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特表2024-525957ヘスペレチン含有組成物およびその血糖降下における相乗的応用
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  • 特表-ヘスペレチン含有組成物およびその血糖降下における相乗的応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】ヘスペレチン含有組成物およびその血糖降下における相乗的応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20240705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504013
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2022111358
(87)【国際公開番号】W WO2023020344
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110960281.5
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520468793
【氏名又は名称】中国農業科学院鄭州果樹研究所
【氏名又は名称原語表記】ZHENGZHOU FRUIT RESEARCH INSTITUTE CHINESE ACADEMY OF AGRICULTURAL SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.28 Gangwan Road,Anxu Village,Nancao Township,Guancheng District Zhengzhou,Henan 450009 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】張強
(72)【発明者】
【氏名】焦中高
(72)【発明者】
【氏名】陳大磊
(72)【発明者】
【氏名】劉杰超
(72)【発明者】
【氏名】楊文博
(72)【発明者】
【氏名】張春嶺
(72)【発明者】
【氏名】劉慧
(72)【発明者】
【氏名】呂真真
(72)【発明者】
【氏名】潘俊坤
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC20
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、ヘスペレチン含有組成物およびその血糖降下における相乗的応用を開示し、天然活性化合物の技術分野に属する。本発明の組成物は、ヘスペレチンおよび化合物Xを含み、前記化合物Xは、ガランギンまたはホルモノネチンであり、ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20である。本発明の組成物は、前記フラボノイド化合物を単独で使用するよりも優れたα-グルコシダーゼ阻害用の有意な相乗効果を有し、かつ使用する薬剤の投与量を減らし、薬剤耐性の発生を抑えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘスペレチンおよび化合物Xを含み、前記化合物Xは、ガランギンまたはホルモノネチンであり、
ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20であることを特徴とする、ヘスペレチン含有組成物。
【請求項2】
α-グルコシダーゼ阻害用製剤の調製における、請求項1に記載の組成物の応用。
【請求項3】
その有効成分は、ヘスペレチンとガランギンまたはヘスペレチンとホルモノネチンを含み、ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20であることを特徴とする、α-グルコシダーゼ阻害剤。
【請求項4】
血糖降下用薬剤の調製における、請求項1に記載の組成物の応用。
【請求項5】
前記血糖降下作用は、過剰な食後血糖を制御する目的でα-グルコシダーゼの活性を阻害し、炭水化物の消化および吸収を阻害することにより達成されることを特徴とする、請求項4に記載の応用。
【請求項6】
その有効成分は、ヘスペレチンとガランギンまたはヘスペレチンとホルモノネチンを含み、ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20であることを特徴とする、血糖降下用薬剤。
【請求項7】
前記薬剤が、薬学的に許容される担体、溶剤、希釈剤、賦形剤または他の媒体を含むことを特徴とする、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
前記薬剤の剤形が、粉末、顆粒、カプセル、注射剤、経口液剤または錠剤から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然活性化合物の技術分野に属し、具体的には、ヘスペレチン含有組成物およびその血糖降下における相乗的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、持続的な高血糖によって診断される世界的な慢性疾患であり、I型糖尿病、II型糖尿病、妊娠糖尿病、その他の特殊な糖尿病が含まれ、II型糖尿病は、非インスリン依存性糖尿病としても知られ、糖尿病の95%以上を占める。α-グルコシダーゼは、基質の非還元末端からα-グルコースの遊離を触媒する炭水化物ヒドロラーゼである。α-グルコシダーゼは、大多数の微生物、植物および動物に存在し、デンプンからグルコースへの代謝経路において不可欠な酵素である。α-グルコシダーゼの活性が体内で高すぎると、体内の血糖が高くなり、糖尿病を引き起こす可能性がある。現在、糖尿病の治療には、インスリン、スルホニル尿素系薬剤、ビグアニド系薬剤、チアゾリジンジオン系薬剤、α-グルコシダーゼ阻害剤などが一般的に臨床使用されているが、これらの長期服用は、低血糖、腹痛、嘔吐、下痢などの副作用を引き起こすことがある。α-グルコシダーゼ阻害剤は、α-グルコシダーゼの活性を競合的に阻害することによって炭水化物の吸収を遅延させ、それによって食後および空腹時の血糖値を低下させる。天然由来のα-グルコシダーゼ阻害剤は、環境に優しく、安全で、有害な副作用がほとんどないため、医学、薬学、機能性食品の分野で注目の研究テーマとなっている。国内外の多くの研究学者は、植物資源からのα-グルコシダーゼ阻害剤の抽出、精製、単離、同定に専念し、糖尿病とその合併症の治療のための、新規で効率的かつ無毒な薬剤の開発を目材している。例えば、フラボノイド、フェノール酸やタンニン酸などのポリフェノール化合物は、α-グルコシダーゼ活性を阻害する植物由来の一般的な成分である。
【0003】
薬剤併用とは、治療目的で2種類以上の薬剤を同時または逐次的に応用することであり、主に薬剤治療を増強するか、または薬剤の有害な副作用を軽減することを目的とするが、時には逆の結果をもたらすこともある。したがって、薬剤の合理的な併用療法は、治療効果の向上および(または)副作用の軽減を基本原則とするべきである。相乗効果を得るために両薬剤を併用する場合、両薬剤の治療効果が単剤投与の場合よりも著しく向上する可能性がある。現在、α-グルコシダーゼ阻害剤に関する研究のほとんどは単一化合物に焦点を当てたものであり、それらは、継続使用による一定の副作用や耐性を伴うが、活性分子間の相乗効果についてはあまり報告されていない。したがって、α-グルコシダーゼを阻害し、血糖降下作用を増強するフラボノイド系化合物の併用に関する研究は、ヒトの健康増進のために重要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、単一の活性成分による血糖降下作用が限られ、薬剤耐性が生じやすいという従来技術の課題を解決するために、ヘスペレチン含有組成物およびその血糖降下における相乗的応用を提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段によって実現される。
【0006】
ヘスペレチン含有組成物であって、ヘスペレチンおよび化合物Xを含み、前記化合物Xは、ガランギンまたはホルモノネチンであり、
ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20である。
【0007】
α-グルコシダーゼ阻害用製剤の調製における上記組成物の応用。
【0008】
α-グルコシダーゼ阻害剤であって、その有効成分は、ヘスペレチンとガランギンまたはヘスペレチンとホルモノネチンを含み、ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20である。
【0009】
血糖降下用薬剤の調製における上記組成物の応用であって、前記血糖降下作用は、過剰な食後血糖を制御する目的でα-グルコシダーゼの活性を阻害し、炭水化物の消化および吸収を阻害することによって達成される。
【0010】
血糖降下用薬剤であって、その有効成分は、ヘスペレチンとガランギンまたはヘスペレチンとホルモノネチンを含み、ここで、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20である。
【0011】
限定された質量濃度比の範囲内で、ヘスペレチンとガランギン、ヘスペレチンとホルモノネチンの相乗的な技術効果が達成される。
【0012】
本発明に係る薬剤は、薬学的に許容される担体、溶剤、希釈剤、賦形剤、およびその他の媒体混合物を含み、必要に応じて、粉末、顆粒、カプセル、注射剤、経口液剤または錠剤として調製することができる。
【0013】
本発明の技術的解決手段の利点は、以下の通りである。
【0014】
本発明に係るヘスペレチンとガランギン、ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物は、前記フラボノイド化合物を単独で使用するよりも優れたα-グルコシダーゼ阻害の有意な相乗効果を有し、かつ使用する薬剤の投与量を減らし、薬剤耐性の発生を抑えることができる。ホルモノネチンまたはガランギンを、同様の化学構造を持つゲニステインに引き換えると、相乗効果はなくなる。
【0015】
Chou-Talalay法を用いたα-グルコシダーゼのin vitro阻害試験により、本発明のヘスペレチンとガランギン、ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物は、それぞれ30:100および30:20の質量比でα-グルコシダーゼに対して有意な相乗効果を有し、50% (GI50)、75% (GI75)および90% (GI90)の阻害率でのCI値が1.0未満であり、かつ薬剤間の相乗効果の強さは、一般に阻害率が低い場合よりも高い場合の方が高いことが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1および実施例4のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図2】ヘスペレチンとガランギン(30:100)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図3】ヘスペレチンとガランギン(30:100)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すFa-CIトレンドグラフである。
図4】ヘスペレチンとホルモノネチン(30:20)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図5】ヘスペレチンとホルモノネチン(30:20)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すFa-CIトレンドグラフである。
図6】実施例2および実施例5のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図7】ヘスペレチンとガランギン(30:150)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図8】ヘスペレチンとホルモノネチン(30:30)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図9】実施例3および実施例6のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図10】ヘスペレチンとガランギン(50:100)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図11】ヘスペレチンとホルモノネチン(50:20)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図12】比較例1のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図13】ヘスペレチンとゲニステイン(30:2)の組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用される用語は、特に指定のない限り、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0018】
ヘスペレチン(Hesperetin)は、分子式がC1614であり、分子量は302.28、CAS登録番号は520-33-2、構造式は、
ガランギン(Galangin)は、分子式がC1510であり、分子量は270.24、CAS登録番号は548-83-4、構造式は、
ホルモノネチン(Formononetin)は、分子式がC1612であり、分子量は268.26、CAS登録番号は485-72-3、構造式は、
α-グルコシダーゼ(出芽酵母から、Sigma)、
4-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシドド(pNPG、TOKYO Chemica Industry Co., LTD)、
アカルボース(Acarbose、TOKYO Chemica Industry Co., LTD)、
ヘスペレチン、ガランギン、ホルモノネチン(Solarbio北京)、
Millipore Simplicity浄水システム(Millipore、法国)、
リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.8、0.1mol L-1)、
マイクロプレートリーダーTECAN infinite M200 PRO(Teacan Group Ltd., Swizerland)。
【0019】
以下、具体的な実施例と併せて、データを参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を例示することのみを意図し、本発明の範囲を何らかの形態で限定するものではない。
【0020】
(実施例1)
ヘスペレチンとガランギンの組成物であって、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:100であり、具体的には、組成物におけるヘスペレチンとガランギンの濃度は、それぞれ30μg/mLと100μg/mLである。
【0021】
(実施例2)
ヘスペレチンとガランギンの組成物であって、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は30:150であり、具体的には、組成物におけるヘスペレチンとガランギンの濃度は、それぞれ30μg/mLと150μg/mLである。
【0022】
(実施例3)
ヘスペレチンとガランギンの組成物であって、ヘスペレチンとガランギンとの質量比は50:100であり、具体的には、組成物におけるヘスペレチンとガランギンの濃度は、それぞれ50μg/mLと100μg/mLである。
【0023】
(実施例4)
ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物であって、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:20であり、具体的には、組成物におけるヘスペレチンとホルモノネチンの濃度は、それぞれ30μg/mLと20μg/mLである。
【0024】
(実施例5)
ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物であって、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は30:30であり、具体的には、組成物におけるヘスペレチンとホルモノネチンの濃度は、それぞれ30μg/mLと30μg/mLである。
【0025】
(実施例6)
ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物であって、ヘスペレチンとホルモノネチンとの質量比は50:20であり、具体的には、組成物におけるヘスペレチンとホルモノネチンの濃度は、それぞれ50μg/mLと20μg/mLである。
【0026】
ヘスペレチン組成物の血糖降下作用の試験
実験方法:
0.25 U/mLのα-グルコシダーゼ溶液と5mmol/mLの基質である4‐ニトロフェニル-α-D‐ガラクトピラノシド(pNPG)溶液を0.1mol L-1のpH6.8のPBS緩衝液で調合した。
【0027】
各ウェルに100μLの試料溶液を加え、続いて40μLのα-グルコシダーゼ(0.25 U/mL)を加え、37℃で15分間反応させた後、5mmol/mLの基質である4‐ニトロフェニル-α-D‐ガラクトピラノシド(pNPG)を60μL加え、37℃で15分間反応させた後、マイクロプレートリーダーを用いて405nmの波長で測定した。
【0028】
被験試料溶液は、実施例1~6に記載のヘスペレチン組成物であり、まず、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いて、ヘスペレチン、ガランギン、ホルモノネチンをそれぞれ10mg/mLの母液に調合し、次いで、PBS緩衝液を用いて、特定濃度のヘスペレチン、ガランギン、ホルモノネチンおよび組成物の試料溶液を調合した。
【0029】
陽性対照はアカルボース(350μg/mL)で、ブランク群は試料と酵素を含まないもの、試料ブランク群は酵素を含まないものである。
【0030】
計算式:阻害率=[1-(OD試料-OD試料ブランク)/(OD陰性対照-ODブランク)]×100%
CompuSynというソフトウェアを使ってCI値を算出し、薬剤間の相乗効果を評価する。
【0031】
併用指数(Combination Index、CI)を使用して薬剤間の相乗効果の強さを表し、CI<1は薬剤間の相乗効果を示し、薬剤併用により個々の薬剤の有効性を高めることができ、CI値が小さいほど相乗効果が強くなり、CI=1は薬剤間の相加効果を示し、薬剤併用により個々の薬剤の有効性が直線的に重ね合わされ、CI>1は薬剤間の拮抗効果を示し、薬剤併用によりそれぞれの薬剤の有効性が低下する。
【0032】
1、実施例1および実施例4のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例1および実施例4のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図1に示す:ヘスペレチン30μg/mL、ガランギン100μg/mL、ホルモノネチン20μg/mL、アカルボース350μg/mLの対応する質量濃度での阻害率は、それぞれ45.2±3.2%、56.32±4.5%、60.07±5.3%、46.25±3.5%であり、ヘスペレチンとガランギンの組成物(30+100μg/mL)による阻害率は92.8±6.4%であり、ヘスペレチンとホルモノネチン(30+20μg/mL)による阻害率は77.31±4.5%であり、その結果、組成物の併用によりα-グルコシダーゼへの阻害活性が有意に増加することが示された。
【0033】
質量比を30:100としたヘスペレチンとガランギンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとガランギンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):30+100、15+50、7.5+25、3.75+12.5であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、ガランギンの濃度勾配は(μg/mL):100、50、25、12.5であり、結果を図2に示すように、質量比を30:100としたヘスペレチンとガランギンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を増加させた。質量比を30:100としたヘスペレチンとガランギンの組成物のFa-CIトレンドグラフを図3に示し、図3から分かるように、ヘスペレチンとガランギンは共にCI値が1.0以下で、相乗効果を示した。
【0034】
質量比を30:20としたヘスペレチンとホルモノネチンの組成が、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):30+20、15+10、7.5+5、3.75+2.5であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、ホルモノネチンの濃度勾配は(μg/mL):20、10、5、2.5であり、その結果を図4に示すように、質量比を30:20としたヘスペレチンとホルモノネチンの組成物も、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を増加させた。質量比を30:20としたヘスペレチンとホルモノネチンの組成物のFa-CIトレンドグラフを図5に示し、図5から分かるように、ヘスペレチンとホルモノネチンは共にCI値が1.0以下で、相乗効果を示した。
【0035】
実施例1および実施例4のヘスペレチン組成物の併用係数(CI)を表1に示す。
【0036】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0037】
表1の結果から分かるように、ヘスペレチンとガランギン(30:100)およびヘスペレチンとホルモノネチン(30:20)の併用時の併用係数CIは共に1未満であり、相乗効果を示し、その中で、ヘスペレチンとガランギン組成物の併用係数は、GI75とGI90の両方で0.60未満であり、強い相乗効果を示し、併用指数の平均値(CIavg)は0.48であり、ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物の併用係数は、GI75とGI90の両方で0.6未満であり、強い相乗効果を示し、併用指数の平均値(CIavg)は0.56であった。
【0038】
2、実施例2および実施例5のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例2および実施例5のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図6に示す:ヘスペレチン30μg/mL、ガランギン150μg/mL、ホルモノネチン30μg/mL、アカルボース350μg/mLの対応する質量濃度での阻害率は、それぞれ45.2±3.2%、84.4±7.5%、65.2±4.3%、46.25±3.5%であり、ヘスペレチンとガランギンの組成物(30+150μg/mL)による阻害率は85.7±6.7%であり、ヘスペレチンとホルモノネチン(30+30μg/mL)による阻害率は71.6±3.5%であり、その結果、組成物を併用してもα-グルコシダーゼに対する阻害活性が有意に増加しないことが示された。
【0039】
質量比を30:150としたヘスペレチンとガランギンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとガランギンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):30+150、15+75、7.5+37.5、3.75+18.75であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、ガランギンの濃度勾配は(μg/mL):150、75、37.5、18.75であり、その結果を図7に示す。
【0040】
質量比を30:30としたヘスペレチンとホルモノネチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):30+30、15+15、7.5+7.5、3.75+3.75であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、ホルモノネチンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、その結果を図8に示す。
【0041】
実施例2および実施例5のヘスペレチン組成物の併用係数(CI)を表2に示す。
【0042】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0043】
表2の結果から分かるように、ヘスペレチンとガランギン(30:150)およびヘスペレチンとホルモノネチン(30:30)の併用時の併用係数CIは共に1より大きく、拮抗効果を示した。
【0044】
3、実施例3および実施例6のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例3および実施例6のヘスペレチン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図9に示す:ヘスペレチン50μg/mL、ガランギン100μg/mL、ホルモノネチン20μg/mL、アカルボース350μg/mLの対応する質量濃度での阻害率は、それぞれ63.4±4.2%、56.32±4.5%、60.07±5.3%、46.25±3.5%であり、ヘスペレチンとガランギンの組成物(50+100μg/mL)による阻害率は75.5±5.3%であり、ヘスペレチンとホルモノネチン(50+20μg/mL)による阻害率は71.31±3.5%であり、その結果、組成物を併用してもα-グルコシダーゼに対する阻害活性が有意に増加しないことが示された。
【0045】
質量比を50:100としたヘスペレチンとガランギンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとガランギンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):50+100、25+50、12.5+25、6.25+12.5であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):50、25、12.5、6.25であり、ガランギンの濃度勾配は(μg/mL):100、50、25、12.5であり、その結果を図10に示す。
【0046】
質量比を50:20としたヘスペレチンとホルモノネチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとホルモノネチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):50+20、25+10、12.5+5、6.25+2.5であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):50、25、12.5、6.25であり、ホルモノネチンの濃度勾配は(μg/mL):20、10、5、2.5であり、その結果を図11に示す。
【0047】
実施例3および実施例6のヘスペレチン組成物の併用係数(CI)を表3に示す。
【0048】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0049】
表3の結果から分かるように、ヘスペレチンとガランギン(50:100)およびヘスペレチンとホルモノネチン(50:20)の併用時の併用係数CIは共に1より大きく、拮抗効果を示した。
【0050】
(比較例1)
ゲニステイン(Genistein)は、ホルモノネチンと同様の構造を有し、分子式はC1510、分子量は270.24、CAS登録番号は446-72-0、構造式は、
ヘスペレチンとゲニステインの組成物であって、ヘスペレチンとゲニステインの質量比は30:2であり、具体的には、ヘスペレチンとゲニステインの濃度は、それぞれ30μg/mLと2μg/mLである。
【0051】
比較例1のヘスペレチンとゲニステインの組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図12に示す:ヘスペレチン30μg/mL、ゲニステイン2μg/mL、およびアカルボース350μg/mLによるα-グルコシダーゼへの阻害率は、それぞれ45.2±3.2%、47.7±3.3%、46.25±3.5%であり、ヘスペレチンとゲニステインの組成物(30+2μg/mL)による阻害率は53.3±2.7%であり、その結果、組成物の併用によりα-グルコシダーゼに対する阻害活性がわずかに増加することが示された。
【0052】
質量比を30:2としたヘスペレチンとゲニステインの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ヘスペレチンとゲニステインの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):30+2、15+1、7.5+0.5、3.75+0.25であり、ヘスペレチンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、ゲニステインの濃度勾配は(μg/mL):2、1、0.5、0.25であり、その結果を図13に示す。
【0053】
比較例1のヘスペレチン組成物の併用係数(CI)を表4に示す。
【0054】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0055】
表4の結果から分かるように、ヘスペレチンとゲニステイン(30:2)の組成物を併用する時に、α-グルコシダーゼへの阻害活性が増加した一方で、ヘスペレチンとゲニステイン(30:2)の組成物の併用時の併用係数CIは1より大きく、拮抗効果を示した。
【0056】
(比較例2)
本実施例は、各モノマー化合物とヘスペレチンとの組み合わせが相乗効果を有しない状況を示している。ここで、各モノマー化合物は、モリン、ルテオリン、ミリセチン、ヘルバセチン、ジヒドロモリン、ナリンゲニン、フィセチン、バイカレイン、アピゲニン、ケンペリド、スカビオリド、クリシン、ゲンクワニン、ビテキシン、フロレチン、ビオカニンAおよびカリコシンから選択される。
【0057】
まず、上記の方法に従って、各モノマー化合物の対応する濃度でのα-グルコシダーゼ阻害率をテストし、以下の表5に示す。
【0058】
次に、各モノマー化合物をヘスペレチンと組み合わせ、組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害率を測定し、以下の表6に示す。
【0059】
表6から分かるように、上記の各モノマー化合物とヘスペレチンとの組み合わせでは、その組成物は、阻害率が単一化合物の阻害率よりも低く、実際に拮抗効果を示し、相乗効果はない。
【0060】
(比較例3)
本実施例は、各モノマー化合物とガランギンとの組み合わせが相乗効果を有しない状況を示している。ここで、各モノマー化合物は、モリン、ビテキシン、ケンペリド、アピゲニン、ケンペロール、ジヒドロモリン、フィセチン、ナリンゲニン、ミリセチン、ルテオリン、ダイゼイン、ビオカニンA、フロレチン、イソリキリチゲニン、スカビオリドおよびデルフィニジンから選択される。
【0061】
まず、上記の方法に従って、各モノマー化合物の対応する濃度でのα-グルコシダーゼ阻害率をテストし、以下の表7に示す。
【0062】
次に、各モノマー化合物をガランギンと組み合わせ、組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害率を測定し、以下の表8に示す。
【0063】
表8から分かるように、上記の各モノマー化合物とガランギンとの組み合わせでは、その組成物は、阻害率が単一化合物の阻害率よりも低く、実際に拮抗効果を示し、相乗効果はない。
【0064】
(比較例4)
本実施例は、各モノマー化合物とホルモノネチンとの組み合わせが相乗効果を有しない状況を示している。ここで、各モノマー化合物は、モリン、ビテキシン、アピゲニン、3-O-メチルクエルセチン、ケンペロール、ジヒドロモリン、フィセチン、ナリンゲニン、ミリセチン、ルテオリン、ケンペリド、バイカレイン、ビンストキシコシドB、ヘルバセチン、ダイゼイン、カリコシン、フロレチン、イソリキリチゲニン、スカビオリドおよびデルフィニジンから選択される。
【0065】
まず、上記の方法に従って、各モノマー化合物の対応する濃度でのα-グルコシダーゼ阻害率をテストし、以下の表9に示す。
【0066】

次に、各モノマー化合物をホルモノネチンと組み合わせ、組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害率を測定し、以下の表10に示す。
【0067】
表10から分かるように、上記の各モノマー化合物とホルモノネチンとの組み合わせでは、その組成物は、阻害率が単一化合物の阻害率よりも低く、実際に拮抗効果を示し、相乗効果はない。
【0068】
上記の実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それらを限定するものではない。前述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、前述の実施例に記載された技術的解決手段を変更したり、その技術的特徴の一部を同等に置換したりすることが可能であり、これらの変更または置換は、対応する技術的解決手段の本質を、本発明によって保護が主張される技術的解決手段の精神および範囲から逸脱させるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】