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特表2024-525958α-グルコシダーゼ阻害用組成物およびその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(54)【発明の名称】α-グルコシダーゼ阻害用組成物およびその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20240705BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K31/352
A61P3/10
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504015
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 CN2022111359
(87)【国際公開番号】W WO2023020345
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110962157.2
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520468793
【氏名又は名称】中国農業科学院鄭州果樹研究所
【氏名又は名称原語表記】ZHENGZHOU FRUIT RESEARCH INSTITUTE CHINESE ACADEMY OF AGRICULTURAL SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No.28 Gangwan Road,Anxu Village,Nancao Township,Guancheng District Zhengzhou,Henan 450009 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】劉杰超
(72)【発明者】
【氏名】張強
(72)【発明者】
【氏名】焦中高
(72)【発明者】
【氏名】陳大磊
(72)【発明者】
【氏名】潘俊坤
(72)【発明者】
【氏名】張春嶺
(72)【発明者】
【氏名】劉慧
(72)【発明者】
【氏名】楊文博
(72)【発明者】
【氏名】呂真真
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC20
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、α-グルコシダーゼ阻害用組成物およびその応用を開示し、天然活性化合物の技術分野に属する。本発明の組成物は、ダイゼインとクエルセチン誘導体を含み、前記クエルセチン誘導体は、タキシホリンまたは3-O-メチルクエルセチンであり、ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4である。本発明の組成物は、前記フラボノイド化合物を単独で使用するよりも優れたα-グルコシダーゼ阻害用の有意な相乗効果を有し、かつ使用する薬剤の投与量を減らし、薬剤耐性の発生を抑えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイゼインとクエルセチン誘導体を含み、前記クエルセチン誘導体は、タキシホリンまたは3-O-メチルクエルセチンであり、
ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
α-グルコシダーゼ阻害用製剤の調製における、請求項1に記載の組成物の応用。
【請求項3】
その有効成分は、ダイゼインとタキシホリンまたはダイゼインと3-O-メチルクエルセチンを含み、ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4であることを特徴とする、α-グルコシダーゼ阻害剤。
【請求項4】
血糖降下用薬剤の調製における、請求項1に記載の組成物の応用。
【請求項5】
前記血糖降下作用は、過剰な食後血糖を制御する目的でα-グルコシダーゼの活性を阻害し、炭水化物の消化および吸収を阻害することにより達成されることを特徴とする、請求項4に記載の応用。
【請求項6】
その有効成分は、ダイゼインとタキシホリンまたはダイゼインと3-O-メチルクエルセチンを含み、ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4であることを特徴とする、血糖降下用薬剤。
【請求項7】
前記薬剤が、薬学的に許容される担体、溶剤、希釈剤、賦形剤または他の媒体を含むことを特徴とする、請求項6に記載の薬剤。
【請求項8】
前記薬剤の剤形が、粉末、顆粒、カプセル、注射剤、経口液剤または錠剤から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然活性化合物の技術分野に属し、具体的には、α-グルコシダーゼ阻害用組成物およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
時代の進歩は科学技術の急速な発展をもたらし、人々の生活水準も科学の進歩によって改善しつつあり、同時に人々の食生活も劇的に変化し、高糖質、高タンパク質や高脂肪などの過剰摂取が非科学的に行われ、その結果、いくつかの「文明病」の罹患率が大幅に増加し、糖尿病はその一つである。糖尿病は、世界的な慢性代謝疾患で、完全に治癒することは一生不可能である。この疾患の主な特徴は、血液中のグルコース濃度が長期間高く、尿中のグルコースが検出されることである。α-グルコシダーゼの活性を制御することは、食後の血糖上昇を抑える重要な手段である。
【0003】
ダイゼインは、天然の植物性エストロゲンのイソフラボン系化合物である。主に抗がん、抗血栓、抗心血管疾患、血糖降下などの生理活性の薬理作用がある。したがって、ダイゼインは医薬品やサプリメントとして広く利用されることが多い。食用大豆イソフラボンは、II型糖尿病を緩和する効果があることが既に証明されている。Choらは研究を経て、ダイゼインがPPARγを活性化し、GLUT4とIRS-1の発言を増加させることにより、インスリン刺激脂肪細胞によるグルコースの取り込みを増加させることを発見した。最近の研究結果をさらに裏付けるように、食用大豆イソフラボンの糖尿病に対する有益な効果は、ダイゼインおよびその代謝産物であるエクオールに起因している可能性がある(Cho,K.W.,Lee,O.H.,Banz,W.J.,Moustaid-Moussa,N.,Shay,N.F.,Kim,Y.C.,2010.Daidzein and the daidzein metabolite,equol,enhance adipocyte differentiation and PPARγ transcriptional activity.J Nutr Biochem 21,841-847.)。
【0004】
活性分子併用の最終目標は、有効性を高め、投与量を減らし、有害な副作用を低減し、耐性の発生を回避または遅延させることである。したがって、α-グルコシダーゼを阻害し、血糖降下作用を増強するフラボノイド系化合物の併用に関する研究は、ヒトの健康増進のために重要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、単一の活性成分による血糖降下作用が限られ、薬剤耐性が生じやすいという従来技術の課題を解決するために、α-グルコシダーゼ阻害用組成物およびその応用を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段によって実現される。
【0007】
組成物であって、ダイゼインとクエルセチン誘導体を含み、前記クエルセチン誘導体は、タキシホリンまたは3-O-メチルクエルセチンであり、
ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4である。
【0008】
いくつかの具体的な実施例では、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25、10:25であり、ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比が8:25である場合、その併用指数の平均値(CIavg)は0.82であり、10:25の質量比よりも優れ、強い相乗効果を有する。
【0009】
いくつかの具体的な実施例では、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2、8:4であり、ここで、当ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比が8:2である場合、その併用指数の平均値(CIavg)は0.6であり、8:4の質量比よりも優れ、強い相乗効果を有する。
【0010】
α-グルコシダーゼ阻害用製剤の調製における上記組成物の応用。
【0011】
α-グルコシダーゼ阻害剤であって、その有効成分は、ダイゼインとタキシホリンまたはダイゼインと3-O-メチルクエルセチンを含み、ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4である。
【0012】
血糖降下用薬剤の調製における上記組成物の応用であって、前記血糖降下作用は、過剰な食後血糖を制御する目的でα-グルコシダーゼの活性を阻害し、炭水化物の消化および吸収を阻害することにより達成される
血糖降下用薬剤であって、その有効成分は、ダイゼインとタキシホリンまたはダイゼインと3-O-メチルクエルセチンを含み、ここで、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25~10:25であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2~8:4である。
【0013】
限定された質量比の範囲内で、ダイゼインとタキシホリン、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの相乗的な技術効果が達成される。
【0014】
本発明に係る薬剤は、薬学的に許容される担体、溶剤、希釈剤、賦形剤、およびその他の媒体混合物を含み、必要に応じて、粉末、顆粒、カプセル、注射剤、経口液剤または錠剤として調製することができる。
【0015】
本発明の技術的解決手段の利点は、以下の通りである。
【0016】
本発明のダイゼインとタキシホリン、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン組成物は、前記フラボノイド化合物を単独で使用するよりも優れたα-グルコシダーゼ阻害用の有意な相乗効果を有し、かつ使用する薬剤の投与量を減らし、薬剤耐性の発生を抑えることができる。Chou-Talalay法を用いたα-グルコシダーゼのin vitro阻害試験により、本発明のダイゼインとタキシホリン、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物は、それぞれ8:25および8:2の質量比でα-グルコシダーゼに対して有意な相乗効果を有し、50%(GI50)、75%(GI75)および90%(GI90)の阻害率でのCI値が1.0未満であり、かつ薬剤間の相乗効果の強さは、一般に阻害率が低い場合よりも高い場合の方が高いことが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1および実施例5のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図2】ダイゼイン+タキシホリン(8:25)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図3】ダイゼイン+タキシホリン(8:25)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すFa-CIトレンドグラフである。
図4】ダイゼイン+3-O-メチルクエルセチン(8:2)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図5】ダイゼイン+3-O-メチルクエルセチン(8:2)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すFa-CIトレンドグラフである。
図6】実施例2および実施例6のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図7】ダイゼイン+タキシホリン(8:30)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図8】ダイゼイン+3-O-メチルクエルセチン(8:4)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図9】実施例3および実施例7のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図10】ダイゼイン+タキシホリン(8:50)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図11】ダイゼイン+3-O-メチルクエルセチン(8:6)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図12】実施例4および実施例8のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を示す。
図13】ダイゼイン+タキシホリン(10:25)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
図14】ダイゼイン+3-O-メチルクエルセチン(10:2)組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で使用される用語は、特に指定のない限り、当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0019】
ダイゼイン(Daidzein)は、分子式がC1510であり、分子量は254.24、CAS登録番号は486-66-8、構造式は、
タキシホリン(Taxifolin)は、分子式がC1512であり、分子量は304.25、CAS登録番号は480-18-2、構造式は、
3-O-メチルクエルセチン(3-O-Methyl Quercetin)は、分子式がC1612であり、分子量は316.26、CAS登録番号は1486-70-0、構造式は、
α-グルコシダーゼ(出芽酵母から、Sigma)、
4-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシドド(pNPG、TOKYO Chemica Industry Co.,LTD)、
アカルボース(Acarbose、TOKYO Chemica Industry Co.,LTD)、
ダイゼイン、タキシホリン、3-O-メチルクエルセチン(Solarbio北京)、
Millipore Simplicity浄水システム(Millipore、法国)、
リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8,、0.1mol L-1)、
マイクロプレートリーダーTECAN infinite M200 PRO(Teacan Group Ltd.,Swizerland)。
【0020】
以下、具体的な実施例と併せて、データを参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を例示することのみを意図し、本発明の範囲を何らかの形態で限定するものではない。
【0021】
(実施例1)
ダイゼインとタキシホリンの組成物であって、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:25であり、具体的には、組成物におけるダイゼインとタキシホリンの濃度は、それぞれ8μg/mLと25μg/mLである。
【0022】
(実施例2)
ダイゼインとタキシホリンの組成物であって、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:30であり、具体的には、組成物におけるダイゼインとタキシホリンの濃度は、それぞれ8μg/mLと30μg/mLである。
【0023】
(実施例3)
ダイゼインとタキシホリンの組成物であって、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は8:50であり、具体的には、組成物におけるダイゼインとタキシホリンの濃度は、それぞれ8μg/mLと50μg/mLである。
【0024】
(実施例4)
ダイゼインとタキシホリンの組成物であって、ダイゼインとタキシホリンとの質量比は10:25であり、具体的には、組成物におけるダイゼインとタキシホリンの濃度は、それぞれ10μg/mLと25μg/mLである。
【0025】
(実施例5)
ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物であって、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:2であり、具体的には、組成物におけるダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの濃度は、それぞれ8μg/mLと2μg/mLである。
【0026】
(実施例6)
ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物であって、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:4であり、具体的には、組成物におけるダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの濃度は、それぞれ8μg/mLと4μg/mLである。
【0027】
(実施例7)
ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物であって、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は8:6であり、具体的には、組成物におけるダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの濃度は、それぞれ8μg/mLと6μg/mLである。
【0028】
(実施例8)
ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物であって、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンとの質量比は10:2であり、具体的には、組成物におけるダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの濃度は、それぞれ10μg/mLと2μg/mLである。
【0029】
ダイゼイン組成物の血糖降下作用の試験
実験方法:
0.25 U/mLのα-グルコシダーゼ溶液と5mmol/mLの基質である4‐ニトロフェニルα‐D‐ガラクトピラノシド(pNPG)溶液を0.1mol L-1のpH6.8のPBS緩衝液で調合した。
【0030】
40μLのα-グルコシダーゼ溶液を確実に称量し、それぞれ100μLの被験試料溶液を加え、37℃で10分間反応させ、基質である4‐ニトロフェニルα‐D‐ガラクトピラノシド(pNPG)溶液を60μL加え、37℃で15分間反応させた後、マイクロプレートリーダーを用いて405nmの波長で測定した。
【0031】
前記被験試料溶液は、実施例1~8に記載のダイゼイン組成物であり、まず、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いて、ダイゼイン、タキシホリン、3-O-メチルクエルセチンをそれぞれ10mg/mLの母液に調合し、次いで、PBS緩衝液を用いて、特定濃度のダイゼイン、タキシホリン、3-O-メチルクエルセチンおよび組成物の試料溶液を調合した。
【0032】
陽性対照はアカルボース(350μg/mL)で、ブランク群は試料と酵素を含まないもの、試料ブランク群は酵素を含まないものである。
【0033】
計算式:阻害率=[1-(OD試料-OD試料ブランク)/(OD陰性対照-ODブランク)]×100%
CompuSynというソフトウェアを使ってCI値を算出し、薬剤間の相乗効果を評価する。
【0034】
併用指数(Combination Index、CI)を使用して薬剤間の相乗効果の強さを表し、CI<1は薬剤間の相乗効果を示し、薬剤併用により個々の薬剤の有効性を高めることができ、CI値が小さいほど相乗効果が強くなり、CI=1は薬剤間の相加効果を示し、薬剤併用により個々の薬剤の有効性が直線的に重ね合わされ、CI>1は薬剤間の拮抗効果を示し、薬剤併用によりそれぞれの薬剤の有効性が低下する。
【0035】
1、実施例1および実施例5のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例1および実施例5のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図1に示す:ダイゼイン8μg/mL、タキシホリン25μg/mL、3-O-メチルクエルセチン2μg/mL、およびアカルボース350μg/mLによるα-グルコシダーゼへの阻害率は、それぞれ44.5±2.5%、40.12±2.1%、46.23±1.2%、46.25±3.5%であり、ダイゼインとタキシホリンの組成物(8+25μg/mL)による阻害率は67.25±3.35%であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8+2μg/mL)による阻害率は71.56±3.4%であり、その結果、組成物の併用によりα-グルコシダーゼへの阻害活性が大幅に増加することが示された。
【0036】
質量比を8:25としたダイゼインとタキシホリンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインとタキシホリンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):8+25、4+12.5、2+6.25、1+3.125であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):8、4、2、1であり、前記タキシホリンの濃度勾配は(μg/mL):25、12.5、6.25、3.125であり、その結果を図2に示すように、質量比を8:25としたダイゼインとタキシホリンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を増加させた。質量比を8:25としたダイゼインとタキシホリンの組成物のFa-CIトレンドグラフを図3に示し、図3から分かるように、ダイゼインとタキシホリンは共にCI値が1.0以下で、相乗効果を示した。
【0037】
質量比を8:2としたダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):8+2、4+1、2+0.5、1+0.25であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):8、4、2、1であり、前記3-O-メチルクエルセチンの濃度勾配は(μg/mL):2、1、0.5、0.25であり、その結果を図4に示すように、質量比を8:2としたダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性も対応して増加した。質量比を8:2としたダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物のFa-CIトレンドグラフを図5に示し、図5から分かるように、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンは共にCI値が1.0以下で、相乗効果を示した。実施例1および実施例5のダイゼイン組成物の併用係数(CI)を表1に示す。
【0038】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0039】
表1の結果から分かるように、ダイゼインとタキシホリン(8:25)およびダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8:2)の併用時の併用係数CIは共に1未満であり、相乗効果を示し、その中で、ダイゼインとタキシホリン(8:25)の併用指数の平均値(CIavg)は0.82であり、相乗効果を示し、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8:2)の併用指数の平均値(CIavg)は0.60であり、強い相乗効果を示した。
【0040】
2、実施例2および実施例6のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例2および実施例6のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図6に示す:ダイゼイン8μg/mL、タキシホリン30μg/mL、3-O-メチルクエルセチン4μg/mL、およびアカルボース350μg/mLによるα-グルコシダーゼへの阻害率は、それぞれ44.5±2.5%、54.5±2.4%、53.52±3.2%、46.25±3.5%であり、ダイゼインとタキシホリンの組成物(8+30μg/mL)による阻害率は58.6±3.5%であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8+4μg/mL)による阻害率は64.5±2.4%であり、その結果、組成物の併用によりα-グルコシダーゼに対する阻害活性が増加することが示された。
【0041】
質量比を8:30としたダイゼインとタキシホリンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインとタキシホリンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):8+30、4+15、2+7.5、1+3.75であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):8、4、2、1であり、前記タキシホリンの濃度勾配は(μg/mL):30、15、7.5、3.75であり、その結果を図7に示す。
【0042】
質量比を8:4としたダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):8+4、4+2、2+1、1+0.5であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):8、4、2、1であり、前記3-O-メチルクエルセチンの濃度勾配は(μg/mL):4、2、1、0.5であり、その結果を図8に示す。実施例2および実施例6のダイゼイン組成物の併用係数(CI)を表2に示す。
【0043】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0044】
表2の結果から分かるように、ダイゼインとタキシホリン(8:30)の組成物およびダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8:4)を併用する時に、α-グルコシダーゼへの阻害活性が増加した一方で、ダイゼインとタキシホリン(8:30)の組成物の併用時の併用係数CIは1より大きく、拮抗効果を示し、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8:4)の併用時の併用係数CIは1に近く、弱い相乗効果を示した。
【0045】
3、実施例3および実施例7のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例3および実施例7のダイゼイン組成物によりα-グルコシダーゼへの阻害活性を図9に示す:ダイゼイン8μg/mL、タキシホリン50μg/mL、3-O-メチルクエルセチン6μg/mL、およびアカルボース350μg/mLによるα-グルコシダーゼへの阻害率は、それぞれ44.5±2.5%、75.21±3.4%、61.72±3.5%、46.25±3.5%であり、ダイゼインとタキシホリンの組成物(8+50μg/mL)による阻害率は67.8±3.7%であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8+6μg/mL)による阻害率は58.9±3.4%であり、その結果、組成物を併用してもα-グルコシダーゼに対する阻害活性が有意に増加しないことが示された。
【0046】
質量比を8:50としたダイゼインとタキシホリンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインとタキシホリンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):8+50、4+25、2+12.5、1+6.25であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):8、4、2、1であり、前記タキシホリンの濃度勾配は(μg/mL):50、25、12.5、6.25であり、その結果を図10に示す。
【0047】
質量比を8:6としたダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):8+6、4+3、2+1.5、1+0.75であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):8、4、2、1であり、前記3-O-メチルクエルセチンの濃度勾配は(μg/mL):6、3、1.5、0.75であり、その結果を図11に示す。
【0048】
実施例3および実施例7のダイゼイン組成物の併用係数(CI)を表3に示す。
【0049】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0050】
表3の結果から分かるように、ダイゼインとタキシホリン(8:50)およびダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(8:6)の組成物の併用時の併用係数CIは共に1より大きく、拮抗効果を示した。
【0051】
4、実施例4および実施例8のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性
実施例4および実施例8のダイゼイン組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害活性を図12に示す:ダイゼイン10μg/mL、タキシホリン25μg/mL、3-O-メチルクエルセチン2μg/mL、およびアカルボース350μg/mLによるα-グルコシダーゼへの阻害率は、それぞれ52.25±2.5%、40.12±2.1%、46.23±1.2%、46.25±3.5%であり、ダイゼインとタキシホリンの組成物(10+25μg/mL)による阻害率は62.3±1.7%であり、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(10+2μg/mL)による阻害率は45.2±2.5%であり、その結果、組成物を併用してもα-グルコシダーゼに対する阻害活性が有意に増加しないことが示された。
【0052】
質量比を10:25としたダイゼインとタキシホリンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインとタキシホリンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):10+25、5+12.5、2.5+6.25、1.25+3.125であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):10、5、2.5、1.25であり、前記タキシホリンの濃度勾配は(μg/mL):25、12.5、6.25、3.125であり、その結果を図13に示す。
【0053】
質量比を10:2としたダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の、異なる濃度勾配でα-グルコシダーゼに対する阻害活性を検出し、前記ダイゼインと3-O-メチルクエルセチンの組成物の濃度勾配は、(μg/mL):10+2、5+1、2.5+0.5、1.25+0.25であり、前記ダイゼインの濃度勾配は(μg/mL):10、5、2.5、1.25であり、前記3-O-メチルクエルセチンの濃度勾配は(μg/mL):2、1、0.5、0.25であり、その結果を図14に示す。
【0054】
実施例4および実施例8のダイゼイン組成物の併用係数(CI)を表4に示す。
【0055】
データは3回の独立した実験から得られたもので、平均値±標準偏差で表した。
【0056】
表4の結果から分かるように、α-グルコシダーゼに対する阻害活性は、ダイゼインとタキシホリン(10:25)を併用する時に増加したが、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(10:2)の組成物の併用では有意な効果は認められなかった。また、ダイゼインとタキシホリン(10:25)の併用時の併用係数CIは1に近く、弱い相乗効果を示し、ダイゼインと3-O-メチルクエルセチン(10:2)の組成物の併用係数CIは1より大きく、拮抗効果を示した。
【0057】
(比較例1)
本実施例は、各モノマー化合物とダイゼインとの組み合わせが相乗効果を有しない状況を示している。ここで、各モノマー化合物は、ケンペリド、ケンペロール、ジオスメチン、ヘルバセチン、ミリセチン、モリン、ゲンクワニン、バイカレイン、ヘスペレチン、フィセチン、クリシン、没食子酸エピガロカテキン、デルフィニジン、スカビオリド、イソリキリチゲニン、ホルモノネチンおよびビオカニンAから選択される。
【0058】
まず、上記の方法に従って、各モノマー化合物の対応する濃度でのα-グルコシダーゼ阻害率をテストし、以下の表5に示す。
【0059】


次に、各モノマー化合物をダイゼインと組み合わせ、組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害率を測定し、以下の表6に示す。
【0060】
表6から分かるように、上記の各モノマー化合物とダイゼインとの組み合わせでは、その組成物は、阻害率が単一化合物の阻害率よりも低く、実際に拮抗効果を示し、相乗効果はない。
【0061】
(比較例2)
本実施例は、各モノマー化合物と3-O-メチルクエルセチンとの組み合わせが相乗効果を有しない状況を示している。ここで、各モノマー化合物は、ケンペロール、ルテオリン、ビンストキシコシドB、ヘルバセチン、ミリセチン、ジヒドロモリン、ビテキシン、バイカレイン、タキシホリン、ヘスペレチン、クリシン、没食子酸エピガロカテキン、デルフィニジン、スカビオリド、イソリキリチゲニン、フロレチンおよびビオカニンAから選択される。
【0062】
まず、上記の方法に従って、各モノマー化合物の対応する濃度でのα-グルコシダーゼ阻害率をテストし、以下の表7に示す。
【0063】
次に、各モノマー化合物を3-O-メチルクエルセチンと組み合わせ、組成物によるα-グルコシダーゼへの阻害率を測定し、以下の表8に示す。
【0064】
表8から分かるように、上記の各モノマー化合物と3-O-メチルクエルセチンとの組み合わせでは、その組成物は、阻害率が単一化合物の阻害率よりも低く、実際に拮抗効果を示し、相乗効果はない。
【0065】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を他の形態で限定するものではなく、当業者であれば、以上で開示された技術内容を変更または変形することによって同等の実施例を形成することができる。しかし、本発明の技術的解決手段から逸脱することなく、本発明の技術的実質に基づいて上記実施例に対して行われる任意の簡単な修正、同等の変更および変形は、依然として本発明の技術的解決手段の保護範囲内に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】