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特表2024-525955皮膚の修復を促進及び/又は活性化するためのスケレトネマ藻類の脂質抽出物の使用
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  • 特表-皮膚の修復を促進及び/又は活性化するためのスケレトネマ藻類の脂質抽出物の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】皮膚の修復を促進及び/又は活性化するためのスケレトネマ藻類の脂質抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9722 20170101AFI20240705BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K8/9722
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504003
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 FR2022051435
(87)【国際公開番号】W WO2023002119
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】2107998
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500078211
【氏名又は名称】エル・ヴェ・エム・アッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】クルフルスト,ロバン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌトン,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD332
4C083BB41
4C083BB47
4C083BB51
4C083BB60
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD27
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
本発明は、皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用するスケレトネマ藻類の抽出物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物。
【請求項2】
国際命名法INCIでスケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]と称されることを特徴とする、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
生理学的に許容可能な培地中に、皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用する化粧品活性成分としてスケレトネマ藻類の脂質抽出物を含む、化粧品組成物。
【請求項4】
組成物が、抗酸化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤、香料、及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の化粧品補助剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
請求項3の使用において、クリーム、オイルインウォーターもしくはウォーターインオイルエマルジョン又はマルチエマルジョン、溶液、懸濁液、ジェル、乳液、ローション、又はセラムの形態であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
請求項3の使用において、藻類の脂質抽出物は、INCI名:スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]を有することを特徴とする、請求項3から5の何れか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
請求項3の使用において、スケレトネマ藻類の脂質抽出物は、組成物中に、組成物の全重量に対して、活性物質の重量(脂質抽出物の重量)として0.00001%~1%、好ましくは0.00005%~0.5%、より好ましくは0.0001%~0.1%の範囲で含まれることを特徴とする、請求項3から6の何れか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
請求項3の使用において、組成物は、化粧品活性剤として海洋バクテリア抽出物をさらに含むことを特徴とする、請求項3に使用する請求項3から7の何れか1項に記載の化粧品組成物。
【請求項9】
請求項3の使用において、海洋バクテリア抽出物は、INCI名:バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]を含むことを特徴とする、請求項3に使用する請求項8に記載の化粧品組成物。
【請求項10】
請求項3の使用において、海洋バクテリア抽出物は、組成物中に、組成物の全重量に対し、活性物質の重量(抽出物の重量)として0.0001%~5%、好ましくは0.0005%~4%、より好ましくは0.001%~2%の範囲含まれることを特徴とする、請求項3に使用する請求項8又は9に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
化粧品活性成分として、生理学的に許容可能な培地中に、化粧品有効成分としてスケレトネマ藻類の脂質抽出物を含み、好ましくはINCI名スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]を有する抽出物及び海洋バクテリア抽出物を含み、好ましくはINCI名バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]を有する抽出物を含む、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の修復を促進及び/又は活性化するための材料として、スケレトネマ(Skeletonema)藻類の脂質抽出物を使用することに関する。本発明のもう1つの目的は、スケレトネマ藻類の脂質抽出物と任意に海洋バクテリア抽出物とを含む化粧品組成物、並びに、皮膚及び/又は唇の修復を促進及び/又は活性化するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、環境に対する身体の第1防御壁である。皮膚は、皮膚の老化の兆候を誘発し得る外因性の要因(UV照射、大気汚染、煙草の煙)及び内因性の要因(ホルモン、炎症ストレス等)の両方により多くの刺激及び攻撃に毎日曝される。これらは、通常の老化過程において生じて現れる身体の変化及び遺伝的要因によって生じる内因性老化、並びに、環境の影響によって加速される老化プロセスに関する外因性老化と呼ばれる。
【0003】
老化の主な原因の1つは、DNAの二重鎖において、核酸塩基が変異することにより遺伝情報が損傷してダメージが蓄積することにある。理論的には、1つの変異は、細胞調節異常を引き起こし得、これにより腫瘍又は細胞死を引き起こし得る。DNA保護及び修復のための細胞システムは、遺伝メッセージを完全に維持するが、これらのプロセスは不完全であり、DNAの変異が蓄積され、その結果、転写パターンの調節不全が発生し、細胞メカニズムが破壊されて弱体化し、細胞の代謝能力が低下して、最終的に細胞及び組織の老化を引き起こす。
【0004】
DNAの損傷を防ぐために、細胞は精密なDNAの修復メカニズムを発達させてきた。ミスマッチ修復(Mismatch Repair、MMR)、塩基除去修復(Base Excision Repair、BER)、ヌクレオチド除去修復(Nucleotide Excision Repair、NER)及び二重鎖切断(Double Strand Break、DSB)修復システムという、いくつかのシステムがある。逆説的であるが、DNA修復自体は、変化又は加齢に伴う劣化の影響を受け得る。全てのDNA修復方法、MMR、除去による修復及びBDS修復は年齢と共に効果が低下し、影響を受けにくく、時間の経過により変異の蓄積の影響を受けるという証拠がある(Gorbunova等, N.A.R.2007, vol.35, n°22, pp7466-7474)。
【0005】
したがって、特に皮膚及び/唇の修復及び/又は再生を促進するために、DNA修復メカニズムを促進及び/又は活性化することのできる新しい成分を見つける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
予想外のことに、出願人は、いくつかのDNA修復メカニズム、特に塩基除去修復(BER)メカニズム及びヌクレオチド除去修復(NER)メカニズムにおいて、スケレトネマ藻類の脂質抽出物の効果をin vitroにおいて実証した。特に、本発明のスケレトネマ藻類の脂質抽出物は、遺伝毒性ストレスによって引き起こされる8-オキソグアニン(8oxoG)、脱塩基部位(Abasic site)、エテノ塩基(ethenobase、Etheno)及びピリミジンのシクロブタン酸二量体(CPD-64)タイプの損傷部分の修復メカニズムの促進を可能とする。さらに、出願人が得た結果により、本発明のスケレトネマ藻類の脂質抽出物を海洋バクテリア抽出物と組み合わせて使用した場合に、8oxoG及びEthnoタイプの損傷部分の修復メカニズムに対する相加効果又は相乗効果がさらに示される。したがって、本発明のスケレトネマ藻類の脂質抽出物に対して、皮膚及び/又は唇の再生を助長する修復活性剤として化粧品界の関心が集まる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[発明の概要]
第1の態様において、本発明は、皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物に関する。
【0008】
好ましくは、本発明に基づいて使用する抽出物は、国際命名法INCIにおいて、スケレトネ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]と称する抽出物であることを特徴とする。
【0009】
別の態様によれば、本発明は、化粧品活性剤として、皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物を、生理学的に許容可能な培地(メディア)中に含む化粧品組成物に関する。
【0010】
好ましくは、本発明に基づいて使用する組成物は、さらに、抗酸化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤、香料、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化粧品補助剤をさらに含む。
【0011】
さらにより好ましくは、本発明に基づいて使用する組成物は、クリーム、オイルインウォーターもしくはウォーターインオイルのエマルジョン又はマルチプルエマルジョン、溶液、懸濁液、ジェル、乳液(ミルク)、ローション、又はセラムの形態である。
【0012】
好ましくは、本発明に基づいて使用する組成物は、藻類脂質抽出物がINCI名:スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]を有することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、スケレトネマ属の脂質抽出物は、本発明に基づいて使用する組成物中に、組成物の全重量に対し、活性物質(脂質抽出物)として0.00001重量%~1重量%、好ましくは0.00005重量%~0.5重量%、より好ましくは0.0001重量%~0.1重量%の範囲の含量で存在する。
【0014】
さらに好ましくは、本発明に基づいて使用する組成物は、化粧品活性剤として海洋バクテリア抽出物をさらに含む。
【0015】
さらにより好ましくは、海洋バクテリア抽出物は、INCI名:バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]を有する。
【0016】
さらに好ましくは、海洋バクテリア抽出物は、本発明に基づいて使用する組成物に、組成物の全重量に対し、活性物質の重量(抽出物の重量)として0.0001%~5%、好ましくは0.0005%~4%、より好ましくは0.001%~2%の範囲の含量で存在する。
【0017】
別の態様において、本発明は、生理学的に許容可能な培地において、化粧品活性剤として、スケレトネマ藻類の脂質抽出物を含む化粧品組成物、好ましくはINCI名:スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]を有するもの及び海洋バクテリア抽出物(好ましくはINCI名:バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]を有する抽出物[EXTRACT])を有する抽出物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、細胞の処理プランを示す。
図2図2は、SK0359線維芽細胞のH2O2細胞毒性の範囲を示す。
図3図3は、DNA修復メカニズムにおけるエルゴチオネインの効果を示す。
図4図4は、DNA修復メカニズムにおいて、活性剤であるoleocomplexe 1及びSirtalice(商標)を、単独で又は組み合わせて用いたときの効果を示す。
図5図5は、対照条件(エルゴチオネイン)の場合の比率[処理]/[未処理]を示す。
図6図6は、本発明の複数の活性剤Oleocomplexe 1及びSirtalice(商標)を、単独で又は組み合わせて用いたときの比率[処理]/[未処理]を示す。
図7図7は、対照条件(エルゴチオネイン)の場合の保護を示すスター型説明図である。
図8図8は、本発明の複数の活性剤Oleocomplexe 1及びSirtalice(商標)を、単独で用いたとき又は組み合わせたときの保護を示すスター型説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[本発明における使用方法]
驚くべきことに、本発明者等は、スケレトネマ藻類の脂質抽出物が、複数のDNA損傷の修復メカニズムにおいて、in vitroで有益な効果を示すことを実証したが、これは、皮膚及び/又は唇の修復、特に、顔及び/又は首の皮膚のための局所使用において有効性を示すことを示唆している。
【0020】
したがって、本発明の第1の目的は、皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物に関する。
【0021】
「皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化」とは、本発明の抽出物が、DNA損傷の修復メカニズム、特に塩基除去修復(BER)メカニズム及びヌクレオチド除去修復(NER)メカニズムの機能を促進できることを意味する。特に、本発明におけるスケレトネマ藻類の脂質抽出物は、遺伝毒性酸化ストレスによって生じ得る8oxoG、脱塩素部位、Etheno及びCPD-64タイプの損傷に対する修復メカニズムを促進し得る。
【0022】
「遺伝毒性ストレス」とは、紫外線、酸化ストレス等の物理的又は化学的に由来するものであってよいストレスであり、DNAに対して損傷を引き起こすストレスを意味する。
【0023】
「塩基除去修復」又は「BER」とは、DNAの1本の鎖のみに影響を与える損傷部を除去する切除修復を意味し、損傷部分の切断を可能とし、その後ギャップを埋めるために相補的鎖を使用する。塩基除去メカニズムは、酸化塩基又はウラシルの導入等の、DNAヘリックス構造全体を変形させない小さなDNA変化を修正する。除去修復は、酸素反応性種により引き起こされた塩基の損傷を修復する上で最も重要である。BERは、ショートパッチBER(単一ヌクレオチドを置換するメカニズム)及びロングパッチBER(2~13のヌクレオチドを置換するメカニズム)の2つのサブ経路に分類される。
【0024】
「ヌクレオチド除去修復」メカニズム又は「NER」とは、ダメージを含む塩基を有する短鎖のDNAオリゴヌクレオチドを除去することにより修復することを意味する。このメカニズムは、発がん性化合物によって引き起こされる大きな損傷及びUV暴露によって生じる隣接するピリミジン間の共有結合を識別する。NERは、さらに、ゲノムのあらゆる箇所で生じるグローバルゲノム修復(Global Genome repair、GG-NER)及び活性遺伝子の転写鎖の損傷を除去する転写共役修復(transcription-coupled repair、TCR)の2つのカテゴリに分類される。
【0025】
「8oxoG」タイプの損傷とは、8-オキソグアニン(8-ヒドロキシグアニン、8-oxo-Gua又はOH8Gua)の損傷を意味する。「8oxoG」タイプの損傷は、酸素反応種によるグアニンの組み換えにより生じる最も一般的なDNA損傷の1つであり、アデニンとのペアリング不良を引き起こし得、ゲノム内でGからT及びCからAnへの置換を引き起こし得る。この結合タイプは、酸化代謝に関連したイオン化放射により引き起こされることがある。ヒトにおいては、DNAグリコシラーゼ(OGG1)及びAPエンドヌクレアーゼ1(AP endonuclease 1、APE1)によって、即ち、塩基除去メカニズムによって、主に修復される。
【0026】
「脱塩基部位」タイプの損傷は、DNAの指定区画(location)である、プリン又はピリミジン塩基の損傷という影響を伴う損傷を意味する。脱塩基部位は、脱プリン化によって、又は、よりまれには脱ピリミジン化によって、自然発生的に生じ得る。これらは、照射又は酸化ストレスにより生じ得る。ヒトにおいて、この損傷はAPE1、即ち、塩基除去メカニズムによって主に修復される。
【0027】
「Etheno」又は「エテノ塩基」タイプの損傷は、DNA塩基のN原子と結合したアルデヒド生成物の反応により形成され、exoサイクル(exocycle)を形成する。形成され得る非常に多くのエテノ塩基には、1,N2-エテノグアニン(εG)、1,N6-エテノアデニン(εA)及び1,N4-エテノシトシン(εC)が含まれる。これらのDNA原変異誘起性損傷は、特にDNA塩基と脂質過酸化生成物との反応により生成される。ヒトにおいて、この損傷は、主にアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(AAG)とAPE1によって、即ち、塩基除去メカニズムによって、主に修復する。
【0028】
「CPD-64」タイプの損傷は、隣接するチミン又はシトシン残基間の光化学反応後にピリジン二量体を形成することにより生じるDNAの分子損傷を意味する。ヒトでは、主にヌクレオチド除去メカニズムにより修復される。
【0029】
本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物を適用する皮膚及び唇は、健康である、即ち、病理学的状態(病理を有する「不健康な」対象)に該当する障害又は疾患を有しない。
【0030】
(本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物)
好ましい一実施態様において、本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類(Skeletonema algae)の脂質抽出物は、スケレトネマ・コスタツム藻類(Skeletonema costatum algae)の脂質抽出物であり、特に登録番号FR9904165で登録され、番号FR2791568B1で公開されたフランス特許に記載される抽出物である。この特許において、スケレトネマ属藻類の脂質抽出物は、細胞間通信、特に皮膚のケラチノサイト、線維芽細胞及び含脂肪細胞の前駆体の連絡接合を介した細胞間通信を促進するために使用される。
【0031】
しかしながら、出願人の知る限り、DNA修復メカニズムに対する抽出物の効果については、これまで述べられていない。さらに、皮膚及び/又は唇、特に、顔及び/又は首の皮膚の修復及び/又は活性化のために使用することは記載されておらず、また、示唆されていない。
【0032】
スケレトネマ藻類、特にスケレトネマ・コスタツムは、Chlorophytes門(緑藻門)、Chrysophycophytes枝、Diatomophycytes綱、Centrales目の周知の単細胞藻類である。Diatomophyceae(珪藻)は、淡水、海水又は汽水において幅広く存在する。この綱の種の生活は、浮遊性である又は底生性に存在し得る。原形質はケイ酸塩の被殻に包まれている。スケレトネマ・コスタツム(Skeletonema costatum、SKC)は、多くの場合、海洋性のコスモポリタン種(汎用種)であり、多くの場合、沿岸水域での植物プランクトンの大増殖(phytoplanctonic bloom)に関連する。
【0033】
1つの特定の好ましい実施態様において、本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物は、以下に記載される抽出方法によって得られる。
【0034】
[本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物の抽出方法]
有利な一実施態様では、本発明に基づいて使用する脂質抽出物は、イソプロパノール、エタノール及びメタノールからなる群から選択されるアルコール溶媒を用いてスケレトネマ藻類を抽出することにより得られる抽出物であることを特徴とする。
【0035】
有利に、抽出は還流下で行われる。
【0036】
別の有利な別の方法において、藻類は、アルコール溶媒で抽出される前に凍結され、好ましくは、約-40℃~-20℃の温度において、好ましくは約1~7日間凍結される。
【0037】
別の有利な実施態様において、凍結藻類は、加熱されたアルコール溶媒に直接浸漬される。熱衝撃により(藻類細胞の骨格からの)シリカの沈降が促進される。
【0038】
別の有利な別の態様において、アルカリ化アルコールによる抽出において、上述の藻類の抽出物は以下の工程を連続して行うことにより得られる。
a)アルコール溶媒を、例えば水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いて、pH10~14の範囲、好ましくはpH13までアルカリ化する工程、
b)不溶物を水アルコール相から除去する工程、
c)蒸留水を水アルコール相に加える工程、
d)得られた溶液を、水-アルコール相と非混和性の非極性溶媒を用いて液-液抽出する工程、
e)非極性溶媒含有相を除去する工程、
f)非極性溶媒含有相の除去後に得られた水アルコール相を、pH1~3の間、好ましくは2となるように酸性化する工程、
g)酸性化後に得られた溶液を、水アルコール相と混じり合わない非極性溶媒を用いて液-液抽出する工程、
h)水アルコール相を除去する工程、
j)水アルコール相の除去後に得られた非極性溶媒含有相を蒸発させ、非極性溶媒を含まないオイルを得る工程。このオイルは本発明で得られ、且つ、使用される抽出物である。
アルカリ化後、酸性化したアルコールを用いることにより、化粧品組成物における使用に適した視覚的及び嗅覚的特性を備えた抽出物を得ることができる。
【0039】
別の有利な別の方法において、抽出物は超臨界CO抽出により得られる。
【0040】
さらに別の有利な実施態様において、他の抽出操作の前に、藻類を室温でアルコール溶媒に浸漬して柔軟化し、好ましくは約5分~80分の間、より好ましくは約20分~40分の間浸漬する。
【0041】
さらに別の有利な実施態様において、使用されるアルコール溶媒の量は、藻類の乾燥重量で表すと、藻類100gあたり、約0.1リットル~20リットルの溶媒、好ましくは約2リットル~10リットルの溶媒である。
【0042】
さらに別の有利な実施態様において、抽出は不活性雰囲気下、好ましくは窒素飽和雰囲気下で行われ得る。特に、これにより、活性分子が顕著に酸化分解することを回避する。
【0043】
この脂質抽出物の調整(コンディショニング)は、好ましくは、活性分子を保護するために窒素ガス等の不活性ガス下で行われる。
【0044】
本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物の製造方法の非限定的な例として、FR2791568B1で公開されたフランス特許の実施例II.1及びII.2が参照され得る。
【0045】
上記段落に記載したスケレトネマ藻類の脂質抽出物は、本発明の化粧品組成物を調製するために直接的に使用し得る。
【0046】
好ましい一実施態様において、本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物は、国際命名法INCIの下、スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]と称する。
【0047】
別の好ましい実施態様において、本発明に基づいて使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物は、商品名Oleocomplexe 1として、Givaudan activeが販売する製品である。
【0048】
Oleocomplexe 1は、国際命名法INCIにおいて、カプリル/カプリン/コハク酸トリグリセリド(及び)スケレトネマ・コスタツム抽出物(及び)トコフェロール(及び)レシチン(及び)パルミチン酸アスコルビル[CAPRYLIC/CAPRIC/SUCCINIC TRIGLYCERIDE (and) SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT (and) TOCOPHEROL (and) LECITHIN (and) ASCORBYL PALMITATE]と呼ばれる。
【0049】
このOleocomplexe 1製品は、5~10%の範囲の含有量のスケレトネマ藻類の抽出物に加えて、
・0.2%のトコフェロール、
・0.05%のレシチン、
・0.01%のパルミチン酸アスコルビル、及び
・製品の最終量を100%とするために十分な量のカプリル、カプリン及びコハク酸トリグリセリド(グリセロールとカプリル、カプリン及びコハク酸とのエステル)
を含む。
【0050】
(本発明に基づいて使用する海洋バクテリア抽出物)
いくつかの実施態様において、本発明は海洋バクテリア抽出物も使用する。
【0051】
実際に、出願人は、驚くべきことに、本発明のスケレトネマ藻類の脂質抽出物を海洋バクテリア抽出物と組み合わせて用いると、8oxoG及びEthenoタイプの損傷に対する修復メカニズムにおいて、相加効果、さらには相乗効果が認められることを実証できた。
【0052】
1つの特定の態様において、本発明に基づいて使用する海洋バクテリア抽出物は、INCI名:バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]を有する抽出物である。
【0053】
1つの有利な実施態様において、海洋バクテリア抽出物は、バチルス属のバクテリアの抽出物である。バチルス属のバクテリアは当業者によく知られたものであり、Bacillaceae属、Bacillales目、Bacillis綱、Firmicutes門に属するグラム陽性バクテリア(gramme-positive bacteria)の1種を形成する。
【0054】
本発明において、海洋バクテリアは、レユニオン(Reunion)島に隣接する深海に由来する。これらは、深さ約3400m、温度約1.5℃、酸素レベル約3.8μmol/L-1で収集された。
【0055】
別の好ましい実施態様において、本発明に基づいて使用する海洋バクテリア抽出物は、商品名Sirtalice(商標)でLIPOTRUEにより販売されている製品である。
【0056】
Sirtalice(商標)製品は、国際命名法INCIの下、グリセリン(及び)水(及び)バチルス発酵物[GLYCERIN (and) WATER (and) BACILLUS FERMENT]と呼ばれる。
【0057】
Sirtalice(商標)製品は、海洋バクテリア抽出物(0.43%~0.58%の範囲の含有量)に加えて、
・17%~22%の水、及び
・製品の最終量を100%とするために十分な量のグリセリン
を含む。
本発明に基づく使用のために、化粧品組成物は、化粧品活性剤として、少なくとも1つのスケレトネマ藻類の脂質抽出物と、場合により用いる海洋バクテリア抽出物とを含む。
本発明において、スケレトネマ藻類の脂質抽出物は、所望の効果を得るのに有効な量で化粧品組成物に用いられる。
【0058】
「有効な量」とは、本発明による有益な効果、即ち、皮膚及び/又は唇(特に首及び/又は首の皮膚)の回復を促進及び/又は活性化する有益な効果を得るために必要なスケレトネマ藻類の脂質抽出物の最小量を意味する。
【0059】
本発明の使用におけるケラチン物質、特に皮膚及び/又は唇のケアを行う化粧品組成物は、生理学的に許容可能な培地中に、上述のスケレトネマ藻類の脂質抽出物を有する。
【0060】
したがって、本発明の別の目的は、化粧品活性剤として、皮膚及び/又は唇の修復の促進及び/又は活性化のために局所使用するスケレトネマ藻類の脂質抽出物を、生理学的に許容可能な培地中に含む化粧品組成物を提供することにある。
【0061】
好ましい一実施態様において、藻類スケレトネマの脂質抽出物は、INCI名:スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]を有する。
【0062】
「化粧品組成物」とは、ヒトの身体の表層部分、より具体的には、ケラチン物質、特にヒトの皮膚及び/又は唇と接触し得る化粧品用の、即ち美的目的のための任意の組成物を意味する。
【0063】
「生理学的に許容可能な培地」とは、毒性、不適合性、不安定性及び/又はアレルギー反応のリスクがなく、ケラチン物質と接触でき、局所使用に適した任意の添加剤(又は賦形剤)を意味する。
【0064】
本発明における「ケラチン物質」とは、皮膚及び/又はその付属器官、より具体的にはヒトの皮膚及び/又は唇を意味する。特に、顔及び/又は首及び/又は身体の皮膚、及び唇であり得る。
【0065】
本発明のケラチン物質は、特に、病理学的状態(病理を有する「不健康」被験者)に該当するいかなるトラブル又は障害を有していない、健康なケラチン物質(「健康な」対象)である。健康な皮膚及び/又は唇又は健康な皮膚及び/又は唇については、明細書の残りの部分において公平に(indifferemment)説明する。
【0066】
1つの有利な別の実施態様によれば、上記スケレトネマ藻類の脂質抽出物は、本発明に基づいて使用する化粧品組成物中に、最終組成物の全重量に対して、活性物質(上記スケレトネマ藻類の脂質抽出物)の重量として0.00001%~1%、好ましくは0.00005%~0.5%、より好ましくは0.0001%~0.1%の範囲の含有量で存在する。
【0067】
1つの特定の態様によれば、スケレトネマ藻類の脂質抽出物は、名称Oleocomplexe 1として販売される製品形態で化粧品組成物中に加える。
【0068】
この実施態様によれば、Oleocomplexe 1として販売される製品は、本発明の化粧品組成物に、最終組成物の全重量に対して、原材料の重量として0.0001%~1%、好ましくは0.0005%~0.5%、より好ましくは0.001%~0.1%の範囲で含まれる。
【0069】
本発明の組成物の使用において有利に用いられる追加成分は、組成物の全重量に対して、(原材料)重量として0.0001%~10%、好ましくは0.001%~5%の範囲で含まれ得る。
【0070】
生理学的に許容可能な培地は、一般に、組成物の全重量に対して、1~99重量%含まれる。
【0071】
本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、ケラチン物質、特に皮膚及び/又は唇、特に顔及び/又は首の皮膚をケアするための組成物である。
【0072】
本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、一般に、スケレトネマ藻類の脂質抽出物及び生理学的に許容可能な培地に加えて、局所用組成物(例えば、クリーム、オイルインウォーターもしくはウォーターインオイルエマルジョン又はマルチプルエマルジョン、溶液、懸濁液、ジェル、乳液、ローション、セラム、バーム、スティック又はパウダーの形態)を得るために、当業者にとって既知の許容可能な1つ以上の化粧品添加剤を含む。
【0073】
1つの特定の態様において、本発明に基づいて使用する組成物は、クリーム、オイルインウォーターもしくはウォーターインオイルエマルジョン又はマルチプルエマルジョン、溶液、懸濁液、ジェル、乳液、ローション又はセラムの形態である。
【0074】
好ましい一実施態様において、本発明に基づいて使用する組成物は、クリーム又はセラムの形態にある。
【0075】
本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、スケレトネマ藻類の脂質抽出物と、抗酸化剤、香料、ビタミン、増粘剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤、リフティング剤、引き締め剤、膨張剤(plumping agent)、緩和剤、アンチポリューション剤(anti-pollution agent)、美白剤又は脱色素剤(depigmenting agent)、充填剤、真珠質(nacres)及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの化粧品補助剤とを含む、皮膚及び/又は唇、特に顔及び/又は首の皮膚への局所的使用に適した任意の医薬品形態であり得る。
【0076】
また、本発明の特定の一態様において、本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、抗酸化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤、香料及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化粧品補助剤をさらに含み得る。
【0077】
組成物の性質に応じて、1以上の化粧品として許容される添加剤は、エマルジョン、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤及びこれらの混合物から選択され得る。
【0078】
特定の例として、本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、ゲル化剤、酸化防止剤、防腐剤及びこれらの混合物を含み得る。
【0079】
本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、脂肪族相又はオイル(固体脂肪族物質)相をさらに含み得る。
【0080】
用語「オイル相」は、オイル又はオイルの混合物を意味し、これらは相互に混和性であってもよく、あるいは、混和性でなくてもよい。本発明の目的のため、「オイル」は、水に溶解せず、25℃および大気圧において液体である脂質成分を意味する。これらのオイルは、揮発性又は不揮発性であってよく、植物性、鉱物性又は合成されたものであってよい。
【0081】
本発明のオイル相は、天然オイル、炭化水素系オイル、シリコーン系オイル及びこれらの混合物を含み得る。
【0082】
本発明の化粧品組成物の脂肪相又はオイル相の含有量は、一般に、組成物の全重量に対して、0.2重量%~45重量%、好ましくは0.5重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~25重量%である。
【0083】
特定の一実施形態において、本発明に基づいて使用する化粧品組成物は、少なくとも1つの第2の化粧品活性剤をさらに含む。
【0084】
好ましくは、第2の化粧品活性剤は、海洋バクテリア抽出物であり、さらにより好ましくは、INCI名:バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]を有する海洋バクテリア抽出物である。
【0085】
好ましくは、海洋バクテリア抽出物は、所望の効果を達成するための有効な量で本発明の化粧品組成物にて使用され、特に、皮膚及び/又は唇(特に顔及び/又は首の皮膚)の修復を促進及び/又は活性化する有益な効果に関して相乗効果を得るための有効な量を使用し得る。
【0086】
1つの有利な別の実施形態において、海洋バクテリア抽出物は、本発明に基づいて使用する化粧品組成物に、組成物の総重量に対して、活性物質の重量(上述した海洋バクテリア抽出物の重量)として、0.0001%~5%、好ましくは0.0005%~4%、より好ましくは0,001%~2%の範囲の含有量で存在する。
【0087】
特定の一態様において、海洋バクテリア抽出物は、名称Sirtalice(商標)として販売される製品形態で化粧品組成物に提供される。
【0088】
この別の実施形態によれば、名称Sirtalice(商標)で販売される製品は、本発明に基づいて使用する化粧品組成物中に、最終組成物の全重量に対して、原材料の重量として0.001%~10%、好ましくは0.01%~5%、より好ましくは0.1%~2.5%で存在し得る。
【0089】
本発明の他の目的は、化粧品活性剤として、生理学的に許容可能な培地中に、スケレトネマ藻類の脂質抽出物、好ましくはINCI名:スケレトネマ・コスタツム抽出物[SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT]の脂質抽出物の抽出物及び海洋バクテリア抽出物を有する抽出物(好ましくはINCI名:バチルス発酵物[BACILLUS FERMENT]の抽出物)を含む化粧品組成物を対象とする。
【0090】
有利には化粧品組成物は、化粧品活性剤として、生理学的に許容可能な培地中に、INCI名:カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド(及び)スケレトネマ・コスタツム抽出物(及び)トコフェロール(及び)レシチン(及び)パルミチン酸アスコルビル[CAPRYLIC/CAPRIC/SUCCINIC TRIGLYCERIDE (and) SKELETONEMA COSTATUM EXTRACT (and) TOCOPHEROL (and) LECITHIN (and) ASCORBYL PALMITATE]を有する抽出物と、INCI名:グリセリン(及び)水(及び)バチルス発酵[GLYCERIN (and) WATER (and) BACILLUS FERMENT]を有する抽出物とを含む。
【0091】
有利には、化粧品組成物は、化粧品活性剤として、生理学的に許容可能な培地中に、Oleocomplexe 1として販売される製品及びSirtalice(商標)として販売される製品を含む。
【0092】
本発明を、以下の非限定的な実施例において説明する。百分率(%)は、別段の断りがない限り、組成物の全重量に対する原料(Oleocomplexe 1として販売される製品及びSirtalice(商標)として販売される製品)の重量で表される。
【実施例
【0093】
[実施例1:本発明の活性剤の保護効果の検討]
(検討の目的)
この検討において、出願人は、正常なヒト線維芽細胞のDNA修復活性に関する遺伝毒性ストレス(過酸化水素、H)の影響に対する本発明の活性剤の保護効果(単独で用いた場合、又は組み合わせて用いた場合)について検討した。より具体的には、この検討では、名称「Oleocomplexe 1」及び「Sirtalice(商標)」として販売される製品の保護効果を対象とする。
【0094】
(検討手順)
フェーズ1において、30歳女性の大腿部サンプルに由来する正常なヒト線維芽細胞(NHF-SK0359)を培養した。24時間培養後における、H処理に関する細胞毒性(IC20)の用量をMTTテストにより定めた。
【0095】
本検討のフェーズ2において、Hストレスの存在下におけるDNA修復活性に対する活性剤の影響(単独で又は組み合わせて用いたときの影響)を測定した(図1)。
【0096】
(フェーズ1)
毒性の測定-実験条件の最適化
・手順
IC20用量はMTT細胞生存率試験を用いて決定される。この用量は、細胞死亡率20%となる遺伝毒性物(ここでは、H)の濃度に相当する。
【0097】
NHFを96-ウェルプレートにシード(播種)し、2日間標準条件下で培養した。その後、Hを0~200μMの濃度で培地に加えた。細胞死亡率は、24時間後に評価した。
【0098】
・結果
SK0359線維芽細胞において、24時間のH処理によって引き起こされる細胞毒性は濃度5μM以上において観察される。Hの濃度200μMで得られた全死亡率(図2)。
【0099】
活性剤の存在下における処理で使用されるH濃度(IC20に相当する)は、40μMである。
【0100】
(フェーズ2:DNA修復活性下の活性剤の影響の検討-Hストレス)
・ExSy-SPOTテストの原理
ExSy-SPOTテストは、塩基除去修復(BER)、ヌクレオチド除去修復(NER)、及び鎖間架橋修復(Interstrand CrossLink Repair、ICLR)システムを特徴付けるために用いられる。
【0101】
細胞抽出物は、特定のバッファーであるATP及び4つのdNTP(うち1つは、後続する検出用の標識である)の存在下、特定のDNA損傷を有するプラスミドによって機能化されたチップ上に設けられた。
【0102】
抽出物に含まれるDNA修復酵素は、損傷(又は損傷周辺のDNA断片)を切断し、DNA再合成中に蛍光ヌクレオチドを取り込む。
【0103】
蛍光シグナルは、スキャナーを用いることにより定量化される。これは、各損傷に対する各抽出物の除去/再合成力に比例する。
【0104】
検討した損傷について、表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
・実験条件の定義
【表2】
【0107】
・結果
及びエルゴチオネインの効果(図3
培地に対して、40μM Hを処理することにより、修復メカニズムの有効性は全体として約50%阻害された。
【0108】
エルゴチオネインの存在下においては、Hストレスのみで得られる蛍光と比較して、蛍光シグナルの増加が観察された。
【0109】
培地にエルゴチオネインを加えると、脱塩基部位及びエテノ損傷の修復における基本的な蛍光レベルが修復した(図3)。
【0110】
これは、この化合物は、DNA修復システムを保護するので、Hストレスから細胞を保護すると結論付けることができる。本検討において、エルゴチオネインは、ポジティブコントロール(ctrl+)として用いられ得る。
【0111】
・活性剤の検討
様々な活性剤を単独で又は組み合わせて使用した処理の生の結果を、図4に示す。効果をより良く視覚化するために、先に得た結果を比率で示す(図5及び図6)。ここで、赤線は未処理(untreated、NT)NHFにおけるDNA修復活性のベースラインである。
【0112】
上述したように、培地にエルゴチオネインを加えると、脱塩基部位及びエテノ損傷の回復のための基礎蛍光レベルが修復する(図5)。
【0113】
本発明に基づいて使用する活性剤(図6)に関して、これらはDNA修復能力を調整できると考えられる。特に、以下の条件の場合、特に顕著な効果が観察される。
・Oleocomplexe 1:8oxoG、脱塩基部位及びCPD-64損傷
・Sirtalice(商標):脱塩基部位損傷
・Oleocomplexe 1+Sirtalice(商標):8oxoG、脱塩基部位、エテノ及びCPD-64損傷
図6に関して観察される値を以下に示す。
【0114】
様々な活性剤を単独で又は組み合わせて使用した処理で得られた生の比率
【表3】
【0115】
相加効果又は相乗効果の測定(未処理(NT)コントロール(H2O2のみ)と比較して観察される増加分)
【表4】
【0116】
驚くべきことに、2つの活性剤を組み合わせることにより、8oxoG及びエテノタイプの損傷修復に対して、相加効果、さらには相乗効果が生じる。
【0117】
・活性剤によって提供される保護に関する結論
活性剤によって提供される保護は、Hにより生成される酸化ストレスに対して比の値に基づいて評価され、式:
100-[(1-活性剤)/(1-H)×100]
から求められる保護百分率により判断される。
図7及び図8については「スター型」表示を用いた。
【0118】
結果をこのように別の表示にすると、全ての修復活性化剤におけるエルゴチオネインコントロールの保護効果が、修復経路、従って想定される損傷に応じて40~100%の範囲にあることを視覚化できる(図7参照)。
【0119】
本発明の活性剤に関しては、実験した濃度において単独で又は組み合わせて用いた場合に、これらの活性剤の全体としての保護の存在が判ることは、非常に興味深い(グリコール修復を除く)。
【0120】
単独で用いた場合、2つの活性剤の場合の保護効果が同じであるEtheno損傷以外において、Oleocomplexe 1は、Sirtalice(商標)よりも優れた保護効果を示す。
【0121】
2つの活性剤を組み合わせて用いると、8oxoG、CPD-64及びEtheno損傷の修復メカニズムの保護がさらに促進される。これは、非塩基部位の場合には当てはまらない。
【0122】
驚くべきことに、相加効果は8oxoGタイプの損傷修復において観察され、Ethenoタイプの損傷修復において相乗効果が得られる。
【0123】
全体として、上記結果は、DNA損傷修復メカニズムを促進し、従って、皮膚及び/又は唇の回復を促進及び/又は修復するために、スケレトネマ藻類の脂質抽出物を単独で、又は海洋バクテリア抽出物と組み合わせて用いることの利点を裏付けるものである。
【0124】
[実施例2:化粧品の配合]
セラムとしての化粧品処方
【表5】
【0125】
顔及び/又は首の皮膚及び目元に適用した場合、本発明に基づいて使用する活性剤Oleocomplexe 1及びSirtalice(商標)を含むセラムは皮膚の修復を促進する。
【0126】
クリーム状の化粧品製法
【表6】
【0127】
顔の皮膚に適用した場合、本発明に基づいて用いる活性剤Oleocomplexe 1及びSirtalice(商標)を含むクリームは、皮膚の修復を促進する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】