそれよりも長く)培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約24時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地の一部をmTOR阻害薬を含まない新鮮な培地と交換し(例えば、培養培地の約25%、約50%、または約75%を新鮮な培地と交換し)、したがって、mTOR阻害薬の濃度を希釈し、次いで、細胞を少なくともさらに12時間(例えば、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、132時間、約148時間、約172時間、約200時間、約250時間、約275時間またはそれよりも長く)培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約36時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地の一部をmTOR阻害薬を含まない新鮮な培地と交換し(例えば、培養培地の約25%、約50%、または約75%を新鮮な培地と交換し)、したがって、mTOR阻害薬の濃度を希釈し、次いで、細胞を少なくともさらに12時間(例えば、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、132時間、約148時間、約172時間、約200時間、約250時間、約275時間またはそれよりも長く)培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共に約48時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地の一部をmTOR阻害薬を含まない新鮮な培地と交換し(例えば、培養培地の約25%、約50%、または約75%を新鮮な培地と交換し)、したがって、mTOR阻害薬の濃度を希釈し、次いで、細胞を少なくともさらに12時間(例えば、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、132時間、約148時間、約172時間、約200時間、約250時間、約275時間またはそれよりも長く)培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に約60時間またはそれよりも長くインキュベートした後、培養培地の一部をmTOR阻害薬を含まない新鮮な培地と交換し(例えば、培養培地の約25%、約50%、または約75%を新鮮な培地と交換し)、したがって、mTOR阻害薬の濃度を希釈し、次いで、細胞を少なくともさらに12時間(例えば、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、132時間、約148時間、約172時間、約200時間、約250時間、約275時間またはそれよりも長く)培養する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共にインキュベートし、培養の持続時間にわたって培地を交換しない。
【0059】
本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞には、種々の型のリンパ球系細胞が含まれ得る。本開示との使用に適したリンパ球系細胞の非限定的な例としては、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、または顆粒球が挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、リンパ球系細胞はT細胞である。ある特定の実施形態では、T細胞はCD4+T細胞である。一部の実施形態では、T細胞はCD8+T細胞である。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞はCD4+T細胞とCD8+T細胞の組合せを含む。一部の実施形態では、リンパ球系細胞はTregであるまたはTregを含む。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞は、エフェクターT細胞であるまたはエフェクターT細胞を含む。一部の実施形態では、リンパ球系細胞は、メモリーT細胞、エフェクターT細胞、Treg、もしくはこれらの組合せである、またはメモリーT細胞、エフェクターT細胞、Treg、もしくはこれらの組合せを含む。具体的な実施形態では、リンパ球系細胞は、T細胞受容体(TCR)もしくはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むT細胞である、またはT細胞受容体(TCR)もしくはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする外因性ポリヌクレオチドを含むT細胞を含む。具体的な実施形態では、リンパ球系細胞は、T細胞受容体(TCR)もしくはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されているT細胞である、またはT細胞受容体(TCR)もしくはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子改変されているT細胞を含む。
【0061】
一部の実施形態では、T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子改変されたT細胞である。例えば、TCRは、腫瘍細胞の内部に存在する抗原も認識することができる天然に存在する受容体を使用する。他方、CARは、がん細胞の表面上の特定の抗原のみを認識することができる抗体の部分を含む。CAR-T細胞およびTCR T細胞は、免疫療法において使用されるにもかかわらず、疲弊したものになり得る。したがって、本明細書に提供される通り、一部の実施形態では、本明細書に記載の方法、例えば、6.1節に記載の方法に従って作製されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、CAR-T細胞またはTCR T細胞であってよく、がんの症状を処置するまたは好転させるために対象に投与することができる。CAR-T細胞もしくはTCR TであるまたはCAR-T細胞もしくはTCR Tを含む本明細書に記載のミトコンドリア置換リンパ球系細胞が有益であり得る非限定的な例示的ながんの型としては、血液がん(例えば、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(mantel cell lymphoma))、ならびに固形腫瘍が挙げられる。具体的な実施形態では、対象はヒト対象である。
【0062】
CARは、一般に、細胞外標的結合性ドメイン、ヒンジ領域、CARを細胞膜に繋ぎ止める膜貫通ドメイン、および活性化シグナルを伝達する1つまたは複数の細胞内ドメインを含むように設計される。共刺激ドメインの数に応じて、CARは、第1世代(細胞内ドメイン、例えば、CD3ζのみ)、第2世代(1つの共刺激ドメインと細胞内ドメイン)、または第3世代CAR(1つよりも多くの共刺激ドメインと細胞内ドメイン)に分類することができる。新世代CARも開発中である(例えば、Guedan S, et al.. Mol Ther Methods Clin Dev. 2018 Dec 31; 12: 145-156を参照されたい)。血液学的悪性腫瘍に対するCAR標的(例えば、CD19、BCMA)および固形腫瘍に対するCAR標的(例えば、HER2、PSCA)が当技術分野で公知であり、いずれの標的も本開示との使用に適する(例えば、Dotti G, et al. Immunol Rev. 2014; 257 (1): 107-126を参照されたい)。CAR-T細胞は、CAR-T細胞の投与を受ける対象に対して自己であっても同種であってもよい。一部の実施形態では、CAR-T細胞は対象に対して同種である。他の実施形態では、CAR-T細胞は対象に対して自己である。
【0063】
ある特定の実施形態では、CARは、腫瘍抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、腫瘍抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激分子、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。具体的な実施形態では、CARは、腫瘍抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。具体的な実施形態では、CARは、腫瘍抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインおよび少なくとも1つの共刺激ドメインを含む。別の具体的な実施形態では、CARは、腫瘍抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、2つまたはそれよりも多くの共刺激ドメインおよび細胞内ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、構成的にまたは誘導性に発現されるケモカインを含む。ある特定の実施形態では、CARは、サイトカイン受容体の細胞内ドメイン(例えば、IL-2Rβ鎖断片)を含む。
【0064】
一部の実施形態では、T細胞は、TCRを発現するように遺伝子改変されたT細胞である。TCRは、一般に、アルファペプチド鎖およびベータペプチド鎖からなるヘテロ二量体を使用して、MHC分子によって提示されるポリペプチド断片を認識し、また、TCR T細胞は、特定の抗原を認識することができる遺伝子操作されたTCR産物である。一般に、人工的に設計された高親和性TCRが遺伝子操作技術によってT細胞にコードされ、それにより、T細胞による腫瘍細胞の認識の間の特異的認識および親和性の両方が増強される。TCR-T細胞は、TCR-T細胞の投与を受ける対象に対して自己であっても同種であってもよい。一部の実施形態では、TCR-T細胞は対象に対して同種である。他の実施形態では、TCR-T細胞は対象に対して自己である。
【0065】
ある特定の実施形態では、TCR T細胞は、血液学的悪性腫瘍上の抗原(例えば、CMV、WT1、HA-1)を認識する。ある特定の実施形態では、TCR T細胞は、固形腫瘍上の抗原(例えば、HBV、p53、変異型KRAS)を認識する。ある特定の実施形態では、TCR T細胞は、HIVに関連するSL9を認識する。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に供されるリンパ球系細胞は、機能障害性T細胞である。例えば、一部の実施形態では、T細胞は、疲弊T細胞、老化T細胞、またはこれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞は、遺伝性および後天性ミトコンドリアDNA変異に関連する疾患または障害、例えば、ミトコンドリア病、またはヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を有する対象(例えば、ヒト対象)から単離されたT細胞を含む。
【0067】
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための本方法は、ヒト細胞および非ヒト細胞を伴い得る。一部の実施形態では、リンパ球系細胞はヒトリンパ球系細胞である。他の実施形態では、リンパ球系細胞は非ヒトリンパ球系細胞(例えば、マウスリンパ球系細胞、サルリンパ球系細胞など)である。
【0068】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に供されるリンパ球系細胞は、遺伝性および後天性ミトコンドリアDNA変異に関連する疾患または障害、例えば、ミトコンドリア病、またはヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を有するヒト対象から単離される。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に供されるリンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を治療として施される対象(例えば、ヒト対象)から単離される。言い換えれば、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を用いて処置される対象に対して自己のリンパ球系細胞に由来する。他の実施形態では、本明細書に記載の方法に供されるリンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を治療として施される対象(例えば、ヒト対象)とは異なる対象(例えば、異なるヒト対象)から単離される。言い換えれば、具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を用いて処置される対象に対して同種のリンパ球系細胞に由来する。一部の実施形態では、リンパ球系細胞はT細胞である。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞はCD4+T細胞、CD8+T細胞、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されたT細胞である。
【0069】
当業者に公知のまたは本明細書に記載の技法(例えば、実施例に記載のもの)を使用して、リンパ球系細胞を対象(例えば、ヒト対象)から単離することができる。例えば、末梢血リンパ球を対象(例えば、ヒト対象)から単離することができる。一部の実施形態では、リンパ球系細胞のある特定のサブセット(例えば、T細胞のサブセット、例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはこれらの組合せ)を末梢血リンパ球から磁気分離などの当業者に公知のまたは本明細書に記載の技法を使用して単離することができる。
【0070】
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するためにリンパ球系細胞と共にインキュベートする単離された外因性ミトコンドリアの量は、単離されたミトコンドリアと共インキュベートされるリンパ球系細胞の量などの因子に依存する。一般に、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約5μg~約100μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約10μg~約90μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約20μg~約80μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約30μg~約70μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約40μg~約80μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約5μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約10μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約20μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約30μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約40μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約50μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約60μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約70μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約80μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約90μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり約100μgである。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と共にインキュベートされる単離された外因性ミトコンドリアの量は、リンパ球系細胞1×10個当たり100μgよりも多い。
【0071】
本明細書で提供されている通り、本開示の単離された外因性ミトコンドリアは、健康かつ機能的なミトコンドリアを有する種々の型の細胞から得ることができる。ミトコンドリア機能を決定するためのアッセイが当技術分野で公知であり、それらとして、6.4節に記載されているものなどのアッセイが挙げられる。本明細書で提供される方法における使用のためのミトコンドリアの例示的な供給源としては、線維芽細胞、血小板細胞、ならびに他のリンパ球系細胞が挙げられる。ある特定の実施形態では、単離された外因性ミトコンドリアを線維芽細胞から得る。一部の実施形態では、単離された外因性ミトコンドリアを血小板細胞から得る。一部の実施形態では、単離された外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞から得る。
【0072】
本明細書で提供されている通り、単離された外因性ミトコンドリアは、レシピエント細胞に対して自己であっても同種であってもよい。一部の実施形態では、単離された外因性ミトコンドリアは、レシピエント細胞に対して同種である。例えば、単離された外因性ミトコンドリアをレシピエント細胞とは異なる対象から得ることができる。他の実施形態では、単離された外因性ミトコンドリアは自己である。例として、例示的な自己単離された外因性ミトコンドリアとしては、同じ対象から、より早い時点で、例えば、胎盤または臍帯血から単離されたミトコンドリアを挙げることができる。別の例示的な自己外因性mtDNAとして、例えば、レシピエント細胞と同じ対象から単離され、改変された後にレシピエント細胞と置き換えられるドナーmtDNAを挙げることができる。
【0073】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリアを、leukopak(すなわち、白血球アフェレーシスにより富化された製品)を使用して採取した正常末梢血から得る。一部の実施形態では、ミトコンドリアをCD34+細胞から得る。
【0074】
ミトコンドリアの単離は、これだけに限定されないが、本明細書に記載のものを含めたいくつかの周知の技法のいずれかによって実現することができる。ある特定の実施形態では、ミトコンドリアの移入における使用のための外因性ミトコンドリアを、例えば、Qproteumミトコンドリア単離キット(Qiagen、USA)、またはMITOISO2ミトコンドリア単離キット(Sigma、USA)などの市販のキットを使用して単離する。他の実施形態では、ミトコンドリアの移入における使用のための外因性ミトコンドリアを手動で単離する(例えば、Preble et al. J. Vis. Exp. 2014, 91: e51682;Gasnier et al. Anal Biochem 1993; 212 (1): 173-8およびFrezza et al. Nat Protoc 2007; 2 (2): 287-95を参照されたい)。例えば、例示的なミトコンドリアの手動での単離として、ドナー細胞をペレット化し、培養下で成長させた細胞およそ10個に由来する1~2mLの細胞ペレットを洗浄し、低張性緩衝剤中で細胞を膨潤させ、DounceまたはPotter-Elvehjemホモジナイザーを用い、ぴったり合う乳棒を使用して細胞を破砕し、分画遠心法によってミトコンドリアを単離することによってドナー細胞からミトコンドリアを単離することが挙げられる。手動での単離として、例えば、スクロース密度勾配超遠心分離、または自由流動電気泳動も挙げることもできる。いかなる特定の方法にも縛られることを望まずに、本明細書に記載のキットおよび手動での方法は例示であること、および任意のミトコンドリアの単離方法を使用することができ、それが当業者の技能の範囲内に入ることが理解される。
【0075】
一部の実施形態では、単離されたドナーミトコンドリアは、他の細胞小器官を含まず実質的に純粋なものである。他の実施形態では、単離されたミトコンドリアは不純物を含有する場合があり、ミトコンドリアが豊富である。例えば、一部の実施形態では、単離されたミトコンドリアは、約90%純粋、約80%純粋、約70%純粋、約60%純粋、約50%純粋、またはそれらの間の任意の整数である。一般に、単離されたドナーミトコンドリアに含有されるいずれの不純物も、ミトコンドリアの移入時にレシピエント細胞の生存能にも機能にも影響を及ぼさないことが理解される。具体的な実施形態では、外因性ミトコンドリア、外因性mtDNA、またはこれらの組合せの移入には、ミトコンドリアではない細胞小器官の移入は伴わない。
【0076】
単離されたミトコンドリアの数量および品質は、これだけに限定されないが、本明細書および引用された参考文献に記載のものを含めたいくつかの周知の技法によって容易に決定することができる。例えば、一部の実施形態では、単離されたミトコンドリアの数量を、総タンパク質含量の測定によって決定する。総タンパク質含量を評価するためには、BiuretおよびLowryの手順(例えば、Hartwig et al., Proteomics, 2009 Jun; 9 (11): 3209-14を参照されたい)、ならびにBradfordタンパク質アッセイ(Bradford. Anal Biochem. 1976; 72: 248-54))などの様々な方法が利用可能である。他の実施形態では、単離されたミトコンドリアの数量をmtDNAコピー数によって決定する。
【0077】
外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性ミトコンドリアにさらされていないリンパ球系細胞よりも多くの量の外因性mtDNAが検出可能になる任意の期間であってよい。一部の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも20%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。ある特定の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも30%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。一部の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも30%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。ある特定の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも40%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。一部の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも50%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。一部の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも60%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。一部の実施形態では、外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間は、外因性mtDNAと共にインキュベートされていないリンパ球系細胞に移入される外因性mtDNAの量と比べて、少なくとも70%の外因性mtDNAがリンパ球系細胞に移入される任意の期間である。当業者に公知のまたは本明細書に記載の技法(例えば、実施例におけるもの)を使用して、外因性mtDNAのリンパ球系細胞への移入を評価することができる。一般に、十分な期間は、少なくともおよそ12時間および2週間未満である。一部の実施形態では、十分な期間は、少なくとも12時間である。一部の実施形態では、十分な期間は、少なくとも24時間である。一部の実施形態では、十分な期間は、少なくとも36時間である。一部の実施形態では、十分な期間は、少なくとも48時間である。一部の実施形態では、十分な期間は、およそ2日間またはそれよりも長期である。一部の実施形態では、十分な期間は、およそ7日間またはそれよりも長期である。一部の実施形態では、十分な期間は、およそ2日間~およそ7日間である。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞における外因性mtDNAのコピー数の内因性mtDNAのコピー数に対する比は4超:1である。一部の実施形態では、比は約4:1である。一部の実施形態では、比は約3:1である。一部の実施形態では、比は約2:1である。一部の実施形態では、比は約1:1である。一部の実施形態では、比は約0.75:1である。一部の実施形態では、比は約0.5:1である。一部の実施形態では、比は約0.25:1である。一部の実施形態では、比は約0.1:1である。
【0079】
一般に、本明細書に提供される方法は、リンパ球系細胞と単離された外因性ミトコンドリアの単純な共インキュベーションに適合する。しかし、リンパ球系細胞と単離された外因性ミトコンドリアを必要に応じて遠心分離することによってミトコンドリアの移入を促進することも可能である。一部の実施形態では、リンパ球系細胞と単離された外因性ミトコンドリアを遠心分離する前に、リンパ球系細胞は、mTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)で処置されている。一部の実施形態では、mTOR阻害薬、リンパ球系細胞および単離された外因性ミトコンドリアを一緒に遠心分離した後、本明細書に記載の通り一緒にインキュベートする。他の実施形態では、リンパ球系細胞と単離された外因性ミトコンドリアを遠心分離した後にmTOR阻害薬を添加する。
【0080】
別の態様では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、(a)リンパ球系細胞および単離された外因性ミトコンドリアを、細胞ペレットが生成されるのに十分な条件下で遠心分離するステップであって、リンパ球系細胞が、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていない、ステップと、(b)リンパ球系細胞(例えば、T細胞または本明細書に記載の他のリンパ球系細胞)を100nM~1000nMのラパマイシンと共におよそ24時間またはそれよりも長くインキュベートするステップであって、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成する、ステップとを含む、方法が本明細書に提供される。
【0081】
リンパ球系細胞の、遠心分離した後のラパマイシンとのインキュベーションは、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞が生成するのに十分な任意の時間にわたるものであってよい。一実施形態では、インキュベートするステップは、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い。一実施形態では、インキュベートするステップは、およそ2日間~およそ7日間である。一実施形態では、インキュベーション期間中に培地を50%新鮮な培地に変える。
【0082】
遠心分離条件は、当業者が容易に決定することができ、細胞およびミトコンドリアが傷つかず、ミトコンドリアの移入が促進される限りはスピードおよび時間を変動させることができる。例として、遠心分離する条件には、室温、およそ1,500相対遠心力(RCF、「g」ともいう)でおよそ5分間遠心分離することが含まれ得る。具体的な実施形態では、遠心分離することは下記の実施例に記載の通りである。
【0083】
一実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ500RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ750RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,000RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,500RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,000RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,500RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ3,000RCFでおよそ5分間である。
【0084】
一実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ500RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ750RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,000RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,500RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,000RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,500RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ3,000RCFでおよそ10分間である。
【0085】
別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ500RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ750RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,000RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,500RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,000RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,500RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ3,000RCFでおよそ15分間である。
【0086】
別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ500RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ750RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,000RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ1,500RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,000RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ2,500RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、室温、およそ3,000RCFで1時間未満である。
【0087】
一実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ500RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ750RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,000RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,500RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,000RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,500RCFでおよそ5分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ3,000RCFでおよそ5分間である。
【0088】
別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ500RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ750RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,000RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,500RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,000RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,500RCFでおよそ10分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ3,000RCFでおよそ10分間である。
【0089】
別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ500RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ750RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,000RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,500RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,000RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,500RCFでおよそ15分間である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ3,000RCFでおよそ15分間である。
【0090】
別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ500RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ750RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,000RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ1,500RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,000RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ2,500RCFで1時間未満である。別の実施形態では、遠心分離することは、約4℃、およそ3,000RCFで1時間未満である。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は遠心分離を伴わない。
【0091】
ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞をある特定の期間にわたって欠乏状態にした後、リンパ球系細胞をmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)および単離された外因性ミトコンドリアと共にインキュベートする。例えば、一部の実施形態では、リンパ球系細胞を3~6時間、3~9時間、6~9時間、6~12時間、6~18時間、12~24時間または24~48時間にわたって欠乏状態にした後、リンパ球系細胞をmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)および単離された外因性ミトコンドリアと共にインキュベートする。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞からグルコース、必須アミノ酸(例えば、グルタミン)、および/または血清を喪失させることによってリンパ球系細胞を欠乏状態にする。例えば、一部の実施形態では、リンパ球系細胞を1つまたは複数の栄養分を欠く細胞培養培地(例えば、グルコースを含まない、血清を含まない、および/またはグルタミンを含まない)で培養する。
【0092】
ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞をある特定の期間にわたって欠乏状態にした後、リンパ球系細胞を単離された外因性ミトコンドリアと共に遠心分離する。例えば、一部の実施形態では、リンパ球系細胞を3~6時間、3~9時間、6~9時間、6~12時間、6~18時間、12~24時間、または24~48時間にわたって欠乏状態にした後、リンパ球系細胞を単離された外因性ミトコンドリアと共に遠心分離する。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞からグルコース、必須アミノ酸(例えば、グルタミン)、および/または血清を喪失させることによってリンパ球系細胞を欠乏状態にする。遠心分離後、リンパ球系細胞(例えば、T細胞または本明細書に記載の他のリンパ球系細胞)を有効量のmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)と共に、上記の通り外因性ミトコンドリアをリンパ球系細胞に非侵襲的に移入するために十分な期間にわたってインキュベートすることができる。一部の実施形態では、リンパ球系細胞を1つまたは複数の栄養分を欠く細胞培養培地(例えば、グルコースを含まない、血清を含まない、および/またはグルタミンを含まない)で培養した後、リンパ球系細胞を単離された外因性ミトコンドリアと共に遠心分離する。
【0093】
ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞をmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)および単離された外因性ミトコンドリアと共にインキュベートするステップは、欠乏条件下で実施される。ある特定の実施形態では、リンパ球系細胞からグルコース、必須アミノ酸(例えば、グルタミン)、および/または血清を喪失させることによってリンパ球系細胞を欠乏状態にする。例えば、一部の実施形態では、リンパ球系細胞を、(1)1つまたは複数の栄養分を欠き(例えば、グルコースを含まない、血清を含まない、および/またはグルタミンを含まない)、かつ(2)有効量のmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)を含有する細胞培養物中でインキュベートする。一部の実施形態では、リンパ球系細胞をmTOR阻害薬(例えば、6.2節に記載のmTOR阻害薬、例えば、ラパマイシンが挙げられる)および単離された外因性ミトコンドリアと共にインキュベートするステップは、欠乏を伴わない条件下で実施される。
【0094】
具体的な実施形態では、実施例8.1に記載の方法を使用してミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法が本明細書に提供される。
【0095】
具体的な実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の生成元のリンパ球系細胞と比べて1つ、2つまたはそれよりも多くの機能の改善を示す。ミトコンドリア置換リンパ球系細胞において改善することができるリンパ球系細胞の機能に関しては、例えば、6.4節を参照されたい。
6.2 ラパマイシン類似体および他のmTOR阻害薬
【0096】
シロリムス(CAS番号53123-88-9;C51H79NO13)としても公知のラパマイシン、およびラパマイシン誘導体(例えば、「ラパログ」としても公知のラパマイシン類似体)を含めた種々の化合物がmTORを阻害することが分かっている。ラパマイシン誘導体の非限定的な例としては、例えば、テムシロリムス(CAS番号162635-04-3;C56H87NO16)、エベロリムス(CAS番号159351-69-6;C53H83NO14)、リダフォロリムス(CAS番号572924-54-0;C53H84NO14P)、WYE-125132(WYE-132)、およびゾタロリムス(ABT-578)が挙げられる。具体的な実施形態では、mTOR阻害薬はラパマイシンである。
【0097】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかにおける使用に適したmTOR阻害薬は、例えば、AZD8055、トリン(Torin)1、トルキニブ(Torkinib)またはオミパリシブ(Omipalisib)などの、mTORC1およびmTORC2のどちらも阻害するものである。
【0098】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるmTOR阻害薬は、デュアルキナーゼ阻害薬などの、mTOR以外の1種または複数の基質も阻害する。mTORおよび1種または複数の基質に対する特異性を有する阻害薬は当技術分野で公知である。例として、デュアルPI3K/mTOR阻害薬は、mTORおよび別の基質を阻害する、本開示との使用に適したmTOR阻害薬の1つの型である。デュアルPI3K/mTOR阻害薬の非限定的な例としては、例えば、ダクトリシブ(Dactolisib)(BEZ235としても公知)、PI-103、ビミラリシブ(Bimiralisib)(PQR309としても公知)、GDC-0084、およびゲダトリシブ(Gedatolisib)が挙げられる。
6.3 処置方法
【0099】
本明細書に提供されている通り、本開示の方法に従って生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、例えば6.3.1節および6.3.2節に記載の方法における、細胞に基づく治療として使用するために適している。例えば、一部の実施形態では、有効量の、6.1節に記載の方法に従って生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞を薬学的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物をもたらすことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って、例えば6.1節に記載の方法において生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物(例えば、医薬組成物)が本明細書に提供される。一部の実施形態では、有効量の、本明細書に記載の方法に従って、例えば6.1節に記載の方法において生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物(例えば、医薬組成物)が本明細書に提供される。
【0100】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、担体に関して使用される場合、担体、希釈剤または賦形剤が毒性でも他の点で望ましくないものでもなく(すなわち、材料を、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく対象に投与することができる)、製剤の他の成分と適合性であることを意味するものとする。「担体」という用語は、治療薬と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、生理食塩水溶液などの滅菌された液体であり得る。生理食塩溶液は、医薬組成物が静脈内投与される場合の担体であり得る。生理食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液も液体担体、特に注射液として用いることができる。組成物はまた、所望であれば、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。
【0101】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1×10~約1×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約10×10~約900×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約50×10~約800×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約100×10~約700×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約200×10~約900×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約250×10~約750×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約50×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約150×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約300×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約450×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約600×10個である。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約850×10個である。
【0102】
特定の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、例えば、対象の体重、または疾患もしくは障害の負荷量に基づいてなど、経験的に決定される。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1.0×10個/kg~細胞約1.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1.0×10個/kg~細胞約500×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1.0×10個/kg~細胞約50×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1.0×10個/kg~細胞約10×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1.0×10個/kg~細胞約5.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約10×10個/kg~細胞約600×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約50×10個/kg~細胞約750×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約1.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約2.5×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約5.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約10.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約50.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約250.0×10個/kgである。一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の有効量は、細胞約500×10個/kgである。
【0103】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を用いた処置により、以下のうちの1つ、2つ、もしくはそれよりも多く、または全てがもたらされる:(1)1つまたは複数の症状の重症度、進行、広がり、および/または発生頻度の低減、(2)1つまたは複数の症状および/または根本原因の消失、(3)1つまたは複数の症状および/またはそれらの根本原因の発生の防止、ならびに(4)損傷の改善または矯正。具体的な実施形態では、処置には、状態、疾患または障害に対する治療的処置ならびに予防的または抑制的措置が含まれる。
【0104】
一部の実施形態では、例えば6.3.1節および6.3.2節に記載の方法における、細胞に基づく治療として使用するためのミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の投与を受ける対象に対して自己または同種である。一部の実施形態では、例えば6.3.1節および6.3.2節に記載の方法における、細胞に基づく治療として使用するためのミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の投与を受ける対象に対して自己である。一部の実施形態では、例えば6.3.1節および6.3.2節に記載の方法における、細胞に基づく治療として使用するためのミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の投与を受ける対象に対して同種である。
6.3.1 ミトコンドリア病または障害を処置する方法
【0105】
一態様では、それを必要とする対象に対する、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法であって、対象に、有効量の、6.1節に記載の方法に従って生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞、および薬学的に許容される担体を投与するステップを含む、方法が本明細書に提供される。
【0106】
ミトコンドリア複合体IIIは、調節性T細胞(Treg)の抑制機能のために必須である。例えば、Treg細胞は免疫調節性遺伝子発現および抑制機能を維持するためにミトコンドリア複合体IIIを必要とすることが示されている(Weinberg, S. et al. Nature vol. 565,7740 (2019) : 495-499を参照されたい)。ミトコンドリア複合体III欠損症は、遺伝子疾患である。ミトコンドリア複合体III欠損症は、一般に、BCS1L、UQCRBおよびUQCRQ遺伝子の核DNAの変異によって引き起こされ、常染色体劣性様式で遺伝する。しかし、MTCYB遺伝子のミトコンドリアDNAの変異によって引きこされる場合もあり、その場合、母親から伝わるまたは散発的に生じ、軽症の状態がもたらされ得る。
【0107】
したがって、一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞はTreg細胞であり、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア複合体III欠損症を有する対象に投与される。具体的な実施形態では、対象はヒト対象である。
【0108】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、症状の重症度、進行、広がり、および/または発生頻度の低減、症状および/または根本原因の消失、症状および/またはそれらの根本原因の発生の防止、ならびに損傷の改善または矯正を含む。一実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、症状の重症度の低下を含む。一実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、症状の進行の低減を含む。別の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、症状の広がりの低減を含む。別の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法により、症状の発生頻度が低減する。別の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、症状の排除を含む。別の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状の発生の防止を含む。別の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、ミトコンドリア複合体III欠損症による損傷の改善を含む。別の実施形態では、ミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法は、ミトコンドリア複合体III欠損症による損傷の矯正を含む。
6.3.2 ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置する方法。
【0109】
それを必要とする対象に対するヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置するための方法であって、対象に、有効量の、6.1節に記載の方法に従って生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞、および薬学的に許容される担体を投与するステップを含む、方法も本明細書に提供される。
【0110】
ある特定の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞は、望ましくない薬理学的副作用の結果である。例えば、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1の複製を阻害するものであり、HIVの処置に有用である。しかし、NRTIでは、ヒト組織において、NRTIによるヒトミトコンドリアポリメラーゼγ(ポリγ)の阻害の結果であると思われる副作用も示される。一実施形態では、対象は、逆転写酵素阻害薬を受けている。一実施形態では、対象は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を有する。具体的な実施形態では、対象はヒトである。
【0111】
同様に、B型肝炎ウイルス(HBV)の処置に関してFDAによって承認された薬物の多くは、逆転写酵素(RTまたはP遺伝子産物)を標的とするものであり、ウイルス複製を抑制するヌクレオシドRT阻害薬(NRTI)である。したがって、一部の実施形態では、対象は、B型肝炎ウイルス(HBV)を有する。具体的な実施形態では、対象はヒトである。
【0112】
ヘテロプラスミーは、種々の型の変異からも生じ得る。したがって、本明細書に提供される方法は、NRTI阻害薬によって引き起こされるヘテロプラスミック免疫細胞を処置することに限定されない。
【0113】
一部の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、症状の重症度、進行、広がり、および/または発生頻度の低減、症状および/または根本原因の消失、症状および/またはそれらの根本原因の発生の防止、ならびに損傷の改善または矯正を含む。一実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全の重症度の低下を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全の進行の低減を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全の広がりの低減を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全の症状の発生頻度の低減を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全の消失を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全の症状の発生の防止を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全による損傷の改善を含む。別の実施形態では、ヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置することは、免疫不全による損傷の矯正を含む。
6.4 リンパ系機能についての生物学的アッセイ
【0114】
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の上首尾の生成により、ミトコンドリア置換(mitochondria replacement)を伴わないリンパ球系細胞と比べて機能の改善を有するリンパ球系細胞がもたらされる。種々の機能アッセイを使用して、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞の表現型を測定および評価することができる。
【0115】
一部の実施形態では、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、ミトコンドリア置換を伴わないリンパ球系細胞と比べてミトコンドリア機能の改善を有する。ミトコンドリア機能を評価する方法は当業者には理解されよう。例えば、Seahorse Bioscience XF Extracellular Flux Analyzerなどの細胞に基づくアッセイを使用して基礎酸素消費量、解糖速度、ATP産生、および呼吸容量の決定を実施して、ミトコンドリア機能不全を評価することができる。同様に、Oroboros 02K呼吸計を使用して、定量的な機能的ミトコンドリア診断を確立することもできる。上記のアッセイ例は例示的なものであり、ミトコンドリア機能を評価するための全ての方法を包括するものではないことが理解される。
【0116】
細胞増殖の増大もリンパ球系細胞機能の改善の指標であることができる。リンパ球系細胞の細胞増殖を測定するための例示的なアッセイは、混合リンパ球反応(MLR)アッセイである。MLRアッセイは、一般に、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞、例えばCD4+T細胞の集団をリンパ球の異なる集団と組み合わせ、増殖を測定することを伴う。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、単離された外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共にインキュベートされていないリンパ球系細胞と比較して細胞増殖の増大を有する。
【0117】
例えば、細胞傷害性T細胞における、ミトコンドリア置換細胞の機能を評価するために使用することができる別の例示的なアッセイは、細胞傷害性T細胞(CTL)アッセイである。CTLアッセイは、特定の抗原に対するT細胞の存在および細胞傷害活性を示し、この免疫機能に対する試験項目の影響を調査することを可能にするものである。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、単離された外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共にインキュベートされていないリンパ球系細胞と比較してCTL応答の増大を有する。
【0118】
DNA安定性はT細胞の機能のために重要である。したがって、ミトコンドリア置換細胞の機能を評価するために使用することができる別の非限定的な例示的なアッセイは、DNA損傷応答を測定することである。二本鎖切断(DSB)はゲノム安定性に対して重大な損傷であり、したがって、細胞恒常性を維持するために迅速にかつ精密に修復される。DSBに対する初期応答は、Ser-139位における軽微なヒストンH2Aバリアントのリン酸化であり、それによりγH2AXが形成される。したがって、例として、ヒストン2A X(H2AX)のリン酸化を検出することによってDNA損傷応答をアッセイすることができ、リン酸化は、例えばフローサイトメトリーによってまたは免疫ブロットによってなど、当技術分野で公知の任意のアッセイを使用して測定することができる。
【0119】
例えば、以下のアッセイを実施して、DNA損傷応答を検出することができる:リンパ球系細胞(例えば、T細胞)をPBSで2回洗浄し、70%エタノールを用いて懸濁させ、-20℃で60分間にわたって冷却し、次いで、PBSで2回洗浄し、PE抗H2A.Xホスホ抗体(Biolegend)およびAPCマウス抗CD3抗体(Biolegend)を用い、加湿5%CO2インキュベーター中、37℃で60分間にわたって染色する。次いで、細胞を洗浄し、autoMACSTM Running Buffer(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)に再懸濁させ、直後にフローサイトメトリー分析を行う。データをFlowJoソフトウェア(BD Bioscience、Franklin Lakes、NJ、USA)を使用して分析することができる。
【0120】
Ca2+シグナル伝達は、リンパ球系細胞(例えば、T細胞)活性化のために、多数のシグナル伝達経路を迅速に活性化し、統合して、遺伝子の発現および機能に広範にわたる変化を生じさせる手段として極めて重要である。Ca2+シグナル伝達を測定するための様々なアッセイが当技術分野で公知である(Samakai E, et al., Signaling Mechanisms Regulating T Cell Diversity and Function. Boca Raton (FL): CRC Press/Taylor & Francis; 2018. Chapter 10.を参照されたい)。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、単離された外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共にインキュベートされていないリンパ球系細胞と比較してCa2+シグナル伝達の増大を有する。
【0121】
テロメア長もミトコンドリア置換細胞の機能の指標として役立ち得る。テロメア長は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定することができる。1つの例示的な技法は、qPCRによって絶対的なテロメア長を測定することによるものである。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、単離された外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共にインキュベートされていないリンパ球系細胞と比較してテロメア短縮の低減を有する。
【0122】
本明細書に提供されている通り、一部の実施形態では、ミトコンドリア置換細胞を生成するために使用されるリンパ球系細胞は老化したものであり、ミトコンドリア置換細胞は、老化の低減を示す。したがって、老化関連分泌表現型((SASP)の測定は、機能アッセイとして役立ち得る。SASPには、炎症性サイトカイン(例えば、インターフェロンガンマ(IFNγ)および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、増殖因子、およびプロテアーゼの分泌の増加、ならびに細胞集団倍加の低減および/または速度の低下、テロメアの短縮、DNA損傷応答(DDR)の増大、またはこれらの組合せが含まれる。老化マーカー(例えば、CD57/KIR/KLRG1)についてのFACS分析を用いることもできる。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、単離された外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共にインキュベートされていないリンパ球系細胞と比較して老化の低減を有する。
【0123】
一部の実施形態では、ミトコンドリア置換細胞を生成するために使用されるリンパ球系細胞は疲弊T細胞であり、ミトコンドリア置換細胞はT細胞疲弊の低減を示す。疲弊マーカー(例えば、PD-1/TIM3/LAG3)についてのFACS分析を使用して、T細胞疲弊を測定することができる。したがって、一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って生成されるミトコンドリア置換リンパ球系細胞は、単離された外因性ミトコンドリアおよびmTOR阻害薬と共にインキュベートされていないリンパ球系細胞と比較して疲弊の低減を有する。
7.実施形態
【0124】
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0125】
A1
内因性ミトコンドリアDNA(mtDNA)の少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、
内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリア、および有効量の哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)阻害薬と共に十分な期間にわたってインキュベートして、前記外因性ミトコンドリアを前記リンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、前記内因性mtDNAの少なくとも20%が外因性mtDNAによって置換されているミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップ
を含む、方法。
【0126】
A2
前記mTOR阻害薬が、ラパマイシンまたはその誘導体を含む、実施形態A1に記載の方法。
【0127】
A3
前記mTOR阻害薬が、ラパマイシンである、実施形態A1または実施形態A2に記載の方法。
【0128】
A4
前記mTOR阻害薬の有効量が、約100nM~約1000nMの濃度である、実施形態A1からA3のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
A5
前記mTOR阻害薬の有効量が、約200nM~約500nMの濃度である、実施形態A1からA3のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
A6
前記mTOR阻害薬の有効量が、約100nMの濃度である、実施形態A1からA3のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
A7
前記mTOR阻害薬の有効量が、約200nMの濃度である、実施形態A1からA3のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
A8
前記mTOR阻害薬の有効量が、約500nMの濃度である、実施形態A1からA3のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
A9
前記mTOR阻害薬の有効量が、約1000nMの濃度である、実施形態A1からA3のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
A10
前記ミトコンドリア置換リンパ球系細胞が、TaqMan一塩基多型(SNP)アッセイによって測定して少なくとも20%の外因性mtDNAおよび80%以下の内因性mtDNAを含む、実施形態A1からA9のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
A11
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていないリンパ球系細胞を、単離された外因性ミトコンドリアおよび約100nM~約1000nMのラパマイシンと共に十分な期間にわたってインキュベートして、前記外因性ミトコンドリアを前記リンパ球系細胞に非侵襲的に移入し、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するステップを含む、方法。
【0136】
A12
前記単離された外因性ミトコンドリアが、細胞1×10個当たりタンパク質約20μg~80μgである、実施形態A1からA11のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
A13
インキュベートするステップの前に前記リンパ球系細胞を遠心分離するステップをさらに含む、実施形態A1からA12のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
A14
遠心分離するステップが、室温、1,500相対遠心力(RCF)でおよそ5分間実施される、実施形態A13に記載の方法。
【0139】
A15
前記十分な期間が、少なくともおよそ24時間である、実施形態A1からA14のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
A16
前記十分な期間が、少なくとも36時間である、実施形態A1からA14のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
A17
前記十分な期間が、少なくとも48時間である、実施形態A1からA14のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
A18
前記十分な期間が、およそ2日間であるか、またはそれよりも長い、実施形態A1からA14のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
A19
前記十分な期間が、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い、実施形態A1からA14のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
A20
前記十分な期間が、およそ2日間~およそ7日間である、実施形態A1からA14のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
A21
ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成するための方法であって、
(a)リンパ球系細胞および単離された外因性ミトコンドリアを、細胞ペレットが生成されるのに十分な条件下で遠心分離するステップであって、前記リンパ球系細胞が、内因性ミトコンドリアを減少または枯渇させる手順に供されていない、ステップと、
(b)前記リンパ球系細胞を100nM~1000nMのラパマイシンと共におよそ24時間またはそれよりも長くインキュベートするステップであって、それにより、ミトコンドリア置換リンパ球系細胞を生成する、ステップ
を含む、方法。
【0146】
A22
インキュベートするステップが、およそ7日間であるか、またはそれよりも長い、実施形態A21に記載の方法。
【0147】
A23
インキュベートするステップが、およそ2日間~およそ7日間である、実施形態A21に記載の方法。
【0148】
A24
前記リンパ球系細胞が、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、または顆粒球である、実施形態A1からA23のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
A25
前記リンパ球系細胞が、T細胞である、実施形態A24に記載の方法。
【0150】
A26
前記T細胞が、疲弊T細胞、老化T細胞、またはこれらの組合せを含む、実施形態A25に記載の方法。
【0151】
A27
前記リンパ球系細胞が、ヒトリンパ球系細胞である、実施形態A1からA26のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
A28
有効量の、実施形態A1からA27のいずれか一項に記載の方法によって生成されたミトコンドリア置換リンパ球系細胞と、薬学的に許容される担体とを含む組成物。
【0153】
A29
それを必要とする対象に対するミトコンドリア複合体III欠損症の症状を好転させるための方法であって、前記対象に、実施形態A28に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【0154】
A30
それを必要とする対象に対するヘテロプラスミック免疫細胞に関連する免疫不全を処置するための方法であって、前記対象に、実施形態A28に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
【0155】
A31
前記対象が、逆転写酵素阻害薬を受けている、実施形態A30に記載の方法。
【0156】
A32
前記対象が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を有する、実施形態A31に記載の方法。
【0157】
A33
前記対象が、B型肝炎ウイルス(HBV)を有する、実施形態A31に記載の方法。
【0158】
A34
前記対象が、ヒトである、実施形態A29からA33のいずれか一項に記載の方法。
【実施例
【0159】
8.実施例
この節の実施例は実例として提示するものであり、限定として提示するものではない。以下の実施例は本発明の例示的な実施形態として提示される。以下の実施例は、本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
(実施例1)
8.1 実施例1:リンパ球系細胞を用いてミトコンドリア病およびヘテロプラスミーに関連する他の疾患を処置するための方法および組成物
【0160】
本実施例では、リンパ球(例えば、Tリンパ球)における内因性ミトコンドリアおよび/またはmtDNAを、ラパマイシンを使用し、内因性mtDNAを事前に枯渇させることなく外因性ミトコンドリアによって置換することができることを実証する。
8.1.1 材料および方法
【0161】
初代マウスTリンパ球の単離および細胞培養:全ての動物実験を自施設の動物実験委員会により発行された動物実験ガイドラインに従って実施した(M2019-536)。マウスTリンパ球の単離のために、マウスから、麻酔し屠殺した後に脾臓を取り出した。脾臓をPBS(FUJIFILM Wako Pure Chemical Corp.)で洗浄し、次いで、すりつぶし、濾過して脾細胞を抽出した。EasySepマウスT細胞単離キット(Veritas、Santa Clara、CA、USA)を製造者の推奨に従って使用し、免疫磁気による負の選択によってマウスT細胞を脾細胞から高度に精製した。単離されたマウスT細胞を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、20mMのL-グルタミン(Thermo Fisher Scientific incorporated)、20μMの組換えヒトIL-2(PeproTech、Rocky Hill、NJ、USA)を補充したAdvanced RPMI1640培地で培養し、Dynabeads mouse T-activator CD3/CD28(Thermo Fisher Scientific incorporated)を用いて活性化した。細胞を、加湿5%CO2インキュベーター中、37℃でインキュベートした。
【0162】
ミトコンドリアの単離およびマウスT細胞への移入:ミトコンドリアをB6マウス胚線維芽細胞(MEF)から単離した。簡単に述べると、細胞を培養皿からプロテアーゼ阻害薬混合物(Sigma-Aldrich,St.Louis、Missouri、USA)を含有するホモジナイゼーション緩衝剤[HB;20mMのHEPES-KOH(pH7.4)、220mMのマンニトールおよび70mMのスクロース]を用いて回収した。細胞ペレットをHB中に再懸濁させ、氷上で5分間インキュベートした。細胞を、氷上で27ゲージの針で10回突き刺すことによって破裂させた。ホモジネートを2回遠心分離して(400×g、4℃;5分間)、破壊されなかった細胞を除去した。ミトコンドリアを遠心分離(6000×g、4℃;5分間)によって回収し、HB中に再懸濁させた。単離されたミトコンドリアの量をBio-Radタンパク質アッセイキット(Bio-Rad Laboratories,incorporated、Richmond、CA、USA)を使用してタンパク質濃度として表した。単離されたミトコンドリアを標準的な培地中でマウスT細胞と混合し、室温、1,500gで5分間遠心分離した。ペレットを穏やかに再懸濁させ、種々の濃度のラパマイシンを添加し、5%CO2下、37℃で24時間、インキュベートした。
【0163】
ヒトT細胞の単離および細胞培養:ヘパリン添加静脈血を肘正中皮静脈から標準的な手順に従って取得した。1.077g/mlのパーコール(GE Healthcare Life Sciences、Buckinghamshire、England)を用いた密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をヒト末梢血から単離した。細胞を、抗CD3抗体および抗CD28抗体(Miltenyi Biotec)をコーティングした細胞培養プレート上、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific incorporated)、20μMのIL-7、および10μMのIL-15を補充したTexMACS培地(Miltenyi Biotec)で培養した。細胞を、加湿5%CO2インキュベーター中、37℃でインキュベートした。
【0164】
ミトコンドリアの単離およびヒトT細胞への移入:マウスプロトコールと同じプロトコールを使用してヒト初代T細胞にミトコンドリアを移入するための外因性ミトコンドリアの例示的なドナーとして、不死化ヒト子宮内膜腺由来の間葉細胞株、EPC100(Japanese Collection of Research Bioresources Cell Bank、JCRB1538)を使用した。
【0165】
MtDNA配列決定:ゲノムDNAからmtDNAを精製するために(Jayaprakash AD. Nucleic Acids Res. 2015)、エキソヌクレアーゼV(ExoV、New England Biolabs Ltd、Ipswich、MA、USA)を使用して核DNAのみを取り出した。簡単に述べると、NucleoSpin Tissue(MACHEREY-NAGEL)を使用して全DNAを細胞から抽出し、70℃で30分間加熱して、残った全てのプロテイナーゼKを不活化した。第1の消化で、全DNA試料(35μl中4~8μg)に以下のステップで添加した。10×New England Biolabs(NEB)4 Buffer(6μl)、10mMのATP(12μl)、NEB-M0345SからのExoV(4μl)およびH2O(3μl)。消化物を37℃で48時間放置し、70℃で30分間にわたって熱失活させ、N Wizard SV GelおよびPCR Clean-Up System(Promega Corporation、Madison、WI、USA)を使用して精製した。第2の消化で、ExoV処置したDNA(35μl)に以下を添加した。NEB4 10×Buffer(6μl)、10mMのATP(12μl)、NEB-M0345SからのExoV(4μl)およびH2O(3μl)。消化物を37℃で16時間放置し、70℃で30分間にわたって熱失活させ、Wizard SV GelおよびPCR Clean-Up System(Promega Corporation、Madison、WI、USA)を使用して精製した。これらのExoV処置したmtDNAをディープシーケンシングのために処理した。配列決定データをfastq形式のファイルとして生成した。マッピングされなかったリードを品質のためにフィルタリングし(Q<20のヌクレオチドが10個よりも多く連続する配列を除外した)、参照ミトコンドリアゲノム(GRCh38)にマッピングし、BAMファイルに変換した。これらのファイルをmtDNA-server(mtdna-server.uibk.ac.at/index.html)を用いてヘテロプラスミーについて分析した。
【0166】
TaqMan一塩基多型(SNP)アッセイ:ヒトGJ T細胞とEPC100細胞のミトコンドリアHVR1配列の差異、およびB6マウスとNZBマウスのミトコンドリアND1の差異に基づき、表1および2に記載のプローブおよびプライマーセットを設計した。これらはTaqMan SNPアッセイにおいて感度および特異度をもたらすものである。変異の比を決定するために、TaqMan SNPアッセイ用の野生型対立遺伝子特異的TaqManプローブおよび変異型対立遺伝子特異的TaqManプローブを設計した。抽出されたDNA(1ng)を、CFX connect real-time system(Bio-Rad Laboratories,Incorporated)でTaqMan Universal PCR Master Mix kit(Thermo Fisher Scientific Incorporated)を用いた、以下の条件:最初の変性(95℃で10分間)後、40サイクルのPCR(95℃で15秒間および60℃で1分間)の下での定量的PCRのために使用した。標的について増幅されたmtDNA断片を含有するプラスミドの分かっているCNを使用して較正曲線を作成した。デルタサイクル閾値に基づく相対的な数量化により、mtDNA上の12S rRNAと核DNA上のACTB(またはActb)の含量の比からmtDNAコピー数を推定した。
【0167】
表1
【表1】
【0168】
表2
【表2】
8.1.2 結果
【0169】
図1に示されている通り、ヒトGJ T細胞由来のmtDNA配列とEPC100細胞由来のmtDNA配列の差異をDループの配列決定によって検出し、Dループ超可変領域(「HVR」)にいくつかの差異が観察された。DループHVRの差異に基づき、ミトコンドリア置換(mitochondria replacement)を検出するためのSNPアッセイに使用するためのプローブとプライマーのセットを設計した(図2A)。実験試料の前にヒトGJ T細胞とEPC100細胞を所与の混合率にした細胞集団を試験試料として使用することによってアッセイのバリデーションを行った。アッセイにより、細胞集団の混合率に従って遺伝子型の正確な比が実証された(データは示していない)。したがって、TaqManプローブにより、GJ T細胞由来のmtDNAとEPC100細胞由来のmtDNAを容易に検出し、それらを区別することができる。したがって、SNPアッセイは、2つの異なる供給源からのmtDNAを同定し、それらを区別することを可能にするための有用なツールである。
【0170】
ヒトGJ T細胞を、5%FBSおよびIL-7およびIL-15を伴うTexMacs中、in vitroで2日間培養した。ヒトGJ T細胞をラパマイシンの非存在下または種々の濃度のラパマイシン(50nM、100nM、200nM、または500nM)の存在下で、EPC100細胞由来のミトコンドリアを伴ってまたは伴わずに培養することによってミトコンドリアの移入を実施した(「0日目」)。ラパマイシンの存在下で培養後24時間に、培地の50%を5%FBSおよびIL-7およびIL-15を含むTexMacsで補給し、さらなるラパマイシンは添加しなかった。培地を交換した後、細胞をさらに1日間または6日間、全てのミトコンドリアの移入後、合計で2日間または7日間培養した。
【0171】
ヒトGJ T細胞をEPC100細胞由来のミトコンドリアと共に培養してから2日、および7日後、SNPアッセイを行って、EPC100細胞からヒトGJ T細胞へのミトコンドリアの移入を検出した。プロトコールの概略については図3Aを参照されたい。図3Bに示されている通り、50~500nMのラパマイシンの存在下で2日間および7日間培養したヒトGJ T細胞ではEPC100細胞由来のmtDNAが検出されたが、一方、EPC100ミトコンドリアを伴わずに培養したヒトGJ T細胞ではEPC100細胞由来のmtDNAは検出されなかった。ラパマイシンの存在下でドナーミトコンドリアと接触させたT細胞におけるmtDNA含量は、40~50%がEPC100細胞由来のmtDNAからなり、ラパマイシンの量が増加すると共にドナーmtDNAの量が増加した。例えば、50nMのラパマイシンの存在下でドナーミトコンドリアと接触させた後にT細胞において検出されたドナーmtDNAの部分は7日後に40%未満であったが、一方、500nMのラパマイシンの存在下でドナーミトコンドリアと接触させた後にT細胞において検出されたドナーmtDNAの部分は7日後におよそ50%であった。したがって、T細胞をラパマイシンの下で培養した場合、mtDNAのT細胞への上首尾の移入を実現するためにミトコンドリア枯渇は必要なかった。
【0172】
ウェル当たり3×10個のマウスNZB T細胞を、10%FBSおよびIL-2/CD3/CD28を伴うAdvanced RPMI中、B6 MEF由来のミトコンドリア40μgと共に、ラパマイシンの非存在下または種々の濃度のラパマイシン(100nM、200nM、500nMまたは1000nM)の存在下で、NZB T細胞mtDNAの枯渇なしに培養した。ミトコンドリアドナーとして使用したB6 T細胞は、mtDNAに、B6 T細胞を含めた現在の近交系実験用マウス由来のmtDNAと比較して、91の多型を有する。ラパマイシンと共にインキュベートしてから24時間後、培地の50%を、10%FBSおよびIL-2/CD3/CD28を伴うAdvanced RPMIで補給し、さらなるラパマイシンは添加しなかった。細胞を合計で2日間または7日間培養した後、ミトコンドリア置換(mitochondrial replacement)を評価した。
【0173】
細胞をB6 MEFミトコンドリアと共にラパマイシンの存在下または非存在で培養してから2日および7日後、SNPアッセイを行って、NZB T細胞mtDNAのB6 MEF mtDNAによる置換を検出した。プロトコールを示すスキームについては図4Aを、およびウェル中のラパマイシンの力価測定の描写については図4Bを参照されたい。図5Aおよび図5Bに示されている通り、ラパマイシンと共に培養した後にはNZB T細胞mtDNAの置換の増加が検出されたが、一方、ラパマイシンを伴わない場合にはNZB T細胞mtDNAの置換は検出されなかった。例えば、遠心分離および2日間のラパマイシン処置の後、レシピエントT細胞に約45~80%のドナーmtDNAが存在した(図5A)。7日目までに、レシピエントT細胞におけるドナーmtDNAの量はおよそ70~90%に増加した(図5B)。NZB T細胞mtDNAのB6 MEF mtDNAによる置換の量は濃度依存的に増加した。さらに、7日目のNZB T細胞におけるB6 MEF mtDNAの量は2日目よりも多かった。
【0174】
総合すると、結果から、T細胞をドナーミトコンドリアと接触させる際に同時にラパマイシン処置することにより、ミトコンドリアの移入を容易にすることができることが実証される。したがって、本実施例は、ラパマイシンを伴うプロトコールを使用した、T細胞における、エンドヌクレアーゼによる内因性mtDNAの減少を伴わず、遺伝子操作を伴わない、ミトコンドリア置換(mitochondrial replacement)の上首尾の提供を実証するものである。
【0175】
上記の実施形態は、ただ単に例示的なものであることが意図されており、当業者は、特定の化合物、材料、および手順の多数の等価物を理解する、または常套的な実験だけを使用して確認することができる。そのような等価物は全て本発明の範囲内に入るとみなされ、添付の特許請求の範囲に包含される。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
【配列表】
2024525941000001.app
【国際調査報告】